説明

光触媒装置

【課題】光の照射によって光触媒機能を発揮させる光触媒装置を適切に実現する。
【解決手段】互いに向かい合う第1の面S1と第2の面S2のうち少なくとも一方の面S1が複数の突起部44を有し、第1の面S1及び第2の面S2と略直交して立体を形成させる第3の面S3に光が入射される基盤部材40と、複数の突起部44を有する少なくとも一方の面S1側に設けられ、第3の面S3に入射された光が複数の突起部44により回折されて照射される光触媒層42と、を備える光触媒装置100を構成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
居住空間や作業空間における消臭(生活悪臭の低減、新建材からのVOC(Volatile Organic Compounds)ガス分解等)、抗菌(大腸菌、黄色ブドウ球菌、MRSA(Methicillin-resistant Staphylococcus Aureus)等に対する抗菌性)、防汚(手垢、指紋、煙草のヤニ汚れ等の低減)を目的として、光触媒物質により構成される光触媒装置が用いられている。尚、光触媒装置とは、バンドギャップ以上のエネルギーを有した光を照射してスーパーオキシドアニオンラジカル(O)やヒドロキシルラジカル(OH)といった活性酸素を誘起させるものである。この活性酸素によって、居住空間や作業空間に漂う悪臭や汚れ等の原因となる有機物が水(HO)又は二酸化炭素(CO)に分解され、前述した消臭、抗菌、防汚の目的を達成することができる。
【0003】
光触媒物質としては、酸化チタン等の酸化物半導体が一般的に用いられるが、この酸化物半導体は紫外線領域(波長200nm〜波長360nm)の光いわゆる紫外線が照射されたときに光触媒機能を発揮させる紫外光応答型光触媒物質である。このため、光触媒装置に向けて活性酸素を誘起させるべく紫外線を照射させる光源としては、主にUV(Ultraviolet)ランプが用いられている。
【0004】
例えば、低温雰囲気でも効果的に光触媒作用を得ることができる蛍光ランプ、光触媒装置、照明装置および物品が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
一方、UVランプ等の紫外線を放射させるための光源の中には、可視光領域(例えば波長380nm〜波長770nm)の光いわゆる可視光を放射するものが多い。このような光源を利用する場合、エネルギー利用効率の観点から、可視光の有効利用が望まれている。そこで、図7に示す光触媒装置500のように、紫外線のみならず、自然光(太陽光)や安価な光源(一般の蛍光灯や白熱灯)から放射される可視光を照射させても光触媒機能を発揮することが可能な可視光応答型光触媒物質を用いた光触媒装置が開発されている。
【特許文献1】特開平9−129184号公報(第1−2頁、第1−13図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光触媒装置向けの光源としてUVランプを用いた場合には、UVランプは寿命が短く比較的コストが高いので、経済面で不利である。また、光触媒装置は、光の照射を待って光触媒機能を発揮させる受動的な使われ方をするものが一般的である。これに対し、UVランプによって積極的に紫外線を照射させて光触媒機能を発揮させる場合には、光エネルギーへの変換効率低いため、紫外線の照射時間が継続している分、無駄なエネルギーを消費してしまうことになる。
【0006】
一方、光触媒装置向けの光源として自然光を用いた場合には、光触媒機能を発揮させる程のバンドギャップ以上のエネルギーを持った自然光が十分に得られない等、自然現象による不確実性が絶えずつきまとう。
【0007】
以上のように、UVランプを用いた場合であっても、自然光を用いた場合であっても、光触媒装置向けの光源としては利用しづらいものであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するための主たる本発明の光触媒装置は、互いに向かい合う第1の面と第2の面のうち少なくとも一方の面が複数の突起部を有し、前記第1の面及び前記第2の面と略直交して立体を形成させる第3の面に光が入射される基盤部材と、前記複数の突起部を有する少なくとも前記一方の面側に設けられ、前記第3の面に入射された前記光が前記複数の突起部により回折されて照射される光触媒層と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光の照射によって光触媒機能を発揮させる光触媒装置を適切に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[実施例1]
<<<光触媒装置の構成>>>
本発明の一実施形態に係る光触媒装置100は、可視光の自然な入射を待って光触媒機能を発揮させる受動的な使われ方をするものではなく、光触媒層42に対して積極的に可視光を当てて能動的に光触媒機能を発揮させる使われ方をするものである。具体的には、レーザ光源10により照射した可視光領域のレーザ光により光触媒層42に活性酸素を誘起させ、この活性酸素によって居住空間や作業空間に気流にのって漂う有機物を水(HO)又は二酸化炭素(CO)に分解させることで、消臭、抗菌、防汚の目的を達成できる。このような光触媒装置100は、空気清浄機、加湿器、エアコン等に搭載する部材として好適である。
【0011】
光触媒装置100の構成は、図1Aに示す平面図や図1Bに示す側面図に示されているように、レーザ光源10と、シート光SLを生成するためのシリンドリカルレンズ20、30と、光触媒層42が例えば積層等されて設けられている基盤部材40と、を備えて構成される。以下では、図2、図3を適宜参照しつつ、図1をもとに光触媒装置100の構成を逐次説明していく。尚、図2は後述のエンボス構造の基盤部材40の製造工程を示す図であり、図3は後述のシート光SLを生成する光学系について説明する図である。また、図1A、図1Bに示すX−Y−Z座標軸は、下面S2から上面S1へ向かう下面S2の法線方向をZ軸の正方向とし、側面S3から側面S5へ向かう側面S3の法線方向をX軸の正方向とし、側面S4から側面S6へ向かう側面S4の法線方向をY軸の正方向としている。図3に示すX−Y−Z座標軸についても同様である。
【0012】
===光触媒層===
光触媒装置100の一部を構成する光触媒層42について説明する。
光触媒層42は、可視光領域(例えば波長380nm以上波長780nm未満、基準波長400nmを超え770nm以下)において高い光触媒活性を持つ可視光応答型光触媒物質によって構成される。尚、可視光応答型光触媒物質とは、アナターゼ型、ルチル型、又はそれらの混晶である酸化チタン(TiO)を主成分とした紫外線応答型光触媒物質に対して、その結晶の酸素原子(O)の一部を窒素原子(N)で置換したもの、その結晶の格子間に窒素原子をドーピングしたもの、その結晶の多結晶集合体の粒界に窒素原子を配したもの、のうち少なくとも1種類以上のもので構成される。
【0013】
可視光応答型光触媒物質のベース材料となる紫外線応答型光触媒物資は、前述した酸化チタンの他に、酸化タングステン(WO)、酸化鉄(Fe)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化ニオブ(Nb、Nb)等の各種酸化物や、硫化カドミウム(CdS)、硫化亜鉛(ZnS)等の硫化物、若しくはリン化ガリウム(GaP)、ガリウムヒ素(GaAs)、セレン化カドミウム(CdSe)等のうち少なくとも1種類以上の成分で構成してもよい。さらに、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)等の貴金属や、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銅(Cu)、コバルト(Co)等の遷移金属、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ルテチウム(Lu)等の希土類元素のうち少なくとも1種類を組み合わせもよい。これによって、光触媒活性がより向上することが知られている。
【0014】
本実施形態では、前述したとおり光触媒活性が高い酸化チタンを主成分として、紫外線応答型光触媒物質などの可視光応答型光触媒物質が構成されるものとする。尚、酸化チタンは水に溶けない性質があるので、可視光応答型光触媒物質をアルコール等に混合させて熱処理することで、基盤部材40に光触媒層42として形成させる。光触媒層42は、例えば単層とされてもよく、また、複数の層を有する例えば積層とされてもよい。
【0015】
===エンボス構造(凹凸構造)===
基盤部材40は、図1A、図1Bに示すように、互いに向かい合って平行な上面S1(第1の面)並びに下面S2(第2の面)と、上面S1並びに下面S2と略直交しており上面S1並びに下面S2の周囲を取り囲む複数(4つ)の側面S3〜S6(第3の面)と、を有しており、例えば立体である直方体をした略板状本体を備えている。尚、基盤部材40の素材としては、本実施形態では透明なガラス素材を採用するが、その他にアクリル素材等の光を透過する素材であればよい。
【0016】
基盤部材40の上面S1の方には面全体にわたって配設された複数の突起部44を有する例えばエンボス構造(凸凹構造)を備えている。尚、この場合、基盤部材40の厚さ方向(Z軸方向)の強度を鑑みて、基盤部材40の下面S2の方を堅い板状の素材で固定することで、厚さ方向の強度を高くするのが好ましい。突起部44は、例えば略円柱状をした突出部44として形成されている。このように、基盤部材40の上面S1に設けた複数の突起部44を有する例えばエンボス構造によって、複数の突起部44による凸凹の分だけ、光触媒層42を形成させる基盤部材40の表面積が拡大され、単位面積当たりの光触媒活性を向上させることができる。勿論、基盤部材40の上面S1の方ではなく下面S2の方に複数の突起部44を設けて光触媒層42を形成させても、上記と同様の効果が得られる。
【0017】
例えばエンボス構造は、高精度な微細加工が可能な所謂電鋳技術によって実現できる。図2は、その電鋳技術による例えばエンボス構造の製造工程を説明する図である。同図に示すように、まず、エンボス構造などの凹凸構造をした基盤部材40の原型モデル142を製作し、更に原型モデル142をもとに電鋳母型となる入槽モデル144を製作する。そして、入槽モデル144の表面に導電部材146を塗布させる等の前処理を施した上で、電解質溶液が入った電鋳槽150に入れて電鋳処理を施す。尚、電鋳処理とは、目的の金属(今回の場合はガラス素材)のイオンを含んだ電解質溶液に電流を流して当該目的の金属を入槽モデル144の表面に析出させる処理のことである。この電鋳処理を実行した結果、入槽モデル144に型組されて基盤部材40が形成される。そして、入槽モデル144から基盤部材40を乖離することで、例えばエンボス構造の基盤部材40が得られる。
【0018】
===光源===
光触媒装置100に対して積極的にUVランプ光を照射させる方式の場合、効率の悪さから無駄なエネルギーが失われる。そこで、本実施形態では、この欠点を補完する目的として、従来のUVランプと対比して、低コスト、長寿命且つエネルギー変換効率の高いレーザ光(LASER:light amplification by stimulated emission of radiation)および/またはLED光(LED:light emitting diode)の光源10を、光触媒装置100に照射させる光源として採用している。エネルギー変換効率の観点から言えば、次世代光ディスクの「HD DVD」(登録商標)規格や「Blu−ray Disc」(登録商標)規格で採用された青紫色レーザ光(例えば波長380nm以上450nm以下、基準波長405nm)を出射する青紫色半導体レーザ素子が好ましい。又は、エネルギー変換効率とコスト面とのバランスを考慮して、「DVD」(登録商標)規格で用いられる赤色レーザ光(波長630nm〜波長685nm)を出射する赤色半導体レーザ素子や、「CD」(「Compact Disc」(登録商標)の略称)規格で用いられる赤外線レーザ光(波長765nm〜波長830nm)を出射する赤外半導体レーザ素子を用いても良い。また、例えば波長380nm〜波長830nmの帯域のいずれかの領域波長を出射するLED発光素子や、基準波長400nmを超え770nm以下の帯域のいずれかの領域波長を出射するLED発光素子であってもよい。
【0019】
===シート光===
光源10から出射させる光は、基盤部材40の複数(4つ)の側面S3〜S6のうちいずれか一つに対して入射される。本実施形態の場合では、基盤部材40の側面S3を光の入射面としており、光源10から出射した光をシート光SL(帯状光束)に変形(整形)した上で、基盤部材40の側面S3に入射させる必要がある。そこで、図1A、図1B、図3に示すように、複数(2つ)のシリンドリカルレンズ20、30(第1のレンズ、第2のレンズ)を組み合わせて、光をシート光SLに変形させるための光学系が、光源10と基盤部材40との間に設けられている。尚、図3では、シート光の生成を説明する都合上、光源10と、2つのシリンドリカルレンズ20、30と、基盤部材40との間に空間が存在する場合を示しているが、実際には光触媒装置のコンパクト化や光の有効利用のために、図1A、図1Bに示すように、光源10と2つのシリンドリカルレンズ20、30と基盤部材40とは、それぞれ接着材で固定されているか若しくは補助的な部品を用いて一体化されている。
【0020】
詳述すると、シリンドリカルレンズ20、30は、例えば円柱を円柱軸の方向に真っ二つに割った形をしており、一方向のみに曲率を持つレンズである。本実施形態の場合、図3に示すように、シリンドリカルレンズ20の断面(平面)の方に光源10からの光を入射させる。この配置によって、シリンドリカルレンズ20は、光源10から出射したレーザ光を拡大させる機能を持つ。一方、シリンドリカルレンズ30は、自身の曲面がシリンドリカルレンズ20の曲面と向かい合うように配置する。この配置によって、シリンドリカルレンズ30は、シリンドリカルレンズ20により拡大された光をシート光SLに変形させる機能を持つ。尚、シリンドリカルレンズ20、30両者の焦点距離とそれぞれの配置を変えることによって、シート光SLの幅Hや厚さTを基盤部材40の側面S3に応じた任意の長さに調整することができる。
【0021】
以上のように、本実施形態によれば、シート光SLを採用したことによって、簡易な光学系と最小限の焦点距離を実現し、光触媒装置100のコンパクト化を図ることができる。尚、シート光SLを生成するための光学系としては、上記のとおりシリンドリカルレンズ20、30を用いる手法の他に、例えば、ポリゴンミラーやガルバノミラーを用いて、光を当該ミラーで振って空間をスキャニングし、擬似的にシート光SLを生成する手法を採用してもよい。
【0022】
===フレネル回折===
シート光SLを基盤部材40の側面S3に入射させると、シート光SLは光触媒装置100の側面S3から側面S5(X軸の正方向)に向かって進行する。このシート光SLの進行過程で、上面S1に設けられた例えばエンボス構造の各突起部44の下面S2側とされる根元部近傍を光SLが通過すると、フレネル回折が誘発される。例えば、側面S3から側面S5に向かって進行するシート光SLは、複数の突起部44により例えば基盤部材40の下面S2側から上面S1側に向けて回折する。この結果、例えば複数の突起部44による回折光(面状光束)が、複数の突起部44を覆う光触媒層42に照射され、光触媒層42に活性酸素が誘起される。例えば、基盤部材40は、光触媒層42に向けて上面S1からの面状光束を照射させる面発光体として機能する。
【0023】
また、光触媒装置100の側面S3から側面S5(X軸の正方向)に向けて進行するシート光SLの進行過程において、上面S1に設けられた例えばエンボス構造の各突起部44の根元部近傍を光SLが通過すると、例えばフレネル回折が誘発される。例えば、側面S3から側面S5に向かって進行するシート光SLは、複数の突起部44の根元部により上面S1側の方向(略Z軸の正方向)に回折する。この結果、例えば複数の突起部44による回折光が、複数の突起部44を覆う光触媒層42に照射され、光触媒層42に活性酸素が誘起される。
【0024】
以上のように、例えばエンボス構造などの凹凸構造に起因したフレネル回折を利用することで、光触媒層42への光の照射に際して特別な光学系を設ける必要がなく、光触媒装置100のコンパクト化を実現することができる。
【0025】
[実施例2]
===両面型===
図4は、基盤部材40の上面S1並びに下面S2の双方に突起部44を設けて光触媒層42を形成させる両面型の光触媒装置102の側面図を示した図である。尚、図4に示すX−Y−Z座標軸は、図1A、図1Bに示したX−Y−Z座標軸と同じ定義である。両面型の光触媒装置102を採用することで、図1Bに示したような基盤部材40の上面S1又は下面S2の一方の面(片面)のみに突起部44を設けて光触媒層42を形成させる片面型の場合と対比して、単位面積当たりの光触媒活性を更に向上させることができる。
【0026】
[実施例3]
===六角柱型===
図5は、六角柱型の光触媒装置200の構成を示した図である。尚、図5に示すX−Y−Z座標軸は、同図中の紙面上方向をZ軸の正方向、同図中の紙面右方向をX軸の正方向とし、同図中の紙面表方向をY軸の正方向としている。
【0027】
光触媒装置200は、光源10と同様の光源205と、例えば微細なエンボス構造を持つ六角柱外壁面並びに六角柱内壁面とそれらの壁面と略直交した上面並びに下面とを有して六角柱の筒型構造を呈する基盤部材210と、基盤部材210の六角柱外壁面に形成された光触媒層220と、基盤部材210の六角柱内壁面に形成された光触媒層230と、を備えて構成される。尚、微細なエンボス構造は、六角柱外壁面又は六角柱内壁面の一方のみに持たせる実施形態でもよいが、両壁面に持たせる方が単位面積当たりの光触媒活性を向上することができる。
【0028】
光触媒装置200を使用する際には、自然対流を得るために、基盤部材210の角柱軸が水平面(X軸と平行した面)に対して垂直となるように配置される。また、光源205より出射した光が、基盤部材210の上面(Z軸の正方向の面)若しくは下面(Z軸の負方向の面)から入射されるように、光源205が配置される。このような配置によって、光源205より基盤部材210の上面若しくは下面の一方に対して不図示の光学系を介して入射された光が、基盤部材210の内部で全反射をしながら進行する。この進行過程において、基盤部材210の六角柱内壁面並びに六角柱外壁面には例えば微細なエンボス構造が形成されているので、フレネル回折が誘発される。すると、基盤部材210から外壁面側の光触媒層220並びに内壁面側の光触媒層230に向けて光が照射され、光触媒層230に活性酸素が誘起される。
【0029】
以上のように、前述した光触媒装置100、102と同じく光により光触媒機能を発揮させる第3の実施形態に係る光触媒装置200を、光源205と基盤部材210と光触媒層220、230とを有するシンプルで且つコンパクトな構成で実現することができる。また、光触媒装置200は、基盤部材210の六角柱内壁面側に存在する空洞によってその空洞を循環する自然対流が得られるので、光触媒機能の利用効率をより向上させることができる。
【0030】
[実施例4]
===円柱型===
図6は、円柱型の光触媒装置300の構成を示した図である。尚、図6に示すX−Y−Z座標軸は、図5に示すX−Y−Z座標軸と同様の定義である。
【0031】
光触媒装置300は、円柱型の構造である以外、六角柱型の光触媒装置200と基本的には同じ仕組みである。例えば、光源305より円柱型の基盤部材310の上面又は下面の一方に対して不図示の光学系を介して入射された光が、基盤部材310の内部で全反射をしながら進行する。この進行過程において、基盤部材310の円柱内壁面並びに円柱外壁面には例えば微細なエンボス構造が形成されているので、フレネル回折が誘発される。すると、基盤部材310から外壁面側の光触媒層320並びに内壁面側の光触媒層330に向けて光が照射され、光触媒層320に活性酸素が誘起される。尚、六角柱型の光触媒装置200と同様に、微細なエンボス構造は、円柱外壁面又は円柱内壁面の一方のみに持たせる実施形態でもよいが、両壁面に持たせる方が単位面積当たりの光触媒活性を向上することができる。
【0032】
以上のように、前述した光触媒装置100、102と同じく光により光触媒機能を発揮させる第4の実施形態に係る光触媒装置300を、光源305と基盤部材310と光触媒層320、330とを有するシンプルで且つコンパクトな構成で実現することができる。また、光触媒装置300は、六角柱型の光触媒装置200と同様に、基盤部材310の円柱内壁面側に存在する空洞によってその空洞を循環する自然対流が得られるので、光触媒機能の利用効率をより向上させることができる。
【0033】
===その他の立体構造===
また、前述した六角柱型や円柱型に限らず、例えば、三角柱型や四角柱型といった六角柱以外の多角柱型や、球体や錐体を鉛直方向にくり貫いて自然対流を可能とした種々の立体構造を光触媒装置の基盤部材として採用することができる。
【0034】
<<<光触媒装置のその他の実施形態>>>
以上、本発明の実施形態について説明したが、前述した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1A】本発明の第一実施形態に係る光触媒装置の平面図である。
【図1B】本発明の第一実施形態に係る光触媒装置の側面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係るエンボス構造を持つ基盤部材の製造工程を示す図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係るシート光を生成するための光学系を示す図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る光触媒装置の側面図である。
【図5】本発明の第三実施形態に係る光触媒装置の構造を示す図である。
【図6】本発明の第四実施形態に係る光触媒装置の構造を示す図である。
【図7】従来の光触媒装置の機能を説明するための図である。
【符号の説明】
【0036】
10、205、305 光源
20 シリンドリカルレンズ(第1のレンズ)
30 シリンドリカルレンズ(第2のレンズ)
40、210、310 基盤部材
42、220、230、320、330 光触媒層
44 突出部(突起部)
100、102、200、300、500 光触媒装置
142 原型モデル
144 入槽モデル
146 導電部材
150 電鋳槽
S1 上面(第1の面)
S2 下面(第2の面)
S3、S4、S5、S6 側面(第3の面)
SL シート光(光)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに向かい合う第1の面と第2の面のうち少なくとも一方の面が複数の突起部を有し、前記第1の面及び前記第2の面と略直交して立体を形成させる第3の面に光が入射される基盤部材と、
前記複数の突起部を有する少なくとも前記一方の面側に設けられ、前記第3の面に入射された光が前記複数の突起部により回折されて照射される光触媒層と、
を備えることを特徴とする光触媒装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光触媒装置において、前記複数の突起部は、前記第1の面及び前記第2の面の双方に備わっていること、を特徴とする光触媒装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光触媒装置において、前記光はレーザ光および/またはLED光であること、を特徴とする光触媒装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光触媒装置において、
前記光を出射する光源と前記基盤部材との間に、前記光源より出射した前記光を拡大させる第1のレンズと、前記第1のレンズによって拡大された前記光をシート光に変形させる第2のレンズと、を備え、
前記基盤部材は、前記第1の面と、前記第2の面と、複数の前記第3の面と、を有する略板状本体を備え、前記複数の第3の面のうちの一つに前記シート光が入射されること、
を特徴とする光触媒装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光触媒装置において、
前記基盤部材は、前記第1の面を多角柱外壁面、前記第2の面を多角柱内壁面、前記第3の面を前記多角柱外壁面並びに前記多角柱内壁面と略直交する2つの面とする多角柱の筒型構造であり、前記2つの面のうち少なくとも一方の面に前記光が入射されること、を特徴とする光触媒装置。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光触媒装置において、
前記基盤部材は、前記第1の面を円柱外壁面、前記第2の面を円柱内壁面、前記第3の面を前記円柱外壁面並びに前記円柱内壁面と略直交する2つの面とする円柱の筒型構造であり、前記2つの面のうち少なくとも一方の面に前記光が入射されること、を特徴とする光触媒装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−148653(P2009−148653A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326360(P2007−326360)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506243529)三洋メディアテック株式会社 (10)
【Fターム(参考)】