光記録媒体、光記録媒体の製造方法、記録方法、再生方法
【課題】従来のネガ型マイクロホログラム方式で必要とされていた初期化処理を不要として、当該初期化処理に係る問題点の解消を図り、ネガ型マイクロホログラム方式の実現性をさらに高める。
【解決手段】透明で且つそれぞれ屈折率が僅かに異なる第1の層と第2の層とが交互に積層されることで所定の格子ピッチを有する回折格子で構成された記録層と、透明で且つ上記記録層よりも厚みが大とされた中間層とが交互に積層された光記録媒体とする。消去マーク形成のために必要な記録層(回折格子)が予め形成されているので初期化処理を不要とすることができ、その結果、記録開始までに要する時間の大幅な短縮化や、従来のネガ型マイクロホログラム方式が抱えていた初期化光のパワーやバルク層の記録感度に関する問題を解消でき、ネガ型マイクロホログラム方式による多層記録媒体(大容量記録媒体)の実現性をさらに高めることができる。
【解決手段】透明で且つそれぞれ屈折率が僅かに異なる第1の層と第2の層とが交互に積層されることで所定の格子ピッチを有する回折格子で構成された記録層と、透明で且つ上記記録層よりも厚みが大とされた中間層とが交互に積層された光記録媒体とする。消去マーク形成のために必要な記録層(回折格子)が予め形成されているので初期化処理を不要とすることができ、その結果、記録開始までに要する時間の大幅な短縮化や、従来のネガ型マイクロホログラム方式が抱えていた初期化光のパワーやバルク層の記録感度に関する問題を解消でき、ネガ型マイクロホログラム方式による多層記録媒体(大容量記録媒体)の実現性をさらに高めることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の照射により信号の記録/再生が行われる光記録媒体として、特に記録層と中間層とが交互に積層される光記録媒体とその製造方法に関する。
また、光記録媒体についての記録方法、再生方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2008−135144号公報
【特許文献2】特開2008−176902号公報
【特許文献3】米国特許第6,212,148号明細書
【背景技術】
【0003】
光の照射により信号の記録/再生が行われる光記録媒体として、例えばCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)などのいわゆる光ディスクが普及している。
【0004】
これらCD、DVD、BDなど現状において普及している光記録媒体の次世代を担うべき光記録媒体に関して、先に本出願人は、上記特許文献1や上記特許文献2に記載されるようないわゆるバルク記録型の光記録媒体を提案している。
【0005】
ここで、バルク記録とは、例えば図12に示すようにして少なくともカバー層101とバルク層(記録層)102とを有する光記録媒体に対し、逐次焦点位置を変えてレーザ光照射を行ってバルク層102内に多層記録を行うことで、大記録容量化を図る技術である。
【0006】
このようなバルク記録に関して、上記特許文献1には、いわゆるマイクロホログラム方式と呼ばれる記録技術が開示されている。
マイクロホログラム方式は、次の図13に示されるようにして、ポジ型マイクロホログラム方式とネガ型マイクロホログラム方式とに大別される。
マイクロホログラム方式では、バルク層102の記録材料として、いわゆるホログラム記録材料が用いられる。ホログラム記録材料としては、例えば光重合型フォトポリマ等が広く知られている。
【0007】
ポジ型マイクロホログラム方式は、図13(a)に示すように、対向する2つの光束(光束A、光束B)を同位置に集光して微細な干渉縞(ホログラム)を形成し、これを記録マークとする手法である。
【0008】
また、図13(b)に示すネガ型マイクロホログラム方式は、ポジ型マイクロホログラム方式とは逆の発想で、予め形成しておいた干渉縞をレーザ光照射により消去して、当該消去部分を記録マークとする手法である。
【0009】
これらポジ型やネガ型によるマイクロホログラム方式は、多層記録を行うにあたって非常に有利な記録方式となる。ここで、これらマイクロホログラム方式では、回折格子をマークとして用いる(ネガ型の場合はマーク非形成部分が回折格子となる)ものとしているが、当該回折格子は、そこに集光するように光が照射された際、その屈折率差によって反射体として作用するものである。このような回折格子が記録層としてのバルク層102内に形成されるマイクロホログラム方式の光記録媒体は、従来の光ディスクシステムで用いられるような屈折率の変化や膜の昇華等によってマークが形成された記録層を有する光記録媒体と比較して、照射光の集光部分以外での光透過性が高いものとなり、その結果、多層記録を行っても記録層(バルク層)の奥部まで光が届きやすいという利点がある。つまりこの点より、マイクロホログラム方式は多層記録にとって有利な記録方式となる。
【0010】
但し、上記により説明したポジ型とネガ型のマイクロホログラム方式のうち、ポジ型マイクロホログラム方式については、その実現性が非常に低いものとなる。
具体的にポジ型マイクロホログラム方式では、先の図13(a)に示したように対向する光束Aと光束Bとを同位置に集光させることで記録マーク(ホログラム)を形成することになるが、このためには、双方の光の照射位置制御に非常に高い精度が要求されることになる。このように非常に高い位置制御精度を要する点から、ポジ型マイクロホログラム方式は、その実現化のための技術的困難性が高く、また仮に実現したとしても装置製造コストの増大化は避けられないものとなり、結果として、現実的な手法とは言えないものとなる。
【0011】
これに対し、ネガ型マイクロホログラム方式は、上記のように2つの異なる光束をそれぞれ同位置に集光させるといった必要性はなく、レーザ光の照射位置制御の精度の面で技術的困難性が伴うといった問題が生じる虞はない。
【0012】
ここで、図14を参照して、ネガ型マイクロホログラム方式についてより具体的に説明しておく。
ネガ型マイクロホログラム方式では、記録動作を行う前に、図14(a)に示されるようにして予めバルク層102に対して干渉縞を形成するための初期化処理を行うことになる。具体的には、図中に示すように平行光による光束C,Dを対向して照射し、それらの干渉縞をバルク層102の全体に形成しておく。
このように初期化処理により予め干渉縞を形成しておいた上で、図14(b)に示されるようにして消去マークの形成による情報記録を行う。具体的には、任意の層位置にフォーカスを合わせた状態で記録情報に応じたレーザ光照射を行うことで、消去マークによる情報記録を行うものである。
【0013】
なお、先の図13(a)にて説明したポジ型のマイクロホログラムの原理からすると、本来、初期化処理としては、2つの光を同位置に集光させて行うべきものとなるが、このように2つの光束を集光させて初期化処理を行うとした場合は、設定した層数に応じた分だけ初期化処理を行わなければならず、現実的な手法ではなくなってしまう。そこで、上述のように初期化処理を平行光を用いて行うことで、初期化処理の大幅な時間短縮が図られるようにしている。
【0014】
このようにしてネガ型マイクロホログラム方式によれば、ポジ型マイクロホログラム方式のように2つのレーザ光を同位置に集光させるようにして照射する必要性はないものとでき、位置制御精度の面での問題点は解消されるものとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、図14にて説明した従来のネガ型マイクロホログラム方式は、記録前において必ず光記録媒体の初期化処理を行わなければならない点が問題となる。すなわち、このような初期化処理が行われる分、記録データに応じた実際の記録動作が開始されるまでに遅延が生じてしまうという問題がある。
【0016】
また、従来のネガ型マイクロホログラム方式では、上述のようにして初期化処理の短縮化にあたり平行光を用いるものとしているが、このように平行光による初期化処理を行う場合には、初期化光として非常に高いパワーが必要となってしまう。
或いは、バルク層102の記録感度を高めることでより低パワーでの初期化を可能とすることも考えられるが、その場合には、微細なマークを形成することが非常に困難となってしまうという問題が生じる。
【0017】
これらの点より、従来のネガ型マイクロホログラム方式としても、現状においてはその実現化が困難なものとなっている。
【0018】
本発明は以上のような問題点に鑑み為されたものであり、従来のネガ型マイクロホログラム方式で必要とされていた初期化処理を不要として、上述のような初期化処理に係る問題点の解消を図り、それによってネガ型マイクロホログラム方式の実現性をさらに高めることをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題の解決のため、本発明では光記録媒体として以下のように構成することとした。
すなわち、本発明の光記録媒体は、透明で且つそれぞれ屈折率が僅かに異なる第1の層と第2の層とが交互に積層されることで所定の格子ピッチを有する回折格子で構成された記録層と、透明で且つ上記記録層よりも厚みが大とされた中間層とが交互に積層されているものである。
【0020】
また、本発明では光記録媒体の製造方法として以下のようにすることとした。
すなわち、本発明の製造方法は、記録層と中間層とが交互に積層された光記録媒体の製造方法であって、透明で且つそれぞれ屈折率が僅かに異なる第1の材料と第2の材料とをそれぞれ所定の厚みで交互に複数回積層することで、所定の格子ピッチを有する回折格子で構成された上記記録層を生成する記録層生成工程を有する。
また、透明で且つ上記記録層よりも厚みが大とされた上記中間層を生成する中間層生成工程を有するものである。
【0021】
また、本発明では記録方法として以下のようにすることとした。
すなわち、透明で且つそれぞれ屈折率が僅かに異なる第1の層と第2の層とが交互に積層されることで所定の格子ピッチを有する回折格子で構成された記録層と、透明で且つ上記記録層よりも厚みが大とされた中間層とが交互に積層されている光記録媒体について、レーザ光の焦点位置を記録対象とする上記記録層に一致させた状態で記録情報に応じた上記レーザ光の発光駆動を行うことで、上記記録対象とする記録層における屈折率分布を平坦化して上記記録情報に応じた消去マークの記録を行うものである。
【0022】
また、本発明では再生方法として以下のようにすることとした。
つまり、透明で且つそれぞれ屈折率が僅かに異なる第1の層と第2の層とが交互に積層されることで所定の格子ピッチを有する回折格子で構成された記録層と、透明で且つ上記記録層よりも厚みが大とされた中間層とが交互に積層されている光記録媒体であって、上記記録層に記録情報に応じた消去マークが形成された光記録媒体について、レーザ光を再生対象とする上記記録層に合焦させた状態で照射する再生光照射ステップを有する。
また、上記再生光照射ステップにより照射した上記レーザ光の反射光を検出する反射光検出ステップを有する。
また、上記反射光検出ステップによる上記反射光の検出結果に基づいて、上記再生対象とする記録層に記録された情報を再生する情報再生ステップを有するものである。
【0023】
上記のようにして本発明の光記録媒体には、透明で且つそれぞれ屈折率が僅かに異なる第1の層と第2の層とが交互に積層されることで形成された回折格子による記録層が予め設けられている。これにより、従来のネガ型マイクロホログラム方式で行っていた記録層形成のための初期化処理は不要とすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、従来のネガ型マイクロホログラム方式にて必要とされていた記録層(回折格子)形成のための初期化処理を不要とすることができ、その結果、記録開始までに要する時間の大幅な短縮化が図られる。
また、初期化処理が不要とされることで、 従来のネガ型マイクロホログラム方式が抱えていた初期化光のパワーやバルク層の記録感度に関する問題も解消することができる。
【0025】
このようにして本発明によれば、ネガ型マイクロホログラム方式を採用する場合において、従来の手法が抱えていた問題点を解消することができ、結果、ネガ型マイクロホログラム方式による多層記録媒体(大容量記録媒体)の実現性をさらに高めることができる。
【0026】
また、本発明の記録方法、再生方法によれば、本発明の光記録媒体に対する記録、再生を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施の形態の光記録媒体の断面構造図である。
【図2】実施の形態の光記録媒体に形成される記録層の断面構造を示した図である。
【図3】ポジ型マイクロホログラム方式において記録されるマイクロホログラム(記録マーク)について説明するための図である。
【図4】マイクロホログラム記録マークの回折効率について説明するための図である。
【図5】消去マークについて説明するための図である。
【図6】それぞれ異なる光強度によるレーザ光を用いて記録を行った場合における、消去マークとその再生信号とを対比して示した図である。
【図7】実施の形態の光記録媒体の第1の製造方法について説明するための図である。
【図8】記録層の製造方法の一例を示した図である。
【図9】実施の形態の光記録媒体の第2の製造方法について説明するための図である。
【図10】実施の形態としてのサーボ制御の手法について説明するための図である。
【図11】実施の形態の記録再生装置の内部構成を示した図である。
【図12】バルク記録方式について説明するための図である。
【図13】マイクロホログラム方式について説明するための図である。
【図14】ネガ型マイクロホログラム方式について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明していく。
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
<1.実施の形態の光記録媒体>
[1-1.光記録媒体の構成]
[1-2.消去マークと再生信号]
<2.光記録媒体の製造方法>
<3.実施の形態の光記録媒体が奏する効果>
<4.サーボ制御について>
<5.記録再生装置の構成>
<6.変形例>
【0029】
<1.実施の形態の光記録媒体>
[1-1.光記録媒体の構成]
図1は、本発明の光記録媒体の一実施形態としてのネガ型記録媒体1の断面構造図を示している。
先ず前提として、本実施の形態のネガ型記録媒体1は、ディスク状の記録媒体とされ、回転駆動されるネガ型記録媒体1に対するレーザ光照射が行われてマーク記録(情報記録)が行われる。また、記録情報の再生としても、回転駆動されるネガ型記録媒体1に対してレーザ光を照射して行われる。
【0030】
図1に示されるように、本実施の形態の記録媒体1には、上層側から順にカバー層2、選択反射膜3が形成されると共に、その下層側には、中間層4と記録層5とが交互に繰り返し積層されている。
ここで、本明細書において「上層側」とは、後述する記録再生装置側からのレーザ光が入射する面を上面としたときの上層側を指す。
【0031】
カバー層2は、例えばポリカーボネートやアクリルなどの樹脂で構成され、図示するようにその下面側には、記録/再生位置を案内するための案内溝の形成に伴う凹凸の断面形状が与えられている。
上記案内溝としては、連続溝(グルーブ)、又はピット列で形成される。例えば案内溝がグルーブとされる場合は、当該グルーブを周期的に蛇行させて形成することで、該蛇行の周期情報により位置情報(半径位置情報や回転角度情報等)の記録を行うことができる。
カバー層2は、このような案内溝(凹凸形状)が形成されたスタンパを用いた射出成形などにより生成される。
【0032】
また、上記案内溝が形成された上記カバー層2の下面側には、選択反射膜3が成膜される。
ここで、バルク記録方式では、記録層としてのバルク層に対してマーク記録を行うための記録光(第1レーザ光)とは別に、上記のような案内溝に基づきトラッキングやフォーカスのエラー信号を得るためのサーボ光(第2レーザ光)を別途に照射するものとされている。
このとき、仮に、上記サーボ光が記録層に到達してしまうと、マーク記録に悪影響を与える虞がある。このため、サーボ光は反射し、記録光は透過するという選択性を有する反射膜が必要とされている。
従来よりバルク記録方式では、記録光とサーボ光とはそれぞれ波長の異なるレーザ光を用いるようにされており、これに対応すべく、上記選択反射膜3としては、サーボ光と同一の波長帯の光は反射し、それ以外の波長による光は透過するという、波長選択性を有する選択反射膜が用いられる。
【0033】
そして、本実施の形態のネガ型記録媒体1においては、上記選択反射膜3の下層側に対して、中間層4と記録層5との繰り返し層が形成されている。すなわち、選択反射膜3の下層側においては、中間層4→記録層5の順で各層が交互に積層されている。
【0034】
ここで、図1では図示の都合上、選択反射膜3よりも下層側の層(従来のバルク層102に相当する層)において、記録層5が5層(中間層4が6層)形成される場合を例示しているが、実際には大記録容量化のために、記録層5は数十層程度(例えば20層程度)形成することになる。
【0035】
中間層4は、光透過性を有する透明な材料で構成される。例えば中間層4の材料としては、UV硬化樹脂などを挙げることができる。
【0036】
また、記録層5は、透明で且つそれぞれ屈折率が僅かに異なる第1の層と第2の層とが所定の厚みで交互に積層されて形成された層となる。
【0037】
図2は、記録層5の断面構造図を示している。
図2において、記録層5は、第1の屈折率が設定された第1屈折率設定層5Aと、上記第1の屈折率とは僅かに異なる第2の屈折率が設定された第2屈折率設定層5Bとが交互に積層されて成る。これら第1屈折率設定層5Aと第2屈折率設定層5Bの形成ピッチPは一定である。換言すれば、第1屈折率設定層5Aと第2屈折率設定層5Bの層厚はそれそれ同じである。
【0038】
上記第1屈折率設定層5Aの屈折率は、図1に示した中間層4の屈折率とは異なる値に設定される。一方で第2屈折率設定層5Bの屈折率は、中間層4の屈折率と同じ値に設定する。
具体的に本例の場合、中間層4及び第2屈折率設定層5Bの屈折率は例えば1.50に設定される。これに対し、第1屈折率設定層5Aの屈折率は例えば1.52に設定される。従ってこの場合の記録層5における第1屈折率設定層5Aと第2屈折率設定層5Bとの屈折率差(Δnとする)は、Δn=0.02となる。
ここで、上記のような各層の屈折率の設定により、図1に示すネガ型記録媒体1全体で見れば、選択反射膜3の下層側をバルク層としたとき、当該バルク層においては記録層5中の第1屈折率設定層5Aの屈折率のみが1.52で、それ以外の部分の屈折率は1.50とされていることになる。
【0039】
上記のようにして記録層5は、屈折率が僅かに異なる第1屈折率設定層5Aと第2屈折率設定層5Bとが所定のピッチPで交互に積層された構造を有する。このような構造により、記録層5は回折格子として機能する。具体的には、レーザ光が当該記録層5に合焦するようにして照射された際、記録層5は反射体として機能する。
【0040】
ここで、本実施の形態において、記録層5における第1屈折率設定層5A、第2屈折率設定層5Bの形成ピッチP(すなわち回折格子の格子ピッチP)や、記録層5の厚みtrに関しては、従来のポジ型マイクロホログラム方式で形成されるマイクロホログラム(回折格子)に合わせた数値を設定するものとしている。
【0041】
図3は、ポジ型マイクロホログラム方式において記録されるマイクロホログラム(記録マーク)について説明するための図であり、図3(a)はマイクロホログラム記録マークのパターンを、図3(b)はその屈折率分布(強度分布)を示している。
ポジ型マイクロホログラム方式によるマーク記録を行う場合において、図3(a)に示される記録マークの幅wは、記録光の出力端となる対物レンズのNAと当該記録光の波長λとにより定まる。具体的には、
w=λ/NA
で表される。
【0042】
ここで、本出願人は、ポジ型マイクロホログラム方式に関して、対物レンズのNA及び波長λについてはNA=0.85、λ=400nmを設定した実験を進めている。これは、現状のBD(Blu-ray Disc)のシステムとほぼ同様の数値である。
これらのNA、λの設定により、従来のポジ型マイクロホログラム方式においては、記録マークの幅wがおよそ0.47μmとされている。
【0043】
また、ポジ型マイクロホログラム方式において、記録マークとして形成される回折格子の屈折率分布は、図3(b)に示すようになる。
この図3(b)に示される記録マークの深さ方向における長さL(以下、マーク深さLとする)は、
L=4λn/NA4
により与えられる。但し上式において、上記nは記録マークが形成されるバルク層の屈折率を表す。
従来のポジ型マイクロホログラム方式において、バルク層の屈折率nはおよそ1.50程度に設定されており、これによると従来のポジ型マイクロホログラム方式において、マーク深さLはおよそ3.3μmとなる。
【0044】
また、図3(b)に「Pitch」として示す記録マークの格子ピッチは、
Pitch=λ/2n
となる。従って上記により例示した従来のポジ型マイクロホログラム方式で設定されるλ=400nm、n=1.50の条件によれば、格子ピッチはおよそ0.13μmとなる。
【0045】
ここで、上記のようにして従来のポジ型マイクロホログラム方式においては、記録マーク(回折格子)の格子ピッチが0.13μm程度とされており、これに対応させて本実施の形態のネガ型記録媒体1においても、記録層5における第1屈折率設定層5A、第2屈折率設定層5Bの形成ピッチP、すなわち第1屈折率設定層5A、第2屈折率設定層5Bの厚みは、0.13μmに設定するものとしている。
このとき、上記のようにして従来のマイクロホログラム記録マークのマーク深さLはおよそ3.3μm程度であるので、記録層5における層数は、3.3μm/0.13μmより26層程度あればよい。例えば本例では、記録層5の層数は26層とし、従って記録層5の厚みtrはおよそ3.38μm程度とされる。
なお、記録層5における層数や記録層5の厚みtrは再生信号の強度に影響を与えると同時に、記録マーク(消去マーク)の深さ方向の制限にもなる。つまり層間のクロストークを抑える場合には記録層5における層数や厚みtrを減らす方が望ましい場合がある。
【0046】
ちなみに、図4は、マイクロホログラム記録マークの回折効率について説明するための図であり、図4(a)では対物レンズのNA(開口数)と回折効率(ηとする)との関係を、また図4(b)は屈折率差Δnと回折効率ηとの関係を示している。
なお、図4(a)はΔn=0.02、バルク層屈折率=1.55のときの結果を表し、図4(b)はNA=0.55、λ=405nmのときの結果を表している。
【0047】
図4(a)に示されるように、回折効率ηはNAに対して反比例する関係となる。
また、注意すべきは、図4(b)に示されるように、回折効率ηは回折格子における屈折率差Δnに対して比例する関係になるという点である。
【0048】
ここで、ネガ型マイクロホログラム方式を採用する本例の場合において、記録層5としての回折格子における回折効率が大となるということは、その分、より下側に形成される記録層5に対してレーザ光が到達し難くなる虞があるということになる。
この点より本実施の形態では、記録層5における第1屈折率設定層5Aと第2屈折率設定層5Bの屈折率差Δnは、微少となるように設定する。
このように記録層5における各層の屈折率差Δnがわずかなものとなるようにすることで、記録層数の増加に対してより有利とすることができる。
【0049】
なお確認のために述べておくと、ポジ型マイクロホログラム方式においては、記録マークとしての回折格子が2つの光が集光して形成されるので、このように形成された回折格子は、再生時において記録時に照射した光と同等の入射角による光が照射されることによって回折光(反射光)を生じるものとなる(いわゆるブラッグの法則より)。
これに対し本例のように積層により形成される回折格子は、ポジ型マイクロホログラム方式で形成される回折格子と比較してブラッグ選択性は弱まる傾向となる。このためネガ型マイクロホログラム方式では、屈折率差Δnが大とされる場合には、上述のように下層側に形成される記録層5に対してレーザ光が到達し難くなる虞がある。
【0050】
説明を図1に戻す。
上述もしたように本実施の形態のネガ型記録媒体1においては、記録層5と記録層5との間に、中間層4が挿入された構造となっている。
本実施の形態において、中間層4の厚みについては10μm以上に設定するものとしている。このことで、各記録層5の間でのクロストークの防止が図られるようにしている。
具体的に本例の場合、中間層4の厚みは10μmである。
【0051】
[1-2.消去マークと再生信号]
上記により説明した本実施の形態としてのネガ型記録媒体1に対しては、記録対象とする記録層5に対してレーザ光を合焦させた状態で照射することによって、上記記録層5に対する消去マークの記録が行われる。
【0052】
図5は、このようなレーザ光照射に伴い記録層5に形成される消去マークについて説明するための図である。
図5(a)は、レーザ光をオン/オフして記録層5に対して断続的に照射した際の記録層5の様子を示した図である。また図5(b)は、上記のような断続的なレーザ光の照射に伴い記録層5に形成される消去マーク形成部分(図5(a)中の矢印A)と消去マーク非形成部分(図5(a)中の矢印B)のそれぞれにおける屈折率分布を示している。
【0053】
図5において、レーザ光が記録層5に合焦した状態で照射されることに応じては、該レーザ光の集光部分が高温に熱せられることに応じて、第1屈折率設定層5Aと第2屈折率設定層5Bとが混ざり、その結果記録層5における屈折率分布が平坦化される。具体的に、レーザ光の集光部分においては、第1屈折率設定層5A(n=1.52)と第2屈折率設定層5B(n=1.50)の屈折率が近づく方向に変化し、その結果レーザ光集光部分における屈折率はそれらの中間値(n=1.51)に変化する。
このように屈折率分布が平坦化された部分では、記録層5における他の部分(屈折率差Δnを有する部分)と比較して、反射率が低下することになる。つまりこの結果、レーザ光の集光部分にて、いわゆる消去マークが形成される。
【0054】
このとき、レーザ光照射に伴う上記屈折率分布の平坦化は、図5(b)の右側に示す記録部(図5(a)におけるBの部分)の屈折率分布が表すように、深さ方向において所要の分布を有するようにして生じる。具体的に上記屈折率分布の平坦化は、レーザ光の焦点位置付近をピークとした分布を持つようにして生じる。
なお、図5(b)では図示の都合から深さ方向における分布のみを示しているが、記録方向(ビーム移動方向)においても同様に焦点位置付近を中心とする分布が生じることになる。
ここで、図5(b)において、消去マーク(上記平坦化部分)の分布は、レーザ光の光強度の2乗に比例した分布として計算したものである。
【0055】
記録層5に対するレーザ光照射により、上記により説明したような消去マークが形成される。
このようにして形成される消去マークは、照射するレーザ光の光強度(パワー)に応じてその形成度合いが変化する。
図6は、それぞれ異なる光強度によるレーザ光を用いて記録を行った場合における、消去マークとその再生信号とを対比して示した図である。
この図6においては、図中の左側における(a)(b)(c)図により或る光強度αにより記録を行った場合の結果を示し、右側における(d)(e)(f)図では上記光強度αよりも大となる光強度βにより記録を行った場合の結果を示している。
図6において、(a)及び(d)図は、形成された消去マークの様子を示し、(b)及び(e)図は記録した消去マークについての再生信号のアイパターンを示している。また(c)及び(f)図は再生信号波形を示している。
【0056】
レーザ光の光強度が大となることに応じては、先の図5(b)に示したような平坦化部分の分布の裾野部分がより急峻化する傾向となる。すなわち、仮に、図5(b)に示す平坦化部分の分布が光強度αによる記録を行った際のものであるとすれば、より大となる光強度βによる記録を行った際には、上記分布の裾野の傾斜が図5(b)に示すものよりも急峻化するものである。
図6(a)と図6(d)とを対比して、より大となる光強度βにより記録された図6(d)の消去マークの方が、光強度αにより記録された図6(a)の消去マークよりもエッジ部分が強調されているのはこのためである。
【0057】
そして、このように光強度が大となることに応じてより明確な消去マークが形成されることで、再生信号としても、光強度が大である場合の方がより良好な信号が得られる。
具体的に、アイパターンについては、光強度αによる記録を行った図6(b)の場合よりも光強度βによる記録を行った図6(e)の方が「アイ」が開いていることが確認できる。
また再生信号波形としても、図6(c)(f)を比較すると、光強度βにより記録を行った図6(f)の場合において所要の中心レベルを基準に振幅が大小する波形が得られており、図6(c)の場合よりも図6(f)の場合の方が2値化に適した良好な波形が得られるものとなる。
【0058】
<2.光記録媒体の製造方法>
続いて、図1に示したネガ型記録媒体1の製造方法について説明する。
図7は、第1の製造方法について説明するための図である。
先ず、ネガ型記録媒体1の製造にあたっては、カバー層2の生成工程として、先に述べたようなスタンパを用いた射出成形によって、一方の面に対して案内溝が形成されたカバー層2を生成する。
次いで、反射膜成膜工程として、カバー層2の上記案内溝が形成された面に対して、例えばスパッタリングや蒸着などによって選択反射膜3を成膜する(図7(a))。
【0059】
このようにカバー層2に選択反射膜3を成膜した後は、図7(b)に示すように、上記選択反射膜3上に対して中間層4を積層する。この場合、中間層4の積層工程としては、中間層4としてのUV硬化樹脂を上記選択反射膜3上にスピンコートする。そしてその後、紫外線照射を行うことで、上記UV硬化樹脂を硬化させて中間層4を形成する。
【0060】
このように中間層4を積層した後は、図7(c)に示す記録層形成工程として、上記中間層4上に第1屈折率設定層5A、第2屈折率設定層5Bを所定回数交互に積層する。なお図中においては図示の都合上、記録層5が5つの層(3層の第1屈折率設定層5Aと2層の第2屈折率設定層5B)から成る場合を例示したが、先の説明からも理解されるように本例の場合における記録層5内の形成層数は実際には26層程度とされるものである。
【0061】
ここで、先の説明によると、本例の場合における第1屈折率設定層5A、第2屈折率設定層5Bのそれぞれの厚みは0.13μm程度と比較的薄いものとされている。このように比較的薄い第1屈折率設定層5A、第2屈折率設定層5Bの積層に有利な手法として、この場合の記録層形成工程では、次の図8に示すような積層手法を採るものとしている。
【0062】
この場合の記録層形成工程では、図8(a)に示すような真空チャンバー6を用いたいわゆる真空成膜手法により第1屈折率設定層5A、第2屈折率設定層5Bを積層する。具体的にこの場合は、スパッタリング法により第1屈折率設定層5A、第2屈折率設定層5Bを積層する。
【0063】
図示するように真空チャンバー6内には、回転トレイ7が設けられており、該回転トレイ7上に対して中間層4が積層された積層ディスク9が複数セットされる。
図8(b)は、上記回転トレイ7上に複数の積層ディスク9がセットされた様子を示しているが、この図に示すように、この場合の回転トレイ7には4つの積層ディスク9がそれぞれの配置位置が重ならないように十分に離間してセットされる。
【0064】
図8(a)に戻り、真空チャンバー6内では、上記回転トレイ7上にセットされた積層ディスク9と対向する側となる位置に、第1屈折率設定層5Aの形成材料である第1ターゲット8−1、及び第2屈折率設定層5Bの形成材料となる第2ターゲット8−2が配置される。
図示もしているように、本例の場合において、第1ターゲット8−1の屈折率はn=1.52、第2ターゲット8−2の屈折率はn=1.50である。
【0065】
ここで、このようにわずかな屈折率差を正確にコントロールするために、本例では、第1ターゲット8−1、第2ターゲット8−2の材料を以下のように選定する。
例えば光ファイバーの分野においては、ファイバー線内で光を閉じこめて伝搬するためにコアとクラッドに数パーセント程度の屈折率差を与える必要があるが、そのために、コアとクラッドの母材料としてシリカガラスを用い、コアには屈折率を上げるためにGe(ゲルマニウム)やP(リン)を添加し、クラッドには屈折率を下げるためにB(ホウ素)やF(フッ素)などを添加するということが行われる。
本例ではこれに倣い、第1ターゲット8−1(第1屈折率設定層5A)としてはシリカガラスにGeやPを添加し、第2ターゲット8−2(第2屈折率設定層5B)としてはシリカガラスにBやFを添加することで、それぞれ屈折率を所定値に正確にコントロールした材料を用いる。
【0066】
この場合、積層ディスク9に対する各層の成膜は、次のようにして行う。
先ず前提として、真空チャンバー6内には、例えばアルゴンガス等の不活性ガスが充填されている。この状態において、回転トレイ7を回転させて、対象とする積層ディスク9を第1ターゲット8−1と対向する位置に配置させ、上記対象とする積層ディスク9と第1ターゲット8−1との間に直流高電圧を印加する。これにより上記対象とする積層ディスク9に対して、第1ターゲット8−1としての材料が付着し、第1屈折率設定層5Aが積層される。
以降も同様に、回転トレイ7を回転させて、回転トレイ7上の残りの積層ディスク9を逐次第1ターゲット8−1と対向する位置に配置して電圧印加を行うことで、各積層ディスク9に第1屈折率設定層5Aを成膜する。
そして、回転トレイ7上の全ての積層ディスク9に第1屈折率設定層5Aが積層した後、回転トレイ7を回転させて各積層ディスク9を逐次第2ターゲット8−2に対向する位置に配置しつつ電圧印加を行うことで、各積層ディスク9に第2ターゲット8−2としての材料を付着させ、第2屈折率設定層5Bを積層する。
このように第1ターゲット8−1と第2ターゲット8−2としての材料の交互の成膜を所定回数繰り返すことで、第1屈折率設定層5Aと第2屈折率設定層5Bとがそれぞれ所要数積層された記録層5を形成(生成)する。
【0067】
図7に戻り、図7(c)の記録層形成工程を実行した後は、図7(d)に示すように、形成された記録層5上に対して先の図7(b)にて説明した手法と同様の手法により中間層4を積層する。
図示による説明は省略するが、この図7(d)による中間層積層工程の後は、先に説明した記録層形成工程と、中間層形成工程とを交互に所定回数繰り返す。これにより、図1に示したように中間層4と記録層5とが交互に所要数積層されたネガ型記録媒体1が製造される。
【0068】
ここで、上記による説明では、第1屈折率設定層5A,第2屈折率設定層5Bの材料としてシリカガラスを用いた材料を例示したが、これは実現可能な材料の一例を挙げたものに過ぎず、もちろん他の材料を用いることもできる。
【0069】
図9は、第1屈折率設定層5A、第2屈折率設定層5Bの材料として樹脂材料を用いる場合に対応した製造方法(第2の製造方法とする)を示している。
この場合、図9(a)に示すカバー層2の生成及び反射膜成膜工程は、図7(a)にて説明したものと同様となる。また図9(b)に示す中間層積層工程としても図7(b)にて説明したものと同様となる。
【0070】
この場合、図9(c)に示す記録層形成工程では、樹脂材料としての第1屈折率設定層5Aと第2屈折率設定層5Bとをスピンコートにより交互に所定回数積層する。具体的には、中間層4上に第1屈折率設定層5Aとしての屈折率を有するUV硬化樹脂をスピンコートしその後紫外線照射を行う。さらに、これにより積層された第1屈折率設定層5A上に第2屈折率設定層5Bとしての屈折率を有するUV硬化樹脂を同様にスピンコートし紫外線照射を行う。このようなスピンコート及び紫外線照射による第1屈折率設定層5A・第2屈折率設定層5Bの積層を所定回数繰り返すことで、所定層数を有する記録層5が形成される。
【0071】
上記のように記録層5を形成した後は、中間層積層工程を行って上記記録層5上に中間層4を積層し(図9(d))、その後、図9(c)にて説明した手法と同様の手法により記録層形成工程を行うことで、上記中間層4上に記録層5を形成する(図9(e))。
これら中間層積層工程・記録層形成工程を所定回数繰り返すことで、図1に示したネガ型記録媒体1が製造される。
【0072】
<3.実施の形態の光記録媒体が奏する効果>
上記により説明してきたように、本実施の形態のネガ型記録媒体1には、透明で且つそれぞれ屈折率が僅かに異なる第1の層と第2の層とが交互に積層されることで形成された回折格子による記録層が予め設けられている。これにより、従来のネガ型マイクロホログラム方式で行っていた記録層形成のための初期化処理は不要とすることができる。
【0073】
このように記録層(回折格子)形成のための初期化処理を不要とすることができれば、その分、記録開始までに要する時間の大幅な短縮化が図られる。
また、初期化処理が不要とされることで、 従来のネガ型マイクロホログラム方式が抱えていた初期化光のパワーやバルク層の記録感度に関する問題も解消することができる。
【0074】
このようにして本実施の形態のネガ型記録媒体1によれば、従来のネガ型マイクロホログラム方式が抱えていた問題点を解消することができ、結果、ネガ型マイクロホログラム方式による多層記録媒体(大容量記録媒体)の実現性をさらに高めることができる。
【0075】
<4.サーボ制御について>
続いて、上記により説明した実施の形態としてのネガ型記録媒体1を用いた記録/再生を行う際のサーボ制御について、図10を参照して説明しておく。
図10において、先にも述べたようにバルク記録方式では、記録層としてのバルク層に対してマーク記録を行うための記録光(第1レーザ光)と、案内溝に基づきトラッキングやフォーカスのエラー信号を得るためのサーボ光(第2レーザ光)とを別途に照射するものとされている。
後述もするように、これら第1レーザ光と第2レーザ光は、共通の対物レンズを介してネガ型記録媒体1に照射されることになる。
【0076】
ここで、ネガ型記録媒体1において、消去マークの記録対象位置である記録層5は、単に屈折率差Δnが与えられた層であり、ピットやグルーブなどによる案内溝が形成されるものではない。このため、未だ消去マークの形成されていない記録時においては、第1レーザ光を用いたトラッキングサーボを行うことはできないことになる。
この点より、記録時におけるトラッキングサーボに関しては、第2レーザ光を用いて行うものとする。すなわち、選択反射膜3に対して合焦させた第2レーザ光の反射光に基づくトラッキングエラー信号の生成を行い、該トラッキングエラー信号に基づき対物レンズのトラッキング方向の位置制御を行うものである。
【0077】
一方、記録時において、フォーカスサーボに関しては、第1レーザ光を用いて行う。
すなわち、第1レーザ光が記録層5に合焦した状態と記録層5以外に合焦した状態とでは、第1レーザ光の反射光に強度差が生じるので、この点を利用し、第1レーザ光の反射光を用いたフォーカスサーボ制御を行うものである。
【0078】
また、既に消去マークの記録が行われたネガ型記録媒体1についての再生時には、トラッキングサーボ、フォーカスサーボ共に、第1レーザ光の反射光を用いて行う。換言すれば、再生時における第2レーザ光の照射は不要とできる。
【0079】
ここで、上記の説明によると、第1レーザ光と第2レーザ光とは共通の対物レンズを介してネガ型記録媒体1に照射され、これに対応して記録時には、第1レーザ光のトラッキング方向のスポット位置の制御が、第2レーザ光の反射光に基づく上記対物レンズの位置制御によって自動的に行われるものとなる。換言すれば、上記共通の対物レンズを、第2レーザ光の反射光に基づき生成したトラッキングエラー信号に基づき駆動することで、第2レーザ光の反射光に基づき行ったトラッキングサーボ制御が、第1レーザ光側にも等しく作用するものである。
【0080】
但し、ここで注意すべきは、フォーカス方向に関しては、第1レーザ光の合焦位置と第2レーザ光の合焦位置とをそれぞれ異なる位置とする必要があるという点である。つまり図10を参照して理解されるように、第2レーザ光としては、案内溝による凹凸が形成された選択反射膜3からの反射光に基づくトラッキングエラー信号の生成が適正に行われるようにすべく、その合焦位置は選択反射膜3上に一致させるべきものであり、一方で第1レーザ光としては、その合焦位置は記録対象とする記録層5に対して設定されるべきものとなる。
このような点を考慮すると、フォーカス方向の制御については、第1レーザ光と第2レーザ光とで、それぞれ独立した制御を行わなければならないことになる。
【0081】
上述のようにして、この場合における第1レーザ光のフォーカス制御は、記録時も再生時も共に第1レーザ光の反射光を利用して行われることになる。この点を考慮して本例では、第1レーザ光のフォーカス制御は上記共通の対物レンズの駆動により行い、第2レーザ光のフォーカス制御については、別途、第2レーザ光の合焦位置を独立して制御する機構を設けて、該機構を駆動することで行う(図11における第2レーザ用フォーカス機構30が該当)。
【0082】
以上をまとめるに、本実施の形態の場合のサーボ制御は、以下のようにして行われる。
・第1レーザ光側
記録時・・・フォーカスサーボは第1レーザ光の反射光を用いて対物レンズを駆動して行う(トラッキングサーボについては第2レーザ光の反射光を用いた対物レンズの駆動が行われることで自動的に行われる)
再生時・・・フォーカスサーボ、トラッキングサーボ共に、第1レーザ光の反射光を用いて対物レンズを駆動して行う。
・第2レーザ光側
記録時・・・フォーカスサーボは第2レーザ光の反射光を用いて第2レーザ用フォーカス機構を駆動して行い、トラッキングサーボは第2レーザ光の反射光を用いて対物レンズを駆動して行う。
再生時・・・第2レーザ光の照射自体は不要とできる。
【0083】
<5.記録再生装置の構成>
図11は、図1に示したネガ型記録媒体1についての記録及び再生を行う記録再生装置10の内部構成を示している。
先ず、記録再生装置10に対して装填されたネガ型記録媒体1は、図中のスピンドルモータ(SPM)39により回転駆動される。
そして、記録再生装置10には、このように回転駆動されるネガ型記録媒体1に対して第1レーザ光、第2レーザ光を照射するための光学ピックアップOPが設けられる。
【0084】
光学ピックアップOP内には、消去マークによる情報記録、及び消去マークにより記録された情報の再生を行うための第1レーザ光の光源である第1レーザ11と、前述したサーボ光としての第2レーザ光の光源である第2レーザ25とが設けられる。
ここで、前述のように第1レーザ光と第2レーザ光とは、それぞれ波長が異なる。本例の場合、第1レーザ光の波長はおよそ400nm程度(いわゆる青紫色レーザ光)、第2レーザ光の波長はおよそ650nm程度(赤色レーザ光)とされる。
【0085】
また、光学ピックアップOP内には、第1レーザ光と第2レーザ光のネガ型記録媒体1への出力端となる対物レンズ21が設けられる。
さらには、上記第1レーザ光のネガ型記録媒体1からの反射光を受光するための第1フォトディテクタ(図中PD-1)24と、第2レーザ光のネガ型記録媒体1からの反射光を受光するための第2フォトディテクタ(図中PD-2)33とが設けられる。
【0086】
その上で光学ピックアップOP内においては、上記第1レーザ11より出射された第1レーザ光を上記対物レンズ21に導くと共に、上記対物レンズ21に入射した上記ネガ型記録媒体1からの第1レーザ光の反射光を上記第1フォトディテクタ24に導くための光学系が形成される。
具体的に、上記第1レーザ11より出射された第1レーザ光は、コリメーションレンズ12を介して平行光となるようにされた後、ミラー13にてその光軸が90度折り曲げられて偏光ビームスプリッタ14に入射する。偏光ビームスプリッタ14は、このように第1レーザ11より出射され上記ミラー13を介して入射した第1レーザ光については透過するように構成されている。
【0087】
上記偏光ビームスプリッタ14を透過した第1レーザ光は、液晶素子15及び1/4波長板16を通過する。
ここで、上記液晶素子15は、例えばコマ収差や非点収差などのいわゆる軸外収差の補正を行うために設けられたものである。
【0088】
上記1/4波長板16を通過した第1レーザ光は、レンズ17及びレンズ18から成るエキスパンダに入射する。このエキスパンダは、上記レンズ17が可動レンズ、上記レンズ18が固定レンズとされ、図中のレンズ駆動部19によって上記レンズ17が第1レーザ光の光軸に平行な方向に駆動されることで、第1レーザ光についての球面収差補正を行う。
【0089】
上記エキスパンダを介した第1レーザ光は、ダイクロイックミラー20に入射する。ダイクロイックミラー20は、第1レーザ光と同波長帯の光は透過し、それ以外の波長による光は反射するように構成されている。従って上記のようにして入射した第1レーザ光は、ダイクロイックミラー20を透過する。
【0090】
上記ダイクロイックミラー20を透過した第1レーザ光は、対物レンズ21を介して記録媒体1に対して照射される。
対物レンズ21に対しては、当該対物レンズ21をフォーカス方向(ネガ型記録媒体1に対して接離する方向)、及びトラッキング方向(上記フォーカス方向に直交する方向:ネガ型記録媒体1の半径方向)に変位可能に保持する2軸機構22が設けられる。
当該2軸機構22は、後述する第1レーザ用フォーカスサーボ回路36、トラッキングサーボ回路37からフォーカスコイル、トラッキングコイルにそれぞれ駆動電流が与えられることで、対物レンズ21をフォーカス方向、トラッキング方向にそれぞれ変位させる。
【0091】
上記のようにしてネガ型記録媒体1に対して第1レーザ光が照射されることに応じては、ネガ型記録媒体1より上記第1レーザ光の反射光が得られる。このようにして得られた第1レーザ光の反射光は、対物レンズ21を介してダイクロイックミラー20に導かれ、当該ダイクロイックミラー20を透過する。
ダイクロイックミラー20を透過した第1レーザ光の反射光は、前述したエキスパンダを構成するレンズ18→レンズ17を介した後、1/4波長板16→液晶素子15を介して偏光ビームスプリッタ14に入射する。
【0092】
ここで、このように偏光ビームスプリッタ14に入射する第1レーザ光の反射光(復路光)は、1/4波長板16による作用とネガ型記録媒体1での反射の作用とにより、第1レーザ光11側から偏光ビームスプリッタ14に入射した第1レーザ光(往路光)とはその偏光方向が90度異なるようにされる。この結果、上記のようにして入射した第1レーザ光の反射光は、偏光ビームスプリッタ14にて反射される。
【0093】
このように偏光ビームスプリッタ14にて反射された第1レーザ光の反射光は、集光レンズ23を介して第1フォトディテクタ24の検出面上に集光する。
【0094】
また、光学ピックアップOP内には、上記により説明した第1レーザ光についての光学系の構成に加えて、第2レーザ25より出射された第2レーザ光を対物レンズ21に導き且つ、上記対物レンズ21に入射したネガ型記録媒体1からの第2レーザ光の反射光を第2フォトディテクタ33に導くための光学系が形成される。
図示するように上記第2レーザ25より出射された第2レーザ光は、コリメーションレンズ26を介して平行光となるようにされた後、偏光ビームスプリッタ27に入射する。偏光ビームスプリッタ27は、このように第2レーザ25→コリメーションレンズ26を介して入射した第2レーザ光(往路光)は透過するように構成される。
【0095】
上記偏光ビームスプリッタ27を透過した第2レーザ光は、1/4波長板28を介して第2レーザ用フォーカスレンズ29に入射する。
図示するように第2レーザ用フォーカスレンズ29に対しては、第2レーザ用フォーカス機構30が設けられる。この第2レーザ用フォーカス機構30は、上記第2レーザ用フォーカスレンズ29を、上記第2レーザ光の光軸に平行な方向に変位可能に保持する共に、内部に備えられたフォーカスコイルに駆動電流が与えられたことに応じて上記第2レーザ用フォーカスレンズ29を駆動する。
【0096】
上記第2レーザ用フォーカスレンズ29を介した第2レーザ光は、上記第2レーザ用フォーカス機構30の駆動状態に応じた位置に焦点を結んだ後、レンズ31を介して平行光となるようにされてダイクロイックミラー20に入射する。
【0097】
先に述べたように、ダイクロイックミラー20は、第1レーザ光と同波長帯の光は透過し、それ以外の波長による光は反射するように構成されている。従って上記第2レーザ光はダイクロイックミラー20にて反射され、図示するように対物レンズ21を介してネガ型記録媒体1に照射される。
【0098】
また、このようにネガ型記録媒体1に第2レーザ光が照射されたことに応じて得られる当該第2レーザ光の反射光は、対物レンズ21を介し、ダイクロイックミラー20にて反射されてレンズ31→第2レーザ用フォーカスレンズ29→1/4波長板28を介した後、偏光ビームスプリッタ28に入射する。
先の第1レーザ光の場合と同様にして、このようにネガ型記録媒体1側から入射した第2レーザ光の反射光(復路光)は、1/4波長板28の作用とネガ型記録媒体1での反射の作用とにより、往路光とはその偏光方向が90度異なるものとされ、従って復路光としての上記第2レーザ光の反射光は偏光ビームスプリッタ28にて反射される。
【0099】
このようにして偏光ビームスプリッタ28にて反射された第2レーザ光の反射光は、集光レンズ32を介して第2フォトディテクタ33の検出面上に集光する。
【0100】
ここで、図示による説明は省略するが、実際において記録再生装置10には、光学ピックアップOP全体をトラッキング方向にスライド駆動するスライド駆動部が設けられ、当該スライド駆動部による光学ピックアップOPの駆動により、レーザ光の照射位置を広範囲に変位させることができるようにされている。
【0101】
また、記録再生装置10には、上記により説明した光学ピックアップOP及びスピンドルモータ39と共に、第1レーザ用マトリクス回路34、第2レーザ用マトリクス回路35、第1レーザ用フォーカスサーボ回路36、トラッキングサーボ回路37、第2レーザ用フォーカスサーボ回路38、コントローラ40、記録処理部41、再生処理部42が設けられる。
【0102】
先ず、記録処理部41には、ネガ型記録媒体1に対して記録すべきデータ(記録データ)が入力される。記録処理部41は、入力された記録データに対してエラー訂正符号の付加や所定の記録変調符号化を施すなどして、ネガ型記録媒体1に実際に記録される「0」「1」の2値データ列である記録変調データ列を得る。
記録処理部41は、コントローラ40からの指示に応じて、このように生成した記録変調データ列に基づく第1レーザ11の発光駆動を行う。
【0103】
また、第1レーザ用マトリクス回路34は、第1フォトディテクタ24としての複数の受光素子からの出力電流に対応して電流電圧変換回路、マトリクス演算/増幅回路等を備え、マトリクス演算処理により必要な信号を生成する。
具体的には、上述した記録変調データ列を再生した再生信号に相当する高周波信号(以降、再生信号RFと称する)、サーボ制御のためのフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEを生成する。
ここで、本例においてフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEは第1レーザ光の反射光に基づくものと第2レーザ光の反射光に基づくものとの2種が存在する。以下では両者を区別するため、上記第1レーザ用マトリクス回路34にて生成されたフォーカスエラー信号FEについてはフォーカスエラー信号FE-1と称し、同様に第1レーザ用マトリクス回路34にて生成されたトラッキングエラー信号TEについてはフォーカスエラー信号TE-1と称する。
【0104】
第1レーザ用マトリクス回路34にて生成された上記再生信号RFは、再生処理部42に供給される。
また、上記フォーカスエラー信号FE-1は第1レーザ用フォーカスサーボ回路36に、トラッキングエラー信号TE-1はトラッキングサーボ回路37に供給される。
【0105】
上記再生処理部42は、第1レーザ用マトリクス回路34にて生成された上記再生信号RFについて、2値化処理や記録変調符号の復号化・エラー訂正処理など、上述した記録データを復元するための再生処理を行い、上記記録データを再生した再生データを得る。
【0106】
また、第1レーザ用フォーカスサーボ回路36は、上記フォーカスエラー信号FE-1に基づきフォーカスサーボ信号を生成し、当該フォーカスサーボ信号に基づき上述した2軸機構22のフォーカスコイルを駆動することで、第1レーザ光についてのフォーカスサーボ制御を行う。
また第1レーザ用フォーカスサーボ回路36は、コントローラ40からの指示に応じて、ネガ型記録媒体1に形成された記録層5の間の層間ジャンプ動作や所要の記録層5に対するフォーカスサーボの引き込みを行う。
【0107】
第2レーザ用マトリクス回路35は、上述した第2フォトディテクタ33としての複数の受光素子からの出力電流に対応して電流電圧変換回路、マトリクス演算/増幅回路等を備え、マトリクス演算処理により必要な信号を生成する。
具体的に第2レーザ用マトリクス回路35は、サーボ制御のためのフォーカスエラー信号FE-2、トラッキングエラー信号TE-2を生成する。
上記フォーカスエラー信号FE-2は第2レーザ用フォーカスサーボ回路38に供給され、また上記トラッキングエラー信号TE-2はトラッキングサーボ回路37に供給される。
【0108】
第2レーザ用フォーカスサーボ回路38は、上記フォーカスエラー信号FE-2に基づくフォーカスサーボ信号を生成し、当該フォーカスサーボ信号に基づいて、上述した第2レーザ用フォーカス機構30を駆動することで、第2レーザ光についてのフォーカスサーボ制御を行う。
このとき第2レーザ用フォーカスサーボ回路38は、コントローラ40からの指示に応じて、ネガ型記録媒体1に形成された選択反射膜3(案内溝形成面)へのフォーカスサーボの引き込みを行う。
【0109】
トラッキングサーボ回路37は、コントローラ40からの指示に応じて、第1レーザ用マトリクス回路34からのトラッキングエラー信号TE-1、又は第2レーザ用マトリクス回路35からのトラッキングエラー信号TE-2の何れか一方に基づくトラッキングサーボ信号を生成し、当該トラッキングサーボ信号に基づき2軸機構22のトラッキングコイルを駆動する。つまり対物レンズ21のトラッキング方向の位置制御に関して、第1レーザ光の反射光に基づくトラッキングサーボ制御、又は第2レーザ光の反射光に基づくトラッキングサーボ制御の何れか一方を実行する。
【0110】
コントローラ40は、例えばCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)などのメモリ(記憶装置)を備えたマイクロコンピュータで構成され、例えば上記ROM等に記憶されたプログラムに従った制御・処理を実行することで、記録再生装置1の全体制御を行う。
具体的にコントローラ40は、記録時においては、第1レーザ用フォーカスサーボ回路36に対する指示を行って第1レーザ光を所要の記録層5に合焦させた状態(つまり所要の記録層5を対象としたフォーカスサーボ制御を実行させた状態)で記録処理部41に対する記録指示を行うことで、上記記録層5に対する記録データに応じた消去マークの形成動作を実行させる。すなわち消去マークの形成による情報記録動作を実行させる。
ここで先に述べたように、記録時におけるトラッキングサーボ制御は、第2レーザ光の反射光に基づき行われるべきものとなる。このためコントローラ40は、記録時には、トラッキングサーボ回路37に対してトラッキングエラー信号TE-2に基づくトラッキングサーボ制御を実行するように指示を行う。
また記録時においてコントローラ40は、第2レーザ用フォーカスサーボ回路38に対してフォーカスサーボ制御の実行を指示する。
【0111】
一方再生時において、コントローラ40は、第1レーザ用フォーカスサーボ回路36に対する指示を行って、第1レーザ光を再生すべきデータが記録された記録層5に合焦させる。すなわち、第1レーザ光に関して、上記記録層5を対象としたフォーカスサーボ制御を実行させる。
またコントローラ40は、再生時には、トラッキングサーボ回路37に対してトラッキングエラー信号TE-1に基づくトラッキングサーボ制御を実行するように指示を行う。
【0112】
なお先に述べたように、再生時においては第2レーザ光の反射光に基づくサーボ制御を行うことは必須ではない。但し、例えば再生時における位置情報を、グルーブのウォブリングで記録された情報に基づき検出する、或いは、ピット列で記録された位置情報を検出するなどとした場合には、再生時に案内溝形成面(選択反射膜3)を対象とした第2レーザ光のサーボ制御を実行することもできる。
【0113】
<6.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明としてはこれまでで説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えば光記録媒体の製造方法についての説明では、中間層4をUV硬化樹脂のスピンコートで形成する場合を例示したが、中間層4としては、いわゆるHPSA(シート状のUV硬化型PSA:Pressure Sensitive Adhesive)を用いることもできる。その他、中間層4としては、例えば光硬化樹脂や熱硬化樹脂などを用いることもできる。
【0114】
また、これまでの説明では、記録層5に樹脂材料を用いる場合の例として、UV硬化樹脂を用いる例を挙げたが、UV硬化樹脂に限定されるべきものではなく光硬化樹脂であればよい。或いは、光硬化樹脂に代えて熱硬化樹脂を用いることもできる。
その他、記録層5の形成材料としては、光重合樹脂、光透明樹脂、高性能エンジニアリングプラスチック材料などを用いることができる。
【0115】
また、光記録媒体の製造方法についても実施の形態で例示したものに限定されるべきものではない。
例えば一例として、シート状の記録層5を予め生成しておき、当該シート状の記録層5を上述したHPSAで挟みこむようにして光記録媒体を製造する手法を挙げることができる。具体的には、選択反射膜3上にHPSAを載置→その上にシート状の記録層5載置→紫外線照射(接着)→HPSAを載置→その上にシート状の記録層5載置→紫外線照射(接着)・・・を繰り返すことで、ネガ型記録媒体1を製造するものである。
このような製造方法によれば、シート材の積み重ねによりネガ型記録媒体1を製造することができ、製造工程をより簡素化できる。
【0116】
また、ネガ型記録媒体1を構成する各層の層厚として例示した数値はこれに限定されるべきものではなく、実際の実施形態に応じて適宜変更が可能である。
また、記録層5における各層の屈折率nやそれらの屈折率差Δn、及び中間層4の屈折率などの数値も例示したものに限定されるべきものではなく、実際の実施形態に応じて適宜変更が可能である。
【0117】
また、これまでの説明では、記録(及び再生)位置の案内を可能とするための構成として、光記録媒体に案内溝を形成する場合を例示したが、このような案内溝に代えて、例えば相変化膜などにマークを記録した構成とすることもできる。すなわち、このように記録された位置案内用のマーク列に基づいて、フォーカス・トラッキングのエラー信号や位置情報などを得るといったものである。
【0118】
また、これまでの説明では、本発明の光記録媒体がディスク状の記録媒体とされる場合を例示したが、例えば矩形状など他の形状とすることもできる。
【符号の説明】
【0119】
1 ネガ型記録媒体、2 カバー層、3 選択反射膜、4 中間層、5 記録層、5A 第1屈折率設定層、5B 第2屈折率設定層、6 真空チャンバー、7 回転トレイ、8−1 第1ターゲット、8−2 第2ターゲット、9 積層ディスク、10 記録再生装置、11 第1レーザ、12,26 コリメーションレンズ、13 ミラー、14,27 偏光ビームスプリッタ、15 液晶素子、16,28 1/4波長板、17,18,31 レンズ、20 ダイクロイックミラー、21 対物レンズ、22 2軸機構、23,32 集光レンズ、24 第1フォトディテクタ、25 第2レーザ、29 第2レーザ用フォーカスレンズ、30 第2レーザ用フォーカス機構、33 第2フォトディテクタ、34 第1レーザ用マトリクス回路、35 第2レーザ用マトリクス回路、36 第1レーザ用フォーカスサーボ回路、37 トラッキングサーボ回路、38 第2レーザ用フォーカスサーボ回路、39 スピンドルモータ、40 コントローラ、41 記録処理部、42 再生処理部
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の照射により信号の記録/再生が行われる光記録媒体として、特に記録層と中間層とが交互に積層される光記録媒体とその製造方法に関する。
また、光記録媒体についての記録方法、再生方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2008−135144号公報
【特許文献2】特開2008−176902号公報
【特許文献3】米国特許第6,212,148号明細書
【背景技術】
【0003】
光の照射により信号の記録/再生が行われる光記録媒体として、例えばCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)などのいわゆる光ディスクが普及している。
【0004】
これらCD、DVD、BDなど現状において普及している光記録媒体の次世代を担うべき光記録媒体に関して、先に本出願人は、上記特許文献1や上記特許文献2に記載されるようないわゆるバルク記録型の光記録媒体を提案している。
【0005】
ここで、バルク記録とは、例えば図12に示すようにして少なくともカバー層101とバルク層(記録層)102とを有する光記録媒体に対し、逐次焦点位置を変えてレーザ光照射を行ってバルク層102内に多層記録を行うことで、大記録容量化を図る技術である。
【0006】
このようなバルク記録に関して、上記特許文献1には、いわゆるマイクロホログラム方式と呼ばれる記録技術が開示されている。
マイクロホログラム方式は、次の図13に示されるようにして、ポジ型マイクロホログラム方式とネガ型マイクロホログラム方式とに大別される。
マイクロホログラム方式では、バルク層102の記録材料として、いわゆるホログラム記録材料が用いられる。ホログラム記録材料としては、例えば光重合型フォトポリマ等が広く知られている。
【0007】
ポジ型マイクロホログラム方式は、図13(a)に示すように、対向する2つの光束(光束A、光束B)を同位置に集光して微細な干渉縞(ホログラム)を形成し、これを記録マークとする手法である。
【0008】
また、図13(b)に示すネガ型マイクロホログラム方式は、ポジ型マイクロホログラム方式とは逆の発想で、予め形成しておいた干渉縞をレーザ光照射により消去して、当該消去部分を記録マークとする手法である。
【0009】
これらポジ型やネガ型によるマイクロホログラム方式は、多層記録を行うにあたって非常に有利な記録方式となる。ここで、これらマイクロホログラム方式では、回折格子をマークとして用いる(ネガ型の場合はマーク非形成部分が回折格子となる)ものとしているが、当該回折格子は、そこに集光するように光が照射された際、その屈折率差によって反射体として作用するものである。このような回折格子が記録層としてのバルク層102内に形成されるマイクロホログラム方式の光記録媒体は、従来の光ディスクシステムで用いられるような屈折率の変化や膜の昇華等によってマークが形成された記録層を有する光記録媒体と比較して、照射光の集光部分以外での光透過性が高いものとなり、その結果、多層記録を行っても記録層(バルク層)の奥部まで光が届きやすいという利点がある。つまりこの点より、マイクロホログラム方式は多層記録にとって有利な記録方式となる。
【0010】
但し、上記により説明したポジ型とネガ型のマイクロホログラム方式のうち、ポジ型マイクロホログラム方式については、その実現性が非常に低いものとなる。
具体的にポジ型マイクロホログラム方式では、先の図13(a)に示したように対向する光束Aと光束Bとを同位置に集光させることで記録マーク(ホログラム)を形成することになるが、このためには、双方の光の照射位置制御に非常に高い精度が要求されることになる。このように非常に高い位置制御精度を要する点から、ポジ型マイクロホログラム方式は、その実現化のための技術的困難性が高く、また仮に実現したとしても装置製造コストの増大化は避けられないものとなり、結果として、現実的な手法とは言えないものとなる。
【0011】
これに対し、ネガ型マイクロホログラム方式は、上記のように2つの異なる光束をそれぞれ同位置に集光させるといった必要性はなく、レーザ光の照射位置制御の精度の面で技術的困難性が伴うといった問題が生じる虞はない。
【0012】
ここで、図14を参照して、ネガ型マイクロホログラム方式についてより具体的に説明しておく。
ネガ型マイクロホログラム方式では、記録動作を行う前に、図14(a)に示されるようにして予めバルク層102に対して干渉縞を形成するための初期化処理を行うことになる。具体的には、図中に示すように平行光による光束C,Dを対向して照射し、それらの干渉縞をバルク層102の全体に形成しておく。
このように初期化処理により予め干渉縞を形成しておいた上で、図14(b)に示されるようにして消去マークの形成による情報記録を行う。具体的には、任意の層位置にフォーカスを合わせた状態で記録情報に応じたレーザ光照射を行うことで、消去マークによる情報記録を行うものである。
【0013】
なお、先の図13(a)にて説明したポジ型のマイクロホログラムの原理からすると、本来、初期化処理としては、2つの光を同位置に集光させて行うべきものとなるが、このように2つの光束を集光させて初期化処理を行うとした場合は、設定した層数に応じた分だけ初期化処理を行わなければならず、現実的な手法ではなくなってしまう。そこで、上述のように初期化処理を平行光を用いて行うことで、初期化処理の大幅な時間短縮が図られるようにしている。
【0014】
このようにしてネガ型マイクロホログラム方式によれば、ポジ型マイクロホログラム方式のように2つのレーザ光を同位置に集光させるようにして照射する必要性はないものとでき、位置制御精度の面での問題点は解消されるものとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、図14にて説明した従来のネガ型マイクロホログラム方式は、記録前において必ず光記録媒体の初期化処理を行わなければならない点が問題となる。すなわち、このような初期化処理が行われる分、記録データに応じた実際の記録動作が開始されるまでに遅延が生じてしまうという問題がある。
【0016】
また、従来のネガ型マイクロホログラム方式では、上述のようにして初期化処理の短縮化にあたり平行光を用いるものとしているが、このように平行光による初期化処理を行う場合には、初期化光として非常に高いパワーが必要となってしまう。
或いは、バルク層102の記録感度を高めることでより低パワーでの初期化を可能とすることも考えられるが、その場合には、微細なマークを形成することが非常に困難となってしまうという問題が生じる。
【0017】
これらの点より、従来のネガ型マイクロホログラム方式としても、現状においてはその実現化が困難なものとなっている。
【0018】
本発明は以上のような問題点に鑑み為されたものであり、従来のネガ型マイクロホログラム方式で必要とされていた初期化処理を不要として、上述のような初期化処理に係る問題点の解消を図り、それによってネガ型マイクロホログラム方式の実現性をさらに高めることをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題の解決のため、本発明では光記録媒体として以下のように構成することとした。
すなわち、本発明の光記録媒体は、透明で且つそれぞれ屈折率が僅かに異なる第1の層と第2の層とが交互に積層されることで所定の格子ピッチを有する回折格子で構成された記録層と、透明で且つ上記記録層よりも厚みが大とされた中間層とが交互に積層されているものである。
【0020】
また、本発明では光記録媒体の製造方法として以下のようにすることとした。
すなわち、本発明の製造方法は、記録層と中間層とが交互に積層された光記録媒体の製造方法であって、透明で且つそれぞれ屈折率が僅かに異なる第1の材料と第2の材料とをそれぞれ所定の厚みで交互に複数回積層することで、所定の格子ピッチを有する回折格子で構成された上記記録層を生成する記録層生成工程を有する。
また、透明で且つ上記記録層よりも厚みが大とされた上記中間層を生成する中間層生成工程を有するものである。
【0021】
また、本発明では記録方法として以下のようにすることとした。
すなわち、透明で且つそれぞれ屈折率が僅かに異なる第1の層と第2の層とが交互に積層されることで所定の格子ピッチを有する回折格子で構成された記録層と、透明で且つ上記記録層よりも厚みが大とされた中間層とが交互に積層されている光記録媒体について、レーザ光の焦点位置を記録対象とする上記記録層に一致させた状態で記録情報に応じた上記レーザ光の発光駆動を行うことで、上記記録対象とする記録層における屈折率分布を平坦化して上記記録情報に応じた消去マークの記録を行うものである。
【0022】
また、本発明では再生方法として以下のようにすることとした。
つまり、透明で且つそれぞれ屈折率が僅かに異なる第1の層と第2の層とが交互に積層されることで所定の格子ピッチを有する回折格子で構成された記録層と、透明で且つ上記記録層よりも厚みが大とされた中間層とが交互に積層されている光記録媒体であって、上記記録層に記録情報に応じた消去マークが形成された光記録媒体について、レーザ光を再生対象とする上記記録層に合焦させた状態で照射する再生光照射ステップを有する。
また、上記再生光照射ステップにより照射した上記レーザ光の反射光を検出する反射光検出ステップを有する。
また、上記反射光検出ステップによる上記反射光の検出結果に基づいて、上記再生対象とする記録層に記録された情報を再生する情報再生ステップを有するものである。
【0023】
上記のようにして本発明の光記録媒体には、透明で且つそれぞれ屈折率が僅かに異なる第1の層と第2の層とが交互に積層されることで形成された回折格子による記録層が予め設けられている。これにより、従来のネガ型マイクロホログラム方式で行っていた記録層形成のための初期化処理は不要とすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、従来のネガ型マイクロホログラム方式にて必要とされていた記録層(回折格子)形成のための初期化処理を不要とすることができ、その結果、記録開始までに要する時間の大幅な短縮化が図られる。
また、初期化処理が不要とされることで、 従来のネガ型マイクロホログラム方式が抱えていた初期化光のパワーやバルク層の記録感度に関する問題も解消することができる。
【0025】
このようにして本発明によれば、ネガ型マイクロホログラム方式を採用する場合において、従来の手法が抱えていた問題点を解消することができ、結果、ネガ型マイクロホログラム方式による多層記録媒体(大容量記録媒体)の実現性をさらに高めることができる。
【0026】
また、本発明の記録方法、再生方法によれば、本発明の光記録媒体に対する記録、再生を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施の形態の光記録媒体の断面構造図である。
【図2】実施の形態の光記録媒体に形成される記録層の断面構造を示した図である。
【図3】ポジ型マイクロホログラム方式において記録されるマイクロホログラム(記録マーク)について説明するための図である。
【図4】マイクロホログラム記録マークの回折効率について説明するための図である。
【図5】消去マークについて説明するための図である。
【図6】それぞれ異なる光強度によるレーザ光を用いて記録を行った場合における、消去マークとその再生信号とを対比して示した図である。
【図7】実施の形態の光記録媒体の第1の製造方法について説明するための図である。
【図8】記録層の製造方法の一例を示した図である。
【図9】実施の形態の光記録媒体の第2の製造方法について説明するための図である。
【図10】実施の形態としてのサーボ制御の手法について説明するための図である。
【図11】実施の形態の記録再生装置の内部構成を示した図である。
【図12】バルク記録方式について説明するための図である。
【図13】マイクロホログラム方式について説明するための図である。
【図14】ネガ型マイクロホログラム方式について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明していく。
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
<1.実施の形態の光記録媒体>
[1-1.光記録媒体の構成]
[1-2.消去マークと再生信号]
<2.光記録媒体の製造方法>
<3.実施の形態の光記録媒体が奏する効果>
<4.サーボ制御について>
<5.記録再生装置の構成>
<6.変形例>
【0029】
<1.実施の形態の光記録媒体>
[1-1.光記録媒体の構成]
図1は、本発明の光記録媒体の一実施形態としてのネガ型記録媒体1の断面構造図を示している。
先ず前提として、本実施の形態のネガ型記録媒体1は、ディスク状の記録媒体とされ、回転駆動されるネガ型記録媒体1に対するレーザ光照射が行われてマーク記録(情報記録)が行われる。また、記録情報の再生としても、回転駆動されるネガ型記録媒体1に対してレーザ光を照射して行われる。
【0030】
図1に示されるように、本実施の形態の記録媒体1には、上層側から順にカバー層2、選択反射膜3が形成されると共に、その下層側には、中間層4と記録層5とが交互に繰り返し積層されている。
ここで、本明細書において「上層側」とは、後述する記録再生装置側からのレーザ光が入射する面を上面としたときの上層側を指す。
【0031】
カバー層2は、例えばポリカーボネートやアクリルなどの樹脂で構成され、図示するようにその下面側には、記録/再生位置を案内するための案内溝の形成に伴う凹凸の断面形状が与えられている。
上記案内溝としては、連続溝(グルーブ)、又はピット列で形成される。例えば案内溝がグルーブとされる場合は、当該グルーブを周期的に蛇行させて形成することで、該蛇行の周期情報により位置情報(半径位置情報や回転角度情報等)の記録を行うことができる。
カバー層2は、このような案内溝(凹凸形状)が形成されたスタンパを用いた射出成形などにより生成される。
【0032】
また、上記案内溝が形成された上記カバー層2の下面側には、選択反射膜3が成膜される。
ここで、バルク記録方式では、記録層としてのバルク層に対してマーク記録を行うための記録光(第1レーザ光)とは別に、上記のような案内溝に基づきトラッキングやフォーカスのエラー信号を得るためのサーボ光(第2レーザ光)を別途に照射するものとされている。
このとき、仮に、上記サーボ光が記録層に到達してしまうと、マーク記録に悪影響を与える虞がある。このため、サーボ光は反射し、記録光は透過するという選択性を有する反射膜が必要とされている。
従来よりバルク記録方式では、記録光とサーボ光とはそれぞれ波長の異なるレーザ光を用いるようにされており、これに対応すべく、上記選択反射膜3としては、サーボ光と同一の波長帯の光は反射し、それ以外の波長による光は透過するという、波長選択性を有する選択反射膜が用いられる。
【0033】
そして、本実施の形態のネガ型記録媒体1においては、上記選択反射膜3の下層側に対して、中間層4と記録層5との繰り返し層が形成されている。すなわち、選択反射膜3の下層側においては、中間層4→記録層5の順で各層が交互に積層されている。
【0034】
ここで、図1では図示の都合上、選択反射膜3よりも下層側の層(従来のバルク層102に相当する層)において、記録層5が5層(中間層4が6層)形成される場合を例示しているが、実際には大記録容量化のために、記録層5は数十層程度(例えば20層程度)形成することになる。
【0035】
中間層4は、光透過性を有する透明な材料で構成される。例えば中間層4の材料としては、UV硬化樹脂などを挙げることができる。
【0036】
また、記録層5は、透明で且つそれぞれ屈折率が僅かに異なる第1の層と第2の層とが所定の厚みで交互に積層されて形成された層となる。
【0037】
図2は、記録層5の断面構造図を示している。
図2において、記録層5は、第1の屈折率が設定された第1屈折率設定層5Aと、上記第1の屈折率とは僅かに異なる第2の屈折率が設定された第2屈折率設定層5Bとが交互に積層されて成る。これら第1屈折率設定層5Aと第2屈折率設定層5Bの形成ピッチPは一定である。換言すれば、第1屈折率設定層5Aと第2屈折率設定層5Bの層厚はそれそれ同じである。
【0038】
上記第1屈折率設定層5Aの屈折率は、図1に示した中間層4の屈折率とは異なる値に設定される。一方で第2屈折率設定層5Bの屈折率は、中間層4の屈折率と同じ値に設定する。
具体的に本例の場合、中間層4及び第2屈折率設定層5Bの屈折率は例えば1.50に設定される。これに対し、第1屈折率設定層5Aの屈折率は例えば1.52に設定される。従ってこの場合の記録層5における第1屈折率設定層5Aと第2屈折率設定層5Bとの屈折率差(Δnとする)は、Δn=0.02となる。
ここで、上記のような各層の屈折率の設定により、図1に示すネガ型記録媒体1全体で見れば、選択反射膜3の下層側をバルク層としたとき、当該バルク層においては記録層5中の第1屈折率設定層5Aの屈折率のみが1.52で、それ以外の部分の屈折率は1.50とされていることになる。
【0039】
上記のようにして記録層5は、屈折率が僅かに異なる第1屈折率設定層5Aと第2屈折率設定層5Bとが所定のピッチPで交互に積層された構造を有する。このような構造により、記録層5は回折格子として機能する。具体的には、レーザ光が当該記録層5に合焦するようにして照射された際、記録層5は反射体として機能する。
【0040】
ここで、本実施の形態において、記録層5における第1屈折率設定層5A、第2屈折率設定層5Bの形成ピッチP(すなわち回折格子の格子ピッチP)や、記録層5の厚みtrに関しては、従来のポジ型マイクロホログラム方式で形成されるマイクロホログラム(回折格子)に合わせた数値を設定するものとしている。
【0041】
図3は、ポジ型マイクロホログラム方式において記録されるマイクロホログラム(記録マーク)について説明するための図であり、図3(a)はマイクロホログラム記録マークのパターンを、図3(b)はその屈折率分布(強度分布)を示している。
ポジ型マイクロホログラム方式によるマーク記録を行う場合において、図3(a)に示される記録マークの幅wは、記録光の出力端となる対物レンズのNAと当該記録光の波長λとにより定まる。具体的には、
w=λ/NA
で表される。
【0042】
ここで、本出願人は、ポジ型マイクロホログラム方式に関して、対物レンズのNA及び波長λについてはNA=0.85、λ=400nmを設定した実験を進めている。これは、現状のBD(Blu-ray Disc)のシステムとほぼ同様の数値である。
これらのNA、λの設定により、従来のポジ型マイクロホログラム方式においては、記録マークの幅wがおよそ0.47μmとされている。
【0043】
また、ポジ型マイクロホログラム方式において、記録マークとして形成される回折格子の屈折率分布は、図3(b)に示すようになる。
この図3(b)に示される記録マークの深さ方向における長さL(以下、マーク深さLとする)は、
L=4λn/NA4
により与えられる。但し上式において、上記nは記録マークが形成されるバルク層の屈折率を表す。
従来のポジ型マイクロホログラム方式において、バルク層の屈折率nはおよそ1.50程度に設定されており、これによると従来のポジ型マイクロホログラム方式において、マーク深さLはおよそ3.3μmとなる。
【0044】
また、図3(b)に「Pitch」として示す記録マークの格子ピッチは、
Pitch=λ/2n
となる。従って上記により例示した従来のポジ型マイクロホログラム方式で設定されるλ=400nm、n=1.50の条件によれば、格子ピッチはおよそ0.13μmとなる。
【0045】
ここで、上記のようにして従来のポジ型マイクロホログラム方式においては、記録マーク(回折格子)の格子ピッチが0.13μm程度とされており、これに対応させて本実施の形態のネガ型記録媒体1においても、記録層5における第1屈折率設定層5A、第2屈折率設定層5Bの形成ピッチP、すなわち第1屈折率設定層5A、第2屈折率設定層5Bの厚みは、0.13μmに設定するものとしている。
このとき、上記のようにして従来のマイクロホログラム記録マークのマーク深さLはおよそ3.3μm程度であるので、記録層5における層数は、3.3μm/0.13μmより26層程度あればよい。例えば本例では、記録層5の層数は26層とし、従って記録層5の厚みtrはおよそ3.38μm程度とされる。
なお、記録層5における層数や記録層5の厚みtrは再生信号の強度に影響を与えると同時に、記録マーク(消去マーク)の深さ方向の制限にもなる。つまり層間のクロストークを抑える場合には記録層5における層数や厚みtrを減らす方が望ましい場合がある。
【0046】
ちなみに、図4は、マイクロホログラム記録マークの回折効率について説明するための図であり、図4(a)では対物レンズのNA(開口数)と回折効率(ηとする)との関係を、また図4(b)は屈折率差Δnと回折効率ηとの関係を示している。
なお、図4(a)はΔn=0.02、バルク層屈折率=1.55のときの結果を表し、図4(b)はNA=0.55、λ=405nmのときの結果を表している。
【0047】
図4(a)に示されるように、回折効率ηはNAに対して反比例する関係となる。
また、注意すべきは、図4(b)に示されるように、回折効率ηは回折格子における屈折率差Δnに対して比例する関係になるという点である。
【0048】
ここで、ネガ型マイクロホログラム方式を採用する本例の場合において、記録層5としての回折格子における回折効率が大となるということは、その分、より下側に形成される記録層5に対してレーザ光が到達し難くなる虞があるということになる。
この点より本実施の形態では、記録層5における第1屈折率設定層5Aと第2屈折率設定層5Bの屈折率差Δnは、微少となるように設定する。
このように記録層5における各層の屈折率差Δnがわずかなものとなるようにすることで、記録層数の増加に対してより有利とすることができる。
【0049】
なお確認のために述べておくと、ポジ型マイクロホログラム方式においては、記録マークとしての回折格子が2つの光が集光して形成されるので、このように形成された回折格子は、再生時において記録時に照射した光と同等の入射角による光が照射されることによって回折光(反射光)を生じるものとなる(いわゆるブラッグの法則より)。
これに対し本例のように積層により形成される回折格子は、ポジ型マイクロホログラム方式で形成される回折格子と比較してブラッグ選択性は弱まる傾向となる。このためネガ型マイクロホログラム方式では、屈折率差Δnが大とされる場合には、上述のように下層側に形成される記録層5に対してレーザ光が到達し難くなる虞がある。
【0050】
説明を図1に戻す。
上述もしたように本実施の形態のネガ型記録媒体1においては、記録層5と記録層5との間に、中間層4が挿入された構造となっている。
本実施の形態において、中間層4の厚みについては10μm以上に設定するものとしている。このことで、各記録層5の間でのクロストークの防止が図られるようにしている。
具体的に本例の場合、中間層4の厚みは10μmである。
【0051】
[1-2.消去マークと再生信号]
上記により説明した本実施の形態としてのネガ型記録媒体1に対しては、記録対象とする記録層5に対してレーザ光を合焦させた状態で照射することによって、上記記録層5に対する消去マークの記録が行われる。
【0052】
図5は、このようなレーザ光照射に伴い記録層5に形成される消去マークについて説明するための図である。
図5(a)は、レーザ光をオン/オフして記録層5に対して断続的に照射した際の記録層5の様子を示した図である。また図5(b)は、上記のような断続的なレーザ光の照射に伴い記録層5に形成される消去マーク形成部分(図5(a)中の矢印A)と消去マーク非形成部分(図5(a)中の矢印B)のそれぞれにおける屈折率分布を示している。
【0053】
図5において、レーザ光が記録層5に合焦した状態で照射されることに応じては、該レーザ光の集光部分が高温に熱せられることに応じて、第1屈折率設定層5Aと第2屈折率設定層5Bとが混ざり、その結果記録層5における屈折率分布が平坦化される。具体的に、レーザ光の集光部分においては、第1屈折率設定層5A(n=1.52)と第2屈折率設定層5B(n=1.50)の屈折率が近づく方向に変化し、その結果レーザ光集光部分における屈折率はそれらの中間値(n=1.51)に変化する。
このように屈折率分布が平坦化された部分では、記録層5における他の部分(屈折率差Δnを有する部分)と比較して、反射率が低下することになる。つまりこの結果、レーザ光の集光部分にて、いわゆる消去マークが形成される。
【0054】
このとき、レーザ光照射に伴う上記屈折率分布の平坦化は、図5(b)の右側に示す記録部(図5(a)におけるBの部分)の屈折率分布が表すように、深さ方向において所要の分布を有するようにして生じる。具体的に上記屈折率分布の平坦化は、レーザ光の焦点位置付近をピークとした分布を持つようにして生じる。
なお、図5(b)では図示の都合から深さ方向における分布のみを示しているが、記録方向(ビーム移動方向)においても同様に焦点位置付近を中心とする分布が生じることになる。
ここで、図5(b)において、消去マーク(上記平坦化部分)の分布は、レーザ光の光強度の2乗に比例した分布として計算したものである。
【0055】
記録層5に対するレーザ光照射により、上記により説明したような消去マークが形成される。
このようにして形成される消去マークは、照射するレーザ光の光強度(パワー)に応じてその形成度合いが変化する。
図6は、それぞれ異なる光強度によるレーザ光を用いて記録を行った場合における、消去マークとその再生信号とを対比して示した図である。
この図6においては、図中の左側における(a)(b)(c)図により或る光強度αにより記録を行った場合の結果を示し、右側における(d)(e)(f)図では上記光強度αよりも大となる光強度βにより記録を行った場合の結果を示している。
図6において、(a)及び(d)図は、形成された消去マークの様子を示し、(b)及び(e)図は記録した消去マークについての再生信号のアイパターンを示している。また(c)及び(f)図は再生信号波形を示している。
【0056】
レーザ光の光強度が大となることに応じては、先の図5(b)に示したような平坦化部分の分布の裾野部分がより急峻化する傾向となる。すなわち、仮に、図5(b)に示す平坦化部分の分布が光強度αによる記録を行った際のものであるとすれば、より大となる光強度βによる記録を行った際には、上記分布の裾野の傾斜が図5(b)に示すものよりも急峻化するものである。
図6(a)と図6(d)とを対比して、より大となる光強度βにより記録された図6(d)の消去マークの方が、光強度αにより記録された図6(a)の消去マークよりもエッジ部分が強調されているのはこのためである。
【0057】
そして、このように光強度が大となることに応じてより明確な消去マークが形成されることで、再生信号としても、光強度が大である場合の方がより良好な信号が得られる。
具体的に、アイパターンについては、光強度αによる記録を行った図6(b)の場合よりも光強度βによる記録を行った図6(e)の方が「アイ」が開いていることが確認できる。
また再生信号波形としても、図6(c)(f)を比較すると、光強度βにより記録を行った図6(f)の場合において所要の中心レベルを基準に振幅が大小する波形が得られており、図6(c)の場合よりも図6(f)の場合の方が2値化に適した良好な波形が得られるものとなる。
【0058】
<2.光記録媒体の製造方法>
続いて、図1に示したネガ型記録媒体1の製造方法について説明する。
図7は、第1の製造方法について説明するための図である。
先ず、ネガ型記録媒体1の製造にあたっては、カバー層2の生成工程として、先に述べたようなスタンパを用いた射出成形によって、一方の面に対して案内溝が形成されたカバー層2を生成する。
次いで、反射膜成膜工程として、カバー層2の上記案内溝が形成された面に対して、例えばスパッタリングや蒸着などによって選択反射膜3を成膜する(図7(a))。
【0059】
このようにカバー層2に選択反射膜3を成膜した後は、図7(b)に示すように、上記選択反射膜3上に対して中間層4を積層する。この場合、中間層4の積層工程としては、中間層4としてのUV硬化樹脂を上記選択反射膜3上にスピンコートする。そしてその後、紫外線照射を行うことで、上記UV硬化樹脂を硬化させて中間層4を形成する。
【0060】
このように中間層4を積層した後は、図7(c)に示す記録層形成工程として、上記中間層4上に第1屈折率設定層5A、第2屈折率設定層5Bを所定回数交互に積層する。なお図中においては図示の都合上、記録層5が5つの層(3層の第1屈折率設定層5Aと2層の第2屈折率設定層5B)から成る場合を例示したが、先の説明からも理解されるように本例の場合における記録層5内の形成層数は実際には26層程度とされるものである。
【0061】
ここで、先の説明によると、本例の場合における第1屈折率設定層5A、第2屈折率設定層5Bのそれぞれの厚みは0.13μm程度と比較的薄いものとされている。このように比較的薄い第1屈折率設定層5A、第2屈折率設定層5Bの積層に有利な手法として、この場合の記録層形成工程では、次の図8に示すような積層手法を採るものとしている。
【0062】
この場合の記録層形成工程では、図8(a)に示すような真空チャンバー6を用いたいわゆる真空成膜手法により第1屈折率設定層5A、第2屈折率設定層5Bを積層する。具体的にこの場合は、スパッタリング法により第1屈折率設定層5A、第2屈折率設定層5Bを積層する。
【0063】
図示するように真空チャンバー6内には、回転トレイ7が設けられており、該回転トレイ7上に対して中間層4が積層された積層ディスク9が複数セットされる。
図8(b)は、上記回転トレイ7上に複数の積層ディスク9がセットされた様子を示しているが、この図に示すように、この場合の回転トレイ7には4つの積層ディスク9がそれぞれの配置位置が重ならないように十分に離間してセットされる。
【0064】
図8(a)に戻り、真空チャンバー6内では、上記回転トレイ7上にセットされた積層ディスク9と対向する側となる位置に、第1屈折率設定層5Aの形成材料である第1ターゲット8−1、及び第2屈折率設定層5Bの形成材料となる第2ターゲット8−2が配置される。
図示もしているように、本例の場合において、第1ターゲット8−1の屈折率はn=1.52、第2ターゲット8−2の屈折率はn=1.50である。
【0065】
ここで、このようにわずかな屈折率差を正確にコントロールするために、本例では、第1ターゲット8−1、第2ターゲット8−2の材料を以下のように選定する。
例えば光ファイバーの分野においては、ファイバー線内で光を閉じこめて伝搬するためにコアとクラッドに数パーセント程度の屈折率差を与える必要があるが、そのために、コアとクラッドの母材料としてシリカガラスを用い、コアには屈折率を上げるためにGe(ゲルマニウム)やP(リン)を添加し、クラッドには屈折率を下げるためにB(ホウ素)やF(フッ素)などを添加するということが行われる。
本例ではこれに倣い、第1ターゲット8−1(第1屈折率設定層5A)としてはシリカガラスにGeやPを添加し、第2ターゲット8−2(第2屈折率設定層5B)としてはシリカガラスにBやFを添加することで、それぞれ屈折率を所定値に正確にコントロールした材料を用いる。
【0066】
この場合、積層ディスク9に対する各層の成膜は、次のようにして行う。
先ず前提として、真空チャンバー6内には、例えばアルゴンガス等の不活性ガスが充填されている。この状態において、回転トレイ7を回転させて、対象とする積層ディスク9を第1ターゲット8−1と対向する位置に配置させ、上記対象とする積層ディスク9と第1ターゲット8−1との間に直流高電圧を印加する。これにより上記対象とする積層ディスク9に対して、第1ターゲット8−1としての材料が付着し、第1屈折率設定層5Aが積層される。
以降も同様に、回転トレイ7を回転させて、回転トレイ7上の残りの積層ディスク9を逐次第1ターゲット8−1と対向する位置に配置して電圧印加を行うことで、各積層ディスク9に第1屈折率設定層5Aを成膜する。
そして、回転トレイ7上の全ての積層ディスク9に第1屈折率設定層5Aが積層した後、回転トレイ7を回転させて各積層ディスク9を逐次第2ターゲット8−2に対向する位置に配置しつつ電圧印加を行うことで、各積層ディスク9に第2ターゲット8−2としての材料を付着させ、第2屈折率設定層5Bを積層する。
このように第1ターゲット8−1と第2ターゲット8−2としての材料の交互の成膜を所定回数繰り返すことで、第1屈折率設定層5Aと第2屈折率設定層5Bとがそれぞれ所要数積層された記録層5を形成(生成)する。
【0067】
図7に戻り、図7(c)の記録層形成工程を実行した後は、図7(d)に示すように、形成された記録層5上に対して先の図7(b)にて説明した手法と同様の手法により中間層4を積層する。
図示による説明は省略するが、この図7(d)による中間層積層工程の後は、先に説明した記録層形成工程と、中間層形成工程とを交互に所定回数繰り返す。これにより、図1に示したように中間層4と記録層5とが交互に所要数積層されたネガ型記録媒体1が製造される。
【0068】
ここで、上記による説明では、第1屈折率設定層5A,第2屈折率設定層5Bの材料としてシリカガラスを用いた材料を例示したが、これは実現可能な材料の一例を挙げたものに過ぎず、もちろん他の材料を用いることもできる。
【0069】
図9は、第1屈折率設定層5A、第2屈折率設定層5Bの材料として樹脂材料を用いる場合に対応した製造方法(第2の製造方法とする)を示している。
この場合、図9(a)に示すカバー層2の生成及び反射膜成膜工程は、図7(a)にて説明したものと同様となる。また図9(b)に示す中間層積層工程としても図7(b)にて説明したものと同様となる。
【0070】
この場合、図9(c)に示す記録層形成工程では、樹脂材料としての第1屈折率設定層5Aと第2屈折率設定層5Bとをスピンコートにより交互に所定回数積層する。具体的には、中間層4上に第1屈折率設定層5Aとしての屈折率を有するUV硬化樹脂をスピンコートしその後紫外線照射を行う。さらに、これにより積層された第1屈折率設定層5A上に第2屈折率設定層5Bとしての屈折率を有するUV硬化樹脂を同様にスピンコートし紫外線照射を行う。このようなスピンコート及び紫外線照射による第1屈折率設定層5A・第2屈折率設定層5Bの積層を所定回数繰り返すことで、所定層数を有する記録層5が形成される。
【0071】
上記のように記録層5を形成した後は、中間層積層工程を行って上記記録層5上に中間層4を積層し(図9(d))、その後、図9(c)にて説明した手法と同様の手法により記録層形成工程を行うことで、上記中間層4上に記録層5を形成する(図9(e))。
これら中間層積層工程・記録層形成工程を所定回数繰り返すことで、図1に示したネガ型記録媒体1が製造される。
【0072】
<3.実施の形態の光記録媒体が奏する効果>
上記により説明してきたように、本実施の形態のネガ型記録媒体1には、透明で且つそれぞれ屈折率が僅かに異なる第1の層と第2の層とが交互に積層されることで形成された回折格子による記録層が予め設けられている。これにより、従来のネガ型マイクロホログラム方式で行っていた記録層形成のための初期化処理は不要とすることができる。
【0073】
このように記録層(回折格子)形成のための初期化処理を不要とすることができれば、その分、記録開始までに要する時間の大幅な短縮化が図られる。
また、初期化処理が不要とされることで、 従来のネガ型マイクロホログラム方式が抱えていた初期化光のパワーやバルク層の記録感度に関する問題も解消することができる。
【0074】
このようにして本実施の形態のネガ型記録媒体1によれば、従来のネガ型マイクロホログラム方式が抱えていた問題点を解消することができ、結果、ネガ型マイクロホログラム方式による多層記録媒体(大容量記録媒体)の実現性をさらに高めることができる。
【0075】
<4.サーボ制御について>
続いて、上記により説明した実施の形態としてのネガ型記録媒体1を用いた記録/再生を行う際のサーボ制御について、図10を参照して説明しておく。
図10において、先にも述べたようにバルク記録方式では、記録層としてのバルク層に対してマーク記録を行うための記録光(第1レーザ光)と、案内溝に基づきトラッキングやフォーカスのエラー信号を得るためのサーボ光(第2レーザ光)とを別途に照射するものとされている。
後述もするように、これら第1レーザ光と第2レーザ光は、共通の対物レンズを介してネガ型記録媒体1に照射されることになる。
【0076】
ここで、ネガ型記録媒体1において、消去マークの記録対象位置である記録層5は、単に屈折率差Δnが与えられた層であり、ピットやグルーブなどによる案内溝が形成されるものではない。このため、未だ消去マークの形成されていない記録時においては、第1レーザ光を用いたトラッキングサーボを行うことはできないことになる。
この点より、記録時におけるトラッキングサーボに関しては、第2レーザ光を用いて行うものとする。すなわち、選択反射膜3に対して合焦させた第2レーザ光の反射光に基づくトラッキングエラー信号の生成を行い、該トラッキングエラー信号に基づき対物レンズのトラッキング方向の位置制御を行うものである。
【0077】
一方、記録時において、フォーカスサーボに関しては、第1レーザ光を用いて行う。
すなわち、第1レーザ光が記録層5に合焦した状態と記録層5以外に合焦した状態とでは、第1レーザ光の反射光に強度差が生じるので、この点を利用し、第1レーザ光の反射光を用いたフォーカスサーボ制御を行うものである。
【0078】
また、既に消去マークの記録が行われたネガ型記録媒体1についての再生時には、トラッキングサーボ、フォーカスサーボ共に、第1レーザ光の反射光を用いて行う。換言すれば、再生時における第2レーザ光の照射は不要とできる。
【0079】
ここで、上記の説明によると、第1レーザ光と第2レーザ光とは共通の対物レンズを介してネガ型記録媒体1に照射され、これに対応して記録時には、第1レーザ光のトラッキング方向のスポット位置の制御が、第2レーザ光の反射光に基づく上記対物レンズの位置制御によって自動的に行われるものとなる。換言すれば、上記共通の対物レンズを、第2レーザ光の反射光に基づき生成したトラッキングエラー信号に基づき駆動することで、第2レーザ光の反射光に基づき行ったトラッキングサーボ制御が、第1レーザ光側にも等しく作用するものである。
【0080】
但し、ここで注意すべきは、フォーカス方向に関しては、第1レーザ光の合焦位置と第2レーザ光の合焦位置とをそれぞれ異なる位置とする必要があるという点である。つまり図10を参照して理解されるように、第2レーザ光としては、案内溝による凹凸が形成された選択反射膜3からの反射光に基づくトラッキングエラー信号の生成が適正に行われるようにすべく、その合焦位置は選択反射膜3上に一致させるべきものであり、一方で第1レーザ光としては、その合焦位置は記録対象とする記録層5に対して設定されるべきものとなる。
このような点を考慮すると、フォーカス方向の制御については、第1レーザ光と第2レーザ光とで、それぞれ独立した制御を行わなければならないことになる。
【0081】
上述のようにして、この場合における第1レーザ光のフォーカス制御は、記録時も再生時も共に第1レーザ光の反射光を利用して行われることになる。この点を考慮して本例では、第1レーザ光のフォーカス制御は上記共通の対物レンズの駆動により行い、第2レーザ光のフォーカス制御については、別途、第2レーザ光の合焦位置を独立して制御する機構を設けて、該機構を駆動することで行う(図11における第2レーザ用フォーカス機構30が該当)。
【0082】
以上をまとめるに、本実施の形態の場合のサーボ制御は、以下のようにして行われる。
・第1レーザ光側
記録時・・・フォーカスサーボは第1レーザ光の反射光を用いて対物レンズを駆動して行う(トラッキングサーボについては第2レーザ光の反射光を用いた対物レンズの駆動が行われることで自動的に行われる)
再生時・・・フォーカスサーボ、トラッキングサーボ共に、第1レーザ光の反射光を用いて対物レンズを駆動して行う。
・第2レーザ光側
記録時・・・フォーカスサーボは第2レーザ光の反射光を用いて第2レーザ用フォーカス機構を駆動して行い、トラッキングサーボは第2レーザ光の反射光を用いて対物レンズを駆動して行う。
再生時・・・第2レーザ光の照射自体は不要とできる。
【0083】
<5.記録再生装置の構成>
図11は、図1に示したネガ型記録媒体1についての記録及び再生を行う記録再生装置10の内部構成を示している。
先ず、記録再生装置10に対して装填されたネガ型記録媒体1は、図中のスピンドルモータ(SPM)39により回転駆動される。
そして、記録再生装置10には、このように回転駆動されるネガ型記録媒体1に対して第1レーザ光、第2レーザ光を照射するための光学ピックアップOPが設けられる。
【0084】
光学ピックアップOP内には、消去マークによる情報記録、及び消去マークにより記録された情報の再生を行うための第1レーザ光の光源である第1レーザ11と、前述したサーボ光としての第2レーザ光の光源である第2レーザ25とが設けられる。
ここで、前述のように第1レーザ光と第2レーザ光とは、それぞれ波長が異なる。本例の場合、第1レーザ光の波長はおよそ400nm程度(いわゆる青紫色レーザ光)、第2レーザ光の波長はおよそ650nm程度(赤色レーザ光)とされる。
【0085】
また、光学ピックアップOP内には、第1レーザ光と第2レーザ光のネガ型記録媒体1への出力端となる対物レンズ21が設けられる。
さらには、上記第1レーザ光のネガ型記録媒体1からの反射光を受光するための第1フォトディテクタ(図中PD-1)24と、第2レーザ光のネガ型記録媒体1からの反射光を受光するための第2フォトディテクタ(図中PD-2)33とが設けられる。
【0086】
その上で光学ピックアップOP内においては、上記第1レーザ11より出射された第1レーザ光を上記対物レンズ21に導くと共に、上記対物レンズ21に入射した上記ネガ型記録媒体1からの第1レーザ光の反射光を上記第1フォトディテクタ24に導くための光学系が形成される。
具体的に、上記第1レーザ11より出射された第1レーザ光は、コリメーションレンズ12を介して平行光となるようにされた後、ミラー13にてその光軸が90度折り曲げられて偏光ビームスプリッタ14に入射する。偏光ビームスプリッタ14は、このように第1レーザ11より出射され上記ミラー13を介して入射した第1レーザ光については透過するように構成されている。
【0087】
上記偏光ビームスプリッタ14を透過した第1レーザ光は、液晶素子15及び1/4波長板16を通過する。
ここで、上記液晶素子15は、例えばコマ収差や非点収差などのいわゆる軸外収差の補正を行うために設けられたものである。
【0088】
上記1/4波長板16を通過した第1レーザ光は、レンズ17及びレンズ18から成るエキスパンダに入射する。このエキスパンダは、上記レンズ17が可動レンズ、上記レンズ18が固定レンズとされ、図中のレンズ駆動部19によって上記レンズ17が第1レーザ光の光軸に平行な方向に駆動されることで、第1レーザ光についての球面収差補正を行う。
【0089】
上記エキスパンダを介した第1レーザ光は、ダイクロイックミラー20に入射する。ダイクロイックミラー20は、第1レーザ光と同波長帯の光は透過し、それ以外の波長による光は反射するように構成されている。従って上記のようにして入射した第1レーザ光は、ダイクロイックミラー20を透過する。
【0090】
上記ダイクロイックミラー20を透過した第1レーザ光は、対物レンズ21を介して記録媒体1に対して照射される。
対物レンズ21に対しては、当該対物レンズ21をフォーカス方向(ネガ型記録媒体1に対して接離する方向)、及びトラッキング方向(上記フォーカス方向に直交する方向:ネガ型記録媒体1の半径方向)に変位可能に保持する2軸機構22が設けられる。
当該2軸機構22は、後述する第1レーザ用フォーカスサーボ回路36、トラッキングサーボ回路37からフォーカスコイル、トラッキングコイルにそれぞれ駆動電流が与えられることで、対物レンズ21をフォーカス方向、トラッキング方向にそれぞれ変位させる。
【0091】
上記のようにしてネガ型記録媒体1に対して第1レーザ光が照射されることに応じては、ネガ型記録媒体1より上記第1レーザ光の反射光が得られる。このようにして得られた第1レーザ光の反射光は、対物レンズ21を介してダイクロイックミラー20に導かれ、当該ダイクロイックミラー20を透過する。
ダイクロイックミラー20を透過した第1レーザ光の反射光は、前述したエキスパンダを構成するレンズ18→レンズ17を介した後、1/4波長板16→液晶素子15を介して偏光ビームスプリッタ14に入射する。
【0092】
ここで、このように偏光ビームスプリッタ14に入射する第1レーザ光の反射光(復路光)は、1/4波長板16による作用とネガ型記録媒体1での反射の作用とにより、第1レーザ光11側から偏光ビームスプリッタ14に入射した第1レーザ光(往路光)とはその偏光方向が90度異なるようにされる。この結果、上記のようにして入射した第1レーザ光の反射光は、偏光ビームスプリッタ14にて反射される。
【0093】
このように偏光ビームスプリッタ14にて反射された第1レーザ光の反射光は、集光レンズ23を介して第1フォトディテクタ24の検出面上に集光する。
【0094】
また、光学ピックアップOP内には、上記により説明した第1レーザ光についての光学系の構成に加えて、第2レーザ25より出射された第2レーザ光を対物レンズ21に導き且つ、上記対物レンズ21に入射したネガ型記録媒体1からの第2レーザ光の反射光を第2フォトディテクタ33に導くための光学系が形成される。
図示するように上記第2レーザ25より出射された第2レーザ光は、コリメーションレンズ26を介して平行光となるようにされた後、偏光ビームスプリッタ27に入射する。偏光ビームスプリッタ27は、このように第2レーザ25→コリメーションレンズ26を介して入射した第2レーザ光(往路光)は透過するように構成される。
【0095】
上記偏光ビームスプリッタ27を透過した第2レーザ光は、1/4波長板28を介して第2レーザ用フォーカスレンズ29に入射する。
図示するように第2レーザ用フォーカスレンズ29に対しては、第2レーザ用フォーカス機構30が設けられる。この第2レーザ用フォーカス機構30は、上記第2レーザ用フォーカスレンズ29を、上記第2レーザ光の光軸に平行な方向に変位可能に保持する共に、内部に備えられたフォーカスコイルに駆動電流が与えられたことに応じて上記第2レーザ用フォーカスレンズ29を駆動する。
【0096】
上記第2レーザ用フォーカスレンズ29を介した第2レーザ光は、上記第2レーザ用フォーカス機構30の駆動状態に応じた位置に焦点を結んだ後、レンズ31を介して平行光となるようにされてダイクロイックミラー20に入射する。
【0097】
先に述べたように、ダイクロイックミラー20は、第1レーザ光と同波長帯の光は透過し、それ以外の波長による光は反射するように構成されている。従って上記第2レーザ光はダイクロイックミラー20にて反射され、図示するように対物レンズ21を介してネガ型記録媒体1に照射される。
【0098】
また、このようにネガ型記録媒体1に第2レーザ光が照射されたことに応じて得られる当該第2レーザ光の反射光は、対物レンズ21を介し、ダイクロイックミラー20にて反射されてレンズ31→第2レーザ用フォーカスレンズ29→1/4波長板28を介した後、偏光ビームスプリッタ28に入射する。
先の第1レーザ光の場合と同様にして、このようにネガ型記録媒体1側から入射した第2レーザ光の反射光(復路光)は、1/4波長板28の作用とネガ型記録媒体1での反射の作用とにより、往路光とはその偏光方向が90度異なるものとされ、従って復路光としての上記第2レーザ光の反射光は偏光ビームスプリッタ28にて反射される。
【0099】
このようにして偏光ビームスプリッタ28にて反射された第2レーザ光の反射光は、集光レンズ32を介して第2フォトディテクタ33の検出面上に集光する。
【0100】
ここで、図示による説明は省略するが、実際において記録再生装置10には、光学ピックアップOP全体をトラッキング方向にスライド駆動するスライド駆動部が設けられ、当該スライド駆動部による光学ピックアップOPの駆動により、レーザ光の照射位置を広範囲に変位させることができるようにされている。
【0101】
また、記録再生装置10には、上記により説明した光学ピックアップOP及びスピンドルモータ39と共に、第1レーザ用マトリクス回路34、第2レーザ用マトリクス回路35、第1レーザ用フォーカスサーボ回路36、トラッキングサーボ回路37、第2レーザ用フォーカスサーボ回路38、コントローラ40、記録処理部41、再生処理部42が設けられる。
【0102】
先ず、記録処理部41には、ネガ型記録媒体1に対して記録すべきデータ(記録データ)が入力される。記録処理部41は、入力された記録データに対してエラー訂正符号の付加や所定の記録変調符号化を施すなどして、ネガ型記録媒体1に実際に記録される「0」「1」の2値データ列である記録変調データ列を得る。
記録処理部41は、コントローラ40からの指示に応じて、このように生成した記録変調データ列に基づく第1レーザ11の発光駆動を行う。
【0103】
また、第1レーザ用マトリクス回路34は、第1フォトディテクタ24としての複数の受光素子からの出力電流に対応して電流電圧変換回路、マトリクス演算/増幅回路等を備え、マトリクス演算処理により必要な信号を生成する。
具体的には、上述した記録変調データ列を再生した再生信号に相当する高周波信号(以降、再生信号RFと称する)、サーボ制御のためのフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEを生成する。
ここで、本例においてフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEは第1レーザ光の反射光に基づくものと第2レーザ光の反射光に基づくものとの2種が存在する。以下では両者を区別するため、上記第1レーザ用マトリクス回路34にて生成されたフォーカスエラー信号FEについてはフォーカスエラー信号FE-1と称し、同様に第1レーザ用マトリクス回路34にて生成されたトラッキングエラー信号TEについてはフォーカスエラー信号TE-1と称する。
【0104】
第1レーザ用マトリクス回路34にて生成された上記再生信号RFは、再生処理部42に供給される。
また、上記フォーカスエラー信号FE-1は第1レーザ用フォーカスサーボ回路36に、トラッキングエラー信号TE-1はトラッキングサーボ回路37に供給される。
【0105】
上記再生処理部42は、第1レーザ用マトリクス回路34にて生成された上記再生信号RFについて、2値化処理や記録変調符号の復号化・エラー訂正処理など、上述した記録データを復元するための再生処理を行い、上記記録データを再生した再生データを得る。
【0106】
また、第1レーザ用フォーカスサーボ回路36は、上記フォーカスエラー信号FE-1に基づきフォーカスサーボ信号を生成し、当該フォーカスサーボ信号に基づき上述した2軸機構22のフォーカスコイルを駆動することで、第1レーザ光についてのフォーカスサーボ制御を行う。
また第1レーザ用フォーカスサーボ回路36は、コントローラ40からの指示に応じて、ネガ型記録媒体1に形成された記録層5の間の層間ジャンプ動作や所要の記録層5に対するフォーカスサーボの引き込みを行う。
【0107】
第2レーザ用マトリクス回路35は、上述した第2フォトディテクタ33としての複数の受光素子からの出力電流に対応して電流電圧変換回路、マトリクス演算/増幅回路等を備え、マトリクス演算処理により必要な信号を生成する。
具体的に第2レーザ用マトリクス回路35は、サーボ制御のためのフォーカスエラー信号FE-2、トラッキングエラー信号TE-2を生成する。
上記フォーカスエラー信号FE-2は第2レーザ用フォーカスサーボ回路38に供給され、また上記トラッキングエラー信号TE-2はトラッキングサーボ回路37に供給される。
【0108】
第2レーザ用フォーカスサーボ回路38は、上記フォーカスエラー信号FE-2に基づくフォーカスサーボ信号を生成し、当該フォーカスサーボ信号に基づいて、上述した第2レーザ用フォーカス機構30を駆動することで、第2レーザ光についてのフォーカスサーボ制御を行う。
このとき第2レーザ用フォーカスサーボ回路38は、コントローラ40からの指示に応じて、ネガ型記録媒体1に形成された選択反射膜3(案内溝形成面)へのフォーカスサーボの引き込みを行う。
【0109】
トラッキングサーボ回路37は、コントローラ40からの指示に応じて、第1レーザ用マトリクス回路34からのトラッキングエラー信号TE-1、又は第2レーザ用マトリクス回路35からのトラッキングエラー信号TE-2の何れか一方に基づくトラッキングサーボ信号を生成し、当該トラッキングサーボ信号に基づき2軸機構22のトラッキングコイルを駆動する。つまり対物レンズ21のトラッキング方向の位置制御に関して、第1レーザ光の反射光に基づくトラッキングサーボ制御、又は第2レーザ光の反射光に基づくトラッキングサーボ制御の何れか一方を実行する。
【0110】
コントローラ40は、例えばCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)などのメモリ(記憶装置)を備えたマイクロコンピュータで構成され、例えば上記ROM等に記憶されたプログラムに従った制御・処理を実行することで、記録再生装置1の全体制御を行う。
具体的にコントローラ40は、記録時においては、第1レーザ用フォーカスサーボ回路36に対する指示を行って第1レーザ光を所要の記録層5に合焦させた状態(つまり所要の記録層5を対象としたフォーカスサーボ制御を実行させた状態)で記録処理部41に対する記録指示を行うことで、上記記録層5に対する記録データに応じた消去マークの形成動作を実行させる。すなわち消去マークの形成による情報記録動作を実行させる。
ここで先に述べたように、記録時におけるトラッキングサーボ制御は、第2レーザ光の反射光に基づき行われるべきものとなる。このためコントローラ40は、記録時には、トラッキングサーボ回路37に対してトラッキングエラー信号TE-2に基づくトラッキングサーボ制御を実行するように指示を行う。
また記録時においてコントローラ40は、第2レーザ用フォーカスサーボ回路38に対してフォーカスサーボ制御の実行を指示する。
【0111】
一方再生時において、コントローラ40は、第1レーザ用フォーカスサーボ回路36に対する指示を行って、第1レーザ光を再生すべきデータが記録された記録層5に合焦させる。すなわち、第1レーザ光に関して、上記記録層5を対象としたフォーカスサーボ制御を実行させる。
またコントローラ40は、再生時には、トラッキングサーボ回路37に対してトラッキングエラー信号TE-1に基づくトラッキングサーボ制御を実行するように指示を行う。
【0112】
なお先に述べたように、再生時においては第2レーザ光の反射光に基づくサーボ制御を行うことは必須ではない。但し、例えば再生時における位置情報を、グルーブのウォブリングで記録された情報に基づき検出する、或いは、ピット列で記録された位置情報を検出するなどとした場合には、再生時に案内溝形成面(選択反射膜3)を対象とした第2レーザ光のサーボ制御を実行することもできる。
【0113】
<6.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明としてはこれまでで説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えば光記録媒体の製造方法についての説明では、中間層4をUV硬化樹脂のスピンコートで形成する場合を例示したが、中間層4としては、いわゆるHPSA(シート状のUV硬化型PSA:Pressure Sensitive Adhesive)を用いることもできる。その他、中間層4としては、例えば光硬化樹脂や熱硬化樹脂などを用いることもできる。
【0114】
また、これまでの説明では、記録層5に樹脂材料を用いる場合の例として、UV硬化樹脂を用いる例を挙げたが、UV硬化樹脂に限定されるべきものではなく光硬化樹脂であればよい。或いは、光硬化樹脂に代えて熱硬化樹脂を用いることもできる。
その他、記録層5の形成材料としては、光重合樹脂、光透明樹脂、高性能エンジニアリングプラスチック材料などを用いることができる。
【0115】
また、光記録媒体の製造方法についても実施の形態で例示したものに限定されるべきものではない。
例えば一例として、シート状の記録層5を予め生成しておき、当該シート状の記録層5を上述したHPSAで挟みこむようにして光記録媒体を製造する手法を挙げることができる。具体的には、選択反射膜3上にHPSAを載置→その上にシート状の記録層5載置→紫外線照射(接着)→HPSAを載置→その上にシート状の記録層5載置→紫外線照射(接着)・・・を繰り返すことで、ネガ型記録媒体1を製造するものである。
このような製造方法によれば、シート材の積み重ねによりネガ型記録媒体1を製造することができ、製造工程をより簡素化できる。
【0116】
また、ネガ型記録媒体1を構成する各層の層厚として例示した数値はこれに限定されるべきものではなく、実際の実施形態に応じて適宜変更が可能である。
また、記録層5における各層の屈折率nやそれらの屈折率差Δn、及び中間層4の屈折率などの数値も例示したものに限定されるべきものではなく、実際の実施形態に応じて適宜変更が可能である。
【0117】
また、これまでの説明では、記録(及び再生)位置の案内を可能とするための構成として、光記録媒体に案内溝を形成する場合を例示したが、このような案内溝に代えて、例えば相変化膜などにマークを記録した構成とすることもできる。すなわち、このように記録された位置案内用のマーク列に基づいて、フォーカス・トラッキングのエラー信号や位置情報などを得るといったものである。
【0118】
また、これまでの説明では、本発明の光記録媒体がディスク状の記録媒体とされる場合を例示したが、例えば矩形状など他の形状とすることもできる。
【符号の説明】
【0119】
1 ネガ型記録媒体、2 カバー層、3 選択反射膜、4 中間層、5 記録層、5A 第1屈折率設定層、5B 第2屈折率設定層、6 真空チャンバー、7 回転トレイ、8−1 第1ターゲット、8−2 第2ターゲット、9 積層ディスク、10 記録再生装置、11 第1レーザ、12,26 コリメーションレンズ、13 ミラー、14,27 偏光ビームスプリッタ、15 液晶素子、16,28 1/4波長板、17,18,31 レンズ、20 ダイクロイックミラー、21 対物レンズ、22 2軸機構、23,32 集光レンズ、24 第1フォトディテクタ、25 第2レーザ、29 第2レーザ用フォーカスレンズ、30 第2レーザ用フォーカス機構、33 第2フォトディテクタ、34 第1レーザ用マトリクス回路、35 第2レーザ用マトリクス回路、36 第1レーザ用フォーカスサーボ回路、37 トラッキングサーボ回路、38 第2レーザ用フォーカスサーボ回路、39 スピンドルモータ、40 コントローラ、41 記録処理部、42 再生処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明で且つそれぞれ屈折率が僅かに異なる第1の層と第2の層とが交互に積層されることで所定の格子ピッチを有する回折格子で構成された記録層と、透明で且つ上記記録層よりも厚みが大とされた中間層とが交互に積層されている
光記録媒体。
【請求項2】
上記中間層の屈折率が上記第1の層と上記第2の層の何れか一方の屈折率と同じに設定されている請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項3】
上記中間層は光硬化樹脂で構成される請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項4】
上記中間層の厚みが10μm以上である請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項5】
記録層と中間層とが交互に積層された光記録媒体の製造方法であって、
透明で且つそれぞれ屈折率が僅かに異なる第1の材料と第2の材料とをそれぞれ所定の厚みで交互に複数回積層することで、所定の格子ピッチを有する回折格子で構成された上記記録層を生成する記録層生成工程と、
透明で且つ上記記録層よりも厚みが大とされた上記中間層を生成する中間層生成工程と
を有する光記録媒体の製造方法。
【請求項6】
透明で且つそれぞれ屈折率が僅かに異なる第1の層と第2の層とが交互に積層されることで所定の格子ピッチを有する回折格子で構成された記録層と、透明で且つ上記記録層よりも厚みが大とされた中間層とが交互に積層されている光記録媒体について、レーザ光の焦点位置を記録対象とする上記記録層に一致させた状態で記録情報に応じた上記レーザ光の発光駆動を行うことで、上記記録対象とする記録層における屈折率分布を平坦化して上記記録情報に応じた消去マークの記録を行う
記録方法。
【請求項7】
透明で且つそれぞれ屈折率が僅かに異なる第1の層と第2の層とが交互に積層されることで所定の格子ピッチを有する回折格子で構成された記録層と、透明で且つ上記記録層よりも厚みが大とされた中間層とが交互に積層されている光記録媒体であって、上記記録層に記録情報に応じた消去マークが形成された光記録媒体について、レーザ光を再生対象とする上記記録層に合焦させた状態で照射する再生光照射ステップと、
上記再生光照射ステップにより照射した上記レーザ光の反射光を検出する反射光検出ステップと、
上記反射光検出ステップによる上記反射光の検出結果に基づいて、上記再生対象とする記録層に記録された情報を再生する情報再生ステップと
を有する再生方法。
【請求項1】
透明で且つそれぞれ屈折率が僅かに異なる第1の層と第2の層とが交互に積層されることで所定の格子ピッチを有する回折格子で構成された記録層と、透明で且つ上記記録層よりも厚みが大とされた中間層とが交互に積層されている
光記録媒体。
【請求項2】
上記中間層の屈折率が上記第1の層と上記第2の層の何れか一方の屈折率と同じに設定されている請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項3】
上記中間層は光硬化樹脂で構成される請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項4】
上記中間層の厚みが10μm以上である請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項5】
記録層と中間層とが交互に積層された光記録媒体の製造方法であって、
透明で且つそれぞれ屈折率が僅かに異なる第1の材料と第2の材料とをそれぞれ所定の厚みで交互に複数回積層することで、所定の格子ピッチを有する回折格子で構成された上記記録層を生成する記録層生成工程と、
透明で且つ上記記録層よりも厚みが大とされた上記中間層を生成する中間層生成工程と
を有する光記録媒体の製造方法。
【請求項6】
透明で且つそれぞれ屈折率が僅かに異なる第1の層と第2の層とが交互に積層されることで所定の格子ピッチを有する回折格子で構成された記録層と、透明で且つ上記記録層よりも厚みが大とされた中間層とが交互に積層されている光記録媒体について、レーザ光の焦点位置を記録対象とする上記記録層に一致させた状態で記録情報に応じた上記レーザ光の発光駆動を行うことで、上記記録対象とする記録層における屈折率分布を平坦化して上記記録情報に応じた消去マークの記録を行う
記録方法。
【請求項7】
透明で且つそれぞれ屈折率が僅かに異なる第1の層と第2の層とが交互に積層されることで所定の格子ピッチを有する回折格子で構成された記録層と、透明で且つ上記記録層よりも厚みが大とされた中間層とが交互に積層されている光記録媒体であって、上記記録層に記録情報に応じた消去マークが形成された光記録媒体について、レーザ光を再生対象とする上記記録層に合焦させた状態で照射する再生光照射ステップと、
上記再生光照射ステップにより照射した上記レーザ光の反射光を検出する反射光検出ステップと、
上記反射光検出ステップによる上記反射光の検出結果に基づいて、上記再生対象とする記録層に記録された情報を再生する情報再生ステップと
を有する再生方法。
【図1】
【図2】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図3】
【図5】
【図6】
【図13】
【図2】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図3】
【図5】
【図6】
【図13】
【公開番号】特開2011−60349(P2011−60349A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206756(P2009−206756)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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