説明

光誘起自家蛍光の時間分解測定による生物試料の低酸素領域分析方法とその装置

【課題】励起光強度や蛍光物質の濃度、及び周辺環境に影響されることなく、高精度に被測定物質の酸素濃度測定を可能にする。
【解決手段】生体物質中に含まれる4.8ナノ秒以上の蛍光寿命Tfを有する蛍光物質を励起可能な波長を含むパルス励起光L1を発生させ、パルス励起光L1を生体物質の所定の位置に照射し、該照射により励起された蛍光物質から生じる蛍光Lfを含む光L3を受光し、蛍光Lfの強度を時間分解して蛍光Lfの蛍光寿命Tfを算出し、蛍光寿命Tfから生体物質の酸素濃度を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体物質の酸素濃度を測定する方法、該酸素濃度から低酸素領域を検出する方法、及び、これらの結果より生体物質を分析する方法、並びにこれらを実施する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体物質の正常組織と異常組織とを判別する方法として、標識となる物質の物理特性の違いにより酸素濃度を測定し、酸素の濃度の違いにより正常・異常判別する方法が種々試みられている。
【0003】
例えば、生体物質中に存在する蛍光物質を標識とし、該蛍光物質を励起して発せられる蛍光(自家蛍光)の強度の違いや蛍光減衰スペクトルを検出する方法がある。特許文献1には、生体物質試料から発せられた自家蛍光の強度の違いや減衰スペクトル等の光の放射特性を検出することにより、試料中の生体物質の酸素濃度を測定し、悪性腫瘍状態等の病理学的性質の変調を検出するレーザ誘起蛍光減衰分光(LIFAS)法が開示されている。
【0004】
かかる方法によれば、蛍光色素等の有害物質による標識を必要としないことから、測定対象に大きなダメージを与えることなく、酸素濃度を測定し、正常・異常組織の判別を行うことができる。
【0005】
また、生体物質の酸素濃度の違いにより投与時の活性化度の異なる画像診断用プローブを標識とし、活性化度の違いを検出して測定する生体物質の生理学的性質や病理学的性質の変調を検出する方法が、特許文献2等において開示されている。かかる方法では、直接薬剤であるプローブを投与することから感度のよい検出を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2001−509589号公報
【特許文献2】特開2006−282653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、蛍光強度や蛍光減衰スペクトルによる方法は、検出部位や検出個体によって一定ではないことから、検出部位や検出個体に応じてリファレンスを取得する必要がある上、蛍光物質の濃度や励起光の強度等により発せられる蛍光量が変化する。従って特許文献1の方法では、定量性の良い検出や感度の良い検出が難しく、信頼性は充分とはいえない。
【0008】
また、特許文献2の方法では、プローブを直接投与することから測定対象に大きなダメージを与える可能性がある上、プローブを標的部位へ到達させて活性化するまでに時間がかかり迅速性に課題が残る。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、測定対象に大きなダメージを与えることなく、迅速に、感度良く生体物質の酸素濃度を測定することのできる測定方法、ならびに、該酸素濃度から低酸素領域を検出する方法、そして、酸素濃度及び低酸素領域から生体物質を分析する方法を提供することを目的とする。
【0010】
また本発明は、上記測定方法、検出方法、及び生体物質分析方法を実現可能な装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の測定方法は、生体物質中に含まれる4.8ナノ秒以上の蛍光寿命を有する蛍光物質を励起可能な波長を含むパルス励起光を発生させ、該パルス励起光を前記生体物質の所定の位置に照射し、該照射により励起された前記蛍光物質から生じる蛍光を含む光を受光し、該受光した蛍光の強度を時間分解して前記蛍光の蛍光寿命を算出し、該蛍光寿命から前記生体物質の酸素濃度を測定することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の測定装置は、生体物質中に含まれる4.8ナノ秒以上の蛍光寿命を有する蛍光物質を励起可能な波長を含むパルス励起光を発生する励起光発生手段と、該パルス励起光を前記生体物質の所定の位置に照射する励起光照射手段と、前記パルス励起光が照射されることにより励起された前記蛍光物質から生じる蛍光を含む光を受光する受光手段と、前記パルス励起光の照射と同期して前記蛍光に含まれる所定の波長の蛍光を時間分解する時間分解手段と、該時間分解された前記蛍光を検出する検出手段と、該検出手段により検出された前記蛍光から該蛍光の蛍光寿命を算出し、該蛍光寿命に基づいて前記酸素濃度を測定する測定手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0013】
ここで、「4.8ナノ秒以上の蛍光寿命を有する蛍光物質」とは、正常な状態の生体物質中における蛍光寿命が4.8ナノ秒以上である蛍光物質を意味し、蛍光物質はプロテインボンド状態、フリー状態などいずれの状態でも良い。組織や細胞中のある領域の平均値でもよい。また、「生体物質中における」とは、ここでは温度37℃の環境におけるという意味である。従って、若干の温度差等によりその値は変動する可能性がある。更に、「生体物質」とは、ヒト、動物の細胞や組織、体液等の生物組織を意味し、生物から採取したもの、培養したもの、in vivoの細胞や組織全てを含むものとする。
【0014】
本発明の測定方法及び測定装置において、前記蛍光物質は、ポルフィリン類、フラビン酵素、コラーゲン、及び、エラスチンからなる群より選ばれる少なくとも1種の蛍光物質であることが好ましく、中でも、13.3ナノ秒以上の蛍光寿命を有するものであることが好ましい。
【0015】
本発明の測定方法において、前記受光した蛍光を波長分解した蛍光スペクトルとした後、該蛍光スペクトルから波長毎に前記蛍光強度を時間分解して波長毎の前記蛍光の蛍光寿命を算出することが好ましい。従って、本発明の測定装置は、かかる蛍光スペクトルを得る受光手段を備えていることが好ましい。
【0016】
本発明の測定方法及び測定装置では、前記所定の位置は、複数の位置とすることができる。かかる構成の測定装置に、前記生体物質の低酸素領域を検出する低酸素領域検出手段を備えた構成とすることにより、前記生体物質の低酸素領域を検出することができる。
【0017】
低酸素領域の検出は、前記生体物質の低酸素領域を画像化して表示して検出してもよい。
【0018】
本発明の測定方法及び検出方法により得られた酸素濃度の大きさや低酸素領域に基づいて、前記生体物質の悪性腫瘍状態の有無等の病理学的性質を特定して生体物質を分析することができる。
【0019】
本発明の測定装置の好適な態様としては、表面に前記生体物質を接触させて保持するステージであって、前記生体物質の任意の位置に前記パルス励起光を照射できるように3次元方向に可動なステージと、該ステージを3次元方向の任意の位置に動かす位置調節手段とを備え、前記励起光照射手段が、前記パルス励起光を受光して、該パルス励起光を前記生体物質に照射する光学系を備え、前記受光手段は、前記照射により励起された前記蛍光物質から生じる蛍光を含む光を受光して該光を前記時間分解手段に導く光学系を備えた顕微鏡の態様が挙げられる。
【0020】
また、本発明の測定装置の他の好適な態様としては、表面に前記生体物質を接触させて保持するステージであって、前記生体物質の、少なくとも前記パルス励起光の光軸方向の任意の位置に該パルス励起光を照射できるように可動なステージと、
該ステージを少なくとも光軸方向の任意の位置に動かす第1の位置調節手段と、
前記生体物質の、少なくとも前記パルス励起光の光軸に垂直な面内方向の任意の位置に該パルス励起光を照射できるように前記励起光照射手段を動かす第2の位置調節手段とを更に備えたものであり、
前記励起光照射手段は、前記パルス励起光を受光して、該パルス励起光を前記生体物質に照射する光学系を備えたものであり、
前記受光手段は、前記照射により励起された前記蛍光物質から生じる蛍光を含む光を受光して該光を前記時間分解手段に導く光学系を備えたものが挙げられる。
【0021】
また、本発明の測定装置の他の好適な態様としては、前記生体物質の3次元方向の任意の位置に、前記パルス励起光を照射できるように前記励起光照射手段を動かす位置調節手段を更に備え、
前記励起光照射手段は、前記パルス励起光を受光して、該パルス励起光を前記生体物質に照射する光学系を備えたものであり、
前記受光手段は、前記照射により励起された前記蛍光物質から生じる蛍光を含む光を受光して該光を前記時間分解手段に導く光学系を備えたものが挙げられる。
【0022】
また、本発明の測定装置の他の好適な態様としては、前記励起光照射手段が、前記パルス励起光を前記生体物質に照射する少なくとも1本の照射用光ファイバを備えたものであり、前記受光手段が、前記照射により励起された前記蛍光物質から生じる蛍光を受光して該蛍光を前記時間分解手段に導く少なくとも1本の受光用光ファイバを備えたファイバプローブの態様が挙げられる。かかる態様では、前記少なくとも1本の照射用光ファイバと前記少なくとも1本の受光用光ファイバとが、1本のバンドルファイバを形成していることが好ましく、このバンドルファイバは、略中心部に配された1本の前記照射用光ファイバの外周を、複数本の前記受光用光ファイバで囲むように束ねられたものであることがより好ましい。
【0023】
本発明者は、励起光強度や蛍光物質の濃度や退色、及び所望の蛍光以外の不要な物質の蛍光に影響されることなく、高精度に酸素濃度の測定可能なものとして、物質固有の値を有する蛍光寿命に着目した。癌細胞等の異常細胞では、正常な細胞に比して酸素濃度が低くなることが知られている。
【0024】
蛍光寿命による酸素濃度の測定は、非特許文献”Time-resolved optical imaging provides a molecular snapshot of altered metabolic function in living human cancer cell models, OPTICS EXPRESS 4412, Vol. 14, No. 10, May 15, 2006”においても報告されている。この文献では、生体物質の自家蛍光物質であるNADH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の蛍光寿命を利用して、生体物質の酸素濃度の違いを検出し、癌細胞と正常細胞の違いの検出を試みている。しかしながら、この文献では、正常細胞の方が異常細胞よりも蛍光寿命が長くなることが記載されており、本来正常細胞の方が酸素濃度が高いため蛍光寿命は短くなると予想され、酸素濃度の変化がとらえられているとは言い難い。
【0025】
生体物質において、異常による酸素濃度の変化量は、例えば正常組織では15〜40mmHgであるのに対し、癌化した組織では0mmHg〜10mmHgであり、それらの差は非常に小さい。従って、この差を蛍光寿命の差として精度良く検出することは難しく、上記文献のように、正常細胞と異常細胞との大小関係が逆転してしまうような結果が得られることも充分考えられる。このような精度では、到底、酸素濃度の変化量と蛍光寿命との相関性を酸素濃度の検出に用いることはできない。
【0026】
本発明者は、この測定精度の低下の要因について鋭利検討を行い、測定対象とする自家蛍光物質の有する蛍光寿命値の違いによりその酸素濃度に対する変化量が変化することに着目し、高精度な測定を可能とする蛍光寿命値を見出した。具体的には、ヘマトポルフィリンの蛍光寿命を時間相関単一光子計数法(TCSPC)、時間ゲート法により測定を重ね、現状の蛍光寿命測定において2つの蛍光寿命を分離できる限界値を見出し、精度良く、酸素濃度の測定可能な蛍光寿命値を見出した。詳細は後記するが、精度良く酸素濃度を測定可能な蛍光寿命値を見出すことは、非特許文献や当時の技術常識から容易に導き出されるものではない。
【発明の効果】
【0027】
本発明の酸素濃度測定法は、生体物質に含まれる蛍光寿命を有する自家蛍光物質の蛍光寿命により生体物質の酸素濃度を測定する際に、自家蛍光物質として1ナノ秒以上の蛍光物質を採用することにより、高精度な測定を実現することを可能にすることを見出したものである。蛍光寿命は、物質固有の値であるため、本発明によれば、励起光強度や蛍光物質の濃度、及び不要な物質の蛍光に影響されることなく、高精度に生体物質の酸素濃度の測定を行うことができる。
【0028】
また、本発明では、自家蛍光物質の蛍光寿命を測定対象とするので、生体物質に薬物の投与等の必要がない。従って、生体物質に大きなダメージを与えることなく酸素濃度の測定を実施することができる。
【0029】
本発明では、精度の高い酸素濃度の測定ができるため、病理学的性質の正常・異常の特定だけではなく、その程度まで特定することができる。従って、治療効果に酸素濃度依存性を有するような疾患においては、治療の際の薬剤投与量や物理療法の強度等の治療方針を的確に判断する情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施形態による酸素濃度測定装置並びに低酸素領域検出装置、及び、生体物質分析装置の概略構成図
【図2】酸素濃度と蛍光寿命との関係を示す図
【図3A】生物物質中に含まれる主な自家蛍光発光物質の励起光吸収特性を示す図
【図3B】図3Aに示される自家蛍光発光物質の蛍光スペクトルを示す図
【図4】時間分解による蛍光寿命の算出方法を示す図
【図5】ワイドフィールド型の酸素濃度測定装置並びに低酸素領域検出装置、及び、生体物質分析装置の概略構成図
【図6】共焦点系顕微鏡型の酸素濃度測定装置並びに低酸素領域検出装置、及び、生体物質分析装置の概略構成図
【図7】本発明の第2の実施形態による酸素濃度測定装置並びに低酸素領域検出装置、及び、生体物質分析装置の概略構成図
【図8A】内視鏡スコープにファイババンドルを備えた場合の内視鏡スコープの構成を示す概略図。
【図8B】内視鏡スコープにファイバプローブを備えた場合の内視鏡スコープの構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
「酸素濃度測定装置(測定装置)の第1実施形態(顕微鏡)」
以下、図面を参照して本発明にかかる第1実施形態の酸素濃度測定装置および酸素濃度測定方法について説明する。図1は、本実施形態の酸素濃度測定装置1の概略構成図である。視認しやすくするため、各部の縮尺は適宜変更して示してある。
【0032】
図1に示されるように、酸素濃度測定装置1は、生体物質である被測定物質Dにパルス励起光L1(以下、励起光L1とする)を励起光照射手段20により照射し、励起光L1が照射されることにより被測定物質D中の蛍光物質Pから生じる蛍光Lfを含む光L3を受光手段30により受光して蛍光を得、この蛍光から所定の蛍光Lfを時間分解手段40により時間分解し、時間分解された蛍光Lfを検出手段50により検出し、検出された蛍光Lfの強度から測定手段60により蛍光減衰曲線を得て蛍光寿命Tfを算出し、蛍光寿命Tfに基づいて被測定物質Dの酸素濃度を測定するものである。励起光L1は、被測定物質D中に含まれる4.8ナノ秒以上の蛍光寿命を有する蛍光物質Pを励起可能な波長を含むものである。
【0033】
蛍光寿命の測定方法は、時間領域測定法と周波数領域測定法に大別され、本実施形態においては時間領域測定法を採用する。時間領域測定法には、ストリークカメラ法、時間相関単一光子計数法、時間ゲート法等があるが、本実施形態では、時間ゲート法により蛍光寿命の測定を行う例について説明する。
【0034】
時間ゲート法は、パルス励起光の照射と同期して、発光した蛍光をある時間領域で区切り、その範囲の蛍光強度積分値をCCD等の固体検出器で検出して時間領域を変えて測定することで近似的に蛍光減衰曲線を得る方法である。本実施形態では、ビームスプリッタ25により励起光L1から分けられた信号光L2がフォトダイオード44により検出されると、同期制御装置43によりゲートコントローラ42に対して同期信号S1が送られる。ゲートコントローラ42は、同期信号S1を受けて予め設定された所定の時間領域にゲート信号S2を発信し、ゲート機能つきイメージインテンシファイア41を駆動する。ゲート機能つきイメージインテンシファイア41に入力された蛍光像Lfは、ゲート信号S2に応じた時間領域において増強されて、検出手段50により、所定の蛍光Lfの蛍光強度の積分値(蛍光信号)Ltが検出される。この工程をゲート信号S2に応じて繰り返し、測定手段60により単一指数関数による解析を行って蛍光寿命Tfを算出する。
【0035】
本発明者らは、ヘマトポルフィリンの蛍光寿命を時間相関単一光子計数法(TCSPC)、時間ゲート法により測定を重ね、現状の蛍光寿命測定において2つの蛍光寿命を分離できる限界値が蛍光寿命が0.03nsecであることを見出し、かかる蛍光寿命の差が得られる物質の蛍光寿命値を見出した。
【0036】
酸素濃度と蛍光寿命にはStern-Volmerの式より以下の関係が成り立つ。
1/τ = 1/τ0 + kq * [酸素濃度]
τ:ある酸素濃度時の蛍光寿命、τ0:酸素濃度零の時の蛍光寿命、kq:消光定数を表す。
【0037】
生体物質に適用するkqを求めるために、ヘマトポルフィリン水溶液を使用し、kqの導出を試みた。酸素バブリングで溶液中の酸素濃度を生体物質に対応した低濃度の範囲で変化させ、その時の蛍光寿命を単一光子係数法を用いて測定した(測定装置: Time-to-Amplitude Converter(TAC;ORTEC457)などで構成した測定システム)。酸素濃度は光学式酸素濃度計(*Precision Sensing社:1チャンネル式高感度マイクロ酸素計Microx TX3-trace)を用いて測定した。励起波長は420nmであり、波長615nmの蛍光を検出した。その結果をStern-Volmerプロットし(図2)、最小二乗法でフィッティングした結果、
1/τ=1/(14.35×10−9)+20.01×10×[酸素濃度]
が得られ、kq=20.01×10 L/(mol・sec)、τ0=14.35nsecを導出した。相関係数は、0.9975である。
【0038】
同kq値を生体物質に適用し、正常組織と異常組織における蛍光寿命の差を導出した。正常組織における蛍光寿命をτ1、異常組織における蛍光寿命をτ2とし、kq=20.01×10L/(mol・sec)を用いたStern-Volmerの式より、τ2-τ1を見積もった。
【0039】
1/τ1=1/τ0+20.01×10*[正常組織の酸素濃度]
からτ0を見積もり、
1/τ2=1/τ0+20.01×10*[異常組織の酸素濃度]
からτ2を見積もった。
【0040】
37℃のときの酸素濃度は、
[酸素濃度] = [酸素分圧mmHg]/760mmHg × [溶解係数]/22.4(L/mol)
で表され、37℃の時の溶解係数は0.024である。正常組織の酸素分圧15〜40mmHgの時の酸素濃度は、2.1×10−5〜5.6×10−5mol/Lである。また、異常組織の酸素分圧0〜10mmHgの時の酸素濃度は、0〜1.4×10−5mol/Lである。
【0041】
正常組織と異常組織で酸素分圧の差が最も大きいそれぞれ40,0mmHgの場合は、τ2=4.8nsecの時に、τ2-τ1=0.03nsecとなり、また正常組織と異常組織で酸素分圧の差が最も小さいそれぞれ15,10mmHgの場合は、τ2=13.3nsecの時に、τ2-τ1=0.03nsecとなった。従って、τ2が4.8nsec以上において正常組織と異常組織の分離が可能となり、更には13.3nsec以上の時に更に高い精度で正常組織と異常組織の分離が可能となることを見出した。なお、異常組織での酸素分圧の下限値は、ほぼゼロになる場合もあるためm最も低い分圧として0mmHgを用いた。
【0042】
従って、本実施形態では、被測定物質D中の蛍光物質P(自家蛍光物質)として4.8ナノ秒以上の蛍光寿命を有する蛍光物質、好ましくは13.3ナノ秒以上の蛍光寿命を有する蛍光物質を用いる。
【0043】
表1に、主な自家蛍光物質と、時間相関単一光子計数法(TCSPC)により本発明者が測定した各自家蛍光物質の蛍光寿命値を示す。表1に示される値は、各自家蛍光物質がフリー状態にある時の値である。また、図3A,Bに、主な自家蛍光を発する物質の励起光吸収特性及び蛍光スペクトルを示す。
【表1】

【0044】
酸素濃度測定装置1は顕微鏡であるので、被測定物質Dは、位置調節手段91によりxyz方向に移動可能なサンプルステージ90上に接触されており、位置調節手段91により、サンプルステージ90の位置を調節して、被測定物質Dの所定の位置に励起光L1を照射することができる。酸素濃度測定装置1には、正確に所定の位置に励起光L1が照射できるように、被測定物質Dの上方から被測定物質Dにおける励起光L1の照射位置を確認することができるように、拡大レンズ等を備えた窓(図史略)を備えた構成としてもよい。
【0045】
酸素濃度測定装置1において、励起光発生手段10は、被測定物質D中の1ナノ秒以上の蛍光寿命を有する蛍光物質Pの励起波長を発振可能なパルスレーザ11と、パルスレーザ11より発振されたパルスを、所定の間隔にて出射させるように間引くパルスピッカー12とを含む。パルスレーザ11は、特に制限されないが、超短パルス光を発振できるレーザであることが好ましく、数十フェムト秒〜数十ピコ秒の時間範囲内でパルス発振可能なレーザであることがより好ましい。パルスレーザ11としては、例えば、発振波長840nmのチタンサファイアレーザの第2次高調波(SHG)である波長420nm、パルス幅3ps、繰り返し周波数80MHz、ピークパワー8kW、平均パワー2W等を用いることができる。また、励起光発生手段10には、第3次高調波(THG)や光パラメトリック発信器(Optical Parametric Oscillator:OPO)等の波長変換素子を備えた構成としてもよい。
【0046】
また、被測定物質D内において励起される蛍光Lfは多光子励起によるものでもよい。その場合は、多光子励起可能な波長及びパルス幅の励起光L1として、発振波長840nmのチタンサファイアレーザ、パルス幅100fs、繰り返し周波数80MHz、ピークパワー100kW、平均パワー0.8W等を用いる。多光子励起では、所望の箇所だけ励起が可能なので、周辺部の蛍光低減ができより低雑音化ができ、また観察箇所より前の部分での吸収減衰を低減できるので効率よく観察箇所に励起光L1を照射することができる。また、高い空間分解能で分析もできる。
【0047】
励起光発生手段10から出射された励起光L1は、励起光照射手段20に入射され、励起光照射手段20により被測定物質Dの所定の位置に照射される。励起光照射手段20の構成は特に制限されないが、本実施形態では、励起光L1の照射と被測定物質Dから発生した、蛍光物質Pの励起による蛍光Lfを含む光L3の受光を同一の対物レンズ(光学系)21(31)で行う構成としている。従って、励起光照射手段20には、被測定物質Dの所定位置に励起光L1を照射し、且つ、光L3を受光できるように配された対物レンズ21及び、励起光L1を対物レンズ21に入射させ、且つ、光L3を時間分解手段40に導くダイクロイックミラー22(32)を備えている。対物レンズ21としては、励起光L1及び蛍光の透過率が高く、レンズ素材による蛍光の発生の少ないものが好ましい。
【0048】
また、本実施形態では、励起光L1の照射と時間分解手段40を同期して駆動させるため、励起光照射手段20に同期信号S1を発信させる信号光L2を励起光L1から分割させるビームスプリッタ25を、そして、励起光L1を蛍光物質Pの励起波長の光に絞り込む励起フィルター23を備えている。励起光照射手段20には、必要に応じて励起光L1を導光するミラー(24,26)やレンズ等(図示略)を備えてよい。
【0049】
受光手段30は、励起光L1の照射により被測定物質Dにおいて生じた光L3を受光して時間分解手段40に目的とする蛍光Lfを出力できれば特に制限されないが、本実施形態では、被測定物質Dから発生した光L3を受光する対物レンズ31(21)と、光L3を時間分解手段40に導くダイクロイックミラー32(22)と、光L3から散乱光等のノイズ光を除去するフィルター33とを備えている。
【0050】
対物レンズ(光学系)31及びダイクロイックミラー32については上述の通りである。フィルター34は、検出する蛍光Lfの波長に応じて、バンドパスフィルタやショートパスフィルタ等適宜選択して用いればよい。複数種類の蛍光Lfを観測するときは、異なる透過波長帯域を有する複数のバンドパスフィルタを用いたり、あるいは透過波長帯域が可変のものを用いるようにしてもよい。
【0051】
受光手段30により得られた蛍光Lfは、時間分解手段40に入力される。時間分解手段40は、蛍光Lfの、所定の時間領域の蛍光信号Ltを取り出して検出手段50に出力するものである。蛍光の時間分解は、励起光L1の照射に対する最初の同期信号S1の受信時t0から開始する。同期信号S1は、励起光L1からビームスプリッタ25により分けられた信号光L2が、光検出器44で電気信号に変換されて同期制御装置43から、ゲートコントローラ42に送られる。
【0052】
受光手段30により得られた蛍光Lfは、時間分解手段40に入力される。時間分解手段40は、所定の蛍光Lfの、所定の時間領域の蛍光像を取り出して検出手段50に出力するものである。蛍光の時間分解は、励起光L1の照射に対する最初の同期信号S1の受信時t0から開始する。同期信号S1は、励起光L1からビームスプリッタ25により分けられた信号光L2が、光検出器44で電気信号に変換されて同期制御装置43から、ゲートコントローラ42に送られる。
【0053】
光検出器44としては特に制限なく、一般的に用いられているフォトダイオード等を用いることが好ましい。
【0054】
同期制御装置43は、光検出器44から出力された信号を受けてゲートコントローラ42に同期信号S1を出力できれば特に制限なく、パーソナルコンピュータ(PC)等を用いることができる。ゲートコントローラ42は、同期信号S1を受けて予め設定された所定の時間領域にゲート信号S2を発信し、ゲート機能つきイメージインテンシファイア41のゲートの開閉を指示する。ゲート機能つきイメージインテンシファイア41には、CCDカメラ等の検出手段50が接続されており、ゲート信号S2に基づいてゲートを開閉し、ゲートが開いているときに受光した蛍光信号Ltを増幅させ、コントラストの向上した蛍光スペクトル像LsをCCD等の検出手段50により受光して電気信号として蓄積し、検出する。例えば、ゲートコントローラ42が同期信号S1を最初に受けた時刻を基準時刻t0として、時間Δtの間だけゲート機能付きイメージインテンシファイア41のゲートを開くように指示するゲート信号S2を出力すると、ゲート機能付きイメージインテンシファイア41により、t0〜Δtの間の蛍光信号Ltを増幅させて検出手段50に出力し、検出手段50は、その時間範囲の蛍光Lfを検出して、その蛍光強度の積分値S3を測定手段60に出力する。この蛍光強度S3の検出工程を、ゲート信号に応じて繰り返すことにより、時間分解された蛍光強度を測定手段60に出力する。
【0055】
測定手段60としては特に制限ないが、PC等のコンピュータシステムを用いることが簡易であり好ましい。測定手段60は、同期制御装置43とを同じ装置により兼ねてもよい。測定手段60は、時間分解された蛍光強度S3から蛍光減衰曲線を求めて蛍光強度時間分布を得る。この蛍光減衰曲線において、蛍光強度が1/eになった時間tmaxと発光の開始時t0との差を蛍光寿命Tfとして算出する。図4に、時間分解された蛍光強度から得られた蛍光強度時間分布及び蛍光減衰曲線から求められた蛍光寿命Tfを示す。図4において、t0からの経過時間tにおける蛍光強度Iとt0における蛍光強度Iとは、下記式の関係で表される。分析手段60では、S3がある時間tにおける蛍光強度Iとなる。
【0056】
I=I−t/Tf
測定手段60としては特に制限ないが、PC等のコンピュータシステムを用いることが簡易であり好ましい。測定手段60は、同期制御装置43とを同じ装置により兼ねてもよい。測定手段60は、時間分解された蛍光強度S3から蛍光減衰曲線を得、この曲線において、蛍光強度が略ゼロになった時間tmaxとt0との差を蛍光寿命Tfとして算出する。図3に、時間分解された蛍光強度から得られた蛍光減衰曲線及び蛍光減衰曲線から求められた蛍光寿命Tfを示す。
【0057】
次に、測定手段60は得られた蛍光寿命Tfに基づいて、被測定物質Dの所定の位置における酸素濃度を測定する。自家蛍光物質の蛍光寿命は、その周辺の酸素濃度により変化することが知られている。自家蛍光は、発光の際に、周辺に存在する酸素原子に衝突することにより消光されるため、周辺の酸素濃度が低くなると蛍光寿命が長くなる。
【0058】
従って、正常状態の被測定物質Dにおける蛍光寿命を予め調べておくことにより、被測定物質Dの所定の位置における自家蛍光物質の蛍光寿命から、その位置の酸素濃度の変化を、また、酸素濃度に対する蛍光寿命の変化率を予め得ておくことにより、具体的な酸素濃度値を測定することができる。
【0059】
また、酸素濃度測定装置1では、ステージ90をxyz方向(励起光照射面の面内方向及び深さ方向)に移動させることができるので、被測定物質Dの複数の所定の位置において2次元あるいは3次元の酸素濃度の測定が可能である。
【0060】
また、図5に示されるように、酸素濃度測定装置4は、xyz方向可動なステージ90とし、励起光照射手段20にテレスコープ28を備え、照射広範囲を一度に検出可能なワイドフィールド型顕微鏡方式としてもよく、ステージ90をxy方向に走査させ複数のxy面領域を検出しそれらを合成することでより広範囲な領域の画像化が可能となる。
【0061】
また図6に示されるように、ステージ90’をz方向のみ可動とし、スキャンヘッド等の走査光学系27をxy方向に走査させる共焦点系の光学系としてもよい。この場合、走査光学系27をxyz方向に走査させる光学系としてもよい。
【0062】
走査光学系27としては、ガルバノミラーやポリゴンミラー、レゾナントミラー等が挙げられる。
【0063】
かかる構成とする場合は、励起光L1により励起される蛍光の種類が複数になる可能性が高いため、図6に示される酸素濃度測定装置7のように、受光手段30により受光した蛍光Lfを分光して時間分解手段40に蛍光Lfの蛍光スペクトルLsを出力する分光手段35を備えた構成とすることが好ましい。蛍光Lfを分光して蛍光スペクトルLsを時間分解することにより、より高精度に複数の蛍光を分離して所定の波長の蛍光の蛍光寿命を測定することができる。分光素子35としては、蛍光Lfを分光可能なものであれば特に制限なく、回折格子やプリズム等が挙げられる。
【0064】
図6に示される走査光学系を備えた構成は、局所的な励起を行う多光子励起の場合等に、特に好ましく用いることができる。
【0065】
複数の位置における酸素濃度測定により、被測定物質Dの低酸素領域を分析する方法については後記する。
本実施形態の酸素濃度測定装置は以上のように構成されている。
【0066】
次に、上記構成を有する酸素濃度測定装置1の動作例について説明する。
まず、ステージ90上に被測定物質Dを接触させ、所定の位置に励起光L1が照射されるように位置調節手段91によりステージ90の位置を調整する。
【0067】
励起光発生手段10からは蛍光物質Pを励起可能な波長を含む励起光L1が出射されて、励起光照射手段20に入射する。励起光照射手段20に入射された励起光L1は、ビームスプリッタ25により同期用信号光L2を分離した後、に対物レンズ(光学系)21により集光されて、被測定物質Dの所定の位置に照射される。この照射により、被測定物質Dからは、蛍光物質Pが励起されて蛍光Lfが発せられる。受光手段30の対物レンズ31は、被測定物質Dから発せられた光L3を受光する。光L3には、蛍光Lf以外のノイズ光も含まれているが、フィルタ34を通過することにより、ほぼ蛍光Lf以外の光が排除される。
【0068】
ほぼ蛍光のみとなった光L3は、時間分解手段40に入射されて、所定の蛍光Lfを取り出して時間分解され、検出手段50により各時間における蛍光強度S3が検出され、電気信号として測定手段60に出力される。測定手段60は、時間分解された蛍光強度から蛍光強度−時間曲線を得、この曲線において、蛍光強度が略1/eになった時間tmaxとt0との差を蛍光寿命Tfとして算出し、蛍光寿命Tfに基づいて、被測定物質Dの酸素濃度を測定する。
【0069】
上記のように、本実施形態の酸素濃度測定方法及び酸素濃度測定装置1は、生体物質に含まれる4.8ナノ秒以上の蛍光寿命Tfを有する自家蛍光物質Pの蛍光寿命Tfにより生体物質の酸素濃度を測定する際に、自家蛍光物質Pとして4.8ナノ秒以上の蛍光物質を採用することにより、高精度な測定を実現することを可能にすることを見出したものである。蛍光寿命Tfは、物質固有の値であるため、本実施形態の酸素濃度測定方法及び酸素濃度測定装置1によれば、励起光強度や蛍光物質Pの濃度、及び不要な物質の蛍光に
に影響されることなく、高精度に生体物質の酸素濃度の測定を行うことができる。
【0070】
また、本実施形態では、自家蛍光物質の蛍光寿命Tfを測定対象とするので、生体物質に薬物の投与等の必要がない。従って、生体物質に大きなダメージを与えることなく酸素濃度の測定を実施することができる。
【0071】
以上述べた酸素濃度測定装置1の効果は、後述の実施形態の酸素濃度測定装置も同様に奏するものである。
【0072】
「酸素濃度測定装置の第2実施形態(ファイバプローブ)」
次に、本発明の別の実施形態にかかる酸素濃度測定装置について説明する。第1実施形態の酸素濃度測定装置1は、顕微鏡であったが、本実施形態の酸素濃度測定装置10は、ファイバプローブである点で第1実施形態と異なっている。なお、以降の実施形態の説明および図面においては、前述の実施形態の構成要素と実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0073】
図7に示されるように、酸素濃度測定装置10は、第1実施形態の対物レンズ21(31)が、バンドルファイバ21’(31’)である点を除けば、第1実施形態と同様の構成としている。
【0074】
バンドルファイバ21’(31’)は、中央部にパルス励起光L1を導光させ、励起光L1を被測定物質Dの所定の位置に照射する照射用光ファイバ200が略中心部に配され、励起光L1の照射により被測定物質D中に含まれる1ナノ秒以上の蛍光寿命を有する蛍光物質Pから生じる蛍光Lfを含む光L3を受光して、光L3を時間分解手段40に導く複数の受光用光ファイバ300を照射用光ファイバ200の外周を囲むように配して束ねられた構成としている。図4では、受光用光ファイバ300が7本である構成を示しているが、その本数は限られるものではなく、照射用光ファイバ及び受光用光ファイバは共に1本以上であれば、受光可能な蛍光強度等に応じて適宜本数及びファイバ径は選択することができる。照射用光ファイバ先端には対物レンズが取り付けられている。
【0075】
バンドルファイバ21’(31’)は、照射用光ファイバ200と受光用光ファイバ300とを所定の配置となるように、接着剤等により固定して作製される。接着剤としては、使用する励起光L1に合わせた耐熱温度を有するものが好ましい。要求される耐熱温度が300℃を超える場合は無機系の耐熱接着剤が用いられる。固定されたバンドルファイバは、体腔内に挿入される略円筒形の長尺のシース内に備えられた構成としたファイバプローブとして使用することができる(図示略)。
【0076】
照射用光ファイバ200及び受光用光ファイバ300としては特に制限ないが、励起光L1の透過率が良く、また、励起光L1による劣化を生じない材料を用いることが好ましい。特に、励起光L1が紫外光や紫外光に近い短波長光である場合は、光エネルギーが大きいため、石英系の光ファイバであることが好ましい。
【0077】
第2実施形態では、被測定物質Dへの励起光L1の照射と蛍光Lfを含む光L3の受光をファイバプローブFで行うことができるため、in vivoでの測定など、生体内での測定が可能であり、また、被測定物質Dの所定の位置の位置決めも、測定者自身が直接プローブを動かして行うことができる。例えば、図8A及びBに示されるような内視鏡スコープ100の鉗子口チャンネル101に上記バンドファイバ21’(31’)を備えた構成、または、内視鏡スコープ100の鉗子口チャンネル101にファイバプローブFを通して使用することができる。この場合、図8A及び図8Bに示されるように、内視鏡スコープ100には、体腔内の所定の位置に照明光を照射する照明部102と、所定の位置で反射された反射光L4を撮像する撮像部103と、送気送水ノズル104が備えられている。照明部102は所定の位置を照明可能な光源に接続されており、撮像部103は所定の位置を測定者が視認可能なモニター等に接続されているがここでは図示は省略する。
【0078】
第2実施形態の構成では、動物はもちろん、ヒトの体内の組織の酸素濃度を直接測定することができる。例えば、ヒトの消化器や気管等の検査に好ましく用いることができる。
【0079】
「低酸素領域検出装置(検出装置)」
図1,図5,図6を参照して、本実施形態の低酸素領域検出装置(検出装置)2,5,8について説明する。
既に述べたように、酸素濃度測定装置1(4,7)では、ステージ90(90’)をxy方向(励起光照射面の面内方向)及びz方向(光軸方向)に移動させることができるので、被測定物質Dの複数の所定の位置において酸素濃度の測定が可能である。従って、例えば、複数の所定の位置を被測定物質Dのx−y面内にむらなく設定することにより、被測定物質Dの面内酸素濃度分布を得ることができる。また、2光子蛍光等の多光子励起を利用することにより、被測定物質の深部の蛍光を検出することもできる。従って、その際は、被測定物質Dのz方向にも測定点を設定することによって3次元の酸素濃度分布を得ることができる。
【0080】
図1,5,6に示されるように、酸素濃度測定装置が顕微鏡タイプである場合には、図1、5に示される、一度にxy面の情報を取得するワイドフィールド方式でも良いし、図6に示される共焦点方式でも良い。
【0081】
従って、酸素濃度測定装置1,4,7に、被測定物質Dの酸素濃度分布を検出可能な低酸素領域検出手段80を備えた構成とすることにより、例えば、低酸素領域を検出する低酸素領域検出装置2(5,8)とすることができる。
【0082】
低酸素領域検出手段80としては、CCD又は冷却CCD等のアレイ検出器等を用いることができる。
【0083】
更に、低酸素領域検出装置2(2’)は、低酸素領域検出手段80による検出結果を画像化して表示する表示手段81を更に備えた構成とすることにより、面内酸素濃度分布や低酸素領域を明確に視認することができる。画像化の手法は、従来から用いられている方法を用いればよく、面内酸素濃度分布を色別に表示する手法や、3次元的に面内濃度分布を表す手法を用いてもよい。複数画像を取得した場合など、それらを画像合成して表示してもよい。
【0084】
また、図7に示されるようなファイバプローブ型の酸素濃度測定装置10の場合は、測定者自身が直接プローブを動かして任意の領域における酸素濃度を測定することができるので、酸素濃度測定装置1を用いる場合と同様に、被測定物質Dの酸素濃度分布を検出可能な低酸素領域検出手段80を備えた構成とすることにより低酸素領域検出装置11とすることができる。
【0085】
かかる実施形態では、低酸素領域検出手段80としては、ファイバプローブの先端に取り付けて使用するMEMSスキャナ等を使用したり、被測定物質を配置するステージ90に稼動部91を設けることにより好適に画像検出を行うことができる。
【0086】
本実施形態の低酸素領域検出装置2(2’)は、上記実施形態の酸素濃度測定装置を備えた構成としているので、上記酸素濃度測定装置1(1’)と同様の効果を奏する。
【0087】
「生体物質分析装置」
図1,図5,図6,図7を参照して、本実施形態の生体物質分析装置3(6,9,12)について説明する。生体物質分析装置3(6,9,12)は、上記低酸素領域検出装置2(5,8,11)に、測定された酸素濃度から、被測定物質Dの病理学的性質を特定する分析手段70を備えた構成としている。
生体組織に異常を生じると、その組織内の酸素濃度が変化することが知られている。例えば、癌化(悪性腫瘍化)した場合や、肝臓疾患等の疾患の場合は、酸素濃度が低くなる。従って、上記酸素濃度測定装置1(4,7,10)又は、低酸素領域検出装置2(5,8,11)に、より、被測定物質Dの所定の位置又は領域における、悪性腫瘍状態の有無等の病理学的性質、及びその度合いを特定することができる。
【0088】
本実施形態の構成では、被測定物質Dの面内の酸素濃度分布を得ることができることから、被測定物質Dの面内において、病理学的性質の異常範囲を特定することができ、また、その範囲内での異常の度合いを特定することができる。
【0089】
悪性腫瘍(癌)の治療では、患部を切除して摘出する外科療法と、切除せずに放射線を照射することにより癌細胞を死滅させる放射線療法などがある。本実施形態の生体物質分析装置によれば、癌化した範囲を特定できることから、外科療法においては、的確に切除する必要範囲のみを切除することができる。癌腫瘍の摘出手術では、癌細胞が患者の身体に残存すると再発の可能性が高まり好ましくないが、再発を恐れるあまり、過剰に組織を切除するのも患者の身体の負担が増大し好ましくない。そこで、必要範囲と判断される部分のみを摘出し、その後、摘出腫瘍が接していた領域の組織を微少量切り取り、本発明の酸素濃度測定装置を用いて、癌細胞の有無を調べる。癌細胞が検出された場合はさらなる切除が必要と判断し、癌細胞が検出されなかった場合は摘出が十分であったと判断することができる。
【0090】
また、化学療法においても、放射線照射が必要な範囲を的確に認識して照射することができるため、放射線によりダメージを受ける正常細胞を極力少なくすることができる。更に、低酸素濃度下では、癌細胞の放射線への感受性が低下することが知られている。癌細胞であるか否かのみを判断できる分析方法では、放射線への感受性の度合いまで見積もることができないため、的確な放射線強度での治療を行う事が難しく、充分な治療効果を得ることが難しい。
【0091】
上記したように、本実施形態の生体物質分析装置では、高精度に酸素濃度を測定することのできる酸素濃度測定装置を備えた構成としているので、癌化した部分等の患部の高精度な酸素濃度情報を、患部の位置情報とともに得ることが可能である。従って、本実施形態の生体物質分析装置によれば、放射線療法において、患部の状態に応じた的確な放射線の種類及び強度を選択することができるため、良好な治療効果を得ることができる。また、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を施術する場合においても、患部の範囲及び状態を特定することができるため、的確な部位を剥離して、患者への負担を最小限に抑えた治療を行うことができる。
【0092】
また、癌腫瘍の摘出の判断は手術中に短時間で行う必要がある。上記したように、上記実施形態の酸素濃度測定装置は、迅速な測定を行う事ができるため、癌治療の治療方針の決定に用いる分析装置としては、スループットが高く、好ましい。
【0093】
「設計変更」
以上、本発明による酸素濃度測定装置、該酸素濃度測定装置を備えた低酸素領域検出装置、及び生体物質分析装置の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない限りにおいて、種々変更することが可能である。
【0094】
例えば、上記実施形態では、酸素濃度測定装置に低酸素領域を検出する検出手段を備えた構成を示したが、低酸素領域に限らず、高酸素領域を検出する検出手段を備えた構成としてもよい。
【0095】
また、被測定物質Dの病理学的性質の特定は、分析手段70を用いて行う構成について説明したが、酸素濃度と病理学的性質の異常度合いとの関係が明確となっている場合には、上記実施形態の酸素濃度測定装置及び低酸素領域検出装置のみによっても、生体物質の病理学的性質を特定することができる。従って、上記した生体物質分析装置において述べた治療効果は、上記実施形態の酸素濃度測定装置及び低酸素領域検出装置によっても得ることができる。
【実施例】
【0096】
以下に、本発明に係る実施例について説明する。
(実施例1)
図1に示される顕微鏡型の酸素濃度測定装置を用いて、培養したHeLa細胞の酸素濃度の測定を行った。励起する自家蛍光物質はFAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)とし、励起光として、1ピコ秒パルス幅のチタンサファイアレーザのSHG光を使用し、FADの励起波長である450nmの光となるように励起光の波長を調整した。このとき、励起光のパルスエネルギーは25nJとした。
【0097】
HeLa細胞は、培地中でpH7.4に調整し、酸素濃度が5mmHgのものと、40mmHgのものと2種類用意し、それぞれの細胞に対して発光波長520nmの蛍光寿命の測定を行った。生体物質においては、FADはプロテインボンド状態とフリーの状態の両者が存在するが、蛍光寿命が4.8ナノ秒以上であるフリー状態のものを測定した。測定温度は37℃とした。その結果、酸素濃度5mmHgの細胞では、蛍光寿命が5.13ナノ秒、40mmHgでは5.10ナノ秒であった。蛍光寿命の差として、両者の酸素濃度の差を検出できた。
【0098】
(実施例2)
励起する自家蛍光物質をヘマトポルフィリンとし、励起光としては、1ピコ秒パルス幅のチタンサファイアレーザのSHG光を使用し、ヘマトポルフィリンの励起波長である420nmの光となるように励起光の波長を調整した以外は実施例1と同様にして(励起光のパルスエネルギーは50nJ)、酸素濃度が5mmHgのHeLa細胞、及び、酸素濃度が30mmHgのHeLa細胞と2種類用意し、それぞれの細胞に対して発光波長615nmの蛍光寿命の測定を行った。その結果、酸素濃度5mmHgの細胞では、蛍光寿命が14.3ナノ秒、30mmHgでは14.2ナノ秒であった。蛍光寿命の差として、両者の酸素濃度の差を検出できた。
【0099】
(実施例3)
薬剤により下部消化器に癌を発生させたマウスを開腹し、大腸を開いた癌患部を被測定物質として、実施例1と同様にして、FADの蛍光寿命を測定することにより酸素濃度の測定を行った。本実施例では、酸素濃度の測定箇所を複数箇所とすることにより、開いた大腸の所定の領域の酸素濃度を計測し、低酸素領域検出手段として、冷却CCDを用いて低酸素領域を画像化して検出した。正常部と予測される癌患部の周囲も同時に測定し画像化するため、マウスを配置したステージにはxy稼動部を設けた。ワイドフィールド型顕微鏡方式を用い、xy面の小さい領域を同時に計測し、xyステージを稼動させることにより複数の小さいxy面画像を取得し、癌患部から正常部までの広範囲の領域を測定できるようにした(図5)。これら複数の画像を画像合成した。測定部はステージのz方向を走査して調整し、被測定物質の表面近傍とした。癌患部と予測される領域は平均で3mmHg、正常部と予測される周辺部は平均で29mmHgであった。
【0100】
測定後、作成した癌患部の病理画像と比較した結果、癌の位置と低酸素領域の位置がほぼ一致していることが確認された。
【0101】
更に、励起光として、200フェムト秒パルス幅のチタンサファイアレーザ(波長840nm、ピークパワー2kW)を用いた2光子励起により、ヘマトポルフィリンの蛍光寿命を測定して同様の測定を行った。マウスを配置したステージにはz方向の稼動部を設け、被想定物質の深さ方向の検出をできるようにした(図6)。本実施例においては、レーザ走査顕微鏡方式を用いxy方向を走査した。レーザ焦点をまず被測定物質の表面に合わせ、表面のデータを取得し、ステージのz稼動部を0.05mmピッチで稼動し、それぞれの深さ毎にxy方向のデータを取得した。その結果、深さ0.2mmまでの低酸素領域の検出を行った。癌患部と予測される領域は平均で5mmHg、正常部と予測される周辺部は平均で35mmHgであった。これを元に、被測定物質の低酸素領域の3次元画像を得ることができた
(実施例4)
図7に示されるファイバプローブ型の酸素濃度測定装置を用いて、実施例3と同様の被測定物質に対して低酸素領域の検出を行った。同様にマウスを開腹し、大腸を開いた癌患部を被測定物質として、ファイバプローブ先端を被測定部に近づけ測定を行った。本実施例では、ファイバプローブを固定し、マウスを配置したステージにxy稼動部を設け患部とその周辺の領域を計測した(図7)。その結果、実施例3と同様、検出された癌の位置と低酸素領域の位置がほぼ一致していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の酸素濃度測定方法、低酸素領域検出方法、及び生体物質分析方法、並びに各装置は、正常細胞と異常細胞(癌細胞等)の診断及び分離に好ましく用いることができる。
【符号の説明】
【0103】
1,4,7,10 酸素濃度測定装置
2,5,8,11 低酸素領域検出装置
3,6,9,12 生体物質分析装置
10 励起光発生手段
11 レーザ(光源)
20 励起光照射手段
21,31 対物レンズ(光学系)
21’,31’ 光ファイバ(バンドルファイバ)
200 照射用光ファイバ
300 受光用光ファイバ
30 受光手段
40 時間分解手段
50 検出手段
60 測定手段
70 分析手段
80 低酸素領域検出手段
81 表示手段
90,90’ ステージ
91,90’ 位置調節手段
100 内視鏡スコープ
101 鉗子口チャンネル
102 照明部
103 撮像部
L1 パルス励起光
Ls 蛍光スペクトル
Lf 蛍光
Tf 蛍光寿命
D 被測定物質(生体物質)
F ファイバプローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体物質中に含まれる4.8ナノ秒以上の蛍光寿命を有する蛍光物質を励起可能な波長を含むパルス励起光を発生させ、
該パルス励起光を前記生体物質の所定の位置に照射し、
該照射により励起された前記蛍光物質から生じる蛍光を含む光を受光し、
該受光した蛍光の強度を時間分解して前記蛍光の蛍光寿命を算出し、
該蛍光寿命から前記生体物質の酸素濃度を測定することを特徴とする測定方法。
【請求項2】
前記蛍光物質が、ポルフィリン類、フラビン酵素、コラーゲン、及び、エラスチンからなる群より選ばれる少なくとも1種の蛍光物質であることを特徴とする請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
前記蛍光物質が、13.3ナノ秒以上の蛍光寿命を有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の測定方法。
【請求項4】
前記受光した蛍光を波長分解した蛍光スペクトルとした後、該蛍光スペクトルから波長毎に前記蛍光強度を時間分解して波長毎の前記蛍光の蛍光寿命を算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の測定方法。
【請求項5】
前記蛍光が、多光子励起により励起されるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の測定方法。
【請求項6】
前記所定の位置が、複数の位置であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の測定方法。
【請求項7】
請求項6に記載の測定方法により得られた前記複数の位置の酸素濃度の大きさに基づいて、前記生体物質の低酸素領域を検出することを特徴とする検出方法。
【請求項8】
前記生体物質の低酸素領域を画像化して表示して検出することを特徴とする請求項7に記載の検出方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の測定方法により測定した酸素濃度の大きさに基づいて、前記生体物質の病理学的性質を特定することを特徴とする生体物質分析方法。
【請求項10】
請求項7又は8に記載の検出方法により前記低酸素領域を検出し、該領域の病理学的性質を特定することを特徴とする生体物質分析方法。
【請求項11】
前記病理学的性質が悪性腫瘍状態の有無であることを特徴とする請求項9又は10に記載の生体物質分析方法。
【請求項12】
生体物質中に含まれる4.8ナノ秒以上の蛍光寿命を有する蛍光物質を励起可能な波長を含むパルス励起光を発生する励起光発生手段と、
該パルス励起光を前記生体物質の所定の位置に照射する励起光照射手段と、
前記パルス励起光が照射されることにより励起された前記蛍光物質から生じる蛍光を含む光を受光する受光手段と、
前記パルス励起光の照射と同期して前記蛍光を時間分解する時間分解手段と、
該時間分解された前記蛍光を検出する検出手段と、
該検出手段により検出された前記蛍光から該蛍光の蛍光寿命を算出し、該蛍光寿命に基づいて前記酸素濃度を測定する測定手段とを備えたことを特徴とする測定装置。
【請求項13】
前記受光手段により受光した前記蛍光を分光して前記時間分解手段に波長分解された前記蛍光を出力する分光手段を更に備えたことを特徴とする請求項12に記載の測定装置。
【請求項14】
前記蛍光物質が、ポルフィリン類、フラビン酵素、コラーゲン、及び、エラスチンからなる群より選ばれる少なくとも1種の蛍光物質であることを特徴とする請求項12又は13に記載の測定装置。
【請求項15】
前記蛍光物質が、13.3ナノ秒以上の蛍光寿命を有するものであることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の測定装置。
【請求項16】
前記所定の位置が、複数の位置であることを特徴とする請求項12〜15のいずれかに記載の測定装置。
【請求項17】
前記蛍光が、多光子励起により励起されるものであることを特徴とする請求項12〜16のいずれかに記載の測定装置。
【請求項18】
ピコ秒からフェムト秒レーザを前記励起光発生手段に備えたことを特徴とする請求項17に記載の測定装置。
【請求項19】
表面に前記生体物質を接触させて保持するステージであって、前記生体物質の任意の位置に前記パルス励起光を照射できるように3次元方向に可動なステージと、
該ステージを3次元方向の任意の位置に動かす位置調節手段とを更に備えたものであり、
前記励起光照射手段は、前記パルス励起光を受光して、該パルス励起光を前記生体物質に照射する光学系を備えたものであり、
前記受光手段は、前記照射により励起された前記蛍光物質から生じる蛍光を含む光を受光して該光を前記時間分解手段に導く光学系を備えたものであることを特徴とする請求項12〜18のいずれかに記載の測定装置。
【請求項20】
表面に前記生体物質を接触させて保持するステージであって、前記生体物質の、少なくとも前記パルス励起光の光軸方向の任意の位置に該パルス励起光を照射できるように可動なステージと、
該ステージを少なくとも光軸方向の任意の位置に動かす第1の位置調節手段と、
前記生体物質の、少なくとも前記パルス励起光の光軸に垂直な面内方向の任意の位置に該パルス励起光を照射できるように前記励起光照射手段を動かす第2の位置調節手段とを更に備えたものであり、
前記励起光照射手段は、前記パルス励起光を受光して、該パルス励起光を前記生体物質に照射する光学系を備えたものであり、
前記受光手段は、前記照射により励起された前記蛍光物質から生じる蛍光を含む光を受光して該光を前記時間分解手段に導く光学系を備えたものであることを特徴とする請求項12〜18のいずれかに記載の測定装置。
【請求項21】
前記生体物質の3次元方向の任意の位置に、前記パルス励起光を照射できるように前記励起光照射手段を動かす位置調節手段を更に備え、
前記励起光照射手段は、前記パルス励起光を受光して、該パルス励起光を前記生体物質に照射する光学系を備えたものであり、
前記受光手段は、前記照射により励起された前記蛍光物質から生じる蛍光を含む光を受光して該光を前記時間分解手段に導く光学系を備えたものであることを特徴とする請求項12〜18のいずれかに記載の測定装置。
【請求項22】
前記励起光照射手段は、前記パルス励起光を前記生体物質に照射する少なくとも1本の照射用光ファイバを備えたものであり、前記受光手段は、前記照射により励起された前記蛍光物質から生じる蛍光を含む光を受光して該蛍光を前記時間分解手段に導く少なくとも1本の受光用光ファイバを備えたものであることを特徴とする請求項12〜21のいずれかに記載の測定装置。
【請求項23】
前記少なくとも1本の照射用光ファイバと前記少なくとも1本の受光用光ファイバとが、1本のバンドルファイバを形成していることを特徴とする請求項22に記載の測定装置。
【請求項24】
前記バンドルファイバは、略中心部に配された1本の前記照射用光ファイバの外周を、複数本の前記受光用光ファイバで囲むように束ねられたものであることを特徴とする請求項23に記載の測定装置。
【請求項25】
前記バンドルファイバが体腔内に挿入される略円筒形の長尺のシース内に備えられたファイバプローブであることを特徴とする請求項23又は24に記載の測定装置。
【請求項26】
前記バンドルファイバが、体腔内の所定の位置に照明光を照射する照明部と、前記所定の位置で反射された反射光を撮像する撮像部と、鉗子チャンネルとを備えた内視鏡スコープの前記鉗子チャンネルに備えられたものであることを特徴とする請求項23又は24に記載の測定装置。
【請求項27】
前記ファイバプローブが、体腔内所定の位置に照明光を照射する照明部と、前記所定の位置で反射された反射光を撮像する撮像部と、鉗子チャンネルとを備えた内視鏡スコープの前記鉗子チャンネルに、前記所定の位置側の前記鉗子チャンネルの出口から突出して備えられたことを特徴とする請求項25に記載の測定装置。
【請求項28】
請求項12〜27のいずれかに記載の測定装置と、
該測定装置において測定された前記複数の位置の酸素濃度の大きさに基づいて、前記生体物質の低酸素領域を検出する低酸素領域検出手段とを備えたことを特徴とする検出装置。
【請求項29】
前記低酸素領域検出手段において検出された前記低酸素領域を画像化して表示する表示装置を更に備えたことを特徴とする請求項28に記載の検出装置。
【請求項30】
請求項12〜29のいずれかに記載の測定装置と、
該測定装置により測定した酸素濃度の大きさに基づいて、前記生体物質の病理学的性質を特定する分析手段とを特徴とする生体物質分析装置。
【請求項31】
前記病理学的性質が悪性腫瘍状態の有無であることを特徴とする請求項30に記載の生体物質分析装置。
【請求項32】
前記低酸素領域検出手段と、
該低酸素領域検出手段により検出された前記低酸素領域の病理学的性質を特定する分析手段とを備えたことを特徴とする請求項30又は31に記載の生体物質分析装置。
【請求項33】
前記病理学的性質が悪性腫瘍状態の有無であることを特徴とする請求項32に記載の生体物質分析装置

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【公開番号】特開2011−185842(P2011−185842A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53214(P2010−53214)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】