光調節装置
【課題】高分子アクチュエータを小さな電圧で駆動して絞り羽根の所望の開閉動作が可能となる小型の光調節装置を提供すること。
【解決手段】光学開口102が形成された基板101と、他の光学開口302と遮蔽部とを備えた光調節手段301と、光調節手段301を回転させる動力を生成するアクチュエータ501と、アクチュエータを変位させる制御手段と、一端が光調節手段301に結合し、他端がアクチュエータ501に連結部材503を介して結合し、光調節手段301にアクチュエータ501の動力を伝達する伝達部材401とを備え、伝達部材401は、動力の伝達の際、アクチュエータ501の変位を拡大することを特徴とする。
【解決手段】光学開口102が形成された基板101と、他の光学開口302と遮蔽部とを備えた光調節手段301と、光調節手段301を回転させる動力を生成するアクチュエータ501と、アクチュエータを変位させる制御手段と、一端が光調節手段301に結合し、他端がアクチュエータ501に連結部材503を介して結合し、光調節手段301にアクチュエータ501の動力を伝達する伝達部材401とを備え、伝達部材401は、動力の伝達の際、アクチュエータ501の変位を拡大することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型の光調節装置、例えば細径の内視鏡に好適な光調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子を用いた内視鏡装置において、近年、半導体製造技術の進展に伴い、微細な画素を有する固体撮像素子が適用可能となってきている。
しかしながら、微細画素の固体撮像素子は撮影対象までの距離による焦点位置の変化に敏感である。また、従来の固定焦点・固定絞りの光学系を用いている内視鏡では、微細な画素を持つ撮像素子を適用しても、高精細画像を得るのは難しい状態にある。
【0003】
この問題を回避するために次の方法が考えられる。一つは、レンズを変位させ、焦点調節機能を付加させる方法である。また、他の方法として、光学系自体は固定焦点で遠点の撮影対象に対して適正な結像が得られるように調節し、近点撮影時に開口径を小さくして焦点深度を増大させることで良好な結像を得る方法がある。
なお、後者の場合には可変絞り機構が必要で、近点撮影時には固体撮像素子に到達する光量が減少するといった問題がある。内視鏡においては、一般的に先端部の照明装置の光によって撮影するため、近点撮像時でも十分な光量が確保できるので大きな問題とはならない。
【0004】
このように、微細画素の撮像素子の性能を活かすには、レンズ駆動装置や可変絞り装置といった機構を要する。しかしながら、細径の内視鏡にレンズ駆動装置を組み込むのはかなり難しい。このため、細径の内視鏡には超小型の可変絞り装置を適用することが望まれる。内視鏡に適用可能な超小型な可変絞り装置光調節装置の例として、特開2007ー127699号公報(特許文献1)では高分子アクチュエータを用いた超小型の可変絞り装置を提供している。
【0005】
【特許文献1】特開2007ー127699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された発明では、高分子アクチュエータは駆動軸を介して直接絞り羽根に連結される構成となっている。この為、絞り羽根を開閉させるには、高分子アクチュエータの大きな変位を必要としていた。ここで、高分子アクチュエータは、通電を繰り返すことにより、その変位量が低下する可能性がある。この傾向は、高電圧を印加して大きな変位量を得ようとした時に特に顕著である。
【0007】
この問題を解決する為には、アクチュエータの変位を拡大させることが可能な機能を絞り装置に付加させる必要がある。ところが、このような機能を付加させると、絞り装置そのもののサイズが大きくなってしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、アクチュエータの小さな変位により絞り羽根の開閉動作が可能となる超小型の光調節装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明によれば、光学開口が形成された基板と、他の光学開口と遮蔽部とを備えた光調節手段と、光調節手段を回転させる動力を生成するアクチュエータと、アクチュエータを変位させる制御手段と、一端が光調節手段に結合し、他端がアクチュエータに連結部材を介して結合し、光調節手段にアクチュエータの動力を伝達する伝達部材とを備え、伝達部材は、動力の伝達の際、アクチュエータの変位を拡大する光調節装置を提供できる。
【0010】
また、本発明の好ましい態様によれば、伝達部材は、基板に形成された光学開口の外周部と基板の外周部との間に配置されることが望ましい。
【0011】
また、本発明の好ましい態様によれば、伝達部材の両端は、基板に形成された光学開口を挟んで対向する位置に配置しているが望ましい。
【0012】
また、本発明の好ましい態様によれば、アクチュエータ、制御手段、連結部材以外は、全てめっき層からなる積層構造体であることが望ましい。
【0013】
また、本発明の好ましい態様によれば、積層構造体は、基板に形成された光学開口よりも大きな開口を有し、基板の外径よりも大きい枠部材で覆われていることが望ましい。
【0014】
また、本発明の好ましい態様によれば、アクチュエータは、弾性部材によって構成された円弧形状をしており、制御手段によって、その弦長を変化させるアクチュエータであり、アクチュエータの弦長の変化によってアクチュエータが結合された伝達部材を駆動させ、伝達部材と連結された光調節手段を回転させることが望ましい。
【0015】
また、本発明の好ましい態様によれば、他の光学開口を持つ光調節手段が回転することによって、他の光学開口が、基板に形成された光学開口の位置に重なる第1の静止位置と、基板に形成された光学開口の位置から退避した第2の静止位置に移動し、基板に形成された光学開口と光調節手段に形成された他の光学開口とを切り替えることが望ましい。
【0016】
また、本発明の好ましい態様によれば、円弧形状のアクチュエータがイオンを含有した高分子材料で構成され、円弧の中心側の面と、その面に対向する面とに一対の電極を備え、制御手段によって一対の電極間に電圧を印加し、イオンを移動させることでその弦長を変化させることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アクチュエータの小さな変位により絞り羽根の開閉動作が可能となる超小型の光調節装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明にかかる光調節装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0019】
図1乃至図10を用いて第1の実施の形態の光調節装置について説明する。図1は光調節装置の分解図を示し、図2は光調節装置の組立図を示している。
図1に示す様に、光調節装置は、第1の開口102が形成された第1の基板101と、第1の開口よりも大きい第2の開口202と回転軸203、204とスペーサー205、206、207とが形成された第2の基板201と、第1の開口102及び第2の開口202よりも小さい第3の開口302と駆動軸穴304と回転軸穴303とが形成された光調節手段301と、回転軸穴403と駆動軸402、404とが形成された伝達部材401と、一方端が第1の基板101上に接着固定された電極502に固定され、他方端が連結部材503に接着固定された高分子アクチュエータ501とで構成される。
【0020】
第2の基板201に形成された回転軸203は、光調節手段301に形成された回転軸穴303を介して第1の基板101に接合される。回転軸204は、伝達部材401に形成された回転軸穴403を介して第1の基板101に接合される。伝達部材401に形成された駆動軸402は、光調節手段301に形成された駆動軸穴304に挿入され、第2の基板201に形成されたスペーサー205至207は直接第1の基板101に接合される。
【0021】
また、図2に示すように伝達部材401に形成された駆動軸404は、連結部材503により高分子アクチュエータ501と連結される。さらに、連結された基板101、201と光調節手段301と伝達手段401は、第1の開口102よりも大きな開口602をもつ枠部材601により全体が覆われている。
【0022】
次に高分子アクチュエータ501の詳細図を図3に示す。円弧形状の高分子アクチュエータ501は、円弧の基材となるイオン含有ポリマー511と、円弧の中心側の面に設けられた第1電極512と、それに対向する面に設けられた第2電極513との3層構造となっている。
【0023】
ここで外部電圧源(図には示していない)から電圧を出力して第1電極512と第2電極513との間に電位差を与える。イオン含有ポリマー511の陽イオンはカソード側に移動する。その結果イオン含有ポリマー511のカソード側が膨潤して、図3に示す点線のように円弧形状の曲率が変化して結果として弦長が変化する。このように、高分子アクチュエータ501の弦長は、外部電圧源の出力電圧によって所定範囲で変化させることができる。
【0024】
次に、光調節装置において、高分子アクチュエータ501、電極502、連結部材503、枠部材601を除いた積層構造体の作成プロセスを図4、図5、図6を用いて示す。本説明では、作成プロセスが見易いよう、更に駆動軸402、404、回転軸203、204、スペーサー205、206、207を除いた図を用いる。
【0025】
本積層構造体は、めっきプロセスとエッチングプロセスを用いて作成される。図4に示すように、各層は、構造体となるめっき層(白部分)と、積層後にエッチングで除去する犠牲層(斜線部分)よりなる。図4では各層を見易いように分解して示している。本来は、第2の基板201を形成する層→隙間となる犠牲層→伝達部材401の層→隙間となる犠牲層→光調節手段301を形成する層→隙間となる犠牲層→第1の基板101を形成する層、といった順番で積み重ねられていく。図5に各層を積み重ねた図を示す。各層を積み重ねた後、エッチングにより、各層に形成された犠牲層(斜線部分)を除去することにより図6に示すように積層構造体が形成される。
【0026】
このプロセスを用いることのメリットを以下に示す。まず、微小な構造が高い加工精度で作成可能である。次に、多層構造にすることによって複雑な構成も作成可能である。さらに、組立の必要がない(セルフアセンブリ)。また、バッチプロセスが可能である。このプロセスを用いることで、本機構のように、複雑な構造をしていても機構が大きくなってしまうことはない。
【0027】
ただし、犠牲層をエッチングで除去するためには、各層に隙間を形成しなくてはならない。隙間が形成されると、第1、第2の基板101、201に形成された開口102、202以外からも光が入射してしまう。そこで、この積層構造体を光調節装置として用いる為に、図1に示している枠部材601に積層構造体をはめ込み、基板101、201に形成された開口以外を遮蔽することで、開口以外からの光の通過を防ぐことが可能となる。
【0028】
以下、図7、図8を用いて各構成要素の動作の詳細を説明する。図7、図8は、見易いよう、第1の基板101、高分子アクチュエータ501、電極502、連結部材503、枠部材601の図示を省略した状態図である。
【0029】
図7、図8に示すように伝達部材401は、第2の基板201に形成された回転軸204を中心に回転可能である。また、光調節手段301は、回転軸203を中心に回転可能となっている。伝達部材401と光調節手段301とは、伝達部材401に形成された駆動軸402によって連結されている。伝達部材401に形成された駆動軸404を動作させることで、伝達部材401が回転し、それに伴い光調節手段301も回転する構成である。
【0030】
図7に示すように、光調節手段301が第2の開口202に重なる第1の静止位置に来たときは、スペーサー205に接触することによって、その位置で静止する。この時、光調節装置の光学開口は光調節手段301に形成された開口302となる。また、図8に示すように、光調節手段301が回転し、第2の開口202から完全に退避する第2の静止位置に来たときは、スペーサー206に接触することでその位置に静止する。
【0031】
図には示していないが、このとき光調節装置の光学開口は第1の基板101に形成された開口102となる。このように、光調節手段301の回転により光学開口の切り替えが行われる。
【0032】
次に図8、図9を用いて本実施形態の光調節装置の動作を説明する。図8、図9は上面図を示しており、本機構の動作が見易いよう、第1の基板101を省略した図である。
【0033】
図8は光調節手段301がスペーサー205に接触し、第2の基板に形成された開口202と重なる第1の静止位置にある場合の状態図である。この状態における光調節装置の光学開口は光調節手段301に形成された開口302となる。また、高分子アクチュエータ501は電極502に固定されており、連結部材503を介し、伝達部材401に形成された駆動軸404に連結されている。
【0034】
そして、図9に示すように、高分子アクチュエータ501は電極502により通電することで、円弧形状の曲率が変わり、その結果変位する。そして、高分子アクチュエータ501と、連結部材503を介して連結されている伝達部材401が第2の基板に形成された回転軸204を中心に回転し、伝達部材401に形成された駆動軸402と連結された光調節手段301が第2の基板に形成された回転軸203を中心に回転する。回転した光調節手段301は、スペーサー206に接触し、回転動作がとまり、第2の開口から完全に退避する第2の静止位置で静止する。この状態では、図には示していないが第1の基板101に形成された第1の開口102が光学調節装置の光学開口となる。
【0035】
本実施形態では連結部材503の先端はリング状に構成し、伝達部材401に形成された駆動軸404に連結される。しかし、連結部材503の先端の形状はリング状だけではなく、駆動軸404にひっかけることが可能な形状、例えば四角形に切欠きを形成したような形状であれば同様な効果を得ることができる。
【0036】
本実施形態では、高分子アクチュエータ501の変位量を拡大する伝達部材401を設け、光調節手段301にこの伝達部材401を連結し、変位を拡大して伝えている。したがって、光調節手段301を開閉する為に必要な高分子アクチュエータ501の変位量を大幅に低減させることが可能になる。この為、高分子アクチュエータ501に通電する電圧を大幅に減少させることができ、高分子アクチュエータ501の信頼性も向上させることができる。
【0037】
また、本実施形態のような複雑な構造を作成する場合、従来の加工技術(切削加工、プレス加工)では構造が大きくなるという問題がある。本実施形態では、めっきプロセスとエッチングプロセスを用いて積層構造体を作成しているため、このような微小で複雑な構造が可能なる。更に、組立工程を必要としないセルフアセンブリが可能となる。
【実施例2】
【0038】
図11は、本発明にかかる光調節装置の第2の実施例の分解図を示す図である。図11乃至図16を用いて第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態と同一の構成要素には、同一の付番をし、説明を省略する。以下、第2の実施形態の光調節装置の構成を説明する。
【0039】
図11は光調節装置の分解図、図12は、高分子アクチュエータ501、連結部材503、電極502、枠部材601を省略した組立図である。
図11に示す様に、光調節装置は、第1の開口702が形成された第1の基板701と、第1の開口よりも大きい第2の開口802と回転軸803、804とスペーサー805、806、807とが形成された第2の基板801と、第1の開口702及び第2の開口802よりも小さい第3の開口302と駆動軸穴304と回転軸穴303とが形成された光調節手段301と、回転軸穴903と駆動軸902と溝904とが形成された伝達部材901と、一方端が第1の基板701上に接着固定された電極502に固定され、他方端が連結部材503に接着固定されている高分子アクチュエータ501とで構成される。
【0040】
第2の基板801に形成された回転軸803は、光調節手段301に形成された回転軸穴303を介して第1の基板701に接合される。回転軸804は、伝達部材901に形成された回転軸穴903を介して第1の基板701に接合される。また、駆動軸受け808に接続された駆動軸809が、第2の基板801の層に独立して設けられる。駆動軸809は、伝達部材901に形成された溝904を介して、第1の基板701上に突出される。
【0041】
第2の基板801に形成されたスペーサー805、806、807は、直接第1の基板701に接合される。また、図には示さないが、第1の基板701より突出した駆動軸809は連結部材503により高分子アクチュエータ501と連結される。さらに第1の実施形態と同様、連結された基板701、801、光調節手段301、伝達手段901は、第1の開口702よりも大きな開口602をもつ枠部材601により全体が覆われている。
【0042】
本実施形態では説明を省略するが、高分子アクチュエータ501、電極502、連結部材503、枠部材601を除く要素は第1の実施形態と同様にめっきプロセスとエッチングプロセスを用いて作成された、めっき層よりなる積層構造体である。
【0043】
以下、図13、図14を用いて各構成要素の詳細を示す。図13、図14は、見易いよう、第1の基板701、高分子アクチュエータ501、電極502、連結部材503、枠部材601の図示を省略した状態図である。
【0044】
図13、図14に示すように、伝達部材901は第2の基板801に形成された回転軸804を中心に回転可能である。光調節手段301は回転軸803を中心に回転可能となっている。伝達部材901と光調節手段301とは、伝達部材901に形成された駆動軸902によって連結されている。また、伝達部材901に形成された溝904から突出している駆動軸809は、溝904に沿って移動可能となっている。このように、駆動軸809を動作させることで、伝達部材901が回転し、それに伴い光調節手段301も回転し、光学開口の切り替えを行う。
【0045】
図13に示すように、光調節装置301が第2の開口802に重なる第1の静止位置に来たときはスペーサー805に接触することによって、その位置で静止する。この時、光調節装置の光学開口は光調節手段301に形成された開口302となる。また、図14に示すように、光調節手段301が回転し、第2の開口802から完全に退避する第2の静止位置に来たときは、スペーサー806に接触することでその位置に静止する。図には示していないが、このときは光調節装置の光学開口は第1の基板701に形成された開口702となる。このように、伝達部材901が回転し、それに伴い光調節手段301も回転し、光学開口の切り替えを行う。
【0046】
次に図15、図16を用いて本実施形態の光調節装置の動作を説明する。図15、図16は上面図を示しており、本機構の動作が見易いよう、第1の基板701を省略した図である。
【0047】
図15は、電圧印加時の図である。光調節手段301は、スペーサー805に接触し、第2の基板801に形成された開口802と重なる第1の静止位置にある。この状態における光調節装置の光学開口は光調節手段301に形成された開口302となる。また、高分子アクチュエータ501は電極502に固定され、連結部材503を介して伝達部材901に形成された溝904から突出した駆動軸809に連結されている。
【0048】
次に、高分子アクチュエータ501への通電を止めた時、高分子アクチュエータ501の復元力により高分子アクチュエータ501の円弧形状の曲率が変わり、その結果変位する。図16に示すように、高分子アクチュエータ501と連結されている伝達部材901が第2の基板に形成された回転軸804を中心に回転し、伝達部材901に形成された駆動軸902と連結された光調節手段301が第2の基板に形成された回転軸803を中心に回転する。回転した光調節手段301は、スペーサー806に接触し、回転動作がとまり、第2の開口802から完全に退避する第2の静止位置で静止する。この状態では、図には示していないが第1の基板701に形成された第1の開口702が光調節装置の光学開口となる。
【0049】
本実施形態においても連結部材503の先端はリング状に構成し、伝達部材901から突出した駆動軸809に連結されている。連結部材503の先端の形状は、リング状だけではなく、駆動軸809にひっかけることが可能な形状、例えば四角形に切欠きを形成したような形状であれば同様な効果を得ることができる。
【0050】
本実施形態は第1の実施形態と同様、光調節手段301に変位量を拡大して伝える伝達部材901を連結させているので、光調節手段301を開閉する為に必要な高分子アクチュエータ501の変位量を大幅に低減させることが可能となる。また、本実施形態ではそれに加えて、高分子アクチュエータ501と連結される駆動軸809が、伝達部材901を回転させる方向(円周方向)だけではなく、伝達部材901に形成された径方向の溝904に沿って移動可能となっている。
【0051】
通常、円弧形状をした高分子アクチュエータ501の変位には、円周方向への変位だけではなく、径方向への変位も含まれる。本実施形態では、溝904を設けたことで、駆動軸809が径方向へも移動可能となっており、高分子アクチュエータ501の径方向への動きを規制することがない。さらに、高分子アクチュエータ501の配置にも自由度を持たせることが可能となる。
更に、本実施形態においても、積層構造体は、めっきプロセスとエッチングプロセスを用いて作成されている。
【0052】
以上説明したように、高分子アクチュエータの変位を拡大して伝える伝達部材を設け、光調節手段にこの伝達部材を連結させている。すなわち、光調節手段を回転させる高分子アクチュエータの変位を大幅に低減させることが可能になる。したがって、高分子アクチュエータに通電する電圧を大幅に減少させることができ、高分子アクチュエータの信頼性も向上させることができる。
また、めっき層からなる積層構造体にすることにより複雑な構造でありながら小型化を可能にするという効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明にかかる光調節装置は固体撮像素子を用いた内視鏡に有用であり、特に、細径の内視鏡に用いる小型の光調節装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1の実施例の光調節装置の分解図を示す図である。
【図2】第1の実施例の光調節装置の組立図を示す図である。
【図3】高分子アクチュエータの動作を説明する図である。
【図4】積層構造体の各層の作成プロセスを示す図である。
【図5】積層構造体の各層を積み重ねた図である。
【図6】図5の状態で犠牲層をエッチングで取り除いた状態を示す図である。
【図7】第1の実施例の第1の静止位置の動作を説明する図である。
【図8】第1の実施例の第2の静止位置の動作を説明する図である。
【図9】第1の実施例の電圧印加時の全体動作を説明する図である。
【図10】第1の実施例の電圧停止時の全体動作を説明する図である。
【図11】第2の実施例の光調節装置の分解図を示す図である。
【図12】第2の実施例の光調節装置の組立図を示す図である。
【図13】第2の実施例の第1の静止位置の動作を説明する図である。
【図14】第2の実施例の第2の静止位置の動作を説明する図である。
【図15】第2の実施例の電圧印加時の全体動作を説明する図である。
【図16】第2の実施例の電圧停止時の全体動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0055】
101、201、701、801 基板
102、202、302、602、702、802 開口
203、204、803、804 回転軸
205、206、207、805、806、807 スペーサー
301 光調節手段
303、403、903 回転軸穴
304 駆動軸穴
401、901 伝達部材
402、404、809、902 駆動軸
501 高分子アクチュエータ
502、511、512 電極
503 連結部材
511 イオン含有ポリマー
601 枠部材
904 溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型の光調節装置、例えば細径の内視鏡に好適な光調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子を用いた内視鏡装置において、近年、半導体製造技術の進展に伴い、微細な画素を有する固体撮像素子が適用可能となってきている。
しかしながら、微細画素の固体撮像素子は撮影対象までの距離による焦点位置の変化に敏感である。また、従来の固定焦点・固定絞りの光学系を用いている内視鏡では、微細な画素を持つ撮像素子を適用しても、高精細画像を得るのは難しい状態にある。
【0003】
この問題を回避するために次の方法が考えられる。一つは、レンズを変位させ、焦点調節機能を付加させる方法である。また、他の方法として、光学系自体は固定焦点で遠点の撮影対象に対して適正な結像が得られるように調節し、近点撮影時に開口径を小さくして焦点深度を増大させることで良好な結像を得る方法がある。
なお、後者の場合には可変絞り機構が必要で、近点撮影時には固体撮像素子に到達する光量が減少するといった問題がある。内視鏡においては、一般的に先端部の照明装置の光によって撮影するため、近点撮像時でも十分な光量が確保できるので大きな問題とはならない。
【0004】
このように、微細画素の撮像素子の性能を活かすには、レンズ駆動装置や可変絞り装置といった機構を要する。しかしながら、細径の内視鏡にレンズ駆動装置を組み込むのはかなり難しい。このため、細径の内視鏡には超小型の可変絞り装置を適用することが望まれる。内視鏡に適用可能な超小型な可変絞り装置光調節装置の例として、特開2007ー127699号公報(特許文献1)では高分子アクチュエータを用いた超小型の可変絞り装置を提供している。
【0005】
【特許文献1】特開2007ー127699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された発明では、高分子アクチュエータは駆動軸を介して直接絞り羽根に連結される構成となっている。この為、絞り羽根を開閉させるには、高分子アクチュエータの大きな変位を必要としていた。ここで、高分子アクチュエータは、通電を繰り返すことにより、その変位量が低下する可能性がある。この傾向は、高電圧を印加して大きな変位量を得ようとした時に特に顕著である。
【0007】
この問題を解決する為には、アクチュエータの変位を拡大させることが可能な機能を絞り装置に付加させる必要がある。ところが、このような機能を付加させると、絞り装置そのもののサイズが大きくなってしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、アクチュエータの小さな変位により絞り羽根の開閉動作が可能となる超小型の光調節装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明によれば、光学開口が形成された基板と、他の光学開口と遮蔽部とを備えた光調節手段と、光調節手段を回転させる動力を生成するアクチュエータと、アクチュエータを変位させる制御手段と、一端が光調節手段に結合し、他端がアクチュエータに連結部材を介して結合し、光調節手段にアクチュエータの動力を伝達する伝達部材とを備え、伝達部材は、動力の伝達の際、アクチュエータの変位を拡大する光調節装置を提供できる。
【0010】
また、本発明の好ましい態様によれば、伝達部材は、基板に形成された光学開口の外周部と基板の外周部との間に配置されることが望ましい。
【0011】
また、本発明の好ましい態様によれば、伝達部材の両端は、基板に形成された光学開口を挟んで対向する位置に配置しているが望ましい。
【0012】
また、本発明の好ましい態様によれば、アクチュエータ、制御手段、連結部材以外は、全てめっき層からなる積層構造体であることが望ましい。
【0013】
また、本発明の好ましい態様によれば、積層構造体は、基板に形成された光学開口よりも大きな開口を有し、基板の外径よりも大きい枠部材で覆われていることが望ましい。
【0014】
また、本発明の好ましい態様によれば、アクチュエータは、弾性部材によって構成された円弧形状をしており、制御手段によって、その弦長を変化させるアクチュエータであり、アクチュエータの弦長の変化によってアクチュエータが結合された伝達部材を駆動させ、伝達部材と連結された光調節手段を回転させることが望ましい。
【0015】
また、本発明の好ましい態様によれば、他の光学開口を持つ光調節手段が回転することによって、他の光学開口が、基板に形成された光学開口の位置に重なる第1の静止位置と、基板に形成された光学開口の位置から退避した第2の静止位置に移動し、基板に形成された光学開口と光調節手段に形成された他の光学開口とを切り替えることが望ましい。
【0016】
また、本発明の好ましい態様によれば、円弧形状のアクチュエータがイオンを含有した高分子材料で構成され、円弧の中心側の面と、その面に対向する面とに一対の電極を備え、制御手段によって一対の電極間に電圧を印加し、イオンを移動させることでその弦長を変化させることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アクチュエータの小さな変位により絞り羽根の開閉動作が可能となる超小型の光調節装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明にかかる光調節装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0019】
図1乃至図10を用いて第1の実施の形態の光調節装置について説明する。図1は光調節装置の分解図を示し、図2は光調節装置の組立図を示している。
図1に示す様に、光調節装置は、第1の開口102が形成された第1の基板101と、第1の開口よりも大きい第2の開口202と回転軸203、204とスペーサー205、206、207とが形成された第2の基板201と、第1の開口102及び第2の開口202よりも小さい第3の開口302と駆動軸穴304と回転軸穴303とが形成された光調節手段301と、回転軸穴403と駆動軸402、404とが形成された伝達部材401と、一方端が第1の基板101上に接着固定された電極502に固定され、他方端が連結部材503に接着固定された高分子アクチュエータ501とで構成される。
【0020】
第2の基板201に形成された回転軸203は、光調節手段301に形成された回転軸穴303を介して第1の基板101に接合される。回転軸204は、伝達部材401に形成された回転軸穴403を介して第1の基板101に接合される。伝達部材401に形成された駆動軸402は、光調節手段301に形成された駆動軸穴304に挿入され、第2の基板201に形成されたスペーサー205至207は直接第1の基板101に接合される。
【0021】
また、図2に示すように伝達部材401に形成された駆動軸404は、連結部材503により高分子アクチュエータ501と連結される。さらに、連結された基板101、201と光調節手段301と伝達手段401は、第1の開口102よりも大きな開口602をもつ枠部材601により全体が覆われている。
【0022】
次に高分子アクチュエータ501の詳細図を図3に示す。円弧形状の高分子アクチュエータ501は、円弧の基材となるイオン含有ポリマー511と、円弧の中心側の面に設けられた第1電極512と、それに対向する面に設けられた第2電極513との3層構造となっている。
【0023】
ここで外部電圧源(図には示していない)から電圧を出力して第1電極512と第2電極513との間に電位差を与える。イオン含有ポリマー511の陽イオンはカソード側に移動する。その結果イオン含有ポリマー511のカソード側が膨潤して、図3に示す点線のように円弧形状の曲率が変化して結果として弦長が変化する。このように、高分子アクチュエータ501の弦長は、外部電圧源の出力電圧によって所定範囲で変化させることができる。
【0024】
次に、光調節装置において、高分子アクチュエータ501、電極502、連結部材503、枠部材601を除いた積層構造体の作成プロセスを図4、図5、図6を用いて示す。本説明では、作成プロセスが見易いよう、更に駆動軸402、404、回転軸203、204、スペーサー205、206、207を除いた図を用いる。
【0025】
本積層構造体は、めっきプロセスとエッチングプロセスを用いて作成される。図4に示すように、各層は、構造体となるめっき層(白部分)と、積層後にエッチングで除去する犠牲層(斜線部分)よりなる。図4では各層を見易いように分解して示している。本来は、第2の基板201を形成する層→隙間となる犠牲層→伝達部材401の層→隙間となる犠牲層→光調節手段301を形成する層→隙間となる犠牲層→第1の基板101を形成する層、といった順番で積み重ねられていく。図5に各層を積み重ねた図を示す。各層を積み重ねた後、エッチングにより、各層に形成された犠牲層(斜線部分)を除去することにより図6に示すように積層構造体が形成される。
【0026】
このプロセスを用いることのメリットを以下に示す。まず、微小な構造が高い加工精度で作成可能である。次に、多層構造にすることによって複雑な構成も作成可能である。さらに、組立の必要がない(セルフアセンブリ)。また、バッチプロセスが可能である。このプロセスを用いることで、本機構のように、複雑な構造をしていても機構が大きくなってしまうことはない。
【0027】
ただし、犠牲層をエッチングで除去するためには、各層に隙間を形成しなくてはならない。隙間が形成されると、第1、第2の基板101、201に形成された開口102、202以外からも光が入射してしまう。そこで、この積層構造体を光調節装置として用いる為に、図1に示している枠部材601に積層構造体をはめ込み、基板101、201に形成された開口以外を遮蔽することで、開口以外からの光の通過を防ぐことが可能となる。
【0028】
以下、図7、図8を用いて各構成要素の動作の詳細を説明する。図7、図8は、見易いよう、第1の基板101、高分子アクチュエータ501、電極502、連結部材503、枠部材601の図示を省略した状態図である。
【0029】
図7、図8に示すように伝達部材401は、第2の基板201に形成された回転軸204を中心に回転可能である。また、光調節手段301は、回転軸203を中心に回転可能となっている。伝達部材401と光調節手段301とは、伝達部材401に形成された駆動軸402によって連結されている。伝達部材401に形成された駆動軸404を動作させることで、伝達部材401が回転し、それに伴い光調節手段301も回転する構成である。
【0030】
図7に示すように、光調節手段301が第2の開口202に重なる第1の静止位置に来たときは、スペーサー205に接触することによって、その位置で静止する。この時、光調節装置の光学開口は光調節手段301に形成された開口302となる。また、図8に示すように、光調節手段301が回転し、第2の開口202から完全に退避する第2の静止位置に来たときは、スペーサー206に接触することでその位置に静止する。
【0031】
図には示していないが、このとき光調節装置の光学開口は第1の基板101に形成された開口102となる。このように、光調節手段301の回転により光学開口の切り替えが行われる。
【0032】
次に図8、図9を用いて本実施形態の光調節装置の動作を説明する。図8、図9は上面図を示しており、本機構の動作が見易いよう、第1の基板101を省略した図である。
【0033】
図8は光調節手段301がスペーサー205に接触し、第2の基板に形成された開口202と重なる第1の静止位置にある場合の状態図である。この状態における光調節装置の光学開口は光調節手段301に形成された開口302となる。また、高分子アクチュエータ501は電極502に固定されており、連結部材503を介し、伝達部材401に形成された駆動軸404に連結されている。
【0034】
そして、図9に示すように、高分子アクチュエータ501は電極502により通電することで、円弧形状の曲率が変わり、その結果変位する。そして、高分子アクチュエータ501と、連結部材503を介して連結されている伝達部材401が第2の基板に形成された回転軸204を中心に回転し、伝達部材401に形成された駆動軸402と連結された光調節手段301が第2の基板に形成された回転軸203を中心に回転する。回転した光調節手段301は、スペーサー206に接触し、回転動作がとまり、第2の開口から完全に退避する第2の静止位置で静止する。この状態では、図には示していないが第1の基板101に形成された第1の開口102が光学調節装置の光学開口となる。
【0035】
本実施形態では連結部材503の先端はリング状に構成し、伝達部材401に形成された駆動軸404に連結される。しかし、連結部材503の先端の形状はリング状だけではなく、駆動軸404にひっかけることが可能な形状、例えば四角形に切欠きを形成したような形状であれば同様な効果を得ることができる。
【0036】
本実施形態では、高分子アクチュエータ501の変位量を拡大する伝達部材401を設け、光調節手段301にこの伝達部材401を連結し、変位を拡大して伝えている。したがって、光調節手段301を開閉する為に必要な高分子アクチュエータ501の変位量を大幅に低減させることが可能になる。この為、高分子アクチュエータ501に通電する電圧を大幅に減少させることができ、高分子アクチュエータ501の信頼性も向上させることができる。
【0037】
また、本実施形態のような複雑な構造を作成する場合、従来の加工技術(切削加工、プレス加工)では構造が大きくなるという問題がある。本実施形態では、めっきプロセスとエッチングプロセスを用いて積層構造体を作成しているため、このような微小で複雑な構造が可能なる。更に、組立工程を必要としないセルフアセンブリが可能となる。
【実施例2】
【0038】
図11は、本発明にかかる光調節装置の第2の実施例の分解図を示す図である。図11乃至図16を用いて第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態と同一の構成要素には、同一の付番をし、説明を省略する。以下、第2の実施形態の光調節装置の構成を説明する。
【0039】
図11は光調節装置の分解図、図12は、高分子アクチュエータ501、連結部材503、電極502、枠部材601を省略した組立図である。
図11に示す様に、光調節装置は、第1の開口702が形成された第1の基板701と、第1の開口よりも大きい第2の開口802と回転軸803、804とスペーサー805、806、807とが形成された第2の基板801と、第1の開口702及び第2の開口802よりも小さい第3の開口302と駆動軸穴304と回転軸穴303とが形成された光調節手段301と、回転軸穴903と駆動軸902と溝904とが形成された伝達部材901と、一方端が第1の基板701上に接着固定された電極502に固定され、他方端が連結部材503に接着固定されている高分子アクチュエータ501とで構成される。
【0040】
第2の基板801に形成された回転軸803は、光調節手段301に形成された回転軸穴303を介して第1の基板701に接合される。回転軸804は、伝達部材901に形成された回転軸穴903を介して第1の基板701に接合される。また、駆動軸受け808に接続された駆動軸809が、第2の基板801の層に独立して設けられる。駆動軸809は、伝達部材901に形成された溝904を介して、第1の基板701上に突出される。
【0041】
第2の基板801に形成されたスペーサー805、806、807は、直接第1の基板701に接合される。また、図には示さないが、第1の基板701より突出した駆動軸809は連結部材503により高分子アクチュエータ501と連結される。さらに第1の実施形態と同様、連結された基板701、801、光調節手段301、伝達手段901は、第1の開口702よりも大きな開口602をもつ枠部材601により全体が覆われている。
【0042】
本実施形態では説明を省略するが、高分子アクチュエータ501、電極502、連結部材503、枠部材601を除く要素は第1の実施形態と同様にめっきプロセスとエッチングプロセスを用いて作成された、めっき層よりなる積層構造体である。
【0043】
以下、図13、図14を用いて各構成要素の詳細を示す。図13、図14は、見易いよう、第1の基板701、高分子アクチュエータ501、電極502、連結部材503、枠部材601の図示を省略した状態図である。
【0044】
図13、図14に示すように、伝達部材901は第2の基板801に形成された回転軸804を中心に回転可能である。光調節手段301は回転軸803を中心に回転可能となっている。伝達部材901と光調節手段301とは、伝達部材901に形成された駆動軸902によって連結されている。また、伝達部材901に形成された溝904から突出している駆動軸809は、溝904に沿って移動可能となっている。このように、駆動軸809を動作させることで、伝達部材901が回転し、それに伴い光調節手段301も回転し、光学開口の切り替えを行う。
【0045】
図13に示すように、光調節装置301が第2の開口802に重なる第1の静止位置に来たときはスペーサー805に接触することによって、その位置で静止する。この時、光調節装置の光学開口は光調節手段301に形成された開口302となる。また、図14に示すように、光調節手段301が回転し、第2の開口802から完全に退避する第2の静止位置に来たときは、スペーサー806に接触することでその位置に静止する。図には示していないが、このときは光調節装置の光学開口は第1の基板701に形成された開口702となる。このように、伝達部材901が回転し、それに伴い光調節手段301も回転し、光学開口の切り替えを行う。
【0046】
次に図15、図16を用いて本実施形態の光調節装置の動作を説明する。図15、図16は上面図を示しており、本機構の動作が見易いよう、第1の基板701を省略した図である。
【0047】
図15は、電圧印加時の図である。光調節手段301は、スペーサー805に接触し、第2の基板801に形成された開口802と重なる第1の静止位置にある。この状態における光調節装置の光学開口は光調節手段301に形成された開口302となる。また、高分子アクチュエータ501は電極502に固定され、連結部材503を介して伝達部材901に形成された溝904から突出した駆動軸809に連結されている。
【0048】
次に、高分子アクチュエータ501への通電を止めた時、高分子アクチュエータ501の復元力により高分子アクチュエータ501の円弧形状の曲率が変わり、その結果変位する。図16に示すように、高分子アクチュエータ501と連結されている伝達部材901が第2の基板に形成された回転軸804を中心に回転し、伝達部材901に形成された駆動軸902と連結された光調節手段301が第2の基板に形成された回転軸803を中心に回転する。回転した光調節手段301は、スペーサー806に接触し、回転動作がとまり、第2の開口802から完全に退避する第2の静止位置で静止する。この状態では、図には示していないが第1の基板701に形成された第1の開口702が光調節装置の光学開口となる。
【0049】
本実施形態においても連結部材503の先端はリング状に構成し、伝達部材901から突出した駆動軸809に連結されている。連結部材503の先端の形状は、リング状だけではなく、駆動軸809にひっかけることが可能な形状、例えば四角形に切欠きを形成したような形状であれば同様な効果を得ることができる。
【0050】
本実施形態は第1の実施形態と同様、光調節手段301に変位量を拡大して伝える伝達部材901を連結させているので、光調節手段301を開閉する為に必要な高分子アクチュエータ501の変位量を大幅に低減させることが可能となる。また、本実施形態ではそれに加えて、高分子アクチュエータ501と連結される駆動軸809が、伝達部材901を回転させる方向(円周方向)だけではなく、伝達部材901に形成された径方向の溝904に沿って移動可能となっている。
【0051】
通常、円弧形状をした高分子アクチュエータ501の変位には、円周方向への変位だけではなく、径方向への変位も含まれる。本実施形態では、溝904を設けたことで、駆動軸809が径方向へも移動可能となっており、高分子アクチュエータ501の径方向への動きを規制することがない。さらに、高分子アクチュエータ501の配置にも自由度を持たせることが可能となる。
更に、本実施形態においても、積層構造体は、めっきプロセスとエッチングプロセスを用いて作成されている。
【0052】
以上説明したように、高分子アクチュエータの変位を拡大して伝える伝達部材を設け、光調節手段にこの伝達部材を連結させている。すなわち、光調節手段を回転させる高分子アクチュエータの変位を大幅に低減させることが可能になる。したがって、高分子アクチュエータに通電する電圧を大幅に減少させることができ、高分子アクチュエータの信頼性も向上させることができる。
また、めっき層からなる積層構造体にすることにより複雑な構造でありながら小型化を可能にするという効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明にかかる光調節装置は固体撮像素子を用いた内視鏡に有用であり、特に、細径の内視鏡に用いる小型の光調節装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1の実施例の光調節装置の分解図を示す図である。
【図2】第1の実施例の光調節装置の組立図を示す図である。
【図3】高分子アクチュエータの動作を説明する図である。
【図4】積層構造体の各層の作成プロセスを示す図である。
【図5】積層構造体の各層を積み重ねた図である。
【図6】図5の状態で犠牲層をエッチングで取り除いた状態を示す図である。
【図7】第1の実施例の第1の静止位置の動作を説明する図である。
【図8】第1の実施例の第2の静止位置の動作を説明する図である。
【図9】第1の実施例の電圧印加時の全体動作を説明する図である。
【図10】第1の実施例の電圧停止時の全体動作を説明する図である。
【図11】第2の実施例の光調節装置の分解図を示す図である。
【図12】第2の実施例の光調節装置の組立図を示す図である。
【図13】第2の実施例の第1の静止位置の動作を説明する図である。
【図14】第2の実施例の第2の静止位置の動作を説明する図である。
【図15】第2の実施例の電圧印加時の全体動作を説明する図である。
【図16】第2の実施例の電圧停止時の全体動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0055】
101、201、701、801 基板
102、202、302、602、702、802 開口
203、204、803、804 回転軸
205、206、207、805、806、807 スペーサー
301 光調節手段
303、403、903 回転軸穴
304 駆動軸穴
401、901 伝達部材
402、404、809、902 駆動軸
501 高分子アクチュエータ
502、511、512 電極
503 連結部材
511 イオン含有ポリマー
601 枠部材
904 溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学開口が形成された基板と、
他の光学開口と遮蔽部とを備えた光調節手段と、
前記光調節手段を回転させる動力を生成するアクチュエータと、
前記アクチュエータを変位させる制御手段と、
一端が前記光調節手段に結合し、他端が前記アクチュエータに連結部材を介して結合し、前記光調節手段に前記アクチュエータの動力を伝達する伝達部材と、を備え、
前記伝達部材は、前記動力の伝達の際、前記アクチュエータの変位を拡大することを特徴とする光調節装置。
【請求項2】
前記伝達部材は、前記基板に形成された光学開口の外周部と前記基板の外周部との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の光調節装置 。
【請求項3】
前記伝達部材の両端は、前記基板に形成された前記光学開口を挟んで対向する位置に配置していることを特徴とする請求項2に記載の光調節装置。
【請求項4】
前記アクチュエータ、前記制御手段、前記連結部材以外は、全てめっき層からなる積層構造体であることを特徴とする請求項3に記載の光調節装置。
【請求項5】
前記積層構造体は、前記基板に形成された前記光学開口よりも大きな開口を有し、前記基板の外径よりも大きい枠部材で覆われていることを特徴とする請求項4に記載の光調節装置。
【請求項6】
前記アクチュエータは、弾性部材によって構成された円弧形状をしており、前記制御手段によって、その弦長を変化させるアクチュエータであり、
前記アクチュエータの弦長の変化によって前記アクチュエータが結合された前記伝達部材を駆動させ、前記伝達部材と連結された前記光調節手段を回転させることを特徴とする請求項5に記載の光調節装置。
【請求項7】
前記他の光学開口を持つ前記光調節手段が回転することによって、
前記他の光学開口が、前記基板に形成された前記光学開口の位置に重なる第1の静止位置と、前記基板に形成された前記光学開口の位置から退避した第2の静止位置に移動し、
前記基板に形成された前記光学開口と、前記光調節手段に形成された前記他の光学開口とを切り替えることを特徴とする請求項5または6に記載の光調節装置。
【請求項8】
前記円弧形状のアクチュエータがイオンを含有した高分子材料で構成され、円弧の中心側の面と、その面に対向する面とに一対の電極を備え、
前記制御手段によって前記一対の電極間に電圧を印加し、前記イオンを移動させることでその弦長を変化させることを特徴とする請求項6に記載の光調節装置。
【請求項1】
光学開口が形成された基板と、
他の光学開口と遮蔽部とを備えた光調節手段と、
前記光調節手段を回転させる動力を生成するアクチュエータと、
前記アクチュエータを変位させる制御手段と、
一端が前記光調節手段に結合し、他端が前記アクチュエータに連結部材を介して結合し、前記光調節手段に前記アクチュエータの動力を伝達する伝達部材と、を備え、
前記伝達部材は、前記動力の伝達の際、前記アクチュエータの変位を拡大することを特徴とする光調節装置。
【請求項2】
前記伝達部材は、前記基板に形成された光学開口の外周部と前記基板の外周部との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の光調節装置 。
【請求項3】
前記伝達部材の両端は、前記基板に形成された前記光学開口を挟んで対向する位置に配置していることを特徴とする請求項2に記載の光調節装置。
【請求項4】
前記アクチュエータ、前記制御手段、前記連結部材以外は、全てめっき層からなる積層構造体であることを特徴とする請求項3に記載の光調節装置。
【請求項5】
前記積層構造体は、前記基板に形成された前記光学開口よりも大きな開口を有し、前記基板の外径よりも大きい枠部材で覆われていることを特徴とする請求項4に記載の光調節装置。
【請求項6】
前記アクチュエータは、弾性部材によって構成された円弧形状をしており、前記制御手段によって、その弦長を変化させるアクチュエータであり、
前記アクチュエータの弦長の変化によって前記アクチュエータが結合された前記伝達部材を駆動させ、前記伝達部材と連結された前記光調節手段を回転させることを特徴とする請求項5に記載の光調節装置。
【請求項7】
前記他の光学開口を持つ前記光調節手段が回転することによって、
前記他の光学開口が、前記基板に形成された前記光学開口の位置に重なる第1の静止位置と、前記基板に形成された前記光学開口の位置から退避した第2の静止位置に移動し、
前記基板に形成された前記光学開口と、前記光調節手段に形成された前記他の光学開口とを切り替えることを特徴とする請求項5または6に記載の光調節装置。
【請求項8】
前記円弧形状のアクチュエータがイオンを含有した高分子材料で構成され、円弧の中心側の面と、その面に対向する面とに一対の電極を備え、
前記制御手段によって前記一対の電極間に電圧を印加し、前記イオンを移動させることでその弦長を変化させることを特徴とする請求項6に記載の光調節装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−294342(P2009−294342A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146599(P2008−146599)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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