説明

光透過性シート材及びその製造方法

【課題】本発明は、十分な光量を透過できるとともに高いブラインド効果を得ることができる光透過性シート材を提供することを目的とするものである。
【解決手段】シート材1は、表地2、裏地3及び遮光層4からなり、全体の構成糸を樹脂加工により固着させて表地2と裏地3との間が所定間隔空けて保持されるように成形されている。表地2及び裏地3は、経方向に鎖編により編成された編目列が緯方向に所定間隔空けて配列されて隣接する編目列に交互に所定長さずつ挿入糸を編み込んで平面状に形成されている。遮光層4は、表地2及び裏地3の編目列との間に交互に連結糸を編み込んで経方向に面状に形成されており、複数の遮光層4が緯方向に互いに平行となるように配列されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内や自動車等の車内に設置されるブラインドやシェードに用いられる光透過性の編物製シート材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上述したブラインドやシェードは、室内や車内に入射する外光を遮光するために設置されるが、遮光部材の材料としては、金属板、樹脂板、布帛といった様々な材料が用途に応じて使用されている。その中で織物や編物からなる布帛は、インテリアデザインとしても活用できることから、様々な種類のものが提案されている。例えば、特許文献1では、縦型ブラインド用波形スクリーンとして、ハニカム状の空隙を有する立体的編物製布状材を用いた点が記載されている。また、特許文献2では、表編地及び裏編地を連結糸で連結し、表編地と裏編地との間に連結糸の立毛部分による立毛層を形成した二重カーテン地が記載されている。また、特許文献3では、一対の地組織を所定間隔で保持可能な長さを有する複数の糸列部を設け、糸列部は地組織に織り込まれた糸が多数配列して面状に形成されている点が記載されている。また、特許文献4では、鎖編糸と挿入糸とによってフロントとバックとの編組織が所定間隔を存置した離間状態で編成し、フロントとバックとの間に別の糸を斜め方向に掛け渡した編成部分を形成したブラインド用編生地が記載されている。
【特許文献1】特開平9−228764号公報
【特許文献2】特開2001−172841号公報
【特許文献3】特開2002−54050号公報
【特許文献4】実公平7−2633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の特許文献では、遮光部分を糸により織編組織で形成しているが、特許文献4のように遮光部分が光を透過しないように形成すると、外光を室内に入れたいときにいちいち折畳む必要があり、操作性の面で効率的ではない。特許文献2及び3では、遮光部分を可動するように構成して外光を入れたい時には可動部分を開く方向に回動させているが、布製のため幅が広くなると中央部分が弛んだり、繰返し回動させると可動部分が劣化するといった耐久性の面で問題がある。特許文献1では、立体的編物製布状材の角度によって透過する光量が調節できるようになっているが、ハニカム状の空隙から入射するようになっているため十分な光量を入射させるのが難しい。また、特許文献4では、フロント側の編組織の鎖編列に対して緯方向に振られた挿入糸を編み込んでいるが、バック側の編組織にはこうした挿入糸を編み込んでおらず、編地全体の強度が弱く変形しやすいため、透過する光量にバラツキが生じるようになる。
【0004】
そこで、本発明は、十分な光量を透過できるとともに高いブラインド効果を得ることができる光透過性シート材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る光透過性シート材は、経方向に鎖編により編成される複数の編目列を緯方向に所定間隔空けて配列するとともに隣接する編目列に交互に所定長さずつ挿入糸を編み込んで形成された表地及び裏地を備え、表地及び裏地の編目列の間に交互に連結糸を編み込んで経方向に面状に形成された遮光層を緯方向に複数配列し、対向配置された表地及び裏地の編目列がそれぞれ隣接する遮光層に連結されているとともに対向配置された表地及び裏地の編目列からずれた位置の編目列の間に各遮光層が形成されており、全体の構成糸を樹脂加工により固着させて表地と裏地との間が所定間隔空けて保持されるように成形されていることを特徴とする。さらに、前記表地及び前記裏地は、一対の前記挿入糸が隣接する編目列の間で互いに交差するように緯方向に振りながら掛け渡して編成されており、経方向の前記編目列及び緯方向の前記挿入糸により格子状に形成されていることを特徴とする。
【0006】
本発明に係るブラインドは、上記の光透過性シート材を用いて前記編目列が長手方向になるように帯状に形成されたスラットが複数配列されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る光透過性シート材の製造方法は、経方向に鎖編により編成される複数の編目列を緯方向に所定間隔空けて配列し隣接する編目列に交互に所定長さずつ挿入糸を編み込み一対の挿入糸を隣接する編目列の間で互いに交差するように緯方向に振りながら掛け渡して形成された表地及び裏地を備えるとともに表地及び裏地の編目列の間に交互に連結糸を編み込んで経方向に面状に形成された遮光層を緯方向に複数配列した編地を編成し、編成された編地に樹脂材料を含浸し、樹脂材料を含浸した編地に緯方向の引張力を付与することで表地及び裏地の編目列が経方向に直線状に延び挿入糸が隣接する編目列の間で緯方向に直線状に延びて格子状に形成されるとともに表地及び裏地の間を所定間隔空けた状態に保持して樹脂材料を固化し、対向配置された表地及び裏地の編目列がそれぞれ隣接する遮光層に連結されているとともに対向配置された表地及び裏地の編目列からずれた位置の編目列の間に各遮光層が形成されるように編地全体の構成糸を固着させて成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記のような構成を有することで、緯方向に所定間隔空けて配列された表地及び裏地の編目列の間には細い挿入糸以外に入射する光を遮るものはなく、その間の空隙から十分な光量を透過させることができる。そして、遮光層は、表地及び裏地の編目列の間に交互に連結糸を編み込んで経方向に面状に形成されているので、遮光層の面方向に沿って編目列の間から透過する光を遮ることがなく、遮光層の面方向において十分な光量が透過するようになる。
【0009】
また、対向配置された表地及び裏地の編目列がそれぞれ隣接する遮光層に連結されているとともに対向配置された表地及び裏地の編目列からずれた位置の編目列の間に各遮光層が形成されているので、表地及び裏地の対向配置された編目列の対向する方向から入射する光は遮光層によってほぼ遮断されて高いブラインド効果を得ることができる。
【0010】
そして、遮光層の面方向と編目列の対向方向との間の光量の差が大きく見る方向によって明暗のコントラストが明瞭に表出するようになり、インテリアデザインとしての効果も発揮することができる。
【0011】
また、全体の構成糸を樹脂加工により固着させて表地と裏地との間が所定間隔空けて保持されるように成形されているので、シート材に可動部分がなくなって強度及び耐久性が向上し、例えば、ブラインドのスラットや車内用のサンシェードとして使用しても型崩れが生じたり劣化することはない。そして、鎖編で編成した編目列を連結糸で連結する組織構造となっているので、厚さ方向の圧縮や捩りに対しても強度が向上する。
【0012】
また、表地及び裏地は、一対の挿入糸を隣接する編目列の間で互いに交差するように緯方向に振りながら掛け渡して編成することで経方向の編目列及び緯方向の挿入糸により格子状に編成され、さらに、経方向の編目列には挿入糸が編み込まれるとともに緯方向に挿入糸が二重に掛け渡されるので、表地及び裏地の光透過性を確保しながらその強度を向上させて保形性をより高めることができる。そして、一対の挿入糸を互いに交差するように緯方向に振りながら掛け渡して編み込まれているので、編地全体を緯方向に引張力を付与して挿入糸を緊張状態にすれば表地及び裏地全体を格子状に容易に整形することができる。
【0013】
本発明に係るブラインドは、光透過性シート材を用いて編目列が長手方向になるように帯状に形成されたスラットを複数配列しているので、各スラットを長手方向に沿った軸を中心に回動させて、各スラットの遮光層の面方向が正面を向くようにして光を透過させたり、編目列の対向方向が正面を向くようにして光を遮断したりすることができ、高いブラインド効果を有するとともに十分な光の透過により明暗のコントラストを大きくすることが可能となる。
【0014】
こうしたブラインドは、光透過性シート材からなるスラットの回動方向によって、厚地のカーテンのような重厚感と風合い並びにレースカーテンのような軽量感と透過性を表出でき、様々なシチュエーションに対応可能な新規なインテリアデザインとして使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明に係る実施形態に関する斜視図であり、図2はその正面図(図2(a))及び断面図(図2(b))である。シート材1は、表地2、裏地3及び遮光層4からなり、全体の構成糸を樹脂加工により固着させて表地2と裏地3との間が所定間隔空けて保持されるように成形されている。
【0017】
表地2は、経方向に鎖編により編成された編目列20が緯方向に所定間隔空けて配列されて隣接する編目列20に交互に所定長さずつ挿入糸21を編み込んで平面状に形成されている。したがって、表地2は、経方向に直線状に延びる編目列20と、隣接する編目列20の間に緯方向に振られて掛け渡すように配列された挿入糸21とにより格子状に形成されている。
【0018】
同様に、裏地3は、経方向に鎖編により編成された編目列30が緯方向に所定間隔空けて配列されて隣接する編目列30に交互に所定長さずつ挿入糸31を編み込んで平面状に形成されている。したがって、表地3は、経方向に直線状に延びる編目列30と、隣接する編目列30の間に緯方向に振られて掛け渡すように配列された挿入糸31とにより格子状に形成されている。
【0019】
図3は、表地2及び裏地3の編組織を示す模式図である。隣接する編目列20の間には、一対の挿入糸21a及び21bが緯方向に振られながら所定の長さずつ交互に編目列20に編み込まれており、経方向の編目列20及び緯方向の挿入糸21により格子状に編成されている。一対の挿入糸21a及び21bは、緯方向に互いに逆方向に振られて編目列20の間で互いに交差するようにされているため、経方向の編目列20には挿入糸21a及び21bが二重に編み込まれるとともに緯方向に挿入糸21が交差するように二重に掛け渡されるので、編地全体の強度を向上させて保形性を高め、表地2及び裏地3の光透過性が確保されるようになっている。したがって、後述するように、シート材1を編目列20に沿って帯状に形成した場合にも編目列20及び挿入糸21により形成される格子形状がほとんど変形することはなく光透過性を安定して保持することができる。
【0020】
そして、表地2の編目列20は裏地3の編目列30に対向配置されており、図2(a)に示すように正面から見て表地2及び裏地3は重なるように配置される。
【0021】
遮光層4は、表地2の編目列20と裏地3の編目列30との間に交互に連結糸を編み込んで経方向に面状に形成されており、複数の遮光層4が緯方向に互いに平行となるように配列されている。遮光層4を形成する連結糸は密に配列されて遮光性を持たせており、連結糸に捲縮糸等の嵩高性の糸を使用することで遮光性をより向上させることができる。
【0022】
そして、遮光層4は、図2(b)に示すように、対向配置された表地2の編目列20及び裏地3の編目列30から1つずれた位置の編目列の間を連結するようにされている。隣接する遮光層4の一方が対向配置された表地2の編目列20に連結され、他方が対向配置された裏地3の編目列30に連結されている。そのため、図2(a)に示すように、正面から見て全面に遮光層4が表出し、シート材1の全面が遮光された状態になる。そして、遮光層4の面方向に沿った角度から見ると、遮光層4の間から透過する光により明暗のコントラストを大きくすることができる。
【0023】
図4は、本実施形態に関する編組織図である。L1及びL2は表地2の挿入糸21であり、L3は鎖編により編成される表地2の編目列20である。図示されるように、一対の挿入糸21であるL1及びL2が隣接する編目列20に所定長さずつ交互に編み込まれ、隣接する編目列20の間で交差するように掛け渡される。
【0024】
L4及びL5は両端の耳部を編成するための編成糸であり、後述するように、成形工程で編成された編地の両端を搬送ピンに固定して張設するために用いられる。L6は連結糸であり、編目列20及び30の編目に交互に編み込まれる。
【0025】
L7は鎖編により編成される裏地3の編目列30であり、L8及びL9は裏地3の挿入糸31である。表地2と同様に一対の挿入糸31であるL8及びL9は隣接する編目列30に所定長さずつ交互に編み込まれ、隣接する編目列30の間で交差するように掛け渡されている。
【0026】
図5は、編成するためのダブルラッシェル編機に関する概略構成図である。表地2を編成するために、フロントニードル50、トリックプレート51及びステッチコーム52が設けられており、裏地3を編成するために、バックニードル60、トリックプレート61及びステッチコーム62が設けられている。ガイドL1〜L9をスイングしながら、フロントニードル50及びバックニードル60により表地2及び裏地3を編成し、連結糸を交互に両ニードルを掛けて編み込まれる。
【0027】
表地2及び裏地3の編成糸としては、レーヨンに代表される再生繊維、綿に代表される天然繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系合成繊維、ナイロンに代表される脂肪族ポリアミド系合成繊維あるいはこれらの混合繊維を用いることができ、長繊維糸又は紡績糸のいずれであってもよく、特に限定されない。
【0028】
連結糸としては、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系合成繊維、ナイロンに代表される脂肪族ポリアミド系合成繊維等の合成繊維を用いた捲縮糸といった嵩高性の糸が好ましい。こうした糸を用いることで、遮光層として面状に編成した場合に遮光性を向上させることができる。
【0029】
図6は、図4で示すように編成された編地を樹脂加工により構成糸を固着させて成形するための工程である。編地は必要に応じて染色及び精錬しておく。そして、シート材1となる編地をローラにより搬送して、樹脂液を貯留する液槽100内に搬入し編地に樹脂材料を含浸させる。含浸させる樹脂材料としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂等が好ましい。
【0030】
含浸された編地を絞りローラ101により挟圧して余分な樹脂液を絞り取り、乾燥機102内に搬入する。乾燥機102では編地の両側端の耳部をピンに掛けて張設した状態で乾燥させる。乾燥工程では、150℃で2〜3分乾燥させるのがよい。編地の両側端を引っ張って張設した状態で乾燥させるので、隣接する編目列の間に交差するように掛け渡された挿入糸が緊張状態となって表地及び裏地の編目列が経方向に直線状に延び緯方向に挿入糸が直線状に延びて格子状に形成されるとともに表地及び裏地が所定間隔を空けて保持された状態で構成糸が固着して成形されるようになる。
【0031】
図7は、本発明に係る別の実施形態に関する斜視図であり、図8はその正面図(図8(a))及び断面図(図8(b))である。シート材1’は、表地2’、裏地3’及び遮光層4’からなり、図1と同様に、全体の構成糸を樹脂加工により固着させて表地2’と裏地3’との間が所定間隔空けて保持されるように成形されている。
【0032】
この例では、図8(b)に示すように、遮光層4’は、表地2’及び裏地3’の編目列20’及び30’に1つおきに連結し2つずらした位置の編目列の間に傾斜して形成されている。そのため、遮光層4’の間隔は図1の場合に比べて拡がるが、遮光層4’がその分幅が拡がるとともに隣接する遮光層4’が連結される編目列を対向配置することで、図8(a)に示すように、正面から見ると全面に遮光層4’が表出して隙間なく遮光されるようになる。そして、遮光層4’の面方向に沿った角度から見ると、遮光層4’の間隔が拡がった分透過する光量が増加して明暗のコントラストをさらに大きくすることができる。
【0033】
図7に示す編地を編成する場合には、図4に示す編組織図においてL6の連結糸の間隔を長くすることで遮光層4’の幅を拡げることができる。
【0034】
図9は、ブラインド200に関する斜視図であり、図10はA−A断面図である。ブラインド200は、シート材1を編目列が長手方向になるように帯状に切断して作成したスラット201を上下方向に吊下げて複数配列している。各スラット201は、上端を公知の回動操作機構202に取り付けて上下方向の回動軸を中心に回動するようになっている。
【0035】
図9は、入射光Sに対してブラインド200が開いた状態を示しており、図10に示すように、遮光層の面方向が入射光Sの入射方向と一致させることで、ブラインド200の正面から見ると全面から光が透過するようになる。
【0036】
図11は入射光Sに対してブラインド200を閉じた状態を示しており、図12はB−B断面図を示している。スラット201を図8の状態から約90度回動させてブラインド200を閉じた状態にすると、遮光層が入射光Sを遮光するようになり、ブラインド200の正面から見ると入射光Sが全面で遮光されるようになる。
【0037】
図13は、ブラインド200のスラット201を回動させた場合の遮光作用に関する説明図である。ブラインド200は、縦型ブラインドの形態を備えており、従来の縦型ブラインドとレースカーテンの両方の機能を有している。すなわち、昼間のように室外が明るい状態では、室内から室外がブラインドを透過して見ることができるが、室外からはブラインドにより室内を見ることが困難となる。そして、室外からは空気が流入可能で光も入射できブラインドにより妨げられることはない。
【0038】
図13(a)では、スラット201が正面から見てほぼ直交する方向(回動角度0度)に設定された場合を示しており、ブラインド200を正面から見た場合外光は遮光層により遮光されて入射されないが、遮光層の面方向からの外光が室内に入射するため厚地のカーテンのようにほのかに明るい状態となる。
【0039】
図13(b)では、図12(a)の状態から反時計回りに回動してスラット201が半開状態となり、ブラインド200を正面から見た場合遮光層の面方向が外光の入射方向と一致し、入射する光量が大きくなる。そのためレースカーテンのような光透過性を実現することができる。
【0040】
図13(c)では、スラット201が全開状態となり(回動角度約90度)、ブラインド200を正面から見た場合スラット201の表面の面方向が外光の入射方向と一致し、外光がほぼ遮光されることなく入射するようになり、室内がカーテンを引いた場合のような明るい状態となる。
【0041】
図13(d)では、図13(c)の状態からさらに反時計回りに回動してスラット201が半開状態となり、ブラインド200の正面から見た場合遮光層の面方向が外光の入射方向と直交して外光を遮光するようになるが、スラット201の間から外光が入射して室内の明るさが図13(a)より明るく図13(b)よりも暗い状態となる。
【0042】
図13(e)では、図13(a)の状態からスラット201が反転(回動角度約180度)した状態で、図13(a)と同様にブラインド200の正面から見た場合に外光は遮光層により遮光されて入射されないが、遮光層の面方向から外光が室内に入射して厚地カーテンのようなほのかに明るい状態となる。
【0043】
以上のように、ブラインドのスラットに本発明に係るシート材を用いることで、スラットを回動させて明暗のコントラストを段階的に調整することができ、厚地のカーテンのような風合い及びレースカーテンのような透過性を実現することができ、さまざまなシチュエーションに合せて調光したり遮光したりすることが可能なインテリアデザインとして用いることができる。そして、シート材の面方向に対する遮光層の角度を変化させることで、遮光性及び光透過性を変化させることが可能となる。例えば、遮光層の角度を面方向に対して大きくすれば光透過性が高くなり、面方向に対して小さくすれば遮光性を高くすることができる。
【0044】
図14は、ブラインド300に関する斜視図であり、図15はC−C断面図である。ブラインド300は、シート材1を編目列が長手方向になるように帯状に切断して作成したスラット301を水平方向に横設して上下方向に複数配列しており、横型ブラインドの形態を備えている。
【0045】
図14は、入射光Sに対してブラインド300が開いた状態を示しており、図15に示すように、遮光層の面方向が入射光Sの入射方向と一致させることで、ブラインド300の正面から見ると全面から光が透過するようになる。
【0046】
図16は入射光Sに対してブラインド300を閉じた状態を示しており、図17はD−D断面図を示している。スラット301を回動させてブラインド300を閉じた状態にすると、遮光層が入射光Sを遮光するようになり、ブラインド300の正面から見ると入射光Sが全面で遮光されるようになる。
【0047】
ブラインド300においても開いた状態と閉じた状態とで明暗のコントラストを大きくすることができ、インテリアデザインとしても好ましいものとなる。
【実施例】
【0048】
図5に示すダブルラッシェル編機を使用して、図7に示す実施形態の編地を編成した。表地及び裏地の編成糸として、ポリエステル繊維からなる110デシテックスの長繊維糸を用い、連結糸として、ポリエステル繊維からなる300デシテックスのウーリー加工糸を用いた。編成は、9ゲージで行い、目付26.55kgで作成した。
【0049】
そして、樹脂液としてアクリル系樹脂材料を用いて図6に示す樹脂加工を行い、編地全体の構成糸を固着させて成形した。成形されたシート材は、遮光層の面方向に沿って見た場合に遮光層の間から十分な光量が透過するが、シート材を回転して正面から見ると遮光層が全面に表出して光を遮光し、明暗のコントラストが大きくなることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係るシート材は、遮光性と光透過性との間の明暗のコントラストが大きいため、ブラインドやシェードに好適である。例えば、自動車の車内に取り付けるサンシェードに用いると、窓の内面に密着させることで車内に入射する光量を遮光することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る実施形態に関する斜視図である。
【図2】図1に示す実施形態に関する正面図及び断面図である。
【図3】図1に示す実施形態の表地及び裏地に関する編組織の模式図である。
【図4】図1に示す実施形態に関する編組織図である。
【図5】ダブルラッシェル編機の概略構成図である。
【図6】シート材の成形加工に関する工程図である。
【図7】本発明に係る別の実施形態に関する斜視図である。
【図8】図7に示す実施形態に関する正面図及び断面図である。
【図9】ブラインドに関する斜視図である。
【図10】図9に示すブラインドの断面図である。
【図11】図9に示すブラインドの閉じた状態を示す斜視図である。
【図12】図11に示すブラインドの断面図である。
【図13】ブラインドのスラットを回動させた場合の遮光作用に関する説明図である。
【図14】別のブラインドに関する斜視図である。
【図15】図14に示すブラインドの断面図である。
【図16】図14に示すブラインドの閉じた状態を示す斜視図である。
【図17】図16に示すブラインドの断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 シート材
2 表地
20 編目列
21 挿入糸
3 裏地
30 編目列
31 挿入糸
4 遮光層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経方向に鎖編により編成される複数の編目列を緯方向に所定間隔空けて配列するとともに隣接する編目列に交互に所定長さずつ挿入糸を編み込んで形成された表地及び裏地を備え、表地及び裏地の編目列の間に交互に連結糸を編み込んで経方向に面状に形成された遮光層を緯方向に複数配列し、対向配置された表地及び裏地の編目列がそれぞれ隣接する遮光層に連結されているとともに対向配置された表地及び裏地の編目列からずれた位置の編目列の間に各遮光層が形成されており、全体の構成糸を樹脂加工により固着させて表地と裏地との間が所定間隔空けて保持されるように成形されていることを特徴とする光透過性シート材。
【請求項2】
前記表地及び前記裏地は、一対の前記挿入糸が隣接する編目列の間で互いに交差するように緯方向に振りながら掛け渡して編成されており、経方向の前記編目列及び緯方向の前記挿入糸により格子状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光透過性シート材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光透過性シート材を用いて前記編目列が長手方向になるように帯状に形成されたスラットが複数配列されていることを特徴とするブラインド。
【請求項4】
経方向に鎖編により編成される複数の編目列を緯方向に所定間隔空けて配列し隣接する編目列に交互に所定長さずつ挿入糸を編み込み一対の挿入糸を隣接する編目列の間で互いに交差するように緯方向に振りながら掛け渡して形成された表地及び裏地を備えるとともに表地及び裏地の編目列の間に交互に連結糸を編み込んで経方向に面状に形成された遮光層を緯方向に複数配列した編地を編成し、編成された編地に樹脂材料を含浸し、樹脂材料を含浸した編地に緯方向の引張力を付与することで表地及び裏地の編目列が経方向に直線状に延び挿入糸が隣接する編目列の間で緯方向に直線状に延びて格子状に形成されるとともに表地及び裏地の間を所定間隔空けた状態に保持して樹脂材料を固化し、対向配置された表地及び裏地の編目列がそれぞれ隣接する遮光層に連結されているとともに対向配置された表地及び裏地の編目列からずれた位置の編目列の間に各遮光層が形成されるように編地全体の構成糸を固着させて成形することを特徴とする光透過性シート材の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2008−274510(P2008−274510A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204807(P2007−204807)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【特許番号】特許第4074884号(P4074884)
【特許公報発行日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(395003648)株式会社カズマ (5)
【Fターム(参考)】