説明

光量制御装置、撮像装置及び光量制御方法

【課題】撮像素子に入射する光の光量を容易に制御できると共に、絞り開口における回折の影響が少なく、NDフィルタを用いた場合でも波面収差が小さい光量制御装置及びその制御方法を提供する。
【解決手段】固定開口を有し、入射する光の光束を制御する開口絞り部26と、複数の絞り羽根を移動することにより開口の大きさを変え透過する光量を制限する光量絞り部24と、透明領域と遮光領域とを有し、開口絞り部26の固定開口に対して透明領域が対向する第1の遮光状態と遮光領域が対向する第2の遮光状態との間を移動可能に設置されたNDフィルタ25とを備え、NDフィルタ25の移動は、光量絞り部24における開口面積が最大の状態で行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置における適正露出を得るための光量制御装置、撮像装置及び光量制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラやデジタルスチルカメラなどの撮像装置において、適正露出を得るためにレンズの絞りを小さく絞りこむ(以下、小絞りと称す)ことが行われる。この小絞りを行うことにより、二つの問題が発生していた。第1に小絞り状態において撮像装置の撮像素子のパッケージのカバーガラスや光学ローパスフィルタ上のゴミやキズの影が撮影画像に写り込んでしまうことである。第2に絞り開口による撮像装置の撮影レンズの結像への回折の影響が大きくなることである。
これらの問題を解決するために、絞り機構とND(Neutral Density)フィルタとを有する光量絞り装置が特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1には、概ね以下のように記載されている。
絞り開口の大きさを可変する複数の絞り羽根と、絞り羽根により形成された開口内に配置されるNDフィルタとを備えた光量絞り装置において、NDフィルタは絞り羽根とは別部材としている。これにより、精度良く光量を制御することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−133254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、絞り羽根ばかりでなくNDフィルタを用いることにより効率的に光量を制御できるものの、絞り開口における回折の影響は十分には改善されていないと共に、NDフィルタを用いることにより光量絞り装置を透過した光の波面収差が大きくなる現象が発生する虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、撮像素子に入射する光の光量を容易に制御できると共に、絞り開口における回折の影響が少なく、NDフィルタを用いた場合でも波面収差が小さい光量制御装置、撮像装置及び光量制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、次の1)乃至3)の構成及び4),5)の制御方法を有する。
1)所定の大きさの第1の開口面積を持つ固定開口261を有し、入射する光の光束を所定の大きさに制御する開口絞り部26と、複数の絞り羽根を移動させることにより開口の大きさを第1の開口面積から前記第1の開口面積より小さい第2の開口面積に変えることで透過する光量を制限する光量絞り部24と、入射する光に対する透過率が第1の値以上である第1の領域253及び入射する光に対する透過率が第1の値より小さい第2の値である第2の領域254を有し、開口絞り部26の開口部に対して第2の領域254が対向する第1の遮光状態と開口部に対して第1の領域253が対向する第2の遮光状態との間を移動可能に設置された減光手段25とを備え、減光手段25の移動は、光量絞り部24における開口の大きさが第1の開口面積の状態で行われるよう構成されていることを特徴とする光量調節装置23。
2)第1の領域253を通過する光と第2の領域254を通過する光線との透過波面位相差が0.55μmの波長において0.2μm以下であることを特徴とする1)に記載の光量調節装置23。
3)被写体像に対応する光が入射した際に、入射した前記光を電気信号に変換し検出信号として出力する撮像素子3と、複数のレンズからなり、被写体像を前記撮像素子に結像するレンズ部2と、レンズ部2の複数のレンズの間に配設される1)または2)に記載の光量調整装置23と、撮像素子3から出力された検出信号に基づき光量調節装置23の減光手段25と光量絞り部24とを制御する制御手段4と、を備えることを特徴とする撮像装置1。
4)撮像素子3に入射した被写体像に対応する光に応じて出力される検出信号に基づく検出輝度レベルと、あらかじめ定められた設定輝度レベルとを比較し検出輝度レベルが設定輝度レベルより高いか否かを判断する露出量比較ステップと、露出量比較ステップにおいて検出輝度レベルが設定輝度レベルより高いと判断された場合、NDフィルタ25の遮光領域254が開口絞り部26を覆う状態にあるか否かを判定するNDフィルタ位置検出ステップと、NDフィルタ位置検出ステップにおいてNDフィルタ25の遮光領域254が開口絞り部26を覆っていると判断された場合、絞り羽根の開閉状態を検出し絞り羽根が最も閉じられた状態か否かを判定する絞り羽根開閉検出ステップと、絞り開閉検出ステップにおいて絞り羽根が最も閉じられた状態でないと判断された場合、絞り羽根を閉じる方向に移動させる絞り羽根移動ステップと、 を含むことを特徴とする光量制御方法。
5)NDフィルタ位置検出ステップにおいてNDフィルタ25の遮光領域254が開口絞り部26を覆ってないと判断された場合、遮光領域254が開口絞り部26を覆う方向にNDフィルタ25を移動させるNDフィルタ移動ステップを更に含むことを特徴とする請求項4記載の光量制御方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、撮像素子に入射する光の光量を容易に制御できると共に、絞り開口における回折の影響が少なくすることができ、NDフィルタを用いた場合でも波面収差が小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像装置の撮像部を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る光量絞り部24を示す斜視図であり、図2(a)は絞りの開放状態を示し、図2(b)は絞りを閉じた状態を示す。
【図3】本発明の実施形態に係るNDフィルタ25の詳細を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る光量制御部における光量絞り部及びNDフィルタの動作を示す正面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る光量制御部における光量絞り部及びNDフィルタの動作の状態を示すグラフである。
【図6】本発明の実施形態に係る光量制御部におけるF値と透過光量比の関係を示すグラフである。
【図7】人間の目の視感度曲線を示すグラフである。
【図8】本発明の実施形態に係る透過波面位相差とのMTFと関係を示すグラフの一例である。
【図9】本発明の実施形態に係る撮像部の動作を説明する制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る光量制御装置及びその制御方法の実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、全図において、共通な機能を有する部品には同一符号を付して示し、一度説明したものに関しては、繰り返した説明を省略する。
更に、断面図,概略図等は模式図であり、寸法等の比率は誇張して表現している場合がある。
【0011】
図1には、本実施形態に用いるビデオカメラやデジタルスチルカメラなどの撮像装置における撮像部の構成を示す。
撮像部1は、複数のレンズユニットからなり被写体像を所定の位置に結像すると共に、入射した光の光量を制御するレンズ部2と被写体像の結像位置に配設された撮像素子3と前記撮像素子からの出力信号を外部に出力すると共に、レンズ部を制御してズーム,フォーカス及び光量を制御する制御部4とを有する。
ここで、撮像素子側を後側、被写体側を前側として以下説明する。
【0012】
レンズ部2は、最も被写体側に配設される第1レンズユニット21と、最も撮像素子側に配設される第2レンズユニット22と、第1レンズユニット21及び第2レンズユニット22の間の位置に配設される光量制御部23とを有する。
ここで、本発明に直接関係しないズームレンズユニットやフォーカスレンズユニット等については、図示及び説明を省略する。
【0013】
光量制御部23は、開口部の大きさを可変し光量を制御する光量絞り部24と、透過率が所定の値である減光(ND)フィルタ25と、所定の大きさに開けられた固定の開口を備え、入射した光束の大きさを開口によって制御する開口絞り部26とを有する。
ここで、光量絞り部24と、NDフィルタ25と、開口絞り部26とは、光軸方向に近接して配置されている。
【0014】
図2を用いて光量絞り部24の詳細について説明する。
図2は、光量絞り部24を示す斜視図であり、図2(a)は絞りの開放状態を示し、図2(b)は絞りを閉じた状態を示す。
図2(a),(b)に示すように光量絞り部24は、第1の絞り羽根241と第2の絞り羽根242とを有する。
【0015】
第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242は、光軸を挟んで対向し、絞りを閉じることが可能なように光軸方向にずらして配置されている。また、第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242の光軸に直交する面の中心が、光軸を挟んで互いに離間する方向に削り取られており、絞りを閉じた状態(図2(b))で略菱形の開口が形成されるようになっている。
【0016】
図2(a)において、第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242がそれぞれ矢印方向に移動することにより、図2(b)のように略菱形の開口が形成される。
第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242は、一例として厚さ0.05mmの黒色ポリエステルシート製で、先端のV字形凹みは90°の開き角を持ち、互いのV字形凹みを向かい合わせることで正方形の開口を作ることができる。
更に、正方形の開口が形成された状態から、第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242の互いの位置を逆方向に等量直線移動させることで、正方形の開口の大きさを連続的に変化させることが可能である。
【0017】
なお、絞り羽根の形状は、上記した構造にとらわれることなく、可動して光束の形状を遮るものであればよいものである。
また、本実施の形態では、光量絞り部24を2枚の絞り羽根241,242で構成したが、可動して光束の形状を遮るものであれば絞り羽根の枚数に制限は無いものである。
【0018】
図3を用いてNDフィルタ25の詳細について説明する。
図3は、NDフィルタ25の詳細を示す斜視図である。
NDフィルタ25には、透明基板中に光吸収物質を分散させたタイプと、透明基板上に薄膜を形成したタイプ(薄膜型NDフィルタ)とがある。更に、薄膜型NDフィルタには、金属膜を用いた反射型と誘電体膜を用いた吸収型とがある。ここでは、誘電体膜を用いたNDフィルタ25を用いて説明する。
【0019】
図3に示すようにNDフィルタ25は、ガラスやプラスチック等の透明基板251の一方の面の一部に誘電体膜からなる遮光膜252が形成されている。ここでは、遮光膜252が形成された領域を減光領域254と称する。減光領域254の遮光膜252は、入射した光のうち、可視光の帯域の光の一部を吸収することにより可視光の帯域の透過率を所定となるよう設計されている。その透過率は、後述するように30%以下が望ましい。
【0020】
NDフィルタ25における遮光膜252が形成されていない領域である透明領域253には、反射防止膜のみが形成されている。透明領域253における可視光の帯域の光の透過率は98%程度である。また、透明領域253の大きさは、開口絞り部26の開口部の大きさより大きく形成されている。更に、遮光膜252が形成された減光領域254も、開口絞り部26の開口部の大きさより大きく形成されている。
【0021】
なお、NDフィルタ25と光量絞り部24は、図示しないアクチュエータによって駆動され、光量を調節することが可能となる。
【0022】
開口絞り部26は、光量絞り部24の第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242が開放状態となった際に光束を円径に保つための丸穴(固定開口)261を備え、レンズ部2の開放F値に合わせてその径を設定する。
【0023】
図1に戻り撮像部1の構成について説明する。
撮像素子3は、光電変換素子の一種であり光を電気エネルギーに変換するものであり、電荷結合素子 (CCD:Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)が用いられる。
【0024】
制御部4は、絞りセンサ41と、NDセンサ42と、画像処理回路43と、マイコン44と、絞り制御回路45と、絞り駆動部46と、ND制御回路47と、ND駆動部48とを有する。
【0025】
絞りセンサ41は、光量絞り部24の各絞り羽根(図3の241,242)の位置(開口状態)を検出し、絞り位置信号をマイコン44に出力する。
NDセンサ42は、NDフィルタ25の位置(挿入状態)を検出し、ND位置信号をマイコン44に出力する。
画像処理回路43は、撮像素子3において光電変換され出力された検出信号が入力し、入力された検出信号に基づいて信号処理し、得られた映像信号を外部に出力すると共に輝度信号をマイコン44に出力する。
【0026】
マイコン44は、入力した輝度信号,絞り位置信号,及びND位置信号に基づいて輝度が所定の輝度レベルとなるよう光量絞り部24及びNDフィルタ25の制御する絞り制御信号及びND制御信号を出力する。
【0027】
絞り駆動制御回路45は、マイコン44からの絞り制御信号に基づいて光量絞り部24の各絞り羽根(図3の241,242)を駆動する絞り駆動信号を出力する。
絞り駆動部46は、絞り駆動信号に基づいて光量絞り部24の各絞り羽根(図3の241,242)を駆動し開口量を制御する。
【0028】
ND制御回路47は、マイコン44からのND制御信号に基づいてNDフィルタ25の駆動するND駆動信号を出力する。
ND駆動部48は、ND駆動信号に基づいてNDフィルタ25を駆動し挿入量を制御する。
【0029】
次に、撮像部1の動作について説明する。
被写体の方向に撮像装置の撮像部1を向けると、レンズ部2のフォーカス機能により撮像素子3上に被写体像が結像される。
撮像素子に被写体が結像された際に撮像素子から出力される検出信号に基づき画像処理回路43では、映像信号と輝度信号とが生成され出力される。
【0030】
画像処理回路43から出力された輝度信号はマイコン44に入力する。マイコン44では、入力した輝度信号から求められた被写体撮像時の輝度レベルとあらかじめ設定された輝度レベルとを比較し、輝度差を求める。
更に、マイコン44には、被写体撮像時の光量絞り部24の各絞り羽根241,242の位置(第1の絞り位置)とNDフィルタ25の挿入位置(第1の挿入位置)とが入力される。
【0031】
マイコン44では、マイコン44に入力した第1の絞り位置及び第1の挿入位置と輝度差とから、あらかじめ設定された輝度レベルにするための各絞り羽根241,242の位置(第2の絞り位置)及びNDフィルタ25の挿入位置(第2の挿入位置)を求め、求められた第2の絞り位置及び第2の挿入位置にするための絞り制御信号とND制御信号とを出力する。
【0032】
絞り駆動制御回路45では、絞り制御信号に基づいて絞り駆動信号を出力し、絞り駆動部46を駆動し各絞り羽根241,242の位置(第1の絞り位置)を求められた位置(第2の絞り位置)に駆動する。
ND駆動制御回路47では、ND制御信号に基づいてND駆動信号を出力し、ND駆動部48を駆動しNDフィルタ25の挿入位置(第1の絞り位置)を求められた挿入位置(第2の挿入位置)に駆動する。
【0033】
次に、本発明の実施形態における光量制御部23の動作について図4乃至図6を用いて詳細に説明する。
図4は、光量制御部23を第1レンズユニット23側から見た際の、光量絞り部24及びNDフィルタ25の動作を示す正面図である。
図5は、開放(透明領域253)を100%とした際に遮光領域254の透過光量比が25%であるNDフィルタ25も用い、レンズの開放F値をF2.8としたときの光量絞り部24及びNDフィルタ25の動作の状態を示すグラフである。
図6は、開放(透明領域253)を100%とした際に遮光領域254の透過光量比が25%であるNDフィルタ25を用い、レンズの開放F値をF2.8としたときのF値と透過光量比の関係を示す図である。
【0034】
図6を用いて光量制御部23が開放状態(a)から最小絞り状態(f)に変化する際の光量絞り部24及びNDフィルタ25の動作を順に説明する。
まず、開放状態(a)では、NDフィルタ25の透明領域253が開口絞り部26を全て覆い、第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242は開放状態(最も離間した状態)である。このときの透過光量比を100%とし、F値はF2.8となる。
【0035】
次に、光量制御部23の透過光量比を(a)100%から(b)50%にするためには、第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242は開放状態(最も離間した状態)のままで、NDフィルタ25を移動させ遮光領域254が固定開口261の66.7%を覆う状態とする。このときF値は、2.8から4.0になる。
【0036】
光量制御部23の透過光量比を(b)50%から(c)25%にするためには、第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242は開放状態(最も離間した状態)のままで、NDフィルタ25を更に移動させ遮光領域254が固定開口261を全て覆う状態とする。このときF値は、4.0から5.6になる。
【0037】
光量制御部23の透過光量比を(c)25%から(d)12.5%にするためには、NDフィルタ25の遮光領域254が固定開口261を全て覆う状態で、第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242を移動させ第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242が固定開口261の50%を覆う状態とする。このときF値は、5.6から8.0になる。
【0038】
光量制御部23の透過光量比を(d)12.5%から(e)6.3%にするためには、NDフィルタ25の遮光領域254が固定開口261を全て覆う状態で、第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242を更に移動させ第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242が固定開口261の75%を覆う状態とする。このときF値は、8.0から11になる。
【0039】
光量制御部23の透過光量比を(e)6.3%から(f)3.1%にするためには、NDフィルタ25の遮光領域254が固定開口261を全て覆う状態で、第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242を更に移動させ第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242が固定開口261の87.5%を覆う状態とする。このときF値は、11から16になる。
【0040】
ここで、透過光量比が100%から25%までの(a)から(c)までの状態をNDフィルタ移動期間といい、透過光量比が25%から3.1%までの(d)から(f)までの状態を絞り羽根移動期間とする。
【0041】
次に、NDフィルタ移動期間のように固定開口261を部分的にNDフィルタ25の遮光領域254が覆った場合、透明領域253を通過する光線と遮光領域254を透過する光線とで光路長(遮光領域254を形成する誘電体膜の膜厚と屈折率との積)が異なるために透過波面に位相差が生じる(いわゆる透過波面位相差)。透過波面位相差は、撮像素子に形成される撮影画像に解像度劣化を生じさせる。そのため、解像度劣化をなるべく抑える必要がある。
【0042】
NDフィルタ移動期間における透明領域253を透過する光と遮光領域254を透過する光との透過波面位相差が解像度に及ぼす影響について確認する。透過率25%のNDフィルタ25を挿入し、絞りを0.5AV(Aperture Value)間隔で変化させたときの、F2.8/F4/F5.6の各絞りの状態において透過波面位相差を0から0.4μm迄0.1μm毎に変化させたときのMTF(Modulation Transfer Function)の値をシミュレーションした。シミュレーションは収差の無い理想レンズの入射瞳に各位相差を生じるNDフィルタ25を挿入する形をとった。なお、MTF計算の際の光線ウエイトは、概ね視感度特性にあわせた。人間の目は略380nm〜780nmの光を感じることができ、光に対する目の感度は光の波長に応じて異なる。そこで、この波長による目の感覚を視感度とよび、図7に示すような曲線で表す。図7に示すように、人間の目は略550nmに極大値がある。
【0043】
図8に透過波面位相差を変化させたときのMTFのデータの代表例として、F4.0で、1.0AVと透過波面位相差0.2のときのグラフを示す。
グラフの横軸は空間周波数であり、グラフの縦軸は各空間周波数における変調の度合いを表す。
透過波面位相差が0.2μm以下であれば、実用的な空間周波数である300 lp/mm以下の空間周波数に於いて変調が15%以上となり、画像の解像感は概ね保たれる。
また、透過波面位相差が0.3μmの場合、F2.8で220 lp/mm付近、F4で160 lp/mm付近、F5.6で110 lp/mm付近に於いて変調が5%程度となり画像の解像感が失われる。
以上のことから、透過波面位相差は、0.2μm(波長0.55μmの光線にて)以下であることが望ましい。
【0044】
NDフィルタ25の遮光領域254における透過率の値について述べる。
NDフィルタ25の遮光領域254の透過率が30%以上の場合、NDフィルタ25の遮光領域254が固定開口261を全て覆った状態の光量制御部23の透過光量比は30%以上となる。この状態で透過光量比を低下させるためには、NDフィルタ25のサイズを大きくして、NDフィルタ25の遮光領域254に2種類の濃度の領域を設ける必要がある。これにより、NDフィルタ25が大型化し、レンズ部2のレンズ鏡筒が大型化してしまい、撮像装置自体が大型化してしまう問題が発生する。
そこで、望ましくはNDフィルタ25の透過率を30%以下とし、NDフィルタ25の遮光領域254の濃度を1種類とすることで、レンズ鏡筒の大型化及び撮像装置の大型化を防ぐことができる。
【0045】
次に、実際に被写体像を撮像した際の撮像部1の動作について、図9を用いて説明する。
図9は、撮像部の動作を説明する制御フロー図である。
被写体像に対応する光が撮像素子3に入射すると、入射した光に基づいて撮像素子3から検出信号が出力される。撮像素子3から出力された検出信号に基づいて画像処理回路43で映像信号と輝度信号とが出力される。
【0046】
画像処理回路43から出力された輝度信号の輝度レベルは、マイコン44に入力しマイコン44内部に記憶されたあらかじめ定められた設定輝度レベルと比較され露出の状態を判断される(ステップS001)。
【0047】
画像処理回路43から出力された輝度信号の輝度レベルが設定輝度レベルより高いと判断された場合(Y 露出オーバー)、マイコン44はNDセンサ42からのND位置信号に基づいてNDフィルタ25の挿入状態を検出する(ステップS002)。
【0048】
マイコン44は、ステップS002において検出したND位置信号に基づいてNDフィルタ25の位置がNDフィルタ25の遮光領域254が完全に開口絞り部26の固定開口261を覆っているか否かを判定する(ステップS003)。
【0049】
ステップS003で判定したNDフィルタ25の位置がNDフィルタ25の遮光領域254が完全に開口絞り部26の固定開口261を覆っていないと判断された場合(N)、マイコン44は、ND駆動制御回路47経由でND駆動部48を用いてNDフィルタ25を駆動し遮光領域254が完全に固定開口261を覆う方向(挿入方向)に移動する(ステップS004)。
【0050】
ステップS004で判定したNDフィルタ25の位置がNDフィルタ25の遮光領域254が完全に開口絞り部26の固定開口261を覆っていると判断した場合(Y)、マイコン44は、絞りセンサ41からの絞り位置信号に基づいて第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242の開閉状態を検出する(ステップS005)。
【0051】
マイコン44は、ステップS005で検出した絞り位置信号に基づいて第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242の位置が開口絞り部26の固定開口261に対して最も閉じた状態であるか否かを判定する(ステップS006)。
【0052】
ステップS006で判定した第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242の位置が最も閉じていないと判断された場合(N)、マイコン44は、絞り駆動制御回路45経由で絞り駆動部46を用いて第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242を駆動し第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242が最も閉じる方向(閉じ方向)に移動させる(ステップS007)。
【0053】
ステップS002において画像処理回路43から出力された輝度信号の輝度レベルが設定輝度レベルより低いと判断された場合(N 露出アンダー)、マイコン44は絞りセンサ41からの絞り位置信号に基づいて第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242の開閉状態を検出する(ステップS008)。
【0054】
マイコン44は、ステップS008で検出した絞り位置信号に基づいて第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242の位置が開口絞り部26の固定開口261に対して最も開いた状態であるか否かを判定する(ステップS009)。
【0055】
ステップS009で判定した第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242の位置が最も開いていないと判断された場合(N)、マイコン44は、絞り駆動制御回路45経由で絞り駆動部46を用いて第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242を駆動し第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242が最も開く方向(開き方向)に移動させる(ステップS010)。
【0056】
ステップS009で判定した第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242の位置が第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242が開口絞り部26の固定開口261に対して最も開いた状態であると判断した場合(Y)、マイコン44はNDセンサ42からのND位置信号に基づいてNDフィルタ25の挿入状態を検出する(ステップS011)。
【0057】
マイコン44は、ステップS011で検出したND位置信号に基づいてNDフィルタ25の位置がNDフィルタ25の透明領域253が完全に開口絞り部26の固定開口261を覆っているか否かを判定する(ステップS012)。
【0058】
ステップS012で判定したNDフィルタ25の位置がNDフィルタ25の透明領域253が完全に開口絞り部26の固定開口261を覆っていないと判断された場合(N)、マイコン44は、ND駆動制御回路47経由でND駆動部48を用いてNDフィルタ25を駆動し透明領域253が完全に固定開口261を覆う方向(抜去方向)に移動させる(ステップS013)。
【0059】
このように、画像処理回路43から出力された輝度信号の輝度レベルと、NDセンサ42からのND位置信号と、絞りセンサ41からの絞り位置信号とに基づいてNDフィルタ25並びに第1の絞り羽根241及び第2の絞り羽根242を制御して撮像素子3上で最適露出状態を得ることができる。
【0060】
本実施形態によれば、NDフィルタ25挿入時の透過波面位相差による解像度の劣化を抑え、連続的な光量調節が可能であって、撮像素子3のパッケージに用いられるカバーガラスや撮像素子3のパッケージの直前に設置される光学ローパスフィルタに付着したキズやゴミの影が撮影画像に映りこむ原因である小絞りが避けられる。
【0061】
なお、遮光領域254と透明領域253との間に何れかの領域に対する透過波面位相差が0.55μmの光線にて0.2μmを超える境界領域がある場合、その境界領域を通過する光線の位相差が波面収差となって解像度劣化が発生するが、そのときの開口の絞りの状態が全開口面積(固定開口の大きさ)の10%以下の面積であれば解像度劣化に対する影響は少なく、十分に実用に耐えうるものである。
【0062】
また、本実施形態では、光量制御部23内部の配置が第1レンズユニット21側から、光量絞り部24,NDフィルタ25,開口絞り部26の順であったが、必ずしもこの順に限る必要は無く、それぞれが近接して配置してあればその順序は問わない。
【0063】
また、本実施形態では、光量絞り部24及びNDフィルタ25の位置検出を位置センサで行った場合について説明したが、エンコーダ等で駆動部の送り量をモニタすることにより位置検出を行ってもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0064】
1…撮像部、2…レンズ部、3…撮像素子、4…制御部、21…第1レンズユニット、22…第2レンズユニット、23…光量制御部、24…光量絞り部、25…減光(ND)フィルタ(減光手段)、26…開口絞り部、41…絞りセンサ、42…NDセンサ、43…画像処理回路、44…マイコン、45…絞り駆動制御回路、46…絞り駆動部、47…ND駆動制御回路、48…ND駆動部、241…第1の絞り羽根、242…第2の絞り羽根、251…透明基板、252…遮光膜、253…透明領域(第1の領域)、254…遮光領域(第2の領域)、261…丸穴(固定開口)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の大きさの第1の開口面積を持つ開口部を有し、入射する光の光束を所定の大きさに制御する開口絞り部と、
複数の絞り羽根を移動させることにより開口の大きさを前記第1の開口面積から前記第1の開口面積より小さい第2の開口面積に変えることで透過する光量を制限する光量絞り部と、
入射する光に対する透過率が第1の値以上である第1の領域及び入射する光に対する透過率が前記第1の値より小さい第2の値である第2の領域を有し、前記開口絞り部の前記開口部に対して前記第2の領域が対向する第1の遮光状態と前記開口部に対して前記第1の領域が対向する第2の遮光状態との間を移動可能に設置された減光手段と、
を備え、
前記減光手段の移動は、前記光量絞り部における開口の大きさが前記第1の開口面積の状態で行われるよう構成されていることを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記第1の領域を通過する光と前記第2の領域を通過する光線との透過波面位相差が0.55μmの波長において0.2μm以下であることを特徴とする請求項1記載の光量調節装置。
【請求項3】
被写体像に対応する光が入射した際に、入射した前記光を電気信号に変換し検出信号として出力する撮像素子と、
複数のレンズからなり、被写体像を前記撮像素子に結像するレンズ部と、
前記レンズ部の前記複数のレンズの間に配設される請求項1または請求項2記載の光量調整装置と、
前記撮像素子から出力された前記検出信号に基づき前記光量調節装置の前記減光手段と前記光量絞り部とを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
撮像素子に入射した被写体像に対応する光に応じて出力される検出信号に基づく検出輝度レベルと、あらかじめ定められた設定輝度レベルとを比較し前記検出輝度レベルが前記設定輝度レベルより高いか否かを判断する露出量比較ステップと、
前記露出量比較ステップにおいて前記検出輝度レベルが前記設定輝度レベルより高いと判断された場合、NDフィルタの遮光領域が開口絞り部を覆う状態にあるか否かを判定するNDフィルタ位置検出ステップと、
前記NDフィルタ位置検出ステップにおいて前記NDフィルタの前記遮光領域が前記開口絞り部を覆っていると判断された場合、絞り羽根の開閉状態を検出し前記絞り羽根が最も閉じられた状態か否かを判定する絞り羽根開閉検出ステップと、
前記絞り開閉検出ステップにおいて前記絞り羽根が最も閉じられた状態でないと判断された場合、前記絞り羽根を閉じる方向に移動させる絞り羽根移動ステップと、
を含むことを特徴とする光量制御方法。
【請求項5】
前記NDフィルタ位置検出ステップにおいて前記NDフィルタの前記遮光領域が前記開口絞り部を覆ってないと判断された場合、前記遮光領域が前記開口絞り部を覆う方向に前記NDフィルタを移動させるNDフィルタ移動ステップを更に含むことを特徴とする請求項4記載の光量制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−262031(P2010−262031A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110836(P2009−110836)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】