説明

光量制御装置

【課題】部品点数が少なく組立てが容易で遮光羽根を良好に揺動でき、光軸方向に装置高さを低くできて、電気−機械変換素子の効率を向上させることができる光量制御装置を提供すること。
【解決手段】遮光羽根揺動手段30により、ベースプレート10に備えた遮光羽根20を揺動させ遮光羽根20で第1の光量制御穴13の絞り通過光の光量を制御する。遮光羽根揺動手段30は、ベースプレート10外に、駆動部材31と、駆動部材31を摩擦係合状態に支持する摩擦係合部材32と、駆動部材31の端面に一端面を固着された電気−機械変換素子33と、電気−機械変換素子33の他端面に固着された被駆動ヘッド34と、被駆動ヘッド34と一体に設けられ遮光羽根20に連結されている駆動ピン35を有し、電気−機械変換素子33は、伸縮方向に垂直な方向の断面形状が、前記ベースプレート10に沿う方向が長辺、前記ベースプレート10に垂直な辺が短辺に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御電圧を印加され伸縮する電気−機械変換素子を駆動源として光量制御穴を有するベースプレートに備えた遮光羽根を揺動させ光量制御穴の通過光の光量を制御する光量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光量制御装置としては、地板に設けられた絞り羽根がアイリスモータやステッピングモータなどの電磁モータで駆動される。しかし、電磁モータはマグネットとコイル等で構成されているので、部品点数が多く、構造が複雑になり、組立が難しく、高コストになり、小型化が難しいといった問題があり、電磁モータを使用する光量制御装置の小型化にも限界がある。
【0003】
そこで、光量制御装置の駆動源として電気−機械変換素子(例えば圧電素子)を用いることが提案されている(例えば特許文献1参照)。従来の電気−機械変換素子を用いた駆動装置は、インパクト方式(IDM)やStic−Slip方式及びスムースインパクト方式(SIDM)等の方式で、一般的に知られている。
【0004】
特許文献1に記載された光量制御装置は、地板と、4枚の絞り羽根と、動輪と、地板に取付けられた圧電アクチュエータとによって構成される。圧電アクチュエータは、1つの絞り羽根に係入された摺動嵌合部が摩擦係合した駆動軸と、駆動軸の一端に固着された第1圧電素子と、駆動軸の他端に固着された第2圧電素子とを備え、第1及び第2圧電素子が駆動軸の軸線方向に高速変位と低速変位とを繰り返し行うことで摩擦係合部が軸線方向に、大きな一定の移動量を持って移動される構成である。
【0005】
【特許文献1】特開2006−121886号公報(図19参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された光量制御装置によれば、比較的大きな摩擦係合部が移動することにより、その分のスペースが必要になり、また2個の圧電素子を使用するので、装置全体のサイズアップ、コストアップ及び消費電力が懸念され、また光軸方向の寸法を大きく取る構造となっている。
また、この立方体の圧電素子を小さくしていくと、有効な圧電効果を生起する面積部分は小さくなっても電極形成部を小さくするには限界があるため、電極形成部の素子幅に対する比率は大きくなり、圧電素子の出力効率が低いものとなる。
【0007】
本発明は、上記の事情にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、コンパクトな構造で部品点数が少なく組立てが容易であり、かつ遮光羽根を良好に揺動することができ、電気−機械変換素子の効率を向上させることができる光量制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の光量制御装置は、電気−機械変換素子を駆動源とする遮光羽根揺動手段により、ベースプレートに備えた遮光羽根を揺動させ、該遮光羽根で前記ベースプレートに備えた第1の光量制御穴の通過光量を制御する光量制御装置において、前記遮光羽根揺動手段は、前記ベースプレートに、駆動部材と、前記ベースプレートに設けられていて前記駆動部材を摩擦係合状態に支持する摩擦係合部材と、前記駆動部材の端面に伸縮方向の一端面を固着されている前記電気−機械変換素子と、前記電気−機械変換素子の他端面に固着された被駆動ヘッドとを有し、更に、前記被駆動ヘッドと一体に設けられ、前記遮光羽根に連結されている駆動ピンを有してなり、前記電気−機械変換素子は、伸縮方向に垂直な方向の断面形状が、長方形に構成されていることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、電気−機械変換素子は制御電圧の印加により伸縮し駆動部材を軸方向に振動させる。電気−機械変換素子が瞬速伸長と緩速収縮とを交番して行うときの、駆動部材の振動と、駆動部材と摩擦係合部材との摩擦係合との協働作用により、被駆動ヘッドが摩擦係合部材の方向に移動し、また電気−機械変換素子が緩速伸長と瞬速収縮とを交番して行うときの、駆動部材の振動と、駆動部材と摩擦係合部材との摩擦係合との協働作用により、被駆動ヘッドが摩擦係合部材から離隔する方向に移動する。
したがって、駆動ピンが遮光羽根を揺動し、該遮光羽根が第1の光量制御穴の一部あるいは全部が重なり第1の光量制御穴を通過する光量を制御する。
【0010】
上記構成によれば、駆動部材と被駆動ヘッドとが電気−機械変換素子の伸縮方向における両端に配設され、駆動部材を摩擦係合状態に支持する摩擦係合部材がベースプレートより設けられているので、摩擦係合部材と駆動部材との間に生じた摩擦による振動が被駆動ヘッドに直接伝わることを防止でき、摩擦によって発生する振動による被駆動ヘッドへの影響を抑制することが可能となる。
【0011】
上記構成によれば、ベースプレートに備えた遮光羽根を揺動する遮光羽根揺動手段を、駆動部材と摩擦係合部材と電気−機械変換素子と被駆動ヘッドと駆動ピンを備えて構成してベースプレート外に備えたので、部品点数が少なく組立てが容易であり、電気−機械変換素子の伸縮運動を駆動部材に良好に伝えられて遮光羽根を良好に揺動することができ、光軸方向に装置高さを低くすることが可能であるコンパクトな構造の光量制御装置を実現でき、さらに1個の電気−機械変換素子が駆動源であるので装置全体のサイズアップ、コストアップ及び消費電力を抑制できる。
【0012】
上記構成によれば、特に、電気−機械変換素子について、伸縮方向に垂直な方向の断面形状を長方形にするので、有効な圧電効果が得られる圧電効果を生起する部分の面積割合を大きく確保でき、電気−機械変換素子の効率を向上させることができる。
【0013】
そして、遮光羽根揺動手段が、電気−機械変換素子の伸縮方向の一端面に駆動部材が一軸一体に設けられ、他端面に被駆動ヘッドが一軸一体に設けられていて、駆動部材が摩擦係合部材により摩擦係合状態に支持される構成であることに特徴があるので、電気−機械変換素子の伸縮による振動がベースプレートに伝わってしまうことがなく、駆動部材の慣性力と摩擦係合部材の摩擦係合力との差により、摩擦トルクが安定化して駆動部材と電気−機械変換素子と被駆動ヘッドが一体に移動し易い。
【0014】
上記構成によれば、遮光羽根を揺動する遮光羽根揺動手段を、駆動部材と摩擦係合部材と電気−機械変換素子と被駆動ヘッドと駆動ピンを備えて構成してベースプレート外に備えたので、摩擦係合状態に支持される駆動部材と一軸一体の電気−機械変換素子に制御電圧を印加して伸縮運動させることにより被駆動ヘッドを往復動させこの往復動を利用してベースプレートに備えた遮光羽根を揺動して光量制御することができる。
【0015】
上記構成によれば、電気−機械変換素子を駆動源とする遮光羽根揺動手段を分離独立して組立てることができ、遮光羽根揺動手段のベースプレートへの組付けが、摩擦係合部材のベースプレートへの固定設置及び駆動ピンの差し込み連結で実現できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光量制御装置によれば、コンパクトな構造で部品点数が少なく組立てが容易であり、かつ遮光羽根を良好に揺動することができ、電気−機械変換素子の効率を向上させることができる光量制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の光量制御装置について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0018】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光量制御装置1を示す斜視図である。図2は、光量制御装置1の分解斜視図である。図1、図2に示すように、光量制御装置1は、ベースプレート10と、ベースプレート10に設けられた遮光羽根20と、ベースプレート10外面に設けられた遮光羽根揺動手段30とを備えてなる。
【0019】
ベースプレート10は、ベースプレート本体11と底蓋12とで構成されている。
ベースプレート本体11は、ほぼ正方形の上面部11aと、上面部11aの三つの側縁にわたり垂下するコ字脚11b及び二つのコーナに垂下するコーナ脚11c、11dとを備え、上面部11aは、略中央にすり鉢状斜面を有する円錐穴13aが形成されかつコーナ脚11dに寄った位置に上側長穴14aが開口され、上面部11aの上側長穴14aに近い内面より一体に垂下するボス部(ピボット軸)15とを有して構成されている(図2、図5参照)。
底蓋12は、ベースプレート本体11の上面部に対応するほぼ正方形であり、略中央に円錐穴13aの最小径より若干大きい円穴13bと、ベースプレート本体11の上面部11aの上側長穴14aに対応して若干大きく開口された下側長穴14bと、ボス部15を嵌合支持する軸穴16を有している。
遮光羽根20は、所要輪郭のアーム形状に形成され、軸穴21と、第2の長穴22と、第2の光量制御穴23とを有している(図2参照)。
そして、ベースプレート本体11のボス部15に遮光羽根20の軸穴21を嵌合して、遮光羽根20をベースプレート本体11内に収容し、底蓋12の周縁部をベースプレート本体11の周壁部下端(コ字脚11b及びコーナ脚11c、11d)に当接され(図2、図5、図9参照)、ねじ等の止着具(不図示)によりベースプレート本体11と底蓋12は、止着されている。
【0020】
上記構成のように、ベースプレート本体11と底蓋12とが重ね合わされることにより、ベースプレート本体11の下部開口が底蓋12で閉じられ、かつボス部15が遮光羽根20の軸穴21と底蓋12の軸穴16に嵌合されている。これにより、遮光羽根20が、ボス部15を回転中心として揺動可能な状態にベースプレート10に収容されている(図2、図5、図8参照)。
また、ベースプレート本体11と底蓋12とが重ね合わされることにより、円錐穴13aと円穴13bとによってベースプレート本体11の略中心に貫通状態に第1の光量制御穴13が構成され、第1の光量制御穴13とコーナ脚11dとの間に、上側長穴14aと下側長穴14bとによってベースプレート本体11に対し貫通状態に第1の長穴14が形成される(図2参照)。
さらに、ベースプレート本体11と底蓋12とが重ね合わされることにより、ベースプレート11の三方の側面にスリット窓17〜19が形成され、スリット窓17〜19から遮光羽根20が揺動位置によっては突出可能であり、これにより、ベースプレート11の四角形を小さくすることもできる(図2、図5参照)。
【0021】
遮光羽根揺動手段30は、ベースプレート本体11の上面部11aに備えられる。遮光羽根揺動手段30は、駆動部材31と、摩擦係合部材32と、圧電素子等の電気−機械変換素子33と、被駆動ヘッド34と、駆動ピン35と、ガイド手段36と、を有して構成されている。この構成によれば、電気−機械変換素子を駆動源とする遮光羽根揺動手段を分離独立して組立てることができ、遮光羽根揺動手段のベースプレートへの組付けが、摩擦係合部材のベースプレートへの固定設置及び駆動ピンの差し込み連結で実現できる。(図1、図2参照)
【0022】
遮光羽根揺動手段30は、図2、図9〜図11に示すように、ベースプレート本体11の厚み方向に対する寸法が小さくなるように形成されている。電気−機械変換素子33は、伸縮方向に垂直な方向の断面形状は、前記ベースプレート10に沿う方向が長辺、前記ベースプレート10に垂直な辺が短辺に構成された長方形である。電気−機械変換素子33は、長方形とすることにより電気−機械変換素子33の効率を向上にも寄与している。また、駆動部材31及び被駆動ヘッド34の伸縮方向に垂直な方向の断面形状についても、電気−機械変換素子33と同一の長方形であることにより、光軸方向に装置高さが低くなっている。さらに、摩擦係合部材32は、駆動部材31を受承する凹部32a’を有し、ベースプレート10に固定される係合固定部材32aと、前記凹部32a’と共同して駆動部材31を挟み、摩擦係合状態に保持するばね部材32bとを有すると共に、係合固定部材32aは、ベースプレート10の厚み方向の寸法を小さくするためにベースプレート本体11aの段差部11a’に設けられている。
【0023】
駆動部材31は、比重が小さい強靭な材料(例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等)より断面形状が長方形に形成されている。摩擦係合部材32は、ベースプレート10より設けられていて駆動部材31を摩擦係合状態に支持する。電気−機械変換素子33は、制御電圧を印加され伸縮する駆動部品であり、駆動部材31の端面に伸縮方向の一端面を固着されている。被駆動ヘッド34は、電気−機械変換素子33の伸縮方向の他端面に固着されている。駆動部材31と電気−機械変換素子33と被駆動ヘッド34は一軸一体に接合されている。駆動ピン35は、被駆動ヘッド34と一体に成形されている。被駆動ヘッド34と駆動ピン35は、静止慣性力を大きく具有するために、駆動部材31と比較して比重の大きい材料により形成されている。
【0024】
図1、図9、図10に示すように、ガイド手段36は、下押えガイド部36aと、上押えガイド部36bと、被ガイド部36cとを備えてなる。下押えガイド部36aは、ベースプレート10の上面に設けられ、駆動軸31のベースプレート対向面(図1において下面)と摺動して駆動軸31が下側に撓み変形することを回避する役目を果たす。上押えガイド部36bは、ベースプレート10の上面に設けられ、被駆動ヘッド34の側面に突設された被ガイド部36cの上面と摺動して被駆動ヘッド34が上側に撓み変形することを回避する役目を果たす。
【0025】
駆動ピン35は、ベースプレート10に設けられた上側長穴14aを通して該ベースプレート10に入り、上側長穴14aと交差するように遮光羽根20に設けられた第2の長穴22に摺動可能に通されて該遮光羽根20を揺動可能であり、さらに底蓋12に設けられた下側長穴14bに通されている。上側長穴14aと下側長穴14bとは、上記の第1の長穴14を構成し、第1の長穴14(上側長穴14a)の駆動ピン35をガイドする方向は、摩擦係合部材32が駆動部材31をガイドする方向と合致するように設けられている(図1、図2、図9、図10参照)。すなわち、第1の長穴14は、駆動ピン35の移動をガイドする役目を果たす。
【0026】
第1の長穴14は、更に、駆動ピン35の移動範囲を制限し、移動範囲の両端において、遮光羽根20の第1の光量制御穴13に対する位置決めを行う役目を果たす。第1の長穴14(上側長穴14a)は、一方の端(摩擦係合部材32に近い側の端)に駆動ピン35を当接停止するとき(図3、図4参照)、遮光羽根20を第1の光量制御穴13に掛からない位置へ停止させ(図5参照)、また他方の端(摩擦係合部材32から遠い側の端)に駆動ピン35を当接停止するとき(図6、図7参照)、遮光羽根20の第2の光量制御穴23を第1の光量制御穴13(円錐穴13a)と同心位置へ停止させる(図8参照)。
【0027】
続いて、光量制御装置1の動作について説明する。
電気−機械変換素子33が瞬速伸長するときは、被駆動ヘッド34の慣性力が摩擦係合部材32による摩擦係合力よりも大きくなる。このため、被駆動ヘッド34が静止位置に止まるから、このとき摩擦係合部材32の駆動部材31を保持する位置は、電気−機械変換素子33に接近する方向に微小ステップ移動した状態にずれる。そして、次に電気−機械変換素子33が緩速収縮するときは、被駆動ヘッド34の慣性力が摩擦係合部材32による摩擦係合力よりも小さくなり、摩擦係合部材32の駆動部材31を保持する位置にずれは生じない。こうして、電気−機械変換素子33が一回の瞬速伸長と一回の緩速収縮を行うと、被駆動ヘッド34が摩擦係合部材32に接近する方向に微小移動する。
したがって、電気−機械変換素子33が瞬速伸長と緩速収縮とを交番する振動を行うときは、図6、図7中の矢印Aに示すように、被駆動ヘッド34が摩擦係合部材32に接近移動し、図3、図4に示すように、駆動ピン35が第1の長穴14の摩擦係合部材32に近い側の端に当接停止すると、図5に示すように、遮光羽根20は、第1の光量制御穴13の側方へ避けて位置される。それによって、光量制御装置1は、開口が大きい第1の光量制御穴(入光窓)13によって第1の光量(最大値)となるように制御し得る。
【0028】
上記とは逆に、電気−機械変換素子33が瞬速収縮するときは、被駆動ヘッド34の慣性力が摩擦係合部材32による摩擦係合力よりも大きくなる。このため、被駆動ヘッド34が静止位置に止まり、摩擦係合部材32の駆動部材31を保持する位置がずれ、被駆動ヘッド34が摩擦係合部材32から離間する方向に微小移動する。そして、次に電気−機械変換素子33が緩速伸長するときは、被駆動ヘッド34の慣性力が摩擦係合部材32による摩擦係合力よりも小さくなり、摩擦係合部材32の駆動部材31を保持する位置にずれは生じない。こうして、電気−機械変換素子33が一回の瞬速収縮と一回の緩速伸長を行うと、被駆動ヘッド34が摩擦係合部材32から離隔する方向に微小移動する。
したがって、電気−機械変換素子33が瞬速収縮と緩速伸長とを交番する振動を行うときは、図3、図4中の矢印Bに示すように、被駆動ヘッド34が摩擦係合部材32から離間する方向に移動し、図6、図7に示すように、駆動ピン35が第1の長穴14の摩擦係合部材32から遠い側の端に当接停止すると、図8に示すように、遮光羽根20は、第2の光量制御穴23を第1の光量制御穴13と同心位置となるように駆動ピン35により揺動される。それによって、光量制御装置1は、開口が小さい第2の光量制御穴23によって第2の光量(最小値)となるように制御し得る。
【0029】
上記構成において、電気−機械変換素子33の伸縮方向に垂直な方向の断面形状を、ベースプレート10に沿う方向が長辺、ベースプレート10に垂直な辺が短辺である長方形としていること、長方形とした電気−機械変換素子33の伸縮方向の一端面に、長方形断面形状の駆動部材31を一軸一体に連結していること、さらに、摩擦係合部材32が、ベースプレート10の上面を低くしてなる段差部11a’に設けられていることは、いずれも、光軸方向に装置高さを低くすることに寄与しており、コンパクトな構造の光量制御装置を実現につながる。また上記実施形態では、一軸一体の駆動部材31と電気−機械変換素子33と被駆動ヘッド34について、幅広化・薄肉化し、ガイド手段36により薄肉方向の変形を抑えたので、幅広方向と薄肉方向のいずれも衝撃等の外部からの大きな力の影響を避けることができる。
【0030】
上記構成において、電気−機械変換素子33の伸縮方向に垂直な方向の断面形状を、ベースプレート10に沿う方向が長辺、ベースプレート10に垂直な辺が短辺である長方形とすることは、有効な圧電効果が得られる圧電効果を生起する部分の面積割合を大きく確保できて電気−機械変換素子33の効率を向上させることにつながっている(このことについては、詳しく後述する。)。
【0031】
上記実施形態では、駆動ピン35が、第1の長穴14(上側長穴14a)に対して交差する遮光羽根20に設けられた第2の長穴22に摺動可能に通されている構成であるので、駆動ピン35が、ベースプレート本体11の上側長穴14a及び遮光羽根20の第2の長穴22に対し摺動することにより、ベースプレート10外の駆動ピン35の直動でベースプレート10の遮光羽根20を揺動させる運動変換伝達機構を、特別の運動変換伝達部材を設けることなく、構成を大幅に簡素化できる。
【0032】
上記実施形態では、ベースプレート本体11の内面に一体にボス部15が設けられ、ボス部15が遮光羽根20に設けられた軸穴21に嵌挿され更に底蓋12に設けられた軸穴16に嵌合された構成であるので、部品点数を最小にしてベースプレート本体11内に収容する遮光羽根20をピボット回動可能に支持でき、構成を大幅に簡素化できる。
【0033】
上記実施形態では、第1の長穴14の上側長穴14aが、駆動部材31の移動方向に沿って設けられ駆動ピン35の移動方向をガイドする構成であるので、移動範囲をガイドする独立したガイド部材を無くし構成を簡素化できる。
【0034】
上記実施形態では、第1の長穴14の上側長穴14aが、駆動ピン35の移動範囲を制限する構成であるので、移動範囲を制限する独立したストッパ部材を無くし構成を簡素化できる。
【0035】
上記実施形態では、遮光羽根20には、第2の光量制御穴23が設けられ、遮光羽根揺動手段30が、遮光羽根20を揺動し第2の光量制御穴23を第1の光量制御穴13に対応する位置に合わせる構成であるので、光軸に対して同心円となるように2段階に光量を絞ることができる。
【0036】
上記実施形態では、ベースプレート10は、ベースプレート本体11と底蓋12で形成され、ベースプレート本体11と底蓋12の間に遮光羽根20が配置されている構成であるので、遮光羽根20に対する保護が完全に行われかつ、ベースプレート10の両面を取付け面として広く利用できる。
【0037】
〔第2の実施形態〕
図12は、本発明の第2の実施の形態に係る光量制御装置の遮光羽根揺動手段30の斜視図である。この実施の形態の遮光羽根揺動手段30は、駆動部材31Bを除いた摩擦係合部材32と電気−機械変換素子33と被駆動ヘッド34と駆動ピン35について、第1の実施の形態と同一に構成されており、駆動部材31Bは、電気−機械変換素子33のベースプレート10に沿う方向が長辺、ベースプレート10に垂直な辺が短辺とする伸縮方向の一端面に対して、丸軸を二本並べた断面形状に設けられている。
【0038】
〔電気−機械変換素子の圧電効果部の面積について〕
電気−機械変換素子33が、伸縮方向に垂直な方向の断面形状を、前記ベースプレート10に沿う方向が長辺、ベースプレート10に垂直な辺が短辺とする長方形に形成されているとともに、駆動部材(31、31B)が長方形或いは丸軸を二本並べた断面形状に構成されることによる効果の意義が、装置全体の薄型化に寄与するだけでなく、有効な圧電効果が得られる面積割合を大きく確保でき、電気−機械変換素子33の効率を向上させることができる、という効果に結びついていることについて以下に詳述する。
【0039】
図13(a)は、振動方向の端面が略正方形である電気−機械変換素子33Cの有効な圧電効果が得られる圧電効果を生起する部分である圧電効果部の面積割合を説明するための斜視図である。図13(b)は、振動方向の端面が長方形である電気−機械変換素子33の有効な圧電効果が得られる圧電効果部の面積割合を説明するための斜視図である。
各図において、上下方向が電気−機械変換素子の積層方向であり、また伸縮方向である。各電気−機械変換素子の上端面に表示した斜線エリアは、有効な圧電効果が得られる面積部分を示している。
【0040】
電気−機械変換素子33Cの有効な圧電効果が得られる圧電効果部の面積S1(=W1u・D1)と、電気−機械変換素子33の有効な圧電効果が得られる圧電効果部の面積S2(=W2u・D2)とが等しくなるように、電気−機械変換素子33Cと、電気−機械変換素子33(この例では長辺(W2u):短辺(D2)=2:1)とを製作する場合、以下に示す式によって、素子幅比(n)と圧電有効面積割合(1/P)との関係を導くことができる。
電気−機械変換素子33Cの有効面積は、有効幅をW1u、奥行きをD1、電極形成部のロス部幅Wbとすると、
S1=W1u・D1=(W1−2・Wb)・D1である。
また、電気−機械変換素子33の有効面積は、有効幅をW1u、奥行きをD2とすると、
S2=W2u・D2=(W2−2・Wb)・D2である。
したがって、電気−機械変換素子33Cと電気−機械変換素子33の有効面積を等しくすると、
S1=S2=(W1−2・Wb)・D1=(W2−2・Wb)・D2……(1)
となる。
(1)式において、
p=D2/D1、
n=W2/W1(nは、素子幅比)、
k=Wb/W1(kは、素子幅に対する電極形成部のロス部の素子幅方向比率)とすると、
pは下記の(2)式のようになる。
p=(W1−2・k・W1)・D1/(n・W1−2・k・W1)……(2)式
このとき、W1=1mm、D1=1mmの正方形素子とすると、
p=(1−2・k)/(n−2・k)となり、
圧電有効面積割合(1/p)は、
1/p=(n−2・k)/(1−2・k)となる。
【0041】
図14は、素子幅比(n)と圧電有効面積割合(1/P)との関係を示すグラフである。
同図中、グラフ線aはk=0.1のときのnと1/Pとの関係を示し、グラフ線bはk=0.2のときのnと1/Pとの関係を示し、グラフ線cはk=0.3のときのnと1/Pとの関係を示す。
このようにk値が大きいときほど、素子幅比nを大きくしたとき、換言すれば、より細長い長方形にしたときの圧電有効面積割合(1/P)の増加に大きく寄与することが分かる。
同じ断面積を有する電気−機械変換素子である場合、図13(a)に示す伸縮方向の端面が略正方形である電気−機械変換素子33Cよりも、図13(b)に示す伸縮方向の端面が長方形である電気−機械変換素子33の方が、有効な圧電効果が得られる圧電効果部の面積が大きくなるから、それだけ高い出力が得られる。
【0042】
したがって、上述した第1の実施形態では、図15(b)に示すように、伸縮方向の端面が長方形(長辺:短辺=2:1)である電気−機械変換素子33の端面に、該端面の圧電有効面積に対応する長方形断面を有する駆動軸31Aを設けた構成であり、また、上述した第2の実施形態では、図15(c)に示すように、電気−機械変換素子33の端面に、該端面の圧電有効面積部分の長方形の短辺を直径とする丸棒を2本並べた駆動軸31Bを設けた構成であり、これらの構成は、図15(a)に示す伸縮方向の端面が略正方形である電気−機械変換素子33Cの端面に該端面に内接する円形断面を有する駆動軸31Cを設けた構成に比べ、高い出力効率が得られる。
【0043】
〔その他の実施形態、変形例〕
以上、本発明に係る実施形態について図面を参照し説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない限度で種々の設計変更や工程の変更が可能であり、そのような変更も技術的範囲に含まれるものである。例えば、ボス部15と軸穴16は、逆転した配置に備えても良い。本発明の光量制御装置は、第1の光量制御穴13による第1の光量制御と、遮光羽根20に設けられた第2の光量制御穴23を第1の光量制御穴13と同心円となる位置に移動する第2の光量制御との二段階の光量制御に限定されるものではない。遮光羽根20を揺動することにより、該遮光羽根20で第1の光量制御穴13を無段階に絞ることができる構成も含まれる。さらに、遮光羽根20は、一枚羽根に限定されない、遮光羽根20と連鎖状にリンクして設けられ該遮光羽根20の揺動に連動して揺動し該遮光羽根20と共同して第1の光量制御穴13を絞ることができる構成も含まれる。駆動ピン35が第1の長穴14の適宜の中途で停止するように設ける場合も本発明に含まれる。駆動ピン35の直動方向と遮光羽根20の揺動方向とが前記第1の実施形態とは逆となるように、第2の遮光羽根20のボス部15と係合する軸穴21と、駆動ピン35と係合する第2の長穴22を配置する場合も本発明に含まれる。
【0044】
本発明の光量制御装置は、構造の簡素化、小型化等を達成しており、近年小型化されているデジタルカメラの光量制御装置として適用できるのは勿論のこと、その他のレンズ光学系の光量制御装置としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1の実施形態に係る光量制御装置を示す斜視図である。
【図2】図1の光量制御装置の分解斜視図である。
【図3】図1の光量制御装置の第1の光量制御状態の斜視図である。
【図4】図3に示す第1の光量制御状態の光量制御装置の平面図である。
【図5】図3におけるV−V横断面図である。
【図6】図1の光量制御装置の第2の光量制御状態の斜視図である。
【図7】図6に示す第2の光量制御状態の光量制御装置の平面図である。
【図8】図6におけるIIX−IIX横断面図である。
【図9】図4におけるX−X縦断面図である。
【図10】図4におけるIX−IX縦断面図である。
【図11】図4におけるXI−XI縦断面図である。
【図12】第2の実施形態に係る光量制御装置の要部の遮光羽根揺動手段を示す斜視図である。
【図13】電気−機械変換素子の圧電有効面積を説明するための斜視図である。
【図14】電気−機械変換素子の素子幅比と圧電有効面積割合との関係を示すグラフである。
【図15】(a)は従来の電気−機械変換素子と駆動部材との連結形状を示す斜視図であり、(b)は図1の光量制御装置で使用する電気−機械変換素子と駆動部材との連結形状を示す斜視図であり、(c)は図12の光量制御装置で使用する電気−機械変換素子と駆動部材との連結形状を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
1 光量制御装置
10 ベースプレート
11 ベースプレート本体
11a 上面部
11a’段差部
12 底蓋
13 第1の光量制御穴
13a 円錐穴
13b 円穴
14 第1の長穴
14a 上側長穴
14b 下側長穴
15 ボス部(ピボット軸)
16 軸穴
20 遮光羽根
21 軸穴
22 第2の長穴
23 第2の光量制御穴
30 遮光羽根揺動手段
31 駆動部材(駆動軸)
32 摩擦係合部材
32a 固定係合部材
32b ばね部材
33 電気−機械変換素子(圧電素子)
34 被駆動ヘッド
35 駆動ピン
36a 下押えガイド部(ガイド部)
36b 上押えガイド部(ガイド部)
36c 被ガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気−機械変換素子を駆動源とする遮光羽根揺動手段により、ベースプレートに備えた遮光羽根を揺動させ、該遮光羽根で前記ベースプレートに備えた第1の光量制御穴の通過光量を制御する光量制御装置において、
前記遮光羽根揺動手段は、前記ベースプレートに、駆動部材と、前記ベースプレートに設けられていて前記駆動部材を摩擦係合状態に支持する摩擦係合部材と、前記駆動部材の端面に伸縮方向の一端面を固着されている前記電気−機械変換素子と、前記電気−機械変換素子の他端面に固着された被駆動ヘッドとを有し、
更に、前記被駆動ヘッドと一体に設けられ、前記遮光羽根に連結されている駆動ピンを有してなり、
前記電気−機械変換素子は、伸縮方向に垂直な方向の断面形状が、長方形である、
ことを特徴とする光量制御装置。
【請求項2】
前記電気−機械変換素子は、伸縮方向に垂直な方向の断面形状が、前記ベースプレートに沿う方向が長辺、前記ベースプレートに垂直な辺が短辺の長方形である、
ことを特徴とする請求項1に記載の光量制御装置。
【請求項3】
前記駆動部材は、伸縮方向に垂直な方向の断面形状が、長方形である、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の光量制御装置。
【請求項4】
前記駆動部材は、前記ベースプレートに沿って並んでいる複数の軸である、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1記載の光量制御装置。
【請求項5】
前記摩擦係合部材は、前記ベースプレートの上面を低くしてなる段差部に設けられている、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1記載の光量制御装置。
【請求項6】
前記駆動部材と、前記電気−機械変換素子と、前記被駆動ヘッドのいずれかに被ガイド部を設け、該ガイド部を係合案内するガイド部を前記ベースプレートに設けた、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1記載の光量制御装置。
【請求項7】
前記駆動ピンが、前記遮光羽根に設けられた第2の長穴に摺動可能に連結されている、
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1記載の光量制御装置。
【請求項8】
前記遮光羽根には丸穴部が設けられ、実質的に前記ベースプレートに固定されたボス部に回転可能に支持されている
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1記載の光量制御装置。
【請求項9】
前記ベースプレートには、前記駆動部材の移動方向に沿って前記駆動ピンをガイドする長穴が設けられている、
ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1記載の光量制御装置。
【請求項10】
前記ベースプレートに設けられた長穴は、前記駆動ピンの移動範囲を制限するストッパである、
ことを特徴とする請求項9記載の光量制御装置。
【請求項11】
前記遮光羽根には、前記ベースプレートに備えられた第1の光量制御穴より小径の第2の光量制御穴が形成され、前記遮光羽根揺動手段により光量制御穴を切り替え可能である、ことを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1記載の光量制御装置。
【請求項12】
前記ベースプレートは、ベースプレート本体と底蓋で形成され、前記ベースプレート本体と底蓋の間に前記遮光羽根が配置されている、
ことを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1記載の光量制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−85774(P2010−85774A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255597(P2008−255597)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】