光量調節装置、撮像光学ユニットおよび撮像装置
【課題】 複数の磁気回路を構成するヨークを共通のヨークとすると共に、これらのヨークをベース部材に兼用して形成した光量調節装置において、漏れ磁束の流入で他の磁気回路に影響を及ぼすおそれがある。
【解決手段】 光量を制御する複数の遮光部材3、4と、磁気回路にて電磁的駆動力を得て複数の遮光部材3、4をそれぞれ駆動する複数の駆動手段5、5´と、複数の遮光部材3、4および複数の駆動手段5、5´を取り付けるベース部材1を備え、ベース部材1は複数の駆動手段5、」5´の前記磁気回路を構成するヨークY、Y´を兼用し、複数の駆動手段5、5´に用いるヨークは共通のヨークを使用し、ベース部材1には、複数の駆動手段5、5´の中間部に漏れ磁束の流入を阻止する阻止手段1Kを設けた。
【解決手段】 光量を制御する複数の遮光部材3、4と、磁気回路にて電磁的駆動力を得て複数の遮光部材3、4をそれぞれ駆動する複数の駆動手段5、5´と、複数の遮光部材3、4および複数の駆動手段5、5´を取り付けるベース部材1を備え、ベース部材1は複数の駆動手段5、」5´の前記磁気回路を構成するヨークY、Y´を兼用し、複数の駆動手段5、5´に用いるヨークは共通のヨークを使用し、ベース部材1には、複数の駆動手段5、5´の中間部に漏れ磁束の流入を阻止する阻止手段1Kを設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラなどに用いられる光量調節装置に関し、例えば絞り動作を行う絞り羽根と露光動作を行うシャッタ羽根を備えた光量調節装置、この光量調節装置を備えた撮像光学ユニット及びこの撮像光学ユニットを備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラやカメラ付き携帯電話に用いられるカメラ用シャッタ装置や絞り装置は、デジタルカメラやカメラ付き携帯電話の小型化、薄型化に伴って、小型化、薄型化の要請が益々強まってきている。
【0003】
その中で、小型化を意図した従来例として、露出用の開口部を開閉するシャッタ羽根と開口部の絞りを行う絞り羽根とを別々備えた絞り兼用シャッタにおいて、露出開口を備えた地板に2枚の絞り羽根を所定距離相対的に移動可能に支持し、又、前記2枚の絞り羽根で形成される絞り開口を1枚のシャッタで開閉する構成を有すると共に、さらに2枚の絞り羽根を駆動する駆動源とシャッタを駆動する駆動源を別々に有し、これら駆動源は所謂ムービングマグネットモータから構成されているものが提案されている。(特許文献1)。
【0004】
又、駆動源を上述の例とは別な形態として、露出開口を備えた地板に対し、2枚の開き用シャッタを所定の距離を相対的に移動可能に支持させると共に、該開き用シャッタに前記露出開口を介して対向する位置に2枚の閉じ用シャッタを所定の距離を相対的に移動可能に支持させ、該閉じ用シャッタ、該開き用シャッタを駆動する駆動源を別々に持っている構成としたものが提案されている。(特許文献2)。
【0005】
これらの駆動源は、外周面を二分するように異なる磁極(N極及びS極)に着磁され、所定角度範囲を回動するロータと、励磁用のコイルと、ロータの外周面に対向するように配置され、異なる磁極を発生し得る二つの磁極を有する二股状に形成された平板形状のヨークから構成されている。
【特許文献1】特開2002−139768号公報
【特許文献2】特開2003−186079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来の光量調節装置において、ヨーク部材の位置精度のバラツキにより、一方の電磁アクチュエータの磁気が他方の電磁アクチュエータに作用し、例えば、前述したようにシャッタ駆動用アクチュエータ及び絞り羽根駆動用アクチュエータの作動開始位置、および所定距離回動した作動終了位置において、コイルへの通電を切ってもその位置を保持するようにヨークとロータ間に働く磁気吸引力が作用しているが、その磁気吸引力を弱めるような力が働き、作動開始位置、作動終了位置を維持できなくなる場合があり、個々のヨーク位置を後加工で調整することがあった。
【0007】
また、上記先行技術に開示された光量調節装置において、前者の光量調節装置は、駆動源として所謂ムービングマグネット方式のモータを使用しており、ロータとコイルの構造の関係上、どうしても背が高くならざるをえなく、装置の薄型化には不向きである。
【0008】
さらに、後者の光量調節装置の駆動源は、平板状のヨークを使用している関係上、ムービングマグネット方式のモータに比べて背が低くはなっているが、駆動源を載置している地板がモールドで形成されており、強度を保つ為には所定の厚みが必要となり、結果として装置の薄型化に限界があった。
【0009】
このような背景から本出願人はベース部材とヨークを兼用化し、該ヨークを使用して磁気回路を構成し、複数の遮光部材を駆動する駆動手段を構成する光量調節装置を発案した。この光量調節装置によればベース部材とヨークを兼用化することにより、部品を省略化することができ、特に装置を薄型化することができた。
【0010】
しかし、ベース部材を兼用した単一のヨークに複数の磁気回路を構成したので、一方の磁気アクチュエータの磁束がヨークを通って他方の磁気アクチュエータに影響を及ぼすという不具合が出る場合がある。
【0011】
本出願に係る発明は、このような従来の問題に鑑みなされたもので、磁気干渉を少なくすると共に装置全体の小型化、特に薄型化をはかることができ、更に安価な光量調節装置の提供を目的とする。
【0012】
さらに、光量調節装置の厚みを薄くすることにより、これらを含むレンズユニットを薄型化する撮像光学ユニット、およびデジタルカメラやカメラ付携帯電話などの撮像装置の小型化、薄型化をはかる撮像装置の提供を目的とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的を実現する光量調節装置の構成は、請求項1に記載のように、光量を制御する複数の遮光部材と、磁気回路にて電磁的駆動力を得て前記複数の遮光部材をそれぞれ駆動する複数の駆動手段と、前記複数の遮光部材および前記複数の駆動手段を取り付けるベース部材を備え、前記ベース部材は前記複数の駆動手段の前記磁気回路を構成するヨークを兼用し、前記複数の駆動手段に用いるヨークは共通のヨークを使用した光量調節装置において、前記ベース部材には、前記複数の駆動手段の中間部に漏れ磁束の流入を阻止する阻止手段を設けたことを特徴とする。
【0014】
本発明の目的を実現する撮像光学ユニットの構成は、上記の光量調節装置と、前記光量調節装置の前方または後方に少なくともレンズを配置した撮像光学系とをユニット化し、前記ヨークの少なくとも一部が、前記ヨークに最も近接する前記撮像光学系のレンズの外周より、光軸中心側に入り込んでいることを特徴とする。
【0015】
本発明の目的を実現する撮像装置の構成は、上記構成の光量調節装置と、前記光量調節装置の前方または後方に少なくともレンズを配置した撮像光学系とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光量調節装置によれば、ベース部材と磁気駆動回路を構成するヨークを兼用させると共に、複数の磁気アクチュエータの中間部に漏れ磁束の流入を阻止(磁気干渉阻止)する阻止手段を設けることにより、ベース部材を兼用した単一のヨークに複数の磁気回路を構成したがために起きる、一方の磁気アクチュエータの他方の磁気アクチュエータに磁気的な影響を及ぼすという不具合を防止でき、装置の小型化、薄型化を図ることができ、またこの光量調節装置を用いた撮像光学ユニット、撮像装置の小型化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
第1の実施例
図1から図5は本発明の第1の実施例を示す。
【0018】
図1は後述するカバー10を取り外した状態の平面図であり、シャッタ羽根3は閉状態、光線の光量を制限する絞り羽根4は開状態を示している。図2は、図3からシャッタ羽根3、絞り羽根4、軸受け部材7を取り除いた状態を示し、図3はシャッタ羽根3と絞り羽根4の両方が開いた状態を示し、図4はシャッタ羽根3が開状態で絞り羽根4が閉状態を示し、図5aはカバー10をベース部材1に取り付けた状態を示す平面図、図5bは図5aのA−A線に沿った断面図である。
【0019】
本実施例は、図1から図5に示すように、撮影光を透過する開口2がヨークを兼用するベース部材1に設けられる。ベース部材1は純鉄、電磁ステンレス、パーマロイ、ケイ素鋼板等の強磁性体の材料からなるヨーク用の材料からなる板材をプレス加工等により所定の形状に形成される。
【0020】
このベース部材1は、中心線L1を中心に図1、図2中、左右に略軸線対称に形成され、左部分に示す要素と同じ要素の右部分の符号は同じ数字とし、 ´を付して区別する。
【0021】
ベース部材1には、磁極部1aと1bとが磁気的に略コの字形状をなすように形成されたヨークY、同様に磁極部1a´と1b´とが略コの字形状をなすように形成されたヨークY´を有している。対向する磁極部1aと1b間、及び磁極部1a´と1b´間の中心にはシャッタ羽根3、及び絞り羽根4を所定の角度回動駆動するロータ5、5´が所定間隙を介して回転可能にそれぞれ支持されている。左側のロータ5は前記ベース部材1に適当な方法で取り付けられる図5bに示す軸受け部材7上に形成された軸7aに回転可能に支持される。
【0022】
更に、前記左右の各磁極部1b、1b´は前記ロータ5、5´との対向する面積を増やすため、円弧状に切り曲げされ、ロータ5、5´の外周面の高さと同程度の幅で立ち上がっている。又、対向する各磁極部1a、1a´は励磁するコイル8、8´が巻回されたボビン6、6´がそれぞれ挿入され、ボビン6、6´にはそれぞれ出力端子である端子9、9´が備えられている。
【0023】
前記磁極部1a、1a´には図5bに示すように、前記ロータ5、5´との対向する面積を増やすため、ロータ5、5´の外周面の高さと同程度の高さになるように磁極部1a、1a´と同形状で所定の厚さの平板1jがカシメ、接着等の適切な手段で固定されている。
【0024】
また、前記ベース部材1のヨークYとY´の中間部には、所定深さで所定長さの凹状溝部1Kが切削、プレス等の適切な手段により設けられている。
【0025】
シャッタ羽根3、絞り羽根4の回動支持構造
シャッタ羽根3、絞り羽根4の回動支持構造は以下のようになっている。前記シャッタ羽根3は前記ベース部材1の下部に固定された軸受け部材7からと突出するように形成された軸7bに前記シャッタ羽根3の穴3aが嵌合し回動中心をなすとともに、該軸7bは前記ベース部材1上に形成された穴1eを貫通し、前記ベース部材1上でシャッタ羽根3の穴3aと嵌合し、結果、前記シャッタ羽根3は所定角度回動可能に支持される。
【0026】
前記ベース1上には前記シャッタ羽根3の回動に対応して開き位置、閉じ位置を規定するストッパー1d、1cが切り曲げ等の方法で一体的に形成される。
【0027】
前記絞り羽根4は同様に前記ベース部材1の下部に固定された不図示の軸受け部材から突出するように形成された軸7b´に前記絞り羽根4の穴4aが嵌合し回動中心をなすとともに、該軸7b´は前記ベース部材1上に形成された穴1e´を貫通し、前記ベース部材1上で絞り羽根4の穴4a´と嵌合し、結果、前記絞り羽根4は所定の角度を回動可能に支持される。前記ベース1上には前記絞り羽根4の回動に対応して開き位置、閉じ位置を規定するストッパー1d´、1c´が切り曲げ等の方法で一体的に形成される。
【0028】
前記シャッタ羽根3は前述のように穴3aが軸7b上で回動可能に支持されるが、一方では、前記ロータ5と一体的に形成された駆動ピン5aが前記シャッタ羽根3に形成された長溝形状の長穴3bに遊嵌している。又、前記シャッタ羽根3の先端は前記開口2を覆うだけの面積を有している。シャッタ羽根3と絞り羽根4は、遮光性と潤滑性を有し、厚さ0.03〜0.15mmの熱可塑性プラスチックシートをプレス加工して形成される。
【0029】
前記絞り羽根4は前述のように穴4aが軸7b´上で回動可能に支持されるが、一方では、前記ロータ5´と一体的に形成された駆動ピン5a´が前記絞り羽根4に形成された長溝形状の長穴4b´に遊嵌している。又、前記絞り羽根4の先端には前記開口2より小さい小絞り用の開口4cを有している。
【0030】
前記ベース1には穴1g、1g´、1fが設けられている。穴1g、1g´はこの光量調節装置を不図示のカメラ本体に取り付けるためのものであり、穴1fはカバー部材10を取り付け固定するためのものである。
【0031】
前記カバー10はシャッタ羽根3、絞り羽根4の可動領域を覆い、シャッタ羽根3、絞り羽根4の浮き上がりを防止する。該カバー10は金属ないしプラスチックの薄板からなり、ベース1上の位置きめ穴1fに適切な方法で固定され、下辺は図5aに示すごとくベース1に対しカバー10の可撓性により嵌め合い固定される。
【0032】
次に本実施例の光量調節装置の作動について説明する。
【0033】
まず、不図示のカメラのシャッタレリーズボタンが押される前は、図3のようにシャッタ羽根3及び絞り羽根4とも、それぞれの羽根は重なって開口部2から退避している。
【0034】
この状態においてシャッタ羽根駆動装置を構成する左側のシャッタ羽根用のロータ5は、図3に示すように、磁気吸引力により時計方向に回動しようとする力が働いており、シャッタ羽根3はストッパー1dにより係止され、開状態が維持されている。一方、絞り羽根駆動装置を構成する右側の絞り羽根用のロータ5´は図3に示すように、磁気吸引力により反時計方向に回動しようとする力が働いており、絞り羽根4はストッパー1d´により係止され、開状態が維持されている。
【0035】
次にレリーズボタンが押されると、不図示の撮像素子はそれまで蓄積した電荷を放出し、その後所定露光量の電荷を蓄積した後、シャッタ羽根群を閉じて露光を終了し、その後蓄積した電荷の転送を行う。
【0036】
その時、不図示の駆動回路によりコイル8に通電されると前記磁極部1a、1bはそれぞれN極、S極になりロータ5は反時計方向に回動し始める。ロータ5の反時計方向への回動に伴ってロータ5に一体的に設けられた駆動ピン5aも反時計方向に回動し始める。駆動ピン5aは回動に伴って前記シャッタ羽根3に形成された長溝3aの図4中右側の内壁部分を反時計方向に押圧し、シャッタ羽根3は軸7bを回動中心とし、時計方向に回動し開口2を閉鎖し、図1に示す状態に至る。
【0037】
シャッタ羽根3の閉鎖状態において、前記コイル8への通電を切ってもロータ5は磁気吸引力により反時計方向に回動しようとする力が働き、その力によりシャッタ羽根3も時計方向に回動しようとするが、ストッパー1cに係止され閉状態が維持される。
【0038】
この時、前記シャッタ羽根3と絞り羽根4は全開状態から全閉状態までのどの位置でも必ず一部が重なっており羽根同士が干渉することはない。
【0039】
次に、撮像素子の電荷の転送が終了すると、シャッタ羽根3は再び開放する。このときシャッタ羽根用の駆動手段は、シャッタ閉鎖動作時と反対方向に駆動ピン5aを駆動する。その動作は今まで述べてきた、全開から全閉の動作と逆の動作を行い全開となる。
【0040】
次に絞り羽根4の動作について説明する。
【0041】
不図示の露出制御機構により露光量が決まるとその時、不図示の駆動回路によりコイル8´に通電されると前記磁極部1a´、1b´はそれぞれS極、N極になりロータ5´は時計方向に回動し始める。ロータ5´の回動に伴ってロータ5´に一体的に設けられた駆動ピン5a´も時計方向に回動し始める。駆動ピン5a´は回動に伴って前記絞り羽根4に形成された長溝4b´の図4中左側の内壁部分を時計方向に押圧し、絞り羽根4は軸7b´を回動中心とし、反時計方向に回動し開口2を図4に示すように小絞り径4cに制限する。
【0042】
閉鎖状態においては前記コイル8´への通電を切ってもロータ5´は磁気吸引力により時計方向に回動しようとする力が働き、その力により絞り羽根4も反時計方向に回動しようとするが、ストッパー1c´に係止され閉状態が維持される。
この時、前記シャッタ羽根3と絞り羽根4は全開状態から全閉状態までのどの位置でも必ず一部が重なっており羽根同士が干渉することはない。
【0043】
前述したシャッタ羽根3が駆動された時、励磁された磁束は略コの字状のヨークYの磁極部1aのN極から磁極部1bのS極へと閉ループを描くように流れる。しかし、ヨークYとヨークY´は共通のヨーク部材を使用しているため、磁束の大部分は上記のように流れるが、一部は隣接するヨークY´に漏れる。この漏れ磁束がヨークY´に流れ、漏れ磁束量が大きいと絞り駆動機構に回転駆動力が働く、前述のように絞り駆動機構に駆動電流が流れていない時は、ロータ5´に磁気吸引力により時計方向に回動しようとする力が働き、その力により絞り羽根4も反時計方向に回動しようとするが、ストッパー1c´に係止され初期位置状態が維持されているが、この磁気吸引力を上回る駆動力が働くような漏れ磁束が流れると、絞り羽根4が動いてしまい、はなはだしくは絞り羽根4が閉状態になってしまうことがある。このような状態にならないまでも、漏れ磁束がヨークY´に流れ、絞り駆動機構に回転駆動力が働くと絞り羽根4に時計方向の駆動力が働き初期位置が不安定になり、例えば衝撃等の力が加わると絞り羽根4が動き、閉状態になってしまうことがある。
【0044】
本実施例によれば、前記ベース部材1のヨークYとY´の中間部には所定深さで所定長さの凹状溝部1Kが設けられているので、ヨークYとY´の磁路断面積に比べて、凹状溝部1K部分の磁路断面積が小さい。このため、漏れ磁束がヨークY´に流れこもうとしても、流れる磁束量は磁路の断面積に比例するので、凹状溝部1K部分で磁気的に飽和してしまいヨークY´にはわずかな量しか流れない。
【0045】
以上の説明においてはシャッタ羽根3の駆動時での漏れ磁束流入阻止方法について述べたが、同様のことが絞り羽根4を駆動するときについても言える。この場合は絞り羽根4が駆動して開口部2を所定開口に光量を絞った状態において、シャッタ羽根3が駆動してしまうと開口部2が全閉してしまい、光量を絞ることができないと言うことが考えられる。しかし、上述の凹状溝部1Kの作用により、漏れ磁束の流入が阻止されるため、絞り羽根4の駆動時にシャッタ羽根3が漏れ磁束の影響で駆動されることがない。
第2の実施例
図6は本発明の第2の実施例を示す。
【0046】
本第2の実施例は、上述した漏れ磁束流入量を第1の実施例よりもさらに小さくする構成を示すものである。
【0047】
本実施例においては、図1に示す第1の実施例における前記凹状溝部1Kに代えて、同じ場所に所定幅で所定長さのエアギャップである空隙部1Lを設けた。このエアギャップである空隙部1LをヨークYとY´との間に形成したことにより磁気抵抗が更に大きくなり、漏れ磁束流入に対して強くなり、互いに漏れ磁束による相手側への影響を極力小さくすることができる。
第3の実施例
図7は本発明の第3の実施例を示す。
【0048】
図7は図6に示す第2の実施例の変形例である。図6に示す上記した第2の実施例においては、漏れ磁束流入阻止部分としてベース部材1に空隙部1Lを設けたが、この部分だけ切りかかれているため、光量調節装置としての機械的強度が低下することも考えられる。
【0049】
そこで、本第3の実施例では、前記空隙部1Lに黄銅等の非磁性部材1Mを圧入、接着等の手段で前記空隙部1Lを充填する構成にした。このことにより光量調節装置としての機械的強度が低下する恐れがなく、磁気抵抗が大きく漏れ磁束流入に対して強くなった。
第4の実施例
図8は本発明の第4の実施例を示す。
【0050】
本実施例は、第1、第2または第3の実施例に示す光量調節装置Eとレンズ11、12とを保持部材13を介して一体的に組付けてユニット化したレンズユニットLUを示している。
第5の実施例
図9及び図10は本発明の第5の実施例を示す。
【0051】
図9は撮像手段としてCCD、CMOSセンサなどの撮像素子14を備えたデジタルカメラ15の撮像光学系に第1、第2または第3の実施例に示す光量調節装置E、あるいは第4の実施例に示すレンズユニットLUを配置したもので、上述した効果によりカメラの撮像光学系の厚みを薄くして、カメラの薄型化を図ることができる。
【0052】
図10は、携帯端末装置に第1、第2または第3の実施例に示す光量調節装置Eとレンズ17とを配置したものである。光量調節装置Eに対してレンズ17は従来のようにヨークより配置位置が限定されることがないため、上述した効果により携帯端末である薄くしかも幅が狭いカメラ付携帯電話の更なる小型化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施例における光量調節装置の平面図で、シャッタ羽根が閉鎖状態で絞り羽根が開放状態を示す。
【図2】図1のベース部材、ロータ、コイルボビンの配置状態を示す図。
【図3】本発明の第1の実施例における光量調節装置の平面図で、シャッタ羽根及び絞り羽根が開放状態を示す。
【図4】本発明の第1の実施例における光量調節装置の平面図で、シャッタ羽根が開放状態で絞り羽根が閉鎖状態を示す。
【図5a】図1の光量調節装置にカバー部材を取り付けた平面図。
【図5b】図5aのA−A線断面図。
【図6】本発明の第2の実施例を示す光量調節装置におけるベース部材の平面図。
【図7】本発明の第3の実施例を示す光量調節装置におけるベース部材の平面図。
【図8】本発明の第4の実施例を示すレンズユニットの断面図。
【図9】本発明の第5の実施例を示すカメラの概略図。
【図10】本発明の第5の実施例を示す携帯端末としてのカメラ付携帯電話の概略図。
【符号の説明】
【0054】
1 ベース部材
1K 凹状溝部
1L 空隙部
1M 非磁性部材
2 開口
3 シャッタ羽根
4 絞り羽根
5 ロータ
6 ボビン
7 軸受け部材
8 励磁コイル
9 端子
Y、Y´ ヨーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラなどに用いられる光量調節装置に関し、例えば絞り動作を行う絞り羽根と露光動作を行うシャッタ羽根を備えた光量調節装置、この光量調節装置を備えた撮像光学ユニット及びこの撮像光学ユニットを備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラやカメラ付き携帯電話に用いられるカメラ用シャッタ装置や絞り装置は、デジタルカメラやカメラ付き携帯電話の小型化、薄型化に伴って、小型化、薄型化の要請が益々強まってきている。
【0003】
その中で、小型化を意図した従来例として、露出用の開口部を開閉するシャッタ羽根と開口部の絞りを行う絞り羽根とを別々備えた絞り兼用シャッタにおいて、露出開口を備えた地板に2枚の絞り羽根を所定距離相対的に移動可能に支持し、又、前記2枚の絞り羽根で形成される絞り開口を1枚のシャッタで開閉する構成を有すると共に、さらに2枚の絞り羽根を駆動する駆動源とシャッタを駆動する駆動源を別々に有し、これら駆動源は所謂ムービングマグネットモータから構成されているものが提案されている。(特許文献1)。
【0004】
又、駆動源を上述の例とは別な形態として、露出開口を備えた地板に対し、2枚の開き用シャッタを所定の距離を相対的に移動可能に支持させると共に、該開き用シャッタに前記露出開口を介して対向する位置に2枚の閉じ用シャッタを所定の距離を相対的に移動可能に支持させ、該閉じ用シャッタ、該開き用シャッタを駆動する駆動源を別々に持っている構成としたものが提案されている。(特許文献2)。
【0005】
これらの駆動源は、外周面を二分するように異なる磁極(N極及びS極)に着磁され、所定角度範囲を回動するロータと、励磁用のコイルと、ロータの外周面に対向するように配置され、異なる磁極を発生し得る二つの磁極を有する二股状に形成された平板形状のヨークから構成されている。
【特許文献1】特開2002−139768号公報
【特許文献2】特開2003−186079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来の光量調節装置において、ヨーク部材の位置精度のバラツキにより、一方の電磁アクチュエータの磁気が他方の電磁アクチュエータに作用し、例えば、前述したようにシャッタ駆動用アクチュエータ及び絞り羽根駆動用アクチュエータの作動開始位置、および所定距離回動した作動終了位置において、コイルへの通電を切ってもその位置を保持するようにヨークとロータ間に働く磁気吸引力が作用しているが、その磁気吸引力を弱めるような力が働き、作動開始位置、作動終了位置を維持できなくなる場合があり、個々のヨーク位置を後加工で調整することがあった。
【0007】
また、上記先行技術に開示された光量調節装置において、前者の光量調節装置は、駆動源として所謂ムービングマグネット方式のモータを使用しており、ロータとコイルの構造の関係上、どうしても背が高くならざるをえなく、装置の薄型化には不向きである。
【0008】
さらに、後者の光量調節装置の駆動源は、平板状のヨークを使用している関係上、ムービングマグネット方式のモータに比べて背が低くはなっているが、駆動源を載置している地板がモールドで形成されており、強度を保つ為には所定の厚みが必要となり、結果として装置の薄型化に限界があった。
【0009】
このような背景から本出願人はベース部材とヨークを兼用化し、該ヨークを使用して磁気回路を構成し、複数の遮光部材を駆動する駆動手段を構成する光量調節装置を発案した。この光量調節装置によればベース部材とヨークを兼用化することにより、部品を省略化することができ、特に装置を薄型化することができた。
【0010】
しかし、ベース部材を兼用した単一のヨークに複数の磁気回路を構成したので、一方の磁気アクチュエータの磁束がヨークを通って他方の磁気アクチュエータに影響を及ぼすという不具合が出る場合がある。
【0011】
本出願に係る発明は、このような従来の問題に鑑みなされたもので、磁気干渉を少なくすると共に装置全体の小型化、特に薄型化をはかることができ、更に安価な光量調節装置の提供を目的とする。
【0012】
さらに、光量調節装置の厚みを薄くすることにより、これらを含むレンズユニットを薄型化する撮像光学ユニット、およびデジタルカメラやカメラ付携帯電話などの撮像装置の小型化、薄型化をはかる撮像装置の提供を目的とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的を実現する光量調節装置の構成は、請求項1に記載のように、光量を制御する複数の遮光部材と、磁気回路にて電磁的駆動力を得て前記複数の遮光部材をそれぞれ駆動する複数の駆動手段と、前記複数の遮光部材および前記複数の駆動手段を取り付けるベース部材を備え、前記ベース部材は前記複数の駆動手段の前記磁気回路を構成するヨークを兼用し、前記複数の駆動手段に用いるヨークは共通のヨークを使用した光量調節装置において、前記ベース部材には、前記複数の駆動手段の中間部に漏れ磁束の流入を阻止する阻止手段を設けたことを特徴とする。
【0014】
本発明の目的を実現する撮像光学ユニットの構成は、上記の光量調節装置と、前記光量調節装置の前方または後方に少なくともレンズを配置した撮像光学系とをユニット化し、前記ヨークの少なくとも一部が、前記ヨークに最も近接する前記撮像光学系のレンズの外周より、光軸中心側に入り込んでいることを特徴とする。
【0015】
本発明の目的を実現する撮像装置の構成は、上記構成の光量調節装置と、前記光量調節装置の前方または後方に少なくともレンズを配置した撮像光学系とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光量調節装置によれば、ベース部材と磁気駆動回路を構成するヨークを兼用させると共に、複数の磁気アクチュエータの中間部に漏れ磁束の流入を阻止(磁気干渉阻止)する阻止手段を設けることにより、ベース部材を兼用した単一のヨークに複数の磁気回路を構成したがために起きる、一方の磁気アクチュエータの他方の磁気アクチュエータに磁気的な影響を及ぼすという不具合を防止でき、装置の小型化、薄型化を図ることができ、またこの光量調節装置を用いた撮像光学ユニット、撮像装置の小型化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
第1の実施例
図1から図5は本発明の第1の実施例を示す。
【0018】
図1は後述するカバー10を取り外した状態の平面図であり、シャッタ羽根3は閉状態、光線の光量を制限する絞り羽根4は開状態を示している。図2は、図3からシャッタ羽根3、絞り羽根4、軸受け部材7を取り除いた状態を示し、図3はシャッタ羽根3と絞り羽根4の両方が開いた状態を示し、図4はシャッタ羽根3が開状態で絞り羽根4が閉状態を示し、図5aはカバー10をベース部材1に取り付けた状態を示す平面図、図5bは図5aのA−A線に沿った断面図である。
【0019】
本実施例は、図1から図5に示すように、撮影光を透過する開口2がヨークを兼用するベース部材1に設けられる。ベース部材1は純鉄、電磁ステンレス、パーマロイ、ケイ素鋼板等の強磁性体の材料からなるヨーク用の材料からなる板材をプレス加工等により所定の形状に形成される。
【0020】
このベース部材1は、中心線L1を中心に図1、図2中、左右に略軸線対称に形成され、左部分に示す要素と同じ要素の右部分の符号は同じ数字とし、 ´を付して区別する。
【0021】
ベース部材1には、磁極部1aと1bとが磁気的に略コの字形状をなすように形成されたヨークY、同様に磁極部1a´と1b´とが略コの字形状をなすように形成されたヨークY´を有している。対向する磁極部1aと1b間、及び磁極部1a´と1b´間の中心にはシャッタ羽根3、及び絞り羽根4を所定の角度回動駆動するロータ5、5´が所定間隙を介して回転可能にそれぞれ支持されている。左側のロータ5は前記ベース部材1に適当な方法で取り付けられる図5bに示す軸受け部材7上に形成された軸7aに回転可能に支持される。
【0022】
更に、前記左右の各磁極部1b、1b´は前記ロータ5、5´との対向する面積を増やすため、円弧状に切り曲げされ、ロータ5、5´の外周面の高さと同程度の幅で立ち上がっている。又、対向する各磁極部1a、1a´は励磁するコイル8、8´が巻回されたボビン6、6´がそれぞれ挿入され、ボビン6、6´にはそれぞれ出力端子である端子9、9´が備えられている。
【0023】
前記磁極部1a、1a´には図5bに示すように、前記ロータ5、5´との対向する面積を増やすため、ロータ5、5´の外周面の高さと同程度の高さになるように磁極部1a、1a´と同形状で所定の厚さの平板1jがカシメ、接着等の適切な手段で固定されている。
【0024】
また、前記ベース部材1のヨークYとY´の中間部には、所定深さで所定長さの凹状溝部1Kが切削、プレス等の適切な手段により設けられている。
【0025】
シャッタ羽根3、絞り羽根4の回動支持構造
シャッタ羽根3、絞り羽根4の回動支持構造は以下のようになっている。前記シャッタ羽根3は前記ベース部材1の下部に固定された軸受け部材7からと突出するように形成された軸7bに前記シャッタ羽根3の穴3aが嵌合し回動中心をなすとともに、該軸7bは前記ベース部材1上に形成された穴1eを貫通し、前記ベース部材1上でシャッタ羽根3の穴3aと嵌合し、結果、前記シャッタ羽根3は所定角度回動可能に支持される。
【0026】
前記ベース1上には前記シャッタ羽根3の回動に対応して開き位置、閉じ位置を規定するストッパー1d、1cが切り曲げ等の方法で一体的に形成される。
【0027】
前記絞り羽根4は同様に前記ベース部材1の下部に固定された不図示の軸受け部材から突出するように形成された軸7b´に前記絞り羽根4の穴4aが嵌合し回動中心をなすとともに、該軸7b´は前記ベース部材1上に形成された穴1e´を貫通し、前記ベース部材1上で絞り羽根4の穴4a´と嵌合し、結果、前記絞り羽根4は所定の角度を回動可能に支持される。前記ベース1上には前記絞り羽根4の回動に対応して開き位置、閉じ位置を規定するストッパー1d´、1c´が切り曲げ等の方法で一体的に形成される。
【0028】
前記シャッタ羽根3は前述のように穴3aが軸7b上で回動可能に支持されるが、一方では、前記ロータ5と一体的に形成された駆動ピン5aが前記シャッタ羽根3に形成された長溝形状の長穴3bに遊嵌している。又、前記シャッタ羽根3の先端は前記開口2を覆うだけの面積を有している。シャッタ羽根3と絞り羽根4は、遮光性と潤滑性を有し、厚さ0.03〜0.15mmの熱可塑性プラスチックシートをプレス加工して形成される。
【0029】
前記絞り羽根4は前述のように穴4aが軸7b´上で回動可能に支持されるが、一方では、前記ロータ5´と一体的に形成された駆動ピン5a´が前記絞り羽根4に形成された長溝形状の長穴4b´に遊嵌している。又、前記絞り羽根4の先端には前記開口2より小さい小絞り用の開口4cを有している。
【0030】
前記ベース1には穴1g、1g´、1fが設けられている。穴1g、1g´はこの光量調節装置を不図示のカメラ本体に取り付けるためのものであり、穴1fはカバー部材10を取り付け固定するためのものである。
【0031】
前記カバー10はシャッタ羽根3、絞り羽根4の可動領域を覆い、シャッタ羽根3、絞り羽根4の浮き上がりを防止する。該カバー10は金属ないしプラスチックの薄板からなり、ベース1上の位置きめ穴1fに適切な方法で固定され、下辺は図5aに示すごとくベース1に対しカバー10の可撓性により嵌め合い固定される。
【0032】
次に本実施例の光量調節装置の作動について説明する。
【0033】
まず、不図示のカメラのシャッタレリーズボタンが押される前は、図3のようにシャッタ羽根3及び絞り羽根4とも、それぞれの羽根は重なって開口部2から退避している。
【0034】
この状態においてシャッタ羽根駆動装置を構成する左側のシャッタ羽根用のロータ5は、図3に示すように、磁気吸引力により時計方向に回動しようとする力が働いており、シャッタ羽根3はストッパー1dにより係止され、開状態が維持されている。一方、絞り羽根駆動装置を構成する右側の絞り羽根用のロータ5´は図3に示すように、磁気吸引力により反時計方向に回動しようとする力が働いており、絞り羽根4はストッパー1d´により係止され、開状態が維持されている。
【0035】
次にレリーズボタンが押されると、不図示の撮像素子はそれまで蓄積した電荷を放出し、その後所定露光量の電荷を蓄積した後、シャッタ羽根群を閉じて露光を終了し、その後蓄積した電荷の転送を行う。
【0036】
その時、不図示の駆動回路によりコイル8に通電されると前記磁極部1a、1bはそれぞれN極、S極になりロータ5は反時計方向に回動し始める。ロータ5の反時計方向への回動に伴ってロータ5に一体的に設けられた駆動ピン5aも反時計方向に回動し始める。駆動ピン5aは回動に伴って前記シャッタ羽根3に形成された長溝3aの図4中右側の内壁部分を反時計方向に押圧し、シャッタ羽根3は軸7bを回動中心とし、時計方向に回動し開口2を閉鎖し、図1に示す状態に至る。
【0037】
シャッタ羽根3の閉鎖状態において、前記コイル8への通電を切ってもロータ5は磁気吸引力により反時計方向に回動しようとする力が働き、その力によりシャッタ羽根3も時計方向に回動しようとするが、ストッパー1cに係止され閉状態が維持される。
【0038】
この時、前記シャッタ羽根3と絞り羽根4は全開状態から全閉状態までのどの位置でも必ず一部が重なっており羽根同士が干渉することはない。
【0039】
次に、撮像素子の電荷の転送が終了すると、シャッタ羽根3は再び開放する。このときシャッタ羽根用の駆動手段は、シャッタ閉鎖動作時と反対方向に駆動ピン5aを駆動する。その動作は今まで述べてきた、全開から全閉の動作と逆の動作を行い全開となる。
【0040】
次に絞り羽根4の動作について説明する。
【0041】
不図示の露出制御機構により露光量が決まるとその時、不図示の駆動回路によりコイル8´に通電されると前記磁極部1a´、1b´はそれぞれS極、N極になりロータ5´は時計方向に回動し始める。ロータ5´の回動に伴ってロータ5´に一体的に設けられた駆動ピン5a´も時計方向に回動し始める。駆動ピン5a´は回動に伴って前記絞り羽根4に形成された長溝4b´の図4中左側の内壁部分を時計方向に押圧し、絞り羽根4は軸7b´を回動中心とし、反時計方向に回動し開口2を図4に示すように小絞り径4cに制限する。
【0042】
閉鎖状態においては前記コイル8´への通電を切ってもロータ5´は磁気吸引力により時計方向に回動しようとする力が働き、その力により絞り羽根4も反時計方向に回動しようとするが、ストッパー1c´に係止され閉状態が維持される。
この時、前記シャッタ羽根3と絞り羽根4は全開状態から全閉状態までのどの位置でも必ず一部が重なっており羽根同士が干渉することはない。
【0043】
前述したシャッタ羽根3が駆動された時、励磁された磁束は略コの字状のヨークYの磁極部1aのN極から磁極部1bのS極へと閉ループを描くように流れる。しかし、ヨークYとヨークY´は共通のヨーク部材を使用しているため、磁束の大部分は上記のように流れるが、一部は隣接するヨークY´に漏れる。この漏れ磁束がヨークY´に流れ、漏れ磁束量が大きいと絞り駆動機構に回転駆動力が働く、前述のように絞り駆動機構に駆動電流が流れていない時は、ロータ5´に磁気吸引力により時計方向に回動しようとする力が働き、その力により絞り羽根4も反時計方向に回動しようとするが、ストッパー1c´に係止され初期位置状態が維持されているが、この磁気吸引力を上回る駆動力が働くような漏れ磁束が流れると、絞り羽根4が動いてしまい、はなはだしくは絞り羽根4が閉状態になってしまうことがある。このような状態にならないまでも、漏れ磁束がヨークY´に流れ、絞り駆動機構に回転駆動力が働くと絞り羽根4に時計方向の駆動力が働き初期位置が不安定になり、例えば衝撃等の力が加わると絞り羽根4が動き、閉状態になってしまうことがある。
【0044】
本実施例によれば、前記ベース部材1のヨークYとY´の中間部には所定深さで所定長さの凹状溝部1Kが設けられているので、ヨークYとY´の磁路断面積に比べて、凹状溝部1K部分の磁路断面積が小さい。このため、漏れ磁束がヨークY´に流れこもうとしても、流れる磁束量は磁路の断面積に比例するので、凹状溝部1K部分で磁気的に飽和してしまいヨークY´にはわずかな量しか流れない。
【0045】
以上の説明においてはシャッタ羽根3の駆動時での漏れ磁束流入阻止方法について述べたが、同様のことが絞り羽根4を駆動するときについても言える。この場合は絞り羽根4が駆動して開口部2を所定開口に光量を絞った状態において、シャッタ羽根3が駆動してしまうと開口部2が全閉してしまい、光量を絞ることができないと言うことが考えられる。しかし、上述の凹状溝部1Kの作用により、漏れ磁束の流入が阻止されるため、絞り羽根4の駆動時にシャッタ羽根3が漏れ磁束の影響で駆動されることがない。
第2の実施例
図6は本発明の第2の実施例を示す。
【0046】
本第2の実施例は、上述した漏れ磁束流入量を第1の実施例よりもさらに小さくする構成を示すものである。
【0047】
本実施例においては、図1に示す第1の実施例における前記凹状溝部1Kに代えて、同じ場所に所定幅で所定長さのエアギャップである空隙部1Lを設けた。このエアギャップである空隙部1LをヨークYとY´との間に形成したことにより磁気抵抗が更に大きくなり、漏れ磁束流入に対して強くなり、互いに漏れ磁束による相手側への影響を極力小さくすることができる。
第3の実施例
図7は本発明の第3の実施例を示す。
【0048】
図7は図6に示す第2の実施例の変形例である。図6に示す上記した第2の実施例においては、漏れ磁束流入阻止部分としてベース部材1に空隙部1Lを設けたが、この部分だけ切りかかれているため、光量調節装置としての機械的強度が低下することも考えられる。
【0049】
そこで、本第3の実施例では、前記空隙部1Lに黄銅等の非磁性部材1Mを圧入、接着等の手段で前記空隙部1Lを充填する構成にした。このことにより光量調節装置としての機械的強度が低下する恐れがなく、磁気抵抗が大きく漏れ磁束流入に対して強くなった。
第4の実施例
図8は本発明の第4の実施例を示す。
【0050】
本実施例は、第1、第2または第3の実施例に示す光量調節装置Eとレンズ11、12とを保持部材13を介して一体的に組付けてユニット化したレンズユニットLUを示している。
第5の実施例
図9及び図10は本発明の第5の実施例を示す。
【0051】
図9は撮像手段としてCCD、CMOSセンサなどの撮像素子14を備えたデジタルカメラ15の撮像光学系に第1、第2または第3の実施例に示す光量調節装置E、あるいは第4の実施例に示すレンズユニットLUを配置したもので、上述した効果によりカメラの撮像光学系の厚みを薄くして、カメラの薄型化を図ることができる。
【0052】
図10は、携帯端末装置に第1、第2または第3の実施例に示す光量調節装置Eとレンズ17とを配置したものである。光量調節装置Eに対してレンズ17は従来のようにヨークより配置位置が限定されることがないため、上述した効果により携帯端末である薄くしかも幅が狭いカメラ付携帯電話の更なる小型化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施例における光量調節装置の平面図で、シャッタ羽根が閉鎖状態で絞り羽根が開放状態を示す。
【図2】図1のベース部材、ロータ、コイルボビンの配置状態を示す図。
【図3】本発明の第1の実施例における光量調節装置の平面図で、シャッタ羽根及び絞り羽根が開放状態を示す。
【図4】本発明の第1の実施例における光量調節装置の平面図で、シャッタ羽根が開放状態で絞り羽根が閉鎖状態を示す。
【図5a】図1の光量調節装置にカバー部材を取り付けた平面図。
【図5b】図5aのA−A線断面図。
【図6】本発明の第2の実施例を示す光量調節装置におけるベース部材の平面図。
【図7】本発明の第3の実施例を示す光量調節装置におけるベース部材の平面図。
【図8】本発明の第4の実施例を示すレンズユニットの断面図。
【図9】本発明の第5の実施例を示すカメラの概略図。
【図10】本発明の第5の実施例を示す携帯端末としてのカメラ付携帯電話の概略図。
【符号の説明】
【0054】
1 ベース部材
1K 凹状溝部
1L 空隙部
1M 非磁性部材
2 開口
3 シャッタ羽根
4 絞り羽根
5 ロータ
6 ボビン
7 軸受け部材
8 励磁コイル
9 端子
Y、Y´ ヨーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光量を制御する複数の遮光部材と、磁気回路にて電磁的駆動力を得て前記複数の遮光部材をそれぞれ駆動する複数の駆動手段と、前記複数の遮光部材および前記複数の駆動手段を取り付けるベース部材を備え、前記ベース部材は前記複数の駆動手段の前記磁気回路を構成するヨークを兼用し、前記複数の駆動手段に用いるヨークは共通のヨークを使用した光量調節装置において、前記ベース部材には、前記複数の駆動手段の中間部に漏れ磁束の流入を阻止する阻止手段を設けたことを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記阻止手段は、薄肉部、あるいは切り欠き部により構成したことを特徴とする請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項3】
前記阻止手段としての切り欠き部に、前記ベース部材の材質とは異なる材質の剛体を設けたことを特徴とする請求項2に記載の光量調節装置。
【請求項4】
前記剛体の材質は非磁性材料であることを特徴とする請求項3に記載の光量調節装置。
【請求項5】
前記ベース部材には撮像光を透過する円形の開口が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光量調節装置。
【請求項6】
前記駆動手段は、少なくとも周方向に2極に着磁されたマグネットと、該マグネットの円周方向に配置された前記ヨークと、前記ヨークの一部に嵌着され、コイルが巻回されたボビンと、から構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の光量調節装置。
【請求項7】
前記複数の遮光部材は、シャッタ部材同士の組み合わせ、絞り部材同士の組み合わせ、あるいはシャッタ部材と絞り部材との組み合わせであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の光量調節装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の光量調節装置と、前記光量調節装置の前方または後方に少なくともレンズを配置した撮像光学系とをユニット化し、前記ヨークの少なくとも一部が、前記ヨークに最も近接する前記撮像光学系のレンズの外周より、光軸中心側に入り込んでいることを特徴とする撮像光学ユニット。
【請求項9】
請求項1から7のいずれかに記載の光量調節装置と、前記光量調節装置の前方または後方に少なくともレンズを配置した撮像光学系とを備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
請求項8に記載の撮像光学ユニットを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項1】
光量を制御する複数の遮光部材と、磁気回路にて電磁的駆動力を得て前記複数の遮光部材をそれぞれ駆動する複数の駆動手段と、前記複数の遮光部材および前記複数の駆動手段を取り付けるベース部材を備え、前記ベース部材は前記複数の駆動手段の前記磁気回路を構成するヨークを兼用し、前記複数の駆動手段に用いるヨークは共通のヨークを使用した光量調節装置において、前記ベース部材には、前記複数の駆動手段の中間部に漏れ磁束の流入を阻止する阻止手段を設けたことを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記阻止手段は、薄肉部、あるいは切り欠き部により構成したことを特徴とする請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項3】
前記阻止手段としての切り欠き部に、前記ベース部材の材質とは異なる材質の剛体を設けたことを特徴とする請求項2に記載の光量調節装置。
【請求項4】
前記剛体の材質は非磁性材料であることを特徴とする請求項3に記載の光量調節装置。
【請求項5】
前記ベース部材には撮像光を透過する円形の開口が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光量調節装置。
【請求項6】
前記駆動手段は、少なくとも周方向に2極に着磁されたマグネットと、該マグネットの円周方向に配置された前記ヨークと、前記ヨークの一部に嵌着され、コイルが巻回されたボビンと、から構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の光量調節装置。
【請求項7】
前記複数の遮光部材は、シャッタ部材同士の組み合わせ、絞り部材同士の組み合わせ、あるいはシャッタ部材と絞り部材との組み合わせであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の光量調節装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の光量調節装置と、前記光量調節装置の前方または後方に少なくともレンズを配置した撮像光学系とをユニット化し、前記ヨークの少なくとも一部が、前記ヨークに最も近接する前記撮像光学系のレンズの外周より、光軸中心側に入り込んでいることを特徴とする撮像光学ユニット。
【請求項9】
請求項1から7のいずれかに記載の光量調節装置と、前記光量調節装置の前方または後方に少なくともレンズを配置した撮像光学系とを備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
請求項8に記載の撮像光学ユニットを有することを特徴とする撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2006−330314(P2006−330314A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153311(P2005−153311)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】
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