説明

光電変換素子、光電変換素子の製造方法、太陽電池

【課題】高い光電変換効率を安定的に発現させることが可能な光電変換素子を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表される構造の複素環化合物を重合した導電性高分子を含有する正孔輸送層と、一般式(2)で表される特定構造のフェニルアミン化合物を増感色素に用いる光電変換素子。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光のエネルギーを電気エネルギーに変換する機能を有する光電変換素子に関
し、特に、正孔輸送材料に導電性高分子を含有させ、増感色素に有機色素を用いた光電変
換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池に代表される光電変換素子は、光のエネルギーを電気エネルギーに変換して各種機器に電力を供給する素子で、シリコンに代表される無機系材料を使用する光電変換素子の開発が従来より検討されてきた。無機系材料には、単結晶シリコンやアモルファスシリコン、セレン化インジウム銅等があるが、無機系材料を用いた光電変換素子は高純度の無機系材料を形成する精製工程や多層pn接合構造を作製する製造工程が必要になる等、生産性に課題を有していた。また、インジウム等のレアメタルを用いるものであることから、原材料の安定供給体制に対する課題も有していた。
【0003】
一方、合成により安定供給を可能にする有機材料を用いた光電変換素子も検討され、たとえば、電子伝導性(n型)のペリレンテトラカルボン酸と正孔伝導性(p型)の銅フタロシアニンを接合させた有機光電変換素子が報告された(たとえば、非特許文献1参照)。この様な有機光電変換素子では、励起子拡散長と空間電荷層の改良が必要であることが判明し、その対応策としてn型有機材料とp型有機材料で形成されるpn接合部の面積を増大させて光電変換を効率よく行える様にする方法が提案された。具体的には、n型の電子伝導性材料とp型の正孔伝導性ポリマーを膜中で複合化させてpn接合部分を増大させることにより、膜中全体で光電変換を行う技術が提案された(たとえば、非特許文献2参照)。そして、正孔伝導性ポリマーである共役高分子と電子伝導性材料であるフラーレンを膜中で複合化させる技術も提案された。
【0004】
ところで、上記有機光電変換素子は、無機系材料を用いたものに比べて光電変換効率が低いものであったため、光電変換効率の向上が検討され、これを解消する技術として色素増感型の光電変換素子が注目された。具体的には、多孔質酸化チタンを使用して半導体表面積を増大させて有機増感色素の吸着量を増やすことにより、光電変換効率の向上を図ろうとする技術が提案された(たとえば、非特許文献3参照)。この技術では、多孔質酸化チタン表面に吸着させた有機増感色素が光励起され、色素より酸化チタンへ電子が注入されて色素カチオンが形成される。そして、この色素カチオンの存在により、素子内ではヨウ素含有電解質を有機溶媒に溶解させた電解液を有する正孔輸送層を経由して対極より電子の授受のサイクルが繰り返され、光電変換効率の向上を実現させている。また、この技術では、半導体として使用される酸化チタンは高純度に精製したものではないことや、光電変換可能な可視光領域を拡大させており、色素増感型の光電変換素子の可能性を高めるものでもあった。その一方で、正孔輸送層に電解液を使用しているので、液漏れによる化学種の散逸を防ぐ配慮が必要なものであった。
【0005】
この課題に対して、正孔輸送材料にアモルファス性有機正孔材料やヨウ化銅等の固体材料を用いる全固体色素増感型光電変換素子に関する技術が提案された(たとえば、非特許文献4、5参照)。これら固体の正孔輸送材料の中に、その構造から高い光電変換効率が得られると期待されるものの1つに、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)等に代表される導電性高分子があり検討が行われていた(たとえば、特許文献1、2参照)。たとえば、特許文献1には、導電性高分子の1つであるポリチオフェン類を正孔輸送物質に用いて色素を吸着させた半導体微粒子含有層の上に正孔輸送層を形成する技術が開示されている。また、特許文献2には、ポリチオフェン類の1つであるポリエチレンジオキシチオフェンの正孔輸送層を第1電極上に形成した太陽電池ユニットを作製する技術が開示されている。
【0006】
ところで、光電変換素子では正孔輸送材料と増感色素の間での電子授受が効率よく行える様、光電変換層を構成する半導体細孔内にも正孔輸送材料を配置させる必要がある。そこで、ポリチオフェンの原料であるチオフェン化合物を含有する塗布液を光電変換層に塗布し、チオフェン化合物を重合させてポリチオフェンの正孔輸送層を形成する技術が検討されていた(たとえば、非特許文献6参照)。非特許文献6では、チオフェン化合物含有液を光電変換層へ塗布後、光照射による重合反応を行うことにより、半導体細孔内へポリチオフェンの正孔輸送物質を配置させることが開示されている。
【0007】
また、熱重合によりポリチオフェン形成を行って正孔輸送層を形成する技術も検討され(たとえば、非特許文献7、8参照)、半導体細孔内での重合反応を促進させることが可能になり耐久性を有する正孔輸送層を形成することが可能になった。この様に、熱重合によりポリチオフェンの正孔輸送層を形成する技術は確立されていたが、この方法で正孔輸送層を作製しても、高いレベルの光電変換効率が得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−106223号公報
【特許文献2】特開2011−009419号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】C.W.Tang:Applied Physics Letters,48,183(1986)
【非特許文献2】G.Yu,J.Gao,J.C.Humelen,F.Wudl and A.J.Heeger:Science,270,1789(1996)
【非特許文献3】B.O’Regan,M.Gratzel,Nature,353,737(1991)
【非特許文献4】U.Bach,D.Lupo,P.Comte,J.E.Moser,F.Weissortel,J.Salbeck,H.Spreitzer and M.Gratzel,Nature,395,583(1998)
【非特許文献5】G.R.A.Kumara,S.Kaneko,M.Kuya,A.Konno and K.Tennakone:Key Engineerinng Matterals,119,228(2002)
【非特許文献6】J.Xia,N.Masaki,M.Lira−Cantu,Y.Kim,K.Jiang and S.Yanagida:Journal of the American Chemical Society,130,1258(2008)
【非特許文献7】J.K.Koh,J.Kim,B.Kim,J.H.Kim,E.Kim:Advanced Materials,XX,1〜6(2011)
【非特許文献8】X.Riu,W.Zhang,S.Uchida,L.Chai,B.Liu,S.Ramakrishna:Advanced Materials,22,E1〜E6(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、正孔輸送物質にポリチオフェン化合物等の導電性高分子を用いた光電変換素子に対して、高い光電変換効率を安定的に発現することが可能な光電変換素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題が下記に記載のいずれかの構成により解消されるものであることを見出した。すなわち、請求項1に記載の発明は、
『少なくとも、基体、第1電極、半導体及び増感色素を含有する光電変換層、固体の正孔輸送物質を含有する正孔輸送層、第2電極を有する光電変換素子であって、
前記正孔輸送層に含有される固体の正孔輸送物質が、下記一般式(1)で表される構造の導電性高分子であり、
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、RとRは水素原子、置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基を表し、R1 とR2 は同じものであっても異なるものであってもよい。また、R1 とR2 は連結して環構造を形成するものであってもよく、kは自然数を表す。)
前記光電変換層に、増感色素として、
下記一般式(2)で表される構造の化合物と、
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、nは1以上3以下の整数、Arは芳香族基を表し、R3 は水素原子、ハロゲン原子あるいは置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、シアノ基または複素環基を表す。nが1のとき、2つのR3 は互いに異なるものであってもよく、また、R3 は他の置換基と連結して環構造を形成してもよい。A1 、A2 は単結合または2価の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、置換または未置換のアルキレン基、アリーレン基、複素環基のいずれかであり、pとqは0以上6以下の整数である。Zは少なくとも1つのヒドロキシ基または酸性基を含む有機基を表し、nが2以上のとき、複数のA1 、A2 、Zは互いに異なるものであってもよい。)
下記一般式(4)〜(9)で表される構造の化合物の少なくとも1つ以上を含有することを特徴とする光電変換素子。
【0016】
【化3】

【0017】
(式中、R11〜R26は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、フェノキシ基を表し、R11〜R26上の少なくとも1個所に酸性基を有する。また、Mは2個の水素原子または置換基を有してもよい2価、3価、4価の金属原子を表す。)
【0018】
【化4】

【0019】
(式中、R31〜R42は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、複素環基、直接あるいは他の結合原子を介して環状構造、縮環構造を形成する基を表し、R31〜R42上の少なくとも1個所に酸性基を含有する。Mは、2個の水素原子を表すか、置換基を有してもよい2価、3価、4価の金属原子を表す。)
【0020】
【化5】

【0021】
(一般式(6)中のR53とR54、両式中のR57とR58は、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基を表し、前記部位上の少なくとも1個所に酸性基を有する。一般式(6)中のR51、R52と両式中のR55、R56は、炭素数が同じあるいは異なるアルキル基、アリール基またはアルキル基置換アリール基のいずれかを表す。)
【0022】
【化6】

【0023】
(一般式(8)中のR51、R52、R53、R54は、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基を表し、R53上に酸性基を有する。両式中のR59とR60は、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R59とR60は互いに連結して環状構造を形成してもよい。)』というものである。
【0024】
請求項2に記載の発明は、
『前記一般式(2)で表される構造の増感色素が、下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
【0025】
【化7】

【0026】
(式中、mは1以上5以下の整数、nは1または2の整数を表す。R5 、R6 は水素原子、ハロゲン原子あるいは置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、シアノ基または複素環基を表し、連結して環構造を形成してもよい。A1 、A2 はイオウ原子を含む複素環基を表し、p、qは0以上6以下の整数である。Zは少なくとも1つのヒドロキシ基または酸性基を含む有機基を表し、nが2のとき、A1 、A2 、Zは互いに異なるものであってもよい。)』というものである。
【0027】
請求項3に記載の発明は、
『前記一般式(3)で表される構造の増感色素中のR5 、A1 及びA2 の少なくとも1つが、炭素原子数6以上の直鎖アルキル構造を有するものであることを特徴とする請求項2に記載の光電変換素子。』というものである。
【0028】
請求項4に記載の発明は、
『前記一般式(3)で表される構造の増感色素中のnが2であることを特徴とする請求項2または3に記載の光電変換素子。』というものである。
【0029】
請求項5に記載の発明は、
『前記一般式(1)で表される構造の導電性高分子は、少なくとも2種類以上の重合性単量体を用いて形成される共重合体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光電変換素子。』というものである。
【0030】
請求項6に記載の発明は、
『前記増感色素を含有する光電変換層の厚さが10μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子。』というものである。
【0031】
請求項7に記載の発明は、
『前記正孔輸送層に含有される固体の正孔輸送物質が、
前記一般式(1)で表される構造の導電性高分子が熱重合して形成されるものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光電変換素子。』というものである。
【0032】
請求項8に記載の発明は、
『前記熱重合を行うときの処理温度が50℃以上80℃以下であることを特徴とする請求
項7に記載の光電変換素子。』というものである。
【0033】
請求項9に記載の発明は、
『少なくとも、基体、第1電極、半導体及び増感色素を含有する光電変換層、固体の正孔輸送物質を含有する正孔輸送層、第2電極を有する光電変換素子の製造方法であって、
前記正孔輸送層に含有される固体の正孔輸送物質が、下記一般式(1)で表される構造の導電性高分子であり、
【0034】
【化8】

【0035】
(式中、R1 とR2 は水素原子、置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基を表し、R1 とR2 は同じものであっても異なるものであってもよい。また、R1 とR2 は連結して環構造を形成するものであってもよく、kは自然数を表す。)
前記光電変換層に、増感色素として、
下記一般式(2)で表される構造の化合物と、
【0036】
【化9】

【0037】
(式中、nは1以上3以下の整数、Arは芳香族基を表し、R3 は水素原子、ハロゲン原子あるいは置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、シアノ基または複素環基を表す。nが1のとき、2つのR3 は互いに異なるものであってもよく、また、R3 は他の置換基と連結して環構造を形成してもよい。A1 、A2 は単結合または2価の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、置換または未置換のアルキレン基、アリーレン基、複素環基のいずれかであり、p、qは0以上6以下の整数である。Zは少なくとも1つのヒドロキシ基または酸性基を含む有機基を表し、nが2以上のとき、複数のA1 、A2 、Zは互いに異なるものであってもよい。)
下記一般式(4)〜(9)で表される構造の化合物の少なくとも1つ以上を含有することを特徴とする光電変換素子の製造方法。
【0038】
【化10】

【0039】
(式中、R11〜R26は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、フェノキシ基を表し、R11〜R26上の少なくとも1個所に酸性基を有する。また、Mは2個の水素原子または置換基を有してもよい2価、3価、4価の金属原子を表す。)
【0040】
【化11】

【0041】
(式中、R31〜R42は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、複素環基、直接あるいは他の結合原子を介して環状構造、縮環構造を形成する基を表し、R31〜R42上の少なくとも1個所に酸性基を含有する。Mは、2個の水素原子を表すか、置換基を有してもよい2価、3価、4価の金属原子を表す。)
【0042】
【化12】

【0043】
(一般式(6)中のR53とR54、両式中のR57とR58は、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基を表し、前記部位上の少なくとも1個所に酸性基を有する。一般式(6)中のR51、R52と両式中のR55、R56は、炭素数が同じあるいは異なるアルキル基、アリール基またはアルキル基置換アリール基のいずれかを表す。)
【0044】
【化13】

【0045】
(一般式(8)中のR51、R52、R53、R54は、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基を表し、R53上に酸性基を有する。両式中のR59とR60は、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R59とR60は互いに連結して環状構造を形成してもよい。)』というものである。
【0046】
請求項10に記載の発明は、
『前記一般式(2)で表される構造の増感色素が、下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項9に記載の光電変換素子の製造方法。
【0047】
【化14】

【0048】
(式中、mは1以上5以下の整数、nは1または2の整数を表す。R5 、R6 は水素原子、ハロゲン原子あるいは置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、シアノ基または複素環基を表し、連結して環構造を形成してもよい。A1 、A2 はイオウ原子を含む複素環基を表し、p、qは0以上6以下の整数である。Zは少なくとも1つのヒドロキシ基または酸性基を含む有機基を表し、nが2のとき、A1 、A2 、Zは互いに異なるものであってもよい。)』というものである。
【0049】
請求項11に記載の発明は、
『前記一般式(3)で表される構造の増感色素中のR5 、A1 及びA2 の少なくとも1つが、炭素原子数6以上の直鎖アルキル構造を有するものであることを特徴とする請求項10に記載の光電変換素子の製造方法。』というものである。
【0050】
請求項12に記載の発明は、
『前記一般式(3)で表される構造の増感色素中のnが2であることを特徴とする請求項10または11に記載の光電変換素子の製造方法。』というものである。
【0051】
請求項13に記載の発明は、
『前記一般式(1)で表される構造の導電性高分子は、少なくとも2種類以上の重合性単量体を用いて形成される共重合体であることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。』というものである。
【0052】
請求項14に記載の発明は、
『前記増感色素を含有する光電変換層の厚さを10μm以下であることを特徴とする請求項9〜13のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。』というものである。
【0053】
請求項15に記載の発明は、
『前記正孔輸送層に含有される固体の正孔輸送物質が、
前記一般式(1)で表される構造の導電性高分子が熱重合して形成されるものであることを特徴とする請求項9〜14のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。』というものである。
【0054】
請求項16に記載の発明は、
『前記熱重合を行うときの処理温度が50℃以上80℃以下であることを特徴とする請求項15に記載の光電変換素子の製造方法。』というものである。
【0055】
請求項17に記載の発明は、
『請求項1〜8のいずれか1項に記載の光電変換素子または請求項9〜16のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法により製造された光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池。』というものである。
【発明の効果】
【0056】
本発明では、ポリチオフェン構造を主鎖構造に有する導電性高分子を正孔輸送材料に用い、かつ、特定アミン化合物と特定の有機色素化合物を増感色素に併用することで、高レベルの光電変換効率を安定的に発現する光電変換素子を提供することを可能にした。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る光電変換素子の一例を示す模式断面図である。
【図2】「形状係数FF」の数値と「電圧−電流特性グラフ」の形状との関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換素子に関し、特に、正孔輸送材料にイオウ複素環構造を主鎖構造とする導電性高分子を用い、かつ、特定アミン化合物と特定有機色素化合物を増感色素に併用した光電変換素子に関する。以下、本発明について詳細に説明する。
【0059】
最初に、本発明に係る光電変換素子の構造について図1を用いて説明する。図1は本発明に係る光電変換素子の構造の一例を模式的に示した断面図である。
【0060】
図1に示す光電変換素子10は、基板1、第1電極2、光電変換層6、正孔輸送層7及び第2電極8、隔壁9等より構成され、図の矢印で示す様に、光電変換層6に対して基板1や第1電極2が配置されている側より光を入射させるものである。このうち、光電変換層6は、半導体5と増感色素4を含有するものであり、本発明では増感色素4に一般式(2)で表される構造の化合物と一般式(4)〜(9)で表される構造の化合物の少なくとも1つ以上を用いるものである。また、正孔輸送層7は、前述した一般式(1)で表されるイオウ複素環構造を主鎖構造とする導電性高分子を含有するものである。
【0061】
光電変換素子10は、以下の手順で光電変換が行われて、電池として機能するものである。すなわち、
(1)第1電極2に光が照射されると、光電変換層6に含有される増感色素4が光を吸収して電子を放出する。このとき、増感色素4は酸化物となる。
(2)増感色素により放出された電子は、光電変換層6内の半導体に移動し、さらに、半導体より第1電極2へ移動する。
(3)第1電極2へ移動した電子は、対極である第2電極8へ回り、第2電極で正孔輸送物質を還元する。
(4)前述の増感色素酸化物は、還元された正孔輸送物質より電子を受け取り、元の状態(増感色素)に戻る。
(5)上記(1)〜(4)を繰り返すことにより、第1電極2より第2電極8へ電子の移動が繰り返し行われて電気が流れる。
【0062】
この様に、図1の光電変換素子10では、光照射により増感色素が励起状態となり電子を放出し、放出された電子は半導体を経由して第1電極2へ達して外部へ流れる。一方、電子を放出して酸化物となった増感色素は、第2電極8より供給される電子を正孔輸送層より受け取り元の状態に戻る。この様な仕組みにより電子が移動することにより、図1の光電変換素子10は電池として機能する。
【0063】
本発明は、一般式(1)で表される構造の導電性高分子を含有する正孔輸送層と、一般式(2)で表される構造の化合物と一般式(4)〜(9)で表される構造の化合物の少なくとも1つ以上を含有する光電変換層を有する光電変換素子により上記課題を解消した。
【0064】
従来技術では、熱重合法によりポリチオフェン化合物の正孔輸送層を作製したものでも高い光電変換効率が得られる光電変換素子を作製することが困難であった。これは、正孔輸送材料として使用されるポリチオフェン化合物等の導電性高分子が可視光領域(400nmから700nm)の光を吸収し、この可視光吸収により光損失が生じて電荷ロスを発生するものと考えられた。そして、この電荷ロスにより増感色素と正孔輸送層の間では電子が逆移動し易くなり、逆移動による開放電圧の大幅低下を発生させて光電変換効率を低下させたものと考えられた。
【0065】
本発明者は、ポリチオフェン化合物等のイオウ複素環構造を主鎖構造とする導電性高分子を用いた光電変換素子では、増感色素の光吸収性能を導電性高分子よりも強くすれば、正孔輸送層での電荷ロス発生がなくなり、光電変換層と正孔輸送層間で電子が逆移動しなくなるものと考えた。そして、一般式(2)で表される構造の化合物と、一般式(4)〜(9)で表される構造の化合物の少なくとも1つ以上を併用することで、前記導電性高分子を用いた光電変換素子で高い光電変換効率が得られる様になることを見出したのである。これは、上記2種類以上の化合物を組み合わせることにより、色素化合物間での分子間相互作用により色素化合物の励起準位がブロード化して、固体の正孔輸送材料へのホール注入が促進されるためと推測された。
【0066】
以下、本発明に係る光電変換素子を構成する正孔輸送層と光電変換層について、詳細に説明する。
【0067】
最初に、本発明に係る光電変換素子を構成する正孔輸送層について説明する。図1に示す光電変換素子10に設けられている正孔輸送層7は、光吸収により電子を放出して励起状態になった増感色素より第2電極8へ向けて正孔を移動させるもので、正孔を移動させることにより増感色素は還元される。言い換えると、正孔輸送層7は第2電極8より電子を受け取り、受け取った電子を励起状態の増感色素へ付与することにより、増感色素を光照射前の状態に戻す作用を行うものである。
【0068】
本発明に係る光電変換素子は、正孔輸送材料に固体材料である「導電性高分子」を用いており、電解液を用いた光電変換素子で問題となった液漏れの発生がないものである。また、導電性高分子は電荷の移動が行い易い構造を有するものなので、第2電極から励起状態の増感色素へ電子を安定かつ効率よく供給することができる。そして、本発明では下記一般式(1)で表されるイオウ複素環構造を主鎖構造とする導電性高分子を正孔輸送材料に使用する。
【0069】
【化15】

【0070】
式中のR1 とR2 は水素原子、置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基を表すもので、R1 とR2 は同じものであっても異なるものであってもよい。また、R1 とR2 は連結して環構造を形成するものであってもよい。
【0071】
上記一般式(1)で表されるイオウ複素環構造を主鎖構造とする導電性高分子は、たとえば、以下に示す化合物を用いて形成することが可能である。なお、式中のYはハロゲン原子を表す。先ず、イオウ複素環構造が1個の化合物がある。すなわち、
【0072】
【化16】

【0073】
また、以下に示すイオウ複素環構造を2個以上有する化合物を用いて、一般式(1)で表されるイオウ複素環構造を主鎖構造とする導電性高分子を作製することも可能である。なお、下記構造式中のR7 、R8 、R9 、R10、Rは、上記R1 及びR2 と同様、水素原子、置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基を表すもので、それぞれ同じものであっても異なるものであってもよい。また、R7 とR8 、R9 とR10、Rで表される基同士は、上記R1 及びR2 と同様、連結して環構造を形成するものであってもよい。
【0074】
【化17】

【0075】
以下、一般式(1)で表されるイオウ複素環構造を主鎖構造とする導電性高分子を作製することが可能な化合物の具体例を以下に示すが、一般式(1)で表される導電性高分子の形成が可能な化合物は以下に示すものに限定されるものではない。なお、式中のYはハロゲン原子を表し、具体的には、塩素原子Cl、臭素原子Br、ヨウ素原子Iのいずれかである。
【0076】
【化18】

【0077】
【化19】

【0078】
【化20】

【0079】
一般式(1)で表されるイオウ複素環構造を主鎖構造とする重合体は、二重結合と単結合が交互に並んだ共役型の主鎖構造を形成しており、電荷が移動し易い構造になっている。また、側鎖構造の存在により重合体分子は結晶性の構造を採り易くなっていることも光電変換効率の向上に寄与しているものと考えられる。すなわち、側鎖構造が分子構造中で分子間相互作用を発現する部位として存在することで、導電性高分子の規則的な配列が促され、熱によるセグメント運動が起きにくい安定した正孔輸送層を形成する。その結果、熱等の影響を受けても分子間相互作用により分子鎖のセグメント運動はより強く抑制されることになり、酸化チタン等に代表される半導体と正孔輸送層間の電荷再結合を抑制する環境が形成され、高い光電変換効率が得られるものと考えられる。
【0080】
(導電性高分子の重合法)
重合方法としては、特に制限されず、例えば、特開2000−106223号公報に記載の方法など、公知の重合方法が適用できる。具体的には、重合触媒を用いる化学重合法、少なくとも作用極と対極とを備えて両電極間に電圧を印加することにより反応させる電解重合法、光照射単独あるいは重合触媒、加熱、電解等を組み合わせた光重合法等が挙げられる。これらのうち、電解重合法を用いた重合法が好ましく、より好ましくは電解重合法と光照射を組み合わせた光重合法である。電解重合法と光を照射して重合する光重合法を組み合わせて使用することにより、酸化チタン表面に緻密に重合体の層を形成できる。
電解重合法により重合体を得る場合は、重合体の合成がそのまま前記固体正孔輸送層の形成につながる。即ち、以下のような電解重合法が行われる。一般的には、重合体を構成するモノマー、支持電解質、および溶媒、ならびに必要に応じ添加剤を含む混合物を用いる。
前記一般式(2)で表わされる単量体または該単量体の多量体ならびに必要に応じて他のモノマーを、適当な溶媒に溶解し、これに支持電解質を添加して、電解重合溶液を作製する。
ここで、溶媒としては、支持電解質および上記単量体或いはその多量体を溶解できるものであれば特に限定されないが、電位窓の比較的広い有機溶剤を使用することが好ましい。具体的には、テトラヒドロフラン(THF)、ブチレンオキシド、クロロホルム、シクロヘキサノン、クロロベンゼン、アセトン、各種アルコールのような極性溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジメチルスホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、プロピレンカーボネイト、ジクロロメタン、o−ジクロロベンゼン、塩化メチレンのような非プロトン性溶媒等の有機溶媒が挙げられる。または、上記溶媒に、必要に応じて水やその他の有機溶剤を加えて混合溶媒として使用してもよい。また、上記溶媒は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよく、2種以上の混合溶媒とする場合は、クロロベンゼン/アセトニトリルの混合溶媒を用いることが好ましい。
支持電解質としては、イオン電離可能なものが用いられ、特定のものに限定されないが、溶媒に対する溶解性が高く、酸化、還元を受けにくいものが好適に用いられる。具体的には、過塩素酸リチウム(LiClO4 )、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、Li[(CF3 SO2 2 N]、(n−C4 9 4 NBF4 、(n−C4 9 4 NPF4 、p−トルエンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩などの塩類が好ましく挙げられる。または、特開2000−106223号公報に記載されるポリマー電解質(例えば、同公報中のPA−1〜PA−10)を支持電解質として使用してもよい。また、上記支持電解質は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
固体正孔輸送層に添加しうる添加剤としては、例えば、N(PhBr)3 SbCl6 、NOPF6 、SbCl5 、I2 、Br2 、HClO4 、(n−C4 9 4 ClO4 、トリフルオロ酢酸、4−ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、FeCl3 、AuCl3 、NOSbF6 、AsF5 、NOBF4 、LiBF4 H1−3[PMo1240]、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)などのアクセプタードーピング剤、ホールをトラップしにくいバインダー樹脂、レベリング剤等の塗布性改良剤等の各種添加剤が挙げられる。上記添加剤は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0081】
また、本発明では、一般式(1)で表されるイオウ複素環構造を主鎖構造とする導電性高分子を熱重合により形成することができる。すなわち、一般式(1)で表される重合体を形成する際、原料となる化合物構造中のY(ハロゲン原子)を脱離させて重合反応を進行させるもので、この重合反応は熱重合法で効率よく行うことができる。すなわち、熱重合により、未反応化合物を残さずに重合反応が十分に行えるので、耐久性に優れた正孔輸送層を形成する上でも好ましいものである。
【0082】
本発明では、一般式(1)で表されるイオウ複素環構造を主鎖構造とする導電性高分子を熱重合法で形成することができ、熱重合を行うときの処理温度は、たとえば、50℃以上80℃以下が好ましい。
【0083】
上記一般式(1)で表されるイオウ複素環構造を主鎖構造とする導電性高分子を固体の正孔輸送物質として含有する正孔輸送層は、公知の方法により作製することが可能である。具体的には、前述した化合物、重合触媒や重合速度調整剤等を含有する溶液を作製し、当該溶液を光電変換層上に塗布あるいは浸漬させた後、熱重合反応により正孔輸送層を形成する方法が好ましい。熱重合反応の条件は、重合体を形成する前述の化合物や重合触媒、重合速度調整剤等の種類や比率、形成する層厚等により異なるが、上述した様に、処理温度を50℃以上80℃以下にして行うことが好ましく、加熱処理を行う時間は1分から24時間が好ましい。
【0084】
この様に、前述の化合物を含有する溶液を光電変換層上に塗布後、加熱による重合反応で正孔輸送層を形成することで、複雑な断面形状の光電変換層に十分な接触面積が確保された正孔輸送層を形成することができる。
【0085】
次に、本発明に係る光電変換素子を構成する光電変換層について説明する。図1に示す光電変換素子10は、前述した第1電極2に隣接させて太陽光等の光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換層6を有する。光電変換層6は、増感色素を吸着させた半導体を含有するものであり、第1電極2を通過した光を受ける個所で、第1電極2との間で電子の授受が行われる。
【0086】
光電変換層における光エネルギーの電気エネルギーへの変換は、以下の様な手順で行われるものである。先ず、第1電極を通過した光が光電変換層に進入し、進入した光が半導体と衝突する。半導体に衝突した光は、任意の方向に乱反射して光電変換層内に拡散し、拡散した光が増感色素に接触することにより電子と正孔(ホール)を発生し、発生した電子は第1電極に向かって移動する。この様な仕組みで、光電変換層は光エネルギーを電気エネルギーに変換している。
【0087】
光電変換層の厚さは、特に限定されるものではないが、具体的には0.1μm〜50μm程度が好ましく、より好ましくは0.5μm〜25μm程度、特に好ましくは1μm〜10μm程度である。なお、光電変換層6の厚さは、含有される半導体の厚さにほぼ一致するものであり、素子の小型化や製造コストの低減化を実現する観点から層状の形態を有する半導体を用いることが好ましい。
【0088】
本発明に係る光電変換素子で用いられる増感色素について説明する。本発明に係る光電変換素子を構成する光電変換層は、下記一般式(2)で表される構造の化合物と、後述する一般式(4)〜(9)で表される構造の化合物の少なくとも1種類以上を、増感色素として含有するものである。
【0089】
【化21】

【0090】
一般式(2)中のnは1以上3以下の整数であり、Arは芳香族基を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子あるいは置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、シアノ基または複素環基を表すものである。
また、nが1のとき、2つのR3 は互いに異なるものであってもよく、また、R3 は他の置換基と連結して環構造を形成したものであってもよい。A1 、A2 は単結合または2価の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、置換または未置換のアルキレン基、アリーレン基、複素環基のいずれかであり、pとqは0以上6以下の整数である。Zは少なくとも1つのヒドロキシ基または酸性基を含む有機基を表すもので、nが2以上のとき、複数のA1 、A2 、Zは互いに異なるものであってもよい。
【0091】
【化22】

【0092】
一般式(4)中のR11〜R26は、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、フェノキシ基を表すもので、R11〜R26上の少なくとも1個所に酸性基を含有するものである。また、Mは、2個の水素原子を表すか、置換基を有してもよい2価、3価、4価の金属原子を表すものである。
【0093】
【化23】

【0094】
一般式(5)中のR31〜R42は、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、複素環基、直接あるいは他の結合原子を介して環状構造、縮環構造を形成する基を表すものである。そして、R31〜R42上の少なくとも1個所に酸性基を含有するものである。また、Mは2個の水素原子、または、置換基を有してもよい2価、3価、4価の金属原子を表すものである。
【0095】
【化24】

【0096】
一般式(6)中のR53とR54、両式中のR57とR58は、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基を表し、前記部位上の少なくとも1個所に酸性基を有するものである。また、一般式(6)中のR51、R52と両式中のR55、R56は、炭素数が同じあるいは異なるアルキル基、アリール基またはアルキル基置換アリール基のいずれかを表すものである。
【0097】
【化25】

【0098】
一般式(8)中のR51、R52、R53、R54は、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基を表し、R53上に酸性基を有するものである。また、両式中のR59とR60は、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表すもので、R59とR60は互いに連結して環状構造を形成するものであってもよい。
【0099】
本発明では、上記一般式(2)で表される構造の化合物と、上記一般式(4)〜(9)で表される構造の化合物の少なくとも1つ以上を、増感色素に用いることで、イオウ複素環構造を主鎖構造とする導電性高分子を正孔輸送物質に用いた光電変換素子の光電変換効率の向上を可能にしている。これは、一般式(2)で表される化合物がポリチオフェンの可視光吸収により生ずる電荷ロスを、十分カバーする量の電荷形成を行うことに加え、一般式(4)〜(9)で表される化合物を少なくとも1つ以上併用することによる分子間相互作用が寄与していることが考えられる。すなわち、構造の異なる有機色素化合物を併用することにより、有機色素化合物間で分子間相互作用が生じて色素の励起準位がブロード化し、導電性高分子への正孔の注入が促進される様になり、光電変換効率の向上に寄与しているものと考えられる。
【0100】
また、従来技術では導電性高分子を含有する正孔輸送層を光照射法により形成すると未反応の化合物が残存する等の理由により、光電変換素子の熱安定性を確保することが困難で、光電変換素子の作製時や作製後に熱劣化が生じて光電変換効率を低下させていた。本発明では、一般式(1)で表されるイオウ複素環構造を主鎖構造とする導電性高分子を用いて正孔輸送物質を形成することに加え、増感色素に、熱に安定とされる一般式(2)で表される化合物と、一般式(4)〜(9)で表される化合物を少なくとも1つ以上を併用することで、熱安定性も確保した光電変換素子の開発を可能にした。
【0101】
この様に、本発明では、ポリチオフェンよりも強い光吸収性能を有するものを増感色素に用いることにより、正孔輸送物質の光吸収による電荷形成ロス分をカバーして、増感色素と正孔輸送層の間での電荷の逆移動の発生を回避させようと考えた。また、光電変換素子を熱に対して安定性を有するものにしたいと考え、検討を重ねた末、正孔輸送物質に導電性高分子を正孔輸送物質に用いた光電変換素子に用いる増感色素として、上記一般式(2)で表される構造の化合物を用いることを見出したのである。そして、上記一般式(2)の化合物と、一般式(4)〜(9)の化合物を少なくとも1つ以上を併用することで、ポリチオフェン化合物の可視光吸収による電荷ロスカバーと熱に対する安定化を実現して、高い光電変換効率が得られる様になった。
【0102】
増感色素である一般式(2)で表される化合物と、一般式(4)〜(9)で表されるとの割合は特に限定されないが、モル比で1:10〜10:1が好ましく、特に好ましくは1:3〜10:1である。
【0103】
以下に、一般式(2)で表される構造の化合物の具体例を示すが、本発明で使用可能な一般式(2)で表される化合物はこれらに限定されるものではない。
【0104】
【化26】

【0105】
【化27】

【0106】
【化28】

【0107】
【化29】

【0108】
【化30】

【0109】
【化31】

【0110】
【化32】

【0111】
【化33】

【0112】
【化34】

【0113】
【化35】

【0114】
【化36】

【0115】
【化37】

【0116】
【化38】

【0117】
【化39】

【0118】
【化40】

【0119】
【化41】

【0120】
【化42】

【0121】
【化43】

【0122】
【化44】

【0123】
【化45】

【0124】
【化46】

【0125】
【化47】

【0126】
【化48】

【0127】
【化49】

【0128】
【化50】

【0129】
【化51】

【0130】
【化52】

【0131】
本発明では、上記一般式(2)で表される化合物の中でも、構造中のArとR3 がフェニル基である下記一般式(3)で表される構造の化合物を増感色素として用いることが好ましい。
【0132】
【化53】

【0133】
一般式(3)で表される構造式中のmは1以上5以下の整数を表し、nは1または2の整数を表すものである。また、式中のR5 とR6 は水素原子、ハロゲン原子あるいは置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、シアノ基または複素環基を表し、連結して環構造を形成するものも含まれる。
【0134】
また、式中のA1 とA2 はイオウ原子を含む複素環基で、pとqはそれぞれ0以上6以下の整数を表し、Zは少なくとも1つのヒドロキシ基または酸性基を含む有機基を表すものである。これらA1 、A2 、Zは原則同じ構造のものになるが、nが2のものはA1 、A2 、Zが互いに異なるものであってもよい。
【0135】
一般式(3)で表される構造の化合物は、一般にトリフェニルアミン化合物と呼ばれるもので、分子構造中の1つの窒素原子に3つのフェニル基が結合した部位を有するものである。一般式(3)で表される構造の例示化合物は、前述のA−1〜A−52及びB−1〜B−32が該当するものである。
【0136】
本発明で増感色素として用いられる上記一般式(2)で表される構造の化合物、及び、好ましい形態である一般式(3)で表される構造の化合物は、光電変換層では後述する半導体に吸着させて用いられる。そして、上記化合物を半導体に吸着させた光電変換層は、第1電極との間で電子の授受を行って、光エネルギーを電気エネルギーへ変換する。すなわち、第1電極を通過した光が光電変換層に進入すると、光電変換層内では進入光が半導体と衝突して乱反射して拡散する。そして、拡散光が増感色素に接触することで電子と正孔(ホール)が発生し、電子は第1電極に向かって移動する。この様にして、光電変換層では光エネルギーを電気エネルギーに変換する。
【0137】
増感色素は、受光により電子と正孔(ホール)を発生することにより、光電変換層内で光エネルギーを電気エネルギーへ実質的に変換している。すなわち、光電変換層内の増感色素が存在する領域が電子と正孔を発生する受光領域として機能する場であり、増感色素は半導体の外面あるいは空隙内面に吸着、結合する。受光により増感色素で発生した電子は、増感色素が結合している半導体へ移動し、半導体より第1電極に向かって移動する。
【0138】
次に、本発明で、前述の一般式(2)あるいは一般式(3)で表される構造の化合物とともに増感色素として用いられる一般式(4)〜(9)で表される化合物について説明する。
【0139】
最初に、一般式(4)で表される化合物について説明する。一般式(4)で表される化合物は、一般に「フタロシアニン化合物」と呼ばれるものである。すなわち、
【0140】
【化54】

【0141】
式中、R11〜R26は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、フェノキシ基を表し、R11〜R26上の少なくとも1個所に酸性基を有するものである。また、式中のMは、2個の水素原子を表すか、置換基を有してもよい2価、3価、4価の金属原子である。Mで表される金属原子としては、たとえば、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カルシウム(Ca)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、ルテニウム(Ru)、銅(Cu)、ケイ素(Si)等が挙げられる。
【0142】
以下に、本発明で使用可能な一般式(4)で表される化合物のフタロシアニン化合物の具体例を示すが、本発明で使用可能なフタロシアニン化合物は以下のものに限定されるものではない。
【0143】
【化55】

【0144】
【化56】

【0145】
次に、一般式(5)で表される化合物について説明する。一般式(5)で表される化合物は、一般に「ポルフィリン化合物」と呼ばれるものである。
【0146】
【化57】

【0147】
式中、R31〜R42は、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、複素環基、直接あるいは他の結合原子を介して環状構造、縮環構造を形成する基を表すものである。そして、R31〜R42上の少なくとも1個所に酸性基を有するものである。また、式中のMは、2個の水素原子を表すか、置換基を有してもよい2価、3価、4価の金属原子を表すものであり、Mで表される金属原子の具体例としては、前述の一般式(4)で表される化合物で説明した金属原子が挙げられる。
【0148】
以下に、本発明で使用可能な一般式(5)で表されるポルフィリン化合物の具体例を示すが、本発明で使用可能なポルフィリン化合物は以下のものに限定されるものではない。
【0149】
【化58】

【0150】
【化59】

【0151】
【化60】

【0152】
【化61】

【0153】
次に、一般式(6)と(7)で表される化合物について説明する。一般式(6)で表される化合物と後述する一般式(8)で表される化合物は、一般に「スクアリリウム化合物」と呼ばれるものである。
【0154】
【化62】

【0155】
一般式(6)中のR53とR54、両式中のR57とR58は、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基を表し、前記部位上の少なくとも1個所に酸性基を有するものである。また、一般式(6)中のR51、R52と両式中のR55、R56は、炭素数が同じあるいは異なるアルキル基、アリール基またはアルキル基置換アリール基のいずれかを表すものである。
【0156】
以下に、本発明で使用可能な一般式(6)と(7)で表される化合物の具体例を示すが、本発明で使用可能な化合物は以下のものに限定されるものではない。
【0157】
【化63】

【0158】
【化64】

【0159】
【化65】

【0160】
【化66】

【0161】
次に、一般式(8)と(9)で表される化合物について説明する。前述した様に、一般式(8)で表される化合物は、一般に「スクアリリウム化合物」と呼ばれるものである。
【0162】
【化67】

【0163】
一般式(8)中のR51、R52、R53、R54は、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基を表し、R53上に酸性基を有するものである。また、両式中のR59とR60は、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表すもので、R59とR60は互いに連結して環状構造を形成するものであってもよい。
【0164】
以下に、本発明で使用可能な一般式(8)と(9)で表される化合物の具体例を示すが、本発明で使用可能な化合物は以下のものに限定されるものではない。
【0165】
【化68】

【0166】
【化69】

【0167】
【化70】

【0168】
【化71】

【0169】
次に、光電変換層を構成する半導体について説明する。本発明に係る光電変換素子を構成する光電変換層は、増感色素として使用される上記一般式(2)で表される構造の化合物を半導体に吸着させた構造のものである。増感色素と半導体との間で形成される吸着は、たとえば、分子間引力や静電引力等の物理的作用、あるいは、共有結合や配位結合等の化学結合により行われるものである。
【0170】
光電変換層に使用される半導体には、シリコンやゲルマニウム等の単体、元素周期表の第3族(3A族)〜第5族(5A族)、第13族(3B族)〜第15族(5B族)に属する原子を有する化合物、金属カルコケニド、金属窒化物等が使用可能である。ここで、金属カルコゲニドとは、カルコゲン元素と呼ばれる酸素原子や硫黄原子等の元素周期表の第16族(6B族)に属する原子と金属原子とで構成される化合物のことで、金属酸化物や金属硫化物、金属セレン化物、金属テルル化物等が該当する。
【0171】
金属カルコゲニドの具体例としては、たとえば、以下のものがある。
(1)金属酸化物
TiO、TiO2 、Ti2 3 、SnO2 、Fe2 3 、WO3 、ZnO、Nb2 5
(2)金属硫化物
CdS、ZnS、PbS、Bi2 3 、CuInS2
(3)金属セレン化物、金属テルル化物
CdSe、PbSe、CuInSe2 、CdTe
上記金属カルケニドの中でも、TiO2 、SnO2 、Fe2 3 、WO3 、ZnO、Nb2 5 、CdS、PbSが好ましく用いられ、その中でも、TiO2 とNb2 5 がより好ましく、二酸化チタンTiOが特に好ましい。二酸化チタンは、良好な電子輸送性を有する他に、光に対して高い感受性を有しており、二酸化チタン自体が光を受けて直接電子を発生する等、高い光電変換効率が期待できることから特に好ましいとされる。また、二酸化チタンは、安定した結晶構造を有するので、過酷な環境下で光照射が行われても経時による劣化が起こりにくく、所定性能を長期にわたり安定して発現可能である。
【0172】
ところで、二酸化チタンの結晶構造には、アナターゼ型とルチル型があり、光電変換素子用の半導体材料は、アナターゼ型の結晶構造を主とするもの、ルチル型の結晶構造を主とするもの、両者の混合物を主とするもののいずれも使用が可能である。このうち、アナターゼ型の結晶構造を有する二酸化チタンは、効率のよい電子輸送を行うことができる。
また、アナターゼ型とルチル型を混合して使用する場合、アナターゼ型のものとルチル型のものの混合比は特に限定されるものではなく、アナターゼ型:ルチル型=95:5〜5:95とすることが可能で、80:20〜20:80とすることが好ましい。
【0173】
また、半導体に使用可能な金属窒化物としては、たとえば、Ti3 4 が代表的なものであり、さらに、GaPやInP等の金属リン化合物、GaAs等の化合物も半導体として使用可能なものである。
【0174】
光電変換層に使用される半導体は、上記化合物を単独で使用するものの他に複数を併用することも可能である。複数の化合物を併用する具体例としては、たとえば、TiO2 にTi3 4 を20質量%混合させた形態のものや、J.Chem.Soc.Chem.Commun.,15(1999)に開示のZnOとSnO2 の複合体等がある。また、金属酸化物もしくは金属硫化物と前記酸化物もしくは硫化物以外の化合物を併用する場合は、当該化合物の含有量を30質量%以下にすることが好ましい。
【0175】
また、光電変換層に使用される半導体には、有機塩基を用いて表面処理を施したものを使用することが可能である。半導体の表面処理は、有機塩基を含有する液槽に半導体を浸漬して行う方法が主に採られ、有機塩基が液体の場合にはそのまま使用し、固体の場合には有機溶媒に溶解させた溶液を使用する。表面処理に使用される有機塩基は、たとえば、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン、キノリン、アミジン等があり、これらの中でも、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンが好ましい。
【0176】
また、半導体材料は、衝突した光の乱反射と拡散を促進させて光電変換効率を向上させる観点から、その表面に複数の微細な孔(細孔)を有するものが好ましく、前述の二酸化チタンは表面に細孔を多く有しているので高い光電変換効率が期待できる。半導体材料の細孔は、たとえば、空孔率と呼ばれる半導体粒子表面の単位面積あたりに占める孔の面積の比率で規定することができる。すなわち、適度な空孔率を有する半導体材料は、光の乱反射と拡散を促進させる他に、細孔による表面積の増大に伴って半導体材料の外面及び細孔の内面に吸着している増感色素の吸着面積も増大しており光電変換効率のさらなる向上が行える。半導体材料の空孔率は、特に限定されるものではないが、たとえば、二酸化チタンの場合、5%〜90%が好ましく、より好ましくは15%〜80%、特に好ましくは25%〜70%である。
【0177】
また、半導体の平均粒径は、特に限定されるものではないが、通常、1nmから1μmのものが好ましく、5nmから50nmのものがより好ましい。半導体材料の平均粒径を上記範囲内にすると、ゾル液を形成したときに半導体材料の均一性を向上させ易くなり、均一性の向上により半導体材料の比表面積が揃い、各半導体材料へ増感色素が同等レベルに吸着するので発電効率の向上に寄与する。
【0178】
次に、光電変換層の形成方法について説明する。前述の一般式(2)で表される構造の化合物を増感色素に用いる光電変換層は、公知の方法で作製することが可能である。具体的には、たとえば、半導体が粒子状の場合には第1電極を形成した基体へ半導体を塗布あるいは吹き付けて形成することが可能である。また、膜状の半導体の場合には第1電極を形成した基体へ半導体を貼り合せて形成することが可能である。また、光電変換層を形成する際の好ましい方法の1つに半導体粒子を焼成して形成する方法がある。半導体粒子を焼成して光電変換層を形成する場合、半導体へ行う増感処理は焼成の後に実施することが好ましく、特に、焼成実施後、半導体に水が吸着する前に行うことが好ましい。以下、半導体粒子を焼成して光電変換層を形成する方法について説明する。
【0179】
半導体粒子を焼成して光電変換層を形成する方法は、たとえば、以下の手順を経て行われるものである。すなわち、
(1)半導体粒子を含有する塗布液の調製
(2)半導体粒子を含有する塗布液の塗布と焼成処理
(3)半導体への増感色素吸着処理
以下、これらについて説明する。
【0180】
(1)半導体粒子を含有する塗布液の調製
この工程は、半導体粒子を公知の溶媒中へ投入、分散させることにより、塗布液を調製するものである。塗布液中の半導体粒子の濃度は、たとえば、0.1質量%から70質量%が好ましく、0.1質量%から30質量%がより好ましい。半導体粒子は、粒径の小さなものが好ましく、たとえば、平均1次粒径が1nmから5000nmのものが好ましく用いられ、2nmから100nmのものがより好ましく使用される。
【0181】
また、半導体粒子を分散させる溶媒は、半導体粒子を凝集させずに分散させることが可能なものであれば特に限定されるものでなく、水や公知の有機溶媒、あるいは水と有機溶媒の混合液が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、たとえば、メタノールやエタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類、n−ヘキサンやシクロヘキサン等の炭化水素類等がある。
【0182】
また、塗布液中には、必要に応じて公知の界面活性剤や粘度調整剤を添加することも可能で、粘度調整剤の具体例としては、ポリエチレングリコール等の多価アルコールが代表的なものとして挙げられる。
【0183】
(2)半導体粒子を含有する塗布液の塗布と焼成処理
この工程は、前述の半導体粒子を溶媒中へ分散させて形成した塗布液を第1電極が形成されている基体へ塗布し乾燥させて半導体粒子の層を形成する。そして、空気中あるいは不活性ガス雰囲気下で焼成処理を行うことにより前記基体上へ層状に半導体を固着させる。この層状に形成された半導体は半導体層とも呼ばれるものである。塗布により基体上に形成された半導体粒子の層は、支持体との結合力や半導体粒子同士の結合力が弱いものであるが、焼成処理を行うことにより、基体との結合力あるいは半導体粒子同士の結合力が向上して耐久性のある強固な層になる。焼成処理により形成される半導体層の厚さ、すなわち、光電変換層の厚さは、少なくとも10nm以上とすることが好ましく、より好ましくは500nmから30μm、特に1μm以上10μm以下にすることが好ましい。
【0184】
また、焼成処理により半導体層は強固な多孔質構造を形成し、多孔質構造を構成する空隙に正孔輸送物質を存在させることにより光電変換効率を向上させる。この様に、多孔質構造の半導体層は、見かけの表面積に対して実際の表面積が大きなものになっているので、光電変換効率をはじめとする各種性能を向上させる上で非常に有効なものである。半導体層の空隙率は、たとえば、1体積%から90体積%が好ましく、より好ましくは10体積%から80体積%、20体積%から70体積%が特に好ましい。半導体層内に形成される空隙は、層の厚み方向に対して貫通性を有しており、公知の方法による空隙率の測定が可能である。空隙率の代表的な測定手段としては、たとえば、市販の水銀ポロシメータ「島津ポアサイザー9220型(島津製作所社製)」等がある。
【0185】
また、焼成処理を行う際の温度は、上記空隙率の多孔質構造を形成させる観点から、1000℃よりも低い温度範囲とすることが好ましく、200℃から800℃の温度範囲がより好ましく、さらに300℃から800℃の温度範囲が特に好ましいものである。ところで、樹脂製の基体上に焼成処理した半導体層を形成する場合は、あえて200℃以上で焼成処理を行う必要はなく、代わりに加圧処理を施すことにより半導体粒子同士の固着や基体への固着が可能である。また、マイクロ波を使用して、基体を加熱させることなく半導体層のみを加熱し、焼成処理を行うことも可能である。
【0186】
さらに、後述する増感色素による半導体層への電子注入を効率よく行える様にするため、焼成処理により形成された半導体層へ公知の化学的あるいは電気化学的方法でめっき処理を施すことも可能である。
【0187】
(3)半導体への増感色素吸着
本発明では、前述した一般式(2)で表される化合物を半導体へ吸着させるものであり、具体的には、増感色素を溶解させた溶液へ半導体を層状に形成した光電変換層(半導体層)が設けられている基体を浸漬して行うものである。光電変換層への増感色素の総担持量は0.01〜100ミリモル/m2 が好ましく、0.1〜50ミリモル/m2 がより好ましく、0.5〜20ミリモル/m2 が特に好ましい。
【0188】
増感処理は、単独の種類の増感色素を使用する方法と複数種類の増感色素を併用する方法のいずれの方法も可能で、たとえば、太陽電池用の光電変換素子は光電変換可能な波長域を広く確保するため、吸収波長の異なる複数の色素を併用する方法が好ましい。
【0189】
増感色素を溶解させる溶媒は、増感色素を溶解する一方で、半導体を溶解させたり反応するものでなければよく、公知の有機溶媒の使用が可能である。この様な有機溶媒としては、たとえば、以下に挙げるニトリル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒等がある。これらの溶媒を単独あるいは複数種類併用することが可能である。
(a)ニトリル系溶媒;アセトニトリル等
(b)アルコール系溶媒;メタノール、エタノール、n−プロパノール等
(c)ケトン系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等
(d)エーテル系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラ
ン、1,4−ジオキサン等
(e)ハロゲン化炭化水素系溶媒;塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン等
上記溶媒の中でも、アセトニトリル、アセトニトリル/メタノール混合溶媒、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレンが好ましい。
【0190】
増感色素を含有する溶液への浸漬時間は、半導体層に溶液を深く進入させて半導体への吸着を十分に進行させて半導体を十分に増感させるため、たとえば、25℃の温度下で3時間から48時間行うことが好ましく、4時間から24時間行うことがより好ましい。また、含有する増感色素が分解しない限り溶液を加熱することも可能で、たとえば、溶液の温度を25℃から80℃に設定して行うことも可能である。
【0191】
以上の手順により光電変換層を作製することが可能である。
【0192】
図1に示す光電変換素子について、前述した正孔輸送層と光電変換層以外の構成を説明する。
【0193】
基体1は、光電変換素子10の光入射方向側に設けられ、光電変換素子に強度を付与し、かつ、良好な光電変換効率を確保する観点から、ガラスや透明樹脂材料等の光透過性の材質で形成されるものである。また、本発明では基体1の近傍に380nm以下の波長光を吸収する領域3を設けることが好ましく、基体1の近傍に設けられた領域3を通過した光が光電変換層6に到達する様にしている。
【0194】
基体1の光透過率は、特に限定されるものではないが、10%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上、80%から100%が特に好ましいものである。ここで、「光透過率」とは、JIS K 7361−1(ISO 13468−1に対応)の「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に準拠した方法で測定される可視光波長領域における全光線透過率」のことをいうものである。
【0195】
本発明で使用可能な基体1は、公知のものから適宜選択が可能で、石英やガラス等の透明無機材料や以下に挙げる公知の透明樹脂材料が挙げられる。
【0196】
透明樹脂材料の具体例としては、たとえば、以下のものがある。すなわち、
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、トリメチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリアミドイミド、シクロオレフィン重合体、スチレンブタジエン共重合体等
上記透明樹脂材料の中でもポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)等は可撓性を有するものが市販され、フレキシブルな光電変換素子を作製する上で好ましい。
【0197】
また、基体1の厚さは材料や用途等により適宜設定が可能で、たとえば、ガラス等の透明無機材料の様な硬質材料で構成する場合、その平均厚さは0.1mm〜1.5mmが好ましく、0.8mm〜1.2mmがより好ましい。また、透明樹脂材料を使用する場合も前記透明無機材料と同じ平均厚さとしてもよいが、可撓性を有する透明樹脂材料を使用する場合は0.5〜150μmが好ましく、10〜75μmがより好ましい。
【0198】
次に、第1電極2は基板1と光電変換層6の間に配置され、光電変換層6へ光を効率よく供給するために、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の光到達率を有するものが用いられる。
【0199】
第1電極2は、公知の金属材料や金属酸化物により形成され、金属材料の具体例には、たとえば、白金、金、銀、銅、アルミニウム等があり、光透過性を発現し易い形状に加工したものが多く供給されていることから銀が好ましい。たとえば、開口部を有するグリッドパターン膜、微粒子やナノワイヤを分散させた膜等が多く供給されている。また、金属酸化物の具体例としては、たとえば、SnO2 、ZnO、CdO、CTO系、In2 3 、CdIn2 4 等があり、上記金属酸化物にSn、Sb、F、Alから選ばれる1種または2種以上の原子をドープしたものが好ましく用いられる。その中でも、ITOと呼ばれるIn2 3 にSnをドープしたもの、SnOにSbをドープしたもの、FTOと呼ばれるSnOにFをドープした導電性金属酸化物が好ましく、耐熱性の観点からFTOが特に好ましい。なお、前記CTO系の金属酸化物には、たとえば、CdSnO3 、Cd2 SnO4 、CdSnO4 がある。
【0200】
また、第1電極2は前述の基板1上に設けることも可能であり、基板上に第1電極2を設けたものは導電性支持体と呼ばれ、導電性支持体の厚さは0.1mmから5mmとすることが好ましい。また、導電性支持体の表面抵抗は50Ω/cm2 以下であることが好ましく、10Ω/cm2 以下がより好ましい。
【0201】
次に、第2電極8について説明する。第2電極8は、正孔輸送層7に隣接して層状(平板状)に形成され、その平均厚さは材料や用途等により適宜設定され、特に限定されるものではない。第2電極8は、公知の導電性材料や半導電性材料を用いて形成することが可能である。導電性材料としては、たとえば、各種イオン導電性材料や、アルミニウム、ニッケル、コバルト、白金、銀、金、銅、モリブデン、チタン、タンタル等の金属またはこれらを含む合金、あるいは、黒鉛等の各種炭素材料等が挙げられる。また、半導電性材料としては、たとえば、トリフェニルジアミン(モノマー、ポリマー等)、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、フタロシアニン化合物(たとえば、銅フタロシアニン等)等またはこれらの誘導体等のp型半導体材料が挙げられる。これら導電性材料や半導電性材料を1種または2種以上組み合わせて第2電極8を形成することが可能である。
【0202】
図1に示す光電変換素子10は、第1電極2と光電変換層6の間にバリア層11を有するもので、バリア層11は短絡の発生を防止するものである。バリア層11を設ける場合、その厚さは、たとえば、0.01μmから10μm程度であり、酸化亜鉛(ZnO)等の公知の金属酸化物等を用いて形成される。
【0203】
次に、本発明に係る光電変換素子の製造方法について一例を挙げて説明する。本発明に係る光電変換素子は、たとえば、以下に示す〔1〕〜〔4〕の手順により作製が可能である。本発明に係る光電変換素子の作製方法は、以下に示す工程を経て作製されるものに限定されるものではなく、他の公知の方法で作製することも可能である。なお、本発明では、〔4〕で説明する加熱処理を経て光電変換素子を作製することが好ましいものである。
【0204】
〔1〕第1電極の形成
均一な厚さを有し、かつ、光透過性を有するガラス製あるいは耐熱性に優れた樹脂製の基体を用意し、パルスレーザ蒸着法等の公知の製膜装置等を用いて当該基体上に第1電極2を形成する。なお、耐熱性に優れた有機材料としては、たとえば、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂やポリイミド樹脂等がある。
【0205】
〔2〕光電変換層の形成
本発明では、前述の方法により、一般式(2)で表される化合物を増感色素に用いた光電変換層6を形成することが可能である。
【0206】
〔3〕正孔輸送層の形成
本発明では、前述した方法により、正孔輸送物質として導電性高分子を含有する正孔輸送層7を形成することが可能であり、形成された正孔輸送層7は、光電変換層6に浸透する様に形成されている。
【0207】
〔4〕第2電極の形成
第2電極は、正孔輸送層の上面に形成される。第2電極は、たとえば、金等で構成される第2電極材料を、蒸着法、スパッタリング法、印刷法等の公知の方法を用いて形成することが可能である。
【0208】
なお、当該加熱処理を行う際の処理温度は、60℃以上150℃以下にすることが好ましく、70℃以上120℃以下の温度範囲が特に好ましいものである。
【0209】
以上の工程を経て、本発明に係る光電変換素子を作製することが可能である。
【実施例】
【0210】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、下記文中に記載の「部」は「質量部」を表すものである。
【0211】
1.「光電変換素子1〜46と比較用光電変換素子1〜11」の作製
1−1.「光電変換素子1」の作製
以下の手順により、図1に示す構成を有する「光電変換素子1」を作製した。
【0212】
(1)基体の用意
縦30mm、横35mm、厚さ2.5mmの市販のソーダガラス基体を用意し、当該基体を硫酸と過酸化水素水の混合液よりなる85℃の洗浄液に浸漬して洗浄処理を行うことにより、その表面を清浄化した。
【0213】
(2)第1電極とバリア層の形成
公知の蒸着法の製膜装置を用い、前記ソーダガラス基体上に、縦30mm、横35mm、厚さ1μm、シート抵抗20Ω/□のFTO(フッ素ドープ酸化スズ)よりなる第1電極を形成した。第1電極を形成した基板上にテトラキスイソポロポキシチタン1.2ml及びアセチルアセトン0.8mlをエタノール18mlに溶解した溶液を滴下し、スピンコート法により製膜後、450℃で8分間加熱して、第1電極上に厚さ40nmの酸化チタン製のバリア層を形成した。
【0214】
(3)光電変換層の形成
次に、前記バリア層とFTO薄膜の第1電極の上面に以下の手順で酸化チタンからなる光電変換層を形成した。すなわち、
先ず、アナターゼ型二酸化チタンペースト(平均1次粒径18nm(顕微鏡観察平均)、エチルセルロース分散)を、上記バリア層と第1電極を形成した前記ソーダガラス基体上へ塗布面積が25mm2 となる様にスクリーン印刷法により塗布した。塗布後、200℃で10分間及び500℃で15分間焼成処理を行い、厚さ8μmの二酸化チタン薄膜(光電変換層)を形成した。二酸化チタン薄膜は空隙を有する多孔質構造であった。
【0215】
次に、増感色素である一般式(2)で表される化合物の1つである「A−4」と一般式(4)で表される化合物の1つである「(4)−1」を、アセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒に溶解し、それぞれの増感色素が5×10-4モル/リットルとなる様に溶液を調製した。上記二酸化チタンを塗布、焼結した前記ガラス基体を上記溶液に室温で3時間浸漬して上記色素を吸着させて増感処理を行った。この様にして光電変換層を形成した。
【0216】
(4)正孔輸送層の形成
次に、一般式(1)で表されるイオウ複素環構造を主鎖構造とする導電性高分子を形成する化合物の1つである「(1)−1」(式中のYに臭素原子Brが結合したもの)をエタノール中へ添加、溶解させ、当該化合物の濃度が1質量%のエタノール溶液と5質量%のエタノール溶液をそれぞれ調製した。前記1質量%のエタノール溶液を光電変換層上にスポイトで滴下して風乾後、前記5質量%のエタノール溶液を滴下して風乾した後、60℃に設定した乾燥機へ投入し、8時間の熱重合を行った。
【0217】
次に、前記加熱処理を施した前記ガラス基体を、
Li[(CF3 SO2 2 N] 15×10-3モル/リットル
t−ブチルピリジン 50×10-3モル/リットル
の割合で含有するアセトニトリル溶液に10分間浸漬した後、自然乾燥させた。この様にして、前記光電変換層上に化合物「(1)−1」を熱重合して形成された一般式(1)で表されるイオウ複素環構造を主鎖構造とする導電性高分子を含有する正孔輸送層を形成した。
【0218】
(5)第2電極の形成
次に、前記正孔輸送層上へ真空蒸着法により金を厚さ60nmとなる様に蒸着させて第2電極を形成した。以上の手順により、図1に示す構造を有する「光電変換素子1」を作製した。
【0219】
1−2.「光電変換素子2〜25」の作製
(1)「光電変換素子2〜11」の作製
前記「光電変換素子1」の作製で、光電変換層を形成するときに増感色素の1つとして使用した化合物「(4)−1」を、後述する表1に示す各化合物に変更した他は同じ手順を採ることで「光電変換素子2〜11」を作製した。
【0220】
(2)「光電変換素子12〜25」の作製
前記「光電変換素子1」の作製で、光電変換層を形成するときに増感色素の1つとして使用した化合物「A−4」を化合物「B−8」に変更した他は同じ手順を採ることで「光電変換素子12」を作製した。また、上記「光電変換素子12」の作製で、光電変換層を形成するときに増感色素の1つとして使用した化合物「(4)−1」を後述する表1に示す各化合物に変更した他は同じ手順を採ることで「光電変換素子13〜19」を作製した。さらに、上記「光電変換素子13、15〜19」を作製するときに、光電変換層を形成するときに増感色素の1つとして使用した「B−8」を化合物「C−3」に変更した他は同じ手順を採ることで「光電変換素子20〜25」を作製した。
【0221】
1−3.「光電変換素子26〜38」の作製
(1)「光電変換素子26、28、31、32」の作製
前記「光電変換素子2」の作製で、一般式(1)で表される導電性高分子を形成する際に使用する化合物「(1)−1」を、化合物「(1)−2」、化合物「(1)−5」、化合物「(1)−28」、化合物「(1)−29」にそれぞれ変更した。その他は同じ手順を採ることで「光電変換素子26、28、31、32」を作製した。
【0222】
(2)「光電変換素子27、29、34」の作製
前記「光電変換素子15」の作製で、一般式(1)で表される導電性高分子を形成する際に使用する化合物「(1)−1」を、化合物「(1)−3」及び化合物「(1)−6」にそれぞれ変更した他は同じ手順を採ることで「光電変換素子27と29」を作製した。また、一般式(1)で表される導電性高分子を形成する際に使用する化合物「(1)−1」と化合物「(1)−2」を等モル併用して前記1質量%と5質量%のエタノール溶液を作製した他は同じ手順を採ることで「光電変換素子34」を作製した。
【0223】
(3)「光電変換素子30、33、35」の作製
前記「光電変換素子24」の作製で、一般式(1)で表される導電性高分子を形成する際に使用する化合物「(1)−1」を、化合物「(1)−3」及び化合物「(1)−22」にそれぞれ変更した他は同じ手順を採ることで「光電変換素子30と33」を作製した。また、一般式(1)で表される導電性高分子を形成する際に使用する化合物「(1)−1」と化合物「(1)−5」を等モル併用して前記1質量%と5質量%のエタノール溶液を作製した他は同じ手順を採ることで「光電変換素子35」を作製した。
【0224】
(4)「光電変換素子36〜38」の作製
前記「光電変換素子1」の作製で、光電変換層の厚さが4、10、16μmとなる様に、前記アナターゼ型二酸化チタンペーストの塗布を行った他は同じ手順を採ることにより「光電変換素子36〜38」を作製した。
【0225】
1−4.「光電変換素子39」の作製
前記「光電変換素子31」の作製で、上記化合物「(1)−1」を用いて熱重合法により正孔輸送層を形成するのに代えて、下記構造の化合物「bis−EDOT(ビス−エチレンジオキシチオフェン)」を用いて光重合法により正孔輸送層を形成した。
【0226】
【化72】

【0227】
光重合法による「bis−EDOT」を用いた正孔輸送層の形成は、以下の手順で行った。先ず、増感色素「A−4」と「(4)−3」を用いた光電変換層を、下記化合物を含有するアセトニトリル溶液(電界重合溶液)中へ浸漬した。
【0228】
「bis−EDOT」 1×10-3モル/リットル
Li[(CF3 SO2 2 N] 0.1モル/リットル
作用極を半導体電極、対極を白金線、参照電極をAg/Ag+ (AgNO3 0.01モル)、保持電圧を−0.16Vにし、光電変換層側より光を照射しながら30分間前記電圧を保持して光電変換層表面に正孔輸送層を形成した。なお、このときの光照射条件は、光源にキセノンランプを使用、光強度22mW/cm2 、430nm以下の波長光をカットしたものである。
【0229】
その後、
Li[(CF3 SO2 2 N] 15×10-3モル/リットル
t−ブチルピリジン 50×10-3モル/リットル
の割合で含有するアセトニトリル溶液に10分間浸漬した後、自然乾燥させて、光重合法により導電性高分子を作製して正孔輸送層を形成した。その他は同じ手順を採ることにより「光電変換素子39」を作製した。
【0230】
1−5.「比較用光電変換素子1〜10」の作製
(1)「比較用光電変換素子1〜6」の作製
前記「光電変換素子2」の作製で、光電変換層の形成に使用するアセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒中へ、化合物「A−4」を添加せず、化合物「(4)−3」のみを濃度1×10-3モル/リットルとなる様に添加、調製した。その他は同じ手順を採ることで「比較用光電変換素子1」を作製した。同様に、前記「光電変換素子6、8〜11」の作製で、光電変換層の形成に使用するアセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒中へ、化合物「A−4」を添加せず、表1に示す各化合物のみを濃度1×10-3モル/リットルとなる様に添加、調製した。その他は同じ手順を採ることで「比較用光電変換素子2〜6」を作製した。
【0231】
(2)「比較用光電変換素子7」の作製
前記「比較用光電変換素子1」の作製で、光電変換層の形成に使用するアセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒中へ、化合物「G−4」を濃度1×10-3モル/リットルとなる様に添加、調製した。その他は同じ手順を採ることにより「比較用光電変換素子7」を作製した。なお、化合物「G−4」は、以下に示す構造を有するもので、CAS Number 207347−46−4([RuL2 (NCS)2 ]:2TBA L=2,2’−bipyridyl−4,4’−dicarboxylic acid TBA=tetra−n−butylammonium)という化合物である。
【0232】
【化73】

【0233】
(3)「比較用光電変換素子8〜10」の作製
前記「光電変換素子2」の作製で、正孔輸送層の形成を以下の手順で行った他は同じ手順を採り、「比較用光電変換素子8」を作製した。すなわち、正孔輸送物質に下記に示す「芳香族アミン化合物S2」を用い、これをテトラヒドロフランに溶解させて正孔輸送層形成用塗布液を調製しておく。次に、当該正孔輸送層形成用塗布液を、前述した光電変換層の上面にスピンコート法により塗布し、10分間真空乾燥処理を行うことにより、テトラヒドロフランを除去して正孔輸送層を形成する。なお、前記正孔輸送層形成用塗布液の塗布はスピンコートの回転数を500rpmに設定して行った。
【0234】
【化74】

【0235】
また、上記「比較用光電変換素子8」の作製で、正孔輸送層形成用塗布液を調製する際に使用する「芳香族アミン化合物S2」を下記に示す「芳香族アミン化合物S22」に変更した他は同じ手順を採り「比較用光電変換素子9」を作製した。さらに、正孔輸送層形成用塗布液を調製する際に使用する「芳香族アミン化合物S2」を下記に示す「芳香族アミン化合物S26」に変更した他は同じ手順を採り「比較用光電変換素子10」を作製した。なお「化合物S26」は2,2’,7,7’−テトラキス(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミン)9,9’−スピロビフルオレンと呼ばれるものである。
【0236】
【化75】

【0237】
以上の手順により「光電変換素子1〜39と比較用光電変換素子1〜10」を作製した。なお、上記「光電変換素子1〜39と比較用光電変換素子1〜10」を作製する際に使用した正孔輸送層形成用化合物と増感色素を下記の表1と表2に示す。
【0238】
【表1】

【0239】
【表2】

【0240】
1−6.「光電変換素子40〜43」の作製
上記「光電変換素子2」の作製で、正孔輸送層形成時に行う熱重合の処理温度を45℃、50℃、80℃、85℃に変更して作製した他は同じ手順を採ることにより「光電変換素子40〜43」を作製した。
【0241】
1−7.「光電変換素子44〜46、比較用光電変換素子11」の作製
(1)「光電変換素子44」の作製
上記「光電変換素子2」の作製において、増感色素である一般式(2)で表わされる化合物の1つである「A−4」1×10-4モル/リットルと一般式(4)で表わされる化合物の1つである「(4)−3」4×10-4モル/リットルを、アセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒に溶解した他は「光電変換素子2」の作製手順と同様にして「光電変換素子44」を作製した。
【0242】
(2)「光電変換素子45」の作製
上記「光電変換素子2」の作製において、増感色素である一般式(2)で表わされる化合物の1つである「A−4」4×10-4モル/リットルと一般式(4)で表わされる化合物の1つである「(4)−3」1×10-4モル/リットルを、アセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒に溶解した他は「光電変換素子2」の作製手順と同様にして「光電変換素子45」を作製した。
【0243】
(3)「光電変換素子46」の作製
上記「光電変換素子2」の作製において、増感色素である一般式(2)で表わされる化合物の1つである「A−4」4.7×10-4モル/リットルと一般式(4)で表わされる化合物の1つである「(4)−3」0.3×10-4モル/リットルを、アセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒に溶解した他は「光電変換素子2」の作製手順と同様にして「光電変換素子46」を作製した。
【0244】
(4)「比較用光電変換素子11」の作製
上記「光電変換素子2」の作製において、増感色素である一般式(2)で表わされる化合物の1つである「A−4」を除いた以外は「光電変換素子2」の作製手順と同様にして「比較用光電変換素子11」を作製した。
【0245】
1−8.「光電変換素子1〜46、比較用光電変換素子1〜11」の加熱処理
本実施例では光電変換効率の安定維持性能を評価するため、上記手順で作製した「光電変換素子1〜46、比較用光電変換素子1〜11」を85℃に加熱したオーブン内へ投入し、5時間放置して加熱処理を施した。なお、当該加熱処理はオーブン内を暗所にして行ったものである。
【0246】
2.評価実験
本実施例では、上記手順で作製した「光電変換素子1〜46、比較用光電変換素子1〜11」の光電変換効率の安定維持性能を以下の手順で評価した。先ず、上記85℃に加熱したオーブンによる5時間の加熱処理を行う前に、上記各光電変換素子の光電変換効率ηを下記方法で測定、算出する。次に、上記加熱処理を実施した後、再び各光電変換素子の光電変換効率η’を測定、算出する。この様にして、85℃、5時間の加熱処理前後における光電変換効率の低下率を算出して評価を行った。
【0247】
ここで、本発明で規定する構成を有する「光電変換素子1〜46」を用いた評価を「実施例1〜46」とし、本発明で規定する構成を有さない「比較用光電変換素子1〜11」を用いた評価を「比較例1〜11」とした。
【0248】
また、後述する表3と表4には、各光電変換素子の上記85℃、5時間の加熱処理を行う前の開放電圧と短絡電流密度、形状係数、光電変換効率と、加熱処理後の光電変換効率、及び、加熱処理前後における光電変換効率を示す。
【0249】
各光電変換素子の光電変換効率η及びη’は以下の手順で測定、算出する。すなわち、
市販のソーラシミュレータ「WXS−85−H((株)ワコム電創製)」により形成される照射強度100mW/cm2 の擬似太陽光を室温環境(温度20℃)下で各光電変換素子に照射する。前記擬似太陽光は、前記ソーラシミュレータによりキセノンランプ光をAMフィルタ(AM1.5)に通過させて形成されるものである。
【0250】
ここで、前記擬似太陽光照射時における各光電変換素子の電流−電圧特性を市販のI−Vテスタを用いて測定し、短絡電流値Iscと開放電圧Voc、及び、電流−電圧特性グラフより形状係数FFを算出する。これらの値を後述する計算式に代入することにより光電変換効率ηが算出される。
【0251】
なお、上記「開放電圧Voc」とは、光電変換素子に電圧負荷をかけて電流が流れなくなるときの電圧値のことであり、上記「短絡電流値Isc」とは、光電変換素子に電圧負荷をかけていない状態の時に流れる電流値のことである。また、上記「形状係数FF」は、後述する光電変換効率を測定する際に得られる電圧−電流特性グラフに示される軌跡を数値で示したもので、照射強度Pmaxを短絡電流値Iscと開放電圧Vocの積で除して得られる値である。図2に形状係数FFの算出式、形状係数FFが1.00のとき及び1.00未満のときの電圧−電流特性グラフの軌跡の例を示す。
【0252】
また、光電変換効率ηは、下記式より算出されるものである。すなわち、照射強度Pmax、各光電変換素子の短絡電流をIsc(mA/cm2 )、開放電圧をVoc(V)、形状係数をFFとすると、光電変換効率η(%)は下記式より算出される。すなわち、
η(%)=〔(Isc×Voc×FF)/Pmax〕×100
となる。加熱処理後の光電変換効率η’も同様に上記式より算出される。
【0253】
なお、本評価では、前記ソーラシミュレータより照射強度Pmaxが100mW/cm2 の疑似太陽光を照射している。
【0254】
また、表3と表4に示す加熱処理前後における光電変換効率の比率(加熱前後比)は、
加熱前後比=加熱処理後光電変換効率/加熱処理前光電変換効率
で定義されるものである。
【0255】
表3と表4に、各光電変換素子の上記加熱処理実施前の開放電圧と短絡電流密度、形状係数、光電変換効率と、加熱処理後の光電変換効率と加熱処理前後における光電変換効率比を示し、光電変換効率比の値が0.60以上のものを合格とした。
【0256】
【表3】

【0257】
【表4】

【0258】
表3と表4に示す様に、一般式(1)の導電性高分子を正孔輸送材料に用い、一般式(2)の化合物と一般式(4)〜(9)のいずれかの化合物を増感色素に用いた光電変換素子を評価した「実施例1〜46」は、いずれも加熱処理前後における光電変換効率比の値が0.60よりも大きなものになり、光電変換効率の維持が安定的に行われるものであることが確認された。一方、本発明の構成を有さない「比較例1〜11」は、加熱処理後に光電変換効率が低下して、光電変換効率の安定維持が行えないものであることが確認された。
【符号の説明】
【0259】
1 基体
2 第1電極
4 増感色素
5 半導体
6 光電変換層
7 正孔輸送層
8 第2電極
9 隔壁
10 光電変換素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基体、第1電極、半導体及び増感色素を含有する光電変換層、固体の正孔輸送物質を含有する正孔輸送層、第2電極を有する光電変換素子であって、
前記正孔輸送層に含有される固体の正孔輸送物質が、下記一般式(1)で表される構造の導電性高分子であり、
【化1】


(式中、R1 とR2 は水素原子、置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基を表し、R1 とR2 は同じものであっても異なるものであってもよい。また、R1 とR2 は連結して環構造を形成するものであってもよく、kは自然数を表す。)
前記光電変換層に、増感色素として、
下記一般式(2)で表される構造の化合物と、
【化2】


(式中、nは1以上3以下の整数、Arは芳香族基を表し、R3 は水素原子、ハロゲン原子あるいは置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、シアノ基または複素環基を表す。nが1のとき、2つのR3 は互いに異なるものであってもよく、また、R3 は他の置換基と連結して環構造を形成してもよい。A1 、A2 は単結合または2価の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、置換または未置換のアルキレン基、アリーレン基、複素環基のいずれかであり、pとqは0以上6以下の整数である。Zは少なくとも1つのヒドロキシ基または酸性基を含む有機基を表し、nが2以上のとき、複数のA1 、A2 、Zは互いに異なるものであってもよい。)
下記一般式(4)〜(9)で表される構造の化合物の少なくとも1つ以上を含有することを特徴とする光電変換素子。
【化3】


(式中、R11〜R26は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、フェノキシ基を表し、R11〜R26上の少なくとも1個所に酸性基を有する。また、Mは2個の水素原子または置換基を有してもよい2価、3価、4価の金属原子を表す。)
【化4】


(式中、R31〜R42は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、複素環基、直接あるいは他の結合原子を介して環状構造、縮環構造を形成する基を表し、R31〜R42上の少なくとも1個所に酸性基を含有する。Mは、2個の水素原子を表すか、置換基を有してもよい2価、3価、4価の金属原子を表す。)
【化5】


(一般式(6)中のR53とR54、両式中のR57とR58は、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基を表し、前記部位上の少なくとも1個所に酸性基を有する。一般式(6)中のR51、R52と両式中のR55、R56は、炭素数が同じあるいは異なるアルキル基、アリール基またはアルキル基置換アリール基のいずれかを表す。)
【化6】


(一般式(8)中のR51、R52、R53、R54は、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基を表し、R53上に酸性基を有する。両式中のR59とR60は、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R59とR60は互いに連結して環状構造を形成してもよい。)
【請求項2】
前記一般式(2)で表される構造の増感色素が、下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
【化7】


(式中、mは1以上5以下の整数、nは1または2の整数を表す。R5 、R6 は水素原子、ハロゲン原子あるいは置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、シアノ基または複素環基を表し、連結して環構造を形成してもよい。A1 、A2 はイオウ原子を含む複素環基を表し、p、qは0以上6以下の整数である。Zは少なくとも1つのヒドロキシ基または酸性基を含む有機基を表し、nが2のとき、A1 、A2 、Zは互いに異なるものであってもよい。)
【請求項3】
前記一般式(3)で表される構造の増感色素中のR5 、A1 及びA2 の少なくとも1つが、炭素原子数6以上の直鎖アルキル構造を有するものであることを特徴とする請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記一般式(3)で表される構造の増感色素中のnが2であることを特徴とする請求項2または3に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記一般式(1)で表される構造の導電性高分子は、少なくとも2種類以上の重合性単量体を用いて形成される共重合体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記増感色素を含有する光電変換層の厚さが10μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記正孔輸送層に含有される固体の正孔輸送物質が、
前記一般式(1)で表される構造の導電性高分子が熱重合して形成されるものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記熱重合を行うときの処理温度が50℃以上80℃以下であることを特徴とする請求項7に記載の光電変換素子。
【請求項9】
少なくとも、基体、第1電極、半導体及び増感色素を含有する光電変換層、固体の正孔輸送物質を含有する正孔輸送層、第2電極を有する光電変換素子の製造方法であって、
前記正孔輸送層に含有される固体の正孔輸送物質が、下記一般式(1)で表される構造の導電性高分子であり、
【化8】


(式中、R1 とR2 は水素原子、置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基を表し、R1 とR2 は同じものであっても異なるものであってもよい。また、R1 とR2 は連結して環構造を形成するものであってもよく、kは自然数を表す。)
前記光電変換層に、増感色素として、
下記一般式(2)で表される構造の化合物と、
【化9】


(式中、nは1以上3以下の整数、Arは芳香族基を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子あるいは置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、シアノ基または複素環基を表す。nが1のとき、2つのR3 は互いに異なるものであってもよく、また、R3 は他の置換基と連結して環構造を形成してもよい。A1 、A2 は単結合または2価の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、置換または未置換のアルキレン基、アリーレン基、複素環基のいずれかであり、p、qは0以上6以下の整数である。Zは少なくとも1つのヒドロキシ基または酸性基を含む有機基を表し、nが2以上のとき、複数のA1 、A2 、Zは互いに異なるものであってもよい。)
下記一般式(4)〜(9)で表される構造の化合物の少なくとも1つ以上を含有することを特徴とする光電変換素子の製造方法。
【化10】


(式中、R11〜R26は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、フェノキシ基を表し、R11〜R26上の少なくとも1個所に酸性基を有する。また、Mは2個の水素原子または置換基を有してもよい2価、3価、4価の金属原子を表す。)
【化11】


(式中、R31〜R42は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、複素環基、直接あるいは他の結合原子を介して環状構造、縮環構造を形成する基を表し、R31〜R42上の少なくとも1個所に酸性基を含有する。Mは、2個の水素原子を表すか、置換基を有してもよい2価、3価、4価の金属原子を表す。)
【化12】


(一般式(6)中のR53とR54、両式中のR57とR58は、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基を表し、前記部位上の少なくとも1個所に酸性基を有する。一般式(6)中のR51、R52と両式中のR55、R56は、炭素数が同じあるいは異なるアルキル基、アリール基またはアルキル基置換アリール基のいずれかを表す。)
【化13】


(一般式(8)中のR51、R52、R53、R54は、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基を表し、R53上に酸性基を有する。両式中のR59とR60は、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R59とR60は互いに連結して環状構造を形成してもよい。)
【請求項10】
前記一般式(2)で表される構造の増感色素が、下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項9に記載の光電変換素子の製造方法。
【化14】


(式中、mは1以上5以下の整数、nは1または2の整数を表す。R5 、R6 は水素原子、ハロゲン原子あるいは置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、シアノ基または複素環基を表し、連結して環構造を形成してもよい。A1 、A2 はイオウ原子を含む複素環基を表し、p、qは0以上6以下の整数である。Zは少なくとも1つのヒドロキシ基または酸性基を含む有機基を表し、nが2のとき、A1 、A2 、Zは互いに異なるものであってもよい。)
【請求項11】
前記一般式(3)で表される構造の増感色素中のR5 、A1 及びA2 の少なくとも1つが、炭素原子数6以上の直鎖アルキル構造を有するものであることを特徴とする請求項10に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項12】
前記一般式(3)で表される構造の増感色素中のnが2であることを特徴とする請求項10または11に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項13】
前記一般式(1)で表される構造の導電性高分子は、少なくとも2種類以上の重合性単量体を用いて形成される共重合体であることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項14】
前記増感色素を含有する光電変換層の厚さが10μm以下であることを特徴とする請求項9〜13のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項15】
前記正孔輸送層に含有される固体の正孔輸送物質が、
前記一般式(1)で表される構造の導電性高分子が熱重合して形成されるものであることを特徴とする請求項9〜14のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項16】
前記熱重合を行うときの処理温度が50℃以上80℃以下であることを特徴とする請求項15に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項17】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の光電変換素子または請求項9〜16のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法により製造された光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−77549(P2013−77549A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−196904(P2012−196904)
【出願日】平成24年9月7日(2012.9.7)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】