説明

光電変換素子及び光電気化学電池、これらに用いられる色素

【課題】高光電変換効率等の高い性能を達成し、しかも長波長領域のIPCE及び耐久性に優れる光電変換素子を提供する。
【解決手段】導電性支持体上に、色素が吸着された半導体微粒子の層を有する感光体と、電荷移動体と、対極とを配設した積層構造をもつ光電変換素子であって、前記色素として下記式(1)で表される金属錯体色素を用いる光電変換素子。
ML12X (1)
[式中、Mはルテニウム、オスミウム、鉄、レニウム、およびテクネチウムから選ばれた遷移金属を表す。Xは、NCS、Cl、Br、I、CN、NCO、HO、またはNCNを表す。Lは特定の3座の配位子を表し、L2は特定の2座の配位子を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子及び光電気化学電池、これらに用いられる色素に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子は各種の光センサー、複写機、太陽電池等に用いられている。この光電変換素子には金属を用いたもの、半導体を用いたもの、有機顔料や色素を用いたもの、あるいはこれらを組み合わせたものなどの様々な方式が実用化されている。中でも、非枯渇性の太陽エネルギーを利用した太陽電池は、燃料が不要であり、無尽蔵のクリーンエネルギーを利用するものとして、その本格的な実用化が大いに期待されている。この中でも、シリコン系太陽電池は古くから研究開発が進められてきた。各国の政策的な配慮もあって普及が進んでいる。しかし、シリコンは無機材料であり、スループット及び分子修飾には自ずと限界がある。
【0003】
そこで色素増感型太陽電池の研究が精力的に行われている。とくにその契機となったのは、スイス ローザンヌ工科大学のGraetzel等の研究成果である。彼らは、ポーラス酸化チタン薄膜の表面にルテニウム錯体からなる色素を固定した構造を採用し、アモルファスシリコン並の変換効率を実現した。これにより、色素増感型太陽電池が一躍世界の研究者から注目を集めるようになった。
【0004】
特許文献1には、この技術を応用し、ルテニウム錯体色素によって増感された半導体微粒子を用いた色素増感光電変換素子が記載されている。さらに、その後も光電変換効率の向上に向け、ルテニウム錯体系増感色素の開発が継続されている(特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5463057号明細書
【特許文献2】米国特許公開公報2010/0258175号
【特許文献3】国際特許公開第98/50393号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2、3等の技術により、高い光電変換効率の素子が提供されてきた。しかしながら、本発明者は、グリーンエネルギーの本格的な供給源としてその一翼を担うことを見据え、その性能で十分とはせず、耐久性の向上を含むさらに高い特性を発揮する光電変換素子の開発を目指した。
上記本技術分野の現状に鑑み、本発明は、高光電変換効率等の高い性能を達成し、しかも長波長領域のIPCE(Incident Photon to Current Conversion Efficiency)及び耐久性に優れる光電変換素子、光電気化学電池、及びそれらに用いられる色素の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は以下の手段により解決された。
<1>導電性支持体上に、色素が吸着された半導体微粒子の層を有する感光体と、電荷移動体と、対極とを配設した積層構造をもつ光電変換素子であって、前記色素として下記式(1)で表される金属錯体色素を用いる光電変換素子。
ML12X (1)
[式中、Mはルテニウム、オスミウム、鉄、レニウム、およびテクネチウムから選ばれた遷移金属を表す。Xは、NCS、Cl、Br、I、CN、NCO、HO、またはNCNを表す。Lは下記式(L1)で表される3座の配位子を表し、L2は下記式(L2−1)〜(L2−5)のいずれかで表される2座の配位子を表す。]
【0008】
【化1】

[式(L1)において、Za、Zb及びZcはそれぞれ独立に、5又は6員環を形成しうる非金属原子群を表す。ただし、Za、Zb及びZcが形成する環のうち少なくとも1つは酸性基を有する。]
【0009】
【化2】

[式中、Gは下記式(G1−1)〜(G1−6)のいずれかで表される構造を示し、Gは、下記式(G2−1)〜(G2−3)のいずれかで表される構造を示す。Rは置換基を表す。n1は0〜3の整数を表す。n2は0〜5の整数を表す。]
【0010】
【化3】

[式中、R1〜Rは、水素原子、アルキル基、ヘテロアリール基、アリール基、COOH、PO(OH)、PO(OR)(OH)、又はCO(NHOH)を表す。ここでRはアルキル基、ヘテロアリール基、又はアリール基を表す。*は結合手を表す。]
【0011】
<2>前記L2が式(L2−1)又は(L2−2)で表される<1>記載の光電変換素子。
<3>前記Gが(G1−1)、(G1−2)、又は(G1−5)で表される<1>又は<2>に記載の光電変換素子。
<4>前記Gが(G2−1)又は(G2−2)で表される<1>〜<3>のいずれか1項に記載の光電変換素子。
<5>前記感光体が下記式(2)で表される色素をさらに含有する<1>〜<4>のいずれか1項に記載の光電変換素子。
MzLm3m4mY・CI (2)
[式(2)において、Mzは金属原子を表す。Lは下記式(L3)で表される配位子を表す。Lは下記式(L4)で表される配位子を表す。Yは1座又は2座の配位子を表す。m3は0〜3の整数を表す。m4は1〜3の整数を表す。mYは0〜2の整数を表す。CIは電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。]
【0012】
【化4】

(式(L3)において、Acは酸性基を表す。Rは置換基を表す。Rはアルキル基又は芳香環基を表す。e1及びe2は0〜5の整数を表す。L及びLは共役鎖を表す。e3は0又は1を表す。fは0〜3の整数を表す。gは0〜3の整数を表す。)
【0013】
【化5】

(式(L4)において、Zd、Ze及びZfは5又は6員環を形成しうる原子群を表す。hは0又は1を表す。ただし、Zd、Ze及びZfが形成する環のうち少なくとも1つは酸性基を有する。)
【0014】
<6><1>〜<5>のいずれか1項に記載の光電変換素子を用いた光電気化学電池。
<7>下記一般式(1)で表される色素。
ML12X (1)
[式中、Mはルテニウム、オスミウム、鉄、レニウム、およびテクネチウムから選ばれた遷移金属を表す。Xは、NCS、Cl、Br、I、CN、NCO、HO、またはNCNを表す。Lは下記式(L1)で表される3座の配位子を表し、L2は下記式(L2−1)〜(L2−5)のいずれかで表される2座の配位子を表す。
【0015】
【化6】

式(L1)において、Za、Zb及びZcはそれぞれ独立に、5又は6員環を形成しうる非金属原子群を表す。ただし、Za、Zb及びZcが形成する環のうち少なくとも1つは酸性基を有する。
【0016】
【化7】

式(L2−1)〜(L2−5)中、Gは下記式(G1−1)〜(G1−6)のいずれかで表される構造を示し、Gは、下記式(G2−1)〜(G2−3)のいずれかで表される構造を示す。
【0017】
【化8】

式中、R1〜Rは、水素原子、アルキル基、ヘテロアリール基、アリール基、COOH、PO(OH)、PO(OR)(OH)、又はCO(NHOH)を表す。ここでRはアルキル基、ヘテロアリール基、又はアリール基を表す。*は結合手を表す。]
【発明の効果】
【0018】
本発明の色素を用いた光電変換素子及び光電気化学電池は、高光電変換効率等の高い性能を発揮し、しかも長波長領域のIPCEが高く、耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の光電変換素子の一実施態様について模式的に示した断面図である。
【図2】実施例1で作製した色素増感型太陽電池を模式的に示す断面図である。
【図3】実施例2で作製した色素増感型太陽電池を模式的に示す断面図である。
【図4】実施例3で作成した色素増感型太陽電池について、図1に示す光電変換素子の変形例をその拡大部分(円)において模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の中心金属に対してターピリジンが配位した構造を有し、これにより、光電変換素子において、800nm超という長波長領域でも高いIPCEを発揮し、高光電変換効率を実現し、さらに高い耐久性を実現した。
この理由は未解明の点を含むが、推定を含めて下記のように説明できる。つまり含窒素5員環−ピリジンリガンド上の置換基の種類と置換位置は、含窒素3員環リガンドを介してチタニアに吸着した状態の色素に及ぼす電子的効果と立体的効果がそれぞれ異なるが、本発明の置換位置が、(1)電子注入の観点と(2)チタニアに注入された電子の再結合の観点、及び(3)水分子の接近による色素の解離抑制(耐久性向上)の観点から、好ましい影響を与えたものと考えられる。その結果、高光電変換効率と耐久性の向上の両立を実現したと考えられる。以下に本発明についてその好ましい実施態様に基づき、詳細に説明する。
【0021】
[素子の構造]
本発明の色素を用いることができる光電変換素子の好ましい実施態様を、図面を参照して説明する。図1に示すように、光電変換素子10は、導電性支持体1、導電性支持体1上にその順序で配された、感光体層2、電荷移動体層3、及び対極4からなる。前記導電性支持体1と感光体2とにより受光電極5を構成している。その感光体2は導電性微粒子22と増感色素21とを有しており、色素21はその少なくとも一部において導電性微粒子22に吸着している(色素は吸着平衡状態になっており、一部電荷移動体層に存在していてもよい。)。感光体2が形成された導電性支持体1は光電変換素子10において作用電極として機能する。この光電変換素子10を外部回路6で仕事をさせるようにして、光電気化学電池100として作動させることができる。
【0022】
受光電極5は、導電性支持体1および導電性支持体上に塗設される色素21の吸着した半導体微粒子22を含む感光体層(半導体膜)2よりなる電極である。感光体層(半導体膜)2に入射した光は色素を励起する。励起色素はエネルギーの高い電子を有している。そこでこの電子が色素21から半導体微粒子22の伝導帯に渡され、さらに拡散によって導電性支持体1に到達する。このとき色素21の分子は酸化体となっている。電極上の電子が外部回路で仕事をしながら、励起されて酸化された色素は電解質中の還元剤(例えば、I)から電子を受け取り、基底状態の色素に戻ることにより、光電気化学電池として作用する。この際、受光電極5はこの電池の負極として働く。
【0023】
本実施形態の光電変換素子は、導電性支持体上に後述の色素が吸着された多孔質半導体微粒子の層を有する感光体を有する。このとき色素において一部電解質中に解離したもの等があってもよい。感光体は目的に応じて設計され、単層構成でも多層構成でもよい。本実施形態の光電変換素子の感光体には、特定の増感色素が吸着した半導体微粒子を含み、感度が高く、光電気化学電池として使用する場合に、高い変換効率を得ることができる。
なお、光電変換素子の上下は特に定めなくてもよいが、本明細書において、図示したものに基づいて言えば、対極4の側を上部(天部)の方向とし、受光側となる支持体1の側を下部(底部)の方向とする。
【0024】
[式(1)で表される色素]
本発明の色素は下記式(1)で表される。
ML12X (1)
【0025】
*M
式中、Mはルテニウム、オスミウム、鉄、レニウム、およびテクネチウムから選ばれた遷移金属を表す。中でも、ルテニウムが好ましい。
【0026】
*X
Xは、NCS、Cl、Br、I、CN、NCO、HO、またはNCNを表す。
【0027】
*L
は下記式(L1)で表される。
【化9】

【0028】
式(L1)において、Za、Zb及びZcはそれぞれ独立に、5又は6員環を形成しうる非金属原子群を表す。ただし、Za、Zb及びZcが形成する環のうち少なくとも1つは酸性基を有する。
【0029】
・Za、Zb、Zc
Za、Zb及びZcはそれぞれ独立に、5員環又は6員環を形成しうる非金属原子群を表す。形成される5員環又は6員環は置換されていても無置換でもよく、単環でも縮環していてもよい。Za、Zb及びZcは炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及び/又はハロゲン原子で構成されることが好ましく、芳香族環を形成するのが好ましい。5員環の場合はイミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環又はトリアゾール環を形成するのが好ましく、6員環の場合はピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環又はピラジン環を形成するのが好ましい。なかでもイミダゾール環又はピリジン環がより好ましい。
【0030】
・酸性基
本発明において酸性基とは、解離性のプロトンを有する置換基であり、例えば、カルボキシ基、ホスホニル基、ホスホリル基、スルホ基、ホウ酸基など、あるいはこれらのいずれかを有する基が挙げられ、好ましくはカルボキシ基あるいはこれを有する基である。また酸性基はプロトンを放出して解離した形を採っていてもよく、塩であってもよい。酸性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、ホスホニル基、若しくはホスホリル基、又はこれらの塩のいずれかであることが好ましい。酸性基とは、連結基を介して結合した基でもよく、例えば、カルボキシビニレン基、ジカルボキシビニレン基、シアノカルボキシビニレン基、カルボキシフェニル基などを好ましいものとして挙げることができる。なお、ここで挙げた酸性基及びその好ましい範囲を酸性基Acということがある。なお、上述のとおり、酸性基Acは酸性を示す基を有する基であればよく、換言すれば、酸性を示す基は所定の連結基を介して導入されていてもよい。なお、酸性基はその塩として存在していてもよい。塩となるとき対イオンとしては特に限定されないが、例えば、下記式(2)の対イオンCIにおける正のイオンの例が挙げられる。
Za、Zb及びZcが形成する環のうち少なくとも1つが有する酸性基としては、COOH、PO(OH)、PO(OR)(OH)、又はCO(NHOH)が好ましく、更に好ましくは、COOH、PO(OH)、又はPO(OR)(OH)であり、特に好ましくは、COOHである。ここでRはアルキル基、ヘテロアリール基、又はアリール基を表す。
【0031】
*L
は、式(L2−1)、(L2−2)、(L2−3)、(L2−4)、又は(L2−5)で表される。式(L2−1)〜(L2−5)のうち、好ましくは、式(L2−1)、(L2−2)、(L2−4)、又は(L2−5)であり、更に好ましくは、式(L2−1)、又は(L2−2)であり、特に好ましくは、式(L2−1)である。
【0032】
【化10】

【0033】
・G1
G1は下記式(G1−1)〜(G1−6)で表される構造を示す。(G1−1)〜(G1−6)のうち、好ましくは、(G1−1)、(G1−2)、(G1−3)、(G1−5)、又は(G1−6)であり、更に好ましくは、(G1−1)、(G1−2)、(G1−5)、又は(G1−6)であり、特に好ましくは、(G1−1)、(G1−2)又は(G1−5)である。
・G2
G2は、下記式(G2−1)〜(G2−3)で表される構造を示す。(G2−1)〜(G2−3)のうち、好ましくは、(G2−1)又は(G2−2)であり、更に好ましくは、(G2−2)である。
【0034】
【化11】

・R〜R
、R、R、及びRは、水素原子、アルキル基、ヘテロアリール基、アリール基、COOH、PO(OH)、PO(OR)(OH)、又はCO(NHOH)を表す。ここでRはアルキル基、ヘテロアリール基、又はアリール基を表す。
〜Rとして好ましくは、水素原子又はアルキル基であり、特に好ましくは、電子吸引性基が置換したアルキル基である。
として好ましくは、水素原子、アルキル基、ヘテロアリール基、又はアリール基であり、より好ましくは、アルキル基、ヘテロアリール基、又はアリール基であり、更に好ましくは、アルキル基、又はアリール基であり、特に好ましくは、アルキル基である。
【0035】
式(1)で表される色素は、エタノール溶液における極大吸収波長が、好ましくは500〜700nmの範囲であり、より好ましくは550〜650nmの範囲である。
【0036】
以下に本発明の式(1)で表される色素の好ましい具体例を示すが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0037】
【化12】

【0038】
【化13−1】

【0039】
【化13−2】

【0040】
(式(2)の化合物からなる色素)
本発明の光電変換素子及び光電気化学電池においては、さらに他の金属錯体色素と併用することが好ましい。他の金属錯体色素と併用することで、互いの吸着状態を制御し、各々よりも高い効率や耐久性を達成することができる。この場合上記2種の増感色素によって増感された半導体微粒子を含む光電変換層を、それぞれ、別の層にすることもできる。
【0041】
他の金属錯体色素としては、下記式(2)で表される化合物からなる色素を含むことが好ましい。
MzLm3m4mY・CI (2)
【0042】
・金属原子Mz
Mzは式(1)におけるMと同義である。
【0043】
*L(式(L3))
は下記式(L3)で表される2座の配位子を表す。
【0044】
【化14】

【0045】
・m3
m3は0〜3の整数であり、1〜3であるのが好ましく、1であるのがより好ましい。m3が2以上のとき、Lは同じでも異なっていてもよい。
【0046】
・Ac
Acはそれぞれ独立に酸性基を表す。Acの好ましいものは式(1)で定義したものと同義である。Acはピリジン環上もしくはその置換基のどの原子に置換してもよい。
【0047】
・R
はそれぞれ独立に置換基を表し、好ましくは置換基Tの例を挙げることができる。好ましくはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシル基、スルホンアミド基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アシルアミノ基、シアノ基またはハロゲン原子であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基またはハロゲン原子であり、特に好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基またはアシルアミノ基である。
【0048】
・R
は、アルキル基又は芳香環基を表す。芳香族基としては、好ましくは炭素原子数6〜30の芳香族基、例えば、フェニル、置換フェニル、ナフチル、置換ナフチル等である。複素環(ヘテロ環)基としては、好ましくは炭素原子数1〜30のヘテロ環基、例えば、2−チエニル、2−ピロリル、2−イミダゾリル、1−イミダゾリル、4−ピリジル、3−インドリルおよびこれらを2つ以上組合わせたものである。好ましくは1〜3個の電子供与基を有するヘテロ環基であり、より好ましくはチエニルおよびチエニルが2つ以上連結したものが挙げられる。該電子供与基はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基またはヒドロキシ基であるのが好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはヒドロキシ基であるのがより好ましく、アルキル基であるのが特に好ましい。
【0049】
・e1、e2
e1、e2は0〜5の整数であるが、0〜3が好ましく、0〜2がより好ましい。
【0050】
・L及びL
及びLはそれぞれ独立に共役鎖を表し、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、エテニレン基及び/又はエチニレン基からなる共役鎖を表す。エテニレン基やエチニレン基等は、無置換でも置換されていてもよい。エテニレン基が置換基を有する場合、該置換基はアルキル基であるのが好ましく、メチルであるのがより好ましい。L及びLはそれぞれ独立に、炭素原子数2〜6個の共役鎖であるのが好ましく、チオフェンジイル、エテニレン、ブタジエニレン、エチニレン、ブタジイニレン、メチルエテニレン又はジメチルエテニレンがより好ましく、エテニレン又はブタジエニレンが特に好ましく、エテニレンが最も好ましい。LとLは同じであっても異なっていてもよいが、同じであるのが好ましい。なお、共役鎖が炭素―炭素二重結合を含む場合、各二重結合はE型であってもZ型であってもよく、これらの混合物であってもよい。
【0051】
・e3
e3は0または1である。特に、e3が0のとき式中右側のfは1又は2であるのが好ましく、e3が1のとき右側のfは0又は1であるのが好ましい。fの総和は0〜2の整数であるのが好ましい。
【0052】
・g
gはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、0〜2の整数であるのが好ましい。
【0053】
・f
fはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。fの和が1以上であって、配位子Lが酸性基を少なくとも1個有するときは、式(2)中のm3は2または3であるのが好ましく、2であるのがより好ましい。fが2以上のときAcは同じでも異なっていてもよい。式中左側のfは0又は1であるのが好ましく、右側のfは0〜2の整数であるのが好ましい。
【0054】
式(2)における配位子Lは、下記一般式(L3−1)、(L3−2)又は(L3−3)で表されるものが好ましい。
【0055】
【化15】

【0056】
式中、Ac、Ra、f、g及びe3は一般式(L3)におけるものと同義である。ただし、N位に置換するRaは水素原子であってもよい。e4は0〜4の整数である。
【0057】
*L(式(L4))
は下記式(L4)で表される2座又は3座の配位子を表す。
【0058】
【化16】

【0059】
式(L4)において、Zd、Ze及びZfは5又は6員環を形成しうる原子群を表す。hは0又は1を表す。ただし、Zd、Ze及びZfが形成する環のうち少なくとも1つは酸性基を有する。
・m4
m4は1〜3の整数であり、1〜2であるのが好ましい。m4が2以上のときLは同じでも異なっていてもよい。
【0060】
・Zd、Ze、Zf
Zd、Ze及びZfは式(1)のZa、Zb、Zcと同義である。
【0061】
・h
hは0または1を表す。hは0であるのが好ましく、Lは2座配位子であるのが好ましい。
【0062】
配位子Lは、下記式(L4−1)〜(L4−8)のいずれかにより表されるのが好ましく、式(L4−1)、(L4−2)、(L4−4)、又は(L4−6)により表されるのがより好ましく、式(L4−1)又は(L4−2)により表されるのが特に好ましく、式(L4−1)により表されるのが特に好ましい。
【0063】
【化17】

【0064】
式中、Acはそれぞれ独立に酸性基又はその塩を表す。Acは前記で定義したAcと同義である。
【0065】
式中、Rは式(1)と同義である。ただし、N位に置換するRは水素原子であってもよい。
【0066】
iはそれぞれ独立に0以上置換可能な炭素の位置の数(整数)を表す。なお置換可能数は式の番号の横に()で表示した。Rは互いに連結して、あるいは縮環して環を形成していてもよい。
【0067】
なお、上記式L4−1〜L4−8では、置換基Rを所定の芳香環に結合手を延ばして示しているが、その芳香環に置換したものに限定されない。つまり、例えば、式L4−1では、左側のピリジン環にAc、Rが置換した形になっているが、これらが右側のピリジン環に置換した形態であってもよい。
【0068】
*配位子Y
式(2)中、Yは1座又は2座の配位子を表す。mYは配位子Yの数を表す。mYは0〜2の整数を表し、mYは好ましくは1又は2である。Yが1座配位子のとき、mYは2であるのが好ましく、Yが2座配位子のとき、mYは1であるのが好ましい。mYが2以上のとき、Yは同じでも異なっていてもよく、Yどうしが連結していてもよい。
【0069】
配位子Yは、好ましくはアシルオキシ基、チオアシルチオ基、アシルアミノオキシ基、ジチオカルバメート基、ジチオカルボネート基、トリチオカルボネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基およびアリールオキシ基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいはハロゲン原子、カルボニル、1,3−ジケトンまたはチオ尿素からなる配位子である。より好ましくはアシルオキシ基、アシルアミノオキシ基、ジチオカルバメート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、シアノ基またはアリールチオ基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいはハロゲン原子、1,3−ジケトンまたはチオ尿素からなる配位子であり、特に好ましくはジチオカルバメート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基およびイソシアネート基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいはハロゲン原子または1,3−ジケトンからなる配位子であり、最も好ましくは、ジチオカルバメート基、チオシアネート基およびイソチオシアネート基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいは1,3−ジケトンからなる配位子である。なお配位子Yがアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキレン基等を含む場合、それらは直鎖状でも分岐状でもよく、置換されていても無置換でもよい。またアリール基、ヘテロ環基、シクロアルキル基等を含む場合、それらは置換されていても無置換でもよく、単環でも縮環していてもよい。
【0070】
Yが2座配位子のとき、Yはアシルオキシ基、アシルチオ基、チオアシルオキシ基、チオアシルチオ基、アシルアミノオキシ基、チオカルバメート基、ジチオカルバメート基、チオカルボネート基、ジチオカルボネート基、トリチオカルボネート基、アシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基およびアリールオキシ基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいは1,3−ジケトン、カルボンアミド、チオカルボンアミド、またはチオ尿素からなる配位子であるのが好ましい。Yが1座配位子のとき、Yはチオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいはハロゲン原子、カルボニル、ジアルキルケトン、チオ尿素からなる配位子であるのが好ましい。
【0071】
*対イオンCI
式(1)中のCIは電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。一般に、色素が陽イオン又は陰イオンであるか、あるいは正味のイオン電荷を有するかどうかは、色素中の金属、配位子および置換基に依存する。
置換基が解離性基を有することなどにより、式(1)の色素は解離して負電荷を持ってもよい。この場合、式(1)の色素全体の電荷はCIにより電気的に中性とされる。
【0072】
対イオンCIが正の対イオンの場合、例えば、対イオンCIは、無機又は有機のアンモニウムイオン(例えばテトラアルキルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン等)、アルカリ金属イオン又はプロトンである。
対イオンCIが負の対イオンの場合、例えば、対イオンCIは、無機陰イオンでも有機陰イオンでもよい。例えば、ハロゲン陰イオン(例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等)、置換アリールスルホン酸イオン(例えばp−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン等)、アリールジスルホン酸イオン(例えば1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオン等)、アルキル硫酸イオン(例えばメチル硫酸イオン等)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等が挙げられる。さらに電荷均衡対イオンとして、イオン性ポリマーあるいは色素と逆電荷を有する他の色素を用いてもよく、金属錯イオン(例えばビスベンゼン−1,2−ジチオラトニッケル(III)等)も使用可能である。
【0073】
*結合基
式(2)で表される構造を有する色素は、半導体微粒子の表面に対する適当な結合基(interlocking group)を少なくとも1つ以上有するのが好ましい。この結合基を色素中に1〜6個有するのがより好ましく、1〜4個有するのが特に好ましい。結合基としては先のAcが挙げられる。
【0074】
式(2)で表される構造を有する色素の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記具体例における色素がプロトン解離性基を有する配位子を含む場合、該配位子は必要に応じて解離しプロトンを放出してもよい。
【0075】
【化18】

【0076】
【化19】

【0077】
【化20】

【0078】
式(2)により表される色素は、特開2001−291534号公報や当該公報に引用された方法を参考にして合成することができる。
式(2)で表される化合物からなる色素は、溶液における極大吸収波長が、好ましくは300〜1000nmの範囲であり、より好ましくは350〜950nmの範囲であり、特に好ましくは370〜900nmの範囲である。
本発明の光電変換素子及び光電気化学電池においては、少なくとも前記式(1)で表される化合物からなる色素と、式(2)で表される化合物からなる色素を用いて、広範囲の波長の光を利用することにより、高い変換効率を確保することができる。
【0079】
式(2)で示される構造を有する金属錯体色素と、式(1)で表わされる構造を有する色素の好ましい配合割合は、前者をR、後者をSとすると、モル%の比で、R/S=90/10〜10/90、好ましくはR/S=80/20〜20/80、さらに好ましくはR/S=70/30〜30/70、より一層好ましくはR/S=60/40〜40/60、最も好ましくはR/S=55/45〜45/55であり、通常は両者を等モル使用する。
【0080】
なお、本明細書において化合物(錯体、色素を含む)の表示については、当該化合物そのもののほか、その塩、錯体、そのイオンを含む意味に用いる。また、所望の効果を奏する範囲で、所定の形態で修飾された誘導体を含む意味である。また、本明細書において置換・無置換を明記していない置換基(連結基や配位子を含む)については、その基に任意の置換基を有していてもよい意味である。これは置換・無置換を明記していない化合物についても同義である。好ましい置換基としては、下記置換基Tが挙げられる。
【0081】
置換基Tとしては、下記のものが挙げられる。
アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルキニル基、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリール基、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数2〜20のヘテロ環基、例えば、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20のアミノ基、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ等)、スルホンアミド基(好ましくは炭素原子数0〜20のスルホンアミド基、例えば、N,N−ジメチルスルホンアミド、N−フェニルスルホンアミド等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルオキシ基、例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20のカルバモイル基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、シアノ基、又はハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基、シアノ基又はハロゲン原子であり、特に好ましくはアルキル基、アルケニル基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基又はシアノ基が挙げられる。
【0082】
化合物ないし置換基等がアルキル基、アルケニル基等を含むとき、これらは直鎖状でも分岐状でもよく、置換されていても無置換でもよい。またアリール基、ヘテロ環基等を含むとき、それらは単環でも縮環でもよく、置換されていても無置換でもよい。
【0083】
[光電変換素子]
(感光体層)
光電変換素子の実施態様については図1に基づき既に説明した。本実施形態において感光体層2は、後述の色素が吸着された半導体微粒子22の層からなる多孔質半導体層で構成されている。この色素は一部電解質中に解離したもの等があってもよい。また、感光体層2は目的に応じて設計され、多層構造からなるものであってもよい。
上述したように感光体層2には、特定の色素が吸着した半導体微粒子22を含むことから、受光感度が高く、光電気化学電池100として使用する場合に、高い光電変換効率を得ることができ、さらに高い耐久性を有する。
【0084】
(電荷移動体)
本発明の光電変換素子10に用いられる電解質組成物には、酸化還元対として、例えばヨウ素とヨウ化物(例えばヨウ化リチウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム等)との組み合わせ、アルキルビオローゲン(例えばメチルビオローゲンクロリド、ヘキシルビオローゲンブロミド、ベンジルビオローゲンテトラフルオロボレート)とその還元体との組み合わせ、ポリヒドロキシベンゼン類(例えばハイドロキノン、ナフトハイドロキノン等)とその酸化体との組み合わせ、2価と3価の鉄錯体(例えば赤血塩と黄血塩)の組み合わせ等が挙げられる。これらのうちヨウ素とヨウ化物との組み合わせが好ましい。
【0085】
ヨウ素塩のカチオンは5員環又は6員環の含窒素芳香族カチオンであるのが好ましい。特に、一般式(1)により表される化合物がヨウ素塩でない場合は、再公表WO95/18456号公報、特開平8−259543号公報、電気化学,第65巻,11号,923頁(1997年)等に記載されているピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等のヨウ素塩を併用するのが好ましい。
【0086】
本発明の光電変換素子10に使用される電解質組成物中には、ヘテロ環4級塩化合物と共にヨウ素を含有するのが好ましい。ヨウ素の含有量は電解質組成物全体に対して0.1〜20質量%であるのが好ましく、0.5〜5質量%であるのがより好ましい。
【0087】
本発明の光電変換素子10に用いられる電解質組成物は溶媒を含んでいてもよい。電解質組成物中の溶媒含有量は組成物全体の50質量%以下であるのが好ましく、30質量%以下であるのがより好ましく、10質量%以下であるのが特に好ましい。
【0088】
また、本発明の電解質としては、正孔導体物質を含む電荷輸送層を用いてもよい。正孔導体物質として、9,9’−スピロビフルオレン誘導体などを用いることができる。
【0089】
また、電極層、感光体層(光電変換層)、電荷移動体層(ホール輸送層)、伝導層、対極層を順次に積層することができる。p型半導体として機能するホール輸送材料をホール輸送層として用いることができる。好ましいホール輸送層としては、例えば無機系又は有機系のホール輸送材料を用いることができる。無機系ホール輸送材料としては、CuI、CuO,NiO等が挙げられる。また、有機系ホール輸送材料としては、高分子系と低分子系のものが挙げられ、高分子系のものとしては、例えばポリビニルカルバゾール、ポリアミン、有機ポリシラン等が挙げられる。また、低分子系のものとしては、例えばトリフェニルアミン誘導体、スチルベン誘導体、ヒドラゾン誘導体、フェナミン誘導体等が挙げられる。この中でも有機ポリシランは、従来の炭素系高分子と異なり、主鎖のSiに沿って非局化されたσ電子が光伝導に寄与し、高いホール移動度を有するため、好ましい(Phys. Rev. B, 35, 2818(1987))。
【0090】
(導電性支持体)
図1に示すように、本発明の光電変換素子には、導電性支持体1上には多孔質の半導体微粒子22に増感色素21が吸着された感光体層2が形成されている。後述する通り、例えば、半導体微粒子の分散液を導電性支持体に塗布・乾燥後、本発明の色素溶液に浸漬することにより、感光体層2を製造することができる。
【0091】
導電性支持体1としては、金属のように支持体そのものに導電性があるものか、又は表面に導電膜層を有するガラスや高分子材料を使用することができる。導電性支持体1は実質的に透明であることが好ましい。実質的に透明であるとは光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることが好ましく、80%以上が特に好ましい。導電性支持体1としては、ガラスや高分子材料に導電性の金属酸化物を塗設したものを使用することができる。このときの導電性の金属酸化物の塗布量は、ガラスや高分子材料の支持体1m当たり、0.1〜100gが好ましい。透明導電性支持体を用いる場合、光は支持体側から入射させることが好ましい。好ましく使用される高分子材料の一例として、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAR)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ等を挙げることができる。導電性支持体1上には、表面に光マネージメント機能を施してもよく、例えば、特開2003−123859記載の高屈折膜及び低屈性率の酸化物膜を交互に積層した反射防止膜、特開2002−260746記載のライトガイド機能が上げられる。
【0092】
この他にも、金属支持体も好ましく使用することができる。その一例としては、チタン、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、ステンレス、銅を挙げることができる。これらの金属は合金であってもよい。さらに好ましくは、チタン、アルミニウム、銅が好ましく、特に好ましくは、チタンやアルミニウムである。
【0093】
(半導体微粒子分散液)
本発明においては、半導体微粒子以外の固形分の含量が、半導体微粒子分散液全体の10質量%以下よりなる半導体微粒子分散液を前記導電性支持体1に塗布し、適度に加熱することにより、多孔質半導体微粒子塗布層を得ることができる。
【0094】
半導体微粒子分散液を作製する方法としては、ゾル・ゲル法の他に、半導体を合成する際に溶媒中で微粒子として析出させそのまま使用する方法、微粒子に超音波などを照射して超微粒子に粉砕する方法、又はミルや乳鉢などを使って機械的に粉砕しすり潰す方法、等が挙げられる。分散溶媒としては、水及び各種の有機溶媒のうちの一つ以上を用いることができる。有機溶媒としては、メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール,シトロネロール,ターピネオールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類、ジクロロメタン、アセトニトリル等が挙げられる。
【0095】
分散の際、必要に応じて例えばポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのようなポリマー、界面活性剤、酸、又はキレート剤等を分散助剤として少量用いてもよい。しかし、これらの分散助剤は、導電性支持体上へ製膜する工程の前に、ろ過法や分離膜を用いる方法、あるいは遠心分離法などによって大部分を除去しておくことが好ましい。半導体微粒子分散液は、半導体微粒子以外の固形分の含量が分散液全体の10質量%以下とすることができる。この濃度は好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは1%以下である。さらに好ましくは0.5%以下であり、特に好ましくは0.2%である。すなわち、半導体微粒子分散液中に、溶媒と半導体微粒子以外の固形分を半導体微分散液全体の10質量%以下とすることができる。実質的に半導体微粒子と分散溶媒のみからなることが好ましい。
【0096】
半導体微粒子分散液の粘度が高すぎると分散液が凝集してしまい製膜することができず、逆に半導体微粒子分散液の粘度が低すぎると液が流れてしまい製膜することができないことがある。したがって分散液の粘度は、25℃で10〜300N・s/mが好ましい。さらに好ましくは、25℃で50〜200N・s/mである。
【0097】
半導体微粒子分散液の塗布方法としては、アプリケーション系の方法としてローラ法、ディップ法等の常塗を使用することができる。またメータリング系の方法としてエアーナイフ法、ブレード法等を使用することができる。
【0098】
半導体微粒子層全体の好ましい厚さは0.1μm〜100μmである。半導体微粒子層の厚さはさらに1μm〜30μmが好ましく、2μm〜25μmがより好ましい。半導体微粒子の支持体1m当りの担持量は0.5g〜400gが好ましく、5g〜100gがより好ましい。なお、上記微粒子分散液を塗布して製膜する方法は特に限定されず、公知の方法を適宜適用すればよい。
【0099】
増感色素21の使用量は、全体で、支持体1m当たり0.01ミリモル〜100ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1ミリモル〜50ミリモル、特に好ましくは0.1ミリモル〜10ミリモルである。この場合、本発明にかかる増感色素21の使用量は5モル%以上とすることが好ましい。また、増感色素21の半導体微粒子22に対する吸着量は半導体微粒子1gに対して0.001ミリモル〜1ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5ミリモルである。このような色素量とすることによって、半導体における増感効果が十分に得られる。これに対し、色素量が少ないと増感効果が不十分となり、色素量が多すぎると、半導体に付着していない色素が浮遊し増感効果を低減させる原因となる。
【0100】
(対極)
対極4は、光電気化学電池の正極として働くものである。対極4は、通常前述の導電性支持体1と同義であるが、強度が十分に保たれるような構成では対極の支持体は必ずしも必要でない。ただし、支持体を有する方が密閉性の点で有利である。対極4の材料としては、白金、カーボン、導電性ポリマー、などがあげられる。好ましい例としては、白金、カーボン、導電性ポリマーが挙げられる。対極4の構造としては、集電効果が高い構造が好ましい。好ましい例としては、特開平10−505192号公報などが挙げられる。
【0101】
(受光電極)
受光電極5は、入射光の利用率を高めるなどのためにタンデム型にしてもよい。好ましいタンデム型の構成例としては、特開2000−90989、特開2002−90989号公報等に記載の例が挙げられる。受光電極5の層内部で光散乱、反射を効率的に行う光マネージメント機能を設けてもよい。好ましくは、特開2002−93476号公報に記載のものが挙げられる。
【0102】
導電性支持体1と多孔質半導体微粒子層の間には、電解液と電極が直接接触することによる逆電流を防止する為、短絡防止層を形成することが好ましい。好ましい例としては、特開平06−507999号公報等が挙げられる。受光電極5と対極4の接触を防ぐ為に、スペーサーやセパレータを用いることが好ましい。好ましい例としては、特開2001−283941号公報が挙げられる。
【0103】
セル、モジュールの封止法としては、ポリイソブチレン系熱硬化樹脂、ノボラック樹脂、光硬化性(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ樹脂、アイオノマー樹脂、ガラスフリット、アルミナにアルミニウムアルコキシドを用いる方法、低融点ガラスペーストをレーザー溶融する方法などが好ましい。ガラスフリットを用いる場合、粉末ガラスをバインダーとなるアクリル樹脂に混合したものでもよい。
【実施例】
【0104】
以下に実施例に基づき本発明について更に詳細に説明するが、本発明がこれに限定して解釈されるものではない。
【0105】
<色素の合成例>
スキーム1で示したルートで中間体D4−5を合成した。
【0106】
【化21】

【0107】
中間体D4-5を用いて、文献 Chem. Commun., 2009, 5844.と同様に、Dye 4を合成した。
同様に、Dye 1〜Dye 3、及びDye 5〜Dye 11を合成した。
【0108】
(実施例1)
光電極を構成する半導体電極の半導体層又は光散乱層形成するための種々のペーストを調製し、このペーストを用いて、色素増感太陽電池を作製した。
[ペーストの調製]
まず、光電極を構成する半導体電極の半導体層又は光散乱層形成するためのペーストを以下の表Aの組成で調製した。なお以下の調製ではTiOを媒体に入れて撹拌することによりスラリーを調製し、そこに増粘剤を加え、混練することでペーストを得た。
【0109】
【表A】

TiO粒子1:アナターゼ、平均粒径;25nm
TiO粒子2:アナターゼ、平均粒径;200nm
棒状TiO粒子S1:アナターゼ、直径;100nm、アスペクト比;5
棒状TiO粒子S2:アナターゼ、直径;30nm、アスペクト比;6.3
棒状TiO粒子S3:アナターゼ、直径;50nm、アスペクト比;6.1
棒状TiO粒子S4:アナターゼ、直径;75nm、アスペクト比;5.8
棒状TiO粒子S5:アナターゼ、直径;130nm、アスペクト比;5.2
棒状TiO粒子S6:アナターゼ、直径;180nm、アスペクト比;5
棒状TiO粒子S7:アナターゼ、直径;240nm、アスペクト比;5
棒状TiO粒子S8:アナターゼ、直径;110nm、アスペクト比;4.1
棒状TiO粒子S9:アナターゼ、直径;105nm、アスペクト比;3.4
板状マイカ粒子P1 :直径;100nm、アスペクト比;6
CB:セルロース系バインダー
【0110】
以下に示す手順により、特開2002−289274号公報に記載の図5に示した光電極12と同様の構成を有する光電極を作製し、更に、光電極を用いて、同公報図3の光電極以外は色素増感型太陽電池20と同様の構成を有する10×10mmのスケールの色素増感型太陽電池1を作製した。具体的な構成は添付の図2に示した。41が透明電極、42が半導体電極、43が透明導電膜、44が基板、45が半導体層、46が光散乱層、40が光電極,20が色素増感型太陽電池、CEが対極、Eが電解質、Sがスペーサーである。
【0111】
ガラス基板上にフッ素ドープされたSnO導電膜(膜厚;500nm)を形成した透明電極を準備した。そして、このSnO導電膜上に、上述のペースト2をスクリーン印刷し、次いで乾燥させた。その後、空気中、450℃の条件のもとで焼成した。更に、ペースト4を用いてこのスクリーン印刷と焼成とを繰り返すことにより、SnO導電膜上に図2に示す半導体電極42と同様の構成の半導体電極(受光面の面積;10mm×10mm、層厚;10μm、半導体層の層厚;6μm、光散乱層の層厚;4μm、光散乱層に含有される棒状TiO粒子1の含有率;30質量%)を形成し、増感色素を含有していない光電極を作製した。
【0112】
次に、半導体電極に色素を以下のようにして吸着させた。先ず、マグネシウムエトキシドで脱水した無水エタノールを溶媒として、これに下記表1に記載の色素を、その濃度が3×10−4mol/Lとなるように溶解し、色素溶液を調製した。次に、この溶液に半導体電極を浸漬し、これにより、半導体電極に色素が約1.5×10−7mol/cm吸着し、光電極10を完成させた。
【0113】
次に、対極として上記の光電極と同様の形状と大きさを有する白金電極(Pt薄膜の厚さ;100nm)、電解質Eとして、ヨウ素及びヨウ化リチウムを含むヨウ素系レドックス溶液を調製した。更に、半導体電極の大きさに合わせた形状を有するデュポン社製のスペーサーS(商品名:「サーリン」)を準備し、特開2002−289274号公報に記載の図3に示すように、光電極40と対極CEとスペーサーSを介して対向させ、内部に上記の電解質を充填して色素増感型太陽電池を完成させた。
【0114】
(試験方法)
電池特性試験を行い、色素増感太陽電池について、変換効率ηを測定した。電池特性試験は、ソーラーシミュレーター(WACOM製、WXS−85H)を用い、AM1.5フィルターを通したキセノンランプから1000W/mの疑似太陽光を照射することにより行った。I−Vテスターを用いて電流−電圧特性を測定し、変換効率(η/%)等を求めた。
また、400〜900nmにおけるIPCE(量子収率)をペクセル社製のIPCE測定装置にて測定した。(850nmにおけるIPCEを下記の表1に示す。)
下記の各項目について評価・判定を行った。すべてにおいてA以上であると市場において高い評価を得ることができる。
【0115】
(初期の変換効率)
AA:7.5%以上のもの
A: 7.0%以上7.5%未満のもの
B: 5.0%以上7.0%未満のもの
C: 5.0%未満のもの
【0116】
(850nmのIPCE)
AA:10%以上のもの
A: 8%以上10%未満のもの
B: 6%以上8%未満のもの
C: 6%未満のもの
【0117】
(暗所保存後の変換効率の降下率[γd])
80℃、300時間暗所経時後の光電変換効率(η)を測定した。このηの初期の変換効率(η)に対する降下率(γd:下式)を求めて評価を行った。
式: 降下率(γd)=(η−η)/(η
AA:γdが5%未満のもの
A: γdが5%以上10%未満のもの
B: γdが10%以上20%未満のもの
C: γdが20%以上のもの
【0118】
(照射後の変換効率の降下率[γL])
500時間連続光照射後の変換効率の光電変換効率(η)を測定した。このηの初期の変換効率(η)に対する降下率(γL:下式)を求めて評価を行った。
式: 降下率(γL)=(η−η)/(η
AA:γLが5%未満のもの
A: γLが5%以上10%未満のもの
B: γLが10%以上15%未満のもの
C: γLが15%以上のもの
【0119】
結果を下表1に示す。
【0120】
【表1】

【0121】
比較色素
【化99】

比較用色素Aは国際特許公開98/50393号パンフレットに記載のルテニウム錯体色素である。
【0122】
上記の結果から分かるとおり、本発明の色素によれば、長波長領域におけるIPCE及び変換効率、その他の電流・電圧特性、さらには耐久性について従来の色素を凌駕する優れた結果を示すことが分かる。なかでも、複環リガンド(式L2)のピリジン環における、4位に特定の置換基を有するもの(試験Dye1,4)が、顕著な効果を奏していた。
また、併用色素(2)との組合せ効果についても、従来の色素A,Bではかえって悪化する結果になっていたが(初期の変換効率、耐久性も判定の序列では同位であるが、悪化する傾向が見られた)、本発明の色素については良好な組合せ効果が確認された(試験201−203参照)。
【0123】
なお、上記ペースト2以外のペースト1〜14についても同様に試験を行ない、本発明の色素によれば良好な性能が得られることを確認した。特に、ペースト10、13が光電変換効率及び耐久性において高い性能を示した。
【0124】
(実施例2)
以下に示す手順により、特開2010−218770公報に記載の図1に示したものと同様の構成を有する色素増感太陽電池を作成した。具体的な構成は添付の図3に示した。51が透明基板、52が透明導電膜、53がバリア層、54がn型半導体電極、55がp型半導体層、56がp型半導体膜、57が対極(57aが対極の突起部)である。
【0125】
20mm×20mm×1mmの透明基板51としての透明ガラス板に、透明導電膜52としてのSnO2:F(フッ素ドープ酸化スズ)をCVDにより形成した透明導電(Transparent Conductive Oxide:TCO)ガラス基板を用意した。
次に、Ti(OCH(CH3)2)4と水とを容積比4:1で混合した溶液5mlを、塩酸塩でpH1に調整されたエチルアルコール溶液40mlと混合し、TiO2前駆体の溶液を調製した。そして、この溶液を、TCOガラス基板上に1000rpmでスピンコートし、ゾル−ゲル合成を行った後、真空下で78℃、45分間加熱し、450℃、30分間のアニーリングを行い、酸化チタン薄膜からなるバリア層(53)を形成した。
【0126】
一方、平均粒子径18nm(粒子径:10nm〜30nm)のアナターゼ型の酸化チタン粒子を、エタノール及びメタノールの混合溶媒(エタノール:メタノール=10:1(体積比))に均一に分散させて酸化チタンのスラリーを調製した。この時、酸化チタン粒子は、混合溶媒100質量%に対し、10質量%の割合でホモジナイザーを用いて均質に分散させた。
次に、エタノールに、粘度調整剤としてのエチルセルロースを濃度が10質量%となるように溶解させた溶液と、アルコール系有機溶媒(ターピネオール)とを上記で調製した酸化チタンのスラリーに添加し、再度、ホモジナイザーで均質に分散させた。この後、ターピネオール以外のアルコールをエバポレータで除去し、ミキサーで混合して、ペースト状の酸化チタン粒子含有組成物を調製した。なお、調製した酸化チタン粒子含有組成物の組成は、酸化チタン粒子含有組成物を100質量%として、酸化チタン粒子が20質量%、粘度調整剤が5質量%であった。
【0127】
このようにして調製した酸化チタン粒子含有組成物を、上記で形成したバリア層53の上に、スクリーン印刷で所定のパターンを形成するように塗布し、150℃で乾燥した後、電気炉内で450℃に加熱して、TCOガラス基板上にn型半導体電極54が積層された積層体を得た。次いで、この積層体を硝酸亜鉛(ZnNO3)の溶液に一晩浸漬した後、450℃、45分間加熱して表面処理を行った。この後、表1に示す各種色素を用いて、そのエタノール溶液(増感色素の濃度:3×10-4mol/L)に、表面処理した積層体を浸漬し、25℃で40時間放置して、n型半導体電極54の内部に色素を吸着させた。
【0128】
続いて、アセトニトリルにCuIを添加して飽和溶液を作製し、その上澄み液を6ml取り出したものに、15mgの1−メチル−3−エチルイミダゾリウムチオシアネートを添加してp型半導体の溶液を調整した。そして、80℃に加熱したホットプレート上に、上記のn型半導体電極54に色素を含有させた後の積層体を配置し、n型半導体電極54にp型半導体の溶液をピペットで滴下塗布して浸透させ、そのまま1分間放置して乾燥させて、p型半導体層55を作製した。
【0129】
次に、厚み1mmの銅板を1M濃度の塩酸にて洗浄し、さらに無水エタノールで洗浄した後、大気中で500℃、4時間加熱し、最大径100nmで高さ10μmのCuOナノワイヤ(突起部57a)が成長した銅板を作製した。この銅板を密閉容器内にヨウ素結晶と封入し、60℃の恒温槽で1時間加熱して、表面に薄いCuI層(p型半導体膜56)をコーティングされた対極57を作製した。そして、この対極57を、上記で作製した積層体に、p型半導体層55の側からに押し付けて積層した。
【0130】
このように作製した色素増感型太陽電池について実施例1と同様にして初期の変換効率を試験した。その結果、本発明の色素によれば、いずれも良好な性能、改良効果が得られることを確認した。
【0131】
(実施例3)
以下の方法で、光電極にCdSe量子ドット化処理を行い、コバルト錯体を用いた電解液を使用して、図4に示す色素増感太陽電池を作成した。
【0132】
FTOガラス(1)、日本板硝子(株)社製 表面抵抗:8Ωsq−1)表面にチタン(IV)ビス(アセチルアセトナート)ジイソプロポキシドのエタノール溶液を16回噴霧し、450℃で30分間以上焼成した。この基板に20nm−TiOで約2.1μmの透明層と60nm−TiO(昭和タイタニウム(株)社製)で約6.2μmの光散乱層をスクリーン印刷で積層し、TiCl水溶液で後処理を行い、FTO/TiOフィルム2を作成した。
【0133】
このFTO/TiOフィルムを不活性ガス雰囲気下のグローブバック内で0.03MのCd(NOエタノール溶液に30秒間浸した後、連続して0.03Mのセレナイドエタノール溶液に30秒間浸した。その後、エタノール中で1分以上洗浄し、過剰のプレカーサーを除去して乾燥した。この浸漬→洗浄→乾燥過程を5回繰り返して酸化チタン層(22)にCdSe量子ドット(23)を成長させ、CdTeで表面安定化処理を行うことにより、CdSe処理した光電極を作成した。
セレナイド(Se2−)はArやN雰囲気下、0.068gのNaBH(0.060Mの濃度となる様に)を0.030Mの SeOエタノール溶液に加える事によって系内で調整した。
【0134】
CdSe処理した光電極を色素溶液に4時間浸漬し光電極に色素21を吸着後、この光電極と対極(4、FTOガラス上にヘキサクロロ白金酸2−プロパノール溶液(0.05M)を400℃で20分Ptを化学析出したもの)を、25μmの厚みのサーリン(デュポン(株)社製)リングを挟み込んで組み立て、熱溶解によりシールをした。コバルト錯体を用いた電解液(0.75M Co(o−phen)2+、0.075M Co(o−phen)3+、0.20M LiClOのアセトニトリル/エチレンカーボネート(4:6/v:v)溶液)を対極側面に予め開けた穴より電極間の隙間3に注入し、その後その穴をバイネル(デュポン(株)社製)シートと薄いガラスのスライドで熱によって閉じて、色素増感太陽電池セル10を作製した。
電解液に加えたコバルト錯体はChemical Communications、46巻、8788頁−8790頁(2010年)記載の方法で調整した。
【0135】
このように作製した色素増感型太陽電池について実施例1と同様にして初期の変換効率を試験した。その結果、本発明の色素によれば、いずれも良好な性能、改良効果が得られることを確認した。
【0136】
特開2004−146425号公報の図2に示されたセルを利用した太陽電池、特開2004-152613号公報の図1に示された光電極を利用した太陽電池、特開2000-90989号公報の実施例1と同様に作成したタンデムセルを利用した太陽電池、特開2003−217688号公報の図1に示した色素増感型太陽電池を作製して上記と同様の試験を行った。その結果、本発明の色素によれば、いずれも良好な性能が得られることを確認した。
その他に、特開2002−367686公報の段落[0053]〜[0076]の実験や特開2003−323818公報の段落[0043]〜[0055]の実験、特開2001−43907公報の段落[0073]〜[0090]の実験、特開2000−340269公報の段落[0014]〜[0022]の実験、特開2005−85500公報の段落[0022]〜[0066]の実験、特開2004−273272公報の段落[0014]〜[0016]の実験、特開2000−323190公報の段落[0155]〜[0167]の実験、特開2000−228234公報の段落[0137]〜[0147]の実験、特開2001−266963公報の段落[0085]〜[0092]の実験、特開2001−185244公報の段落[0036]〜[0045]の実験、特表2001−525108公報の59ページ〜60ページの実施例6の実験、特開2001−203377公報の段落[0023]〜[0026]の実験、特開2000−100483公報の段落[0046]〜[0054]の実験、特開2001−210390公報の段落[0043]〜[0055]の実験、特開2002−280587公報の段落[0080]〜[0086]の実験、特開2001−273937公報の段落[0089]〜[0104]の実験、特開2000−285977公報の段落[0160]〜[0171]の実験、特開2001−320068公報の段落[0105]〜[0116]の実験と、本発明化合物との組合せにおいて良好な結果が確認された。
【符号の説明】
【0137】
1 導電性支持体
2 感光体層
21 色素
22 半導体微粒子
23 CdSe量子ドット
3 電荷移動体層
4 対極
5 受光電極
6 回路
10 光電変換素子
100 光電気化学電池
M 電動モーター(扇風機)
【0138】
41 透明電極
42 半導体電極
43 透明導電膜
44 基板
45 半導体層
46 光散乱層
40 光電極
20 色素増感型太陽電池
CE 対極
E 電解質
S スペーサー
51 透明基板
52 透明導電膜
53 バリア層
54 n型半導体電極
55 p型半導体層
56 p型半導体膜
57 対極
57a 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に、色素が吸着された半導体微粒子の層を有する感光体と、電荷移動体と、対極とを配設した積層構造をもつ光電変換素子であって、前記色素として下記式(1)で表される金属錯体色素を用いる光電変換素子。
ML12X (1)
[式中、Mはルテニウム、オスミウム、鉄、レニウム、およびテクネチウムから選ばれた遷移金属を表す。Xは、NCS、Cl、Br、I、CN、NCO、HO、またはNCNを表す。Lは下記式(L1)で表される3座の配位子を表し、L2は下記式(L2−1)〜(L2−5)のいずれかで表される2座の配位子を表す。]
【化1】

[式(L1)において、Za、Zb及びZcはそれぞれ独立に、5又は6員環を形成しうる非金属原子群を表す。ただし、Za、Zb及びZcが形成する環のうち少なくとも1つは酸性基を有する。]
【化2】

[式中、Gは下記式(G1−1)〜(G1−6)のいずれかで表される構造を示し、Gは、下記式(G2−1)〜(G2−3)のいずれかで表される構造を示す。Rは置換基を表す。n1は0〜3の整数を表す。n2は0〜5の整数を表す。]
【化3】

[式中、R1〜Rは、水素原子、アルキル基、ヘテロアリール基、アリール基、COOH、PO(OH)、PO(OR)(OH)、又はCO(NHOH)を表す。ここでRはアルキル基、ヘテロアリール基、又はアリール基を表す。*は結合手を表す。]
【請求項2】
前記L2が式(L2−1)又は(L2−2)で表される請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記Gが(G1−1)、(G1−2)、又は(G1−5)で表される請求項1又は2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記Gが(G2−1)又は(G2−2)で表される請求項1〜3のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記感光体が下記式(2)で表される色素をさらに含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
MzLm3m4mY・CI (2)
[式(2)において、Mzは金属原子を表す。Lは下記式(L3)で表される配位子を表す。Lは下記式(L4)で表される配位子を表す。Yは1座又は2座の配位子を表す。m3は0〜3の整数を表す。m4は1〜3の整数を表す。mYは0〜2の整数を表す。CIは電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。]
【化4】

(式(L3)において、Acは酸性基を表す。Rは置換基を表す。Rはアルキル基又は芳香環基を表す。e1及びe2は0〜5の整数を表す。L及びLは共役鎖を表す。e3は0又は1を表す。fは0〜3の整数を表す。gは0〜3の整数を表す。)
【化5】

(式(L4)において、Zd、Ze及びZfは5又は6員環を形成しうる原子群を表す。hは0又は1を表す。ただし、Zd、Ze及びZfが形成する環のうち少なくとも1つは酸性基を有する。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子を用いた光電気化学電池。
【請求項7】
下記一般式(1)で表される色素。
ML12X (1)
[式中、Mはルテニウム、オスミウム、鉄、レニウム、およびテクネチウムから選ばれた遷移金属を表す。Xは、NCS、Cl、Br、I、CN、NCO、HO、またはNCNを表す。Lは下記式(L1)で表される3座の配位子を表し、L2は下記式(L2−1)〜(L2−5)のいずれかで表される2座の配位子を表す。
【化6】

式(L1)において、Za、Zb及びZcはそれぞれ独立に、5又は6員環を形成しうる非金属原子群を表す。ただし、Za、Zb及びZcが形成する環のうち少なくとも1つは酸性基を有する。
【化7】

式(L2−1)〜(L2−5)中、Gは下記式(G1−1)〜(G1−6)のいずれかで表される構造を示し、Gは、下記式(G2−1)〜(G2−3)のいずれかで表される構造を示す。
【化8】

式中、R1〜Rは、水素原子、アルキル基、ヘテロアリール基、アリール基、COOH、PO(OH)、PO(OR)(OH)、又はCO(NHOH)を表す。ここでRはアルキル基、ヘテロアリール基、又はアリール基を表す。*は結合手を表す。]

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−72080(P2013−72080A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214663(P2011−214663)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「太陽光発電システム次世代高性能技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】