説明

光電変換素子

【課題】 フレキシブル化の環境にあっても高い光電変換効率で安定した太陽光発電を行い得る太陽電池の提供。
【解決手段】 一定の間隔を隔てて対向する電極対1と、当該電極対1間の単位セル領域4に充満する電解液2と、当該電極対間で単位セル領域4に電解液2を密封するスペーサ
3とで構成され、スペーサ3は、単位セル領域4に面する高空孔率部3aと高空孔率部3aに続いて単位セル領域4からの電解液2の流出を抑制する低空孔率部3bを備えることを特徴とする光電変換素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い光電変換効率が得られる太陽電池など光電変換素子の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高い光電変換効率を得るために、固体電解質よりも電解液を対となる電極間に充填した太陽電池が紹介されているが、電解液の液漏れを防止する目的で、電解液を充満した不織布等の多孔質支持体を当該電極間に充填する手法が案出された(例えば下記特許文献4参照)。また、単に、電極間に多孔質支持体を介在させるだけでは、フレキシブル化した場合に反りや変形で内部短絡を発生し易いという問題がある他、イオン発生効率が阻害され光電変換効率が悪化するという問題があること等から、多孔質支持体の厚さや空隙率、若しくは使用する繊維のデニール等を内部短絡が発生しない様な措置を施した多孔質支持体を電極間に充填する手法が案出された(例えば下記特許文献1及び特許文献2参照)。
ところが、その様な手法では、多孔質支持体によって電解液中におけるイオン移動が阻害されるという問題が生じたことから、多孔質支持体を介在しない構造を採る替わりに電極間に適宜スペーサを介在させ内部短絡を防止する構成も試みられた(例えば下記特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−40827号公報
【特許文献2】特開2006−190632号公報
【特許文献3】特開2010−225295号公報
【特許文献4】特開2001−345126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構造を採っても、電解液の発散による減少や、フレキシブル化による電極間の電解液量の増減によって、光電変換効率の不安定さは解消できないという問題が解決されないことから、更なる改良を以って、より安定した光電変換が得られる太陽電池の構造を得ることが求められていた。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みて成されたものであって、フレキシブル化の環境にあっても高い光電変換効率で安定した太陽光発電を行い得る太陽電池の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために成された本発明による光電変換素子は、一定の間隔を隔てて対向する電極対と、当該電極対間の単位セル領域に充満する電解液と、当該電極対間で単位セル領域に電解液を密封するスペーサとで構成されたものであって、当該スペーサが、単位セル領域に面する高空孔率部と、当該高空孔率部に続いて単位セル領域からの電解液の流出を抑制する低空孔率部を備え、全体として電解液の流出を防止する構成であることを特徴とする。
【0007】
複数の電極対を備える光電変換素子を構成する場合においては、前記電極対における一方の電極を複数の電極対の共通電極として備えた構造を採用することができ、その結果、複数単位のセルを一体化したサンドイッチ構造や円筒構造等の複合光電変換素子を構成することができる。
【0008】
その様な構成を採る場合の共通電極には、その表面に前記スペーサを構成する複数の線条体を等間隔で平行に定着して備える構造を採ることができ、当該構造を得る手法として、例えば、共通電極の表面に前記スペーサを構成する線条体を螺旋状に巻設して備える構造を採ることもできる。
前記線条体が、前記高空孔率部と低空孔率部を備えたスペーサとしての機能を奏するための構成として、例えば、芯部に低空孔率部を備え、芯部を取り巻く外皮部として高空孔率部を備える構造を採用することができる。
【0009】
電極の構造として、前記電極対の一方にカーボン電極を用い、電解液に面する側がその反対側に比較して空孔を高密度に備える構造や、電解液に面する側がその反対側に比較してカーボンを高密度に含有する構造を採用することができる。
【発明の効果】
【0010】
電極対間の単位セル領域に電解液を充満する構成を採ることによって、電極間に多孔質支持体を置く事等による電解液中のイオン移動の阻害要因を回避でき、電極対間に、単位セル領域に電解液を密封するスペーサを介在することにより、フレキシブル化にあっても内部短絡を防止できる。
【0011】
また、当該スペーサを、単位セル領域に面する高空孔率部と、当該高空孔率部に続いて単位セル領域からの電解液の流出を抑制する低空孔率部を備え、全体として電解液の流出を防止する構成を採ることによって、電解液の枯渇と漏れを防止する機能を与える他、光電変換素子の変形に応じて単位セル領域内の電解液を適正量となる様に補充・排出する機能を与えることができる。
【0012】
前記電極対における一方の電極を複数の電極対の共通電極として介在し複数単位のセルを一体化した複合光電変換素子とすることによって、単位面積等当たりの集積度を高めることができる。単位セル領域は、前記スペーサで仕切ることができ、その際、当該共通電極については、その表面に前記スペーサを構成する複数の線条体を等間隔で平行に定着して備える構成を採ることができる。共通電極本体の表面に前記線条体を螺旋状に巻設する構成を採れば、共通電極の寸法に合わせて線条体を裁断する手間を省くことができる。
【0013】
前記線条体の構造を、芯部に低空孔率部を備え、芯部を取り巻く外皮部として高空孔率部を備える構造とすることによって、共通電極に線条体を定着する際に、線条体の方向に配慮する必要がなく製造上の便宜となる。
【0014】
前記電極対の一方にカーボン電極を用いることによって導電性を上げて電子の移動を円滑にすることができる、加えて、電解液に面する側がその反対側に比較して空孔を高密度に備える構造、又は電解液に面する側がその反対側に比較してカーボンを高密度に含有する構造を備えることによって、湾曲する際におけるベース基盤への追随性が良好となり、ベース基板からの剥離やひび割れを抑制することができる。
また、電極における電解液に面する側の空孔を高密度にすることによって、前記スペーサの高空孔率部と同様の効果を得ることができる。
【0015】
更に、上記いずれかに記載の光電変換素子を連結してなる光電変換素子を形成することもでき、その際、当該光電変換素子を構成する各電極に導電性を有するファスニング手段を備えておけば、相接続する光電変換素子が具備する全てのセルが直列接続又は並列接続となる様に、各々のファスニング手段を連結することによって、配設面積に応じて連結数を適宜増減出来る他、連結した光電変換素子を容易に交換できることから、保守上の便宜にもなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1(A)(B)(C)】本発明による光電変換素子の一例(第一の実施の形態)を示す(A):横断面図、(B):縦断面図、(C):(A)又は(B)のA−A矢視断面図である。
【図2(A)(B)(C)(D)(E)(F)】本発明による光電変換素子の一例(第三の実施の形態)を示す(A):横断面図、(B):(A)の要部拡大図、(C):ベース基板ユニットの平面図、(D):共通電極及びスペーサの側面図、(E):ベース基板ユニットの縦断面図、(F):共通電極及びスペーサの横断面図である。
【図3(A)(B)(C)】本発明による光電変換素子の、(A)(B):第四の実施の形態一例、(C):第五の実施の形態の一例の構造を示す斜視図である。
【図4(A)(B)】本発明による光電変換素子の第四の実施の形態の変形例を示す横断面図及びその要部(一点鎖線円部)の拡大図である。
【図5(A)(B)(C)(D)】本発明による光電変換素子のスペーサとして用いる線条体の一例を示す定常状態及びその変形状態における横断面図である。
【図6(A)(B)】本発明による光電変換素子に用いる共通電極へのスペーサの取付構造の例を示す側面図(複数条の平行配置)、斜視図(螺旋巻き)である。
【図7(A)(B)】本発明による光電変換素子の、(A):第三の実施の形態、(B):第二の実施の形態による実施態様例を示す斜視図である。
【図8(A)(B)】本発明による光電変換素子の実施態様例におけるファスニング手段による連結例を示す平面図である。
【図9】本発明による光電変換素子をブラインドに用いた実施態様例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明による光電変換素子の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1乃至図7に示す例は、本発明による光電変換素子を色素増感型太陽電池として構成した一例を示したものである。
これらの例は、一定の間隔を隔てて相互に対向する光電極1a及び対向電極1bと、当該電極対1間の単位セル領域4aに充満する電解液2と、当該電極対1間で単位セル領域4aに電解液2を密封するスペーサ3と、前記光電極1a及び対向電極1bの外側に被着したベース基板1d,1eとで構成される。
【0018】
当該例におけるベース基板1d,1eは、ガラスやPET(ポリエチレン・テレフタレート)等の合成樹脂等からなる絶縁性を持った透光性を有する薄板と、その内面に形成した透明導電膜(図示省略)からなる。表裏いずれかのベース基板1d,1eのうち、透光性を要しない基板には、チタンなど非透光性の金属板を用いても良い。
【0019】
光電極1aは、多孔質の半導体に増感色素を担持した多孔質半導体層(以下半導体層と記す)であって、一方のベース基板1dに形成した透明導電膜上に定着される(以下、当該ベース基板1dと光電極1aからなるユニットをベース基板ユニットXと記す)。半導体層には、酸化チタン等、前記特許文献1,2,又は4等に記載の公知な素材を用いれば良い。
対向電極1bは、カーボンや導電性を持った金属酸化物からなり、もう一方のベース基板(以下対向電極基板1eと記す)に形成した透明導電膜上に被着される(同特許文献参照)(以下、当該対向電極基板1eと対向電極1bからなるユニットを対向電極基板ユニットYと記す)。
以上の如く、ベース基板1dと光電極1aとの間に介在する導電膜として透光性の高い被膜を採用することによって、光が光電極1aへ良好に到達し、色素の励起による光電変換作用が促されることとなる。
【0020】
電解液2は、電解質を溶媒で溶解した液体である。電解質は、酸化体と還元体からなる酸化還元系物質が溶媒に含まれることとなるものであって、例えば、塩素化合物やヨウ素化合物など同特許文献等に記載の公知な素材を用いれば良い。溶媒は、上記電解質を溶解できイオン伝導性に優れたものが望ましく、例えば、ジメチルカーボネートやジエチルカーボネートなど同特許文献等に記載の公知な素材を用いれば良い。
【0021】
スペーサ3は、弾性を持った合成樹脂からなる線条体であって、単数又は複数の発泡部分及び非発泡部分を、各々その長手方向に沿って略均等な幅で全長に亘って連続的に設けたものである(例えば図1参照)。発泡部分は、スペーサ3の全幅のうちの単位セル領域4に面して備え、当該単位セル領域4に面する高空孔率部3aと、より空孔率を減少させた低空孔率部3bを、各々その長手方向に沿って略均等な幅で全長に亘って連続的に備える。尚、発泡部及び非発泡部、並びに高空孔率部3a及び低空孔率部3bの分布は、空孔率について幅方向へ徐々に変化を与えた一体物でも良いし、異なる空孔率の部材を別途形成して組み合せたものでも良い。
【0022】
スペーサ3につき上記構成を採ることによって、その発泡部分で単位セル領域4を満たした上で過分な電解液2を吸収し、単位セル領域4を満たすに不足した電解液2を補給することができる(以下、当該作用を調量作用と記す)。同様の効果を得るにあたっては、当該スペーサ3と同様に、対向電極1bについても電解液2に面する側へ近づくに従って空孔率を高くする構造としてもよい。
【0023】
図1に示す第一の実施の形態は、単一セルからなる光電変換素子の一例を示したものである。
この例は、透明電極を被着したガラス板からなるベース基板1dに定着した光電極1a上に単位セル領域4を設定し、当該単位セル領域4の前後を印刷電極8、8で隔すと共に、当該単位セル領域4の左右を前記スペーサ3,3で隔し、当該単位セル領域4及びスペーサ3の発泡部分に電解液2を充填し、当該電解液2を満たした単位セル領域4を対向電極基板1eに被着した対向電極1bで封じたものである。
【0024】
当該例においては、光電極1aとして酸化チタン基板を用い、対向電極1bとしてカーボン電極を用いている。殊に、対向電極1bは、透明電極側から電解液2に面する側へ近づくに従って、カーボン粒子の含有密度を高くするする構造となっている。この構造は、カーボン粒子の含有率が高まるにしたがって電極の柔軟性が劣化することに鑑みたものである。この構造を得るにあたっては、対向電極1bの厚み方向の含有密度に変化を与えた一体物でも良いし、異なるカーボン含有率を有する部材を別途形成して組み合せたものでも良い。
【0025】
上記第一の実施の形態と同構造のセル5を横並びに複数配置した構造を採っても良い(以下第二の実施の形態と記す)。この例は、複数セル分の長さを有するベース基板1dに同じ長さの長尺な半導体層を光電極1aとして定着し、当該光電極1a上に複数セル分の単位セル領域4を賄えるセル領域(以下セル領域4aと記す)を設定し、当該セル領域4aの前後をベース基板1dと同じ長さの印刷電極8,8で隔すことによってベース基板ユニットXを形成すると共に、当該セル領域4aを単位セル領域4毎にスペーサ3で均等に区画し、当該単位セル領域4及びスペーサ3の発泡部分に電解液2を充填し、当該電解液2を満たした複数の単位セル領域4を、対向電極基板ユニットY、即ち、複数セル分の長さを有する対向電極基板1eに被着した同尺の対向電極1bで封じたものである(例えば図7(B)参照)。
【0026】
この例におけるスペーサ3は、隣接する二つのセル5,5について調量作用を奏する必要があるので、その全幅に亘って、例えば、発泡部分、非発泡部分、発泡部分の順序で配置する等の対照配置とし、各部分を各々スペーサ3の長手方向に沿って略均等な幅で全長に亘って連続的に設けたものとなる(例えば図2(D)又は図5(B)(D)参照)。
発泡部分は、スペーサ3の全幅のうちの外側(当該スペーサ3が隔する左右二つの単位セル領域4,4に面する側)に備え、両単位セル領域4,4に面する高空孔率部3aと、より空孔率を減少させた低空孔率部3bを、各々その長手方向に沿って略均等な幅で全長に亘って連続的に備える。当該構造によれば、発泡部分を以って前記調量作用を得ることができる他、左右両発泡部分に挟まれた非発泡部分の存在により、当該スペーサで区画される二つのセル5,5、間で電解液2の流通を防止することができる。
【0027】
前記第一の実施の形態又は第二の実施の形態は、図2若しくは図3(C)又は図7(A)の如く複層構造としても良い(以下第三の実施の形態と記す)。
当該例では、対向電極基板ユニットYからガラス板等からなる対向電極基板1eを除去した対向電極1b(以下共通電極1cと記す)の表裏を、図3(C)の如く一対のベース基板ユニットX,X(図2(C)(E))で挟む構造を採る。
【0028】
当該構成における共通電極1cは、その表面に定着されたスペーサ3を等間隔で平行に配置し(図2(D)(F))、当該スペーサ3及び前記印刷電極8で区画された単位セル領域4及び当該スペーサ3の発泡部分に電解液2を充填し、これらを気密性透明被膜9で覆う真空ラミネートによって、一の共通電極1cを複数のベース基板1dの対向電極として介在し複数の単位セル5を並列及び複層構造に一体化した複合光電変換素子たるセルユニットとして形成する(図2(A)(B)参照)。
【0029】
共通電極1cは、前記第一の実施の形態における対向電極1bと同様にカーボン電極等を採用する。共通電極1cの表面にスペーサ3を等間隔で平行に配置・定着する手法として、共通電極1cの表面に前記スペーサ3となる線条体を螺旋状に巻設する手法が挙げられる。図2(A)に示す例では、共通電極1cを板状に成形しているが、中空部を設けた筒状を採用しても良い。
【0030】
前記線条体は、図1(A)(C)又は図2(D)に示す構造を採っても良いが、図5(A)に示す様に、非発泡部分を芯3dとし、その周囲に低空孔率部3bを設けて芯部3cを形成し、更に、当該芯部3cの全周を取り巻く外皮部として高空孔率部3aを備える構造を採用しても良い。
当該構造における非発泡部、低空孔率部、及び高空孔率部3aの分布は、非発泡部の芯3dから外側へ近づくに従って徐々に空孔率を増加させた一体物でも良いし、異なる空孔率の部材を別途形成し、同様の空隙分布を構成する様に、樹木の年輪の如く複層構造に順次巻き付けたものでも良い。
【0031】
この様に、芯部3cと外皮部とで空孔率が異なる構造の線条体を採用することによって、共通電極1cとなる対向電極の表面に螺旋状に巻設する際の線条体の向きに配慮する必要がなくなり、巻設作業の際の張力を適正に調整するだけで、巻設後の当該線条体に対して、側方へのみ空孔率に変化を与えた構造の線条体(図2(D)参照)と同様の構造(図5(B)(D)参照)を与えることができる。尚、線条体の断面は、円形、楕円形、方形、その他の異形などから適宜選択すれば良い。
【0032】
前記第一の実施の形態又は第二の実施の形態が複数並走する構造(以下これらを第四の実施の形態と記す)を採用しても良い(図3参照)。
例えば、第二の実施の形態が複数並走する構造のベース基板ユニットXは、共通のベース基板1dに、一条の光電極1aを一対の印刷電極8,8で挟む配置で定着したベース電極セットSが、ダイシング等による切欠部を介在して複数列並ぶ構造を採る。
対向電極基板ユニットYにあっては、単一の対向電極基板1eに、前記各ベース電極セットSに対して対となる対向電極1bをダイシング等による切欠部を介在して複数列並べて定着した構造(図3(B)参照)や、全てのベース電極セットSについて共通の一体化した対向電極1bを定着した構造(図3(A)参照)を採る。
【0033】
当該セル領域4aを単位セル領域4幅毎に一連の線条体からなるスペーサ3で均等に区画し、一対の印刷電極8,8と隣接する一対のスペーサ3,3で区画した単位セル領域4及びスペーサ3の発泡部分に電解液2を充填し、当該電解液2を満たした複数の単位セル領域4を、前記対向電極基板ユニットYで封じ、これらを真空ラミネートすることによって、複数の単位セル5を縦横に整列された構造に一体化したセルユニットに形成する。
【0034】
当該第四の実施の形態を複層構造とする場合(以下第五の実施の形態と記す)は、前記第三の実施の形態と同様に、共通電極1cの表裏を一対のベース基板ユニットXで挟む構造を採る(例えば図3(C)参照)。当該例における共通電極1cは、前後にベース電極セットSが複数並んだ幅を有し、全てのベース電極セットSと向き合う面積を備える。当該共通電極1cの表面に、その前後の幅いっぱいに亘る長さのスペーサ3を、等間隔で平行に配置・定着する。この様に、スペーサ3を等間隔で平行に配置・定着する手法として、前記第三の実施の形態と同様に共通電極1cの表面に前記スペーサ3となる線条体を螺旋状に巻設する手法を採ることができる。
【0035】
また、前記第四の実施の形態(単層構造)の変形例として、ベース基板ユニットXを、前記ベース電極セットSを内向きにして各ベース電極セットSが並んでいる方向へ湾曲させ、対向電極基板ユニットYにあっては、共通電極1cを当該湾曲に倣う形状に成形し、各ベース電極セットSに対して共通の一体化した共通電極1cが密着する構造を採ることができる。
【0036】
当該実施の形態にあっても、各ベース電極セットSの光電極1aに面したセル領域4aを単位セル領域4幅毎に一連の線条体からなるスペーサ3で均等に区画し、一対の印刷電極8,8と、隣接する一対のスペーサ3,3で区画した単位セル領域4及びスペーサ3の発泡部分に電解液2を充填し、当該電解液2を満たした複数の単位セル領域4を、前記対向電極基板ユニットYで封じ、これらを真空ラミネートすることによって、複数の単位セル5を縦横に整列された構造に一体化したセルユニットに形成する。
【0037】
図4はその具体例のひとつであって、ベース基板ユニットXを円筒状に成形し、共通電極1cを、当該ベース基板ユニットXの中空部に嵌まる円柱状に成形したものである。
当該実施の形態にあっても、共通電極1cは、前記第一の実施の形態における対向電極1bと同様にカーボン電極等を採用する。スペーサ3は、共通電極1cの表面に等間隔で平行に配置・定着する。スペーサ3たる線条体を配置・定着する手法としては、等間隔で並行に配置される各線条体が各々分離している手法(例えば図6(A)参照)、又は共通電極1cの表面に前記スペーサ3となる線条体を螺旋状に巻設する手法(例えば図6(B)参照)を適宜選択して用いれば良い。図4(A)及び図6に示す例では、共通電極1cを柱状に成形しているが、中空部を設けた筒状を採用しても良い。
【0038】
前記第一乃至第四のいずれかに記載のセルユニットUを連結して光電変換機能を有するブラインドを構成することもできる(例えば図9参照)。
図7(A)は、図2(A)の如く、第二の実施の形態を共通の対向電極を介して二層構造としたセルユニットUを用いた一例を示すものである。
【0039】
当該例では、左右何れか一方から光電極1aの端子6aを引出し、他方から共通電極1cの端子6bを引き出すものであって、光電極1aを引き出す側にあっては、前後何れかの一方から表裏いずれか一方の端子6を引き出すと共に、他方から表裏残る他方の端子を引き出し、共通電極1cの端子6を引き出す側にあっては、前後双方から共通電極1cの端子6を引き出すこととする。
隣接するセルユニットUの各端子間の接続の便宜から、端子6の引き出し位置及び形状は、各セルユニットUの前後左右について対称となる様に設定する。
【0040】
当該構成を有する複数のセルユニットUを電気的に直列接続(例えば図7(A)参照)するには、同じセルユニットUを前後に並べた際に光電極1aと共通電極1cの端子同士が対応する配置となり、当該構成を有する複数のセルユニットUを電気的に並列接続(例えば図7(B)参照)するには、同じセルユニットUを前後に並べた際に光電極1aと光電極1a(共通電極1cと共通電極1c)の端子同士が対応する配置となるような配置で連結できる様に、各端子6には導電性を有するファスニング手段7を適宜付設する。
【0041】
ブラインドは、単層構造の第二の実施の形態を用いて構成することも可能である(例えば図7(B)参照)。その際も、例えば、左右何れか一方から光電極1aの端子6aを引出し、他方から対向電極1bの端子6bを引き出せばよい。
ファスニング手段7は、ボタン、アタッチメント、スライドファスナー、又は面ファスナー等、公用手段を用いれば良いが、端子6としての役割を果たすべく良好な導電性が要求される。
【0042】
以上の如くブラインドを形成すれば、光電変換によって得られた電力を有効に利用又は蓄電できることとなる他、各セルユニットUをファスニング機能によって容易に連結できることによって、ブラインドの構造上、電気配線を別途配線することなく、間口のサイズに応じて連結数を適宜調整することができ、故障したセルユニットUが生じた場合であっても極めて容易にセルユニットUの交換を行うことができる。
【符号の説明】
【0043】
1 電極対,1a 光電極,1b 対向電極,1c 共通電極,
1d ベース基板,1e ベース基板(対向電極基板),
2 電解液,
3 スペーサ,3a 高空孔率部,3b 低空孔率部,3c 芯部,3d 芯,
4 単位セル領域,4a セル領域,5 セル,
6 端子,6a 端子(光電極),6b 端子(対向電極又は共通電極),
7 ファスニング手段,8 印刷電極,9 気密性透明被膜,
S ベース電極セット,U セルユニット,
X ベース基板ユニット,Y 対向電極基板ユニット,


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の間隔を隔てて対向する電極対(1)と、当該電極対(1)間の単位セル領域(4)に充満する電解液(2)と、当該電極対(1)間で単位セル領域(4)に電解液(2)を密封するスペーサ(3)とで構成され、
スペーサ(3)は、単位セル領域(4)に面する高空孔率部(3a)と高空孔率部(3a)に続いて単位セル領域(4)からの電解液(2)の流出を抑制する低空孔率部(3b)を備えることを特徴とする光電変換素子。
【請求項2】
前記電極対(1)における一方の電極を複数の電極対(1)の共通電極(1c)として介在し複数単位のセル(5)を一体化した複合光電変換素子であって、当該共通電極(1c)は、その表面に前記スペーサ(3)を構成する複数の線条体を等間隔で平行に定着して備えることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記共通電極(1c)は、その表面に前記スペーサ(3)を構成する線条体を螺旋状に巻設して備えることを特徴とする前記請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記線条体は、芯部(3c)に低空孔率部(3b)を備え、芯部を取り巻く外皮部として高空孔率部(3a)を備えることを特徴とする前記請求項2又は請求項3のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記電極対(1)の一方にカーボン電極を用い、電解液(2)に面する側がその反対側に比較して空孔を高密度に備えることを特徴とする前記請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記電極対(1)の一方にカーボン電極を用い、電解液に面する側がその反対側に比較してカーボンを高密度に含有することを特徴とする前記請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の光電変換素子を連結してなる光電変換素子であって、
当該光電変換素子を構成する各端子(6)に導電性を有するファスニング手段(7)を備え、相接続する光電変換素子が具備する全てのセル(5)が直列接続又は並列接続となる様に、各々のファスニング手段を連結したことを特徴とする光電変換素子。


【図1(A)(B)(C)】
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【図2(A)(B)(C)(D)(E)(F)】
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【図3(A)(B)(C)】
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【図4(A)(B)】
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【図5(A)(B)(C)(D)】
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【図6(A)(B)】
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【図7(A)(B)】
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【図8(A)(B)】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−221921(P2012−221921A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90163(P2011−90163)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(591020445)立山科学工業株式会社 (71)
【出願人】(000236920)富山県 (197)
【Fターム(参考)】