説明

光電子検出器

【課題】構造が簡単で、組み立てが容易なオープンカウンタを提供すること。
【解決手段】断面略コの字状で、内面の底面3aとなる側が半円形に形成され、底面3aに対向する側が開口3bした第一クエンチング電極構成部材3と、第一クエンチング電極構成部材3の対象軸c−cとなる中心を通り、かつ第一クエンチング電極構成部材3の底面に偏した位置には線状の陽極4が配置され、また第一クエンチング電極構成部材3の開口3bには網状の平板の第二クエンチング電極構成部材7が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体表面から放射される光電子を検出するためのオープンカウンター、より詳細にはその電極構造に関する。
【背景技術】
【0002】
オープンカウンターは、空気を増倍ガスとして用い、大気中で低速電子の計数ができる気体電子増倍管で、大気に晒された固体表面の仕事関数、エキソ電子、金属や半導体表面の酸化膜の厚さ、磁気ディスク上に塗られた有機潤滑膜の厚さ等の測定に利用されている。
【0003】
このようなオープンカウンタは特許文献1に見られるように高電圧を印加する直線状の陽極と、陽極を中心とし同心状に配置された内側円筒及び外側円筒ならびにそれらの一部を構成する二重円筒形格子電極と、該二重円筒形格子電極の外側に配置されたシールド用陰極と、低速電子の陽極への到達に応答して一定時間内側円筒の電位を上昇させかつ外側円筒の電位を陰極の電位以下に下降させるパルス発生装置とから構成されている。
【0004】
これによれば従来の装置に比較して携帯が可能であるものの、電界強度の均一性を考慮するため、直線状の陽極と、陽極を中心とするように内側円筒及び外側円筒からなる電極構成部材をおのおのが同心状となるように高い位置精度で組み付ける必要上、組み立てに工数を必要としてコストの上昇を招くという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−211137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのよう問題に鑑みてなされたものであってその目的とするところは、組み立て作業が簡単なオープンカウンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、断面略コの字状で、内面の底面となる側が半円形に形成され、底面に対向する側を開口面した第一クエンチング電極構成部材と、前記第一クエンチング電極構成部材の対象軸となる中心を通り、かつ前記第一クエンチング電極構成部材の底面に偏した位置には線状の陽極が配置され、また前記第一クエンチング電極構成部材の開口面には網状の平板状の第二クエンチング電極構成部材が配置されている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば従来の二重円筒型オープンカウンタよりも低い電圧で作動可能であるととともに計数可能領域を拡大することができ、さらに組み立ての容易さによりコストの引き下げを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図(a)、(b)は、それぞれ本発明のオープンカウンタの一実施例を示す断面図である。
【図2】図(a)、(b)は、それぞれ本発明のオープンカウンタの要部を示す断面図と斜視図である。
【図3】本発明の一実施例の特性曲線である。
【図4】本発明の一実施例の特性曲線である。
【図5】本発明の一実施例の特性曲線である。
【図6】従来の二重円筒型オープンカウンタの特性曲線である。
【図7】本発明の他の実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
そこで以下に本発明の詳細を図示した実施例に基づいて説明する。
図1(a)、(b)はそれぞれ本発明のオープンカウンタの一実施例を示すもので、オープンカウンタ本体1は、その最外周を中央部に開口2aを有する断面コの字状のシールド部材を兼ねる導電材料、例えば金属からなるケース2に収容されている。
【0011】
オープンカウンタ本体1は、ケース2の開口に向けて開口する断面略U字、またはコの字状で、内面の底面3aとなる側が半円形に形成された第一クエンチング電極構成部材3と、これの中心線C−Cを通る位置には線体からなる直線状の陽極4が、大径の導電性支持部材5,5を介して絶縁体6,6に支持されて配置されている。
【0012】
また第一クエンチング電極構成部材3の開口側には、少なくとも低速電子の取り入れ口7aが網目状に形成された平板状の第二クエンチング電極構成部材7が配置されている。
なお、図中符号10は、絶縁材料からなる基体で、低速電子の取入れ口10aを有し、ケースと第二クエンチング電極7とを絶縁している。
【0013】
このように従来、円筒として形成されていたクエンチング電極を、第一クエンチング電極構成部材と、第二クエンチング電極構成部材とに分けることにより、第二クエンチング構成部材7を取り外した状態、つまり図2に示したように第一クエンチング電極構成部材3を大きく開口させた状態で陽極4を組み付けることが可能となるため、円筒の側部から線材を挿入して陽極を配置する従来のものに比較して、相対的位置精度を十分に確認できて、簡単、かつ高い精度で陽極4を配置することが可能となる。
【0014】
このようにして陽極4を組み付けた後に、第一クエンチング電極構成部材3の開口部に平板状の第二クエンチング電極構成部材7を配置し、第一クエンチング電極構成部材3との導電関係を形成すれば、クエンチング電極と陽極4との組み付けが完了する。
【0015】
いうまでもなく、第二クエンチング電極構成部材7が平板状に構成されているため、網状の開口部の形成時に生じるバリなどの異形部を研磨等により確実に除去でき、クエンチング電極内での電界強度を均一化することができる。
【0016】
第二クエンチング電極構成部材7の外側には、絶縁材料8を介挿してこれと平行に第二クエンチング構成部材と同様、つまり少なくとも低速電子の取り入れ口が網目状に形成された平板状のサプレッサ電極構成部材9が配置されている。
【0017】
ところで、本発明においては陽極4は、第一クエンチング電極構成部材3の底面3aとなる側に偏するよう、つまり底面3aの半円形を構成する仮想円の中心Oよりも底面3a側に位置するように配置されている。
【0018】
このように構成したオープンカウンタの特性や最適な寸法条件を調査するため、開口幅wが3.3mm、また底面側の半円形部の半径rが3.3mmの第一クエンチング構成部材3と、直径0.2mmの陽極4との位置を、陽極4を中心線C上に位置するように変えながら特性を調べた。
なお、クエンチング電極、及びサプレッサ電極の電位は従来の二重円筒型オープンカウンタと同様に制御した。
すなわち、低速電子が開口から入射して陽極4に到達してパルスが発生するので、これをカウントさせ、カウント後にサプレッサ電極を一定時間、マイナス電位に維持して陽イオンを中和、さらにクエンチング電極を所定電圧だけ高めて放電の継続を抑制する。
【0019】
その結果、図3ないし図6に示したような結果となった。すなわち、
rAB=3.3mm、rAQ=4.3mmの場合には図3のように検出開始電圧が2730v、計測可能領域が190vであった。
rAB=2.0mm、rAQ=4.3mmの場合には図4のように検出開始電圧が2570v、計測可能領域が180vであった。
rAB=1.8mm、rAQ=5.3mmの場合には図5のように検出開始電圧が2560v、計測可能領域が280vであった。
【0020】
このことから、第一クエンチング電極構成部材3と陽極4との距離rABと、陽極4と第二クエンチング電極構成部材7との距離rAQとの比rAB/rAQが1.8対5.3(約1対3)の場合が作動電圧が低くしかも作動領域幅が大きくなり、もっとも好ましいことが判明した。
【0021】
一方、従来の二重円筒型オープンカウンタは、図6に示したように計数可能領域が240V程度あるものの、計数開始電圧が2800Vと本発明よりも200V程度高い。
【0022】
以上のことから本発明のオープンカウンタは、円筒状のクエンチング電極の中心に陽極を配置した従来のオープンカウンタよりも低い電圧で作動可能であるとともに計数可能領域を拡大することができるという効果を有する。
【0023】
なお、上述の実施例においては第一クエンチング電極構成部材の底面を断面半円形に構成しているが、図7に示したように底面3a’を平面状とする断面コの字状に形成しても同様の作用を奏することを確認した。
【符号の説明】
【0024】
1 オープンカウンタ本体
2 ケース
3 第一クエンチング電極構成部材
4 陽極
5 導電性支持部材
7 第二クエンチング電極構成部材
9 サプレッサ電極構成部材
10 基体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面略コの字状で、内面の底面となる側が半円形に形成され、底面に対向する側を開口面した第一クエンチング電極構成部材と、前記第一クエンチング電極構成部材の対象軸となる中心を通り、かつ前記第一クエンチング電極構成部材の底面に偏した位置には線状の陽極が配置され、また前記第一クエンチング電極構成部材の開口面には網状の平板状の第二クエンチング電極構成部材が配置されているオープンカウンタ。
【請求項2】
前記陽極が前記第一クエンチング電極構成部材の最底部との距離比が約1対3の位置に配置されている請求項1に記載のオープンカウンタ。
【請求項3】
前記第一クエンチング電極構成部材の円形部が直径3.3mm程度である請求項1に記載のオープンカウンタ。
【請求項4】
前記陽極の両端部が、前記陽極よりも大径の導電性部材で支持されている請求項1に記載のオープンカウンタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate