説明

光音響撮像システムおよび装置並びにそれらに使用されるプローブユニット

【課題】手術を支援するに際し、術者に処置具と血管との位置関係をより容易かつ正確に認識させることを可能にする。
【解決手段】光音響撮像システム(10、M)において、手術用の処置具Mと、光音響波Uを電気信号に変換する電気音響変換部3を有するプローブユニット70と、上記電気信号に基づいて三次元の光音響画像Pを生成する画像生成手段2と、処置具Mおよびプローブユニット70の空間における互いの相対的な位置および姿勢を表す情報を取得する情報取得手段(81、82a、82b、83)と、上記位置および姿勢を表す情報に基づいて、処置具Mの位置および姿勢を示す処置具表示MIを重畳する画像処理手段61と、処置具表示MIが重畳された光音響画像Pを表示する表示部6と、処置具表示MIが重畳された光音響画像Pがリアルタイムに表示部6に表示されるようにこれらを制御する制御手段4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光が被検体に照射されることにより被検体内で発生した光音響波を検出して光音響画像を生成する光音響撮像システムおよび装置並びにそれらに使用されるプローブユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
外科手術を行う場合には、メス等の処置具によって血管を傷つけないように充分に注意する必要がある。しかしながら従来、被検体の生体組織表面から一定の深さ以上に存在する血管を術者が肉眼によって確認することは難しいという問題があった。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、血管造影剤が投与された被検体に対して、この血管造影剤を発光させるための特定の波長域の励起光と可視光とを所定の時間間隔で交互に照射し、励起光に基づく蛍光画像と可視光に基づく通常画像とを生成し、これらの画像を重畳してリアルタイムに表示することにより、処置具と血管との位置関係を術者に認識させ、血管を傷つける可能性を低減する方法が開示されている。
連続的に照射す
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−226072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法では、予め血管造影剤を投与する必要があり、さらには血中での血管造影剤の濃度を一定に保つように投与する必要があるため、処置具と血管との位置関係を術者に認識させる方法として効果はあるが、全体として作業が煩雑となってしまう場合もある。さらには、特許文献1の方法では、上記のような蛍光画像および通常画像に基づいて生体組織表面の二次元情報しか提供することができないため、血管の表面からの深さを術者が正確に認識しづらい場合もある。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、手術を支援するに際し、術者に処置具と血管との位置関係をより容易かつ正確に認識させることを可能にする光音響撮像システムおよび装置並びにそれらに使用されるプローブユニットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る光音響撮像システムは、
被検体内に測定光を照射し、測定光の照射により被検体内で発生した光音響波を検出してこの光音響波を電気信号に変換し、電気信号に基づいて光音響画像を生成する光音響撮像システムにおいて、
手術用の処置具と、
測定光を照射する光照射部と、測定光の照射により被検体内で発生した光音響波を検出してこの光音響波を電気信号に変換する電気音響変換部とを有する三次元画像生成用のプローブユニットと、
上記電気信号に基づいて三次元の光音響画像を生成する画像生成手段と、
処置具およびプローブユニットの三次元空間における互いの相対的な位置および姿勢を表す情報を取得する情報取得手段と、
上記位置および姿勢を表す情報に基づいて、処置具が存在する位置に対応する光音響画像中の領域に、処置具の位置および姿勢を示す処置具表示を重畳する画像処理手段と、
処置具表示が重畳された光音響画像を表示する表示手段と、
処置具表示が重畳された光音響画像がリアルタイムに表示手段に表示されるように、プローブユニット、画像生成手段、情報取得手段および表示手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
本明細書において、「三次元画像生成用のプローブユニット」とは、生体組織表面に沿った二次元領域で信号の受信が可能な電気音響変換部を有するプローブユニットを意味する。
【0009】
そして、本発明に係る光音響撮像システムにおいて、電気音響変換部は、二次元に配列した複数の変換素子から構成されるものであることが好ましい。或いは、電気音響変換部は、一次元に配列した複数の変換素子と、この複数の変換素子が配列した方向と垂直な方向へこの複数の変換素子を走査する走査部とから構成されるものであることが好ましい。
【0010】
そして、本発明に係る光音響撮像システムにおいて、プローブユニットは、第1の電気音響変換部を有する第1の探触子部と、第2の電気音響変換部を有する第2の探触子部とを備え、第1の探触子部および第2の探触子部が、互いに離間されかつ第1の電気音響変換部の検出面を含む平面と第2の電気音響変換部の検出面を含む平面とが略一致するように構成されたものであることが好ましい。
【0011】
本明細書において、第1の探触子部および第2の探触子部が「互いに離間され」とは、第1の探触子部および第2の探触子部が、処置具を配置することができる程度の間隙を設けるように構成されていることを意味する。
【0012】
第1の電気音響変換部の検出面を含む平面と第2の電気音響変換部の検出面を含む平面とが「略一致するように構成された」とは、2つの検出面を含む平面が完全に一致する場合の他、第1の探触子部および第2の探触子部を被検体に同時に当接させて光音響波の検出を手術支援の観点から適切に実施できる範囲で2つの検出面を含む平面が異なる場合も含む意味である。
【0013】
そして、本発明に係る光音響撮像システムにおいて、情報取得手段は、磁気センサまたは赤外線センサを用いて上記位置および姿勢を表す情報を取得するものであることが好ましい。或いは、画像生成手段は、上記電気音響変換部が照射した超音波の反射波に基づいて超音波画像を生成するものであり、情報取得手段は、超音波画像中から処置具を表す画像領域を抽出して上記位置および姿勢を表す情報を取得するものであることが好ましい。
【0014】
そして、本発明に係る光音響撮像システムは、光音響画像中の血管を表す画像領域を抽出してこの画像領域の光音響画像における分布情報を取得する血管認識手段と、上記分布情報、上記位置および姿勢を表す情報に基づいて、血管と処置具との互いの距離を計算する距離計算手段と、距離計算手段によって計算された上記距離が、所定値以下である場合に警告を発する警告手段とをさらに備えることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明に係る光音響撮像装置は、
被検体内に測定光を照射し、測定光の照射により前記被検体内で発生した光音響波を検出してこの光音響波を電気信号に変換し、電気信号に基づいて光音響画像を生成する光音響撮像装置において、
測定光を照射する光照射部と、測定光の照射により被検体内で発生した光音響波を検出してこの光音響波を電気信号に変換する電気音響変換部とを有する三次元画像生成用のプローブユニットと、
上記電気信号に基づいて三次元の光音響画像を生成する画像生成手段と、
手術用の処置具およびプローブユニットの三次元空間における互いの相対的な位置および姿勢を表す情報を取得する情報取得手段と、
上記位置および姿勢を表す情報に基づいて、処置具が存在する位置に対応する光音響画像中の領域に、処置具の位置および姿勢を示す処置具表示を重畳する画像処理手段と、
処置具表示が重畳された光音響画像を表示する表示手段と、
処置具表示が重畳された光音響画像がリアルタイムに表示手段に表示されるように、プローブユニット、画像生成手段、情報取得手段および表示手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0016】
そして、本発明に係る光音響撮像装置において、電気音響変換部は、二次元に配列した複数の変換素子から構成されるものであることが好ましい。或いは、電気音響変換部は、一次元に配列した複数の変換素子と、この複数の変換素子が配列した方向と垂直な方向へこの複数の変換素子を走査する走査部とから構成されるものであることが好ましい。
【0017】
そして、本発明に係る光音響撮像装置において、プローブユニットは、第1の電気音響変換部を有する第1の探触子部と、第2の電気音響変換部を有する第2の探触子部とを備え、第1の探触子部および第2の探触子部が、互いに離間されかつ第1の電気音響変換部の検出面を含む平面と第2の電気音響変換部の検出面を含む平面とが略一致するように構成されたものであることが好ましい。
【0018】
そして、本発明に係る光音響撮像装置において、情報取得手段は、磁気センサまたは赤外線センサを用いて上記位置および姿勢を表す情報を取得するものであることが好ましい。或いは、画像生成手段は、電気音響変換部が照射した超音波の反射波に基づいて超音波画像を生成するものであり、情報取得手段は、超音波画像中から処置具を表す画像領域を抽出して上記位置および姿勢を表す情報を取得するものであることが好ましい。
【0019】
そして、本発明に係る光音響撮像装置は、光音響画像中の血管を表す画像領域を抽出してこの画像領域の光音響画像における分布情報を取得する血管認識手段と、上記分布情報、上記位置および姿勢を表す情報に基づいて、血管と処置具との互いの距離を計算する距離計算手段と、距離計算手段によって計算された上記距離が、所定値以下である場合に警告を発する警告手段とをさらに備えることが好ましい。
【0020】
さらに、本発明に係るプローブユニットは、
被検体内に測定光を照射し、測定光の照射により被検体内で発生した光音響波を検出してこの光音響波を電気信号に変換し、電気信号に基づいて光音響画像を生成する際に使用されるプローブユニットにおいて、
測定光を照射する光照射部と、
測定光の照射により被検体内で発生した光音響波を検出してこの光音響波を電気信号に変換する第1の電気音響変換部を有する第1の探触子部と、
第1の電気音響変換部とは異なる第2の電気音響変換部を有する第2の探触子部とを備え、
第1の探触子部および第2の探触子部が、互いに離間されかつ第1の電気音響変換部の検出面を含む平面と第2の電気音響変換部の検出面を含む平面とが略一致するように構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る光音響撮像システムおよび装置は、特に、測定光を照射する光照射部と、測定光の照射により被検体内で発生した光音響波を検出してこの光音響波を電気信号に変換する電気音響変換部とを有する三次元画像生成用のプローブユニットと、電気信号に基づいて三次元の光音響画像を生成する画像生成手段と、処置具およびプローブユニットの三次元空間における互いの相対的な位置および姿勢を表す情報を取得する情報取得手段と、上記位置および上姿勢を表す情報に基づいて、処置具が存在する位置に対応する光音響画像中の領域に、処置具の位置および姿勢を示す処置具表示を重畳する画像処理手段と、処置具表示が重畳された光音響画像を表示する表示手段と、処置具表示が重畳された光音響画像がリアルタイムに表示手段に表示されるように、プローブユニット、画像生成手段、情報取得手段および表示手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とするものである。これにより、血管に造影剤を投与する等の前処理を必要とすることなく、かつ、処置具表示が重畳された光音響画像に基づいて処置具と血管との位置関係を三次元画像で分かりやすく術者に提供することができる。この結果、手術を支援するに際し、術者に処置具と血管との位置関係をより容易かつ正確に認識させることが可能となる。
【0022】
また、本発明に係るプローブユニットは、測定光を照射する光照射部と、測定光の照射により被検体内で発生した光音響波を検出してこの光音響波を電気信号に変換する第1の電気音響変換部を有する第1の探触子部と、第1の電気音響変換部とは異なる第2の電気音響変換部を有する第2の探触子部とを備え、第1の探触子部および第2の探触子部が、互いに離間されかつ第1の電気音響変換部の検出面を含む平面と第2の電気音響変換部の検出面を含む平面とが略一致するように構成されたものであるから、処置具を光音響画像の撮像範囲に容易に配置することができる。これにより、本発明に係る光音響撮像システムおよび装置を使用して、血管に造影剤を投与する等の前処理を必要とすることなく、かつ、処置具表示が重畳された光音響画像に基づいて処置具と血管との位置関係を三次元画像で分かりやすく術者に提供することができる。この結果、手術を支援するに際し、術者に処置具と血管との位置関係をより容易かつ正確に認識させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施形態の光音響撮像システムおよび装置の構成を示す概略図である。
【図2】第1の実施形態の画像生成部の構成を示す概略図である。
【図3】処置具表示が重畳された三次元の光音響画像を示す概略図である。
【図4】第2の実施形態の光音響撮像システムおよび装置の構成を示す概略図である。
【図5】第2の実施形態のプローブユニットを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明するが、本発明はこれに限られるものではない。なお、視認しやすくするため、図面中の各構成要素の縮尺等は実際のものとは適宜異ならせてある。
【0025】
「第1の実施形態」
図1は、本実施形態の光音響撮像システムの構成を示す概略図である。図2は、図1における画像生成部の構成を示す概略図である。
【0026】
本実施形態の光音響撮像システムは、図1に示すように、手術用の処置具としてのメスM、および、このメスMの空間における位置および姿勢を表す情報を取得する情報取得手段を持った光音響撮像装置10から構成される。
【0027】
より具体的には、光音響撮像装置10は、図1および2に示されるように、特定波長成分を含むレーザ光Lを測定光として発生させこのレーザ光Lを被検体7に照射する光送信部1と、このレーザ光Lが被検体7に照射されることにより被検体7内で発生する光音響波Uを検出して任意断面の光音響画像データを生成する画像生成部2と、音響信号と電気信号の変換を行う電気音響変換部3と、この光音響画像データを表示する表示部6と、操作者が患者情報や装置の撮影条件を入力するための操作部5と、磁気発生部83および磁気センサ82a・82bから構成される磁気センサユニットと、メスMの空間における位置および姿勢を表す情報を取得する情報取得部81と、光音響画像から血管を表す画像領域を抽出する血管認識部86と、血管およびメスMの互いの距離を計算する距離計算部84と、上記距離に応じて警告を発する警告部85と、これら各ユニットを統括的に制御するシステム制御部4とを備えている。
【0028】
そして、本実施形態においてプローブユニット70は、電気音響変換部3、光照射部15、および磁気センサ82aを備えている。
【0029】
光送信部1は、例えばそれぞれ波長の異なるレーザ光Lを出力する複数の光源を備える光源部11と、複数の波長のレーザ光Lを同一光軸上に合成する光合波部12と、このレーザ光Lを被検体7の体表面まで導く多チャンネルの導波部14と、この導波部14において使用するチャンネルを切り換えて走査を行う光走査部13と、導波部14によって供給されるレーザ光Lが被検体7の撮像部位に向けて出射する光照射部15とを備えている。
【0030】
光源部11は、例えば所定の波長の光を発生する1以上の光源を有する。光源として、特定の波長成分又はその成分を含む単色光を発生する半導体レーザ(LD)、固体レーザ、ガスレーザ等の発光素子を用いることができる。光源部11は、レーザ光として1〜100nsecのパルス幅を有するパルス光を出力するものであることが好ましい。レーザ光の波長は、計測の対象となる被検体内の物質の光吸収特性によって適宜決定される。生体内のヘモグロビンは、その状態(酸化ヘモグロビン、還元ヘモグロビン、メトヘモグロビン、炭酸ガスヘモグロビン、等)により光学的な吸収特性が異なるが、一般的には600nmから1000nmの光を吸収する。したがって、例えば計測対象が生体内のヘモグロビンである場合(つまり、血管を撮像する場合)には、一般的には600〜1000nm程度とすることが好ましい。さらに、被検体7の深部まで届くという観点から、上記レーザ光の波長は700〜1000nmであることが好ましい。そして、上記レーザ光の出力は、レーザ光と光音響波の伝搬ロス、光音響変換の効率および現状の検出器の検出感度等の観点から、10μJ/cm〜数10mJ/cmであることが好ましい。さらに、パルス光出力の繰り返しは、画像構築速度の観点から、10Hz以上であることが好ましい。また、レーザ光は上記パルス光が複数並んだパルス列とすることもできる。
【0031】
より具体的には例えば、被検体7のヘモグロビン濃度を測定する場合には、固体レーザの一種であるNd:YAGレーザ(発光波長:約1000nm)や、ガスレーザの一種であるHe-Neガスレーザ(発光波長:633nm)を用い、10nsec程度のパルス幅を有したレーザ光を形成する。また、LD等の小型発光素子を用いる場合には、InGaAlP(発光波長:550〜650nm)、GaAlAs(発光波長:650〜900nm)、InGaAsもしくはInGaAsP(発光波長:900〜2300nm)などの材料を用いた素子を使用することができる。また最近では、波長が550nm以下で発光するInGaNを用いた発光素子も使用可能になりつつある。更には、波長可変可能な非線形光学結晶を用いたOPO(Optical Parametrical Oscillators)レーザを用いることもできる。
【0032】
光合波部12は、光源部11から発生する波長の異なるレーザ光を同一光軸に重ね合わせるためのものである。それぞれのレーザ光は、まずコリメートレンズによって平行光線に変換され、次に直角プリズムやダイクロイックプリズムにより、光軸が合わせられる。このような構成により比較的小型の合波光学系とすることができる。また、光通信用に開発されている市販の多重波長合波・分波器を用いてもよい。また光源部11に前述の波長が連続的に変更可能なOPOレーザ等の発生源を使用する場合は、この光合波部12は必ずしも必要ではない。
【0033】
導波部14は、光合波部12から出力された光を光照射部15まで導光するためのものである。効率のよい光伝搬を行うために光ファイバや薄膜光導波路を用いる。本実施形態では、導波部14は、複数の光ファイバから構成される。これらの複数の光ファイバの中から所定の光ファイバを選択して、当該選択された光ファイバによって被検体7に対するレーザ光の照射を行う。なお、図1では、明確に示してはいないが、光学フィルタやレンズ等の光学系と合わせて使用することもできる。
【0034】
光走査部13は、導波部14において配列される複数の光ファイバを順次選択しながら光の供給を行う。これにより、被検体7に対して光による走査が可能となる。
【0035】
電気音響変換部3は、迅速かつ正確に三次元画像の生成ができるように、生体組織表面に沿った二次元領域で信号の受信が可能な構成を有している。このような構成は、例えば、二次元に配列した複数の変換素子によって実現でき、または、一次元に配列した複数の変換素子と、この複数の変換素子が配列した方向と垂直な方向へこの複数の変換素子を機械的に走査する走査部とによっても実現することができる。変換素子54は、例えば、圧電セラミクス、またはポリフッ化ビニリデン(PVDF)のような高分子フィルムから構成される圧電素子である。電気音響変換部3は、光照射部15からの光の照射により被検体内に発生する光音響波Uを受信する。この変換素子54は、受信時において光音響波Uを電気信号に変換する機能を有している。電気音響変換部3は、小型、軽量に構成されており、多チャンネルケーブルによって後述する受信部22に接続される。この電気音響変換部3は、セクタ走査対応、リニア走査対応、コンベックス走査対応等の中から診断部位に応じて選択される。電気音響変換部3は、光音響波Uを効率よく伝達するために音響整合層を備えてもよい。一般に圧電素子材料と生体では音響インピーダンスが大きく異なるため、圧電素子材料と生体が直接接した場合には、界面での反射が大きくなり光音響波Uは効率よく伝達することができない。このため、圧電素子材料と生体の間に中間的な音響インピーダンスを有する音響整合層が配置されることにより、光音響波Uは効率よく伝達することができる。音響整合層を構成する材料の例としては、エポキシ樹脂や石英ガラスなどが挙げられる。
【0036】
光音響撮像装置10の画像生成部2は、電気音響変換部3を構成する複数の変換素子54を選択駆動するとともに、また電気音響変換部3からの電気信号に所定の遅延時間を与え、整相加算を行うことにより受信信号を生成する受信部22と、変換素子54の選択駆動や受信部22の遅延時間を制御する走査制御部24と、受信部22から得られる受信信号に対して各種の処理を行う信号処理部25とを備えている。この画像生成部2は本発明における画像生成手段に相当する。
【0037】
受信部22は、図3に示すように、電子スイッチ53と、プリアンプ55と、受信遅延回路56と、加算部57とを備えている。
【0038】
電子スイッチ53は、光音響走査における光音響波の受信に際して、連続して隣接する所定数の変換素子54を選択する。例えば、電気音響変換部3がアレイ型の192個の変換素子CH1〜CH192から構成される場合、このようなアレイ型変換素子は、電子スイッチ53によってエリア0(CH1〜CH64までの変換素子の領域)、エリア1(CH65〜CH128までの変換素子の領域)およびエリア2(CH129〜CH192までの変換素子の領域)の3つの領域に分割されて取り扱われる。このようにN個の変換素子から構成されるアレイ型変換素子をn(n<N)個の隣接する振動子のまとまり(エリア)として取り扱い、このエリアごとにイメージング作業を実施した場合には、すべてのチャンネルの変換素子にプリアンプやA/D変換ボードを接続する必要がなくなり、プローブユニット70の構造を簡素化できコストの増大を防ぐことができる。また、それぞれのエリアを個別に光照射することができるように、複数の光ファイバを配置した場合には、1回あたりの光出力が大きくならずに済むので、大出力の高価な光源を用いる必要がないといった利点もある。そして、変換素子54によって得られるそれぞれの電気信号はプリアンプ55に供給される。
【0039】
プリアンプ55は、上記のように選択された変換素子54によって受信された微小な電気信号を増幅し、充分なS/Nを確保する。
【0040】
受信遅延回路56は、電子スイッチ53によって選択された変換素子54から得られる光音響波Uの電気信号に対して、所定の方向からの光音響波Uの位相を一致させて収束受信ビームを形成するための遅延時間を与える。
【0041】
加算部57は、受信遅延回路56により遅延された複数チャンネルの電気信号を加算することによって1つの受信信号にまとめる。この加算によって所定の深さからの音響信号は整相加算され、受信収束点が設定される。
【0042】
走査制御部24は、ビーム集束制御回路67と変換素子選択制御回路68とを備える。変換素子選択制御回路68は、電子スイッチ53によって選択される受信時の所定数の変換素子54の位置情報を電子スイッチ53に供給する。一方、ビーム集束制御回路67は、所定数個の変換素子54が形成する受信収束点を形成するための遅延時間情報を受信遅延回路56に供給する。
【0043】
信号処理部25は、フィルタ66と、信号処理器59と、A/D変換器60と、画像データメモリ62と、画像処理部61とを備えている。受信部22の加算部57から出力された電気信号は、信号処理部25のフィルタ66において不要なノイズを除去した後、信号処理器59にて受信信号の振幅を対数変換し、弱い信号を相対的に強調する。一般に、被検体7からの受信信号は、80dB以上の広いダイナミックレンジをもった振幅を有しており、これを23dB程度のダイナミックレンジをもつ通常のモニタに表示するためには弱い信号を強調する振幅圧縮が必要となる。なお、フィルタ66は、帯域通過特性を有し、受信信号における基本波を抽出するモードと高調波成分を抽出するモードを有している。また、信号処理器59は、対数変換された受信信号に対して包絡線検波を行う。そして、A/D変換器60は、この信号処理器59の出力信号をA/D変換し、1ライン分の光音響画像データを形成する。この1ライン分の光音響画像データは、画像データメモリ62に保存される。
【0044】
画像データメモリ62は、前述のように生成された1ライン分の光音響画像データを順次保存する記憶回路である。システム制御部4は、画像データメモリ62に保存されたある断面についての1ライン分のデータであって1フレームの光音響画像を生成するのに必要なデータを読み出す。システム制御部4は、空間的に補間しながらそれら1ライン分のデータを合成して当該断面の1フレーム分の光音響画像データを生成し、さらに断面の位置を変えた1フレーム分の光音響画像データを複数結合することにより三次元の光音響画像データを生成する。そして、システム制御部4は、この三次元の光音響画像データを画像データメモリ62に保存する。
【0045】
画像処理部61は、三次元の光音響画像データを画像データメモリ62から読み出し、この光音響画像データに基づく光音響画像Pに加工を施すものである。具体的には画像処理部61は、後述する情報取得部81によって取得されたメスMの位置および姿勢を表す情報に基づいて、図3のように、メスMが存在する位置に対応する光音響画像P中の領域に、メスMの位置および姿勢を示すメス表示MI(処置具表示)を当該光音響画像Pに重畳するものである。メス表示MIが重畳された光音響画像Pのデータは再度画像データメモリ62に保存される。
【0046】
表示部6は、表示用画像メモリ63と、光音響画像データ変換器64と、モニタ65を備えている。表示用画像メモリ63は、モニタ65に表示する三次元の光音響画像データ(つまり、メス表示MIが重畳された光音響画像Pのデータ)を画像データメモリ62から読み出し、それを一時的に保存するバッファメモリである。光音響画像データ変換器64は、表示用画像メモリ63に保存された三次元の光音響画像データに対してD/A変換とテレビフォーマット変換を行い、その出力はモニタ65において表示される。この表示部6は本発明における表示手段に相当する。
【0047】
操作部5は、操作パネル上にキーボード、トラックボール、マウス等を備え、装置操作者が患者情報、装置の撮影条件、表示断面など必要な情報を入力するために用いられる。
【0048】
磁気センサ82a・82bおよび磁気発生部83は、プローブユニット70およびメスMの三次元空間における互いの相対的な位置および姿勢を表す情報を取得するための三次元磁気センサユニットを構成する。三次元磁気センサユニットは、磁気発生部83が形成するパルス磁場上の空間において、磁気発生部83に対する磁気センサ82a・82bの相対的位置座標(x、y、z)、および磁気センサ82a・82bの姿勢情報(角度(α、β、γ)の情報)を取得することができる。例えば、プローブユニット70の姿勢情報とは、例えば磁気発生部83を原点とするxyz軸空間における当該プローブユニット70の状態に関する情報であって、特に当該空間における基準状態からの傾きや回転の情報を含むものである。磁気発生部83の配置場所は特に限定されず、プローブユニット70を操作する範囲が磁気発生部83の形成する磁場空間に含まれればどこでもよい。磁気センサ82aおよび磁気センサ82bのそれぞれは、プローブユニット70およびメスMの上記位置および姿勢を表す情報を取得するために、複数の磁気センサから構成されてもよい。
【0049】
情報取得部81は、三次元磁気センサユニットを用いてプローブユニット70およびメスMの空間における上記位置および姿勢を表す情報をリアルタイムに磁気センサ82a・82bのそれぞれから受信するものである。つまり、磁気センサ82aからは磁気発生部83に対するプローブユニット70の位置および姿勢を表す情報が取得でき、磁気センサ82bからは磁気発生部83に対するメスMの位置および姿勢を表す情報が取得できる。上記三次元磁気センサユニットおよび情報取得部81が、本発明における情報取得手段に相当する。情報取得部81によって受信された磁気発生部83に対するプローブユニット70の位置および姿勢を表す情報、並びに、磁気発生部83に対するメスMの位置および姿勢を表す情報は距離計算部84に送られる。
【0050】
血管認識部86は、画像生成部2によって生成された三次元の光音響画像データを読み込み、光音響画像中から血管を表す画像領域を抽出してこの画像領域の光音響画像における分布情報を取得するものである。光音響画像では、血管の光音響効果を利用して画像が生成されており、抽出処理自体は既知の方法を用いて容易に血管を表す画像領域を抽出することができる。この血管認識部86は本発明における血管認識手段に相当する。
【0051】
距離計算部84は、情報取得部81から送信された磁気発生部83に対するプローブユニット70およびメスMの空間における位置および姿勢を表す情報に基づいて、プローブユニット70およびメスMの互いの相対的な位置および姿勢を表す情報を計算する。さらに、距離計算部84は、この位置および姿勢を表す情報とともに、プローブユニット70と光音響画像の撮像領域との位置関係も踏まえて、光音響画像の中の仮想的な空間における血管Vとメス表示MIとの距離Dを算出する(図3)。距離計算部84は本発明にける距離計算手段に相当する。「距離」とは、手術用メスなどの処置具が血管を損傷することのない範囲に位置することを確保するための指標を意味する。「距離」に関して、血管Vおよびメス表示MIのどの部分を基準にした長さとするかについては適宜設定することができる。例えば、血管Vの基準点としては、抽出できた血管Vのうち最もメス表示MIに近い部分や、所定の太さの血管Vの部分であって最もメス表示MIに近い部分を挙げることができる。一方、メス表示の基準点としては、メス表示MIのうち最も血管Vに近い部分やメス表示MI上で任意に設定した点を挙げることができる。血管Vの基準点として抽出できた血管Vのうち最もメス表示MIに近い部分を採用し、メス表示MIの基準点としてメス表示MIのうち最も血管Vに近い部分を採用した場合には、抽出できた血管Vとメス表示MIとの最短距離を求めることができる。距離計算部84によって計算された上記距離Dは警告部85に送信される。この距離計算部84は本発明における距離計算手段に相当する。
【0052】
警告部85は、距離計算部84から送信された上記距離Dが所定値以下である場合に警告を発するものである。この所定値は、例えば操作部5によって予め設定される。警告は、例えば警告音を発したり表示部6に警告画面を表示したりすることにより行われる。この警告部85は本発明における警告手段に相当する。
【0053】
システム制御部4は、メス表示MIが重畳された光音響画像Pがリアルタイムに表示部6に表示されるようにシステム全体を制御するものである。システム制御部4は本発明における制御手段に相当する。手術を適切に支援するために、例えば光音響画像の表示を10frame/sec以上、より好ましくは15〜60frame/secの画像構築速度で行うことが好ましい。したがって、システム制御部4は、レーザ光Lを10Hz以上、より好ましくは15〜60Hzの繰り返し周波数で照射し、システム全体をこのレーザ光Lの照射に同期して制御することとなる。具体的には例えば、システム制御部4は、レーザ光Lの照射に同期して、光音響波および/または超音波を受信するようにプローブユニット70を制御し、光音響波画像および/または超音波画像を生成するように画像生成部2を制御し、プローブユニット70およびメスMの互いの相対的な位置および姿勢を表す情報を取得するように三次元磁気センサユニットおよび情報取得部81を制御し、光音響波画像および/または超音波画像を表示するように表示部6を制御する。
【0054】
以上のように、本実施形態の光音響撮像システムおよび装置は、特に、測定光を照射する光照射部と、測定光の照射により被検体内で発生した光音響波を検出してこの光音響波を電気信号に変換する電気音響変換部とを有する三次元画像生成用のプローブユニットと、電気信号に基づいて三次元の光音響画像を生成する画像生成手段と、処置具およびプローブユニットの三次元空間における互いの相対的な位置および姿勢を表す情報を取得する情報取得手段と、上記位置および姿勢を表す情報に基づいて、処置具が存在する位置に対応する光音響画像中の領域に、処置具の位置および姿勢を示す処置具表示を重畳する画像処理手段と、処置具表示が重畳された光音響画像を表示する表示手段と、処置具表示が重畳された光音響画像がリアルタイムに表示手段に表示されるように、プローブユニット、画像生成手段、情報取得手段および表示手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とするものである。これにより、血管に造影剤を投与する等の前処理を必要とすることなく、かつ、処置具表示が重畳された光音響画像に基づいて処置具と血管との位置関係を三次元画像で分かりやすく術者に提供することができる。この結果、手術を支援するに際し、術者に処置具と血管との位置関係をより容易かつ正確に認識させることが可能となる。
【0055】
<設計変更>
第1の実施形態では、情報取得手段は磁気センサを用いて上記位置および姿勢を表す情報を取得するものであるとして説明したが、磁気センサに代えて赤外線センサを用いてもよい。
【0056】
また、画像生成手段が、上記電気音響変換部が照射した超音波の反射波に基づいて超音波画像を生成するものである場合には、情報取得手段は、超音波画像中から処置具を表す画像領域を抽出して上記位置および姿勢を表す情報を取得するものとすることもできる。具体的には、例えば光音響画像と超音波画像とを交互に1/60フレームずつ生成し、超音波画像に映った処置具の陰影から当該処置具の空間的な位置および姿勢を表す情報を抽出するようにしてもよい。或いは、超音波画像を同時に撮像する場合には、位置合わせをした上で超音波画像および光音響画像を重畳するだけでも、処置具と血管との位置関係が把握できるという効果もある。このように超音波画像を利用して処置具の位置および姿勢を表す情報を取得する場合には、既存のプローブユニットおよび画像生成手段を用いることが可能であるため、磁気センサ等を設けるコストを低減することができる。
【0057】
「第2の実施形態」
次に、第2の実施形態の光音響撮像システムおよび装置について説明する。本実施形態の光音響撮像システムおよび装置は、プロ−ユニットの構造の点で第1の実施形態の場合と異なる。したがって、第1の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、同様の構成要素についての詳細な説明は特に必要がない限り省略する。
【0058】
本実施形態の光音響撮像システムは、手術用の処置具としてのメスM、および、このメスMの空間における位置および姿勢を表す情報を取得する情報取得手段を持った光音響撮像装置10から構成される。
【0059】
より具体的には、光音響撮像装置10は、図4に示されるように、特定波長成分を含むレーザ光Lを測定光として発生させこのレーザ光Lを被検体7に照射する光送信部1と、このレーザ光Lが被検体7に照射されることにより被検体7内で発生する光音響波Uを検出して任意断面の光音響画像データを生成する画像生成部2と、音響信号と電気信号の変換を行う電気音響変換部74a・74bと、この光音響画像データを表示する表示部6と、操作者が患者情報や装置の撮影条件を入力するための操作部5と、磁気発生部83および磁気センサ82a・82bから構成される磁気センサユニットと、メスMの空間における位置および姿勢を表す情報を取得する情報取得部81と、光音響画像から血管を表す画像領域を抽出する血管認識部86と、血管およびメスMの互いの距離を計算する距離計算部84と、上記距離に応じて警告を発する警告部85と、これら各ユニットを統括的に制御するシステム制御部4とを備えている。
【0060】
そして、本実施形態においてプローブユニット71は、測定光を照射する光照射部73と、測定光の照射により被検体内で発生した光音響波を検出してこの光音響波を電気信号に変換する第1の電気音響変換部74aを有する第1の探触子部72aと、第1の電気音響変換部74aとは異なる第2の電気音響変換部74bを有する第2の探触子部72bと、磁気センサ(図示略)とを備え、第1の探触子部72aおよび第2の探触子部72bが、互いに離間されかつ第1の電気音響変換部74aの検出面76a(電気音響変換部の底面)を含む平面と第2の電気音響変換部74bの検出面76bを含む平面とが略一致するように構成されたものである。
【0061】
すなわち、図5に示されるプローブユニット71は、第1の探触子部72aおよび第2の探触子部72bが互いに離間された二股構造を有し、第1の探触子部72aおよび第2の探触子部72bの間隙SにメスMを挿入することができるように構成されている。この間隙Sの幅は、1〜10mmであることが好ましい。
【0062】
光照射部73は、例えば光ファイバ等の導波部75の先端部であり、2つの電気音響変換部のそれぞれの周囲にレーザ光Lを導くためのものである。なお、図4では、便宜上一部の導波部のみを図示している。導波部75は第1の実施形態における導波部14と同様である。
【0063】
第1の探触子部72aおよび第2の探触子部72bのそれぞれが光音響撮像を行うための探触子として機能する。第1の探触子部72aおよび第2の探触子部72bは同時に被検体に当接するものであるため、第1の電気音響変換部74aの検出面76aを含む平面と第2の電気音響変換部74bの検出面76bを含む平面とが互いに略一致するように構成されている。これにより、プローブユニット71を被検体に当接したとき、2つの検出面74a・76aは生体組織表面から同じ高さに配置され、検出信号のばらつきを低減することができる。
【0064】
第1の電気音響変換部74aおよび第2の電気音響変換部74bのそれぞれは、第1の実施形態における電気音響変換部3を2つの領域に区分したものと考えることができるため、それらの駆動の仕方や材料等は第1の実施形態における電気音響変換部3とほぼ同様である。例えば、第1の電気音響変換部74aおよび第2の電気音響変換部74bのそれぞれが検出した信号が合算されて1つの光音響画像データが生成され、画像データメモリ62に保存される。ここで、間隙S直下の光音響画像データに関して間隙Sがある分だけ取得できる信号が減少するが、間隙S直下の光音響画像データの生成は可能である。通常、光音響画像データの1ライン分は64ch分の検出データを使って作成するが、1〜10mm程度(これは4〜33ch程度に相当する長さである。)の間隙Sがあったとしても、残りのおよそ31〜60chの検出データを用いて光音響画像データの構築が可能だからである。上記のような場合、取得できる信号が減少した結果、加算部57によって整相加算された信号の強度が下がってしまう。したがって、本実施形態では、必要に応じて上記整相加算された信号に対して強調処理等の別途の信号処理を実施してもよい。
【0065】
その後の画像を重畳させて表示する処理、血管を抽出する処理、血管とメスとの処理を算出する処理および警告を発する処理等は第1の実施形態と同様である。
【0066】
本実施形態では、第1の探触子部72aおよび第2の探触子部72bが互いに離間された二股構造を有し、その間隙SにメスMを挿入することができるように構成されていることにより、適切にメスを光音響画像の撮像範囲内に配置することができる。これにより、本発明の光音響撮像システムおよび装置を用いた手術支援の精度を高めることができる。この結果、手術を支援するに際し、術者に処置具と血管との位置関係をより容易かつ正確に認識させることが可能となる。
【符号の説明】
【0067】
1 光送信部
2 画像生成部
3 電気音響変換部
4 システム制御部
5 操作部
6 表示部
7 被検体
10 光音響撮像装置
11 光源部
14 導波部
15 光照射部
22 受信部
24 走査制御部
25 信号処理部
70、71 プローブユニット
72a、72b 探触子部
73 光照射部
74a、74b 電気音響変換部
75 導波部
76a、76b 電気音響変換部の検出面
81 情報取得部
82a、82b 磁気センサ
83 磁気発生部
84 距離計算部
85 警告部
86 血管認識部
L レーザ光
M メス
MI メス表示
P 光音響画像
S 間隙
U 光音響波
V 血管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に測定光を照射し、該測定光の照射により前記被検体内で発生した光音響波を検出して該光音響波を電気信号に変換し、該電気信号に基づいて光音響画像を生成する光音響撮像システムにおいて、
手術用の処置具と、
測定光を照射する光照射部と、該測定光の照射により前記被検体内で発生した光音響波を検出して該光音響波を電気信号に変換する電気音響変換部とを有する三次元画像生成用のプローブユニットと、
前記電気信号に基づいて三次元の光音響画像を生成する画像生成手段と、
前記処置具および前記プローブユニットの三次元空間における互いの相対的な位置および姿勢を表す情報を取得する情報取得手段と、
前記位置および姿勢を表す情報に基づいて、前記処置具が存在する位置に対応する前記光音響画像中の領域に、前記処置具の位置および姿勢を示す処置具表示を重畳する画像処理手段と、
前記処置具表示が重畳された前記光音響画像を表示する表示手段と、
前記処置具表示が重畳された前記光音響画像がリアルタイムに前記表示手段に表示されるように、前記プローブユニット、前記画像生成手段、前記情報取得手段および前記表示手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする光音響撮像システム。
【請求項2】
前記電気音響変換部が、二次元に配列した複数の変換素子から構成されるものであることを特徴とする請求項1に記載の光音響撮像システム。
【請求項3】
前記電気音響変換部が、一次元に配列した複数の変換素子と、該複数の変換素子が配列した方向と垂直な方向へ前記複数の変換素子を走査する走査部とから構成されるものであることを特徴とする請求項1に記載の光音響撮像システム。
【請求項4】
前記プローブユニットが、第1の電気音響変換部を有する第1の探触子部と、第2の電気音響変換部を有する第2の探触子部とを備え、前記第1の探触子部および前記第2の探触子部が、互いに離間されかつ前記第1の電気音響変換部の検出面を含む平面と前記第2の電気音響変換部の検出面を含む平面とが略一致するように構成されたものであることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の光音響撮像システム。
【請求項5】
前記情報取得手段が、磁気センサまたは赤外線センサを用いて前記位置および姿勢を表す情報を取得するものであることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の光音響撮像システム。
【請求項6】
前記画像生成手段が、前記電気音響変換部が照射した超音波の反射波に基づいて超音波画像を生成するものであり、
前記情報取得手段が、前記超音波画像中から前記処置具を表す画像領域を抽出して前記位置および姿勢を表す情報を取得するものであることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の光音響撮像システム。
【請求項7】
前記光音響画像中の血管を表す画像領域を抽出して該画像領域の前記光音響画像における分布情報を取得する血管認識手段と、
前記分布情報、前記位置および姿勢を表す情報に基づいて、前記血管と前記処置具との互いの距離を計算する距離計算手段と、
該距離計算手段によって計算された前記距離が、所定値以下である場合に警告を発する警告手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1から6いずれかに記載の光音響撮像システム。
【請求項8】
被検体内に測定光を照射し、該測定光の照射により前記被検体内で発生した光音響波を検出して該光音響波を電気信号に変換し、該電気信号に基づいて光音響画像を生成する光音響撮像装置において、
測定光を照射する光照射部と、該測定光の照射により前記被検体内で発生した光音響波を検出して該光音響波を電気信号に変換する電気音響変換部とを有する三次元画像生成用のプローブユニットと、
前記電気信号に基づいて三次元の光音響画像を生成する画像生成手段と、
手術用の処置具および前記プローブユニットの三次元空間における互いの相対的な位置および姿勢を表す情報を取得する情報取得手段と、
前記位置および姿勢を表す情報に基づいて、前記処置具が存在する位置に対応する前記光音響画像中の領域に、前記処置具の位置および姿勢を示す処置具表示を重畳する画像処理手段と、
前記処置具表示が重畳された前記光音響画像を表示する表示手段と、
前記処置具表示が重畳された前記光音響画像がリアルタイムに前記表示手段に表示されるように、前記プローブユニット、前記画像生成手段、前記情報取得手段および前記表示手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする光音響撮像装置。
【請求項9】
前記電気音響変換部が、二次元に配列した複数の変換素子から構成されるものであることを特徴とする請求項8に記載の光音響撮像装置。
【請求項10】
前記電気音響変換部が、一次元に配列した複数の変換素子と、該複数の変換素子が配列した方向と垂直な方向へ前記複数の変換素子を走査する走査部とから構成されるものであることを特徴とする請求項8に記載の光音響撮像装置。
【請求項11】
前記プローブユニットが、第1の電気音響変換部を有する第1の探触子部と、第2の電気音響変換部を有する第2の探触子部とを備え、前記第1の探触子部および前記第2の探触子部が、互いに離間されかつ前記第1の電気音響変換部の検出面を含む平面と前記第2の電気音響変換部の検出面を含む平面とが略一致するように構成されたものであることを特徴とする請求項8から10いずれかに記載の光音響撮像装置。
【請求項12】
前記情報取得手段が、磁気センサまたは赤外線センサを用いて前記位置および姿勢を表す情報を取得するものであることを特徴とする請求項8から11いずれかに記載の光音響撮像装置。
【請求項13】
前記画像生成手段が、前記電気音響変換部が照射した超音波の反射波に基づいて超音波画像を生成するものであり、
前記情報取得手段が、前記超音波画像中から前記処置具を表す画像領域を抽出して前記位置および姿勢を表す情報を取得するものであることを特徴とする請求項8から11いずれかに記載の光音響撮像装置。
【請求項14】
前記光音響画像中の血管を表す画像領域を抽出して該画像領域の前記光音響画像における分布情報を取得する血管認識手段と、
前記分布情報、前記位置および姿勢を表す情報に基づいて、前記血管と前記処置具との互いの距離を計算する距離計算手段と、
該距離計算手段によって計算された前記距離が、所定値以下である場合に警告を発する警告手段とをさらに備えることを特徴とする請求項8から13いずれかに記載の光音響撮像装置。
【請求項15】
被検体内に測定光を照射し、該測定光の照射により前記被検体内で発生した光音響波を検出して該光音響波を電気信号に変換し、該電気信号に基づいて光音響画像を生成する際に使用されるプローブユニットにおいて、
測定光を照射する光照射部と、
該測定光の照射により前記被検体内で発生した光音響波を検出して該光音響波を電気信号に変換する第1の電気音響変換部を有する第1の探触子部と、
前記第1の電気音響変換部とは異なる第2の電気音響変換部を有する第2の探触子部とを備え、
前記第1の探触子部および前記第2の探触子部が、互いに離間されかつ前記第1の電気音響変換部の検出面を含む平面と前記第2の電気音響変換部の検出面を含む平面とが略一致するように構成されたことを特徴とするプローブユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−27481(P2013−27481A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164582(P2011−164582)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】