説明

光音響画像生成装置及び方法

【課題】光音響画像生成装置において、高フレームレートを実現すると共に画像品質を向上する。
【解決手段】レーザユニット13は、照明エリア制御手段15を介して被検体にレーザ光を照射する。プローブ11は、レーザ光の照射により被検体内で生じた超音波を検出する複数の超音波振動子を有する。画像生成手段23は、プローブ11で検出された超音波に基づいて光音響画像を生成する。画像範囲設定手段241は、プローブ11が有する複数の超音波振動子のうちで、光音響画像の生成に用いるべき超音波振動子の範囲を設定する。照明エリア制御手段15は、画像範囲に応じて、レーザ光が照射される照明エリア及び単位面積当たりのレーザ光の光量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光音響画像生成装置及び方法に関し、更に詳しくは、被検体にレーザ光を照射し、レーザ光照射により被検体内で生じた超音波を検出して光音響画像を生成する光音響画像生成装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内部の状態を非侵襲で検査できる画像検査法の一種として、超音波検査法が知られている。超音波検査では、超音波の送信及び受信が可能な超音波探触子を用いる。超音波探触子から被検体(生体)に超音波を送信させると、その超音波は生体内部を進んでいき、組織界面で反射する。超音波探触子でその反射音波を受信し、反射超音波が超音波探触子に戻ってくるまでの時間に基づいて距離を計算することで、内部の様子を画像化することができる。
【0003】
また、光音響効果を利用して生体の内部を画像化する光音響イメージングが知られている。一般に光音響イメージングでは、パルスレーザ光を生体内に照射する。生体内部では、生体組織がパルスレーザ光のエネルギーを吸収し、そのエネルギーによる断熱膨張により超音波(光音響信号)が発生する。この光音響信号を超音波プローブなどで検出し、検出信号に基づいて光音響画像を構成することで、光音響信号に基づく生体内の可視化が可能である。
【0004】
ここで、超音波診断装置に関し、特許文献1には、所望のフレームレートの超音波画像を得るために、探触子における走査範囲を可変にすることが記載されている。特許文献1では、電子走査形ラジアル探触子が有する複数の振動子のうちで、関心領域に対応する範囲の振動子を走査範囲として設定し、複数の振動子のうちで設定された走査範囲に対応する特定の振動子のみを駆動走査する。このようにすることで、全幅の振動子を駆動させた場合に比べて、走査時間を短縮できる。その結果、関心領域部分を画像化した超音波画像のフレームレートを向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−34538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術を光音響画像の生成に応用し、画像化する部分を全体の中の一部に狭めることで、光音響画像を高フレームレートで生成することができる。例えば動きが早い部位を観察するときに、その部位が観察できる範囲で画像化範囲を狭めることで、動きが早い部位を高いフレームレートで観察することができる。このとき、全体を画像化するときよりも、光音響画像の画像品質を高めることができれば、動きが早い部位を、高フレームレートかつ高い画像品質で観察することができる。しかしながら、従来、そのようなことを実現する構成は知られていなかった。
【0007】
本発明は、上記に鑑み、高フレームレートを実現すると共に画像品質を向上できる光音響画像生成装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、レーザ光源と、それぞれが、前記レーザ光源からのレーザ光が被検体に照射されることで被検体内において生じた超音波を検出する複数の超音波振動子を含む超音波検出手段と、前記検出された超音波に基づいて光音響画像を生成する光音響画像生成手段と、前記複数の超音波振動子のうちで、前記光音響画像の生成に用いるべき超音波振動子の範囲を設定する画像範囲設定手段と、前記画像範囲設定手段が設定した範囲に応じて、前記レーザ光が照射される照明エリア及び単位面積当たりの前記レーザ光の光量を制御する照明エリア制御手段とを備えたことを特徴とする光音響画像生成装置を提供する。
【0009】
本発明の光音響画像生成装置では、前記照明エリア制御手段が、少なくとも、被検体における、前記画像範囲設定手段が設定した範囲に対応する部分に前記レーザ光が照射されるように照明エリアを制御するものであり、第1の照明エリアに対して前記レーザ光が照射されるときの単位面積当たりのレーザ光の光量に比して、前記第1の照明エリアよりも狭い第2の照明エリアに対して前記レーザ光が照射されるときの単位面積当たりのレーザ光の光量を増加させるもの構成を採用することができる。
【0010】
前記光音響画像の生成が複数回の光音響信号を加算平均する処理を含み、前記光音響画像生成手段が、前記第2の照明エリアに前記レーザ光が照射されたとき、前記第1の照明エリアに前記レーザ光が照射されたときに加算平均する光音響信号の数よりも少ない数の光音響信号を加算平均するものとしてもよい。
【0011】
前記照明エリア制御手段が、前記レーザ光が被検体に照射される際の光の広がりを制御するためのミラーと、該ミラーを前記画像範囲設定手段が設定した範囲に応じて駆動する駆動回路とを含む構成としてもよい。
【0012】
本発明は、また、レーザ光源から出射したレーザ光を被検体に照射するステップと、前記レーザ光の照射により被検体内で超音波を検出するステップと、前記検出された超音波に基づいて光音響画像を生成するステップと、前記超音波を検出する範囲を設定するステップと、前記設定された検出範囲に応じて、前記レーザ光が照射される照明エリアを制御すると共に、単位面積当たりの前記レーザ光の光量を制御するステップとを有する光音響画像生成方法を提供する。
【0013】
本発明の光音響画像生成方法は、前記照明エリアの制御では、少なくとも、被検体における、前記設定された検出範囲に対応する部分に前記レーザ光が照射されるように照明エリアを制御し、前記光量の制御では、第1の照明エリアに対して前記レーザ光が照射されるときの単位面積当たりのレーザ光の光量に比して、前記第1の照明エリアよりも狭い第2の照明エリアに対して前記レーザ光が照射されるときの単位面積当たりのレーザ光の光量を増加させることとしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、超音波探触子が有する複数の超音波振動子のうちで、光音響画像の生成に用いるべき超音波振動子の範囲、つまり、光音響画像で画像化すべき画像範囲を設定する。設定する画像範囲を狭めることで1回の光音響画像の生成に要する時間を短縮でき、高いフレームレートで光音響画像を生成することができる。また、本発明では、光音響画像で画像化する範囲に合わせて被検体にレーザ光を照射する照明エリア制御すると共に、その照明エリアにおけるレーザ光の単位面積当たりの光量を制御する。例えば、狭い画像範囲で光音響画像を生成するときは、広い画像範囲で光音響画像を生成するときに比して照明エリアを狭めると共に、その狭めた照明エリア内における単位面積当たりのレーザ光の光量を、広い画像範囲で光音響画像を生成するときの照明エリアにおける単位面積当たりのレーザ光の光量に比して増やす。そのようにすることで、画像範囲を狭めたときに検出される光音響信号の信号強度を、画像範囲が広い場合の光音響信号に比して強めることができ、生成される光音響画像の画像品質を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態の光音響画像生成装置を示すブロック図。
【図2】ブロックの分割例を示す図。
【図3A】広エリアモードで光音響画像の生成を行うときのレーザ光照射と光音響信号の検出とを示す図。
【図3B】広エリアモードで光音響画像の生成を行うときのレーザ光照射と光音響信号の検出とを示す図。
【図3C】広エリアモードで光音響画像の生成を行うときのレーザ光照射と光音響信号の検出とを示す図。
【図4】狭エリアモードで光音響画像の生成を行うときのレーザ光照射と光音響信号の検出とを示す図。
【図5】動作手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態の光音響画像生成装置を示す。光音響画像生成装置(光音響画像診断装置)10は、超音波探触子(プローブ)11、超音波ユニット12、及びレーザ光源(レーザユニット)13を備える。光音響画像診断装置10は、超音波画像と光音響画像との双方を生成可能である。なお、超音波画像の生成は必須ではなく、光音響画像診断装置10が超音波画像の生成を行わないものとすることもできる。その場合、超音波画像の生成にのみ必要な機能(構成要素)は省くことができる。
【0017】
レーザユニット13は、光音響画像生成の際に、被検体に照射するレーザ光を生成する。レーザ光の波長は、観察対象物に応じて適宜設定すればよい。レーザユニット13から出射したレーザ光は、照明エリア制御手段15を介して被検体に照射される。照明エリア制御手段15は、レーザ光が被検体に照射される際の照明エリア、及び被検体に照射されるレーザ光の単位面積当たりの光量を制御する。照明エリア制御手段15は、例えばプローブ11に配置される。レーザユニット13を出射した光は、例えば光ファイバなどの導光手段を用いてプローブ11まで導光され、プローブ11内に設けられた照明エリア制御手段15を介して被検体に向けて照射される。
【0018】
プローブ11は、超音波検出手段に相当し、被検体に対する超音波の出力(送信)、及び被検体からの超音波の検出(受信)を行う。プローブ11は、例えば一次元的に配列された複数の超音波振動子を有する。各超音波振動子は、超音波画像の生成時は被検体に向けて超音波を出力し、出力された超音波に対する反射超音波(以下、反射音響信号とも呼ぶ)を検出する。また、各超音波振動子は、光音響画像生成時は、被検体内の測定対象物がレーザユニット13からのレーザ光を吸収することで生じた超音波(以下、光音響信号とも呼ぶ)を検出する。
【0019】
超音波ユニット12は、受信回路21、AD変換手段22、画像生成手段23、制御手段24、及び送信制御回路25を有する。受信回路21は、プローブ11が有する複数の超音波振動子が検出した超音波(光音響信号又は反射音響信号)を受信する。AD変換手段22は、受信回路21が受信した超音波信号をデジタル信号に変換する。AD変換手段22は、例えば所定のサンプリング周期で超音波信号をサンプリングする。
【0020】
画像生成手段23は、AD変換手段22でサンプリングされた超音波信号に基づいて断層画像を生成する。画像生成手段23は、プローブ11で検出された光音響信号に基づいて光音響画像を生成すると共に、プローブ11で検出された反射音響信号に基づいて超音波画像を生成する。画像生成手段23は、画像再構成手段231、検波手段232、対数変換手段233、及び画像構築手段234を含む。画像生成手段23内の各部の機能は、コンピュータが所定のプログラムに従って処理を動作することで実現できる。
【0021】
画像再構成手段231は、プローブ11の複数の超音波振動子で検出された超音波信号に基づいて、断層画像の各ラインのデータを生成する。画像再構成手段231は、例えばプローブ11の64個の超音波振動子からのデータを、超音波振動子の位置に応じた遅延時間で加算し、1ライン分のデータを生成する(遅延加算法)。画像再構成手段231は、遅延加算法に代えて、CBP法(Circular Back Projection)により再構成を行ってもよい。あるいは画像再構成手段231は、ハフ変換法又はフーリエ変換法を用いて再構成を行ってもよい。
【0022】
検波手段232は、画像再構成手段231が出力する各ラインのデータの包絡線を出力する。対数変換手段233は、検波手段232が出力する包絡線を対数変換し、ダイナミックレンジを広げる。画像構築手段234は、対数変換が施された各ラインのデータに基づいて、断層画像を生成する。画像構築手段234は、例えば超音波信号(ピーク部分)の時間軸方向の位置を、断層画像における深さ方向の位置に変換して断層画像を生成する。画像表示手段14は、画像構築手段234が生成した断層画像を、表示モニタなどに表示する。
【0023】
光音響画像及び超音波画像の生成では、プローブ11の複数の超音波振動子を複数のブロックに分割し、ブロックごとに光照射又は超音波の送信と超音波の検出とを行ってもよい。図2は、ブロックの分割例を示す。例えばプローブ11が192個の超音波振動子を有しているとする。その場合に、プローブ11の全192個の超音波振動子を64素子ずつの領域に分割し、全素子の範囲を、ブロックA、ブロックB、及びブロックCの3つのブロックに分割してもよい。例えば、光音響画像の生成では、光照射及び光音響信号の検出を3つのブロックのそれぞれで実行し、超音波画像の生成では、超音波送信及び反射音響信号の検出を3つのブロックのそれぞれで実行する。
【0024】
図1に戻り、制御手段24は、超音波ユニット12内の各部を制御する。制御手段24は、画像生成手段23で超音波画像を生成する場合は、送信制御回路25に超音波送信トリガ信号を送る。送信制御回路25は、トリガ信号を受けると、プローブ11から超音波を送信させる。制御手段24は、超音波送信トリガ信号と同期して、AD変換手段22における反射音響信号のサンプリング開始タイミングを制御する。
【0025】
一方、制御手段24は、画像生成手段23で光音響画像を生成する場合は、レーザユニット13に対してレーザ発振トリガ信号を送る。レーザユニット13は、トリガ信号を受けてレーザ発振を行い、レーザ光を出射する。制御手段24は、レーザ発振トリガ信号と同期して、AD変換手段22における光音響信号のサンプリング開始タイミングを制御する。
【0026】
ここで、本実施形態の光音響画像診断装置10は、広エリアモードと狭エリアモードとの2つの動作モードで動作する。広エリアモードは、例えばプローブ11が有する複数の超音波振動子の全てを利用して断層画像(光音響画像又は超音波画像)を生成するモードである。狭エリアモードは、プローブ11が有する複数の超音波振動子のうちの一部範囲を利用して断層画像を生成するモードである。狭エリアモードは、広エリアモードに比して、画像化する範囲が狭い分だけ1枚の断層画像の生成に要する時間が短く、従って断層画像を動画表示する際のフレームレートを向上できる。ユーザは、例えば操作パネルやプローブ11に設けられたスイッチなどを操作し、制御手段24に対して動作モードの設定(切替え)を行う。
【0027】
制御手段24は、画像範囲設定手段241を含む。画像範囲設定手段241は、プローブ11の複数の超音波振動子のうちで、断層画像の生成に用いるべき超音波振動子の範囲を設定する。画像範囲設定手段241は、動作モードが広エリアモードのときは、例えばプローブ11が有する複数の超音波振動子の全範囲に相当する第1の画像範囲を画像範囲として設定する。一方、動作モードが狭エリアモードのときは、例えば複数の超音波振動子のうちの中央部分の範囲に相当する第2の画像範囲を画像範囲として設定する。画像範囲設定手段241は、設定した画像化の範囲に応じて、プローブ11に送受信エリア切替信号を送り、照明エリア制御手段15に照明エリア切替信号を送る。
【0028】
照明エリア制御手段15は、照明エリア切替信号に基づいて、照明エリア及び単位面積当たりのレーザ光の光量を制御する。照明エリア制御手段15は、少なくとも、被検体における、画像範囲設定手段241が設定した範囲に対応する部分にレーザ光が照射されるように照明エリアを制御する。また、照明エリア制御手段15は、照明エリアを狭くしたときは、単位面積当たりのレーザ光の光量を増加させる。例えば第1の画像範囲に対応する第1の照明エリアから、第2の画像範囲に対応する第2の照明エリアに照明エリアを切り替えるとき、第1の照明エリアにおける単位面積当たりのレーザ光の光量に比して、第2の照明エリアにおける単位面積当たりのレーザ光の光量を増加させる。
【0029】
画像範囲設定手段241は、広エリアモードでは、例えば図2のブロックA〜Cの全域を画像範囲として設定し、狭エリアモードでは、例えば中央のブロックBを画像範囲として設定する。この場合、照明エリア制御手段15は、広エリアモードでは、プローブ11が接触する被検体のブロックA〜Cの直下の部分を含む第1の照明エリアにレーザ光を照射する。また、狭エリアモードでは、プローブ11が接触する被検体のブロックBの直下の部分を含む第2の照明エリアにレーザ光を照射する。照明エリア制御手段15は、例えば被検体に照射するレーザ光の絶対光量をほぼ一定に保ったまま、照明エリアの切り替えを行う。第2の照明エリアは第1の照明エリアよりも面積が狭い分だけ、単位面積当たりのレーザ光の光量が増加する。
【0030】
照明エリア制御手段15は、例えばレーザ光が被検体に照射される際の光の広がりを制御するためのミラーを含む。例えば、レーザユニット13を出射したレーザ光を導光する光ファイバの出射端を2枚のミラーで挟み込み、ミラーの角度に応じてレーザ光の広がりを制御する。照明エリア制御手段15を構成するミラーを、画像範囲設定手段241が設定した画像範囲に応じて駆動することで、照明エリアを制御することができる。このとき、光ファイバを用いて導光されるレーザ光の絶対光量を一定に保てば、照明エリアに応じて単位面積当たりのレーザ光の光量を制御することができる。
【0031】
図3A〜図3Cに、広エリアモード(第1の画像範囲)で光音響画像の生成を行うときのレーザ光照射と光音響信号の検出とを示す。レーザ光照射に先立って、照明エリア制御手段15は、照明エリアを、被検体のブロックA〜C(図2)に対応する部分を含む第1の照明エリアに制御する。例えば図3Aに示すように、照明エリア制御手段15を構成する2つのミラーの角度を大きく取り、光ファイバ16の出射端から出射したレーザ光が、被検体のブロックA〜Cに対応する部分に照射されるようにする。
【0032】
まず、レーザユニット13からのパルスレーザ光を第1の照明エリアに照射し、ブロックAに対応する64個の超音波振動子を用いて光音響信号を検出する(図3A)次いで、レーザユニット13からのパルスレーザ光を第1の照明エリアに照射し、ブロックBに対応する64個の超音波振動子を用いて光音響信号を検出する(図3B)。その後、レーザユニット13からのパルスレーザ光を第1の照明エリアに照射し、ブロックCに対応する64個の超音波振動子を用いて光音響信号を検出する(図3C)。画像生成手段23は、3回に分けて検出された計192素子分の光音響信号の検出結果に基づいて、ブロックA〜Cに対応した第1の画像範囲で光音響画像を生成する。
【0033】
図4に、狭エリアモード(第2の画像範囲)で光音響画像の生成を行うときのレーザ光照射と光音響信号の検出とを示す。レーザ光照射に先立って、照明エリア制御手段15は、照明エリアを、被検体のブロックBに対応する部分を含む第2の照明エリアに制御する。照明エリア制御手段15は、例えば図4に示すように2つのミラーの間の角度を狭くし、光の広がりを抑えることで、第1の画像範囲で光音響画像を生成する場合(図3A〜図3C)に比して、照明エリアを狭くする。この状態でレーザユニット13からのパルスレーザ光を第2の照明エリアに照射し、ブロックBに対応する64個の超音波振動子を用いて光音響信号を検出する。画像生成手段23は、ブロックBに対応する64素子分の光音響信号の検出結果に基づいて、ブロックBに対応した第2の画像範囲で光音響画像を生成する。
【0034】
なお、図3A〜図3Cに示す広い照明エリアにレーザ光を照射する際に、生体安全の光量の上限、つまり、生体への安全基準を満たすエネルギー密度の上限となる光量でレーザ光の照射が可能な場合、図4に示すようにレーザ光を狭い照明エリアに集中させると、生体安全の光量の限界値を超えることもあり、注意を要する。しかしながら、レーザ側の制約などから、広い照明エリアにレーザ光を照射する際に生体安全の上限でレーザ光照射を行うことができるとは限らない。特にレーザ側の制約などからレーザ光の光量が安全基準の上限となる光量よりも少ない場合は、図3A〜図3C及び図4に示すような、レーザ光の広がりを制御することで単位面積当たりの光量を制御する機構が有効であると考えられる。
【0035】
図5は、光音響画像生成時の動作手順を示す。ユーザは、動作モードの設定を行う(ステップS1)。ユーザは、例えば動きの激しい部位を観察するために高いフレームレートで光音響画像を生成したいときは、動作モードを狭エリアモードに設定する。一方、動きが激しくない場合で、広い範囲で画像化を行いたいときは、動作モードを広エリアモードに設定する。画像範囲設定手段241は、設定された動作モードが広エリアモードであるか否かを判断し(ステップS2)、動作モードが広エリアモードであるときは、画像範囲として第1の画像範囲を設定する(ステップS3)。また、照明エリア制御手段15に照明エリア切替信号を送り、被検体に照射されるレーザ光の照明エリアを第1の照明エリアに制御させる(ステップS4)。
【0036】
画像範囲設定手段241は、ステップS2で動作モードが広エリアモードではないと判断したとき、つまり動作モードが狭エリアモードであるときは、画像範囲として第1の画像範囲よりも狭い第2の画像範囲を設定する(ステップS5)。また、照明エリア制御手段15に照明エリア切替信号を送り、被検体に照射されるレーザ光の照明エリアを第1の照明エリアよりも狭い第2の照明エリアに制御させる(ステップS6)。
【0037】
画像範囲及び照明エリアの設定後、制御手段24は、レーザユニット13に対してレーザ発振トリガ信号を出力する(ステップS7)。レーザユニット13は、レーザ発振トリガ信号を受けた後にパルスレーザ光を出射する。レーザユニット13から出射したパルスレーザ光は、照明エリア制御手段15を介して被検体に照射される(ステップS8)。ステップS8では、動作モードが広エリアモードであるときは、例えば第1の照明エリアであるブロックA〜Cに対応した全範囲にレーザ光が照射される(図3A〜図3C)。動作モードが狭エリアモードであるときは、例えば第2の照明エリアであるブロックBに対応した範囲にレーザ光が照射される(図4)。
【0038】
プローブ11は、レーザ光の照射後、レーザ光の照射により生体内で発生した光音響信号を受信する(ステップS9)。動作モードが広エリアモードであるときは、例えばステップS7〜S9をブロックA〜Cの3つのブロックのそれぞれで実行し、64素子分ずつ、3回に分けて全192素子分の光音響信号を検出する。動作モードが狭エリアモードであるときは、例えばブロックBに対してのみステップS7〜S9を実行し、ブロックBに対応する64素子分の光音響信号を検出する。
【0039】
超音波ユニット12内の画像生成手段23は、光音響信号に基づいて光音響画像を生成する(ステップS10)。ステップS10では、画像生成手段23は、画像範囲設定手段241が設定した画像範囲に対応する超音波振動子で検出された光音響信号に基づいて光音響画像を生成する。例えば動作モードが広エリアモードであるときは、全192素子分の光音響信号に基づいて光音響画像を生成し、動作モードが狭エリアモードであるときは、中央の64素子分の光音響信号に基づいて光音響画像を生成する。
【0040】
画像表示手段14は、ステップS9で生成された光音響画像を表示画面上に表示する(ステップS11)。動作モードが広エリアモードであるときは、画像範囲が広く、例えば1枚の光音響画像を生成するために3回のレーザ光照射及び光音響信号の検出が必要なため、フレームレートは低くなる。一方、動作モードが狭エリアモードのときは、画像範囲は狭いものの、1枚の光音響画像生成に要する時間は短くなり、高フレームレートを実現できる。
【0041】
本実施形態では、画像範囲設定手段241を用い、プローブ11が有する複数の超音波振動子のうちで光音響画像の生成に用いる超音波振動子の範囲を設定する。例えば広エリアモードでは、全ての超音波振動子に対応する範囲を画像範囲として設定し、狭エリアモードでは、中央の所定個数分の超音波振動子に対応する範囲を画像範囲として設定する。画像生成手段23は、設定された範囲の超音波振動子からの光音響信号に基づいて光音響信号を生成する。例えば、広エリアモードでは1枚の光音響画像を生成するために3回の光照射及び光音響信号の検出が必要であったものが、狭エリアモードでは1回の光照射及び光音響信号の検出で1枚の光音響画像を生成することができる。動作モードを狭エリアモードとすることで、広エリアモード時に比して1枚の光音響画像生成に要する時間を短縮することができ、その結果として、光音響画像を動画的に表示する際のフレームレートを向上することができる。
【0042】
また、本実施形態では、照明エリア制御手段15が、画像範囲設定手段が設定した範囲に応じて、レーザ光が照射される照明エリア、及び照明エリアにおける単位面積当たりのレーザ光の光量を制御する。例えば広エリアモードでは、超音波振動子の全てをカバーする広い照明エリアでレーザ光の照射を行い、狭エリアモードでは、光音響信号を検出すべき超音波振動子の範囲をカバーする狭い照明エリアでレーザ光の照射を行う。例えば狭エリアモードにおいて、広エリアモードにおいて広い照明エリアに照射していたレーザ光を狭い照明エリアに集中させることで、狭い照明エリアにおける単位面積当たりのレーザ光の光量を、広い照明エリアにおける単位面積当たりのレーザ光の光量に比して増加させる。このようにすることで、狭エリアモード時に超音波振動子で検出される光音響信号の信号強度を、広エリアモード時に超音波振動子で検出される光音響信号の信号強度よりも強めることができる。従って、狭エリアモードでは、広エリアモードに比して、光音響画像の画像品質を向上できる。
【0043】
ところで、光音響画像の生成では、一度のレーザ光照射で検出される光音響信号の信号強度が弱いため、複数回の光音響信号(光音響画像)を加算平均して光音響画像を生成することがある。加算平均では、加算平均の対象となるフレームの枚数を増やすほど、光音響信号の信号強度を上げることができ、光音響画像において対象部位を明確に映像化することができる。しかしながら、動きの速い部位を観測する場合には、フレーム間で部位が動くために、加算平均するフレームの枚数を増やすと、正しい位置で加算平均することができず、異なる位置の光音響信号が加算平均されることで、画像がぼやけた画像となることがある。本実施形態では、狭エリアモード時は広エリアモード時に比して光音響信号の信号強度を強めることができるため、加算平均を行う場合のフレーム枚数を減らすことができる。一度のレーザ光照射で十分な強度の光音響信号が得られる場合は、加算平均処理を省略することもできる。本実施形態は、その点においても、動きが早い部位への対応に有効である。
【0044】
なお、超音波画像については、画像範囲に対応する超音波振動子から超音波送信を行って反射超音波を検出すればよい。例えば広エリアモード時は、ブロックA〜C(図2)のそれぞれで超音波の送受信を行って超音波画像を生成し、狭エリアモード時はブロックBのみで超音波の送受信を行って超音波画像を生成すればよい。光音響画像と同じ画像範囲で超音波画像を生成し、画像表示手段14に、同じ画像範囲の光音響画像と超音波画像とを重ねて表示するようにしてもよい。
【0045】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の光音響画像生成装置及び方法は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
10:光音響画像生成装置
11:プローブ
12:超音波ユニット
13:レーザユニット
14:画像表示手段
15:照明エリア制御手段
16:光ファイバ
21:受信回路
22:AD変換手段
23:画像生成手段
24:制御手段
25:送信制御回路
231:画像再構成手段
232:検波手段
233:対数変換手段
234:画像構築手段
241:画像範囲設定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源と、
それぞれが、前記レーザ光源からのレーザ光が被検体に照射されることで被検体内において生じた超音波を検出する複数の超音波振動子を含む超音波検出手段と、
前記検出された超音波に基づいて光音響画像を生成する光音響画像生成手段と、
前記複数の超音波振動子のうちで、前記光音響画像の生成に用いるべき超音波振動子の範囲を設定する画像範囲設定手段と、
前記画像範囲設定手段が設定した範囲に応じて、前記レーザ光が照射される照明エリア及び単位面積当たりの前記レーザ光の光量を制御する照明エリア制御手段とを備えたことを特徴とする光音響画像生成装置。
【請求項2】
前記照明エリア制御手段が、少なくとも、被検体における、前記画像範囲設定手段が設定した範囲に対応する部分に前記レーザ光が照射されるように照明エリアを制御するものであり、第1の照明エリアに対して前記レーザ光が照射されるときの単位面積当たりのレーザ光の光量に比して、前記第1の照明エリアよりも狭い第2の照明エリアに対して前記レーザ光が照射されるときの単位面積当たりのレーザ光の光量を増加させるものであることを特徴とする請求項1に記載の光音響画像生成装置。
【請求項3】
前記光音響画像の生成が複数回の光音響信号を加算平均する処理を含み、前記光音響画像生成手段が、前記第2の照明エリアに前記レーザ光が照射されたとき、前記第1の照明エリアに前記レーザ光が照射されたときに加算平均する光音響信号の数よりも少ない数の光音響信号を加算平均するものであることを特徴とする請求項2に記載の光音響画像生成装置。
【請求項4】
前記照明エリア制御手段が、前記レーザ光が被検体に照射される際の光の広がりを制御するためのミラーと、該ミラーを前記画像範囲設定手段が設定した範囲に応じて駆動する駆動回路とを含むものであることを特徴とする請求項1から3何れかに記載の光音響画像生成装置。
【請求項5】
レーザ光源から出射したレーザ光を被検体に照射するステップと、
前記レーザ光の照射により被検体内で超音波を検出するステップと、
前記検出された超音波に基づいて光音響画像を生成するステップと、
前記超音波を検出する範囲を設定するステップと、
前記設定された検出範囲に応じて、前記レーザ光が照射される照明エリアを制御すると共に、単位面積当たりの前記レーザ光の光量を制御するステップとを有する光音響画像生成方法。
【請求項6】
前記照明エリアの制御では、少なくとも、被検体における、前記設定された検出範囲に対応する部分に前記レーザ光が照射されるように照明エリアを制御し、
前記光量の制御では、第1の照明エリアに対して前記レーザ光が照射されるときの単位面積当たりのレーザ光の光量に比して、前記第1の照明エリアよりも狭い第2の照明エリアに対して前記レーザ光が照射されるときの単位面積当たりのレーザ光の光量を増加させることを特徴とする請求項5に記載の光音響画像生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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