説明

免疫、炎症または神経保護応答のための方法

環状−di−GMP、または環状−di−GMPと同じ効果をもつその環状ジヌクレオチド類似体、患者の免疫または炎症性応答を刺激し,または高め、またはアジュバントとして用いてワクチンへの免疫応答を高める。環状−di−GMP、またはその環状ジヌクレオチド類似体はまた、神経変性の結果となる傷害、疾病、障害または健康状態の影響を、阻害、治療、または寛解するための神経保護剤として用いることに対し神経保護の性質をもつ。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は免疫または炎症応答の刺激および亢進に関し、ワクチンに対する免疫を亢進するためのアジュバントの使用を含む。また本発明は神経変性となる傷害、疾病、障害または健康状態の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
世界中の多数の人々が感染性疾病、癌、リンパ腫、HIV、AIDS、関節リウマチ、喘息、欠損免疫を含む免疫不全障害および疾病、アレルギー、または炎症性応答に侵されている。多くの疾病や疾患の結果は免疫または炎症性応答を含み、樹状細胞(DCs)の刺激、T細胞、種々のサイトカイン、ケモカインおよびインターフェロンの生成または抑制、およびサイトカインおよびケモカイン受容体の有効性における増減と関連する。さらに、多くの神経学的および神経変性の疾病は神経またはニューロン細胞へのダメージを含む。

【0003】
樹状細胞
樹状細胞(DCs)は最も有力な抗原呈示細胞であり、免疫の発生および調節において非常に重要な役割を演じる(非特許文献1)。それらの初回刺激は成熟時に取得され転写因子の活性化、抗原処理、転移のコントロールおよび炎症性応答の制御に特徴がある(非特許文献2)。DCsの制御された転移は生理学的免疫応答の誘発に中心がある。抗原−呈示因子に対して重大な意味をもつ既知のDCsの表面分子の発現はHLA−DR、CD40、CD83、CXCR4およびCD80およびCD86を含み、そしてこれは増加したサイトカインおよびケモカイン生成および刺激性の能力と関連する。
【0004】
DCsは病原体または痘苗源を検出し、種々の防御応答を表示することによって生得的な順応性の免疫を連結する。DCsは抗原捕獲およびT細胞への提示において特定化する細胞の系統群を含み、粘膜表面を横切る細菌の取り込みの役を演じ、タイトな接合部を開き上皮を直接横切る抗原を試料とすることができる(Rimoldi et al.,2004)。DCsは上皮粘膜固有層およびパイエル板の腸抗原を試料とし、それらをリンパ球にある腸間膜の結節に輸送する(Macpherson et al.,2004)。DCsは強力な抗原呈示細胞であり、免疫応答を開始し調節することができ、それゆえ免疫療法のような適用に対し細胞性のワクチン成分として大いに活用される。排出リンパ節のT細胞領域へ末梢組織から移動する能力はTリンパ球の初回刺激に非常に重要である。有力なTh−1細胞の刺激活性およびケモカインへの実質的な走化性の応答性を獲得するようにDCsを促進する信号分子はワクチンの開発において腫瘍免疫療法に対して有用である(Scandella et al.,2002)。
【0005】
DCsはHIVの第一の標的であり、T細胞をクラスター形成し活性化することによって、抗ウイルス性の免疫を活性化しウイルス播種を容易にすることができる(Sewell and Price,2001; Frank and Pope,2002)。HIV感染中に、免疫抑制のロスがあり、DCsの機能不全はAIDS進行に関連した免疫抑制に貢献することができる(Quaranta et al.,2004)。表現型の形態学的機能的発生的なプログラムを操作することによる未成熟DCsの活性化はAIDs患者に対し治療学的処置のための臨床応用に有用である。
【0006】
サイトカインおよび同時刺激の分子
サイトカインは免疫および炎症性反応を調節するタンパク質である。サイトカインは生得的および後天性の両方の免疫応答の活性化および維持に必要な役割を演じる。サイトカインおよびケモカインは伝統的およびDNAの両方のワクチンとともにワクチンアジュバントとして用いられてきた。サイトカインは小さいタンパク質であり(〜25kDa)身体の種々の細胞によって遊離し、通常活性化刺激に応答し、特異的受容体に結合して応答を誘発する。自己分泌法で作用し、サイトカインを放出する細胞の挙動に影響し、またはパラ分泌法において、隣接細胞の挙動に影響を与える。若干のサイトカインは内分泌法で作用し、循環に入る能力および半減期に依るが、遠い細胞の挙動に影響する。
【0007】
インターロイキン−12(IL−12)は細胞応答の強力なエンハンサーである。IL−12は細胞障害性Tリンパ球(CTL)およびナチュラルキラー(NK)細胞の活性を亢進する強力な抗腫瘍性効果をもつ強力な炎症誘発性のサイトカインである。マウスのIL−12治療はT非依存性多糖体抗原に応答する(Bucchanan et al.,1998)。IL−12およびIL−1は粘膜投与ワクチンに全身的免疫を誘発する事が示された(Boyak and McGhee,2001)。研究ではIL−12形質導入樹状細胞でワクチン注射したマウスで確立された神経芽細胞腫の回帰を示した(Redlinger et al.,2003)。腫瘍内に注射したIL−12形質導入細胞を用いる同形のA/Jマウスを用いた他の研究では、DCsによる増加したIL−12生成が神経芽細胞腫の貧弱な免疫原性のマウスモデルにおいてかなりの抗腫瘍性応答を誘発することを示す腫瘍回帰をマウスが受けたことを示した(Shimazu et al.,2001)。これらの結果は神経芽細胞腫の免疫生物学でのDCsの重要な役割を示し、アポトーシスを誘発した腫瘍からのこれら細胞の保護は攻撃的な腫瘍を処理する免疫療法に対し決定的な側面であることを示した。サイトカイン、ケモカインおよび同時刺激の分子の同時発現はDNAワクチンの免疫原生を亢進する。
【0008】
大抵の細胞内の病原体に真実であるように、生のクラミジア感染症は不活性化生物体での免疫化よりも強い保護免疫を誘発し、高レベルの炎症誘発性サイトカインIL−12および生きている生物体で免疫化したマウス間のDCsの濃縮と関連する(Zhang, et al.,1999)。これらの結果は炎症誘発性のサイトカインおよびDCsの活性化と分化の誘発がC. trachomatis感染に活性な免疫を誘発するために重要であることを示している。
【0009】
ケモカインはサイトカインのクラスであり、化学誘引物質の性質をもち、ケモカインの源に移動する適当な受容体をもつ細胞を誘発する。一定のケモカインは感染部位に細胞を補充することができる。RANTESのようなケモカインはエフェクターT細胞を含むロイコサイトの範囲の組織に浸潤を促進することができる。組織中の病原体抗原を組織に認識するエフェクターT細胞はサイトカイン、例えばE−セレクチンを発現するように内皮細胞を活性化するTNF−α、VCAM−1、およびICAM−1、そしてケモカイン、例えば接着分子を活性化するようにエフェクターT細胞に作用する事ができるRANTESを生成する。
【0010】
ケモカインは少なくとも19のGタンパク質を結合した受容体(GPCRs)を通して影響を与える。ケモカイン受容体の命名法はケモカイン亜科に用いられる表示法に従い、CCR1−10(CCケモカイン受容体1−10)、CXCR1−6、XCR1およびCX3CR1と呼ばれる。ケモカイン受容体の注目すべき特徴はリガンド結合での選択性の相関的な不足であり、多くのケモカイン受容体は高親和性をもつ1以上のケモカインを結合する。例えば、11個のケモカインは、MIP−1α(マクロファージ炎症性タンパク質1α)、MIP−1β、MIP−1δ、RANTES(発現し分泌した活性化通常のT細胞に規定された)、MCP−1(単球走化性ペプチド1)、MCP−2、MCP−3、MCP−4、Lkn−1(ロイコタクチン−1)、MPIF−1(骨髄前駆体抑制性因子1)およびHCC−1(血液濾過CCケモカイン1)を含むCCR1受容体に結合することが報告されており、親和性を変え、異なる度合いの作用薬挙動で作用する。同様に、個々のケモカインはリガンドとして異なる受容体に作用する。例えば、MCP−3はCCR1、CCR2、CCR3およびCCR5用のリガンドとして作用する。この乱雑さおよび生じる信号を送る明らかな重複は、ケモカイン、受容体およびエフェクタの異なる組み合わせを発現する異なる組織で信号を送るケモカインのコントロールについて多くの疑問を与える(ACTA BIOCHIMICA et BIOPHYSICA SINICA 2003,35(9):779-788)。
【0011】
HIVの異なる変異体があり、感染する細胞タイプは補助受容体として結合するケモカイン受容体によって大きい程度に決定される。一次感染に関連したHIVの変異体は、補助受容体としてCCケモカインRANTES、MIP−1α、およびMIP−1βを結合するCCR5を使用し、感染する細胞に低レベルのCD4のみを要する。HIVのこれら変異体はインヴィヴォの樹状細胞、マクロファージ、およびT細胞を感染する。
【0012】
ケモカイン信号システムの明らかな複雑さにかかわらず、個々のケモカイン受容体の重要性はノックアウトマウス、標的遺伝子破壊および特異的ケモカイン拮抗薬の適用の詳細な研究から次第に分かってくる。例として、CCR1ノックアウトマウスは骨髄の前駆体細胞の無秩序な輸送および増殖をもつこと、および刺激の多様性への障害性炎症性応答を示すことが報告された。CCR1信号システムのコントロールはCCR1ノックアウトマウスがかなり減少した拒絶反応を心臓同種移殖に示すので臨床的重要性をもつことが示された。これはブロックするCCR1信号経路の戦略が移殖した組織の拒絶反応を避ける際に有用であることを示唆している(ACTA BIOCHIMICA et BIOPHYSICA SINICA 2003,35(9):779-788)。
【0013】
CCR5はHIVに対する補助受容体としての役割のために広範な関心を生じた。この受容体、CCR5Δ32の自然発生の変異体の同定、およびこの変異体に対するホモおよびヘテロ接合体がHIV感染への耐性を増加しAIDSの開発がリガンドを結合するCCR5の能力を調整することから引き出すことができるヒトの健康への潜在的利益をもつことの観察(非特許文献1)。
【0014】
免疫療法
同時刺激の分子はT細胞活性化の重要な制御因子であり、従って免疫応答の治療学的処置に対する有利な標的である。鍵となる同時刺激受容体の一つはT細胞リガンド、CD28、およびCTLA−4を結合するCD80である。同時刺激分子のCD80、CD86およびCD83の発現はアジュバント活性の重要な役割を演じることが示され、CD86の発現はCT−ベースのアジュバントの特色であることが知られている(Lyke,2004)。従って、CD80発現に影響する分子または化合物は保護免疫を誘発する有望な新規の治療学的免疫療法剤を示す。多数の免疫調節治療は臨床応用のために開発されている。これらは抗原呈示および同時刺激を標的とするアプローチ、T細胞活性化、炎症誘発性媒介物の作用およびサイトカインバランスを調節することを含む(Asadullah et al.,2002)。腫瘍壊死因子(TNFs)はマクロファージおよびリンパ球によって生成された細胞毒性のサイトカインであることが知られており、癌患者または妊娠中の人々では抑制されていることが見出されている。
【0015】
癌のための免疫療法
免疫抑制は男性では進行性悪性の特徴である(Lents,1999)。免疫療法は癌を攻撃するために免疫システムを用いる癌治療に与えられた名前である。すなわち、免疫システムは癌の成長と進行を遅くするように刺激することができる。一定のサイトカインおよび抗体を含む免疫治療は現在標準癌治療の一部となっている。癌の免疫治療はウイリアム・コーリー博士が癌はバクテリア生成物およびコーリーの毒として知られた成分の注射によって調整できることを示したとき、ほぼ100年前に始まった。現在コーリーの毒の活性抗癌成分は細菌性のオリゴヌクレオチドであることが知られている。
【0016】
全身性の免疫治療は全身を治療する必要がある免疫治療を言い、特に癌が広がったとき、身体の一の「局在性」部分を治療するために用いられる免疫治療を言う。確立された腫瘍内に存在する抑圧された環境は効果的な免疫応答を示し、新しい戦略が免疫誘発性の環境を促進し、樹状突起細胞活性化を促進し、抗腫瘍免疫を亢進するように局所的腫瘍環境を操作するために現れる(Kaufman and Disis,2004)。
【0017】
免疫治療は、ある程度の特殊性、固体腫瘍に血管外湧出する能力、および長期保護免疫応答を誘発するための可能性を与えるので、脳腫瘍の治療に強力な有用な戦略である。サイトカインの使用を含む幾つかのアプローチが開発された。脳腫瘍の治療の研究では、炎症誘発性のサイトカインIL−12を用いたT細胞刺激は抗腫瘍免疫を誘発することができる(Gawlic et al.,2004)。このようにして、腫瘍−標的同時刺激と組み合わせたサイトカイン治療、またはサイトカイン生成および炎症誘発性応答を刺激する方法は、脳腫瘍に対し有用な補助的治療である。
【0018】
感染性疾病のための免疫治療
薬物−耐性マイコバクテリウム結核菌感染の増加する罹患率に戦うために、新しい薬物が開発されている。一の約束する戦略は免疫調節するサイトカイン(特にTh−1およびTh−1−様サイトカイン、例えばIL−12および炎症誘発性のサイトカイン、例えばTNF−α)を用いるようにマイコバクテリア感染に応答してサイトカインネットワークを動態化するため、適当な免疫調節体と組み合わせて通常のアンチミコバクエリア薬剤を用いる抵抗性ミコバクテリアを用いて患者を治療することである(Tomioka 2004)。Th−1応答は細胞介在免疫に関係し細胞内病原体およびビールスによる感染を調整する際に基本的である。
【0019】
クリプトコックスネオフォルマンスは免疫無防備状態の宿主で優勢的にヒトの疾病を起こす真菌病原体であるが、重篤な感染は免疫的確性の個体に起きることができる。細胞の免疫の活性化はアンチクリプトコッカスの防御において鍵となる役割を演じ、従って、免疫および炎症誘発性の応答を増加する免疫治療が抵抗性クリプトコッカス髄膜炎に対し免疫学的パラメーターおよび持続性臨床的回復を復活するために有用な治療である(Netea et al.,2004)。
【0020】
バクテリアのバチルス・アントラシスは炭疽病の原因であり、治療しないままに放置すると、細菌尿症、多システム機能障害および死となる。炭疽致死的毒は病原体に対し免疫の確立に中心的である樹状細胞の機能および宿主免疫応答を激しく損なう(Agrawal et al.,2003)。致死毒に暴露し、次いでリポポリサッカリドに暴露した樹状細胞は同時刺激分子をアップレグレートせず、炎症誘発性サイトカインの量を大きく減らして分泌し、T細胞を効果的に刺激しない(Agrawal et al.,2003)。樹状細胞刺激する方法および炎症誘発性応答は免疫応答を刺激するために、そして炭疽病感染の免疫治療に有効な戦略である。
【0021】
全身性真菌症に対する宿主防御は、生得的で、生得的耐性が炎症性応答を含む後天性機構に依存して多因子性であり、これによって炎症誘発性のサイトカインの生成が殺生の宿主防御能力を増加する(Clemons and Stevens,2001)。従って、強力のTh−1応答は免疫治療が真菌症を治療または抑制する際に基礎として有用性があることを示唆する保護的免疫を与えることができる。
【0022】
DCsにおいてサルモネラ感染中に起きる細胞内活性の研究は、細菌がT細胞増殖を抑えることを示す(Cheminay et al.,2005)。これは免疫治療がサルモネラのような細胞内バクテリアによって起きる感染の抑制または治療に有用なアプローチであることを示唆する。
【0023】
HIV補助受容体に結合するケモカインはHIV感染の強力な選択的インヒビターであり、体液性で細胞性の免疫および炎症性応答と協調してHIV感染をコントロールする際に用いられる(Garzino-Demo et al.,2000)。これはケモカインの免疫刺激を促進する方法または分子をHIV感染を阻止しまたは治療するために用いられることを示している。
【0024】
抗癌剤としてのオリゴヌクレオチド分子
癌の治療または予防の際にメチル化していない(CpG)オリゴヌクレオチドの使用が報告された。適当な側方領域(CpGモチーフ)をもつCpGを含む合成オリゴヌクレオチドはマクロファージ、樹状細胞および、IL−6、IL−12、IL−18およびガンマインターフェロンのような種々の免疫調節性サイトカインを分泌するB細胞を活性化することが見出された(Krieg, 2002)。CpG DNAはまたCD80およびCD86のような刺激分子を活性化することが示された。CpG DNAは粘膜表面で強い生得的免疫を誘発する。CpG
DNAの免疫刺激性はそのアジュバント性により長期ワクチン様効果を生成する。CpGオリゴヌクレオチドは抗体および細胞介在免疫の両方に影響を与え、応用にはワクチナジュバント、馴化アレルギ反応および増強モノクローナル抗体および細胞障害性免疫細胞を含む。また化学療法剤の抗腫瘍効果を高め固体腫瘍の外科的薄切後の生存率を改善する(Weigel et al.,2003)。CpGオリゴヌクレオチドに対して、抗腫瘍効果は宿主免疫機構の活性化を仲介とし、直接抗腫瘍効果を通らない。データは炎症誘発性試薬の系統的応用が腫瘍組織へのエフェクター細胞の血管外遊走を亢進することを示し、臨床設定での固体腫瘍の免疫治療の一般的重要性が観察された(Garbi et al.,2004)。それらの免疫治療性に基づき、CpGオリゴヌクレオチドは種々の癌の治療と予防に用いられ、癌ワクチンに用いられた(特許文献1、米国特許番号:6,429,199;6,406,705;6,194,388)。
【0025】
神経変性病のための免疫治療
神経組織は中枢神経系および末梢神経系を含む。中枢神経系(CNS)は脳および脊髄からなり末梢神経系(PNS)は他の神経要素、すなわち脳および脊髄の外側に神経および神経節からなる。
【0026】
神経系へのダメージは外傷性傷害、例えば貫通性外傷または平滑末端化外傷、または、制限するものではないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチングトン病、筋萎縮性外側硬化症(ALS)、糖尿病神経障害、老人性痴呆、および虚血を含む疾病または障害による。
【0027】
中枢神経系の統合性維持は折衷物が免疫系で襲われる複雑な「平衡行動」である。大抵の組織では、免疫系は保護、修復、および治癒において基本的役割を演じる。中枢神経系では、そのユニークな免疫特権のため免疫反応は比較的限られる(Streilen,1993 and 1995)。証拠の成長体は障害後の機能的回復を達成するため哺乳類の中枢神経系の不全が損傷した組織と免疫系間の無効性の議論の反映である。例えば、中枢神経系と血液−骨マクロファージ間の限定された伝達は再生するように自動化された能力の影響を受ける;活性化したマクロファージの移殖は中枢神経系再生を促進できる(Lazarov Spiegler et al.,1996; Rapalino et al.,1998)。
【0028】
活性化したT細胞は、抗原特異性とは無関係に、中枢神経系実質に入るように示されるが、中枢神経系抗原と反応することができるT細胞のみがそこで持続するように見える(Hickey et al.,1991; Werkele,1993; Kramer et al,1995)。ミエリンベーシックなタンパク質(MBP)のような、中枢神経系白い物質の抗原に反応するT細胞は、未処置の受容体ラットに接種の数日内に麻痺性の病気の実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)を誘発することができる(Ben-Nun,1981a)。抗−MBP T細胞はまたヒト疾病多発性硬化症に含まれる(Ota,K.et al,1990;Martin,1997)。しかし、それらの病原性の可能性にもかかわらず、抗−MBP
T細胞クローンは健康体の免疫系に存在する(Burns,1983;Pette,M. Et al,1990;Martin et al.,1990;Schluesener et al.,1985)。活性化T細胞は、通常不活性中枢神経系をパトロールし、中枢神経系白色物質病変の部位で瞬間的に蓄積する(Hirschberg et al.,1998)。
【0029】
中枢神経系傷害の破局的結果は一次の障害がしばしば、最初の障害によって、明らかに傷害を受けていないかまたは縁で傷害を受けているに過ぎない近傍のニューロンの漸進的二次ロスによって倍加されることである(Faden et al,1992;Faden 1993;McIntosh,1993)。一次傷害は細胞外イオン濃度での変化、フリーラジカル量の増加、神経伝達物質の放出、成長因子の枯渇、および局所炎症を引き起こす。これらの変化は、最初に一次傷害を逃れた近傍のニューロンでの破壊的現象のカスケードの引き金になる(Lynch et al,1994;Bazan et al,1995;Wu et al,1994)。この二次傷害は電位依存または作用物質ゲート制御チャネルの活性化、イオン漏出、カルシウム依存酵素、例えばプロテアーゼ、リパーゼおよびヌクレアーゼ、ミトコンドリア機能不全およびエネルギー欠乏、ニューロン細胞の死によって仲介される(Yoshina et al,1991;Hovda et al, 1991;Zivin et al,1991;Yoles et al,1992)。一次傷害によって直接生じるロス以上にニューロンの広範なロスは「二次変性」と呼ばれた。
【0030】
一次リスク因子が除去されまたは減弱する場合にも病気の自己伝播を引き起こすもっとも一般的媒介物のひとつはグルタメートであり、興奮性アミノ酸は二重の活性を示すことができ:基本的神経伝達物質として機能する通常の中枢神経系(CNS)において中心的な役を演じるが、その生理的レベルが超えると毒になる。グルタメートの上昇は多くのCNS障害において報告されてきた。興奮毒性化合物としてのその役割では、グルタメートは急性または慢性(緑内障での視覚神経変性を含む)の退行性障害において毒性の最も一般的媒介物の一つである(Pitt et al.,2000,Schoepp et al.,1996)。内因性グルタメートはてんかん重積、脳虚血または外傷性脳傷害後に急性的に起きる脳障害に起因していた。また筋萎縮性硬化症およびハンチングトン舞踏病としてそのような障害での慢性神経変性にも寄与する。
【0031】
集中的な研究は局部的に作用する薬物、例えばNMDA−受容体拮抗薬の使用によってグルタメートの細胞障害性の効果を減弱するように充てられた(Brauner-Osborne et al.,2000)。このタイプの従来の治療法は不満足な場合が多いが、しかし、毒性効果を中和する場合と同様に生理的機能性と衝突するらしい。ヒトではそのような化合物は向精神剤および治療薬として不適当にする他の副作用をもつ。それらはまた遍在性CNS神経伝達物質としてグルタメートの基本的生理的機能化を妨害する欠点をもつ。グルタメート活性は通常の生理的機能化には基本的であるので、急性傷害後または慢性CNS障害において潜在的に荒廃的であるにもかかわらず、身体の他の部位での基本的活性を除くことなく、その有害な影響を中和する試みが為されなければならない。
【0032】
中枢神経系傷害の他の悲劇的結果は、哺乳動物の中枢神経系におけるニューロンが傷害に続く自発的再生を受けないことである。従って、中枢神経系傷害は運動および感覚機能の持続的傷害を引き起こす。
【0033】
脊髄破壊は、傷害の重症度にかかわらず、脊髄ショックとして知られている完全な機能的麻痺に最初になる。脊髄ショックからの幾らかの自然な回復は、傷害発生から数日後、3ないし4週間以内に自然に消滅することが観察される。発作の重篤性が小さくなる程、機能的結果が良くなる。回復程度は二次変性によるロスを引いた損傷を受けていない組織の量の関数である。傷害からの回復は二次変性を減らすことができた神経保護の処理によって改善される。例えば、グルタメートの影響の軽減は神経保護の薬剤の開発の標的となることが多い。このために開発される薬剤の中では、N−メチル−D−アスパルテート(NMDA)−受容体またはアルファ−アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチル−4−イソキサゾールプロピオン酸(AMPA)−受容体拮抗薬がある。3種の薬剤は、CNS活性に重大であるNMDAおよびAMPA受容体の機能化を干渉するので必ず副作用が大きい。最も熱心に研究されたNMDA−受容体拮抗薬のひとつはMK801であり、効果的な神経保護を与えるが激しい副作用を伴う。脳虚血および外傷性脳傷害の動物モデルでは、NMDAおよびAMPA受容体拮抗薬は急性の脳障害および遅延行動性不足に対し保護する。そのような化合物はヒトでは試験を受けられるが、治療の有効性はまだ確立されていない。グルタミン酸作動性の伝達に作用する薬剤に応答できる他の臨床的状態はてんかん、記憶喪失、不安、痛覚過敏および精神病を含む(Meldrum,2000)。
【0034】
緑内症は神経変性症と考えられ、神経変性症に適用できる任意の治療処置に必ず受け入れられる。神経保護が薬理学的におよび免疫学的に達成でき、免疫学的処置はストレス信号として作用する生理学的化合物の毒性を中和する身体の修復機構を追加免疫し、T−細胞に基づく機構の追加免疫は損傷した視覚神経の回復を促進することが明らかである(Schwarts,2003;Schwartz,2004)。
【0035】
ラットの大脳皮質培養では、ニューロンの死滅は部分的または完全にCXCR4、CCR3またはCCR5ケモカイン受容体を刺激するケモカインによって妨げられる(Brenneman et al.,1999)。サイトカインは神経再生に含まれることが示された(Stroll et al.,2000)。
【0036】
ワクチンおよびアジュバント
ワクチン化は感染性薬剤によって引き起こされる疾病を防ぐ際に簡単なもっとも価値のあるツールである。種々の感染性疾病に対し保護するためのワクチン化は選択的に免疫調節性応答を刺激できるアジュバントを用いることによって高められる。抗原単独の注入と比較して、抗原の注入プラスアジュバントは一般的に非常に少量の抗原を使用でき抗体力価を増加する。合成ペプチド、サブユニットワクチン、多糖体、殺生細胞製剤およびプラスミドDNAのような他の抗原のように、弱毒化ウイルスおよび組換えタンパク質は免疫原生が乏しく効率的な免疫刺激にアジュバントを無条件に必要とする。例えば、破傷風毒素はアジュバントがないと免疫原生ではない。これら抗原の若干は細胞生成物からの汚染を避けるために必要な精製プロセスにより製造費のコストが高い。アジュバントは関心のある部位で抗原の持効性製剤を形成することによって免疫応答を助けることができ、直接または間接的に、抗原が濾胞性DCsによって捕捉される脾臓またはリンパ節に抗原を運ぶ助けとなるビヒクルとして働き、または免疫応答に含まれる種々の細胞を活性化することができる。多くのバクテリアは、免疫系の細胞を活性化する物質または生成物(例えば、内毒素または細胞壁)を含む。安全で強力な新しいアジュバントがワクチンに必要である。これらは粘膜表面で投与されるワクチンを含む。DCによる抗原提示を亢進する方法の開発は成功したワクチンは、特に免疫無防備状態の患者に必要である。DCsの活性化は腫瘍免疫で決定的な役割を持つ細胞毒性Tリンパ球(CTL)を準備刺激するために重大であり、アジュバントはDCsの活性化および細胞免疫の増強に必要であると考えられている。Th−1配向免疫応答は適当な細胞免疫応答、および自然感染またはワクチンを用いた予防接種によって誘発された保護に対して重要である。考慮されねばならない強力な持続した免疫刺激能とは別のアジュバントの望ましい性質はその安全性、生分解性、安定性、混合および使用の容易性、使用できる広い範囲の抗原および投与経路、およびその経済的な製造である。
【0037】
多数のアジュバントが開発された。完全フロイントアジュバント(FCA)は非代謝化オイル(鉱物油)、界面活性剤、および殺したミコバクテリア細胞の混合物であり、何年間も抗原への免疫応答を亢進するために用いられてきた。FCAは抗体の生成に有効であるが、肉芽腫になる重症で痛い注射部位での慢性炎症応答を含むその使用と関連した問題および危険がある(Broderson,1989)。FCAはまた研究室人員にも危険である(Chapel and August,1976)。不完全フロイントアジュバント(FIA)は何もミコバクテリアを含まずアジュバントの性質を示す間は、FCAよりも強力ではない。多数の実験的アジュバントは最近では細菌性毒、例えばコレラ毒(CT)、エシェリシアコリ不安定毒(LT)、IL−2、LPS誘導体、およびCpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドを含むことが報告されていた。それらの作用の形は異なるがa)同時投与されるワクチン抗原の免疫学的半減期の増強;b)増加した抗原取り込みおよび提示;およびc)免疫応答の一定のタイプの優先的開発となる免疫調節性サイトカインの生成に影響する(例えばTh−1対Th−2、粘膜、細胞媒介、等)。アジュバントは2群に分けることができる:1)免疫刺激分子、例えばCpGオリゴヌクレオチド、細菌性毒および誘導体、リポポリサッカライド、誘導体脂質A、サイトカインおよびホルモン;および2)リポソーム、エマルジョン、ミクロ粒子のような固有の免疫刺激活性をもつ配達系。
【0038】
癌ワクチンを用いて、それ自身の免疫応答を誘発する身体を得ることが目的である。癌ワクチンは代表的には、抗原に対して免疫応答をさらに刺激し追加免疫する他の化合物(例えばアジュバント)とともに、患者に対し自己(自身から)または同種間(他から)である癌関連物質または細胞(抗原)の源からなる。癌ワクチンは1または複数の特異的抗原に対し抗体を免疫系に生成させ、および/またはそれら抗原をもつ癌細胞を攻撃するキラーT細胞を生成させる。身体中のT細胞は患者のT細胞の刺激が癌細胞を認識するようにT細胞の能力を増加するように、癌細胞と反応する。さらに、樹状細胞は抗原呈示細胞を特殊化し、T細胞に対し癌抗原を例示することによって癌細胞を認識するように免疫系を助け、免疫系細胞に対しそれらと容易に反応し攻撃するようにする。樹状細胞は既知のもっとも有効な抗原提示細胞である。樹状細胞は生得的な免疫および順応性の免疫を連結する。樹状細胞は免疫応答を活性化するように癌のタンパク質を効率的に示すことができ、樹状細胞で活性化しまたは変化する薬剤および免疫応答は、癌を防ぎまたは治療する際に臨床応用を行う。
【0039】
抗腫瘍免疫の研究は無毒のコレラ毒サブユニットがDC成熟を示唆するDCsからIL−12の分泌を上方制御でき、この分子はDC成熟を通して免疫を亢進するようにアジュバントとして作用し臨床応用において免疫を上げることができる有用なアジュバントと考えることができる(Isomura et al.,2005)。IL−12は同時投与の抗原に対し粘膜アジュバントとして作用することができる。研究ではIL−12のような炎症誘発性サイトカインが抗体誘導のための粘膜アジュバントとしてコレラ毒(CT)を置換し、HIVと他のワクチンを用いて粘膜アジュバントとして用いるために重要な候補である(Bradney et al.,2002)。
【0040】
メチル化していないCpGモチーフ(CpGオチゴヌクレオチド)を含むDNAは、強力な免疫刺激体であり感染の闘いを促進する生得的な免疫応答の引き金となることができる。メチル化していないCpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドは免疫アジュバントとして作用し、Th−1炎症誘発性サイトカインの生成を促進する抗体応答を加速し追加免疫し、DCsの成熟/活性化を誘発する(Klinman,2003)。CpGオリゴヌクレオチドは強力なワクチナジュバントとして用いられるThh−1極性化剤として作用することを示すIL−12の強力な誘導物質である(Dalpke et al,2002)。細胞内バクテリアおよびウイルスによって引き起こされるもののような感染は、直接細菌性侵入者と戦う炎症誘発性サイトカインを生成し、T細胞分化を誘発して順応性の免疫を発生する同時刺激する表面分子を発現させて感染細胞を生じさせ、生得的免疫を誘発する。CpG
DNA免疫刺激性応答はインヴィトロとインヴィヴォの間の研究からなる(Zelenay et al.,2003)。CpG DNAと種々のワクチンの同時投与は動物挑戦モデルでの保護免疫を改良し安全であり耐容性が良い(Klinman,2003)。CpGオリゴヌクレオチドは強力なワクチン免疫賦活剤として用いられるTh−1極性化剤として作用することを示すIL−2の強力な誘導物質である(Dalpke et al.,2002)。腫瘍免疫治療に取り組む研究はCpG
DNAの存在でTヘルパー細胞の同系の腫瘍細胞と抗原呈示細胞を用いた刺激が多数の強く極性化した腫瘍特異的Th−1細胞の産生を可能にすることを示し、炎症誘発性の応答を活性化しこの免疫刺激能に基づき確立された腫瘍とリンパ腫の根絶を示すことは、免疫治療において臨床的な有用性がある(Egeter et al,2000)。
【特許文献1】米国特許第6653292号明細書
【非特許文献1】ACTA BIOCHIMICA et BIOPHYSICA SINICA 2003,35(9):779-788
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0041】
感染性疾病、癌、免疫不全および炎症性障害および神経学的および神経変性疾病のための一定の治療が得られるが、改良された治療が必要である。またより良いワクチンアジュバントの使用による種々の疾病のために改良されたワクチンの開発が必要である。
【0042】
ここに含まれた文書の引用は先行文献であることまたは本願の特許請求の範囲の特許性を考慮する材料であることを承認するものではない。文書の内容や日付についての記述は出願時に出願者が入手できる情報に基づくものであり、そのような記述の正確性ひついて承認するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0043】
本発明は、環状ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体の有効量を患者にその必要に応じて投与し患者における免疫または炎症性の応答を刺激または亢進する方法を提供する。この方法によって投与されたワクチンのためのアジュバントとして役立つ環状ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体の有効量を投与することによってワクチンへの免疫応答が高められる。
【0044】
本発明はまた患者への細胞性ワクチンとして活性化した樹状細胞またはT細胞を投与する前に抗原を用いておよび環状ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体を用いて樹状細胞またはT細胞を活性化することによって、患者における免疫応答を刺激または亢進する方法を提供する。
【0045】
さらに本発明はその必要に応じて患者に環状ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体の有効量を投与して、患者において神経細胞の変性となる傷害、疾病、障害または健康状態の影響を阻害、治療、または寛解させてなる、神経細胞の変性となる傷害、疾病、障害または健康状態の影響を阻害、治療、または寛解させる方法を提供する。
【0046】
本発明のさらなる面は、環状ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体を含む免疫または炎症性の応答を刺激または亢進するための製薬組成物、およびワクチンおよび環状ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体を含む免疫化組成物を含む。
【発明の効果】
【0047】
以下に示される実施例の結果、c−ジ−GMPはDCs、T細胞およびTh−1応答を刺激し活性化し、重要な同時刺激分子の発現および炎症誘発性応答を情報制御することを示し、c−ジ−GMPが向神経活性を有し神経損傷に対して神経保護性であることを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
免疫および炎症性応答の刺激または亢進(免疫刺激)は外来の環状ジ−GMP又は環状ジヌクレオチドおよび環状ヂヌクレオチド類似体によって得られる。従って、環状ジ−GMPおよびその環状ジヌクレオチド類似体はまた、制限されるものではないが、炎症性疾病、癌、HIVおよびAIDS、関節リウマチ、あよびホジキン病を含む種々の疾病および免疫学的および炎症性疾病に対する製薬基準技術の開発に用いられる。環状ジ−GMPおよびその環状ジヌクレオチド類似体はまた癌およびアレルギー反応に対する免疫治療剤としておよびワクチンアジュバントとして(例えばDNAワクチン、減毒生ワクチン、殺生ワクチンにおいて)有用である。環状ジ−GMPおよびその環状ジヌクレオチド類似体はまた神経活性および種々の脳、神経および神経障害の抑制または治療に有用である。
【0049】
幾つかの走化性のサイトカイン、またはケモカインは、ウイルスに対し流入補助因子として働くケモカイン受容体をブロックまたは下方制御することによってHIV複製を阻害する。HIV病原性におけるケモカイン受容体の役割は非常に関心のある主題であった。
【0050】
環状ジヌクレオチドはサイトカインおよびケモカイン生成および従って関連する受容体の活性を変えることができる。本発明の局面は、HIVおよびAIDS、関節リウマチ、大腸癌、乳癌、ホジキン病およびリンパ腫のような疾病の治療および/または抑制において環状ジ−GMPまたは環状ジヌクレオチド類似体の免疫療法用途に関する。
【0051】
ここに記載する環状ジヌクレオチドはDCs、T細胞、サイトカイン、ケモカイン、同時刺激分子、および神経細胞の発現を変える。他の受容体を含む他のタンパク質の発現または活性はまた、環状ジヌクレオチド、例えばc−ジ−GMP、またはc−ジ−GMPの環状ジヌクレオチド類似体の存在によって変えられる。
【0052】
本発明は従って患者の免疫または炎症性応答を刺激しまたは亢進する方法を提供する。この方法はその必要に応じて、患者の免疫または炎症性応答を刺激しまたは亢進するために有効な、環状ジ−GMP、またはその環状ジヌクレオチド類似体の量を患者に投与することを含む。本発明において刺激されまたは高められる免疫応答は好ましくはTh1配向免疫応答を含む。
【0053】
免疫または炎症性応答を刺激または亢進することによって、本発明は、これに限られないが、関節炎、癌(例えば、肺癌、大腸癌、リンパ腫等)、自己免疫疾病または障害(例えば、関節リウマチ、多発性硬化症、エリトマトーデス等)、アレルギー反応(例えば喘息等)、慢性感染疾病(例えば結核、クリプトコッカス感染症等)、生成した病原体または毒素がそれに免疫応答を損なう感染性疾病(例えば炭疽等)、そして免疫不全疾病または障害(例えば、HIVおよびAIDS等)のような免疫または炎症性疾病または障害を治療することができる。炭疽の場合、環状ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体を使用して炭疽致死毒によって損なわれまたは失活された免疫または炎症性応答を刺激または亢進することができる。従って、環状ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチドは毒素によって損なわれた樹脂状細胞の機能を修復することができる。この使用はまた患者の能力を回復しT細胞を刺激し、同時刺激分子を上方制御し、毒素によって減少した炎症性サイトカインを生成する。
【0054】
癌細胞増殖を直接阻害するc−ジ−GMPの能力に基づき(カラオリスら、2005)、インヴィトロに比較してインヴィヴォの増加した抗菌活性能によって見られるような感染に闘う際の増加した宿主応答、ならびに免疫および炎症性応答、小分子の環状ジヌクレオチド、例えばc−ジ−GMPおよびその環状ジヌクレオチド類似体を生物学的に変調する能力は、免疫治療に対し用いられ癌を防ぎまたは治療することができる。
【0055】
局所性免疫治療は身体の一部を治療することに関する。身体組織が炎症性になるとき、免疫系の細胞が刺激され病原性バクテリア、ウイルスおよび他の「外来性」細胞と闘う。癌細胞は環状ジヌクレオチドが局所性免疫治療に用いられるように免疫系によって外来細胞として見られる。この場合に、癌または腫瘍は外科的に除去され環状ジヌクレオチドは(単独または他の薬剤と組み合わせて)注射器またはカテーテルを用いる部位で投与される。環状ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体はまた組織的免疫治療に臨床的に用いられる。
【0056】
本発明はまたニューロン変性となる傷害、疾病、障害または状態の影響を阻害、治療、または回復させる方法を提供する。この方法はその必要に応じて患者に、神経変性となる傷害、疾病、障害、または状態を、抑制し、治療し、または回復させるために有効な、一定量の環状−ジ−GMP、またはその環状ジヌクレオチド類似体を投与することを含む。環状ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体を使用して、一次神経系傷害に続いて、または神経変性疾病または障害の結果として、ニューロンの損傷および変性に対して保護することができる。さらに、そのような環状ジヌクレオチドを用いて変性プロセスに起因する疾病または障害の影響を改善することができる。
【0057】
制限されないが神経変性の例には種々の疾病または障害結果として灰色または白色物質(または両方)で生じる変性を含み、これら疾病または障害は、糖尿病神経障害、老年痴呆、アルツハイマー病、パーキンソン病、顔面神経(ベルの)麻痺、緑内障、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側策硬化症(ALS)、てんかん重積、非動脈の眼神経障害、椎間板ヘルニア、ビタミン欠乏症、プリオン病、例えばクロイツフェルト−ヤコブ病、手根管シンドローム、種々の病気に関連した末梢性神経障害を含み、種々の病気には尿毒症、ポルフィリン症、低血糖症、ショルグレン・ラルッソン・シンドローム、急性感覚神経障害、慢性失調性神経障害、胆汁性肝硬変、一次類澱粉症、閉塞性灰疾患、末端肥大症、吸収不良シンドローム、赤血球増加ベラ、IgAおよびIgG免疫グロブリン血症、種々の薬剤の合併症(例えば、メトロニダゾール)および毒素(例えば、アルコールまたは有機リン酸塩)、シャルコー・マリー歯疾患、運動失調毛細管拡張症、フリードライヒ遺伝性脊椎性運動失調症、アミロイド多発神経症、副腎脊髄神経障害、巨大軸索神経障害、レフサム病、ファブリー病、リポタンパク質血症等を含む。
【0058】
制限されないが、神経系傷害の例には、閉鎖頭部傷害および平滑末端化外傷、例えば危険なスポーツの関与で生じるもの、貫通性外傷、例えば発砲傷、出血打撃、虚血打撃、緑内障、大脳虚血、毒素、毒物、化学(生物戦争)薬物によって生じる損傷、または腫瘍摘出のような手術によって生じる損障を含む。
ビス(3’‐‐>5’)−環状ジグアニル酸(c−ジ−GMP)、環状ジヌクレオチド、は本発明方法で用いられる好適例である。c−ジ−GMPの化学構造を以下に示す。
【0059】
【化1】

【0060】
c−ジ−GMPの合成方法は、例えば、カワイらによって記載された(Kawai,Nagata R,Hirata A,Hayakawa Y(2003)。 環状ビス(3’‐‐>5’)ジグアニル酸への新しい合成アプローチ。Nucleic Acids Res Suppl.3:103-4;ここに参考文献として組み込む)。
【0061】
c−ジ−GMPのほかに、c−ジ−GMPアゴニストとして働く、すなわち、c−ジ−GMPとして同じ効果をもつその環状ジヌクレオチド類似体を用いることができる。c−ジ−GMPの環状ジヌクレオチド類似体の制限されない例には以下に示される化合物(I)−(XX)がある。
【0062】
【化2】

【0063】
【化3】

【0064】
【化4】

【0065】
【化5】

【0066】
上の環状ジヌクレオチドはc−ジ−GMPの環状ジヌクレオチド類似体の好適例だけであり、制限されるものではない。例えば、グアニン塩基は他の塩基と置換される。
【0067】
環状ジヌクレオチドはまた環状ジヌクレオチド類似体を生成するように変更されるので、これら変更された環状ジヌクレオチド類似体、およびその使用方法は、本発明の局面として含まれる。c−ジ−GNPは、例えばC,N,OまたはPで変更されc−ジ−GMP類似体を生成することができる。本発明で使用するためのc−ジーGMP類似体はc−ジ−GMPのそれに似た活性をもつ。例えば、あるc−ジ−GMP類似体はDCsおよびT細胞の刺激、種々のサイトカイン、ケモカイン、および/またはそれら関連の受容体の発現を増加するかまたは減少する。c−ジ−GMPの存在で減少した発現の程度は、c−ジ−GMPの存在で減少した発現の程度よりも同じか、小さいか、または大きい。一定のc−ジ−GMP類似体は一定のサイトキナーゼの発現を増加する。c−ジ−GMP類似体の存在で増加したサイトカイン発現の程度はc−ジ−GMPの存在で増加したサイトカイン発現の程度よりも同じか、小さいか、または大きい。
【0068】
c−ジ−GMP類似体はさらに変更されて、他のc−ジ−GMP類似体を生成する。さらに変更されたc−ジ−GMP類似体は元のc−ジ−GMP類似体に似た性質をもつ。これらさらなる変更は所望の性質、例えば、変化した毒性、変化した免疫なたは炎症性応答、または細胞への取り込みとなることができる。
【0069】
MeSate−c−ジ−GMPは、増加する細胞取り込みおよび細胞−膜透過性を増加するためのc−ジ−GMPを超えて疎水性および親油性を増加し、従って生体利用度を増加した。ホスホトリエステルによるc−ジ−GMPでの1または両方のいずれかのホスホジエステル結合の変更は、ホスホジエステルに変えられ、細胞の内側に酵素による開裂を経て生じる。この誘導体(類似体)はS−アシル−2−チオエチル(SATE)基に不安定なカルボキシエステラーゼで一時的にマスクしたホスフェート基の負電荷をもち、このような誘導体は身体内で加水分解され、親の環状ジヌクレオチド分子を放出することが期待される。本発明は環状ジヌクレオチド(そしてオリゴヌクレオチドではない)の用途に関するが、MeSateホスホトリエステル分子はオリゴヌクレオチドの貧弱な取り込みのハードルを解決するために合成された(Vives et al.,1999)。合成した分子はさらに親油性を得るようにS−Acyl−2−チオエチル(SATE)基に変わり易いカルボキシエステラーゼでマスキングする。このSATE基は効果的に細胞膜を交差させる。アセチルに等しいアシルを用いて酵素分解できるSATE基に関連する特別なオリゴヌクレオチド分子はMeSATE
prooligoと命名された。MeSATEヌクレオシドモノホスフェートもまた合成された(Peyrottes et al., 2004)。
【0070】
2’−O−TBDMS−c−ジ−GMPは天然のc−ジ−GMPのそれらに似た化学的性質をもつことが期待されるが、また天然のc−ジ−GMPのそれよりも高い細胞膜透過性をもつことが期待される環状ジ−GMPの2’−O−ブロック誘導体(類似体)である。2’−O−モノピレニルメチル−c−ジ−GMP(蛍光標識)および8−モノトリチウム−標識c−ジ−GMP(放射性標識)を検出アッセイに用いることができる。
【0071】
c−ジ−GMPは治療用に良く適している。400μMのC−ジ−GMPに24時間暴露した正常のラット腎臓細胞に無毒であり、50μlの200μMのc−ジ−GMPを与えたとき24時間後にCD1マウスでは致命的でない。c−ジ−GMPは生理食塩水に溶解し、生理学的条件で安定である(pH10)。分子の構造は既知であり、おおきさが小さく約700Daである。類似体は容易に設計され合成される。
【0072】
多数のc−ジ−GMP類似体を容易に合成することができる。c−ジ−GMP類似体の数の収集はc−ジ−GMP類似体のライブラリーであると考えられる。c−ジ−GMP類似体のライブラリーは本発明の方法に有用である。例えば、c−ジーGMP類似体のライブラリーはスクリーニングして所望の活性の特定のc−ジ−GMP類似体を同定する。特定のc−ジ−GMP類似体は、免疫系を刺激するその能力をテストすること、DCs、サイトカインのその効果をテストすること、一定の感染性疾病、癌、免疫および炎症性障害に影響するその能力をテストすること、ワクチンアジュバントとしてのその用途をテストすること、アレルギー反応に対するその用途およびその神経保護能力を含めて種々のテストを受けることができる。
【0073】
ケモカインへの抗体、タンパク質標識、結合アッセイ、および機能的アッセイを用いてサイトカイン、ケモカイン、および細胞中の受容体発現を検出することができる。
【0074】
少なくとも1のc−ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体、またはその混合物を含む製薬組成物は、本発明の方法に従って用いるため、1またはそれ以上の生理学的に受容できるキャリヤまたは賦形剤を用いる従来法で処方することができる。キャリヤは組成物の他の成分と両立するという意味で「受容でき」そのレシピエントに無害でなければならない。キャリヤは生物学的に受容でき不活性でなければならない、すなわち、本発明の化合物がその阻害性活性に影響できるように細胞をその代謝反応を行わせなければならない。
【0075】
キャリヤ、投与方法、投薬形態等の次の例は、キャリヤ、投与方法、投薬形態等が本発明に使用するために選択される既知の可能性として記載している。当業者は、しかしながら、任意所定の製剤および選択された投与形態を最初に試験して所望の結果が得られるように決定する必要がある。またc−ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチドは活性成分として単独でまたは他の活性剤と組み合わせて用いられる。
【0076】
「キャリヤ」の語はc−ジ−GMPまたは環状ジヌクレオチドと共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルのことである。製薬組成物中のキャリヤは、結合剤、例えば微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン(ポリビドンまたはポビドン)、トラガカントゴム、ゼラチン、澱粉、ラクトースまたはラクトースモノchydrate;崩壊剤、例えばアルギン酸、トウモロコシ澱粉等;潤滑剤または界面活性剤、ステアリン酸マグネシウム、またはラウリル硫酸ナトリウム;glidant、例えばコロイドシリコンジオキサイド;甘味剤、例えばスクロースまたはサッカリン;および/または香味剤、例えばペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香味剤からなる。
【0077】
投与方法は、制限されないが、非経口、腹腔内、筋肉内、皮下、粘膜(例えば、経口、鼻腔内、頬側、膣、直腸、眼内)、くも膜下腔内、局所的および皮内経路を含む。投与は系統的または局所的である。
【0078】
経口投与では、製薬学的製剤は液体形態、例えば、溶液、シロップまたは懸濁液であり、または水または他の適当なビヒクルと共に使用前に再構成のための薬剤製品として示すことができる。このような液体製剤は製薬学的に受容できる添加剤、例えば懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化可食脂肪);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンドオイル、油性エステル、または分画植物油);および保存剤(例えば、メチルまたはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)を用いて従来法で調製できる。製薬学的に受容できる賦形剤、例えば結合剤(例えば、事前にゼラチン化したトウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロースまたはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えばジャガイモ澱粉または澱粉グリコン酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリルスルホン酸ナトリウム)を用いて製薬学的組成物は、例えば、従来法によって調製された錠剤またはカプセルの形を取ることができる。
【0079】
経口投与のための調製は活性化合物の放出を抑制するように適宜処方することができる。
【0080】
局所的な投与に対しては、c−ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体を軟膏または軟膏剤のような局所塗布ビヒクルに組み込まれる。
【0081】
頬側投与に対しては、組成物は従来法で処方された錠剤またはトローチの形態を取ることができる。
【0082】
注射によって、例えば大量瞬時投与注射または連続輸液によって、非経口的な投与のために組成物を処方することができる。注入のための製剤は単位投与量形態で、例えば、アンプル、または多投与容器で、添加保存剤を用いて示される。組成物は油状または水性ビヒクルで懸濁液、溶液またはエマルジョンとしての形状をとることができ、懸濁剤、安定剤および/または分散剤のような処方剤を含むことができる。あるいは、活性成分は適当なビヒクル、例えば、殺菌パイロジェンフリー水とを構成するために使用前に粉末形態であっても良い。
【0083】
また組成物は、例えば、ココアバターまたは他のグリセリドのような従来の座薬基剤を含む座薬または保持浣腸のような直腸組成に処方することができる。
【0084】
吸入による投与のために、本発明にしたがい使用するための組成物は、適当な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素または他の適当なガスを使用して、圧縮パックまたは噴霧器からエアロゾルスプレイ製剤の形で手軽に供給できる。経鼻スプレイは吸入スプレイのように圧縮パックまたは噴霧器が必要ないが、代わりに鼻腔内投与に用いられる。圧縮エアロゾルの場合は、投与単位は計量した分量を供給するためのバルブを提供することにより決定される。例えば、ゼラチン、のカプセルおよびカートリッジは吸入器またはガス注入に用いるため、化合物の粉末混合物およびラクトースまたは澱粉のような適当な粉末基剤を含むように処方される。
【0085】
治療のための代表的療法は数日間、1週間以上および約6ヶ月にわたる有効量の投与を含む。
【0086】
免疫治療のための有効投与量はミクロモルの範囲であり、例えば約1μMおよび200μM、好ましくは約5μMないし100μM、さらに好ましくは50μMないし100μMである。神経変性からの保護(すなわち、神経保護)のための有功投与量は約0.1ないし100μM、好ましくは約1ないし50μM、さらに好ましくは約1ないし10μMの範囲である。c−ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体の投与量がどのくらい必要かという日常的な実験で決定することは製薬分野の当業者の範囲にあり、そのような有効な投与をするため、投与経路による。望ましい投与量は必要により適当な間隔で投与される1ないし6回またはそれ以上の副次的投与として投与される。化合物は繰り返し投与され、または徐々に連続して患者に注入される。さらに高いおよびさらに低い投与量で投与できる。
【0087】
インヴィヴォで投与されるc−ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体の投与量は年齢、性、健康、およびレシピエントの体重、併用の治療の種類、たとえあるにしても、治療回数、および望まれる製薬学的効果の性質による。ここで提供される有効投与量の範囲は好ましい投与量範囲を制限し提示するつもりはない。しかし、ここで提供される最も好ましい投与量は、当業者によって理解され決定されるように、各対象に調整される。参照、例えばBerkow et al.,eds.,The Merck Manual,16th edition,Merck and co.,Rahway,N.J.,1992;Goodman et al.,eds.,Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therepeutics,8thedition,Pergamon Press,Inc.,Elmsford,N.Y.(1990);Katzung,Basic and Clinical Pharmacology,Appleton and Lange,Norwalk,Conn.,(1992);Avery's Druf Treatment:Principles and Practic of Clinical Pharmacology and Therapeutics,3rdedition,ADIS Press,LTD.,Williams and Wilkins,Baltimore,MD(1987),Ebadi,Pharmacology,Little,Brown and Col,Boston,(1985),Remington's Pharmaceutical Sciences,seventeenth edition, ed. Alfonso R. Gennaro, Mack Publishing Company, Easton, PA(1985)。これらは全体をここに参考文献として組み入れる。
【0088】
本発明の方法は、それ自身または製薬組成物における抗ウイルス化合物および/または抗菌剤を含む他の活性成分と組み合わせてc−ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体の投与によって行われる。ここで使用するために適している他の活性剤は意図する目的のために同じかまたは他の機構によって影響される任意の適合性の薬剤、または本薬剤のそれと相補的な薬剤である。これらは有効な抗菌剤である薬剤を含む。
【0089】
環状c−ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体は免疫応答を追加免疫、刺激または変調するためにアジュバントとしてワクチン製剤に用いることができる。従って、本発明による免疫または炎症応答を刺激しまたは高める方法の一局面は、有効量のワクチンまたは抗原をその必要に応じて環状ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体の量と組み合わせて患者のワクチンへの免疫応答を高めるように患者に投与されるワクチンへの免疫応答を高めることである。
【0090】
アジュバントとしてc−ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体を患者に投与される抗原はタンパク質、ペプチド、炭水化物または脂質抗原、および/または全細胞、特に抗原と混合した樹状細胞と結合した抗原の、精製したまたは部分的に精製した調製物を含む。全体では、任意の病原体または腫瘍および/または分化結合した抗原が、アジュバントとして、環状ジ−GMP、またはその環状ジヌクレオチド類似体と同時に与えられるように、可能な免疫原と考えることができる。
【0091】
本発明は、タンパク質ワクチン、多糖類ワクチン、DNAワクチン、殺したまたは生きている弱毒化した細菌またはウイルスワクチン、自己または同種間の癌ワクチン、樹枝状またはT細胞ワクチン等を含む任意のワクチンの投与に対し免疫応答を高めることが充分に期待される。語「ワクチン」は予防を誘発するためのワクチン接種のみを意味するために用いられるが、本明細書および特許請求の範囲全体に用いられる語はさらに治療目的のためのワクチン接種を含む。例えば、腫瘍関連の抗原からなるワクチンは腫瘍に対し免疫応答を誘発することを意図する。ウイルス粒子へのワクチンはウイルスに対して予防をするためだけではなく、現存のウイルス感染を根絶するために用いられる。従って、例えば、ワクチンはHBVおよびAIDSおよびHCVに対する他のものにも入手でき、有効に開発中である。アミロイド−βプラークに対する有効なワクチン接種はまたアルツハイマー病の治療のために開発中である。従って、語「ワクチン」はあの抗原に対しまたはそのまま存在する交差反応性抗原への免疫応答を誘発するための任意の抗原の投与に利用する。好ましいワクチンはインフルエンザ、天然痘、炭疽、B型肝炎ウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス、ヘルペス単一性ウイルス、ポリオ、結核または抗癌ワクチンを含む。
【0092】
各ワクチン投与に存在する抗原の量は、ワクチン化対象での保護性免疫応答を誘発する出来る量として選択される。この量は特異的抗原および代表的アジュバントの可能な存在に依存し、当業者によって同定される。一般に、各投与量は抗原1−1000マイクログラム、好ましくは10−200μgを含む。さらに成分はまたワクチン中に有利に存在できる。免疫組成物中のアジュバントとしての環状ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体の有効量は約1−200μM、好ましくは約5ないし100μM、さらに好ましくは約50ないし100μMの範囲である。
【0093】
ワクチン組成物は任意の従来法で、生理食塩水溶液、賦形剤、アジュバント(たとえあるとしても、環状ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体に加えて)、保存剤、安定剤等のような無菌の生理学的相溶性キャリヤからなる製薬学的組成物として処方される。
【0094】
ワクチンは使用前に無菌キャリヤ中で溶解するために、液体または凍結乾燥した形である事ができる。抗原を徐々に放出するために有用であるので、処方においてミョウバンまたはリポソーム様粒子の存在がまた可能である。ワクチンを徐々に放出するための他の戦略は当業者には容易に同定でき、この発明の範囲内に含まれる。
【0095】
製薬学的に受容できるキャリヤ、賦形剤、希釈剤または補助剤は従って当業者によって製剤のために容易に同定できる。
【0096】
本発明の本方法は感染性疾病や癌の予防的および治療学的治療の療法に用いられる。特に、本方法はウィルスおよびバクテリアの疾病の予防のため(すなわち、予防的ワクチン)および重症の慢性の感染病の治療のため(治療的ワクチン)の処置に用いられる。さらに、本方法はまた予防/抑制および癌または他の疾病および適当な抗原を用いる際の状態で用いられる。
【0097】
これはヒトの悪性度、例えば、EBV、HPVおよびH.ピロリと関連した感染性薬剤に対する抗原、またヒト黒色腫において、ならびに他のヒト腫瘍において、特徴となるもののような良く限定された腫瘍関連抗原、例えば、MAGE抗原、チロシナーゼgap100、およびMARTを用いることによって達成される。
【0098】
また当業者によって高く評価されるように、本発明により包含されるものは、活性化した樹状細胞またはT細胞を細胞性ワクチンとして患者に投与する前に、有効量の抗原および有効量の環状ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチドを用いて生体外の樹状細胞またはT細胞(自己または同種間のいずれか)を活性化することにより患者の免疫応答を刺激または高める方法である。
【0099】
本発明を一般的に説明したが、これは、実例によって提供される次の実施例を参照してさらに容易に理解されるが、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0100】
細胞培養および処理
末梢血単核細胞(PBMC)を、ローマ・ラ・サピエンツァ大学の輸血センターの健康な血液ドナーボランティアから得た軟膜から、フィコール−ハイパーク法の傾斜分離によって単離した。DCsを、j磁気細胞分離カラムおよびCD14マイクロビーズを使用した正の選択によってPBMCから精製した単球から産生した。高濃単球(>95%、CD14)を、15%牛胎児熱不活性化血清(FCS)、L−グルタミンおよびペニシリン−ストレプトマイシンならびに250ng/ml顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)および500U/mlインターロイキン(IL)−4を添加したRPMI1640培地6×10/mlで、37℃にて5日間培養した。DCの分化を、形態学的観察およびフローサイトメトリー法による特異的表在マーカーの検出によって評価した。これらの細胞は、未成熟DC表現型に一致したCD14、CD1a、HLA−DR中間体、HLA−ABC中間体、CD80low、CD86lowであった。非処理未成熟DCを対照といて使用した。5日間の培養後、c−di−GMPおよび/またはリポポリサッカライド(LPS)(大腸菌抗原型0111:B4)200ng/mlを非処理未成熟DCに加えた。LPS処理DCは刺激/活性化され、成熟DC表現型に一致して、CD83、HLA−DRhigh、HLA−ABChighを産生した。
【0101】
用量−反応滴定曲線を、0.5、5、50、100および200μMのc−di−GMPを用いて実施した。0.5μMのc−di−GMPを使用したときは効果が得られず、200μMでは一貫性のない結果が得られた。濃度が5、50および100μMのc−di−GMPを使用して実施した実験でのみ記録された。トリパンブルー排除試験を用いた実験を、c−di−GMPの任意の非特異的毒性を排除する目的で常に実施した。化合物を再懸濁するために使用されたNaCl(0.9%)は、常に対照として含まれている。
c−di−GMPはヒト樹状細胞を刺激および活性化する
【0102】
マウスモノクローナル抗体FITC−共役またはPE−共役を用いて、細胞染色を行った。以下のmAbを用いた。CD14(IgG1、PE)、CD1a(IgG1、FITC)、HLA−DR(IgG2a、FITC)、HLA−ABC(IgG1、FITC)、CD80(IgG1、FITC)、CD86(IgG1、FITC)、CD83(IgG2b、PE)、CXCR4(IgG2a、PE)、CCR5(IgG2a、FITC)、CD32(IgG2b、FITC)。CD40、CCR7およびマンノース受容体(MR)染色を、マウスmAb、続いてFITC共役精製アイソタイプ特異的ヤギ抗マウスAbを用いて、行った。試料を、FACScanフローサイトメーターおよびCellQuestソフトウェア(Becton Dickinson)を用いて解析した。c−di−GMPが、ヒトDCの表現型差を誘導するかどうかを調べるため、未成熟および成熟DCをc−di−GMPとともに24時間培養し、そして表面の分子発現を分析した。
【0103】
結果は、c−di−GMPが未成熟DCを刺激することを示す。図1A中、平均蛍光強度(MFI)の上昇がみられるようにc−di−GMPはDC抗原提示細胞MHC関連HLA−DRの発現をアップレギュレートし、そしてLPS処置の結果と類似したポジティブ(発現)細胞の高パーセンテージをもたらす。HLA−DRは、CD4T細胞に対する抗原性ペプチドの提示にかかわる重要な分子である。c−di−GMPは、ケモカイン受容体CXCR4およびCCR7の発現を有意に増加する(図1Cおよび1D中の、平均蛍光および発現細胞の割合劇的な増加によって示されている)。これらの重要なケモカイン受容体は、リンパ節への成熟DCの移動に関わっていることが知られている。CXCR4発現細胞は炎症部位へひきつけられ、CCR7はDCのマーカーなので、これらの発見は、炎症性反応における増加およびこれら細胞の炎症部位への誘引を示す。c−di−GMPはわずかにCD83の発現を用量依存的にアップレギュレートし(ポジティブ細胞の平均蛍光に見られるように)、高濃度においてみられるように刺激過度では無効な結果となる(図1B)。CD83は成熟抗原である。図1F中、c−di−GMPは、DC抗原提示細胞共起刺激分子CD86(B7−2)もアップレギュレートおよび刺激する(ポジティブ細胞のパーセンテージにおける増加によって示される)。c−di−GMPは共刺激分子CD80(B7−1)の発現を用量依存的にわずかに増加する(平均蛍光および発現細胞のパーセンテージによって示される)(図1E)。図1G中、c−di−GMPはマンノース受容体(MR)の発現を用量依存的に減少する(平均蛍光によって示される)。
【0104】
DCのc−di−GMPによる処理が、抗原取り込みに寄与する細胞表面分子の発現を調節するかどうかを決定するために、MRおよびCD32の発現を試験した。c−di−GMPが、最大投与では、LPS類似であり、最小投与では、未成熟DCの表面上のMR分子はダウンレギュレートし(図1G),一方、CD32発現は影響されなかった(図1H)。c−di−GMPはLPS誘導成熟とは干渉しない(データは示されていない)。c−di−GMPは明らかに未成熟DCに対する活性化効果をもつので、LPS成熟化DC上にすでに大きく発現しているマーカーの表面発現をアップレギュレートすることができないのは明らかである。興味深いことに、c−di−GMPは、CD1aおよびHLA−ABCの表面発現に影響せず、脂質ペプチドおよび抗原ペプチドの提示にそれぞれ関わる。すなわち、炎症組織中の未成熟DCの移動に関与するケモカインレセプターCCR5、および活性化シグナルを形質導入するCD40(データは示されていない)。
【0105】
総合すれば、これらのデータは、T細胞がc−di−GMPによって活性化されることを示唆する。この結果は、iDCはc−di−GMPによって活性化/成熟化されることを示す。この結果は、共起刺激分子CD80およびCD86が、c−di−GMP処理によってアップレギュレートされることを示す。CD83は有意には影響されていない(多くの細胞および分子に影響するLPSと対象的)という所見は、c−di−GMPが特異的に有用性をもつと同時に免疫反応の全ての細胞に普遍的な影響を与えるものではないことを示唆する。この発見は、抗原提示細胞ならびにシグナル1MHCファクター(たとえば、HLA−DR)およびシグナル2共起刺激分子(CD86およびCD80)といった抗原特異的受容体の刺激を明らかに示す。
c−di−GMPはDCエンドサイトーシス活性を調節しない
【0106】
マンノース受容体(MR)介在エンドサイトーシスを、FITC−デキストラン(DX)の細胞への取り込みによって測定し、フローサイトメトリによって定量化した。FITC−DX(1mg/ml)(MV40,000)を含む培地にて、1試料につき2×10の細胞を培養した。37℃または4℃(対照)にて15分間の培養後、細胞を1%FCSおよび0.01%NaN3を含む冷PBSで4回洗浄して、1%ホルムアルデヒド中に固定した。バックグラウンド(4℃にてパルスする細胞)を常に引いた。図2に示すように、c−di−GMPはいかなる大きな効果も導かない。予想したとおり、LPSはFITC−DXの取り込みをダウンレギュレートし、成熟表現型に一致する。
c−di−GMPは樹状細胞によるサイトカイン産生を刺激/アップレギュレートする。
【0107】
上清サイトカイン内容物の分析を、処理(c−di−GMP)または未処理食塩水コントロール(NaCl)の、未成熟DC(iDC)または成熟DC(mDC)について行った。培養上清を処理24時間後に収集し、IL−1β、IL−6、IL−10、IL−12、およびTNF−α内容物を、製造業者の説明書に従ってサンドイッチELISAを使用して測定した。
【0108】
結果は明らかに、c−di−GMPがサイトカイン生成を、iDCおよびmDCの両方について刺激し、そして明らかにiMCがc−di−GMPによって活性化/成熟化されていることを示した(図3A)。iDCにおいて、c−di−GMPの5μM投与が、TNF−αの生成について劇的な増加を誘発し、炎症性の分子の生成について増加を示した。c−di−GMPは100μMでmDC中にIL−6の増加およびmDC中にIL−1βの大きな増加を誘引して、炎症反応性の誘発を支持する(図3B)。IL−12は、IFN−γ生成を導くTh−1反応中の中心的なサイトカインである。IL−12分泌は未成熟DCにおいては検出できないが、しかし、c−di−GMPは、50μMでmDC中にIL−12の劇的な増加を誘引する。IL−12の増加はさらに、免疫刺激および炎症反応の誘引を、特にTH−1反応を、確証および一致する。抗炎症性分子であるIL−10発現には大きな影響はなかった。この結果は、c−di−GMP処理が免疫刺激性でかつ炎症反応性反応を誘引するという先の結果に一致し、そしてこのために、免疫治療薬またはワクチン開発のための補助薬といった、種々の治療への応用に使用されることができる。
c−di−GMPは樹状細胞の免疫刺激能をアップレギュレートする
【0109】
DCをc−di−GMPまたはLPSで24時間処理し、次に十分に洗浄し、10%ヒト血清、L−グルタミン、およびペニシリン/ストレプトマイシンを添加したPRMI1640中に攪拌し、放射線照射(137Cs源からの3,000rad)し、96平底マイクロプレート中で1×10キラーT細胞にグレード付けして投与する。キラー細胞は、自系または同種異型PBMCである。5日間後、培養を[H]チミジンの0.5□Ci/ウェルで18時間パルスをかけた。細胞を次にグラスファイバーフィルター上で採取し、そして[H]チミジン組み込みを液体シンチレーションスペクトロスコピーで測定した。
【0110】
DCが活性化されて炎症反応性サイトカインが刺激されたならば、次にT細胞が活性化される。放射線照射されたならば(すなわち死んだ場合)、DCは正常T細胞と混合し、DCの増殖は予想されないが、しかし、T細胞の増殖が予想される。このため、本実施例において、チミジン組み込みはT細胞の刺激を示す。図4Aおよび図4B中の結果は、DCの増殖を示し、c−di−GMP処理がT細胞を活性化することを示す。この結果は、細胞をLPSで処理した場合、T細胞は既知のT細胞刺激活性と一致して非常に刺激されることを示す。またこの結果は、100μMのc−di−GMP処理未成熟DCが、自系(図4A)および異種(図4B)の両方のT細胞増殖を、未処理DC(それぞれ5倍および2倍である)に比して導くことも示す。以上より、また先の結果と一致して、これらの結果は、c−di−GMP処理がT細胞の増殖をアップレギュレートおよび活性化/刺激し、さらに、c−di−GMPが内在性刺激物質であり免疫治療への応用に臨床的に使用されることができることを示す。
c−di−GMPは樹状細胞のアポトーシスは調節しない
【0111】
FITC−アネキシンV/プロピジウムヨウ素(PI)二重染色を使用して、c−di−GMP処理DCのアポトーシスを検出した。c−di−GMPで未処理および24時間処理の、未成熟および成熟DCを、採取して氷冷PBSで二回洗浄した。製造業者の説明書に従って、アポトーシス検出キットを用いてFITC−アネキシンVへの特異的結合およびPIの染色を実施した。細胞を次にフローサイトメトリー法によって分析した。
表1に示したとおり、c−di−GMPがDCアポトーシスに影響を与えるかは明らかではない。c−di−GMPは24時間処理後のアネキシンV/PI(初期アポトーシス)およびアネキシンV/PIDS(後期アポトーシス)の割合を調節しなかった。これらの結果は、抗炎症反応性反応の欠如を示し、そしてDCがc−di−GMPに対して耐性がないことを示す。これらの結果は、c−di−GMPが免疫刺激性分子であり、炎症反応性反応を活性化するという、先のデータに一致する。
【0112】
【表1】

c−di−GMPは望ましい免疫療法および補助薬の性質をもつ
【0113】
c−di−GMP処理の示す得られたデータは、免疫刺激性、Th−1反応誘引および炎症反応性反応が、明らかに、生体内での感染との戦いにおける宿主反応における増加と一致する。この細胞データは、感染の動物モデルにおいてc−di−GMPが毒性を減少しバクテリア感染を阻害するということを示す本発明者の実験室からの生体内データと、一致する。c−di−GMPといった環状ジヌクレオチドは、脊椎未成熟免疫細胞を刺激して成熟化を誘導し、そしてIL−12といったTh−1サイトカインと同様にTNF−αを含む種々のファクターを生成する。このため、c−di−GMPはTh−1反応のイニシエーションを調節する補助薬として機能し、ワクチン開発において臨床的有用性をもつ。
【0114】
補助薬としての使用に関連して、本データは総体的に、抗原とともに投与した場合、HLA−DRの刺激を通じて抗原提示の増強が存在することを示す。環状di―GMPは、CD80およびCD86の増加を通じて副刺激を促進および誘引し、IL−12の誘導によって示されるTh−1免疫反応の活性化を促進し、IL−1βおよびTNF−αの増加によって示される総体的な炎症反応性パターンの刺激を促進し、そして混合白血球反応におけるデータによって示されるT細胞の刺激を促進する。しかしながら、­c−di−GMP処理が、CD83を刺激することは明らかではなく、これは望ましいことであるが、広範な過剰刺激およびその結果過剰反応となるLPSに比して、CDの選択性の程度を示唆する。
c−di−GMPは神経保護作用性をもつ
【0115】
神経学的な反応の調節、すなわち一次海馬神経細胞におけるスタウロスポリン(STS)によって誘導される細胞死の阻害、における環状ジヌクレオチドの役割を評価するために、海馬細胞におけるc−di−GMPの効果を分析した。一次海馬細胞を、前記の方法(Pereiraら、1993)にしたがって調整した。簡単にいうと、海馬を18日齢胎児ラットの脳から解剖した。酵素的および機械的分離に引き続き、細胞を10,000/ウェルの濃度で、あらかじめマトリゲルでコートした96−ウェルプレートに平板培養した。培養7日目に、培養液を以下のうちひとつで処理した。(i)賦形剤(24時間)、(ii)STS(100nM、22時間)、(iii)c−di−GMP(24時間)、(iv)c−di−GMP(2時間)後にc−di−GMPおよびSTS(22時間)、(v)c−di−GMPおよびSTS(24時間)、または(vi)STS(2時間)後にc−di−GMPおよびSTS(22時間)。処理後、細胞生存率を、CellTiter96(登録商標)AQueous Assay(Promega)を用いて分析した。前記分析は、ミトコンドリアが行うテトラゾリウム染料から色彩にとむ生成物への変換の分光光度測定(490nm)を含む。前記分析の吸光は、代謝的に活性な細胞数に関連する。
【0116】
得られた結果は、海馬細胞がc−di−GMPに感受性であることを示唆する。初代培養のSTSによる処理は、予想されたとおり重要な細胞死をもたらす。c−di−GMPは一次海馬培養に対して毒性はない。c−di−GMP(0.1ないし10μM)での培養の前処理は、STS誘導細胞死を防ぐ(図5、図中c−di−GMPは、図中「類似物」として記載されている)。c−di−GMP(0.1ないし10μM)を、STSとともにまたはSTSの後に適用すると、代謝的に活性な細胞の数は、STS単独で処理した培養においての観察に比して平均的に高い。
【0117】
この結果は、c−di−GMPが神経保護性をもつことを示す。0.1ないし10μMの濃度は、海馬神経細胞を、スタウロスポリンすなわち神経損傷剤から保護する。さらに重要なことには、c−di−GMPは顕著な神経保護活性を後処理で示し、損傷を受けもしくは死んだ神経細胞をコントロール水準にまで復元するように考えられる。この物質を単独または他の物質との組み合わせまたはワクチンの一部として使用することで、機械的または生化学的原因の、急性および慢性的な損傷に対する保護的な免疫反応が安全に高められる。前記物質は、損傷後に投与されたときにおいても効果的であるので、またスタウロスポリン(二次変性のごく一般的なメディエーター)の毒性に対しても保護するので、神経学的、脳、または脳卒中、緑内障、アルツハイマー病、パーキンソン病、および筋萎縮性側索硬化症といった慢性神経変性障害といった疾患(しかしこれらに限定されない)の予防または治療に臨床的に用いることができる。
【0118】
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【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】図1A−1Hはc−ジ−GMPに暴露されたDCsの表面表現型のグラフである。DCsは未処理(Untr)のまま、またはNaCl、c−ジ−GMPまたはLPSで24時間処理した。ついでDCsは指示マーカー、HLA−DR(図1A)、CD83(図1B)、CXCR4(図1C)、CCR7(図1D)、CD80(図1E)、CD86(図1F)、MR(図1G)、およびCD32(図1H)の表現のため、PE−またはFITC共役mAbsで染色して分析した。直接染色のためのアイソタイプ調節は平均蛍光<5を示した。結果は正の細胞(□)のパーセント、平均蛍光強度(MFI、黒い四角)として表す。
【図2】図1Gおよび1Hは図1で説明した通りである。図2はc−ジ−GMPに暴露したDCsのエンドサイトーシス活性を示すグラフである。DCsは未処理(Untr)のまま、またはNaCl、c−ジ−GMPまたはLPSで24時間処理した。マンノース受容体仲介エンドサイトーシスはFITC−デキストラン(DX)の細胞の取り込みとして評価し、FACSを用いて測定した。結果は正の細胞のパーセントとして表す。
【図3】図3Aと3Bはサイトカイン生成のc−ジ−GMPの効果を示すグラフである。NaCl(コントロールとして用いた)のサイトカイン上澄み濃度またはc−ジ−GMP−処理の未成熟(図3A)または成熟(LPS−処理;図3B)DCsの分析はELISAによって決定した。上澄みを処理の24時間後に収集しTNF−α、IL−6、IL−1β、IL−10およびIL−12をテストした。結果はpg/mlとして表した。IL−12濃度は未熟なDC培養上澄みに検出しなかった。iDC=未熟DC;mDC=熟したDC。
【図4】図4Aと4Bは自己および同種間のPBMCの刺激を示すグラフである。DCsは未処理(Untr)のままであり、またはNaCl、c−ジ−GMPまたはLPSで24時間処理した。1×10自己(図4A)または同種間(図4B)PBMCで異なる細胞番号で培養した照射したDCsで、混合白血球反応は、ついでセットアップした。[H]チミジン取り込みは5日後に測定した。結果は分当りのカウント(cpm)として表した。
【図5】図5は神経損傷剤スタウロスポリンによって前処理および後処理の損傷から細胞を保護する、海馬細胞のc−ジ−GMPの神経保護活性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体の有効量を患者にその必要に応じて投与し免疫または炎症性の応答を刺激または亢進することからなる、免疫または炎症性の応答を刺激または亢進する方法。
【請求項2】
環状ジ−GMPの有効量をその必要に応じて投与する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
環状ジヌクレオチド類似体の有効量をその必要に応じて投与する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記その環状ジヌクレオチド類似体が環状ジヌクレオチド化合物(I)−(XX)からなる群から選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
刺激または亢進する免疫応答がTh1配向免疫応答を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
免疫または炎症性の応答を刺激または亢進することによって免疫学的または炎症性の障害または疾病を治療する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
免疫学的または炎症性の障害が関節炎、癌、自己免疫性障害または疾病、アレルギー反応、慢性的感染性疾病、生成した病原体または毒素が免疫応答を減ずる感染性疾病、および免疫不全疾病または障害からなる群から選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
ワクチンまたは抗原の有効量をその必要に応じて環状ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体の有効量と組み合わせて投与する、ワクチンへの免疫応答を亢進する請求項1記載の方法。
【請求項9】
免疫応答が細胞性の応答である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
ワクチンがタンパク質ワクチン、多糖体ワクチン、DNAワクチン、生弱毒ワクチン、および殺生ワクチンからなる群から選択される、請求項8記載の方法。
【請求項11】
ワクチンが癌ワクチンである、請求項8記載の方法。
【請求項12】
癌ワクチンがオートローガス癌ワクチンである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
癌ワクチンがアロジェニック癌ワクチンである、請求項11記載の方法。
【請求項14】
樹状細胞またはT細胞を抗原または環状ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体を用いて活性化し、免疫応答を刺激または亢進するように細胞ワクチンとして活性化樹状細胞またはT細胞を投与してなる、免疫応答を刺激または亢進する方法。
【請求項15】
その必要に応じて環状ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体の有効量を投与して、神経細胞の変性となる傷害、疾病、障害または健康状態の影響を阻害、治療、または寛解させてなる、神経細胞の変性となる傷害、疾病、障害または健康状態の影響を阻害、治療、または寛解させる方法。
【請求項16】
環状ジ−GMPの有効量をその必要に応じて投与する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
環状ジヌクレオチド類似体の有効量をその必要に応じて投与する、請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記その環状ジヌクレオチド類似体が環状ジヌクレオチド化合物(I)−(XX)からなる群から選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
傷害、疾病、障害または健康状態が脊椎損傷、鈍的外傷、鋭的外傷、出血性脳卒中、および虚血性脳梗塞からなる群から選択される、請求項15記載の方法。
【請求項20】
傷害、疾病、障害または健康状態が神経変性疾病、障害または健康状態である、請求項15記載の方法。
【請求項21】
神経変性疾病、障害、または健康状態が緑内障、アルツハイマー病、パーキンソン病、および筋萎縮性側索硬化症からなる群から選択される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
製薬学的に受容できる担体、賦形剤または希釈剤および有効量の環状ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体からなる、免疫または炎症性の応答を刺激または亢進するための製薬組成物。
【請求項23】
ワクチンまたは抗原および環状ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体からなる、免疫化組成物。
【請求項24】
免疫または炎症性の応答を刺激または亢進するための薬剤の調製において環状ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体の使用。
【請求項25】
環状ジ−GMPの環状ジヌクレオチド類似体が環状ジヌクレオチド化合物(I)−(XX)からなる群から選択される、請求項24記載の使用。
【請求項26】
免疫または炎症性の応答を刺激または亢進するための薬剤が、関節炎、癌、自己免疫障害または疾病、アレルギー反応、慢性感染性疾病、生成した病原体または毒素が免疫応答を損なう感染性疾病、および免疫不全病または障害からなる群から選択された免疫学的または炎症性障害に対して用いられる、請求項24記載の使用。
【請求項27】
薬剤がワクチンであり、環状ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体が前記ワクチン用免疫賦活剤である、請求項24記載の使用。
【請求項28】
ワクチンがタンパク質ワクチン、多糖体ワクチン、DNAワクチン、生弱毒ワクチン、またはウイルス性ワクチン、殺細菌性またはウイルス性ワクチン、および癌ワクチンからなる群から選択される、請求項27記載の使用。
【請求項29】
樹状細胞またはT細胞を活性化するための環状ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体および抗原の使用。
【請求項30】
神経変性となる傷害、疾病、障害または健康状態の影響を抑制、治療、または寛解させるため環状ジ−GMPまたはその環状ジヌクレオチド類似体の使用。
【請求項31】
傷害、疾病、障害または健康状態が脊椎損傷、平滑末端化外傷、貫通性外傷、出血性脳卒中、および虚血性脳卒中からなる群から選択される、請求項30記載の使用。
【請求項32】
疾病、障害または健康状態が、緑内障、アルツハイマー病、パーキンソン病、および筋萎縮性側索硬化症傷害からなる神経変性疾病、障害、または健康状態の群から選択される、請求項30記載の使用。
【請求項33】
環状ジ−GMPの環状ジヌクレオチド類似体が環状ジヌクレオチド化合物(I)−(XX)からなる群から選択される、請求項24−32のいずれか1項に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−529531(P2007−529531A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503996(P2007−503996)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/008447
【国際公開番号】WO2005/087238
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(506311493)
【Fターム(参考)】