免疫反応性C型肝炎ウイルスのポリペプチド組成物
【課題】診断およびワクチンに有用な、多数のHCV単離体(特にこのウイルスの異質性ドメインに関して)と免疫学的に交差反応性であるポリペプチド組成物を提供すること。
【解決手段】少なくとも2つのC型肝炎ウイルス(HCV)アミノ酸配列を含む免疫反応性ポリペプチド組成物であって、各アミノ酸配列が、HCVエンベロープポリペプチドの可変ドメイン中に存在する少なくとも1つのエピトープを含有し、ここで、該可変ドメインのアミノ酸配列が互いに異質性であり、別個のHCV単離体由来であり、そして各アミノ酸配列は全長のエンベロープタンパク質より長くない、組成物。
【解決手段】少なくとも2つのC型肝炎ウイルス(HCV)アミノ酸配列を含む免疫反応性ポリペプチド組成物であって、各アミノ酸配列が、HCVエンベロープポリペプチドの可変ドメイン中に存在する少なくとも1つのエピトープを含有し、ここで、該可変ドメインのアミノ酸配列が互いに異質性であり、別個のHCV単離体由来であり、そして各アミノ酸配列は全長のエンベロープタンパク質より長くない、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、免疫反応性ポリペプチド組成物、この組成物を免疫学的な適用において用いる方法、ならびにこの組成物を製造するための物質および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウイルスは、最近では、輸血後の非A非B型肝炎(NANBH)の原因となる主な因子、および集団獲得(community−acquired)NANBHの重大な原因として同定されている。このウイルスのゲノム配列を得るための物質および方法は、公知である。例えば、PCT公開第WO89/04669号、第WO90/11089号、および第WO90/14436号を参照のこと。
【0003】
HCVゲノムの分子的特徴は、約3011個のアミノ酸からなるポリタンパク質をコードする約10,000個のヌクレオチドを含有する正の極性のRNA分子であるというこ
とを示す。その証拠となる数種の系は、HCVがフラビウイルスおよびペスチウイルスを包含するフラビウイルス(Flaviviridae)科のウイルスと同様の遺伝子構成を有することを示唆する。そのペスチウイルスおよびフラビウイルスの系統と同様に、HCVは、個々のウイルスのタンパク質(構造および非構造の両者)がプロセッシングによって生じる、大きなポリタンパク質前駆体をコードすると考えられる。
【0004】
RNA含有ウイルスは、比較的高い割合の自然変異、すなわち報告によると、組み込まれているヌクレオチドあたりおよそ10-3から10-4の割合で自然変異を有する。従って、異質性(heterogeneity)および遺伝子型の流動率はRNAウイルスでは共通であるので、多様なウイルスの単離体が存在し得る。その単離体は、HCV種においてビルレントまたは非ビルレントであり得る。
【0005】
HCVの異なる単離体の多くが、現在同定されている。これらの単離体の配列は、RNAウイルスの限定された異質性の特徴を示す。
【0006】
単離体HCV J1.1は、以下の刊行物に記載されている:Kubo、Y.ら(1989)Japan.Nucl.Acids Res.17:10367−10372;Takeuchi,K.ら(1990)Gene 91:287−291;Takeuchiら(1990)J.Gen.Virol.71:3027−3033;Takeuchiら(1990)Nucl.Acids Res.18:4626。
【0007】
2つの独立した単離体(「HCV−J」および「BK」)の5’−および3’−末端の配列を加えた完全コード配列は、それぞれ、KatoらおよびTakamizawaらによって記載されている(Katoら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:9524−9528;Takamizawaら(1991)J.Virol.65:1105−1113)。
【0008】
HCV単離体について記載されている他の刊行物は、以下のとおりである:
「HCV−1」:Chooら(1990)Brit.Med.Bull.46:423−441;Chooら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:2451−2455;Hanら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci
.USA 88:1711−1715;European Patent Publication No.318,216。
【0009】
「HC−J1」および「HC−J4」:Okamotoら(1991)Japan J.Exp.Med.60:167−177。
【0010】
「HC−18」、「HC−23」、「Th」、「HC−27」、「EC1」および「EC10」:Weinerら(1991)Virol.180:842−848。
【0011】
「Pt−1」、「HCV−K1」および「HCV−K2」:Enomotoら、日本においては、2つの主要なタイプのC型肝炎がある。Division of Gastroenterology、Department of Internal Medic
ine、Kanazawa Medical University、Japan。
【0012】
クローン「A」、「C」、「D」および「E」:Tsukiyama Koharaら、肝炎ウイルスの第2群、Virus Genes。
【0013】
診断およびワクチンの戦略に対する典型的なアプローチは、保存されたウイルスのドメインに注目することである。しかし、このアプローチは、可変ドメインにおいて存在し得る重要なエピトープを無視するという不利益を生む難点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
診断およびワクチンに有用なポリペプチド組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、多数のHCV単離体(特にこのウイルスの異質性(heterogeneous)ドメインに関して)と免疫学的に交差反応性であるポリペプチド組成物を提供することである。
【0016】
多くの重要なHCVエピトープは、ウイルスの単離体の間では変化し、そしてこれらのエピトープは、特定のドメインに位置づけられ得ることが発見された。この発見は、(保存されたドメインよりもむしろ)可変ドメインに注目する免疫学的に交差反応性のポリペプチド組成物を製造するという戦略を可能にする。
【0017】
従って、本発明の1実施態様は、ポリペプチドを含む免疫反応性組成物である。ここで、このポリペプチドは、HCVの第一の可変ドメイン中のエピトープのアミノ酸配列を含有し、そして別個のHCV単離体の第一の可変ドメイン由来の少なくとも2種の異質性アミノ酸配列が、この組成物中に存在する。
【0018】
本発明の別の実施態様は、複数の抗原セットを含有する免疫反応性組成物である。ここで、(a)各抗原セットは、HCV単離体の第一の可変ドメイン中に存在するエピトープのアミノ酸配列を含む複数の実質的に同一のポリペプチドからなり、そして(b)1つのセットのエピトープのアミノ酸配列は、類似の配列を有する少なくとも1つの他のセットのアミノ酸配列に関して異質性である。
【0019】
本発明の別の実施態様は、複数のポリペプチドを含有する免疫反応性組成物であって、ここで各ポリペプチドは次式を有する:
Rr−(SVn)X−R’r'
ここで、
RおよびR’は、約1−2000個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であり、そしてそれらは同一であるかまたは異なり;
rおよびr’は、0または1であり、そしてそれらは同一であるかまたは異なり;Vは、
HCV可変ドメインの配列を含有するアミノ酸配列であって、ここで、該可変ドメインは、少なくとも1個のエピトープを含有し;
Sは、1以上の整数であり、選択された可変ドメインを表し;そして
nは、1以上の整数であり、異なるnの値を有する少なくとも1種の他の単離体に関して、所定のSVで選択された異質性HCV単離体を表し、そしてnは各xに対して独立して選択され;
xは、1以上の整数であり;そして
ただし、アミノ酸配列は、(i)1V1および1V2、(ii)1V1および2V2、および(iii)1Vlおよび2Vlからなる群から選択される組合せを表す組成物中に存在する。
【0020】
本発明のさらに別の実施態様は、以下の(a)、(b)および(c)を包含する、HCVの処置のための免疫原性の薬剤組成物を調製する方法である:
(a)上記免疫反応性組成物を提供すること;
(b)適切な賦形剤を提供すること;および
(c)哺乳動物へ投与することにより免疫原性の応答を提供する割合で、(a)の免疫反応性組成物と(b)の賦形剤とを混合すること。
【0021】
本発明のさらに別の実施態様は、上記免疫反応性組成物の有効量を哺乳動物に投与することを包含する、抗HCV抗体を産生する方法である。
【0022】
本発明のさらに別の実施態様は、以下の(a)、(b)、(c)および(d)を包含する、生物学的試料中でHCVに対する抗体を検出する方法である:
(a)HCVに対する抗体を含有すると推測される生物学的試料を提供すること;
(b)上記免疫反応性組成物を提供すること;
(c)抗原−抗体複合体が形成されるような条件下で、(a)の生物学的試料と(b)の免疫反応性組成物とを反応させること;および
(d)必要に応じて、(a)の免疫反応性組成物と(b)の生物学的試料の抗体との間で形成される抗原−抗体複合体の形成を検出すること。
【0023】
本発明の別の実施態様は、適切な容器中に入れられた上記免疫反応性組成物を含有する生物学的試料中で、HCVに対する抗体を検出するためのキットである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の発明によれば、診断およびワクチンに有用な、多数のHCV単離体(特にこのウイルスの異質性ドメインに関して)と免疫学的に交差反応性であるポリペプチド組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
発明の実施においては、指示されない限り、当該分野の技術範囲内にある分子生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学における従来の手法が採用される。このような手法は、文献中に詳しく説明されている。例えば、次の文献を参照のこと:Maniatis,FitschおよびSambrook,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL(第2版,1989);DNA CLONING,I巻およびII巻(D.N Glover編,1985);OLIGONUCLEOTIDE SYNTHESIS(M.J.Gait編,1984);NUCLEIC ACID HYBRIDIZATION(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編,1984);TRANSCRIPTION AND TRANSLATION(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編,1984);ANIMAL CELL CULTURE(R.I.Freshney編,1986);IMMOBILIZED
CELLS AND ENZYMES(IRL Press,1986);B.Perbal,A PRACTICAL GUIDE TO MOLECULAR CLONING(1984);METHODS IN ENZYMOLOGYのシリーズ(Academic Press,Inc.);GENE TRANSFER VECTORS FOR MAMMALIAN CELLS(J.H.MillerおよびM.P.Calos編,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Methods in Enzymology Vol.154およびVo1.155(それぞれ、WuおよびGrossman、およびWu編)、MayerおよびWalker編(1987);IMMUNOCHEMICAL METHODS IN CELL AND MOLECULAR BIOLOGY(Academic Press,London)、Scopes(1987);PROTEIN PURIFICATION: PRINCIPLES AND PRACTICE,Second Edition(Springer−Verlag,N.Y.)、およびHANDBOOK OF EXPERIMENTAL IMMUNOLOGY,I〜IV巻(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編,1986);IMMUNOASSAY:A PRACTICAL GUIDE(D.W.Chan編,1987)。本明細書中で述べられる前述および後述の全ての特許、特許出願および刊行物は、本明細書中に参考として援用されている。
【0026】
HCVは、フラビウイルス(Flaviviridae)科の新しいメンバーである。フラビウイルス(Flaviviridae)科には、ペスチウイルス(ブタコレラウイルスおよびウシウイルス性下痢性ウイルス)およびフラビウイルスが包含される。フラビウイルスの例には、デング熱ウイルスおよび黄熱病ウイルスがある。HCVの遺伝学的構成の図を図1に示す。フラビウイルスおよびペスチウイルスと同様に、HCVは、ウイルスのポリタンパク質のN末端の基本的なポリペプチドドメイン(「C」)、続いて2種の糖タンパク質ドメイン(「E1」,「E2/NS1」)を、コードすると考えられ、これらは非構造遺伝子NS2からNS5の上流にある。この推定タンパク質ドメインのアミノ酸座標を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
上記のように、多数のHCV単離体が同定されている。完全および部分HCV配列の比較配列分析により、ヌクレオチドおよびアミノ酸レベルでの相同性に基づいて、HCV単離体が、少なくとも3つの基本群に広く細分され得ることが分かる(表2)。Houghtonら(1991)Hepatology 14:381−388を参照のこと。しかし、III群における単離体では、部分配列しか得られない。それゆえ、これらの単離体の配列がより明らかになると、これらの1つまたはそれ以上の単離体は、4番目となり得る群を含む別の群に分離されるべきである。表3は、ヌクレオチド配列から推定される種々のHCV単離体の個々のウイルスタンパク質の間での配列相同性を示す。同じウイルス群のタンパク質は、種々のウイルス群によりコードされる同じタンパク質よりも高い配列類似性を示すと考えられ得る(表3)。これに対する1つの例外は、現在まで全てのIお
よびII群のウイルス単離体配列の間で高度に保存されているヌクレオキャプシドタンパク質である。(表3では、記号N/Aは、比較により得られなかった配列を示す。)従って、本発明のためには、I群の単離体は、本明細書中でI群として分類される単離体に対して、アミノ酸レベルで約90%またはそれ以上の相同性であるそれらのウイルスタンパク質、特に、E1およびE2/NS1タンパク質を有する単離体として定義され得る。II群は類似の方法で定義される。それ以上の群については、同様に、始原型単離体に対してウイルスタンパク質の相同性によって定義され得る。下位群はまた、所定のタンパク質、例えば、E1、E2/NS1またはNS2タンパク質における相同性により、または単により高い相同性レベルにより定義され得る。
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
E1およびE2/NS1遺伝子によりコードされた推定ウイルスエンベロープタンパク質は、I群およびII群の間で実質的なアミノ酸配列の変異を示すことを注目すべきである。C、NS3、NS4およびNS5タンパク質が全て、両群の間でより高い配列保存性を示しているのに対し、NS2だけがかなりの割合の異質性を示す。I群およびII群の間での推定ビリオンエンベロープタンパク質で見られる配列変異により、2つの群間でのアミノ酸の特徴的な区別が可能になる。この例を図2および3に示す。この図2および3では、E1遺伝子産物の配列がI群およびII群のウイルス間で比較される。HCVのII群およびII群のヌクレオチド配列から推定されたE1アミノ酸配列が示される。これらの図では、横線はHCV−1と配列が同一であることを示す。星印は、アミノ酸の群特異的な区別を示す;群特異的残基は、明確に定義され得る。I群の配列は、HCV−1、HCT18、HCT23、HCT27、およびHC−J1である。II群の配列は、HC−J4、HCV−J、HCV J1.1、およびBKである。このようなアミノ酸の群特異的な区別はまた、E2/NS1遺伝子によりコードされたgp72を含む他の遺伝子産物中にも存在する。図4〜6は、I群とII群とを区別するHCV単離体の推定E2/NS1領域の比較アミノ酸配列を示す。後者のタンパク質はまた、ほとんどすべての単離体の間の大きな変異を示す約30個のアミノ酸からなるN−末端超可変領域(「HV」)を含む。Weinerら(1991)上記を参照のこと。この領域は、HCV−1のアミノ酸番号付けシステムを用いて、アミノ酸384位から414位までに生じる。
【0032】
推定HCVエンベロープ糖タンパク質E2/NS1は、ペスチウイルス属のgp53(BVDV)/gp55(ブタコレラウイルス)エンベロープポリペプチドおよびフラビウイルス属のNS1に相当し得る。この両ポリペプチドは、これらのポリペプチドでワクチン接種した宿主に防御免疫を与える。
【0033】
超可変領域(「HV」)とHIV−1 gp120 V3ドメインとの間での配列変異度に関して著しい類似性、限定された二次構造の欠如、および推定抗体結合に関するアミノ酸変化の予期された効果により、HVドメインが中和抗体をコードしていることが示唆される。
【0034】
ドメインの免疫原性は、実施例に記載の抗体エピトープマッピング実験により示される。これらの研究の結果により、HCVの3つの主要群に加え、さらにHV特異的部分群が存在することが示唆される。
【0035】
HCV誘導NANBHの個体から得た生物学的試料を分析することより、個体は同時に2つまたはそれ以上のHCV変異体を保有し得ることが示される。2つの共在HV変異体は、1つの個体J1の血漿中で見い出された。さらに、肝炎の間欠性発赤になっている慢性NANBHの個体の遺伝子の部分配列決定により、個体Qが2つのHCV変異体(Q1またはQ3)に感染していることが示された。各々の変異体は、この疾患の1つのエピソード(episode)にのみ関連していた。Q1またはQ3特異的ペプチド(アミノ酸396−407位)を用いるELISAにより、Qは、Q1ペプチドに反応する抗体を発生するが、対応するQ3ペプチドに反応する抗体を発生しないことが示されたので、Qの疾患の再発は、HV変異体の出現のために起こることが示唆された。疾患の第2のエピソードの間、Q1ペプチドに対する抗体は存在するが、Q3ペプチドに対する体液性免疫応答が欠如していることにより、HVドメインの変異が免疫選択の圧力から生じ得ることが示唆される。アミノ酸396〜407位は、HVドメインにおける最も高い選択圧にかけられて得られたと思われる。これらの発見は、疾患に関連した高レベルの慢性度が、HCV感染に対する不適当な免疫宿主応答および/または免疫回避の有効なウイルス機構に依存し得るという説を支持する。さらに、それらは、E2/NSl HV領域がウイルスエスケープ機構および/または不適当な免疫応答機構に含まれる遺伝子領域であることを示している。
【0036】
上記のように、HCVゲノム内にはいくつかの変異領域が存在する。これらの1つまたはそれ以上の領域は、おそらく、ウイルスエスケープ機構および/または不適当な免疫応答機構に含まれる。それゆえ、これらの変異体に対する免疫応答を誘導し得るHCVポリペプチドを処置するための組成物中に含まれることが望ましい。
【0037】
ゲノムのE1およびE2/NS1領域が推定エンベロープ型ポリペプチドをコードしているので、これらの領域は、免疫原性に関して特に重要である。このため、これらの領域は、HCV感染に対して個体を防御する免疫応答を誘導および/または増強し、そして感染個体の疾患の慢性的な再発の予防を助けることが特に望ましい領域の中にある。さらに、これらの領域は、感染、さらに重複感染または2つまたはそれ以上の変異体による共感染の経過中に生じるHCV変異体を検出することが望ましい領域の中にある。
【0038】
本発明は、HCV感染、特に慢性HCV感染の予防のために、個体を処置するための組成物および方法を記載している。さらに、本発明は、生物学的試料中の抗HCV抗体の存在を検出するための組成物および方法を記載している。この後者の方法は、免疫学的に異なるHCVエピトープに対する応答で生じる抗HCV抗体を同定するのに特に有用である。この方法はまた、感染個体内のHCVの多様な変異体の進化を研究するのに用いられ得る。本発明の考察において、以下の定義が適用される。
【0039】
「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸の重合体を意味し、特定の長さの生産物を意味しない。従って、ポリペプチドの定義には、ペプチド、オリゴペプチド、およびタンパク質が包含される。この用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾物、例えば、グリコシル化物、アセチル化物、リン酸化物などを意味しないか、あるいは除外する。この定義に包含されるものは、例えば、アミノ酸(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)の1つかまたはそれ以上の類似体を含むポリペプチド、置換された結合ならびに当該技術分野で公知の天然に存在するおよび天然に存在しない他の改変を有するポリペプチドである。
【0040】
本明細書中で用いられるように、Aの重量が、AとBとを合わせた重量の少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、そして最も好ましくは少なくとも約90%であるとき、AはBから「実質的に単離される」とする。本発明のポリペプチド組成物は、好ましくは、ヒトまたは他の霊長類の組織(これには血液、血清、細胞溶解物、細胞小器官、細胞のタンパク質などが包含される)および細胞培養培地を実質的に含まない。
【0041】
「組換え体ポリヌクレオチド」とは、ゲノム、cDNA、半合成、もしくは合成起源のポリヌクレオチドを意味し、その起源もしくは操作によって、(1)このポリヌクレオチドが天然で関連しているポリヌクレオチドの全体もしくは一部分と関連していないもの、(2)このポリヌクレオチドが天然で連結しているポリヌクレオチド以外のポリヌクレオチドに連結されているもの、または(3)天然に存在しないものを意味する。
【0042】
「ポリヌクレオチド」とは、任意の長さを持ったポリマー形態のヌクレオチド(リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド)である。この用語は、分子の一次構造のみを意味する。従って、この用語には、二本鎖DNAおよび一本鎖DNA、ならびに二本鎖RNAおよび一本鎖RNAが含まれる。この用語にはまた、既知の型の改変、例えば当該分野において既知の標識、メチル化、「キャップ」、類似体による1つまたはそれ以上の天然に存在するヌクレオチドの置換、ヌクレオチド間の改変、例えば非荷電結合を有するもの(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)、例えばタンパク質(例えば,ヌクレアーゼ、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)のようなペンダント部分を含むもの、インターカレーター(例えば、アクリジン、ソラレンなど)を有するもの、キレート化剤(例えば、金属、放射性金属など)を含むもの、アル
キル化剤を含むもの、修飾された結合(例えば、アルファアノマー核酸など)を有するもの、ならびに未修飾形態のポリヌクレオチドが含まれる。
【0043】
単細胞因子として培養される微生物もしくは高等真核細胞系を示す「組換え体宿主細胞」、「宿主細胞」、「細胞」、「細胞系」、「細胞培養物」などの用語は、組換え体ベクターもしくは他の転移ポリヌクレオチドの受容体として使用可能か、または使用されてきた細胞を意味し、トランスフェクトされた元の細胞の後代が含まれる。単一の親細胞の後代は、自然の、偶発的または故意の変異によって、形態、またはゲノムもしくは全DNAの相補性が元の親細胞と、必らずしも完全に同一でなくてもよい。
【0044】
「レプリコン」には、例えばプラスミド、染色体、ウイルス、コスミッドなどのあらゆる遺伝的要素であり、それらは細胞内でポリヌクレオチドの複製の自律的な単位として挙動し、すなわち自ら制御しながら複製を行うことができる。
【0045】
「ベクター」は、オープンリーディングフレームの複製および/または発現を提供する配列をさらに含むレプリコンである。
【0046】
「制御配列」は、ある種のポリヌクレオチド配列を意味し、この配列が連結しているコード配列を発現させるのに必要なものである。このような制御配列の性質は、宿主の生物によって異なる。このような制御配列としては、原核細胞内では、一般に、プロモーター、リボソーム結合部位、およびターミネーターが含まれ、真核細胞内では、一般に、プロモーター、ターミネーター、および場合によってはエンハンサーが含まれる。「制御配列」という用語は、最小限発現に必要なすべての要素を包含し、さらに発現に有利な追加の要素、例えば分泌を制御するリーダー配列を包含し得る。
【0047】
「プロモーター」は、DNAテンプレートにRNAポリメラーゼを結合させるコンセンサス配列を含むヌクレオチド配列であり、その結合は、mRNAの製造が、隣接する構造遺伝子の通常の転写開始部位で開始するような方法で行われる。
【0048】
「作動可能に連結された」と用語は、上記のような要素が、意図した方式で機能し得るような関係に並置されていることを意味する。コード配列に「作動可能に連結された」制御配列は、制御配列に適合した条件下でこのコード配列の発現が達成されるように、連結される。
【0049】
「オープンリーディングフレーム」(ORF)は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の領域であり、この領域は、コード配列の一部またはコード配列全体を意味する。
【0050】
「コード配列」は、適切な調節配列の制御下に置かれた場合に、mRNAに転写され、および/またはポリペプチドに翻訳されるポリヌクレオチド配列である。コード配列の境界は、5’末端の翻訳開始コドンと、3’末端の翻訳停止コドンとによって決定される。コード配列は、mRNA、DNA(これにはcDNAが包含される)、および組換え体ポリヌクレオチド配列を包含し得るが、これらに限定されるものではない。
【0051】
本明細書中で用いられるように、「エピトープ」または「抗原決定基」とは、免疫反応性のアミノ酸配列を意味する。一般的に、エピトープは、少なくとも3〜5個のアミノ酸で構成され、そしてより一般的には少なくとも約8個、またはさらには約10個のアミノ酸で構成されている。本明細書中で用いられるように、所定のポリペプチドのエピトープは、その所定のポリペプチドにおけるエピトープと同様のアミノ酸配列を有するエピトープ、およびその免疫学的な等価物を意味する。
【0052】
「抗原」は、1個またはそれ以上のエピトープを含有するポリペプチドである。
【0053】
「免疫原性」とは、細胞性免疫応答および/または体液性免疫応答を誘導する能力を意味する。免疫原性応答は、単独で免疫反応性のポリペプチドによって誘導され得るか、またはアジュバントの存在下または非存在下での担体の存在を必要とし得る。
【0054】
「免疫反応性」は、(1)抗体および/またはリンパ球抗原リセプターに免疫学的に結合する能力、または(2)免疫原性である能力を意味する。
【0055】
「抗体」は、特定のエピトープと結合する任意の免疫グロプリンであり、これには免疫グロブリンの抗体およびフラグメントが包含される。この用語は、とりわけ、ポリクローナル、モノクローナル、およびキメラ抗体を包含する。キメラ抗体の例は、米国特許第4,816,397号および第4,816,567号で論じられている。
【0056】
「抗原セット」は、複数の実質的に同一のポリペプチドからなる組成物として定義され、ここでこのポリペプチドは、定義されたエピトープのアミノ酸配列を含む。
【0057】
「実質的に同一のポリペプチド」とは、ポリペプチドの製造方法(例えば、組換え体発現、化学合成、組織培養など)が原因となる、配列またはサイズの変化の典型的な範囲に限定される変化以外は同一であるポリペプチドを意味する。この変化は、実質的に同一のポリペプチドの組成物(例えば、この組成物は同一のポリペプチドの組成物として免疫学的に作用する)の所望の機能的な性質を改変しない。この変化は、例えば、このポリペプチドの移送の間の分泌過程から、化学合成などにおいて100%未満の効力を生じる改変によるものであり得る。
【0058】
本明細書中で用いられるように、ウイルスのタンパク質の「可変ドメイン」または「VD」は、少なくとも2種のHCV単離体または亜集団(subpopulation)の間で矛盾がないパターンのアミノ酸の変化を示すドメインである。好ましくは、このドメインは、少なくとも1個のエピトープを含有する。可変ドメインは、1個だけのアミノ酸変化により単離体から単離体へ変化し得る。これらの単離体は、同じまたは異なったHCV群または亜群に由来し得る。可変ドメインは、単離体中の配列の組成から容易に同定され得、そしてこれらの技法は下記のとおりである。本発明を説明するために、可変ドメインは、図15〜32に示されるようにHCV−1のゲノムによってコードされるポリタンパク質のアミノ酸番号に関して、1位で示されるイニシエーターのメチオニンと共に定義される。別のHCV単離体における対応の可変ドメインは、任意の可変ドメイン以外の保存ドメインを最大限に整列させる方法で2種の単離体の配列を整列させることにより決定される。これは、いかなる多くのコンピューターのソフトウエアパッケージ(例えば、ALIGN1.0、これはUniversity of Virginia,Department of Biochemistry から入手可能である(註:Dr.William R.Pearson))でなされ得る。Pearsonらの(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444−2448を参照のこと。特定の可変ドメインによって定められるアミノ酸番号は、幾分主観的であり、かつ選択の問題であることが理解されるべきである。従って、可変ドメインの開始および終止は、他に指示がない限り、近似であり、および、ドメインまたはサブドメインと部分的に重複することを包含することが理解されるべきである。
【0059】
エピトープは、所定のポリペプチドにおける別のエピトープに免疫学的に結合する抗体と交差反応するとき、その所定のポリペプチドにおけるそのエピトープの「免疫学的等価
物」である。
【0060】
典型的に、エピトープは、位置づけられ、少なくとも約5個のアミノ酸、時折少なくとも約8個のアミノ酸、およびさらに、約10個またはそれ以上のアミノ酸を含む。
【0061】
HCVエピトープを含むアミノ酸配列は、別のポリペプチド(例えば、担体タンパク質)と、共有結合によってまたは融合ポリヌクレオチドを発現させて融合タンパク質を形成させることによって、そのいずれかにより、連結され得る。所望ならば、アミノ酸配列は、エピトープの多数の繰り返しを挿入し得るかまたは結合し得、および/または種々のエピトープを組み入れ得る。担体タンパク質は、いかなる源からでも誘導され得るが、一般に比較的大きい免疫原性タンパク質、例えば、BSA、KLHなどである。所望ならば、担体タンパク質は、実質的に完全な長さのHCVタンパク質を担体として使用し得、免疫原性エピトープの数を増やす。あるいは、HCVエピトープ由来のアミノ酸配列は、アミノ末端および/またはカルボキシ末端にて、非HCVアミノ酸配列と連結し得、従って、このポリペプチドは、「融合ポリペプチド」となる。類似型のポリペプチドは、他の所定のウイルスのタンパク質由来のエピトープを用いて、構築され得る。
【0062】
所定のポリペプチドの「変異体」とは、その所定のポリペプチドのアミノ酸配列が、その配列において1個またはそれ以上のアミノ酸の欠失、置換、付加または転位によって改変されたポリペプチドを意味する。変異体が生じる(例えば、組換えによって)または変異体が作られる(例えば、部位特異性変異誘発)方法は、当該分野において周知である。
【0063】
「形質転換」とは、外因性ポリヌクレオチドを宿主細胞に挿入することを意味する。なお、挿入法は、どんな方法でもよく、例えば、直接取込み法、形質導入法(これにはウイルス感染が包含される)、f−交配法,またはエレクトロポレーション法がある。外因性ポリヌクレオチドは、組込まれていないベクター、例えば、プラスミドまたはウイルスのゲノムとして保持されていても、あるいは宿主ゲノムに組込まれていてもよい。
【0064】
「個体」とは、脊椎動物、特に哺乳動物種のメンバーを意味し、げっ歯動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット)、ウサギ、ヤギ、ブタ、ウシ、ヒツジ、および霊長類(チンパンジー、アフリカミドリザル、ヒヒ、オランウータン、およびヒト)を包含するが、これに限定されるものではない。
【0065】
本明細書中で用いられるように、「処置」とは、(i)伝統的なワクチンのような、感染または再感染の予防、(ii)症状の低減または排除、および(iii)ウイルスの実質的な排除または完全な排除、のいずれをも意味する。処置は、(感染前に)予防として、または(感染後に)治療として行われ得る。
【0066】
「有効量」という用語は、投与される個体において免疫原性応答を誘導するか、または意図するシステム(例えば、イムノアッセイ)において別な方法で検出可能に免疫反応を起こすのに充分なエピトープを有するポリペプチドの量を意味する。好ましくは、この有効量は、上記のように処置をするのに充分である。必要な正確な量は、接種により変化する。ワクチン接種のために、またはポリクローナル抗血清/抗体の発生において、例えば、その有効量は、種、年齢、および個体の一般的な症状、処置される症状の重症度、選択される特定のポリペプチドおよび投与様式などに依存して変化する。有効量は、比較的広く、非臨界的な範囲にあることもまた、知られている。適切な有効量は、定型の実験だけを用いて容易に決定され得る。
【0067】
本明細書中で用いられるように、「生物学的試料」とは、個体から単離された組織または液体の試料をいう。これには、例えば、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、皮膚と呼吸器
官と腸管と尿生殖器管の外側部分、涙、唾液、乳、血液細胞、腫瘍、器官、バイオプシー、およびさらに、インビトロでの細胞培養構成物(これには細胞培養培地で細胞を増殖させて得られる馴化培地、例えば、Mab産生ミエローマ細胞、組換え細胞、および細胞成分を包含するが、それに限定されない)の試料を包含するが、それに限定されない。
【0068】
本発明の免疫反応性ポリペプチド組成物は、少なくとも1種のHCV VD由来の単離体特異性エピトープと群特異性エピトープとの混合物を含有する。従って、少なくとも2種の異質性アミノ酸配列がHCVタンパク質中に存在する。この異質性アミノ酸配列は、各々、同一かまたは実質的に同一の物理的な場所に位置する別個のHCV単離体において見い出されるエピトープを定義する。すなわち、各配列は、HCVゲノム/ポリペプチド内の同一の場所に位置づけられる。これらの配列は異質性であるので、その場所は可変ドメイン(VD)として言及される。
【0069】
本発明をより良く理解するために、第一に、本発明の組成物を作り出す個別のアミノ酸配列を説明する。次いで、本発明の組成物において見い出される複数のこのような配列について論じる。
【0070】
本発明のポリペプチドを特徴付けるアミノ酸配列は、以下のような基本的な構造を有する:
Ly−Z−L’y' (I)
Zは、選択されたHCV単離体由来のタンパク質の領域由来のアミノ酸配列を表す。ここで、この領域は、少なくとも1個の可変ドメインを含み、そしてこの可変ドメインは、少なくとも1個のエピトープを含む。LおよびL’は、非HCVアミノ酸配列であるかまたは可変ドメインを含まないHCVアミノ酸配列であり、ここで、LおよびL’は、同一または異なり得る。yおよびy’は、0または1であり、これらは同一または異なり得る。従って、式1は、HCV VDの配列を含むアミノ酸配列を表し、ここで、VDは、エピトープを含む。
【0071】
上記のように、Zにおけるエピトープは、通常、最小約5個のアミノ酸、より典型的には最小約8個のアミノ酸、およびさらに典型的には最小約10個のアミノ酸を含む。
【0072】
Zの可変ドメインは、1個より多いエピトープを含み得る。
Zの可変ドメインは、存在するエピトープの配列を組み合わせたサイズと少なくとも同程度のサイズである。従って、このドメインに、ただ1つのエピトープが存在するならば、このドメインは、典型的には最小約5個のアミノ酸で作られる。エピトープが部分的に重複するとき、この可変ドメインにおける組み合わされたエピトープの最小アミノ酸配列は、その個々のエピトープの配列の合計より小さい。
【0073】
Zは、上記VDを含むHCV単離体のアミノ酸配列である。従って、Zの最小のサイズはVDの最小のサイズである。Zは、VDだけに比べて多くのHCVのアミノ酸配列を含み、そして1個より多くのVDをさらに含み得る。Zの最大のサイズは、臨界的ではないが、完全なHCVのポリタンパク質の長さを上回ることは明らかに不可能である。しかし、典型的には、Zは、完全なHCVタンパク質(特に、E1、E2/NS1、NS2、NS3、NS4およびNS5)の配列であり、そしてより典型的にはこのようなHCVタンパク質のフラグメントである。従って、Zは、好ましくは、最小約5個のアミノ酸(より好ましくは最小約8個または約10個のアミノ酸)から最大約1100個のアミノ酸(より好ましくは最大約500個、さらに好ましくは最大約400個、またはさらに好ましくは最大約200個のアミノ酸)の範囲である。より一般的には、式Iおよび/またはZのポリペプチドは、それらが例えば、化学合成により調製されるとき、最大約50個のアミノ酸、より典型的には最大約40個のアミノ酸、そしてさらに典型的には最大約30個の
アミノ酸である。
【0074】
非HCVアミノ酸配列、LおよびL’は、それらがもし存在するならば、多くのタイプのこのような配列のいずれをも構成する。例えば、LおよびL’は、下記のように、Zが組換え体発現を促進するために融合される非HCV配列(例えば、β−ガラクトシダーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、インベルターゼ、α−因子、TPAリーダーなど)を表し得る。あるいは、LおよびL’は、他の病原体(例えば、B型肝炎ウイルス、百日咳菌(Bordetella pertussis)、テタヌストキソイド、ジフテリアなど)のエピトープを表して、多くのこれらの他の病原体に免疫反応的に関連する組成物を提供し得る。LおよびL’は、ペプチド合成の際の固体支持体、イムノアッセイの支持体、ワクチン担体のタンパク質などへの結合を促進するアミノ酸配列であり得る。実際、LおよびL’は、機能的な利点のない1種またはそれ以上の不必要なアミノ酸をさらに含み得る。LまたはL’に対する臨界的な最大のサイズはなく、その長さは、一般的に所望の機能によって決定される。典型的に、LおよびL’は、各々、最大約2000個のアミノ酸、さらに典型的には最大約1000個のアミノ酸である。有用な性質を有するLおよびL’配列の多くは、最大約500個のアミノ酸である。Zの免疫反応性をブロックしないようにLおよびL’を選択することは、もちろん望ましい。
【0075】
本発明に従って提供されるポリペプチドの組成物は、それぞれ以下の式IIおよびIIIよって定義される少なくとも2種のアミノ酸配列の組成物中に、(免疫反応的に有効量で)存在することによって特徴付けらる:
Ly−Z1−L’y ' (II)
Ly−Z2−L’y ' (III)
L、L’、yおよびy’は上記のように定義され、そしてそれらは独立して式IIおよびIIIの各々に対してもまた定義される。ZlおよびZ2は、各々、上記でZについて定義されたようなHCVアミノ酸配列であり、同一の可変ドメイン(すなわち、物理的な場所)を含むが、Z1およびZ2の共通の可変ドメインにおいて少なくとも1種の異質性エピトープをそれらの間に有する異なるHCV単離体から誘導される。例示的な実施例として、式IIに従ったアミノ酸配列は、Zlとして、単離体HCV−1のアミノ酸384−41
4位(またはさらに特定すると396−407位または396−408位のアミノ酸)にわたる超可変ドメインのフラグメントを有し、一方、Z2は、単離体HCV−J1.1由
来の類似のフラグメントである。これらの2種の単離体は、このドメインにおいて異質性であり、これらのエピトープのアミノ酸配列は、有意に変化する。
【0076】
本発明の組成物は、式1に従って丁度2個より多い別個のアミノ酸配列を含み得、そしてZの配列は異なる可変ドメインを含む群に分割され得ることが理解されるべきである。例えば、本発明に従う組成物は、(式Iに従うアミノ酸配列と共に)HCV配列の群を含み得る。この配列は、単離体HCV−1、HCV−J1.1、HC−J1、HC−J4などに由来するアミノ酸384−411位のところで超可変ドメインを含む。この組成物はまた、(式1に従うアミノ酸と共に)HCV配列のさらなる群を含み得る。この配列は、単離体HCV−1、HCV−J1.1、HC−J1、HC−J4などにさらに由来するアミノ酸215−255位のところで可変ドメインを含む。従って、本発明の組成物の関係においては、式1の配列は以下のようにさらに定義され得る:
SVn (IV)
Vは、HCV可変ドメインの配列を含むアミノ酸配列を表し、ここで、この可変ドメインは、少なくとも1種のエピトープ;すなわち、式1を含む。Sおよびnは、1またはそれ以上の整数である。Sは特定の可変ドメインを表し、そしてnは特定の単離体を表す。例えば、S=1はアミノ酸384−411位における可変ドメインを表し得;S=2はアミノ酸215−255位における可変ドメインを表し得;そしてn=1、2、3および4は、それぞれ、単離体HCV−1、HCV−J1.1、HC−J1およびHC−J4を表し
得る。従って、上記の2つの群の配列は以下のように表され得る:
群1:1V1、1V2、1V3および1V4
群2:2V1、2V2、2V3および2V4 本発明に記載の組成物には、式IVの少なくとも2種の別個の配列がある。すなわち、この組成物は、式IVに従う2種の異なる配列を含有し、ここでSおよびまたはnの値は異なる。例えば、少なくとも1V1お
よび1V2が存在し、または少なくとも1Vlおよび
2V2が存在し、または少なくとも1Vlおよび2V1が存在する。
【0077】
式IV中に含まれる別個の配列は、同一または異なるポリペ
プチド分子のいずれかにおける組成物中に存在する。1V1および1V2の最小の組み合わせを用いて、これらの2種の配列は、同一のポリペプチド分子(例えば、1Vl−1V2)または分離した分子中に存在し得る。本発明の組成物のこの特徴は、以下のようなポリペプチドの組成物として記載され得る:
Rr−(SVn)x−R’r ' (V)
ここで、S、Vおよびnは、上記で定義のとおりであり;RおよびR’は、約1−2000個のアミノ酸のアミノ酸配列であり、そして同一または異なり;rおよびr’は、0または1であり、そして同一または異なり;xは、1以上の整数であり;nは、各xに対して独立して選択され;ただし、これらのアミノ酸配列は、(i)1V1および1V2、(ii)1v1および2V2、および(iii)1V1および2V1からなる群より選択される組み合わせを表す組成物中に存在する。式IVの別個の配列が異なるポリペプチド内にある実施態様においては、xは1であり得るが、所望であるなら1をさらに越え得る;例えば、ポリペプチド1V1−1V2と1Vl−2V2との混合物。xが1であるとき、rおよびr’は好ましくは共に0であり、LyおよびL’y'の重複を避ける。これは、Vが式Iによる好ましい実施態様によって記載され得るからである。xが1より大きいとき、Rとその隣接するLとを組み合わせた長さ、およびR’とその隣接するL’とを組み合わせた長さは、好ましくは、LおよびL’に関して上記の典型的な最大長より長くはない。
【0078】
この組成物の別個のV配列中に含まれるHCVのアミノ酸配列の選択は、この配列の意図する適用に依存し、そして本発明の開示による当業者の範囲内である。第一に、本発明に関するHCVエピトープは、2種のタイプに分かれ得ることが認められるべきである。エピトープの第一のタイプは、「群特異性」であるものであり、すなわち、HCV単離体の群中の全てのまたは実質的に全ての単離体における対応のエピトープは、互いに免疫学的に交差反応性であるが、他の群の実質的に全ての単離体の対応するエピトープを有しない。好ましくは、群特異性のクラスにおけるエピトープは、この群内に実質的に保存されるが、この群間またはこの群中には保存されない。エピトープの第二のタイプは、「単離体特異性」であるものであり、すなわち、このエピトープは、実質的に同一の単離体と免疫学的に交差反応し、そして全てのまたは実質的に全ての別個の単離体とは交差反応しない。
【0079】
これらの群特異性エピトープおよび単離体特異性エピトープは、本発明の開示によって容易に同定され得る。第一に、数種のHCV単離体の配列が、本明細書中に記載されているように、比較され、そして配列異質性の領域が同定される。通常、異質性のパターンは、群特異性または単離体特異性を示す。同定された領域が1個またはそれ以上のエピトープを含むことが周知であるならば、次いで、所望のエピトープを含むのに充分なサイズの配列は、本発明の組成物に含まれ得る可変ドメインとして選択される。所定の異質性領域の免疫反応性が周知でないならば、種々のHCV単離体のその領域内に見い出される配列を表すペプチドは、調製され得、そしてスクリーニングされ得る。スクリーニングは含まれ得るが、抗HCV抗体の種々の源(例えば、患者の血清、中和化Mabなど)によるイムノアッセイまたは抗体の発生、およびインビトロでウィルスを中和するためのそのような抗体の能力、に限定されない。あるいは、下記のようなスクリーニングのプロトコール
で同定されるエピトープの遺伝子座は、種々の単離体の異質性およびスクローニングされた対応の異質性配列の免疫学的な性質について試験され得る。
【0080】
ワクチンの適用には、E1および/またはE2/NS1ドメイン由来の可変ドメインが、特に重要であると考えられる。特に、アミノ酸215−255内のE1可変ドメイン(図2および3参照)、およびアミノ酸384−414内のE2/NS1可変ドメイン(図4〜6参照)は、重要な免疫反応性ドメインであるとして同定されている。予備的な証拠により、これらのドメインの片方または両方が、慢性HCV感染に通じるエスケープ変異体に反応し得る異質性の遺伝子座であり得ることが示唆される。従って、Vの可変ドメインがこれらの可変ドメインの片方または両方であるような、上記のようなポリペプチド組成物は、特に好ましい。さらに、本発明のポリペプチド組成物は、特に可変ドメイン中の一般的な線形エピトープに関連するが、配座エピトープもまた含有し得る。例えば、この組成物は、組換え体系(例えば、昆虫または哺乳動物細胞)で発現される、(異なる単離体の可変ドメインを示す)組換え体Elおよび/またはE2/NS1タンパク質の混合物を含み得る。この組換え体系は、可変ドメインの内側または外側のいずれかに配座エピトープを維持している。あるいは、配座エピトープを維持する単一の単離体由来のE1および/またはE2/NS1サブユニット抗原が、本発明に従って、ポリペプチド組成物と組み合わされ得る(例えば、合成ペプチドまたは変性させた組換え体ポリペプチドの混合物)。ワクチンに対する別の好ましい適用では、本明細書中に記載のポリペプチド組成物を他のHCVサブユニット抗原と組み合わせ得る。例えば、同一人の所有する米国特許出願第
号に記載の抗原である。この出願のタイトルは、Robert O.Ralston,Frank Marcus,Kent B.Thudium,Barbara GervaseおよびJohn Hallにより、「C型肝炎ウイルスアシアロ糖タンパク質」(アトーニィドケット番号0154.002)であって、本願と共に同日で出願しており、本明細書中に参考として援用されている。
【0081】
診断の適用には、抗原として本発明の組成物を用い、それにより、別個のHCV単離体に対する抗体を検出する能力を改善するのに有用であり得る。典型的には、このポリペプチド混合物は、均質なまたは不均質なイムノアッセイ形式において直接用いられ得、後者では、好ましくは、ポリペプチドを固体基質(例えば、マイクロタイタープレートウェル、プラスチックビーズ、ニトロセルロースなど)上に固定することを包含する。例えば、PCT公開第WO90/11089;欧州公開公報第360,088号;IMMUNOA
SSAY:A PRACTICAL GUIDE、上記を参照のこと。あるいは、本発明のポリペプチド組成物を作り出す実質的に同一の各ポリペプチドを別個の遺伝子座で同一の支持体上に固定し得、それにより抗体が産生される単離体または群についての情報が提供される。このことは、種々の単離体が、肝炎、癌、または種々の臨床予後を必要とする他の疾患を引き起こすならば、診断に特に重要である。好ましい形式は、Chiron RIBATMストリップイムノアッセイ形式であり、これは、同一人の所有する米国特許出願第07/138,894号および米国特許出願第07/456,637号に記載されており、その開示内容は本明細書中に参考として援用されている。
【0082】
本発明の組成物の製造に有用なポリペプチドは、組換えによって、合成によって、または組織培養中で、製造され得る。切形型HCV配列または全長HCVタンパク質を含む組換え体ポリペプチドは、HCV配列(1個またはそれ以上のエピトープ、隣接しているかまたは隣接していないかのいずれかである)、または融合タンパク質中の配列から完全に製造され得る。融合タンパク質では、有用な異種(heterologous)配列は、組換え宿主からの分泌を提供するか、HCVエピトープの免疫反応性を高めるか、またはポリペプチドの支持体またはワクチン担体への結合を促進する配列を包含する。例えば、欧州公開公報第116,201号;米国特許第4,722840号;欧州公開公報第259
,149号;米国特許第4,629,783号を参照のこと。これらの開示内容は、本明細
書中に参考として援用されている。
【0083】
全長ポリペプチド、および切形型HCV配列を含むポリペプチド、およびそれらの変異体は、化学合成によって調製され得る。化学合成によってポリペプチドを調製する方法は、当該分野において周知である。それらはまた、組換え技術によっても調製され得る。HCV−1をコードするDNA配列、および他のHCV単離体由来の可変領域のDNA配列が、本明細書中に記載および/または参照されている。これらの配列の入手により、HCVポリペプチドの免疫反応性領域をコードするポリヌクレオチドの構築が可能である。
【0084】
HCVの可変ドメイン由来の1個またはそれ以上の免疫反応性HCVエピトープを含む所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、化学的に合成されるか、または単離され、そして発現ベクター中に挿入され得る。このベクターは、β−ガラクトシダーゼまたはスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)のような融合配列の部分を含み得るか、または含み得ない。SODの融合配列を含むポリペプチドの産生に有用な方法およびベクターは、1986年10月1日に公開された欧州公開公報第0196056号に記載されている。
【0085】
所望のポリペプチドをコードするDNAは、融合または成熟形態のどちらであっても、そして分泌を可能にするシグナル配列を含有するかまたは含有しなくても、任意の都合のよい宿主に対して適切な発現ベクター内に連結され得る。次いで、宿主は、発現ベクターで形質転換される。原核宿主細胞系および真核宿主細胞系の両方が、現在、組換え体ポリペプチドを形成するのに用いられており、そしてより一般的な制御系および宿主細胞系の要約を以下に示す。宿主細胞は、所望のポリペプチドを発現させる条件下でインキュベートされる。次いで、このポリペプチドは、溶解細胞または培地から単離され、その意図された用途に必要な程度まで精製する。
【0086】
ウイルス由来のHCVゲノムの抽出、DNAライブラリーの調製および探索、クローンの配列決定、発現ベクターの構築、細胞の形質転換、免疫学的アッセイ(例えば、ラジオイムノアッセイおよびELISAアッセイ)の実施、培養中の増殖細胞において用いられる一般的な方法は、当該分野において周知である(例えば、上記「背景」の部に引用された文献、および上記のこの「発明の実施態様」の部の初めに引用された文献を参照のこと)。
【0087】
所望の配列を含むベクターの適切な宿主内への形質転換は、宿主細胞にポリヌクレオチドを導入する周知のいずれの方法によっても行われ得、この導入方法には、ウイルス中のポリヌクレオチドのパッケージング、および、ウイルスによる、またはポリヌクレオチドの直接取り込みによる宿主細胞の形質導入が包含される。用いられる形質転換の方法は、形質転換される宿主に依存する。直接取り込みによる細菌の形質転換は、一般に、塩化カルシウムまたは塩化ルビジウムによる処理を使用し得る(Cohen(1972)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 69:2110)。直接取り込みによる酵母の形質転換は、Hinnenら、(1978)J.Adv.Enzyme Reg.7:1929の方法を用いて行われ得る。直接取り込みによる哺乳動物の形質転換は、GrahamおよびVan der Eb(1978)Virology 52:546のリン酸カルシウム沈澱法、またはその種々の周知の改変法を用いて行われ得る。細胞(特に、哺乳動物細胞)内への組換え体ポリヌクレオチドの導入に対して、当該分野において周知である他の方法は、デキストラン仲介トランスフェクション、リン酸カルシウム仲介トランスフェクション、ポリブレン仲介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポーレーション、リポソーム中のポリヌクレオチドの被包化、および核内へのポリヌクレオチドの直接マイクロインジェクションを包含する。
【0088】
所望のコード配列の発現を得るために、宿主細胞は(発現ベクターであり得る)ポリヌクレオチドで形質転換される。このポリヌクレオチドは、所望のコード配列に作動可能に連結された制御配列からなる。この制御配列は、所定の宿主に適合し得る。原核宿主の間では、E.coliが最もよく用いられる。原核生物の発現制御配列は、プロモーター、必要に応じて含有されるオペレーター部位、およびリボソーム結合部位を含む。原核宿主に適合し得る転移ベクターは、一般に、例えば、pBR322(アンピシリンおよびテトラサイクリン耐性を付与するオペロンを含むプラスミド)、および種々のpUCベクター(抗生物質耐性マーカーを付与する配列をまた含む)から得られる。プロモーター配列は、天然に存在する、例えば、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)(Weissman(1981)Interferon 3(I.Gresser編)中の「The cloning of interferon and other mistakes」)、ラクトース(lac)(Changら、(1977)Nature 198:1056)およびトリプトファン(trp)(Goeddelら、(1980)Nucl.Acids
Res.8:4057)、およびλ由来PLプロモーター系およびN遺伝子リボゾーム
結合部位(Shimatakeら、(1981)Nature 292:128)であり得る。さらに、天然に存在しない合成プロモーターもまた、細菌プロモーターとして機能する。例えば、1つのプロモーターの転写活性化配列は、他のプロモーターのオペロン配列に結合して、合成ハイブリッドプロモーターを形成し得る(例えば、tacプロモーター(これは、trpおよびlacプロモーターの配列由来である)(De Boerら、(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:21)。上記の系は、特にE.coliに適合し得る;所望であれば、他の原核宿主(例えば、バチリス属(Bacillus)またはシュードモナス属(Pseudomonas)の株が、対応する制御配列で用いられ得る。
【0089】
真核宿主は、培養系における酵母および哺乳動物細胞を包含する。Saccharomyces cerevisiaeおよびSaccharomyces carlsbergensisは、最も一般的に用いられる酵母宿主であり、そして好都合な菌類宿主である。酵母適合性ベクターは、一般に、栄養要求性突然変異体に原栄養性(prototropy)を、または野生株に重金属耐性を付与することにより、生育した形質転換体の選別を可能にするマーカーを有する。酵母適合性ベクターは、2ミクロンの複製起点(Broachら(1983)Meth.Enz.101:307)、CEN3およびARS1の組合せ、または複製を確実に行うような他の手段(例えば、宿主細胞ゲノムに適切なフラグメントを取り込ませ得る配列)を用い得る。酵母ベクターの制御配列は、当該分野において周知であり、解糖系酵素の合成のプロモーターを含む(Hessら(1968)J.Adv.Enzyme Reg.7:149);例えば、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)(欧州公開公報第284044号)、エノラーゼ、グルコキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPまたはGAPDH)、ヘキソキナーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、3−グリセロリン酸ムターゼ、およびピルビン酸キナーゼ(PyK)(欧州公開公報第329303号)。酵母PH05遺伝子(これは酸ホスファターゼをコードする)もまた、有用なプロモーター配列を提供する。さらに、天然に存在しない合成プロモーターもまた、酵母プロモーターとして機能する。例えば、1つの酵母プロモーターの上流活性化配列(UAS)は、他の酵母プロモーターの転写活性化領域に連結され得、合成ハイブリッドプロモーターを創製する。このようなハイブリッドプロモーターの例は、GAP転写活性化領域に連結したADH調節配列(米国特許第4,876,197号および第4,880,734号)を包含する。ハイブリッドプロモーターの他の例は、GAPまたはPyKのような解糖系酵素の転写活性化領域と結合したADH2、GAL4、GAL10、またはPH05遺伝子のいずれかの制御配列からなるプロモーターであって、プロモーターを包含する(欧州公開公報第164556号)。さらに、酵母プロモーターは、適当な転写開始のための酵母RNAポ
リメラーゼに結合する能力を有する、酵母以外の起源の天然に存在するプロモーターを包含する。
【0090】
酵母発現ベクターに含まれ得る他の制御要素には、ターミネーター(例えば、GAPDH由来、およびエノラーゼ遺伝子由来(Holland(1981)J.Biol.Chem.256:1385)、およびリーダー配列がある。リーダー配列フラグメントは、典型的には、細胞からタンパク質を分泌させる疎水性アミノ酸からなるシグナルペプチドをコードする。適切なシグナル配列をコードするDNAは、分泌酵母タンパク質に対する遺伝子(例えば、酵母インベルターゼ遺伝子(欧州公開公報第12,873号)およびα
−因子遺伝子(米国特許第4,588,684号))に由来し得る。あるいは、非酵母起源のリーダー(例えば、インターフェロンリーダー)もまた、酵母における分泌を提供する(欧州公開公報第60057号)。分泌リーダーの好ましいクラスは、酵母α−因子遺伝子のフラグメントを使用し、このフラグメントは、「プレ」シグナル配列と「プロ」領域との両方を含んでいる。用いられ得るα−因子フラグメントのタイプは、完全長プレ−プロα−因子リーダー、および不完全α−因子リーダー(米国特許第4,546,083号および第4,870,008号;欧州公開公報第324274号)を包含する。分泌を提供するα−因子リーダーフラグメントを用いる別のリーダーは、第2の酵母α−因子由来のプロ−領域ではなく、第1の酵母のプレ配列で作られたハイブリッドα−因子リーダーを包含する(例えば、PCT WO89/02463を参照のこと)。
【0091】
染色体外レプリコンまたは組込みベクターである発現ベクターが、多種の酵母中への形質転換用に開発されている。例えば、発現ベクターは、以下の種に用いるために開発されている;Candida albicans(Kurtzら(1986)Mol.Cell Biol.6:142)、Candida maltosa(Kunzeら(1985)J.Basic Microbiol.25:141)、Hanzenula polymorpha(Gleesonら(1986)J.Gen.Microbiol.132:3459)、Kluyveromyces fragilis(Dasら(1984)J.Bacteriol.158:1165)、Kluyveromyces lactis(De Louvencourtら(1983)J.Bacteriol.154:737)、Pichia guillerimondii(Kunzeら(1985)上記)、Pichia pastoris(Creggら(1985)Mol.Cell.Biol.5:3376;米国特許第4,837,148号および第4,929,555号))、Shizosaccharomyces pombe(BeachおよびNurse(1981)Nature 300:706)、およびYarrowia lipolytica(Davidowら(1985)Curr.Genet.10:39)。
【0092】
発現用宿主として利用可能な哺乳動物細胞系は、当該分野で周知であり、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多種の不死化された細胞系、例えばHeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、シリアンハムスター腎(BHK)細胞、COSサル細胞、および多数の他の細胞系を含む。当該分野において、哺乳動物細胞に対して適切なプロモーターが周知であり、それらは、シミアンウイルス40(SV40)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、アデノウイルス(ADV)およびウシ乳頭腫ウイルス(BPV)に由来するようなウイルスプロモーターを含む(適切なプロモーターの例は、Sambrook(1989)を参照のこと)。哺乳動物細胞は、ターミネーター配列およびポリA付加配列を必要とし得;発現を増大するエンハンサー配列をもまた含まれ得、そして、遺伝子の増幅を引き起こす配列もまた望ましくあり得る。これらの配列は、当該分野で周知である。
【0093】
哺乳動物細胞で複製に適するベクターが、当該分野で周知であり、そして、それらは、ウイルスのレプリコン、または所望のポリペプチドをコードする適切な配列の宿主ゲノム
中への組込みを確実にする配列を含み得る。
【0094】
外来DNAの発現に使用され、ワクチン調製において使用され得るベクターは、ワクシニアウイルスである。この場合、異種DNAがワクシニアゲノム中へ挿入される。ワクシニアウイルスゲノム中へ外来DNAを挿入する技術は、当該分野で周知であり、例えば相同的組換えを利用する。異種DNAは、一般的に、選択マーカーの提供も行うチミジンキナーゼ遺伝子(tk)のような、天然には非必須の遺伝子中に挿入される。組換えウイルスの構築を非常に容易にするプラスミドベクターが、記載されている(例えば、Mackettら(1984)「DNA Cloning」Vol.II.IRL Press,191頁中、Chakarabartiら(1985)Mol.Cell Biol.5:3403;Moss(1987)「Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells」(MillerおよびCalos編、10頁)を参照のこと)。次いで、免疫反応性領域を含む所望のポリペプチドの発現が、生存している組換えワクシニアウイルスで感染しおよび/または免疫化された細胞または個体で起こる。
【0095】
ポリペプチドの発現のための他のシステムは、昆虫細胞およびこれらの細胞中での使用に適切なベクターを含む。これらのシステムは、当該分野で周知であり、例えば、バキュロウイルス Autographa californica核ポリヘドロシスウイルス(AcNPV)由来の昆虫発現転移ベクターを含む。このベクターは、ヘルパー非依存ウイルス発現ベクターである。このシステムから得られる発現ベクターは、通常、強力なウイルスポリヘドロン遺伝子プロモーターを用いて、異種遺伝子の発現を起こす。現在、AcNPV中へ外来遺伝子を導入するために最も一般的に使用される転移ベクターは、pAc373である。当業者に周知の多種の他のベクターもまた、発現を増進するために設計されている。これらは、例えば、pVL985(これは、ポリヘドロン開始コドンをATGからATTに変更し、そして、ATTから32塩基対の下流にBamHIクローニング部位を導入する;LuckowおよびSummers(1989)、Virology 17:31を参照のこと)を含む。非融合外来タンパク質の良好な発現は、通常、理想的にはATG開始シグナルの前方に適切な翻訳開始シグナルを含む短いリーダー配列を有する外来遺伝子を必要とする。プラスミドは、E.coli中での選択および増殖のために、ポリヘドロンポリアデニル化シグナルおよびアンピリシン抵抗性(amp)遺伝子および複製起点をも含む。
【0096】
異種DNAをバキュロウイルスの所望の部位に導入する方法は、当該分野で周知である(以下を参照のこと:SummersおよびSmith、Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No.1555;Juら(1987)「Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells」(MillerおよびCalos編)中に記載;Smithら(1983)、Mol.&Cell.Biol.3:2156;および、LuckowおよびSummers(1989)上記)。例えば、この挿入は、相同的組換えにより、ポリヘドロン遺伝子のような遺伝子中に行われ得;所望のバキュロウイルス遺伝子中に作られた制限酵素部位中にもまた行われ得る。挿入される配列は、可変ドメイン由来の少なくとも1つのエピトープを含む所望のHCVポリペプチドのすべてのまたは様々のセグメントをコードするものであり得る。
【0097】
シグナルペプチド切断、タンパク質分解性切断、およびリン酸化のような、翻訳後改変のためのシグナルは、昆虫細胞により認識されると考えられる。また、分泌および核での蓄積(nuclear accumulation)に必要なシグナルは、無脊椎動物と脊椎動物細胞との間で保存されていると考えられている。無脊椎動物の細胞中で有効な脊椎動物細胞由来のシグナル配列の例は、当該分野で周知である。例えば、昆虫細胞中では
、ヒトインターロイキン2シグナル(IL2)は、細胞が認識されると外部へ輸送するシグナルとなり、完全に除去される。
【0098】
上記宿主細胞およびベクターを用いて調製されたポリペプチドは、しばしば、融合ポリペプチドであることが望ましい。非融合ポリペプチドと同様に、融合ポリペプチドは発現後に細胞内に留まり得る。あるいは、融合ポリペプチドが、リーダー配列フラグメントを含む場合、この融合ポリペプチドはまた、細胞から増殖培地中に分泌され得る。好適には、外来遺伝子のリーダーフラグメントと残りの部分との間に、インビボまたはインビトロで切断され得るプロセシング部位がある。
【0099】
HCVの処置に組成物が使用される場合、その組成物は免疫原性であることが望ましい。合成ポリペプチドは、正しいエピトープを提供するために正しく構造化されるが、免疫原性になるには小さすぎる場合、ポリペプチドは適切な担体に結合され得る。このような結合を得るための多数の技術が、当該分野で周知であり、これらには、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルチオ)プロピオネート(SPDP)およびスクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)(ペプチドにスルフヒドリル基がなければ、システイン残基の付加により提供され得る)を用いるジスルフィド結合の形成が含まれる。これらの試薬は、その試薬自身とあるタンパク質中のペプチドシステイン残基との間にジスルフィド結合を形成し、そして、リジンのε−アミノ基または他のアミノ酸の他の遊離アミノ基によるアミド結合を形成する。このような種々のジスルフィド/アミド−形成剤が知られている。例えば、Immun.Rev.(1982)62:185を参照のこと。他の二官能カップリング剤は、ジスルフィド結合よりもむしろチオエーテル結合のためである。これらのチオエーテル形成試薬の多くは、市販で入手可能であり、6−マレイミドヘキサン酸、2−ブロモ酢酸、2−ヨード酢酸、4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸などの反応性エステルを含む。これらのカルボキシル基は、そのカルボキシル基をコハク酸イミドまたは1−ヒドロキシル−2−ニトロ−4−スルホン酸のナトリウム塩と組み合わせることで、活性化され得る。抗原をカップリングするためのさらなる方法には、欧州公開公報第259,
149号に記載のロタウイルス/「結合ペプチド」システムが用いられる。上記の列挙は、それがすべてであるわけではなく、列挙された化合物の改変物もまた、明らかに使用され得る。
【0100】
担体としては、宿主に対して有害な抗体の産生をそれ自体が引き起こさなければ、どのような担体でも使用され得る。適切な担体は、典型的には、タンパク質のような大きくて徐々に代謝される高分子;ラテックス機能付与セファロース、アガロース、セルロース、セルロースビーズなどのような多糖類;ポリグルタミン酸、ポリリジンなどのような重合アミノ酸;アミノ酸共重合体;および不活性ウイルス粒子(以下を参照のこと)である。特に有用なタンパク質基質は、血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、免疫グロブリン分子、サイログロブリン、卵白アルブミン、テタヌストキシン、および当業者に良く知られた他のタンパク質である。
【0101】
HCV可変ドメイン(特にE1およびE2/NS1)のエピトープの免疫原性は、粒子形成タンパク質(例えば、B型肝炎表面抗原に関連するタンパク質)と融合されたまたは組み立てられた真核細胞系において、それらを調製することによっても増強され得る。例えば、米国特許第4,722,840号を参照のこと。可変ドメイン由来のHCVエピトープを含有するポリペプチドが粒子形成タンパク質コード配列に直接結合する構築物は、HCVエピトープに関して免疫原性であるハイブリッドを生成する。さらに、調製したすべてのベクターは、例えば、プレ−Sペプチドのような種々の程度の免疫原性を有し、HBVに特異的なエピトープを含む。このように、粒子形成タンパク質から構築され、HCV配列を含む粒子は、HCVおよびHBVに関して免疫原性である。
【0102】
肝炎表面抗原(HBSAg)が、S.cerevisiae(Valenzuelaら(1982)Nature 298:344)、および、例えば哺乳動物細胞(Valenzuelaら(1984)「B型肝炎」Millman I.ら編に記載)中で形成され、そして粒子に組み立てられることが示されている。このような粒子の形成は、モノマーサブユニットの免疫原性を増強することが示された。構築物はまた、プレ表面(プレ−S)領域の55のアミノ酸を含むHBSAgの免疫優性エピトープを含み得る。Neurathら(1984)。酵母中で発現され得るプレ−S−HBSAg粒子の構築物は、欧州公開公報第174,444号に開示されている;酵母での発現のための異種ウイルス配
列を含むハイブリッドは、欧州公開公報第175,261号に開示されている。これらの
構築物は、SV40−ジヒドロ葉酸還元酵素ベクターを用いて、CHO細胞のような哺乳動物細胞中でも発現され得る(Michelleら(1984))。
【0103】
さらに、粒子形成タンパク質コード配列の一部は、HCV可変ドメイン由来のエピトープをコードするコドンで置換され得る。この置換において、酵母または哺乳動物で免疫原性粒子を形成する単位の集合を媒介するのに必要とされない領域が削除され得、このようにして、HCVエピトープと競合する部分から余分なHBV抗原部位を除去する。
【0104】
活性成分として免疫原性ポリペプチドを含むワクチンの調製は、当業者に公知である。典型的には、このようなワクチンは、液体溶液または懸濁液のいずれかとして、注射可能なように調製される;注射前に、液体に溶解または懸濁させるのに適当な固形物の形態としても調製され得る。この調製物はまた、乳化することも可能であり、すなわち、リポソーム中でカプセル化されたポリペプチドであってもよい。この活性免疫原性成分は、薬学的に受容され得る賦形剤であって、この活性成分と適合し得る賦形剤と混合されることが多い。適当な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの組合せである。さらに、必要であれば、このワクチンには、少量の補助物質が含まれ得る。この補助物質としては、保湿剤または乳化剤、pH緩衝剤、および/またはワクチンの効果を増強するアジュバントが挙げられる。効果的なアジュバントの例は、以下を含むが、それだけには限定されない:水酸化アルミニウム、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン((CGP 11637)、ノル−MDPと呼ばれる)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(CGP 19835A、MTP−PEと呼ばれる)、およびRIBI。ここで、RIBIは、2%スクアレン/Tween80乳濁液中に、細菌から抽出される3成分、すなわちモノホスホリルリピドA、トレハロースジミコレートおよび細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を含んでいる。アジュバントの効力は、可変ドメイン由来のHCVエピトープを含む免疫原性ポリペプチドに対する抗体の量を測定することにより決定され得る。この抗体は、種々のアジュバントもまた含むワクチン中でこのポリペプチドを投与することによって生じる。
【0105】
タンパク質は、中性または塩の形態でワクチンに処方され得る。薬学的に受容され得る塩には、酸付加塩(ペプチドの遊離アミノ基と共に形成される)が含まれ、この塩は、無機酸(例えば、塩酸、リン酸)、または有機酸(酢酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸など)を用いて形成される。遊離カルボキシル基と共に形成される塩は、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニア、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄)および有機塩基(イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなど)からも誘導され得る。
【0106】
ワクチンは、従来、非経口的に投与され、その形態は、例えば、皮下または筋肉注射で
ある。他の投与形態に適したさらなる処方物には、坐剤があり、場合によっては経口処方物を含む。坐剤には、従来のバインダーおよび担体は、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドを含み得る;このような坐剤は、活性成分を含む混合物から0.
5%〜10%、好適には1%〜2%の範囲で形成され得る。経口処方物には、通常用いられる賦形剤が含まれており、この賦形剤には、例えば、薬学的なグレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどがある。これらの組成物は溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル、徐放性処方物または粉末の形態をとり、そして10%〜95%の、好適には25%〜70%の活性成分を含む。
【0107】
上記に加えて、HCV抗原セットの組換えポリペプチドを発現する弱毒化微生物の生ワクチンを調製することも可能である。適切な弱毒化微生物が、当該分野で周知であり、例えばウイルス(例えば、ワクシニアウイルス)および細菌を含む。
【0108】
ワクチンは、投薬処方と適合する様式で、そして予防効果および/または治療効果が得られる量で投与される。投与されるべき量は、一般的に1回の投与当り抗原5μg〜250μgの範囲であるが、処置される個体、この個体の免疫系が抗体を合成する能力、および望まれる保護の程度に依存する。投与に必要とされる活性成分の正確な量は、医師の判断によるものであり、各個体に特有であり得る。
【0109】
ワクチンは、1回の投与スケジュールで与えられるか、または好適には複数回の投与スケジュールで与えられ得る。複数投与スケジュールでは、最初のワクチン投与は、1〜10回に分けて行われ、以後の投与は引続き免疫応答を維持および/または増強するために必要とされる時間間隔で行われ得る。例えば、2回目の投与では1〜4ヵ月で行われ、そして必要であれば数カ月後に引続き投与が行われ得る。投与法は、少なくとも部分的には、個体の必要量よっても決定され、医師の判断による。
【0110】
さらに、上述のHCVポリペプチドを含む抗原セットを含むワクチンは、他の免疫制御剤、例えば免疫グロブリンと共に投与され得る。
【0111】
本発明の組成物は、個体に投与されて、多数の用途に使用され得る(従来技術を用いて、血清から精製または単離された)ポリクローナル抗体を生成し得る。例えば、ポリクローナル抗体は、個体を受動免疫化することに、または免疫化学試薬として用いられ得る。
【0112】
本発明の他の実施態様では、複数のHCV抗原セットを含む上記の免疫反応性組成物が、例えば血液または血清試料を含む生物学的試料中の抗−HCV抗体を検出するために用いられる。イムノアッセイの設計は、変化に富み、多様なものが当該分野で周知である。しかしながら、イムノアッセイは抗原セットを用い、ここで各抗原セットは、HCV単離体の第1可変ドメイン中にエピトープのアミノ酸配列を含む複数の実質的に同一のポリペプチドからなり、1セットのアミノ酸配列は、少なくとも1つの他のセットのアミノ酸配列について異質性である。イムノアッセイのプロトコルは、例えば、競合、または直接反応、またはサンドイッチ型アッセイに基づき得る。このプロトコルはまた、例えば、固体支持体を使用し得、または免疫沈降法によるものであり得る。ほとんどのアッセイは、標識化抗体またはポリペプチドの使用を含む;この標識は、例えば、蛍光性、化学発光性、放射性、または染料分子であり得る。プローブからのシグナルを増幅するアッセイもまた知られている;それらの例は、ビオチンおよびアビジンを利用するアッセイ、およびELISAアッセイのような、酵素標識されそして酵素に介されるイムノアッセイである。
【0113】
免疫学的診断に適し、そして適切な標識試薬を含むキットが、可変ドメイン由来のHCVエピトープを含有する本発明の組成物を含む適切な材料を、アッセイの実施に必要とさ
れる残りの試薬および材料(例えば、適当な緩衝液、塩類溶液など)および適当なアッセイの説明書のセットと共に、適当な容器中にパッケージすることで構成される。
【実施例】
【0114】
以下の記載は本発明の実施例であり、説明の目的のためにだけ提供するもので、本発明の範囲を限定するものではない。本開示を考えると、特許請求の範囲内で非常に多数の実施例が当業者に明らかである。
【0115】
実施例において、以下の材料および方法を用いた。
【0116】
(被験体試料およびRNAの抽出)
無症候性のHCV保菌者であるHCT18およびHCVJ1、および慢性的に感染しているHCV被験体のThは、Weinerら(1991)Virol.180:842−848中に、以前に記載されている。被験体Qは、肝臓バイオプシーに基づいて、慢性活性肝炎であると診断され、6ヶ月間、アルファ−2bインターフェロン治療を施された(毎週3回、3百万単位)。製造者により示されるように10μg/mlのMS2保菌者RNA(Boehringer Mannheim,165−948)を含むRNAzolTMB試薬(Cinna/Biotecx Laboratories)を用いてChomcynskiおよびSacchi(1987)Anal.Biochem.162:156−159の方法に従い、RNAを血漿0.2mlから抽出した。RNAを、蒸留水で処
理したジエチルピロカーボネート200μl中に再懸濁し、そして、最終濃度0.2Mの
酢酸ナトリウムおよび2.5倍容量の100%エタノール(−20℃)中で再沈澱させた
。
【0117】
(cDNAおよびポリメラーゼー連鎖反応)
すべての反応を、Weinerら(1990)Lancet 335:1−5に従い実施した。M13配列決定は、Messingら(1983)Methods in Enzymology 101:20−37に従い実施した。少なくとも4つのクローン化挿入フラグメントの共通配列が、2つのクローン由来のHCV J1.2 E2/NS1配列を除いて与えられた。
【0118】
HCT18およびThのクローニングおよび配列決定を、上記のWeinerら(1991)の報告の通りに行った。被験体QのE2/NS1のアミノ末端セグメントおよびカルボキシ近位セグメントをクローニングするために用いた組み込まれたPCRプライマーは以下であった:
【0119】
【化1】
【0120】
HCV Jl E2/NS1遺伝子をクローニングするために用いたPCRプライマーは以下であった:
【0121】
【化2】
【0122】
*は、Takeuchiら(1990)Nucl.Acids Res.18:4626からのnt配列である;**は、Katoら(1989)Proc.Jpn.Acad.65B:219−223からのnt配列である。センス(S)またはアンチセンス(A)PCRプライマーを、参考文献中のヌクレオチド番号に従い、5’から3’の向きに示した。
【0123】
(ビオチン化ペプチドの合成)
HCVの3つの株の超可変領域に対する重複オクタペプチド(8ペプチド)を、切断可能なリンカー上で合成し、誘導し、ポリエチレンのピンを、本質的にMaejiら(19
90)J.Immunol.Methods 134:23−33による記載のように、各ペプチドのN−末端にカップリングした。最後に、40mMのビオチン、40mMの1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、40mMのべンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP,NOVABIOCHEM)および60mMのN−メチルモルホリン(NMM)を含む150μlのジメチルホルムアミド溶液を用いて一晩20℃で反応させ、ビオチンをN−末端にカップリングした。
【0124】
ビオチン化の後、ペプチドの側鎖を脱保護し、洗浄し、そして各ピンから得られるペプチドを、200μlの0.1Mリン酸緩衝液(pH7.2)中で切断した。切断ペプチド溶液を含むマイクロタイタープレートを、必要とされるまで−20℃で貯蔵した。
【0125】
(ビオチン化ペプチドのELISA試験)
ポリスチレンプレート(Nunc immuno plate maxisorb F96)を、一晩4℃で、0.1ml/ウェルの5μg/m1ストレプトアビジン(Sig
ma カタログ番号S4762)溶液と共に、pH9.6の0.1M炭酸緩衝液中でインキュベートすることにより、ストレプトアビジンでコートした。ストレプトアビジン溶液除去の後、ウェルを、PBS中のTween20の0.1%溶液で4回洗浄した。PBS中
で、0.2mlの2%BSAと共に1時間20℃で、各ウェルをインキュベートすること
により、非特異的結合を遮断した。ウェルを、再びPBS/Tween20で4回洗浄した。プレートを風乾し、要求されるまで、4℃で貯蔵した。各ウェル中のストレプトアビジンを、0.1%のアジ化ナトリウムを含むPBS中に0.1%のBSAを伴う切断ペプチド溶液の1:100希釈液100μlと、20℃で1時間のインキュベートすることにより、切断されたペプチドにカップリングした。インキュベーションの後、プレートをPBS/Tween 20で4回洗浄した。各ウェルを、血清の適切な希釈液(0.1%のア
ジ化ナトリウムを含むPBS中の2%BSAで希釈)100μlと共に、20℃で1時間または4℃で一晩インキュベートした後、PBS/Tween 20で4回洗浄した。結合した抗体を、コンジュゲート0.1ml中で、20℃で1時間反応させることにより検
出した。これは、CASS(0.1MのPBS中に希釈した0.1%ヒツジ血清、0.1%
Tween 20、0.1%ナトリウムカゼイネート、pH7.2)中の西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギIgG(H+L)(Kirke gaard and Perry Labs,Gaithersburg,MD)0.25ml/l(飽和レベル)
から構成されていた。ウェルを、PBS/Tween 20で2回洗浄し、引続きPBSだけで2回洗浄した。酵素の存在は、100mlの0.1Mリン酸/0.08Mクエン酸緩衝液、pH4.0中に50mgのアンモニウム2,2’−アジノ−ビス[3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホネート(ABTS,Boehringer Mannheim カタログ番号122661)および0.03mlの35%(w/w)過酸化水素溶液を含
む0.1mlの新たに調製された溶液と、20℃で45分間反応させることにより検出し
た。発色を、Titertek Multiscan MCプレートリーダー中で、492nmの対照波長に対して405nmのデュアル波長モードで測定した。
【0126】
(コンピューターで生成された抗原性プロフィール)
HCV E2/NS1タンパク質およびHIV−1 gp120超可変領域V3(aa303−338)に対する抗原性プロフィールを、Kabat[免疫学的に重要なタンパク質の配列、米国厚生省(U.S.Department of Health and
Human Services)、公共保健サービス(Public Health Service)、国立衛生研究所(1983)]により最初に提案されたようにして、配列変異の程度に基づいて、コンピュータープログラムから誘導した。この抗原性プロフィールを用いて、各々の可能な対をなすアミノ酸に対して抗体結合が保持される個々の確率の平均を乗じて免疫グロブリンの超可変ループを同定した。与えられたアミノ酸の変化
に関連する抗体結合の保持の確率は、103個の特徴化された線形エピトープに対するすべての可能なアミノ酸置換基の抗体結合における効果を評価することにより、実験的に決定される値であった。Geysenら(1988)J.Mol.Rec.1:32−41。このようにして、このアルゴリズムは、変異指数に加重価を与え、抗体の結合に大きな影響があると考えられるアミノ酸の変化により重みを与えた。すなわち、保存的なアミノ酸の変化に対して補正を行った。15のHCV配列[HCV−1,Q3.2,HCT23,EC10,HC−J1,HCVE1,TH,HCT27,Q1.2,HCT18,HC−J4,HCV J1.2/HCV J1.1,HCV J,HCV BK]をHCVに対する抗原性プロフィールの測定に用いた。HIV−1 V3プロフィールを、ユニークHIV−1配列のより多数のデータベースからランダムに選択した15配列の242の個プロフィールを平均することで得た。LaRosaら(1990)Science 249:932−935およびCorrection in Science(1991)811頁。これらの単離体のいくつかのaa384と420との間のアミノ酸配列を図4〜6に示す。
【0127】
(コンピューターで生成される2次構造予測)
アミノ末端領域(384−420)がαヘリックス、βシート、βターン2次構造を含む確率は、3つの上記2次構造特徴のそれぞれに対する確率を、各残基に割り当てるアルゴリズムを用いて決定し得る。アルゴリズムに用いられる係数は、構造データベースの残基のすべての対合様式の組合せに対して得られた。LevittおよびGreer(1977)J.Mol.Biol.114:181−293。これらの係数から得られた予想パラメーターは、与えられた残基が3つの定義された2次構造特徴の1つに見出される確率を得るためにアルゴリズムをデータベースに適応し直して、観察結果と合致させた。
【0128】
(実施例1)
(HCV E2/NS1 HVおよびHIV−1 gp120ドメインの2次構造およびアミノ酸配列変異の比較)
15のHCVおよびHIV−1単離体由来のアミノ酸配列を、HCV E2 HVドメインまたはHIV−1 gp120 V3ドメイン中でアミノ酸配列の異質性が観察された位置の数について比較した(それぞれ、図7、AおよびB)。アミノ酸の異質性は、E2 HV領域では30のアミノ酸位置のうち25の位置、そして、HIV−1 gp120 V3ドメインでは35のアミノ酸位置のうち23の位置で生じていた。図7AおよびBのx軸上のダッシュは、可変アミノ酸残基が生じるアミノ酸位置を表し、そして、非変異アミノ酸は1文字のアミノ酸コードで示している。図7中に示された抗原性プロフィールにより、HIV−1 GP120タンパク質のV3ループ(図7B)と同様に、HCV
E2中の1ブロックのアミノ酸残基(図7A中のアミノ酸384−414)において、その変異は抗体結合における予想通りの逆の効果を有することが認められたことが示される。図7中のデータにより、HCV E2ドメインは、ウイルス中和エピトープをコードすることで知られるHIV−1 gp120 V3ドメインと、観察されたアミノ酸変異の程度および期待重みの両方において類似することが示され、E2 HVドメインは、gp120 V3ドメインと同様の機能を有し得ることが示唆される。
【0129】
線形エピトープは、タンパク質(特にタンパク質の末端)のあまり構造化されていない領域に、または伸長した表面ループに、より関連していると思われる。コンピューター分析を用いて、個々の残基が残基384〜420間の15のE2
HVアミノ酸配列についての定義された2次構造特徴に関連する確率を予測した。図7から、E2アミノ末端残基384と、非常に期待され顕著に保存されたβターン(残基415−418)との間の領域は、αヘリックス、βシート、βターンの確率が50%以下であることから示されるように、比較的構造化されていないことが示される。E2 HVドメイン中の期待構造の欠如は、単離体間でみられる広範囲の配列変異に対する許容性と
一致し、タンパク質の3次元的折り畳みに寄与する顕著に構造化された領域と対照的である。V3は、HIV−1 gp120の主要中和ドメインであり、β鎖−II型βターン−β鎖−αヘリックス特徴を含むことが報告されており、アミノ酸の変異において、HCV E2HVドメインよりも強い構造的制限を有し得る。HCV E2 HVドメインは、このV3よりも構造化されていないようにさえ見える。まとめると、この事実は、E2
HVドメインが、線形中和エピトープと考えられる部位を含むタンパク質ドメインに特徴的な特性を有するように思われることを示唆する。
【0130】
(実施例2)
(HCV E2/NS1 HVドメインのエピトープマッピング)
HCT18(A,D)、Th(B,E)およびHCV J1(C,F)のE2/NS1
HVドメイン(アミノ酸384〜416位)に対応し、そしてそれを越えて伸長する重複ビオチン化8量体ペプチドを、ストレプトアビジンでコートしたプレートに結合し、HCT 18(A−C)またはTh(D−F)のいずれかに由来の血漿と反応させた。HCV単離体HCT 18(図9)、Th(図10)、およびHCVJ1(図11)についての結果を図9〜11に示す。HCT 18血漿を1:200に希釈し、Th血漿を1:500に希釈した。HVE−1、−2、−3、−4、および−5は単離体に特異的なエピトープを示す。
【0131】
図9〜11から分かるように、HCT 18配列(図9A中のHVE−I)から誘導されたペプチドで試験すると、HCT18血漿は線形エピトープ(407PKQNV411)を同定したが、2つの異なる株ThおよびHCVJ1のHVドメインに対応するペプチドとは反応しなかった(図10および11)。対照的に、Th血漿は、ThのHVドメイン中の線形エピトープHVE−IV(409QNIQLI414、図10)を同定し、そして株HCT
18(399IVRFFAP405、図9)およびHCV J1中のエピトープをもまた同定した。IVの薬剤の使用者であるThは、HCVの複数の株に対して感染可能状態に置かれ得た。
【0132】
Th血漿およびHCT 18血漿は両方とも、ELISAにおいて各単離体由来のピン合成された重複8量体ペプチドと共に使用された場合、3つの単離体すべてに共通なエピトープ(アミノ酸413−419位)とそれぞれ反応した(データを示していない)。
【0133】
抗体結合の特異性を確認するために、アミノ酸403−407位を含むビオテン化ペプチドに結合している抗体を評価し、これを用いて、HCT 18血漿の反応性を、HCT
18HVドメインに対する重複8量体を含むピンで遮断した。これらのデータにより、以下のことが示される:1)E2/NS1 HVドメインが免疫原性であること、2)この領域をマップする複数のエピトープがあること、そして、3)HVドメイン中のエピトープのサブセット(図9〜11中のHVE−1、−2、−3、−4または−5)が単離体特異的であること。
【0134】
(実施例3)
(可変E2/NS1 HVドメインが、肝炎の発赤と関連し得ることの決定)
慢性HCV感染にしばしば見出される肝炎の間欠性発赤に関連するHCV変異体を発見する可能性を調べるために、慢性肝炎の被験体Qから、約2年間隔の肝炎の2つの別個のエピソード(それぞれ、Q1およびQ3)の際に得たE2/NS1遺伝子を部分的に配列決定した。肝炎の第2のエピソードは、インターフェロン治療を終了して1年半後に起こった。
【0135】
Q1およびQ3のE2/NS1領域の推定アミノ酸配列の差異は、391−408の間でだけ著しく異なっており、8つの変化のうち7つをアミノ酸398と407との間に生
じていた(図12)。図12は、Q1およびQ3単離体のE2/NS1ポリペプチドの2つの領域、つまりアミノ酸384−414および547−647の推定アミノ酸配列を示す。Q1配列上のアミノ酸(E)が、4つのQ1クローンのうちの1つに見出された。ボックスで囲まれたアミノ酸は、Ql
HVEまたはQ3 HVEの12量体ペプチドの位置を表す。Q1とQ3との間に見出されるアミノ酸配列の相違は、太字で示した。
【0136】
Q1およびQ3のE2/NS1ポリペプチドのアミノ酸547と647との間では、アミノ酸異質性が1カ所でだけ観察された(図12)。
【0137】
Q1およびQ3のE2 HVドメイン中に観察されるアミノ酸置換の抗体結合における効果を調べるため、アミノ酸396から407(図12のHVEQ1またはQ3)をもとにQ1およびQ3に特異的な12量体ペプチドを合成し、ELISAにおいてQ1およびQ3の血漿と各ペプチドとを別々に反応させた。図7から、Q1およびQ3の両血漿中の抗体は、Q1ペプチドと反応したが、Q3ペプチドとは反応しないことが示される。統計解析(スチューデントの検定)により、Q1/Q3血漿のQ1ペプチドヘの結合は、これらの血漿のランダムに選択された1区画の12の対照ペプチドに対するバックグラウンド結合を有意に越えている(P<0.001)ことが示されたが、一方Q1またはQ3の血
漿のQ3ペプチドヘの結合は、統計上有意ではなかった。このデータは、被験体Qは、HCV Ql HVドメインに対する抗体を発生し、この抗体は、2年後のQ3時点でもまだ検出し得たが、検出し得る体液性応答は、肝炎の第2のエピソードの間に優性であるQ3 E2 HV変異体に対して全く発生されなかったことを示している。
【0138】
【表4】
【0139】
(実施例4)
(HCV感染固体における異なるE2/NS1 HVドメインを伴う共存E2/NS1遺伝子の検出)
図13は、日本人のボランティアの供血者HCV J1の1つの漿試料からクローンニングしたHCV J1の2つの単離体(J1.1およびJ1.2)から推定されたアミノ酸配列を示す。Kuboら(1989)Nucl.Acids Res.17:10367−10372。HCV J1.1とHCV J1.2との間の全部で23のアミノ酸の変化のうち、太字で示した9つの相違が、30のアミノ酸のE2/NS1HVドメインに集中している。E2/NS1 HVドメイン中の9つのアミノ酸の置換のうち5つは、非保存的アミノ酸変化を表す。HCV J1は、本発明者らの実験室でクローニングされた唯一のII群HCVゲノムであるため、これらの相違がHCV J1血漿の交叉汚染によるものではないと考えられる。2つの別個のPCR反応から作製した7つのクローン化配
列から、2つのE2/NSlHV変異体配列だけが同定されたので、HCVJ1.2配列は、HCVJ1の血液中の少数配列(minority sequence)を表す。
【0140】
興味深いことに、HCT27単離体およびHCV E1単離体は、これらは異なる実験室で配列決定され、おそらく無関係な個体から得られたが、両者を比較することにより、これらの単離体中のE2/NSlHVドメイン中のアミノ酸の相違の数が、同一個体由来の単離体の間で観察された相違の数より少ないことが示された(図14)。
【0141】
上記の結果により、個体および個体群中でHCVゲノムが急速に進化しているという示唆が導かれる。
【0142】
(実施例5)
(ワクチンの製剤と調製)
(ジフテリアトキソイド担体タンパク質のMCSへのカップリング)
(必要な材料)
エチレンジアミン四酢酸(EDTA Na2・2H2O)(MW 372)
6−マレイミドヘキサン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MCS)(Sigma)−純度95%
リン酸二水素一ナトリウム(NaH2P04)
窒素
ジメチルホルムアミド(DMF)
Milli Q水
5mM EDTA含有0.1Mリン酸緩衝液(pH6.66)
0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0)
0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)
コハク酸ナトリウム[(CH2COONa)2・6H2O]
システイン
塩酸(2%溶液)
0.1Mコハク酸ナトリウム/0.1 EDTA、pH5.6
精製されたジフテリアトキソイド(Commonwealth Serum Laboratories,Victoria,Australia)を、以下に記載の方法によりMCSにカップリングした:Leeら(1980)Mol.Immuno1.17:749;Partisら(1983)Prot.Chem.2:263;Peetersら(1989)J.Immunol.Methods 120:133;Jonesら(1989)J.Immunol.Methods 123:211。100mlのジフテリアトキソイドをG25セファデックスカラム(17cm×4cm)に通し、チオメルサールを除去した。トキソイドを、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で溶出し、溶出液のタンパク質容量をBCAタンパク質測定法(Pierce)を用いてアッセイした。得られた溶液を、Amicon限外濾過ユニットを用いて、最終濃度10mg/mlに濃縮した。
【0143】
1m1のトキソイド溶液を、0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0)で透析し、次いで200μlDMF中の1.5mg MCSの溶液と混合した。得られた溶液を、暗所において
室温で1時間時々撹拝しながらインキュベートした。MCSトキソイドからカップリングされていないMCSを分離するため、溶液を、0.1Mリン酸緩衝液(pH6.66)で平衡化されたセファデックスPD10カラムに通過させ、タンパク質画分を採集した。
【0144】
カップリングされたマレイミド基の担体分子当りの数を、そこにHCVペプチドがカップリングする前に測定した。30mlのコハク酸/EDTA緩衝液に窒素を2分間吹き込んだ。5mgのシステインを、25mlメスフラスコ中に移し、最終体積が25mlであ
る吹き込まれた緩衝液中に溶解した。表5中に示した溶液の分量を、2連で、25mlスクリューキャップボトルに移した。別々のピペットを用いて、各分量中へ窒素を通気した。次いで各ボトルを密封し、暗所において室温で40分間時々かきまぜながらインキュベートした。
【0145】
【表5】
【0146】
*:3溶液のそれぞれの0.1ml分量を、エルマンの測定法に用いるために採取した。
【0147】
(スルフヒドリルの定量測定のためのエルマン試験)
(必要な材料)
リン酸緩衝液、pH8.0
15.6gのNaH2PO4または12.0gのNaH2PO4無水物を、約700mlのMilli Q水に溶解する。50%NaOHを用いてpHを8.0に調節する。Mill
i Q水を最終体積が1000mlになるように加え、次いで必要に応じてpHを調整する。
エルマン試薬
10.0mgの5,5’−ジチオビス−2−ニトロ安息香酸(DTNB)を、2.5ml
のリン酸緩衝液(pH8.0)中に溶解する。
【0148】
0.1mlのエルマン試薬を、上記のように調製した溶液、すなわち試料、標準溶液、
およびブランク溶液の0.1ml分量のそれぞれに加えた。次いで、5mlのリン酸緩衝
液(pH8.0)を、各分量に加えてよく混合し、15分間そのままおいた。各分量の吸
光度を1cm路長のセル中で412nmで測定した。
【0149】
担体タンパク質上に存在するマレイミド基の数を、次の方法によって測定した。ml当り0.01μモルの−SHの溶液は、1cm光路において412nmで0.136の吸光度を生じた。標準または試料(A)の吸光度は、活性化担体タンパク質上のカップリングされたマレイミド基と反応したシステインの量と等しかった。1モルの有効な−SHが、1モルのマレイミドと反応するので、試験された分量中に存在するマレイミド基のμモルにおける濃度は、A(0.01)/0.136μモル/mlである。溶液の全体積は、5.2
mlであった。そのため、存在する総μモル数は、A(0.01)(5.2)/0.136
であった。試料溶液は、全体積が1.3mlであり、その内0.3mlが活性化担体タンパク質から構成された。試料溶液中に存在するマレイミド基の量は、A(0.01)(5.2)(1.3)/(0.136)(0.1)(0.3)=A(16.57)μモル/m1である
と計算された。MCS活性化担体タンパク質は、−20℃で貯蔵した。
【0150】
(HCVペプチドの還元)
HCVペプチドをMCS活性化担体タンパク質にカップリングする前に、ペプチドを還元し、ペプチド上に存在するチオール基が完全に還元された−SH形であることを確実にした。
【0151】
(必要な材料)
ジチオトレイトール(DTT)
炭酸水素アンモニウム(NH4HCO3)
メタノール
SEP−PAKs(C18カートリッジ、水)、各8mgのペプチドに1カートリッジ
0.1M炭酸水素アンモニウム緩衝液
1L Milli Q水中に7.9gのNH4HC03を溶解
緩衝液A、Mi11i Q水中、0.1%V/Vトリフルオロ酢酸(TFA)
緩衝液B、Milli Q水中、60%V/Vアセトニトリル、0.1%V/VTFA
HCVポリタンパク質のアミノ酸384−411および225−260にそれぞれ対応する2つの各HCVペプチド15mgを、10倍過剰量のDTTを含む2.5m1の0.1M炭酸水素アンモニウムに加えた。生成した溶液をペプチドが溶解するまで撹拝し、次いで室温で1時間そのままおいた。2対のSEP−PAKsを連結し、約20mlのメタノール、次いで20mlの緩衝液Aを各対のSEP−PAKsに通すことにより活性化した。各ペプチド/DTT試料を、ゆっくりと1対のSEP−PAKsに通した。DTTを20mlの緩衝液Aで溶出した。還元されたペプチドを、7mlの緩衝液Bで事前に重さを量ったボトル中に溶出し、次いで一晩凍結乾燥した。次いでこのボトルの重さを量り、回収されたポリペプチドの量を測定した。次いで、還元されたペプチドを、MCS活性化担体タンパク質に即座にカップリングした。
【0152】
(HCVペプチドのMCS活生ヒタンパクヘのカップリング)
5mMのEDTAを伴う約100m1の0.1Mリン酸緩衝液(pH6.66)を、真空下で脱気し、次いで10分間窒素を吹き込んだ。MCS活性化担体タンパク質の10mg/ml溶液2伽1に、過剰の発泡を防ぐために窒素を注意深く吹き込んだ。各5mgの還元ペプチドを、約0.2mlの脱気され吹き込まれたリン酸/EDTA緩衝液(pH6.66)中に溶解し、次いでMCS活性化担体タンパク質溶液と混合した。得られた混合物を、スクリューキャップボトル中に移し、次いで窒素を充満させ密封した。この溶液を、Branson 2000R音波処理バス中に2分間おいてさらに脱気した。このボトルを
、アルミホイルで被い、振とうテーブル上で緩やかに撹拝しながら室温で一晩インキュベートした。
【0153】
得られたコンジュゲートは可溶性であり、カップリングされなかったペプチドは、この混合物をリン酸/EDTA緩衝液(pH6.66)で平衡化したセファデックスPD10
カラムに通すことにより除去した。タンパク質画分を採集した。担体タンパク質に結合したペプチドの量を、アミノ酸分析により測定した。
【0154】
コンジュゲートおよび担体タンパク質の両方の150μ1分量のアミノ酸分析を行った。担体タンパク質だけの寄与によるアミノ酸のレベルの平均割合を測定し、生成した結合ペプチドの量を計算した。セリン、スレオニン、トリプトファン、メチオニン、チロシンおよびシステインは、標準加水分解条件下で改変されるので、これらのアミノ酸のレベルは、測定されなかった。これらの計算で得られた典型的な結果を、表6中に示す。
【0155】
【表6】
【0156】
コンジュゲートの太字の値は、ペプチド中にも存在していたアミノ酸である。アラニンおよびプロリンを含むコンジュゲートについては、結果を標準化するために、因子(193+179+180+56)/(212)+194+153+60=0.8659に、ア
ミノ酸レベルの量を掛けてある。
【0157】
(ワクチン組成物の調製)
注射組成物は、上記のように調製されたMCS活性化ジフテリアトキソイド担体タンパク質に結合したHCVペプチド、および本明細書中に参考として援用された1990年12月13日に公開されたPCT国際公開番号第W0904837号に記載のサブミクロンの水中油乳化型アジュバントを構成成分とした。さらに、HCV結合ペプチドおよびアジュバントに加え、免疫賦活剤である親油性ムラミルペプチド(MTP−PE、CIBA−GEIGY、Basel、Switzerland)を含む注射組成物を調製した。ワクチン組成物は、一般的に50%のタンパク質および5%の免疫賦活剤から構成された。
【0158】
(MTP−PEを含むワクチン組成物の処方)
注射ワクチン組成物10mlの調製:
2.5mlのスクアレン(Sigma Chemical Co.,St.Louis,
Mo.)
0.25ml Tween 80(Sigma Chemical Co.)
0.25ml SPAN 85(Sigma Chemical Co.)
1000μg MTP−PE
1000μg MCS−活性化ジフテリアトキソイド担体タンパク質に結合したHCVペプチド
(MTP−PEを含まないワクチン組成物の処方箋)
注射ワクチン組成物10mlの調製:
2.5mlのスクアレン(Sigma Chemical Co.,St.Louis,
Mo.)
0.25ml Teen 80(Sigma Chemical Co.)
0.25ml SPAN 85(Sigma Chemical Co.)
1000μg MCS−活性化ジフテリアトキソイド担体タンパク質に結合したHCVペプチド
(実施例6)
(ワクチン調製物の毒性についての試験方法)
実施例5の方法により調製したワクチンを、毒性について小動物で試験した。1kg当り50μgのワクチンを、モルモット、マウスおよびウサギに腹腔内注射して投与した。
アカゲザルおよび霊長類にも、腹腔内注射によりワクチンを投与した。アカゲザルおよび霊長類の試験個体群の半数には、5μg/kgで投与したが、一方他の半数には、50μg/kgで投与した。各研究で用いた対照動物には、ウイルスペプチドを含まないワクチン調製物の成分からなる同等量の組成物を注射した。
【0159】
実施例5の方法により調製したワクチンを、毒性について小動物で試験した。1kg当り50μgのワクチンを、モルモット、マウスおよびウサギに腹腔内注射して投与した。アカゲザルおよび霊長類にも、腹腔内注射によりワクチンを投与した。アカゲザルおよび霊長類の試験個体群の半数には、5μg/kgで投与したが、一方他の半数には、50μg/kgで投与した。各研究で用いた対照動物には、ウイルスペプチドを含まないワクチン調製物の成分からなる同等量の組成物を注射した。
【0160】
(実施例7)
(ワクチンにおける投与動物における中和抗体の産生の証明)
実施例5の方法により調製したワクチンを、ワクチン投与した被験体におけるウイルス中和抗体の産生を誘起するワクチンの効果を測定するために、チンパンジーで試験した。チンパンジーに、実施例5の方法により調製したワクチンを5μg/kgの投与量で、6ヵ月の期間にわたり0、1、3、および6カ月の間隔をおいて投与した。対照のチンパンジーには、ウイルスペプチドを含まないワクチンの成分からなる同等量の組成物を注射した。最後のワクチン投与を行ってから2週間後、試験および対照の各チンパンジーに、10 CIU50(チンパンジー感染単位)の投与量のCDC/910血漿接種材料で刺激した。ウイルス刺激の1週間後から始めて、各チンパンジーを、ウイルス血症について毎週ベースでモニターした。
【0161】
ウイルス血症を検出するために、血液試料および肝臓バイオプシー標本を、数ヵ月間毎週ベースで、対照および試験動物から採取した。肝臓バイオプシーにより採取された組織を、壊死および/または炎症の徴候について組織学的に検査した。さらに、バイオプシー材料由来の肝細胞を、HCV感染に特有の細管の存在について電子顕微鏡で検査した。血液試料はまた、ワクチンの調製に使用されなかったウイルスポリペプチドのセグメントに対する抗体の存在について、上記のELISAアッセイによっても分析された。特に、各血液試料を、NS3、NS4、およびNS5ペプチドに対する抗体の存在について、ELI
SAによりスクリーニングした。チンパンジーの血清中におけるこれらのペプチドに対する抗体の存在は、HCV感染を示した。
【0162】
以下の方法を用いて、チンパンジーから採取した血漿中に循環するまたは肝臓バイオプシー組織中に存在するウイルスRNAを検出した。
【0163】
(肝臓および血清中のHCV RNAを検出するcPCR法)
cPCRアッセイにおいて、試料中の推定ウイルスRNAを、逆転写酵素でcDNAに逆転写し、次いで、得られたcDNAのセグメントを、Saikiら(1986)により記載のPCR技術の改変法を用いて増幅する。cPCR法に用いるプライマーは、HCV
RNAから誘導する。これは本明細書で提供されるHCV cDNAのファミリーにより同定され得る。HCV−RNAに対応する増幅生成物を、本明細書で提供されるHCV
cDNAのファミリーから誘導されるプローブを使用して検出する。
【0164】
これらの研究に用いたcPCR/HCVアッセイは、RNAの調製、RNAのcDNAへの逆転写、PCRによるcDNAの特異的セグメントの増幅、およびPCR生成物の分析のための以下の方法を使用して実施した。
【0165】
全RNAを調製するために、Maniatisら(1982)に記載のグアニジウムイ
ソチオシアネート法を使用して、RNAを肝臓から抽出した。
【0166】
全RNAを血漿から単離するために、血漿をTENB(0.1M NaCl、50mM
トリス−HC1(pH8.0)、1mM EDTA)で5〜10倍に希釈し、そして、プ
ロティナーゼK/SDS溶液(0.5%SDS、1mg/mlプロテイナーゼK、20マ
イクログラム/mlポリA担体)中で60〜90分間37℃でインキュベートした。試料を、フェノール(pH6.5)で1回抽出し、得られた有機相を0.1%SDS含有TENBで再び1回抽出し、そして、両抽出の水相をプールして、同体積のフェノール/CHCl3/イソアミルアルコール[1:1(99:1)]で2回抽出した。得られた水相を、
同体積のCHCl3/イソアミルアルコール(99:1)で2回抽出し、そして、0.2M酢酸ナトリウム(pH6.5)、および2.5倍容量の100%エタノールを用いてエタノール沈澱した;沈澱は、−20℃で一晩行った。
【0167】
PCR反応のテンプレートとして使用したcDNAは、対応するcDNAの調製のために選抜された試料を使用して調製した。各RNA試料(2マイクログラムのチンパンジー肝臓の熱変性全RNAまたは2マイクロリットルの血漿から得たRNAを含む)を、1マイクロモルの各プライマー、1ミリリットルの各デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)、50ミリモルのトリス−HCl(pH8.3)、5ミリモルのMgCl2、5ミリモルのジチオトレイトール(DTT)、73ミリモルのKCl、40単位のRNアーゼインヒビター(RNASIN)、および5単位のAMV逆転写酵素を含む25マイクロリットル反応物中でインキュベートした。このインキュベーションは、37℃で60分間行った。cDNA合成に続いて、反応物を50マイクロリットルの脱イオン水(DIW)で希釈し、10分間沸騰し、氷上で冷却した。
【0168】
HCV cDNAのセグメントの増幅は、それらの配列がHCV cDNAクローン36(アンチ−センス)および37b(センス)から誘導される2つの合成オリゴマー16量体プライマーを使用して実施した。クローン36由来のプライマーの配列は以下であった:
【0169】
【化3】
【0170】
クローン37b由来のプライマーの配列は以下であった:
【0171】
【化4】
【0172】
各プライマーは、最終濃度1マイクロモルで用いた。プライマーに隣接するHCV cDNAのセグメントを増幅するために、cDNA試料を、0.1マイクログラムのRNア
ーゼAおよびPerkin Elmer Cetus PCRキット(N801−0043またはN801−0055)のPCR反応物を用いて、製造者の指示に従ってインキュベートした。PCR反応は、Perkin Elmer Cetus DNA熱サイクラーで、30サイクルまたは60サイクルいずれかで実施した。各サイクルは、94℃1分での変性段階、37℃2分でのアニーリング段階、および72℃3分での伸長段階で構成された。しかしながら、最終サイクル(30または60)における伸長段階は、3分ではなく7分であった。増幅後、試料を同体積のフェノール:クロロホルム(1:1)で抽出
し、次いで同体積のクロロホルムで抽出し、次いで試料を0.2Mの酢酸ナトリウム含有
エタノールで沈澱させた。
【0173】
cPCR生成物を、次のようにして分析した。生成物を、Murakawaら(1988)に従って1.8%アルカリ性アガロースゲル電気泳動にかけ、そして、0.4MのNaOH中でゲルを一晩ブロッティングすることにより、ZETATMProbe紙(BioRad Corp.)上に移した。ブロットを、2×SSC(1×SSCは、0.15M
NaCl、0.015Mのクエン酸ナトリウム)中で中和し、0.3MのNaCl、15mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.8、15mMのEDTA、1.0%のSDS、0.
5%の脱脂乳(Carnation Co.)、および0.5mg/mlの超音波処理さ
れ変性されたサケ精子DNA中でプレハイブリダイズした。HCVcDNAフラグメントについて分析すべきブロットを、米国出願番号07/456,637に記載のクローン3
5のHCV cDNA挿入配列のニックトランスレーションにより生成された32標識化プローブに、ハイブリダイズした。ハイブリダイゼーションの後、ブロットを1×SSC(1×SSCは、0.15M NaCl、0.01Mのクエン酸ナトリウム)中で65℃で洗浄し、乾燥し、そしてオートラジオグラフを記録した。生成物の期待サイズは、586ヌクレオチド長である;プローブとハイブリダイズされて、このサイズの範囲でゲル中を移動した生成物は、ウイルスRNAについて陽性であると評価された。
【0174】
分析される各試料中のRNAの存在を立証するために、対照として、アルファ−1抗トリプシンmRNAを増幅するために設計されたcPCRプライマーを用いるcPCRを実施した。アルファ−1抗トリプシン遺伝子のコード領域は、Rosenbergら(1984)中に記載されている。アルファ−抗トリプシン遺伝子のコード領域の365ヌクレオチドのフラグメントを増幅するために設計された合成オリゴマー16量体プライマーを、ヌクレオチド22−37位(センス)およびヌクレオチド372−387位(アンチセンス)から誘導した。cDNA/PCRプライマー配列の間にあるがそれを含まない32Pニックトランスレーションプローブを用いて、PCR生成物を検出した。
【0175】
PCR反応の極感受性のため、すべての試料を少なくとも3回試みた。次の予防措置を取ってあらゆる偽陽性シグナルを取り除いた:1)O−リングゴム栓を有するスクリューキャップ管を用いてエアロゾルを除去;2)ディスポーザブルピストン/キャピラリーを有するRanin MICROMANRの陽圧ピペッター(positive disp
lacement pipetters)でピペッティング;および3)2つの非連続的cDNAクローンからのcDNAおよびPCRプライマーに対するオリゴヌクレオチド配列の選択。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明の免疫反応性組成物は、例えば、HCV感染、特に慢性HCV感染に対する個体の処置にも使用し得るワクチンのような材料の調製において有用である。さらに、この組成物は、生物学的試料におけるHCVの多数の変異体の検出に用いる材料を調製するために使用し得る。例えば、本発明の免疫反応性組成物は、1つ以上のHCV単離体を認識するポリクローナル抗体組成物を生成するために使用され得、または抗HCV抗体イムノアッセイの抗原として使用され得る。後者の方法は、血液生成物をHCV汚染の可能性についてスクリーニングするために使用され得る。ポリクローナル抗血清または抗体は、個体の受動免疫のために使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】図1は、HCVゲノムの遺伝学的な構築を模式図的に示す。
【図2】図2は、I群およびII群のHCV単離体によってコードされるE1タンパク質の推定アミノ酸配列の比較を示す。
【図3】図3は図2の続きである。
【図4】図4は、HCV単離体の推定E2/NS1領域のアミノ酸配列の比較を示す。
【図5】図5は図4の続きである。
【図6】図6は図5の続きである。
【図7】図7は、推定HCV E2/NS1タンパク質(アミノ酸384−420位)のアミノ末端領域、およびHIV−1のgp120 V3超可変領域に関する抗原性プロフィールを示すグラフである。
【図8】図8は、HCV E2/NS1タンパク質(アミノ酸384−420位)のアミノ末端領域由来の所定の残基が、α−ヘリックス、β−シートまたはβ−ターンのいずれかの二次構造的特徴において見い出される確率の百分率を表す一連のグラフを示す。
【図9】図9は、HCV 18(パネルA)またはTh(パネルD)由来の血漿中の抗体と、HCV単離体HCT 18の384から415または416までのアミノ酸から誘導される部分的に重複するビオチニル化8量体ペプチドとの反応性を表す棒グラフである。
【図10】図10は、HCV 18(パネルB)またはTh(パネルE)由来の血漿中の抗体と、HCV単離体Thの384から415または416までのアミノ酸から誘導される部分的に重複するビオチニル化8量体ペプチドとの反応性を表す棒グラフである。
【図11】図11は、HCV 18(パネルC)またはTh(パネルF)由来の血漿中の抗体と、HCV単離体HCV J1の384から415または416までのアミノ酸から誘導される部分的に重複するビオチニル化8量体ペプチドとの反応性を表す棒グラフである。
【図12】図12は、Q1およびQ3の単離体に対して与えられたE2/NS1ポリペプチドの2つの領域の推定アミノ酸配列、すなわち384−414位のアミノ酸および547−647位のアミノ酸を示す。
【図13】図13は、単離体HCV J1.1およびJ1.2の推定アミノ酸配列の384位から647位のアミノ酸を示す。
【図14】図14は、単離体HCT27およびHCVE1の推定アミノ酸配列の384位から651位のアミノ酸を示す。
【図15】図15は、単離体HCV−1の完全ポリタンパク質配列を示す。
【図16】図16は図15の続きである。
【図17】図17は図16の続きである。
【図18】図18は図17の続きである。
【図19】図19は図18の続きである。
【図20】図20は図19の続きである。
【図21】図21は図20の続きである。
【図22】図22は図21の続きである。
【図23】図23は図22の続きである。
【図24】図24は図23の続きである。
【図25】図25は図24の続きである。
【図26】図26は図25の続きである。
【図27】図27は図26の続きである。
【図28】図28は図27の続きである。
【図29】図29は図28の続きである。
【図30】図30は図29の続きである。
【図31】図31は図30の続きである。
【図32】図32は図31の続きである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、免疫反応性ポリペプチド組成物、この組成物を免疫学的な適用において用いる方法、ならびにこの組成物を製造するための物質および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウイルスは、最近では、輸血後の非A非B型肝炎(NANBH)の原因となる主な因子、および集団獲得(community−acquired)NANBHの重大な原因として同定されている。このウイルスのゲノム配列を得るための物質および方法は、公知である。例えば、PCT公開第WO89/04669号、第WO90/11089号、および第WO90/14436号を参照のこと。
【0003】
HCVゲノムの分子的特徴は、約3011個のアミノ酸からなるポリタンパク質をコードする約10,000個のヌクレオチドを含有する正の極性のRNA分子であるというこ
とを示す。その証拠となる数種の系は、HCVがフラビウイルスおよびペスチウイルスを包含するフラビウイルス(Flaviviridae)科のウイルスと同様の遺伝子構成を有することを示唆する。そのペスチウイルスおよびフラビウイルスの系統と同様に、HCVは、個々のウイルスのタンパク質(構造および非構造の両者)がプロセッシングによって生じる、大きなポリタンパク質前駆体をコードすると考えられる。
【0004】
RNA含有ウイルスは、比較的高い割合の自然変異、すなわち報告によると、組み込まれているヌクレオチドあたりおよそ10-3から10-4の割合で自然変異を有する。従って、異質性(heterogeneity)および遺伝子型の流動率はRNAウイルスでは共通であるので、多様なウイルスの単離体が存在し得る。その単離体は、HCV種においてビルレントまたは非ビルレントであり得る。
【0005】
HCVの異なる単離体の多くが、現在同定されている。これらの単離体の配列は、RNAウイルスの限定された異質性の特徴を示す。
【0006】
単離体HCV J1.1は、以下の刊行物に記載されている:Kubo、Y.ら(1989)Japan.Nucl.Acids Res.17:10367−10372;Takeuchi,K.ら(1990)Gene 91:287−291;Takeuchiら(1990)J.Gen.Virol.71:3027−3033;Takeuchiら(1990)Nucl.Acids Res.18:4626。
【0007】
2つの独立した単離体(「HCV−J」および「BK」)の5’−および3’−末端の配列を加えた完全コード配列は、それぞれ、KatoらおよびTakamizawaらによって記載されている(Katoら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:9524−9528;Takamizawaら(1991)J.Virol.65:1105−1113)。
【0008】
HCV単離体について記載されている他の刊行物は、以下のとおりである:
「HCV−1」:Chooら(1990)Brit.Med.Bull.46:423−441;Chooら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:2451−2455;Hanら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci
.USA 88:1711−1715;European Patent Publication No.318,216。
【0009】
「HC−J1」および「HC−J4」:Okamotoら(1991)Japan J.Exp.Med.60:167−177。
【0010】
「HC−18」、「HC−23」、「Th」、「HC−27」、「EC1」および「EC10」:Weinerら(1991)Virol.180:842−848。
【0011】
「Pt−1」、「HCV−K1」および「HCV−K2」:Enomotoら、日本においては、2つの主要なタイプのC型肝炎がある。Division of Gastroenterology、Department of Internal Medic
ine、Kanazawa Medical University、Japan。
【0012】
クローン「A」、「C」、「D」および「E」:Tsukiyama Koharaら、肝炎ウイルスの第2群、Virus Genes。
【0013】
診断およびワクチンの戦略に対する典型的なアプローチは、保存されたウイルスのドメインに注目することである。しかし、このアプローチは、可変ドメインにおいて存在し得る重要なエピトープを無視するという不利益を生む難点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
診断およびワクチンに有用なポリペプチド組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、多数のHCV単離体(特にこのウイルスの異質性(heterogeneous)ドメインに関して)と免疫学的に交差反応性であるポリペプチド組成物を提供することである。
【0016】
多くの重要なHCVエピトープは、ウイルスの単離体の間では変化し、そしてこれらのエピトープは、特定のドメインに位置づけられ得ることが発見された。この発見は、(保存されたドメインよりもむしろ)可変ドメインに注目する免疫学的に交差反応性のポリペプチド組成物を製造するという戦略を可能にする。
【0017】
従って、本発明の1実施態様は、ポリペプチドを含む免疫反応性組成物である。ここで、このポリペプチドは、HCVの第一の可変ドメイン中のエピトープのアミノ酸配列を含有し、そして別個のHCV単離体の第一の可変ドメイン由来の少なくとも2種の異質性アミノ酸配列が、この組成物中に存在する。
【0018】
本発明の別の実施態様は、複数の抗原セットを含有する免疫反応性組成物である。ここで、(a)各抗原セットは、HCV単離体の第一の可変ドメイン中に存在するエピトープのアミノ酸配列を含む複数の実質的に同一のポリペプチドからなり、そして(b)1つのセットのエピトープのアミノ酸配列は、類似の配列を有する少なくとも1つの他のセットのアミノ酸配列に関して異質性である。
【0019】
本発明の別の実施態様は、複数のポリペプチドを含有する免疫反応性組成物であって、ここで各ポリペプチドは次式を有する:
Rr−(SVn)X−R’r'
ここで、
RおよびR’は、約1−2000個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であり、そしてそれらは同一であるかまたは異なり;
rおよびr’は、0または1であり、そしてそれらは同一であるかまたは異なり;Vは、
HCV可変ドメインの配列を含有するアミノ酸配列であって、ここで、該可変ドメインは、少なくとも1個のエピトープを含有し;
Sは、1以上の整数であり、選択された可変ドメインを表し;そして
nは、1以上の整数であり、異なるnの値を有する少なくとも1種の他の単離体に関して、所定のSVで選択された異質性HCV単離体を表し、そしてnは各xに対して独立して選択され;
xは、1以上の整数であり;そして
ただし、アミノ酸配列は、(i)1V1および1V2、(ii)1V1および2V2、および(iii)1Vlおよび2Vlからなる群から選択される組合せを表す組成物中に存在する。
【0020】
本発明のさらに別の実施態様は、以下の(a)、(b)および(c)を包含する、HCVの処置のための免疫原性の薬剤組成物を調製する方法である:
(a)上記免疫反応性組成物を提供すること;
(b)適切な賦形剤を提供すること;および
(c)哺乳動物へ投与することにより免疫原性の応答を提供する割合で、(a)の免疫反応性組成物と(b)の賦形剤とを混合すること。
【0021】
本発明のさらに別の実施態様は、上記免疫反応性組成物の有効量を哺乳動物に投与することを包含する、抗HCV抗体を産生する方法である。
【0022】
本発明のさらに別の実施態様は、以下の(a)、(b)、(c)および(d)を包含する、生物学的試料中でHCVに対する抗体を検出する方法である:
(a)HCVに対する抗体を含有すると推測される生物学的試料を提供すること;
(b)上記免疫反応性組成物を提供すること;
(c)抗原−抗体複合体が形成されるような条件下で、(a)の生物学的試料と(b)の免疫反応性組成物とを反応させること;および
(d)必要に応じて、(a)の免疫反応性組成物と(b)の生物学的試料の抗体との間で形成される抗原−抗体複合体の形成を検出すること。
【0023】
本発明の別の実施態様は、適切な容器中に入れられた上記免疫反応性組成物を含有する生物学的試料中で、HCVに対する抗体を検出するためのキットである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の発明によれば、診断およびワクチンに有用な、多数のHCV単離体(特にこのウイルスの異質性ドメインに関して)と免疫学的に交差反応性であるポリペプチド組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
発明の実施においては、指示されない限り、当該分野の技術範囲内にある分子生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学における従来の手法が採用される。このような手法は、文献中に詳しく説明されている。例えば、次の文献を参照のこと:Maniatis,FitschおよびSambrook,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL(第2版,1989);DNA CLONING,I巻およびII巻(D.N Glover編,1985);OLIGONUCLEOTIDE SYNTHESIS(M.J.Gait編,1984);NUCLEIC ACID HYBRIDIZATION(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編,1984);TRANSCRIPTION AND TRANSLATION(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編,1984);ANIMAL CELL CULTURE(R.I.Freshney編,1986);IMMOBILIZED
CELLS AND ENZYMES(IRL Press,1986);B.Perbal,A PRACTICAL GUIDE TO MOLECULAR CLONING(1984);METHODS IN ENZYMOLOGYのシリーズ(Academic Press,Inc.);GENE TRANSFER VECTORS FOR MAMMALIAN CELLS(J.H.MillerおよびM.P.Calos編,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Methods in Enzymology Vol.154およびVo1.155(それぞれ、WuおよびGrossman、およびWu編)、MayerおよびWalker編(1987);IMMUNOCHEMICAL METHODS IN CELL AND MOLECULAR BIOLOGY(Academic Press,London)、Scopes(1987);PROTEIN PURIFICATION: PRINCIPLES AND PRACTICE,Second Edition(Springer−Verlag,N.Y.)、およびHANDBOOK OF EXPERIMENTAL IMMUNOLOGY,I〜IV巻(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編,1986);IMMUNOASSAY:A PRACTICAL GUIDE(D.W.Chan編,1987)。本明細書中で述べられる前述および後述の全ての特許、特許出願および刊行物は、本明細書中に参考として援用されている。
【0026】
HCVは、フラビウイルス(Flaviviridae)科の新しいメンバーである。フラビウイルス(Flaviviridae)科には、ペスチウイルス(ブタコレラウイルスおよびウシウイルス性下痢性ウイルス)およびフラビウイルスが包含される。フラビウイルスの例には、デング熱ウイルスおよび黄熱病ウイルスがある。HCVの遺伝学的構成の図を図1に示す。フラビウイルスおよびペスチウイルスと同様に、HCVは、ウイルスのポリタンパク質のN末端の基本的なポリペプチドドメイン(「C」)、続いて2種の糖タンパク質ドメイン(「E1」,「E2/NS1」)を、コードすると考えられ、これらは非構造遺伝子NS2からNS5の上流にある。この推定タンパク質ドメインのアミノ酸座標を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
上記のように、多数のHCV単離体が同定されている。完全および部分HCV配列の比較配列分析により、ヌクレオチドおよびアミノ酸レベルでの相同性に基づいて、HCV単離体が、少なくとも3つの基本群に広く細分され得ることが分かる(表2)。Houghtonら(1991)Hepatology 14:381−388を参照のこと。しかし、III群における単離体では、部分配列しか得られない。それゆえ、これらの単離体の配列がより明らかになると、これらの1つまたはそれ以上の単離体は、4番目となり得る群を含む別の群に分離されるべきである。表3は、ヌクレオチド配列から推定される種々のHCV単離体の個々のウイルスタンパク質の間での配列相同性を示す。同じウイルス群のタンパク質は、種々のウイルス群によりコードされる同じタンパク質よりも高い配列類似性を示すと考えられ得る(表3)。これに対する1つの例外は、現在まで全てのIお
よびII群のウイルス単離体配列の間で高度に保存されているヌクレオキャプシドタンパク質である。(表3では、記号N/Aは、比較により得られなかった配列を示す。)従って、本発明のためには、I群の単離体は、本明細書中でI群として分類される単離体に対して、アミノ酸レベルで約90%またはそれ以上の相同性であるそれらのウイルスタンパク質、特に、E1およびE2/NS1タンパク質を有する単離体として定義され得る。II群は類似の方法で定義される。それ以上の群については、同様に、始原型単離体に対してウイルスタンパク質の相同性によって定義され得る。下位群はまた、所定のタンパク質、例えば、E1、E2/NS1またはNS2タンパク質における相同性により、または単により高い相同性レベルにより定義され得る。
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
E1およびE2/NS1遺伝子によりコードされた推定ウイルスエンベロープタンパク質は、I群およびII群の間で実質的なアミノ酸配列の変異を示すことを注目すべきである。C、NS3、NS4およびNS5タンパク質が全て、両群の間でより高い配列保存性を示しているのに対し、NS2だけがかなりの割合の異質性を示す。I群およびII群の間での推定ビリオンエンベロープタンパク質で見られる配列変異により、2つの群間でのアミノ酸の特徴的な区別が可能になる。この例を図2および3に示す。この図2および3では、E1遺伝子産物の配列がI群およびII群のウイルス間で比較される。HCVのII群およびII群のヌクレオチド配列から推定されたE1アミノ酸配列が示される。これらの図では、横線はHCV−1と配列が同一であることを示す。星印は、アミノ酸の群特異的な区別を示す;群特異的残基は、明確に定義され得る。I群の配列は、HCV−1、HCT18、HCT23、HCT27、およびHC−J1である。II群の配列は、HC−J4、HCV−J、HCV J1.1、およびBKである。このようなアミノ酸の群特異的な区別はまた、E2/NS1遺伝子によりコードされたgp72を含む他の遺伝子産物中にも存在する。図4〜6は、I群とII群とを区別するHCV単離体の推定E2/NS1領域の比較アミノ酸配列を示す。後者のタンパク質はまた、ほとんどすべての単離体の間の大きな変異を示す約30個のアミノ酸からなるN−末端超可変領域(「HV」)を含む。Weinerら(1991)上記を参照のこと。この領域は、HCV−1のアミノ酸番号付けシステムを用いて、アミノ酸384位から414位までに生じる。
【0032】
推定HCVエンベロープ糖タンパク質E2/NS1は、ペスチウイルス属のgp53(BVDV)/gp55(ブタコレラウイルス)エンベロープポリペプチドおよびフラビウイルス属のNS1に相当し得る。この両ポリペプチドは、これらのポリペプチドでワクチン接種した宿主に防御免疫を与える。
【0033】
超可変領域(「HV」)とHIV−1 gp120 V3ドメインとの間での配列変異度に関して著しい類似性、限定された二次構造の欠如、および推定抗体結合に関するアミノ酸変化の予期された効果により、HVドメインが中和抗体をコードしていることが示唆される。
【0034】
ドメインの免疫原性は、実施例に記載の抗体エピトープマッピング実験により示される。これらの研究の結果により、HCVの3つの主要群に加え、さらにHV特異的部分群が存在することが示唆される。
【0035】
HCV誘導NANBHの個体から得た生物学的試料を分析することより、個体は同時に2つまたはそれ以上のHCV変異体を保有し得ることが示される。2つの共在HV変異体は、1つの個体J1の血漿中で見い出された。さらに、肝炎の間欠性発赤になっている慢性NANBHの個体の遺伝子の部分配列決定により、個体Qが2つのHCV変異体(Q1またはQ3)に感染していることが示された。各々の変異体は、この疾患の1つのエピソード(episode)にのみ関連していた。Q1またはQ3特異的ペプチド(アミノ酸396−407位)を用いるELISAにより、Qは、Q1ペプチドに反応する抗体を発生するが、対応するQ3ペプチドに反応する抗体を発生しないことが示されたので、Qの疾患の再発は、HV変異体の出現のために起こることが示唆された。疾患の第2のエピソードの間、Q1ペプチドに対する抗体は存在するが、Q3ペプチドに対する体液性免疫応答が欠如していることにより、HVドメインの変異が免疫選択の圧力から生じ得ることが示唆される。アミノ酸396〜407位は、HVドメインにおける最も高い選択圧にかけられて得られたと思われる。これらの発見は、疾患に関連した高レベルの慢性度が、HCV感染に対する不適当な免疫宿主応答および/または免疫回避の有効なウイルス機構に依存し得るという説を支持する。さらに、それらは、E2/NSl HV領域がウイルスエスケープ機構および/または不適当な免疫応答機構に含まれる遺伝子領域であることを示している。
【0036】
上記のように、HCVゲノム内にはいくつかの変異領域が存在する。これらの1つまたはそれ以上の領域は、おそらく、ウイルスエスケープ機構および/または不適当な免疫応答機構に含まれる。それゆえ、これらの変異体に対する免疫応答を誘導し得るHCVポリペプチドを処置するための組成物中に含まれることが望ましい。
【0037】
ゲノムのE1およびE2/NS1領域が推定エンベロープ型ポリペプチドをコードしているので、これらの領域は、免疫原性に関して特に重要である。このため、これらの領域は、HCV感染に対して個体を防御する免疫応答を誘導および/または増強し、そして感染個体の疾患の慢性的な再発の予防を助けることが特に望ましい領域の中にある。さらに、これらの領域は、感染、さらに重複感染または2つまたはそれ以上の変異体による共感染の経過中に生じるHCV変異体を検出することが望ましい領域の中にある。
【0038】
本発明は、HCV感染、特に慢性HCV感染の予防のために、個体を処置するための組成物および方法を記載している。さらに、本発明は、生物学的試料中の抗HCV抗体の存在を検出するための組成物および方法を記載している。この後者の方法は、免疫学的に異なるHCVエピトープに対する応答で生じる抗HCV抗体を同定するのに特に有用である。この方法はまた、感染個体内のHCVの多様な変異体の進化を研究するのに用いられ得る。本発明の考察において、以下の定義が適用される。
【0039】
「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸の重合体を意味し、特定の長さの生産物を意味しない。従って、ポリペプチドの定義には、ペプチド、オリゴペプチド、およびタンパク質が包含される。この用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾物、例えば、グリコシル化物、アセチル化物、リン酸化物などを意味しないか、あるいは除外する。この定義に包含されるものは、例えば、アミノ酸(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)の1つかまたはそれ以上の類似体を含むポリペプチド、置換された結合ならびに当該技術分野で公知の天然に存在するおよび天然に存在しない他の改変を有するポリペプチドである。
【0040】
本明細書中で用いられるように、Aの重量が、AとBとを合わせた重量の少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、そして最も好ましくは少なくとも約90%であるとき、AはBから「実質的に単離される」とする。本発明のポリペプチド組成物は、好ましくは、ヒトまたは他の霊長類の組織(これには血液、血清、細胞溶解物、細胞小器官、細胞のタンパク質などが包含される)および細胞培養培地を実質的に含まない。
【0041】
「組換え体ポリヌクレオチド」とは、ゲノム、cDNA、半合成、もしくは合成起源のポリヌクレオチドを意味し、その起源もしくは操作によって、(1)このポリヌクレオチドが天然で関連しているポリヌクレオチドの全体もしくは一部分と関連していないもの、(2)このポリヌクレオチドが天然で連結しているポリヌクレオチド以外のポリヌクレオチドに連結されているもの、または(3)天然に存在しないものを意味する。
【0042】
「ポリヌクレオチド」とは、任意の長さを持ったポリマー形態のヌクレオチド(リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド)である。この用語は、分子の一次構造のみを意味する。従って、この用語には、二本鎖DNAおよび一本鎖DNA、ならびに二本鎖RNAおよび一本鎖RNAが含まれる。この用語にはまた、既知の型の改変、例えば当該分野において既知の標識、メチル化、「キャップ」、類似体による1つまたはそれ以上の天然に存在するヌクレオチドの置換、ヌクレオチド間の改変、例えば非荷電結合を有するもの(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)、例えばタンパク質(例えば,ヌクレアーゼ、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)のようなペンダント部分を含むもの、インターカレーター(例えば、アクリジン、ソラレンなど)を有するもの、キレート化剤(例えば、金属、放射性金属など)を含むもの、アル
キル化剤を含むもの、修飾された結合(例えば、アルファアノマー核酸など)を有するもの、ならびに未修飾形態のポリヌクレオチドが含まれる。
【0043】
単細胞因子として培養される微生物もしくは高等真核細胞系を示す「組換え体宿主細胞」、「宿主細胞」、「細胞」、「細胞系」、「細胞培養物」などの用語は、組換え体ベクターもしくは他の転移ポリヌクレオチドの受容体として使用可能か、または使用されてきた細胞を意味し、トランスフェクトされた元の細胞の後代が含まれる。単一の親細胞の後代は、自然の、偶発的または故意の変異によって、形態、またはゲノムもしくは全DNAの相補性が元の親細胞と、必らずしも完全に同一でなくてもよい。
【0044】
「レプリコン」には、例えばプラスミド、染色体、ウイルス、コスミッドなどのあらゆる遺伝的要素であり、それらは細胞内でポリヌクレオチドの複製の自律的な単位として挙動し、すなわち自ら制御しながら複製を行うことができる。
【0045】
「ベクター」は、オープンリーディングフレームの複製および/または発現を提供する配列をさらに含むレプリコンである。
【0046】
「制御配列」は、ある種のポリヌクレオチド配列を意味し、この配列が連結しているコード配列を発現させるのに必要なものである。このような制御配列の性質は、宿主の生物によって異なる。このような制御配列としては、原核細胞内では、一般に、プロモーター、リボソーム結合部位、およびターミネーターが含まれ、真核細胞内では、一般に、プロモーター、ターミネーター、および場合によってはエンハンサーが含まれる。「制御配列」という用語は、最小限発現に必要なすべての要素を包含し、さらに発現に有利な追加の要素、例えば分泌を制御するリーダー配列を包含し得る。
【0047】
「プロモーター」は、DNAテンプレートにRNAポリメラーゼを結合させるコンセンサス配列を含むヌクレオチド配列であり、その結合は、mRNAの製造が、隣接する構造遺伝子の通常の転写開始部位で開始するような方法で行われる。
【0048】
「作動可能に連結された」と用語は、上記のような要素が、意図した方式で機能し得るような関係に並置されていることを意味する。コード配列に「作動可能に連結された」制御配列は、制御配列に適合した条件下でこのコード配列の発現が達成されるように、連結される。
【0049】
「オープンリーディングフレーム」(ORF)は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の領域であり、この領域は、コード配列の一部またはコード配列全体を意味する。
【0050】
「コード配列」は、適切な調節配列の制御下に置かれた場合に、mRNAに転写され、および/またはポリペプチドに翻訳されるポリヌクレオチド配列である。コード配列の境界は、5’末端の翻訳開始コドンと、3’末端の翻訳停止コドンとによって決定される。コード配列は、mRNA、DNA(これにはcDNAが包含される)、および組換え体ポリヌクレオチド配列を包含し得るが、これらに限定されるものではない。
【0051】
本明細書中で用いられるように、「エピトープ」または「抗原決定基」とは、免疫反応性のアミノ酸配列を意味する。一般的に、エピトープは、少なくとも3〜5個のアミノ酸で構成され、そしてより一般的には少なくとも約8個、またはさらには約10個のアミノ酸で構成されている。本明細書中で用いられるように、所定のポリペプチドのエピトープは、その所定のポリペプチドにおけるエピトープと同様のアミノ酸配列を有するエピトープ、およびその免疫学的な等価物を意味する。
【0052】
「抗原」は、1個またはそれ以上のエピトープを含有するポリペプチドである。
【0053】
「免疫原性」とは、細胞性免疫応答および/または体液性免疫応答を誘導する能力を意味する。免疫原性応答は、単独で免疫反応性のポリペプチドによって誘導され得るか、またはアジュバントの存在下または非存在下での担体の存在を必要とし得る。
【0054】
「免疫反応性」は、(1)抗体および/またはリンパ球抗原リセプターに免疫学的に結合する能力、または(2)免疫原性である能力を意味する。
【0055】
「抗体」は、特定のエピトープと結合する任意の免疫グロプリンであり、これには免疫グロブリンの抗体およびフラグメントが包含される。この用語は、とりわけ、ポリクローナル、モノクローナル、およびキメラ抗体を包含する。キメラ抗体の例は、米国特許第4,816,397号および第4,816,567号で論じられている。
【0056】
「抗原セット」は、複数の実質的に同一のポリペプチドからなる組成物として定義され、ここでこのポリペプチドは、定義されたエピトープのアミノ酸配列を含む。
【0057】
「実質的に同一のポリペプチド」とは、ポリペプチドの製造方法(例えば、組換え体発現、化学合成、組織培養など)が原因となる、配列またはサイズの変化の典型的な範囲に限定される変化以外は同一であるポリペプチドを意味する。この変化は、実質的に同一のポリペプチドの組成物(例えば、この組成物は同一のポリペプチドの組成物として免疫学的に作用する)の所望の機能的な性質を改変しない。この変化は、例えば、このポリペプチドの移送の間の分泌過程から、化学合成などにおいて100%未満の効力を生じる改変によるものであり得る。
【0058】
本明細書中で用いられるように、ウイルスのタンパク質の「可変ドメイン」または「VD」は、少なくとも2種のHCV単離体または亜集団(subpopulation)の間で矛盾がないパターンのアミノ酸の変化を示すドメインである。好ましくは、このドメインは、少なくとも1個のエピトープを含有する。可変ドメインは、1個だけのアミノ酸変化により単離体から単離体へ変化し得る。これらの単離体は、同じまたは異なったHCV群または亜群に由来し得る。可変ドメインは、単離体中の配列の組成から容易に同定され得、そしてこれらの技法は下記のとおりである。本発明を説明するために、可変ドメインは、図15〜32に示されるようにHCV−1のゲノムによってコードされるポリタンパク質のアミノ酸番号に関して、1位で示されるイニシエーターのメチオニンと共に定義される。別のHCV単離体における対応の可変ドメインは、任意の可変ドメイン以外の保存ドメインを最大限に整列させる方法で2種の単離体の配列を整列させることにより決定される。これは、いかなる多くのコンピューターのソフトウエアパッケージ(例えば、ALIGN1.0、これはUniversity of Virginia,Department of Biochemistry から入手可能である(註:Dr.William R.Pearson))でなされ得る。Pearsonらの(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444−2448を参照のこと。特定の可変ドメインによって定められるアミノ酸番号は、幾分主観的であり、かつ選択の問題であることが理解されるべきである。従って、可変ドメインの開始および終止は、他に指示がない限り、近似であり、および、ドメインまたはサブドメインと部分的に重複することを包含することが理解されるべきである。
【0059】
エピトープは、所定のポリペプチドにおける別のエピトープに免疫学的に結合する抗体と交差反応するとき、その所定のポリペプチドにおけるそのエピトープの「免疫学的等価
物」である。
【0060】
典型的に、エピトープは、位置づけられ、少なくとも約5個のアミノ酸、時折少なくとも約8個のアミノ酸、およびさらに、約10個またはそれ以上のアミノ酸を含む。
【0061】
HCVエピトープを含むアミノ酸配列は、別のポリペプチド(例えば、担体タンパク質)と、共有結合によってまたは融合ポリヌクレオチドを発現させて融合タンパク質を形成させることによって、そのいずれかにより、連結され得る。所望ならば、アミノ酸配列は、エピトープの多数の繰り返しを挿入し得るかまたは結合し得、および/または種々のエピトープを組み入れ得る。担体タンパク質は、いかなる源からでも誘導され得るが、一般に比較的大きい免疫原性タンパク質、例えば、BSA、KLHなどである。所望ならば、担体タンパク質は、実質的に完全な長さのHCVタンパク質を担体として使用し得、免疫原性エピトープの数を増やす。あるいは、HCVエピトープ由来のアミノ酸配列は、アミノ末端および/またはカルボキシ末端にて、非HCVアミノ酸配列と連結し得、従って、このポリペプチドは、「融合ポリペプチド」となる。類似型のポリペプチドは、他の所定のウイルスのタンパク質由来のエピトープを用いて、構築され得る。
【0062】
所定のポリペプチドの「変異体」とは、その所定のポリペプチドのアミノ酸配列が、その配列において1個またはそれ以上のアミノ酸の欠失、置換、付加または転位によって改変されたポリペプチドを意味する。変異体が生じる(例えば、組換えによって)または変異体が作られる(例えば、部位特異性変異誘発)方法は、当該分野において周知である。
【0063】
「形質転換」とは、外因性ポリヌクレオチドを宿主細胞に挿入することを意味する。なお、挿入法は、どんな方法でもよく、例えば、直接取込み法、形質導入法(これにはウイルス感染が包含される)、f−交配法,またはエレクトロポレーション法がある。外因性ポリヌクレオチドは、組込まれていないベクター、例えば、プラスミドまたはウイルスのゲノムとして保持されていても、あるいは宿主ゲノムに組込まれていてもよい。
【0064】
「個体」とは、脊椎動物、特に哺乳動物種のメンバーを意味し、げっ歯動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット)、ウサギ、ヤギ、ブタ、ウシ、ヒツジ、および霊長類(チンパンジー、アフリカミドリザル、ヒヒ、オランウータン、およびヒト)を包含するが、これに限定されるものではない。
【0065】
本明細書中で用いられるように、「処置」とは、(i)伝統的なワクチンのような、感染または再感染の予防、(ii)症状の低減または排除、および(iii)ウイルスの実質的な排除または完全な排除、のいずれをも意味する。処置は、(感染前に)予防として、または(感染後に)治療として行われ得る。
【0066】
「有効量」という用語は、投与される個体において免疫原性応答を誘導するか、または意図するシステム(例えば、イムノアッセイ)において別な方法で検出可能に免疫反応を起こすのに充分なエピトープを有するポリペプチドの量を意味する。好ましくは、この有効量は、上記のように処置をするのに充分である。必要な正確な量は、接種により変化する。ワクチン接種のために、またはポリクローナル抗血清/抗体の発生において、例えば、その有効量は、種、年齢、および個体の一般的な症状、処置される症状の重症度、選択される特定のポリペプチドおよび投与様式などに依存して変化する。有効量は、比較的広く、非臨界的な範囲にあることもまた、知られている。適切な有効量は、定型の実験だけを用いて容易に決定され得る。
【0067】
本明細書中で用いられるように、「生物学的試料」とは、個体から単離された組織または液体の試料をいう。これには、例えば、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、皮膚と呼吸器
官と腸管と尿生殖器管の外側部分、涙、唾液、乳、血液細胞、腫瘍、器官、バイオプシー、およびさらに、インビトロでの細胞培養構成物(これには細胞培養培地で細胞を増殖させて得られる馴化培地、例えば、Mab産生ミエローマ細胞、組換え細胞、および細胞成分を包含するが、それに限定されない)の試料を包含するが、それに限定されない。
【0068】
本発明の免疫反応性ポリペプチド組成物は、少なくとも1種のHCV VD由来の単離体特異性エピトープと群特異性エピトープとの混合物を含有する。従って、少なくとも2種の異質性アミノ酸配列がHCVタンパク質中に存在する。この異質性アミノ酸配列は、各々、同一かまたは実質的に同一の物理的な場所に位置する別個のHCV単離体において見い出されるエピトープを定義する。すなわち、各配列は、HCVゲノム/ポリペプチド内の同一の場所に位置づけられる。これらの配列は異質性であるので、その場所は可変ドメイン(VD)として言及される。
【0069】
本発明をより良く理解するために、第一に、本発明の組成物を作り出す個別のアミノ酸配列を説明する。次いで、本発明の組成物において見い出される複数のこのような配列について論じる。
【0070】
本発明のポリペプチドを特徴付けるアミノ酸配列は、以下のような基本的な構造を有する:
Ly−Z−L’y' (I)
Zは、選択されたHCV単離体由来のタンパク質の領域由来のアミノ酸配列を表す。ここで、この領域は、少なくとも1個の可変ドメインを含み、そしてこの可変ドメインは、少なくとも1個のエピトープを含む。LおよびL’は、非HCVアミノ酸配列であるかまたは可変ドメインを含まないHCVアミノ酸配列であり、ここで、LおよびL’は、同一または異なり得る。yおよびy’は、0または1であり、これらは同一または異なり得る。従って、式1は、HCV VDの配列を含むアミノ酸配列を表し、ここで、VDは、エピトープを含む。
【0071】
上記のように、Zにおけるエピトープは、通常、最小約5個のアミノ酸、より典型的には最小約8個のアミノ酸、およびさらに典型的には最小約10個のアミノ酸を含む。
【0072】
Zの可変ドメインは、1個より多いエピトープを含み得る。
Zの可変ドメインは、存在するエピトープの配列を組み合わせたサイズと少なくとも同程度のサイズである。従って、このドメインに、ただ1つのエピトープが存在するならば、このドメインは、典型的には最小約5個のアミノ酸で作られる。エピトープが部分的に重複するとき、この可変ドメインにおける組み合わされたエピトープの最小アミノ酸配列は、その個々のエピトープの配列の合計より小さい。
【0073】
Zは、上記VDを含むHCV単離体のアミノ酸配列である。従って、Zの最小のサイズはVDの最小のサイズである。Zは、VDだけに比べて多くのHCVのアミノ酸配列を含み、そして1個より多くのVDをさらに含み得る。Zの最大のサイズは、臨界的ではないが、完全なHCVのポリタンパク質の長さを上回ることは明らかに不可能である。しかし、典型的には、Zは、完全なHCVタンパク質(特に、E1、E2/NS1、NS2、NS3、NS4およびNS5)の配列であり、そしてより典型的にはこのようなHCVタンパク質のフラグメントである。従って、Zは、好ましくは、最小約5個のアミノ酸(より好ましくは最小約8個または約10個のアミノ酸)から最大約1100個のアミノ酸(より好ましくは最大約500個、さらに好ましくは最大約400個、またはさらに好ましくは最大約200個のアミノ酸)の範囲である。より一般的には、式Iおよび/またはZのポリペプチドは、それらが例えば、化学合成により調製されるとき、最大約50個のアミノ酸、より典型的には最大約40個のアミノ酸、そしてさらに典型的には最大約30個の
アミノ酸である。
【0074】
非HCVアミノ酸配列、LおよびL’は、それらがもし存在するならば、多くのタイプのこのような配列のいずれをも構成する。例えば、LおよびL’は、下記のように、Zが組換え体発現を促進するために融合される非HCV配列(例えば、β−ガラクトシダーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、インベルターゼ、α−因子、TPAリーダーなど)を表し得る。あるいは、LおよびL’は、他の病原体(例えば、B型肝炎ウイルス、百日咳菌(Bordetella pertussis)、テタヌストキソイド、ジフテリアなど)のエピトープを表して、多くのこれらの他の病原体に免疫反応的に関連する組成物を提供し得る。LおよびL’は、ペプチド合成の際の固体支持体、イムノアッセイの支持体、ワクチン担体のタンパク質などへの結合を促進するアミノ酸配列であり得る。実際、LおよびL’は、機能的な利点のない1種またはそれ以上の不必要なアミノ酸をさらに含み得る。LまたはL’に対する臨界的な最大のサイズはなく、その長さは、一般的に所望の機能によって決定される。典型的に、LおよびL’は、各々、最大約2000個のアミノ酸、さらに典型的には最大約1000個のアミノ酸である。有用な性質を有するLおよびL’配列の多くは、最大約500個のアミノ酸である。Zの免疫反応性をブロックしないようにLおよびL’を選択することは、もちろん望ましい。
【0075】
本発明に従って提供されるポリペプチドの組成物は、それぞれ以下の式IIおよびIIIよって定義される少なくとも2種のアミノ酸配列の組成物中に、(免疫反応的に有効量で)存在することによって特徴付けらる:
Ly−Z1−L’y ' (II)
Ly−Z2−L’y ' (III)
L、L’、yおよびy’は上記のように定義され、そしてそれらは独立して式IIおよびIIIの各々に対してもまた定義される。ZlおよびZ2は、各々、上記でZについて定義されたようなHCVアミノ酸配列であり、同一の可変ドメイン(すなわち、物理的な場所)を含むが、Z1およびZ2の共通の可変ドメインにおいて少なくとも1種の異質性エピトープをそれらの間に有する異なるHCV単離体から誘導される。例示的な実施例として、式IIに従ったアミノ酸配列は、Zlとして、単離体HCV−1のアミノ酸384−41
4位(またはさらに特定すると396−407位または396−408位のアミノ酸)にわたる超可変ドメインのフラグメントを有し、一方、Z2は、単離体HCV−J1.1由
来の類似のフラグメントである。これらの2種の単離体は、このドメインにおいて異質性であり、これらのエピトープのアミノ酸配列は、有意に変化する。
【0076】
本発明の組成物は、式1に従って丁度2個より多い別個のアミノ酸配列を含み得、そしてZの配列は異なる可変ドメインを含む群に分割され得ることが理解されるべきである。例えば、本発明に従う組成物は、(式Iに従うアミノ酸配列と共に)HCV配列の群を含み得る。この配列は、単離体HCV−1、HCV−J1.1、HC−J1、HC−J4などに由来するアミノ酸384−411位のところで超可変ドメインを含む。この組成物はまた、(式1に従うアミノ酸と共に)HCV配列のさらなる群を含み得る。この配列は、単離体HCV−1、HCV−J1.1、HC−J1、HC−J4などにさらに由来するアミノ酸215−255位のところで可変ドメインを含む。従って、本発明の組成物の関係においては、式1の配列は以下のようにさらに定義され得る:
SVn (IV)
Vは、HCV可変ドメインの配列を含むアミノ酸配列を表し、ここで、この可変ドメインは、少なくとも1種のエピトープ;すなわち、式1を含む。Sおよびnは、1またはそれ以上の整数である。Sは特定の可変ドメインを表し、そしてnは特定の単離体を表す。例えば、S=1はアミノ酸384−411位における可変ドメインを表し得;S=2はアミノ酸215−255位における可変ドメインを表し得;そしてn=1、2、3および4は、それぞれ、単離体HCV−1、HCV−J1.1、HC−J1およびHC−J4を表し
得る。従って、上記の2つの群の配列は以下のように表され得る:
群1:1V1、1V2、1V3および1V4
群2:2V1、2V2、2V3および2V4 本発明に記載の組成物には、式IVの少なくとも2種の別個の配列がある。すなわち、この組成物は、式IVに従う2種の異なる配列を含有し、ここでSおよびまたはnの値は異なる。例えば、少なくとも1V1お
よび1V2が存在し、または少なくとも1Vlおよび
2V2が存在し、または少なくとも1Vlおよび2V1が存在する。
【0077】
式IV中に含まれる別個の配列は、同一または異なるポリペ
プチド分子のいずれかにおける組成物中に存在する。1V1および1V2の最小の組み合わせを用いて、これらの2種の配列は、同一のポリペプチド分子(例えば、1Vl−1V2)または分離した分子中に存在し得る。本発明の組成物のこの特徴は、以下のようなポリペプチドの組成物として記載され得る:
Rr−(SVn)x−R’r ' (V)
ここで、S、Vおよびnは、上記で定義のとおりであり;RおよびR’は、約1−2000個のアミノ酸のアミノ酸配列であり、そして同一または異なり;rおよびr’は、0または1であり、そして同一または異なり;xは、1以上の整数であり;nは、各xに対して独立して選択され;ただし、これらのアミノ酸配列は、(i)1V1および1V2、(ii)1v1および2V2、および(iii)1V1および2V1からなる群より選択される組み合わせを表す組成物中に存在する。式IVの別個の配列が異なるポリペプチド内にある実施態様においては、xは1であり得るが、所望であるなら1をさらに越え得る;例えば、ポリペプチド1V1−1V2と1Vl−2V2との混合物。xが1であるとき、rおよびr’は好ましくは共に0であり、LyおよびL’y'の重複を避ける。これは、Vが式Iによる好ましい実施態様によって記載され得るからである。xが1より大きいとき、Rとその隣接するLとを組み合わせた長さ、およびR’とその隣接するL’とを組み合わせた長さは、好ましくは、LおよびL’に関して上記の典型的な最大長より長くはない。
【0078】
この組成物の別個のV配列中に含まれるHCVのアミノ酸配列の選択は、この配列の意図する適用に依存し、そして本発明の開示による当業者の範囲内である。第一に、本発明に関するHCVエピトープは、2種のタイプに分かれ得ることが認められるべきである。エピトープの第一のタイプは、「群特異性」であるものであり、すなわち、HCV単離体の群中の全てのまたは実質的に全ての単離体における対応のエピトープは、互いに免疫学的に交差反応性であるが、他の群の実質的に全ての単離体の対応するエピトープを有しない。好ましくは、群特異性のクラスにおけるエピトープは、この群内に実質的に保存されるが、この群間またはこの群中には保存されない。エピトープの第二のタイプは、「単離体特異性」であるものであり、すなわち、このエピトープは、実質的に同一の単離体と免疫学的に交差反応し、そして全てのまたは実質的に全ての別個の単離体とは交差反応しない。
【0079】
これらの群特異性エピトープおよび単離体特異性エピトープは、本発明の開示によって容易に同定され得る。第一に、数種のHCV単離体の配列が、本明細書中に記載されているように、比較され、そして配列異質性の領域が同定される。通常、異質性のパターンは、群特異性または単離体特異性を示す。同定された領域が1個またはそれ以上のエピトープを含むことが周知であるならば、次いで、所望のエピトープを含むのに充分なサイズの配列は、本発明の組成物に含まれ得る可変ドメインとして選択される。所定の異質性領域の免疫反応性が周知でないならば、種々のHCV単離体のその領域内に見い出される配列を表すペプチドは、調製され得、そしてスクリーニングされ得る。スクリーニングは含まれ得るが、抗HCV抗体の種々の源(例えば、患者の血清、中和化Mabなど)によるイムノアッセイまたは抗体の発生、およびインビトロでウィルスを中和するためのそのような抗体の能力、に限定されない。あるいは、下記のようなスクリーニングのプロトコール
で同定されるエピトープの遺伝子座は、種々の単離体の異質性およびスクローニングされた対応の異質性配列の免疫学的な性質について試験され得る。
【0080】
ワクチンの適用には、E1および/またはE2/NS1ドメイン由来の可変ドメインが、特に重要であると考えられる。特に、アミノ酸215−255内のE1可変ドメイン(図2および3参照)、およびアミノ酸384−414内のE2/NS1可変ドメイン(図4〜6参照)は、重要な免疫反応性ドメインであるとして同定されている。予備的な証拠により、これらのドメインの片方または両方が、慢性HCV感染に通じるエスケープ変異体に反応し得る異質性の遺伝子座であり得ることが示唆される。従って、Vの可変ドメインがこれらの可変ドメインの片方または両方であるような、上記のようなポリペプチド組成物は、特に好ましい。さらに、本発明のポリペプチド組成物は、特に可変ドメイン中の一般的な線形エピトープに関連するが、配座エピトープもまた含有し得る。例えば、この組成物は、組換え体系(例えば、昆虫または哺乳動物細胞)で発現される、(異なる単離体の可変ドメインを示す)組換え体Elおよび/またはE2/NS1タンパク質の混合物を含み得る。この組換え体系は、可変ドメインの内側または外側のいずれかに配座エピトープを維持している。あるいは、配座エピトープを維持する単一の単離体由来のE1および/またはE2/NS1サブユニット抗原が、本発明に従って、ポリペプチド組成物と組み合わされ得る(例えば、合成ペプチドまたは変性させた組換え体ポリペプチドの混合物)。ワクチンに対する別の好ましい適用では、本明細書中に記載のポリペプチド組成物を他のHCVサブユニット抗原と組み合わせ得る。例えば、同一人の所有する米国特許出願第
号に記載の抗原である。この出願のタイトルは、Robert O.Ralston,Frank Marcus,Kent B.Thudium,Barbara GervaseおよびJohn Hallにより、「C型肝炎ウイルスアシアロ糖タンパク質」(アトーニィドケット番号0154.002)であって、本願と共に同日で出願しており、本明細書中に参考として援用されている。
【0081】
診断の適用には、抗原として本発明の組成物を用い、それにより、別個のHCV単離体に対する抗体を検出する能力を改善するのに有用であり得る。典型的には、このポリペプチド混合物は、均質なまたは不均質なイムノアッセイ形式において直接用いられ得、後者では、好ましくは、ポリペプチドを固体基質(例えば、マイクロタイタープレートウェル、プラスチックビーズ、ニトロセルロースなど)上に固定することを包含する。例えば、PCT公開第WO90/11089;欧州公開公報第360,088号;IMMUNOA
SSAY:A PRACTICAL GUIDE、上記を参照のこと。あるいは、本発明のポリペプチド組成物を作り出す実質的に同一の各ポリペプチドを別個の遺伝子座で同一の支持体上に固定し得、それにより抗体が産生される単離体または群についての情報が提供される。このことは、種々の単離体が、肝炎、癌、または種々の臨床予後を必要とする他の疾患を引き起こすならば、診断に特に重要である。好ましい形式は、Chiron RIBATMストリップイムノアッセイ形式であり、これは、同一人の所有する米国特許出願第07/138,894号および米国特許出願第07/456,637号に記載されており、その開示内容は本明細書中に参考として援用されている。
【0082】
本発明の組成物の製造に有用なポリペプチドは、組換えによって、合成によって、または組織培養中で、製造され得る。切形型HCV配列または全長HCVタンパク質を含む組換え体ポリペプチドは、HCV配列(1個またはそれ以上のエピトープ、隣接しているかまたは隣接していないかのいずれかである)、または融合タンパク質中の配列から完全に製造され得る。融合タンパク質では、有用な異種(heterologous)配列は、組換え宿主からの分泌を提供するか、HCVエピトープの免疫反応性を高めるか、またはポリペプチドの支持体またはワクチン担体への結合を促進する配列を包含する。例えば、欧州公開公報第116,201号;米国特許第4,722840号;欧州公開公報第259
,149号;米国特許第4,629,783号を参照のこと。これらの開示内容は、本明細
書中に参考として援用されている。
【0083】
全長ポリペプチド、および切形型HCV配列を含むポリペプチド、およびそれらの変異体は、化学合成によって調製され得る。化学合成によってポリペプチドを調製する方法は、当該分野において周知である。それらはまた、組換え技術によっても調製され得る。HCV−1をコードするDNA配列、および他のHCV単離体由来の可変領域のDNA配列が、本明細書中に記載および/または参照されている。これらの配列の入手により、HCVポリペプチドの免疫反応性領域をコードするポリヌクレオチドの構築が可能である。
【0084】
HCVの可変ドメイン由来の1個またはそれ以上の免疫反応性HCVエピトープを含む所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、化学的に合成されるか、または単離され、そして発現ベクター中に挿入され得る。このベクターは、β−ガラクトシダーゼまたはスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)のような融合配列の部分を含み得るか、または含み得ない。SODの融合配列を含むポリペプチドの産生に有用な方法およびベクターは、1986年10月1日に公開された欧州公開公報第0196056号に記載されている。
【0085】
所望のポリペプチドをコードするDNAは、融合または成熟形態のどちらであっても、そして分泌を可能にするシグナル配列を含有するかまたは含有しなくても、任意の都合のよい宿主に対して適切な発現ベクター内に連結され得る。次いで、宿主は、発現ベクターで形質転換される。原核宿主細胞系および真核宿主細胞系の両方が、現在、組換え体ポリペプチドを形成するのに用いられており、そしてより一般的な制御系および宿主細胞系の要約を以下に示す。宿主細胞は、所望のポリペプチドを発現させる条件下でインキュベートされる。次いで、このポリペプチドは、溶解細胞または培地から単離され、その意図された用途に必要な程度まで精製する。
【0086】
ウイルス由来のHCVゲノムの抽出、DNAライブラリーの調製および探索、クローンの配列決定、発現ベクターの構築、細胞の形質転換、免疫学的アッセイ(例えば、ラジオイムノアッセイおよびELISAアッセイ)の実施、培養中の増殖細胞において用いられる一般的な方法は、当該分野において周知である(例えば、上記「背景」の部に引用された文献、および上記のこの「発明の実施態様」の部の初めに引用された文献を参照のこと)。
【0087】
所望の配列を含むベクターの適切な宿主内への形質転換は、宿主細胞にポリヌクレオチドを導入する周知のいずれの方法によっても行われ得、この導入方法には、ウイルス中のポリヌクレオチドのパッケージング、および、ウイルスによる、またはポリヌクレオチドの直接取り込みによる宿主細胞の形質導入が包含される。用いられる形質転換の方法は、形質転換される宿主に依存する。直接取り込みによる細菌の形質転換は、一般に、塩化カルシウムまたは塩化ルビジウムによる処理を使用し得る(Cohen(1972)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 69:2110)。直接取り込みによる酵母の形質転換は、Hinnenら、(1978)J.Adv.Enzyme Reg.7:1929の方法を用いて行われ得る。直接取り込みによる哺乳動物の形質転換は、GrahamおよびVan der Eb(1978)Virology 52:546のリン酸カルシウム沈澱法、またはその種々の周知の改変法を用いて行われ得る。細胞(特に、哺乳動物細胞)内への組換え体ポリヌクレオチドの導入に対して、当該分野において周知である他の方法は、デキストラン仲介トランスフェクション、リン酸カルシウム仲介トランスフェクション、ポリブレン仲介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポーレーション、リポソーム中のポリヌクレオチドの被包化、および核内へのポリヌクレオチドの直接マイクロインジェクションを包含する。
【0088】
所望のコード配列の発現を得るために、宿主細胞は(発現ベクターであり得る)ポリヌクレオチドで形質転換される。このポリヌクレオチドは、所望のコード配列に作動可能に連結された制御配列からなる。この制御配列は、所定の宿主に適合し得る。原核宿主の間では、E.coliが最もよく用いられる。原核生物の発現制御配列は、プロモーター、必要に応じて含有されるオペレーター部位、およびリボソーム結合部位を含む。原核宿主に適合し得る転移ベクターは、一般に、例えば、pBR322(アンピシリンおよびテトラサイクリン耐性を付与するオペロンを含むプラスミド)、および種々のpUCベクター(抗生物質耐性マーカーを付与する配列をまた含む)から得られる。プロモーター配列は、天然に存在する、例えば、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)(Weissman(1981)Interferon 3(I.Gresser編)中の「The cloning of interferon and other mistakes」)、ラクトース(lac)(Changら、(1977)Nature 198:1056)およびトリプトファン(trp)(Goeddelら、(1980)Nucl.Acids
Res.8:4057)、およびλ由来PLプロモーター系およびN遺伝子リボゾーム
結合部位(Shimatakeら、(1981)Nature 292:128)であり得る。さらに、天然に存在しない合成プロモーターもまた、細菌プロモーターとして機能する。例えば、1つのプロモーターの転写活性化配列は、他のプロモーターのオペロン配列に結合して、合成ハイブリッドプロモーターを形成し得る(例えば、tacプロモーター(これは、trpおよびlacプロモーターの配列由来である)(De Boerら、(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:21)。上記の系は、特にE.coliに適合し得る;所望であれば、他の原核宿主(例えば、バチリス属(Bacillus)またはシュードモナス属(Pseudomonas)の株が、対応する制御配列で用いられ得る。
【0089】
真核宿主は、培養系における酵母および哺乳動物細胞を包含する。Saccharomyces cerevisiaeおよびSaccharomyces carlsbergensisは、最も一般的に用いられる酵母宿主であり、そして好都合な菌類宿主である。酵母適合性ベクターは、一般に、栄養要求性突然変異体に原栄養性(prototropy)を、または野生株に重金属耐性を付与することにより、生育した形質転換体の選別を可能にするマーカーを有する。酵母適合性ベクターは、2ミクロンの複製起点(Broachら(1983)Meth.Enz.101:307)、CEN3およびARS1の組合せ、または複製を確実に行うような他の手段(例えば、宿主細胞ゲノムに適切なフラグメントを取り込ませ得る配列)を用い得る。酵母ベクターの制御配列は、当該分野において周知であり、解糖系酵素の合成のプロモーターを含む(Hessら(1968)J.Adv.Enzyme Reg.7:149);例えば、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)(欧州公開公報第284044号)、エノラーゼ、グルコキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPまたはGAPDH)、ヘキソキナーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、3−グリセロリン酸ムターゼ、およびピルビン酸キナーゼ(PyK)(欧州公開公報第329303号)。酵母PH05遺伝子(これは酸ホスファターゼをコードする)もまた、有用なプロモーター配列を提供する。さらに、天然に存在しない合成プロモーターもまた、酵母プロモーターとして機能する。例えば、1つの酵母プロモーターの上流活性化配列(UAS)は、他の酵母プロモーターの転写活性化領域に連結され得、合成ハイブリッドプロモーターを創製する。このようなハイブリッドプロモーターの例は、GAP転写活性化領域に連結したADH調節配列(米国特許第4,876,197号および第4,880,734号)を包含する。ハイブリッドプロモーターの他の例は、GAPまたはPyKのような解糖系酵素の転写活性化領域と結合したADH2、GAL4、GAL10、またはPH05遺伝子のいずれかの制御配列からなるプロモーターであって、プロモーターを包含する(欧州公開公報第164556号)。さらに、酵母プロモーターは、適当な転写開始のための酵母RNAポ
リメラーゼに結合する能力を有する、酵母以外の起源の天然に存在するプロモーターを包含する。
【0090】
酵母発現ベクターに含まれ得る他の制御要素には、ターミネーター(例えば、GAPDH由来、およびエノラーゼ遺伝子由来(Holland(1981)J.Biol.Chem.256:1385)、およびリーダー配列がある。リーダー配列フラグメントは、典型的には、細胞からタンパク質を分泌させる疎水性アミノ酸からなるシグナルペプチドをコードする。適切なシグナル配列をコードするDNAは、分泌酵母タンパク質に対する遺伝子(例えば、酵母インベルターゼ遺伝子(欧州公開公報第12,873号)およびα
−因子遺伝子(米国特許第4,588,684号))に由来し得る。あるいは、非酵母起源のリーダー(例えば、インターフェロンリーダー)もまた、酵母における分泌を提供する(欧州公開公報第60057号)。分泌リーダーの好ましいクラスは、酵母α−因子遺伝子のフラグメントを使用し、このフラグメントは、「プレ」シグナル配列と「プロ」領域との両方を含んでいる。用いられ得るα−因子フラグメントのタイプは、完全長プレ−プロα−因子リーダー、および不完全α−因子リーダー(米国特許第4,546,083号および第4,870,008号;欧州公開公報第324274号)を包含する。分泌を提供するα−因子リーダーフラグメントを用いる別のリーダーは、第2の酵母α−因子由来のプロ−領域ではなく、第1の酵母のプレ配列で作られたハイブリッドα−因子リーダーを包含する(例えば、PCT WO89/02463を参照のこと)。
【0091】
染色体外レプリコンまたは組込みベクターである発現ベクターが、多種の酵母中への形質転換用に開発されている。例えば、発現ベクターは、以下の種に用いるために開発されている;Candida albicans(Kurtzら(1986)Mol.Cell Biol.6:142)、Candida maltosa(Kunzeら(1985)J.Basic Microbiol.25:141)、Hanzenula polymorpha(Gleesonら(1986)J.Gen.Microbiol.132:3459)、Kluyveromyces fragilis(Dasら(1984)J.Bacteriol.158:1165)、Kluyveromyces lactis(De Louvencourtら(1983)J.Bacteriol.154:737)、Pichia guillerimondii(Kunzeら(1985)上記)、Pichia pastoris(Creggら(1985)Mol.Cell.Biol.5:3376;米国特許第4,837,148号および第4,929,555号))、Shizosaccharomyces pombe(BeachおよびNurse(1981)Nature 300:706)、およびYarrowia lipolytica(Davidowら(1985)Curr.Genet.10:39)。
【0092】
発現用宿主として利用可能な哺乳動物細胞系は、当該分野で周知であり、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多種の不死化された細胞系、例えばHeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、シリアンハムスター腎(BHK)細胞、COSサル細胞、および多数の他の細胞系を含む。当該分野において、哺乳動物細胞に対して適切なプロモーターが周知であり、それらは、シミアンウイルス40(SV40)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、アデノウイルス(ADV)およびウシ乳頭腫ウイルス(BPV)に由来するようなウイルスプロモーターを含む(適切なプロモーターの例は、Sambrook(1989)を参照のこと)。哺乳動物細胞は、ターミネーター配列およびポリA付加配列を必要とし得;発現を増大するエンハンサー配列をもまた含まれ得、そして、遺伝子の増幅を引き起こす配列もまた望ましくあり得る。これらの配列は、当該分野で周知である。
【0093】
哺乳動物細胞で複製に適するベクターが、当該分野で周知であり、そして、それらは、ウイルスのレプリコン、または所望のポリペプチドをコードする適切な配列の宿主ゲノム
中への組込みを確実にする配列を含み得る。
【0094】
外来DNAの発現に使用され、ワクチン調製において使用され得るベクターは、ワクシニアウイルスである。この場合、異種DNAがワクシニアゲノム中へ挿入される。ワクシニアウイルスゲノム中へ外来DNAを挿入する技術は、当該分野で周知であり、例えば相同的組換えを利用する。異種DNAは、一般的に、選択マーカーの提供も行うチミジンキナーゼ遺伝子(tk)のような、天然には非必須の遺伝子中に挿入される。組換えウイルスの構築を非常に容易にするプラスミドベクターが、記載されている(例えば、Mackettら(1984)「DNA Cloning」Vol.II.IRL Press,191頁中、Chakarabartiら(1985)Mol.Cell Biol.5:3403;Moss(1987)「Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells」(MillerおよびCalos編、10頁)を参照のこと)。次いで、免疫反応性領域を含む所望のポリペプチドの発現が、生存している組換えワクシニアウイルスで感染しおよび/または免疫化された細胞または個体で起こる。
【0095】
ポリペプチドの発現のための他のシステムは、昆虫細胞およびこれらの細胞中での使用に適切なベクターを含む。これらのシステムは、当該分野で周知であり、例えば、バキュロウイルス Autographa californica核ポリヘドロシスウイルス(AcNPV)由来の昆虫発現転移ベクターを含む。このベクターは、ヘルパー非依存ウイルス発現ベクターである。このシステムから得られる発現ベクターは、通常、強力なウイルスポリヘドロン遺伝子プロモーターを用いて、異種遺伝子の発現を起こす。現在、AcNPV中へ外来遺伝子を導入するために最も一般的に使用される転移ベクターは、pAc373である。当業者に周知の多種の他のベクターもまた、発現を増進するために設計されている。これらは、例えば、pVL985(これは、ポリヘドロン開始コドンをATGからATTに変更し、そして、ATTから32塩基対の下流にBamHIクローニング部位を導入する;LuckowおよびSummers(1989)、Virology 17:31を参照のこと)を含む。非融合外来タンパク質の良好な発現は、通常、理想的にはATG開始シグナルの前方に適切な翻訳開始シグナルを含む短いリーダー配列を有する外来遺伝子を必要とする。プラスミドは、E.coli中での選択および増殖のために、ポリヘドロンポリアデニル化シグナルおよびアンピリシン抵抗性(amp)遺伝子および複製起点をも含む。
【0096】
異種DNAをバキュロウイルスの所望の部位に導入する方法は、当該分野で周知である(以下を参照のこと:SummersおよびSmith、Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No.1555;Juら(1987)「Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells」(MillerおよびCalos編)中に記載;Smithら(1983)、Mol.&Cell.Biol.3:2156;および、LuckowおよびSummers(1989)上記)。例えば、この挿入は、相同的組換えにより、ポリヘドロン遺伝子のような遺伝子中に行われ得;所望のバキュロウイルス遺伝子中に作られた制限酵素部位中にもまた行われ得る。挿入される配列は、可変ドメイン由来の少なくとも1つのエピトープを含む所望のHCVポリペプチドのすべてのまたは様々のセグメントをコードするものであり得る。
【0097】
シグナルペプチド切断、タンパク質分解性切断、およびリン酸化のような、翻訳後改変のためのシグナルは、昆虫細胞により認識されると考えられる。また、分泌および核での蓄積(nuclear accumulation)に必要なシグナルは、無脊椎動物と脊椎動物細胞との間で保存されていると考えられている。無脊椎動物の細胞中で有効な脊椎動物細胞由来のシグナル配列の例は、当該分野で周知である。例えば、昆虫細胞中では
、ヒトインターロイキン2シグナル(IL2)は、細胞が認識されると外部へ輸送するシグナルとなり、完全に除去される。
【0098】
上記宿主細胞およびベクターを用いて調製されたポリペプチドは、しばしば、融合ポリペプチドであることが望ましい。非融合ポリペプチドと同様に、融合ポリペプチドは発現後に細胞内に留まり得る。あるいは、融合ポリペプチドが、リーダー配列フラグメントを含む場合、この融合ポリペプチドはまた、細胞から増殖培地中に分泌され得る。好適には、外来遺伝子のリーダーフラグメントと残りの部分との間に、インビボまたはインビトロで切断され得るプロセシング部位がある。
【0099】
HCVの処置に組成物が使用される場合、その組成物は免疫原性であることが望ましい。合成ポリペプチドは、正しいエピトープを提供するために正しく構造化されるが、免疫原性になるには小さすぎる場合、ポリペプチドは適切な担体に結合され得る。このような結合を得るための多数の技術が、当該分野で周知であり、これらには、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルチオ)プロピオネート(SPDP)およびスクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)(ペプチドにスルフヒドリル基がなければ、システイン残基の付加により提供され得る)を用いるジスルフィド結合の形成が含まれる。これらの試薬は、その試薬自身とあるタンパク質中のペプチドシステイン残基との間にジスルフィド結合を形成し、そして、リジンのε−アミノ基または他のアミノ酸の他の遊離アミノ基によるアミド結合を形成する。このような種々のジスルフィド/アミド−形成剤が知られている。例えば、Immun.Rev.(1982)62:185を参照のこと。他の二官能カップリング剤は、ジスルフィド結合よりもむしろチオエーテル結合のためである。これらのチオエーテル形成試薬の多くは、市販で入手可能であり、6−マレイミドヘキサン酸、2−ブロモ酢酸、2−ヨード酢酸、4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸などの反応性エステルを含む。これらのカルボキシル基は、そのカルボキシル基をコハク酸イミドまたは1−ヒドロキシル−2−ニトロ−4−スルホン酸のナトリウム塩と組み合わせることで、活性化され得る。抗原をカップリングするためのさらなる方法には、欧州公開公報第259,
149号に記載のロタウイルス/「結合ペプチド」システムが用いられる。上記の列挙は、それがすべてであるわけではなく、列挙された化合物の改変物もまた、明らかに使用され得る。
【0100】
担体としては、宿主に対して有害な抗体の産生をそれ自体が引き起こさなければ、どのような担体でも使用され得る。適切な担体は、典型的には、タンパク質のような大きくて徐々に代謝される高分子;ラテックス機能付与セファロース、アガロース、セルロース、セルロースビーズなどのような多糖類;ポリグルタミン酸、ポリリジンなどのような重合アミノ酸;アミノ酸共重合体;および不活性ウイルス粒子(以下を参照のこと)である。特に有用なタンパク質基質は、血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、免疫グロブリン分子、サイログロブリン、卵白アルブミン、テタヌストキシン、および当業者に良く知られた他のタンパク質である。
【0101】
HCV可変ドメイン(特にE1およびE2/NS1)のエピトープの免疫原性は、粒子形成タンパク質(例えば、B型肝炎表面抗原に関連するタンパク質)と融合されたまたは組み立てられた真核細胞系において、それらを調製することによっても増強され得る。例えば、米国特許第4,722,840号を参照のこと。可変ドメイン由来のHCVエピトープを含有するポリペプチドが粒子形成タンパク質コード配列に直接結合する構築物は、HCVエピトープに関して免疫原性であるハイブリッドを生成する。さらに、調製したすべてのベクターは、例えば、プレ−Sペプチドのような種々の程度の免疫原性を有し、HBVに特異的なエピトープを含む。このように、粒子形成タンパク質から構築され、HCV配列を含む粒子は、HCVおよびHBVに関して免疫原性である。
【0102】
肝炎表面抗原(HBSAg)が、S.cerevisiae(Valenzuelaら(1982)Nature 298:344)、および、例えば哺乳動物細胞(Valenzuelaら(1984)「B型肝炎」Millman I.ら編に記載)中で形成され、そして粒子に組み立てられることが示されている。このような粒子の形成は、モノマーサブユニットの免疫原性を増強することが示された。構築物はまた、プレ表面(プレ−S)領域の55のアミノ酸を含むHBSAgの免疫優性エピトープを含み得る。Neurathら(1984)。酵母中で発現され得るプレ−S−HBSAg粒子の構築物は、欧州公開公報第174,444号に開示されている;酵母での発現のための異種ウイルス配
列を含むハイブリッドは、欧州公開公報第175,261号に開示されている。これらの
構築物は、SV40−ジヒドロ葉酸還元酵素ベクターを用いて、CHO細胞のような哺乳動物細胞中でも発現され得る(Michelleら(1984))。
【0103】
さらに、粒子形成タンパク質コード配列の一部は、HCV可変ドメイン由来のエピトープをコードするコドンで置換され得る。この置換において、酵母または哺乳動物で免疫原性粒子を形成する単位の集合を媒介するのに必要とされない領域が削除され得、このようにして、HCVエピトープと競合する部分から余分なHBV抗原部位を除去する。
【0104】
活性成分として免疫原性ポリペプチドを含むワクチンの調製は、当業者に公知である。典型的には、このようなワクチンは、液体溶液または懸濁液のいずれかとして、注射可能なように調製される;注射前に、液体に溶解または懸濁させるのに適当な固形物の形態としても調製され得る。この調製物はまた、乳化することも可能であり、すなわち、リポソーム中でカプセル化されたポリペプチドであってもよい。この活性免疫原性成分は、薬学的に受容され得る賦形剤であって、この活性成分と適合し得る賦形剤と混合されることが多い。適当な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの組合せである。さらに、必要であれば、このワクチンには、少量の補助物質が含まれ得る。この補助物質としては、保湿剤または乳化剤、pH緩衝剤、および/またはワクチンの効果を増強するアジュバントが挙げられる。効果的なアジュバントの例は、以下を含むが、それだけには限定されない:水酸化アルミニウム、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン((CGP 11637)、ノル−MDPと呼ばれる)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(CGP 19835A、MTP−PEと呼ばれる)、およびRIBI。ここで、RIBIは、2%スクアレン/Tween80乳濁液中に、細菌から抽出される3成分、すなわちモノホスホリルリピドA、トレハロースジミコレートおよび細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を含んでいる。アジュバントの効力は、可変ドメイン由来のHCVエピトープを含む免疫原性ポリペプチドに対する抗体の量を測定することにより決定され得る。この抗体は、種々のアジュバントもまた含むワクチン中でこのポリペプチドを投与することによって生じる。
【0105】
タンパク質は、中性または塩の形態でワクチンに処方され得る。薬学的に受容され得る塩には、酸付加塩(ペプチドの遊離アミノ基と共に形成される)が含まれ、この塩は、無機酸(例えば、塩酸、リン酸)、または有機酸(酢酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸など)を用いて形成される。遊離カルボキシル基と共に形成される塩は、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニア、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄)および有機塩基(イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなど)からも誘導され得る。
【0106】
ワクチンは、従来、非経口的に投与され、その形態は、例えば、皮下または筋肉注射で
ある。他の投与形態に適したさらなる処方物には、坐剤があり、場合によっては経口処方物を含む。坐剤には、従来のバインダーおよび担体は、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドを含み得る;このような坐剤は、活性成分を含む混合物から0.
5%〜10%、好適には1%〜2%の範囲で形成され得る。経口処方物には、通常用いられる賦形剤が含まれており、この賦形剤には、例えば、薬学的なグレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどがある。これらの組成物は溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル、徐放性処方物または粉末の形態をとり、そして10%〜95%の、好適には25%〜70%の活性成分を含む。
【0107】
上記に加えて、HCV抗原セットの組換えポリペプチドを発現する弱毒化微生物の生ワクチンを調製することも可能である。適切な弱毒化微生物が、当該分野で周知であり、例えばウイルス(例えば、ワクシニアウイルス)および細菌を含む。
【0108】
ワクチンは、投薬処方と適合する様式で、そして予防効果および/または治療効果が得られる量で投与される。投与されるべき量は、一般的に1回の投与当り抗原5μg〜250μgの範囲であるが、処置される個体、この個体の免疫系が抗体を合成する能力、および望まれる保護の程度に依存する。投与に必要とされる活性成分の正確な量は、医師の判断によるものであり、各個体に特有であり得る。
【0109】
ワクチンは、1回の投与スケジュールで与えられるか、または好適には複数回の投与スケジュールで与えられ得る。複数投与スケジュールでは、最初のワクチン投与は、1〜10回に分けて行われ、以後の投与は引続き免疫応答を維持および/または増強するために必要とされる時間間隔で行われ得る。例えば、2回目の投与では1〜4ヵ月で行われ、そして必要であれば数カ月後に引続き投与が行われ得る。投与法は、少なくとも部分的には、個体の必要量よっても決定され、医師の判断による。
【0110】
さらに、上述のHCVポリペプチドを含む抗原セットを含むワクチンは、他の免疫制御剤、例えば免疫グロブリンと共に投与され得る。
【0111】
本発明の組成物は、個体に投与されて、多数の用途に使用され得る(従来技術を用いて、血清から精製または単離された)ポリクローナル抗体を生成し得る。例えば、ポリクローナル抗体は、個体を受動免疫化することに、または免疫化学試薬として用いられ得る。
【0112】
本発明の他の実施態様では、複数のHCV抗原セットを含む上記の免疫反応性組成物が、例えば血液または血清試料を含む生物学的試料中の抗−HCV抗体を検出するために用いられる。イムノアッセイの設計は、変化に富み、多様なものが当該分野で周知である。しかしながら、イムノアッセイは抗原セットを用い、ここで各抗原セットは、HCV単離体の第1可変ドメイン中にエピトープのアミノ酸配列を含む複数の実質的に同一のポリペプチドからなり、1セットのアミノ酸配列は、少なくとも1つの他のセットのアミノ酸配列について異質性である。イムノアッセイのプロトコルは、例えば、競合、または直接反応、またはサンドイッチ型アッセイに基づき得る。このプロトコルはまた、例えば、固体支持体を使用し得、または免疫沈降法によるものであり得る。ほとんどのアッセイは、標識化抗体またはポリペプチドの使用を含む;この標識は、例えば、蛍光性、化学発光性、放射性、または染料分子であり得る。プローブからのシグナルを増幅するアッセイもまた知られている;それらの例は、ビオチンおよびアビジンを利用するアッセイ、およびELISAアッセイのような、酵素標識されそして酵素に介されるイムノアッセイである。
【0113】
免疫学的診断に適し、そして適切な標識試薬を含むキットが、可変ドメイン由来のHCVエピトープを含有する本発明の組成物を含む適切な材料を、アッセイの実施に必要とさ
れる残りの試薬および材料(例えば、適当な緩衝液、塩類溶液など)および適当なアッセイの説明書のセットと共に、適当な容器中にパッケージすることで構成される。
【実施例】
【0114】
以下の記載は本発明の実施例であり、説明の目的のためにだけ提供するもので、本発明の範囲を限定するものではない。本開示を考えると、特許請求の範囲内で非常に多数の実施例が当業者に明らかである。
【0115】
実施例において、以下の材料および方法を用いた。
【0116】
(被験体試料およびRNAの抽出)
無症候性のHCV保菌者であるHCT18およびHCVJ1、および慢性的に感染しているHCV被験体のThは、Weinerら(1991)Virol.180:842−848中に、以前に記載されている。被験体Qは、肝臓バイオプシーに基づいて、慢性活性肝炎であると診断され、6ヶ月間、アルファ−2bインターフェロン治療を施された(毎週3回、3百万単位)。製造者により示されるように10μg/mlのMS2保菌者RNA(Boehringer Mannheim,165−948)を含むRNAzolTMB試薬(Cinna/Biotecx Laboratories)を用いてChomcynskiおよびSacchi(1987)Anal.Biochem.162:156−159の方法に従い、RNAを血漿0.2mlから抽出した。RNAを、蒸留水で処
理したジエチルピロカーボネート200μl中に再懸濁し、そして、最終濃度0.2Mの
酢酸ナトリウムおよび2.5倍容量の100%エタノール(−20℃)中で再沈澱させた
。
【0117】
(cDNAおよびポリメラーゼー連鎖反応)
すべての反応を、Weinerら(1990)Lancet 335:1−5に従い実施した。M13配列決定は、Messingら(1983)Methods in Enzymology 101:20−37に従い実施した。少なくとも4つのクローン化挿入フラグメントの共通配列が、2つのクローン由来のHCV J1.2 E2/NS1配列を除いて与えられた。
【0118】
HCT18およびThのクローニングおよび配列決定を、上記のWeinerら(1991)の報告の通りに行った。被験体QのE2/NS1のアミノ末端セグメントおよびカルボキシ近位セグメントをクローニングするために用いた組み込まれたPCRプライマーは以下であった:
【0119】
【化1】
【0120】
HCV Jl E2/NS1遺伝子をクローニングするために用いたPCRプライマーは以下であった:
【0121】
【化2】
【0122】
*は、Takeuchiら(1990)Nucl.Acids Res.18:4626からのnt配列である;**は、Katoら(1989)Proc.Jpn.Acad.65B:219−223からのnt配列である。センス(S)またはアンチセンス(A)PCRプライマーを、参考文献中のヌクレオチド番号に従い、5’から3’の向きに示した。
【0123】
(ビオチン化ペプチドの合成)
HCVの3つの株の超可変領域に対する重複オクタペプチド(8ペプチド)を、切断可能なリンカー上で合成し、誘導し、ポリエチレンのピンを、本質的にMaejiら(19
90)J.Immunol.Methods 134:23−33による記載のように、各ペプチドのN−末端にカップリングした。最後に、40mMのビオチン、40mMの1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、40mMのべンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP,NOVABIOCHEM)および60mMのN−メチルモルホリン(NMM)を含む150μlのジメチルホルムアミド溶液を用いて一晩20℃で反応させ、ビオチンをN−末端にカップリングした。
【0124】
ビオチン化の後、ペプチドの側鎖を脱保護し、洗浄し、そして各ピンから得られるペプチドを、200μlの0.1Mリン酸緩衝液(pH7.2)中で切断した。切断ペプチド溶液を含むマイクロタイタープレートを、必要とされるまで−20℃で貯蔵した。
【0125】
(ビオチン化ペプチドのELISA試験)
ポリスチレンプレート(Nunc immuno plate maxisorb F96)を、一晩4℃で、0.1ml/ウェルの5μg/m1ストレプトアビジン(Sig
ma カタログ番号S4762)溶液と共に、pH9.6の0.1M炭酸緩衝液中でインキュベートすることにより、ストレプトアビジンでコートした。ストレプトアビジン溶液除去の後、ウェルを、PBS中のTween20の0.1%溶液で4回洗浄した。PBS中
で、0.2mlの2%BSAと共に1時間20℃で、各ウェルをインキュベートすること
により、非特異的結合を遮断した。ウェルを、再びPBS/Tween20で4回洗浄した。プレートを風乾し、要求されるまで、4℃で貯蔵した。各ウェル中のストレプトアビジンを、0.1%のアジ化ナトリウムを含むPBS中に0.1%のBSAを伴う切断ペプチド溶液の1:100希釈液100μlと、20℃で1時間のインキュベートすることにより、切断されたペプチドにカップリングした。インキュベーションの後、プレートをPBS/Tween 20で4回洗浄した。各ウェルを、血清の適切な希釈液(0.1%のア
ジ化ナトリウムを含むPBS中の2%BSAで希釈)100μlと共に、20℃で1時間または4℃で一晩インキュベートした後、PBS/Tween 20で4回洗浄した。結合した抗体を、コンジュゲート0.1ml中で、20℃で1時間反応させることにより検
出した。これは、CASS(0.1MのPBS中に希釈した0.1%ヒツジ血清、0.1%
Tween 20、0.1%ナトリウムカゼイネート、pH7.2)中の西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギIgG(H+L)(Kirke gaard and Perry Labs,Gaithersburg,MD)0.25ml/l(飽和レベル)
から構成されていた。ウェルを、PBS/Tween 20で2回洗浄し、引続きPBSだけで2回洗浄した。酵素の存在は、100mlの0.1Mリン酸/0.08Mクエン酸緩衝液、pH4.0中に50mgのアンモニウム2,2’−アジノ−ビス[3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホネート(ABTS,Boehringer Mannheim カタログ番号122661)および0.03mlの35%(w/w)過酸化水素溶液を含
む0.1mlの新たに調製された溶液と、20℃で45分間反応させることにより検出し
た。発色を、Titertek Multiscan MCプレートリーダー中で、492nmの対照波長に対して405nmのデュアル波長モードで測定した。
【0126】
(コンピューターで生成された抗原性プロフィール)
HCV E2/NS1タンパク質およびHIV−1 gp120超可変領域V3(aa303−338)に対する抗原性プロフィールを、Kabat[免疫学的に重要なタンパク質の配列、米国厚生省(U.S.Department of Health and
Human Services)、公共保健サービス(Public Health Service)、国立衛生研究所(1983)]により最初に提案されたようにして、配列変異の程度に基づいて、コンピュータープログラムから誘導した。この抗原性プロフィールを用いて、各々の可能な対をなすアミノ酸に対して抗体結合が保持される個々の確率の平均を乗じて免疫グロブリンの超可変ループを同定した。与えられたアミノ酸の変化
に関連する抗体結合の保持の確率は、103個の特徴化された線形エピトープに対するすべての可能なアミノ酸置換基の抗体結合における効果を評価することにより、実験的に決定される値であった。Geysenら(1988)J.Mol.Rec.1:32−41。このようにして、このアルゴリズムは、変異指数に加重価を与え、抗体の結合に大きな影響があると考えられるアミノ酸の変化により重みを与えた。すなわち、保存的なアミノ酸の変化に対して補正を行った。15のHCV配列[HCV−1,Q3.2,HCT23,EC10,HC−J1,HCVE1,TH,HCT27,Q1.2,HCT18,HC−J4,HCV J1.2/HCV J1.1,HCV J,HCV BK]をHCVに対する抗原性プロフィールの測定に用いた。HIV−1 V3プロフィールを、ユニークHIV−1配列のより多数のデータベースからランダムに選択した15配列の242の個プロフィールを平均することで得た。LaRosaら(1990)Science 249:932−935およびCorrection in Science(1991)811頁。これらの単離体のいくつかのaa384と420との間のアミノ酸配列を図4〜6に示す。
【0127】
(コンピューターで生成される2次構造予測)
アミノ末端領域(384−420)がαヘリックス、βシート、βターン2次構造を含む確率は、3つの上記2次構造特徴のそれぞれに対する確率を、各残基に割り当てるアルゴリズムを用いて決定し得る。アルゴリズムに用いられる係数は、構造データベースの残基のすべての対合様式の組合せに対して得られた。LevittおよびGreer(1977)J.Mol.Biol.114:181−293。これらの係数から得られた予想パラメーターは、与えられた残基が3つの定義された2次構造特徴の1つに見出される確率を得るためにアルゴリズムをデータベースに適応し直して、観察結果と合致させた。
【0128】
(実施例1)
(HCV E2/NS1 HVおよびHIV−1 gp120ドメインの2次構造およびアミノ酸配列変異の比較)
15のHCVおよびHIV−1単離体由来のアミノ酸配列を、HCV E2 HVドメインまたはHIV−1 gp120 V3ドメイン中でアミノ酸配列の異質性が観察された位置の数について比較した(それぞれ、図7、AおよびB)。アミノ酸の異質性は、E2 HV領域では30のアミノ酸位置のうち25の位置、そして、HIV−1 gp120 V3ドメインでは35のアミノ酸位置のうち23の位置で生じていた。図7AおよびBのx軸上のダッシュは、可変アミノ酸残基が生じるアミノ酸位置を表し、そして、非変異アミノ酸は1文字のアミノ酸コードで示している。図7中に示された抗原性プロフィールにより、HIV−1 GP120タンパク質のV3ループ(図7B)と同様に、HCV
E2中の1ブロックのアミノ酸残基(図7A中のアミノ酸384−414)において、その変異は抗体結合における予想通りの逆の効果を有することが認められたことが示される。図7中のデータにより、HCV E2ドメインは、ウイルス中和エピトープをコードすることで知られるHIV−1 gp120 V3ドメインと、観察されたアミノ酸変異の程度および期待重みの両方において類似することが示され、E2 HVドメインは、gp120 V3ドメインと同様の機能を有し得ることが示唆される。
【0129】
線形エピトープは、タンパク質(特にタンパク質の末端)のあまり構造化されていない領域に、または伸長した表面ループに、より関連していると思われる。コンピューター分析を用いて、個々の残基が残基384〜420間の15のE2
HVアミノ酸配列についての定義された2次構造特徴に関連する確率を予測した。図7から、E2アミノ末端残基384と、非常に期待され顕著に保存されたβターン(残基415−418)との間の領域は、αヘリックス、βシート、βターンの確率が50%以下であることから示されるように、比較的構造化されていないことが示される。E2 HVドメイン中の期待構造の欠如は、単離体間でみられる広範囲の配列変異に対する許容性と
一致し、タンパク質の3次元的折り畳みに寄与する顕著に構造化された領域と対照的である。V3は、HIV−1 gp120の主要中和ドメインであり、β鎖−II型βターン−β鎖−αヘリックス特徴を含むことが報告されており、アミノ酸の変異において、HCV E2HVドメインよりも強い構造的制限を有し得る。HCV E2 HVドメインは、このV3よりも構造化されていないようにさえ見える。まとめると、この事実は、E2
HVドメインが、線形中和エピトープと考えられる部位を含むタンパク質ドメインに特徴的な特性を有するように思われることを示唆する。
【0130】
(実施例2)
(HCV E2/NS1 HVドメインのエピトープマッピング)
HCT18(A,D)、Th(B,E)およびHCV J1(C,F)のE2/NS1
HVドメイン(アミノ酸384〜416位)に対応し、そしてそれを越えて伸長する重複ビオチン化8量体ペプチドを、ストレプトアビジンでコートしたプレートに結合し、HCT 18(A−C)またはTh(D−F)のいずれかに由来の血漿と反応させた。HCV単離体HCT 18(図9)、Th(図10)、およびHCVJ1(図11)についての結果を図9〜11に示す。HCT 18血漿を1:200に希釈し、Th血漿を1:500に希釈した。HVE−1、−2、−3、−4、および−5は単離体に特異的なエピトープを示す。
【0131】
図9〜11から分かるように、HCT 18配列(図9A中のHVE−I)から誘導されたペプチドで試験すると、HCT18血漿は線形エピトープ(407PKQNV411)を同定したが、2つの異なる株ThおよびHCVJ1のHVドメインに対応するペプチドとは反応しなかった(図10および11)。対照的に、Th血漿は、ThのHVドメイン中の線形エピトープHVE−IV(409QNIQLI414、図10)を同定し、そして株HCT
18(399IVRFFAP405、図9)およびHCV J1中のエピトープをもまた同定した。IVの薬剤の使用者であるThは、HCVの複数の株に対して感染可能状態に置かれ得た。
【0132】
Th血漿およびHCT 18血漿は両方とも、ELISAにおいて各単離体由来のピン合成された重複8量体ペプチドと共に使用された場合、3つの単離体すべてに共通なエピトープ(アミノ酸413−419位)とそれぞれ反応した(データを示していない)。
【0133】
抗体結合の特異性を確認するために、アミノ酸403−407位を含むビオテン化ペプチドに結合している抗体を評価し、これを用いて、HCT 18血漿の反応性を、HCT
18HVドメインに対する重複8量体を含むピンで遮断した。これらのデータにより、以下のことが示される:1)E2/NS1 HVドメインが免疫原性であること、2)この領域をマップする複数のエピトープがあること、そして、3)HVドメイン中のエピトープのサブセット(図9〜11中のHVE−1、−2、−3、−4または−5)が単離体特異的であること。
【0134】
(実施例3)
(可変E2/NS1 HVドメインが、肝炎の発赤と関連し得ることの決定)
慢性HCV感染にしばしば見出される肝炎の間欠性発赤に関連するHCV変異体を発見する可能性を調べるために、慢性肝炎の被験体Qから、約2年間隔の肝炎の2つの別個のエピソード(それぞれ、Q1およびQ3)の際に得たE2/NS1遺伝子を部分的に配列決定した。肝炎の第2のエピソードは、インターフェロン治療を終了して1年半後に起こった。
【0135】
Q1およびQ3のE2/NS1領域の推定アミノ酸配列の差異は、391−408の間でだけ著しく異なっており、8つの変化のうち7つをアミノ酸398と407との間に生
じていた(図12)。図12は、Q1およびQ3単離体のE2/NS1ポリペプチドの2つの領域、つまりアミノ酸384−414および547−647の推定アミノ酸配列を示す。Q1配列上のアミノ酸(E)が、4つのQ1クローンのうちの1つに見出された。ボックスで囲まれたアミノ酸は、Ql
HVEまたはQ3 HVEの12量体ペプチドの位置を表す。Q1とQ3との間に見出されるアミノ酸配列の相違は、太字で示した。
【0136】
Q1およびQ3のE2/NS1ポリペプチドのアミノ酸547と647との間では、アミノ酸異質性が1カ所でだけ観察された(図12)。
【0137】
Q1およびQ3のE2 HVドメイン中に観察されるアミノ酸置換の抗体結合における効果を調べるため、アミノ酸396から407(図12のHVEQ1またはQ3)をもとにQ1およびQ3に特異的な12量体ペプチドを合成し、ELISAにおいてQ1およびQ3の血漿と各ペプチドとを別々に反応させた。図7から、Q1およびQ3の両血漿中の抗体は、Q1ペプチドと反応したが、Q3ペプチドとは反応しないことが示される。統計解析(スチューデントの検定)により、Q1/Q3血漿のQ1ペプチドヘの結合は、これらの血漿のランダムに選択された1区画の12の対照ペプチドに対するバックグラウンド結合を有意に越えている(P<0.001)ことが示されたが、一方Q1またはQ3の血
漿のQ3ペプチドヘの結合は、統計上有意ではなかった。このデータは、被験体Qは、HCV Ql HVドメインに対する抗体を発生し、この抗体は、2年後のQ3時点でもまだ検出し得たが、検出し得る体液性応答は、肝炎の第2のエピソードの間に優性であるQ3 E2 HV変異体に対して全く発生されなかったことを示している。
【0138】
【表4】
【0139】
(実施例4)
(HCV感染固体における異なるE2/NS1 HVドメインを伴う共存E2/NS1遺伝子の検出)
図13は、日本人のボランティアの供血者HCV J1の1つの漿試料からクローンニングしたHCV J1の2つの単離体(J1.1およびJ1.2)から推定されたアミノ酸配列を示す。Kuboら(1989)Nucl.Acids Res.17:10367−10372。HCV J1.1とHCV J1.2との間の全部で23のアミノ酸の変化のうち、太字で示した9つの相違が、30のアミノ酸のE2/NS1HVドメインに集中している。E2/NS1 HVドメイン中の9つのアミノ酸の置換のうち5つは、非保存的アミノ酸変化を表す。HCV J1は、本発明者らの実験室でクローニングされた唯一のII群HCVゲノムであるため、これらの相違がHCV J1血漿の交叉汚染によるものではないと考えられる。2つの別個のPCR反応から作製した7つのクローン化配
列から、2つのE2/NSlHV変異体配列だけが同定されたので、HCVJ1.2配列は、HCVJ1の血液中の少数配列(minority sequence)を表す。
【0140】
興味深いことに、HCT27単離体およびHCV E1単離体は、これらは異なる実験室で配列決定され、おそらく無関係な個体から得られたが、両者を比較することにより、これらの単離体中のE2/NSlHVドメイン中のアミノ酸の相違の数が、同一個体由来の単離体の間で観察された相違の数より少ないことが示された(図14)。
【0141】
上記の結果により、個体および個体群中でHCVゲノムが急速に進化しているという示唆が導かれる。
【0142】
(実施例5)
(ワクチンの製剤と調製)
(ジフテリアトキソイド担体タンパク質のMCSへのカップリング)
(必要な材料)
エチレンジアミン四酢酸(EDTA Na2・2H2O)(MW 372)
6−マレイミドヘキサン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MCS)(Sigma)−純度95%
リン酸二水素一ナトリウム(NaH2P04)
窒素
ジメチルホルムアミド(DMF)
Milli Q水
5mM EDTA含有0.1Mリン酸緩衝液(pH6.66)
0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0)
0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)
コハク酸ナトリウム[(CH2COONa)2・6H2O]
システイン
塩酸(2%溶液)
0.1Mコハク酸ナトリウム/0.1 EDTA、pH5.6
精製されたジフテリアトキソイド(Commonwealth Serum Laboratories,Victoria,Australia)を、以下に記載の方法によりMCSにカップリングした:Leeら(1980)Mol.Immuno1.17:749;Partisら(1983)Prot.Chem.2:263;Peetersら(1989)J.Immunol.Methods 120:133;Jonesら(1989)J.Immunol.Methods 123:211。100mlのジフテリアトキソイドをG25セファデックスカラム(17cm×4cm)に通し、チオメルサールを除去した。トキソイドを、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で溶出し、溶出液のタンパク質容量をBCAタンパク質測定法(Pierce)を用いてアッセイした。得られた溶液を、Amicon限外濾過ユニットを用いて、最終濃度10mg/mlに濃縮した。
【0143】
1m1のトキソイド溶液を、0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0)で透析し、次いで200μlDMF中の1.5mg MCSの溶液と混合した。得られた溶液を、暗所において
室温で1時間時々撹拝しながらインキュベートした。MCSトキソイドからカップリングされていないMCSを分離するため、溶液を、0.1Mリン酸緩衝液(pH6.66)で平衡化されたセファデックスPD10カラムに通過させ、タンパク質画分を採集した。
【0144】
カップリングされたマレイミド基の担体分子当りの数を、そこにHCVペプチドがカップリングする前に測定した。30mlのコハク酸/EDTA緩衝液に窒素を2分間吹き込んだ。5mgのシステインを、25mlメスフラスコ中に移し、最終体積が25mlであ
る吹き込まれた緩衝液中に溶解した。表5中に示した溶液の分量を、2連で、25mlスクリューキャップボトルに移した。別々のピペットを用いて、各分量中へ窒素を通気した。次いで各ボトルを密封し、暗所において室温で40分間時々かきまぜながらインキュベートした。
【0145】
【表5】
【0146】
*:3溶液のそれぞれの0.1ml分量を、エルマンの測定法に用いるために採取した。
【0147】
(スルフヒドリルの定量測定のためのエルマン試験)
(必要な材料)
リン酸緩衝液、pH8.0
15.6gのNaH2PO4または12.0gのNaH2PO4無水物を、約700mlのMilli Q水に溶解する。50%NaOHを用いてpHを8.0に調節する。Mill
i Q水を最終体積が1000mlになるように加え、次いで必要に応じてpHを調整する。
エルマン試薬
10.0mgの5,5’−ジチオビス−2−ニトロ安息香酸(DTNB)を、2.5ml
のリン酸緩衝液(pH8.0)中に溶解する。
【0148】
0.1mlのエルマン試薬を、上記のように調製した溶液、すなわち試料、標準溶液、
およびブランク溶液の0.1ml分量のそれぞれに加えた。次いで、5mlのリン酸緩衝
液(pH8.0)を、各分量に加えてよく混合し、15分間そのままおいた。各分量の吸
光度を1cm路長のセル中で412nmで測定した。
【0149】
担体タンパク質上に存在するマレイミド基の数を、次の方法によって測定した。ml当り0.01μモルの−SHの溶液は、1cm光路において412nmで0.136の吸光度を生じた。標準または試料(A)の吸光度は、活性化担体タンパク質上のカップリングされたマレイミド基と反応したシステインの量と等しかった。1モルの有効な−SHが、1モルのマレイミドと反応するので、試験された分量中に存在するマレイミド基のμモルにおける濃度は、A(0.01)/0.136μモル/mlである。溶液の全体積は、5.2
mlであった。そのため、存在する総μモル数は、A(0.01)(5.2)/0.136
であった。試料溶液は、全体積が1.3mlであり、その内0.3mlが活性化担体タンパク質から構成された。試料溶液中に存在するマレイミド基の量は、A(0.01)(5.2)(1.3)/(0.136)(0.1)(0.3)=A(16.57)μモル/m1である
と計算された。MCS活性化担体タンパク質は、−20℃で貯蔵した。
【0150】
(HCVペプチドの還元)
HCVペプチドをMCS活性化担体タンパク質にカップリングする前に、ペプチドを還元し、ペプチド上に存在するチオール基が完全に還元された−SH形であることを確実にした。
【0151】
(必要な材料)
ジチオトレイトール(DTT)
炭酸水素アンモニウム(NH4HCO3)
メタノール
SEP−PAKs(C18カートリッジ、水)、各8mgのペプチドに1カートリッジ
0.1M炭酸水素アンモニウム緩衝液
1L Milli Q水中に7.9gのNH4HC03を溶解
緩衝液A、Mi11i Q水中、0.1%V/Vトリフルオロ酢酸(TFA)
緩衝液B、Milli Q水中、60%V/Vアセトニトリル、0.1%V/VTFA
HCVポリタンパク質のアミノ酸384−411および225−260にそれぞれ対応する2つの各HCVペプチド15mgを、10倍過剰量のDTTを含む2.5m1の0.1M炭酸水素アンモニウムに加えた。生成した溶液をペプチドが溶解するまで撹拝し、次いで室温で1時間そのままおいた。2対のSEP−PAKsを連結し、約20mlのメタノール、次いで20mlの緩衝液Aを各対のSEP−PAKsに通すことにより活性化した。各ペプチド/DTT試料を、ゆっくりと1対のSEP−PAKsに通した。DTTを20mlの緩衝液Aで溶出した。還元されたペプチドを、7mlの緩衝液Bで事前に重さを量ったボトル中に溶出し、次いで一晩凍結乾燥した。次いでこのボトルの重さを量り、回収されたポリペプチドの量を測定した。次いで、還元されたペプチドを、MCS活性化担体タンパク質に即座にカップリングした。
【0152】
(HCVペプチドのMCS活生ヒタンパクヘのカップリング)
5mMのEDTAを伴う約100m1の0.1Mリン酸緩衝液(pH6.66)を、真空下で脱気し、次いで10分間窒素を吹き込んだ。MCS活性化担体タンパク質の10mg/ml溶液2伽1に、過剰の発泡を防ぐために窒素を注意深く吹き込んだ。各5mgの還元ペプチドを、約0.2mlの脱気され吹き込まれたリン酸/EDTA緩衝液(pH6.66)中に溶解し、次いでMCS活性化担体タンパク質溶液と混合した。得られた混合物を、スクリューキャップボトル中に移し、次いで窒素を充満させ密封した。この溶液を、Branson 2000R音波処理バス中に2分間おいてさらに脱気した。このボトルを
、アルミホイルで被い、振とうテーブル上で緩やかに撹拝しながら室温で一晩インキュベートした。
【0153】
得られたコンジュゲートは可溶性であり、カップリングされなかったペプチドは、この混合物をリン酸/EDTA緩衝液(pH6.66)で平衡化したセファデックスPD10
カラムに通すことにより除去した。タンパク質画分を採集した。担体タンパク質に結合したペプチドの量を、アミノ酸分析により測定した。
【0154】
コンジュゲートおよび担体タンパク質の両方の150μ1分量のアミノ酸分析を行った。担体タンパク質だけの寄与によるアミノ酸のレベルの平均割合を測定し、生成した結合ペプチドの量を計算した。セリン、スレオニン、トリプトファン、メチオニン、チロシンおよびシステインは、標準加水分解条件下で改変されるので、これらのアミノ酸のレベルは、測定されなかった。これらの計算で得られた典型的な結果を、表6中に示す。
【0155】
【表6】
【0156】
コンジュゲートの太字の値は、ペプチド中にも存在していたアミノ酸である。アラニンおよびプロリンを含むコンジュゲートについては、結果を標準化するために、因子(193+179+180+56)/(212)+194+153+60=0.8659に、ア
ミノ酸レベルの量を掛けてある。
【0157】
(ワクチン組成物の調製)
注射組成物は、上記のように調製されたMCS活性化ジフテリアトキソイド担体タンパク質に結合したHCVペプチド、および本明細書中に参考として援用された1990年12月13日に公開されたPCT国際公開番号第W0904837号に記載のサブミクロンの水中油乳化型アジュバントを構成成分とした。さらに、HCV結合ペプチドおよびアジュバントに加え、免疫賦活剤である親油性ムラミルペプチド(MTP−PE、CIBA−GEIGY、Basel、Switzerland)を含む注射組成物を調製した。ワクチン組成物は、一般的に50%のタンパク質および5%の免疫賦活剤から構成された。
【0158】
(MTP−PEを含むワクチン組成物の処方)
注射ワクチン組成物10mlの調製:
2.5mlのスクアレン(Sigma Chemical Co.,St.Louis,
Mo.)
0.25ml Tween 80(Sigma Chemical Co.)
0.25ml SPAN 85(Sigma Chemical Co.)
1000μg MTP−PE
1000μg MCS−活性化ジフテリアトキソイド担体タンパク質に結合したHCVペプチド
(MTP−PEを含まないワクチン組成物の処方箋)
注射ワクチン組成物10mlの調製:
2.5mlのスクアレン(Sigma Chemical Co.,St.Louis,
Mo.)
0.25ml Teen 80(Sigma Chemical Co.)
0.25ml SPAN 85(Sigma Chemical Co.)
1000μg MCS−活性化ジフテリアトキソイド担体タンパク質に結合したHCVペプチド
(実施例6)
(ワクチン調製物の毒性についての試験方法)
実施例5の方法により調製したワクチンを、毒性について小動物で試験した。1kg当り50μgのワクチンを、モルモット、マウスおよびウサギに腹腔内注射して投与した。
アカゲザルおよび霊長類にも、腹腔内注射によりワクチンを投与した。アカゲザルおよび霊長類の試験個体群の半数には、5μg/kgで投与したが、一方他の半数には、50μg/kgで投与した。各研究で用いた対照動物には、ウイルスペプチドを含まないワクチン調製物の成分からなる同等量の組成物を注射した。
【0159】
実施例5の方法により調製したワクチンを、毒性について小動物で試験した。1kg当り50μgのワクチンを、モルモット、マウスおよびウサギに腹腔内注射して投与した。アカゲザルおよび霊長類にも、腹腔内注射によりワクチンを投与した。アカゲザルおよび霊長類の試験個体群の半数には、5μg/kgで投与したが、一方他の半数には、50μg/kgで投与した。各研究で用いた対照動物には、ウイルスペプチドを含まないワクチン調製物の成分からなる同等量の組成物を注射した。
【0160】
(実施例7)
(ワクチンにおける投与動物における中和抗体の産生の証明)
実施例5の方法により調製したワクチンを、ワクチン投与した被験体におけるウイルス中和抗体の産生を誘起するワクチンの効果を測定するために、チンパンジーで試験した。チンパンジーに、実施例5の方法により調製したワクチンを5μg/kgの投与量で、6ヵ月の期間にわたり0、1、3、および6カ月の間隔をおいて投与した。対照のチンパンジーには、ウイルスペプチドを含まないワクチンの成分からなる同等量の組成物を注射した。最後のワクチン投与を行ってから2週間後、試験および対照の各チンパンジーに、10 CIU50(チンパンジー感染単位)の投与量のCDC/910血漿接種材料で刺激した。ウイルス刺激の1週間後から始めて、各チンパンジーを、ウイルス血症について毎週ベースでモニターした。
【0161】
ウイルス血症を検出するために、血液試料および肝臓バイオプシー標本を、数ヵ月間毎週ベースで、対照および試験動物から採取した。肝臓バイオプシーにより採取された組織を、壊死および/または炎症の徴候について組織学的に検査した。さらに、バイオプシー材料由来の肝細胞を、HCV感染に特有の細管の存在について電子顕微鏡で検査した。血液試料はまた、ワクチンの調製に使用されなかったウイルスポリペプチドのセグメントに対する抗体の存在について、上記のELISAアッセイによっても分析された。特に、各血液試料を、NS3、NS4、およびNS5ペプチドに対する抗体の存在について、ELI
SAによりスクリーニングした。チンパンジーの血清中におけるこれらのペプチドに対する抗体の存在は、HCV感染を示した。
【0162】
以下の方法を用いて、チンパンジーから採取した血漿中に循環するまたは肝臓バイオプシー組織中に存在するウイルスRNAを検出した。
【0163】
(肝臓および血清中のHCV RNAを検出するcPCR法)
cPCRアッセイにおいて、試料中の推定ウイルスRNAを、逆転写酵素でcDNAに逆転写し、次いで、得られたcDNAのセグメントを、Saikiら(1986)により記載のPCR技術の改変法を用いて増幅する。cPCR法に用いるプライマーは、HCV
RNAから誘導する。これは本明細書で提供されるHCV cDNAのファミリーにより同定され得る。HCV−RNAに対応する増幅生成物を、本明細書で提供されるHCV
cDNAのファミリーから誘導されるプローブを使用して検出する。
【0164】
これらの研究に用いたcPCR/HCVアッセイは、RNAの調製、RNAのcDNAへの逆転写、PCRによるcDNAの特異的セグメントの増幅、およびPCR生成物の分析のための以下の方法を使用して実施した。
【0165】
全RNAを調製するために、Maniatisら(1982)に記載のグアニジウムイ
ソチオシアネート法を使用して、RNAを肝臓から抽出した。
【0166】
全RNAを血漿から単離するために、血漿をTENB(0.1M NaCl、50mM
トリス−HC1(pH8.0)、1mM EDTA)で5〜10倍に希釈し、そして、プ
ロティナーゼK/SDS溶液(0.5%SDS、1mg/mlプロテイナーゼK、20マ
イクログラム/mlポリA担体)中で60〜90分間37℃でインキュベートした。試料を、フェノール(pH6.5)で1回抽出し、得られた有機相を0.1%SDS含有TENBで再び1回抽出し、そして、両抽出の水相をプールして、同体積のフェノール/CHCl3/イソアミルアルコール[1:1(99:1)]で2回抽出した。得られた水相を、
同体積のCHCl3/イソアミルアルコール(99:1)で2回抽出し、そして、0.2M酢酸ナトリウム(pH6.5)、および2.5倍容量の100%エタノールを用いてエタノール沈澱した;沈澱は、−20℃で一晩行った。
【0167】
PCR反応のテンプレートとして使用したcDNAは、対応するcDNAの調製のために選抜された試料を使用して調製した。各RNA試料(2マイクログラムのチンパンジー肝臓の熱変性全RNAまたは2マイクロリットルの血漿から得たRNAを含む)を、1マイクロモルの各プライマー、1ミリリットルの各デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)、50ミリモルのトリス−HCl(pH8.3)、5ミリモルのMgCl2、5ミリモルのジチオトレイトール(DTT)、73ミリモルのKCl、40単位のRNアーゼインヒビター(RNASIN)、および5単位のAMV逆転写酵素を含む25マイクロリットル反応物中でインキュベートした。このインキュベーションは、37℃で60分間行った。cDNA合成に続いて、反応物を50マイクロリットルの脱イオン水(DIW)で希釈し、10分間沸騰し、氷上で冷却した。
【0168】
HCV cDNAのセグメントの増幅は、それらの配列がHCV cDNAクローン36(アンチ−センス)および37b(センス)から誘導される2つの合成オリゴマー16量体プライマーを使用して実施した。クローン36由来のプライマーの配列は以下であった:
【0169】
【化3】
【0170】
クローン37b由来のプライマーの配列は以下であった:
【0171】
【化4】
【0172】
各プライマーは、最終濃度1マイクロモルで用いた。プライマーに隣接するHCV cDNAのセグメントを増幅するために、cDNA試料を、0.1マイクログラムのRNア
ーゼAおよびPerkin Elmer Cetus PCRキット(N801−0043またはN801−0055)のPCR反応物を用いて、製造者の指示に従ってインキュベートした。PCR反応は、Perkin Elmer Cetus DNA熱サイクラーで、30サイクルまたは60サイクルいずれかで実施した。各サイクルは、94℃1分での変性段階、37℃2分でのアニーリング段階、および72℃3分での伸長段階で構成された。しかしながら、最終サイクル(30または60)における伸長段階は、3分ではなく7分であった。増幅後、試料を同体積のフェノール:クロロホルム(1:1)で抽出
し、次いで同体積のクロロホルムで抽出し、次いで試料を0.2Mの酢酸ナトリウム含有
エタノールで沈澱させた。
【0173】
cPCR生成物を、次のようにして分析した。生成物を、Murakawaら(1988)に従って1.8%アルカリ性アガロースゲル電気泳動にかけ、そして、0.4MのNaOH中でゲルを一晩ブロッティングすることにより、ZETATMProbe紙(BioRad Corp.)上に移した。ブロットを、2×SSC(1×SSCは、0.15M
NaCl、0.015Mのクエン酸ナトリウム)中で中和し、0.3MのNaCl、15mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.8、15mMのEDTA、1.0%のSDS、0.
5%の脱脂乳(Carnation Co.)、および0.5mg/mlの超音波処理さ
れ変性されたサケ精子DNA中でプレハイブリダイズした。HCVcDNAフラグメントについて分析すべきブロットを、米国出願番号07/456,637に記載のクローン3
5のHCV cDNA挿入配列のニックトランスレーションにより生成された32標識化プローブに、ハイブリダイズした。ハイブリダイゼーションの後、ブロットを1×SSC(1×SSCは、0.15M NaCl、0.01Mのクエン酸ナトリウム)中で65℃で洗浄し、乾燥し、そしてオートラジオグラフを記録した。生成物の期待サイズは、586ヌクレオチド長である;プローブとハイブリダイズされて、このサイズの範囲でゲル中を移動した生成物は、ウイルスRNAについて陽性であると評価された。
【0174】
分析される各試料中のRNAの存在を立証するために、対照として、アルファ−1抗トリプシンmRNAを増幅するために設計されたcPCRプライマーを用いるcPCRを実施した。アルファ−1抗トリプシン遺伝子のコード領域は、Rosenbergら(1984)中に記載されている。アルファ−抗トリプシン遺伝子のコード領域の365ヌクレオチドのフラグメントを増幅するために設計された合成オリゴマー16量体プライマーを、ヌクレオチド22−37位(センス)およびヌクレオチド372−387位(アンチセンス)から誘導した。cDNA/PCRプライマー配列の間にあるがそれを含まない32Pニックトランスレーションプローブを用いて、PCR生成物を検出した。
【0175】
PCR反応の極感受性のため、すべての試料を少なくとも3回試みた。次の予防措置を取ってあらゆる偽陽性シグナルを取り除いた:1)O−リングゴム栓を有するスクリューキャップ管を用いてエアロゾルを除去;2)ディスポーザブルピストン/キャピラリーを有するRanin MICROMANRの陽圧ピペッター(positive disp
lacement pipetters)でピペッティング;および3)2つの非連続的cDNAクローンからのcDNAおよびPCRプライマーに対するオリゴヌクレオチド配列の選択。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明の免疫反応性組成物は、例えば、HCV感染、特に慢性HCV感染に対する個体の処置にも使用し得るワクチンのような材料の調製において有用である。さらに、この組成物は、生物学的試料におけるHCVの多数の変異体の検出に用いる材料を調製するために使用し得る。例えば、本発明の免疫反応性組成物は、1つ以上のHCV単離体を認識するポリクローナル抗体組成物を生成するために使用され得、または抗HCV抗体イムノアッセイの抗原として使用され得る。後者の方法は、血液生成物をHCV汚染の可能性についてスクリーニングするために使用され得る。ポリクローナル抗血清または抗体は、個体の受動免疫のために使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】図1は、HCVゲノムの遺伝学的な構築を模式図的に示す。
【図2】図2は、I群およびII群のHCV単離体によってコードされるE1タンパク質の推定アミノ酸配列の比較を示す。
【図3】図3は図2の続きである。
【図4】図4は、HCV単離体の推定E2/NS1領域のアミノ酸配列の比較を示す。
【図5】図5は図4の続きである。
【図6】図6は図5の続きである。
【図7】図7は、推定HCV E2/NS1タンパク質(アミノ酸384−420位)のアミノ末端領域、およびHIV−1のgp120 V3超可変領域に関する抗原性プロフィールを示すグラフである。
【図8】図8は、HCV E2/NS1タンパク質(アミノ酸384−420位)のアミノ末端領域由来の所定の残基が、α−ヘリックス、β−シートまたはβ−ターンのいずれかの二次構造的特徴において見い出される確率の百分率を表す一連のグラフを示す。
【図9】図9は、HCV 18(パネルA)またはTh(パネルD)由来の血漿中の抗体と、HCV単離体HCT 18の384から415または416までのアミノ酸から誘導される部分的に重複するビオチニル化8量体ペプチドとの反応性を表す棒グラフである。
【図10】図10は、HCV 18(パネルB)またはTh(パネルE)由来の血漿中の抗体と、HCV単離体Thの384から415または416までのアミノ酸から誘導される部分的に重複するビオチニル化8量体ペプチドとの反応性を表す棒グラフである。
【図11】図11は、HCV 18(パネルC)またはTh(パネルF)由来の血漿中の抗体と、HCV単離体HCV J1の384から415または416までのアミノ酸から誘導される部分的に重複するビオチニル化8量体ペプチドとの反応性を表す棒グラフである。
【図12】図12は、Q1およびQ3の単離体に対して与えられたE2/NS1ポリペプチドの2つの領域の推定アミノ酸配列、すなわち384−414位のアミノ酸および547−647位のアミノ酸を示す。
【図13】図13は、単離体HCV J1.1およびJ1.2の推定アミノ酸配列の384位から647位のアミノ酸を示す。
【図14】図14は、単離体HCT27およびHCVE1の推定アミノ酸配列の384位から651位のアミノ酸を示す。
【図15】図15は、単離体HCV−1の完全ポリタンパク質配列を示す。
【図16】図16は図15の続きである。
【図17】図17は図16の続きである。
【図18】図18は図17の続きである。
【図19】図19は図18の続きである。
【図20】図20は図19の続きである。
【図21】図21は図20の続きである。
【図22】図22は図21の続きである。
【図23】図23は図22の続きである。
【図24】図24は図23の続きである。
【図25】図25は図24の続きである。
【図26】図26は図25の続きである。
【図27】図27は図26の続きである。
【図28】図28は図27の続きである。
【図29】図29は図28の続きである。
【図30】図30は図29の続きである。
【図31】図31は図30の続きである。
【図32】図32は図31の続きである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2008−133301(P2008−133301A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38799(P2008−38799)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【分割の表示】特願2005−20454(P2005−20454)の分割
【原出願日】平成4年9月11日(1992.9.11)
【出願人】(591076811)カイロン コーポレイション (265)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【分割の表示】特願2005−20454(P2005−20454)の分割
【原出願日】平成4年9月11日(1992.9.11)
【出願人】(591076811)カイロン コーポレイション (265)
【Fターム(参考)】
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