説明

免疫反応測定方法、免疫反応測定用セルおよび免疫反応測定装置

【課題】簡単に試料中の特定成分を正確に測定することができる免疫反応測定方法、免疫反応測定用セル及び免疫反応測定装置を提供する。
【解決手段】被測定物質溶液と被測定物質に特異的結合可能な抗体との混合物で、溶液中の被測定物質濃度が異なる複数の混合物についての、被測定物質と抗体との結合に起因する第1の光学特性と被測定物質濃度の関係を用い、被測定物質を含み得る試料と抗体とを混合して第1の混合物を調製し;被測定物質との反応により色が変化する色素と試料とを混合して第2の混合物を調製し;第1の混合物の第1の光学特性を測定し;被測定物質と色素の反応に起因する第2の混合物の第2の光学特性を測定し;第2の光学特性に基づき、被測定物質濃度が第1の関係において第1の光学特性が極値を示すときの被測定物質濃度以下か否かを判定し;判定結果と上記関係とを用いて第1の光学特性を試料中の被測定物質濃度に換算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の特定成分の測定を行なう免疫反応測定方法、ならびにこれに用いる免疫反応測定用セルおよび免疫反応測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料中の特定成分(被測定物質)を、簡易に測定する方法として、抗体を用いた様々な免疫反応測定方法が提案されている。
免疫反応測定方法の1つに免疫比濁法が知られている。免疫比濁法を用いた測定の際には、まず緩衝液中で試料と抗体溶液とを作用させる。このとき、試料中に抗原が含まれる場合、抗原が抗体と特異的に抗原抗体反応を起こして濁りを生じる。濁りの度合い(濁度)は試料中の抗原濃度に比例するので、濁度を測定することにより試料中の抗原濃度を求めることができる。
【0003】
上記のような免疫比濁法は、測定対象物質ごとに結合する抗体を選択することによって、様々な物質を測定することが原理的には可能である。例えば、抗体として、抗ヒトアルブミン抗体を選択すると、試料液中のアルブミン濃度を測定する免疫反応測定用セルを作製することができる。
アルブミンは、血液から血球などの有形成分を除いた残りである血漿中のタンパク質の約50%を占めるタンパク質である。アルブミンは、血液の浸透圧の維持、イオン、脂肪酸、一部のビタミン、色素および薬物の運搬、および末梢組織へのアミノ酸供給等の作用があることが知られている。しかし、糖尿病の合併症のひとつである糖尿病性腎症などによって腎機能に障害がおこると、アルブミンが尿中に漏出することが知られている。
【0004】
従って、尿中のアルブミン量を測定すれば、病態スクリーニング、治療効果の確認、予後の判定などが可能となる。このため、尿中のアルブミン量の測定が、糖尿病性腎症の早期発見のため、ならびに糖尿病の予後を診断するための重要な日常検査として近年広く普及している。
アルブミンに対する抗体として、従来からポリクローナル抗体である抗ヒトアルブミン血清が用いられてきた。従来のアルブミンの測定法のほとんどは、抗血清とアルブミンとの凝集反応による沈降線の有無または濁度の増加によってアルブミンを測定するものである。しかし、未精製の抗血清は、血清中の種々の抗原に対する種々の抗体を含むことが多いため、アルブミン以外の抗原に結合する可能性がある。そこで、測定において、アルブミン以外の抗原に誤って結合することを防ぐために、抗血清の精製を行ない、ヒト標準血清においてアルブミン以外の抗原に由来する反応が起こらないようにする。抗血清の精製は、未精製の抗血清中からヒト標準血清中のタンパク質に結合する抗体を取り除くために、通常、アフィニティークロマトグラフィーなどの手法を用いる。
【0005】
また、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体とを用いる免疫比濁測定用キット(マイクロアルブミン−HAテストワコー、和光純薬製)も市販されている。この測定用キットの構成は、緩衝液(50mMグッド緩衝液pH7.4)と抗体溶液とから構成されている。抗体溶液には、ウサギ由来抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体(1.5mgAb/ml)とマウス由来抗ヒトアルブミンモノクローナル抗体(4.0mgAb/ml)とが含まれている。
測定の際には、緩衝液中で試料と抗体溶液とを作用させる。このとき、試料中にアルブミンが含まれる場合、アルブミンが抗ヒトアルブミン抗体と特異的に抗原抗体反応を起こして濁りを生じる。濁りの度合い(濁度)は試料中のアルブミン濃度に比例するので、濁度を測定することにより試料中のアルブミン量を求めることができる。
【0006】
上述の測定用キットで、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体とを同時に用いるのは、前者の「濁度が高くなる」という特徴と、後者の「プロゾーン現象を起こしにくい」という特徴を組み合わせるためであると言われている。つまり、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体とを組み合わせて同時に用いることによって、ポリクローナル抗体のみを利用した免疫比濁法に比べて広い測定範囲を実現している。
しかしながら、上述のような構成の免疫比濁法では、広い測定範囲を実現しているというものの、抗原過剰領域に達すると、濁度が下がり、定量ができなくなる。
【0007】
図1に、従来の免疫比濁法(レーザーネフェロメトリー)を用いた光学測定における散乱光強度と抗原濃度との関係を示す。図1において、抗原濃度0〜C0までの間の領域(以下、領域Aと略称する)では、試料中の抗原濃度に対して散乱光強度が単調に増加している。一方、抗原濃度が極大値C0を超える領域(以下、領域Bと略称する)では、抗体に対して過剰の抗原が試料中に存在しており、散乱光強度が減少する傾向がある。
ここで、抗原濃度がC0以下であることがあらかじめわかっている試料を測定する場合は、図1に示すような、散乱光強度と抗原濃度との関係を表すグラフを検量線として参照することにより、測定された散乱光強度から抗原濃度を求めることができる。
【0008】
ところが、抗原濃度がC0を超え得る試料を測定する場合、例えば、図1に示すように測定された散乱光強度Sであったとき、図1のグラフを参照すると2つの抗原濃度C1およびC2が得られるため、真の抗原濃度がいずれであるかを判断することができない。
そこで、試料を希釈して希釈倍率の異なる複数の希釈試料を作り、それらについて特性を測定することにより、真の抗原濃度を求めることができる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−242172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1記載の方法では試料を希釈する工程が必要となるため、工程が煩雑であった。また、この方法を行うためには、複雑な構成の測定装置が必要であった。
そこで、本発明は、上記従来の問題点を鑑みてなされたものであり、簡単な工程で試料中の特定成分を正確に測定することができる免疫反応測定方法および簡易な構成で試料中の特定成分を正確に測定することができる免疫反応測定用セルおよび免疫反応測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来の課題を解決するために、本発明は、被測定物質を含む溶液と前記被測定物質に対して特異的に結合可能な抗体との混合物であって、前記溶液中の前記被測定物質の濃度が互いに異なる複数の前記混合物についての、前記被測定物質と前記抗体との結合に起因する第1の光学特性と、前記溶液における前記被測定物質の濃度との第1の関係を用い、前記被測定物質を含み得る試料と前記抗体とを混合することによって第1の混合物を調製する工程(a)と、前記試料と、前記被測定物質と反応することにより色が変化する色素とを混合することによって第2の混合物を調製する工程(b)と、前記第1の混合物の前記第1の光学特性を測定する工程(c)と、前記被測定物質と前記色素との反応に起因する前記第2の混合物の第2の光学特性を測定する工程(d)と、前記第2の光学特性に基づいて、前記試料中の前記被測定物質の濃度が、前記第1の関係において前記第1の光学特性が極値を示すときの前記被測定物質の濃度以下であるか否かを判定する工程(e)と、前記判定の結果に基づき、前記第1の関係を用いて、前記工程(c)において測定された前記第1の光学特性を前記試料中の前記被測定物質の濃度に換算する工程(f)とを含む免疫反応測定方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記試料を保持する第1の試料保持部と、前記試料保持部内に設けられ、前記被測定物質に対して特異的に結合可能な抗体を含む第1の試薬保持部と、前記試料保持部に前記試料を導入するための第1の試料導入口と、前記試料保持部に光を入射するための第1の光入射部と、前記試料保持部から光を出射するための第1の光出射部と、前記試料を保持する第2の試料保持部と、前記試料保持部内に設けられ、前記被測定物質と反応することにより色が変化する色素を含む第2の試薬保持部と、前記試料保持部に前記試料を導入するための第2の試料導入口と、前記試料保持部に光を入射するための第2の光入射部と、前記試料保持部から光を出射するための第2の光出射部とを備える免疫反応測定用セルを提供する。
【0012】
また、本発明の免疫反応測定装置は、上記免疫反応測定用セルと連結するセル連結部と、光源と、光検出器と、前記免疫反応測定用セルに前記試料を吸引するためのポンプと、前記光検出部から得られた信号を前記被測定物質の濃度に変換するための演算部とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡単な工程で試料中の特定成分を正確に測定可能な免疫反応測定方法および簡易な構成で試料中の特定成分を正確に測定可能な免疫反応測定用セルおよび免疫反応測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の免疫反応測定方法は、被測定物質を含む溶液と前記被測定物質に対して特異的に結合可能な抗体との混合物であって、前記溶液中の前記被測定物質の濃度が互いに異なる複数の前記混合物についての、前記被測定物質と前記抗体との結合に起因する第1の光学特性と、前記溶液における前記被測定物質の濃度との第1の関係を用い、前記被測定物質を含み得る試料と前記抗体とを混合することによって第1の混合物を調製する工程(a)と、前記試料と、前記被測定物質と反応することにより色が変化する色素とを混合することによって第2の混合物を調製する工程(b)と、前記第1の混合物の前記第1の光学特性を測定する工程(c)と、前記被測定物質と前記色素との反応に起因する前記第2の混合物の第2の光学特性を測定する工程(d)と、前記第2の光学特性に基づいて、前記試料中の前記被測定物質の濃度が、前記第1の関係において前記第1の光学特性が極値を示すときの前記被測定物質の濃度以下であるか否かを判定する工程(e)と、前記判定の結果に基づき、前記第1の関係を用いて、前記工程(c)において測定された前記第1の光学特性を前記試料中の前記被測定物質の濃度に換算する工程(f)とを含む。
【0015】
図2に、本発明の免疫反応測定方法における、第1の光学特性である散乱光強度と、被測定物質である抗原を含む溶液における抗原濃度との関係、および第2の光学特性である透過光強度と抗原濃度との関係を示す。散乱光強度と抗原濃度との関係は、本発明における第1の関係に相当し、透過光強度と抗原濃度との関係は、本発明における第2の関係に相当する。これらの関係は、既知の濃度の被測定物質を含む試料を溶液として用い、互いに濃度の異なる複数の溶液について、その溶液と抗体との混合物における第1の光学特性、及びその溶液と色素との混合物における第2の光学特性を測定することにより求めることができる。ここで、溶液として、被測定物質を含む水溶液を用いてもよい。
被測定物質である抗原と反応することにより色が変化する色素は、反応による色の変化の度合いを色変化度とすると、溶液中の抗原濃度に依存して色変化度が増大し、ある抗原濃度で色変化度が飽和状態となる。さらに、過剰な抗原が存在しても色変化度は減少することなく飽和状態のまま維持される。
ここで、本発明における色素は、被測定物質の濃度が抗体の濃度に対して過剰な領域にあるときに、被測定物質との反応による色の変化が飽和することが好ましい。つまり、図2の例では、色変化度の飽和する抗原濃度が、抗体に対して抗原過剰な領域にある、すなわち図2中のC0濃度より大きいものを使用することが好ましい。このような色素を用いると、抗体に対して過剰な抗原が試料中に存在しても、色変化度は減少することなく飽和状態のまま維持される。そのため、過剰の抗原が存在した場合に、免疫比濁反応による散乱光強度が減少しても色変化度は減少しない。
【0016】
図2を用いて本発明の免疫反応測定方法の原理を説明する。図2において、実線は、第1の光学特性である散乱光強度と被測定物質である抗原の濃度との関係(第1の関係)を示すグラフであり、破線は、第2の光学特性である透過光強度と被測定物質である抗原の濃度との関係(第2の関係)を示すグラフである。工程(c)において測定された第1の光学特性である散乱光強度をS、第1の光学特性である散乱光強度と被測定物質である抗原の濃度との関係を示すグラフにおいて、散乱光強度Sに対応する2つの抗原濃度をC1およびC2、第1の光学特性である散乱光強度がピークとなるときの抗原濃度をC0、抗原濃度がC0のときの第2の光学特性である透過光強度をT0とする。
【0017】
ここで、工程(d)において測定された透過光強度がT1の場合、工程(e)においてT0とT1とを比較する。比較の結果、T1はT0以下であることから、試料中の抗原濃度が、抗原濃度に対して第1の光学特性である散乱光強度が単調に増加する領域、すなわち図2の領域Aに含まれると判定される。したがって、試料中の抗原濃度は、抗原濃度と散乱光強度との関係(第1の関係)において散乱光強度が極値を示すときの濃度C0以下であると判定される。この判定の結果から、工程(f)において、抗原濃度はC2ではなくC1であると求めることができる。
【0018】
一方、工程(d)において測定された透過光強度がT2の場合、工程(e)においてT0とT2とを比較する。比較の結果、T2はT0より大きいことから、試料中の抗原濃度が、抗原濃度に対して第1の光学特性である散乱光強度が単調に増加する領域、すなわち図2の領域Aには含まれず、抗体に対して抗原が過剰である領域Bに含まれると判定される。したがって、試料中の抗原濃度は、抗原濃度と散乱光強度との関係(第1の関係)において散乱光強度が極値を示すときの濃度C0より大きいと判定される。この判定の結果から、工程(f)において、抗原濃度はC1ではなくC2であると求めることができる。ここで、工程(f)において、抗原濃度がC2と定量せずに、抗原濃度がC0より大きいとの判定のみを行ってもよい。
【0019】
なお、図2の例においては、第1の光学特性として散乱光強度を用い、散乱光強度が極大値を示すときの抗原濃度をC0としたが、第1の光学特性として透過光強度または反射光強度を用いてもよい。
第1の光学特性として反射光強度を用いる場合、散乱光強度を用いる場合と同様に、図2の領域Aに対応する領域においては、第1の光学特性である反射光強度は単調に増加し、抗原濃度C0において極大値を示し、領域Bに対応する領域においては単調に減少する。
一方、第1の光学特性として透過光強度を用いる場合は、散乱光強度を用いる場合と異なり、図2の領域Aに対応する領域においては、第1の光学特性である透過光強度は単調に減少し、抗原濃度C0において極小値を示し、領域Bに対応する領域においては単調に増加する。
【0020】
以上のように、本発明の免疫反応測定方法によると、被測定物質と抗体との結合に起因する光学特性に加えて、被測定物質と色素との反応に起因する光学特性を測定することにより、希釈等の煩雑な工程を行うことなく、簡単な工程で試料中の特定成分を正確に測定することができる。
ここで、色素の色変化が測定される最低の抗原濃度が図2におけるC0、すなわち色素が抗原濃度C0の感度を有していることが好ましい。この場合、試料と色素とを混合することによって得られた第2の混合物において色の変化がない場合には、抗原濃度が領域Aにあると判定することができる。また逆に、第2の混合物において色の変化が認められる場合には、抗原濃度がC0より大きく、抗原濃度は抗原過剰領域(領域B)であることがわかる。したがって、工程(e)において、目視により判定することが可能となる。
【0021】
本発明における試料としては、特に限定されないが、種々の疾病の診断を行うための試料として、尿、血液、排泄物、唾液などが挙げられる。在宅での日常の健康管理を目的として本発明の免疫反応測定方法を実施する場合、測定は非侵襲であることが好ましいため、試料としては尿が好ましい。
また、被測定物質としては、例えばアルブミン、hCG、LH、CRPおよびIgGなどが挙げられる。
【0022】
また、本発明において用いる色素としては、試料中に含まれ得る被測定物質との反応によって色変化を起こすものであればよい。
なかでも、前記色素は、ブロモフェノールブルー、ブロモフェノールブルーの誘導体、テトラブロモスルホンフタレインおよびテトラブロモスルホンフタレインの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの色素は、色変化のみられる抗原濃度の範囲が通常の免疫反応の測定濃度範囲よりも2〜50倍広く、さらに、色変化のみられる最低の抗原濃度(感度)が通常の免疫反応の測定濃度範囲内にあるため好ましい。
【0023】
本発明において用いる抗体としては、ポリクローナル抗体、2種類以上のモノクローナル抗体を組み合わせたもの、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体とを組み合わせたもの、1種類のみのモノクローナル抗体が挙げられる。
ポリクローナル抗体はモノクローナル抗体と比較して、作製するのが容易である。一方、モノクローナル抗体は、一旦、抗体産生細胞を入手すれば、永久的に同じ抗体が得られるので、ポリクローナル抗体と比較して再現性の高い測定を行うことができる。
また、本発明において測定する光学特性としては、散乱光強度、透過光強度、および反射光強度が挙げられる。
【0024】
本発明の免疫反応測定用セルは、前記試料を保持する第1の試料保持部と、前記試料保持部内に設けられ、前記被測定物質に対して特異的に結合可能な抗体を含む第1の試薬保持部と、前記試料保持部に前記試料を導入するための第1の試料導入口と、前記試料保持部に光を入射するための第1の光入射部と、前記試料保持部から光を出射するための第1の光出射部と、前記試料を保持する第2の試料保持部と、前記試料保持部内に設けられ、前記被測定物質と反応することにより色が変化する色素を含む第2の試薬保持部と、前記試料保持部に前記試料を導入するための第2の試料導入口と、前記試料保持部に光を入射するための第2の光入射部と、前記試料保持部から光を出射するための第2の光出射部とを備える。
【0025】
さらに、ポンプと接続され、ポンプを用いて第1の試料保持部内を減圧状態にすることにより第1の試料導入口を通して第1の試料保持部内に試料を吸引するための第1の吸引口と、ポンプと接続され、ポンプを用いて第2の試料保持部内を減圧状態にすることにより第2の試料導入口を通して第2の試料保持部内に試料を吸引するための第2の吸引口とを備えることが好ましい。
ここで、第1の吸引口および第2の吸引口は、それぞれ第1の試料保持部または第2の試料保持部の一方の端部に設けられていることが好ましい。また、第1の試料導入口および第2の試料導入口は、それぞれ他方の端部に設けられていることが好ましい。
【0026】
第1の試薬保持部および第2の試薬保持部は、ガラス繊維または濾紙などで構成された多孔性の担体に、試薬である抗体または色素を含む溶液を含浸させ、乾燥することにより試薬を担持し、得られた担体を、試料保持部を構成する壁面に貼付することにより形成することができる。
また、試料保持部を構成する壁面に、試薬を含む溶液を直接塗布し、乾燥することにより試薬保持部を形成してもよい。第1の試薬保持部および第2の試薬保持部の位置は、それぞれ第1の試料保持部または第2の試料保持部の、第1の試料導入口または第2の試料導入口が設けられた端部近傍に設けられていることが好ましい。さらに吸引部と対向する底面部に設けられていることが好ましい。
【0027】
セルの材質は、可視光を実質的に透過するものであることが好ましい。コスト削減および作製工程の簡易化という観点から、単一の材料で免疫反応測定用セル全体を構成するのが好ましい。また、免疫反応測定用セルを使い捨てにする場合には、ポリスチレン、メタクリル樹脂などのプラスティック性の材料を用いることが好ましい。
試料導入口から供給された試料が試料保持部内を流れる方向において、光入射部および光出射部が、試薬保持部と略同じ位置かまたは試薬保持部よりも下流側に位置することが好ましい。このようにすると、光学測定のために用いる試薬が試料保持部内に供給された試料に溶解した後、その試薬を含む試料が光入射部および光出射部に到達するので、試料保持部内を強制的に攪拌しなくても、光学測定を迅速に行うことができる。
【0028】
また、本発明の免疫反応測定装置は、上記免疫反応測定用セルと連結するセル連結部と、光源と、光検出器と、前記免疫反応測定用セルに前記試料を吸引するためのポンプと、前記光検出部から得られた信号を前記被測定物質の濃度に変換するための演算部とを備える。
ここで、免疫反応測定用セルは測定装置に着脱可能な状態で取付けられることが好ましい。さらに、前記光源、前記光検出器および前記ポンプを制御するための制御部を備えることが好ましく、前記演算部は制御部を兼ねていてもよい。
光源としては、可視光を発する発光ダイオードやレーザが挙げられる。
【0029】
光検出器としては、可視光領域を検出できるものであればよい。可視光領域を検出できる光検出器としては、例えば、シリコンを材料とした光検出器が挙げられる。免疫比濁を検出する場合に利用される散乱光を検出する光検出器には、光源が発する光のスペクトルと同じパターンの光検出スペクトルを有する検出器であることがより望ましい。
一方、色素による色変化を検出する場合に利用される透過光を検出する光検出器には、反応後の色素が有する光吸収スペクトルと同じパターンの光検出スペクトルを有する検出器であることがより望ましい。
【0030】
第1の光入射部に入射する光と第2の光入射部に入射する光とは、1つの光源から照射されてもよく、2つの光源から別々に照射されてもよい。1つの光源を用いる場合には、光源と免疫反応測定用セルとの間に分光器(ビームスプリッター)が配置されていることが好ましい。
また、第1の光出射部から出射した光と第2の光出射部から出射した光とを、1つの光検出器で検出してもよく、2つの光検出器を用いて別々に検出してもよい。1つの光検出器を用いる場合には、免疫反応測定用セルと光検出器との間に分光器(ビームスプリッター)が配置されていることが好ましい。
また、光源と光検出器の位置関係は、散乱光を測定する場合の光検出器は、光源に対する角度が10〜180度であることが好ましい。さらに、10〜90度であることが好ましい。一方、透過光を測定する場合の光検出器は、光源に対する角度が180度±20度であることが好ましい。
【0031】
ポンプとしては、ペリスタポンプ、シリンジポンプ、水流ポンプ等が挙げられる。この中で、吸引容量精度が優れるという観点から、シリンジポンプがより好ましい。ここでポンプの吸引速度は、33〜1140μl/秒であることが好ましく、さらに800〜1140μl/秒であることが好ましい。
シリンジポンプの場合、ピストンをモーターで作動させるものでもよい。モーターとしては、ステップモーター、直流モーター等がある。ステップモーターは入力された1パルス信号あたりに特定の回転角を回転するモーターであり、パルス数で回転角度を決定できるため、位置決めのためのエンコーダーを必要としない。
【0032】
すなわち、入力パルス数により、ピストンの動作距離を制御できる。モーターの回転運動は、歯車機構と、雄ネジと雌ネジを組み合わせた直進機構等を用いて直進運動へ変換することにより、ピストンを作動させる。直流モーターの場合も回転運動を直進運動へ変換する方法は同様であるが、直流モーターの場合は、ピストンの動作距離を制御するために、モーターの回転位置を検出するエンコーダーが必要となる。
また、リニア型のステップモーターもあり、このタイプのモーターは、モーター内に雄ネジと雌ネジを組み合わせた直進機構が組み入れられており、入力パルス数に依存して、棒状の可動部が直進運動するように構成されている。このため、この棒に直接ピストンを連結すれば良く、構成が簡単となる。
【0033】
演算部は、被測定物質と抗体との結合に起因する光学特性結果と被測定物質と色素との反応に起因する光学特性結果に基づいて正確な被測定物質濃度を演算処理できるものであればよく、たとえばCPUなどが利用できる。
さらに、演算部により換算された被測定物質の濃度や工程(e)における判定結果を表示するための表示部を備えることが好ましい。表示部としては、文字やグラフ等を表示するディスプレイが挙げられる。
【0034】
さらに、上記演算部は、上述した本発明の免疫反応測定方法を実施し得る機能を有するものであるのが好ましい。そのため、本発明の免疫測定装置は、例えば少なくとも上記第1の関係を記憶しており、より好ましくは上記第2の関係をも記憶している記憶媒体等を備えた第1の記憶部を有しているのが好ましい。
この場合、上記演算部は、上記工程(a)〜上記工程(d)において得られた前記第2の光学特性に基づいて、前記試料中の前記被測定物質の濃度が、前記第1の関係において前記第1の光学特性が極値を示すときの前記被測定物質の濃度以下であるか否かを判定する第1の判定部と、前記判定の結果に基づき、前記第1の関係を用いて、上記工程(c)において測定された前記第1の光学特性を前記試料中の前記被測定物質の濃度に換算する換算部と、を具備する。
【0035】
また、上記演算部は、前記第1の関係及び前記第2の関係において、前記第1の光学特性が極値を示すときの前記被測定物質の濃度に対応する前記第2の光学特性と、前記工程(d)において測定された前記第2の光学特性とを比較する比較部と、前記試料中の前記被測定物質の濃度が、前記第1の関係において前記第1の光学特性が極値を示すときの前記被測定物質の濃度以下であるか否かを判定する第2の判定部と、を具備するのが好ましい。
なお、上記第1の判定部が上記第2の判定部の機能を有していてもよく、逆に上記第2の判定部が上記第1の判定部の機能を有していてもよい。
【0036】
また、本発明の免疫反応測定装置は、演算部において得られた試料中の被検物質の濃度を記憶媒体に記録するための記録部を備えていてもよい。このような構成によれば、測定した結果を取り外し可能な記憶媒体に保存することができ、前記結果を測定装置から容易に取り出すことができる。したがって、前記記憶媒体を分析専門業者に持参したり郵送したりして容易に分析を依頼することができる。
また、本発明の免疫反応測定装置は、演算部において試料中の被検物質の濃度を測定した時間を計時するための計時部、および前記演算部において得られた試料中の被検物質の濃度を、計時部において計時した測定時間と関連付けて記憶するための第2の記憶部を備えていてもよい。このような構成によれば、試料中の被検物質を測定した結果が、測定した時間とともに第2の記憶部に保存されているため、経時的な分析を行うことができる。なお、上記第1の記憶部が上記第2の記憶部の機能を有していてもよく、逆に、上記第2の記憶部が上記第2の記憶部の機能を有していてもよい。
【0037】
さらに、本発明の測定装置は、演算部において得られた試料中の被検物質の濃度を、測定装置外に送信するための送信部を備えていてもよい。このような構成によれば、試料中の被検物質を測定した結果を、病院内の分析関連部門または分析関連業者などに送信し、それを前記分析関連部門または分析関連業者等において分析することができる。したがって、測定から分析までの時間を短縮することができる。
加えて、本発明の測定装置は、前記分析関連部門または分析関連業者等において分析した結果を受信するための受信部を備えていることができる。このような構成によれば、分析結果を迅速に被験者にフィードバックすることができる。
以下、図面を参照しながら本発明の代表的な実施の形態をより詳細に説明する。
【0038】
1.免疫反応測定用セル
本発明の免疫反応測定用セルの一実施の形態の構成を、図3および4を用いて説明する。図3は、本実施の形態に係る免疫反応測定用セルの斜視図であり、図4は、図3におけるA−A線断面図である。
本実施の形態の免疫反応測定用セルは、被測定物質と抗体との結合に起因する第1の混合物の第1の光学特性を、散乱光を用いた免疫比濁反応により測定し、被測定物質と色素との反応に起因する第2の混合物の第2の光学特性(色素の色調変化)を、透過光を用いて測定するように構成されている。
【0039】
図3に示すように、本実施の形態の免疫反応測定用セル1は、中央部に隔壁を備えた無底中空形状の四角柱(縦×横×高さ:1.1mm×1.1mm×70mm、外壁の厚み:1.0mm、隔壁の厚み:2.0mm)と底板10(縦×横:1.1mm×1.1mm、厚み:1.0mm)とから構成されている。
上記四角柱の内部には、互いに隔壁で隔てられた第1の試料保持部200と第2の試料保持部201とを有している。また、上記四角柱の外壁には、底板10の近傍の端部に第1の試料導入口202と第2の試薬導入口203とが設けられている。
【0040】
上記四角柱の開放端が、第1の吸引口210および第2の吸引口211として機能する。また、第1の試料保持部200および第2の試料保持部201の内部には、底板10上に、それぞれ第1の試薬保持部204および第2の試薬保持部205が設けられている。
第1の試薬保持部204には抗体として400μgの抗アルブミン抗体が、第2の試薬保持部205には色素として1.0mgのテトラブロモスルホンフタレンがそれぞれ担持されている。
【0041】
次に、免疫反応測定用セル1の製造方法について説明する。まず、射出成形により作製したポリスチレン製の無底中空形状の四角柱(縦×横×高さ:1.1mm×0.55mm×70mm、厚み:1.0mm)の一面の端部に、掘削により孔(直径:2mm)を開ける。
この四角柱を2つ用いて(第1のセル20および第2のセル30)、2つの孔が外側に向くように接着剤により第1のセル20および第2のセル30を貼り合わせる。これらの孔が第1の試料導入口202および第2の試料導入口203となる。
【0042】
一方、ポリスチレン製の底板10に、第1の試薬保持部204を形成するための第1試薬液(160mMフタレン酸と8mg/ml抗アルブミン抗体とを含む水溶液)50μlと、第2の試薬保持部205を形成するための第2試薬液(20mg/mlテトラブロモスルホンフタレン水溶液)50μlとを互いに混ざらない位置にそれぞれ滴下する。
その後、各試薬液を50℃で30分間風乾により乾燥させる。このように作製した第1の試薬保持部204および第2の試薬保持部205を形成した底板10を、互いに貼り合わされた第1のセル20および第2のセル30の試料導入口202、203に近い方の開放端を塞ぐ位置に接着することにより、免疫反応測定用セル1を作製する。
【0043】
ここで、第1のセル20を構成する4つの外壁面のうち、第1の試料導入口202が設けられた面および第2のセル30と貼り合わされた面を除く2つの互いに対向する面の一方が第1の光入射部206、第1の試料導入口202が設けられた面が第1の光出射部208として機能する。
同様に、第2のセル30を構成する4つの外壁面のうち、第2の試料導入口203が設けられた面および第1のセル20と貼り合わされた面を除く2つの互いに対向する面の一方が第2の光入射部207、他方が第2の光出射部209として機能する。
【0044】
2.免疫反応測定装置
次に、本発明の免疫反応測定装置の一実施の形態の構成について説明する。図5は、本実施の形態に係る免疫反応測定装置の透視図であり、図6は図5に示す免疫反応測定装置の斜視図である。
図5に示すように、免疫反応測定装置2は、免疫反応測定用セル1と連結するためのセル連結部(例えばゴムやシリコーン樹脂製)311、第1LED光源308、第2LED光源314、第1光検出器305および第2光検出器306を備えている。凹状のセル連結部311の内面には、図示しないが、例えばテフロン(登録商標)やイソプレンゴム製の封止リングが配置されている。
【0045】
免疫反応測定用セル1を免疫反応測定装置2に連結したときに、第1LED光源308の光出射面と免疫反応測定用セル1の第1の光入射部206、第1光検出器305の受光面と免疫反応測定用セル1の第1の光出射部208、第2LED光源314の光出射面と免疫反応測定用セル1の第2の光入射部207、第2光検出器306の受光面と免疫反応測定用セル1の第2の光出射部209が、それぞれ互いに対向するように配置されている。
免疫反応測定装置2は、シリンジ310、シリンジ310内を動くことができるように配置されたプランジャー309、およびプランジャー309を動作させるためのステッピングモータ313をさらに備え、シリンジ310とプランジャー309とステッピングモータ313とが組み合わされて本発明のポンプとして機能する。
【0046】
また、免疫反応測定装置2は、演算部301、制御部312、表示部307であるディスプレイ、第1LED光源308および第2LED光源314を作動させるための電源ボタン304、ステッピングモータ313を作動させて免疫反応測定用セル1内に試料を導入するための導入開始ボタン302、およびステッピングモータ313を停止させて免疫反応測定用セル1内への試料の導入を停止するための導入停止ボタン303をさらに備えている。なお、第1LED光源308および第2LED光源314のいずれか一方と、分光器とを用いても構わない。
【0047】
ここで、演算部301はメモリを備えており、そのメモリには、図2における領域Aと領域Bの境界となる被測定物質の濃度C0に対応する第2の光学特性である透過光強度T0と、第1の光学特性である散乱光強度と被測定物質の濃度との関係を示す検量線データとが格納されている。
【0048】
3.免疫反応測定方法
次に、本実施の形態に係る免疫反応測定用セルと免疫反応測定装置とを用いた免疫反応測定方法について説明する。
免疫反応測定用セル1の第1の吸引口210および第2の吸引口211が、セル連結部311に挿入されて連結されるように免疫反応測定用セル1を免疫反応測定装置2に装着した後に、免疫反応測定用セル1の第1の試料導入口202および第2の試料導入口203を、予め紙コップ等のカップ内に採尿しておいた尿に浸す。
【0049】
その状態で導入開始ボタン302を押してステッピングモータ313を作動させることにより、1140μl/秒の速度で、第1の試料導入口202および第2の試料導入口203を通して第1の試料保持部200および第2の試料保持部201内にそれぞれ3mlの尿を導入する。
第1の試料保持部200内では、第1の試薬保持部204に担持された抗アルブミン抗体とフタレン酸とが導入された尿中に溶解し、第1の混合物が調整される。同様に、第2の試料保持部201内では、第2の試薬保持部205に担持された色素であるテトラブロモスルホンフタレンが導入された尿中に溶解し、第2の混合物が調整される。
【0050】
導入後、電源ボタン304を押すことにより第1LED光源308(スタンレー社製、波長:630nm、輝度:3600mcd)および第2LED光源314(スタンレー社製、波長:630nm、輝度:3600mcd)を作動させて、それぞれ第1の光入射部206および第2の光入射部207に測定光を照射する。
演算部301は、透過光測定用光検出器である第2光検出器306(浜松ホトニクス社製、シリコンフォトダイオード)を用いて、第2の試料保持部201内で調整された第2の混合物におけるテトラブロモスルホンフタレインとアルブミンとの呈色反応を測定する。具体的には、演算部301が、領域Aと領域Bの境界となるアルブミンの濃度C0に対応する透過光強度T0をメモリから読み出して、第2光検出器306により測定された透過光強度と比較することにより、尿中のアルブミン濃度が領域Aにあるか領域Bにあるかを判定する。
【0051】
さらに、演算部301は、散乱光測定用光検出器である第1光検出器305(浜松ホトニクス社製、シリコンフォトダイオード)を用いて、抗アルブミン抗体とアルブミンとの免疫比濁反応を測定する。
具体的には、演算部301が、メモリに格納されている散乱光強度とアルブミンの濃度との関係を示す検量線データを参照して、第1光検出器305により測定された散乱光強度をアルブミン濃度に換算する。
【0052】
このとき2つの異なるアルブミン濃度が得られるが、透過光強度に基づく判定結果を参照して、尿中のアルブミン濃度が領域Aにあると判定されている場合は、2つの異なるアルブミン濃度のうち低い方のアルブミン濃度が尿中のアルブミン濃度である判定する。
一方、尿中のアルブミン濃度が領域Bにあると判定されている場合は、2つの異なるアルブミン濃度のうち高い方のアルブミン濃度が尿中のアルブミン濃度である判定する。求められた尿中のアルブミン濃度は、表示部307上に表示される。
【0053】
このように免疫比濁反応と色素による呈色反応を利用することにより、過剰の被測定物質(抗原)が存在した場合にも、容易かつ正確に試料中の被測定物質の濃度を測定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る免疫反応測定方法、免疫反応測定用セルおよび免疫反応測定装置は、試料中の特定成分、特に生体試料中の抗原濃度の測定として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】従来の免疫比濁法を用いた光学測定における散乱光強度と抗原濃度との関係を示す図である。
【図2】本発明の免疫反応測定方法における、第1の光学特性である散乱光強度と被測定物質である抗原の濃度との関係および第2の光学特性である透過光強度と抗原濃度との関係を示す図である。
【図3】本発明の免疫反応測定用セルの一実施の形態の斜視図である。
【図4】図3におけるA−A線断面図である。
【図5】本発明の免疫反応測定装置の一実施の形態の透過図である。
【図6】図5に示す免疫反応測定装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1 免疫反応測定用セル
2 免疫反応測定装置
10 底板
20 第1のセル
30 第2のセル
200 第1の試料保持部
201 第2の試料保持部
202 第1の試料導入口
203 第2の試薬導入口
204 第1の試薬保持部
205 第2の試薬保持部
206 第1の光入射部
207 第2の光入射部
208 第1の光出射部
209 第2の光出射部
210 第1の吸引口
211 第2の吸引口
301 演算部
302 導入開始ボタン
303 導入停止ボタン
304 電源ボタン
305 第1光検出器
306 第2光検出器
307 表示部
308 第1LED光源
309 プランジャー
310 シリンジ
311 セル連結部
312 制御部
313 ステッピングモータ
314 第2LED光源


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物質を含む溶液と前記被測定物質に対して特異的に結合可能な抗体との混合物であって、前記溶液中の前記被測定物質の濃度が互いに異なる複数の前記混合物についての、
前記被測定物質と前記抗体との結合に起因する第1の光学特性と、前記溶液における前記被測定物質の濃度との第1の関係を用い、
前記被測定物質を含み得る試料と前記抗体とを混合することによって第1の混合物を調製する工程(a)と、
前記試料と、前記被測定物質と反応することにより色が変化する色素とを混合することによって第2の混合物を調製する工程(b)と、
前記第1の混合物の前記第1の光学特性を測定する工程(c)と、
前記被測定物質と前記色素との反応に起因する前記第2の混合物の第2の光学特性を測定する工程(d)と、
前記第2の光学特性に基づいて、前記試料中の前記被測定物質の濃度が、前記第1の関係において前記第1の光学特性が極値を示すときの前記被測定物質の濃度以下であるか否かを判定する工程(e)と、
前記判定の結果に基づき、前記第1の関係を用いて、前記工程(c)において測定された前記第1の光学特性を前記試料中の前記被測定物質の濃度に換算する工程(f)とを含む、試料中の被測定物質の免疫反応測定方法。
【請求項2】
前記色素が、前記被測定物質の濃度が前記抗体の濃度に対して過剰な領域にあるときに、前記被測定物質との反応による色の変化が飽和する色素である請求項1記載の免疫反応測定方法。
【請求項3】
さらに、前記溶液と前記色素との混合物であって、前記溶液中の前記被測定物質の濃度が互いに異なる複数の前記混合物についての前記第2の光学特性と、前記溶液における前記被測定物質の濃度との第2の関係を用い、
前記工程(e)において、前記第1の関係及び前記第2の関係において、前記第1の光学特性が極値を示すときの前記被測定物質の濃度に対応する前記第2の光学特性と、前記工程(d)において測定された前記第2の光学特性とを比較することにより、
前記試料中の前記被測定物質の濃度が、前記第1の関係において前記第1の光学特性が極値を示すときの前記被測定物質の濃度以下であるか否かを判定する、請求項1または2記載の免疫反応測定方法。
【請求項4】
前記色素が、ブロモフェノールブルー、ブロモフェノールブルーの誘導体、テトラブロモスルホンフタレインおよびテトラブロモスルホンフタレインの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の免疫反応測定方法。
【請求項5】
試料中の被測定物質の濃度を測定するための免疫反応測定用セルであって、
前記試料を保持する第1の試料保持部と、
前記試料保持部内に設けられ、前記被測定物質に対して特異的に結合可能な抗体を含む第1の試薬保持部と、
前記試料保持部に前記試料を導入するための第1の試料導入口と、
前記試料保持部に光を入射するための第1の光入射部と、
前記試料保持部から光を出射するための第1の光出射部と、
前記試料を保持する第2の試料保持部と、
前記試料保持部内に設けられ、前記被測定物質と反応することにより色が変化する色素を含む第2の試薬保持部と、
前記試料保持部に前記試料を導入するための第2の試料導入口と、
前記試料保持部に光を入射するための第2の光入射部と、
前記試料保持部から光を出射するための第2の光出射部とを備える免疫反応測定用セル。
【請求項6】
請求項5に記載の免疫反応測定用セルと連結するセル連結部と、
光源と、
光検出器と、
前記免疫反応測定用セルに前記試料を吸引するためのポンプと、
前記光検出部から得られた信号を前記被測定物質の濃度に変換するための演算部とを備える免疫反応測定装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−171122(P2007−171122A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−372734(P2005−372734)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】