説明

免疫学的測定用青色金ナノ粒子、その製造方法およびそれを用いた測定方法

【課題】 ピペラジン環を有する有機緩衝剤、金、および還元性を有する有機酸からなり、コロイド溶液として分散された液が目視で青色を呈する金ナノ粒子、およびその製造方法並びに該金ナノ粒子を標識粒子として用いる免疫学的測定方法を提供する。
【解決手段】 ピペラジン環を有する有機緩衝剤と第一の金塩の溶液を反応させて核金ナノ粒子を形成させる核形成工程と、次いで該核金ナノ粒子の溶液に第二の金塩の溶液と還元性を有する有機酸を同時的に添加反応させて、核金ナノ粒子を成長させる成長工程を行なうことによって、コロイド溶液として分散された液が目視で青色を呈する金ナノ粒子を容易に製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度に鮮明な発色性を有し、しかも安定的な持続性を有し、識別性に優れた、免疫学的測定用の標識剤、タンパク質染色剤として有用な青色金ナノ粒子、青色金ナノ粒子のコロイド液に関する。また、本発明の青色金ナノ粒子の製造方法およびそれを用いた検査キットおよびその測定方法に関する。さらに、本発明の青色金ナノ粒子を、免疫測定系における標識物質として用いる免疫学的測定用標識物質に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、免疫クロマトグラフィー用ストリップ形式のイムノアッセイは、抗体の持つ特異的反応性を利用して、試料液中の抗原を検出する簡便な体外診断キットもしくは携帯用診断装置として重要性が高まっている。特に、最近では、インフルエンザウィルスや細菌といった病原体に対する感染の有無を検査するための免疫クロマトグラフィー法に基づく簡便な多項目検査具についても研究開発が進められている。
【0003】
免疫学的測定法に用いられる不溶性担体としては、金属コロイド粒子やラテックス粒子が汎用的に用いられるが、ラテックス粒子はタンパク質などの被標識物質の強固な担持行うための化学的官能基の修飾を行うなどの煩雑な製造工程が必要である。そのため、被標識物質の担持が容易であり安価に簡便な製造が可能な金コロイド粒子が好ましく用いられている。
不溶性担体で抗体を標識したイムノクロマトグラフィー法検査薬は、操作が簡便であり、検査も短時間で終わることから汎用的に使われているが、一般的にEIAと比較して感度が低く、陽性の場合に観察されるラインが明瞭でない等の問題点があった。
かかる問題点を解決するために、従来から実用化されている金コロイド粒子よりも一層高感度で、免疫学的測定用の標識剤、タンパク質染色剤として好適な種々の金属コロイドの開発が行なわれている。
【0004】
特許文献1では、イムノクロマト法においては白金コロイド粒子の平均粒径が小さいために発色が不十分で、実用に適さないため、金コロイド粒子(平均粒径:30〜100nm)の表面に白金を担持させて平均粒径が50〜150nmの金属コロイド粒子を提供している。その製造方法としては、溶媒中で塩化金酸を還元して金コロイド粒子を生成した後、該金コロイド粒子の存在下で塩化白金酸を還元している。(特許文献1参照)
【0005】
また、特許文献2では、これをさらに改良して一層高感度の金属コロイド粒子を提供している。すなわち、金コロイド粒子(平均粒径:30〜100nm)の表面に、平均粒径が5nmの白金を担持させた金属コロイド粒子を提供している。その製造方法としては、媒体中で金コロイド粒子を製造する際の還元剤の配合量、および白金を金コロイド粒子に還元担持する際の還元剤の配合量を、特定の範囲とし、また、媒体中に保護コロイド形成剤を実質上含まない製造方法によっている。このような保護コロイド形成剤とは、例えば、PVA、PVP、ゼラチン等の水溶性高分子物質、界面活性剤、高分子キレート剤などが挙げられている。(特許文献2参照)
【0006】
免疫学的及び免疫細胞学的診断検査において感度向上のための別手法として、金ゾル極微粒子をアルカンチオール(誘導体)でコーティングすることにより、金ゾル表面に特定の疎水性−親水性バランスを付与して、塩で誘起される凝集に耐性を示し、かつ金ゾル表面と外来タンパク質との非特異的相互作用を最小限に抑える方法が提供されている。(特許文献3参照)
【0007】
また一方で、妊娠診断用の体外診断薬において、従来から、一般的に実用化されている赤色の球状金コロイド粒子を、より高感度なものとするための改良もなされている。金コロイドが用途に合わせた粒径で、粒子径分布がシャープで、均一な真球状であることが求められ、その製造法が開発されている。
特許文献4では、第一の金塩溶液に第一の還元剤(クエン酸塩)を添加して、核コロイド粒子(平均粒子径:12〜17nm)を形成する核形成段階、前記核コロイド粒子の溶液に、第二の金塩と第二の還元剤(アスコルビン酸塩)を同時に添加して核コロイドを成長させる成長段階とを含み、前記成長段階は1回以上行なっている。金コロイド粒子の平均粒子径は、1回目の成長段階で17〜55nm未満、2回目の成長段階で55〜110nm未満、3回目の成長段階で110〜220nmとしており、その粒径の標準偏差は10%以内となっている。(特許文献4参照)
【0008】
妊娠診断薬のように妊娠か否かといった1項目のみを検査する場合は、目視判定に当たり、1種類の標識剤を使用すればよいであろうが、最近ではかぜ様感染症や呼吸器感染症におけるウイルス検査のように、原因ウイルスの特定を行なう必要がある場合は、多項目検査を行なわなければならないので、患者さんや医療従事者の負担軽減を意図して多様な検査様式が開発されている。
【0009】
例えば、ラテラルフロータイプのイムノアッセイ法によって、複数のウイルス(ロタウイルス、カルシウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス等)を、一つの検査具により、検出できるものが知られているが、検出ラインが複数になるため目視判定による誤判定が生じやすくなるという問題点がある。
【0010】
また、呼吸器感染症におけるウイルスのイムノクロマトグラフィー法による検査においては、鼻、痰、および咽頭ぬぐい液といった検体を、検体処理液で前処理して複数の呼吸器感染検査に適した検査試料を調製し、この検査試料の各一部を用いて、第一試験具(例えば、インフルエンザウイルス感染症の検査用)、第二試験具(例えば、アデノウイルス感染症またはRSウイルス感染症の検査用)といった複数の試験具により検査するといった検査方法も、開発されている。(特許文献5参照)
【0011】
さらに、任意の色を持った標識抗体粒子を用いて高い判定能力を有し、2種類以上の標識抗体粒子を用いて2種類以上の測定対象物を同時測定可能な、イムノクロマトグラフィー法を含む測定方法が開発されており、具体的には、TRITC(吸収極大:約550nm、赤色)とFITC(吸収極大:約500nm、橙色)といった発光色素の組み合わせを用いて、hCGとLHの同時測定を行なっている。(特許文献6参照)
【0012】
しかしながら、一つの試験具によって、多項目の検査を目視判定により同時に行なう場合には、標識剤やタンパク質染色剤として同一色や同系色のものである場合には、誤判定や誤診断を引起す惧れが生じてくるという問題点があった。目視判定により誤判定や誤診断が生じないためには、標識剤やタンパク質染色剤として相互に識別性の高い色により目視判定が行なわれることが望ましい。
【0013】
2色混在する場合、その識別性は色の組合わせにより異なる。赤色と青色は目視による色の識別性が高いことから、男女を識別する表示や、お湯(赤色)と水(青色)の表示に見られるように様々な相互識別に用いられている。従来から実用化されている金コロイド粒子は、赤色の球状粒子であるが、色違いの、即ち、赤色に対して識別性の高い青色の金コロイド粒子が、標識剤やタンパク質染色剤として用いられることになれば、目視判定による誤判定や誤診断が著しく低減すると思われるが、青色の金コロイド粒子は、未だ実用化されていない。
【0014】
特許文献7−9においては、金属ナノ粒子の大きさ、模様、構造・形状等を変化させて種々の光吸収波長特性を有する金属ナノ粒子について記載されている。
その特許文献7および8には、青色を呈する金ナノ粒子は、金ナノシェル、ナノロッド、ナノチューブまたはナノプリズム粒子の構造・形状であること、また、金ナノ粒子は、(1)黄色を呈する銀ナノ粒子液(ポリビニルピロリドンおよびエチレングリコールといった保護剤を含有)に、還元剤を添加した後、約100℃で還流させる段階、(2)前記還流された反応液に金塩溶液を注入反応させる段階、(3)前記反応物を常温まで冷却した後、0.2μmのマイクロフィルターを使用してろ過する段階、によって製造しており、得られた金ナノ粒子は、表層のみが金で構成される形態(金ナノシェル)である。金ナノロッド、金ナノチューブまたは金ナノプリズムは、金ナノ粒子の生成時にヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド(臭化物)(C16TAB)のような界面活性剤を用いて得られることの記載がある。粒子の大きさについては、明確な記載が無く、その用途としては化粧料用顔料の記載があるが、免疫学的測定法における標識剤やタンパク質染色剤としての使用については記載が無い。(特許文献7、8参照)
【0015】
特許文献9には、C16TAB(アンモニウム塩の界面活性剤)が存在する水溶液中で金イオンを還元剤(アミン類)で還元してロッド状の金ナノ粒子を得ている。該金ナノ粒子のアスペクト比(長軸/短軸)は、併用するアミン類とアンモニウム塩の混合比を調整することによって制御でき、アスペクト比:2〜11、吸収波長ピーク域:658〜1200nmの金ナノロッドが得られている。検査薬に使用できるという記載がある。(特許文献9参照)
しかしながら、界面活性剤として用いたC16TABが、得られた金ナノロッド中に含有されているので、検出抗体等の蛋白質の直接担持(修飾)には不向きであり界面活性剤の除去・置換などの煩雑な操作が必要なことから、免疫学的測定法における検査薬に用いる蛋白質などの標識物質としては好ましいとは言えない。また、C16TABは毒性を有しており、取り扱いの観点からも好ましいとは言えない。
【0016】
非特許文献1には、青緑色を呈する枝状金ナノ結晶のコロイドが記載され、該枝状金ナノ結晶は、複雑な三次元構造で、1〜8つの突起を持ち、突起を含めた結晶サイズは30〜50nm(約15〜25nmの突起長さ、約8nmの幅を持つ)である。該三次元枝状金ナノ結晶は、塩化金酸水溶液とグッドバッファー成分の有機酸(HEPES、HEPPSO、PIPES等)を、室温で反応させることにより、高収率(92%)で得られている。(非特許文献1参照)
【0017】
しかしながら、非特許文献1で得られた青緑色を呈する枝状金ナノ結晶のコロイドの結晶サイズは30〜50nmであるため、イムノクロマト診断薬として使用しても発色が不十分で目視判定が難しく、好適なサイズではない。
以上の先行技術に見るとおり、青緑色の金ナノ結晶のコロイドが、特にイムノクロマト診断薬の標識用担体に適さない理由は、そのナノコロイドの粒子サイズが、約30〜50nmと比較的小さく、さらに、いわゆるマルチポット型、枝状型、或いは金平糖状と称されるものは、形状安定剤を使用する場合が多く、この形状安定剤により、タンパク質の金ナノ粒子への直接の修飾が困難となる問題が発生する為である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、青色金ナノ粒子、その金ナノ粒子が媒体中に分散してなる青色金ナノ粒子のコロイド液、および目視で青色の高度な鮮明な色を呈し、品質の安定性、保存安定性、および識別性に優れた、免疫学的測定用の標識剤、タンパク質染色剤として有用な、従来の赤色とは色違いの識別容易な青色金ナノ粒子を提供すること、その製造方法、それを用いることによる測定の精度を高めた検査キットおよびその測定方法に関する課題を解決しようとするものである。
参考にした技術文献における青色金ナノ粒子は、イムノクロマト診断薬用の担体に適さない問題点が2つ存在する。
1.免疫学的測定に適した粒子サイズではない。(イムノクロマト試薬に適する粒子サイズは、平均粒子径40〜100nm程度である。参考技術文献によると、粒子サイズは30nm程度である。)
2.形状安定剤を含んでいる点。(他の技術文献における三次元枝状金ナノ粒子は、その形状を制御するために形状安定剤を含んでいる。この形状安定剤により、タンパク質の金ナノ粒子への直接の修飾が困難となる。)
【0019】
本発明者等は、上記問題点を解決するために、まず、免疫学的測定に適したサイズにするために、粒子のサイズを大きくし、また、タンパク質の金ナノ粒子への修飾が直接できるような形状安定剤を選択することによって、イムノクロマト診断薬用の担体に適した青色金ナノ粒子、さらに詳しくは、イムノクロマトグラフィー法による多項目検出において、多項目検出試薬に用いることができる色違い青色金ナノ粒子の提供を達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、免疫学的測定に適した、タンパク質の金ナノ粒子への修飾が容易で、且つ多項目検出試薬に最適な、金平糖(confeito)状の色違い青色金ナノ粒子を提供する。
すなわち、本発明の青色金ナノ粒子は、グッドバッファー成分のピペラジン環を有する有機酸(例えば、HEPES等)、Au(金)、および還元性を有する有機酸(例えば、アスコルビン酸、クエン酸等)からなり、平均粒子径が20〜200nm、色彩の鮮明性や持続安定性さらにコロイドの持続安定性から考えると好ましくは40〜180nm、検査の識別顕著性などの実用的な諸事情の見地からは通常最も好ましくは50〜120nm、さらに最も適正な範囲は60〜100nmであって、青色金ナノ粒子がコロイド液として分散された液が目視で青色を呈することを特徴とする。
【0021】
本発明の色違い青色金ナノ粒子は、金平糖状の形状をしており、平均粒子径が20〜200nm、好ましくは40〜180nm、通常最も好ましくは50〜120nmさらに最も適正な範囲は60〜100nm、平均粒子核サイズが20〜60nmの範囲、570〜750nmの範囲に極大吸収波長を持つことを特徴とする、金ナノ粒子のコロイド水溶液である。好ましくは、突起長が5〜50nmの範囲、突起数が4以上である。本発明の色違い金コロイド水溶液に含まれる金ナノ粒子をイムノクロマト法における標識物質として用いれば、赤色と識別性の高い青色での検出が可能となり、多項目の同時検出において誤診断を低減したイムノクロマト測定が行える。
本発明は、青色金ナノ粒子、青色金ナノ粒子のコロイド液、その製法および免疫学的測定に適した、タンパク質の青色金ナノ粒子への修飾が容易で、且つ多項目検出試薬に最適な、金平糖状の色違い青色金ナノ粒子を提供することができたものである。
なお、本発明の青色金ナノ粒子のコロイド液とは、ナノサイズ(nm)の微粒子、特に金ナノ粒子が水のような各種の媒体中に分散している状態のものを指す。
すなわち、本発明の色違い青色金ナノ粒子は、グッドバッファー成分のピペラジン環を有する有機酸、Au(金)、および還元性を有する有機酸(例えば、アスコルビン酸、クエン酸等)から形成されてなる目視で青色を呈する青色金ナノ粒子である。
【0022】
本発明によると、以下に記載の青色金ナノ粒子、その製造方法およびその使用方法が提供される。本発明の特に金ナノ粒子の特徴は以下のとおりである。
(a)本発明の第1の特徴は、平均粒子径が20〜200nmの金ナノ粒子から構成されてなる青色金ナノ粒子にある。
(b)本発明の第2の特徴は、極大吸収波長が570〜800nmの範囲であることを特徴とする(a)に記載の青色金ナノ粒子にある。
(c)本発明の第3の特徴は、粒子の形態がグラフト型、マルチポット型、または金平糖型の三次元突起部を有する金ナノ粒子であることを特徴とする(a)または(b)に記載の青色金ナノ粒子にある。
(d)本発明の第4の特徴は、金ナノ粒子からなる核の外周を成長させることにより形成されてなる(a)〜(c)のいずれかに記載の青色金ナノ粒子にある。
(e)本発明の第5の特徴は平均粒子核サイズが20〜60nm、核突起部を含めた平均粒子径が50〜120nmの範囲に含まれ、突起部の数が核1個につき4個以上存在し、この突起部の長さは5〜50nmであることを特徴とする(a)〜(d)のいずれかに記載の青色金ナノ粒子にある。
【0023】
本発明の金ナノ粒子が、水のような媒体中に分散してなるコロイドの特徴は、以下のとおりである。
(f)本発明の第6の特徴は、(a)に記載の青色金ナノ粒子、グッドバッファー成分のピペラジン環を有する有機酸、および還元性を有する有機酸からなり、コロイド液として分散されてなることを特徴とする青色金ナノ粒子のコロイド液にある。
【0024】
本発明の特に金ナノ粒子の製造方法の特徴としては以下のとおりである。
(g)本発明の第7の特徴は、グッドバッファー成分のピペラジン環を有する有機酸と第一の金塩の溶液を反応させて核金ナノ粒子を形成させる核形成工程と、次いで該核金ナノ粒子の溶液に第二の金塩の溶液と還元性を有する有機酸を同時的に添加反応させて、核金ナノ粒子を成長させる成長工程の反応を行なうことを特徴とする青色金ナノ粒子の製造方法にある。
(h)本発明の第8の特徴は、成長工程の反応温度を10℃以上40℃未満で実施することを特徴とする(g)に記載の青色金ナノ粒子の製造方法にある。
(i)本発明の第9の特徴は、有機酸の濃度が0.075〜0.15mMであることを特徴とする(g)または(h)に記載の青色金ナノ粒子の製造方法にある。
(j)本発明の第10の特徴は、グッドバッファー成分のピペラジン環を有する有機酸が、2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−(2−ヒドロキシプロパン−3−スルホン酸)、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)、3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]プロパンスルホン酸及びピペラジン−1,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−プロパンスルホン酸)からなる群から選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする(i)に記載の青色金ナノ粒子の製造方法にある。
(k)本発明の第11の特徴は還元性を有する有機酸が、酒石酸、酒石酸塩、タンニン酸、タンニン酸塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、クエン酸及びクエン酸塩からなる群から選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする(g)に記載の青色金ナノ粒子の製造方法にある。
【0025】
(l)本発明の第12の特徴は、成長工程において、還元性を有する有機酸と共にグッドバッファー成分のピペラジン環を有する有機酸をさらに含むことを特徴とする(g)に記載の青色金ナノ粒子の製造方法にある。
次に、本発明の特に免疫学的測定用標識物質としての特徴は、以下のとおりである。
(m)本発明の第13の特徴は、(a)〜(e)のいずれかに記載の青色金ナノ粒子を含む免疫学的測定用標識物質にある。
(n)本発明の第14の特徴は、形状の異なる少なくとも二種類の金ナノ粒子から構成されることを特徴とする(m)に記載の免疫学的測定用標識物質にある。
(o)本発明の第15の特徴は、球状の金ナノ粒子とグラフト型、マルチポット型、または金平糖型の三次元突起を有する金ナノ粒子の少なくとも2種類から構成される(n)に記載の免疫学的測定用標識物質にある。
(p)本発明の第16の特徴は、(a)〜(e)のいずれかに記載の青色金ナノ粒子を標識物質として用いる免疫学的測定方法にある。
以上の発明の構成を採ることにより、本発明の課題を解決することができた。
【発明の効果】
【0026】
本発明の色違い青色金ナノ粒子は、平均粒子径が20〜200nm、好ましくは40〜180nm、通常最も好ましくは50〜120nmさらに最も適正な範囲は60〜100nmの範囲であるため、イムノクロマト診断薬に最適な粒子サイズを提供することができる。
また、球状の赤色金ナノ粒子等と併用することにより、複数色の判定ラインを有するイムノクロマト診断薬を製造できるため、多項目検査において目視判定が容易かつ正確にできるので、誤診断・誤判定をすることが無い。
さらに、本発明の色違い青色金ナノ粒子にあっては、タンパク質の修飾が容易であるため、感度の低下がなく、正確に結果の判定が可能であって、イムノクロマト診断薬としての性能が優れている。
さらにまた、本発明の色違い青色金ナノ粒子は、イムノクロマト診断薬化した際のコストが、他の製法で得られた粒子に比べて安価である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の青色金ナノ粒子の形態および寸法概要を示す写真図
【図1】本発明の青色金ナノ粒子の一例の形態および寸法概要を示す透過電子顕微鏡写真像である。
【図2】本発明の青色金ナノ粒子の一例の成長前と成長後の透過電子顕微鏡写真像である。
【図3】本発明の青色金ナノ粒子の他の一例の成長前と成長後の透過電子顕微鏡写真像である。左図(3−A)は、20倍(図内スケールバーの長さが50mm、右図(3−B)は、50倍(図内スケールバーの長さが20mm)である。
【図4】本発明の青色金ナノ粒子合成における、波長(nm)と各種反応温度(℃)の関係を示す図である。
【図5】本発明の青色金ナノ粒子合成における、波長(nm)とアスコルビン酸濃度の関係を示す図である。
【図6】本発明の青色金ナノ粒子のイムノクロマト試薬に使用した場合の検出感度の比較を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の青色金ナノ粒子は、一挙に平均粒子径が大きいものを製造するのが合理的であるが、一旦所定の大きさの粒子を生成させて後に、成長工程を経て大きい粒子径のものを入手するのが合理的であって、平均粒子径が20〜200nmの金ナノ粒子から構成されているものである。また、本発明の金ナノ粒子が媒体中に分散してなるコロイド液の、色違い金コロイド粒子の平均粒子径は、20〜200nmであるが、好ましくは40〜180nm、通常最も好ましくは50〜120nm、さらに最も適正な範囲は60〜100nmの範囲である。検査の識別顕著性などの実用的な諸事情の見地から粒子径分布がシャープで、均一な金平糖(confeito)状の形態であることがより好ましい。この平均粒子径は、通常、重力的光散乱法(コロイド粒子を、ゾル状体のまま、14000〜5530000×gで回転させて超遠心分離機にかけ、その沈降速度から求める。)により求めることができるが、本発明では、透過型電子顕微鏡(TEM:日本電子(株)製、JEM−2010)により、撮影した投影写真を用いて無造作に100個の粒子を粒子の投影面積円相当径を計測し、その平均値から平均粒径(平均粒子径)を算出する。
【0029】
その金ナノ粒子の粒度分布を見れば、X軸(例えば、金ナノ粒子サイズ)とY軸(例えば、数分率)を決め、平均粒子の分布曲線をプロットすれば、本発明の金ナノ粒子は、その分布曲線の頂点が、通常は40〜120nm、好ましくは50〜110nm、より好ましくは60〜100nmの範囲の粒子サイズに実質的に属しており、分布曲線が比較的狭いということである。これは、粒子サイズが近似した、均一な粒子サイズものが多く存在するということであり、ナノ粒子の挙動が、安定で、信頼値が高く、異物の混在による誤差範囲の発生を抑制する性質を有することが予測される。
定量的には、通常は20〜200nmの範囲に属する金ナノ粒子の総重量は、40%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは80重量%以上存在することが好ましい。残りのものは、成長しないもの、真球状のもの、未反応残渣などから構成される。
【0030】
本発明の色違い金ナノ粒子は、金平糖(confeito)状の形態を有しており、製法の操作を変えると、平均粒子径が20〜200nmの任意のものが得られるが、標識粒子として使用する場合には、平均粒子径として、普通サイズで50〜120nmの範囲のもの、好ましくは55〜100nm程度のものが、特定の標識粒子の色による目視判定の精度を高めることに優れている。この粒子サイズは、いわゆる金平糖(confeito)状の型であるため、多数の突起が形成されていて、その突起を含めた平均粒子径が各50〜200nmの範囲に含まれていることが好ましい。この場合に、突起の数は、核1個につき約1〜20個、好ましくは約4〜10個と多数存在可能ではあるが、突起の長さも影響するので、通常突起の長さは5〜50nm程度である。この突起の数、長さなどは、核の成長に関係するので、予め特定の数や長さを決めることは非常に困難である。
【0031】
この、核に三次元状突起を有する金ナノ粒子、金ナノコロイド粒子を、本発明では、グラフト型、マルチポット型、または金平糖型の金ナノ粒子、または金ナノコロイド粒子と総称している。いわゆる金ナノ粒子、金ナノコロイド粒子の形態として、ナノキューブ、ナノロッド、ナノポット、星型、或いは、核に突起が枝状に三次元に成長したグラフト型というような、図1に見られるような形態をした、グラフト型金ナノ粒子とも呼称する各種の公知の呼称の形状の三次元状突起を有する構造の物の存在が想定できる。さらには本発明の鮮明な青色を呈する金ナノコロイド粒子の形態は、その形状、構造は、防波堤に使用されるテトラポットに類似しているので、その用語を援用すれば、枝1本がグラフト成長したものをモノポット、枝が増えるに従ってジポット、トリポット、テトラポット、ペンタポットなどの各種形態のものを取り得るが、本発明では核に突起が4〜10程度と、比較的多いものが推奨されるので、マルチポットと総称することができる。本発明のマルチポット型金ナノコロイド粒子、または金平糖型金ナノコロイド粒子は、従来型の赤色を呈する真球状金コロイド粒子に比較して広がりに応じた色を呈する。これが青色などの、金ナノコロイド液の色彩の多様化を可能にする。
【0032】
詳細には、本発明の青色金ナノ粒子の典型的な物性値の一態様を示すと、本発明のグラフト型、マルチポット型、または金平糖型の三次元状突起を有する金ナノ粒子の範疇に属するものとは、図1の左図(1a)の金ナノ粒子の形態の一例である。この金ナノ粒子の中心部分は、いわゆる核が存在して、その核上に、突起または枝がグラフト成長したものであり、その成長のグラフト起点が密接であるために、核と突起が一体となったマルチポット型金ナノ粒子、または金平糖型金ナノ粒子のように見える。詳細には、図1の左図(1a)、右図(1b)に見るとおりの形態を有する。図1の金ナノ粒子の例の詳細は、50nm程度の例を示すものであり、図1の例示のものは平均粒子径(DLS)66.5nm、極大吸収波長610nm程度の特性を有する。さらに補足すれば、TEM観察による計測をすれば、金ナノ粒子の平均外径62.2nm、平均核径35.7nm、平均突起13.2nm、突起角50度程度の形態を有するもので、AR(アスペクト比)は1以上である。勿論、本発明の金ナノ粒子の平均外径、平均核径、平均突起、および突起角などは、所定の色違いの生成物を考慮して任意に変えることができる。
【0033】
この色違いの青色金ナノ粒子、青色金ナノコロイドは、多項目診断試薬の開発に有効であり、判定ラインが複数存在する場合に、目視判定する際の誤診断の可能性を無くすることができる。従来の赤色金ナノ粒子と着色ラテックス粒子を他項目の同時測定に用いることも考えられるが、金ナノ粒子とラテックス粒子は粒子サイズが異なるため(汎用されるラテックス粒子は金ナノ粒子より粒子サイズが大きい)、イムノクロマト法で用いる場合は、両方の粒子に適した多孔質のポアサイズを有するイムノクロマト担体を選択することが困難である。そのため、蛋白質などの被標識物質の担持が容易で安価な2種類の色違いの金コロイド粒子を標識物質として用いることが必要とされている。
このような多項目診断試薬における免疫学的測定用標識物質として用いる金ナノ粒子としては、形状の異なる少なくとも二種類の金ナノ粒子から構成されることを特徴とする免疫学的測定用標識物質である。具体的には、球状の赤色金ナノ粒子とグラフト型、マルチポット型、または金平糖型の三次元状突起を有する青色金ナノ粒子の少なくとも2種類から構成されるものが適している。
【0034】
多項目診断試薬における免疫学的測定用標識物質として用いる本発明の金ナノ粒子は、例えば、一つが球状の金ナノ粒子、他方が三次元突起を有する金ナノ粒子というような、形状の異なる少なくとも二種類、または三種類の金ナノ粒子が混在しているような形態のもの(以下、「混在型金ナノ粒子標識物質」ともいう。)を包含する。この場合には、もし形態別に粒度分布を採れば、球状の金ナノ粒子が形成する粒度分布曲線と、三次元突起を有する金ナノ粒子が形成する粒度分布曲線からなる頂点が2個存在する分布曲線を形成することも有り得る。勿論3種類の形態を有する金ナノ粒子が混在すれば、頂点が3個有する粒度分布曲線を描くことができる。本発明において、形態の違いを考慮することなく、少なくとも2種類の金属ナノ粒子の粒度分布を採れば、平均粒子径の比較的小さい金ナノ粒子と平均粒子径が比較的大きい金ナノ粒子が混在することになるから、平均粒子径が20〜220nmの、比較的広範囲のものにならざるを得ない。いずれにせよ、各粒度分布曲線がシャープな山形を形成する方が、所定の金ナノ粒子が多いということになるから、測定の精度を高くすることができる。この混在型金ナノ粒子標識物質の詳細な例を下記に説明をする。
【0035】
本発明の「混在型金ナノ粒子標識物質」の状態を詳細に説明すれば、混在型金ナノ粒子が二種類に認識できる場合、例えば、一つが球状の金ナノ粒子、他方が三次元突起を有する金ナノ粒子の場合を説明すれば、両者の混在割合は標識の検出感度を考慮して、質量%で、10:90〜90:10の範囲で混在させたものが考えられる。球状の金ナノ粒子が40質量%の場合には、三次元突起を有する金ナノ粒子60質量%から構成されるということである。勿論、未反応物、非成長物、不純物のような所定以外のものを除いて算出したものである。
この混在型金ナノ粒子標識物質を構成する、例えば、球状の金ナノ粒子の寸法は、平均粒子径が20〜220nm、好ましくは30〜200nm、より好ましくは40〜150nm程度と比較的大きい粒子である。一方、三次元状突起を有する金ナノ粒子の平均粒子径が20〜200nm程度のものが一応混在し得るが、色彩の鮮明性、色彩に長時間の安定性、コロイドの安定性、標識の精度の向上、信頼性を高めるためには、好ましくは40〜180nm、通常最も好ましくは50〜120nm、さらに最も適正な範囲は60〜100nmの範囲である。
混在型金ナノ粒子標識物質の入手法は、単純に予め製造された所定の平均粒子径を有する球状の金ナノ粒子標識物質と三次元状突起を有する金ナノ粒子標識物質とを、所定割合に混合する手法が挙げられる。
【0036】
本発明の混在型金ナノ粒子標識物質である形状の異なる少なくとも二種類の金ナノ粒子から構成されることを特徴とする免疫学的測定用標識物質とは、免疫測定系において被検出物と結合能を有する検出物質を修飾し、被検出物との結合により標識するための標識試薬を構成する標識物質として用いる金ナノ粒子を少なくとも2種類含有し、
1)2種類の金ナノ粒子両方の平均粒子径が20〜220nmであること、
2)2種類の金ナノ粒子の一方が球状で、他方が三次元状突起を4個以上有する
ことを特徴とする金ナノ粒子、の態様が挙げられる。
このような二種類の、または三種類の混在型金ナノ粒子標識物質は、一度に多様な抗原を、赤、青、のような色違いで、鮮明に識別することができるので、医療現場の検査負担を軽減し、簡便化できるため、その有用性を著しく向上することができる。
【0037】
本発明の色違い金コロイド粒子は、目視で青色を呈する。目視で青色を呈するとは、水などの溶媒中に金コロイド粒を分散した金コロイド溶液が、目視で青色、あるいは青緑や青紫など青色に類する色を呈するものである。具体的には、マンセル表色系での測色値が色相3P〜1P、10PB〜1PB、10B〜1B、10BG〜1BG、10G〜8Gである。赤色との識別力を考慮すると色相10PB〜1PB、10B〜1B、10BG〜1BGが好ましい。測色について例示すると、分光光度測定に用いる石英セル(光路長10mm程度)等にコロイド溶液を充填し、白バック(白画用紙など)で目視にて色調を確認し、市販のマンセル色見本により色相を評価することができる。
【0038】
本発明の色違い金ナノ粒子の製造方法は、水溶液中で第一の金塩を第一の還元剤で還元して金平糖状の核金ナノ粒子を形成する核形成段階、次いで、該核金ナノ粒子の溶液に、第二の金塩と第二の還元剤とを同時に滴下して核金ナノ粒子を成長させてよりサイズの大きい金平糖状の金ナノ粒子を形成させる成長段階とを含み、成長段階は1回以上行うことができる。
成長段階において、より長い突起を持つ金平糖状の金ナノ粒子を形成させたい場合には、第二の還元剤と共に第一の還元剤、即ち、グッドバッファー成分のピペラジン環を有する有機酸との混合物を用いて行なうことを特徴とする。
第二の還元剤と併用する第一の還元剤の使用量は、成長段階で用いる第二の還元剤の使用濃度の仕様にしたがってそれと同一量の程度で使用できる。即ち、使用する第一の還元剤の濃度は、0.01〜100mMの範囲内で達成できる。
【0039】
青色金ナノ粒子の化学種の挙動を解析するために、一実施態様として、成長反応前の核粒子に相当するものを粒子1と称し、「粒子1」0.43mM AuCl、39.0mM HEPESの液を、成長反応後の成長した粒子に相当するものを粒子2と称し、「粒子2」0.05mM AuCl、0.82mM HEPES、0.10mM アスコルビン酸の仕様液を調合してその挙動を解析する。
ピーク波長を変えずに本発明の粒子サイズを大きくした例を示すと、図2に基づいて詳細に説明をすれば、図2の左図(2a)「粒子1」の粒子の吸収スペクトルにおいて、本発明はピーク波長を変えることなく、粒子サイズを、右図(2b)「粒子2」の状態に成長させることができるということを本発明者等が達成できたものである。図2のピーク波長とは、約570〜630nmの範囲を指すものである。
【0040】
本発明の核形成段階で用いる第一の金塩としては、塩化金酸、三臭化金、三フッ化金、三ヨウ化金、三シアン化金、一塩化金、一臭化金、一フッ化金、一シアン化金、ヒドロキシ金オキシド、トリス硝酸金、硝酸金等、これらの塩類、これらの水和物や金の王水溶液を使用できる。上記した以外のものであっても、水溶液中で第一の金塩を生成するものであれば特に限定されるものではない。
【0041】
本発明の核形成段階で用いる第一の還元剤としては、グッドバッファー成分のピペラジン環を有する有機酸を使用することが出来る。例えば、2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸(以下、「HEPES」と略す。)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸(以下、「HEPPS」と略す。)、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−(2−ヒドロキシプロパン−3−スルホン酸)(以下、「HEPPSO」と略す。)、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸(以下、「PIPES」と略す。)、3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]プロパンスルホン酸(以下、「EPPS」と略す。)、ピペラジン−1,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−プロパンスルホン酸)(以下、「POPSO」と略す。)等が挙げられるが、これらに限定されるものでは無い。好ましい還元剤としては、HEPES、HEPPSO、PIPESであり、より好ましい還元剤としては、HEPESである。これらの混合物であっても適宜使用できる。
【0042】
本発明の成長段階で用いる第二の金塩としては、核形成段階で用いる第一の金塩として挙げられた金塩を用いることができ、同一であっても異なっていても差支えない。好ましくは、第一の金塩および第二の金塩として、塩化金酸を用いることができる。
【0043】
本発明の成長段階で用いる第二の還元剤としては、還元性を有する有機酸、例えば、アスコルビン酸およびその誘導体、またはクエン酸およびその誘導体、D(L)−リンゴ酸、D(L)−酒石酸、タートロン酸、ムチン酸等のα−ヒドロキシカルボン酸、乳酸、タンニン酸、還元糖などを用いることができる。好ましくは、アスコルビン酸およびその誘導体、またはクエン酸およびその誘導体である。最も好ましくは、アスコルビン酸およびその誘導体である。これらの混合物であっても使用可能である。
【0044】
アスコルビン酸およびその誘導体としては、アスコルビン酸(塩)、その異性体、類似物およびその誘導体などで、還元性を有するものであれば使用可能である。例えば、L(またはD)−アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、エリソルビン酸、スコルバミン酸、デヒドロイソアスコルビン酸、デオキシアスコルビン酸、クロロデオキシアスコルビン酸等のハロゲン化デオキシアスコルビン酸、エチルアスコルビン酸等のアスコルビン酸アルキルエステル、アスコルビン酸ナトリウム等のアスコルビン酸アルカリ金属塩、アスコルビン酸カルシウム等のアスコルビン酸アルカリ土類金属塩、などが挙げられる。特に、L(またはD)−アスコルビン酸(塩)、イソアスコルビン酸が好ましく用いられる。これらの混合物であっても適宜使用できる。
【0045】
クエン酸およびその誘導体としては、クエン酸(塩)、その異性体、類似物およびその誘導体などで、還元性を有するものであれば使用可能である。例えば、クエン酸、イソクエン酸、クエン酸無水物、イソクエン酸無水物、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム等のアルカリ金属塩、クエン酸アンモニウム等のアンモニウム塩、クエン酸カルシウム等のアルカリ土類金属塩、メチルクエン酸、エチルクエン酸等のクエン酸アルキルエステル、などが挙げられる。特に、クエン酸、クエン酸ナトリウムが好ましく用いられる。これらの混合物であっても適宜使用できる。
【0046】
本発明の核形成段階における反応温度は、0〜40℃、好ましくは10〜30℃(室温)、より好ましくは15〜25℃で、30分〜5時間反応を行なう。40℃を超えると球状粒子が増し、収率が低下する。0℃未満にしても収率の増加はなく、技術的に無意味になり、経済的でなく無駄となる。
核形成段階において使用する第一の還元剤の濃度は、1〜150mM、好ましくは30〜100mMが使用できる。150mMを超えると必要以上の濃度となり、技術的に無意味になり、経済的でなく無駄となる。1mM未満では還元剤の機能が弱すぎて核形成反応が十分でなくなる。
核形成段階において使用する第一の金塩の濃度は、0.1〜100mM、好ましくは1〜50mM、より好ましくは5〜25mMが使用できる。
核形成段階で上記濃度範囲の第一還元剤と上記濃度範囲の第一金塩を反応させて得られる金コロイド溶液の金の濃度が、最終的に0.1〜100mMとなるような範囲で反応させる。
【0047】
本発明の成長段階における反応温度は、0〜40℃、好ましくは10〜30℃(室温)、より好ましくは15〜25℃であり、1〜10時間反応を行なう。40℃を超えると球状粒子に移行する傾向がみられ、収率が低下すると共に、極大吸収波長が570nm未満となり、短波長側に移行する。0℃未満にしても効果に繋がるものはなく、無駄となる。
【0048】
本発明の金ナノ粒子の合理的な合成方法を鋭意検討した段階で、特に未還元塩化金酸の量を減らすことができないかという点から考察した結果を、図4に基づいて詳細に説明をする。反応温度、反応速度を変えることで、未還元塩化金酸の量の関係を調べると、反応温度を低く設定すれば、より青味を増すことができるということに関係する挙動を示すことを知見した。図4によれば、反応温度は、約10〜35℃程度にすることが最適であることがわかる。
同様に図4に基づいて説明をすれば、図4の左図(4a)は、各種反応温度10℃、20℃、30℃および40℃における波長(nm)の関係を調べたものである。40℃以上にすれば、青色から赤色に移行する傾向を示す。いわゆる反応温度を高くすれば、金ナノコロイド粒子が赤味を増す傾向を示す。一方、反応温度を低くすれば、金ナノコロイド粒子は青味を増す傾向にある、詳細には、図4の右図(4b)に見るとおり、例えば、波長600nm程度の金ナノコロイド粒子を収得する場合には、約10〜30℃、最適温度として15〜25℃の反応温度を設定すれば容易に達成できる。
【0049】
本発明の成長段階で用いるアスコルビン酸およびその誘導体のような、第二の還元剤の濃度は、0.01〜100mM、好ましくは1〜50mM、より好ましくは5〜25mMが使用できる。
成長段階におけるアスコルビン酸およびその誘導体の最適量を吟味すれば、図5に見るとおり、青色の金コロイドを発色させるためには、アスコルビン酸濃度は0.02〜0.07(質量%)と一応広範囲に使用できるが、青色波長との関係で見れば、アスコルビン酸濃度は、0.075〜0.15mMが最適条件であることがわかり、この範囲は技術的に臨界性のある値であることは本発明者等の知見に基づくものである。
【0050】
本発明の成長段階で用いる第二の金塩の濃度は、0.1〜100mM、好ましくは、0.2mM〜20mMが使用できる。
本発明の成長段階で用いる第二の還元剤のモル濃度は、添加した該核金ナノ粒子のモル濃度に対して、5〜500倍の範囲、より好ましくは25〜250倍の範囲が使用できる。本発明の成長段階で用いる第二金塩のモル濃度は、添加した該核金ナノ粒子のモル濃度に対して、0.1〜10倍の範囲、より好ましくは0.5〜5倍の範囲である。
第二の金塩と第二の還元剤とは、核形成段階で合成した金コロイド溶液中に、それぞれ0.1〜3.0ml/分、好ましくは0.3〜1.5ml/分、特に好ましくは0.5〜1.0mL/分の速度で同時的に滴下する。
【0051】
本発明における免疫学的測定方法とは、生体分子が持つ親和力に由来する免疫学的に特異的な結合反応に基づく測定方法であり、例えば、免疫染色法、凝集法、ELISA法、イムノクロマト法などが知られている。このような親和力に基づく結合としては、抗原と抗体との結合が代表的なものであり、免疫学的測定法で広く利用されるが、このような結合のみならず、本発明では、糖とレクチンとの結合、ホルモンと受容体との結合、酵素と阻害剤との結合、核酸と相補的な核酸、核酸と核酸との結合能を有する蛋白質との結合なども利用できる。免疫反応免疫学的反応の形態としては、例えば、「固相抗体−抗原−標識抗体(標識試薬)」のようなサンドイッチ形式で複合物を作らせ抗原を捕捉し検出するサンドイッチ法や、固相化抗原と検体中の遊離抗原が反応系内に添加された一定量の標識抗体(標識試薬)に対して競合的に反応することを原理とする競合法等が用いられる。その中でも、抗原と抗体によるサンドイッチ反応を利用するアッセイ法であって、最も簡便な手法は、クロマトグラフィーを用いたイムノクロマト法である。イムノクロマト法は、操作が簡単で検出時間も短く、目視判定が可能であるため、汎用されている。
【0052】
本発明の青色金ナノ粒子は、各種イムノクロマト試薬に使用した場合の検出感度において優れていることを、図6に基づいて説明をする。図6の結果は、実施例8に記載のインフルエンザB型ウイルスのイムノクロマトグラフィー検出と同様の試験で、イムノクロマトリーダーにより発色強度を測定した結果である。「粒子1」は実施例1の核形成段階のみから形成される青色金コロイド粒子懸濁液を標識物質として用いた系であり、「粒子2」は実施例1の核形成段階及び成長段階を経て形成される青色金コロイド粒子懸濁液を標識物質として用いた系である。抗原は、60μg/mlで抗原を含有する水溶液を、「粒子1」では400倍に希釈し、「粒子2」では2400倍に希釈しそれぞれ用いた。「粒子1」(抗原希釈倍率1400倍)と、「粒子2」(抗原希釈倍率2400倍)とを比較すれば、粒子2が、色が鮮明であることが判る。この理由は、粒子2の被表面積が広い為と予測されるが、原因は多岐にわたり、正確に特定することはできないが、本発明のものは、検出感度が卓越しており、イムノクロマト試薬による目視判定の精度を著しく向上させる効果を有する。
【0053】
本発明の検出対象物を含む試料(検体)としては、例えば、主として生体試料、即ち、血液、血清、血漿、尿、唾液、髄液、汗、涙、羊水、乳頭分泌液、鼻汁、痰、鼻腔又は咽頭拭い液、皮膚からの浸出液、組織や細胞及び糞便からの抽出物等々が挙げられる。
【0054】
本発明の検出対象物としては、それと特異的に結合する、例えば、抗原−抗体反応や核酸と相補的な核酸のように特異的に結合する物質が存在するもしくは製造できるものであればよく、特に限定されない。検出対象物が完全抗原といったそれ自体が抗原性を有するものであっても、もしくはハプテン(不完全抗原)といったそれ自体が抗原性を有しなくても化学的変成物とすることにより抗原性を持つに至るものであってもよい。これらの検出対象物と特異的に結合する物質が存在するもしくは製造できるものであればよく、モノクローナル抗体若しくはポリクローナル抗体とすることができる。本発明の検出対象物を例示すれば、ペプチドホルモン(成長ホルモン(GH)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、メラミン細胞刺激ホルモン(MSH)、プロラクチン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、下垂体ホルモン、カルシユウム代謝調節ホルモン、膵ホルモン、消化管ホルモン、血管作用ホルモン、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)等の胎盤ホルモン、前立腺性酸性フォスファターゼ(PAP)、前立腺特異抗原(PSA)、アルカリ性フォスファターゼ、トランスアミナーゼ、トリプシン、ペプシノーゲン、α−フェトプロテイン(AFP)、ガン胎児性抗原(CEA)等のガン特異物質、免疫グロブリンG(IgG)等の血清蛋白成分、リュウマチ因子、セロトニン、ウロキナーゼ、フェリチン、サブスタンP、エストロン等の卵胞ホルモン、便潜血、梅毒抗体、インフルエンザウィルス、アデノウィルス、RSウィルス、ロタウィルス、HBs抗原、HBs抗体、クラミジア抗原、A群β溶連菌抗原等の細菌抗原、プロゲストロン等の天然又は合成黄体ホルモン、テストステロン等の男性ホルモン、コルチゾール等の副腎皮質ホルモン、コレステロール、胆汁酸、強心性ステロイド、サポゲニン等のその他のステロイド類、エピネフリン、ドーパミン、生理活性アルカロイド類、アミノ基含有向精神薬類、TRH等の低分子ペプチド類、ジヨードサイロニン等の甲状腺ホルモン類、プロスタグランジン類、ビタミン類、ペニシリン等の抗生物質類、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、それらの増幅物、その他生体内成分、生体内投与薬物およびその代謝産物等の他、豚肉、牛肉、鶏肉、卵等々の食品やそれらを含む食品等の抽出液等々が挙げられる。好ましい検出対象物としては、ウイルスに対して用いられ、特に、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルスに対して、より好ましく用いられる。
【0055】
本発明の最適な検体は、鼻汁、鼻腔拭い液、咽頭拭い液又は痰である。これらの検体を展開液を使用して予め希釈処理することにより、呼吸器疾患患者から採取される抗原(ウイルス:主にインフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルス)を被検出物質として的確に検出することができる。
【0056】
本発明で使用するイムノクロマトグラフィー用展開液としては、通常、溶媒として水を用い、これに緩衝剤、塩、ブロッキング剤および非イオン界面活性剤を加える。加える順序は特に特定されず、同時に加えても差支えない。展開液として用いる場合には、検出する試料(検体試料)と展開液を予め混合したものを、サンプルパッド(試料添加部分)上に供給・滴下して展開させることもできるし試料によっては先に試料をサンプルパッド(試料添加部分)上に供給・滴下して後、展開液をサンプルパッド(試料添加部分)上に供給・滴下して展開させてもよい。
【0057】
本発明のイムノクロマトグラフィー用展開液に用いる緩衝剤としては、試料の添加や試料の蒸発や希釈による濃度の変化、外部からの多少の異物の混入によっても致命的な影響を生じない作用(緩衝作用)を持つものであれば特に制限はない。
本発明において、緩衝剤としては、酢酸緩衝液(酢酸+酢酸ナトリウム)、リン酸緩衝液(リン酸+リン酸ナトリウム)、クエン酸緩衝液(クエン酸+クエン酸ナトリウム)、ホウ酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液(トリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタン+塩酸)、TE緩衝液(トリス+エチレンジアミン四酢酸)、TAE緩衝液(トリス+酢酸+エチレンジアミン四酢酸)、TBE緩衝液(トリス+ホウ酸+エチレンジアミン四酢酸)又はHEPES緩衝液(2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルフォン酸)等のグッドバッファー等が挙げられる。好ましくは、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液などであり、より好ましくは、トリス塩酸緩衝液である。
【0058】
本発明のイムノクロマトグラフィー用展開液に用いる塩としては、酸と塩基の反応により得られた塩であれば特に制限はない。例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどが挙げられる。好ましくは、塩化ナトリウムである。
【0059】
本発明のイムノクロマトグラフィー用展開液に用いる非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(商品名「Tween」シリーズ)、ポリオキシエチレンp−t−オクチルフェニルエーテル(商品名「Triton」シリーズ)、ポリオキシエチレンp−t−ノニルフェニルエーテル(商品名「TritonN」シリーズ)、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテル等を挙げることができる。非イオン性界面活性剤は、単独でも2種以上を混合しても用いることが出来る。
【0060】
本発明のイムノクロマトグラフィー用展開液には、生物学的親和性に基づく副反応を抑制したり、非特異的反応を抑制することが公知の添加剤、例えば、抗原抗体反応の促進あるいは非特異的反応を抑制するためのブロッキング剤として蛋白質(例えば、牛血清アルブミン、ゼラチン、カゼイン等)、高分子化合物(例えば、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストラン等)、イオン性界面活性剤又はポリアニオン(例えば、デキストラン硫酸、ヘパリン、ポリスチレンスルホン酸、コンドロイチン硫酸等)、あるいは、抗菌剤等々の1種もしくは2種以上を添加して使用することも可能かつ有効であって、何ら妨げるものではない。また、これらの抗原抗体反応の促進あるいは非特異的反応を抑制するための蛋白質、高分子化合物、イオン性界面活性剤又はポリアニオン、あるいは、抗菌剤等々の1種もしくは2種以上を、固定相を構成するクロマトグラフィー媒体上の、移動相の移動経路上に保持させておくことも可能かつ有効であって、何ら妨げるものではない。
【0061】
検体中の被検出物質を検出するためのイムノクロマトグラフィー装置は、その構造およびその動作・検出手法は、公知である。通常は、試料添加部位(1)、標識物質保持部位(2)、クロマトグラフィー媒体(3)、検出部位(4)(「判定部」ともいう)、吸収部位(5)およびバッキングシート(6)から構成されている。
従来のイムノクロマトグラフィー装置のサンプルパッド中へ、展開液を使用して予め検体を希釈処理して得られた検体試料を滴下して、イムノクロマトグラフィー媒体上を吸収部位の方向へ展開させて、抗原抗体反応により検体中の被検出物質の同定・定量等の検査をすることができる。
【0062】
イムノクロマトグラフィー装置について、以下に説明をする。
試料添加部位(1)は、試料が迅速に吸収されるが、保持力は弱く、速やかに反応部へと試料が移動していくような性質の、ガラス濾紙等の多孔質シートで構成されている。
【0063】
標識物質保持部位(2)には、標識成分によって試薬成分を標識した標識試薬を保持させてなる。標識成分としては、金属コロイド粒子、ラテックス粒子、酵素、蛍光化合物等々があり、なかでも金属コロイド粒子が最適である。試薬成分としては、分析物を認識する能力を有する粒子又は分子であり、好ましくはモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体若しくはそのフラグメントである(第二試薬)。
【0064】
クロマトグラフィー媒体(3)は、膜担体上に検出部位(4)を作成したものである。膜担体としては、毛細管現象により試料検体を吸収し移動させることができるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ナイロン、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ガラス繊維、ポリオレフィン、セルロース、これらの混合繊維からなる人工ポリマーからなる群から選択される。
【0065】
検出部位(4)には、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体若しくはそのフラグメント(第一試薬)が、ニトロセルロースのシート上に担持固定されている。
吸収部位(5)は、過剰の試料を迅速に吸収する能力を有する材料、ガラス濾紙等が用いられる。
バッキングシート(6)は、基材である。片面に粘着剤を塗布したり、粘着テープを貼り付けることにより、片面が粘着性を有し、該粘着面上に試料添加部位(1)、標識物質保持部位(2)、クロマトグラフィー媒体(3)、検出部位(4)、および吸収部位(5)の一部または全部が密着して設けられている。バッキングシート(6)は、粘着剤によって試料液に対して不透過性、非透湿性となるようなものであれば、基材としては、特に限定されない。
【0066】
検出部位(4)に用いる試薬成分(第一試薬)および標識試薬に用いる試薬成分(第二試薬)は、その一方又は両方がモノクローナル抗体であってもよいし、ポリクローナル抗体であってもよいが、標識試薬に用いる試薬成分(第二試薬)は、測定感度等の点から特異性の高いモノクローナル抗体が好ましい。検出部位(4)に用いる試薬成分(第一試薬)としては、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でも良い。
【0067】
モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体若しくはそのフラグメントは、公知であり、入手可能であり、公知の方法により調整することができる。抗体産生動物種としては、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ等々である。免疫グロブリンとしては、IgG、IgM、IgA、IgE、IgDのいずれでも良い。
モノクローナル抗体は、常法に従って、抗原(例えば、インフルエンザAウイルス)で免疫したマウスの脾臓細胞と骨隋腫細胞をハイブリッドさせ、目的とする抗体を産生するハイブリドーマを選択し、このハイブリドーマから産生されてくるモノクローナル抗体を収得する。例えば、ケーラーとミルスタインの技法(Nature 256(1975)495−497)を参照。
ポリクローナル抗体は、常套手法により、抗原(例えば、インフルエンザAウイルス)を産生動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ウマ等)に免疫して得た抗血清中から目的とする抗体を分離することにより得られる。
【0068】
本発明の実施例においては、標識試薬に用いる試薬成分(第二試薬)としては、マウス由来抗インフルエンザAモノクローナル抗体を用い、検出部位(4)に用いる試薬成分(第一試薬)としては、マウス由来抗インフルエンザAモノクローナル抗体を用いた場合を記載しているが、これに限定されるものではない。マウス由来抗インフルエンザAポリクローナル抗体を用いることもできる。
【0069】
判定の原理を概説すると、
1.検体試料(検体を展開液で希釈処理したもの)を、サンプルパッド(1)上に、所定量(通常、0.1〜2ml)滴下する。検体試料が滴下されると、検体試料はサンプルパッド(1)に迅速に吸収されるが、速やかに試料と共に移動を始める。サンプルパッド(1)中にイムノクロマトグラフィー用試薬組成物が含浸されていた場合には、含浸されていたイムノクロマトグラフィー用試薬組成物は、検体試料の水分に溶解し、検体試料と共に移動を始める。
2.検体試料は、まず標識物質保持部位(2)へと移動する。ここを検体試料が通過する際、標識物質保持部位(2)に保持されていた標識試薬(第二試薬)が試料の水分に溶解し、試料と共に移動する。
【0070】
3.ついで、検体試料の水分に溶解した標識試薬は、クロマトグラフィー媒体(3)上の検出部位(4)を通過する。ここでは、検体試料中に溶解しているイムノクロマトグラフィー用試薬組成物により非特異的結合反応は抑制され、抗原・抗体の特異的結合反応により、検体試料中に被検出物質(例えば、抗原)が存在する場合には、検出部位(4)に担持固定されている抗体と標識試薬とによってサンドイッチ状に挟まれるように特異的に反応結合して、検出部位(4)が着色する。検体試料中に被検出物質(例えば、抗原)が存在しない場合には、試料の水分に溶解した標識試薬は、クロマトグラフィー媒体(3)上の検出部位(4)を通過しても特異的結合反応が起こらないので、検出部位(4)が着色しない。
4.最後に、試料の水分は、吸収部位(5)へと移動する。
このように、検体試料中の被検出物質(例えば、抗原)の有無を正確に判定することができる。
【0071】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、
(i)平均粒子径の測定
重力的光散乱法(コロイド粒子を、ゾル状体のまま、14000〜5530000×gで回転させて超遠心分離機にかけ、その沈降速度から求める。)により求めることができるが、本発明では、動的光散乱(DLS)測定器Zetasizer Nano ZS(マルバーン社製)により平均粒子径を算出する。また、透過型電子顕微鏡(TEM:日本電子(株)製、JEM−2010)により、撮影した投影写真を用いて無造作に100個の粒子を粒子の投影面積円相当径を計測し、その平均値から平均粒径(平均粒子径)を算出することもできる。尚、平均核径も同様にTEM投影写真を用いて無造作に100個の粒子を粒子の投影面積円相当径による平均値から算出され、平均突起長(グラフトの平均長さ)は、前記平均粒子径と平均核径の差分を2で除することで算出される。
(ii)極大吸収波長の測定
紫外可視分光光度計JASCO V−530(装置名、(株)島津製作所社製)を用い測定する。測定は、波長800〜200nm、バンド幅0.5nm、石英セル光路長10mmの条件で行い、その測定により得られるスペクトルの極大値の波長を極大吸収波長とする。
【0072】
[実施例1]
この実施例では、核形成段階において、第一の金塩である塩化金酸を第一の還元剤であるHEPESで還元し、金平糖状の核コロイドを形成した。その後、成長段階では、第二の金塩である塩化金酸と、第二の還元剤であるL−アスコルビン酸とを同時に滴下してよりサイズの大きい金平糖状の金コロイドを形成させた。
【0073】
[核形成段階]
10ml蓋付ガラス容器に、4×10−2mol/L HEPES pH7.8を10ml添加し、液温25℃となるまで恒温槽内で保持した。一方、塩化金酸四水和物0.7g(1.6×10−2mol)を超純水100mlに溶解させ、液温4℃になるまで氷上で保持した。HEPES水溶液、塩化金酸水溶液共に液温が安定したら、塩化金酸水溶液0.3mlをHEPES水溶液に滴下し、25℃恒温槽に1時間静置した。これにより、突起を含めた平均粒子径が43nm程度の、ほぼ金平糖型、グラフ型またはマルチポット型(突起数1〜8)程度の金ナノコロイド粒子が製造された。コロイド溶液の単位体積(0.1ml)当たりの収率は91%程度のものができた。残りのものは、真球状のもの、未反応物、などと推定できる。
【0074】
[成長段階]
上記方法によって形成した金濃度4.0×10−4mol/Lの核コロイド5mlを、500mlの三口フラスコに入れ、液温が20℃になるまで恒温槽内で攪拌した。液温が安定したら、塩化金酸四水和物1.5×10−2g(4.0×10−5mol)を超純水116mlに溶解させた塩化金酸水溶液と、L−アスコルビン酸4.2×10−2g(2.4×10−4mol)を超純水116mlに溶解させたL−アスコルビン酸水溶液116mlとを、1.0ml/minの速度で同時に滴下して、2時間攪拌しながら反応させて、成長段階を行なった。滴下終了後、三口フラスコを恒温槽から取り出し、冷蔵庫で一晩静置した。得られた金ナノ粒子は、平均粒子径(DLS)約66.5nm程度、TEM観察による計測は、平均核径が約35.7nm程度であり、平均突起は13.2nm、突起数平均4以上、突起角50度程度、ARは1以上のものが生成された。得られた金コロイドの溶液は、青色(目視によるマンセル表色系測色値:色相5B付近)、極大吸収波長は610nmであった。
【0075】
[実施例2]
この実施例では、より長い突起を持つ金平糖状の金コロイドの合成を目的として行なった。
実施例1の核形成段階で形成した4.0×10−4mol/Lの核コロイド5mlを、500mlの三口フラスコに入れ、液温が20℃になるまで恒温槽内で攪拌した。液温が安定したら、塩化金酸四水和物1.5×10−2g(4.0×10−5mol)を超純水116mlに溶解させた塩化金酸水溶液と、L−アスコルビン酸4.2×10−2g(2.4×10−4mol)とHEPES 0.11g(4.0×10−3mol)を超純水116mlに溶解させたL−アスコルビン酸HEPES水溶液116mlとを、1.0ml/minの速度で同時に滴下して、2時間攪拌しながら反応させて、成長段階を行なった。滴下終了後、三口フラスコを恒温槽から取り出し、冷蔵庫で一晩静置した。
得られた金ナノ粒子は、突起を含めた平均粒子径(DLS)約98nm程度、TEM観察による計測は、より長い突起を持つ金平糖状の金コロイドがより多く生成されているものと推定される。平均核径が約65.7nm程度であり、成長した突起(グラフト)の平均長さは約16.7nm程度、突起数平均4以上、突起角50度程度、ARは1以上のものが生成された。得られた金コロイドの溶液は、青緑色(目視によるマンセル表色系測色値:色相8BG付近)、極大吸収波長は641nmであった。
【0076】
[実施例3]
実施例1において、成長段階の液温を10℃にした以外は、実施例1と同様にして、金コロイドを合成した。得られた金コロイド溶液の極大吸収波長を表1に示す。
実施例1の核形成段階で形成した4.3×10−4mol/Lの核コロイド5mlを、500mlの三口フラスコに入れ、液温である成長温度を10℃になるまで恒温槽内で攪拌した。液温が安定したら、塩化金酸四水和物1.7×10−2g(4.2×10−5mol)を超純水116mlに溶解させた塩化金酸水溶液と、L−アスコルビン酸4.2×10−2g(2.4×10−4mol)を超純水116mlに溶解させたL−アスコルビン酸水溶液116mlとを、1.0ml/minの速度で同時に滴下して、2時間攪拌しながら反応させて、成長段階を行なった。滴下終了後、三口フラスコを恒温槽から取り出し、冷蔵庫で一晩静置した。
得られた金ナノ粒子は、突起を含めた平均粒子径(DLS)が約67nm程度、TEM観察による計測では、平均核径が51.0nmであり、成長した突起(グラフト)の平均長さは8.0nm程度、突起数平均4以上、突起角50度程度、ARは1以上のものが生成された。得られた金コロイドの溶液は、青色(目視によるマンセル表色系測色値:色相5PB付近)、極大吸収波長は587nmであった。
【0077】
[実施例4]
実施例1において、成長段階の液温を30℃にした以外は、実施例1と同様にして、ほぼ金平糖型、グラフ型またはマルチポット型(突起数2〜4)程度の三次元状突起を有する金コロイドナノ粒子を合成した。
得られた金ナノ粒子は、突起を含めた平均粒子径(DLS)60.5nm程度、TEM観察による計測であり、成長した突起(グラフト)の平均長さは7.5nm程度、突起数平均4以上、突起角50度程度、ARは1以上のものが生成された。得られた金コロイド溶液の極大吸収波長は586.5nmであった。
結果を表1に示す。
【0078】
[比較例1]
実施例1において、成長段階の液温を40℃にした以外は、実施例1と同様にして、金コロイドを合成した。得られた金コロイド溶液の極大吸収波長を表1に示す。
成長段階の温度を40℃にしたものであり、突起を含めた平均粒子径(DLS)約53nm程度、TEM観察による計測では、平均核径が45nmであり、成長した突起(グラフト)の平均長さは4nm程度、突起数平均4以上、突起角10度程度、のものが生成された。マルチポット型(突起数2〜4)の三次元状突起がやや丸みを帯びた金コロイド粒子が製造された。残りは、真球状のもの、未反応物、などと推定できる。得られた金コロイドの溶液は、赤味を帯び(目視によるマンセル表色系測色値:色相10RP付近)、極大吸収波長が530nmであった。
【0079】
[比較例2]
実施例1において、成長段階のアスコルビン酸量を2.1×10−2g(1.2×10−4mol)にした以外は、実施例1と同様にして、金コロイドを合成した。得られた金コロイド溶液の極大吸収波長を表1に示す。
実施例1の核形成段階で形成した4.3×10−4mol/Lの核コロイド5mlを、500mlの三口フラスコに入れ、液温である成長温度が30℃になるまで恒温槽内で攪拌した。液温が安定したら、塩化金酸四水和物1.7×10−2g(4.2×10−5mol)を超純水116mlに溶解させた塩化金酸水溶液と、L−アスコルビン酸2.1×10−2g(1.2×10−4mol)を超純水116mlに溶解させたL−アスコルビン酸水溶液116mlとを、1.0ml/minの速度で同時に滴下して、2時間攪拌しながら反応させて、成長段階を行なった。滴下終了後、三口フラスコを恒温槽から取り出し、冷蔵庫で一晩静置した。
得られた金ナノ粒子は、突起を含めた平均粒子径が約48nm程度のものが生成された。
得られた金コロイドの溶液は、極大吸収波長は536.3nmで赤味を帯びたものであった。
【0080】
[比較例3]
実施例1において、成長段階のアスコルビン酸量を、8.4×10−2g(4.8×10−4mol)にした以外は、実施例1と同様にして、金コロイドを合成した。得られた金コロイド溶液の極大吸収波長を表1に示す。
成長段階温度30℃にしたものであり、核平均直径が60.2nm、平均粒子径が70.2nmであった。得られた金コロイドの溶液は、極大吸収波長が550.0nmで橙味を帯びたものであった。
【0081】
[実施例5]
実施例2のHEPESに換えHEPPSOを用いたこと以外は、実施例2と同様にして、平均粒子径が約72nmである金コロイド粒子を作成した。得られた金コロイドの溶液は、青色(目視によるマンセル表色系測色値:色相1B付近)を呈し極大吸収波長は632nmであった。
【0082】
[実施例6]
実施例2のHEPESに換えPIPESを用いたこと以外は、実施例2と同様にして、平均粒子径が約81nmである金コロイド粒子を作成した。得られた金コロイドの溶液は、青色(目視によるマンセル表色系測色値:色相3B付近)を呈し極大吸収波長は626nmであった。
【0083】
[実施例7]
実施例2において、成長段階のアスコルビン酸に換えL−アスコルビン酸Naを 4.7×10−2グラム(2.4×10−4mol)用い、HEPESの量を0.22g(8.0×10−3mol)用いたこと以外は、実施例2と同様にして、金コロイド溶液を合成した。
得られた金コロイド粒子の突起を含めた平均粒子径(DLS)は約82nm程度、平均核径が約48nm程度であり、成長した突起(グラフト)の平均長さは約20nm程度、突起数平均4以上、突起角50度程度、ARは1以上のものが生成された。得られた金コロイド溶液は、紺色(目視によるマンセル表色系測色値:色相5PB付近)、極大吸収波長は752nmという、若干高い波長のものができる。
【0084】
以上の実施例1〜7および比較例1〜3の測定結果を表1にまとめて表示する。
【0085】
【表1】

【0086】
実施例1において、成長段階のアスコルビン酸に換えクエン酸を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、金コロイド溶液を合成した。
得られた金コロイド粒子の突起を含めた平均粒子径(DLS)、平均核径は同等程度であり、成長した突起(グラフト)の平均長さ、平均突起数、突起角度は同等程度であり、ARは1以上のものが生成された。得られた金コロイド溶液は各実施例のものと同等程度のものが得られた。これにより、
本発明の成長段階で用いる第二の還元剤としては、還元性を有する有機酸、例えば、アスコルビン酸およびその誘導体、またはクエン酸およびその誘導体、以外の例えば、D(L)−リンゴ酸、D(L)−酒石酸、乳酸、タンニン酸、還元糖などを用いて実施すれば、生成する金コロイド溶液には、若干の違いがあるが、一応本発明の目的とする所定の範囲内の特性を有するものが製造できる。それらの各酸の無機または有機塩を用いて、上記実施例7等の方法に従って実施すれば、所定の金コロイド溶液を収得することができる。
【0087】
以下、本発明の有効性を実験例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<イムノクロマトグラフによるウイルス検出の実験例>
[実施例8]
【0088】
1.クロマトグラフ媒体上への反応部位の作製
ニトロセルロース膜(ミリポア社製:HF120)に、抗体塗布機(BioDot社製)を用いて、5重量%のイソプロピルアルコールを含むリン酸緩衝(pH7.4)で1.0mg/mLの濃度になるように希釈した抗インフルエンザウイルスAモノクローナル抗体を展開方向上流側(表2:ライン1)に、抗インフルエンザウイルスBモノクローナル抗体を前記抗インフルエンザAモノクローナル抗体の下流側(表2:ライン2)に塗布し、50℃で30分間乾燥させた。乾燥後、室温で一晩乾燥させ、クロマトグラフ媒体上へ反応部位を作製した。
【0089】
2.標識物質溶液1の作製
前記実施例1で作成された青色金コロイド懸濁液0.5mLに、リン酸緩衝(pH7.4)で0.1mg/mLの濃度になるように希釈した抗インフルエンザウイルスBモノクローナル抗体を0.1mL加え、室温で10分間静置した。次いで、10重量%の牛血清アルブミンを含むリン酸緩衝液(pH7.4)を0.1mL加え、十分撹絆した後、8000×gで15分間遠心分離を行った。上清を除去した後、1重量%の牛血清アルブミンを含むリン酸緩衝液(pH7.4)0.1mLを加え、標識物質溶液1とした。
【0090】
3.標識物質溶液2の作製
金コロイド懸濁液(田中貴金属工業社製:平均粒子径40nm)0.5mLに、リン酸緩衝(pH7.4)で0.1mg/mLの濃度になるように希釈した抗インフルエンザウイルスAモノクローナル抗体を0.1mL加え、室温で10分間静置した。次いで、10重量%の牛血清アルブミンを含むリン酸緩衝液(pH7.4)を0.1mL加え、十分撹絆した後、8000×gで15分間遠心分離を行った。上清を除去した後、1重量%の牛血清アルブミンを含むリン酸緩衝液(pH7.4)0.1mLを加え、標識物質溶液2とした。
【0091】
4.クロマトグラフ媒体の作製
上記作製した標識物質溶液1及び2をグラスファイバー製パッドに均一になるように添加した後、真空乾燥機にて乾燥させ、検出試薬保持部材とした。次いで、バッキングシートから成る基材に、上記調製したクロマトグラフ媒体、検出試薬保持部材、試料を添加する部分に用いるサンプルパッド、および展開した試料、不溶性担体を吸収するための吸収パッドを貼り合わせた。最後に、裁断機で幅が5mmとなるように裁断し、クロマトグラフ媒体を作製した。
【0092】
5.測定
上記作製したクロマトグラフ媒体を用いて、以下の方法で試料中のインフルエンザウイルスA(表2:抗原A)及びインフルエンザウイルスB(表2:抗原B)の有無を測定した。即ち、0.5%Tween20、0.6%ポリビニルピロリドン(PVP)K−90
( 分子量 36万)、1.0%牛血清アルブミンと150mM塩化ナトリウムを含むトリス緩衝溶液(pH8.0)から成る展開液を陰性検体試料とし、ここに不活化処理した蛋白濃度がそれぞれ25ng/mLのインフルエンザウイルスAおよび/またはインフルエンザウイルスBを加えたものを陽性検体試料とし、各々150μLをクロマトグラフ媒体のサンプルパッド上に載せて展開させ、15分後に目視判定をした。反応部位におけるテストライン(ライン1及び2)の発色シグナルを明確に確認できるものを「+」、発色シグナルは確認できるが、非常に色が薄いものを「±」、発色シグナルを確認できないものを「−」とした。実施例5の結果を表2に示す。
【0093】
【表2】

【0094】
本発明の金平糖状の金コロイド粒子を、従来から汎用されている金属コロイド粒子、例えば、球状の金コロイド粒子と組み合わせて免疫学的測定、特にイムノクロマトグラフィー測定用の標識剤として用いることにより、生体試料中に含まれる別々の被検出物質をそれぞれに反応部位におけるテストライン(ライン1及び2)の別々の発色シグナルとして、明確かつ高感度に、誤認することなく検出することができた。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の色違い金コロイド粒子は、青色ないしは青緑色であって、保護コロイド形成剤やアンモニウム塩などを含まないため毒性が無く、金が健康に良いため、顔料や、化粧品、免疫学的測定用の標識剤、細胞化学的マーカー、タンパク質染色剤として利用が可能である。 特に、免疫学的測定用の標識剤として、2本以上の発色ラインを有するイムノクロマト試験において、
1) 上記金コロイド粒子の球状の核に4〜20の突起が形成されていること
2) 上記金コロイド粒子の平均粒子径が20〜200nmであること
を特徴とする目視の青色によって検出対象物を標識し識別する為の金コロイド粒子を利用することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0096】
【特許文献1】特開2003−262638号公報
【特許文献2】特開2005−233744号公報
【特許文献3】特開平6−116602号公報
【特許文献4】特開2007−321232号公報
【特許文献5】特開2008−164403号公報
【特許文献6】特開平10−132817号公報
【特許文献7】特表2008−545884号公報
【特許文献8】特表2009−501786号公報
【特許文献9】特開2006−118036号公報
【非特許文献】
【0097】
【非特許文献1】Chem.Mater.2007,19,2823−2830

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が20〜200nmの金ナノ粒子から構成されてなる青色金ナノ粒子。
【請求項2】
極大吸収波長が570〜800nmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の青色金ナノ粒子。
【請求項3】
粒子の形態がグラフト型、マルチポット型、または金平糖型の三次元突起部を有する金ナノ粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載の青色金ナノ粒子。
【請求項4】
金ナノ粒子からなる核の外周を成長させることにより形成されてなる請求項1〜3のいずれかに記載の青色金ナノ粒子。
【請求項5】
平均粒子核サイズが20〜60nm、核突起部を含めた平均粒子径が50〜120nmの範囲に含まれ、突起数が核1個につき4以上存在し、この突起部の長さは5〜50nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の青色金ナノ粒子。
【請求項6】
請求項1に記載の青色金ナノ粒子、グッドバッファー成分のピペラジン環を有する有機酸、および還元性を有する有機酸からなり、コロイド溶液として分散されてなることを特徴とする青色金ナノ粒子のコロイド溶液。
【請求項7】
グッドバッファー成分のピペラジン環を有する有機酸と第一の金塩の溶液を反応させて核金ナノ粒子を形成させる核形成工程と、次いで該核金ナノ粒子の溶液に第二の金塩の溶液と還元性を有する有機酸を同時的に添加反応させて、核金ナノ粒子を成長させる成長工程の反応を行なうことを特徴とする青色金ナノ粒子の製造方法。
【請求項8】
成長工程の反応温度を10℃以上40℃未満で実施することを特徴とする請求項7に記載の青色金ナノ粒子の製造方法。
【請求項9】
有機酸の濃度が0.075〜0.15mMであることを特徴とする請求項7または8に記載の青色金ナノ粒子の製造方法。
【請求項10】
グッドバッファー成分のピペラジン環を有する有機酸が、2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−(2−ヒドロキシプロパン−3−スルホン酸)、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)、3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]プロパンスルホン酸及びピペラジン−1,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−プロパンスルホン酸)からなる群から選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項9に記載の青色金ナノ粒子の製造方法。
【請求項11】
還元性を有する有機酸が、酒石酸、酒石酸塩、タンニン酸、タンニン酸塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、クエン酸及びクエン酸塩からなる群から選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項7に記載の青色金ナノ粒子の製造方法。
【請求項12】
成長工程において、還元性を有する有機酸と共にグッドバッファー成分のピペラジン環を有する有機酸をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の青色金ナノ粒子の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれかに記載の青色金ナノ粒子を含む免疫学的測定用標識物質。
【請求項14】
形状の異なる少なくとも二種類の金ナノ粒子から構成されることを特徴とする請求項13に記載の免疫学的測定用標識物質。
【請求項15】
球状の金ナノ粒子とグラフト型、マルチポット型、または金平糖型の三次元突起を有する金ナノ粒子の少なくとも2種類から構成される請求項14に記載の免疫学的測定用標識物質。
【請求項16】
請求項1〜5のいずれかに記載の青色金ナノ粒子を標識物質として用いる免疫学的測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−112042(P2012−112042A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240752(P2011−240752)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(509352945)田中貴金属工業株式会社 (99)
【Fターム(参考)】