説明

免疫応答を調節するための二重特異性抗体の使用

本発明は、一般に、免疫学の分野に関し、より詳細には、二重特異性抗体に関する。免疫系に関連する疾患を処置する際に使用するための二重特異性抗体を設計するための方法が開示される。特定の例は、活性化レセプターおよび阻害性レセプターを認識する二重特異性抗体に関する。本発明の方法は、二重特異性抗体を用いて細胞活性または活性化レセプター活性を低減するための方法であって、ここで、該二重特異性抗体は、(a)活性化レセプター;および(b)阻害性レセプターに結合する、方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、哺乳動物免疫系の細胞の、活性、発達、分化、増殖速度、および遊走を制御するための方法に関する。特に、本発明は、二重特異性抗体を用いて、阻害性レセプターを活性化レセプターと架橋するための方法に関する。この架橋は、活性化レセプターの阻害をもたらす。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
免疫系は、細菌、ウイルスおよび外来多細胞生物、ならびに癌細胞と戦うために用いられる。免疫応答は、骨髄、脾臓、および他の組織の細胞によって提供される。あいにく、免疫系の不適切な調節は、多数の障害または病理学的状態をもたらし得る。これらの障害または状態としては、慢性炎症、自己免疫疾患、および外来粒子または外来組織に対する望ましくないアレルギー反応が挙げられる。
【0003】
免疫系の細胞は、レセプターとして役立つ、多くの型の膜結合型タンパク質を保有する。これらのレセプターに対するリガンドは、低分子、タンパク質(例えば、サイトカインもしくはケモカイン)、または別個の細胞上に存在する膜結合型タンパク質であり得る。そのリガンドによるレセプターの占拠、可溶性抗体によるレセプターの結合、同様のレセプターの互いの架橋、および似ていないレセプターの互いの架橋は、細胞活性の変化をもたらし得る。これらの事象のうちのいくつかは、「細胞活性化」をもたらし、一方、他の事象は、「細胞阻害」をもたらす。
【0004】
免疫細胞およびそれらの活性化もしくは阻害の研究は、以下に関連してきた:原形質膜に対する酵素の補充;細胞膜における「脂質ラフト(lipid raft)」に対する酵素の補充(YangおよびReinherz,J.Biol.Chem.2766,18775(2001))、および原形質膜に対する膜結合型レセプターの補充。脂質ラフトは、原形質膜のうちの、脂質分子の流動性が低下した領域である。細胞の活性化または阻害はまた、以下に関連する:レセプターのリン酸化状態における変化;細胞の増殖状態における変化;カルシウム流;遺伝的発現における変化;分泌もしくは脱顆粒における変化;細胞の分化;細胞の増殖速度における変化;細胞遊走における変化;および走化性における変化。細胞活性化はまた、T細胞アネルギーの逆転を包含し得る(例えば、Linら,J.Biol.Chem.273,19914(1998);ならびにSunder−PlassmanおよびReinherz,J.Biol.Chem.273,24249(1998)を参照のこと)。
【0005】
上記の変化のうちのいずれかをもたらすシグナル伝達事象が、活性化性であるかまたは阻害性であるかについての問題は、個々の基礎に基づいて決定され得る。例えば、未同定のレセプターの占拠が、サイトカインmRNAの遺伝的発現、炎症性サイトカインの分泌(または脱顆粒)、放出、食作用活性もしくは溶解活性の増大をもたらすならば、この未同定のレセプターは、活性化レセプターと命名され得る。同様に、未同定のレセプターの占拠が既知の活性化レセプターに依存する活性を阻害するならば、その未同定のレセプターは、阻害性レセプターと命名され得る。
【0006】
レセプターが活性化性であるかまたは阻害性であるかの決定は、このレセプターのポリペプチド配列によって予測され得、ここで、このレセプターはタンパク質である。以下の2つの異なるモチーフに対して注目が集まった:ITIMおよびITAM。ITIMは、免疫レセプターチロシンベースの阻害モチーフを表し、一方、ITAMは、免疫レセプターチロシンベースの活性化モチーフを表す。このレセプターの細胞質ゾル領域中の1以上のITIMモチーフを保有する多数のポリペプチドレセプターが、阻害性であることが見出されており、一方、細胞質ゾル領域中に1以上のITAM配列を保有する多数のポリペプチドレセプターは、活性化性であることが見出されている。
【0007】
阻害性レセプターと活性化レセプターとの架橋は、この活性化レセプターの阻害をもたらし得る。伝統的には、架橋は、3つの成分の使用を含み、ここで、これらの成分は、培養細胞(例えば、培養されるT細胞または肥満細胞)を含むインキュベーション培地中に添加される。一般に、これらの成分のうちの2つは、抗体であり、ここで各抗体は、その細胞表面の異なる抗原を認識する。第3の成分はしばしば、2つの第1抗体の定常領域を認識する、第3の独立した抗体である。
【0008】
多成分架橋系は、培養細胞を用いて調査実験を実施する際に、効率的かつ制御された研究を可能にする。しかし、多成分架橋系は、薬学的介入についても薬物治療についても実用的方法ではない。1つの欠点は、三成分系を用いた架橋が、4つの異なる結合反応を必要とすることである。第2の欠点は、レセプターを架橋するために3つの抗体を使用することが、治療的に実現可能でないことである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、1つの二重特異性抗体を提供することによって、これらの課題に取り組み、この二重特異性抗体は、免疫系の細胞上の活性化レセプターおよび阻害性レセプターに結合し得、そして生理学的に影響を与え得る。
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、二重特異性抗体を用いて細胞活性または活性化レセプター活性を低減するための方法を提供し、ここで、この二重特異性抗体は、以下に結合する:(a)活性化レセプター;および(b)阻害性レセプター。さらなる実施形態では、この阻害性レセプターは、ITIMモチーフを含み、そして以下からなる群より選択され得る:FcγRIIB、LAIR−1、KIR、OX2R、OX2Ra、DSP−1、CD5、MAFA、CTLA−4、HM18、Ly49、およびgp49B1。別の実施形態では、この活性化レセプターは、ITAMモチーフを含み、そして以下からなる群より選択され得る:FcεRI、FcγRIII、FcγRIIA、FcγRIIC、T細胞レセプター、TREM−1、TREM−2、CD28、CD3、CD2、およびDAP−12。別の実施形態では、この活性化レセプターは、FcεRIであり、そしてこの阻害性レセプターは、OX2Raである。
【0011】
本発明は、この二重特異性抗体が、二重特異性抗体に共有結合によって取り込まれた化学的連結剤を含むことを意図する。別の実施形態では、この二重特異性抗体は、単一ポリペプチド鎖抗体であるかまたはヒト化されている。
【0012】
さらなる実施形態では、この二重特異性抗体は、阻害性レセプターまたは活性化レセプターの発現を刺激する因子とともに投与される。この因子は、顆粒球コロニー刺激因子およびインターフェロン−γからなる群より選択される。この二重特異性抗体が、抗炎症剤、化学療法剤、免疫抑制剤、および抗マラリア剤からなる群より選択される治療剤とともに投与されることもまた意図される。さらなる実施形態では、この抗炎症剤は、コルチコステロイド、グルココルチコイド、可溶性腫瘍壊死因子レセプター、および腫瘍壊死因子に対する抗体からなる群より選択される。なお別の実施形態では、この化学療法剤は、メトトレキサート、ビンクリスチン、およびシクロホスファミドからなる群より選択される。
【0013】
本発明は、受容可能なキャリアとともに請求項1に記載の二重特異性抗体を含む、組成物を提供する。別の実施形態では、この二重特異性抗体は、インビボにおいて、または培養細胞に対して投与される。
【0014】
本発明は、1区画内のこの二重特異性抗体;および使用説明書を備えるキットを提供する。
【0015】
(詳細な説明)
添付の特許請求の範囲を含め、本明細書で用いられる場合、用語の単数形(例えば、「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないと示さない限り、それらの対応する複数形の言及を包含する。
【0016】
(定義)
「抗体」または「抗体分子」は一般に、2つの重鎖および2つの軽鎖からなり、ここで、通常、各軽鎖は、ジスルフィド結合によって重鎖に連結しており、そしてここで通常、2つの重鎖は、ジスルフィド結合によって一緒に連結されている(Brody,Analyt.Biochem.247,247(1997))。軽鎖は、κまたはλのいずれかと分類される。重鎖は、γ、μ、α、δまたはεと分類され、そして抗体のアイソタイプをそれぞれ、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEと規定する。軽鎖内および重鎖内では、可変領域および定常領域は、約12以上のアミノ酸の「J」領域によって連結されており、この重鎖はまた、約10以上のアミノ酸の「D」領域を含む(Abbasら,Cellular and Molecular Immunology,第4版,W.B.Saunders Co.,Phila.(2000),41−62頁)。
【0017】
「二重特異性抗体」とは、2つの異なる抗体由来のビンディング(vinding)フラグメント、2つの異なる抗体由来のヒト化結合フラグメント、または2つの異なる抗体由来の結合フラグメントのペプチド模倣物をいう。各結合フラグメントは、異なるレセプター(例えば、阻害性レセプターおよび活性化レセプター)を認識する。二重特異性抗体は通常、2つの別個の抗原に対する特異的結合を示す。
【0018】
用語「カクテル」とは、アリコートが取り出され得、次いで反応混合物または細胞インキュベーション混合物中に移され得る、溶液をいう。いくつかの場合、このカクテルは、架橋反応を開始する目的のために、異なる抗体の混合物を供給し得る。他の場合には、このカクテルは、この反応混合物に対して補助的化合物の混合物(例えば、プロテアーゼインヒビターの組み合わせ)を供給し得る。カクテルは、試薬を移すのがより迅速かつより正確に行われるのを可能にする、予め混合された試薬の組み合わせである。
【0019】
「エピトープ」は、免疫グロブリンまたはT細胞レセプターに特異的に結合し得る、任意のタンパク質決定基を包含する。エピトープ決定基は通常、分子のうちの化学的に活性な表面グループ分け(例えば、アミノ酸または糖側鎖)からなり、通常、特異的三次元構造特性ならびに特異的電荷特徴を有する。
【0020】
用語「レセプターの発現」とは、転写(mRNA合成)の速度、翻訳(ポリペプチド合成)の速度、細胞内区画から細胞外区画へのレセプターポリペプチドの移動速度、または[細胞外]/[細胞内+細胞外]区画において生じるレセプターポリペプチドの比を言及し得る。
【0021】
用語「レセプター」とは、生物学的リガンドまたはそのアナログ(例えば、ホルモン、サイトカイン、抗体、別の細胞の膜結合型タンパク質、または別の細胞の膜に結合したリガンド)と会合し得る、あるクラスのタンパク質(細胞の膜結合型タンパク質を包含する)を言及する。この膜結合型レセプターは、原形質膜に存在してもよく、または、原形質膜中に最終的に挿入されることになっている細胞内小胞上に存在してもよい。リガンドは、このレセプターのアゴニストまたはアンタゴニストとして役立ち得る(Goodmanら(1990)Goodman & Gilman’s:The Pharmacological Bases of Therapeutics(第8版)Pergamon Press,Tarrytown,N.Y.)。このリガンドとレセプターとの間の会合は、一時的であっても永続的であってもよく、そしてこれは、非共有結合的連結または共有結合的連結を包含し得る。多くのレセプターを用いて、細胞の挙動または細胞のシグナル伝達事象を制御し得る。リガンドとレセプターとの会合が細胞事象における増大を誘発する場合、このレセプターは、「活性化」レセプターと呼ばれる。リガンドとレセプターとの会合が細胞事象における減少を誘発する場合、このレセプターは、「阻害性」と呼ばれ得る。いくつかのレセプターの場合、種々のリガンドは、このレセプターの活性化または阻害のいずれかを誘発し得、ここで、このレセプターは、そのリガンドが最も頻繁に用いられる生理学的状況に依存して、「活性化性」または「阻害性」と命名され得る。タンパク質または他の高分子は、レセプターと呼ばれ得る。なぜなら、これは、天然に存在するリガンドに結合するからであるが、これは、合成リガンドまたは非生理学的リガンド(例えば、薬物または実験プローブ)にも結合するからでもある。
【0022】
用語「活性化レセプター」は、リガンド結合領域および細胞質ゾルシグナル伝達領域を含む単一ポリペプチド鎖、またはリガンド結合ポリペプチドおよび細胞質ゾルシグナル伝達ポリペプチドを含むポリペプチド複合体を言及するために、最も正確に用いられる。しかし、細胞生物学または生化学の考察を容易にする目的で、複数ポリペプチド活性化レセプターのポリペプチドのうちのいずれか1つは、「活性化レセプター」と命名され得る。「阻害性レセプター」は、多数の異なる活性化レセプターに対して、すなわち、1種類の活性化レセプターに対してだけでなく、その阻害効果を発揮し得る。
【0023】
レセプターは、活性化性および阻害性の両方であり得、ここで、活性化効果または阻害効果は、細胞生理機能に依存する。例えば、CD22(ヒトおよびマウスのB細胞のタンパク質)は、ITAMモチーフ(活性化モチーフ)およびITIMモチーフ(阻害性モチーフ)の両方を含み、そしてそのB細胞の生理機能および環境に依存して、B細胞レセプターに対して活性化効果または阻害効果を発揮し得る(Gergelyら,Immunology Letters 68,3(1999);Satoら,Immunity 5,551(1996))。任意の所定のレセプターが阻害性であるかまたは活性化性であるかの問題は、リガンドに依存し得る(例えば、1種のマイトジェン対別の種類のマイトジェン(Satoら,Immunity 5,551(1996))。
【0024】
細胞活性化において用いられるポリペプチドレセプターが活性化ドメインを含まないが、活性化ドメインを含む第二のポリペプチドに結合する場合、以下の3つの実体の各々を「活性化レセプター」と言及することが受け入れられ得る:(1)その活性化ドメインを含まないポリペプチドレセプター;(2)その活性化ドメインを含むポリペプチド;および(3)上記の2つのポリペプチドの複合体全体。
【0025】
用語「レセプター」は、薬学的因子によって標的とされ得るが、必ずしも生理学的リガンドによる標的ではない、膜結合型または膜会合型の高分子を包含するように広範に定義される。用語「レセプター」はまた、原形質膜の外表面と共有結合しているかまたは非共有結合的に会合しているが、原形質膜のリン脂質二重層に必ずしも挿入されていない、高分子を包含する。
【0026】
「モチーフ」とは、ポリペプチド内のアミノ酸配列であって、この配列が、特定の特性をそのポリペプチドに与える配列をいう。
【0027】
(概論)
本発明は、細胞の2つの別個のレセプターに特異的に結合し得る二重特異性抗体を提供する。免疫学の分野では、2種類のモチーフを保有する2種類のレセプターは、白血球の多数の膜結合型レセプターにおいて遭遇する。これらのレセプターおよびそれらのそれぞれのモチーフは、ITAMおよびITIMと呼ばれる。コンセンサスITAM配列は、YxxL/Ix6〜8YxxL/Iであり、ここで(Y)は、リン酸化されて、活性化レセプターおよび/または補助タンパク質の、シグナル伝達特性における変化をもたらし得る。このITAMモチーフは、活性化レセプター自体内、またはこの活性化レセプターに結合し、従って、この活性化レセプターに対して活性化特性を付与する、補助タンパク質内に生じ得る。ITAMレセプターは以下に記載される。
【0028】
このITIMモチーフは、細胞質ドメインにおけるコンセンサス配列I/V/LxYxxL/Vによって規定され、ここで、(Y)は、リン酸化されて、このこのITIMモチーフを保有するポリペプチドが、種々の酵素を補充する能力をもたらし得、ここで、これらの酵素は、阻害シグナルを細胞に対して中継するのを補助する(Sathishら,J.Immunol.166,1763(2001))。
【0029】
阻害性レセプターの例としては、例えば、FcγRIIB、LAIR、FDF03、KIR、gp49B、ILT25、PIR−B、Ly49、CTLA4、DSP−1、CD200Ra/OXRa、CD94/NKG2A、NKG2B−E、PECAM−1、CD5、CD22、CD72、PIRI、SIRPα、HM18、LRC、ILT、KIR、LIR、MIR、およびMAFAが挙げられる(例えば、Long(1999)Ann.Rev.Immunol.17:875;Lanier(1997)Immunity 6:371;Newton−NashおよびNewman(1999)J.Immunol.163:682;Azzamら(2001)J.Immunol.166:5464;Perez−Villarら(1999)J.Immunol.19:2903;Sinclair(1999)Scan.J.Immunol.50:10;Panら(1999)Immunity 11:495;Tomaselloら(2000)Eur.J.Immunol.30:2147;Armら(1997)J.Immunol.159:2342;Borgesら(1997)J.Immunol.159:5192;Youngら(2001)J.Immunol.166:3933;Lafontら(2001)J.Immunol.166:7190;Uhrbergら(2001)J.Immunol.166:3923;ZlotらWO 01/36463;Guthmanら(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.92:9397;ならびにBlaserら(1998)J.Immunol.161:6451を参照のこと)。
【0030】
活性化レセプターとしては、例えば、CD3、CD2、CD10、CD161、DAP−12、KAR、KARAP、FcεRI、FcRII、FcγRIIA、FcγRIIC、FcγRIII/CD16、Trem−1、Trem−2、CD28、p44、p46、B細胞レセプター、LMP2A、STAM、STAM−2、GPVIおよびCD40が挙げられる(例えば、Azzoniら(1998)J.Immunol.161:3493;Kitaら(1999)J.Immunol.162:6901;Merchantら(2000)J.Biol.Chem.74:9115;Pandeyら(2000)J.Biol.Chem.275:38633;Zhengら(2001)J.Biol Chem.276:12999;Propstら(2000)J.Immunol.165:2214を参照のこと)。
【0031】
(架橋研究)
KIR(阻害性)とFcεRI(活性化性)との架橋。以下の研究(KIRでトランスフェクトされた肥満細胞様細胞株に関する)は、KIR(阻害性)のFcεRI(活性化性)に対する架橋が、細胞阻害をもたらすことを明らかにした。研究された細胞は、人工的構築物であった。FcεRIのFcεRIに対する(それ自身に対する)架橋は、細胞活性化をもたらした。FcεRIがFcεRIに対して(それ自体に対して)架橋され、そしてFcεRIがまたKIRに架橋された混合状況は、細胞活性化の阻害をもたらした。この混合された状況は、KIRの阻害効果を実証する。以下の制御実験もまた行われた。FcεRIがFcεRI(それ自身に対して)結合され、そしてKIRがKIRに架橋された混合状況は、阻害効果をもたらさなかった(Bleryら,J.Biol.Chem.272,8989(1997))。
【0032】
架橋反応の詳細は以下のとおりである。第一工程では、FcεRIは、マウスIgEを添加することによってタグ化された。ここで、FcεRIは、IgEによって結合されるようになった。第二工程では、1つのマウスIgE/FcεRI複合体が、ロバ抗マウスF(ab)’を用いて別のマウスIgE/FcεRI複合体に架橋された。ここまで記載したシナリオは、細胞活性化のみをもたらす。
【0033】
第三の実験工程では、KIR(阻害性)が、マウスIgE/FcεRI複合体に対して架橋された。ここで、KIRが、マウス抗ヒトGL183 F(ab)’を用いて最初にタグ化された。次いで、マウス抗ヒトGL183 F(ab)’/KIR複合体が、架橋抗体(ロバ抗マウスDAM F(ab)’)を用いてマウスIgE/FcεRI複合体に対して架橋された。この第三の工程の結果は、細胞活性化の阻害であった(Bleryら,J.Biol.Chem.272,8989(1997))。
【0034】
KIR(阻害性)とCD25/CD3ζ(活性化性)との架橋。KIRの架橋は、CD25/CD3ζ依存性T細胞活性の阻害をもたらし得る(Bleryら,J.Biol.Chem.272,8989(1997))。CD25/CD3ζは、CD3ζに融合された、CD25の膜外(ectomembrane)ドメインおよび膜貫通ドメインから構成される、キメラ分子である(Donnadieuら,Proc.Natl.Acad.Sci.269,32828(1994))。KIRとCD25/CD3ζとの架橋は、CD25/CD3ζ媒介細胞活性化を阻害し得る。CD25/CD3ζ単独の刺激は、カルシウム流およびセロトニン放出をもたらし得る。しかし、KIR(阻害性レセプター)とCD25/CD3ζ(活性化レセプター)との同時架橋は、CD25/CD3ζ媒介カルシウム流およびセロトニン放出を低減または防止し得る。架橋カクテルは、IgE(CD25/CD3ζを標的とする)、GL183(KIRを標的とする)、およびロバ抗ラットIg F(ab)’を含んでいた(Bleryら,J.Biol.Chem.272,8989(1997))。
【0035】
Gp49B1(阻害性)とFcεRI(活性化性)との架橋。Gp49B1は、マウス細胞のタンパク質であって、ヒト細胞のタンパク質ではない。Gp49B1は、マウス肥満細胞上に、ならびにIL−2で刺激したマウスNK細胞上に生じる(Wangら,J.Immunol.158,13(1997))。gp49B1についての生理学的リガンドは、MHCクラスI分子である。Gp49B1は、ITIMモチーフを含む。Gp49B1は、ヒトタンパク質KIRと35%のアミノ酸同一性を共有する。gp49B1のヒトホモログ(HM18と呼ばれる)は、ヒト肥満細胞、ヒト単球、およびヒトNK細胞上に生じる。
【0036】
マウス肥満細胞上でのgp49B1およびFcεRIの架橋が、ラットIgE、ラットIgM抗gp49B1、抗gp49B1、およびF(ab’)マウス抗ラットIgGを含む架橋カクテルを用いて研究された(Lu−Kuoら,J.Biol.Chem.274,5791(1999))。gp49B1とFcεRIとの架橋は、SHP−1(ホスファターゼ)とgp49B1との会合をモニタリングすること、カルシウム流を測定すること、および酵素分泌を測定することによって測定されたところ、細胞活性化が阻害された。
【0037】
FcγRIIB(阻害性)とFcεRI(活性化性)との架橋。以下の研究(トランスフェクトされたFcγRIIBを有する肥満細胞様細胞株に関する)は、FcγRIIB(阻害性)のFcεRI(活性化性)に対する架橋が、細胞阻害をもたらすことを実証した。人工的構築物を用いた細胞株。FcεRIのFcεRIに対する(それ自身に対する)架橋は、細胞活性化をもたらす。FcεRIをFcεRIに対して(それ自身に対して)架橋し、そしてFcεRIをFcγRIIBに対して架橋した混合状況は、低減した細胞活性化をもたらす。この混合状況は、FcγRIIBの阻害効果を実証する(Bleryら,J.Biol.Chem.272,8989(1997))。
【0038】
架橋は以下の通りに実証された。第一段階では、FcεRIが、マウスIgEを添加することによってタグ化された。ここで、FcεRIは、IgEによって結合されるようになる。第二工程では、1つのマウスIgE/FcεRI複合体が、ロバ抗マウスF(ab)’を用いて別のマウスIgE/FcεRI複合体に対して架橋される。ここまで記載したシナリオは、細胞活性化のみをもたらす。
【0039】
第三の実験工程では、FcγRIIB(阻害性)が、マウスIgE/FcεRI複合体に対して架橋された。ここで、FcγRIIBが、2.4G2を用いて最初にタグ化されて、2.4G2/FcγRIIB複合体が得られた。次いで、ラット2.4G2/FcγRIIB複合体が、架橋抗体(TNP−F(ab)’ MAR)を用いてマウスIgE/FcεRI複合体に対して架橋された。言い換えると、TNP−F(ab)’ MARを用いて、マウス抗TNP IgEおよびラット抗FcγRII 2.4G2が架橋される。この第三工程の結果は、細胞活性化の阻害である(Bleryら,J.Biol.Chem.272,8989(1997))。
【0040】
FcγRIIBとFcεRIとの架橋は、多数の他の研究者によって特徴付けられている。1つの研究では、架橋は、IgEおよびRAM IgのF(ab’)フラグメントを含むカクテルによって行われた(Malbecら,J.Immunol.160,1647(1998))。同様の研究では、架橋は、IgE抗DNP、2.4G2 F(ab’)、およびTNP−MAR F(ab’)を含むカクテルによって行われた(Lesourneら,J.Biol.Chem.276,6327(2001))。
【0041】
ヒト好塩基球はまた、FcγRIIB(阻害性)とFcεRI(活性化性)との架橋の影響を例示するために用いられた。これらの研究は、架橋が阻害性効果を有することを明らかにした(Daeronら,Immunity 3,635(1995)における図1A)。
【0042】
FDF03(阻害性)とFcγRII(活性化性)との架橋。FDF03は、単球、マクロファージ、顆粒球、および単球由来樹状細胞において見出される、ヒト膜結合型タンパク質である。FDF03は、ITIMモチーフをその細胞質領域に含み、従ってFDF03−ITIMと省略され得る。
【0043】
ヒトにおけるFcγRIIは、3つの形態で生じ、ここで、1つは阻害性レセプターであり、2つは活性化レセプターである。FcγRIIAおよびFcγRIICは活性化性であり、そしてITAMモチーフを含み、従ってFcγRIIA−ITAMおよびFcγRIIC−ITAMと表され得る。対照的に、FcγRIIBは阻害性であり、そしてFcγRIIB−ITIMと表され得る(Kimら,J.Immunol.162,4253(1999))。以下で報告された研究は、FcγRIIの活性化形態のうちの1つに関し、ここで、正確な形態は述べられなかった。
【0044】
U937細胞中にトランスフェクトされたFDF03を含む人工的構築物が作製された。FDF03およびFcγRII(活性化性)は、架橋カクテルを用いて互いに架橋された。この架橋カクテルは、mABIV.3(FcγRIIを結合する)、mAB36H2(FDF03を結合する)、およびヤギF(ab’)抗マウスIg(上記の2つの抗体/抗原複合体を架橋する)を含んでいた。抗FcγRIIを単独でこの細胞に対して添加することは、カルシウム流を誘発した。しかし、架橋カクテル全体を添加することは、カルシウム流をもたらさなかった。この結論は、FDF03のFcγRIIに対する架橋は、FcγRII媒介性細胞活性化の阻害をもたらすということである(Fournierら,J.Immunol.165,1197(2000))。
【0045】
LAIR−1(阻害性)とFcγRII(活性化性)との架橋。LAIR−1は、ITIMモチーフを含み、それゆえ、LAIR−1−ITIMと省略され得る。LAIR−1(阻害性)およびFcγRII(活性化性)を、架橋カクテルを用いて互いに架橋した。この架橋カクテルは、mAbIV.3(FcγRIIを結合する)、mAb DX26(LAIR−1を結合する)、およびヤギF(ab’)抗マウスIgを含んでいた。抗FcγRIIを単独でこの細胞に対して添加することは、カルシウム流を誘発した。しかし、架橋カクテル全体を添加することは、カルシウム流をもたらさなかった。この結論は、LAIR−1のFcγRIIに対する架橋が、抗FcγRII単独の使用を用いて見られるFcγRII媒介性細胞活性化を阻害するということである(Fournierら,165,1197(2000))。カルシウム流の妨害に加えて、1つの効果は、この細胞の分化の阻害である。これらの細胞が単球である場合、FcγRIIのLAIR−1との架橋は、単球の樹状細胞への分化を阻害した(Fournierら,165,1197(2000))。
【0046】
FcγRIIB(阻害性)とB細胞レセプター(活性化性)との架橋。FcγRIIB(CD32Bとも呼ばれる)は、B細胞の膜結合型タンパク質である。B細胞は、外来抗原に対する曝露に応答して、増殖し、そして抗体を分泌する。B細胞によって分泌される抗体は、このB細胞に対してフィードバック効果を発揮し、ここで、そのネガティブフィードバック効果は、この抗体とFcγRIIbおよびB細胞レセプターとの接触による。薬学的手段によるFcγRIIb(阻害性)の刺激は、B細胞活性が害を及ぼす疾患状態において有用であると期待される。これらとしては、自己免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ)が挙げられる。マウスを用いた研究は、B細胞欠損マウスが実験的関節炎を発症しないことを明らかにした(Svenssonら,Clin.Exp.Immunol.111,521(1998))。この知見と一貫しているのは、FcγRIIbが欠損しているマウスが、増大した関節炎を有することである(FcγRIIbが存在しないこと、従ってその阻害効果を発揮できないことに明らかに起因する)(Yuasaら,J.Exp.Med.189,187(1999))。
【0047】
FcγRIIBが、B細胞だけでなく、肥満細胞およびマクロファージにも存在し、ここで、FcγRIIBがまた阻害効果を発揮することもまた注目され得る(Daeronら,3,635(1995);Ujikeら,J.Exp.Med.189,1573(1999))。
【0048】
FcγRIIBは、ITIMモチーフをその細胞質領域に保有する。FcγRIIBは、ヒトにおいて2つの形態(すなわち、FcγRIIB1およびFcγRIIB2)で生じる(Bruhnsら,J.Biol.Chem.275,37357(2000))。このB細胞レセプターは、mIg(これは、この抗原を結合する)、Ig−α(シグナル伝達ユニットの一部)、およびIg−β(シグナル伝達ユニットの一部)の複合体である。
【0049】
Ig−αおよびIg−βは各々、ITAMモチーフを含む。多価抗原による、1つのB細胞レセプターの別のB細胞レセプターへの架橋は、細胞活性化をもたらす。しかし、B細胞レセプターのFcγRIIBへの架橋は、上記の通り、阻害性である。これらの2つのレセプターの架橋(同時連結)は、ITIMモチーフにおけるチロシン残基のリン酸化をもたらし、FcγRIIb−ITIMのFcγRIIb−ITIM−ホスフェートへの転換をもたらす(Gergelyら,Immunology Letters 68,3(1999);Coggeshall,Curr.Opinion Immunol.10,306(1998);Sarmayら,J.Biol.Chem.271,30499(1996))。
【0050】
これらの2つのレセプターの実験的架橋は、細胞に対して以下を添加することによって達成され得る:(1)インタクトなIgG抗IgM;(2)凝集したIgG+抗Ig;または(3)抗FcγRBII(抗CD32BI)を添加し、続いてビオチン化抗マウスIgGおよびビオチン化抗ヒトIg+アビジンを添加すること(Sarmayら(1996))。
【0051】
FcγRIIB(阻害性)とCD3ε(活性化性)(T細胞レセプターの一成分)との架橋は、培養された細胞株RMA細胞および2B4細胞において示された。この研究は、FcγRIIB(阻害性)とCD3ε(活性化性)とを架橋することが、CD3ε媒介活性化の阻害をもたらすことを実証した(Daeronら,Immunity 3,635(1995)における図2C)。
【0052】
FcγRIIB(阻害性)とFcγRIIA(活性化性)との架橋。トランスフェクトされた細胞を用いた研究は、FcγRIIB(阻害性)とFcγRIIA(活性化性)との架橋が、FcγRIIA媒介活性化の阻害をもたらすことを実証した(Daeronら,Immunity 3,635(1995)における図1C)。
【0053】
FcγRIIB(阻害性)とc−kit(活性化性)との架橋。c−Kitは、活性化レセプターとして機能する膜結合型タンパク質である。c−Kitは、ITAMモチーフを含まない。このタンパク質は、肥満細胞上に生じ、ここで、これは、肥満細胞のFcεRI(これは、adaptive免疫機構において機能する)とは対照的に、先天免疫機構において機能する(Lu−Kuoら,J.Biol.Chem.275,6022(2000))。c−Kitは、コロニー刺激因子/血小板由来増殖因子レセプターサブファミリーに属し、ここで、上記のタンパク質は、RTKファミリー(レセプターチロシンキナーゼファミリー)に属する(Moriyamaら,J.Biol.Chem.271,3347(1996))。
【0054】
肥満細胞を用いての研究は、FcγRIIB(阻害性)とc−kit(活性化性)との架橋が、c−kit媒介性細胞増殖を阻害したことを明らかにした。架橋は、ACK2−ビオチン+抗ビオチンを添加することによって達成された(Malbecら,J.Immunol.162,4424(1999))。研究の詳細は、以下の通りであった。コントロール研究では、細胞を、2.4G2(抗体)(FcγRIIBの結合部位をブロックする抗体)を用いて前処理し、FcγRIIBを不活化レセプターとして非機能的にした。細胞を、ブロッキング抗体を用いて前処理し、続いて、ACK2−ビオチン+抗ビオチンを添加したところ、細胞の増殖が誘導された(Malbecら,J.Immunol.162,4424(1999)の図4)。
【0055】
CD5(阻害性)とCD3(活性化性)との架橋。CD5は、T細胞上およびB細胞の部分集団上に見出された膜結合型タンパク質である。CD5は、スカベンジャーレセプターシステインリッチ(SRCR)ファミリーに属する。このファミリーとしては、CD5、CD6、WC1、M130、Spα、Pema−STEG、Ebnerin、CPR−ductin、ヘンシン(hensin)、および膀胱ムチンが挙げられる(Perez−Villar,Mol.Cell.Biol.19,2903(1999))。CD5の細胞質ドメインは、ITAM様配列およびITIM様配列を含む。T細胞を用いての研究は、CD5の阻害特性を例示した。なぜなら、これらは、T細胞レセプターに、より詳細には、T細胞レセプターのCD3成分に関連するからである。
【0056】
CD5(阻害性)とT細胞レセプター(活性化性)との架橋は、ビオチン化抗CD3、ビオチン化抗CD5、およびアビジンを含む架橋カクテルを用いて達成された。架橋は、Ca2+レベルの測定によって示されるように、T細胞レセプター依存性細胞活性化における減少をもたらした(Perez−Villar,Mol.Cell.Biol.19,2903(1999))。
【0057】
(二重特異性抗体の産生)
本発明は、2つの異なる抗原結合部位が単一分子中に取り込まれた二重特異性抗体を提供する。二重特異性抗体は、化学的架橋(Brennanら,Science 229,81(1985);Rasoら,J.Biol.Chem.272,27623(1997))、ジスルフィド交換、ハイブリッド−ハイブリドーマ(クアドローマ)の産生、二重特異性抗体を具体化する単一ポリペプチド鎖を産生する転写および翻訳によって、または共有結合して二重特異性抗体を産生し得る、1より多くのポリペプチド鎖を産生する転写および翻訳によって、調製され得る。意図される二重特異性抗体はまた、化学的合成によって完全に作製され得る。この二重特異性抗体は、2つの異なる可変領域、2つの異なる定常領域、1つの可変領域および1つの定常領域、または他の改変体を含み得る。
【0058】
単一ポリペプチド鎖の二重特異性抗体を産生する転写/翻訳の使用の例は、以下の通りである。特定の動物(ラクダ;ラマ;ヒトコブラクダ)は、重鎖抗体を産生し、ここで、会合する軽鎖は存在しない。これらの抗体は、単一の可変領域を有し、これは、抗原に結合し得る。2つの可変領域(2つの異なる重鎖抗体由来)+リンカー領域(ラマの上のヒンジ由来)を含む組換え二重特異性抗体が産生されている。得られる複合体(VH−LH−VH)は、細菌において発現され得る(Conrathら,J.Biol.Chem.276,7346(2001))。ラクダ重鎖抗体に基づくこの二重特異性抗体のヒト化対応物が意図される。
【0059】
単鎖可変フラグメントは、以下の種々の技術によって互いに連結されて、二重特異性抗体を形成する:C末端システイン残基の架橋、4つのヘリックス束由来の天然で会合するへリックスを付加すること、ロイシンジッパーを付加すること、相互作用表面にてノブもしくは穴のいずれかを有するCH3ドメインを付加すること、またはCH1ドメインおよびCLドメインをそれぞれのscFVフラグメントに連結すること(Conrathら,J.Biol.Chem.276,7346(2001))。
【0060】
化学的に構築された二重特異性抗体は、化学物質(例えば、ヘテロ二重官能性試薬スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)−プロピオネート(SPDP,Pierce Chemicals,Rockford,Ill)によって異種のFabフラグメントまたはF(ab’)フラグメントを化学的に架橋することによって調製され得る。FabフラグメントおよびF(ab’)フラグメントは、インタクトな抗体をそれぞれ、パパインまたはペプシンで消化することによって、インタクトな抗体から入手され得る(Karpovskyら,J.Exp.Med.160,1686(1984);Titusら,J.Immunol.,138,4018(1987))。
【0061】
オリゴペプチドおよびポリペプチドは、2つの異なる抗体または抗体鎖を一緒に連結するために用いられ得る。オリゴペプチドおよびポリペプチドは、液相技術または固相技術によって合成され得る。これらとしては、例えば、StewartおよびYoung,Solid Phase Peptide Synthesis,Pierce Chemical Co.,Rockford,IL(1984);Bodanszky,The Principles of Peptide Synthesis,第2版,Springer,New York(1993);ならびにMolinaら,Pept.Res.9,151(1996))に記載されるプロセスが挙げられる。例えば、アジドプロセス、酸塩化物プロセス、酸無水物プロセス、混合無水物プロセス、活性エステルプロセス(例えば、p−ニトロフェニルエステル、N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステル、またはシアノメチルエステル)、カルボジイミダゾールプロセス、酸化的−還元的プロセス、またはジシクロヘキシルカルボジイミド(DCCD)/添加プロセスが用いられ得る。
【0062】
クアドローマは、2つの異なる抗原に対する2つの異なる種類の抗体を分泌するハイブリドーマを融合することによって構築され得る(MilsteinおよびCuello,Nature 305,537(1983);Kurokawaら,Biotechnology 7,1163(1989))。二重特異性抗体はまた、トランスフェクトーマ(transfectoma)法(Morrison,Science 229,1202(1985))によって調製され得る。本発明は、さらに、PCT出願WO 93/11161およびHolligerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90,6444(1993)に記載されるように、組換え微生物宿主内で産生された二重特異性抗体構造体を包含する。また含まれるのは、二重特異性線状分子(例えば、Trauneckerら,EMBO J.10,3655(1991)によって記載される、いわゆる「ヤヌシン(Janusin)」構造)である。これは、モノマー単鎖抗原結合タンパク質をコードする遺伝子の終わりの終止コドンを遺伝的に除去し、そしてリンカー、および第二の単鎖抗原結合タンパク質をコードする遺伝子を挿入することによって達成され得る(WO 93/11161)。
【0063】
大部分の抗体の抗原認識部位は、重鎖の可変領域および軽鎖の可変領域から構成される。これらの可変領域は両方とも、互いに密接に接触しており、そして抗原認識部位を形成する。単鎖抗体は、1つのポリペプチド鎖に2つの可変領域を含み、ここで、一方の可変領域は、従来の軽鎖の可変領域と等価であり、そして他方の可変領域は、従来の重鎖に等価である。単鎖抗体の設計は、ポリペプチド領域を連結することについての注意を含み、これは、2つの可変領域を連結する。単鎖抗体は、化学的手段によって、または単一のオープンリーディングフレームを用いた翻訳によって合成され得る。単鎖抗体の合成についての詳細は、Ladnerらに対して発行された米国特許第4,946,778号に記載される。
【0064】
さらなるアプローチでは、二重特異性抗体は、成分の抗体をロイシンジッパーペプチドに対して連結することによって形成される(Kostelnyら,J.Immunol.148,1547(1992);de KruifおよびLogtenberg,J.Biol.Chem.271,7630(1996))。ロイシンジッパーは、一般的構造式(ロイシン−X−X−X−X−X−Xを有し、ここでXは、従来の20アミノ酸のうちのいずれかであり得る(Creighton.Proteins,Structures and Molecular Principles,W.H.Freeman and Company,New York(1984))が、高いα−ヘリックス形成可能性を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、およびリジン)である可能性が最も高く(RichardsonおよびRichardson,Science 240,1648(1988))、そしてnは3以上であり得るが、代表的にはnは4または5である。ロイシンジッパーは、種々の真核生物DNA結合タンパク質(例えば、GCN4、C/EBP、c−fos遺伝子産物(Fos)、c−jun遺伝子産物(Jun)、およびc−myc遺伝子産物)中に生じる。これらのタンパク質では、ロイシンジッパーは、ダイマー形成界面を作製し、ここで、ロイシンジッパーを含むタンパク質は、安定なホモダイマーおよび/またはヘテロダイマーを形成し得る。
【0065】
本発明において使用するためのロイシンジッパーは好ましくは、対(pairwise)親和性を有する。対親和性は、ロイシンジッパーの1つの種(例えば、Fosロイシンジッパー)が別の種のロイシンジッパー(例えば、Junロイシンジッパー)とヘテロダイマーを優先的に形成し、その結果、2種のロイシンジッパーが十分な濃度で存在する場合にヘテロダイマー形成がホモダイマー形成よりも好適である能力として規定される(Schuemannら,Nucleic Acids Res.19,739(1991))。従って、ヘテロダイマーの優先的形成は、代表的に50〜75パーセント、好ましくは75〜85パーセント、そして最も好ましくは85より多くのパーセントがヘテロダイマーである、ダイマー集団をもたらす。合成ペプチドのアミノ末端が各々システイン残基を含んで分子間ジスルフィド結合を可能にする場合、ヘテロダイマー形成は、ホモダイマー形成に対して実質的排除を生じる。
【0066】
二重特異性抗体の形成において、成分抗体の結合フラグメントは、第1のロイシンジッパーおよび第2のロイシンジッパーに対してインフレームで融合される。適切な結合フラグメントは、Fv、Fab、Fab’、または重鎖を含む。これらのジッパーは、抗体結合フラグメントの重鎖または軽鎖に対して連結され得、そして通常、C末端に対して連結される。定常領域または定常領域の一部分が存在する場合、このロイシンジッパーは好ましくは、定常領域またはその一部分に対して連結される。例えば、Fab’−ロイシンジッパー融合体において、このジッパーは、通常、ヒンジのC末端に融合される。それぞれの成分の抗体フラグメントに対して融合されたロイシンジッパーを含むことは、このジッパーのアニーリングによるヘテロダイマーフラグメントの形成を促進する。成分抗体が定常領域の一部分(例えば、Fab’フラグメント)を含む場合、ジッパーのアニーリングはまた、定常領域を近位にもたらすために役立ち、それにより、(例えば、F(ab’)フラグメントにおける)定常領域の結合を促進する。代表的なヒト定常領域は、それぞれの鎖のヒンジ領域の間での2つのジスルフィド結合の形成によって結合される。この結合は、さらなるシステイン残基をそれぞれのヒンジ領域中に操作してさらなるジスルフィド結合の形成を可能にすることによって強化され得る。
【0067】
抗体結合フラグメントに連結されたロイシンジッパーは、種々の方法で産生され得る。例えば、ロイシンジッパーを含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、細胞宿主によって、またはインビトロ翻訳系において、発現され得る。あるいは、ロイシンジッパーおよび/または抗体結合フラグメントは、化学的ペプチド合成によって、所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の発現によって、またはロイシンジッパーを含む他のタンパク質、抗体、もしくは高分子種からの切断およびその後の精製によってのいずれかにより、別個に産生され得る。このような精製されたポリペプチドは、介在スペーサーアミノ酸配列を有するかもしくは有さないペプチド結合によって、介在スペーサー分子を有するかもしくは有さない非ペプチド共有結合によって、連結され得、このスペーサー分子は、アミノ酸または他の非アミノ酸化学的構造体のいずれかである。連結の方法および種類にかかわらず、このような結合は可逆性であり得る。例えば、化学的に不安定な結合(ペプチジルまたは他のもののいずれか)は、自然に切断されてもよく、または熱、電磁放射腺、プロテアーゼもしくは化学薬剤を用いた処理によって切断されてもよい。このような可逆的結合の2つの例は、以下である:(1)ヒドロキシルアミンによって切断され得る、Asn−Glyペプチド結合を含む結合、および(2)還元剤によって切断され得る、ジスルフィド結合による結合。
【0068】
成分抗体フラグメント−ロイシンジッパー融合タンパク質は、両方の融合タンパク質を同じ細胞株中で発現することによってアニールされ得る。あるいは、融合タンパク質は、別個の細胞株中で発現され得、そしてインビトロで混合され得る。成分抗体フラグメントが定常領域の部分を含む場合(例えば、Fab’フラグメント)、このロイシンジッパーは、アニーリングが生じた後に切断され得る。この成分抗体は、定常領域を介して二重特異性抗体中に連結したままである。
【0069】
モノクローナル抗体(MAb)は、当業者に周知の種々の技術によって入手され得る。手短に述べると、所望の抗原で免疫した動物由来の脾臓細胞は、通常、骨髄腫細胞との融合によって不死化される(KohlerおよびMilstein,Eur.J.Immunol.6,511(1976))。代替的不死化方法としては、エプスタインバーウイルス(EBV)、癌遺伝子、もしくはレトロウイルス、または当該分野で周知の他の方法での形質転換が挙げられる。単一の不死化細胞から生じるコロニーは、その抗原に対する所望の特異性および親和性の抗体の産生についてスクリーニングされる。このような細胞によって産生されるMAbの収率は、脊椎動物宿主の腹膜腔内への注射を含む種々の技術によって増強され得る。
【0070】
動物由来の抗体のヒト化は、ヒト身体における低減した免疫原性、増大した半減期、および休止T細胞のより低い活性化をもたらし得る。所望の抗体が、マウスにおいて見出されているかまたは産生されている場合、この抗体は、マウス抗体の相補性決定領域をヒト抗体配列中にグラフト化することによってヒト化され得る。言い換えれば、マウス抗体の定常領域は、ヒト定常領域で置き換えられる。さらなる有用な改変は、Fc領域に、その抗体の、そのヒトFcレセプターに対するより少ない結合をもたらす変異を導入することである(Carpenterら,J.Immunol.165,6205(2000);Heら,J.Immunol.160,1029(1998))。
【0071】
以下は、二重特異性抗体の多数の意図される実施形態を明らかにする。これらの実施形態では、用語「抗」とは、意図される標的に特異的に結合する、ポリペプチド、ポリペプチド領域、またはポリペプチドフラグメントをいう。特定の実施形態が、架橋領域またはヒンジ領域、シグナル配列によって、グリコシル基、ホスホリル基、スルフェート基、もしくはアセチル基によって、カルボキシル化グルタメート残基(Gla)によって、ジスルフィド結合によって、精製タグ(例えば、オリゴ−ヒスチジンもしくはグルタチオンS−トランスフェラーゼ)によって、ペプチド結合の切断によって、検出可能なリガンド(例えば、蛍光タグもしくは放射性タグ(35S、H、14C、33P、32P、125I))によって、ビオチン化によって、または身体中での安定性を促進することが意図された薬剤(例えば、ポリエチレングリコール(PEG;ペグ化抗体)によって改変され得ることが意図される。
【0072】
意図される二重特異性抗体は、抗KIRおよび抗CD2、抗KIRおよび抗CD3、抗KIRおよび抗DAP−12、抗KIRおよび抗KAR、抗KIRおよび抗KARAP、抗KIRおよび抗FcεRI、抗KIRおよび抗FcγRIIA、抗KIRおよび抗FcγRIIC、抗KIRおよび抗FcγRIII、抗KIRおよび抗Trem−1、抗KIRおよび抗CD28、抗KIRおよび抗T細胞レセプター、または抗KIRおよび抗B細胞レセプターから構成され得る。
【0073】
意図された二重特異性抗体が抗FcγRIIBおよび抗CD2、抗FcγRIIBおよび抗CD3、抗FcγRIIBおよび抗DAP−12、抗FcγRIIBおよび抗KAR、抗FcγRIIBおよび抗KARAP、抗FcγRIIBおよび抗FcεRI、抗FcγRIIBおよび抗FcγRIIA、抗FcγRIIBおよび抗FcγRIIC、抗FcγRIIBおよび抗FcγRIII、抗FcγRIIBおよび抗Trem−1、抗FcγRIIBおよび抗CD28、抗FcγRIIBおよび抗T細胞レセプター、または抗FcγRIIBおよび抗B細胞レセプターから構成され得ることがさらに意図される。
【0074】
(用途)
本発明の二重特異性抗体は、免疫障害、異常な細胞増殖などの処置または診断において有用である。このような障害としては、活性化レセプターおよび/または阻害性レセプターを保有する細胞に関与する疾患(例えば、IgE依存性状態、皮膚もしくは粘膜の炎症状態、自己免疫状態(autoimmune condtion)、神経系および筋肉系の免疫障害、全身の炎症、ならびに移植関連免疫疾患)が挙げられる(例えば、SalviおよびBabu(2000)New Engl.J.Med.342:1292;Sainiら(1999)J.Immunol.162:5624;Barnes(1999)New Engl.J Med.341:2006;Kitaら(1999)J.Immunol.162:6901;Targanら(1997)New Engl.J.Med.337:1029;Simpsonら(1998)J.Exp.Med.187:1225;TobertおよびKupper(1999)New Engl.J.Med.341:340;DavidsonおよびDiamond(2001)New Engl.J.Med.345:340;RoseおよびMackay(編)The Autoimmune Diseases,第3版,Academic Press,San Diego,CA;Falk(2000)New Engl.J.Med.343:1182;Mills(1994)New Engl.J.Med.33:1871;ならびにBlazarら(1997)Immunol.Revs.157:79を参照のこと)。
【0075】
(二重特異性抗体の治療組成物および投与)
二重特異性抗体の治療処方物は、所望の程度の純度を有する抗体を、任意の生理学的に受容可能なキャリア、賦形剤または安定剤(Gemmarp.Remington’s Pharmaceutical Sciences,第20版,Phila.(2000))と混合することによって、凍結乾燥ケークまたは水溶液の形態で、貯蔵のために調製される。受容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤は、用いられる投薬量および濃度にて、レシピエントに対して無毒性であり、これらとしては、以下が挙げられる:緩衝液(例えば、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸);抗酸化剤(アスコルビン酸を含む);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン);モノサッカリド、ジサッカリドおよび、ならびに他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);ならびに/あるいは非イオン性界面活性剤(例えば、Tween、Pluronicまたはポリエチレングリコール(PEG))。
【0076】
インビボで投与するために用いられるべき二重特異性抗体は、無菌でなければならない。滅菌は、凍結乾燥および再構成の前または後に、滅菌濾過膜を通した濾過によって達成され得る。この二重特異性抗体は通常、凍結乾燥形態で、または溶液中に保存される。治療二重特異性抗体組成物は一般に、無菌アクセスポートを有する容器(例えば、静脈内溶液バッグまたは皮下注射針によって穿孔され得るストッパを有するバイアル)中に配置される。
【0077】
投与経路は、公知の方法(例えば、静脈内、腹腔内、大脳内、筋肉内、眼内、動脈内、脳脊髄内もしくは病巣内の経路によるか、または持続放出系による、注射または注入)に従う。
【0078】
持続放出調製物の適切な例としては、成形品の形態の半透膜ポリマーマトリクス(例えば、フィルムまたはマイクロカプセル)が挙げられる。持続放出マトリクスとしては、以下が挙げられる:ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、EP 58,481)、L−グルタミン酸およびγエチル−L−グルタメートのコポリマー(Sidmanら,Biopolymers,22,547(1983))、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(Langerら,J.Biomed.Mater.Res.,15,167(1981));Langer,Chem.Tech.,12,98(1982))、エチレンビニルアセテート(Langerら,Chem.Tech.,12,98(1982))、またはポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP 133,988)。持続放出二重特異性抗体組成物としてはまた、リポソームに封入された抗体が挙げられる。抗体を含むリポソームが調製され得る(Epsteinら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82,3688(1985);Hwangら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77,4030(1980);EP 52,322;EP 36,676;EP 88,046;EP 143,949;EP 142,641;米国特許第4,485,045号;米国特許第4,544,545号;EP 102,324)。通常、リポソームは、小さな(約200〜800Å)の単層型のリポソームであり、ここで、脂質含量は、約30mol.% コレステロールよりも高く、選択された比率は、最適な抗体治療について調整される。
【0079】
この二重特異性抗体はまた、吸入によって投与され得る。液体処方物用の市販のネブライザー(ジェットネブライザーおよび超音波ネブライザーを含む)は、投与のために有用である。液体処方物は、直接的に噴霧され得、そして凍結乾燥粉末は、再構成後に噴霧され得る。あるいは、二重特異性抗体は、フルオロカーボン処方物および用量計量(metered dose)吸入器を用いてエアゾールにされ得るか、または凍結乾燥および粉砕された粉末として吸入され得る。
【0080】
治療的に用いられるべき二重特異性抗体の「有効量」は、例えば、治療の目的、投与経路、用いる二重特異性抗体の種類、および患者の状態に依存する。従って、治療者が、投薬量を力価測定し、そして必要に応じて投与経路を改変して最適な治療効果を得ることが必要である。代表的に、臨床家は、投薬量が所望の効果を達成する投薬量に到達するまで、この二重特異性抗体を投与する。この治療の進展は、従来のアッセイによって容易にモニタリングされる。
【0081】
二重特異性抗体による障害の処置および予防において、この抗体組成物は、優良医薬品製造基準(good medical practice)に合致した様式で、処方、投薬および投与される。この状況において考慮される要因としては、以下が挙げられる:処置される特定の障害、処置される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床的状態、この障害の原因、抗体の送達部位、抗体の特定の種類、投与方法、投与スケジュール、および医療実践者に公知の他の要因。投与されるべき「治療的に有効な量」の抗体は、このような考慮されるべき事項によって支配され、そして炎症障害を予防、改善または処置するために必要な最小の量である。
【0082】
(治療適用)
本発明は、免疫系の細胞に関与する疾患または病理学的状態の処置のために貴重な試薬および治療剤を提供する。この試薬は、二重特異性抗体を含む。この二重特異性抗体は、2つの異なる領域を含み、これらの領域の各々は、抗原を認識し、そして結合する。一般に、この抗原は、免疫学的細胞の原形質膜に存在するかまたはその付近に存在する、膜結合型タンパク質の一部分として生じる。一般に、これらの抗原は、レセプター(例えば、サイトカインについてのレセプター、抗体についてのレセプター(例えば、Fcレセプター)、または外来抗原についてのレセプター(外来抗原についてのT細胞レセプター)である。この二重特異性抗体が2つの異なる細胞表面抗原を同時に結合する場合、この2つの抗原は、一緒に係留され得、そして2つの抗原(この2つのレセプター)が密接に近接することは、この2つのレセプターの間での機能的連絡をもたらし得る。係留が活性化レセプターおよび阻害性レセプターを含む場合、最終的な結果は、その後の細胞活性阻害を伴った、活性化レセプターの阻害であり得る。細胞活性は、カルシウム流、このレセプターの細胞質部分のリン酸化状態における変化、活性化レセプターまたは阻害性レセプターのいずれかに対する細胞内タンパク質の補充における変化、および細胞膜中の「ラフト」に対する酵素またはタンパク質の補充によって評価され得る(YangおよびReinherz,J.Biol.Chem.276,18775(2001))。細胞活性における変化はまた、細胞の分化状態、細胞の増殖状態、または細胞が標的細胞を溶解する能力によって評価され得る。
【0083】
(治療剤と組み合わせた二重特異性抗体の投与)
治療剤と組み合わせて二重特異性抗体を使用することが意図される。これらの薬剤のうちのいくつかは、その薬剤を用いた治療に応答する特定の疾患とともに、以下の通りである。乾癬は、紫外光とともに、コルチコステロイド、メトトレキサート、シクロスポリン、アレファセプト(alefacept)、およびメトキサレン(ソラレン)を用いて処置され得る(Granstein,New Engl.J.Med.345,284(2001))。慢性関節リウマチは、グルココルチコイド、プレドニゾロン、ヒドロキシクロロキン、およびスルファサラジンを用いて処置され得る(Kirwanら,New Engl.J.Med.333,142(1995))。慢性関節リウマチはまた、腫瘍壊死因子−αに対する抗体(インフリキシマブ(infliximab)、CDP571、D2E7、CDP870)(FeldmannおよびMaini,Annu.Rev.Immunol.19,163(2001))および可溶性形態の腫瘍壊死因子−αレセプター(エタナーセプト(etanercept)、レナーセプト(lenercept)、ペグ化短縮型p55 TNF−R)(FeldmannおよびMaini,Annu.Rev.Immunol.19,163(2001);Pisetsky,New Engl.J.Med.342,810(2000))を用いて処置され得る。クローン病は、プレドニゾン、メルカプトプリン、アザチオプリン、インフリキシマブ、メトトレキサート、ブデソニド、シクロスポリン、5−アセチルサリチル酸、および成長ホルモンを用いて処置され得る(Sartor,New Engl.J.Med.342,1664(2000))。全身性エリテマトーデスは、アスピリンまたは他の非ステロイド性抗炎症性治療剤、ヒドロキシクロロキンまたは他の抗マラリア治療剤、キナクリン、ダンゾール(danzol)、ビンクリスチン、およびシクロホスファミドを用いて処置され得る(Mills,New Engl.J.Med.330,1871(1994))。アレルギー性喘息は、抗IgE、グルココルチコイド、またはβ−アドレナリン作用性レセプターアゴニスト(SalviおよびBabu,New Engl.J.Med.342,1292(2000))、ブデソニド(コルチコステロイド)、テルブタリン(β−アゴニスト)を用いて処置され得る(Haahtelaら,New Engl.J.Med.331,700(1994))。B細胞応答を目的とした薬剤としては、シクロホスファミド、メトトレキサート、レフルノミド、ブレキナル、および15−デオキシスペルグアリン(15−deoxyspergualin)が挙げられる(AuchinclossおよびSachs,Ann.Rev.Immunol.16,433(1998))。ヒスチジンレセプター(例えば、H−レセプター)のアンタゴニストは、多数のアレルギー性障害(慢性蕁麻疹(Greaves,New Engl.J.Med.332,1767(1995))、アレルギー性鼻炎、喘息、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー鼻結膜炎(allergic rhinoconjunctivitis)、アナフィラキシー、およびかゆみ(pruritis)を含む)の処置に用いられる(SimonsおよびSimons,New Engl.J.Med.330,1663(1994))。これらのアンタゴニストとしては、フェクソフェナジン(fexofenadine)(Kay,New Engl.J.Med.344,109(2001))、テルフェナジン、アステミゾール、ロラタジン(loratidine)、セチリジン、アクリバスチン、レボカバスチン、アゼラスチン、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、ドキセピン、トリプロリジン、およびクロルフェニラミンが挙げられる(Greaves,New Engl.J.Med.332,1767(1995))。
【0084】
免疫抑制因子(例えば、メトトレキサート、メチルプレドニゾロン、抗リンパ球グロブリン、抗胸腺細胞グロブリン、シクロスポリン、アザチオプリン、ステロイド、リンパ照射(lymphoic irradiation)(Kawauchiら,J.Thorac.Cardiovasc.Surg.106,779(1993);Matsumiyaら,Xenotransplantation 3,76(1996))、シクロホスファミド、ミコフェノール酸(Zhongら,Transplantation Proc.28,762(1996))、タクロリムス(tacrolimus)(Ruzickaら,New Engl.J.Med.337,816(1997))、ラパマイシン、FK506(Blazarら,J.Immunol.160,5355(1998))とともに二重特異性抗体を使用することが意図される。
【0085】
(キットおよび定量)
本発明の二重特異性抗体分子は、キットおよびアッセイ方法において特に有用である。
例えば、これらの方法はまた、培養細胞に対する結合活性および阻害活性についてスクリーニングするために適用される。アッセイを自動化するいくつかの方法は、近年開発されており、その結果、1年あたり何万という化合物のスクリーニングが可能である(BIOMEK自動化ワークステーション,Beckman Instruments,Palo Alto,California,およびFodorら,Science 251,767(1991))。後者は、固体基材上で合成された複数の規定のポリマーによって結合を試験するための手段を記載する。候補標的タンパク質についてスクリーニングするために適切なアッセイの開発は、(例えば、本発明によって提供される)多量の精製二重特異性抗体の入手可能性によって大いに促進され得る。
【0086】
本発明はまた、免疫系の細胞を検出するための種々の診断キットおよび診断方法における二重特異性抗体の使用を意図し、ここで、この細胞の活性は、この二重特異性抗体の添加によって阻害され得る。代表的には、このキットは、1以上のレセプターに存在する少なくとも2つのエピトープを認識する、いずれかの規定の二重特異性抗体を含む区画を有する。試薬を含む区画、および指示書が通常提供される。
【0087】
二重特異性抗体は、上昇したレベルのレセプターの存在を検出するための診断適用において、そしてそのレセプターのリガンドに対する、任意の所定のレセプターの増大した感度において、有用である。このリガンドまたはこの二重特異性抗体自体に対する、任意の増大した感度は、この二重特異性抗体のインビボでの使用の治療結果の予想である。増大した感度は、生物学的アッセイによって、または結合によって評価され得る。患者の細胞に対するこの二重特異性抗体の結合は、放射標識二重特異性抗体を用いることによって直接的に、または生物学的応答を測定することによって間接的に、検出され得る。抗体への標識の導入が記載されている(HarlowおよびLane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor(1988);Coligan,Current Protocols In Immunology Greene/Wiley,New York(1991および定期補充物))。適切な標識としては、放射性核種、酵素、基質、補因子、インヒビター、蛍光部分、化学発光部分、磁気粒子などが挙げられる。このような標識の使用を教示する特許としては、以下が挙げられる:米国特許第3,817,837号;同第3,850,752号;同第3,939,350号;同第3,996,345号;同第4,277,437号;同第4,275,149号;および同第4,366,241号。また、組換え免疫グロブリンおよび結合フラグメントが産生され得る(Mooreら,米国特許第4,642,334号;Cabilly,米国特許第4,816,567号)。
【0088】
頻繁に、診断アッセイのための試薬は、アッセイの感度を最適にするように、キットにおいて供給される。本発明については、アッセイの性質、プロトコル、および標識に依存して、標識されているかまたは標識されていないかのいずれかの二重特異性抗体が提供される。これは通常、他の添加剤(例えば、緩衝剤、安定剤、シグナル産生に必要な物質(例えば、酵素についての基質)など)に関連する。好ましくは、このキットはまた、適切な使用および内容物の使用後の廃棄についての指示を含む。代表的に、このキットは、各有用な試薬についての区画を有し、そして試薬の適切な使用および廃棄についての指示を含む。望ましくは、この試薬は、乾燥した凍結乾燥粉末として提供され、ここでこの試薬は、このアッセイを実施するために適切な濃度で、水性媒体中で再構成され得る。
【0089】
診断アッセイの上記の構成要素は、改変することなく用いられてもよく、あるいは、種々の方法で改変されてもよい。例えば、標識は、検出可能なシグナルを直接的または間接的に提供する部分を共有結合または非共有結合によって連結することによって達成され得る。直接的標識についての可能性としては、以下が挙げられる:標識基:放射性標識(例えば、125I)、酵素(米国特許第3,645,090号)(例えば、ペルオキシダーゼおよびアルカリホスファターゼ)ならびに蛍光強度、波長シフトまたは蛍光偏光における変化をモニタリングし得る蛍光標識(米国特許第3,940,475号)。両方の特許は、本明細書中に参考として援用される。間接的標識の可能性としては、1つの構成要素のビオチン化、続いて上記の標識基のうちの1つにカップリングされたアビジンへの結合が挙げられる。
【0090】
タンパク質またはフラグメントを種々の標識に対して連結するための方法は、文献において広範に報告されており、ここでは詳細な考察を必要としない。多くの技術は、連結のための、カルボジイミドまたは活性なエステルのいずれかを使用してペプチド結合を形成することによる活性化カルボキシル基の使用、メルカプト基と活性化ハロゲン(例えば、クロロアセチル)または活性化オレフィン(例えば、マレイミド)との反応によるチオエーテルの形成などを含む。融合タンパク質もまた、これらの適用において用途を見出す。
【0091】
他のマーカーの定性的または定量的な存在についても試験する診断キットもまた意図される。診断または予後は、マーカーとして用いられる複数の指標の組み合わせに依存し得る。従って、キットは、マーカーの組み合わせについて試験し得る(Vialletら,Progress in Growth Factor Res.1,89(1989))。
【0092】
本発明は、ある特定の実施例を参照することにより、より良く理解される。これらの実施例は、例示目的であることが意図され、他に指定しない限り、限定されることを意図しない。
【実施例】
【0093】
(I.一般的方法)
以下の標準的方法の多くは、記載されるかまたは参照される(Maniatisら,Molecular Cloning,A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Press,NY(1982);Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版)第1〜3巻,CSH Press,NY(1989);Ausbelら,Current Protocols in Molecular Biology,第4巻,John Wiley and Sons,Inc.,N.Y.(2000)およびより前の巻;Bonifacinoら,Current Protocols in Cell Biology,第1巻,John Wiley and Sons,Inc.,N.Y.(1998)およびより前の巻;Innisら,PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications Academic Press,NY(1990))。タンパク質精製のための方法としては、硫酸アンモニウム沈澱、カラムクロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離、結晶化などのような方法が挙げられる(Deutscher(1990)「Guide to Protein Purification」,Methods in Enzymology第182巻およびこのシリーズの他の巻;ならびにタンパク質精製製品の使用についての製造業者(例えば、Pharmacia,Piscataway,N.J.またはBio−Rad,Hercules,CA)の文献。標準的免疫学的技術が記載される(Coliganら,Current Protocls in Immunology,第4巻,John Wiley and Sons,Inc.,N.Y.(2001)およびより前の巻;Hertzenbergら,Weir’s Handbook of Experimental Immunology第1〜4巻,Blackwell Science(1996);Methods in Enzymology 第70、73、74、84、92、93、108、116、121、132、150、162、および163巻;Paul,Fundamental Immunology,第3版,Raven Press,N.Y(1993))。
【0094】
(II.喘息の処置のための、NK細胞のKIR(阻害性)およびFcγRIIIA(≡CD16)(活性化性)を認識する二重特異性抗体)
NK細胞は、喘息に寄与することが見出されている。研究は、NK細胞がIL−5を産生し、これは次いで、好酸球浸潤および実験的喘息の発症に寄与することを明らかにした(Walkerら,J.Immunol.161,1962(1998))。
【0095】
KIRは、NK細胞上およびT細胞サブセット(CD8記憶T細胞)上に生じる(Velyら,J.Immunol.166,2487(2001);Mingariら,Immunol.Today 19,153(1998))。FcγRIII(CD16)は、ヒトNK細胞上に生じる(Palmieriら,J.Immunol.162,7181(1999))。KIRおよびFcγRIIIAを結合する二重特異性試薬は、喘息の処置のために意図される。
【0096】
CD94/NKG2−Aは、CD94/NKG2−AおよびFcγRIIIAを結合するヒトNK細胞上に生じる(Palmieriら,J.Immunol.162,7181(1999))。CD94/NKG2−AおよびFcγRIIIAを結合する、意図される二重特異性試薬は、喘息の処置のために意図される。
【0097】
LAIR−1は、NK細胞上に生じる(Meyaardら,J.Immunol.162,5800(1999))。LAIR−1およびFcγRIIIAを結合する、意図される二重特異性試薬は、喘息の処置のために意図される。
【0098】
(III.慢性関節リウマチの処置のための、LAIR−1(阻害性)およびFcγRII(活性化性)を認識する二重特異性抗体)
LAIR−1(阻害性)のFcγRII(活性化性)に対する架橋は、FcγRII(活性化性)媒介細胞活性の阻害をもたらす(Fournierら,J.Immunol.165,1197(2000))。阻害された活性としては、カルシウム流、ならびに単球の樹状細胞への分化が挙げられる(Fournierら,J.Immunol.165,1197(2000))。
【0099】
LAIR−1は、単球上に生じる(Meyaardら,Immunity 7,283(1997))。FcγRIIAは、ヒト単球上に生じる(Cooneyら,J.Immunol.167,844(2001))。それゆえ、単球によって媒介される疾患状態は、意図される二重特異性抗体によって処置され得、ここで、この疾患は、単球のFcγRIIAまたはFcγRIIBの刺激によって開始または悪化される。
【0100】
慢性関節リウマチは、炎症性関節が単球および単球由来サイトカインを含む、自己免疫疾患である。単球由来サイトカイン(例えば、腫瘍壊死因子−α)に対する抗体の治療的使用は、疾患の有効な処置である(MacDonaldら,J.Clin.Invest.100,2404(1997))。単球由来サイトカインが慢性関節リウマチにおける局所炎症応答を導く主な因子であるというなんらかの考察が存在する(MacDonaldら,J.Clin.Invest.100,2404(1997))。LAIR−1およびFcγRIIAまたはCを架橋するための意図される二重特異性抗体試薬は、慢性関節リウマチを処置する際に有効であると予想される。
【0101】
(IV.好酸球のFcγRIIB(阻害性)とFcγRIIAまたはC(活性化性)とを架橋することによる喘息の処置)
FcγRIIに対する抗体は、ヒト好酸球を活性化することが報告されている。この抗体は、活性化性であると考えられた。なぜなら、これは、好酸球アポトーシスおよび長期の細胞生存を阻害したからであり、そして架橋形態の抗体はまた、好酸球の生存を長期化したからである(Kimら,J.Immunol.162,4253(1999))。FcγRIIB(阻害性)、FcγRIIA(活性化性)、およびFcγRIIC(活性化性)は全て、ヒト好酸球において生じる(Kimら,J.Immunol.162,4253(1999))。好酸球は、喘息の発症に寄与する(BusseおよびLemanske,New Engl.J.Med.344,350(2001);Chan−YeungおよびMalo,New Engl.J.Med.333,107(1995))。
【0102】
(V.肥満細胞のMAFA(阻害性)とFcεRI(活性化性)とを架橋することによるアレルギーの処置)
肥満細胞は、MAFAを含む(Guthmannら,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 92,9397(1995))。肥満細胞はまた、FcεRIを含む(Kalesnikoffら,Immunity 14,801(2001))。FcεRIは、IgEについての高親和性レセプターであり、ヒト肥満細胞上で発現される。FcεRIを介してのヒト肥満細胞の活性化は、アレルゲン依存性アレルギー応答を担うと考えられ、ここで、この相互作用は、Th2環境において生じる(Okayamaら,J.Immunol.166,4705(2001))。肥満細胞の表面上のIgEに対する抗原の結合の際に、FcεRIは、架橋されることになり、ここで、架橋は、ヒスタミン、サイトカイン、プロスタグランジン、およびロイコトリエンの分泌をもたらす(BusseおよびLemanske,New Engl.J.Med.344,350(2001))。意図される二重特異性抗体は、MAFAおよびFcεRIを架橋して、肥満細胞活性の阻害およびアレルギー応答の処置をもたらすために有用であると考えられる
肥満細胞のFcγRIIBおよびFcεRIを結合する二重特異性抗体試薬(Hamanaoら,J.Immunol.164,6113(2000))もまた、アレルギー応答の処置に有用であると予想される。
【0103】
(VI.FcγRIIB(阻害性)と好中球上のCXCR1(活性化性)とを架橋することによる敗血症の処置)
以下の考察は、IL−8(リガンド)およびIL−8レセプター(CXCR1)に関する。CXCR1は、好中球の活性化レセプターである。CXCR−1は、IL−8を高親和性で結合するが、他のCXCケモカインを低親和性で結合する。好中球が阻害性レセプターであるFcγRIIBを保有することが報告されている(RavetchおよびClynes,Annu.Rev.Immunol.16,421(1998);Long,Ann.Rev.Immunol.17,875(1999))。敗血症では、好中球は、感染に対する防御の望ましい役割を果たす。しかし、好中球はまた、複数器官機能不全症候群および急性呼吸窮迫症候群に寄与する、望ましくない効果を有する(Cummingsら,J.Immunol.162,2341(1999))。FcγRIIB(不活化)およびCXCR1(活性化レセプター)に結合する二重特異性抗体を敗血症の処置のために使用することが意図される。
【0104】
(VII.KIR(阻害性)およびFcεRI(活性化性)を架橋する二重特異性抗体による全身性エリテマトーデスの処置)
トランスフェクトされたレセプターを保有する細胞を用いた研究は、抗体カクテルによってKIR(阻害性)およびFcεRI(活性化性)を架橋することが、FcεRI依存性細胞活性化を阻害し得ることを実証した(Bleryら,J.Biol.Chem.272,8989(1997))。KIRは、T細胞上に生じる(Bruhnsら,J.Immunol.162,3168(1999))。FcεRIもまた、T細胞上に生じ(PeterssonおよびIvars,J.Immunol.166,6616(2001))、ここで、以下の報告は、T細胞FcεRIの活性化が、狼瘡の存在学においてある部分を果たし得ることを示す。全身性エリテマトーデスを有する患者の大部分由来のT細胞は、増大したFcεRIγ発現を示すことが見出されている。簡単に述べると、FcεRIγの発現は、正常被験体由来のT細胞においてと比較して、上記の疾患を有する患者のT細胞において約4倍高かった(Enyedyら,Arthritis Rheum.44,1114(2001);Tsokosら,Curr.Opin.Rheumatol.12,355(2000))。FcεRIを介した抗原−レセプターシグナル伝達は、狼瘡において異常であることが見出されている(Tsokosら,Curr.Opin.Rheumatol.12,355(2000))。上記の注釈は、FcεRIのγ鎖に適用され、FcεRIのγ鎖は、ITAMモチーフ(活性化モチーフ)を含み、そしてT細胞レセプターと会合する能力を有するようである(Enyedyら,Arthritis Rheumatism 44,1114(2001))。手短に述べると、特定の条件下では、FcεRIのγ鎖は、FcεRIとではなく、その代わりに、T細胞レセプターとともに機能し得る。KIR(不活化性)およびFcεRI(活性化性)に結合する二重特異性抗体を、狼瘡の処置に用いることが意図される。
【0105】
(VIII.FcγRIIB(阻害性)およびB細胞レセプター(活性化性)を架橋する二重特異性抗体による慢性関節リウマチの処置)
慢性関節リウマチでは、B細胞は関節に蓄積し、関節では、これらのB細胞は、リウマチ因子を産生する。リウマチ因子は、IgGのFc部分に特異的な抗体からなり、ここで、IgGは、高親和性型のものである。これらの高親和性リウマチ因子は、慢性関節リウマチの炎症に寄与する(Kyburzら,J.Immunol.163,3116(1999))。FcγRIIBおよびB細胞レセプターは両方とも、B細胞上に生じる。B細胞上のFcγRの主な種は、FcγRIIB1であるようである(Ashmanら,J.Immunol.157,5(1996))。B細胞レセプターとFcγRIIBとの架橋は、B細胞増殖のアポトーシスおよび阻害をもたらす(Fongら,J.Immunol.165,4453(2000))。FcγRIIBは関節炎に関連するので、FcγRIIBの阻害効果は、FcγRIIB欠損マウスを用いた研究において実証された。FcγRIIB欠損マウスは、コラーゲン誘発性関節炎の重篤度が増大している(Yuasaら,J.Exp.Med.189,187(1999))。コラーゲン誘発性関節炎は、慢性関節リウマチの、通常用いられる動物モデルである。FcγRIIB(不活化性)およびB細胞レセプター(活性化性)に結合する二重特異性抗体を関節炎の処置のために用いることが意図される。
【0106】
(IX.乾癬の処置のためのCD5(阻害性)およびT細胞レセプターの架橋)
T細胞は、乾癬に寄与すると同定されており、ここで、T細胞の刺激は、T細胞レセプターによるペプチドの認識によるであるようである(Costelloら,J.Immunol.166,2878(2001))。CD5は、ビオチン化抗CD5、ビオチン化抗CD3、およびアビジンから構成されるカクテルを架橋することを用いた研究によって示されるように、T細胞の阻害性レセプターである(Perez−Villar,Mol.Cell.Biol.19,2903(1999))。CD5およびT細胞レセプターを認識する二重特異性抗体が、乾癬の処置のために意図される。CD5およびCD3(T細胞レセプターの一成分)を認識する二重特異性抗体もまた、乾癬の処置のために意図される。
【0107】
(X.乾癬の処置のためのLAIR−1(阻害性)およびT細胞レセプターの架橋)
T細胞は、乾癬に寄与すると同定されており、ここで、T細胞の刺激因子は、T細胞レセプターによるペプチドの認識を介してであるようである(Costelloら,J.Immunol.166,2878(2001))。LAIR−1(阻害性)は、T細胞上に同定されている(Meyaardら、J.Immunol.162,500(1999)。T細胞レセプターおよびLAIR−1およびT細胞レセプターを認識する二重特異性抗体試薬を、乾癬の処置のために使用することが意図される。
【0108】
KIR(阻害性)は、T細胞サブセット上に生じる(Velyら,J.Immunol.166,2487(2001))。それゆえ、KIRおよびT細胞レセプターを認識する二重特異性抗体試薬を、乾癬の処置のために用いることが意図される。
【0109】
(XI.乾癬の処置のためのLAIR−1(阻害性)およびCD2(活性化)の架橋)
CD2は、T細胞上に存在する活性化レセプターである(Wildら,J.Immunol.163,2064(1999))。上記のように、CD2は、T細胞レセプター依存性経路およびT細胞レセプター非依存性経路の両方において機能する。CD2は、乾癬において主な部分を果たすようである。なぜなら、CD2を標的とする薬物は、この疾患を処置するために用いられ得るからである(Ellisら,New Engl.J.Med.345,248(2001))。LAIR−1(阻害性)は、T細胞上で生じる(Meyaardら,J.Immunol.162,5800(1999))。CD2およびLAIR−1の両方を認識する二重特異性抗体試薬を乾癬の処置のために使用することが意図される。
【0110】
KIR(阻害性)は、T細胞サブセット上に生じる(Velyら,J.Immunol.166,2487(2001);Uhrbergら,J.Immunol.166,3923(2001))。CD2およびKIRの両方を認識する二重特異性抗体試薬を乾癬の処置のために使用することが意図される。
【0111】
NKG2A(阻害性)は、T細胞サブセット上に見出され得、ここで、これは、CD94/NKG2A複合体として生じる(Uhrbergら,J.Immunol.166,3923(2001))。CD2およびNKG2Aの両方を認識する二重特異性抗体試薬を乾癬の処置のために使用することが意図される。
【0112】
(XII.脱顆粒の刺激およびアッセイ)
肥満細胞を、96ウェルFalcon平底プレート(Becton Dickinson Labware,Franklin Lakes,NJ)にプレーティングし、そして1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むRoswell Park Memorial Institute(RPMI)培地中でインキュベートした。細胞を一般に、例えば、抗muCD200R抗体(抗体DX109)、アイソタイプコントロール抗体(ラットIgG)、マウスCD200 Ig融合タンパク質(Hoekら,前出)、またはコントロールIg融合タンパク質(0.002mg/ml)の存在下で、2×10細胞/ウェルにてプレーティングした。
【0113】
FcεR(またはFcεR/IgE複合体)をCD200Ra、DSP−1、LAIR−1と同時連結するアッセイでは、マウス抗体およびラット抗体の両方に結合するヤギ抗マウスF(ab’)2(カタログ番号115−006−062,Jackson Immuno Research,West Grove,PA)を0.020mg/mlにて添加した。37℃でのさらなるインキュベーションは、脱顆粒またはサイトカイン分泌を可能にし、そしてこのインキュベーションを続けた。上清(0.02ml)を取り出し、そして基質に対して添加して、脱顆粒または分泌を評価した。
【0114】
脱顆粒および分泌を、別個の方法によって測定した。脱顆粒を、以下の通りに測定した。上清(0.02ml)を、例えば、コントロール抗体または実験抗体を添加した1時間後に取り出し、そして0.1Mクエン酸(pH4.5)中の1.3mg/ml p−ニトロフェノール−N−アセチル−B−D−グルコサミド(Sigma,St.Louis,MO)(0.06ml)に移した。37℃にて3〜4時間後、0.1mlの停止溶液(0.2Mグリシン,0.2 M NaCl,pH 10.7)を添加し、そしてAbs405−650をマイクロプレートリーダー(Molecular Devices,Sunnyvale CA)を用いて測定した。細胞を、上清の除去後2回洗浄した。サイトカイン分泌を以下の通りに測定した。肥満細胞の上清中に存在する腫瘍壊死因子−α(TNF−α)およびインターロイキン−13(IL−13)を、サイトカイン特異的ELISAキット(R & D Systems,Minneapolis,MN)を用いて測定した。上清を、刺激の18〜30時間後に収集した。
【0115】
(XIII.OX2Ra(阻害性)およびFcεRI(活性化性)の架橋ならびに肥満細胞の阻害)
マウスCD200Raは、阻害性レセプターであり、長い細胞質テールを有するが、これは、古典的ITIMモチーフを欠く。マウスCD200Rb、マウスCD200Rc、およびマウスCD200Rdは活性化性であり、そして短い細胞質テールおよび荷電したアミノ酸をその膜貫通領域に有し、これらは、DAP−12と対を形成し得る。これらのレセプターを誘発することは、種々のサイトカインの分泌をもたらす。ヒトCD200Rbは、マウスCD200Rbと同様に、DAP−12と対を形成する。
【0116】
マウス肥満細胞にIgEを単独で提供することは脱顆粒を刺激し、一方、細胞にIgEおよび抗CD200Raを提供すること、ならびにこれらの2つの抗体を架橋することは、脱顆粒を阻害する。ヒトCD200Raは、マウスCD200Raに対して相同である。
【0117】
マウス肥満細胞を、示したように、以下の条件に曝露し、続いて脱顆粒の評価(短期間のインキュベーション)または腫瘍壊死因子−α(TNF−α)分泌の評価(長期間のインキュベーション)を行った。培地のみ(0% degran.;0ng/ml TNF−α);IgEのみ(100% degran.;7.3ng/ml TNF−α);抗CD200Ra抗体のみ(0% degran.;0ng/ml TNF−α);IgE+抗CD200Ra抗体(100% degran.;7.2ng/ml TNF−α)、およびIgE+抗CD200Ra抗体+架橋剤ヤギ抗マウスIg(17% degran.;0.18ng/ml TNF−α)。脱顆粒およびTNF−α産生を、細胞をそれぞれ1時間および6時間インキュベートした後に測定した。「0」は、再現可能な検出のレベル未満であることを意味する。
【0118】
(XIV.CD200Ra(阻害性)およびFcεRI(活性化性)の架橋、ならびにヒト肥満細胞の阻害)
ヒト肥満細胞による脱顆粒および分泌を、抗IgEレセプター抗体(これは、IgEレセプターに結合する)の添加、抗CD200R抗体(これは、CD200Rに結合する)の添加、およびヤギ抗マウスF(ab’)2(これは、抗IgE抗体(IgEレセプターに付着する)および抗CD200R抗体(CD200Rに付着する)に結合する)の添加を含むプロトコルによって測定した。コントロール実験は、このプロトコルのバリエーションを含んでいた。
【0119】
臍帯血細胞全体を、幹細胞因子(SCF)およびIL−6を補充したYssels培地中で4〜6週間にわたって培養した。IL−4およびIgEを、さらに2週間にわたって培養物に添加した。次いで、細胞を、96ウェル平底プレートにおいて10細胞/ウェルでプレーティングした。次いで、阻害性抗体(抗CD200Ra抗体)またはコントロール抗体(マウスIg)を添加した。した。20分間のインキュベーション後、抗IgEレセプター抗体を添加して濃度が20ng/mlになるようにした。20分間のさらなるインキュベーション後、ウェルを洗浄し、そして架橋剤(ヤギ抗マウス抗体)を添加した。混合物を1時間にわたってインキュベートし、そして上清を取出し、そしてトリプターゼ放出によって評価したように、脱顆粒アッセイのために用いた。トリプターゼアッセイを、基質N−α−ベンジル−DL−アルギニンp−ニトロアニリドヒドロクロリド(BAPNA)を用い、405〜570nmにて色を測定して行った。
【0120】
脱顆粒(トリプターゼ放出)は、抗IgEレセプター抗体およびコントロール抗体(マウスIg)を添加して最大であった。これらの条件下では、最大のトリプターゼ放出は、Abs.405−570=0.44〜0.51をもたらした。コントロール抗体ではなく、抗CD200Raを用いたインキュベーションでは、力価測定レベルの抗CD200Ra抗体を用いた(0〜1000ng/ml抗CD2000Ra抗体)。異なるレベルの抗体を、別個のインキュベーション混合物において用いた。漸増する抗CD200Ra抗体レベルの使用は、トリプターゼ放出の漸増阻害をもたらし、ここで、最大阻害(Abs.405−570=0.05)は、約1000ng/mlの抗CD200Ra抗体を用いて生じた。最大の25%のトリプターゼ放出をもたらす阻害は、約200ng/mlの抗CD200Ra抗体にて生じた。この結果は、CD200RaとIgEレセプターとを架橋することがIgEレセプター依存性脱顆粒を防止することを実証する。
【0121】
(XV.DSP−1(阻害性)およびFcεRI(活性化性)の架橋、ならびにヒト肥満細胞の阻害)
細胞を調製し、そして添加した阻害性抗体が、抗CD200R抗体ではなく抗DSP−1抗体であること以外は、アッセイを上記(実施例V)の通りに行った。脱顆粒(トリプターゼ放出)は、抗IgEレセプター抗体+コントロール抗体(マウスIg)の添加を用いて最大であった。これらの条件下で、最大のトリプターゼ放出は、Abs.405−570=0.44〜0.51をもたらした。力価測定レベルの抗DSP−1抗体を用いた(0〜1000ng/ml抗DSP−1抗体)。異なるレベルの抗DSP−1抗体が、別個のインキュベーション混合物において生じた。漸増する抗DSP−1レベルの使用は、トリプターゼ放出の漸増的阻害をもたらし、ここで、最大阻害(Abs405−570=0.08)は、約40ng/ml抗DSP−1抗体、ならびにより高濃度の抗DSP−1抗体で生じた。最大の25%のトリプターゼ放出をもたらす阻害は、約8ng/mlの抗DSP−1抗体にて生じた。この結果は、DSP−1とIgEレセプターとの架橋が、IgEレセプター依存性脱顆粒を防止することを実証する。
【0122】
(XVI.LAIR−1(阻害性)およびFcεRI(活性化性)の架橋、ならびにヒト肥満細胞の阻害)
細胞を調製し、そして抗LAIR−1抗体を用いたこと以外は、アッセイを上記(実施例VおよびVI)の通りに行った。抗LAIR−1抗体を2つの濃度(0ng/mlおよび50ng/ml)でのみ用いた。インキュベーションが添加された活性化抗体(抗IgEレセプター抗体)のみを含んだ場合、トリプターゼ放出は、約Abs405−570=0.69(最大と規定される)であった。インキュベーションが活性化抗体(抗IgEレセプター)+抗LAIR−1抗体(50ng/ml)を含んだ場合、トリプターゼ放出が阻害され、そしてこれは最大の約10%であった(Abs405−570=0.07)。抗DSP−1を含むかまたは含まず、活性化抗体を含まないコントロールインキュベーションは、全て、非常に少ないトリプターゼ放出をもたらした(Abs405−570=0.06)。この結果は、LAIR−1とIgEレセプターとの架橋が、IgEレセプター依存性脱顆粒を防止することを実証する。
【0123】
本発明の多くの改変およびバリエーションは、当業者に明らかなように、本発明の目的、趣旨および範囲を保つように、特定の状況、材料、組成物、プロセス、プロセスの工程に適合するようにされ得る。阻害性レセプターおよび活性化レセプターの多くが乱交雑であり、このことは、任意の所定の阻害性レセプターが、種々の異なる活性化レセプターのうちのいずれか1つの活性を阻害し得ること、および任意の所定の活性化レセプターが多数の異なる阻害性レセプターのうちのいずれか1つによって阻害され得ることを意味する。このような全ての改変は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に添付した特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。本明細書中に記載される特定の実施形態は、例示のためにのみ提供され、そして本発明は、添付の特許請求の範囲が権利を与える等価物の範囲全体とともに、添付の特許請求の範囲の用語によって限定されるべきである;そして本発明は、例示によって本明細書中に提示されている特定の実施形態によって限定されるべきでない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重特異性抗体を用いて細胞活性または活性化レセプター活性を低減するための方法であって、ここで、該二重特異性抗体は、以下:
(a)活性化レセプター;および
(b)阻害性レセプター
に結合する、方法。
【請求項2】
前記阻害性レセプターが、ITIMモチーフを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記阻害性レセプターが、FcγRIIB、LAIR−1、KIR、OX2R、OX2Ra、DSP−1、CD5、MAFA、CTLA−4、HM18、Ly49、およびgp49B1からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記活性化レセプターが、ITAMモチーフを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記活性化レセプターが、FcεRI、FcγRIII、FcγRIIA、FcγRIIC、T細胞レセプター、TREM−1、TREM−2、CD28、CD3、CD2、およびDAP−12からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記活性化レセプターがFcεRIであり、前記阻害性レセプターがOX2Raである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記二重特異性抗体が、該二重特異性抗体に共有結合的に取り込まれた化学的連結剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記二重特異性抗体が、単一ポリペプチド鎖抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記二重特異性抗体が、ヒト化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記二重特異性抗体が、阻害性レセプターまたは活性化レセプターの発現を刺激する因子とともに投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記因子が、顆粒球コロニー刺激因子およびインターフェロン−γからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記二重特異性抗体が、抗炎症剤、化学療法剤、免疫抑制剤、および抗マラリア剤からなる群より選択される治療剤とともに投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記抗炎症剤が、コルチコステロイド、グルココルチコイド、可溶性腫瘍壊死因子レセプター、および腫瘍壊死因子に対する抗体からなる群より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記化学療法剤が、メトトレキサート、ビンクリスチン、およびシクロホスファミドからなる群より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
受容可能なキャリアとともに請求項1に記載の二重特異性抗体を含む、組成物。
【請求項16】
前記投与が、インビボにおいてであるかまたは培養細胞に対してである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
キットであって、以下:
(a)1区画内の請求項1に記載の二重特異性抗体;および
(b)使用説明書
を備える、キット。

【公表番号】特表2006−501130(P2006−501130A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−533869(P2003−533869)
【出願日】平成14年10月11日(2002.10.11)
【国際出願番号】PCT/US2002/032711
【国際公開番号】WO2003/030835
【国際公開日】平成15年4月17日(2003.4.17)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】