説明

免疫活性化剤を用いたウイルス感染の早期介入

ウイルスに曝露された被検者に、予防的な量または症状を緩和する量のdsRNAを投与し、被検者の症状が改善されるまで投与を継続することによって、ウイルス感染の症状を緩和する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2007年6月18日付けで出願された米国仮出願第60/929,203号の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、一連の非毒性の免疫作用により血液脳関門を保護することによって、生存能力の向上および/または維持することに偏って強い作用を得るために、所定の被検者群でウイルス感染の初期徴候が観察される前(すなわち、予防的に)、または、それと同時のいずれかであって、且つ患者におけるウイルス蓄積が増加する前に行われる免疫活性化剤の使用に関する。その結果の有効性は、さもなくば致死性を示すウイルスの複数の毒性株に対して維持される。
【背景技術】
【0003】
これまでに、ウイルス感染の治療において鼻腔内投与される治療剤は用いられていない。不活化した経鼻インフルエンザワクチンを用いて、十分に立証されている研究が行われた。その時点で多くの研究者が、経鼻経路が感染因子に対して粘膜免疫と全身性免疫の両方を誘導するのに最も有効な経路であると考えていた。そして、不活化インフルエンザワクチンを鼻腔内投与したところ、このワクチンによってインフルエンザウイルスに対する臨床的に有意な抗体反応が誘発されたが、有意な数のレシピエントがベル麻痺を発症させた。この製品は、スイスにおいて使用が認可されたが、急速に市場から回収された。Mutsch等(N.Engl.J.Med.350(9):896〜903,2004)および編集者のコメント、ならびに第860〜861頁の図を参照。このような現象やその他の事情(例えば、鼻腔内の出血、および、重度の局所刺激など)のために、抗ウイルス剤の鼻腔内投与経路は概ね忌避されてきた。
【0004】
Mutschの知識に反して、我々は、別種の治療剤であるdsRNA[例えば、アンプリゲン(AMPLIGEN(R:登録商標))]が、毒性のことを気にせずに、予防的な目的で、または、特定の被検者群における総体的症状の最初の徴候が出現した時点で、好ましくは鼻腔内に、または、その他の方法で安全に患者に投与することが可能であり、ウイルス感染に対して、具体的には治療がウイルス感染の初期段階で開始される場合、有効な治療であることを発見した。ウイルス感染の初期徴候としては、軽度の発熱、および、軽度の倦怠感が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国仮出願第60/929,203号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Mutsch等(N.Engl.J.Med.350(9):896〜903,2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、治療が必要な(すなわち、ウイルスに曝露された、または、このような曝露の危険性がある)被検者(例えば、ヒトまたはその他の動物)に、1種またはそれより多くの免疫活性化剤(例えば、dsRNA、および/または、インターフェロン)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本免疫活性化剤は、ウイルスへ曝露される直前、ウイルス感染の最初の徴候が観察された時点、または、その付近のどのような時期でも、治療が必要な被検者に投与してもよい(例えば、曝露の48時間前から暴露後48時間の範囲内、好ましくは曝露の24時間以内、曝露後24時間よりも前までに、または、曝露後12時間よりも前までに、1回またはそれより多くの用量を投与する)。あるいは、前記1種またはそれより多くの本免疫活性化剤は、被検者中のウイルス蓄積が増加してウイルス感染の重い症状(すなわち、重度の総体的症状)が発症する前に投与してもよい。本免疫活性化剤は、被検者の鼻腔内に適用された場合、十分な許容性を有することが好ましい。これらは、同時に、または、連続的に、局所的に共投与してもよい(例えば、鼻腔内に、または、その他の経口粘膜経路で)。
【0009】
被検者の血液、ウイルスによる感染の標的となっている組織、またはその他のあらゆる便利に分析できるサンプル(例えば、呼吸器系に影響を及ぼすウイルスの場合は鼻を洗浄したもの)において、ウイルスの力価を治療されなかった被検者と比較して少なくとも90%減少させることが可能である。
【0010】
本発明の一形態において、曝露された被検者に、ウイルス感染からの防御またはそれに伴う症状の軽減に有効な量の1種またはそれより多くのdsRNAを投与することによって、ウイルス感染の症状は緩和される。dsRNAの投与は、少なくとも24時間〜72時間継続してもよいし、または、被検者の症状が改善されるまで継続してもよい。
【0011】
dsRNAの投与は、被検者の血液脳関門の完全性を強化し、それによって被検者の体の経鼻経路や口腔内領域を介して体内に入ったウイルスが体内でさらに移動しないようにするために行ってもよい。dsRNAは、被検者の気道内のTLR3受容体を介して特異的に作用する可能性があり、それにより異なる様式で致死性を示すウイルスの複数の遺伝的変異株を効果的に不活化する。dsRNAは、ワクチン成分が被検者の嗅球およびその他の脳神経へ移動しないようにする可能性がある。
【0012】
その他の形態において、本免疫活性化剤を含む医薬品(例えば、医薬組成物)が提供される。任意のその他の医薬品成分としては、1個またはそれより多くの別個の容器(例えば、鼻用のアプリケーター、または、注射用バイアル)中に無菌的に包装された賦形剤および媒体(例えば、水性緩衝液または注射用水)が挙げられる。さらに、医薬品の使用方法および製造方法も提供される。以下の説明および請求項、ならびにそれらのあらゆる一般化から、さらなる形態は明らかであると予想される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
免疫活性化剤は、ウイルス感染の治療または予防で日常的に用いられているが、これらは血液脳関門(BBB)を通過することができない。しかしながら、dsRNA、具体的にはアンプリゲン(R:登録商標)は、脳に問題なくうまく供給される可能性がある。様々な病気を引き起こすウイルスはBBBを通過して脳に入ることができるため、有意な死亡率に部分的に関与していると仮定されている。従って、BBBのウイルス浸潤に対する耐性を強化し、さらに、BBBの透過性、および、関与する組織において関連する炎症が起こる可能性を制限する手法が、それに続く抗ウイルス治療による転帰の成功を強化すると考えられる。
【0014】
ある研究で、ウイルス脳炎の2種のマウスモデルにおけるBBBの透過性の変化が評価された。バンジウイルスまたはセムリキ森林熱ウイルスのいずれかの毒性株を植え付けた動物で、フルオレセインナトリウム(NaFl)が血清からBBBを介して中枢神経系に通過する能力を分析した。BBBの透過性の増加が劣った疾患の転帰に関連するという仮説を検証するために、それに続く実験で、インターフェロン誘導剤のアンプリゲン(R)(ポリI:ポリC12U)での治療を組み合わせたBBBの透過性を測定した。バンジウイルスを用いてウイルスを植え付ける24時間前、または、4〜6時間前のいずれかに(ただし24時間後には行わない)、アンプリゲン(R)を1回の腹膜内注射(1mg/kg)で投与することによって、生存、ウイルスの脳での力価、体重変化およびBBBの透過性において有意な改善が得られた。比較すると、セムリキ森林熱ウイルスを植え付ける24時間前または4〜6時間前のいずれかにアンプリゲン(R)を投与する類似の治療によって、体重変化およびBBBの透過性を有意に改善することができたが、ウイルス植え付けの4〜6時間前にアンプリゲン(R)を投与された動物だけが有意に改善された死亡率を示した。概して、BBBの透過性の評価は、疾患の転帰およびアンプリゲン(R)の抗ウイルス性の有効性を示す、体重変化または脳のウイルス力価のいずれよりも敏感な指標であることが見出された。
【0015】
我々の早期薬物介入に関する論理的説明を以下に示す。ウイルス病原性の研究から、病気の発生における第一の工程は、宿主である被検者へのウイルスの侵入であることが明確に実証されている。ヒトにおける主要な侵入経路の1つは、気道を介した経路である。気道は、上皮細胞および樹状細胞で占められている。上皮細胞は様々な分子表面構造を有しており、これらはウイルス付着タンパク質と相互作用する細胞受容体として役立つ可能性がある。「見張り(sentinel)細胞」として作用する樹状細胞は、病原関連分子パターン(PAMP)を認識する分子表面構造を有する。これらのPAMPは、二本鎖RNAを特異的に認識する一連のToll様受容体(TLR)を含む。このTLRは、Toll様受容体3(TLR3)として知られている。
【0016】
既に知られているように、インフルエンザウイルスは、上気道および下気道で病気を引き起こす可能性がある。このウイルスの自然感染は、通常、比較的少量の(例えば10〜10PFUの)接種材料(ビリオン)がきっかけとなる。インフルエンザウイルスのビリオンは、口腔または鼻道を介して気道に侵入すると、感染しやすい上皮細胞および樹状細胞に分散すると予想される。これは、比較的わずかな細胞で最初に感染が成功する一連の確率論的な現象である。このようなウイルスによる病気発生における極めて初期の間に、口腔粘膜経路でアルフェロンLDO(ALFERON LDO(R))またはアンプリゲン(R)を投与することによって、感染細胞中で増殖したウイルスの直接的または間接的な生息による感染の転帰に有意に影響を与えると予想される。感染していない上皮細胞および樹状細胞において、アルフェロンLDO(R)および/またはアンプリゲン(R)(これらは、数種の異なるメカニズムを介する抗ウイルス状態の強力な誘導剤である)の作用により、α/β−IFNが生産されるように誘導される可能性がある。
【0017】
この方策において認識すべき重要点は、天然に起こる感染の転帰としての臨床疾患の進行は、宿主内で最初のウイルス接種材料が増幅することを必要とするということである。明らかに、アルフェロンLDO(R)および/またはアンプリゲン(R)の早期の投与は、感染の後半の工程で感染が予想される感染しやすい細胞の数を効果的に減少させる。
【0018】
トリA/H5N1インフルエンザウイルスは、胃粘膜の細胞に感染することがわかっているため、気道中で局所的に、および、全身に作用することができる有効な薬物介入が非常に重要である。ウイルス増幅は、多数の臓器および組織で起こる可能性がある。通常、一次または二次ウイルス血症は、ウイルス増殖のサイクルとサイクルとの間に起こる。早期および持続的な治療的介入によって、病気の重症度および持続時間を減少させるものと期待される。
【0019】
我々は、低いレベルのウイルスがウイルス感染を引き起し、他の組織中において複製されたウイルスとしてウイルス蓄積が構築されることを発見した。この期間に、次第にウイルス感染の症状が起こる。ウイルス蓄積量が多いと治療剤の抗ウイルス作用を圧倒する可能性があるため、治療を受ける被検者におけるウイルスのレベルは決定的な重要性を有する。ある種の状況においては、低いレベルのウイルスと接触して症状が現れたら、抗ウイルス薬が治療に用いられる。本発明によれば、より高いウイルス蓄積に対しては効果を失う可能性がある薬物が、より低いウイルス蓄積に対して有効性を示すため、有効であると予想される。
【0020】
ミスマッチを有するdsRNAは、一般式rI・r(C11〜14U))で示すことができ、好ましくはrI・r(C12U)であり、ここで式中nは、40〜40,000の値を有する整数である。上記式およびそれに関連するその他の式に関して、rは、リボである。本発明において使用するためのその他のミスマッチを有するdsRNAは、ポリ(C,U)、および、ポリ(C,G)(式中mは、4〜29の値を有する整数である)から選択されるコポリヌクレオチド(co−polynucleotide)に基づいており、これは、ポリリボシチジル酸(rC)鎖に沿って対を形成していない塩基(ウラシルまたはグアニン)が包含されるようにrI・rCを改変することによって形成された、ポリリボイノシン酸およびポリリボシチジル酸の複合体のミスマッチを有する類似体である。あるいは、このようなdsRNAは、ポリリボイノシン酸(rI)のリボシル主鎖を改変することによって、例えば2’−O−メチルリボシル残基を包含させることによって、r(I)・r(C)dsRNAから誘導してもよい。このようなミスマッチを有するものを、リシンセルロースのようなRNAを安定化するポリマーと共に複合体化してもよい。これらのミスマッチを有するrI・rC類似体のなかでも、好ましい類似体は、一般式rI・r(C11〜14,U)、または、rI・r(C29,G)で示されるものであり、これは、Ts’oおよびCarterによって米国特許第4,024,222号および4,130,641号で説明されている(この開示は、参照により本発明に含まれる)。そこで説明されているdsRNAは、一般的に、本発明に係る使用に適している。
【0021】
本発明で使用するためのミスマッチを有するdsRNAのその他の例としては、以下が挙げられる:
r(I)・r(C,U)、
r(I)・r(C,U)、
r(I)・r(C13、U)、
r(I)・r(C22,U)、
r(I)・r(C20,G)、および、
r(I)・r(Cp・23,G>p)。
【0022】
被検者(例えば、150ポンドのヒト)にとって、感染またはウイルス感染の症状の発病の前のdsRNAの用量は、0.1〜25,000μgの範囲であってもよく、好ましくは0.5〜5,000μgである。被検者においてウイルス感染の症状が発症したら、dsRNAの用量は、0.1〜25,000μgの範囲であってもよく、好ましくは0.5〜5,000μgである。鼻腔内投与が好ましい。
【0023】
あるいは、dsRNAは、マッチしていてもよい(すなわち、ミスマッチを有する形態でなくてもよい)。従って、ポリウリジル酸と複合体化したポリアデニル酸(ポリA・ポリU)も使用できる。このようなマッチしたdsRNAは、静脈内、筋肉内、鼻腔内、または、局所投与が可能である。
【0024】
投与用製剤としては、水溶液、シロップ、エリキシル、粉末、顆粒、錠剤、および、カプセルが挙げられ、これらは、典型的には、結合剤、充填剤、潤滑剤、崩壊剤、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、保存剤、緩衝塩、矯味矯臭薬剤、着色剤および/または甘味剤のような従来の賦形剤を含む。これらは、スプレーまたはネブライザーを用いて経鼻的に適用してもよい。当然のことながら、好ましい経路は、レシピエントの状態および年齢、感染の性質、および、選択された活性成分に応じて様々であると予想される。
【0025】
本発明の任意のα−インターフェロン成分は、好ましくはアルフェロンN(R)注射剤であり、これは、米国で入手可能な唯一の承認された天然型の複数種のα−インターフェロンである。これは、最初の自然源から得られた複数種のインターフェロンであり、少なくとも7種のα−インターフェロンの安定した混合物である。このインターフェロンは、好ましくは、少なくとも7種のヒトα−インターフェロンの天然型カクテルである。それに対して、その他の入手可能なα−インターフェロンは、DNA組換え技術を用いて細菌で製造された単一の分子種のα−インターフェロンである。これらの単一の分子種のα−インターフェロンはまた、重要な構造的な炭水化物成分も欠いており、これはなぜなら、細菌による処理工程中にそれらのグリコシル化工程が行われないためである。
【0026】
組換え技術によって生産されたα−インターフェロン種とは異なり、アルフェロンN(R)注射剤は、複数のα−インターフェロン種をグリコシル化することができるヒト白血球によって生産される。逆相HPLCを用いた研究から、アルフェロンN(R)注射剤は、少なくとも7種のアルファ−インターフェロン(α2、α4、α7、α8、α10、α16、および、α17)の安定した混合物であることがわかっている。この天然源から得られたインターフェロンは、それらと遺伝操作されたインターフェロンとを区別する特有の抗ウイルス特性を有する。高純度のアルフェロンN(R)注射剤は、その7種のインターフェロンの天然型混合物としての利点を有し、7種のインターフェロンのうちいくつか(例えば8b種)は、例えばイントロンA(INTRON A(R))の唯一の成分である2b3種などの他の種よりも大きい抗ウイルス活性を有する。例えば慢性C型肝炎ウィルス(HCV)およびHIV感染の治療における優れた抗ウイルス活性、および、イントロンA(R)およびロフェロンA(ROFERON A(R))のようなその他の入手可能な組換えインターフェロンと比較したアルフェロンN(R)注射剤の許容性が報告されている。アルフェロンN(R)注射剤は、5,000,000国際単位(IU)/mlを含む注射用溶液として入手可能である。
【0027】
α−インターフェロンは、体内に投与するために、例えば経口、経鼻または口腔内投与に関する従来の方式で製剤化することができる。経口投与のための製剤としては、水溶液、シロップ、エリキシル、粉末、顆粒、錠剤、および、カプセルが挙げられ、これらは、典型的には、結合剤、充填剤、潤滑剤、崩壊剤、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、保存剤、緩衝塩、矯味矯臭薬剤、着色剤、および/または、甘味剤のような従来の賦形剤を含む。α−インターフェロンは、適切な経路によって投与することが好ましく、例えば、経口、経鼻、非経口(例えば、注射)、または、局所(例えば、経皮、口腔内および舌下)で投与してもよい。当然のことながら、好ましい経路は、レシピエントの状態および年齢、感染の性質、および、選択された活性成分に応じて様々であると予想される。
【0028】
上記成分の推奨される投与量は、患者の臨床状態、および、類似の感染を治療することに関する臨床医の知識に依存すると予想される。一般的なガイドラインとして、全身感染の場合に利用されるアルフェロンN(R)注射剤の用量は、5〜1000万単位を(例えば、皮下注射で)週3回である。これまでの知識から、3IU/ポンド(患者の体重)を超える投与量が用いられる。経口α−インターフェロン(アルフェロンLDO(R))は、500〜10,000lU/日の範囲を含む液状の溶液として投与されており、150ポンドのヒトが1日あたり3.3〜66.0IU/ポンドであることに基づき計算される。
【0029】
我々の経験から、450IUを超えるα−インターフェロンの用量レベル、すなわち3IU/ポンド(体重)より大きい用量レベルで有益な結果が得られることが示されている。このような量は、米国特許第5,910,304号のCumminによる、アルファ−インターフェロンを経口的に、またはロゼンジもしくは錠剤として咽頭粘膜に投与する際の使用量とは対照的であり、それより多い。
【0030】
被検者の口腔粘膜に低い用量のα−インターフェロンを曝露することにより、ヒトおよび動物において生物学的作用が生じることが報告されている。しかしながら、健康管理を担う人であれば、全身性の抗ウイルス作用を達成するための低い用量の経口α−インターフェロンの最適な用量およびスケジュールを決定できるものと予想される。自然に誘導されたアルファα−インターフェロン(アルフェロンN(R)注射剤)は、尖圭コンジロームを治療するために承認されている。これは、組換えα−インターフェロンで用いられる用量よりも有意に低い用量で活性を示す。
【実施例】
【0031】
実施例1
アンプリゲン(R)を雄および雌のCD−1マウスの鼻腔内へ4週間繰り返して滴下して注入した後に、アンプリゲン(R)が起こす可能性がある毒性を評価した。その結果から、アンプリゲンは、これまでにその他のTLR活性化剤で報告されていた毒性を生じないことが示された。
【0032】
3グループのマウスを、0.4、2および10μg/注射の用量レベルで週1回、連続4週間治療した。コントロールグループには、0.9%塩化ナトリウムを滴下した。実験において生存しているフェーズ中に、マウスの罹患率および死亡率、臨床徴候、ならびに体重変化を観察した。死後に、臨床的な病理パラメーターの測定、臓器重量、全体的な剖検所見および組織病理を評価した。
【0033】
罹患率および死亡率、臨床徴候、体重、臓器重量、ならびに臨床的な病理パラメーターにおいて、アンプリゲン(R)に関連する所見は観察されなかった。
治療に関連する作用は、最小の肺胞マクロファージの過形成だけであり、これは、コントロールグループを含む全ての治療群で観察された。しかしながら、肺胞マクロファージの過形成は、肺中に滴下された粒子に対する肺の典型的な応答である。その発生は、より高い用量のグループよりも多かったが、その傾向は統計学的に有意ではなかった。
【0034】
アンプリゲン(R)の滴下注入1回あたり10μg以下の濃度での鼻腔内投与は、繰り返しの用量での治療から4週間後の雄および雌のCD−1マウスに対して作用がなかった。
【0035】
実施例2
2種のアヒルウイルスH5N1株、および、2種のインフルエンザウイルスH1N1株を用いて、マウスにおけるインフルエンザAウイルスに対するアンプリゲン(R)の活性を研究した。様々なレベルのウイルスでマウスを攻撃した。インフルエンザウイルスの投与前にアンプリゲン(R)を投与し、その結果を以下の表に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
本発明を、現在のところ最も実用的で好ましい実施態様とみなされるものに関して説明したが、当然のことながら、本発明は開示された実施態様に限定されず、それとは逆に、添付の請求項の本質および範囲内に含まれる様々な改変および等価な構成を包含することを目的とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスに曝露された被検者に、予防的な量または症状を緩和する量のdsRNAを投与し、被検者の症状が改善されるまで投与を継続することを含む、ウイルス感染の症状を緩和する方法。
【請求項2】
前記dsRNAが、被検者のウイルス蓄積が実質的な総体的症状が発生したと評価されるようなレベルに到達する前に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記dsRNAが、ミスマッチを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記dsRNAが、rI・r(C11〜14U)、ポリA・ポリU、または、rI・r(C29,G)(式中rはリボである)である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記dsRNAが、被検者に経鼻投与される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記dsRNAが、被検者の血液脳関門の完全性を強化し、それによって被検者の体の経鼻経路および口腔内領域を介して被検者の体に侵入したウイルスがさらに体内で移動しないようにするために投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記dsRNAが、被検者の気道内でTLR3受容体を介して特異的に作用し、さもなくば致死性であるウイルスの複数種の遺伝学的変異株を効果的に不能化する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記dsRNAが、被検者の鼻腔内に適用された場合に十分な耐容性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記dsRNAが、ワクチン成分が被検者の嗅球およびその他の脳神経へ移動しないようにする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記dsRNAと、ヒトアルファ−インターフェロンの天然型カクテルとを共に局所投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ウイルスに曝露された被検者における、治療前または後24時間以内のウイルス感染治療で使用するのに有効な量のdsRNA。
【請求項12】
ウイルスに曝露された被検者における、治療前または後24時間以内のウイルス感染治療のための医薬品の製造における、有効量のdsRNAの使用。

【公表番号】特表2010−530423(P2010−530423A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513224(P2010−513224)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/007529
【国際公開番号】WO2008/156753
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(508170438)へミスフェリックス・バイオファーマ,インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】