説明

免疫調節を誘起するための結合分子の送達

本発明は、患者に免疫調節を誘起するための抗体、抗体断片、単一抗体可変ドメイン、可溶受容体、リガンドおよびドミナントネガティブ変異体などの結合分子の送達に関する。より具体的には、本発明は、前記結合分子生成微生物を含む医薬品の生成、および免疫介在性疾患の治療におけるこの医薬品の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に免疫調節を誘起するための抗体、抗体断片、単一抗体可変ドメイン、可溶受容体、リガンドおよびドミナントネガティブ変異体などの結合分子の送達に関する。より具体的には、本発明は、前記結合分子を生成する微生物を含む医薬品の生成、および免疫介在性疾患、好ましくはT細胞介在性疾患の治療におけるこの医薬品の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫介在性疾患とは身体の免疫系(先天的かつ適応的)の異常な活性に起因する状態である。これらの疾患には、アレルギー、自己免疫疾患、食物不耐性、移植片拒絶、過敏性腸症候群(IBS)および炎症性疾患が含まれる。
【0003】
T細胞介在性疾患とは炎症性疾患、自己免疫疾患、器官および骨髄移植拒絶、およびT細胞介在性免疫応答に関連した他の疾患を意味し、急性または慢性炎症、アレルギー、接触皮膚炎、乾癬、関節リウマチ、多発性硬化症、I型糖尿病、炎症性腸疾患(IBD)クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、ギランバレー症候群、移植片対宿主病(および器官または骨髄移植拒絶の他の形態)ならびに紅斑性狼瘡が含まれる。
【0004】
炎症性腸疾患(IBD)とは、胃腸管の部分的な慢性非特異性炎症が特徴である胃腸管または消化管障害の群を意味する。ヒトでのIBDの最も顕著な例には、潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病(CD)が含まれる。IBDの1種の、または複数の病因は不明である。IBD疾患は腸管における炎症応答の活性化が抑制不能になることに起因すると思われる。この炎症性カスケードは炎症誘発性サイトカインの作用およびリンパ球サブセットの選択的活性化を経て永続化されると考えられる。UCおよびCDは、小児発育遅延、直腸脱、血便、消耗、鉄欠乏および貧血症といった多くの症状および合併症を伴う。UCは、初めに大腸粘膜に出現する慢性的かつ非特異的な炎症性および潰瘍性疾患を意味する。UCの多くは血性下痢、腹部疝痛、血液および粘液混便、倦怠感、発熱、貧血、食欲不振、体重減少、白血球増加症、低アルブミン血症および赤血球沈降速度上昇が特徴的である。
【0005】
T細胞介在性疾患などの免疫介在性疾患を治療する、最も一般的に使用する医薬品には、例えば副腎皮質ステロイドならびにサリチル酸塩、例えばスルファサラジンおよびその誘導体などの抗炎症薬が含まれる。それらの薬剤に反応しない患者には、シクロスポリンA、メルカプトプリンおよびアザチオプリンなどの免疫抑制薬を使用する。しかしこれらの医薬品はすべて重篤な副作用をもたらす。
【0006】
IBDおよび関節リウマチの治療開発における近年の成功は、TNFまたはその受容体の作用を遮断する化合物を使用することにある。この点において、TNF抗体の使用は最も有望で新たな療法の1つである。腫瘍壊死因子α(TNFα)は単球およびマクロファージなどの多種の細胞型により産生されるサイトカインであり、サイトカインは当初、特定のマウス腫瘍壊死の誘起能に基づいて同定された(例えばOld, L.(1985) Science 230:630-632参照)。TNFαは敗血症、感染症、自己免疫疾患、移植拒絶および移植片対宿主病などの多様な他のヒトの病気および疾患の病態生理に関与している(例えばMoeller, Aら、(1990)Cytokine 2:162-169;Moellerらが取得した米国特許第5,231,024号;Moeller, A. らによる欧州特許第260610号(B1);Vasilli. P. (1992) Annu.Rev.lmmunol. 10:411-452; Tracey, KJ.およびCerami, A. (1994) Annu. Rev. Med. 45:491-503)。多様なヒト疾患におけるヒトTNFα(hTNFα)の有害な役割のために、治療方針はhTNFα活性を阻害または妨害するように策定された。特に、hTNFαに結合し、無効化する抗体はhTNFα活性を阻害する手段として探求された。
【0007】
数種の抗体製剤をIBDを治療するために試験されてきた。第II相臨床試験でポリクローナル抗体を試験してきたが、明らかにモノクローナル抗体が好ましい。インフリキシマブはIgG1Kサブクラスのキメラヒト‐マウスモノクローナル抗体であり、これは細胞膜上で、および血液中でTNFαを特異的に標的にし、TNFαに不可逆的に結合する。抗体インフリキシマブを5〜20mg/kg単回静脈内投与すると、活動性クローン病が大幅に臨床的に改善される。インフリキシマブは1998年にクローン病治療用に市販されている。
【0008】
キメラ抗体に関連した生じ得る問題を解決するため、ヒトモノクローナルTNFαアダリムマブを開発しており、クローン病を治療するため第III相臨床試験で現在試験している。患者の抗体の半減期を延長するために、Celltech社は、クローン病治療のために第III相臨床試験でも現在試験されているヒト化モノクローナルペグ化抗TNFα抗体であるCertolizumabpegolを開発した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,231,024号
【特許文献2】欧州特許第260610号
【特許文献3】WO97/14806
【特許文献4】WO00/23471
【特許文献5】WO01/98461
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Old, L.(1985) Science 230:630-632
【非特許文献2】Moeller, Aら、(1990)Cytokine 2:162-169
【非特許文献3】Vasilli. P. (1992) Annu.Rev.lmmunol. 10:411-452
【非特許文献4】Tracey, KJ.およびCerami, A. (1994) Annu. Rev. Med. 45:491-503
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、それらすべての場合で、抗体は全身投与、主に皮下注射で投与する。抗TNFα抗体を全身投与するとむしろ、頭痛、膿瘍、上気道感染症および疲労といった重篤な望ましからざる影響をまねく恐れがある。
【0012】
全身送達に関連した望ましからざる影響は、炎症部位に局部的に送達することで解決できた。腸管内の生物学的活性化合物の送達に有望な系はWO97/14806に開示してており、これにより乳酸菌などの非侵入性グラム陽性細菌が内蔵内で生物学的活性化合物を送達するために使用される。WO00/23471では、この系が回腸にIL‐10を送達するために使用可能であり、よってこの株がIBDの治療に使用可能であることを開示している。WO01/98461では、酵母を使用した代替的腸送達法を開示している。しかし生物学的活性化合物の送達を開示しているとはいえ、これらの文書は腸管内抗体などの結合分子の送達は教示していない。これらの結合分子、例えば抗体の折り畳みと分泌の両方とも重要な意味を持つことから、腸管内抗体などの活性結合分子のin situでの生成は容易なものではない。特に硫黄架橋による構造の安定化は、細菌または酵母中の抗体を生成する場合に問題を引き起こす恐れがある。さらに、IL‐10などのサイトカインが触媒機能を果たす一方で、抗体または他の結合分子は内因的に産生された炎症誘発性サイトカイン、ケモカインおよび/または成長因子を不活化および/または無効化するために十分な量を産生する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに本発明者らは、遺伝子操作された微生物による、結合分子、例えば抗TNFα抗体、抗IL12p40抗体および抗IL23p19抗体などの抗体、またはdnMCP‐1変異体などのドミナントネガティブ変異体の局所送達はIBDなどの免疫介在性疾患を治療するのに効果的に使用可能であることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】急性抗CD40誘導型大腸炎に対するインビボでのLL‐p19、LL‐p40 dAbおよびLL‐dnMCP‐1の効果
【図2】従来のT細胞誘導型大腸炎に対するインビボでのLL‐p19、LL‐p40dAbおよびLL‐dnMCP‐1の効果
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示全体にわたって、様々な刊行物、特許および公開特許明細書は、識別用の引用文献により参照される。これらの刊行物、特許および公開特許明細書の開示は明細書により、本発明が属する最新技術をより完全に記述するため参照により本開示に援用される。
【0016】
本発明の実施では、別段の指示がないかぎり、当技術分野の技術水準内にある有機化学、薬理学、分子生物学(組み換え技術など)、細胞生物学、生化学および免疫学の通常の技術が使用されることとなる。このような技術は「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」第2版(Sambrookら、1989);「Oligonucleotide Synthesis」(Gait編、1984);「Animal CellCulture」(Freshney編、1987);「Methods in Enzymology」シリーズ(Academic Press, Inc.);「Handbook of Experimental Immunology」(WeirおよびBlackwell編);「Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells」(MillerおよびCalos編、1987)、「Current Protocols in Molecular Biology」(Ausubelら編、1987、および定期刊行物) 「PolymeraseChain Reaction」(Mullisら編、1994);および「Current Protocols in Immunology」(Coliganら編、1991)などの文献で十分に説明されている。
【0017】
本明細書で用いるように、特定の用語は以下に定義した意味合いを持つ場合がある。明細書および請求項で用いるように、「ある」、「1つの」、「その」および「該」は、文脈上、別段明確な指示のある場合を除き、複数の引例を包含する。例えば用語「ある細胞」はその混合物をも含む複数の細胞を包含する。同様に、本明細書に記述した医薬品で治療または処方するための「ある化合物」の使用は、文脈上、別段明確な指示のある場合を除き、このような治療または処方のための本発明の1種以上の化合物を使用することを意図している。
【0018】
本明細書で用いるように、用語「含む」は、化合物および方法が引用した要素を包含していることを意味するように意図されているが、その他のもの自体を除外するわけではない。用語「含む」は「本質的に〜のみから成る」を含む。組成物および方法を定義するために用いる「本質的に〜のみから成る」は、その複合体には任意に不可欠なほど重要な他の要素を除外することを意味するものとする。したがって、本明細書で定義した要素から本質的に成る組成物は、リン酸緩衝生理食塩水、保存料等の医薬的に許容できる担体の単離法および精製法を経た微量夾雑物質を除外するものではない。「〜のみから成る」は他の成分の微量な要素や本発明の組成物を投与する実質的な方法工程以外のものを除外することを意味するものとする。
【0019】
本発明の第1の態様は、免疫介在性疾患、好ましくはT細胞介在性疾患を治療する医薬品を調製するための結合分子生成微生物の使用である。好ましくは、抗体、抗体断片、dAb、二重特異性抗体、三重特異性抗体、多重特異性抗体、二価抗体、三価抗体、多価抗体、VHH、ナノボディ、Fab、scFv、Fv、dAb、Fd、ダイアボディ、トリアボディ、単鎖抗体、単ドメイン抗体、単一抗体可変ドメイン、可溶受容体、CTLD誘導結合剤、三量体誘導結合剤、リガンドおよび/またはドミナントネガティブ変異体などの結合分子を生成する遺伝子改変された微生物の使用。結合分子は、患者の炎症応答を調節する炎症誘発性サイトカインまたはその受容体、ケモカイン、同時刺激分子、接着分子または酵素などの標的分子に結合可能である。
【0020】
本明細書で使用する用語「結合分子」は、互いに結合特異性を有する一対の分子の一方、例えば、ある標的分子に対して結合特異的である結合分子を意味する。特異性結合対を構成するものは自然に誘導されているか、または全体的にもしくは部分的に合成設計されているものでよい。一対の分子の一方は、分子対の他方の特定の空間的かつ極性構成物に特異的に結合し、よってそれに相補的である表面または窩洞に1つの領域を有する。したがってその対を構成するものは互いに特異的に結合する特性を有する。特異的結合対の型の例には、抗原‐抗体、ビオチン‐アビジン、ホルモン‐ホルモン受容体、リガンド‐リガンド受容体、酵素‐基質が含まれる。特異的結合対の他の例には、炭水化物およびレクチン、相補的ヌクレオチド配列(標的核酸配列を検出するDNAハイブリダイゼーションアッセイに使用するプローブおよび捕捉核酸配列など)、組み換え法で形成されるものも含む相補的ペプチド配列、作動体および受容体分子、酵素補因子および酵素、酵素阻害剤および酵素等が含まれる。さらに、特異的結合対は最初の特異的結合分子の類似体または断片である構成員を含むことが可能である。一実施態様では、サイトカインなどのある標的分子に結合可能な結合分子は、表面プラズモン共鳴で測定して、10−6M、10−7M、10−8M以下である、標的分子、例えばサイトカインに対する結合親和性(Kd)を有する本発明にしたがったポリペプチドをもたらす。他の有用な実施態様では、Kd値は10−9M、10−10M、10−11M、10−12M、10−13M、10−14M未満または10−15M未満である。さらなる実施態様では、本発明にしたがった三量体ポリペプチドに対するK‐off速度はプラズモン共鳴での測定で1未満である。本明細書で使用する用語「K‐off」は特異的結合分子/サイトカイン複合体のうちの特異的結合を構成するもののoff解離速度定数を意味するように意図されている。本明細書で使用する用語「表面プラズモン共鳴」は、例えばBIAcoreシステム(Pharmacia Biosensor AB, Uppsala、スウェーデン)を使用してバイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することで実時間生体特異的相互作用の分析を可能にする光学現象を意味する。上述したとおり、本発明にしたがった結合分子がサイトカインまたはケモカインなど標的分子の生物活性を、少なくとも部分的に、または完全に遮断、阻害または無効化することが好ましい。本明細書で使用するように、表現「無効化する」または「無効化」は、例えば実施例で詳述するような当技術分野で公知の方法によりインビボまたはインビトロで測定したサイトカインの生物活性を阻害または低減させることを意味する。特に、阻害または低減は、大腸炎症スコアを判定することで、またはある組織もしくは血液試料中の標的分子を判定することで測定してもよい。本明細書で使用するように、表現「無効化する」または「無効化」は、インビボまたはインビトロで測定したサイトカインの生物活性を少なくとも10%以上、より好ましくは少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、さらにいっそう好ましくは100%、阻害または低減することを意味する。
【0021】
好ましくは、前記結合分子は、IL‐1β、IL‐2、IL‐4、IL‐5、IL−6、IL‐7、IL‐8、IL‐9、IL‐12(またはそのサブユニットIL‐12p35およびIL12p40)、IL‐13、IL‐15、IL‐16、IL‐17、IL‐18、IL‐21、IL‐23(またはそのサブユニットIL‐23p19)、IL‐27、IL‐32(およびそのスプライス変異体)、IFN(α、β、γ)およびTNFαのリストから選択されるサイトカインに結合して、その生物学的効果を阻害する。前記結合分子はgp130などの可溶サイトカイン受容体であるか、あるいは炎症シグナルを誘発せずに前記サイトカイン、例えばIL‐2R(CD25、CD122、CD132)、IL‐12R(ベータ1、ベータ2)、IL15R、IL‐17R、IL‐23RまたはIL‐6Rの受容体に結合していることが好ましい。好ましくは、前記結合分子はMIF、MIP‐1α、MCP‐1、RANTESおよびエオタキシンのリストから選択されるケモカインを無効化している。好ましくは、前記結合分子はCD3/CD28、HVEM、B7.1/B7.2、CD40/CD40L(CD154)、ICOS/ICOSL、OX40/X40L、CD27/CD27L(CD70)、CD30/CD30L(CD153)および41BB/41BBLのリストから選択された共刺激分子への結合を介して免疫活性化の障害を解決している。好ましくは、前記結合分子はリスト、I−CAM1、α4インテグリンおよびα4β7インテグリンから選択される接着分子への結合を介して炎症の障害を解決している。好ましくは、前記結合分子はCD3、CTLA4および/またはPD1に対する共刺激効果およびアゴニスト効果を有する。好ましくは、前記結合分子はCD25、CD20、CD52、CD95、BAFF、APRILおよび/またはIgEを標的にすることでT細胞またはB細胞活性を無効化する。好ましくは、前記結合分子はMMPファミリーから選択した酵素への結合を介して炎症の障害を解決する。好ましくは、前記結合分子はαvβ3/α5β1およびIL‐8活性を無効化することなど抗血管形成効果を示す。さらに好ましい実施態様では、前記結合分子はTNFα、IL‐12、IFNγ、IL‐23またはIL‐17の生物学的影響を無効化することが可能である。好ましくは、前記結合分子は以下から成る群より選択される
―抗TNFα抗体、抗TNFα抗体断片、抗TNFα単一抗体可変ドメイン、可溶TNF受容体またはTNFαのドミナントネガティブ変異体;
―抗IL‐12抗体、抗IL‐12抗体断片、抗IL‐12単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐12受容体、IL‐12のドミナントネガティブ変異体またはIL‐12dAb;
―抗IL‐12p35抗体,抗IL‐12p35抗体断片、抗IL‐12p35単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐12p35受容体、IL‐12p35のドミナントネガティブ変異体またはIL‐12p35dAb;
―抗IL‐12p40抗体,抗IL‐12p40抗体断片、抗IL‐12p40単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐12p40受容体、IL‐12p40のドミナントネガティブ変異体またはIL‐12p40dAb;
―抗IL‐23抗体,抗IL‐23抗体断片、抗IL‐23単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐23受容体、IL‐23のドミナントネガティブ変異体またはIL‐23dAb;
―抗IL‐23p19抗体、抗IL‐23p19抗体断片、抗IL‐23p19単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐23p19受容体、IL‐23p19のドミナントネガティブ変異体またはIL‐23p19dAb;
―抗IFNγ抗体、抗IFNγ抗体断片、抗IFNγ単一抗体可変ドメイン、可溶IFNγ受容体またはIFNγのドミナントネガティブ変異体;
―抗IL‐17抗体、抗IL‐17抗体断片、抗IL‐17単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐17受容体、IL‐17のドミナントネガティブ変異体またはIL‐17dAb;および
―抗MCP‐1抗体、抗MCP‐1抗体断片、抗MCP‐1単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐17受容体、MCP‐1のドミナントネガティブ変異体またはMCP‐1dAb。
【0022】
本発明はまた、標的分子のアンタゴニスト活性またはアゴニスト活性を有する結合分子に関する。本発明では、用語「アンタゴニスト」または「アンタゴニスト活性」は化学物質間の相互作用を意味し、ここでは一方、すなわち結合分子が、他方、すなわち標的分子、特に所与の受容体に対して親和性は高いが、この受容体を活性化しない薬剤の効果を部分的に、または全体的に阻害または無効化している。本発明では、用語「アゴニスト」または「アゴニスト活性」は、1つの薬剤、すなわち受容体に結合し、かつ本質的効果を有する結合分子に関連している。
【0023】
好ましくは、前記の遺伝子改変した微生物は乳酸菌または酵母である。乳酸菌による生物活性ポリペプチドの動物体内への送達はWO9714806に開示しており;酵母によるペプチドの腸管への送達はWO0198461に記述している。しかしこれらの文書にはどれも結合分子の腸管への送達について記述していない。生物活性結合分子のインビボでの生成、分泌および送達は不明瞭なものであり、なぜなら、例えば抗体、抗体断片、dAb、二重特異性抗体、三重特異性抗体、多重特異性抗体、二価抗体、三価抗体、多価抗体、VHH、ナノボディ、Fab、scFv、Fv、dAb、Fd、ダイアボディ、トリアボディ、単鎖抗体、単ドメイン抗体、単一抗体可変ドメイン、可溶受容体、CTLD誘導結合剤、三量体誘導結合剤、リガンドおよび/またはドミナントネガティブ変異体などの結合分子は正確に折り畳まれ、分泌される必要があり、無効化活性を得るためにこのような分子は十分に分泌される必要があるからである。
【0024】
異種宿主細胞、すなわち組み換えタンパク質を生成するための微生物は当技術分野で公知であり、例えば細菌または酵母であり得る。好ましくは、前記微生物は乳酸菌である。好ましい一実施態様では、前記の遺伝子改変された微生物はラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)株、好ましくは遺伝学的に前記のラクトコッカス・ラクティスThyA突然変異体である。特に好ましい実施態様は、THYA遺伝子を破壊するために結合分子、例えば抗TNF‐α抗体をコードする遺伝子を使用しているラクトコッカス・ラクティスThyA突然変異体の使用である。別の好ましい実施態様では、前記乳酸菌はラクトバチルス種(Lactobacillus sp.)である。
【0025】
別の好ましい実施態様では、酵母は結合分子を送達するために使用する。好ましくは、前記酵母はセレヴィシエ(cerevisiae)などのサッカロマイセス種(Saccharomycessp)であり、さらにいっそう好ましくは、前記酵母はサッカロマイセス・セレヴィシエ亜種(Saccharomyces cerevisiae subsp.)のブラウディ(Boulardii)である。例えばCTLD誘導結合剤および三量体誘導型結合剤などの本発明の活性結合分子は本発明の微生物中で容易に発現可能であり、生産コストを大幅に削減できる利点があり、生産能力に限界もない。
【0026】
本明細書で使用のIBDには慢性大腸炎、潰瘍性大腸炎およびクローン病が含まれるがこれらに限定されない。IBDは慢性大腸炎であることが好ましい。したがって本発明は、前記免疫介在性疾患がT細胞介在性疾患、炎症性疾患、自己免疫性およびアレルギー性疾患ならびに器官および骨髄移植拒絶から成る群より選択されている本明細書で定義した使用を提供する。前記免疫介在性疾患はT細胞介在性疾患であることが好ましい。代替的な好ましい一実施態様では、前記T細胞介在性疾患はクローン病である。さらに好ましい実施態様では、前記T細胞介在性疾患は潰瘍性大腸炎である。
【0027】
本発明の別の態様は、少なくとも1種の遺伝子改変した結合分子生成微生物を含む粘膜投与用医薬組成物である。
【0028】
本発明にしたがった結合分子は、上述したように互いに結合特異性を有する1対の分子のいずれかのメンバーとすることが可能である。好ましくは、前記結合分子は抗体、抗体断片、dAb、二重特異性抗体、三重特異性抗体、多重特異性抗体、二価抗体、三価抗体、多価抗体、VHH、ナノボディ、Fab、scFv、Fv、dAb、Fd、ダイアボディ、トリアボディ、単鎖抗体、単ドメイン抗体、単一抗体可変ドメイン、可溶受容体、CTLD誘導結合剤、三量体誘導結合剤、リガンドおよび/またはドミナントネガティブ変異体である。
【0029】
本発明にしたがった結合分子は単量体または多量体として微生物により生成可能である。多量体はN量体で表してもよく、N≧2であり、例えば二量体または三量体である。多量体はホモ多量体であってもよく、すなわち結合分子を構成する部分すべてが実質的に同一であるか、あるいは多量体はヘテロ多量体であってもよく、すなわち結合分子を構成する部分すべてが実質的に同一でなくともよい。当業者には当然のことながら、本発明が多量体へと重合し得る単量体にも関連している。
【0030】
本発明の分子が2つの機能(異なっているか、または同一)を結合している場合、その分子は二機能性であると言われる。同様に、本発明の分子が3つ、あるいは3つ以上の異なった、あるいは同一の機能を結合している場合、その分子はそれぞれ三機能性、多機能性であると言われる。本発明の分子が異なる特異性を有する2つ、3つまたはそれ以上の結合部分を結合している場合、その分子はそれぞれ二重特異性、三重特異性または多重特異性であると言われる。本発明の分子が、同一の特異性を有する2つ、3つまたはそれ以上の結合部分を結合している場合、その分子は、結合特異性に関してそれぞれ二価、三価または多価であると言われる。二価抗体は一価抗体より驚くほど良好に作用する。二価抗体は一価抗体より大きいが、ラクトコッカスなどの乳酸菌の生成には影響を及ぼさない。二価抗体の生成は一価抗体よりも良好であるとは言えないまでも、少なくとも同じくらい良好であることが分かった。二価抗体の有効性、例えば無効化効果は、一価抗体の効果よりももっと顕著である。
【0031】
本文脈において、用語「抗体」は天然の、または部分的もしくは全体的に操作された免疫グロブリンを意味するのに使用している。抗体は多様な方法で改変できることから、用語「抗体」は、上記で定義されているように、1対の分子の他方、すなわち標的分子に対して必要な結合特異性を持つ結合ドメインを有する任意の特異性結合分子または物質を対象とすると解釈すべきである。したがってこの用語は抗体断片、抗体の誘導体、機能的同等物および相同体、ならびに単鎖抗体、二機能性抗体、二価抗体、VHH、ナノボディ、Fab、scFv、Fv、dAb、Fd、ダイアボディ、トリアボディおよびラクダ科動物抗体を対象とし、天然の、または全体的もしくは部分的に操作された免疫グロブリン結合ドメインを含む任意のポリペプチドも含まれる。したがって、他方のポリペプチドに融合した、免疫グロブリン結合ドメイン含有キメラ分子または同等物も含まれる。その用語はまた、抗体結合ドメインであるか、あるいは抗体結合ドメインに相同の結合ドメインを有する任意のポリペプチドまたはタンパク質、例えば抗体模倣体をも対象とする。抗体の例としては免疫グロブリンのアイソタイプおよびそのアイソタイプのサブクラスが含まれ、IgG、IgAおよびIgEも含まれる。したがって、当業者にとって当然のことながら、本発明がVHH、ナノボディ、Fab、scFv、Fv、dAb、Fd、ダイアボディおよびトリアボディなどの抗原結合ドメインを含む抗体断片にも関連する。
【0032】
本明細書で使用する「ドミナントネガティブ変異体」は正常タンパク質、野生型タンパク質の機能に悪影響を及ぼすタンパク質を生成する突然変異体を意味する。本明細書で使用する用語「単一抗体可変ドメイン」(dAb)は、抗体可変ドメインに特徴的である配列を含む折り畳みポリペプチドドメインを意味する。したがってそれは、完全抗体可変ドメイン、VHHおよびナノボディなどの単一ドメイン抗体、および例えば1つ以上のループがさらなる配列で置換されている改変された可変ドメイン、あるいは切断した、またはNもしくはC末端伸張を含む抗体可変ドメイン、ならびに全長ドメインの結合活性および特異性を、少なくとも部分的に保持する可変ドメインの折り畳み断片をも含む。さらに、用語dAbは、その範囲内で、1つ以上の超可変ループおよび/またはCDRが第二の可変ドメイン由来のもので置換されているその単一抗体可変ドメインを含み、それらドメインは同一の起源でも、あるいは異なる起源由来でもよい。
【0033】
当技術分野で公知の方法または任意の将来的な方法により、複数の単一ドメイン抗体は結合して、2種以上の単一ドメイン抗体を含む本明細書に開示した任意のポリペプチドを形成してもよい。例えば、単一ドメイン抗体はDNAレベルで遺伝子融合してもよく、すなわち1種以上の抗標的単一ドメイン抗体および1種以上の抗血清タンパク質単一ドメイン抗体を含む完全ポリペプチド構造体をコードするポリヌクレオチド構造体が生じる。二価または多価単一ドメイン抗体、すなわちVHHポリペプチド構造体の生成法がPCT特許出願WO96/34103に開示している。複数の単一ドメイン抗体を結合させる1つの方法は、直接に、またはペプチドリンカーを介して単一ドメイン抗体コード配列を結合させることによる遺伝子的手段を介している。例えば、最初の単一ドメイン抗体のC末端は次の単一ドメイン抗体のN末端に連結していてもよい。トリ‐、テトラ‐等の機能的構造体の構築および生成用の付加的な単一ドメイン抗体を連結させる目的で、この連結様式は拡大することが可能である。
【0034】
本発明の一態様によれば、リンカーを使用せず、複数の単一ドメイン抗体は互いに直接連結している。通常の連結している巨大抗体では2つのサブユニットにおいて結合活性を保持するためにリンカー配列が必要であるのに対して、本発明のポリペプチドは直接連結し、それによりヒト検体に投与したときの抗原性、サブユニットを解離させるリンカー配列の不安定性などのリンカー配列の起こり得る問題を回避することが可能である。
【0035】
本発明の別の態様によれば、ペプチドリンカー配列を介して単一ドメイン抗体は互いに連結している。このようなリンカー配列は天然配列または非天然配列であってもよい。リンカー配列は、結合分子が投与される被験体において非免疫原性であることが好ましい。リンカー配列は多価結合分子に対して十分な柔軟性を示し、同時にタンパク質分解耐性である可能性がある。リンカー配列の非限定的例としては、単一ドメイン抗体のヒンジ領域、すなわちWO96/34103に記述されているVHHから得られる配列である。
【0036】
天然に軽鎖を持たない重鎖抗体由来可変ドメインであるVHHは、4重鎖免疫グロブリンの通常のVHからそれを見出したWO94/04678に記述されているVHHまたはナノボディとして本明細書では公知のものである。このようなVHH分子は、ラクダ科(Camelidae)、例えばラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、アルパカおよびグアナコで生成される抗体から採取可能である。ラクダ科以外の他の種でも天然に軽鎖を持たない重鎖抗体を生成する場合がある;このようなVHHは本発明の範囲内にある。VHH分子はIgG分子より約10倍小さい。それらは単一ポリペプチドであり、非常に安定的で、極端なpHおよび温度条件に耐性がある。さらにそれらは通常の抗体には当てはまらないプロテアーゼ作用耐性を有する。
【0037】
ダイアボディは、機能的形態でかつ高収率(最大1g/l)で細菌および酵母中で発現可能な二価および二重特異性の小さい抗体断片のクラスである。ダイアボディは、小さすぎて同一の鎖上の2つのドメイン間で対を作れないペプチドリンカーによって結合している同一のポリペプチド鎖(VH‐VL)上で、軽鎖可変ドメイン(VL)と結合している重(VH)鎖可変ドメインを含む。このことにより、もう一方の鎖の相補的ドメインとの対が強引に作られ、2つの機能的抗原結合部位を有する二量体分子が集合する。IgGと比較して、二価ダイアボディでは親scFv分子よりも解離速度(Koff)が劇的に低いことが示されている。二重特異性ダイアボディを効率的に生成するために、2つの異なる鎖をヘテロ二量体化することは、2つの同じ鎖のホモ二量体化することよりも好ましい必要がある。WO02/02781ではヘテロ二量体融合タンパク質が2つの鎖から成る1つの方法を記述しており、この方法では、VH‐VLまたはVL‐VH形態で免疫グロブリンの1つ以上の可変ドメインを含む第1の鎖が第1のヘテロ二量体化ドメインと対になり、第2の鎖は前記第1の鎖として同じ形態で免疫グロブリンの1つ以上の可変ドメインを含み、第一のヘテロ二量体化ドメインと特異的に相互作用する第2のヘテロ二量体化ドメインと対になっており、またこの方法では前記第1の鎖の少なくとも2つのドメインが前記第2の鎖の2つのドメインに対し固有の親和性を有している。
【0038】
VHとVLドメイン間のリンカーを<1〜2オングストロームまで縮めると、三量体分子、すなわちトリアボディの形成が促進される。トリアボディ構造を、(例えば3つの異なる抗体A、BおよびCの重鎖および軽鎖Vドメインを連結し、2つの異なる鎖VHA‐VLB、VHB‐VLCおよびVHC‐VLAを形成することによって)三価で三重特異性の抗体断片の設計および構築への青写真として使用してよい。トリアボディは、同じ分子上にある3つの異なる、または同一のエピトープに結合して、特に反復エピトープを提示する抗原表面に対して非常に高い見掛け上の親和性をもたらす可能性がある(IgMも同様)。3つ折対称を模倣でき得る三量体サイトカインを無効化する際にも3つ折対称は有利であり得る。
【0039】
scFv分子を含む二重特異性抗体(US5091513)は、例えばポリペプチドリンカーを介して両scFv分子の遺伝子カップリングにより構築可能である(US5637481)。リンカーがヘテロ二量体化ヘリックスを含む場合、四価Bs(scFv)2)2(BiDi‐ボディ)が形成される。
【0040】
C型レクチン様ドメイン誘導型結合剤(CTLD誘導型結合剤)は、1種以上のC型レクチン構造単位を含むヒトC型レクチンのファミリーに基づいた結合分子に関連している。CTLD誘導型結合剤は全体で、1つの共通構造核を共有し、これはリガンド結合部位が並んだ多くの個別ループ領域を適所に有する足場として作用する。好ましくは、C型レクチン様ドメイン誘導型結合剤(CTLD誘導型結合剤)は三量体化モジュールのみから成る第2の部分をさらに含む。三量体化は、単量体を結合させる、あるいは3つの分子クラスターで「重合」させる過程である。この付加的ドメインは、さらなるモノマーに固定された2つの他のサブユニットドメインに結合する。このように、任意の治療用タンパク質は宿主細胞中の単量体として産生されるが、三量体の形態とすることが可能である。タンパク質を重合するとその親和性は非常に高まり、すなわちリガンドへ結合できる可能性が非常に高まる。二量体(複合体中の2つの単量体)である完全な抗体分子は単量体抗体断片の10〜30倍親和性が増加し、一方、三量体化により最大1000倍の親和性の増加が得られることが分かっている。親和性のこの増加は、三量体化分子のうち唯一の単量体成分は一度に特異性リガンドに結合できるが、置換可能で、かつその後再度無限に置換可能である、非常に接近した2つのその他の単量体成分が常に存在することに起因しており、これにより遮断または活性化された受容体などの標的分子への結合が強くなり、また持続が長くなるようである。
【0041】
本発明は特に、テトラネクチン誘導型CTLD結合剤およびマンノース結合タンパク質C(MBP‐C)誘導型CTLD結合剤に関する。テトラネクチンの分子構造は特に完全ヒト抗体類似体の開発に適しており、なぜならそれは簡単かつ費用効率の高い製品を可能にし、また、非常に多用途性がある多価分子および異種原子価分子を構築するための簡便でなお高度な選択肢をもたらすからである。テトラネクチンは、3つの同一のポリペプチド鎖が集まった60kDaのホモ三量体ヒトタンパク質であり、その各々はコイルドコイル三量体化モジュールおよびCTLDドメインを含む。テトラネクチンは血漿と組織に存在し、そのCTLDドメインはアポリポタンパク質(a)、肝臓成長因子およびプラスミノーゲン/アンギオスタチン由来のリジン結合型クリングル‐ドメインに結合する。MBP‐Cは先天性免疫系の重要な成分であり、抗体とは関係なく古典的補体経路を活性化することによって細菌、真菌、原生動物およびウイルスなどの病原体に対して宿主防御することが可能である。MBP‐Cはその上、直接的オプソニンとして働き、単球および好中球による病原体への結合およびその取り込みを媒介する。MBPが媒介する補体活性化はMBP経路という。MBP‐Cは32kDaサブユニットから成るホモオリゴマーである。各サブユニットは鎖間ジスルフィド結合形成に関与するシステインを含むN末端領域、コラーゲン様ドメイン、ネック領域およびCTLDを有する。テトラネクチンの場合と同様、3つのサブユニットは構造単位を形成するが、MBP‐Cはオリゴマー化してさらに高次の多量体複合体を形成することが可能となり、無傷MBP‐Cクラスターは2〜6個の構造単位(6〜18個のCTLDドメイン)のみから構成される。
【0042】
本発明の三量体誘導型結合剤は、2つの部分を含み、宿主生物中での発現に際し、三量体へと重合する結合分子(例えばモノマー)に関連している。第1の部分は結合活性を有し、一方第2の部分は三量体化モジュールのみから成る。三量体化モジュールの例には、構成要素を形成する40アミノ酸残基コイルドコイルから成るテトラネクチンのネック領域が含まれ、これはタンパク質、タンパク質ドメイン、ペプチドおよび他の化合物の三量体化のための論理的タンパク質工学における万能の技術基盤となる。コイルドコイル形成を担う4回半のヘプタイックな繰り返しにより、三量体構造を自発的に形成する非共有結合三量体化要素がもたらされる。該三量体はプロテアーゼに高度に耐性があると実証されており、生物物理学的に高度に安定している(該三量体はおよそ80℃の平均融点で解離する)。
【0043】
したがって本発明のさらなる態様は、三量体誘導型結合剤の単量体が特異的結合分子の他に、三量体化ドメインをさらに含むことである。当該文脈では、用語「三量体化ドメイン」は、他の、類似の、または同一の三量体化ドメインと相互作用することが可能なペプチド、タンパク質またはタンパク質の一部である。そのような相互作用は三量体誘導型結合剤を生成するタイプの相互作用である。このような相互作用は三量体化ドメインの成分間の共有結合により、ならびに水素結合力、疎水性力、ファンデルワールス力および塩橋により生じると考えられる。三量体化ドメインの例はWO95/31540(参照により本明細書に援用される)に開示されており、コレクチンのネック領域を含むポリペプチドが記述されている。コレクチンのネック領域を構成するアミノ酸配列は選択の任意のポリペプチドに付着していてもよい。その後コレクチンネック領域アミノ酸配列を含む3種のポリペプチドにより適当な条件下で三量体誘導型結合剤が形成され得る。さらに好ましい実施態様では、三量体化ドメインはテトラネクチン由来であり、より具体的にはWO98/56906(参照により本明細書に援用される)に詳述しているテトラネクチン三量体化構造要素を含んでいる。
【0044】
用語「融合タンパク質」は、少なくとも1種のポリペプチド鎖が異なる起源の異なるドメインまたはペプチド配列を含んでいる単一ポリペプチドまたはポリペプチド鎖の組み合わせを示すために使用する。
【0045】
本発明によれば、前記結合分子は抗体、抗体断片、dAb、二重特異性抗体、三重特異性抗体、多重特異性抗体、二価抗体、三価抗体、多価抗体、VHH、ナノボディ、Fab、scFv、Fv、dAb、Fd、ダイアボディ、トリアボディ、単鎖抗体、単ドメイン抗体、単一抗体可変ドメイン、可溶受容体、CTLD誘導結合剤、三量体誘導結合剤、リガンドおよび/またはドミナントネガティブ変異体である。
【0046】
一実施態様では、本発明は本明細書で定義した使用のための医薬組成物を提供する。さらなる一実施態様では、本発明は、上記で定義した微生物を生成する少なくとも1つの結合分子を含む粘膜投与用医薬組成物を提供する。
【0047】
本発明にしたがった医薬組成物は生物学的に活性な微生物を含む液体であってもよく、あるいは好適な環境にある場合に反応可能な乾燥微生物を含む固体であってもよい。微生物は凍結乾燥および噴霧乾燥といった任意の方式で乾燥させてよい。該医薬組成物を調製するため、本発明の微生物を有効量で含むことは医薬的に許容できる担体との混合物中で組み合わせる場合があり、該単体は投与に必要な調製形態によって多様な形態をとることが可能である。これらの医薬組成物は、好ましくは経口投与に適した単一の剤形であることが望ましい。例えば、経口剤形の組成物の調製時においては、任意の通常の医薬媒体物を使用してよく、例えば懸濁液、シロップ、エリキシル剤および溶液などの経口液体製剤の場合は水、グリコール、油、アルコール等が含まれ、粉末、錠剤、カプセルおよびタブレットの場合はデンプン、砂糖、カオリン、滑剤、結合剤、崩壊剤等の固形担体が含まれる。それらは投与を簡便にするため、タブレットおよびカプセルは最も有利な経口投薬単位形態である。このような場合、固体の医薬担体を使用するのは明らかである。代替法では、本発明にしたがった結合分子生成微生物または医薬組成物を、例えば浣腸などで経直腸的に投与してよく、すなわち肛門から液体を直腸および大腸へ注入する手法が含まれる。
【0048】
本明細書で使用する「結合分子生成」は、微生物が医薬組成物中で結合分子を生成することを意味するのでなく、好適な環境下に置かれたとき微生物が生存可能で、かつ結合分子を生成できることを意味している。微生物は胃腸管に送達することを容易にするためにコーティングしてもよい。このようなコーティングは当業者に公知であり、とりわけHuyghebaertら、(2005)が記述している。該医薬組成物は微生物の生存力を改善する薬剤をさらに含んでよく、トレハロースなどが含まれるがこれに限定されない。好ましくは、微生物は乳酸菌および酵母から成る群より選択される。好ましい一実施態様は、結合分子生成微生物がラクトコッカス・ラクティス、好ましくはThyA突然変異体である医薬組成物である。別の好ましい実施態様は、結合分子生成微生物がラクトバチルス種、好ましくはThyA突然変異体である医薬組成物である。好ましくは、前記ThyA突然変異体は、結合分子コード構築物を挿入して遺伝子破壊をすることで得る。さらに別の好ましい実施態様は結合分子生成微生物がサッカロマイセス・セレヴィシエ、好ましくはS.セレヴィシエ亜種のブラウディである医薬組成物である。
【0049】
本発明の別の態様は、本明細書で定義した消化管(胃腸管)の少なくとも1種の病気または疾患を予防、治療および/または緩和する方法であり、その方法には本明細書で定義した有効量の結合分子生成微生物を消化管(胃腸管)に投与することも含まれる。本発明の好ましい態様は消化管(胃腸管)の少なくとも1種の病気または疾患を予防、治療および/または緩和する方法であり、その方法にはTNFα、IL‐12、IFNγ、IL‐23またはIL‐17の生物学的効果を無効化し得る有効量の結合分子生成微生物を消化管(胃腸管)に投与することも含まれる。好ましくは、前記結合分子は以下から成る群より選択される
―抗TNFα抗体、抗TNFα抗体断片、抗TNFα単一抗体可変ドメイン、可溶TNF受容体またはTNFαのドミナントネガティブ変異体;
―抗IL‐12抗体、抗IL‐12抗体断片、抗IL‐12単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐12受容体、IL‐12のドミナントネガティブ変異体またはIL‐12dAb
―抗IL‐12p35抗体,抗IL‐12p35抗体断片、抗IL‐12p35単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐12p35受容体、IL‐12p35のドミナントネガティブ変異体またはIL‐12p35dAb;
―抗IL‐12p40抗体,抗IL‐12p40抗体断片、抗IL‐12p40単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐12p40受容体、IL‐12p40のドミナントネガティブ変異体またはIL‐12p40dAb;
―抗IL‐23抗体,抗IL‐23抗体断片、抗IL‐23単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐23受容体、IL‐23のドミナントネガティブ変異体またはIL‐23dAb
―抗IL‐23p19抗体、抗IL‐23p19抗体断片、抗IL‐23p19単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐23p19受容体、IL‐23p19のドミナントネガティブ変異体またはIL‐23p19dAb;
―抗IFNγ抗体、抗IFNγ抗体断片、抗IFNγ単一抗体可変ドメイン、可溶IFNγ受容体またはIFNγのドミナントネガティブ変異体;
―抗IL‐17抗体、抗IL‐17抗体断片、抗IL‐17単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐17受容体、IL‐17のドミナントネガティブ変異体またはIL‐17dAb;および
―抗MCP‐1抗体、抗MCP‐1抗体断片、抗MCP‐1単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐17受容体、MCP‐1のドミナントネガティブ変異体またはMCP‐1dAb。
【0050】
投与法は当業者に公知の任意の方法であり得るし、該方法には経口および直腸投与が含まれるがこれに限定されない。好ましくは、投与法は直腸または経口投与である。好ましくは、前記病気または疾患は、TNFα生成の不均衡が特徴的であり、抗TNFα抗体、抗体断片、単一抗体可変ドメイン、可溶受容体またはドミナントネガティブ変異体などのTNFα不活化化合物で治療され得る病気または疾患である。さらにいっそう好ましくは、前記疾患は炎症性腸疾患であり、慢性大腸炎、潰瘍性大腸炎およびクローン病が含まれるがこれらに限定されない。最も好ましくは、前記病気または疾患は慢性大腸炎である。
【0051】
好ましくは、前記の遺伝子改変した微生物は本明細書で定義した乳酸菌または酵母である。好ましい一実施態様では、前記の遺伝子改変した微生物はラクトコッカス・ラクティス株であり、好ましくは前記の遺伝子改変した微生物はラクトコッカス・ラクティスThyA突然変異体である。特に好ましい実施態様は、THYA遺伝子を破壊するために結合分子をコードする遺伝子を使用しているラクトコッカス・ラクティスThyA突然変異体である。別の好ましい実施態様では、前記遺伝子改変した微生物はラクトバチルス種株であり、好ましくは前記遺伝子改変した微生物はラクトバチルスThyA突然変異体である。特に好ましい一実施態様は、THYA遺伝子を破壊するためにTNF‐α抗体をコードする遺伝子を使用しているラクトバチルスThyA突然変異体である。
【0052】
別の好ましい実施態様では、酵母は結合分子生成微生物である。好ましくは、前記酵母はサッカロマイセス・セレヴィシエであり、さらにいっそう好ましくは、前記酵母はサッカロマイセス・セレヴィシエ亜種のブラウディである。
【0053】
本明細書で使用する用語「治療」、「治療する」等は、発症した免疫介在性疾患またはそれに一度罹患した状態を改善もしくは排除すること、あるいはこのような疾患または状態の特徴的な症状を緩和することを包含している。本明細書で使用するとおり、これらの用語は、患者の状態により、病気もしくは状態の発症、または病気もしくは状態に伴った症状の発症を予防することを包含しており、病気または状態またはそれらに伴う症状の重症度を、前記病気または状態による苦痛が来る前に低減することを包含している。苦痛に先立ったこのような予防または低減は、投与時において該病気または状態に罹患していない患者に本発明の化合物または組成物を投与することを述べている。「予防する」はまた、再発を予防すること、あるいは例えば回復期間の後に病気もしくは状態の、またはそれらに伴う症状の再発防止もしくはぶり返し防止を包含する。
【0054】
本明細書で使用したように、用語「医薬品」はまた、「薬剤」、「治療的」、「ポーション」または治療効果もしくは予防効果を有する製剤を示す医薬品分野で使用されている他の用語も包含する。
【0055】
「有効量」は、上記に示した疾患の伝播、重症度または免疫抑制作用を軽減することが可能な量を意味する。本発明の有効量の結合分子生成微生物は、投与スケジュール、結合分子生成微生物が他の治療薬剤と組み合わせて投与されようと組み合わせて投与されなくても、投与する結合分子生成微生物の単位用量、患者の免疫状態および健康、ならびに投与する特定の結合分子生成微生物の治療活性にとりわけ依存していることは当業者にとって自明であろう。例えばそれは、治療する障害の性質および重症度に、治療するヒトまたは動物の性別、年齢、体重、全身健康状態、食事、投与形態および投与時間、個々の応答性に、使用する化合物の投与経路、有効性、代謝安定性および作用の持続時間に、治療が応急か、長期か、予防的なものかに、あるいは本発明の薬剤(単数または複数)以外に他の活性化合物を投与するか否かに依存している。上記に示した疾患を治療するための単剤治療では、本発明の結合分子生成微生物の単位用量あたりの有効量は上述の要素に依存して、体重当たり約0.1μg/kg〜100mg/kg以上の範囲である。数日以上にわたって投与を繰り返す場合、その状態によって、疾患の症状が目的どおりに抑制されるまで治療を続ける。本発明の活性物質の好ましい用量は体重当たり約1μg/kg〜約1mg/kgの範囲でよい。したがって、1種以上の用量、約1μg/kg、20μg/kg、40μg/kgまたは1mg/kg(またはこれらを任意に組み合わせて)を患者に投与してもよい。このような用量を、例えば1週間毎または3週間毎、患者体重当たり1μg/kg〜1mg/kg、好ましくは患者体重当たり20μg/kgで断続的に投与してもよい。単位用量は治療効果が見られるまで1日2回から2週間に1回投与することが好ましく、2週間に1回が好ましい。治療効果は、リンパ球計数および臨床兆候および症状など多様な方法で測定してよい。しかし、当然のことながら低用量または高用量および他の投与スケジュールを採用してもよい。
【実施例】
【0056】
実施例1:材料と方法
細菌およびプラスミド
本試験では一貫してL.ラクティス株MG1363を使用した。細菌をGM17培地、すなわち0.5%グルコースを添加したM17(DifcoLaboratories, Detroit, Ml)で培養した。全株の保存懸濁液を、50%グリセロールを含むGM17中、−20℃で保存した。胃内接種用に、保存懸濁液を新鮮なGM17中に200倍で希釈し、30℃でインキュベートした。それらは16時間以内に1mL当たり2x10コロニー形成単位(CFU)の飽和密度に達した。細菌を遠心分離により回収し、BM9培地中で10倍濃縮した(Schotte, Steidlerら、2000)。治療のため、胃内カテーテルで100μLのこの懸濁液を各マウスに毎日投与した。
【0057】
抗マウスTNF単一抗体可変ドメイン(TNFdAb)の同定
米国特許第2006073141号に記述しているdAbアミノ酸配列に適用したVan de Guchteらにしたがって、TNFdAbのcDNAを生成した。HisGおよびMyc‐tagをコードする配列を有するその3'末端まで伸長されたTNFdAbのこのcDNAを、ラクトコッカスのP1プロモーター(Waterfield, Le Pageら、1995)の下流にあるUsp45分泌シグナル(van Asseldonk, Ruttenら、1990)に融合し、MG1363中で発現させた(プラスミド構築の詳細はその著者から得ることが可能である)。TNFdAbコード配列を担持するプラスミドで形質転換したMG1363株をLL‐TNFdAbと命名した。空ベクターpTREX1を含むMG1363であるLL‐pTREX1は対照とした。
【0058】
マウスTNFドミナントネガティブ変異体(dnTNF)の同定
米国特許第2006257360号から得たdnTNF配列に適用したVan de Guchteらにしたがって、dnTNFのcDNAを生成した。HisGおよびMyc‐tagをコードする配列を有するその3'末端まで伸長されたdnTNFのこのcDNAを、ラクトコッカスのP1プロモーター(Waterfield, Le Pageら、1995)の下流にあるUsp45分泌シグナル(van Asseldonk, Ruttenら、1990)に融合し、MG1363中で発現させた(プラスミド構築の詳細はその著者から得ることが可能である)。dnTNFコード配列を担持するプラスミドで形質転換したMG1363株をLL‐dnTNFに指定した。空ベクターpTREX1を含むMG1363であるLL‐pTREX1は対照とした。
【0059】
L.ラクティス培養液中でのTNFdAbおよびdnTNFの定量
Mycタグ化LL‐TNFdAbおよびLL‐dnTNFは、粗L.ラクティスの上清をELISAプレート(Maxisorp F96, Nunc, Rochester, NY)に直接吸着させ、その後Mycエピトープに対する特異性マウスmAb(Sigma, St. Louis, MO)で検出することにより定量した。
インビボで大腸組織に分泌されたTNFdAbおよびdnTNFを定量するため、1%BSA含有PBS中で大腸全体をホモジナイズし、超音波処理した。応用可能な定量プロトコールにより、大腸上清中のTNFdAbおよびdnTNFを測定した。
【0060】
マウス血清中の抗TNFdAbおよびdnTNF抗体レベル測定
14日間毎日マウスに、100μgのTNFdAbもしくはdnTNFを腹腔内投与し、またはLL‐TNFdAbもしくはLL‐dnTNFを胃内投与し、その後採血した。本発明者らは、マイクロタイタープレート(NUNC Maxisorb)中、4℃で一晩、10μg/mlの濃度のTNFdAbおよびdnTNFを被覆した。プレートをPBS‐Tweenで5回洗浄し、PBS‐1%カゼインによりRTで2時間ブロックした。試料をPBS中に1/50希釈で添加し、RTで2時間置いた。プレートを5回洗浄し、ウサギポリクローナル抗マウス免疫グロブリンHRP(DAKO、3000倍希釈)と共にRTで1時間インキュベートして検出を行い、洗浄後、プレートをABTS/H2O2で染色した。OD405nmを測定した。
【0061】
抗可溶および膜結合TNFバイオアッセイ
1μg/mlのアクチノマイシンDの存在下でマウス線維芽細胞WEHI164cl13細胞を使用した細胞毒性アッセイを記述(EspevikおよびNissen-Meyer1986)どおりに16時間行い、TNFdAbおよびdnTNFの可溶mTNF(20IU/mL)に対する阻害効果を測定した。切断不可能な膜結合TNFを発現するL929細胞を細胞培養液に添加した後、WEHI164cl13細胞上で膜結合TNFの細胞毒性効果を相殺するTNFdAbおよびdnTNFの効果を測定した(Decosterら、1998)。
【0062】
LPSによるマクロファージの刺激
LPSによる炎症誘発性サイトカインの誘導に対するTNFdAbおよびdnTNFの効果を測定するために、MF4/4マクロファージ(Desmedtら、1998)をTNFdAbおよびdnTNF(100μg/ml)と共にインキュベートした。1時間後、十分量のPBS中で細胞を広範囲に洗浄(3回)し、溶液中にある全TNFdAbまたはdnTNFを完全に除去した。細胞を再懸濁し、LPSの存在下または非存在下で4時間インキュベートした。細胞をPBS中で洗浄(1回)し、インキュベーションの4時間後に遠心分離により上清と細胞を分離した。可溶TNF放出を測定するため、WEHI164cl13細胞バイオアッセイを行った。
【0063】
動物
11週齢の雌BALB/cマウスをCharlesRiver Laboratories(Sulzfeld、ドイツ)から入手した。それらはSPF条件下で保管した。IL‐10ノックアウトマウス(129Sv/Ev IL−10−/−)(Kuhn, Lohlerら、1993)をSPF条件下で保管し、飼育した。慢性大腸炎を完全に発症した20週齢のIL−10−/−マウスを使用した。全マウスに標準的な研究用餌および水道水を自由に摂れるようにした。該動物研究はDepartment for Molecular Biomedical Research, Ghent Universityの倫理委員会(ファイル番号04/02)により承認された。
【0064】
DSSによる慢性大腸炎の誘導
5%(w/v)DSS(40 kDa, Applichem, Darmstadt、ドイツ)を含む飲用水の投与と、正常飲用水での10日間の回復期間とを交互に4サイクル行い、体重約21gのマウスを慢性大腸炎へと誘導した。(Okayasu,Hatakeyamaら、1990; Kojouharoff,Hansら、1997)DSSの4回目のサイクル後の21日目に治療を任意に開始した。
【0065】
ミエロペルオキシダーゼ(MPO)アッセイ
記述(Bradley, Priebatら、1982)どおりに、中大腸組織におけるMPO活性を測定した。標準品として純粋なヒトMPOを使用した(Calbiochem, San Diego, CA)。データはμg(MPO)/mm2大腸組織で表した。
【0066】
組織学的分析
組織学的分析では、大腸を取り出し、洗浄し、長手方向に開いた。大腸の中間部から1cmの断片をとり、パラフィンに包埋し、長手方向に切断した。200μm間隔で、4μmの3つの切片を切断し、ヘマトキシリン/エオシンで染色した。無作為に大腸切片に番号を付し、病理学者により盲検法にて半定量的に解析した。組織学的スコアは上皮損傷およびリンパ球浸潤の総計であり、各スコアは記述(Kojouharoff, Hansら、1997)のとおり0〜4の範囲である。
【0067】
統計分析
一元配置分散分析、その後のダネット多重比較事後試験により平均±SEMパラメトリックデータを分析し、全データを表している。ノンパラメトリックデータ(スコア方式)をマンホイットニー検定で分析した。
【0068】
実施例1.1:インビトロでのL.ラクティスによる抗TNF‐αdAbおよびdnTNF産生
TNFdAbおよびdnTNFをコードするプラスミドでL.ラクティスを形質転換した。dAbおよびドミナントネガティブ変異体の産生を、空のプラスミドpTREXで形質転換した株および対照のIL10産生株を使用し、ウエスタンブロットおよびELISAで確認した。
【0069】
実施例1.2:LL‐TNFdAbは生物活性的であり、可溶膜結合のTNF‐αを阻害する
可溶mTNFでL.ラクティスにより産生されたTNFdAbの阻害効果を、EspevikおよびNissen-Meyer(1986)の記述どおり、マウス線維芽細胞WEHI164cl13細胞を使用し、細胞毒性アッセイにて測定した。陽性対照として大腸菌により産生したTNFdAbを使用した。L.ラクティスにより産生された(精製)dAbは可溶TNFを無効化することが可能である。
【0070】
切断不可能な膜結合TNFを発現するL929細胞を細胞培養液に添加した後、膜結合TNFの細胞毒性効果を相殺するdAbの効果をWEHI164cl13細胞で判定した(Decosterら、1998)。dAbの効果は、精製された形態、およびL.ラクティスにより産生された形態で明らかである。
【0071】
実施例1.3:LL‐dnTNFは生物活性的であり、可溶膜結合のTNF‐αを阻害する
可溶mTNFでL.ラクティスにより産生されたdnTNFの阻害効果を、EspevikおよびNissen-Meyer(1986)の記述どおり、マウス線維芽細胞WEHI164cl13細胞を使用し、細胞毒性アッセイにて測定した。陽性対照として大腸菌により産生したdnTNFを使用した。L.ラクティスにより産生された(精製)dnTNFは可溶TNFを無効化することが可能である。
【0072】
切断不可能な膜結合TNFを発現するL929細胞を細胞培養液に添加した後、膜結合TNFの細胞毒性効果を相殺するdnTNFの効果をWEHI164cl13細胞で判定した(Decosterら、1998)。dnTNFの効果は、精製された形態、およびL.ラクティスにより産生された形態で明らかである。
【0073】
実施例1.4:従来のDSSで誘導した慢性大腸炎に対するインビボでのLL‐TNFdAb効果
材料と方法の記述どおりにDSSで慢性大腸炎を誘導した。マウス群に2x10コロニー形成単位(cfu)のLL‐pTREX1、LL‐TNFdAbまたはLL‐mlL10のいずれかを毎日与えた。擬似治療(mock treatment)および健常マウス(「水コントロール」)を付加的な対照として使用した。L.ラクティスにより誘導されたTNFdAbの効果は、in situで産生されたIL‐10により得られる防御に匹敵する。
【0074】
実施例1.5:従来のIL‐10−/−腸炎に対するインビボでのLL‐TNFdAb効果
IL‐10−/−腸炎における防御を評価するための、20週齢の129Sv/EvIL‐10−/−治療マウス群および非治療マウス群における有病率。擬似治療群以外の、各マウス群に14日間、2x10CFUのLL‐pTREX1(ベクターコントロール)、LL‐TNFdAbまたはLL‐mlL10のいずれかを毎日与えた。ミエロペルオキシダーゼアッセイおよび組織学的スコアは両者とも、LL‐TNFdAb治療マウスにおいて優位な防御を示している。
【0075】
実施例1.6:TNFdAbの免疫原性
LL‐TNFdAbの疑われる有害な免疫原性作用を評価するため、マウスに14日間、LL‐TNFdAbを胃内処置し、精製したdAbの腹腔内注入を対照とした。抗dAbレベルをマウス血清で測定した。dAbの腹腔内注入により免疫応答が明瞭に現れている一方、LL‐TNFdAbでの治療には免疫原性はなく、その点では安全であることが分かる。
【0076】
実施例1.7:炎症誘発性サイトカインのLPS誘導に対するTNFdAbの効果
LPSによる炎症誘発性サイトカインの誘導に対するTNFdAbの効果を測定するため、MF4/4マクロファージ(Desmedtら、1998)を、L.ラクティスにより分泌されたTNFdAbと共にインキュベートした。細胞を洗浄し、その後LPSと共にインキュベートした。WEHI164cl13細胞毒性アッセイにより可溶TNFの放出を測定した。L.ラクティスにより分泌されたTNFdAbでマクロファージを前処理すると、LPS誘導型可溶TNF産物に対する防御が明確になされる。
【0077】
実施例1.8:従来のDSSで誘導した慢性大腸炎に対するインビボでのLL‐dnTNF効果
材料と方法の記述どおりにDSSにより慢性大腸炎を誘導した。マウス群に2x10CFUのLL‐pTREX1、LL‐dnTNFまたはLL‐mlL10のいずれかを毎日与えた。擬似治療および健常マウス(「水コントロール」)を付加的な対照として使用した。L.ラクティスにより誘導されたTNFdAbの効果は、in situで産生されたIL‐10により得られる防御に匹敵する。
【0078】
実施例1.9:従来のIL‐10−/−腸炎に対するインビボでのLL‐dnTNF効果
IL‐10−/−腸炎における防御を評価するための、20週齢の129Sv/EvIL‐10−/−治療マウス群および非治療マウス群における有病率。擬似治療群以外の、各マウス群に14日間、2x10CFUのLL‐pTREX1(ベクターコントロール)、LL‐dnTNFまたはLL‐mlL10のいずれかを毎日与えた。ミエロペルオキシダーゼアッセイおよび組織学的スコアは両者とも、LL‐dnTNF治療マウスにおいて優位な防御を示している。
【0079】
実施例1.10:dnTNFの免疫原性
LL‐dnTNFの疑われる有害な免疫原性作用を評価するため、マウスに14日間、LL‐dnTNFを胃内処置し、精製したdnTNFの腹腔内注入を対照とした。抗dnTNFレベルをマウス血清で測定した。dnTNFの腹腔内注入により免疫応答が明瞭に現れている一方、LL‐dnTNFでの治療には免疫原性はなく、その点では安全であることが分かる。
【0080】
実施例1.11:炎症誘発性サイトカインのLPS誘導に対するdnTNFの効果
LPSによる炎症誘発性サイトカインの誘導に対するL.ラクティス分泌dnTNFの効果を測定するため、MF4/4マクロファージ(Desmedtら、1998)を、L.ラクティスにより分泌されたdnTNFと共にインキュベートした。細胞を洗浄し、その後LPSと共にインキュベートした。WEHI164cl13細胞毒性アッセイにより可溶TNFの放出を測定した。L.ラクティスにより分泌されたdnTNFでマクロファージを前処理すると、LPS誘導型可溶TNF産物に対する防御が明確になされる。
【0081】
実施例2:材料と方法
細菌およびプラスミド
本試験では一貫してL.ラクティス株MG1363を使用した。細菌をGM17培地、すなわち0.5%グルコースを添加したM17(DifcoLaboratories, Detroit, Ml)で培養した。全株の保存懸濁液を、50%グリセロールを含むGM17中、−20℃で保存した。胃内接種用に、保存懸濁液を新鮮なGM17中に200倍で希釈し、30℃でインキュベートした。それらは16時間以内に1mL当たり2x10コロニー形成単位(CFU)の飽和密度に達した。細菌を遠心分離により回収し、BM9培地中で10倍濃縮した(Schotteら、2000)。治療のため、胃内カテーテルで100μLのこの懸濁液を各マウスに毎日投与した。
【0082】
抗マウスp19およびp40単一抗体可変ドメイン(p19dAbおよびp40dAb)の同定
Van de Guchteらにしたがって、p19またはp40dAbのcDNAを生成した。HisGおよびMyc‐tagをコードする配列を有するその3'末端まで伸長されたp19またはp40dAbのこのcDNAを、ラクトコッカスのP1プロモーター(Waterfieldら、1995)の下流にあるUsp45分泌シグナル(van Asseldonkら、1990)に融合し、MG1363中で発現させた(プラスミド構築の詳細はその著者から得ることが可能である)。p19またはp40dAbコード配列を担持するプラスミドで形質転換したMG1363株をそれぞれp19dAbまたはp40dAbのLL‐TNFdAbと命名した。空ベクターpTREX1を含むMG1363であるLL‐pTREX1は対照とした。
【0083】
マウスMCP‐1ドミナントネガティブ変異体(dnMCP‐1)の同定
Zangら、1994(Zhangら、1994)の記述のとおりdnMCP‐1配列類似体に適用したVan de Guchteらにしたがって、dnMCP‐1のcDNAを生成した。HisGおよびMyc‐tagをコードする配列を有するその3'末端まで伸長されたdnMCP‐1のこのcDNAを、ラクトコッカスのP1プロモーター(Waterfieldら、1995)の下流にあるUsp45分泌シグナル(van Asseldonk, Ruttenら、1990)に融合し、MG1363中で発現させた(プラスミド構築の詳細はその著者から得ることが可能である)。dnMCP‐1コード配列を担持するプラスミドで形質転換したMG1363株をLL‐dnMCP‐1と命名した。空ベクターpTREX1を含むMG1363であるLL‐pTREX1は対照とした。
【0084】
L.ラクティス培養液中でのp19またはp40dAbおよびdnMCP‐1の定量
Mycタグ化LL‐p19またはLL‐p40dAbおよびLL‐dnMCP‐1は、粗L.ラクティスの上清をELISAプレート(Maxisorp F96, Nunc, Rochester, NY)に直接吸着させ、その後Mycエピトープに対する特異性マウスmAb(Sigma, St. Louis, MO)で検出することにより定量した。
【0085】
インビボで大腸組織に分泌されたp19またはp40dAbおよびdnMCP‐1を定量するため、1%BSA含有PBS中で大腸全体をホモジナイズし、超音波処理した。応用可能な定量プロトコールにより、大腸上清中のp19またはp40dAbおよびdnMCP‐1を測定した。
【0086】
マウス血清中の抗p19もしくは抗p40dAbおよびdnMCP‐1抗体レベル測定
14日間毎日マウスに、100μgのp19もしくはp40dAbまたはdnMCP‐1を腹腔内注入し、あるいはLL‐p19もしくはLL‐p40dAbまたはLL‐dnMCP‐1を胃内注入し、その後採血した。本発明者らは、マイクロタイタープレート(NUNC Maxisorb)中、4℃で一晩、10μg/mlの濃度のp19もしくはp40dAbおよびdnMCP‐1を被覆した。プレートをPBS‐Tweenで5回洗浄し、PBS‐1%カゼインによりRTで2時間ブロックした。試料をPBS中に1/50希釈で添加し、RTで2時間置いた。プレートを5回洗浄し、ウサギポリクローナル抗マウス免疫グロブリンHRP(DAKO、3000倍希釈)と共にRTで1時間インキュベートして検出を行い、洗浄後、プレートをABTS/H2O2で染色した。405nmでのODを測定した。
【0087】
p40dAbバイオアッセイ
10ng/mlの組み換えmlL‐12および30ng/ml〜0.003ng/mlの様々な濃度のp40dAbの存在下で培養した新たな単離脾細胞を使用し、IL‐12誘導型IFNγ発現に対するp40dAbの阻害効果を判定した。24時間後、上清を回収し、ELISAによりIFNγ発現を判定した。
【0088】
p19dAbバイオアッセイ
5ng/mlのPMAを添加した10ng/mlの組み換えmlL‐23および10ng/ml〜0.0031ng/mlの様々な濃度のp19dAbの存在下で培養した新たな単離脾細胞を使用し、IL‐23誘導型IL‐17発現に対するp19dAbの阻害効果を判定した。24または48時間後、上清を回収し、ELISAでIL‐17発現を判定した。
【0089】
dnMCP‐1バイオアッセイ
マイトジェンにより活性化したタンパク質キナーゼ(MAPK)p44(ERK1)およびp42(ERK2)のMCP‐1誘導型リン酸化に基づくバイオアッセイを利用し、MCP‐1がその受容体へ結合することがdnMCP‐1により遮断可能か否かについて試験した。様々な濃度のdnMCP‐1存在下で、96ウェルプレート中、MCP‐1でGN11およびTHP‐1細胞を処理した。AlphaScreen(登録商標)SureFire(商標)Phospho-ERK 1/2 Kit(PerkinElmer)を使用してリン酸化を判定した。また、両細胞系において、cAMP誘導を阻害するMCP‐1の能力を低減するdnMCP‐1の能力を判定した。そのため両細胞系を10μmのホルスコリン、MCP‐1(IC50に対応するnM濃度)および様々な濃度のdnMCP‐1と共にインキュベートした。cAMPレベルをメーカーのプロトコール(LANCE(商標)cAMP 384 kit,PerkinElmer)にしたがって判定した。
【0090】
動物
11週齢の雌BALB/cマウスをCharlesRiver Laboratories(Sulzfeld、ドイツ)から入手した。7〜12週齢のFox Chase SCID−/−マウス、C.B‐17SCID(株コード:236、CharlesRiver イタリア)。特定の病原体が存在しない条件下でマウスを飼育し、VIB Department for Molecular Biomedical Research, FSVM-BL2-W248で、ろ過空気機能付き薄型ケージ内で保管した。全マウスに標準的な研究用餌および水道水を自由に摂れるようにした。該動物研究はDepartment for Molecular Biomedical Research, Ghent Universityの倫理委員会(ファイル番号07‐032)により承認された。
【0091】
抗CD40による自然誘導型急性大腸炎の誘導
体重約21gの免疫不全マウスSCID−/−マウスに、PBS中250〜300μgの抗CD40アゴニストモノクローナル抗体(eBioscience, #16-0401;clone 1C10)を腹腔内注入した(Uhligら、2006)。抗CD40投与の7日前、またはその当日に、任意に処置を開始した。
【0092】
naiveCD4+CD45RBhighT細胞による慢性大腸炎の誘導
記述(Readら、2000)のとおりにフローサイトメトリーの選別により、naiveCD4+CD45RBhighT細胞をBLAB/cマウスの脾臓から単離した。体重約21gの免疫不全類似遺伝子型マウスであるSCID−/−マウスに、4x10倍精製したCD4+CD45RBhighT細胞の1回分用量を腹腔内注入した。T細胞移植の1週間後、または4週間後に、任意に治療を開始した。
【0093】
組織学的分析
組織学的分析では、大腸を取り出し、洗浄し、長手方向に開いた。大腸の近位部、中間部および遠位部から1cmの断片をとり、パラフィンに包埋し、長手方向に切断した。200μm間隔で、4μmの3つの切片を切断し、ヘマトキシリン/エオシンで染色した。無作為に大腸切片に番号を付し、病理学者により盲検法にて半定量的に解析した。
【0094】
抗CD40自然発生型急性大腸炎モデル:Uhligらの記述(Uhligら、2006)のとおり組織学的スコアは上皮過形成、杯細胞枯渇、固有層浸潤および上皮細胞損傷の程度(0:病変なし、1:軽度の変化、2:中程度、3:重度の変化)の総計である。
【0095】
慢性大腸炎に対するT細胞移植モデル:記述(Readら、2000)のとおり、組織学的スコアは上皮過形成、リンパ球浸潤および杯細胞損失の程度(0=正常、1=軽度の上皮過形成、2:重大な炎症性浸潤を伴う顕著な上皮過形成、3=杯細胞の著しい損失を伴う重篤な過形成および浸潤;4=重篤な過形成、重篤な貫壁性炎症、潰瘍、陰窩膿瘍および杯細胞の重篤な枯渇)の総計である。近位、中間、遠位大腸の部位から得た個々のスコアを加算して総合大腸スコアを求めた。
【0096】
統計的分析
全データを平均±SEMパラメーターデータとして表し、一元配置分散分析により分析し、その後、ダネット多重比較事後試験を行った。マンホイットニー試験でノンパラメトリックデータ(スコア方式)を分析した。
【0097】
実施例2.1:インビトロでのL.ラクティスによる抗p19ならびに抗p40dAbおよびdnMCP‐1産生
p19dAbおよびp40dAbおよびdnMCP‐1をコードするプラスミドでL.ラクティスを形質転換した。dAbおよびドミナントネガティブ変異体の産生を、カラのプラスミドpTREXで形質転換した株および対照のIL10産生株を使用し、ウエスタンブロットおよびELISAで確認した。
【0098】
実施例2.2:LL‐p19およびLL‐p40dAbは生物活性的であり、各々IFNγおよびIL‐17分泌を阻害する
それぞれIL‐17およびIFNγ分泌でL.ラクティスにより産生されたLL‐p19dAbおよびLL‐p40dAbの阻害効果を、新たに単離した培養脾細胞使用し、バイオアッセイにて測定した。組み換えマウス抗p19および抗p40を陽性参照として使用した。L.ラクティスにより産生された(精製)p19dAbおよびp40dABは、培養脾細胞によりそれぞれIL‐17およびIFNγの分泌を阻害することができた。
【0099】
実施例2.3:組み換え野生型MCP‐1の機能を阻害することでdnMCP1は生物活性的となる
様々な濃度のdnMCP‐1存在下で組み換え野生型MCP‐1で処理したGN11およびTHP‐1細胞を用いて、MAPKp44およびp42の組み換え野生型MCP‐1誘導型リン酸化ならびにcAMP誘導に対するLL‐dnMCP‐1の阻害効果を試験した。大腸菌で生成したdnMCP‐1を陽性対照として使用した。L.ラクティスで生成した(精製)dnMCP‐1はリン酸化を阻害し、MCP‐1の能力を低減し、両細胞系でのcAMP誘導を阻害することができた。
【0100】
実施例2.4:急性抗CD40誘導型大腸炎に対するインビボでのLL‐p19、LL‐p40dAbおよびLL‐dnMCP‐1効果
材料と方法に記述のとおりアゴニスト抗CD40mAbを腹腔内に単回注入することで自然急性大腸炎を誘導した。マウス群に1x1010コロニー形成単位(cfu)のLL‐pTREX1、LL‐p19dAb、LL‐p40dAb、LL‐dnMCP‐1またはLL‐mlL10のいずれかを毎日、事前治療した。擬似治療および健常マウス(「水コントロール」)を付加的な対照として使用した。L.ラクティスにより送達されたp19dAb、p40dAbまたはdnMCP‐1の防御効果は、LL‐mlL‐10により得られる防御に匹敵する(図1)。
【0101】
実施例2.5:従来のT細胞誘導型大腸炎に対するインビボでのLL‐p19、LL‐p40dAbおよびLL‐dnMCP‐1効果
材料と方法に記述のとおりCD4CD45RBhigh天然T細胞を腹腔内に単回注入することで慢性大腸炎を誘導した。マウス群に1x1010コロニー形成単位(cfu)のLL‐pTREX1、LL‐p19dAb、LL‐p40dAb、LL‐dnMCP‐1またはLL‐mlL10のいずれかを毎日、治療した。擬似治療および健常マウス(「水コントロール」)を付加的な対照として使用した。L.ラクティスにより誘導されたp19dAb、p40dAbまたはdnMCP‐1の治療効果は、in situで産生されたIL‐10により得られる治療効果に匹敵する(図2)。
【0102】
実施例2.6:結論
上述の実験は、IL‐1β、IL‐2、IL‐4、IL‐5、IL−6、IL‐7、IL‐8、IL‐9、IL‐12(またはそのサブユニットIL‐12p35)、IL‐13、IL‐15、IL‐16、IL‐17、IL‐18、IL‐21、IL‐23、IL‐27、IL‐32(およびそのスプライス変異体)ならびにIFNα、‐βおよび‐γのリストから選択されるサイトカインに結合して、それらの生物学的効果を阻害する結合分子を用いて繰り返した場合、実質的に同様の結果となる。
【0103】
したがって本発明は、免疫介在性疾患を治療するため患者の免疫調節を誘起する抗体、抗体断片、単一抗体可変ドメイン、可溶受容体、リガンドおよびドミナントネガティブ変異体などの複合結合分子で、かつ生物学的に活性な結合分子の送達を提供する。
【0104】
参照文献
Bradley, et al.(1982). "Measurement of cutaneous inflammation:estimation of neutrophil content with an enzyme marker." J Invest Dermatol78(3): 206-9.
Espevik, T. and J. Nissen-Meyer (1986). "A highly sensitivecell line, WEHI 164 clone 13, for measuring cytotoxic factor/tumor necrosisfactor from human monocytes." J Immunol Methods 95(1 ): 99-105.
Huyghebaert, et al.(2005) "Development of an enteric-coated formulation containing freeze-dried, viable recombinant Lactococcus lactis for the ileal mucosal delivery ofhuman interleukin-10." Eur J Pharm Biopharm 60(3): 349-59
Kojouharoff, et al. (1997)."Neutralization of tumour necrosis factor (TNF) but not of IL-1 reducesinflammation in chronic dextran sulphate sodium-induced colitis in mice."Clin Exp Immunol 107(2): 353-8.
Kuhn, R., et al. (1993)."Interleukin-10-deficient mice develop chronic entero colitis." Cell75(2): 263-74.
Okayasu, et al. (1990). "A novelmethod in the induction of reliable experimental acute and chronic ulcerative colitisin mice." Gastroenterology 98(3): 694-702. Read S, et al; Malmstrom V,Powrie F (2000) Cytotoxic T lymphocyte-associated antigen 4 plays an essentialrole in the function of CD25(+)CD4(+) regulatory cells that control intestinalinflammation. Journal of Experimental Medicine 192: 295-302
Schotte, et al. (2000). "Secretion ofbiologically active murine interleukin-10 by Lactococcus lactis." EnzymeMicrob Technol 27(10): 761-765.
Uhlig et al. (2006) Differential activity ofIL-12 and IL-23 in mucosal and systemic innate immune pathology. Immunity 25:309-318
van Asseldonk, et al. (1990). "Cloning of usp45, a gene encoding asecreted protein from Lactococcus lactis subsp. lactisMG1363." Gene 95(1 ):155-60.
van de Guchte et al. (1992) "Geneexpression in Lactococcus lactis" FEMS Microbiol Rev.8:73-92
Waterfield, et al. (1995). "The isolationof lactococcal promoters and their use in investigating bacterial luciferasesynthesis in Lactococcus lactis." Gene 165(1 ): 9-15.
Zhang et al. (1994)"Structure/activity analysis of human monocyte chemoattractant protein-1 (MCP-1 ) by mutagenesis - identification ofa mutated protein that inhibits MCP-1- mediated monocyte chemotaxis."Journal of Biological Chemistry 269: 15918-15924.


【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫介在性疾患、好ましくはT細胞介在性疾患を治療する医薬品を調製するための結合分子生成微生物の使用。
【請求項2】
前記結合分子が抗体、抗体断片、dAb、二重特異性抗体、三重特異性抗体、多重特異性抗体、二価抗体、三価抗体、多価抗体、VHH、ナノボディ、Fab、scFv、Fv、dAb、Fd、ダイアボディ、トリアボディ、単鎖抗体、単ドメイン抗体、単一抗体可変ドメイン、可溶受容体、CTLD誘導結合剤、三量体誘導結合剤、リガンドおよび/またはドミナントネガティブ変異体である請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記結合分子がアゴニスト活性を有する請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記結合分子がアンタゴニスト活性を有する請求項1または2に記載の使用。
【請求項5】
前記微生物が乳酸菌である請求項1〜4のいずれかに記載の結合分子生成微生物の使用。
【請求項6】
前記乳酸菌がラクトコッカス・ラクティス(Lactococcuslactis)である請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記乳酸菌がラクトバチルス種(Lactobacillussp.)である請求項5に記載の使用。
【請求項8】
前記微生物が酵母である請求項1〜4のいずれかに記載の結合分子生成微生物の使用。
【請求項9】
前記酵母がサッカロマイセス種(Saccharomycessp)である請求項8に記載の結合分子生成微生物の使用。
【請求項10】
前記免疫介在性疾患が免疫介在性疾患、炎症性疾患、自己免疫性およびアレルギー性疾患ならびに器官および骨髄移植拒絶のみから成る群より選択される請求項1〜9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
前記免疫介在性疾患がT細胞介在性疾患である請求項1〜10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
前記T細胞介在性疾患がクローン病である請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記T細胞介在性疾患が潰瘍性大腸炎である請求項11に記載の使用。
【請求項14】
前記結合分子が、IL‐1β、IL‐2、IL‐4、IL‐5、IL−6、IL‐7、IL‐8、IL‐9、IL‐12(またはそのサブユニットIL‐12p35またはIL‐12p40)、IL‐13、IL‐15、IL‐16、IL‐17、IL‐18、IL‐21、IL‐23(またはそのサブユニットIL‐23p19)、IL‐27、IL‐32(およびそのスプライス変異体)、IFN(α、β、γ)およびTNFαのリストから選択されるサイトカインに結合して、その生物学的効果を阻害する請求項1〜13のいずれかに記載の使用。
【請求項15】
前記結合分子が以下のリストから選択される請求項1〜14のいずれかに記載の使用:
(i)gp130などの可溶サイトカイン受容体、
(ii)IL‐2R(CD25、CD122、CD132)、IL‐12(ベータ1、ベータ2)、IL15R、IL‐17R、IL‐23RまたはIL‐6Rの受容体結合剤、
(iii)MIF、MIP‐1α、MCP‐1、RANTESおよびエオタキシン、
(iv)CD3/CD28、B7.1/B7.2、CD40/CD40L(CD154)、HVEM、ICOS/ICOSL、OX40/X40L、CD27/CD27L(CD70)、CD30/CD30L(CD153)および41BB/41BBL;
(v)I−CAM1、α4インテグリンおよびα4β7インテグリンのリストから選択される接着分子への結合を介して炎症の障害を解決する結合分子;
(vi)CD3、CTLA4および/またはPD1に対する共刺激効果およびアゴニスト効果を有する結合分子;
(vii)CD25、CD20、CD52、CD95、BAFF、APRILおよび/またはIgEを標的にすることでT細胞またはB細胞活性を無効化する結合分子;
(viii)MMPファミリーから選択される酵素への結合を介して炎症の障害を解決する結合分子;
(ix)αvβ3/α5β1およびIL‐8活性を無効化することなどの抗血管形成効果を示す結合分子;
―抗TNFα抗体、抗TNFα抗体断片、抗TNFα単一抗体可変ドメイン、可溶TNF受容体またはTNFαのドミナントネガティブ変異体;
―抗IL‐12抗体、抗IL‐12抗体断片、抗IL‐12単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐12受容体、IL‐12のドミナントネガティブ変異体またはIL‐12dAb
―抗IL‐12p35抗体,抗IL‐12p35抗体断片、抗IL‐12p35単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐12p35受容体、IL‐12p35のドミナントネガティブ変異体またはIL‐12p35dAb;
―抗IL‐12p40抗体,抗IL‐12p40抗体断片、抗IL‐12p40単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐12p40受容体、IL‐12p40のドミナントネガティブ変異体またはIL‐12p40dAb;
―抗IL‐23抗体,抗IL‐23抗体断片、抗IL‐23単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐23受容体、IL‐23のドミナントネガティブ変異体またはIL‐23dAb
―抗IL‐23p19抗体、抗IL‐23p19抗体断片、抗IL‐23p19単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐23p19受容体、IL‐23p19のドミナントネガティブ変異体またはIL‐23p19dAb
―抗IFNγ抗体、抗IFNγ抗体断片、抗IFNγ単一抗体可変ドメイン、可溶IFNγ受容体またはIFNγのドミナントネガティブ変異体;
―抗IL‐17抗体、抗IL‐17抗体断片、抗IL‐17単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐17受容体、IL‐17のドミナントネガティブ変異体またはIL‐17dAb;および
―抗MCP‐1抗体、抗MCP‐1抗体断片、抗MCP‐1単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐17受容体、MCP‐1のドミナントネガティブ変異体またはMCP‐1dAb。
【請求項16】
少なくとも1種の結合分子生成微生物を含む粘膜投与用医薬組成物。
【請求項17】
前記微生物が乳酸菌および酵母のみから成る群より選択される請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記乳酸菌がラクトコッカス・ラクティスである請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記乳酸菌がラクトバチルス種である請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記酵母がサッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomycescerevisiae)である請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記結合分子が抗体、抗体断片、dAb、二重特異性抗体、三重特異性抗体、多重特異性抗体、二価抗体、三価抗体、多価抗体、VHH、ナノボディ、Fab、scFv、Fv、dAb、Fd、ダイアボディ、トリアボディ、単鎖抗体、単ドメイン抗体、単一抗体可変ドメイン、可溶受容体、CTLD誘導結合剤、三量体誘導結合剤、リガンドおよび/またはドミナントネガティブ変異体である請求項16〜20のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記結合分子がアゴニスト活性を有する請求項16〜21のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記結合分子がアンタゴニスト活性を有する請求項16〜21のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記結合分子が、IL‐1β、IL‐2、IL‐4、IL‐5、IL−6、IL‐7、IL‐8、IL‐9、IL‐12(またはそのサブユニットIL‐12p35またはIL‐12p40)、IL‐13、IL‐15、IL‐16、IL‐17、IL‐18、IL‐21、IL‐23(またはそのサブユニットIL‐23p19)、IL‐27、IL‐32(およびそのスプライス変異体)、IFN(α、β、γ)およびTNFαのリストから選択されるサイトカインに結合して、その生物学的効果を阻害する請求項16〜21のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記結合分子が以下のリストから選択される請求項16〜21のいずれかに記載の医薬組成物:
(i)gp130などの可溶サイトカイン受容体、
(ii)IL‐2R(CD25、CD122、CD132)、IL‐12(ベータ1、ベータ2)、IL15R、IL‐17R、IL‐23RまたはIL‐6Rなどの受容体結合剤、
(iii)MIF、MIP‐1α、MCP‐1、RANTESおよびエオタキシン、
(iv)CD3/CD28、B7.1/B7.2、CD40/CD40L(CD154)、 HVEM、ICOS/ICOSL、OX40/X40L、CD27/CD27L(CD70)、CD30/CD30L(CD153)および41BB/41BBL;
(v)リスト、I−CAM1、α4インテグリンおよびα4β7インテグリンから選択される接着分子への結合を介して炎症の障害を解決する結合分子;
(vi)CD3、CTLA4および/またはPD1に対する共刺激効果およびアゴニスト効果を有する結合分子;
(vii)CD25、CD20、CD52、CD95、BAFF、APRILおよび/またはIgEを標的にすることでT細胞またはB細胞活性を無効化する結合分子;
(viii)MMPファミリーから選択される酵素への結合を介して炎症の障害を解決する結合分子;
(ix)αvβ3/α5β1およびIL‐8活性などの抗血管形成効果を示す結合分子;
―抗TNFα抗体、抗TNFα抗体断片、抗TNFα単一抗体可変ドメイン、可溶TNF受容体またはTNFαのドミナントネガティブ変異体;
―抗IL‐12抗体、抗IL‐12抗体断片、抗IL‐12単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐12受容体、IL‐12のドミナントネガティブ変異体またはIL‐12dAb
―抗IL‐12p35抗体,抗IL‐12p35抗体断片、抗IL‐12p35単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐12p35受容体、IL‐12p35のドミナントネガティブ変異体またはIL‐12p35dAb;
―抗IL‐12p40抗体,抗IL‐12p40抗体断片、抗IL‐12p40単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐12p40受容体、IL‐12p40のドミナントネガティブ変異体またはIL‐12p40dAb;
―抗IL‐23抗体,抗IL‐23抗体断片、抗IL‐23単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐23受容体、IL‐23のドミナントネガティブ変異体またはIL‐23dAb
―抗IL‐23p19抗体、抗IL‐23p19抗体断片、抗IL‐23p19単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐23p19受容体、IL‐23p19のドミナントネガティブ変異体またはIL‐23p19dAb
―抗IFNγ抗体、抗IFNγ抗体断片、抗IFNγ単一抗体可変ドメイン、可溶IFNγ受容体またはIFNγのドミナントネガティブ変異体;
―抗IL‐17抗体、抗IL‐17抗体断片、抗IL‐17単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐17受容体、IL‐17のドミナントネガティブ変異体またはIL‐17dAb;および
―抗MCP‐1抗体、抗MCP‐1抗体断片、抗MCP‐1単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐17受容体、MCP‐1のドミナントネガティブ変異体またはMCP‐1dAb。
【請求項26】
TNFα、IL‐12、IFNγ、IL‐23またはIL−17の生物学的効果を無効化し得る有効量の結合分子を生成する微生物を胃腸管に投与する工程を含む、少なくとも1種の胃腸管の病気または疾患を予防、治療および/または緩和する方法。
【請求項27】
前記結合分子が以下から成る群より選択される請求項26に記載の方法:
―抗TNFα抗体、抗TNFα抗体断片、抗TNFα単一抗体可変ドメイン、可溶TNF受容体またはTNFαのドミナントネガティブ変異体;
―抗IL‐12抗体、抗IL‐12抗体断片、抗IL‐12単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐12受容体、IL‐12のドミナントネガティブ変異体またはIL‐12dAb
―抗IL‐12p35抗体,抗IL‐12p35抗体断片、抗IL‐12p35単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐12p35受容体、IL‐12p35のドミナントネガティブ変異体またはIL‐12p35dAb;
―抗IL‐12p40抗体,抗IL‐12p40抗体断片、抗IL‐12p40単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐12p40受容体、IL‐12p40のドミナントネガティブ変異体またはIL‐12p40dAb;
―抗IL‐23抗体,抗IL‐23抗体断片、抗IL‐23単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐23受容体、IL‐23のドミナントネガティブ変異体またはIL‐23dAb
―抗IL‐23p19抗体、抗IL‐23p19抗体断片、抗IL‐23p19単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐23p19受容体、IL‐23p19のドミナントネガティブ変異体またはIL‐23p19dAb
―抗IFNγ抗体、抗IFNγ抗体断片、抗IFNγ単一抗体可変ドメイン、可溶IFNγ受容体またはIFNγのドミナントネガティブ変異体;
―抗IL‐17抗体、抗IL‐17抗体断片、抗IL‐17単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐17受容体、IL‐17のドミナントネガティブ変異体またはIL‐17dAb;および
―抗MCP‐1抗体、抗MCP‐1抗体断片、抗MCP‐1単一抗体可変ドメイン、可溶IL‐17受容体、MCP‐1のドミナントネガティブ変異体またはMCP‐1dAb。
【請求項28】
前記投与が経口または直腸投与である請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記病気または疾患が炎症性腸疾患のみから成る群より選択される請求項26〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記微生物が乳酸菌および酵母のみから成る群より選択される請求項26〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記乳酸菌がラクトコッカス・ラクティスである請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記乳酸菌がラクトバチルス種である請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記酵母がサッカロマイセス・セレヴィシエである請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記結合分子が抗体、抗体断片、dAb、二重特異性抗体、三重特異性抗体、多重特異性抗体、二価抗体、三価抗体、多価抗体、VHH、ナノボディ、Fab、scFv、Fv、dAb、Fd、ダイアボディ、トリアボディ、単鎖抗体、単ドメイン抗体、単一抗体可変ドメイン、可溶受容体、CTLD誘導結合剤、三量体誘導結合剤、リガンドおよび/またはドミナントネガティブ変異体である請求項26〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記結合分子がアゴニスト活性を有する請求項26〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記結合分子がアンタゴニスト活性を有する請求項26〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記結合分子が、IL‐1β、IL‐2、IL‐4、IL‐5、IL−6、IL‐7、IL‐8、IL‐9、IL‐12(またはそのサブユニットIL‐12p35またはIL‐12p40)、IL‐13、IL‐15、IL‐16、IL‐17、IL‐18、IL‐21、IL‐23(またはそのサブユニットIL‐23p19)、IL‐27、IL‐32(およびそのスプライス変異体)、IFN(α、β、γ)およびTNFαのリストから選択されるサイトカインに結合して、その生物学的効果を阻害する請求項26〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記結合分子が以下のリストから選択される請求項26〜34のいずれかに記載の方法:
(i)gp130などの可溶サイトカイン受容体、
(ii)IL‐2R(CD25、CD122、CD132)、IL‐12(ベータ1、ベータ2)、IL15R、IL‐17R、IL‐23RまたはIL‐6Rなどの受容体結合剤、
(iii)MIF、MIP‐1α、MCP‐1、RANTESおよびエオタキシン、
(iv)CD3/CD28、B7.1/B7.2、CD40/CD40L(CD154)、HVEM、ICOS/ICOSL、OX40/X40L、CD27/CD27L(CD70)、CD30/CD30L(CD153)および41BB/41BBL;
(v)リスト、I−CAM1、α4インテグリンおよびα4β7インテグリンから選択される接着分子への結合を介して炎症の障害を解決する結合分子;
(vi)CD3、CTLA4および/またはPD1に対する共刺激効果およびアゴニスト効果を有する結合分子;
(vii)CD25、CD20、CD52、CD95、BAFF、APRILおよび/またはIgEを標的にすることでT細胞またはB細胞活性を無効化する結合分子;
(viii)MMPファミリーから選択される酵素への結合を介して炎症の障害を解決する結合分子;ならびに
(ix)αvβ3/α5β1およびIL‐8活性を無効化することなどの抗血管形成効果を示す結合分子。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−513245(P2010−513245A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540770(P2009−540770)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063851
【国際公開番号】WO2008/071751
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(507055501)アクトジェニックス・エヌブイ (11)
【氏名又は名称原語表記】Actogenix NV
【Fターム(参考)】