免疫調節性非コードRNAモチーフを用いて抗体及び主要組織適合性クラスI拘束性又はクラスII拘束性T細胞の応答を開始或いは増強させるための組成物及び方法
本願は、抗原と共に或いは抗原なしで用いてB細胞成分及びT細胞成分を含む免疫応答を誘導し、増強させ、或いは調節する、非コードRNAモチーフに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、免疫応答の誘導に有用なモチーフに関する。特に本願は、抗原と共に或いは抗原なしで用いて、B細胞(抗体)成分、及び必要に応じてT細胞成分を含む免疫応答を誘導し、増強し、或いは調節する、非コードRNA(non-coding RNA)モチーフに関する。
【背景技術】
【0002】
ウィルス感染には、多くの場合、正常な状態では通常出会うことの無いRNA種が関係しており、またウィルス感染によりこのようなRNA種が産生されることが多い。このようなRNAは、ゲノムの断片(二本鎖RNAを有するウィルスの場合)か、複製中間体か、ステムループ構造体かのいずれかであり、TLR3(Toll様受容体3)等の自然免疫受容体により認識され、IFN−Iや他の可溶性メディエーターの産生を引き起こす。更に、ポリI:ポリC(pI:pC、或いはpI:C)等、ある種のdsRNAモチーフが、未成熟な樹状細胞をプロフェッショナルAPCとして作用するステージへと活性化することが分かっている。ポリI:ポリCやIFN−Iがタンパク抗原に対する抗体応答に影響を及ぼすことが知られているにも拘わらず、dsRNA免疫調節モチーフに関して得られている情報の多くは自然免疫のモデルから得たものであり、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、その他特定の抗原受容体を欠く細胞サブセットに限定されていた。従って、二本鎖RNAや他のRNA種に関連するモチーフが、適応免疫応答に限られた影響しか及ぼさないのか、それとも強い危険シグナルとして免疫寛容を防ぎ、特定のT細胞の分化方向を決定する作用をするのかはこれまで示されていなかった。更に、免疫応答に対して潜在的に様々な影響力を有するRNA関連危険モチーフが多数存在するのか否かという重大な問題についても議論はなされていない。更に、非コードRNAモチーフがウィルス感染の際のクラスI拘束性免疫応答の誘導を促進できるかどうかは明確にされておらず、最近までは、多くの場合、抗原提示細胞(APC)の不稔感染又は増殖感染に続いて起こると考えられていた。
【0003】
ウィルス感染の際、特定のTリンパ球が、MHC分子によって提示される外来エピトープと接触し、Bリンパ球は可溶性抗原を認識する。リンパ球の増殖や分化によって、特定のエフェクター細胞や記憶細胞から成る適応免疫応答が規定される。免疫応答の初期段階においては、自然免疫は、微生物関連モチーフを認識すると共に、損傷により誘導された内発性危険シグナルをも認識する。この危険シグナルとは、損傷後における特定リンパ球の分化方向や免疫応答の全体的プロフィールを決定するものである。危険シグナルが存在しない場合には、T細胞及びB細胞の応答性が低下し、特に、抗原量が中程度から高度の所で免疫寛容を生じる。このことが無害の抗原と感染に関わる「危険」な抗原とを区別する決定的メカニズムであると提唱されてきた。また、このメカニズムは、これまで抗原−受容体レパートリーのレベルのみにおいて決定されると考えられていた自己と非自己とを区別する免疫システムの戦略に新たな視点を与えている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
適応免疫応答はT細胞及びB細胞のエピトープの認識によって刺激され、自然免疫受容体を介して作用する「危険」シグナルによって形作られる。本願では、非コード二本鎖或いは一本鎖RNAに関連するモチーフが、ウィルス感染に似た免疫応答、即ち炎症促進性(pro-inflammatory)ケモカイン発現の急速な誘導、抗原提示細胞(APC)の増加(recruitment)及び活性化、免疫調節サイトカインの調節、Th1細胞の分化、アイソタイプのスイッチング、クロスプライミングの刺激等、MHCクラスI拘束性免疫応答の誘導に関わる免疫系応答に対して基本的機能を与えるということを示す。また本願では、RNA関連モチーフの不均一性が免疫応答プロフィールに様々な影響を及ぼすことを示す。ウィルス感染に際し特定のRNAモチーフが示す能力である、寛容誘導の阻止能力と免疫防御の効果的構築能力とに基づき、このようなRNA種が強力な「危険シグナル」であることを示す。さらに本願では、選択したRNAモチーフ群をアジュバントとして用いてサブユニットワクチンに対する免疫応答を最適化することを教示する。ウィルス感染の際に産生されるRNA関連モチーフが、自然免疫に短期的影響を与えるのみならず、早期応答と、抗原特異性B細胞及びT細胞の活性化と分化を含む後期適応段階との間を橋渡しするものであることが結論付けられる。
【0005】
本願では、RNAの一本鎖対二本鎖の性質の違いに加えて、オリゴヌクレオチドの組成が自然免疫受容体による非コードRNAモチーフの認識のための重要な決定基であることを示す。更に、不均一なRNAモチーフが、適応免疫に対して強力且つ様々な影響を及ぼし、ウィルス感染の際の免疫応答の特徴の多くを媒介するするものであることを示す。最後に、新たに開示するRNAモチーフが、各種感染症やガンに対して予防的或いは治療的に用いることにより防御メカニズムを効果的に作動させるものであることも示す。
【0006】
本願は2002年3月15日出願の米国特許仮出願第60/364,490号及び2002年9月20日出願の米国特許仮出願第60/412,219号に基づく優先権を主張しており、これら出願を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の実施態様を含む。
【0008】
1.抗原に対する免疫応答を増強する方法であって、二本鎖RNAを含有する組成物を投与することと、前記組成物と前記抗原とを同時投与することとを含む方法。
【0009】
2.抗原が体内に既に存在している場合に抗原に対する免疫応答を増強或いは調節する方法であって、二本鎖RNAを含有する組成物を投与することを含む方法。
【0010】
3.RNAが非コードRNAである、パラグラフ1に記載の方法。
【0011】
4.二本鎖RNAがポリアデニン及びポリウラシルから成る、パラグラフ1又は2に記載の方法。
【0012】
5.二本鎖RNAが、ポリグアニンとポリシトシン、及びポリイノシンとポリシトシンから成る群の一方から成る、パラグラフ1又は2に記載の方法。
【0013】
6.二本鎖RNAがアデニンとウラシルとから成る、パラグラフ1又は2に記載の方法。
【0014】
7.二本鎖RNAがグアニンとシトシン、又はイノシンとシトシンから成る、パラグラフ1又は2に記載の方法。
【0015】
8.Th1細胞及びTc1細胞の応答を増強する、パラグラフ1に記載の方法。
【0016】
9.Tc1細胞応答を誘導する、パラグラフ1に記載の方法。
【0017】
10.B細胞応答を増強する、パラグラフ1に記載の方法。
【0018】
11.前記抗原を別の抗原と同時投与する、パラグラフ1に記載の方法。
【0019】
12.CXCケモカイン及びCCケモカインを誘導する、パラグラフ1に記載の方法。
【0020】
13.MIP−1α、MIP−1β、MIP−3α、及びIP−10を誘導する、パラグラフ12に記載の方法。
【0021】
14.前記組成物の前記投与が、CD11b+単球又はCD11c+樹状細胞を増加させ活性化させることにより、T細胞及びB細胞の応答を増強する、パラグラフ1に記載の方法。
【0022】
15.二本鎖RNA組成物が、抗原提示細胞を増加させることにより免疫応答を増強する、パラグラフ1に記載の方法。
【0023】
16.抗原提示細胞がプロフェッショナルAPCである、パラグラフ1に記載の方法。
【0024】
17.二本鎖RNA組成物がイノシンとシトシンとを含み、CD11c+樹状細胞の効果的な増加を誘導する、パラグラフ1又は2に記載の方法。
【0025】
18.パラグラフ1又は2に記載の方法であって、二本鎖がイノシンとシトシンとを含むRNA組成物及びアデニンとウラシルとを含むRNA組成物から成る群から選択され、該方法がCD11b+単球の効果的な増加を誘導する、パラグラフ1又は2に記載の方法。
【0026】
19.APCが活性化される、パラグラフ15に記載の方法。
【0027】
20.抗原が非感染性抗原であり、RNA MHCクラスI拘束性T細胞が、ポリアデニンとポリウラシルとを含むRNA組成物によりクロスプライミングされる、パラグラフ4に記載の方法。
【0028】
21.RNA組成物を粘膜投与する、パラグラフ4〜7に記載の方法。
【0029】
22.非感染性抗原に対する大量域寛容を阻止する方法であって、ポリアデニンとポリウラシル、若しくはポリイノシンとポリシトシンのいずれかを含む二本鎖RNA組成物と共に前記非感染性抗原を投与することを含む方法。
【0030】
23.非感染性抗原を高用量で投与するか、或いは非感染性抗原が既に体内に存在している、パラグラフ22に記載の方法。
【0031】
24.該用量が、寛容を生ぜしめうる(toleragenic)量の抗原である、パラグラフ22に記載の方法。
【0032】
25.B細胞の不応答を防止する、パラグラフ22に記載の方法。
【0033】
26.組成物や抗原を、各種担体と複合化して或いは複合化せずに、粘膜投与、呼吸器投与、静脈内投与、皮下投与、及び筋肉内投与の一により投与する、パラグラフ1、2及び22に記載の方法。
【0034】
27.Igバックボーンに結合した少なくとも一の抗原ペプチドエピトープを用いて抗原提示細胞にロードすることによりIg−ペプチド分子を形成し、該Ig−ペプチド分子をdsRNAモチーフと共に生体内投与することを含み、エピトープがMHC I経路により効果的にプロセシングされて提示され、その結果、MHCクラスI分子が効果的にロードされ、抗原との生体内での接触に続いて、MHCクラスI拘束性T細胞が効果的に二次増殖する、免疫方法。
【0035】
28.抗原がウィルスである、パラグラフ27に記載の方法。
【0036】
29.ウィルスがインフルエンザウィルスである、パラグラフ28に記載の方法。
【0037】
30.ペプチド−エピトープがrecIgG−NP(Kd)である、パラグラフ27に記載の方法。
【0038】
31.dsRNAがpA:pUである、パラグラフ27に記載の方法。
【0039】
32.T細胞が細胞障害性Tリンパ球である、パラグラフ27に記載の方法。
【0040】
33.抗原との生体内での接触に続くMHCクラスI拘束性T細胞の二次増殖が、組換え抗原を無菌生理食塩水に添加して投与しただけの場合よりも大きい、パラグラフ27に記載の方法。
【0041】
34.IgGバックボーンに結合した少なくとも一の腫瘍関連T細胞エピトープを用いて抗原提示細胞にロードすることによりIgG−ペプチド分子を形成し、該Ig−ペプチド分子をdsRNAと共に生体内投与する、臨床診断後の腫瘍の制御及び処置方法。
【0042】
35.腫瘍関連T細胞エピトープがMHC I経路により効果的にプロセシングされて提示され、その結果、MHCクラスI分子が効果的にロードされ、MHCクラスI−ペプチド複合体が生じる、パラグラフ34に記載の方法。
【0043】
36.腫瘍関連T細胞エピトープに対する免疫応答と腫瘍拒絶を生じる、パラグラフ34に記載の方法。
【0044】
37.dsRNAがpA:pUである、パラグラフ34に記載の方法。
【0045】
38.Ig−Gペプチド複合体及びdsRNAを抗腫瘍治療として繰り返し投与する、パラグラフ34に記載の方法。
【0046】
39.腫瘍拒絶が生じると、Tc1免疫が腫瘍関連エピトープに対して生じる、パラグラフ34及び35に記載の方法。
【0047】
40.IgG−ペプチド及びdsRNAを投与すると、Tc2免疫が腫瘍関連エピトープに対して生じる、パラグラフ34に記載の方法。
【0048】
41.同種の腫瘍関連エピトープに対する有効な記憶応答を更に誘導する、パラグラフ34に記載の方法。
【0049】
42.腫瘍細胞変異体に対する継続的な免疫(continued immunity)を生じる、パラグラフ34に記載の方法。
【0050】
43.抗原に対する抗体応答を増強する方法であって、ヒト又はヒト以外の哺乳類に対して該抗原を、pA:pU、pI:pC及びpC:pG又はそれらの混合物から成る群より選択されるdsRNAと共に投与することを含む方法。
【0051】
44.抗原に対する抗体応答を増強する方法であって、ヒト又はヒト以外の哺乳類に対して該抗原を、pA、pC、pI、pU、p(G,U)、p(C,U)、p(A,C)、p(I,U)、p(C,I)、p(A,U)、p(A,G)、p(A,C,G)、p(A,C,U)及びp(A,G,U)から成る群より選択される一本鎖RNA種の混合物と共に投与することを含む方法。
【0052】
45.ポリアデニン及びポリウラシルから成るdsRNA配列を含む、抗原に対する免疫応答を増強するための組成物。
【0053】
46.組成物が抗原を更に含む、パラグラフ45に記載の組成物。
【0054】
47.前記抗原が既に体内に存在している、パラグラフ45に記載の組成物。
【0055】
48.前記抗原が医薬的に許容される担体に添加されて投与される、パラグラフ45に記載の組成物。
【0056】
49.前記抗原が免疫グロブリンに添加されて投与される、パラグラフ45に記載の組成物。
【0057】
50.前記医薬的に許容されるものがIgGである、パラグラフ48に記載の組成物。
【0058】
51.抗原が腫瘍関連エピトープである、パラグラフ45〜47に記載の組成物。
【0059】
52.抗原がウィルスである、パラグラフ45〜47に記載の組成物。
【0060】
53.抗原が腫瘍関連T細胞エピトープである、パラグラフ51に記載の組成物。
【0061】
54.dsRNAが前記抗原と共に投与される、パラグラフ45〜53に記載の組成物。
【0062】
55.前記dsRNAが前記抗原とは別途に投与される、パラグラフ45〜53に記載の組成物。
【0063】
56.ポリイノシン及びポリシステインから成るdsRNA配列を含む、抗原に対する免疫応答を増強するための組成物。
【0064】
57.組成物が抗原を更に含む、パラグラフ56に記載の組成物。
【0065】
58.前記抗原が既に体内に存在している、パラグラフ56に記載の組成物。
【0066】
59.前記抗原が医薬的に許容される担体に添加されて投与される、パラグラフ56に記載の組成物。
【0067】
60.前記抗原が免疫グロブリンに添加されて投与される、パラグラフ56に記載の組成物。
【0068】
61.前記医薬的に許容されるものがIgGである、パラグラフ59に記載の組成物。
【0069】
62.前記抗原が腫瘍関連エピトープである、パラグラフ56〜58に記載の組成物。
【0070】
63.前記抗原がウィルスである、パラグラフ56〜58に記載の組成物。
【0071】
64.前記抗原が腫瘍関連T細胞エピトープである、パラグラフ62に記載の組成物。
【0072】
65.dsRNAが前記抗原と共に投与される、パラグラフ56〜64に記載の組成物。
【0073】
66.前記dsRNAが前記抗原とは別途に投与される、パラグラフ56〜64に記載の組成物。
【0074】
67.抗原に対する免疫応答を増強させるための医薬の製造のための二本鎖(「dsRNA」)の使用であって、前記dsRNAを前記抗原と共に患者に投与することを含む使用。
【0075】
68.抗原に対する免疫応答を増強させるための医薬の製造のためのdsRNAの使用であって、抗原が既に患者の体内に存在しているときに前記dsRNAを患者に投与することを含む使用。
【0076】
69.dsRNAが非コードRNAである、パラグラフ67又は68に記載の使用。
【0077】
70.二本鎖RNAがポリアデニンとポリウラシルから成る、パラグラフ67又は68に記載の使用。
【0078】
71.二本鎖RNAが、ポリイノシンとポリシトシン、又はポリグアニンとポリシトシンから成る、パラグラフ67又は68に記載の使用。
【0079】
72.二本鎖RNAがアデニンとウラシルを含む、パラグラフ67又は68に記載の使用。
【0080】
73.二本鎖RNAがグアニンとシトシン、又はイノシンとシトシンを含む、パラグラフ67又は68に記載の使用。
【0081】
74.Th1細胞及びTc1細胞の応答が増強される、パラグラフ67〜73に記載の使用。
【0082】
75.抗原に対するTc1細胞の応答が誘導される、パラグラフ67〜73に記載の使用。
【0083】
76.前記方法が抗原に対するB細胞の応答を増強する、パラグラフ67〜73に記載の使用。
【0084】
77.前記抗原が別の抗原と同時投与される、パラグラフ67又は68に記載の使用。
【0085】
78.前記方法がCXCケモカイン及びCCケモカインを誘導する、パラグラフ67又は68に記載の使用。
【0086】
79.前記方法がMIP−1α、MIP−1β、MIP−3α、及びIP−10を誘導する、パラグラフ67又は68に記載の使用。
【0087】
80.前記dsRNAの前記投与が、CD11b+単球又はCD11c+樹状細胞を増加させ活性化することにより、T細胞及びB細胞の応答を増強する、パラグラフ67〜71に記載の使用。
【0088】
81.二本鎖RNA組成物が、抗原提示細胞を増加させることにより、免疫応答を増強する、パラグラフ67〜71に記載の使用。
【0089】
82.抗原提示細胞がプロフェッショナルAPCである、パラグラフ81に記載の使用。
【0090】
83.二本鎖RNA組成物がイノシンとシトシンを含み、CD11c+樹状細胞の効果的増加を誘導する、パラグラフ71に記載の使用。
【0091】
84.前記二本鎖が、イノシンとシトシンとを含むRNA組成物、及びアデニンとウラシルとを含むRNA組成物から成る群より選択され、前記方法がCD11b+単球の効果的増加を誘導する、パラグラフ67又は68に記載の使用。
【0092】
85.前記抗原が非感染性抗原であり、RNA MHCクラスI拘束性T細胞がポリアデニンとポリウラシルを含むRNA組成物によりクロスプライミングされる、パラグラフ67〜70に記載の使用。
【0093】
86.組成物や抗原が、各種担体と複合化され或いは複合化されないで、粘膜投与、呼吸器投与、静脈内投与、皮下投与、及び筋肉内投与の一により投与される、パラグラフ67〜70に記載の使用。
【0094】
87.非感染性抗原に対する大量域寛容を防止するための医薬の製造のためのdsRNAの使用であって、ポリアデニンとポリウラシル、若しくはポリイノシンとポリシトシンのいずれかを含む二本鎖RNA組成物と共に前記非感染性抗原を投与することを含む使用。
【0095】
88.前記非感染性抗原が高用量で投与されるか、或いは既に体内に存在している、パラグラフ87に記載の使用。
【0096】
89.該用量が、寛容を生ぜしめうる量の抗原である、パラグラフ87に記載の使用。
【0097】
90.前記方法がB細胞の不応答を防止する、パラグラフ87に記載の使用。
【0098】
91.Igバックボーンに結合した少なくとも一の抗原ペプチドエピトープを用いて抗原提示細胞にロードすることによりIg−ペプチド分子を形成し、該Ig−ペプチド分子をdsRNAモチーフと共に生体内投与することを含み、エピトープがMHC I経路により効果的にプロセシングされて提示され、その結果、MHCクラスI分子が効果的にロードされ、抗原との生体内での接触に続いて、MHCクラスI拘束性T細胞が効果的に二次増殖する、医薬の製造のためのdsRNAの使用。
【0099】
92.抗原がウィルスである、パラグラフ91に記載の使用。
【0100】
93.ウィルスがインフルエンザウィルスである、パラグラフ91に記載の使用。
【0101】
94.ペプチドエピトープがrecIgG−NP(Kd)である、パラグラフ91に記載の使用。
【0102】
95.dsRNAがpA:pUである、パラグラフ91に記載の使用。
【0103】
96.T細胞が細胞障害性Tリンパ球である、パラグラフ91に記載の使用。
【0104】
97.IgGバックボーンに結合した少なくとも一の腫瘍関連T細胞エピトープを用いて抗原提示細胞にロードすることによりIgG−ペプチド分子を形成し、該Ig−ペプチド分子をdsRNAと共に生体内投与することを含む、臨床診断後の腫瘍の制御及び処置のための医薬の製造におけるdsRNAの使用。
【0105】
98.腫瘍関連T細胞エピトープがMHC I経路により効果的にプロセシングされて提示され、その結果、MHCクラスI分子が効果的にロードされ、MHCクラスI−ペプチド複合体を生じる、パラグラフ97に記載の使用。
【0106】
99.前記方法が腫瘍関連T細胞エピトープに対する免疫応答と腫瘍拒絶を生じる、パラグラフ97に記載の使用。
【0107】
100.dsRNAがpA:pUである、パラグラフ97に記載の使用。
【0108】
101.Ig−Gペプチド複合体及びdsRNAが抗腫瘍治療として繰り返し投与される、パラグラフ97に記載の使用。
【0109】
102.腫瘍拒絶が生じると、Tc1免疫が腫瘍関連エピトープに対して生じる、パラグラフ97に記載の使用。
【0110】
103.IgG−ペプチド及びdsRNAを投与すると、Tc2免疫が腫瘍関連エピトープに対して生じる、パラグラフ97に記載の使用。
【0111】
104.前記方法が、同種の腫瘍関連エピトープに対する有効な記憶応答を更に誘導する、パラグラフ97に記載の使用。
【0112】
105.前記方法が、腫瘍細胞変異体に対する継続的な免疫を生じる、パラグラフ97に記載の使用。
【0113】
106.抗原に対する抗体応答を増強するための医薬の製造におけるdsRNAの使用であって、ヒト又はヒト以外の哺乳類に対して前記抗原を、pA:pU、pI:pC及びpC:pGから成る群より選択されるdsRNAと共に投与することを含む使用。
【0114】
107.抗原に対する抗体応答を増強するための医薬の製造におけるdsRNAの使用であって、ヒト又はヒト以外の哺乳類に対して前記抗原を、pA、pC、pI、pU、p(G,U)、p(C,U)、p(A,C)、p(I,U)、p(C,I)、p(A,U)、p(A,G)、p(A,C,G)、p(A,C,U)及びp(A,G,U)から成る群より選択される一本鎖RNA種の混合物と共に投与することを含む使用。
【0115】
108.ポリアデニン及びポリウラシルから成るdsRNA配列を含む、抗原に対する免疫応答を増強するための医薬の製造におけるdsRNAの使用。
【0116】
109.前記組成物が抗原を更に含む、パラグラフ108に記載の使用。
【0117】
110.前記抗原が既に体内に存在している、パラグラフ108に記載の使用。
【0118】
111.前記抗原が医薬的に許容される担体に添加されて投与される、パラグラフ108に記載の使用。
【発明を実施するための最良の形態】
【0119】
自然免疫の潜在的な役割の理解が進んだ結果、微生物感染時における免疫応答のメカニズムが研究の主要な領域となった。自然免疫細胞は、各種細菌に関連したモチーフ、即ち「外因性」危険シグナルを識別する多種に渡る受容体を有していることが直ちに明らかとなった。このパターン認識イベントの後の自然免疫と適応免疫間の連携は、T細胞及びB細胞の応答性及び応答プロフィールに重要な影響を及ぼす。自然免疫は迅速ではあるが識別性に乏しい。しかしながら、自然免疫は、よりゆっくりと進展しより強力なエフェクターで構成される適応免疫を方向付ける。適応免疫は、体細胞突然変異によって獲得した広範囲に亘るレパートリーを有する。自然免疫と適応免疫とを合せて用いる多重パターン認識戦略によって、免疫識別の規範は、自己/非自己認識から危険/非危険認識へと変化した。精製タンパクの免疫原性が低いこと、微生物モチーフにより免疫メディエーターが誘導されること、及びこれらメディエーター(サイトカイン、ケモカイン、共刺激分子)が適応免疫に対して有する活性の特徴付けは、全てこの概念を支持するものである。
【0120】
本願に開示するように、危険シグナルとしての非コードRNAモチーフの役割を明確にする合理的なアプローチをとったところ、ウィルス感染の際、適応免疫を制御するにあたって前記モチーフが果たす役割の理解に直ちに結び付くものであった。更に、ワクチン接種と共にこれらRNAモチーフをアジュバントとして使用することについて研究を行なった。
【0121】
合成RNAのライブラリーと2段階の戦略を採用し、自然免疫ではなく適応免疫に及ぼす効果を読出しとして利用した。この方法により、RNAの二本鎖の性質に加えて、オリゴヌクレオチドの組成が、この問題に関する役割を果たすことが意外にも見出された。A:Uベースのモチーフは、Th1免疫の作動、IgG2aへのアイソタイプスイッチング(図1A〜1C)、クロスプライミング(図3A〜3E)の各能力が、I:Cベースのモチーフに比べ高いことが示される。先に定義したこのI:Cモチーフは、T2細胞及びB細胞免疫(図1A〜1C)を増強する。dsRNAに関連するC:Gモチーフ、或いは種々雑多なssRNAモチーフは、相補塩基で構成されるssRNAの混合物を用いない限りは、適応免疫に対し低い効果しか示さなかった。これらの結果は、機能的TLR4の非存在下で再現されたことから、この時点でエンドトキシン認識経路と共通の経路は除外することができる。最近になって、TLR3はpI:pCを認識する役割を果たすことがわかってきたが、pA:pUとpI:pCの二種のモチーフによって誘起される免疫応答プロフィールは大きく異なるため(図1A〜1C)、pA:pUとの共通認識経路ではないと考えられる。それよりも、TLR3以外のTLRアイソフォーム及び/又は共受容体が、基本的(rudimentary)免疫レパートリーを連想させるプロセスによって、ヌクレオチドの同一性に基づいてRNAモチーフを識別するプロセスに関係していると考えられる。反復的非メチル化CpGオリゴデオキシヌクレオチドモチーフを認識することがわかったTLR9、或いはTLRのアイソフォームが、dsRNA−モチーフの識別に関与している可能性もある。しかしながら最近の証拠ではTLRの関与は裏付けられていない。dsRNAが誘導する転写因子と共刺激分子のスペクトルは、非メチル化CpGモチーフのスペクトルとが異なるのである。pI:pC及びpA:pUはどちらもCXCケモカインを誘導するため(図3A)、選択的にTh2細胞に結合する能力を有するCCケモカイン等、他のメディエーターが、これらのモチーフによって惹起される異なるThプロフィールの原因となっていると考えられる。
【0122】
データによれば、新規に特徴付けられたpA:pU結合モチーフは、適応免疫応答の、通常はウィルス感染した後にのみに見出される多くの特徴を誘導できると結論される。タンパク抗原(OVAとgp140)及び不活性化インフルエンザウィルスによるT1応答(Th1とTc1の双方)の誘導が示されている(図1〜3)。タンパク抗原に対するMHCクラスI拘束性応答の誘導は(図3D、E)、このRNAモチーフがプロセシングと提示のメカニズムに適合するレベルにまでAPCを活性化するのに十分であったことを示唆しており、クロスプライミングがウィルス感染の主要なメカニズムであることを裏付ける新規な情報を示している。このことはAPCの直接感染よりも、RNA関連危険モチーフが、インフルエンザウィルス等のRNAウィルスの感染の際に細胞障害性Tリンパ球(CTL)が誘導される原因であることを示唆している。免疫応答性の増強は、APCの急速な増加と活性化によって説明できる(図3A〜3E)。pA:pUによって促進されるT1免疫の誘導はアイソタイプスイッチングを伴い、IgG2a抗体の生成を生じる(図1B)。しかしながら、dsRNAは、IgAクラスに対するアイソタイプスイッチングは誘導できなかった。これはTGF−βの阻害と関連性があり(図示せず)、dsRNA危険モチーフが、炎症促進性メディエーターの誘導及び抗炎症メディエーターの下方調節(down-regulation)によって作用することを示唆している。これらの結果は、インフルエンザ等の感染の際に、dsRNAモチーフが適応免疫を形成する重要な(但しこれのみに限定されるものではない)役割と一致する。
【0123】
強力な危険モチーフは、免疫応答性・不応答(寛容)の点で結果に影響を及ぼすはずであるので、免疫不応答がうまく特徴付けられたモデルである、ヒトIgGに対する大量域寛容をdsRNAが阻止するかどうかが検討された。pA:pU及びpI:pCの両者が、適応免疫のモジュレータであるばかりでなく、免疫寛容の強力な阻害剤であることが示された(図4A〜4B)。この観察は、dsRNAが有する特徴パネルを豊かにし、危険モチーフのアジュバンド効果が一般に、少なくとも部分的には免疫不応答の防止によって生じている可能性を開く。最後に、A及びU塩基は天然RNA種に見出されるが、I(イノシン)塩基は見出されないため、データは、ウィルス感染の際の免疫応答に対する潜在的な関連性を有する前者のdsRNAモチーフを示す。
【0124】
危険モチーフとしてのpA:pUの効力は、インフルエンザウィルスによる一次感染に対する制御能力によって示される(図4A〜4B)。自然免疫及び適応免疫の迅速な可動性により説明できるこの特徴は、一次感染の際の非メチル化CpGオリゴDNAモチーフの免疫防御能力を強く想起させる。これを敷衍すれば、自然免疫は異種の或いは外因的に生成された感染関連ポリヌクレオチドモチーフを認識する精巧な能力を有し、それによって適応免疫を調節すると結論される。従って、系内に抗原が存在する場合、dsRNAへの更なる接触は、免疫応答を簡単に、より効果的に働かせることができると考えられ、抗原のクリアランスについての直接的示唆が与えられる。
【0125】
ここに記述する結果に基づくと、dsRNAモチーフは、サブユニット、組換えワクチン或いは不活性化ワクチンと協同するアジュバントとしての理にかなった候補である。特に、pA:pUは、ベクター複製がない場合に、生ワクチンの有益な特徴の内の或るものを提供しているらしく思われる。本願は、粘膜や全身に対してのワクチン接種を行うための、抗原とdsRNAの同時処方を可能にする免疫複合体を開示する。図5A〜5Dに示すように、これら複合体を用いる肺のワクチン接種と癌の免疫治療は、抗体、Tヘルパー及びクラスI拘束性T細胞から成る強力な免疫応答の誘導を生じる。
【0126】
結論として、適応免疫応答に影響を及ぼすRNAモチーフを選択する合理的なアプローチを用いることにより、予期せぬ多様性と新規のRNA関連危険モチーフが定義された。適応免疫応答の体系的な検討により、選択されたRNAモチーフが、自然感染を想起させる広範囲に亘る特徴を組織することが示された。最後に、本願の検討は、免疫不応答、即ち寛容を排除することによる免疫治療のみならず、粘膜或いは全身に対するワクチン接種に使用される可能性を有するこれらRNAモチーフを含む新規な調剤を明確にするものである。
【0127】
A)材料及び方法
1)抗原及び免疫調節剤
一本鎖及び二本鎖合成RNA18種のパネル(表1参照)をシグマ社(Sigma)から購入し、無菌PBSに溶解した。これらのRNAはプールとして或いは個々に使用した。卵白アルブミン(OVA、低エンドトキシン)はシグマ社(A7641)から購入した。コレラ毒サブユニットB(CTB)はカルビオケム(Calbiochem)(カタログ番号227039)から、完全フロイントアジュバント(CFA)はDIFCO(カタログ番号263810)から、ヒトIgG(hIgG)はシグマ社(カタログ番号I4506)から購入した。コンホメーションエピトープを保ち且つ三量体化する能力を有する組換えgp140 HIV抗原は、停止変異(stop mutation)を導入することにより、IIIB株のgp160エンベロープタンパク質から得た。この抗原は、ベルナルド・モス(Bernard Moss)博士(N.I.H.)の厚意により提供されたワクチニアウィルスベクターによってBS−C−1(ATCC)細胞内で発現し、レンチルレクチンセファロースクロマトグラフ(ファーマシア(Pharmacia)、ニュージャージー州ピスカタウェイ)によって精製した。gp140抗原であることは、フィッツジェラルド(Fitzgerald)(カタログ番号20−HG81)から購入したHIVエンベロープ特異的抗体を用いたウェスタンブロット分析によって確認した。インフルエンザウィルス(A/WSN/32H1N1株)はMDBK細胞で増殖させ、上清からショ糖勾配遠心法によって精製した。ウィルスの不活性化のために、ウィルス粒子を攪拌しながら15分間、短波長UV光に曝露した。不活性化は、許容MDCK細胞へのウィルス滴定により確認した。可変領域内にI−Ed−拘束性ヘマグルチニン由来ペプチドSFERFEIFPKE(IgHA)[配列番号1]を有する組換えマウスIgG2bを得て、先に特徴付けたように精製した。
【0128】
【表1】
【0129】
2)動物
6〜8週齢のC57BL/6、BALB/c及びTLR4−/−C3H/HeJ雌性マウスを、ジャクソンラボラトリ(Jackson Laboratories、マサチューセッツ州バーハーバー)から購入し、アライアンス・ファーマスーティカル社(Alliance Pharmaceutical Corp.)で特定の病原体条件に収容した。C57BL/6及びBALB/cマウスにおける観察結果の主要なものは、エンドトキシンに対する応答性を欠損したC3H/HeJマウスにおいて再現された。雌性のSprague Dawleyラット(250〜330グラム)はタコニックファーム(Taconic Farms)から購入し、同様の条件下に置いた。
【0130】
3)免疫感作、攻撃、及びウィルス力価の測定
マウスとラットは前述のように各々気管内点滴、噴霧投与によってプライミングし、マウスの場合は、鼻腔内に二週間の間隔で二回追加免疫を行った。大量域寛容の誘導のために、それらのマウスを静注によってプライミングした。最後に、強い免疫応答を誘導するために、マウスをCFAで乳化した抗原の皮下注射により免疫感作した。プライミング、追加免疫、或いは寛容の誘導に用いた抗原の量は、OVA−100μg、HIV gp140−10μg、hIgG−200μg、ショ糖精製UV−WSN−20μgであった。合成RNAは、一用量につき40〜50μgの量を、抗原と共に或いは抗原なしで、SCL COMPLEXESに添加し或いは添加せずに用いた。CTBの一用量当たりの含有量は10μgであった。抗原は、生理食塩水に添加して導入するか、或いは処方の際にSCLマトリクスと適合する不活性ビヒクルであるパーフルオロカーボン(パーフルブロン(perflubron)(未希釈なパーフルオロオクチルブロマイド)、リクイベント(Liquivent()、アライアンス・ファーマスーティカル社)に添加して導入する(点滴或いは噴霧投与の全量は40〜45μL)。
【0131】
ウィルス攻撃のために、C57BL/6及びTLR4−/−C3H/HeJマウスを、メトファン麻酔下で亜致死量(TCID50:104組織培養感染量50%)のWSNウィルス生菌に経鼻感染させた。感染5日後、マウスを殺し肺を摘出し、ホモジネートして−70℃で保存した。ウィルス力価は、許容MDCK細胞による試料の段階希釈液を48時間インキュベートし、次いでニワトリ赤血球細胞(アニマルテクノロジー社から入手)による標準血球凝集反応により測定した。終点力価は3回の測定の補間によって評価し、器官当りのTCID50として表した。
【0132】
4)免疫複合体
リン脂質を主な賦形剤として短鎖脂質複合体(「免疫複合体」)を得る技術プロセスは噴霧乾燥であった。ここではこのプロセスのより簡略化したバージョンを用いた。即ち、リン脂質を水にホモジネートし(リポソーム或いはミセルの形成のため)、賦形剤と活性剤を混合し、次いで噴霧乾燥した。詳細には、噴霧乾燥の直前に、2種の調製物AとBを混合して水性組成物を調製した。調製物Aは、0.14gのジオクタノイルホスファチジルコリン(アバンティポーラーリピッズ社(Avanti Polar Lipids))を23mLの温DI水に溶解したミセル調製物を含んでいた。このリン脂質ミセル調製物に、0.0357gのCaCl2・2H2Oと0.714grのラクトースを溶解した。調製物Bは、20mgの卵白アルブミン(シグマ社)と5mLのPBSに溶解した4mgのpA:pU(エンドトキシンは含まず)とを含んでいた。フィード用混合物(2mL調製物A+調製物B)を標準B−191ミニ噴霧乾燥機によって次の条件で噴霧乾燥した。入口温度70℃、出口温度43℃、アスピレータ90%、ポンプ2.2mL/分、窒素流量2400L/時間。得られた複合体のPL:OVA:pApU:CaCl2・2H2O:ラクトースの重量比は12:20:4:3:61であった。
【0133】
5)抗体及びT細胞応答の測定
抗体応答はELISAによって測定した。即ち、ウェルを抗原(2μg/mLのgp140、8μg/mLのショ糖精製ウィルス、10μg/mLのhIgG又は10μg/mLのOVA)でコーティングし、シーブロック(SeaBlock)(ピアース社(Pierce)、イリノイ州ロックフォード、カタログ番号37527)でブロッキングした。血清と気管支肺胞洗浄液の段階希釈液は、室温で少なくとも2時間インキュベートした。洗浄後、アルカリホスファターゼ(シグマ社、カタログ番号A7434)結合抗マウスIgG抗体を用いたアッセイを行い、基質(pNPP、シグマ社、カタログ番号N2765)を添加し、ソフトマックス(SoftMax)ソフトウェアを備えた自動ELISAリーダー(モルキュラーデバイス社社(Molecular Devices)、ThermoMax)で測定した。
【0134】
細胞応答の測定のために、脾臓を70ミクロンナイロンファルコンストレーナ(ベクトンディッキンソン社(Becton Dickinson)、カタログ番号352350)に付し、次いで赤血球溶解緩衝液(シグマ社、カタログ番号R7757)によって赤血球を溶解することにより脾臓細胞浮遊液を得た。肺組織をコラゲナーゼ(シグマ社、カタログ番号C9891)で消化し、次いでフィコールパーク(Ficoll-Paque)(アマシャムファルマシア社(Amersham Pharmacia)、カタログ番号17−1440−02)勾配遠心によって、肺関連脂質組織からリンパ球を単離した。T細胞応答はELISPOT分析によって測定した。96ウェルの45ミクロン混合セルロースエステルプレート(ミリポア社(Millipore)、カタログ番号MAHA S4510)を、4μg/mLのラット抗マウス抗IFNγ、抗IL−2或いは抗IL−4モノクロナール抗体(BDファーミンジェン社(PharMingen)、カタログ番号554430、カタログ番号18161D、カタログ番号554387)でコーティングした。10%FCSを含む無菌生理食塩水37℃で1時間処理しブロッキングした後、脾臓細胞浮遊液を抗原或いはペプチドと共に、又はなしで、ウェル当たり5×105細胞添加した。肺リンパ球の場合は、刺激の前にエフェクター細胞とマイトマイシン処理した脾臓刺激細胞とを1:1で混合した。刺激のために、段階的に量を変えた各種抗原(OVA、gp140、hIgG、或いはショ糖精製WSNウィルス)、或いはペプチド(クラスII拘束性HA SFERFEIFPKE[配列番号1]、或いはクラスI拘束性SIINFEKL[配列番号2]と前述のHIV V3由来R10Kペプチド)を用いた。刺激から72時間後、ビオチン化ラット抗マウスサイトカイン抗体(BDファーミンジェン社)、次いでストレプトアビジン−HRP(バイオソース社(BioSource Int.)、カリフォルニア州カマリロ)と不溶性AEC基質を用いたアッセイを行った。結果は多重パラメータ解析ソフトウェア(イメージプロ(Image Pro)、メディアサイバネティックス社(Media Cybernetics))を備えた自動イメージングシステム(ナビター/マイクロメイト(Navitar/Micromate))を用い測定した。
【0135】
6)ケモカイン遺伝子の発現の測定
前日に合成RNAで処置したマウスと対照マウスの肺におけるケモカインの発現量を、次に記述するDNAアレイ技術を用い測定した。全RNAをRNeasyキット(キアゲン社(Qiagen)、カリフォルニア州バレンシア)を用いて肺から単離した。このRNAをRNase−フリーDNaseI(ストラタジーン社(Stratagene)、カリフォルニア州サンディエゴ)で処理し更に精製した。DNAアレイはスーパーアレイ社(SuperArray Inc.、メリーランド州ベサダ)のNonrad−GEArrayキットを用い行った。即ち、cDNAプローブをビオチン−16−dUTPを含有するdNTPmixと共にMMLV逆転写酵素を用いて合成した。GEArray膜を68℃で1〜2時間プリハイブリダイゼーションした。ハイブリダイゼーションは、ビオチン標識cDNAと共に膜をインキュベートすることにより行った。ハイブリダイズした膜を、2×SSC−1%SDSで2回、0.1×SSC−0.5%SDSで2回洗浄した。膜をアルカリホスファターゼ抱合型ストレプトアビジン(バイオソース社、カリフォルニア州カマリロ)と共に更にインキュベートし、最終的に、CDP−Star化学発光基質を用い現像した。シグナルの強度は、Gel−Proソフトウェアを備えたImage−Pro解析システム(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリングス)によって測定した。
【0136】
7)フローサイトメトリー
前日に合成RNA又は生理食塩水を用い処理をしたマウスの肺から得た細胞浮遊液を、前述のように、コラゲナーゼ消化とフィコール勾配遠心によって調製した。細胞を1%(v:v)マウス血清(シグマ社、カタログ番号M5905)と1%(w:v)ウシアルブミン(フラクションV、シグマ社、カタログ番号A3059)を含むリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁し、PE標識ラット抗マウスCD11b(ファーミンジェン社、カタログ番号01715A)、PE標識ハムスター抗マウスCD11c(ファーミンジェン社、カタログ番号09705A)、或いは適切なPE標識アイソタイプ対照(ファーミンジェン社、カタログ番号11125A又は11185A)を、106個の細胞に対して1μgの抗体となる濃度で氷上で40分間染色した。分析はベクトンディッキンソンFacsCalibur装置によって行った。ヨウ化プロピジウムを用い、生育不能細胞をゲートアウトした。
【0137】
8)磁気分離及び養子免疫細胞移入
CD11c+樹状細胞等のプロフェッショナルAPCを、BALB/cマウスの脾臓から、ラット抗マウス抗CD11c抗体(ミルテニイバイオテック社(Miltenyi Biotech))を結合させ磁気ビーズを用いて分離した。即ち、単一細胞浮遊液を、MACS緩衝液(BSAとEDTA)に107細胞/mLで再懸濁し、磁気ビーズと共に氷上で15’インキュベートし、洗浄し、磁気カラムに通した。溶出前にカラムを3回洗浄し、次いで2回連続して洗浄し、50μg/mLのRNAモチーフ又は5ng/mLのrIL−12(バイオソース社、カリフォルニア州カマリロ)と共に、又はなしで100μg/mLのIgHAで一夜インビトロパルシングした。あるいは、ラット抗マウスCD40モノクロナール抗体(BDファーミンジェン社)を事前にコーティングしたウェル上で、細胞をIgHAと共に一夜インキュベートした。細胞を洗浄し、平衡無菌生理食塩水に再懸濁し、皮下注射によってナイーブBALB/cマウスに養子免疫細胞移入した(2.5×105APC/マウス)。前述のようにHAクラスII拘束性ペプチドによって刺激した後、T細胞応答を第14日にIL−2 ELISPOT分析によって測定した。
【0138】
9)統計解析
免疫応答の大きさは、値の正規分布と等分散を仮定し、t検定を用いて比較した。
【0139】
B.結果
1)免疫反応を調節するRNAモチーフの系統的定義
ウィルス感染の際には、一過性の非通常RNA種が生成され、「危険」シグナルとして活動する。従って、複数の多様なRNAモチーフが生来の免疫細胞によって認識され、適応免疫応答を大きく調節すると仮定された。この仮定を系統的な原理から検証するために、合成一本鎖及び二本鎖RNAモチーフのライブラリーを、経気道投与タンパク抗原(OVA)に対する特異的IgG応答を調節する能力に関してスクリーニングした。プロセスを簡略化するために、スクリーニングを次の2ラウンドに設定した。(1)ラウンド1はRNA種のプールを用い(表1)、(2)第2ラウンドでは免疫応答に最大の影響を与えるプール内の要素を詳細に調べる。
【0140】
本発明の二本鎖RNA(dsRNA)又は一本鎖RNA(ssRNA)は、次の方法によりシグマ社で作成した。
ssRNA:ポリヌクレオチド(ポリA、ポリU)は、ヌクレオチドとポリヌクレオチド−ホスホリラーゼを用い酵素的に調製されるが、調製プロセスには動物由来の材料は入らない。dsRNA:ポリアデニル酸(ポリA、pA)をポリウリジル酸(ポリU、pU)と共にアニール。一般に、本発明のdsRNA及びssRNAはホモポリマーであり、dsRNAの場合は、単一の塩基或いはヌクレオチド(例えば、アデニン)が一本の鎖を一貫して形成し、その相補が他の鎖を一貫して形成する。ssRNAの場合、一本鎖は同一のヌクレオチドで一貫して形成される。しかしながら、混合ヌクレオチド(dsRNAの場合はその相補も)で形成されたdsRNA或いはssRNA組成物の使用は、本発明の範囲内である。本発明のdsRNA及びssRNA組成物は、塩基/ヌクレオチドであるアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、ウラシル(U)、及びイノシン(I)を含む。表1及び図8AのRNA組成物は、実施例で用いられる各種RNA組成物を説明するものである。本発明のRNA組成物は、実施例27で調製され精製された。
【0141】
本発明で用いられる各種RNA鎖は、一般に長さが100〜2000の塩基対であるが、1〜20、20〜40、40〜60、60〜80、80〜100、1〜100、100〜200、200〜300、300〜400、400〜500、500〜600、600〜700、800〜900、1000〜1100、1100〜1200、1200〜1300、1300〜1400、1400〜1500、1500〜1600、1600〜1700、1700〜1800、1800〜1900、1900〜2000、2000〜2100、2100〜2200、2300〜2400、2400〜2500、2500〜3000、3000〜4000、4000〜5000、5000〜10000の塩基対であってもよく、また長さが10000より長い塩基対及び/又はそれらの混合物であってもよい。
【実施例1】
【0142】
実施例1:標準抗原(OVA)に対する抗体反応に及ぼすRNAモチーフ各種プールの影響
各RNAプール(表1)が適応免疫に与える影響を、OVAの経気道同時免疫感作C57B1/6マウスを用いて測定した。「材料及び方法」の章に記載のように、抗体反応は、IgG終点力価(n=4/群)における平均±SEMとして示す。対照として、無菌PBSに添加したOVA、コレラ毒サブユニットB(CTB)と組み合わせたOVA、更にPBSだけのものを用いた。図1Aに示すように、dsRNAに対応するプールが、抗体反応に最大の影響を与え、この特定の免疫を実質的に増強した。一方、互いに相補的な一本鎖種の混合物については、この増強は部分的なものにとどまった。
【0143】
これは、残基の性質とRNAの二次構造の双方により、特定のB細胞応答に影響する「危険」モチーフとしての作用能力が決まることを示す。
【実施例2】
【0144】
実施例2:OVAに対する抗体反応の誘導に与える種々のdsRNAモチーフの個別の作用
RNAプールの代わりに個々のdsRNAを用いた以外は前記実施例と同様に「材料及び方法」の章に記載の方法で実験を行った。結果を図1Aと同様の仕方で図1Bに示す。この結果は、独立した2種類の実験を体現しているものである。INSET:OVAに対する平均IgG2a力価と平均IgG1力価の比。左から右への順序はメインパネルのものと同じである(PBS OVA、CTB OVA、pC:pG OVA、pI:pC OVA及びpA:pU OVA)。この2ラウンド目のスクリーニングにおいては、図1Bに示すように、二本鎖RNAとして構成された2種類のモチーフ、即ちpA:pU及びpI:pCが、C57BL/6マウスにおける特定の抗原に対するIgG応答の発現に大きな影響を与えることが示されている。エンドトキシンに対する応答性が低いTLR4−/−C3H/HeJマウスでも同様の結果が得られた(図示せず)。
【0145】
従って、抗体反応の大きさ及びプロフィールに影響を及ぼす能力はRNAモチーフによって異なる。
【実施例3】
【0146】
実施例3:OVAと共に個別のdsRNAモチーフを用いて誘導されるT細胞応答の大きさ及びプロフィール
ELISPOT分析により得られた結果は、脾臓1個当りのIFN−γ及びIL−4スポット形成コロニー(SFC)の数の平均±SEMで示す(n=4/群)。図1Cに示すように、pA:pUとpI:pC(40μg、「材料及び方法」参照)の両方が特定のT細胞応答に対する増幅効果を有していた。驚くべきことに、特定の抗原に対するT細胞応答のプロフィールはRNA残基の性質に依存しており、これは、免疫系がRNA関連危険モチーフを区別できることを示している。A残基及びU残基を含有するRNAモチーフは、I及びCを含有するモチーフよりも、C57BL/6マウスにおけるIFN−γ−産生Th1細胞(図1C)の分化を方向付けることができる。この結果は、IgGアイソタイプの誘導が異なることを反映しており、Thプロフィール(図1B−INSET)と一致している。
【0147】
Tヘルパー応答の大きさ及びプロフィールへの影響はdsRNAモチーフ毎に異なると結論される。
【実施例4】
【0148】
実施例4:ウィルス抗原(HIV組換えgp140タンパク質)に対する抗体反応に及ぼす特定のdsRNAモチーフの影響
図2Aに示すように、HIV gp140(10μg、「材料及び方法」参照)断片に対する抗体反応に及ぼす影響を、気道を抗原のみで感作した或いは抗原と共にpA:pU(40μg、「材料及び方法」参照)で感作したC57BL/6マウスを用いて測定した。結果はIgG終点力価(n=3/群)の平均±SEMで示す。
【0149】
その結果、実際に用いられる可能性のあるウィルス抗原に対する抗体反応が、新規なdsRNAモチーフにより増強されることがわかった。
【実施例5】
【0150】
実施例5:全UV不活性化インフルエンザウィルス(A/WSN/32 H1N1株(UV−WSN))に対する抗体反応に及ぼす特定のdsRNAモチーフの影響
実施例4に示すように、UV不活性化WSNウィルス(UV−WSN)(20μg、「材料及び方法」参照)のみによる粘膜免疫感作、或いは該ウィルスと一緒に各dsRNAモチーフ(50μg)を用いて粘膜免疫感作を行った後、インフルエンザウィルス特異IgG抗体を測定した。対照として、同じ株のインフルエンザウィルス(n=4/群)による感染後の抗体反応を用いた。結果は、図2BにIgG終点力価の平均±SEMとして示す。
【0151】
この結果、全不活性化微生物のウィルス抗原に対する抗体反応は、新規なdsRNAモチーフにより増強されることがわかった。
【実施例6】
【0152】
実施例6:特定のdsRNAモチーフの同時投与による、全体を不活性化したインフルエンザウィルスに対するT細胞応答の増強
全インフルエンザウィルスに対するT細胞応答を、脾臓細胞のELISPOT分析により測定し、バックグラウンドを引いたIFN−γ、IL−4及びIL−2 SFC(平均±SEM、n=4/群)で示す。pA:pUを用いた場合の抗原に対するT細胞応答を、抗原のみで免疫感作を行った後の応答、或いはインフルエンザウィルス感染後の応答と比較した(図2C参照)。
【0153】
従って、実施例4〜6に示すように、dsRNAが抗体反応に与える影響は、別の抗原、即ちHIVエンベロープタンパク質(組換えgp140)や全不活性化インフルエンザウィルス(図2A、B)を用いて別々に確認した。実際には、pA:pUは、pI:pCよりも、インフルエンザウィルスに対する特定の抗体の力価を、感染により惹き起こされたのと同レベルまで回復させた(図2B)。更に、pA:pUは、不活性化したウィルスでの免疫感作において、自然感染による応答レベルまでT細胞応答を回復させたことは重要である(図2C)。このように、各RNAモチーフは、これまで知られていない広範囲の影響をT細胞応答及びB細胞応答に与えることがわかった。
【0154】
2)dsRNAに関連するモチーフは、プロフェッショナル抗原提示細胞の増加と活性化を調節する。
dsRNA関連危険モチーフ(pA:pU、pI:pC等)は自然免疫成分を介して間接的にT細胞応答に影響を及ぼすと仮定した。この仮説を検証するため、RNA投与後の肺リンパ球様組織におけるケモカイン遺伝子の発現を決定した。
【実施例7】
【0155】
実施例7:RNAモチーフによるケモカイン遺伝子の局所的アップレギュレーション
RNAモチーフによるケモカイン遺伝子の局所的アップレギュレーションを、経気道処理の1日後、DNAアレイ技法により測定した(材料及び方法「ケモカイン遺伝子発現の測定」参照)。結果を、非処理マウスの肺組織で測定された発現レベルに対する増加倍率で示す。dsRNAにより惹き起こされたケモカインの発現を、LPSにより誘導されたものと比較した。Th1細胞及びTh2細胞と選択的に結合するケモカインはそれぞれ、実線及び破線で囲って示した(図3A)。
【0156】
DNAアレイ技法による測定の結果、IP−10、MIG、MIP−1α、MIP−1β及びMCP−1がpA:pUによってもpI:pCによっても強く誘導されることがわかった(図3A参照)。しかしながら、Th2細胞により選択的に発現する受容体と結合できるケモカインであるRANTES、MCP−3及びCCの発現を惹き起こしたのはpI:pCだけであった。LPSは異なるケモカインの発現を誘導した、即ちCXCケモカインであるMIG及びMIP−1α、並びにCCケモカインであるTCA−3のアップレギュレーションを誘導した(図3A参照)。この結果、事前には予測できなかったことであるが、特定のdsRNAモチーフによって、ケモカインの複雑なプロフィールが惹き起こされた。
【実施例8】
【0157】
実施例8:dsRNA処理マウスの肺におけるプロフェッショナルAPCの増加
dsRNA処理したマウスの肺におけるプロフェッショナルAPCの増加を、処理1日後、FACS分析により評価した。結果を、肺間質組織における全細胞数に対するCDllc+細胞数及びCDllb+細胞数の百分率(n=4/群)として図3Bに示す。CD11b+(単球)はpA:pUとpI:pCとにより増加するが、これはケモカインのアップレギュレーションと一致する(実施例7参照)。対照的に、CD11c+樹状細胞の増加を有効に誘導したのはpI:pCだけであった。dsRNAモチーフは投与部位におけるAPCを増加すると結論される。
【実施例9】
【0158】
実施例9:dsRNAモチーフによるプロフェッショナルAPC(樹状細胞)の活性化
dsRNAモチーフによるプロフェッショナルAPCの活性化を次の方法で確認した。まず、ex vivoで抗原と共にdsRNAを用いてCD11c+細胞のパルシングを行い、ナイーブBALB/cマウスに養子移入実験を行い、T細胞応答を測定した(図3C)。対照として用いたものは、抗原パルスAPC、或いはrIL−12と抗CD40mAbとで共刺激した抗原付加(loaded)であった。結果は、ELISPOT分析で見積もられる脾臓中のIL−2SFCの数として図3Cに示す。
【0159】
この結果、dsRNAモチーフは、増加作用を有するのに加え、APCを活性化することがわかった。
【実施例10】
【0160】
実施例10:BALB/cマウスにおける、dsRNAモチーフにより刺激される、ウィルス抗原に対するMHCクラスI拘束性T細胞のクロスプライミング
dsRNAモチーフにより刺激されるクロスプライミング(APCが、クラスI拘束性T細胞を感染なしでプライミングする能力を得る特別な状況をいう)を、BALB/cマウスを用いて検討した。マウスは、人工的に組換えを行ったHIV gp140抗原(10μg)と共にpA:pUで処理して用いた。検討は、MHCクラスI拘束性コグネイトペプチドを用いたin vitro刺激によるELISPOT分析により行った(「材料及び方法」参照)。対照として、用量を合わせたgp140抗原を用いた。結果は、脾臓1個当りのIFN−γ及びIL−4SFCの数の平均±SEM(n=4/群)として図3Dに示す。
【0161】
dsRNAモチーフは、実際に用いられる可能性のある非感染性抗原に対するMHCクラスI拘束性の誘導を促進すると結論される。
【実施例11】
【0162】
実施例11:C57BL/6マウスにおける、dsRNAモチーフにより刺激される、OVAに対するMHCクラスI拘束性T細胞のクロスプライミング
dsRNAモチーフにより刺激されるクロスプライミングをC57BL/6マウスを用いて検討した。マウスは、全OVAと共にpA:pUで処理して用いた。検討はMHCクラスI拘束性ペプチドを用いたin vitro刺激によるELISPOT分析により行った(「材料及び方法」参照)。対照として、用量を合わせたOVA抗原又は無菌PBSを用いた。結果は、脾臓1個あたりのIFN−γ及びIL−4SFCの数の平均±SEM(n=4/群)として図3Eに示す。
【0163】
dsRNAモチーフは、実際に用いられる可能性のある非感染性抗原に対するMHCクラスI拘束性の誘導を促進すると結論される。
【0164】
pA:pU及びpI:pCの粘膜投与後の肺間質細胞のFACS分析により、CD11b+単球が迅速に増加すること、CDllc+樹状細胞についても増加することがわかった(図3B)。また、ナイーブマウスからのCD11c+DCを抗原及びpA:pU或いはより少ないpI:pCと共にin vitroでインキュベートしたところ、これらは活性化されたが、これは、抗原でパルスした細胞をBALB/cレシピエントに養子移入したことにより、クラスII−拘束性T細胞免疫の増強が惹き起こされたためである(図3C)。同様の増強が抗CD40抗体或いはIL−12と共にAPCをインキュベーションした場合にも測定された。最後に、組換えHIVエンベロープタンパク質(gp140)及びOVAで粘膜予防接種を行った場合にも、pA:pUは、強いCD8+T細胞促進効果を有していた(図3D−E)。これは、それぞれHIVエンベロープタンパク質及びOVAからの特徴付けられたMHCクラスI拘束性ペプチドを用いたELISPOT分析により示された。このように、dsRNAは、プロフェッショナルAPCの分化を惹き起こしてMHCクラスI拘束性T細胞のクロスプライミングに適した段階へ導く能力を有する。この種の免疫応答は通常、ウィルス感染の場合にのみ起こる。決定したdsRNAモチーフを用いれば、ベクター複製による副作用を伴う生ワクチンベクターは不要とすることができる。更に、これらデータは、RNAモチーフが自然免疫の要素に大きな影響を与える、即ちRNAモチーフは適応免疫応答を調節する能力を有することを示している。
【0165】
3)dsRNAモチーフは、大量域寛容の誘導を阻害し、抗ウィルス防御免疫を誘導する。
危険分子は、無害の抗原と、感染プロセスに関連する抗原とを区別するのに関与している。高用量の場合、非感染性精製タンパク抗原は不応答即ち免疫寛容を誘導する。自己或いは無害の抗原に対して寛容を獲得する中心的な方法は「免疫無視(immunological ignorance)」或いは「免疫寛容」である。前者では、抗原は、空間的分離によりAPCにアクセスできない。後者では、抗原はAPCにアクセスでき、細胞内に取り込まれてプロセシングされるが、共刺激が少ない場合、エピトープが提示される。正味の結果が、T細胞のこのレベルにおける免疫不応答即ち寛容となり得る。感染や免疫攻撃の場合、「免疫無視」や「寛容」を防ぐメカニズムが存在する。このようなメカニズムは、共刺激分子や炎症性ケモカイン、炎症性サイトカインの発現の活性化を伴う、APCの新規な移動パターンの誘導により発生する。その結果、「危険分子」が存在することによって生じた環境において、免疫系が曝されている全ての抗原に対して、無視や寛容よりもむしろ強い免疫応答が生じる。例えば、腫瘍関連抗原は、免疫エフェクターにより無視されたり寛容原性との関連において提示されることも多い。このような抗原に対する免疫受容能を回復するための手段の直接的実用化は、抗癌治療において有意義である。pA:pUモチーフ及びpI:pCモチーフの危険シグナルとしての適格性を調べるため、hIgGの静脈接種による寛容モデルを用いた。
【実施例12】
【0166】
実施例12:dsRNAモチーフはヒトIgGを注射したマウスにおける大量域寛容を阻害する
まず、マウスに、標準的な寛容原性用量(200μg)のhIgGのみを静注し(黒印)、或いはこれと共にpI:pC或いはpA:pU(40〜50μg)を静注し(白印;図4A参照)、その後、免疫原性用量(50μg)のhIgGをCFAに乳化させたものを皮下注射し追加免疫を行った。hIgGに対する抗体の力価を、追加免疫後、異なる時間間隔でELISAにより測定した。対照として、CFAに添加したhIgGで免疫感作したマウスを用いた。最大力価(破線)を示す。結果は、終点力価の平均±SEM(n=5/群)として図4Aに示す。
【0167】
この結果、CFA中のhIgGによる追加免疫後の抗体力価で示されるように、生理食塩水中のhIgGと共にpA:pU或いはpI:pCを同時接種することにより、B細胞不応答の誘導が阻止されることがわかった(図4A)。dsRNA関連モチーフは、このプロトタイプの抗原に対し、より高い一次応答を誘導すると共に二次応答を助ける(rescue)。同様に、T細胞プロフィールの評価から、IL−4及びIL−2の産生がdsRNAの同時投与により部分的に回復したことがわかった。
【実施例13】
【0168】
実施例13:個々のdsRNAモチーフ毎に、インフルエンザウィルス感染に対する免疫防御を高める能力が異なる。
危険モチーフは、免疫防御の防御体制を即座に高める能力を有すると仮定した。従って、pA:pUとpI:pCが、インフルエンザウィルスの初期感染の進展にどのような影響を与えるかについて調べた。
【0169】
マウスを、亜致死用量のインフルエンザウィルスによる肺感染の1日前及び1日後に、呼吸器系を介してpI:pC、pA:pU又は生理食塩水で処理した。5日目、肺組織のウィルス力価を概算し、器官1個あたりの全感染ユニットで示した(平均±SEM;n=6/群;結果は、C3H/HeJ TLR−4−/−マウス及びコンピテントマウスにおける2種類の独立した試験のものである)。
【0170】
図4Bから、気道をRNAモチーフで処理したマウスは亜致死量のインフルエンザウィルスに感染したことがわかる。感染5日後、肺のウィルス力価を定量した。同様の結果がC57BL/6マウス及びTLR4−/− C3H/HeJマウスでも得られた(図示せず)。尚、dsRNAは、肺のウィルス力価の有効な減少をもたらすのに効果的である。驚くべきことに、pA:pUは、肺ウィルス力価の抑制においてpI:pCよりも非常に有効性が高く、これが更に、dsRNA関連危険モチーフを区別する免疫系の能力を高める。このように、免疫記憶がない状態において、dsRNAモチーフは、ウィルス感染に対する有効な初期応答性を高めることができる。
【0171】
4)RNA危険モチーフとの同時被包化(co-encapsulation)によるタンパク抗原に対する免疫の増強
非定式化サブユニットワクチン(一般には精製したタンパク抗原)に対する免疫応答は最小規模のものであるため、同じ微小構造に含まれるAPCを抗原とdsRNA危険モチーフとに生体内で同時接触させ、更に良い結果が得られるかを調べた。この試験のため、プロトタイプの抗原(OVA)をpA:pU或いはpI:pCと組合せ調製し、賦形剤として生体適合性があり且つ免疫学的に不活性なリン脂質(ジオクタノイルホスファチジルコリン等)及び乳糖を加えて短鎖脂質複合体(「SCL」)の形態とした(「材料及び方法」参照)。短鎖脂質複合体に調製したOVA+pA:pU或いはpI:pCをC57BL/6マウスの気道に投与した際の抗体反応を測定した所、この抗体反応は、生理食塩水中の非定式化抗原で免疫感作したマウス、或いはdsRNAモチーフなしで調製しSCL複合体とした抗原で免疫感作したマウスの抗体反応に比べ非常に高かった(図5A)。
【実施例14】
【0172】
実施例14:モデル抗原(OVA)のみをロードした短鎖脂質複合体、或いはモデル抗原(OVA)とdsRNAモチーフとをロードした短鎖脂質複合体
短鎖リン脂質からなり、モデル抗原(OVA)のみをロードした短鎖脂質複合体、及びモデル抗原(OVA)とdsRNAモチーフとをロードした短鎖脂質複合体を作成し、C57BL/6マウスを用いて試験した(図5A)。抗体反応はELISAで測定した。結果は、経気管免疫感作2週間後に行ったIgG終点力価の平均±SEM(n=4/群;データは独立した2種類の測定結果である)で示す。対照として、PBS中のOVAと、OVAをCTB(コレラ毒B)と組合せ調製して短鎖脂質複合体(ジオクタノイルホスファチジルコリン)としたものとを用いた。この結果、RNAモチーフの免疫特性を保存し抗原及びdsRNAを含む分子複合体が作成され、これは実用に耐えるものであることが分かった。
【実施例15】
【0173】
実施例15:C57BL/6マウスにおける、dsRNAモチーフと組合せ調製したOVAによる免疫感作後の全OVA抗原又はクラスI拘束性優性OVAペプチドに対する局所(肺)T細胞応答及び全身性(脾臓)T細胞応答
図5Bは、C57BL/6マウスにおける、全OVA抗原又はクラスI拘束性優性OVAペプチドに対する局所(肺)T細胞応答及び全身性(脾臓)T細胞応答を測定した結果を示す。マウスは、OVAのみを短鎖脂質複合体(ジオクタノイルホスファチジルコリン)としたもの、或いはOVAとpA:pUとを短鎖脂質複合体(ジオクタノイルホスファチジルコリン)としたもので免疫感作した。分析はELISPOTにより実施し、結果はIFN−γSFC/器官(平均±SEM;n=4/群)として示した。
【0174】
興味深いことに、CTBは、短鎖脂質複合体組合せ調製物に対して、限られたアジュバント作用しか示さなかった。先の結果と一致しているが、T1免疫の誘導は、図5Bに示すようにpA:pU粒子においてのみ測定され、pI:pCでは測定されず、pI:pCはT2免疫の増強を示したのみであった(図示せず)。更に、pA:pUと抗原の組合せ調製物(「材料及び方法」参照)に対するT細胞応答により、重要な局所的成分が示された(図5B)。最後に、よく規定されたクラスI拘束性SIINFEKL[配列番号2]ペプチドを用いると、pA:pUは、SCL複合体と協同して、クロスプライミングを促進する能力を維持することが確認された(図5B)。
【実施例16】
【0175】
実施例16:dsRNAモチーフを組合せ調製したモデル抗原(OVA)をロードしたSC脂質複合体の経粘膜予防接種に対するスプラーグ・ドーリー(Sprague-Dawley)ラットの全身性及び局所的抗体反応
OVAとdsRNAとを組合せ調製した脂質複合体でラットの免疫感作を行った。対照として、抗原を含まないSC脂質複合体、OVAは含むがdsRNAモチーフは含まないSCL複合体、及び用量を合わせたOVAをそれぞれ生理食塩水に添加し用いた。結果を、ELISAにより測定した、血清(図5C)及び35日目の気管支肺洗浄液(図5D)に含まれるOVA特異的抗体の終点力価(平均±SEM;n=4/群)として示す。
【0176】
OVAとpA:pU又はpI:pCとをロードしたSCL複合体を噴霧したスプラーグ・ドーリーラットにおいても同様の抗体反応の増強が測定された(図5C)。dsRNAもOVAも含まないSC脂質複合体を生理食塩水中に添加したものを用いた場合、力価はこれよりも低かった。粘膜抗体力価の分析(図5D)でも同様のプロフィールを示した。
【0177】
このように、RNA関連危険モチーフとタンパク抗原とを新規な噴霧乾燥技法により組合せ調製したものは、RNAモチーフの免疫調節特性を保存しており、局所的にも全身的にも特定の免疫応答を実質的に増強させる。
【実施例17】
【0178】
実施例17:非複製dsRNAモチーフは(B細胞及びT細胞)適応免疫応答のマスタースイッチとして作用する
dsRNA等の危険モチーフを含まない抗原は、免疫原性が弱いか、高用量の場合は免疫寛容を誘導する。しかしながら、dsRNAモチーフは、免疫系が抗原を認識する方法を変化させる。即ち、このようなモチーフは、弱い応答性や寛容ではなく、共存する抗原に対し強く応答するように適応(T細胞及びB細胞)免疫を導くと共に、免疫寛容を阻害する或いは阻止する。従って、dsRNAモチーフの認識による自然免疫は、B及びT細胞適応免疫のマスタースイッチとして作用する(図7)。
【実施例18】
【0179】
実施例18:天然のdsRNAは、自然免疫応答と適応免疫応答を橋渡しする。実施例18は、インフルエンザウィルス感染により産生された天然の非感染性二本鎖RNAが、タンパク抗原に対する特定の免疫応答に関し、実質的な影響を及ぼすことを示す。
【0180】
許容MDCK細胞をWSNインフルエンザウィルス(108TCID50/1×109細胞)に感染させ、24時間後、細胞を回収して洗浄し、RNA分離キット(キアゲン社、カリフォルニア州バレンシア)で全RNAを抽出した。更に、RNAse−free DNAseI(ストラタジーン社、カリフォルニア州サンディエゴ)でRNAを更に精製した。次に、S1ヌクレアーゼ(アンビオン社(Ambion、Inc.)、テキサス州オースチン)(5μ/RNAμg)と共に37℃で30分インキュベートし、サンプル中の一本鎖RNAを除去した。分解前後に、ゲル電気泳動によりRNAを分析した。精製dsRNAには感染性がないことを、標準的なインフルエンザウィルス滴定により確認した。対照として、109非感染MDCK細胞から同様に精製し処理した材料を用いた。核酸濃度は分光測定法(A260mm)により測定し、エンドトキシンがないことはリムルスアッセイにより確認した。精製dsRNA及び対照のRNAは、単独で、或いはgp140組換え抗原(25μgのRNAと2μgの抗原を25mLの無菌PBSに加えたもの)との混合物として用いた。
【0181】
感染性のないことを確認した後、40μgのdsRNA又は対照RNAを40μgの組換えトランケート抗原(HIVエンベロープのgp140)と混合し、BALB/cマウスに経鼻注入(n=3/群)により投与した。付加的な対照として、40μgのgp140タンパク質を生理食塩水に添加したもので免疫感作した動物(n=3/群)を用いた。マウスへの追加免疫をプライミング2週間後に一度行った。追加免疫の2週間後、血液を採取し、血清を調製し、gp140に対する抗体反応をELISAにより測定した。即ち、ウェルを抗原(2μg/mLのgp140)でコーティングし、シーブロック(ピアース社、イリノイ州ロックフォード、カタログ番号37527)でブロッキングした。血清と気管支肺胞洗浄液の段階希釈液は、室温で少なくとも2時間インキュベートした。洗浄後、アルカリホスファターゼ(シグマ社、カタログ番号A7434)結合抗マウスIgG抗体を用いたアッセイを行い、基質(pNPP、シグマ社、カタログ番号N2765)を添加し、ソフトマックスソフトウェアを備えた自動マイクロタイタープレートリーダー(モルキュラーデバイス社、ThermoMax)で測定した。
【0182】
図7のパネルAは実験の一般原理を示す。図7のパネルBは、全IgGを用いた場合の各血清希釈液のアッセイ実施後の吸収を示す。図7のパネルBは、IgG2a及びIgG1抗体アイソタイプを用いた場合の1/50血清希釈液の吸収を示す。
【0183】
全体としては、図7のパネルA、Bのデータから、インフルエンザウィルスに感染したMDCK細胞からの天然の非感染性dsRNAは、プロトタイプ抗原に対する適応応答を増強する効果が予想外に高いことがわかった。IgGl抗体反応及びIgG2a抗体反応も亢進したことから、強いTヘルパー1及び2反応が誘導されたことがわかる。
【実施例19】
【0184】
実施例19:自然免疫応答に対する選択したRNAモチーフの作用:異種モチーフ。この実施例は、各種合成RNAモチーフが、意外にも、タンパク抗原に対する適応特異的免疫応答に別個の作用を有することを示す。
【0185】
図8Aは、合成RNAモチーフを広く含むライブラリーを示し、合成RNAモチーフは複数のプールにグループ分けされて次の2段階の力価スクリーニング工程に用いられる。
(A)マウスを各RNAプールで気管内免疫感作し、経鼻注入による追加免疫を2週間毎に2回行った。抗体反応はELISAにより行い(図8B)、結果はIgG終点力価の平均±SEMとして示す(n=4/群)。対照として、OVAを無菌PBSに添加したもの、OVAをコレラ毒サブユニットB(CTB)と一緒に用いたもの、PBSのみをそれぞれ用量を合わせて用いた。即ち、ウェルを抗原(10μg/mLのOVA)でコーティングし、シーブロック(ピアース社、イリノイ州ロックフォード、カタログ番号37527)でブロッキングした。血清と気管支肺胞洗浄液の段階希釈液は、室温で少なくとも2時間インキュベートした。洗浄後、アルカリホスファターゼ(シグマ社、カタログ番号A7434)結合抗マウスIgG抗体を用いたアッセイを行い、基質(pNPP、シグマ社、カタログ番号N2765)を添加し、ソフトマックスソフトウェアを備えた自動マイクロタイタープレートリーダー(モルキュラーデバイス社、ThermoMax)で測定した。
【0186】
(B)OVAに対する抗体反応の誘導に与える各種dsRNAモチーフの影響:結果を図8Cに示す。データは独立した2種類の実験結果である。INSET:OVAに対する平均IgG2a力価とIgGl力価の比。この実験のために、ビオチンコンジュゲート抗マウスIgG1抗体及びIgG2a抗体を用い、ストレプトアビジン−AKPコンジュゲートと共にインキュベートした。左右の順序は図8Cのメインパネルと同様である:PBS OVA、CTB OVA、pC:pG OVA、pI:pC OVA及びpA:pU OVA。
【0187】
(C)雌性C57BL/6マウスにおける、OVA及びdsRNAモチーフにより誘導されたT細胞応答の大きさ及びプロフィール。細胞応答の測定のために、脾臓を70ミクロンナイロンファルコンストレーナ(ベクトンディッキンソン社、カタログ番号352350)に付し、次いで赤血球溶解緩衝液(シグマ社、カタログ番号R7757)によって赤血球を溶解することにより脾臓細胞浮遊液を得た。肺組織をコラゲナーゼ(シグマ社、カタログ番号C9891)で消化し、次いでフィコールパーク(アマシャムファルマシア社、カタログ番号17−1440−02)勾配遠心によって、肺関連脂質組織からリンパ球を単離した。T細胞応答はELISPOT分析によって次のように測定した。96ウェルの45ミクロン混合セルロースエステルプレート(ミリポア社、カタログ番号MAHA S4510)を、4μg/mLのラット抗マウス抗IFNγ、抗IL−2或いは抗IL−4モノクロナール抗体(BDファーミンジェン社、カタログ番号554430、カタログ番号18161D、カタログ番号554387)でコーティングした。10%FCSを含む無菌生理食塩水37℃で1時間処理しブロッキングした後、脾臓細胞浮遊液を抗原/ペプチドと共に、又はなしで、ウェル当たり5×105細胞添加した。刺激のために、段階的に量を変えた各種抗原(OVA)を用いた。刺激から72時間後、ビオチン化ラット抗マウスサイトカイン抗体(BDファーミンジェン社)、次いでストレプトアビジン−HRP(バイオソース社、カリフォルニア州カマリロ)と不溶性AEC基質を用いたアッセイを行った。結果は多重パラメータ解析ソフトウェア(イメージプロ、メディアサイバネティックス社)を備えた自動イメージングシステム(ナビター/マイクロメイト)を用い測定した。結果を、脾臓当りのIFN−γ及びIL−4スポット形成コロニー(SFC)の数の平均±SEMとして図8Dに示す(n=4/群)。結果は独立した2種類の実験結果である。
【0188】
図8B〜Dに示す結果から、各合成RNAは、プロトタイプのタンパク抗原に対するB細胞応答及びT細胞応答に対し増強作用を有することがわかる。更に、各モチーフは、特定のヌクレオチドの組合せを含むが、T1対T2誘導及びその後の免疫グロブリンアイソタイプスイッチングに関し、モチーフによって異なる特定の効果を有する。
【実施例20】
【0189】
実施例20:選択された合成RNAモチーフを用いることにより、MHCクラスI拘束性Tc1細胞の誘導が促進されIFN−γが産生される。
(A)dsRNAモチーフにより刺激されるクロスプライミングをBALB/cマウスを用いて検討した。マウスは、10μgの人工的に組み換えたHIV gp140抗原とpA:pUとで処理(プライミング+2回の追加免疫)して用いた。応答は、実施例19に記載したように、V3ドメイン由来のMHCクラスI拘束性コグネイトペプチドR10Kによるin vitro刺激を用いたELISPOT分析により測定した。対照として、用量を合わせたgp140抗原を用いた。結果を、IFN−γ及びIL−4 SFCの数/脾臓(n=4/群)の平均±SEMとして図9Aに示す。
【0190】
(B)dsRNAモチーフにより刺激されるクロスプライミングを、100μgの全OVAとpA:pUとで処理したC57BL/6マウスを用いて検討した。検討は、実施例19に記載のように、MHCクラスI拘束性ペプチドSIINFEKL[配列番号2]によるin vitro刺激を用いたELISPOT分析により測定した。対照として、用量を合わせた、生理食塩水又は無菌PBSに添加したOVA抗原を用いた。結果を、IFN−γ及びIL−4 SFCの数/脾臓(n=4/群)の平均±SEMとして図9Bに示す。
【0191】
図9A〜Bに示す結果から、大きな抗原(ポリペプチド)に含まれる様々な各種MHCクラスI拘束性ペプチドに対し、選択された合成RNAモチーフがT細胞免疫の亢進を促進できたことがわかる。この免疫応答は、IFN−γを産生するMHCクラスI拘束性T細胞に含まれるTc1成分を含む。
【実施例21】
【0192】
実施例21は、予想外のことであるが、合成RNAモチーフによって結合する細胞受容体が異なる、即ちRNAモチーフを区別する複数の受容体が存在することを示す。
【0193】
CD11b+ APCへの蛍光タグ化pA:pUのin vitroにおける結合をFACS分析により測定した。MACS分離APCを4℃で30分間、10μg/mLのタグ化pA:pU([PA:pU]−F)と共にインキュベートし、洗浄して分析した。これとは別の方法として、APCをそれぞれ20μg/mL、100μg/mLの非タグ化pA:pU、pA或いはpI:pCと共に10分間プレインキュベートし、タグ化pA:pUで染色してFACS分析を行った。染色された細胞(白い領域)、染色されていない細胞(黒い領域)のプロフィールと、染色程度の高いAPCの百分率とを各パネルに示す(x軸は対数)。データは、独立した2種類の測定結果を示し、各サンプルに対し10000回測定したものである。
【0194】
材料:
マウスCD11b及びCD11c磁気分離ビーズ:ミルテニイバイオテック社、それぞれカタログ番号130−049−601及びカタログ番号130−052−001;
ULYSIS核酸標識キット:アレクサ(Alexa)488、分子プローブ カタログ番号U21650;
RNAモチーフ:
・pA:pU、(シグマ社、ロット番号22K4068);
・pI:pC、(シグマ社、ロット番号52K4047);
・pA、(シグマ社、ロット番号22K4022);
FACS緩衝液:PBS、1% FCS、0.1%アジ化ナトリウム;
MACs緩衝液:PBS、2mM EDTA、0.5% BSA;
コラゲナーゼ緩衝液:0.225mg BSA、0.0062mg コラゲナーゼが50mL RPMIに入っているもの;
70um細胞ストレーナ:(ファルコン/ベクトンディッキンソン社、カタログ番号352350
【0195】
方法:
I RNAモチーフの標識:
1.次のプロトコルにより、各RNAモチーフをULYSIS Alexa488標識でタグ化した。
【0196】
II 脾臓細胞の調製:
1.C57BL/6マウス(雌性、4匹)から脾臓細胞及び肺細胞を単離;
・肺細胞は、脾臓細胞とは異なり、切り刻んだ後、コラゲナーゼ緩衝液中37℃で30分間インキュベートしてから、次のステップに進むことを要する;
・70umファルコン細胞ストレーナを通す;
・洗浄後、再度MACS緩衝液に懸濁させる:
2.推奨プロトコルに従い、CD11b特異的又はCD11c特異的MACSビーズで標識する;
3.次いで細胞に次の処理を行った:
・非タグ化pA、pA:pU、又はpI:pC(20ug/mL又は100ug/mL)、室温、10分間;
・各モチーフの染料:dsRNAの比に合うように、ULYSISタグ化pA及びpA:pU(それぞれ1.5ug/チューブ及び10ug/チューブ)を添加した。
混合、氷上で30分間インキュベート。
洗浄(1回)し、FACS緩衝液に再度懸濁した。
【0197】
III フローサイトメトリー:
フローサイトメトリー分析を行い、タグ化RNAモチーフと非タグ化RNAモチーフの競合阻害及び細胞受容体の結合を測定/比較する。
【0198】
図10に示した結果から、pA:pU及びpI:pCは、異なる細胞受容体に結合することがわかる。pI:pCはTLR3に結合するため、TLR3とは異なる別の受容体がRNA認識免疫機能に関与していることがわかる。
【実施例22】
【0199】
実施例22は、選択された合成RNAモチーフが、免疫学的活性に重要な、ケモカイン遺伝子の生体内における発現を誘導することを示す。
【0200】
dsRNAモチーフによるケモカイン遺伝子発現の局所的なアップレギュレーションを、経気道投与1日後に抽出した肺組織からのRNAを用いたDNAアレイ技法により測定した。全RNAをRNeasyキット(キアゲン社、カリフォルニア州バレンシア)を用いて肺から単離した。このRNAをRNase−フリーDNaseI(ストラタジーン社)、カリフォルニア州サンディエゴ)で処理し更に精製した。DNAアレイはスーパーアレイ社(メリーランド州ベサダ)のNonrad−GEArrayキットを用い行った。即ち、cDNAプローブをビオチン−16−dUTPを含有するdNTPmixと共にMMLV逆転写酵素を用いて合成した。GEArray膜を68℃で1〜2時間プリハイブリダイゼーションした。ハイブリダイゼーションは、ビオチン標識cDNAと共に膜をインキュベートすることにより行った。ハイブリダイズした膜を、2×SSC−1%SDSで2回、0.1×SSC−0.5%SDSで2回洗浄した。膜をアルカリホスファターゼ抱合型ストレプトアビジン(バイオソース社、カリフォルニア州カマリロ)と共に更にインキュベートし、最終的に、CDP−Star化学発光基質を用い現像した。シグナルの強度は、Gel−Proソフトウェアを備えたImage−Pro解析システム(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリングス)によって測定した。
【0201】
結果を、非処理マウスの肺組織で測定された発現レベルに対する遺伝子発現の増加倍率で示す(図11)。dsRNA(50μgのpA:pU及びpI:pC)により惹き起こされたケモカインの発現パターンを、1μgのLPSにより誘導されたパターンと比較した。Th1細胞及びTh2細胞上の受容体と選択的に結合したケモカインを、それぞれ実線及び破線で囲った。
【0202】
図11に示す結果から、pA:pU及びpI:pCは広範な種類のケモカインの発現を惹き起こし、その発現パターンはモチーフに依存し且つLPS(エンドトキシン)のパターンとは異なることがわかる。
【実施例23】
【0203】
実施例23は、選択された合成RNAモチーフは、肺ウィルスによる感染を制御できる免疫防御を高めることを示す。
【0204】
各dsRNAモチーフは、インフルエンザウィルス感染に対する免疫防御を高める能力が異なる。C3H/HeJマウスを、亜致死量のインフルエンザウィルスによる肺感染の1日前及び後に、経呼吸器ルートで50μgのpI:pC、pA:pU或いは50μLの生理食塩水で処理した。ウィルス攻撃のために、C57BL/6及びTLR4−/−C3H/HeJマウスを、メトファン麻酔下で亜致死量(TCID50:104組織培養感染量50%)のWSN(A/WSN/H1n1)ウィルス生菌に経鼻感染させた。感染5日後、マウスを殺し肺を摘出し、ホモジネートして−70℃で保存した。ウィルス力価は、許容MDCK細胞による試料の段階希釈液を48時間インキュベートし、次いでニワトリ赤血球細胞(アニマルテクノロジー社から入手)による標準血球凝集反応により測定した。終点力価は3回の測定の補間によって評価し、器官当りのTCID50として表した(平均±SEM;n=6/群;結果はC3H/HeJ TLR−4−/−マウス及びコンピテントマウスにおける独立した2種類の試験の結果である)。TLR4コンピテントのC57BL/6マウスでも同様の結果が得られた。
【0205】
図12に示す結果から、選択された合成RNAモチーフを用いることによりインフルエンザウィルスの複製を制御できることがわかる。
【実施例24】
【0206】
実施例24は、選択された複数の合成RNAモチーフを同時投与することにより、高用量の標準抗原に対する免疫寛容が破壊されることを示す。
【0207】
dsRNAモチーフは、ヒトIgGを注射したマウスにおいて大量域寛容を阻止する。まず、マウス(C57BL/6)を寛容原性用量である200μgのhIgGのみ(黒印)、或いはこれと100μgのpI:pC又はpA:pUを一緒に(白印)静注し、免疫原性用量である100μgのhIgGのCFA(完全フロイントアジュバント)乳化物を皮下注射し追加免疫を行った。hIgGに対する抗体の力価をELISAにより(コーティングに10μg/mLのhIgGを用いた以外は実施例19と同様に)測定した。測定は、最初の注射後、各時間に行った。対照として、100μgのhIgGのCFA乳化物で免疫感作したマウスを用いて得た最大力価をグラフに示す(破線)。
【0208】
結果は、終点力価の平均±SEMとして図13に示す(n=5/群)。TLR4欠損(C3H/HeJ)マウス及びLPS−応答性C3H/SnJマウスでも同様の結果が得られた。図13に示す結果から、選択された合成RNAモチーフであるpI:pC及びpA:pUは、大量の精製タンパク質投与に通常伴う大量域寛容を著しく阻害することがわかる。
【実施例25】
【0209】
実施例25は、選択されたRNAモチーフが、ヒトAPCによる各種サイトカインの産生を誘導することを示す。
【0210】
分化後のヒトTHP−1単球細胞を各種濃度の合成RNA(pA:pU、pI:pC又はpA)と共に24時間インキュベートし、細胞上清を回収した。IL−12及びTNF−αの濃度をELISAにより測定した。結果は、各培養条件に対する各サイトカインのpg/mL(濃度)として図14に示す。
【0211】
図14に示す結果から、選択された合成RNAモチーフはヒト単球細胞に作用し、この作用はモチーフ(ヌクレオチド組成物)の化学構造によって不均一であることがわかる。合成RNAモチーフ全てではないが、選択された合成RNAモチーフは、ヒト単球細胞による、重要なT1調節サイトカインであるIL−12の産生を誘導できる。
【0212】
材料:
THP−1ヒト単球細胞系:ATCC、カタログ番号TIB−202;
IL−12サイトカイン:ヒトELISA、IL−12ウルトラセンシティブ(US)カタログ番号KHC0123;
TNFアルファサイトカイン:ヒトELISA、TNFアルファ カタログ番号KHC3012;
RNAモチーフ:
・pA:pU、(シグマ社、ロット番号22K4068);
・pI:pC、(シグマ社、ロット番号52K4047);
・pA、(シグマ社、ロット番号22K4022)
【0213】
方法:
1.THP−1細胞に、10ng/mLのPMAを加え、10%FCSを含有する培地において分化させた。
2.細胞を穏やかに洗浄し、FCSを含まない培地(HL−1)を加え、処理物(RNAモチーフ及び対照)(3〜100μg/mL)を付着性(adherent)THP−1細胞に添加した。
3.24時間インキュベートした後、細胞上清を回収し、IL−12及びTNFアルファの濃度をELISAにより測定した。
【実施例26】
【0214】
実施例26は、2個の区別される合成RNAモチーフがヒトTHP−1単球細胞に結合するときに、互いに異なる受容体と相互作用を示すことを示す。
【0215】
THP−1細胞を、種々異なる量の非標識合成RNAと共に室温で15分間インキュベートした。次に、タグ化したpA:pUを4℃で30分かけて添加し、細胞を洗浄し、蛍光をFACS分析により測定した。結果を図15A及び15Bに棒グラフとして示す。図15Aは大細胞のサブセットを、図15Bは全細胞集団を示す。染色された細胞の百分率を各図に示した。
【0216】
図15A〜15Bに示す結果から、非タグ化pA:pUは、大細胞のサブセット及び全細胞集団の両方のレベルにおいてタグ化pA:pUのヒトTHP−1単球細胞への結合に打勝つ(compete out)ことができるが、非タグ化pI:pCは打勝つことができないことがわかる。
【0217】
材料:
1.ULYSIS:核酸蛍光標識(モレキュラー・プローブス社(Molecular Probes)、カタログ番号U−21650)
2.RNAモチーフ:
・pA:pU、(シグマ社、ロット番号22K4068);
・pI:pC、(シグマ社、ロット番号52K4047);
3.Detoxi−Gelカラム:(ピアース社、カタログ番号20344)
【0218】
方法:
I ポリアデニル−ポリウリジル酸(pA:pU)の標識:
エンドトキシンをDetoxi−Gelカラムを用いて除去した後、pA:pUの標識を、ULYSIS核酸標識システムを用いてAlexa Fluor488蛍光染料により行った。
概略:
・酢酸ナトリウム及びエタノールを用いて−70℃でpA:pUを沈澱させた。
・pA:pUを熱変性させ、Alexa Fluor488試薬により90℃で標識した;
・反応を停止させ、標識されたpA:pUをエタノール沈澱させた。
【0219】
II 細胞の処理:
THP−1細胞を2×106細胞/mLの濃度で懸濁させた;
この懸濁液(50μL、5×104細胞)を12×75mmチューブに入れた;
非タグ化pA:pU又はpI:pCを20又は100μg/mLの濃度でTHP−1細胞に添加し、15分間インキュベートした;
ULYSIS標識されたpA:pUを100ug/mLの濃度で30分かけて氷上で添加した。
THP−1細胞を1回洗浄し、FACS緩衝液に懸濁させ、フローサイトメトリー分析を行って、異なる処理を施した集団間の蛍光の相対差を測定した。
【実施例27】
【0220】
実施例27は、アジュバント合成RNAを、最も有効な形式で使用するために事前にどのように調製・精製するかを示す。
【0221】
バルク合成RNA材料を標準的な有機合成法により得る。その後エンドトキシンを含まない無菌生理食塩水にこの材料を溶解し、LPS濃度が0.005EU/μgより低くなるまでエンドトキシン除去カラムを通す。LPSの測定は標準的なリムルスアッセイにより行う。その後、材料を一連の遠心分離にかけ、有孔率が規定されたフィルタを通して分画する(図16参照)。
【0222】
有用な画分は、サイズが20bp未満から最大100bpの合成RNAを含むものである。精製後、材料を標準的な各種アッセイ、即ち分光測光(OD260nm);ゲル電気泳動;リムルスアッセイによるエンドトキシンの定量;ヒトTHP−1細胞に対する生体活性(実施例25と同様)により測定し評価する。
【実施例28】
【0223】
実施例28は、選択された合成RNA化合物の各画分は、意外にも、RNAのサイズによって生物学的活性が異なることを示す。
【0224】
分化したヒトTHP−1単球細胞を、異なる濃度の合成RNA(pA:pU、実施例27と同様に分画した)と共に24時間インキュベートし上清を回収した。TNF−αの濃度をバイオソースインターナショナル社(カリフォルニア州カマリロ)のキットを用いてELISAにより測定した。結果を、図17に培養条件毎にpg/mL(濃度)として示す。
【0225】
図17に示す結果から、選択された合成RNA化合物の分子量が小さい程、その画分は、ヒト単球THP−1細胞によるサイトカイン産生に関する生物学的活性が高いことが分かる。
【実施例29】
【0226】
実施例29:選択された合成RNAモチーフは、意外にも、モチーフによって抗RNA抗体の産生に関する免疫プロフィールが異なる。
【0227】
BALB/cマウスを、腹腔及び皮下[i.p.+s.c.]から50μg+50μgのhIgG及び合成RNA(pI:pC又はpA:pU)で免疫感作し、1週間後血清サンプルを得た。対照として、生理食塩水に添加したhIgGを注射したマウスを用いた。pA:pU、pI:pC、pA及びhIgGに対する抗hIgG及びdsRNA IgG抗体力価をELISAにより測定した。即ち、ウェルを抗原(10μg/mLのhIgG或いは合成RNA)でコーティングし、シーブロック(ピアース社、イリノイ州ロックフォード、カタログ番号37527)でブロッキングした。血清と気管支肺胞洗浄液の段階希釈液は、室温で少なくとも2時間インキュベートした。洗浄後、アルカリホスファターゼ(シグマ社、カタログ番号A7434)結合抗マウスIgG抗体を用いたアッセイを行い、基質(pNPP、シグマ社、カタログ番号N2765)を添加し、ソフトマックスソフトウェアを備えた自動マイクロタイタープレートリーダー(モルキュラーデバイス社、ThermoMax)で測定した。
【0228】
結果を、図18に、終点力価の平均±SEM(n=3/群)として示す。図18に示す結果から、pI:pCは、pA:pUと異なり、それ自身に対する抗体反応を誘導し、別のRNAモチーフに対する交叉反応性成分を有する。
【実施例30】
【0229】
実施例30:組換えIgGをAPCに生体内でローディングすると、付加的な条件を満たしたときのみ、Tcl型のMHCクラスI応答が起こる。
【0230】
BALB/cマウスを、50ugの選択された合成RNA(pA:pU又はpI:pC)と混合した50ugのrecIgG−NP(Kd)(図31A〜31D参照)(NPペプチドは、A型インフルエンザウィルスのエピトープを保護し保存したもの)で皮下免疫感作した。対照として、ナイーブマウス又はrecIgGのみで免疫感作したマウスを用いた。免疫感作3週間後、T細胞応答を次のとおりELISPOT分析により測定した:ELISPOTプレート(ミリポア社、フランス、モールスハイム)を、無菌PBS(50μL/ウェル)に添加した精製抗サイトカインAbs(抗IL4に対しては4ug/mL、抗IFNガンマに対しては8μg/mL、(BDファーミンジェン社)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートをDMEM培地で2回洗浄し、FBSを含む200μL/ウェルの完全DMEM培地で37℃、1時間処理しブロッキングした。脾臓から単一細胞浮遊液を作成し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計数後、5×105/ウェルでNP147−155ペプチドと共にインキュベートした、或いは培地のみでインキュベートしバックグラウンドを評価した。プレートは37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。3日後、プレートをPBS−tween20 0.05%(洗浄緩衝液)で5回洗浄し、ビオチン化抗サイトカインAbs(2μg/mL)をPBS−tween20 0.05%−FBS0.1%(ELISPOT緩衝液)に添加したもの(100μL/ウェル)と共に4℃で一晩インキュベートした。
【0231】
翌日、プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRPのELISPOT緩衝液希釈液(1:1000)と共に1時間インキュベートした。反応は、3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)を添加して開始させ、水道水でプレートを2回洗浄することにより停止させた。次に、プレートを室温で24時間乾燥させた。
【0232】
データは、ImagePro−Plus)ソフトウェア(メディアサイバネティックス社メリーランド州シルバースプリングス)を備えた自動化システム(ナビター社、ニューヨーク州ロチェスター)により得た。サイトカイン産生T細胞がNPペプチド(NPペプチドは、A型インフルエンザウィルスのエピトープを保護し保存したもの)と反応する頻度を測定し、刺激に使用されたペプチドの量に対して示した。結果を、図19に三連のデータの平均+SEM(n=3マウス/群)として示す。
【0233】
NP MHCクラスI拘束性エピトープを有する組換えIgGの投与によって、Tc2免疫は起こるがTc1応答は起こらない。これは、特定の共刺激プロフィールを有するクラスIペプチド複合体が生体内で形成されたことを示唆している。図19に示す結果から、選択された複数の合成RNAを同時に使用することにより、IgGが仲介するMHCクラスI拘束性エピトープの輸送に続き、IL−2及びIFN−ガンマの効果的な誘導が促進されることがわかる(dsRNA1はpA:pUであり、dsRNA2はpI:pCである)。
【実施例31】
【0234】
実施例31:FcガンマRによるAPCローディングとRNA受容体による活性化の同時操作による、MHCクラスIペプチドの効果的形成とその結果のT細胞応答の指示
【0235】
脾臓APCをナイーブBALBcマウスから単離し、1ugのNPペプチド、又は50μgのrecIgG−NP(Kd)を単独で或いは50μg/mLの選択された合成dsRNA(pA:pU)を組合せたもので、ex vivoでのパルシングを一晩行った。細胞を洗浄し、5×106個の細胞をナイーブBALB/cマウスにs.c.及びi.p.で等量投与した。3週間後、応答を次の通りELISPOT分析により測定した:ELISPOTプレート(ミリポア社、フランス、モールスハイム)を、無菌PBS(50μL/ウェル)に添加した精製抗サイトカインAbs(抗IL4に対しては4μg/mL、抗IFNガンマに対しては8μg/mL、(BDファーミンジェン社)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートをDMEM培地で2回洗浄し、FBSを含む200μL/ウェルの完全DMEM培地で37℃、1時間処理しブロッキングした。脾臓から単一細胞浮遊液を作成し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計数後、5×105/ウェルで30μg/mL、10μg/mL又は3μg/mLのNPペプチドと共にインキュベートした、或いは培地のみでインキュベートしバックグラウンドを評価した。プレートは37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。3日後、プレートをPBS−tween20 0.05%(洗浄緩衝液)で5回洗浄し、ビオチン化抗サイトカインAbs(2μg/mL)をPBS−tween20 0.05%−FBS0.1%(ELISPOT緩衝液)に添加したもの(100μL/ウェル)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRPのELISPOT緩衝液希釈液(1:1000)と共に1時間インキュベートした。反応は、3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)を添加して開始させ、水道水でプレートを2回洗浄することにより停止させた。次に、プレートを室温で24時間乾燥させた。
【0236】
データは、ImagePro−Plus)ソフトウェア(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリングス)を備えた自動化システム(ナビター社、ニューヨーク州ロチェスター)により得た。結果は、図20に、ex vivo刺激に用いたペプチド濃度に対するサイトカイン産生スポット形成コロニーの発生度合(平均±SEM、n=3マウス/群)で示す。更に、刺激に用いたペプチド濃度に対するエリア/コロニーの平均をIFN−ガンマ及びIL−4に対してプロットした(任意単位)。
【0237】
図20に示した結果から、組換えIgGのAPCへのex vivoローディングは、ペプチド自体を使用するのに比べ、MHCクラスI−ペプチド複合体の形成及びTc応答の発生に対しより効果的であることがわかる。更に、IgG/FcガンマRによるエピトープの輸送後、MHCクラスI−ペプチド複合体が単に形成された場合は、IL−4は産生するがIFNガンマは産生しないTc2細胞の分化が惹き起こされる。選択された合成RNAでAPCを同時に処理することにより、T細胞プロフィールをIFN−ガンマ産生Tc1細胞にまで拡大することができる。
【実施例32】
【0238】
実施例32は、IgG−ペプチドと選択された共刺激モチーフとを同時プライミングすることにより、ウィルス感染後にMHCクラスI拘束性T細胞のより効果的な二次増殖が起こることを示す。
【0239】
BALB/cマウスに、recIgG−NP(Kd)、pA:pU、或いはrecIgG−NP(Kd)及びpA:pU(50ug/注射)を注射した。対照として、ナイーブマウスを用いた。処理の3週間後、マウスにA/WSN/32 H1N1インフルエンザウィルスの104TCID50を気道から感染させた。感染4日後、NPペプチド刺激をex vivoで行った後、脾臓のT細胞プロフィールをELISPOT分析により次のようにして測定した:ELISPOTプレート(ミリポア社、フランスモール、スハイム)を、無菌PBS(50μL/ウェル)に添加した精製抗サイトカインAbs(抗IL2及び抗IL4に対しては4ug/mL、抗IFNガンマに対しては8μg/mL、(BDファーミンジェン社)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートをDMEM培地で2回洗浄し、FBSを含む200μL/ウェルの完全DMEM培地で37℃、1時間処理しブロッキングした。脾臓から単一細胞浮遊液を作成し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計数後、20μg/mLのNPペプチドと共に又は培地のみで5×105/ウェルでインキュベートし、バックグラウンドを評価した。プレートは37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。3日後、プレートをPBS−tween20 0.05%(洗浄緩衝液)で5回洗浄し、ビオチン化抗サイトカインAbs(2μg/mL)をPBS−tween20 0.05%−FBS0.1%(ELISPOT緩衝液)に添加したもの(100μL/ウェル)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRPのELISPOT緩衝液希釈液(1:1000)と共に1時間インキュベートした。反応は、3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)を添加して開始させ、水道水でプレートを2回洗浄することにより停止させた。次に、プレートを室温で24時間乾燥させた。
【0240】
データは、ImagePro−Plus)ソフトウェア(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリングス)を備えた自動化システム(ナビター社、ニューヨーク州ロチェスター)により得た。結果は、図22に、サイトカイン産生コロニーを形成するNP特異的MHCクラスI拘束性T細胞の発生度合(平均±SEM、n=4マウス/群)で示す。
【0241】
図21に示す結果から、選択された合成RNAの同時投与を実施したとき、クラスI拘束性エピトープのIgG媒介輸送がクラスI拘束性Tc1応答のプライミングに最も効果的であることがわかる。プライミングされたこのような前駆体は、インフルエンザウィルス感染後、急速に増殖した。
【実施例33】
【0242】
実施例33は、MHCクラスI拘束性エピトープを認識する細胞障害性リンパ球の最も効果的なプライミングは、IgGバックボーンに挿入されたペプチドエピトープを選択されたRNAモチーフと共に同時投与することにより行われるものであることを示す。
【0243】
前出の実施例と同様に、BALBcマウスに対しrecIgG−NP(Kd)による免疫感作及び攻撃を行い、インフルエンザウィルス感染4日後に殺した。脾臓細胞を取り出し、HL−1培地に500万/mLで懸濁し、5U/mLの組換えIL−2の存在下、10μg/mLのNP147−155ペプチドと共に5日間同時インキュベートした。4マウス/群からの脾臓細胞をプールし、フラスコ中でインキュベートした。
【0244】
増殖後、生残性を有する細胞をフィコール勾配遠心分離により回収し、洗浄後、種々の細胞数に分けてV底プレート中で5時間インキュベートした。インキュベーションは、固定数のsp20ターゲット細胞を添加して行い、NPペプチド(20μg/mL)は添加又は非添加で行った。プレートの遠心分離後、上清を回収し、LDHの濃度を、Promegaキット(カタログ番号G1780)を用いて測定した。結果は、各E:T比(エフェクター対ターゲットの比)における比溶解性として示す。
【0245】
図22に示す結果から、抗ウィルス細胞障害性T細胞の効果的なプライミングには、IgGにより輸送されたクラスI拘束性エピトープの生体内でのAPCへの効果的なローディングと、選択された合成RNAモチーフ、即ちpA:pUによる適切な指示との両方が必要であることがわかる。
【実施例34】
【0246】
実施例34は、ウィルス性MHCクラスI拘束性エピトープを有するIgGと、選択された合成RNAモチーフとを一緒にワクチン投与することにより、プロトタイプウィルスによる感染攻撃に対する防御が提供されることを示す。
【0247】
BALB/cマウスに、50ugのrecIgG−NP(Kd)及び50ugの選択された合成RNA(pA:pU)を皮下注射し、免疫感作を行った。免疫感作3週間後、マウスに対し104TCID50の感染性WSNインフルエンザウィルスにより攻撃を行い、5日後に殺した。次の標準MDCK血球凝集アッセイにより肺ウィルスを肺ホモジネートに滴定した:1日目、MDCK細胞を96ウェルプレートに添加し(2×104/ウェル/200uL)、37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。翌日、肺ホモジネートのDMEM培地10倍希釈液(25μL)をトリプシン処理MDCKプレート中、3連で短時間(1分)インキュベートした後、37℃でインキュベートした。1時間後、175uLの完全DMEM培地を添加し、プレートを37℃、5%CO2で48時間インキュベートした。2日後、MDCKプレートから得た細胞培養上清と共に室温で30分間インキュベートしたニワトリ赤血球を用いて、血球凝集阻止を行った。結果は、全肺ウィルスの平均±SEMとして示す(n=4マウス/群)。対照として、免疫感作を行っていないマウスを用いた。
【0248】
図23に示す結果から、ウィルス性クラスI拘束性エピトープを有する組換えIgGと一緒に、選択された合成dsRNAによって免疫感作を行うことにより、感染攻撃後のウィルス複製を制限できる免疫応答がプライミングされることがわかる。
【実施例35】
【0249】
実施例35:図24に、Ig−ペプチドに基づく分子の効力をテストするために用いた腫瘍モデルを示す。
【0250】
Balb−cマウス(Kd拘束性)を用い腫瘍モデルを確立した。通常、腫瘍細胞(100μL中に100万〜1500万)は側腹部に注射した(上の写真の矢印参照)。原発腫瘍(注射サイトの腫瘍)は、まずその領域を触診することにより検出し、次いでカリパスで腫瘍サイズを測定することにより定量化した。一連の実験において、トランスフェクトしていない細胞、或いは安定にトランスフェクトされ異種タンパク質(H鎖のCDR3領域に異なるエピトープペプチドを発現する組換えIgG、或いは完全なNPタンパク質)を発現する細胞のいずれかであるマウス骨髄腫細胞系(SP2/0)を用い、マウスに腫瘍を誘導した。SP2/0細胞内の異種タンパク質の発現は、免疫適格マウスにおける各種抗腫瘍戦略のテストのための特異的腫瘍関連抗原(TAA)を提供した。典型的には、未処置マウスには、注射後1週間で触知可能な充実性原発腫瘍が発生し、次の4週間に亘り病的状態や死をもたらした。注射したマウスの死後剖検により、転移病変が明らかになった(図24参照)。Sp2/0細胞は、原発腫瘍組織、同様に腫瘍を有するマウスから採取した脾臓から培養した(データは示さず)。SP2/0細胞には、MHCI拘束性NPエピトープ(アミノ酸147〜155)等のH鎖のCDR3領域に導入された特定のエピトープ配列以外は全てが同一である組換えIgG発現プラスミドが安定にトランスフェクトされた。また、SP2/0細胞には、CMVプロモータの制御下、WSNウィルスのNPタンパク質全体のためのコード配列を含むプラスミドが安定にトランスフェクトされた。全てのトランスフェクト細胞系は、野生型SP2/0細胞の場合と同一のフレームに原発腫瘍を引き起こした。
【0251】
本腫瘍モデルは、Balb−cマウスに転移腫瘍を誘導することが先に示された腺癌細胞系(4T1、ATCC CRL−2539、Kd拘束性)を含むように拡張された。4T−1細胞系は、SP/0系に関する前の記述に類似していた。Balb−cマウス側腹部への100万〜1500万4T−1細胞の投与は、触診可能な原発腫瘍をSP2/0細胞の投与の場合と類似の時間フレームで生じ、最終的には死をもたらした。各種器官からの組織の死後採取は原発腫瘍のみならず、脾臓、肺からも4T−1が回収できることを示した(図示せず)。4T−1細胞に、前述のNP−発現プラスミドを安定にトランスフェクトした。SP2/0の場合のように、4T−1細胞へのトランスフェクトは、腫瘍の増殖過程や疾患の致死率に影響を与えなかった。
【実施例36】
【0252】
実施例36は、選択された共刺激RNAモチーフと共に組換えIgG内の腫瘍関連T細胞エピトープを用いた、臨床診断後の腫瘍のコントロールと処置の成功例を示す。
【0253】
Balb/cマウスに、H鎖(IgNP)のCDR3領域内にMHC I(Kd)NPエピトープペプチドを有する組換えIgGを安定に発現するSP2/0細胞を注射投与した(100μL中1500万)。投与後第7日、全てのマウスは触診可能な腫瘍を有し、それらのマウスを無作為に3群(共刺激モチーフ単独(ポリマーpApUを含むdsRNA)、精製IgTAAタンパク質(IgNP)、これら両者)に振り分けた。処置時間は矢印で示し、各投与は図示の化合物を50μg含んだ。図中、転移疾患を発現し死亡したマウスを「D」で表した。
【0254】
これらのデータは、治療開始時に原発腫瘍を有する全てのマウスにおいて、dsRNA(共刺激モチーフ)とIgTAA(IgNP)の組合せが劇的な保護応答を生じることを示す。片方の化合物のみで処置したマウスの全ては、疾患により死亡したが、両者を用いて処置したマウスの100%は、処置開始後3週間後も生存していた。これらのマウスは、T細胞応答の測定のために殺された時にも良好な臨床状態であった。これらのデータは、APCへのTAAの生体内ローディング(APCのFc受容体を介したIgNPの摂取によって成される)は、抗腫瘍応答の効力に関して十分ではないことを示す。IgNPをpApU dsRNAと組み合わせて処置したマウスにおいて示される腫瘍の拒絶と生存は、腫瘍関連抗原による腫瘍の処置が共刺激に関して重要な役割を果たすことを示している。
【0255】
結論として、図25の結果は、腫瘍関連抗原のAPCへの効果的な生体内ローディングと、選択された合成RNAモチーフによる同時活性化との両者を共に行うことが、腫瘍成長の効果的な制御と腫瘍拒絶の誘導のために必要且つ十分であることを示す。
【実施例37】
【0256】
実施例37:本実施例は、腫瘍細胞を亜致死量接種した場合に、腫瘍抗原に対する最適未満の応答を、IgGバックボーン内のペプチドエピトープを共刺激モチーフと共に用いる治療によって修正できることを示す。
【0257】
Balb/cマウスに、H鎖のCDR3内にWSNウィルス核タンパク質のMHC I(Kd)エピトープ(アミノ酸147〜155)を含む組換えIgG(IgNP)を安定に発現するSP2/0細胞を注射投与した。細胞接種物は、マウス当たり100万細胞(100μL中)であった。マウスを、注射サイトに触診可能な腫瘍が検出されるまで観察した。この時点で腫瘍を測定し、8匹のマウスには処置を施さず、6匹には精製IgTAA(即ち、精製IgNP、2mg/kg)とdsRNA(pApU、4mg/kg)を一週間毎に腫瘍内注入した。腫瘍は一週間毎に測定した。
【0258】
図26のパネルAは、8匹のマウスの内の6匹は、誘導された腫瘍が進行し最終的に死に到ったが、これらのマウスの内の2匹は、自発的に腫瘍を完全に拒絶したことを示す。図41のパネルBは、IgNP/dsRNAによる3回の一週間毎の処置(矢印で示す)が、6匹のマウスの内の4匹において腫瘍の完全な拒絶を刺激し、他のマウスでは腫瘍の大幅な軽減を刺激したことを示す。
【0259】
図26の結果(パネルAとB)は、腫瘍関連抗原のAPCへの効果的な生体内ローディングと、選択された合成RNAによる同時活性化の両者を行うことが、腫瘍関連抗原に対する効果的な免疫応答を誘導できることを示す。
【実施例38】
【0260】
実施例38は、IgGバックボーン内の腫瘍エピトープと共刺激合成RNAとを共に用いた腫瘍を有するマウスの治療は、腫瘍浸潤リンパ球の活性状態へと回復可能であることを示す。
【0261】
2匹のBALB/cマウスに、1000万のNP−Kdエピトープ発現sp20トランスフェクトーマを注射投与した。腫瘍の発生後、一匹のマウスに、50μgの選択されたdsRNAモチーフ(pApU)と50μgの「IgNP」−recIgG−NP(Kd)とを生理食塩水に添加したものを腫瘍内に注入した。24時間後にマウスを殺し、腫瘍を摘出し、コラゲナーゼで消化し、70umのフィルタで濾過し、次いで生存細胞をフィルコール勾配で単離した。細胞をTCRβ、CD25、或いはアイソタイプ対照に対してmAbsで染色し、FACS分析で評価した。結果を、染色された細胞の百分率と共に、ヒストグラムで示した。
【0262】
材料:
SP20細胞系(ATCC);
2 BALB/cマウス(Harland Sprague Dawley);
ファルコン70ミクロンフィルタ(ベクトンディッキンソン社、カタログ番号352350);
コラゲナーゼ(シグマ社、カタログ番号C−9891);
BSA、fractionV(シグマ社、カタログ番号A−4503);
コラゲナーゼ緩衝液:0.225gm BSA+0.00625gm(50mL RPM I中);
フィコール−ハイパーク(Ficoll-hypaque)(1.077、アマシャム社、カタログ番号17−1440−02);
FACS緩衝液:1%ウシ胎児血清+0.1%アジド(PBS中);
抗体:全てBDファーミンジェン社から;
フローサイトメータ:FACSCalibur(ベクトンディッキンソン社)。
【0263】
方法:腫瘍細胞単離及びFACS分析
6週間前に腫瘍を前述のように誘導;
BALB/cマウスから腫瘍を単離;
殺菌ハサミで腫瘍を切り刻み、コラゲナーゼ緩衝液10mLを添加;
37℃で40分間インキュベート;
腫瘍を、RPMIで洗浄しながら3mLの注射器プランジャを用い70μmのファルコン(Falcon)フィルタを通し50mLチューブに濾過;
1X洗浄し4mlsの温RPMI緩衝液に再懸濁;
等量の細胞浮遊液を用いフィコール上で層とし、室温、2000RPMで15分間遠心;
層を単離し、HL−1緩衝液で一回洗浄し、FACS緩衝液中に2×106/mLで再懸濁し、フローサイトメトリー分析を行う;
残存細胞はELISPOT分析に用いた;
細胞を12×75mmのチューブに入れ(50μL/チューブ)、FITC標識抗マウス抗体(2μg/チューブ)とマウス血清(1μL/チューブ)で染色:
・アイソタイプ対照;
・抗CD40;
・抗CD8;
・抗CD4;
・抗CD25;
・抗TCRガンマデルタ;
・抗TCRベータ;
氷上で30分間インキュベート;
FACS緩衝液で一回洗浄、300μLのFACS緩衝液に再懸濁。
【0264】
図27の結果は、腫瘍関連エピトープを有する組換え免疫グロブリンと選択された合成dsRNAモチーフとを共に用いて処置をすると、T細胞受容体マーカーTCRβを提示する腫瘍浸潤リンパ球が、活性化マーカーCD25の発現を獲得したことを示す。
【実施例39】
【0265】
実施例39は、IgGバックボーン内のペプチドエピトープと選択された共刺激分子とを共に用いた腫瘍を有するマウスの治療の成功は、Tc2に加えTc1を含むTcの特定の分化パターンに関連することを示す。
【0266】
腫瘍関連エピトープを有する組換えIgと選択された合成dsRNAモチーフとを共に用いる実施例37に記載の処置により腫瘍の拒絶に成功したマウスを殺し、腫瘍関連エピトープに対するT細胞応答を、ELISPOT分析によって測定した。ELISPOTプレート(ミリポア社、モレシェイム、フランス)を、無菌PBS(50μL/ウェル)に添加した精製抗サイトカインAbs(抗IL2と抗IL4に対しては4ug/mL、抗IFNガンマに対しては8μg/mL、BDファーミンジェン社)と共に4°Cで一夜インキュベートした。翌日、プレートをDMEM培地で2回洗浄し、FBSを含む200μL/ウェルの完全DMEM培地で37°C、一時間処理しブロッキングした。脾臓から単一細胞浮遊液を作成し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計測後、各種濃度のNPペプチドと共に5×105/ウェルでインキュベートした。プレートは37°Cで72時間、5%CO2でインキュベートした。3日後、プレートをPBS−tween20 0.05%(洗浄緩衝液)で5回洗浄し、100μL/ウェルのビオチン化抗サイトカインAbs(PBS−tween20 0.05%−FBS0.1%(ELISPOT緩衝液)中に2μg/mL)と共に、4°Cで一夜インキュベートした。翌日、プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRPのELISPOT緩衝液希釈液(1:1000)と共に1時間インキュベートした。反応は、3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)を添加して開始させ、水道水でプレートを2回洗浄することにより停止させた。次に、プレートを室温で24時間乾燥させた。
【0267】
データは、ImagePro−Plus)ソフトウェア(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリングス)を備えた自動化システム(ナビター社、ニューヨーク州ロチェスター)により得た。結果は、IL−4、IL−2、及びIFN−γに対応するコロニーを形成するスポットの数(平均±SEM)として表した。対照として、腫瘍を拒絶できなかった非処置マウスを用いた(n=4/群)。
【0268】
図28の結果は、腫瘍の拒絶に成功した処置マウスは、治療性Ig上に腫瘍関連エピトープに対するTc1応答をTc2免疫と共に発現したことを示す。対照的に、腫瘍を拒絶できなかったマウスはTc2免疫のみを示した。
【実施例40】
【0269】
実施例40は、IgGバックボーン内のT細胞エピトープと選択された共刺激モチーフとを共に用いた、腫瘍を有するマウスの特定の処置後の、効果的記憶応答の誘導を示す。
【0270】
NP−KdTAA発現sp2/0腫瘍を有するマウスを、実施例37の記載のように、TAAを有する組換えIgと選択された合成RNAモチーフとを共に注射投与することにより処置した。腫瘍の拒絶後、マウスを1500万のNP−Kdエピトープ発現SP2/0細胞を対側投与する皮下注射によって攻撃した。平行して、4匹の対照ナイーブマウスに、腫瘍形成/致死量の同タイプ細胞を同様に注入した。腫瘍の発生とサイズをモニタし、直径(mm)を攻撃からの時間に関して表した。
【0271】
図29の結果は、図示の処置により有効な腫瘍の拒絶が誘導されると、その後は同種の腫瘍で攻撃してもこれに対し効果的な防御が行われ、効果的な免疫記憶が発現することを示す。
【実施例41】
【0272】
実施例41は、驚くべきことに、TAAを有するIgGと共刺激物とを共に用いることによる腫瘍拒絶の誘導は、TAAを欠いた或いはTAAの変異体を示す多数の腫瘍細胞変異体に対する交叉保護を生じることを示す。
【0273】
実施例40の記載のような相同攻撃に対して保護されたマウスに、1500万の腫瘍細胞(TAAを欠いた(抗原変異体なし)同種の腫瘍細胞、或いはNP−Kdエピトープを欠いたTAAの変異体を有する同種の腫瘍細胞)を用いて引き続き攻撃を行った。更に、マウスに、図30Aに添付の表に示される異なる型の腫瘍細胞系(4T−1腺癌)を用い対照として攻撃を行った。いずれの場合にもナイーブ対照が含まれる。
【0274】
腫瘍変異体による多重攻撃に対して保護されたマウスのT細胞免疫の状態は、TAA(NP−Kdペプチド)、HA(MHCクラスII拘束ペプチド)、或いは細胞溶解物から抽出したタンパク質で刺激した脾臓細胞浮遊液を用いたELISPOT分析で評価した。ELISPOTプレート(ミリポア社、モレシェイム、フランス)を、無菌PBS(50μL/ウェル)に入れた精製抗サイトカインAbs(抗IL2と抗IL4に対しては4ug/mL、抗IFNガンマに対しては8μg/mL、BDファーミンジェン社)と共に、4°Cで一夜インキュベートした。翌日、プレートをDMEM培地で2回洗浄し、FBSを含む200μL/ウェルの完全DMEM培地を用い、37°Cで1時間処理しブロッキングした。
【0275】
脾臓から単一細胞浮遊液を作成し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計測後、各種濃度の抗体と共に5×105/ウェルでインキュベートした。プレートは37°Cで72時間、5%CO2でインキュベートした。3日後、プレートをPBS−tween20 0.05%(洗浄緩衝液)で5回洗浄し、100μL/ウェルのビオチン化抗サイトカインAbs(PBS−tween20 0.05%−FBS0.1%(ELISPOT緩衝液)中に2μg/mL)と共に、4°Cで一夜インキュベートした。翌日、プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRPのELISPOT緩衝液希釈液(1:1000)と共に1時間インキュベートした。反応は、3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)を添加して開始させ、水道水でプレートを2回洗浄することにより停止させた。次に、プレートを室温で24時間乾燥させた。
【0276】
データは、ImagePro−Plus)ソフトウェア(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリングス)を備えた自動化システム(ナビター社、ニューヨーク州ロチェスター)により得た。結果は、IL−4、IL−2、及びIFN−γに対応するコロニーを形成するスポットの数(平均±SEM)として表した。対照として、腫瘍を拒絶できなかった非処置マウスを用いた(n=4/群)。対照としてはナイーブマウスが含まれる。データは、器官当たりのサイトカイン産生細胞数(平均±SEM)として表す(n=3/群)。
【0277】
図30A〜30B(図30Aの表を含む)の結果は、腫瘍の拒絶を生じる図示の処置の結果として出現した免疫は、抗原変異体非存在下での攻撃に対する防御となり、サイトカイン産生細胞の全体に亘る増殖に関係付けられることを示す。このことは、提案に係る投薬計画によって増強される抗腫瘍リンパ球の、免疫療法分子によって担われているのではない腫瘍関連抗原に対するレパートリーの広がりを示す。
【図面の簡単な説明】
【0278】
【図1】図1は、特定の抗体及びT細胞免疫に対する各種合成RNAモチーフの作用を示す。
【図2】図2は、特定のdsRNAによる、ウィルス抗原に対する免疫応答の亢進を示す。
【図3】図3は、特定のdsRNAモチーフが自然免疫及び抗原提示細胞に与える影響を示す。
【図4】図4は、特定のdsRNAモチーフの「危険シグナル」性を示す。
【図5】図5は、選択されたdsRNAモチーフの、強力なワクチンアジュバントとしての使用を示す。
【図6】図6は、免疫応答に対するdsRNAモチーフの作用を示すフローチャートである。
【図7】図7は、インフルエンザ感染中に産生された天然の非感染性二本鎖RNAが、タンパク抗原に対する特異的免疫応答に実質的効果を有することを示す。
【図8A】図8Aは、合成RNAモチーフの広範なライブラリーを示す。
【図8B】図8Bは、各種合成RNAが、プロトタイプタンパク抗原に対するB細胞及びT細胞の応答を増強する効果を有することを示す。
【図9】図9は、自然免疫応答に対する選択されたRNAモチーフの作用を示す。
【図10】図10は、別個のRNAモチーフが抗原提示細胞上の異なる受容体に結合することを示す。
【図11】図11は、別個のRNAモチーフがケモカインの様々な上方調節(upregulation)を誘導することを示す。
【図12】図12は、選択された合成RNAモチーフを使用することにより、インフルエンザウィルスの複製を制御できることを示す。
【図13】図13は、選択された合成RNAモチーフであるpI:pC及びpA:pUが、精製タンパクの多量投与に通常伴う大量域寛容を著しく阻害することを示す。
【図14】図14は、選択された合成RNAモチーフがヒト単球細胞に作用することを示す。
【図15A】図15Aは、非タグ化pA:pUは、タグ化pA:pUのヒトTHP−1単球細胞への結合に打勝つことができるが、非タグ化pI:pCは打勝つことができないことを示す。
【図15B】図15Bは、非タグ化pA:pUは、タグ化pA:pUのヒトTHP−1単球細胞への結合に打勝つことができるが、非タグ化pI:pCは打勝つことができないことを示す。
【図16】図16は、dsRNAの精製及び分画工程を示す。
【図17】図17は、選択された合成RNA化合物の分子量が小さい画分ほど、生物学的活性が高いことを示す。
【図18】図18は、pI:pCは、pA:pUと異なり、自己に対する抗体反応を誘導し、別のRNAモチーフに対する交叉反応性成分を有することを示す。
【図19】図19は、選択された複数の合成RNAを同時に使用することにより、IgGが仲介するMHCクラスI拘束性エピトープの輸送に続いて、IL−2及びIFN−γの効果的な誘導が促進されることを示す。
【図20】図20は、組換えIgGによるex vivoでのAPCローディングは、ペプチド自体を使用するのに比べ、MHCクラスI−ペプチド複合体の形成及びTc応答の発生においてより効果的であることを示す。
【図21】図21は、選択された合成RNAを同時投与した場合に、クラスI拘束性Tc1応答のプライミングにおいて、クラスI拘束性エピトープのIgG媒介輸送が最も効果的となることを示す。
【図22】図22は、抗ウィルス細胞障害性T細胞の効果的なプライミングには、IgGにより輸送されたクラスI拘束性エピトープをAPCにin vivoで効果的にローディングすることが必要であると共に、選択された合成RNAモチーフによる適切な指示も必要であることを示す。
【図23】図23は、ウィルス性クラスI拘束性エピトープを有する組換えIgG及び選択された合成dsRNAによって免疫感作を行うことにより、感染による攻撃後のウィルス複製を制限できる免疫応答がプライミングされることを示す。
【図24】図24は、Ig−ペプチドに基づく分子の効力を試験するために用いた腫瘍モデルである。
【図25】図25は、腫瘍関連抗原のAPCへの効果的なin vivoローディングと同時に、選択された合成RNAモチーフによって活性化を行うことが、腫瘍成長の効果的な制御及び腫瘍拒絶の誘導のために必要且つ十分であることを示す。
【図26】図26は、腫瘍関連抗原のAPCへの効果的なin vivoローディングと同時に、選択された合成RNAによって活性化を行うことによって、腫瘍関連抗原に対する効果的な免疫応答を誘導できることを示す。
【図27】図27は、腫瘍関連エピトープを有する組換え免疫グロブリンと選択された合成dsRNAモチーフとを共に用いて処理することにより、T細胞受容体マーカーTCRβを提示する腫瘍浸潤リンパ球が、活性化マーカーCD25の発現を獲得したことを示す。
【図28】図28は、腫瘍拒絶に成功した処置マウスが、Tc2免疫を発現すると共に、治療用Ig上の腫瘍関連エピトープに対するTc1応答を発現したことを示す。
【図29】図29は、図示の処置により有効な腫瘍拒絶が誘導されると、その後は同種の腫瘍が生じそうになっても効果的に防御されることを示し、よって効果的な免疫記憶が発現していることが分かる。
【図30A】図30Aは、腫瘍拒絶を生じる図示の処置の結果として出現した免疫が、抗原変異体非存在下での攻撃に対する防御となり、サイトカイン産生細胞の増殖全般に関連していることを示す。
【図30B】図30Bは、腫瘍拒絶を生じる図示の処置の結果として出現した免疫が、抗原変異体非存在下での攻撃に対する防御となり、サイトカイン産生細胞の増殖全般に関連していることを示す。
【図31A】図31Aは、(a)天然IgG(L鎖−H鎖ヘテロ二量体)、(B)CDR(相補性決定領域)3、2、1或いはフレームワーク領域に挿入された抗原(Ag)由来ペプチド、(C)抗原又は断片で置換したVHセグメント、及び(D)抗原又は抗原断片で置換したVHセグメント及びCH1セグメントを示す。
【図31B】図31Bは、IgGペプチド及びFcペプチドを図示する。
【図31C】図31Cは、選択されたヒトIgGバックボーンの特性を示す。
【図31D】図31Dは、H鎖の安定領域の配列、及び予想される構成の概略図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、免疫応答の誘導に有用なモチーフに関する。特に本願は、抗原と共に或いは抗原なしで用いて、B細胞(抗体)成分、及び必要に応じてT細胞成分を含む免疫応答を誘導し、増強し、或いは調節する、非コードRNA(non-coding RNA)モチーフに関する。
【背景技術】
【0002】
ウィルス感染には、多くの場合、正常な状態では通常出会うことの無いRNA種が関係しており、またウィルス感染によりこのようなRNA種が産生されることが多い。このようなRNAは、ゲノムの断片(二本鎖RNAを有するウィルスの場合)か、複製中間体か、ステムループ構造体かのいずれかであり、TLR3(Toll様受容体3)等の自然免疫受容体により認識され、IFN−Iや他の可溶性メディエーターの産生を引き起こす。更に、ポリI:ポリC(pI:pC、或いはpI:C)等、ある種のdsRNAモチーフが、未成熟な樹状細胞をプロフェッショナルAPCとして作用するステージへと活性化することが分かっている。ポリI:ポリCやIFN−Iがタンパク抗原に対する抗体応答に影響を及ぼすことが知られているにも拘わらず、dsRNA免疫調節モチーフに関して得られている情報の多くは自然免疫のモデルから得たものであり、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、その他特定の抗原受容体を欠く細胞サブセットに限定されていた。従って、二本鎖RNAや他のRNA種に関連するモチーフが、適応免疫応答に限られた影響しか及ぼさないのか、それとも強い危険シグナルとして免疫寛容を防ぎ、特定のT細胞の分化方向を決定する作用をするのかはこれまで示されていなかった。更に、免疫応答に対して潜在的に様々な影響力を有するRNA関連危険モチーフが多数存在するのか否かという重大な問題についても議論はなされていない。更に、非コードRNAモチーフがウィルス感染の際のクラスI拘束性免疫応答の誘導を促進できるかどうかは明確にされておらず、最近までは、多くの場合、抗原提示細胞(APC)の不稔感染又は増殖感染に続いて起こると考えられていた。
【0003】
ウィルス感染の際、特定のTリンパ球が、MHC分子によって提示される外来エピトープと接触し、Bリンパ球は可溶性抗原を認識する。リンパ球の増殖や分化によって、特定のエフェクター細胞や記憶細胞から成る適応免疫応答が規定される。免疫応答の初期段階においては、自然免疫は、微生物関連モチーフを認識すると共に、損傷により誘導された内発性危険シグナルをも認識する。この危険シグナルとは、損傷後における特定リンパ球の分化方向や免疫応答の全体的プロフィールを決定するものである。危険シグナルが存在しない場合には、T細胞及びB細胞の応答性が低下し、特に、抗原量が中程度から高度の所で免疫寛容を生じる。このことが無害の抗原と感染に関わる「危険」な抗原とを区別する決定的メカニズムであると提唱されてきた。また、このメカニズムは、これまで抗原−受容体レパートリーのレベルのみにおいて決定されると考えられていた自己と非自己とを区別する免疫システムの戦略に新たな視点を与えている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
適応免疫応答はT細胞及びB細胞のエピトープの認識によって刺激され、自然免疫受容体を介して作用する「危険」シグナルによって形作られる。本願では、非コード二本鎖或いは一本鎖RNAに関連するモチーフが、ウィルス感染に似た免疫応答、即ち炎症促進性(pro-inflammatory)ケモカイン発現の急速な誘導、抗原提示細胞(APC)の増加(recruitment)及び活性化、免疫調節サイトカインの調節、Th1細胞の分化、アイソタイプのスイッチング、クロスプライミングの刺激等、MHCクラスI拘束性免疫応答の誘導に関わる免疫系応答に対して基本的機能を与えるということを示す。また本願では、RNA関連モチーフの不均一性が免疫応答プロフィールに様々な影響を及ぼすことを示す。ウィルス感染に際し特定のRNAモチーフが示す能力である、寛容誘導の阻止能力と免疫防御の効果的構築能力とに基づき、このようなRNA種が強力な「危険シグナル」であることを示す。さらに本願では、選択したRNAモチーフ群をアジュバントとして用いてサブユニットワクチンに対する免疫応答を最適化することを教示する。ウィルス感染の際に産生されるRNA関連モチーフが、自然免疫に短期的影響を与えるのみならず、早期応答と、抗原特異性B細胞及びT細胞の活性化と分化を含む後期適応段階との間を橋渡しするものであることが結論付けられる。
【0005】
本願では、RNAの一本鎖対二本鎖の性質の違いに加えて、オリゴヌクレオチドの組成が自然免疫受容体による非コードRNAモチーフの認識のための重要な決定基であることを示す。更に、不均一なRNAモチーフが、適応免疫に対して強力且つ様々な影響を及ぼし、ウィルス感染の際の免疫応答の特徴の多くを媒介するするものであることを示す。最後に、新たに開示するRNAモチーフが、各種感染症やガンに対して予防的或いは治療的に用いることにより防御メカニズムを効果的に作動させるものであることも示す。
【0006】
本願は2002年3月15日出願の米国特許仮出願第60/364,490号及び2002年9月20日出願の米国特許仮出願第60/412,219号に基づく優先権を主張しており、これら出願を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の実施態様を含む。
【0008】
1.抗原に対する免疫応答を増強する方法であって、二本鎖RNAを含有する組成物を投与することと、前記組成物と前記抗原とを同時投与することとを含む方法。
【0009】
2.抗原が体内に既に存在している場合に抗原に対する免疫応答を増強或いは調節する方法であって、二本鎖RNAを含有する組成物を投与することを含む方法。
【0010】
3.RNAが非コードRNAである、パラグラフ1に記載の方法。
【0011】
4.二本鎖RNAがポリアデニン及びポリウラシルから成る、パラグラフ1又は2に記載の方法。
【0012】
5.二本鎖RNAが、ポリグアニンとポリシトシン、及びポリイノシンとポリシトシンから成る群の一方から成る、パラグラフ1又は2に記載の方法。
【0013】
6.二本鎖RNAがアデニンとウラシルとから成る、パラグラフ1又は2に記載の方法。
【0014】
7.二本鎖RNAがグアニンとシトシン、又はイノシンとシトシンから成る、パラグラフ1又は2に記載の方法。
【0015】
8.Th1細胞及びTc1細胞の応答を増強する、パラグラフ1に記載の方法。
【0016】
9.Tc1細胞応答を誘導する、パラグラフ1に記載の方法。
【0017】
10.B細胞応答を増強する、パラグラフ1に記載の方法。
【0018】
11.前記抗原を別の抗原と同時投与する、パラグラフ1に記載の方法。
【0019】
12.CXCケモカイン及びCCケモカインを誘導する、パラグラフ1に記載の方法。
【0020】
13.MIP−1α、MIP−1β、MIP−3α、及びIP−10を誘導する、パラグラフ12に記載の方法。
【0021】
14.前記組成物の前記投与が、CD11b+単球又はCD11c+樹状細胞を増加させ活性化させることにより、T細胞及びB細胞の応答を増強する、パラグラフ1に記載の方法。
【0022】
15.二本鎖RNA組成物が、抗原提示細胞を増加させることにより免疫応答を増強する、パラグラフ1に記載の方法。
【0023】
16.抗原提示細胞がプロフェッショナルAPCである、パラグラフ1に記載の方法。
【0024】
17.二本鎖RNA組成物がイノシンとシトシンとを含み、CD11c+樹状細胞の効果的な増加を誘導する、パラグラフ1又は2に記載の方法。
【0025】
18.パラグラフ1又は2に記載の方法であって、二本鎖がイノシンとシトシンとを含むRNA組成物及びアデニンとウラシルとを含むRNA組成物から成る群から選択され、該方法がCD11b+単球の効果的な増加を誘導する、パラグラフ1又は2に記載の方法。
【0026】
19.APCが活性化される、パラグラフ15に記載の方法。
【0027】
20.抗原が非感染性抗原であり、RNA MHCクラスI拘束性T細胞が、ポリアデニンとポリウラシルとを含むRNA組成物によりクロスプライミングされる、パラグラフ4に記載の方法。
【0028】
21.RNA組成物を粘膜投与する、パラグラフ4〜7に記載の方法。
【0029】
22.非感染性抗原に対する大量域寛容を阻止する方法であって、ポリアデニンとポリウラシル、若しくはポリイノシンとポリシトシンのいずれかを含む二本鎖RNA組成物と共に前記非感染性抗原を投与することを含む方法。
【0030】
23.非感染性抗原を高用量で投与するか、或いは非感染性抗原が既に体内に存在している、パラグラフ22に記載の方法。
【0031】
24.該用量が、寛容を生ぜしめうる(toleragenic)量の抗原である、パラグラフ22に記載の方法。
【0032】
25.B細胞の不応答を防止する、パラグラフ22に記載の方法。
【0033】
26.組成物や抗原を、各種担体と複合化して或いは複合化せずに、粘膜投与、呼吸器投与、静脈内投与、皮下投与、及び筋肉内投与の一により投与する、パラグラフ1、2及び22に記載の方法。
【0034】
27.Igバックボーンに結合した少なくとも一の抗原ペプチドエピトープを用いて抗原提示細胞にロードすることによりIg−ペプチド分子を形成し、該Ig−ペプチド分子をdsRNAモチーフと共に生体内投与することを含み、エピトープがMHC I経路により効果的にプロセシングされて提示され、その結果、MHCクラスI分子が効果的にロードされ、抗原との生体内での接触に続いて、MHCクラスI拘束性T細胞が効果的に二次増殖する、免疫方法。
【0035】
28.抗原がウィルスである、パラグラフ27に記載の方法。
【0036】
29.ウィルスがインフルエンザウィルスである、パラグラフ28に記載の方法。
【0037】
30.ペプチド−エピトープがrecIgG−NP(Kd)である、パラグラフ27に記載の方法。
【0038】
31.dsRNAがpA:pUである、パラグラフ27に記載の方法。
【0039】
32.T細胞が細胞障害性Tリンパ球である、パラグラフ27に記載の方法。
【0040】
33.抗原との生体内での接触に続くMHCクラスI拘束性T細胞の二次増殖が、組換え抗原を無菌生理食塩水に添加して投与しただけの場合よりも大きい、パラグラフ27に記載の方法。
【0041】
34.IgGバックボーンに結合した少なくとも一の腫瘍関連T細胞エピトープを用いて抗原提示細胞にロードすることによりIgG−ペプチド分子を形成し、該Ig−ペプチド分子をdsRNAと共に生体内投与する、臨床診断後の腫瘍の制御及び処置方法。
【0042】
35.腫瘍関連T細胞エピトープがMHC I経路により効果的にプロセシングされて提示され、その結果、MHCクラスI分子が効果的にロードされ、MHCクラスI−ペプチド複合体が生じる、パラグラフ34に記載の方法。
【0043】
36.腫瘍関連T細胞エピトープに対する免疫応答と腫瘍拒絶を生じる、パラグラフ34に記載の方法。
【0044】
37.dsRNAがpA:pUである、パラグラフ34に記載の方法。
【0045】
38.Ig−Gペプチド複合体及びdsRNAを抗腫瘍治療として繰り返し投与する、パラグラフ34に記載の方法。
【0046】
39.腫瘍拒絶が生じると、Tc1免疫が腫瘍関連エピトープに対して生じる、パラグラフ34及び35に記載の方法。
【0047】
40.IgG−ペプチド及びdsRNAを投与すると、Tc2免疫が腫瘍関連エピトープに対して生じる、パラグラフ34に記載の方法。
【0048】
41.同種の腫瘍関連エピトープに対する有効な記憶応答を更に誘導する、パラグラフ34に記載の方法。
【0049】
42.腫瘍細胞変異体に対する継続的な免疫(continued immunity)を生じる、パラグラフ34に記載の方法。
【0050】
43.抗原に対する抗体応答を増強する方法であって、ヒト又はヒト以外の哺乳類に対して該抗原を、pA:pU、pI:pC及びpC:pG又はそれらの混合物から成る群より選択されるdsRNAと共に投与することを含む方法。
【0051】
44.抗原に対する抗体応答を増強する方法であって、ヒト又はヒト以外の哺乳類に対して該抗原を、pA、pC、pI、pU、p(G,U)、p(C,U)、p(A,C)、p(I,U)、p(C,I)、p(A,U)、p(A,G)、p(A,C,G)、p(A,C,U)及びp(A,G,U)から成る群より選択される一本鎖RNA種の混合物と共に投与することを含む方法。
【0052】
45.ポリアデニン及びポリウラシルから成るdsRNA配列を含む、抗原に対する免疫応答を増強するための組成物。
【0053】
46.組成物が抗原を更に含む、パラグラフ45に記載の組成物。
【0054】
47.前記抗原が既に体内に存在している、パラグラフ45に記載の組成物。
【0055】
48.前記抗原が医薬的に許容される担体に添加されて投与される、パラグラフ45に記載の組成物。
【0056】
49.前記抗原が免疫グロブリンに添加されて投与される、パラグラフ45に記載の組成物。
【0057】
50.前記医薬的に許容されるものがIgGである、パラグラフ48に記載の組成物。
【0058】
51.抗原が腫瘍関連エピトープである、パラグラフ45〜47に記載の組成物。
【0059】
52.抗原がウィルスである、パラグラフ45〜47に記載の組成物。
【0060】
53.抗原が腫瘍関連T細胞エピトープである、パラグラフ51に記載の組成物。
【0061】
54.dsRNAが前記抗原と共に投与される、パラグラフ45〜53に記載の組成物。
【0062】
55.前記dsRNAが前記抗原とは別途に投与される、パラグラフ45〜53に記載の組成物。
【0063】
56.ポリイノシン及びポリシステインから成るdsRNA配列を含む、抗原に対する免疫応答を増強するための組成物。
【0064】
57.組成物が抗原を更に含む、パラグラフ56に記載の組成物。
【0065】
58.前記抗原が既に体内に存在している、パラグラフ56に記載の組成物。
【0066】
59.前記抗原が医薬的に許容される担体に添加されて投与される、パラグラフ56に記載の組成物。
【0067】
60.前記抗原が免疫グロブリンに添加されて投与される、パラグラフ56に記載の組成物。
【0068】
61.前記医薬的に許容されるものがIgGである、パラグラフ59に記載の組成物。
【0069】
62.前記抗原が腫瘍関連エピトープである、パラグラフ56〜58に記載の組成物。
【0070】
63.前記抗原がウィルスである、パラグラフ56〜58に記載の組成物。
【0071】
64.前記抗原が腫瘍関連T細胞エピトープである、パラグラフ62に記載の組成物。
【0072】
65.dsRNAが前記抗原と共に投与される、パラグラフ56〜64に記載の組成物。
【0073】
66.前記dsRNAが前記抗原とは別途に投与される、パラグラフ56〜64に記載の組成物。
【0074】
67.抗原に対する免疫応答を増強させるための医薬の製造のための二本鎖(「dsRNA」)の使用であって、前記dsRNAを前記抗原と共に患者に投与することを含む使用。
【0075】
68.抗原に対する免疫応答を増強させるための医薬の製造のためのdsRNAの使用であって、抗原が既に患者の体内に存在しているときに前記dsRNAを患者に投与することを含む使用。
【0076】
69.dsRNAが非コードRNAである、パラグラフ67又は68に記載の使用。
【0077】
70.二本鎖RNAがポリアデニンとポリウラシルから成る、パラグラフ67又は68に記載の使用。
【0078】
71.二本鎖RNAが、ポリイノシンとポリシトシン、又はポリグアニンとポリシトシンから成る、パラグラフ67又は68に記載の使用。
【0079】
72.二本鎖RNAがアデニンとウラシルを含む、パラグラフ67又は68に記載の使用。
【0080】
73.二本鎖RNAがグアニンとシトシン、又はイノシンとシトシンを含む、パラグラフ67又は68に記載の使用。
【0081】
74.Th1細胞及びTc1細胞の応答が増強される、パラグラフ67〜73に記載の使用。
【0082】
75.抗原に対するTc1細胞の応答が誘導される、パラグラフ67〜73に記載の使用。
【0083】
76.前記方法が抗原に対するB細胞の応答を増強する、パラグラフ67〜73に記載の使用。
【0084】
77.前記抗原が別の抗原と同時投与される、パラグラフ67又は68に記載の使用。
【0085】
78.前記方法がCXCケモカイン及びCCケモカインを誘導する、パラグラフ67又は68に記載の使用。
【0086】
79.前記方法がMIP−1α、MIP−1β、MIP−3α、及びIP−10を誘導する、パラグラフ67又は68に記載の使用。
【0087】
80.前記dsRNAの前記投与が、CD11b+単球又はCD11c+樹状細胞を増加させ活性化することにより、T細胞及びB細胞の応答を増強する、パラグラフ67〜71に記載の使用。
【0088】
81.二本鎖RNA組成物が、抗原提示細胞を増加させることにより、免疫応答を増強する、パラグラフ67〜71に記載の使用。
【0089】
82.抗原提示細胞がプロフェッショナルAPCである、パラグラフ81に記載の使用。
【0090】
83.二本鎖RNA組成物がイノシンとシトシンを含み、CD11c+樹状細胞の効果的増加を誘導する、パラグラフ71に記載の使用。
【0091】
84.前記二本鎖が、イノシンとシトシンとを含むRNA組成物、及びアデニンとウラシルとを含むRNA組成物から成る群より選択され、前記方法がCD11b+単球の効果的増加を誘導する、パラグラフ67又は68に記載の使用。
【0092】
85.前記抗原が非感染性抗原であり、RNA MHCクラスI拘束性T細胞がポリアデニンとポリウラシルを含むRNA組成物によりクロスプライミングされる、パラグラフ67〜70に記載の使用。
【0093】
86.組成物や抗原が、各種担体と複合化され或いは複合化されないで、粘膜投与、呼吸器投与、静脈内投与、皮下投与、及び筋肉内投与の一により投与される、パラグラフ67〜70に記載の使用。
【0094】
87.非感染性抗原に対する大量域寛容を防止するための医薬の製造のためのdsRNAの使用であって、ポリアデニンとポリウラシル、若しくはポリイノシンとポリシトシンのいずれかを含む二本鎖RNA組成物と共に前記非感染性抗原を投与することを含む使用。
【0095】
88.前記非感染性抗原が高用量で投与されるか、或いは既に体内に存在している、パラグラフ87に記載の使用。
【0096】
89.該用量が、寛容を生ぜしめうる量の抗原である、パラグラフ87に記載の使用。
【0097】
90.前記方法がB細胞の不応答を防止する、パラグラフ87に記載の使用。
【0098】
91.Igバックボーンに結合した少なくとも一の抗原ペプチドエピトープを用いて抗原提示細胞にロードすることによりIg−ペプチド分子を形成し、該Ig−ペプチド分子をdsRNAモチーフと共に生体内投与することを含み、エピトープがMHC I経路により効果的にプロセシングされて提示され、その結果、MHCクラスI分子が効果的にロードされ、抗原との生体内での接触に続いて、MHCクラスI拘束性T細胞が効果的に二次増殖する、医薬の製造のためのdsRNAの使用。
【0099】
92.抗原がウィルスである、パラグラフ91に記載の使用。
【0100】
93.ウィルスがインフルエンザウィルスである、パラグラフ91に記載の使用。
【0101】
94.ペプチドエピトープがrecIgG−NP(Kd)である、パラグラフ91に記載の使用。
【0102】
95.dsRNAがpA:pUである、パラグラフ91に記載の使用。
【0103】
96.T細胞が細胞障害性Tリンパ球である、パラグラフ91に記載の使用。
【0104】
97.IgGバックボーンに結合した少なくとも一の腫瘍関連T細胞エピトープを用いて抗原提示細胞にロードすることによりIgG−ペプチド分子を形成し、該Ig−ペプチド分子をdsRNAと共に生体内投与することを含む、臨床診断後の腫瘍の制御及び処置のための医薬の製造におけるdsRNAの使用。
【0105】
98.腫瘍関連T細胞エピトープがMHC I経路により効果的にプロセシングされて提示され、その結果、MHCクラスI分子が効果的にロードされ、MHCクラスI−ペプチド複合体を生じる、パラグラフ97に記載の使用。
【0106】
99.前記方法が腫瘍関連T細胞エピトープに対する免疫応答と腫瘍拒絶を生じる、パラグラフ97に記載の使用。
【0107】
100.dsRNAがpA:pUである、パラグラフ97に記載の使用。
【0108】
101.Ig−Gペプチド複合体及びdsRNAが抗腫瘍治療として繰り返し投与される、パラグラフ97に記載の使用。
【0109】
102.腫瘍拒絶が生じると、Tc1免疫が腫瘍関連エピトープに対して生じる、パラグラフ97に記載の使用。
【0110】
103.IgG−ペプチド及びdsRNAを投与すると、Tc2免疫が腫瘍関連エピトープに対して生じる、パラグラフ97に記載の使用。
【0111】
104.前記方法が、同種の腫瘍関連エピトープに対する有効な記憶応答を更に誘導する、パラグラフ97に記載の使用。
【0112】
105.前記方法が、腫瘍細胞変異体に対する継続的な免疫を生じる、パラグラフ97に記載の使用。
【0113】
106.抗原に対する抗体応答を増強するための医薬の製造におけるdsRNAの使用であって、ヒト又はヒト以外の哺乳類に対して前記抗原を、pA:pU、pI:pC及びpC:pGから成る群より選択されるdsRNAと共に投与することを含む使用。
【0114】
107.抗原に対する抗体応答を増強するための医薬の製造におけるdsRNAの使用であって、ヒト又はヒト以外の哺乳類に対して前記抗原を、pA、pC、pI、pU、p(G,U)、p(C,U)、p(A,C)、p(I,U)、p(C,I)、p(A,U)、p(A,G)、p(A,C,G)、p(A,C,U)及びp(A,G,U)から成る群より選択される一本鎖RNA種の混合物と共に投与することを含む使用。
【0115】
108.ポリアデニン及びポリウラシルから成るdsRNA配列を含む、抗原に対する免疫応答を増強するための医薬の製造におけるdsRNAの使用。
【0116】
109.前記組成物が抗原を更に含む、パラグラフ108に記載の使用。
【0117】
110.前記抗原が既に体内に存在している、パラグラフ108に記載の使用。
【0118】
111.前記抗原が医薬的に許容される担体に添加されて投与される、パラグラフ108に記載の使用。
【発明を実施するための最良の形態】
【0119】
自然免疫の潜在的な役割の理解が進んだ結果、微生物感染時における免疫応答のメカニズムが研究の主要な領域となった。自然免疫細胞は、各種細菌に関連したモチーフ、即ち「外因性」危険シグナルを識別する多種に渡る受容体を有していることが直ちに明らかとなった。このパターン認識イベントの後の自然免疫と適応免疫間の連携は、T細胞及びB細胞の応答性及び応答プロフィールに重要な影響を及ぼす。自然免疫は迅速ではあるが識別性に乏しい。しかしながら、自然免疫は、よりゆっくりと進展しより強力なエフェクターで構成される適応免疫を方向付ける。適応免疫は、体細胞突然変異によって獲得した広範囲に亘るレパートリーを有する。自然免疫と適応免疫とを合せて用いる多重パターン認識戦略によって、免疫識別の規範は、自己/非自己認識から危険/非危険認識へと変化した。精製タンパクの免疫原性が低いこと、微生物モチーフにより免疫メディエーターが誘導されること、及びこれらメディエーター(サイトカイン、ケモカイン、共刺激分子)が適応免疫に対して有する活性の特徴付けは、全てこの概念を支持するものである。
【0120】
本願に開示するように、危険シグナルとしての非コードRNAモチーフの役割を明確にする合理的なアプローチをとったところ、ウィルス感染の際、適応免疫を制御するにあたって前記モチーフが果たす役割の理解に直ちに結び付くものであった。更に、ワクチン接種と共にこれらRNAモチーフをアジュバントとして使用することについて研究を行なった。
【0121】
合成RNAのライブラリーと2段階の戦略を採用し、自然免疫ではなく適応免疫に及ぼす効果を読出しとして利用した。この方法により、RNAの二本鎖の性質に加えて、オリゴヌクレオチドの組成が、この問題に関する役割を果たすことが意外にも見出された。A:Uベースのモチーフは、Th1免疫の作動、IgG2aへのアイソタイプスイッチング(図1A〜1C)、クロスプライミング(図3A〜3E)の各能力が、I:Cベースのモチーフに比べ高いことが示される。先に定義したこのI:Cモチーフは、T2細胞及びB細胞免疫(図1A〜1C)を増強する。dsRNAに関連するC:Gモチーフ、或いは種々雑多なssRNAモチーフは、相補塩基で構成されるssRNAの混合物を用いない限りは、適応免疫に対し低い効果しか示さなかった。これらの結果は、機能的TLR4の非存在下で再現されたことから、この時点でエンドトキシン認識経路と共通の経路は除外することができる。最近になって、TLR3はpI:pCを認識する役割を果たすことがわかってきたが、pA:pUとpI:pCの二種のモチーフによって誘起される免疫応答プロフィールは大きく異なるため(図1A〜1C)、pA:pUとの共通認識経路ではないと考えられる。それよりも、TLR3以外のTLRアイソフォーム及び/又は共受容体が、基本的(rudimentary)免疫レパートリーを連想させるプロセスによって、ヌクレオチドの同一性に基づいてRNAモチーフを識別するプロセスに関係していると考えられる。反復的非メチル化CpGオリゴデオキシヌクレオチドモチーフを認識することがわかったTLR9、或いはTLRのアイソフォームが、dsRNA−モチーフの識別に関与している可能性もある。しかしながら最近の証拠ではTLRの関与は裏付けられていない。dsRNAが誘導する転写因子と共刺激分子のスペクトルは、非メチル化CpGモチーフのスペクトルとが異なるのである。pI:pC及びpA:pUはどちらもCXCケモカインを誘導するため(図3A)、選択的にTh2細胞に結合する能力を有するCCケモカイン等、他のメディエーターが、これらのモチーフによって惹起される異なるThプロフィールの原因となっていると考えられる。
【0122】
データによれば、新規に特徴付けられたpA:pU結合モチーフは、適応免疫応答の、通常はウィルス感染した後にのみに見出される多くの特徴を誘導できると結論される。タンパク抗原(OVAとgp140)及び不活性化インフルエンザウィルスによるT1応答(Th1とTc1の双方)の誘導が示されている(図1〜3)。タンパク抗原に対するMHCクラスI拘束性応答の誘導は(図3D、E)、このRNAモチーフがプロセシングと提示のメカニズムに適合するレベルにまでAPCを活性化するのに十分であったことを示唆しており、クロスプライミングがウィルス感染の主要なメカニズムであることを裏付ける新規な情報を示している。このことはAPCの直接感染よりも、RNA関連危険モチーフが、インフルエンザウィルス等のRNAウィルスの感染の際に細胞障害性Tリンパ球(CTL)が誘導される原因であることを示唆している。免疫応答性の増強は、APCの急速な増加と活性化によって説明できる(図3A〜3E)。pA:pUによって促進されるT1免疫の誘導はアイソタイプスイッチングを伴い、IgG2a抗体の生成を生じる(図1B)。しかしながら、dsRNAは、IgAクラスに対するアイソタイプスイッチングは誘導できなかった。これはTGF−βの阻害と関連性があり(図示せず)、dsRNA危険モチーフが、炎症促進性メディエーターの誘導及び抗炎症メディエーターの下方調節(down-regulation)によって作用することを示唆している。これらの結果は、インフルエンザ等の感染の際に、dsRNAモチーフが適応免疫を形成する重要な(但しこれのみに限定されるものではない)役割と一致する。
【0123】
強力な危険モチーフは、免疫応答性・不応答(寛容)の点で結果に影響を及ぼすはずであるので、免疫不応答がうまく特徴付けられたモデルである、ヒトIgGに対する大量域寛容をdsRNAが阻止するかどうかが検討された。pA:pU及びpI:pCの両者が、適応免疫のモジュレータであるばかりでなく、免疫寛容の強力な阻害剤であることが示された(図4A〜4B)。この観察は、dsRNAが有する特徴パネルを豊かにし、危険モチーフのアジュバンド効果が一般に、少なくとも部分的には免疫不応答の防止によって生じている可能性を開く。最後に、A及びU塩基は天然RNA種に見出されるが、I(イノシン)塩基は見出されないため、データは、ウィルス感染の際の免疫応答に対する潜在的な関連性を有する前者のdsRNAモチーフを示す。
【0124】
危険モチーフとしてのpA:pUの効力は、インフルエンザウィルスによる一次感染に対する制御能力によって示される(図4A〜4B)。自然免疫及び適応免疫の迅速な可動性により説明できるこの特徴は、一次感染の際の非メチル化CpGオリゴDNAモチーフの免疫防御能力を強く想起させる。これを敷衍すれば、自然免疫は異種の或いは外因的に生成された感染関連ポリヌクレオチドモチーフを認識する精巧な能力を有し、それによって適応免疫を調節すると結論される。従って、系内に抗原が存在する場合、dsRNAへの更なる接触は、免疫応答を簡単に、より効果的に働かせることができると考えられ、抗原のクリアランスについての直接的示唆が与えられる。
【0125】
ここに記述する結果に基づくと、dsRNAモチーフは、サブユニット、組換えワクチン或いは不活性化ワクチンと協同するアジュバントとしての理にかなった候補である。特に、pA:pUは、ベクター複製がない場合に、生ワクチンの有益な特徴の内の或るものを提供しているらしく思われる。本願は、粘膜や全身に対してのワクチン接種を行うための、抗原とdsRNAの同時処方を可能にする免疫複合体を開示する。図5A〜5Dに示すように、これら複合体を用いる肺のワクチン接種と癌の免疫治療は、抗体、Tヘルパー及びクラスI拘束性T細胞から成る強力な免疫応答の誘導を生じる。
【0126】
結論として、適応免疫応答に影響を及ぼすRNAモチーフを選択する合理的なアプローチを用いることにより、予期せぬ多様性と新規のRNA関連危険モチーフが定義された。適応免疫応答の体系的な検討により、選択されたRNAモチーフが、自然感染を想起させる広範囲に亘る特徴を組織することが示された。最後に、本願の検討は、免疫不応答、即ち寛容を排除することによる免疫治療のみならず、粘膜或いは全身に対するワクチン接種に使用される可能性を有するこれらRNAモチーフを含む新規な調剤を明確にするものである。
【0127】
A)材料及び方法
1)抗原及び免疫調節剤
一本鎖及び二本鎖合成RNA18種のパネル(表1参照)をシグマ社(Sigma)から購入し、無菌PBSに溶解した。これらのRNAはプールとして或いは個々に使用した。卵白アルブミン(OVA、低エンドトキシン)はシグマ社(A7641)から購入した。コレラ毒サブユニットB(CTB)はカルビオケム(Calbiochem)(カタログ番号227039)から、完全フロイントアジュバント(CFA)はDIFCO(カタログ番号263810)から、ヒトIgG(hIgG)はシグマ社(カタログ番号I4506)から購入した。コンホメーションエピトープを保ち且つ三量体化する能力を有する組換えgp140 HIV抗原は、停止変異(stop mutation)を導入することにより、IIIB株のgp160エンベロープタンパク質から得た。この抗原は、ベルナルド・モス(Bernard Moss)博士(N.I.H.)の厚意により提供されたワクチニアウィルスベクターによってBS−C−1(ATCC)細胞内で発現し、レンチルレクチンセファロースクロマトグラフ(ファーマシア(Pharmacia)、ニュージャージー州ピスカタウェイ)によって精製した。gp140抗原であることは、フィッツジェラルド(Fitzgerald)(カタログ番号20−HG81)から購入したHIVエンベロープ特異的抗体を用いたウェスタンブロット分析によって確認した。インフルエンザウィルス(A/WSN/32H1N1株)はMDBK細胞で増殖させ、上清からショ糖勾配遠心法によって精製した。ウィルスの不活性化のために、ウィルス粒子を攪拌しながら15分間、短波長UV光に曝露した。不活性化は、許容MDCK細胞へのウィルス滴定により確認した。可変領域内にI−Ed−拘束性ヘマグルチニン由来ペプチドSFERFEIFPKE(IgHA)[配列番号1]を有する組換えマウスIgG2bを得て、先に特徴付けたように精製した。
【0128】
【表1】
【0129】
2)動物
6〜8週齢のC57BL/6、BALB/c及びTLR4−/−C3H/HeJ雌性マウスを、ジャクソンラボラトリ(Jackson Laboratories、マサチューセッツ州バーハーバー)から購入し、アライアンス・ファーマスーティカル社(Alliance Pharmaceutical Corp.)で特定の病原体条件に収容した。C57BL/6及びBALB/cマウスにおける観察結果の主要なものは、エンドトキシンに対する応答性を欠損したC3H/HeJマウスにおいて再現された。雌性のSprague Dawleyラット(250〜330グラム)はタコニックファーム(Taconic Farms)から購入し、同様の条件下に置いた。
【0130】
3)免疫感作、攻撃、及びウィルス力価の測定
マウスとラットは前述のように各々気管内点滴、噴霧投与によってプライミングし、マウスの場合は、鼻腔内に二週間の間隔で二回追加免疫を行った。大量域寛容の誘導のために、それらのマウスを静注によってプライミングした。最後に、強い免疫応答を誘導するために、マウスをCFAで乳化した抗原の皮下注射により免疫感作した。プライミング、追加免疫、或いは寛容の誘導に用いた抗原の量は、OVA−100μg、HIV gp140−10μg、hIgG−200μg、ショ糖精製UV−WSN−20μgであった。合成RNAは、一用量につき40〜50μgの量を、抗原と共に或いは抗原なしで、SCL COMPLEXESに添加し或いは添加せずに用いた。CTBの一用量当たりの含有量は10μgであった。抗原は、生理食塩水に添加して導入するか、或いは処方の際にSCLマトリクスと適合する不活性ビヒクルであるパーフルオロカーボン(パーフルブロン(perflubron)(未希釈なパーフルオロオクチルブロマイド)、リクイベント(Liquivent()、アライアンス・ファーマスーティカル社)に添加して導入する(点滴或いは噴霧投与の全量は40〜45μL)。
【0131】
ウィルス攻撃のために、C57BL/6及びTLR4−/−C3H/HeJマウスを、メトファン麻酔下で亜致死量(TCID50:104組織培養感染量50%)のWSNウィルス生菌に経鼻感染させた。感染5日後、マウスを殺し肺を摘出し、ホモジネートして−70℃で保存した。ウィルス力価は、許容MDCK細胞による試料の段階希釈液を48時間インキュベートし、次いでニワトリ赤血球細胞(アニマルテクノロジー社から入手)による標準血球凝集反応により測定した。終点力価は3回の測定の補間によって評価し、器官当りのTCID50として表した。
【0132】
4)免疫複合体
リン脂質を主な賦形剤として短鎖脂質複合体(「免疫複合体」)を得る技術プロセスは噴霧乾燥であった。ここではこのプロセスのより簡略化したバージョンを用いた。即ち、リン脂質を水にホモジネートし(リポソーム或いはミセルの形成のため)、賦形剤と活性剤を混合し、次いで噴霧乾燥した。詳細には、噴霧乾燥の直前に、2種の調製物AとBを混合して水性組成物を調製した。調製物Aは、0.14gのジオクタノイルホスファチジルコリン(アバンティポーラーリピッズ社(Avanti Polar Lipids))を23mLの温DI水に溶解したミセル調製物を含んでいた。このリン脂質ミセル調製物に、0.0357gのCaCl2・2H2Oと0.714grのラクトースを溶解した。調製物Bは、20mgの卵白アルブミン(シグマ社)と5mLのPBSに溶解した4mgのpA:pU(エンドトキシンは含まず)とを含んでいた。フィード用混合物(2mL調製物A+調製物B)を標準B−191ミニ噴霧乾燥機によって次の条件で噴霧乾燥した。入口温度70℃、出口温度43℃、アスピレータ90%、ポンプ2.2mL/分、窒素流量2400L/時間。得られた複合体のPL:OVA:pApU:CaCl2・2H2O:ラクトースの重量比は12:20:4:3:61であった。
【0133】
5)抗体及びT細胞応答の測定
抗体応答はELISAによって測定した。即ち、ウェルを抗原(2μg/mLのgp140、8μg/mLのショ糖精製ウィルス、10μg/mLのhIgG又は10μg/mLのOVA)でコーティングし、シーブロック(SeaBlock)(ピアース社(Pierce)、イリノイ州ロックフォード、カタログ番号37527)でブロッキングした。血清と気管支肺胞洗浄液の段階希釈液は、室温で少なくとも2時間インキュベートした。洗浄後、アルカリホスファターゼ(シグマ社、カタログ番号A7434)結合抗マウスIgG抗体を用いたアッセイを行い、基質(pNPP、シグマ社、カタログ番号N2765)を添加し、ソフトマックス(SoftMax)ソフトウェアを備えた自動ELISAリーダー(モルキュラーデバイス社社(Molecular Devices)、ThermoMax)で測定した。
【0134】
細胞応答の測定のために、脾臓を70ミクロンナイロンファルコンストレーナ(ベクトンディッキンソン社(Becton Dickinson)、カタログ番号352350)に付し、次いで赤血球溶解緩衝液(シグマ社、カタログ番号R7757)によって赤血球を溶解することにより脾臓細胞浮遊液を得た。肺組織をコラゲナーゼ(シグマ社、カタログ番号C9891)で消化し、次いでフィコールパーク(Ficoll-Paque)(アマシャムファルマシア社(Amersham Pharmacia)、カタログ番号17−1440−02)勾配遠心によって、肺関連脂質組織からリンパ球を単離した。T細胞応答はELISPOT分析によって測定した。96ウェルの45ミクロン混合セルロースエステルプレート(ミリポア社(Millipore)、カタログ番号MAHA S4510)を、4μg/mLのラット抗マウス抗IFNγ、抗IL−2或いは抗IL−4モノクロナール抗体(BDファーミンジェン社(PharMingen)、カタログ番号554430、カタログ番号18161D、カタログ番号554387)でコーティングした。10%FCSを含む無菌生理食塩水37℃で1時間処理しブロッキングした後、脾臓細胞浮遊液を抗原或いはペプチドと共に、又はなしで、ウェル当たり5×105細胞添加した。肺リンパ球の場合は、刺激の前にエフェクター細胞とマイトマイシン処理した脾臓刺激細胞とを1:1で混合した。刺激のために、段階的に量を変えた各種抗原(OVA、gp140、hIgG、或いはショ糖精製WSNウィルス)、或いはペプチド(クラスII拘束性HA SFERFEIFPKE[配列番号1]、或いはクラスI拘束性SIINFEKL[配列番号2]と前述のHIV V3由来R10Kペプチド)を用いた。刺激から72時間後、ビオチン化ラット抗マウスサイトカイン抗体(BDファーミンジェン社)、次いでストレプトアビジン−HRP(バイオソース社(BioSource Int.)、カリフォルニア州カマリロ)と不溶性AEC基質を用いたアッセイを行った。結果は多重パラメータ解析ソフトウェア(イメージプロ(Image Pro)、メディアサイバネティックス社(Media Cybernetics))を備えた自動イメージングシステム(ナビター/マイクロメイト(Navitar/Micromate))を用い測定した。
【0135】
6)ケモカイン遺伝子の発現の測定
前日に合成RNAで処置したマウスと対照マウスの肺におけるケモカインの発現量を、次に記述するDNAアレイ技術を用い測定した。全RNAをRNeasyキット(キアゲン社(Qiagen)、カリフォルニア州バレンシア)を用いて肺から単離した。このRNAをRNase−フリーDNaseI(ストラタジーン社(Stratagene)、カリフォルニア州サンディエゴ)で処理し更に精製した。DNAアレイはスーパーアレイ社(SuperArray Inc.、メリーランド州ベサダ)のNonrad−GEArrayキットを用い行った。即ち、cDNAプローブをビオチン−16−dUTPを含有するdNTPmixと共にMMLV逆転写酵素を用いて合成した。GEArray膜を68℃で1〜2時間プリハイブリダイゼーションした。ハイブリダイゼーションは、ビオチン標識cDNAと共に膜をインキュベートすることにより行った。ハイブリダイズした膜を、2×SSC−1%SDSで2回、0.1×SSC−0.5%SDSで2回洗浄した。膜をアルカリホスファターゼ抱合型ストレプトアビジン(バイオソース社、カリフォルニア州カマリロ)と共に更にインキュベートし、最終的に、CDP−Star化学発光基質を用い現像した。シグナルの強度は、Gel−Proソフトウェアを備えたImage−Pro解析システム(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリングス)によって測定した。
【0136】
7)フローサイトメトリー
前日に合成RNA又は生理食塩水を用い処理をしたマウスの肺から得た細胞浮遊液を、前述のように、コラゲナーゼ消化とフィコール勾配遠心によって調製した。細胞を1%(v:v)マウス血清(シグマ社、カタログ番号M5905)と1%(w:v)ウシアルブミン(フラクションV、シグマ社、カタログ番号A3059)を含むリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁し、PE標識ラット抗マウスCD11b(ファーミンジェン社、カタログ番号01715A)、PE標識ハムスター抗マウスCD11c(ファーミンジェン社、カタログ番号09705A)、或いは適切なPE標識アイソタイプ対照(ファーミンジェン社、カタログ番号11125A又は11185A)を、106個の細胞に対して1μgの抗体となる濃度で氷上で40分間染色した。分析はベクトンディッキンソンFacsCalibur装置によって行った。ヨウ化プロピジウムを用い、生育不能細胞をゲートアウトした。
【0137】
8)磁気分離及び養子免疫細胞移入
CD11c+樹状細胞等のプロフェッショナルAPCを、BALB/cマウスの脾臓から、ラット抗マウス抗CD11c抗体(ミルテニイバイオテック社(Miltenyi Biotech))を結合させ磁気ビーズを用いて分離した。即ち、単一細胞浮遊液を、MACS緩衝液(BSAとEDTA)に107細胞/mLで再懸濁し、磁気ビーズと共に氷上で15’インキュベートし、洗浄し、磁気カラムに通した。溶出前にカラムを3回洗浄し、次いで2回連続して洗浄し、50μg/mLのRNAモチーフ又は5ng/mLのrIL−12(バイオソース社、カリフォルニア州カマリロ)と共に、又はなしで100μg/mLのIgHAで一夜インビトロパルシングした。あるいは、ラット抗マウスCD40モノクロナール抗体(BDファーミンジェン社)を事前にコーティングしたウェル上で、細胞をIgHAと共に一夜インキュベートした。細胞を洗浄し、平衡無菌生理食塩水に再懸濁し、皮下注射によってナイーブBALB/cマウスに養子免疫細胞移入した(2.5×105APC/マウス)。前述のようにHAクラスII拘束性ペプチドによって刺激した後、T細胞応答を第14日にIL−2 ELISPOT分析によって測定した。
【0138】
9)統計解析
免疫応答の大きさは、値の正規分布と等分散を仮定し、t検定を用いて比較した。
【0139】
B.結果
1)免疫反応を調節するRNAモチーフの系統的定義
ウィルス感染の際には、一過性の非通常RNA種が生成され、「危険」シグナルとして活動する。従って、複数の多様なRNAモチーフが生来の免疫細胞によって認識され、適応免疫応答を大きく調節すると仮定された。この仮定を系統的な原理から検証するために、合成一本鎖及び二本鎖RNAモチーフのライブラリーを、経気道投与タンパク抗原(OVA)に対する特異的IgG応答を調節する能力に関してスクリーニングした。プロセスを簡略化するために、スクリーニングを次の2ラウンドに設定した。(1)ラウンド1はRNA種のプールを用い(表1)、(2)第2ラウンドでは免疫応答に最大の影響を与えるプール内の要素を詳細に調べる。
【0140】
本発明の二本鎖RNA(dsRNA)又は一本鎖RNA(ssRNA)は、次の方法によりシグマ社で作成した。
ssRNA:ポリヌクレオチド(ポリA、ポリU)は、ヌクレオチドとポリヌクレオチド−ホスホリラーゼを用い酵素的に調製されるが、調製プロセスには動物由来の材料は入らない。dsRNA:ポリアデニル酸(ポリA、pA)をポリウリジル酸(ポリU、pU)と共にアニール。一般に、本発明のdsRNA及びssRNAはホモポリマーであり、dsRNAの場合は、単一の塩基或いはヌクレオチド(例えば、アデニン)が一本の鎖を一貫して形成し、その相補が他の鎖を一貫して形成する。ssRNAの場合、一本鎖は同一のヌクレオチドで一貫して形成される。しかしながら、混合ヌクレオチド(dsRNAの場合はその相補も)で形成されたdsRNA或いはssRNA組成物の使用は、本発明の範囲内である。本発明のdsRNA及びssRNA組成物は、塩基/ヌクレオチドであるアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、ウラシル(U)、及びイノシン(I)を含む。表1及び図8AのRNA組成物は、実施例で用いられる各種RNA組成物を説明するものである。本発明のRNA組成物は、実施例27で調製され精製された。
【0141】
本発明で用いられる各種RNA鎖は、一般に長さが100〜2000の塩基対であるが、1〜20、20〜40、40〜60、60〜80、80〜100、1〜100、100〜200、200〜300、300〜400、400〜500、500〜600、600〜700、800〜900、1000〜1100、1100〜1200、1200〜1300、1300〜1400、1400〜1500、1500〜1600、1600〜1700、1700〜1800、1800〜1900、1900〜2000、2000〜2100、2100〜2200、2300〜2400、2400〜2500、2500〜3000、3000〜4000、4000〜5000、5000〜10000の塩基対であってもよく、また長さが10000より長い塩基対及び/又はそれらの混合物であってもよい。
【実施例1】
【0142】
実施例1:標準抗原(OVA)に対する抗体反応に及ぼすRNAモチーフ各種プールの影響
各RNAプール(表1)が適応免疫に与える影響を、OVAの経気道同時免疫感作C57B1/6マウスを用いて測定した。「材料及び方法」の章に記載のように、抗体反応は、IgG終点力価(n=4/群)における平均±SEMとして示す。対照として、無菌PBSに添加したOVA、コレラ毒サブユニットB(CTB)と組み合わせたOVA、更にPBSだけのものを用いた。図1Aに示すように、dsRNAに対応するプールが、抗体反応に最大の影響を与え、この特定の免疫を実質的に増強した。一方、互いに相補的な一本鎖種の混合物については、この増強は部分的なものにとどまった。
【0143】
これは、残基の性質とRNAの二次構造の双方により、特定のB細胞応答に影響する「危険」モチーフとしての作用能力が決まることを示す。
【実施例2】
【0144】
実施例2:OVAに対する抗体反応の誘導に与える種々のdsRNAモチーフの個別の作用
RNAプールの代わりに個々のdsRNAを用いた以外は前記実施例と同様に「材料及び方法」の章に記載の方法で実験を行った。結果を図1Aと同様の仕方で図1Bに示す。この結果は、独立した2種類の実験を体現しているものである。INSET:OVAに対する平均IgG2a力価と平均IgG1力価の比。左から右への順序はメインパネルのものと同じである(PBS OVA、CTB OVA、pC:pG OVA、pI:pC OVA及びpA:pU OVA)。この2ラウンド目のスクリーニングにおいては、図1Bに示すように、二本鎖RNAとして構成された2種類のモチーフ、即ちpA:pU及びpI:pCが、C57BL/6マウスにおける特定の抗原に対するIgG応答の発現に大きな影響を与えることが示されている。エンドトキシンに対する応答性が低いTLR4−/−C3H/HeJマウスでも同様の結果が得られた(図示せず)。
【0145】
従って、抗体反応の大きさ及びプロフィールに影響を及ぼす能力はRNAモチーフによって異なる。
【実施例3】
【0146】
実施例3:OVAと共に個別のdsRNAモチーフを用いて誘導されるT細胞応答の大きさ及びプロフィール
ELISPOT分析により得られた結果は、脾臓1個当りのIFN−γ及びIL−4スポット形成コロニー(SFC)の数の平均±SEMで示す(n=4/群)。図1Cに示すように、pA:pUとpI:pC(40μg、「材料及び方法」参照)の両方が特定のT細胞応答に対する増幅効果を有していた。驚くべきことに、特定の抗原に対するT細胞応答のプロフィールはRNA残基の性質に依存しており、これは、免疫系がRNA関連危険モチーフを区別できることを示している。A残基及びU残基を含有するRNAモチーフは、I及びCを含有するモチーフよりも、C57BL/6マウスにおけるIFN−γ−産生Th1細胞(図1C)の分化を方向付けることができる。この結果は、IgGアイソタイプの誘導が異なることを反映しており、Thプロフィール(図1B−INSET)と一致している。
【0147】
Tヘルパー応答の大きさ及びプロフィールへの影響はdsRNAモチーフ毎に異なると結論される。
【実施例4】
【0148】
実施例4:ウィルス抗原(HIV組換えgp140タンパク質)に対する抗体反応に及ぼす特定のdsRNAモチーフの影響
図2Aに示すように、HIV gp140(10μg、「材料及び方法」参照)断片に対する抗体反応に及ぼす影響を、気道を抗原のみで感作した或いは抗原と共にpA:pU(40μg、「材料及び方法」参照)で感作したC57BL/6マウスを用いて測定した。結果はIgG終点力価(n=3/群)の平均±SEMで示す。
【0149】
その結果、実際に用いられる可能性のあるウィルス抗原に対する抗体反応が、新規なdsRNAモチーフにより増強されることがわかった。
【実施例5】
【0150】
実施例5:全UV不活性化インフルエンザウィルス(A/WSN/32 H1N1株(UV−WSN))に対する抗体反応に及ぼす特定のdsRNAモチーフの影響
実施例4に示すように、UV不活性化WSNウィルス(UV−WSN)(20μg、「材料及び方法」参照)のみによる粘膜免疫感作、或いは該ウィルスと一緒に各dsRNAモチーフ(50μg)を用いて粘膜免疫感作を行った後、インフルエンザウィルス特異IgG抗体を測定した。対照として、同じ株のインフルエンザウィルス(n=4/群)による感染後の抗体反応を用いた。結果は、図2BにIgG終点力価の平均±SEMとして示す。
【0151】
この結果、全不活性化微生物のウィルス抗原に対する抗体反応は、新規なdsRNAモチーフにより増強されることがわかった。
【実施例6】
【0152】
実施例6:特定のdsRNAモチーフの同時投与による、全体を不活性化したインフルエンザウィルスに対するT細胞応答の増強
全インフルエンザウィルスに対するT細胞応答を、脾臓細胞のELISPOT分析により測定し、バックグラウンドを引いたIFN−γ、IL−4及びIL−2 SFC(平均±SEM、n=4/群)で示す。pA:pUを用いた場合の抗原に対するT細胞応答を、抗原のみで免疫感作を行った後の応答、或いはインフルエンザウィルス感染後の応答と比較した(図2C参照)。
【0153】
従って、実施例4〜6に示すように、dsRNAが抗体反応に与える影響は、別の抗原、即ちHIVエンベロープタンパク質(組換えgp140)や全不活性化インフルエンザウィルス(図2A、B)を用いて別々に確認した。実際には、pA:pUは、pI:pCよりも、インフルエンザウィルスに対する特定の抗体の力価を、感染により惹き起こされたのと同レベルまで回復させた(図2B)。更に、pA:pUは、不活性化したウィルスでの免疫感作において、自然感染による応答レベルまでT細胞応答を回復させたことは重要である(図2C)。このように、各RNAモチーフは、これまで知られていない広範囲の影響をT細胞応答及びB細胞応答に与えることがわかった。
【0154】
2)dsRNAに関連するモチーフは、プロフェッショナル抗原提示細胞の増加と活性化を調節する。
dsRNA関連危険モチーフ(pA:pU、pI:pC等)は自然免疫成分を介して間接的にT細胞応答に影響を及ぼすと仮定した。この仮説を検証するため、RNA投与後の肺リンパ球様組織におけるケモカイン遺伝子の発現を決定した。
【実施例7】
【0155】
実施例7:RNAモチーフによるケモカイン遺伝子の局所的アップレギュレーション
RNAモチーフによるケモカイン遺伝子の局所的アップレギュレーションを、経気道処理の1日後、DNAアレイ技法により測定した(材料及び方法「ケモカイン遺伝子発現の測定」参照)。結果を、非処理マウスの肺組織で測定された発現レベルに対する増加倍率で示す。dsRNAにより惹き起こされたケモカインの発現を、LPSにより誘導されたものと比較した。Th1細胞及びTh2細胞と選択的に結合するケモカインはそれぞれ、実線及び破線で囲って示した(図3A)。
【0156】
DNAアレイ技法による測定の結果、IP−10、MIG、MIP−1α、MIP−1β及びMCP−1がpA:pUによってもpI:pCによっても強く誘導されることがわかった(図3A参照)。しかしながら、Th2細胞により選択的に発現する受容体と結合できるケモカインであるRANTES、MCP−3及びCCの発現を惹き起こしたのはpI:pCだけであった。LPSは異なるケモカインの発現を誘導した、即ちCXCケモカインであるMIG及びMIP−1α、並びにCCケモカインであるTCA−3のアップレギュレーションを誘導した(図3A参照)。この結果、事前には予測できなかったことであるが、特定のdsRNAモチーフによって、ケモカインの複雑なプロフィールが惹き起こされた。
【実施例8】
【0157】
実施例8:dsRNA処理マウスの肺におけるプロフェッショナルAPCの増加
dsRNA処理したマウスの肺におけるプロフェッショナルAPCの増加を、処理1日後、FACS分析により評価した。結果を、肺間質組織における全細胞数に対するCDllc+細胞数及びCDllb+細胞数の百分率(n=4/群)として図3Bに示す。CD11b+(単球)はpA:pUとpI:pCとにより増加するが、これはケモカインのアップレギュレーションと一致する(実施例7参照)。対照的に、CD11c+樹状細胞の増加を有効に誘導したのはpI:pCだけであった。dsRNAモチーフは投与部位におけるAPCを増加すると結論される。
【実施例9】
【0158】
実施例9:dsRNAモチーフによるプロフェッショナルAPC(樹状細胞)の活性化
dsRNAモチーフによるプロフェッショナルAPCの活性化を次の方法で確認した。まず、ex vivoで抗原と共にdsRNAを用いてCD11c+細胞のパルシングを行い、ナイーブBALB/cマウスに養子移入実験を行い、T細胞応答を測定した(図3C)。対照として用いたものは、抗原パルスAPC、或いはrIL−12と抗CD40mAbとで共刺激した抗原付加(loaded)であった。結果は、ELISPOT分析で見積もられる脾臓中のIL−2SFCの数として図3Cに示す。
【0159】
この結果、dsRNAモチーフは、増加作用を有するのに加え、APCを活性化することがわかった。
【実施例10】
【0160】
実施例10:BALB/cマウスにおける、dsRNAモチーフにより刺激される、ウィルス抗原に対するMHCクラスI拘束性T細胞のクロスプライミング
dsRNAモチーフにより刺激されるクロスプライミング(APCが、クラスI拘束性T細胞を感染なしでプライミングする能力を得る特別な状況をいう)を、BALB/cマウスを用いて検討した。マウスは、人工的に組換えを行ったHIV gp140抗原(10μg)と共にpA:pUで処理して用いた。検討は、MHCクラスI拘束性コグネイトペプチドを用いたin vitro刺激によるELISPOT分析により行った(「材料及び方法」参照)。対照として、用量を合わせたgp140抗原を用いた。結果は、脾臓1個当りのIFN−γ及びIL−4SFCの数の平均±SEM(n=4/群)として図3Dに示す。
【0161】
dsRNAモチーフは、実際に用いられる可能性のある非感染性抗原に対するMHCクラスI拘束性の誘導を促進すると結論される。
【実施例11】
【0162】
実施例11:C57BL/6マウスにおける、dsRNAモチーフにより刺激される、OVAに対するMHCクラスI拘束性T細胞のクロスプライミング
dsRNAモチーフにより刺激されるクロスプライミングをC57BL/6マウスを用いて検討した。マウスは、全OVAと共にpA:pUで処理して用いた。検討はMHCクラスI拘束性ペプチドを用いたin vitro刺激によるELISPOT分析により行った(「材料及び方法」参照)。対照として、用量を合わせたOVA抗原又は無菌PBSを用いた。結果は、脾臓1個あたりのIFN−γ及びIL−4SFCの数の平均±SEM(n=4/群)として図3Eに示す。
【0163】
dsRNAモチーフは、実際に用いられる可能性のある非感染性抗原に対するMHCクラスI拘束性の誘導を促進すると結論される。
【0164】
pA:pU及びpI:pCの粘膜投与後の肺間質細胞のFACS分析により、CD11b+単球が迅速に増加すること、CDllc+樹状細胞についても増加することがわかった(図3B)。また、ナイーブマウスからのCD11c+DCを抗原及びpA:pU或いはより少ないpI:pCと共にin vitroでインキュベートしたところ、これらは活性化されたが、これは、抗原でパルスした細胞をBALB/cレシピエントに養子移入したことにより、クラスII−拘束性T細胞免疫の増強が惹き起こされたためである(図3C)。同様の増強が抗CD40抗体或いはIL−12と共にAPCをインキュベーションした場合にも測定された。最後に、組換えHIVエンベロープタンパク質(gp140)及びOVAで粘膜予防接種を行った場合にも、pA:pUは、強いCD8+T細胞促進効果を有していた(図3D−E)。これは、それぞれHIVエンベロープタンパク質及びOVAからの特徴付けられたMHCクラスI拘束性ペプチドを用いたELISPOT分析により示された。このように、dsRNAは、プロフェッショナルAPCの分化を惹き起こしてMHCクラスI拘束性T細胞のクロスプライミングに適した段階へ導く能力を有する。この種の免疫応答は通常、ウィルス感染の場合にのみ起こる。決定したdsRNAモチーフを用いれば、ベクター複製による副作用を伴う生ワクチンベクターは不要とすることができる。更に、これらデータは、RNAモチーフが自然免疫の要素に大きな影響を与える、即ちRNAモチーフは適応免疫応答を調節する能力を有することを示している。
【0165】
3)dsRNAモチーフは、大量域寛容の誘導を阻害し、抗ウィルス防御免疫を誘導する。
危険分子は、無害の抗原と、感染プロセスに関連する抗原とを区別するのに関与している。高用量の場合、非感染性精製タンパク抗原は不応答即ち免疫寛容を誘導する。自己或いは無害の抗原に対して寛容を獲得する中心的な方法は「免疫無視(immunological ignorance)」或いは「免疫寛容」である。前者では、抗原は、空間的分離によりAPCにアクセスできない。後者では、抗原はAPCにアクセスでき、細胞内に取り込まれてプロセシングされるが、共刺激が少ない場合、エピトープが提示される。正味の結果が、T細胞のこのレベルにおける免疫不応答即ち寛容となり得る。感染や免疫攻撃の場合、「免疫無視」や「寛容」を防ぐメカニズムが存在する。このようなメカニズムは、共刺激分子や炎症性ケモカイン、炎症性サイトカインの発現の活性化を伴う、APCの新規な移動パターンの誘導により発生する。その結果、「危険分子」が存在することによって生じた環境において、免疫系が曝されている全ての抗原に対して、無視や寛容よりもむしろ強い免疫応答が生じる。例えば、腫瘍関連抗原は、免疫エフェクターにより無視されたり寛容原性との関連において提示されることも多い。このような抗原に対する免疫受容能を回復するための手段の直接的実用化は、抗癌治療において有意義である。pA:pUモチーフ及びpI:pCモチーフの危険シグナルとしての適格性を調べるため、hIgGの静脈接種による寛容モデルを用いた。
【実施例12】
【0166】
実施例12:dsRNAモチーフはヒトIgGを注射したマウスにおける大量域寛容を阻害する
まず、マウスに、標準的な寛容原性用量(200μg)のhIgGのみを静注し(黒印)、或いはこれと共にpI:pC或いはpA:pU(40〜50μg)を静注し(白印;図4A参照)、その後、免疫原性用量(50μg)のhIgGをCFAに乳化させたものを皮下注射し追加免疫を行った。hIgGに対する抗体の力価を、追加免疫後、異なる時間間隔でELISAにより測定した。対照として、CFAに添加したhIgGで免疫感作したマウスを用いた。最大力価(破線)を示す。結果は、終点力価の平均±SEM(n=5/群)として図4Aに示す。
【0167】
この結果、CFA中のhIgGによる追加免疫後の抗体力価で示されるように、生理食塩水中のhIgGと共にpA:pU或いはpI:pCを同時接種することにより、B細胞不応答の誘導が阻止されることがわかった(図4A)。dsRNA関連モチーフは、このプロトタイプの抗原に対し、より高い一次応答を誘導すると共に二次応答を助ける(rescue)。同様に、T細胞プロフィールの評価から、IL−4及びIL−2の産生がdsRNAの同時投与により部分的に回復したことがわかった。
【実施例13】
【0168】
実施例13:個々のdsRNAモチーフ毎に、インフルエンザウィルス感染に対する免疫防御を高める能力が異なる。
危険モチーフは、免疫防御の防御体制を即座に高める能力を有すると仮定した。従って、pA:pUとpI:pCが、インフルエンザウィルスの初期感染の進展にどのような影響を与えるかについて調べた。
【0169】
マウスを、亜致死用量のインフルエンザウィルスによる肺感染の1日前及び1日後に、呼吸器系を介してpI:pC、pA:pU又は生理食塩水で処理した。5日目、肺組織のウィルス力価を概算し、器官1個あたりの全感染ユニットで示した(平均±SEM;n=6/群;結果は、C3H/HeJ TLR−4−/−マウス及びコンピテントマウスにおける2種類の独立した試験のものである)。
【0170】
図4Bから、気道をRNAモチーフで処理したマウスは亜致死量のインフルエンザウィルスに感染したことがわかる。感染5日後、肺のウィルス力価を定量した。同様の結果がC57BL/6マウス及びTLR4−/− C3H/HeJマウスでも得られた(図示せず)。尚、dsRNAは、肺のウィルス力価の有効な減少をもたらすのに効果的である。驚くべきことに、pA:pUは、肺ウィルス力価の抑制においてpI:pCよりも非常に有効性が高く、これが更に、dsRNA関連危険モチーフを区別する免疫系の能力を高める。このように、免疫記憶がない状態において、dsRNAモチーフは、ウィルス感染に対する有効な初期応答性を高めることができる。
【0171】
4)RNA危険モチーフとの同時被包化(co-encapsulation)によるタンパク抗原に対する免疫の増強
非定式化サブユニットワクチン(一般には精製したタンパク抗原)に対する免疫応答は最小規模のものであるため、同じ微小構造に含まれるAPCを抗原とdsRNA危険モチーフとに生体内で同時接触させ、更に良い結果が得られるかを調べた。この試験のため、プロトタイプの抗原(OVA)をpA:pU或いはpI:pCと組合せ調製し、賦形剤として生体適合性があり且つ免疫学的に不活性なリン脂質(ジオクタノイルホスファチジルコリン等)及び乳糖を加えて短鎖脂質複合体(「SCL」)の形態とした(「材料及び方法」参照)。短鎖脂質複合体に調製したOVA+pA:pU或いはpI:pCをC57BL/6マウスの気道に投与した際の抗体反応を測定した所、この抗体反応は、生理食塩水中の非定式化抗原で免疫感作したマウス、或いはdsRNAモチーフなしで調製しSCL複合体とした抗原で免疫感作したマウスの抗体反応に比べ非常に高かった(図5A)。
【実施例14】
【0172】
実施例14:モデル抗原(OVA)のみをロードした短鎖脂質複合体、或いはモデル抗原(OVA)とdsRNAモチーフとをロードした短鎖脂質複合体
短鎖リン脂質からなり、モデル抗原(OVA)のみをロードした短鎖脂質複合体、及びモデル抗原(OVA)とdsRNAモチーフとをロードした短鎖脂質複合体を作成し、C57BL/6マウスを用いて試験した(図5A)。抗体反応はELISAで測定した。結果は、経気管免疫感作2週間後に行ったIgG終点力価の平均±SEM(n=4/群;データは独立した2種類の測定結果である)で示す。対照として、PBS中のOVAと、OVAをCTB(コレラ毒B)と組合せ調製して短鎖脂質複合体(ジオクタノイルホスファチジルコリン)としたものとを用いた。この結果、RNAモチーフの免疫特性を保存し抗原及びdsRNAを含む分子複合体が作成され、これは実用に耐えるものであることが分かった。
【実施例15】
【0173】
実施例15:C57BL/6マウスにおける、dsRNAモチーフと組合せ調製したOVAによる免疫感作後の全OVA抗原又はクラスI拘束性優性OVAペプチドに対する局所(肺)T細胞応答及び全身性(脾臓)T細胞応答
図5Bは、C57BL/6マウスにおける、全OVA抗原又はクラスI拘束性優性OVAペプチドに対する局所(肺)T細胞応答及び全身性(脾臓)T細胞応答を測定した結果を示す。マウスは、OVAのみを短鎖脂質複合体(ジオクタノイルホスファチジルコリン)としたもの、或いはOVAとpA:pUとを短鎖脂質複合体(ジオクタノイルホスファチジルコリン)としたもので免疫感作した。分析はELISPOTにより実施し、結果はIFN−γSFC/器官(平均±SEM;n=4/群)として示した。
【0174】
興味深いことに、CTBは、短鎖脂質複合体組合せ調製物に対して、限られたアジュバント作用しか示さなかった。先の結果と一致しているが、T1免疫の誘導は、図5Bに示すようにpA:pU粒子においてのみ測定され、pI:pCでは測定されず、pI:pCはT2免疫の増強を示したのみであった(図示せず)。更に、pA:pUと抗原の組合せ調製物(「材料及び方法」参照)に対するT細胞応答により、重要な局所的成分が示された(図5B)。最後に、よく規定されたクラスI拘束性SIINFEKL[配列番号2]ペプチドを用いると、pA:pUは、SCL複合体と協同して、クロスプライミングを促進する能力を維持することが確認された(図5B)。
【実施例16】
【0175】
実施例16:dsRNAモチーフを組合せ調製したモデル抗原(OVA)をロードしたSC脂質複合体の経粘膜予防接種に対するスプラーグ・ドーリー(Sprague-Dawley)ラットの全身性及び局所的抗体反応
OVAとdsRNAとを組合せ調製した脂質複合体でラットの免疫感作を行った。対照として、抗原を含まないSC脂質複合体、OVAは含むがdsRNAモチーフは含まないSCL複合体、及び用量を合わせたOVAをそれぞれ生理食塩水に添加し用いた。結果を、ELISAにより測定した、血清(図5C)及び35日目の気管支肺洗浄液(図5D)に含まれるOVA特異的抗体の終点力価(平均±SEM;n=4/群)として示す。
【0176】
OVAとpA:pU又はpI:pCとをロードしたSCL複合体を噴霧したスプラーグ・ドーリーラットにおいても同様の抗体反応の増強が測定された(図5C)。dsRNAもOVAも含まないSC脂質複合体を生理食塩水中に添加したものを用いた場合、力価はこれよりも低かった。粘膜抗体力価の分析(図5D)でも同様のプロフィールを示した。
【0177】
このように、RNA関連危険モチーフとタンパク抗原とを新規な噴霧乾燥技法により組合せ調製したものは、RNAモチーフの免疫調節特性を保存しており、局所的にも全身的にも特定の免疫応答を実質的に増強させる。
【実施例17】
【0178】
実施例17:非複製dsRNAモチーフは(B細胞及びT細胞)適応免疫応答のマスタースイッチとして作用する
dsRNA等の危険モチーフを含まない抗原は、免疫原性が弱いか、高用量の場合は免疫寛容を誘導する。しかしながら、dsRNAモチーフは、免疫系が抗原を認識する方法を変化させる。即ち、このようなモチーフは、弱い応答性や寛容ではなく、共存する抗原に対し強く応答するように適応(T細胞及びB細胞)免疫を導くと共に、免疫寛容を阻害する或いは阻止する。従って、dsRNAモチーフの認識による自然免疫は、B及びT細胞適応免疫のマスタースイッチとして作用する(図7)。
【実施例18】
【0179】
実施例18:天然のdsRNAは、自然免疫応答と適応免疫応答を橋渡しする。実施例18は、インフルエンザウィルス感染により産生された天然の非感染性二本鎖RNAが、タンパク抗原に対する特定の免疫応答に関し、実質的な影響を及ぼすことを示す。
【0180】
許容MDCK細胞をWSNインフルエンザウィルス(108TCID50/1×109細胞)に感染させ、24時間後、細胞を回収して洗浄し、RNA分離キット(キアゲン社、カリフォルニア州バレンシア)で全RNAを抽出した。更に、RNAse−free DNAseI(ストラタジーン社、カリフォルニア州サンディエゴ)でRNAを更に精製した。次に、S1ヌクレアーゼ(アンビオン社(Ambion、Inc.)、テキサス州オースチン)(5μ/RNAμg)と共に37℃で30分インキュベートし、サンプル中の一本鎖RNAを除去した。分解前後に、ゲル電気泳動によりRNAを分析した。精製dsRNAには感染性がないことを、標準的なインフルエンザウィルス滴定により確認した。対照として、109非感染MDCK細胞から同様に精製し処理した材料を用いた。核酸濃度は分光測定法(A260mm)により測定し、エンドトキシンがないことはリムルスアッセイにより確認した。精製dsRNA及び対照のRNAは、単独で、或いはgp140組換え抗原(25μgのRNAと2μgの抗原を25mLの無菌PBSに加えたもの)との混合物として用いた。
【0181】
感染性のないことを確認した後、40μgのdsRNA又は対照RNAを40μgの組換えトランケート抗原(HIVエンベロープのgp140)と混合し、BALB/cマウスに経鼻注入(n=3/群)により投与した。付加的な対照として、40μgのgp140タンパク質を生理食塩水に添加したもので免疫感作した動物(n=3/群)を用いた。マウスへの追加免疫をプライミング2週間後に一度行った。追加免疫の2週間後、血液を採取し、血清を調製し、gp140に対する抗体反応をELISAにより測定した。即ち、ウェルを抗原(2μg/mLのgp140)でコーティングし、シーブロック(ピアース社、イリノイ州ロックフォード、カタログ番号37527)でブロッキングした。血清と気管支肺胞洗浄液の段階希釈液は、室温で少なくとも2時間インキュベートした。洗浄後、アルカリホスファターゼ(シグマ社、カタログ番号A7434)結合抗マウスIgG抗体を用いたアッセイを行い、基質(pNPP、シグマ社、カタログ番号N2765)を添加し、ソフトマックスソフトウェアを備えた自動マイクロタイタープレートリーダー(モルキュラーデバイス社、ThermoMax)で測定した。
【0182】
図7のパネルAは実験の一般原理を示す。図7のパネルBは、全IgGを用いた場合の各血清希釈液のアッセイ実施後の吸収を示す。図7のパネルBは、IgG2a及びIgG1抗体アイソタイプを用いた場合の1/50血清希釈液の吸収を示す。
【0183】
全体としては、図7のパネルA、Bのデータから、インフルエンザウィルスに感染したMDCK細胞からの天然の非感染性dsRNAは、プロトタイプ抗原に対する適応応答を増強する効果が予想外に高いことがわかった。IgGl抗体反応及びIgG2a抗体反応も亢進したことから、強いTヘルパー1及び2反応が誘導されたことがわかる。
【実施例19】
【0184】
実施例19:自然免疫応答に対する選択したRNAモチーフの作用:異種モチーフ。この実施例は、各種合成RNAモチーフが、意外にも、タンパク抗原に対する適応特異的免疫応答に別個の作用を有することを示す。
【0185】
図8Aは、合成RNAモチーフを広く含むライブラリーを示し、合成RNAモチーフは複数のプールにグループ分けされて次の2段階の力価スクリーニング工程に用いられる。
(A)マウスを各RNAプールで気管内免疫感作し、経鼻注入による追加免疫を2週間毎に2回行った。抗体反応はELISAにより行い(図8B)、結果はIgG終点力価の平均±SEMとして示す(n=4/群)。対照として、OVAを無菌PBSに添加したもの、OVAをコレラ毒サブユニットB(CTB)と一緒に用いたもの、PBSのみをそれぞれ用量を合わせて用いた。即ち、ウェルを抗原(10μg/mLのOVA)でコーティングし、シーブロック(ピアース社、イリノイ州ロックフォード、カタログ番号37527)でブロッキングした。血清と気管支肺胞洗浄液の段階希釈液は、室温で少なくとも2時間インキュベートした。洗浄後、アルカリホスファターゼ(シグマ社、カタログ番号A7434)結合抗マウスIgG抗体を用いたアッセイを行い、基質(pNPP、シグマ社、カタログ番号N2765)を添加し、ソフトマックスソフトウェアを備えた自動マイクロタイタープレートリーダー(モルキュラーデバイス社、ThermoMax)で測定した。
【0186】
(B)OVAに対する抗体反応の誘導に与える各種dsRNAモチーフの影響:結果を図8Cに示す。データは独立した2種類の実験結果である。INSET:OVAに対する平均IgG2a力価とIgGl力価の比。この実験のために、ビオチンコンジュゲート抗マウスIgG1抗体及びIgG2a抗体を用い、ストレプトアビジン−AKPコンジュゲートと共にインキュベートした。左右の順序は図8Cのメインパネルと同様である:PBS OVA、CTB OVA、pC:pG OVA、pI:pC OVA及びpA:pU OVA。
【0187】
(C)雌性C57BL/6マウスにおける、OVA及びdsRNAモチーフにより誘導されたT細胞応答の大きさ及びプロフィール。細胞応答の測定のために、脾臓を70ミクロンナイロンファルコンストレーナ(ベクトンディッキンソン社、カタログ番号352350)に付し、次いで赤血球溶解緩衝液(シグマ社、カタログ番号R7757)によって赤血球を溶解することにより脾臓細胞浮遊液を得た。肺組織をコラゲナーゼ(シグマ社、カタログ番号C9891)で消化し、次いでフィコールパーク(アマシャムファルマシア社、カタログ番号17−1440−02)勾配遠心によって、肺関連脂質組織からリンパ球を単離した。T細胞応答はELISPOT分析によって次のように測定した。96ウェルの45ミクロン混合セルロースエステルプレート(ミリポア社、カタログ番号MAHA S4510)を、4μg/mLのラット抗マウス抗IFNγ、抗IL−2或いは抗IL−4モノクロナール抗体(BDファーミンジェン社、カタログ番号554430、カタログ番号18161D、カタログ番号554387)でコーティングした。10%FCSを含む無菌生理食塩水37℃で1時間処理しブロッキングした後、脾臓細胞浮遊液を抗原/ペプチドと共に、又はなしで、ウェル当たり5×105細胞添加した。刺激のために、段階的に量を変えた各種抗原(OVA)を用いた。刺激から72時間後、ビオチン化ラット抗マウスサイトカイン抗体(BDファーミンジェン社)、次いでストレプトアビジン−HRP(バイオソース社、カリフォルニア州カマリロ)と不溶性AEC基質を用いたアッセイを行った。結果は多重パラメータ解析ソフトウェア(イメージプロ、メディアサイバネティックス社)を備えた自動イメージングシステム(ナビター/マイクロメイト)を用い測定した。結果を、脾臓当りのIFN−γ及びIL−4スポット形成コロニー(SFC)の数の平均±SEMとして図8Dに示す(n=4/群)。結果は独立した2種類の実験結果である。
【0188】
図8B〜Dに示す結果から、各合成RNAは、プロトタイプのタンパク抗原に対するB細胞応答及びT細胞応答に対し増強作用を有することがわかる。更に、各モチーフは、特定のヌクレオチドの組合せを含むが、T1対T2誘導及びその後の免疫グロブリンアイソタイプスイッチングに関し、モチーフによって異なる特定の効果を有する。
【実施例20】
【0189】
実施例20:選択された合成RNAモチーフを用いることにより、MHCクラスI拘束性Tc1細胞の誘導が促進されIFN−γが産生される。
(A)dsRNAモチーフにより刺激されるクロスプライミングをBALB/cマウスを用いて検討した。マウスは、10μgの人工的に組み換えたHIV gp140抗原とpA:pUとで処理(プライミング+2回の追加免疫)して用いた。応答は、実施例19に記載したように、V3ドメイン由来のMHCクラスI拘束性コグネイトペプチドR10Kによるin vitro刺激を用いたELISPOT分析により測定した。対照として、用量を合わせたgp140抗原を用いた。結果を、IFN−γ及びIL−4 SFCの数/脾臓(n=4/群)の平均±SEMとして図9Aに示す。
【0190】
(B)dsRNAモチーフにより刺激されるクロスプライミングを、100μgの全OVAとpA:pUとで処理したC57BL/6マウスを用いて検討した。検討は、実施例19に記載のように、MHCクラスI拘束性ペプチドSIINFEKL[配列番号2]によるin vitro刺激を用いたELISPOT分析により測定した。対照として、用量を合わせた、生理食塩水又は無菌PBSに添加したOVA抗原を用いた。結果を、IFN−γ及びIL−4 SFCの数/脾臓(n=4/群)の平均±SEMとして図9Bに示す。
【0191】
図9A〜Bに示す結果から、大きな抗原(ポリペプチド)に含まれる様々な各種MHCクラスI拘束性ペプチドに対し、選択された合成RNAモチーフがT細胞免疫の亢進を促進できたことがわかる。この免疫応答は、IFN−γを産生するMHCクラスI拘束性T細胞に含まれるTc1成分を含む。
【実施例21】
【0192】
実施例21は、予想外のことであるが、合成RNAモチーフによって結合する細胞受容体が異なる、即ちRNAモチーフを区別する複数の受容体が存在することを示す。
【0193】
CD11b+ APCへの蛍光タグ化pA:pUのin vitroにおける結合をFACS分析により測定した。MACS分離APCを4℃で30分間、10μg/mLのタグ化pA:pU([PA:pU]−F)と共にインキュベートし、洗浄して分析した。これとは別の方法として、APCをそれぞれ20μg/mL、100μg/mLの非タグ化pA:pU、pA或いはpI:pCと共に10分間プレインキュベートし、タグ化pA:pUで染色してFACS分析を行った。染色された細胞(白い領域)、染色されていない細胞(黒い領域)のプロフィールと、染色程度の高いAPCの百分率とを各パネルに示す(x軸は対数)。データは、独立した2種類の測定結果を示し、各サンプルに対し10000回測定したものである。
【0194】
材料:
マウスCD11b及びCD11c磁気分離ビーズ:ミルテニイバイオテック社、それぞれカタログ番号130−049−601及びカタログ番号130−052−001;
ULYSIS核酸標識キット:アレクサ(Alexa)488、分子プローブ カタログ番号U21650;
RNAモチーフ:
・pA:pU、(シグマ社、ロット番号22K4068);
・pI:pC、(シグマ社、ロット番号52K4047);
・pA、(シグマ社、ロット番号22K4022);
FACS緩衝液:PBS、1% FCS、0.1%アジ化ナトリウム;
MACs緩衝液:PBS、2mM EDTA、0.5% BSA;
コラゲナーゼ緩衝液:0.225mg BSA、0.0062mg コラゲナーゼが50mL RPMIに入っているもの;
70um細胞ストレーナ:(ファルコン/ベクトンディッキンソン社、カタログ番号352350
【0195】
方法:
I RNAモチーフの標識:
1.次のプロトコルにより、各RNAモチーフをULYSIS Alexa488標識でタグ化した。
【0196】
II 脾臓細胞の調製:
1.C57BL/6マウス(雌性、4匹)から脾臓細胞及び肺細胞を単離;
・肺細胞は、脾臓細胞とは異なり、切り刻んだ後、コラゲナーゼ緩衝液中37℃で30分間インキュベートしてから、次のステップに進むことを要する;
・70umファルコン細胞ストレーナを通す;
・洗浄後、再度MACS緩衝液に懸濁させる:
2.推奨プロトコルに従い、CD11b特異的又はCD11c特異的MACSビーズで標識する;
3.次いで細胞に次の処理を行った:
・非タグ化pA、pA:pU、又はpI:pC(20ug/mL又は100ug/mL)、室温、10分間;
・各モチーフの染料:dsRNAの比に合うように、ULYSISタグ化pA及びpA:pU(それぞれ1.5ug/チューブ及び10ug/チューブ)を添加した。
混合、氷上で30分間インキュベート。
洗浄(1回)し、FACS緩衝液に再度懸濁した。
【0197】
III フローサイトメトリー:
フローサイトメトリー分析を行い、タグ化RNAモチーフと非タグ化RNAモチーフの競合阻害及び細胞受容体の結合を測定/比較する。
【0198】
図10に示した結果から、pA:pU及びpI:pCは、異なる細胞受容体に結合することがわかる。pI:pCはTLR3に結合するため、TLR3とは異なる別の受容体がRNA認識免疫機能に関与していることがわかる。
【実施例22】
【0199】
実施例22は、選択された合成RNAモチーフが、免疫学的活性に重要な、ケモカイン遺伝子の生体内における発現を誘導することを示す。
【0200】
dsRNAモチーフによるケモカイン遺伝子発現の局所的なアップレギュレーションを、経気道投与1日後に抽出した肺組織からのRNAを用いたDNAアレイ技法により測定した。全RNAをRNeasyキット(キアゲン社、カリフォルニア州バレンシア)を用いて肺から単離した。このRNAをRNase−フリーDNaseI(ストラタジーン社)、カリフォルニア州サンディエゴ)で処理し更に精製した。DNAアレイはスーパーアレイ社(メリーランド州ベサダ)のNonrad−GEArrayキットを用い行った。即ち、cDNAプローブをビオチン−16−dUTPを含有するdNTPmixと共にMMLV逆転写酵素を用いて合成した。GEArray膜を68℃で1〜2時間プリハイブリダイゼーションした。ハイブリダイゼーションは、ビオチン標識cDNAと共に膜をインキュベートすることにより行った。ハイブリダイズした膜を、2×SSC−1%SDSで2回、0.1×SSC−0.5%SDSで2回洗浄した。膜をアルカリホスファターゼ抱合型ストレプトアビジン(バイオソース社、カリフォルニア州カマリロ)と共に更にインキュベートし、最終的に、CDP−Star化学発光基質を用い現像した。シグナルの強度は、Gel−Proソフトウェアを備えたImage−Pro解析システム(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリングス)によって測定した。
【0201】
結果を、非処理マウスの肺組織で測定された発現レベルに対する遺伝子発現の増加倍率で示す(図11)。dsRNA(50μgのpA:pU及びpI:pC)により惹き起こされたケモカインの発現パターンを、1μgのLPSにより誘導されたパターンと比較した。Th1細胞及びTh2細胞上の受容体と選択的に結合したケモカインを、それぞれ実線及び破線で囲った。
【0202】
図11に示す結果から、pA:pU及びpI:pCは広範な種類のケモカインの発現を惹き起こし、その発現パターンはモチーフに依存し且つLPS(エンドトキシン)のパターンとは異なることがわかる。
【実施例23】
【0203】
実施例23は、選択された合成RNAモチーフは、肺ウィルスによる感染を制御できる免疫防御を高めることを示す。
【0204】
各dsRNAモチーフは、インフルエンザウィルス感染に対する免疫防御を高める能力が異なる。C3H/HeJマウスを、亜致死量のインフルエンザウィルスによる肺感染の1日前及び後に、経呼吸器ルートで50μgのpI:pC、pA:pU或いは50μLの生理食塩水で処理した。ウィルス攻撃のために、C57BL/6及びTLR4−/−C3H/HeJマウスを、メトファン麻酔下で亜致死量(TCID50:104組織培養感染量50%)のWSN(A/WSN/H1n1)ウィルス生菌に経鼻感染させた。感染5日後、マウスを殺し肺を摘出し、ホモジネートして−70℃で保存した。ウィルス力価は、許容MDCK細胞による試料の段階希釈液を48時間インキュベートし、次いでニワトリ赤血球細胞(アニマルテクノロジー社から入手)による標準血球凝集反応により測定した。終点力価は3回の測定の補間によって評価し、器官当りのTCID50として表した(平均±SEM;n=6/群;結果はC3H/HeJ TLR−4−/−マウス及びコンピテントマウスにおける独立した2種類の試験の結果である)。TLR4コンピテントのC57BL/6マウスでも同様の結果が得られた。
【0205】
図12に示す結果から、選択された合成RNAモチーフを用いることによりインフルエンザウィルスの複製を制御できることがわかる。
【実施例24】
【0206】
実施例24は、選択された複数の合成RNAモチーフを同時投与することにより、高用量の標準抗原に対する免疫寛容が破壊されることを示す。
【0207】
dsRNAモチーフは、ヒトIgGを注射したマウスにおいて大量域寛容を阻止する。まず、マウス(C57BL/6)を寛容原性用量である200μgのhIgGのみ(黒印)、或いはこれと100μgのpI:pC又はpA:pUを一緒に(白印)静注し、免疫原性用量である100μgのhIgGのCFA(完全フロイントアジュバント)乳化物を皮下注射し追加免疫を行った。hIgGに対する抗体の力価をELISAにより(コーティングに10μg/mLのhIgGを用いた以外は実施例19と同様に)測定した。測定は、最初の注射後、各時間に行った。対照として、100μgのhIgGのCFA乳化物で免疫感作したマウスを用いて得た最大力価をグラフに示す(破線)。
【0208】
結果は、終点力価の平均±SEMとして図13に示す(n=5/群)。TLR4欠損(C3H/HeJ)マウス及びLPS−応答性C3H/SnJマウスでも同様の結果が得られた。図13に示す結果から、選択された合成RNAモチーフであるpI:pC及びpA:pUは、大量の精製タンパク質投与に通常伴う大量域寛容を著しく阻害することがわかる。
【実施例25】
【0209】
実施例25は、選択されたRNAモチーフが、ヒトAPCによる各種サイトカインの産生を誘導することを示す。
【0210】
分化後のヒトTHP−1単球細胞を各種濃度の合成RNA(pA:pU、pI:pC又はpA)と共に24時間インキュベートし、細胞上清を回収した。IL−12及びTNF−αの濃度をELISAにより測定した。結果は、各培養条件に対する各サイトカインのpg/mL(濃度)として図14に示す。
【0211】
図14に示す結果から、選択された合成RNAモチーフはヒト単球細胞に作用し、この作用はモチーフ(ヌクレオチド組成物)の化学構造によって不均一であることがわかる。合成RNAモチーフ全てではないが、選択された合成RNAモチーフは、ヒト単球細胞による、重要なT1調節サイトカインであるIL−12の産生を誘導できる。
【0212】
材料:
THP−1ヒト単球細胞系:ATCC、カタログ番号TIB−202;
IL−12サイトカイン:ヒトELISA、IL−12ウルトラセンシティブ(US)カタログ番号KHC0123;
TNFアルファサイトカイン:ヒトELISA、TNFアルファ カタログ番号KHC3012;
RNAモチーフ:
・pA:pU、(シグマ社、ロット番号22K4068);
・pI:pC、(シグマ社、ロット番号52K4047);
・pA、(シグマ社、ロット番号22K4022)
【0213】
方法:
1.THP−1細胞に、10ng/mLのPMAを加え、10%FCSを含有する培地において分化させた。
2.細胞を穏やかに洗浄し、FCSを含まない培地(HL−1)を加え、処理物(RNAモチーフ及び対照)(3〜100μg/mL)を付着性(adherent)THP−1細胞に添加した。
3.24時間インキュベートした後、細胞上清を回収し、IL−12及びTNFアルファの濃度をELISAにより測定した。
【実施例26】
【0214】
実施例26は、2個の区別される合成RNAモチーフがヒトTHP−1単球細胞に結合するときに、互いに異なる受容体と相互作用を示すことを示す。
【0215】
THP−1細胞を、種々異なる量の非標識合成RNAと共に室温で15分間インキュベートした。次に、タグ化したpA:pUを4℃で30分かけて添加し、細胞を洗浄し、蛍光をFACS分析により測定した。結果を図15A及び15Bに棒グラフとして示す。図15Aは大細胞のサブセットを、図15Bは全細胞集団を示す。染色された細胞の百分率を各図に示した。
【0216】
図15A〜15Bに示す結果から、非タグ化pA:pUは、大細胞のサブセット及び全細胞集団の両方のレベルにおいてタグ化pA:pUのヒトTHP−1単球細胞への結合に打勝つ(compete out)ことができるが、非タグ化pI:pCは打勝つことができないことがわかる。
【0217】
材料:
1.ULYSIS:核酸蛍光標識(モレキュラー・プローブス社(Molecular Probes)、カタログ番号U−21650)
2.RNAモチーフ:
・pA:pU、(シグマ社、ロット番号22K4068);
・pI:pC、(シグマ社、ロット番号52K4047);
3.Detoxi−Gelカラム:(ピアース社、カタログ番号20344)
【0218】
方法:
I ポリアデニル−ポリウリジル酸(pA:pU)の標識:
エンドトキシンをDetoxi−Gelカラムを用いて除去した後、pA:pUの標識を、ULYSIS核酸標識システムを用いてAlexa Fluor488蛍光染料により行った。
概略:
・酢酸ナトリウム及びエタノールを用いて−70℃でpA:pUを沈澱させた。
・pA:pUを熱変性させ、Alexa Fluor488試薬により90℃で標識した;
・反応を停止させ、標識されたpA:pUをエタノール沈澱させた。
【0219】
II 細胞の処理:
THP−1細胞を2×106細胞/mLの濃度で懸濁させた;
この懸濁液(50μL、5×104細胞)を12×75mmチューブに入れた;
非タグ化pA:pU又はpI:pCを20又は100μg/mLの濃度でTHP−1細胞に添加し、15分間インキュベートした;
ULYSIS標識されたpA:pUを100ug/mLの濃度で30分かけて氷上で添加した。
THP−1細胞を1回洗浄し、FACS緩衝液に懸濁させ、フローサイトメトリー分析を行って、異なる処理を施した集団間の蛍光の相対差を測定した。
【実施例27】
【0220】
実施例27は、アジュバント合成RNAを、最も有効な形式で使用するために事前にどのように調製・精製するかを示す。
【0221】
バルク合成RNA材料を標準的な有機合成法により得る。その後エンドトキシンを含まない無菌生理食塩水にこの材料を溶解し、LPS濃度が0.005EU/μgより低くなるまでエンドトキシン除去カラムを通す。LPSの測定は標準的なリムルスアッセイにより行う。その後、材料を一連の遠心分離にかけ、有孔率が規定されたフィルタを通して分画する(図16参照)。
【0222】
有用な画分は、サイズが20bp未満から最大100bpの合成RNAを含むものである。精製後、材料を標準的な各種アッセイ、即ち分光測光(OD260nm);ゲル電気泳動;リムルスアッセイによるエンドトキシンの定量;ヒトTHP−1細胞に対する生体活性(実施例25と同様)により測定し評価する。
【実施例28】
【0223】
実施例28は、選択された合成RNA化合物の各画分は、意外にも、RNAのサイズによって生物学的活性が異なることを示す。
【0224】
分化したヒトTHP−1単球細胞を、異なる濃度の合成RNA(pA:pU、実施例27と同様に分画した)と共に24時間インキュベートし上清を回収した。TNF−αの濃度をバイオソースインターナショナル社(カリフォルニア州カマリロ)のキットを用いてELISAにより測定した。結果を、図17に培養条件毎にpg/mL(濃度)として示す。
【0225】
図17に示す結果から、選択された合成RNA化合物の分子量が小さい程、その画分は、ヒト単球THP−1細胞によるサイトカイン産生に関する生物学的活性が高いことが分かる。
【実施例29】
【0226】
実施例29:選択された合成RNAモチーフは、意外にも、モチーフによって抗RNA抗体の産生に関する免疫プロフィールが異なる。
【0227】
BALB/cマウスを、腹腔及び皮下[i.p.+s.c.]から50μg+50μgのhIgG及び合成RNA(pI:pC又はpA:pU)で免疫感作し、1週間後血清サンプルを得た。対照として、生理食塩水に添加したhIgGを注射したマウスを用いた。pA:pU、pI:pC、pA及びhIgGに対する抗hIgG及びdsRNA IgG抗体力価をELISAにより測定した。即ち、ウェルを抗原(10μg/mLのhIgG或いは合成RNA)でコーティングし、シーブロック(ピアース社、イリノイ州ロックフォード、カタログ番号37527)でブロッキングした。血清と気管支肺胞洗浄液の段階希釈液は、室温で少なくとも2時間インキュベートした。洗浄後、アルカリホスファターゼ(シグマ社、カタログ番号A7434)結合抗マウスIgG抗体を用いたアッセイを行い、基質(pNPP、シグマ社、カタログ番号N2765)を添加し、ソフトマックスソフトウェアを備えた自動マイクロタイタープレートリーダー(モルキュラーデバイス社、ThermoMax)で測定した。
【0228】
結果を、図18に、終点力価の平均±SEM(n=3/群)として示す。図18に示す結果から、pI:pCは、pA:pUと異なり、それ自身に対する抗体反応を誘導し、別のRNAモチーフに対する交叉反応性成分を有する。
【実施例30】
【0229】
実施例30:組換えIgGをAPCに生体内でローディングすると、付加的な条件を満たしたときのみ、Tcl型のMHCクラスI応答が起こる。
【0230】
BALB/cマウスを、50ugの選択された合成RNA(pA:pU又はpI:pC)と混合した50ugのrecIgG−NP(Kd)(図31A〜31D参照)(NPペプチドは、A型インフルエンザウィルスのエピトープを保護し保存したもの)で皮下免疫感作した。対照として、ナイーブマウス又はrecIgGのみで免疫感作したマウスを用いた。免疫感作3週間後、T細胞応答を次のとおりELISPOT分析により測定した:ELISPOTプレート(ミリポア社、フランス、モールスハイム)を、無菌PBS(50μL/ウェル)に添加した精製抗サイトカインAbs(抗IL4に対しては4ug/mL、抗IFNガンマに対しては8μg/mL、(BDファーミンジェン社)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートをDMEM培地で2回洗浄し、FBSを含む200μL/ウェルの完全DMEM培地で37℃、1時間処理しブロッキングした。脾臓から単一細胞浮遊液を作成し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計数後、5×105/ウェルでNP147−155ペプチドと共にインキュベートした、或いは培地のみでインキュベートしバックグラウンドを評価した。プレートは37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。3日後、プレートをPBS−tween20 0.05%(洗浄緩衝液)で5回洗浄し、ビオチン化抗サイトカインAbs(2μg/mL)をPBS−tween20 0.05%−FBS0.1%(ELISPOT緩衝液)に添加したもの(100μL/ウェル)と共に4℃で一晩インキュベートした。
【0231】
翌日、プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRPのELISPOT緩衝液希釈液(1:1000)と共に1時間インキュベートした。反応は、3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)を添加して開始させ、水道水でプレートを2回洗浄することにより停止させた。次に、プレートを室温で24時間乾燥させた。
【0232】
データは、ImagePro−Plus)ソフトウェア(メディアサイバネティックス社メリーランド州シルバースプリングス)を備えた自動化システム(ナビター社、ニューヨーク州ロチェスター)により得た。サイトカイン産生T細胞がNPペプチド(NPペプチドは、A型インフルエンザウィルスのエピトープを保護し保存したもの)と反応する頻度を測定し、刺激に使用されたペプチドの量に対して示した。結果を、図19に三連のデータの平均+SEM(n=3マウス/群)として示す。
【0233】
NP MHCクラスI拘束性エピトープを有する組換えIgGの投与によって、Tc2免疫は起こるがTc1応答は起こらない。これは、特定の共刺激プロフィールを有するクラスIペプチド複合体が生体内で形成されたことを示唆している。図19に示す結果から、選択された複数の合成RNAを同時に使用することにより、IgGが仲介するMHCクラスI拘束性エピトープの輸送に続き、IL−2及びIFN−ガンマの効果的な誘導が促進されることがわかる(dsRNA1はpA:pUであり、dsRNA2はpI:pCである)。
【実施例31】
【0234】
実施例31:FcガンマRによるAPCローディングとRNA受容体による活性化の同時操作による、MHCクラスIペプチドの効果的形成とその結果のT細胞応答の指示
【0235】
脾臓APCをナイーブBALBcマウスから単離し、1ugのNPペプチド、又は50μgのrecIgG−NP(Kd)を単独で或いは50μg/mLの選択された合成dsRNA(pA:pU)を組合せたもので、ex vivoでのパルシングを一晩行った。細胞を洗浄し、5×106個の細胞をナイーブBALB/cマウスにs.c.及びi.p.で等量投与した。3週間後、応答を次の通りELISPOT分析により測定した:ELISPOTプレート(ミリポア社、フランス、モールスハイム)を、無菌PBS(50μL/ウェル)に添加した精製抗サイトカインAbs(抗IL4に対しては4μg/mL、抗IFNガンマに対しては8μg/mL、(BDファーミンジェン社)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートをDMEM培地で2回洗浄し、FBSを含む200μL/ウェルの完全DMEM培地で37℃、1時間処理しブロッキングした。脾臓から単一細胞浮遊液を作成し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計数後、5×105/ウェルで30μg/mL、10μg/mL又は3μg/mLのNPペプチドと共にインキュベートした、或いは培地のみでインキュベートしバックグラウンドを評価した。プレートは37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。3日後、プレートをPBS−tween20 0.05%(洗浄緩衝液)で5回洗浄し、ビオチン化抗サイトカインAbs(2μg/mL)をPBS−tween20 0.05%−FBS0.1%(ELISPOT緩衝液)に添加したもの(100μL/ウェル)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRPのELISPOT緩衝液希釈液(1:1000)と共に1時間インキュベートした。反応は、3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)を添加して開始させ、水道水でプレートを2回洗浄することにより停止させた。次に、プレートを室温で24時間乾燥させた。
【0236】
データは、ImagePro−Plus)ソフトウェア(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリングス)を備えた自動化システム(ナビター社、ニューヨーク州ロチェスター)により得た。結果は、図20に、ex vivo刺激に用いたペプチド濃度に対するサイトカイン産生スポット形成コロニーの発生度合(平均±SEM、n=3マウス/群)で示す。更に、刺激に用いたペプチド濃度に対するエリア/コロニーの平均をIFN−ガンマ及びIL−4に対してプロットした(任意単位)。
【0237】
図20に示した結果から、組換えIgGのAPCへのex vivoローディングは、ペプチド自体を使用するのに比べ、MHCクラスI−ペプチド複合体の形成及びTc応答の発生に対しより効果的であることがわかる。更に、IgG/FcガンマRによるエピトープの輸送後、MHCクラスI−ペプチド複合体が単に形成された場合は、IL−4は産生するがIFNガンマは産生しないTc2細胞の分化が惹き起こされる。選択された合成RNAでAPCを同時に処理することにより、T細胞プロフィールをIFN−ガンマ産生Tc1細胞にまで拡大することができる。
【実施例32】
【0238】
実施例32は、IgG−ペプチドと選択された共刺激モチーフとを同時プライミングすることにより、ウィルス感染後にMHCクラスI拘束性T細胞のより効果的な二次増殖が起こることを示す。
【0239】
BALB/cマウスに、recIgG−NP(Kd)、pA:pU、或いはrecIgG−NP(Kd)及びpA:pU(50ug/注射)を注射した。対照として、ナイーブマウスを用いた。処理の3週間後、マウスにA/WSN/32 H1N1インフルエンザウィルスの104TCID50を気道から感染させた。感染4日後、NPペプチド刺激をex vivoで行った後、脾臓のT細胞プロフィールをELISPOT分析により次のようにして測定した:ELISPOTプレート(ミリポア社、フランスモール、スハイム)を、無菌PBS(50μL/ウェル)に添加した精製抗サイトカインAbs(抗IL2及び抗IL4に対しては4ug/mL、抗IFNガンマに対しては8μg/mL、(BDファーミンジェン社)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートをDMEM培地で2回洗浄し、FBSを含む200μL/ウェルの完全DMEM培地で37℃、1時間処理しブロッキングした。脾臓から単一細胞浮遊液を作成し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計数後、20μg/mLのNPペプチドと共に又は培地のみで5×105/ウェルでインキュベートし、バックグラウンドを評価した。プレートは37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。3日後、プレートをPBS−tween20 0.05%(洗浄緩衝液)で5回洗浄し、ビオチン化抗サイトカインAbs(2μg/mL)をPBS−tween20 0.05%−FBS0.1%(ELISPOT緩衝液)に添加したもの(100μL/ウェル)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRPのELISPOT緩衝液希釈液(1:1000)と共に1時間インキュベートした。反応は、3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)を添加して開始させ、水道水でプレートを2回洗浄することにより停止させた。次に、プレートを室温で24時間乾燥させた。
【0240】
データは、ImagePro−Plus)ソフトウェア(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリングス)を備えた自動化システム(ナビター社、ニューヨーク州ロチェスター)により得た。結果は、図22に、サイトカイン産生コロニーを形成するNP特異的MHCクラスI拘束性T細胞の発生度合(平均±SEM、n=4マウス/群)で示す。
【0241】
図21に示す結果から、選択された合成RNAの同時投与を実施したとき、クラスI拘束性エピトープのIgG媒介輸送がクラスI拘束性Tc1応答のプライミングに最も効果的であることがわかる。プライミングされたこのような前駆体は、インフルエンザウィルス感染後、急速に増殖した。
【実施例33】
【0242】
実施例33は、MHCクラスI拘束性エピトープを認識する細胞障害性リンパ球の最も効果的なプライミングは、IgGバックボーンに挿入されたペプチドエピトープを選択されたRNAモチーフと共に同時投与することにより行われるものであることを示す。
【0243】
前出の実施例と同様に、BALBcマウスに対しrecIgG−NP(Kd)による免疫感作及び攻撃を行い、インフルエンザウィルス感染4日後に殺した。脾臓細胞を取り出し、HL−1培地に500万/mLで懸濁し、5U/mLの組換えIL−2の存在下、10μg/mLのNP147−155ペプチドと共に5日間同時インキュベートした。4マウス/群からの脾臓細胞をプールし、フラスコ中でインキュベートした。
【0244】
増殖後、生残性を有する細胞をフィコール勾配遠心分離により回収し、洗浄後、種々の細胞数に分けてV底プレート中で5時間インキュベートした。インキュベーションは、固定数のsp20ターゲット細胞を添加して行い、NPペプチド(20μg/mL)は添加又は非添加で行った。プレートの遠心分離後、上清を回収し、LDHの濃度を、Promegaキット(カタログ番号G1780)を用いて測定した。結果は、各E:T比(エフェクター対ターゲットの比)における比溶解性として示す。
【0245】
図22に示す結果から、抗ウィルス細胞障害性T細胞の効果的なプライミングには、IgGにより輸送されたクラスI拘束性エピトープの生体内でのAPCへの効果的なローディングと、選択された合成RNAモチーフ、即ちpA:pUによる適切な指示との両方が必要であることがわかる。
【実施例34】
【0246】
実施例34は、ウィルス性MHCクラスI拘束性エピトープを有するIgGと、選択された合成RNAモチーフとを一緒にワクチン投与することにより、プロトタイプウィルスによる感染攻撃に対する防御が提供されることを示す。
【0247】
BALB/cマウスに、50ugのrecIgG−NP(Kd)及び50ugの選択された合成RNA(pA:pU)を皮下注射し、免疫感作を行った。免疫感作3週間後、マウスに対し104TCID50の感染性WSNインフルエンザウィルスにより攻撃を行い、5日後に殺した。次の標準MDCK血球凝集アッセイにより肺ウィルスを肺ホモジネートに滴定した:1日目、MDCK細胞を96ウェルプレートに添加し(2×104/ウェル/200uL)、37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。翌日、肺ホモジネートのDMEM培地10倍希釈液(25μL)をトリプシン処理MDCKプレート中、3連で短時間(1分)インキュベートした後、37℃でインキュベートした。1時間後、175uLの完全DMEM培地を添加し、プレートを37℃、5%CO2で48時間インキュベートした。2日後、MDCKプレートから得た細胞培養上清と共に室温で30分間インキュベートしたニワトリ赤血球を用いて、血球凝集阻止を行った。結果は、全肺ウィルスの平均±SEMとして示す(n=4マウス/群)。対照として、免疫感作を行っていないマウスを用いた。
【0248】
図23に示す結果から、ウィルス性クラスI拘束性エピトープを有する組換えIgGと一緒に、選択された合成dsRNAによって免疫感作を行うことにより、感染攻撃後のウィルス複製を制限できる免疫応答がプライミングされることがわかる。
【実施例35】
【0249】
実施例35:図24に、Ig−ペプチドに基づく分子の効力をテストするために用いた腫瘍モデルを示す。
【0250】
Balb−cマウス(Kd拘束性)を用い腫瘍モデルを確立した。通常、腫瘍細胞(100μL中に100万〜1500万)は側腹部に注射した(上の写真の矢印参照)。原発腫瘍(注射サイトの腫瘍)は、まずその領域を触診することにより検出し、次いでカリパスで腫瘍サイズを測定することにより定量化した。一連の実験において、トランスフェクトしていない細胞、或いは安定にトランスフェクトされ異種タンパク質(H鎖のCDR3領域に異なるエピトープペプチドを発現する組換えIgG、或いは完全なNPタンパク質)を発現する細胞のいずれかであるマウス骨髄腫細胞系(SP2/0)を用い、マウスに腫瘍を誘導した。SP2/0細胞内の異種タンパク質の発現は、免疫適格マウスにおける各種抗腫瘍戦略のテストのための特異的腫瘍関連抗原(TAA)を提供した。典型的には、未処置マウスには、注射後1週間で触知可能な充実性原発腫瘍が発生し、次の4週間に亘り病的状態や死をもたらした。注射したマウスの死後剖検により、転移病変が明らかになった(図24参照)。Sp2/0細胞は、原発腫瘍組織、同様に腫瘍を有するマウスから採取した脾臓から培養した(データは示さず)。SP2/0細胞には、MHCI拘束性NPエピトープ(アミノ酸147〜155)等のH鎖のCDR3領域に導入された特定のエピトープ配列以外は全てが同一である組換えIgG発現プラスミドが安定にトランスフェクトされた。また、SP2/0細胞には、CMVプロモータの制御下、WSNウィルスのNPタンパク質全体のためのコード配列を含むプラスミドが安定にトランスフェクトされた。全てのトランスフェクト細胞系は、野生型SP2/0細胞の場合と同一のフレームに原発腫瘍を引き起こした。
【0251】
本腫瘍モデルは、Balb−cマウスに転移腫瘍を誘導することが先に示された腺癌細胞系(4T1、ATCC CRL−2539、Kd拘束性)を含むように拡張された。4T−1細胞系は、SP/0系に関する前の記述に類似していた。Balb−cマウス側腹部への100万〜1500万4T−1細胞の投与は、触診可能な原発腫瘍をSP2/0細胞の投与の場合と類似の時間フレームで生じ、最終的には死をもたらした。各種器官からの組織の死後採取は原発腫瘍のみならず、脾臓、肺からも4T−1が回収できることを示した(図示せず)。4T−1細胞に、前述のNP−発現プラスミドを安定にトランスフェクトした。SP2/0の場合のように、4T−1細胞へのトランスフェクトは、腫瘍の増殖過程や疾患の致死率に影響を与えなかった。
【実施例36】
【0252】
実施例36は、選択された共刺激RNAモチーフと共に組換えIgG内の腫瘍関連T細胞エピトープを用いた、臨床診断後の腫瘍のコントロールと処置の成功例を示す。
【0253】
Balb/cマウスに、H鎖(IgNP)のCDR3領域内にMHC I(Kd)NPエピトープペプチドを有する組換えIgGを安定に発現するSP2/0細胞を注射投与した(100μL中1500万)。投与後第7日、全てのマウスは触診可能な腫瘍を有し、それらのマウスを無作為に3群(共刺激モチーフ単独(ポリマーpApUを含むdsRNA)、精製IgTAAタンパク質(IgNP)、これら両者)に振り分けた。処置時間は矢印で示し、各投与は図示の化合物を50μg含んだ。図中、転移疾患を発現し死亡したマウスを「D」で表した。
【0254】
これらのデータは、治療開始時に原発腫瘍を有する全てのマウスにおいて、dsRNA(共刺激モチーフ)とIgTAA(IgNP)の組合せが劇的な保護応答を生じることを示す。片方の化合物のみで処置したマウスの全ては、疾患により死亡したが、両者を用いて処置したマウスの100%は、処置開始後3週間後も生存していた。これらのマウスは、T細胞応答の測定のために殺された時にも良好な臨床状態であった。これらのデータは、APCへのTAAの生体内ローディング(APCのFc受容体を介したIgNPの摂取によって成される)は、抗腫瘍応答の効力に関して十分ではないことを示す。IgNPをpApU dsRNAと組み合わせて処置したマウスにおいて示される腫瘍の拒絶と生存は、腫瘍関連抗原による腫瘍の処置が共刺激に関して重要な役割を果たすことを示している。
【0255】
結論として、図25の結果は、腫瘍関連抗原のAPCへの効果的な生体内ローディングと、選択された合成RNAモチーフによる同時活性化との両者を共に行うことが、腫瘍成長の効果的な制御と腫瘍拒絶の誘導のために必要且つ十分であることを示す。
【実施例37】
【0256】
実施例37:本実施例は、腫瘍細胞を亜致死量接種した場合に、腫瘍抗原に対する最適未満の応答を、IgGバックボーン内のペプチドエピトープを共刺激モチーフと共に用いる治療によって修正できることを示す。
【0257】
Balb/cマウスに、H鎖のCDR3内にWSNウィルス核タンパク質のMHC I(Kd)エピトープ(アミノ酸147〜155)を含む組換えIgG(IgNP)を安定に発現するSP2/0細胞を注射投与した。細胞接種物は、マウス当たり100万細胞(100μL中)であった。マウスを、注射サイトに触診可能な腫瘍が検出されるまで観察した。この時点で腫瘍を測定し、8匹のマウスには処置を施さず、6匹には精製IgTAA(即ち、精製IgNP、2mg/kg)とdsRNA(pApU、4mg/kg)を一週間毎に腫瘍内注入した。腫瘍は一週間毎に測定した。
【0258】
図26のパネルAは、8匹のマウスの内の6匹は、誘導された腫瘍が進行し最終的に死に到ったが、これらのマウスの内の2匹は、自発的に腫瘍を完全に拒絶したことを示す。図41のパネルBは、IgNP/dsRNAによる3回の一週間毎の処置(矢印で示す)が、6匹のマウスの内の4匹において腫瘍の完全な拒絶を刺激し、他のマウスでは腫瘍の大幅な軽減を刺激したことを示す。
【0259】
図26の結果(パネルAとB)は、腫瘍関連抗原のAPCへの効果的な生体内ローディングと、選択された合成RNAによる同時活性化の両者を行うことが、腫瘍関連抗原に対する効果的な免疫応答を誘導できることを示す。
【実施例38】
【0260】
実施例38は、IgGバックボーン内の腫瘍エピトープと共刺激合成RNAとを共に用いた腫瘍を有するマウスの治療は、腫瘍浸潤リンパ球の活性状態へと回復可能であることを示す。
【0261】
2匹のBALB/cマウスに、1000万のNP−Kdエピトープ発現sp20トランスフェクトーマを注射投与した。腫瘍の発生後、一匹のマウスに、50μgの選択されたdsRNAモチーフ(pApU)と50μgの「IgNP」−recIgG−NP(Kd)とを生理食塩水に添加したものを腫瘍内に注入した。24時間後にマウスを殺し、腫瘍を摘出し、コラゲナーゼで消化し、70umのフィルタで濾過し、次いで生存細胞をフィルコール勾配で単離した。細胞をTCRβ、CD25、或いはアイソタイプ対照に対してmAbsで染色し、FACS分析で評価した。結果を、染色された細胞の百分率と共に、ヒストグラムで示した。
【0262】
材料:
SP20細胞系(ATCC);
2 BALB/cマウス(Harland Sprague Dawley);
ファルコン70ミクロンフィルタ(ベクトンディッキンソン社、カタログ番号352350);
コラゲナーゼ(シグマ社、カタログ番号C−9891);
BSA、fractionV(シグマ社、カタログ番号A−4503);
コラゲナーゼ緩衝液:0.225gm BSA+0.00625gm(50mL RPM I中);
フィコール−ハイパーク(Ficoll-hypaque)(1.077、アマシャム社、カタログ番号17−1440−02);
FACS緩衝液:1%ウシ胎児血清+0.1%アジド(PBS中);
抗体:全てBDファーミンジェン社から;
フローサイトメータ:FACSCalibur(ベクトンディッキンソン社)。
【0263】
方法:腫瘍細胞単離及びFACS分析
6週間前に腫瘍を前述のように誘導;
BALB/cマウスから腫瘍を単離;
殺菌ハサミで腫瘍を切り刻み、コラゲナーゼ緩衝液10mLを添加;
37℃で40分間インキュベート;
腫瘍を、RPMIで洗浄しながら3mLの注射器プランジャを用い70μmのファルコン(Falcon)フィルタを通し50mLチューブに濾過;
1X洗浄し4mlsの温RPMI緩衝液に再懸濁;
等量の細胞浮遊液を用いフィコール上で層とし、室温、2000RPMで15分間遠心;
層を単離し、HL−1緩衝液で一回洗浄し、FACS緩衝液中に2×106/mLで再懸濁し、フローサイトメトリー分析を行う;
残存細胞はELISPOT分析に用いた;
細胞を12×75mmのチューブに入れ(50μL/チューブ)、FITC標識抗マウス抗体(2μg/チューブ)とマウス血清(1μL/チューブ)で染色:
・アイソタイプ対照;
・抗CD40;
・抗CD8;
・抗CD4;
・抗CD25;
・抗TCRガンマデルタ;
・抗TCRベータ;
氷上で30分間インキュベート;
FACS緩衝液で一回洗浄、300μLのFACS緩衝液に再懸濁。
【0264】
図27の結果は、腫瘍関連エピトープを有する組換え免疫グロブリンと選択された合成dsRNAモチーフとを共に用いて処置をすると、T細胞受容体マーカーTCRβを提示する腫瘍浸潤リンパ球が、活性化マーカーCD25の発現を獲得したことを示す。
【実施例39】
【0265】
実施例39は、IgGバックボーン内のペプチドエピトープと選択された共刺激分子とを共に用いた腫瘍を有するマウスの治療の成功は、Tc2に加えTc1を含むTcの特定の分化パターンに関連することを示す。
【0266】
腫瘍関連エピトープを有する組換えIgと選択された合成dsRNAモチーフとを共に用いる実施例37に記載の処置により腫瘍の拒絶に成功したマウスを殺し、腫瘍関連エピトープに対するT細胞応答を、ELISPOT分析によって測定した。ELISPOTプレート(ミリポア社、モレシェイム、フランス)を、無菌PBS(50μL/ウェル)に添加した精製抗サイトカインAbs(抗IL2と抗IL4に対しては4ug/mL、抗IFNガンマに対しては8μg/mL、BDファーミンジェン社)と共に4°Cで一夜インキュベートした。翌日、プレートをDMEM培地で2回洗浄し、FBSを含む200μL/ウェルの完全DMEM培地で37°C、一時間処理しブロッキングした。脾臓から単一細胞浮遊液を作成し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計測後、各種濃度のNPペプチドと共に5×105/ウェルでインキュベートした。プレートは37°Cで72時間、5%CO2でインキュベートした。3日後、プレートをPBS−tween20 0.05%(洗浄緩衝液)で5回洗浄し、100μL/ウェルのビオチン化抗サイトカインAbs(PBS−tween20 0.05%−FBS0.1%(ELISPOT緩衝液)中に2μg/mL)と共に、4°Cで一夜インキュベートした。翌日、プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRPのELISPOT緩衝液希釈液(1:1000)と共に1時間インキュベートした。反応は、3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)を添加して開始させ、水道水でプレートを2回洗浄することにより停止させた。次に、プレートを室温で24時間乾燥させた。
【0267】
データは、ImagePro−Plus)ソフトウェア(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリングス)を備えた自動化システム(ナビター社、ニューヨーク州ロチェスター)により得た。結果は、IL−4、IL−2、及びIFN−γに対応するコロニーを形成するスポットの数(平均±SEM)として表した。対照として、腫瘍を拒絶できなかった非処置マウスを用いた(n=4/群)。
【0268】
図28の結果は、腫瘍の拒絶に成功した処置マウスは、治療性Ig上に腫瘍関連エピトープに対するTc1応答をTc2免疫と共に発現したことを示す。対照的に、腫瘍を拒絶できなかったマウスはTc2免疫のみを示した。
【実施例40】
【0269】
実施例40は、IgGバックボーン内のT細胞エピトープと選択された共刺激モチーフとを共に用いた、腫瘍を有するマウスの特定の処置後の、効果的記憶応答の誘導を示す。
【0270】
NP−KdTAA発現sp2/0腫瘍を有するマウスを、実施例37の記載のように、TAAを有する組換えIgと選択された合成RNAモチーフとを共に注射投与することにより処置した。腫瘍の拒絶後、マウスを1500万のNP−Kdエピトープ発現SP2/0細胞を対側投与する皮下注射によって攻撃した。平行して、4匹の対照ナイーブマウスに、腫瘍形成/致死量の同タイプ細胞を同様に注入した。腫瘍の発生とサイズをモニタし、直径(mm)を攻撃からの時間に関して表した。
【0271】
図29の結果は、図示の処置により有効な腫瘍の拒絶が誘導されると、その後は同種の腫瘍で攻撃してもこれに対し効果的な防御が行われ、効果的な免疫記憶が発現することを示す。
【実施例41】
【0272】
実施例41は、驚くべきことに、TAAを有するIgGと共刺激物とを共に用いることによる腫瘍拒絶の誘導は、TAAを欠いた或いはTAAの変異体を示す多数の腫瘍細胞変異体に対する交叉保護を生じることを示す。
【0273】
実施例40の記載のような相同攻撃に対して保護されたマウスに、1500万の腫瘍細胞(TAAを欠いた(抗原変異体なし)同種の腫瘍細胞、或いはNP−Kdエピトープを欠いたTAAの変異体を有する同種の腫瘍細胞)を用いて引き続き攻撃を行った。更に、マウスに、図30Aに添付の表に示される異なる型の腫瘍細胞系(4T−1腺癌)を用い対照として攻撃を行った。いずれの場合にもナイーブ対照が含まれる。
【0274】
腫瘍変異体による多重攻撃に対して保護されたマウスのT細胞免疫の状態は、TAA(NP−Kdペプチド)、HA(MHCクラスII拘束ペプチド)、或いは細胞溶解物から抽出したタンパク質で刺激した脾臓細胞浮遊液を用いたELISPOT分析で評価した。ELISPOTプレート(ミリポア社、モレシェイム、フランス)を、無菌PBS(50μL/ウェル)に入れた精製抗サイトカインAbs(抗IL2と抗IL4に対しては4ug/mL、抗IFNガンマに対しては8μg/mL、BDファーミンジェン社)と共に、4°Cで一夜インキュベートした。翌日、プレートをDMEM培地で2回洗浄し、FBSを含む200μL/ウェルの完全DMEM培地を用い、37°Cで1時間処理しブロッキングした。
【0275】
脾臓から単一細胞浮遊液を作成し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計測後、各種濃度の抗体と共に5×105/ウェルでインキュベートした。プレートは37°Cで72時間、5%CO2でインキュベートした。3日後、プレートをPBS−tween20 0.05%(洗浄緩衝液)で5回洗浄し、100μL/ウェルのビオチン化抗サイトカインAbs(PBS−tween20 0.05%−FBS0.1%(ELISPOT緩衝液)中に2μg/mL)と共に、4°Cで一夜インキュベートした。翌日、プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRPのELISPOT緩衝液希釈液(1:1000)と共に1時間インキュベートした。反応は、3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)を添加して開始させ、水道水でプレートを2回洗浄することにより停止させた。次に、プレートを室温で24時間乾燥させた。
【0276】
データは、ImagePro−Plus)ソフトウェア(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリングス)を備えた自動化システム(ナビター社、ニューヨーク州ロチェスター)により得た。結果は、IL−4、IL−2、及びIFN−γに対応するコロニーを形成するスポットの数(平均±SEM)として表した。対照として、腫瘍を拒絶できなかった非処置マウスを用いた(n=4/群)。対照としてはナイーブマウスが含まれる。データは、器官当たりのサイトカイン産生細胞数(平均±SEM)として表す(n=3/群)。
【0277】
図30A〜30B(図30Aの表を含む)の結果は、腫瘍の拒絶を生じる図示の処置の結果として出現した免疫は、抗原変異体非存在下での攻撃に対する防御となり、サイトカイン産生細胞の全体に亘る増殖に関係付けられることを示す。このことは、提案に係る投薬計画によって増強される抗腫瘍リンパ球の、免疫療法分子によって担われているのではない腫瘍関連抗原に対するレパートリーの広がりを示す。
【図面の簡単な説明】
【0278】
【図1】図1は、特定の抗体及びT細胞免疫に対する各種合成RNAモチーフの作用を示す。
【図2】図2は、特定のdsRNAによる、ウィルス抗原に対する免疫応答の亢進を示す。
【図3】図3は、特定のdsRNAモチーフが自然免疫及び抗原提示細胞に与える影響を示す。
【図4】図4は、特定のdsRNAモチーフの「危険シグナル」性を示す。
【図5】図5は、選択されたdsRNAモチーフの、強力なワクチンアジュバントとしての使用を示す。
【図6】図6は、免疫応答に対するdsRNAモチーフの作用を示すフローチャートである。
【図7】図7は、インフルエンザ感染中に産生された天然の非感染性二本鎖RNAが、タンパク抗原に対する特異的免疫応答に実質的効果を有することを示す。
【図8A】図8Aは、合成RNAモチーフの広範なライブラリーを示す。
【図8B】図8Bは、各種合成RNAが、プロトタイプタンパク抗原に対するB細胞及びT細胞の応答を増強する効果を有することを示す。
【図9】図9は、自然免疫応答に対する選択されたRNAモチーフの作用を示す。
【図10】図10は、別個のRNAモチーフが抗原提示細胞上の異なる受容体に結合することを示す。
【図11】図11は、別個のRNAモチーフがケモカインの様々な上方調節(upregulation)を誘導することを示す。
【図12】図12は、選択された合成RNAモチーフを使用することにより、インフルエンザウィルスの複製を制御できることを示す。
【図13】図13は、選択された合成RNAモチーフであるpI:pC及びpA:pUが、精製タンパクの多量投与に通常伴う大量域寛容を著しく阻害することを示す。
【図14】図14は、選択された合成RNAモチーフがヒト単球細胞に作用することを示す。
【図15A】図15Aは、非タグ化pA:pUは、タグ化pA:pUのヒトTHP−1単球細胞への結合に打勝つことができるが、非タグ化pI:pCは打勝つことができないことを示す。
【図15B】図15Bは、非タグ化pA:pUは、タグ化pA:pUのヒトTHP−1単球細胞への結合に打勝つことができるが、非タグ化pI:pCは打勝つことができないことを示す。
【図16】図16は、dsRNAの精製及び分画工程を示す。
【図17】図17は、選択された合成RNA化合物の分子量が小さい画分ほど、生物学的活性が高いことを示す。
【図18】図18は、pI:pCは、pA:pUと異なり、自己に対する抗体反応を誘導し、別のRNAモチーフに対する交叉反応性成分を有することを示す。
【図19】図19は、選択された複数の合成RNAを同時に使用することにより、IgGが仲介するMHCクラスI拘束性エピトープの輸送に続いて、IL−2及びIFN−γの効果的な誘導が促進されることを示す。
【図20】図20は、組換えIgGによるex vivoでのAPCローディングは、ペプチド自体を使用するのに比べ、MHCクラスI−ペプチド複合体の形成及びTc応答の発生においてより効果的であることを示す。
【図21】図21は、選択された合成RNAを同時投与した場合に、クラスI拘束性Tc1応答のプライミングにおいて、クラスI拘束性エピトープのIgG媒介輸送が最も効果的となることを示す。
【図22】図22は、抗ウィルス細胞障害性T細胞の効果的なプライミングには、IgGにより輸送されたクラスI拘束性エピトープをAPCにin vivoで効果的にローディングすることが必要であると共に、選択された合成RNAモチーフによる適切な指示も必要であることを示す。
【図23】図23は、ウィルス性クラスI拘束性エピトープを有する組換えIgG及び選択された合成dsRNAによって免疫感作を行うことにより、感染による攻撃後のウィルス複製を制限できる免疫応答がプライミングされることを示す。
【図24】図24は、Ig−ペプチドに基づく分子の効力を試験するために用いた腫瘍モデルである。
【図25】図25は、腫瘍関連抗原のAPCへの効果的なin vivoローディングと同時に、選択された合成RNAモチーフによって活性化を行うことが、腫瘍成長の効果的な制御及び腫瘍拒絶の誘導のために必要且つ十分であることを示す。
【図26】図26は、腫瘍関連抗原のAPCへの効果的なin vivoローディングと同時に、選択された合成RNAによって活性化を行うことによって、腫瘍関連抗原に対する効果的な免疫応答を誘導できることを示す。
【図27】図27は、腫瘍関連エピトープを有する組換え免疫グロブリンと選択された合成dsRNAモチーフとを共に用いて処理することにより、T細胞受容体マーカーTCRβを提示する腫瘍浸潤リンパ球が、活性化マーカーCD25の発現を獲得したことを示す。
【図28】図28は、腫瘍拒絶に成功した処置マウスが、Tc2免疫を発現すると共に、治療用Ig上の腫瘍関連エピトープに対するTc1応答を発現したことを示す。
【図29】図29は、図示の処置により有効な腫瘍拒絶が誘導されると、その後は同種の腫瘍が生じそうになっても効果的に防御されることを示し、よって効果的な免疫記憶が発現していることが分かる。
【図30A】図30Aは、腫瘍拒絶を生じる図示の処置の結果として出現した免疫が、抗原変異体非存在下での攻撃に対する防御となり、サイトカイン産生細胞の増殖全般に関連していることを示す。
【図30B】図30Bは、腫瘍拒絶を生じる図示の処置の結果として出現した免疫が、抗原変異体非存在下での攻撃に対する防御となり、サイトカイン産生細胞の増殖全般に関連していることを示す。
【図31A】図31Aは、(a)天然IgG(L鎖−H鎖ヘテロ二量体)、(B)CDR(相補性決定領域)3、2、1或いはフレームワーク領域に挿入された抗原(Ag)由来ペプチド、(C)抗原又は断片で置換したVHセグメント、及び(D)抗原又は抗原断片で置換したVHセグメント及びCH1セグメントを示す。
【図31B】図31Bは、IgGペプチド及びFcペプチドを図示する。
【図31C】図31Cは、選択されたヒトIgGバックボーンの特性を示す。
【図31D】図31Dは、H鎖の安定領域の配列、及び予想される構成の概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本鎖RNAを含む組成物を対象に投与することを含む、対象の抗原に対するT細胞応答を増強する方法。
【請求項2】
前記組成物と前記抗原とを同時投与することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
対象に二本鎖RNAを投与した後に、抗原を投与若しくは接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記二本鎖RNAがポリアデニンとポリウラシルとから成る、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記二本鎖RNAがポリグアニンとポリシトシンとから成る、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抗原に対するTh1細胞の応答を増強する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記抗原に対するTc1細胞の応答を増強する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
非感染性抗原に対する大量域寛容を防止する方法であって、前記非感染性抗原を、ポリアデニンとポリウラシル、又はポリイノシンとポリシトシンから成る二本鎖RNA組成物と共に投与することを含む方法。
【請求項9】
B細胞の不応答を防止する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
抗原がウィルスである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
dsRNAがpA:pUである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
ポリアデニン及びポリウラシルから成るdsRNA配列を含む、抗原に対するT細胞の応答を増強するための組成物。
【請求項13】
前記組成物が抗原を更に含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記抗原が医薬的に許容される担体に添加されて投与される、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記抗原が免疫グロブリンに添加されて投与される、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
前記医薬的に許容されるものがIgGである、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
抗原が腫瘍関連エピトープである、請求項12に記載の組成物。
【請求項18】
抗原がウィルスである、請求項13に記載の組成物。
【請求項19】
抗原が腫瘍関連T細胞エピトープである、請求項12に記載の組成物。
【請求項20】
ポリイノシン及びポリシトシンから成るdsRNA配列を含む、対象の抗原に対するT細胞の応答を増強するための組成物。
【請求項21】
前記組成物が抗原を更に含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項1】
二本鎖RNAを含む組成物を対象に投与することを含む、対象の抗原に対するT細胞応答を増強する方法。
【請求項2】
前記組成物と前記抗原とを同時投与することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
対象に二本鎖RNAを投与した後に、抗原を投与若しくは接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記二本鎖RNAがポリアデニンとポリウラシルとから成る、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記二本鎖RNAがポリグアニンとポリシトシンとから成る、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抗原に対するTh1細胞の応答を増強する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記抗原に対するTc1細胞の応答を増強する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
非感染性抗原に対する大量域寛容を防止する方法であって、前記非感染性抗原を、ポリアデニンとポリウラシル、又はポリイノシンとポリシトシンから成る二本鎖RNA組成物と共に投与することを含む方法。
【請求項9】
B細胞の不応答を防止する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
抗原がウィルスである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
dsRNAがpA:pUである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
ポリアデニン及びポリウラシルから成るdsRNA配列を含む、抗原に対するT細胞の応答を増強するための組成物。
【請求項13】
前記組成物が抗原を更に含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記抗原が医薬的に許容される担体に添加されて投与される、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記抗原が免疫グロブリンに添加されて投与される、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
前記医薬的に許容されるものがIgGである、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
抗原が腫瘍関連エピトープである、請求項12に記載の組成物。
【請求項18】
抗原がウィルスである、請求項13に記載の組成物。
【請求項19】
抗原が腫瘍関連T細胞エピトープである、請求項12に記載の組成物。
【請求項20】
ポリイノシン及びポリシトシンから成るdsRNA配列を含む、対象の抗原に対するT細胞の応答を増強するための組成物。
【請求項21】
前記組成物が抗原を更に含む、請求項19に記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30A】
【図30B】
【図31A】
【図31B】
【図31C】
【図31D】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30A】
【図30B】
【図31A】
【図31B】
【図31C】
【図31D】
【公表番号】特表2005−526778(P2005−526778A)
【公表日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−576589(P2003−576589)
【出願日】平成15年3月14日(2003.3.14)
【国際出願番号】PCT/US2003/007995
【国際公開番号】WO2003/078595
【国際公開日】平成15年9月25日(2003.9.25)
【出願人】(504348323)アストラル,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年3月14日(2003.3.14)
【国際出願番号】PCT/US2003/007995
【国際公開番号】WO2003/078595
【国際公開日】平成15年9月25日(2003.9.25)
【出願人】(504348323)アストラル,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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