説明

免疫調節活性

式Iの化合物の免疫調節剤としての使用を提供する。更に、免疫系の調節並びに増殖T細胞の活性及び/又は増殖の阻害のための、方法及び組成物を提供する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫系を調節するために利用する方法及び組成物に関する。特に、本発明は、リンパ球の活性及び/又は増殖を調節するためのイソフラボノイド化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノクソディオール (2H-1-ベンゾピラン-7-0,3-(ヒドロキシルフェニル)、イソフラブ-3-エン-4',7-ジオール、PXD)は、植物のイソフラボンであるゲニステインの合成類似体である。様々な癌細胞株を使用したインビトロ研究及び動物モデルでのインビボ実験において、PXDが抗癌剤として作用する能力、及び各種の化学療法剤(カルボプラチン、ゲムシタビン、及びトポテカン等)との併用において化学増感剤として作用する能力を有することが実証されている(例えば、Alveroら、2007、Alveroら、2008を参照)。こうした発見に基づいて、PXDは、2004年に米国食品医薬品局の早期承認を受け、ヒト臨床試験に入った。PXDを静脈内注入により末期固形癌患者に投与した2006年の2種類の第1相臨床試験の結果では、該薬剤には副作用が少なく、用量30mg/kgまで良好な忍容性を有することが明らかとなった(Choueiriら、2006、de Souzaら、2006)。両研究において、一部の患者では、最長で処置後6ヶ月まで、疾患は安定状態となった。PXDは、その後、卵巣癌、子宮頚癌、前立腺癌、及び乳癌を含む、ホルモン関連の癌の治療に関する第2相及び第3相臨床試験に入った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開公報WO2006/032085
【特許文献2】国際公開公報WO2006/032086
【特許文献3】国際公開公報WO00/49009
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Alvero AB, Brown D, Montagna M, Matthews M, Mor G. (2007) Phenoxodiol-Topotecan Co-Administration Exhibit Significant Anti-Tumor Activity Without Major Adverse Side Effects. Cancer Biol Ther. 6:612-7.
【非特許文献2】Alvero AB, Kelly M, Rossi P, Leiser A, Brown D, Rutherford T, Mor G. (2008) Anti-tumor activity of phenoxodiol: from bench to clinic. Future Oncol. 4(4):475-82.
【非特許文献3】Berridge MV, Tan AS, McCoy KD, Wang R. (1996) The biochemical and cellular basis of cell proliferation asays that use tetrazolium salts. Biochemica. 4:15-20.
【非特許文献4】Berridge MV, Tan AS. (1998) Trans-plasma membrane electron transport: a cellular assay for NADH- and NADPH-oxidase based on extracellular, superoxide- mediated reduction of the sulfonated tetrazolium salt WST-1. Protoplasma. 205:74-82.
【非特許文献5】Choueiri TK, Mekhail T, Hutson TE, Ganapathi R, Kelly GE, Bukowski RM. (2006) Phase I trial of phenoxodiol delivered by continuous intravenous infusion in patients with solid cancer. Ann Oncol. 17:860-5.
【非特許文献6】de Souza PL, Liauw W, Links M, Pirabhahar S, Kelly G, Howes LG. (2006) Phase I and pharmacokinetic study of weekly NV06 (Phenoxodiol), a novel isoflav-3-ene, in patients with advanced cancer. Cancer Chemother Pharmacol. 58:427-33.
【非特許文献7】Zenhausen G, Gasser O, Saleh L, Villard J, Tiercy J-M, Hess C. (2007) Investigation of alloreactive NK cells in mixed lymphocyte reactions using paraformaldehyde-silenced target cells. J Immunol Methods. 321:196-199.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
T細胞の活性化及び増殖は、免疫応答の発生における正常且つ必須のプロセスである。しかしながら、異常な又は非制御下のT細胞の活性化及び/又は増殖は、炎症性障害及び自己免疫疾患等、多数の病態に関与している。T細胞の活性化又は増殖、及び増殖T細胞の活性を調節する新規の治療的アプローチの開発に対する必要性が依然として存在している。
【0006】
本発明は、強力な化学療法分子であるPXDが、急速に増殖するT細胞を阻害することを含む、特定の免疫機能を調節する能力を有するという発明者の驚くべき発見に基礎を置いている。こうした発見は、PXD及び関連化合物について、これまで未知であり予期できなかった治療標的の範囲を開拓すると共に、これらを使用した治療機会を広げるものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、式Iの化合物であり
【化1】

式中、
R1は、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、又はOC(O)R9であり、
R2及びR3は、独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、ハロ、又はOC(O)R9であり、
Aは、水素、又は任意で置換された次の式のフェニルであり、
【化2】

R4、R5、及びR6は、独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、又はOC(O)R9であり、
R7及びR8は、独立して、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、又はハロであり、
R9は、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、又はアミノであり、かつ
---」の描画は、単結合又は二重結合を表す化合物、
或いは、その薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグの、免疫調節剤としての使用が提供される。
【0008】
一実施形態において、該化合物は、イソフラブ-3-エン-4',7-ジオール、3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)クロマン-7-オール、及び3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-8-メチルクロマン-7-オールから選択される。特定の一実施形態において、該化合物は、イソフラブ-3-エン-4',7-ジオールである。
【0009】
該化合物は、免疫調節剤として、必要とする哺乳動物に対して免疫調節有効量を投与し得る。該化合物は、医薬品組成物の形態で投与し得る。
【0010】
特定の一実施形態において、式Iの化合物の免疫調節活性は、増殖T細胞の増殖及び/又は活性の阻害を含む。典型的には、該T細胞は、異常に又は急速に増殖するT細胞である。或いは、該T細胞は、応答(responder)T細胞であり得る。該化合物は、典型的には急速に又は異常に増殖するT細胞である増殖T細胞のアポトーシスを誘導又は促進し得る。活性の阻害は、典型的には急速に又は異常に増殖するT細胞である増殖T細胞の原形質膜電子伝達(plasma membrane electron transport, PMET)の阻害を含み得る。したがって、該化合物は、免疫調節剤として、必要とする哺乳動物に対して免疫調節有効量を投与し得る。該哺乳動物は、T細胞の異常な増殖又は刺激に関連する疾患又は状態を生じているか、或いはそれを生じやすくなっているものであり得る。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、増殖T細胞の活性及び/又は増殖を阻害する方法が提供され、該方法は、増殖T細胞を、本明細書に記載の式Iの少なくとも1つの化合物或いはその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグの有効量に曝露するステップを備える。
【0012】
当該少なくとも1つの化合物に対する増殖T細胞の曝露は、生体内又は生体外で起こり得る。
【0013】
該増殖T細胞は、T細胞の異常な増殖又は刺激に関連する疾患又は状態を生じている又はそれが生じやすくなっている被験者(subject)に存在するもの又は由来するものであり得る。
【0014】
本発明の第3の態様によれば、哺乳動物の免疫系を調節する方法が提供され、該方法は、本明細書に記載の式Iの少なくとも1つの化合物或いはその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグの免疫調節有効量を、哺乳動物に投与するステップを備える。
【0015】
一実施形態において、該化合物は、典型的には異常に又は急速に増殖するT細胞である増殖T細胞の活性及び/又は増殖を阻害し得る。
【0016】
本発明の第4の態様によれば、T細胞の異常な増殖又は刺激に関連する疾患又は状態の治療又は予防のための方法が提供され、該方法は、本明細書に記載の式Iの化合物或いはその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグの免疫調節有効量を、必要とする哺乳動物に投与するステップを備える。
【0017】
本発明の第5の態様によれば、T細胞の異常な増殖又は刺激に関連する疾患又は状態の治療又は予防用の薬物の製造のための、本明細書に記載の式Iの化合物或いはその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグの使用が提供される。
【0018】
本発明の第6の態様によれば、T細胞の異常な増殖又は刺激に関連する疾患又は状態を生じている被験者に対する治療レジメンを増強する方法が提供され、該方法は、本明細書に記載の式Iの化合物或いはその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグの免疫調節有効量を被験者に投与するステップを備える。
【0019】
上述した態様及び実施形態によれば、典型的には、被験者はヒトである。他の実施形態において、被験者は、霊長類、ヒツジ、ウシ、イヌ、ネコ、ブタ、馬、及びネズミ等により構成された集合から選択された哺乳動物にしてよい。
次に、添付図面を参照して、本発明を、あくまでも非限定的な例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】PXDは、T細胞のPMET、増殖、及び生存能力を阻害する。(A)PMETは、増殖T細胞(黒丸)及び静止T細胞(白丸)における、様々な濃度のPXD存在下でのWST-1/PMS還元として測定した。(B)増殖は、増殖T細胞(黒丸)及び静止T細胞(白丸)における、様々な濃度のPXD存在下でのMTT還元により測定した。(C)生存能力は、増殖T細胞を10μMのPXD(黒三角)又はコントロール(黒丸)に曝露したものと、静止T細胞を10μMのPXD(白三角)又はコントロール(白丸)に曝露したものとのトリパンブルー色素排除率として測定した。コントロールは、PXD処理におけるものと同濃度のDMSOとした。増殖T細胞では全てのパラメータの阻害が観察されたが、静止T細胞では観察されなかった。結果は、3つの別個の実験の平均±SEMとして提示している。
【図2】PXDは、増殖T細胞のアポトーシスの程度を増加させる。(A)乃至(D)は、静止T細胞であり、(E)乃至(H)は、増殖T細胞である。A/E及びC/Gは、それぞれ0.1% DMSO(コントロール)及び10μMのPXDにより24時間処理したT細胞の散布図である。アポトーシスの程度は、対応する散布図における、ゲートされたCD3+T細胞集団からのAV+/PI+細胞のパーセンテージにより測定した。B/F及びD/Hは、それぞれコントロール及びPXD処理T細胞のAV/PIプロットである。PXDは、増殖T細胞においてAV+/PI+細胞のパーセンテージを増加させたが、静止T細胞では増加させなかった。結果は、3つの別個の実験を代表するものである。
【図3】PXDへの曝露により、HLA不一致のMLRにおける増殖応答T細胞が除去される。応答PBMC細胞を、0.1% DMSO(A及びB)及び10μMのPXD(C及びD)の存在下で、HLA不一致のγ線照射刺激細胞に0日目に曝露し、8日目に分析した。A及びCは、それぞれコントロール及びPXD処理済み応答PBMCの分散図である。ゲートは、CD3+Tリンパ球集団を示す。B及びDは、対応するCD3+Tリンパ球集団の増殖プロットであり、コントロール及びPXD処理済みMLRの両方において生存静止集団(CSFEhiAV-)を、コントロールMLRのみにおいて生存増殖集団(CSFEloAV-)を示している。結果は、3つの別個の実験を代表するものである。
【図4】非刺激T細胞をPXDに対して一時的に曝露しても、該細胞がHLA不一致のMLRにおいて応答する能力に影響を与えない。応答細胞は、0.1% DMSO(コントロール)又は10μMのPXDと共に24時間、前インキュベートし、新たな培地中で2回洗浄し、HLA不一致のγ線照射刺激細胞と0日目に混合し、8日目にFACSにより分析した。プロットの説明については、図3を参照されたい。結果は、2つの別個の実験を代表するものである。
【図5】静止応答T細胞をPXDに対して一時的に曝露しても、該細胞がその後HLA不一致の第三者(third party)MLRにおいて応答する能力に影響を与えない。生存静止応答T細胞(CD3+CSFEhiAV-)は、HLA不一致MLRの8日目に選別し、更に8日間インキュベートする(A及びB)か、或いは第三者からのHLA不一致のγ線照射刺激細胞による後続のさらなる第三者MLRにおいて再刺激した(C及びD)。後続のMLRにおいて再刺激した応答T細胞のみが強い増殖を示した(DにはCSFElo集団があり、Bには無い)。結果は、2つの別個の実験を代表するものである。
【図6】PXDに対する様々な細胞型の感受性。様々な細胞型を10μMのPXDと共に24時間インキュベートし、生存率をAV/PI染色により判定し、[PXD曝露後の生存芽球の%]/[0.1% DMSO曝露後の生存芽球の%]により表示した。パーセンテージの値は次の通りである:AML由来HL60:16±5及びHL60ρ0:54±6、ALL由来MOLT-4:44±4、MM由来U226:59±6及びRPMI8226:12±4、一次AML芽球:64±5、一次ALL芽球:23±4、正常BM:89±5、増殖T細胞:69±4、静止T細胞:98±6。細胞株による結果は、少なくとも3つの別個の実験の平均±SEMとして提示しており、骨髄試料による結果は、単一の重複実験における平均±SDとして提示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書及び続く特許請求の範囲を通して、文脈上必要な場合以外は、単語「含む (comprise) 」、及び「含む (comprises) 」又は「含んでいる (comprising) 」等の変化形は、述べられた事項(integer)又は工程、或いは事項又は工程の群を含むことを意味するが、任意の他の事項又は工程、或いは事項又は工程の群の排除を意味しないと理解される。
【0022】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書での使用において、1つ又は1つより多い(即ち、少なくとも1つの)、該冠詞の文法上の対象を示す。一例として、「an element」は、1つの要素又は1つより多い要素を意味する。
【0023】
本明細書での使用において、「治療(treating)」、「治療(treatment)」、「予防(preventing)」、及び「予防(prevention)」という用語は、状態又は症状の治療、状態又は疾患の定着の予防、或いは状態若しくは疾患又は他の何らかの望ましくない症状の進行を別の形で予防、妨害、遅延、又は逆転するあらゆる使用を示す。したがって、「治療」及び「予防」等の用語は、最も広義で解釈されるべきである。例えば、治療は、必ずしも完全に回復するまで患者を治療することを意味しない。「治療」は、特定の障害の重症度を低減させること、或いは、発症を遅延させることを包含する。一部の障害について、本発明の方法は、障害に関連する非常に望ましくない事象又は障害の進行による不可逆的な結果の発生を低減又は改善する観点において、障害を「治療」することを含むが、該事象又は結果の最初の発生を予防するものとはならない場合がある。したがって、治療は、特定の障害の症状の改善を含み、或いは特定の障害の発現を予防すること、又はそのリスクを別の形で減少させることを含む。
【0024】
本明細書での使用において、「有効量」という用語は、化合物又はこうした化合物を含む医薬品組成物の量又は用量を意味し、毒性はないが所望の効果を提供する上で十分な化合物又は医薬品組成物の量又は用量をその意味に含む。必要となる正確な量又は用量は、治療する種、被験者の年齢及び全般的状態、治療する状態の重症度、投与する特定の薬剤、及び投与の形態等の要因に応じて、被験者毎に変化する。そのため、正確な「有効量」又は「有効用量」を規定することは不可能である。しかしながら、いかなる場合でも、適切な「有効量」又は「有効用量」は、日常的な実験のみを使用して当業者が決定し得る。
【0025】
化合物の「免疫調節有効量」に関して本明細書において使用される「免疫調節(immunomodulating)」という用語は、所望するように免疫系又は免疫応答を調節する上で十分な化合物の量又は用量を意味する。免疫調節量は、該化合物の「治療量(therapeutic amount)」と一致する場合もあれば異なる場合もあり、ここで、治療量とは、特定の疾患又は状態に対して非免疫調節的な治療効果を得る上で十分な量である。例えば、免疫調節量は、治療量未満の量であり得、即ち、免疫調節効果を達成するために投与される量又は用量が、非免疫調節的な治療効果を達成するために投与する必要がある量又は用量よりも小さいことがあり得る。
【0026】
本明細書での使用において、「阻害する(inhibit)」という用語は、遅延、予防、減少、又は低減することを意味する。したがって、本発明において、細胞の増殖を「阻害する」本明細書に記載の化合物の能力は、化合物が増殖を減少させ得ること、継続的な細胞増殖を阻害又は予防し得ること、或いは増殖の開始を遅延又は予防し得ることを意味する。細胞増殖の阻害には、その最も広い意味において、細胞死(典型的にはアポトーシス)の誘導又は促進が含まれることは当業者には理解されよう。増殖又は活性の阻害は、全体的又は部分的阻害を包含し、阻害の度合いは、増殖T細胞の活性又は増殖に関連する望ましくない影響を低減又は排除する上で十分なものである。細胞の活性又は増殖の阻害において、こうした阻害は、直接的又は間接的なものであり得る。
【0027】
「薬学的に許容可能な塩」という用語は、電荷を保持し、且つ、例えば塩中で対カチオン又は対アニオンとして、医薬品と共に投与されることが可能な、有機又は無機部分(moiety)を示す。薬学的に許容可能なカチオンは、当業者に公知であり、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、及び4級アミン等を含む。薬学的に許容可能なアニオンは、当業者に公知であり、塩化物、酢酸、クエン酸、炭酸水素、及び炭酸等を含む。
【0028】
「薬学的に許容可能な誘導体」又は「プロドラッグ」という用語は、レシピエントに投与された際、直接的に又は間接的に、親化合物又は代謝産物を与えることができる、或いは、それ自体が活性を示す、活性化合物の誘導体を表す。プロドラッグは、本発明の範囲に含まれる。
【0029】
本願は、PXDにより例示される式Iのイソフラボノイド化合物の免疫調節及び免疫増強能力を初めて記述する。こうした化合物は、リンパ球のサブセット(典型的にはT細胞である)の異常な増殖及び/又は活性を阻害する能力を有することが示される。本願は、これまで予期されなかった本明細書に記載の化合物の活性を記述することにより、免疫反応の調節に関する新規の機会と、様々な免疫関連及び免疫介在性の障害の治療及び治療の増強に関する新規の機会を提供する。
【0030】
したがって、一態様において、本発明は、本明細書に記載した式Iの化合物或いはその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグの免疫調節剤としての使用を提供する。
【0031】
本明細書に例示されるように、PXDは、増殖T細胞において原形質膜電子伝達、細胞増殖、及び細胞生存を阻害し、アポトーシスを誘導する一方、静止T細胞に対しては、対応する作用を有しないことが示される。更に、PXDは、応答T細胞が外部刺激に応答する能力を妨げることが示される。混合リンパ球反応において、増殖同種T細胞は、PXD存在下で除去された。逆に、こうした反応において、非増殖T細胞は、PXDへの曝露後も生存し、外部刺激に応答する能力を保持した。特定の作用機構により限定するつもりはないが、本明細書では、PXDは異常な分裂細胞において優先的に作用するシグナル伝達調節因子であることが提案される。
【0032】
したがって、本発明の特定の態様及び実施形態は、T細胞の活性及び/又は増殖を阻害し、異常なT細胞の増殖又は刺激に関連する疾患及び状態を治療又は予防するための方法を提供する。
【0033】
異常なT細胞の増殖に関連する疾患及び状態に関して本明細書において使用される「関連する(associated with)」という用語は、疾患又は状態が異常なT細胞の増殖により発生し得ること、異常なT細胞の増殖を発生させ得ること、或いは他の形で異常なT細胞の増殖に関連し得ることを意味する。本発明において、異常なT細胞の増殖とは、典型的には、異常に急速な増殖を意味する。こうした疾患及び状態は、非限定的な例として、T細胞白血病、自己免疫疾患、HBV等の慢性ウイルス感染、及び移植片対宿主疾患等の移植又は移植片拒絶反応を含む。自己免疫疾患は、肝硬変、乾癬、狼瘡、リウマチ、大腸炎、糖尿病、アジソン病、伝染性単核症、セザリー症候群、及びエプスタインバーウイルス感染を含むがこれらに限定されない。広範な疾患及び状態が異常T細胞増殖に関連しており、こうした任意の疾患又は状態の治療において本発明が適用性を有することは、当業者には理解されよう。
【0034】
本明細書では、更に、異常なT細胞の増殖又は刺激に関連する疾患又は状態を生じている被験者に対する既存の治療レジメンを増強する方法が提供され、該方法は、本明細書に記載の式Iの化合物或いはその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグの免疫調節有効量を、必要とする被験者に投与するステップを備える。したがって、増殖T細胞の活性及び/又は増殖の低減が有益となる多様な疾患及び状態に対する既存の治療的処置と併せて、本明細書に記載の化合物を使用し得ると考えられる。即ち、本明細書に記載の化合物の免疫調節有効量の投与により、患者は、患っている疾患又は状態に対する既存の治療に応答する能力を改善し得る。
【0035】
本発明の実施形態に従って応用される化合物は、一般式(I)によるものであって、
【化3】

式中、
R1は、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、又はOC(O)R9であり、
R2及びR3は、独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、ハロ、又はOC(O)R9であり、
Aは、水素又は任意で置換された次の式のフェニルであり、
【化4】

R4、R5、及びR6は、独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、又はOC(O)R9であり、
R7及びR8は、独立して、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、又はハロであり、
R9は、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、又はアミノであり、かつ
---」の描画は、単結合又は二重結合を表す化合物、
或いは、その薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグである。
【0036】
一実施形態において、アルキルは、C1-6-アルキル、C1-4-アルキル、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、又はtert-ブチルである。特定の一実施形態において、アルキルは、メチルである。
【0037】
一実施形態において、アルコキシは、C1-6-アルコキシ、C1-4-アルコキシ、メトキシ、又はエトキシである。特定の一実施形態において、アルコキシは、メトキシである。
【0038】
一実施形態において、ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードである。特定の一実施形態において、ハロは、クロロ又はブロモである。
【0039】
一実施形態において、アリールは、任意で1つ以上のC1-C4-アルキル、ヒドロキシ、C1-C4-アルコキシ、カルボニル、C1-C4-アルコキシカルボニル、C1-C4-アルキルカルボニルオキシ、ニトロ、又はハロにより置換された、フェニル、ビフェニル、又はナフチルである。特定の一実施形態において、アリールは、任意でメチル、ヒドロキシ、又はメトキシにより置換されたフェニルである。
【0040】
一実施形態において、アリールアルキルは、任意で1つ以上のC1-C4-アルキル、ヒドロキシ、C1-C4-アルコキシ、ニトロ、又はハロにより置換されたベンジルである。特定の一実施形態において、アリールアルキルは、メチル、ヒドロキシ、又はメトキシにより置換される。
【0041】
本発明の実施形態によれば、式(I)の化合物において、R2及びR3の置換パターンは、以下より選択し得る。
【化5】

【0042】
特定の実施形態によれば、式(I)の化合物は、
R1が、ヒドロキシ、C1-4-アルコキシ、又はOC(O)R9であり、
R2及びR3の一方が、水素、ヒドロキシ、C1-4-アルコキシ、ハロ、又はOC(O)R9であり、R2及びR3の他方が、ヒドロキシ、C1-4-アルコキシ、ハロ、又はOC(O)R9であり、
R7が、水素であり、
R8が、水素、ヒドロキシ、C1-4-アルキル、又はハロであり、かつ
R9が、C1-4-アルキル、フェニル、又はベンジルであり、
或いは、その薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグである。
【0043】
特定の実施形態によれば、式(I)の化合物は、
R1が、ヒドロキシ、メトキシ、又はアセチルオキシであり、
R2及びR3の一方が、水素、ヒドロキシ、メトキシ、ブロモ、クロロ、又はアセチルオキシであり、R2及びR3の他方が、ヒドロキシ、メトキシ、ブロモ、クロロ、又はアセチルオキシであり、かつ
R8が、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、ブロモ、又はクロロであり、
或いは、その薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグである。
【0044】
更に、特定の実施形態によれば、式(I)の化合物は、
R1が、ヒドロキシであり、
R2及びR3の一方が、水素、ヒドロキシ、又はメトキシであり、R2及びR3の他方が、ヒドロキシ又はメトキシであり、かつ
R8が、水素又はメチルであり、
或いは、その薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグである。
【0045】
本発明の特定の一実施形態において、「---」の描画は、二重結合を表し、及び/又は、Aは水素である。したがって、特定の一実施形態によれば、本発明において有用な化合物は、一般式(I-a)によるものであり得、
【化6】

式中、R1、R2、R3、R7、及びR8は、上述した通りである。
【0046】
式(I-a)の化合物は、以下より選択される:
イソフラブ-3-エン-4',7-ジオール (Cpd.1)、
4'-メトキシイソフラブ-3-エン-7,8-ジオール (Cpd.2)、
8-メチルイソフラブ-3-エン-4',7-ジオール (Cpd.3)、
イソフラブ-3-エン-7-オール (Cpd.4)、
イソフラブ-3-エン-3',7-ジオール (Cpd.5)、
イソフラブ-3-エン-4',7,8-トリオール (Cpd.6)、
8-メチルイソフラブ-3-エン-3',7-ジオール (Cpd.7)、
3'-メトキシ-8-メチルイソフラブ-3-エン-4',7-ジオール (Cpd.8)、
3'-メトキシイソフラブ-3-エン-4',7-ジオール (Cpd.9)、
3'-メトキシイソフラブ-3-エン-7-オール (Cpd.10)、
8-メチルイソフラブ-3-エン-7-オール (Cpd.11)、
3',4'-ジメトキシイソフラブ-3-エン-7-オール (Cpd.12)、
3',4'-ジメトキシ-8-メチルイソフラブ-3-エン-7-オール (Cpd.13)、
8-ブロモイソフラブ-3-エン-4',7-ジオール (Cpd.14)、
イソフラブ-3-エン-4',5,7-トリオール (Cpd.15)、及び
4'-ブロモイソフラブ-3-エン-7-オール (Cpd.16)。
【0047】
限定はされないが、本明細書に例示したように、デヒドロエクオール又はフェノクソディオールとしても知られるCpd.1は、本発明において特に適用性を有する化合物である。
【0048】
本発明の他の実施形態において、「---」の描画は、単結合を表す。Aは、任意で置換されたフェニルである。したがって、特定の一実施形態によれば、本発明において有用な化合物は、一般式(I-b)によるものであり得、
【化7】

式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、上述した通りである。
【0049】
式(I-b)の化合物において、R4、R5、及びR6の置換パターンは、以下より選択し得る:
【化8】

【0050】
特定の実施形態によれば、式(I-b)の化合物は、
R4、R5、及びR6が、独立して、水素、ヒドロキシ、C1-4-アルコキシ、C1-4-アルキル、アミノ、OC(O)R9であり、かつ
R9が、C1-4-アルキル、フェニル、又はベンジルであり、
或いは、その薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグである。
【0051】
特定の実施形態によれば、式(I-b)の化合物は、
R4が、水素、ヒドロキシ、メトキシ、アミノ、又はアセチルオキシであり、
R5及びR6が、独立して、水素、ヒドロキシ、メトキシ、アミノ、又はアセチルオキシであり、かつ
R4、R5、及びR6の少なくとも1つが、水素ではなく、
或いは、その薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグである。
【0052】
特定の実施形態によれば、式(I-b)の化合物は、
R4及びR5の一方が、水素、ヒドロキシ、メトキシ、又はアミノであり、R4及びR5の他方が、ヒドロキシ、メトキシ、又はアミノであり、かつ
R6が、水素であり、
或いは、その薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグである。
【0053】
特定の実施形態によれば、式(I-b)の化合物は、
R4が、メトキシであり、かつ
R5が、水素であり、
或いは、その薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグである。
【0054】
R8が水素である式(I-b)の化合物は、以下を含む:
3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)クロマン-7-オール (Cpd.17)、
3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-フェニルクロマン-7-オール (Cpd.18)、
3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(3-メトキシフェニル)クロマン-7-オール (Cpd.19)、
3-(3,4-ジメトキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)クロマン-7-オール (Cpd.20)、
3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メチルフェニル)クロマン-7-オール (Cpd.21)、
3-(4-メトキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-7-メトキシクロマン (Cpd.22)、
3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(2,6-ジメトキシ-4-ヒドロキシフェニル)クロマン-7-オール (Cpd.23)、
3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(2-ヒドロキシフェニル)クロマン-7-オール (Cpd.24)、
3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(3-アシル-2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)クロマン-7-オール (Cpd.25)、
3-(3-ヒドロキシフェニル)-4-(3-メトキシフェニル)クロマン-7-オール (Cpd.26)、
3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-ヒドロキシフェニル)クロマン-7-オール (Cpd.27)、
3-(4-ブロモフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)クロマン-7-オール (Cpd.28)、
3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(3-メトキシフェニル)クロマン-7-オール (Cpd.29)、
3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(3-アミノフェニル)クロマン-7-オール (Cpd.30)、及び
3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-フェノキシフェニル)クロマン-7-オール (Cpd.31)、
或いは、その薬学的に許容可能な塩。
【0055】
R8がメチルである式(I-b)の化合物は、以下を含む:
3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-8-メチルクロマン-7-オール (Cpd.32)、
3-(4-メトキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-7-メトキシ-8-メチルクロマン (Cpd.33)、
3-(3,4-ジメトキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-8-メチルクロマン-7-オール (Cpd.34)、
3-(4-メトキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-8-メチルクロマン-7-オール(Cpd.35)、
3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-7-メトキシ-8-メチルクロマン (Cpd.36)、
3-(3-メトキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-8-メチルクロマン-7-オール(Cpd.37)、
3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-7-メトキシ-8-メチルクロマン (Cpd.38)、
3-(3-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-8-メチルクロマン-7-オール (Cpd.39)、及び
3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-8-メチルクロマン-7-オール (Cpd.40)、
或いは、その薬学的に許容可能な塩。
【0056】
本発明による使用のための式(I-b)の化合物は、2つのキラル中心を有する。単離された又は対の鏡像異性体又はジアステレオ異性体を含む全ての鏡像異性体及びジアステレオ異性体と、それらの任意の割合での混合物が、本発明による使用のために考慮される。式(I-b)の化合物において、複素環上のアリール置換基は、互いに対してシス又はトランスにすることが可能であることは、当業者には明らかであろう。
【0057】
特定の一実施形態では、Cpd.17のシス異性体又はその薬学的に許容可能な塩が考慮される:
【化9】

【0058】
特定の一実施形態では、Cpd.32のシス異性体又はその薬学的に許容可能な塩が考慮される:
【化10】

【0059】
同様に、シス配座のCpd.18乃至31及び33乃至40も、特定の実施形態において考慮される。
【0060】
「アルキル」という用語は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、セクブチル、3級ブチル、ペンチル等の、1乃至6個の炭素原子を有する直鎖及び分岐鎖の飽和アルキル基を含むものと解釈する。アルキル基は、より好ましくは1乃至4個の炭素原子を含み、特にメチル、エチル、プロピル又はイソプロピルである。アルキル基又はシクロアルキル基は、任意で、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、カルボキシル、C1-C4-アルコキシカルボニル、C1-C4-アルキルアミノ-カルボニル、ジ-(C1-C4-アルキル)-アミノ-カルボニル、ヒドロキシル、C1-C4-アルコキシ、ホルミルオキシ、C1-C4-アルキル-カルボニルオキシ、C1-C4-アルキルチオ、C3-C6-シクロアルキル、又はフェニルの1つ以上で置換し得る。典型的には、アルキル基は、置換基を全く有しない。
【0061】
「アリール」という用語は、フェニル、ベンジル、ビフェニル、及びナフチルを含むものと解釈し、任意で、1つ以上のC1-C4-アルキル、ヒドロキシ、C1-C4-アルコキシ、カルボニル、C1-C4-アルコキシカルボニル、C1-C4-アルキルカルボニルオキシ、ニトロ、又はハロで置換し得る。
【0062】
「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨード、好ましくはフルオロ及びクロロ、更に好ましくはフルオロを含むものと解釈する。例えば「ハロアルキル」に対する言及は、モノハロゲン化、ジハロゲン化、及び最大でペルハロゲン化したアルキル基を含む。典型的なハロアルキル基は、例えば、トリフルオロメチル及びペンタフルオロエチルである。
【0063】
本発明によれば、本明細書に記載の化合物の薬学的に許容可能な塩及び誘導体を利用し得る。薬学的に許容可能な塩は、当業者に周知であり、以下のものから形成されるものを含む:酢酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、クエン酸、桂皮酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルタミン酸、グルタル酸、グルコン酸、塩酸、臭化水素酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ナフトエ酸、ヒドロキシナフトエ酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレンアクリル酸、オレイン酸、シュウ酸、オキサロ酢酸、リン酸、ピルビン酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、トリフルオロ酢酸、トリフェニル酢酸、トリカルバリル酸、サリチル酸、硫酸、スルファミン酸、スルファニル酸、及びコハク酸。
【0064】
薬学的に許容可能な誘導体は、当業者に周知であり、溶媒和化合物、薬学的に活性なエステル、プロドラッグ等を含む。これは、生体内で切断されて本発明の化合物又はその活性部分を提供することができる、生理的に切断可能な脱離基を有する誘導体も含む。該脱離基は、アシル、リン酸、硫酸、スルホン酸を含み得、好ましくは、モノ-、ジ-及びペル-アシルオキシ置換化合物であり、その場合一つ以上のペンダント(pendant)ヒドロキシ基が、アシル基、好ましくは、アセチル基で保護される。典型的には、本発明のアシルオキシ置換化合物は、対応するヒドロキシ置換化合物へと容易に切断可能である。
【0065】
本明細書に記載の式Iの化合物は、好ましい活性プロフィール及び良好なバイオアベイラビリティを有すると考えられている。こうした化合物は、出典を明記することによりその開示内容を本願明細書の一部とした国際特許出願PCT/AU2005/001435(WO2006/032085として公開)、PCT/AU2005/001436(WO2006/032086として公開)、及びPCT/AU00/00103(WO00/49009として公開)において記述されている。
【0066】
本発明の方法によれば、本明細書において開示したイソフラボノイド化合物及びこうした化合物を含む組成物は、任意の適切な経路により、全身的、部位的、又は局所的に投与し得る。所与の状況において使用する特定の投与経路は、治療対象の状態の性質、状態の重症度及び範囲、送達すべき特定の化合物の必要用量、及び化合物の潜在的副作用を含む多数の要因により決まる。例えば、適切な濃度の所望の化合物を、治療対象となる身体の部位に直接的に送達する必要が有る場合、投与は、全身ではなく部位的にしてよい。部位的な投与は、非常に高い局所濃度の所望の化合物を必要な部位に送達する能力を提供するため、身体の他の器官が該化合物に曝されることを回避して、これにより潜在的な副作用を低減しつつ、所望の治療又は予防効果を達成することに適している。
【0067】
一例として、本発明の実施形態による投与は、腔内、膀胱内、筋肉内、動脈内、静脈内、眼球内、皮下、局所性、又は経口を含む任意の標準的な経路により達成し得る。
【0068】
本発明の方法を利用する際に、イソフラボノイド化合物は、医薬品組成物に配合し得る。適切な組成は、当業者に公知の方法により調製し得ると共に、薬学的に許容可能な希釈剤、アジュバント、及び/又は賦形剤を含み得る。希釈剤、アジュバント、及び賦形剤は、組成物の他の成分と適合し、またそのレシピエントにとって有害ではないという点において「許容可能」である必要がある。希釈剤、アジュバント、又は賦形剤は、固体又は液体、或いはその両方であってもよく、該化合物と共に単位用量として製剤することができ(例えば錠剤)、該製剤は活性化合物を0.5重量%乃至59重量%、又は活性化合物を100重量%まで含有し得る。1つ又は複数の活性化合物を本発明の製剤に組み込んでよく、該製剤は、任意で1つ以上の補助成分を含む構成要素を混合することにより本質的に構成される、周知の薬学技法の何れかにより調製し得る。
【0069】
薬学的に許容可能な希釈剤の例は、脱塩水又は蒸留水、食塩水、植物油(ピーナッツ油、サフラワ油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、ピーナッツ油、サフラワ油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、ナンキンマメ(arachis)油、又はココナツ油等)、シリコーン油(メチルポリシロキサン、フェニルポリシロキサン、及びメチルフェニルポリシロキサン等のポリシロキサンを含む)、揮発性シリコーン、鉱油(流動パラフィン、軟パラフィン、又はスクアラン等)、セルロース誘導体(メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、又はヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、低級アルカノール(例えば、エタノール又はイソプロパノール)、低級アラルカノール、低級ポリアルキレングリコール又は低級アルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、又はグリセリン)、脂肪酸エステル(パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、又はオレイン酸エチル等)、ポリビニルピリドン、寒天、カラギナン、ガムトラガカント又はガムアカシア、及びワセリンである。典型的には、担体又は担体群は、組成物の1重量%乃至99.9重量%を形成し得る。
【0070】
経口投与に適した製剤は、各々所定量の活性化合物を含有する、カプセル、サシェ、ロゼンジ、又は錠剤等の個別ユニットで提供してもよく、粉末又は顆粒として、水性又は非水性液体中の溶液又は懸濁液として、或いは水中油型又は油中水型エマルションとして提供してもよい。このような製剤は、活性化合物と適切な担体 (上述した1つ以上の補助成分を含有し得る) とを会合させる工程を含む任意の適切な薬学方法により調製し得る。一般に、本発明の製剤は、活性化合物を、液体担体又は細かく分割した固体担体、或いはその両方と均一且つ密接に混合し、その後、必要に応じて、得られた混合物を成形して単位調剤を形成する等して調製する。例えば、錠剤は、任意で1つ以上の他の成分と共に活性化合物を含有する粉末又は顆粒を圧縮又は成形することにより調製し得る。圧縮錠剤は、任意で結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、及び/又は表面活性/分散剤(群)と混合した粉末又は顆粒等の自由流動性の化合物を、適切な機械において圧縮することにより調製し得る。成形錠剤は、不活性液体結合剤で湿潤させた粉末状化合物を適切な機械において成形することにより作製し得る。
【0071】
経口投与用の固体形態は、ヒト又は獣医用の薬務において許容可能な結合剤、甘味料、崩壊剤、希釈剤、香味剤、コーティング剤、保存料、潤滑剤、及び/又は時間遅延剤を含有し得る。適切な結合剤は、ガムアカシア、ゼラチン、コーンスターチ、ガムトラガカント、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、又はポリエチレングリコールを含む。
【0072】
適切な甘味料は、スクロース、ラクトース、グルコース、アスパルテーム、又はサッカリンを含む。適切な崩壊剤は、コーンスターチ、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、グアガム、キサンタンガム、ベントナイト、アルギン酸、又は寒天を含む。適切な希釈剤は、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、デキストロース、カオリン、セルロース、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、又はリン酸二カルシウムを含む。適切な香味剤は、ペパーミント油、ウィンタグリーン、サクランボ、オレンジ、又はラズベリ風味の油を含む。適切なコーティング剤は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸及び/又はそのエステルの重合体又は共重合体、ワックス、脂肪アルコール、ゼイン、セラック、又はグルテンを含む。適切な保存料は、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、又は重亜硫酸ナトリウムを含む。適切な潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、又はタルクを含む。適切な時間遅延剤は、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルを含む。
【0073】
経口投与の液体形態は、上述した薬剤に加えて、液体担体を含有し得る。適切な液体担体には、水、油(オリーブ油、ピーナッツ油、ゴマ油、ヒマワリ油、サフラワ油、ナンキンマメ油、ココナッツ油等)、流動パラフィン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、脂肪アルコール、トリグリセリド、又はその混合物が含まれる。
【0074】
口腔(舌下)投与に適した製剤には、通常スクロース及びアカシア又はトラガントである香味基材中に活性化合物を含むロゼンジと、ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシア等の不活性基材中に該化合物を含むトローチとが含まれる。
【0075】
非経口投与に適した本発明の組成物は、典型的には、活性化合物の滅菌水性調製剤を都合よく含み、この調製剤は、意図するレシピエントの血液と等張にし得る。これらの調製剤は典型的には静脈内投与されるが、皮下注射、筋肉内注射、又は皮内注射によっても投与を達成し得る。こうした調製剤は、該化合物と水又はグリシンバッファとを混合し、得られた溶液を滅菌し、血液と等張にすることにより、都合よく調製し得る。本発明による注射製剤は、一般的に、活性化合物(群)を0.1w/v%乃至60w/v%含有し、0.1ml/分/kg又は必要に応じた速度で投与される。
【0076】
注入用製剤は、例えば、担体としての生理食塩水と、シクロデキストリン又はその誘導体等の可溶化剤とを用いて調製し得る。適切なシクロデキストリンには、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ジメチル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、及びトリ-メチル-β-シクロデキストリンが含まれる。より好ましくは、シクロデキストリンは、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。適切なシクロデキストリン誘導体には、Captisol(R)、即ち、米国特許第5,134,127号に記載のシクロデキストリンのスルホブチルエーテル誘導体及びその類似体が含まれる。
【0077】
直腸投与に適した製剤は、典型的には、単位用量の坐薬として与えられる。これらは、活性化合物を1つ以上の従来型の固体担体、例えば、ココアバターと混合した後、得られた混合物を成形することにより調製し得る。
【0078】
皮膚への局所投与に適した製剤又は組成物は、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾル、又はオイルの形態をとり得る。使用し得る担体には、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、及びそれらの2つ以上の組合せが含まれる。活性化合物は、一般に、0.1w/w%乃至0.5w/w%、例えば、0.5w/w%乃至2w/w%の濃度で存在する。こうした組成物の例には、化粧用皮膚クリームが含まれる。
【0079】
吸入に適した製剤は、溶液、懸濁液、又はエマルションの形態のスプレー組成物として送達し得る。吸入スプレー組成物は、更に、二酸化炭素又は亜酸化窒素又は1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-n-プロパン等の水素含有フッ化炭素、或いはその混合物等の、薬学的に許容可能な噴霧剤を含み得る。
【0080】
経皮投与に適した製剤は、長期間レシピエントの表皮との密接な接触を維持するように構成された個別パッチとして提供し得る。このようなパッチは、活性化合物の濃度が例えば0.1M乃至0.2Mである、任意で緩衝化した水溶液として、活性化合物を適切に含有する。経皮投与に適した製剤は、イオン泳動(例えば、Pharmaceutical Research 3 (6), 318(1986)を参照)により送達してもよく、典型的には、任意で緩衝化した該活性化合物の水溶液の形態をとる。例えば、適切な製剤は、クエン酸又はビス/トリスバッファ(pH6)又はエタノール/水を含み、0.1M乃至0.2Mの活性成分を含有し得る。
【0081】
該活性化合物は、食料品に対して添加、混合、被覆、組合せ、又は別の方法によって追加を行ったもの等、食料品の形態で提供してもよい。食料品という用語は、可能な限り最も広範な意味で使用され、乳製品を含む飲料等の液体調製物と、ヘルスバー、デザート等の他の食品とを含む。本発明の化合物を含有する食品調製物は、標準的な慣行に従って容易に調製することができる。
【0082】
本発明によれば、化合物及び組成物は、治療的又は予防的に投与し得る。治療的な応用において、化合物及び組成物は、既に疾患又は障害を有する患者、或いは症状がある患者に対して、該疾患又は障害、症状、及び/又は任意の関連する合併症を治癒させる、或いは少なくとも部分的に進行を止める上で充分な量で投与される。化合物又は組成物は、患者を効果的に治療する上で十分な活性化合物の量を提供するべきである。
【0083】
特定の被験者に投与される化合物の有効用量は、治療する状態の種類及び状態の段階と、利用する化合物の活性と、利用する組成物と、患者の年齢、体重、全般的な健康状態、性別、及び食生活と、投与の時間と、投与の経路と、化合物の封鎖(sequestration)の割合と、治療の期間と、治療と組み合わせて又は同時に使用される薬剤と、を含む様々な要素、並びに医学において周知である他の関連要素とに応じて決まる。
【0084】
当業者は、日常的な実験により、該当する状態を治療するのに必要となる有効な無毒性の用量を決定することができる。こうした用量は、殆どの場合、個別の事例ごとに決定される。単なる一例として、有効用量は、24時間当たり体重1kgにつき約0.0001mg乃至約1000mgの範囲内であると予想でき、典型的には、24時間当たり体重1kgにつき約0.001mg乃至約750mg、24時間当たり体重1kgにつき約0.01mg乃至約500mg、24時間当たり体重1kgにつき約0.1mg乃至約500mg、24時間当たり体重1kgにつき約0.1mg乃至約250mg、24時間当たり体重1kgにつき約1.0mg乃至約250mg、或いは24時間当たり体重1kgにつき約10mg乃至約200mgの範囲内になると予想し得る。
【0085】
更に、個別の用量の最適量及び間隔が、治療される該状態の性質及び範囲、投与の形態、経路、及び部位、並びに治療される個体とにより主に決定されることは、当業者には明らかであろう。適切な条件は、従来の手法により決定することができる。
【0086】
所定の日数に渡って与えられる1日毎の組成物の投与数等、最適な治療過程は、当業者が従来の治療過程決定試験を使用して確定できることは、当業者には明らかであろう。
【0087】
本発明の方法によれば、イソフラボノイド化合物或いはその薬学的に許容可能な誘導体、プロドラッグ、又は塩は、所望の作用を損なわない他の活性薬剤、或いは所望の作用を補う薬剤との併用投与が可能である。使用される特定の薬剤(群)は、多数の要因に応じて決まり、典型的には治療対象の疾患又は障害に合わせて決定される。薬剤の併用投与は、同時又は連続して行ってよい。同時投与は、単一の組成物に配合される化合物、或いは同時又は同様の時期に投与される別個の組成物に配合される化合物により達成し得る。連続投与は、必要に応じて任意の順番にしてよい。
【0088】
本明細書において、先行文献(又はそれに由来する情報)又は公知の事柄への言及は、その先行文献(又はそれに由来する情報)又は公知の事柄が、本明細書に関係する探求の分野における共通の一般的知識の一部を形成することを確認又は自認するもの、或いは何らかの形で示唆するものではなく、そのように受け取られるべきでもない。
【0089】
次に、以下の具体的な例に関して本発明を説明するが、これらの例が本発明の範囲を何らかの形で限定するものと解釈するべきではない。
【実施例】
【0090】
一般的な方法

材料
Red Cross Blood Bank(オーストラリア、メルボルン)から、健康な志願者からの濃縮血液バッグ(50mL)の提供を受けた。骨髄試料は、Peter MacCallum Tissue Research Management Committeeから倫理承認を取得後(プロジェクト番号07/14)、Peter MacCallum Cancer Instituteの組織バンクから入手した。
【0091】
2-(4-ヨードフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)-5-(2,4-ジスルホフェニル)-2H-テトラゾリウムモノナトリウム塩(WST-1)及び1-メトキシフェナジンメチル硫酸塩(1mPMS)は、同仁化学研究所(日本、熊本)から購入した。PXDは、Novogen Inc(オーストラリア、ニューサウスウェールズ州)から入手した。ヒト抗CD3 mAb、ヒト抗CD28 mAb、ヨウ化プロピジウム(PI)、APC標識マウス抗ヒト抗CD3 mAb、及びFITC標識アネキシンV (AV)は、Pharmingen(Becton Dickinson、オーストラリア、ノースライド)から入手した。ヒト組換えIL-2は、NCIのBiological Resources Branch Preclinical Repository(メリーランド州フレデリック)から入手した。特に記載がない限り、他の全ての試薬は、Sigma(米国ミズーリ州セントルイス)から入手した。PXDは、窒素下において固体の形態で保存して酸化を防ぎ、各実験前に、DMSO中において最終濃度の10000倍又は1000倍で溶解し、その後、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FCS)を補充したハンクス平衡塩溶液(HBSS)又はRPMI-1640培地(GIBCO-BRL、ニューヨーク州グランドアイランド)において希釈した。コントロールは、PXD処置において使用されるものと同濃度のDMSOにより構成した。
【0092】
細胞株は、5%(v/v)ウシ胎仔血清と、2mMのグルタミン酸塩と、25μg/mLのペニシリンと、25μg/mLのストレプトマイシンと、50μg/mLのウリジンと、1mMのピルビン酸塩とを補充したRPMI-1640培地(GIBCO-BRL、ニューヨーク州グランドアイランド)において、1乃至2×106細胞/mL(指数関数的増殖段階)の密度まで、5% CO2に維持した加湿インキュベータにおいて37℃で成長させた。
【0093】
バフィーコートからのPBMCの収集、単離、及び保存
PBMCは、フィコール勾配を使用して、健康な志願者からの血液バッグのバフィーコートより単離した。PBMCは、10%(v/v)FCSを補充したRPMI-1640培地(GIBCO-BRL、ニューヨーク州グランドアイランド)に再懸濁し、生存細胞をトリパンブルー色素排除法により計数した。PBMCは、1.5mLの90% FCS+10% DMSO中、20乃至30×106細胞/バイアルで、液体窒素中において保存した。これらの実験に使用したPBMC試料中の様々な細胞型の頻度は、FACS分析により次のように決定した:CD3+(Tリンパ球)70乃至80%、CD19+(Bリンパ球)5乃至15%、CD14+(単球)10乃至20%、CD56+(NK細胞)5乃至10%、CD15+(好中球)5%未満。CD3+細胞集団は、30乃至40%のCD8+T細胞及び60乃至70%のCD4+T細胞により構成されていた。
【0094】
PBMC(T細胞)のインビトロ活性化
実験の直前に、凍結PBMCを解凍し、Multifuge 3s(Heraeus)において4分間、1400rpmで遠心分離し、RPMI+10% FCSで洗浄し、T細胞培地(RPMI+10% FCS+10μmの2-メルカプトエタノール(Sigma)、1×グルタミン、1×非必須アミノ酸(Gibco))において、2×106細胞/mLで再懸濁した。細胞(2×105)は、10μg/mLの抗CD3抗体及び5μg/mLの抗CD28抗体及び20U/mLのIL-2を各ウェルに追加することで活性化した。細胞は、5% CO2に維持した加湿インキュベータにおいて、リンパ球の多数の大きな球状凝集体又は「バースト("bursts")」が観察されるまで、37℃で4乃至5日間インキュベートした。活性化した増殖T細胞は、その後の実験用にウェルからプールした。静止T細胞は、同じ長さの時間に渡ってインキュベートしたが、但し20U/mLのIL-2のみが存在する状態とした。
【0095】
混合リンパ球反応(Mixed Lymphocyte Reactions)(MLR)
混合リンパ球反応は、互いに関係のないHLA不一致の健康なドナーの血液試料をドナー/レシピエントペアとして使用して、達成した。刺激PBMCは、以前に説明されているように30Gyでγ線照射した(Zenhausenら、2007)。応答PBMCは、PBS中で2回洗浄し、5,6-カルボキシ-サクシニミジル-フルオレセイン-エステル(CSFE)標識(1.25μM、Sigma)を室温で5分間行い、PBS/10% FCS中で2回洗浄した。96 U-ウェルプレートにおいて、ウェル当たり20万個の刺激及び応答細胞をT細胞培地中において1:1の比率で追加した。刺激及び応答細胞は、単独での追加も行い、全ての細胞を5%CO2、37℃の加湿インキュベータにおいて培養した。生存率、CFSE蛍光、及び細胞表面抗原発現を、フローサイトメトリにより判定した。細胞をFACSバッファ(PBS、2% FCS)中で2回洗浄し、50μL/5×105細胞で再懸濁し、FlowJo(TreeStar)ソフトウェアを使用したBecton Dickinson LSRII FACSアナライザにおいて分析した。
【0096】
AML及びALL患者の骨髄試料からの白血病芽球の単離
80%以上の芽球を含有するAML(n=22)及びALL(n=8)患者からの骨髄試料を、組織バンクから選択した。骨髄試料は、解凍し、Multifuge 3s(Heraeus)において4分間、1400rpmで遠心分離し、RPMIにおいて2回洗浄し、RPMI+10%FCS中に再懸濁させた。アリコートを、0.1% DMSO(コントロール)又は10μMのPXDの存在下で24時間インキュベートし、形態及び生存率について検査した。アポトーシスのパーセンテージを、AV/PI染色により、[PXD処置後の生存芽球の%]/[コントロール試料における生存芽球の%]として決定した。
【0097】
WST-1/PMS還元により測定したPMET活性
WST-1/PMS還元率を、以前に説明されているマイクロプレート形式において測定した(Berridge及びTan、1998)。簡潔に言えば、指数関数的増殖期細胞をMultifuge 3s(Heraeus)において4分間、1400rpmで遠心分離し、HBSSバッファ中で洗浄及び再懸濁した。各アッセイにおいて、50μLの阻害剤/バッファ溶液を含む平底マイクロプレートに、50μLの2×106細胞/mL細胞懸濁液をピペットで入れ、最終濃度を1×106細胞/mLとした。ミリQ水中のWST-1/PMSの10×ストック溶液10μLを追加して、色素還元を開始した(最終濃度500μM WST-1及び20μM PMS)。WST-1還元は、BMG FLUOstar OPTIMAプレートリーダにおいて450nmで30乃至60分間、リアルタイムで測定した。
【0098】
MTT還元により測定した細胞増殖
MTT還元は、以前に説明されているように(Berridgeら、1996)マイクロプレート形式で次の通り測定した:指数関数的増殖期細胞をMultifuge 3s(Heraeus)において4分間、1400rpmで遠心分離し、HBSSバッファ中で洗浄及び再懸濁した。各アッセイにおいて、50μLの阻害剤/バッファ溶液を含む平底マイクロプレートに、50μLの2×106細胞/mL細胞懸濁液をピペットで入れ、最終濃度を1×106細胞/mLとした。48時間のインキュベーションに続いて、各ウェルに5mg/mLのMTTを10μL追加して、色素還元を開始した。2時間後、溶解バッファ100μLを追加して、マルチチャネルピペットを用いた手動ピペット操作によりホルマザン結晶を溶解し、その後、BMG FLUOstar OPTIMAプレートリーダにおいてA570を測定した。
【0099】
トリパンブルー色素排除法により測定した細胞生存率
増殖及び静止PBMCを、Multifuge 3s(Heraeus)において室温で4分間、1400rpmで遠心分離し、96 U-ウェルプレート内の新鮮なT細胞培地において、PXD又は0.1%DMSOの存在下で再懸濁(濃度2×106細胞/mLでウェル当たり200μL)し、5% CO2、37℃の加湿インキュベータ内でインキュベートした。トリパンブルー色素排除法により判定される生存細胞は、Neubauer血球計算器により、24時間毎に数日間計数した。
【0100】
アネキシンV/ヨウ化プロピジウム(Propidium iodide)染色
細胞を、Multifuge 3s(Heraeus)において室温で4分間、1400rpmで遠心分離し、pH7.3のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で洗浄し、アネキシンV結合バッファ中で再懸濁した。少量のアリコート(0.5乃至1×106細胞)を1.5mLチューブに移し、Multifuge 3s(Heraeus)において4分間、1400rpmで回転させた。上清のほとんどを除去し、5μLのPI及び5μLのFITC標識AVを湿潤ペレットに加え、ボルテックスした。暗所において氷上に30分間置いた後、500μlのAV結合バッファを追加し、細胞を2分間、1400rpmで遠心分離し、AV結合バッファにより1回洗浄し、FACSチューブ内の300μLのAV結合バッファに再懸濁させた。染色は、FlowJo(TreeStar)ソフトウェアを使用したBecton Dickinson Canto II FACSアナライザを用いてフローサイトメトリにより分析した。
【0101】
実施例1 - 急速に増殖するT細胞の生存率に対するPXDの影響

PXDは、急速に増殖するT細胞のPMET、細胞増殖、及び生存率を阻害する
PMETに対するPXDの影響(図1A)は、細胞非透過性のテトラゾリウム色素であるWST-1の還元を、必須の中間電子受容体である1mPMSの存在下で測定することにより調査した(WST-1/PMS還元)。PXDへの曝露は、増殖T細胞のPMETを阻害したが(46μMのIC50)、静止T細胞に対しては小さな阻害効果しか有しなかった(>200μM)。増殖に対するPXDの影響(図1B)は、テトラゾリウム塩、MTTの細胞内還元を測定することにより判定した。MTT還元は、増殖T細胞において、PXDの存在下で阻害されたが(IC50=5.4μM)、静止T細胞では阻害されなかった(IC50>200μM)。使用された実験条件下において、増殖T細胞は21時間のサイクル時間を有する一方、静止T細胞は、増殖しなかったが、10μMのPXDの存在にもかかわらず生存状態を維持した(図1C)。しかしながら、増殖T細胞の生存率は、10μMのPXDとのインキュベーションにより大幅に損なわれた。
【0102】
PXDは増殖T細胞のアポトーシスを引き起こす
静止及び増殖T細胞におけるアポトーシスの程度を、10μMのPXDに24時間曝露した後にAV/PI染色により判定した(図2)。散布図は、未処理の大きな増殖T細胞芽球(図2E)がPXDによる処理後にアポトーシス受けたことを示している(図2H)。静止T細胞は、影響されなかった(図2D)。生存増殖T細胞のパーセンテージは、10μMのPXDに対する24時間の曝露後に74%(図2F)から51%に低下し(図2H)、一方、生存静止T細胞のパーセンテージは、変化しなかった(図2B及び2D)。
【0103】
PXDへの短時間の曝露が増殖T細胞を死滅させる上で十分である
PXDの効果の発現にはPXDに対する細胞の連続的曝露が必要かを調べるために、増殖T細胞を、様々な期間に渡って10μMのPXDに曝露し、細胞をRPMI中で2回洗浄し、新鮮なT細胞培地において更に24時間インキュベートした。10μMのPXDに対する1分間の短時間曝露により、増殖T細胞のアポトーシスは、PXDへの24時間曝露後に見られたものと同じ程度に誘導された。90% FCS又は90%ヒト血清中でのPXDの前インキュベーションは、PXDが増殖T細胞を死滅させる能力に影響しなかった(表1)。
【0104】
【表1】

【0105】
PXDはHLA不一致MLRにおいて増殖応答T細胞を除去する
PXDが増殖T細胞のアポトーシスを誘導する能力を、HLA不一致のMLRにおいて更に試験した。CFSE標識応答細胞を、0.1% DMSO(コントロール)及び10μMのPXDの存在下で、HLA不一致のγ線照射刺激細胞と0日目に混合した。増殖応答細胞を薬剤へ数日間曝露させるために、応答細胞は、増殖(CFSElo)及び生存率(AV-)について8日目に分析した。同種T細胞(CD3+CFSEloAV-集団)の強い活性化及び増殖がコントロールMLRにおいて見られたが(46.5%、図3D)、PXD処理MLRでは見られなかった(2%、図3B)。一方、静止応答細胞集団(CD3+CFSEhiAV-)は、コントロール及びPXD処理MLRの両方に存在した。
【0106】
実施例2 - 非刺激及び応答T細胞に対するPXDの影響

非刺激(unstimulated)T細胞はPXDへの一時的曝露後に異種抗原に応答する
発明者は、次に、PXDへの一時的曝露が、異種抗原に応答するという非刺激T細胞の正常な能力に影響するかを判定した。非刺激T細胞を10μMのPXDと共に24時間インキュベートし、二回洗浄し、HLA不一致のγ線照射刺激細胞を追加して刺激した。8日後のFACS分析では、同様のサイズのCD3+CFSEloAV-集団(コントロールMLRにおいて62.6%及びPXD処理MLRにおいて56.2%)(図4)で示されるように、非刺激応答T細胞によるPXDへの一時的曝露が、その後の活性化及び増殖に影響を与えないことが明らかとなった。
【0107】
静止応答T細胞は第三者MLRにおいて再刺激可能である
MLRにおいて以前に曝露済みだが活性化されなかった応答T細胞に対するPXD曝露の影響を判定することにより、上述した実験を拡張した。連続する二組のMLRを設定して、応答T細胞とγ線照射刺激細胞とを0日目に混合し、10μMのPXD又は0.1%DMSOを5日目に追加し、応答T細胞の増殖及び生存率を8日目に分析した。生存静止細胞集団(CD3+CFSEhiAV-)を、その後、FACSにより選別し、PXDの非存在下、後続の組の第三者MLRで刺激した。第2のMLRにおいて刺激したT細胞は増殖したが(図5DのCD3+CSFElo集団)、非刺激T細胞は増殖せず(図5B)、PXDが非増殖T細胞の生存率にも機能性にも影響しないことを示した。
【0108】
実施例3 - PXDは骨髄試料からの白血病細胞株及び白血病芽球にアポトーシスを起こさせる

PXDは多数の細胞株においてアポトーシスを引き起こすことが分かっているが、臨床試験は、これまでのところ、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、及び黒色腫を含む固形癌が中心となってきた。発明者は、以前に、PXDがAML由来HL60細胞を死滅させることを明らかにしており、ここでは、この発見を、一群の血液癌と、ALL及びAML患者の骨髄試料からのいくつかの一次白血病芽球とに発展させた(図6)。これらの臨床試料の具体的な特性を表2に記載する。PXDに対する感受性は、細胞株と一次細胞とで異なっていた。興味深いことに、ALL芽球は、AML芽球と比較して、PXDに対する応答の一貫性及び感受性が有意により高く(p=0.0002)、後者はPXDに対する感受性において広範囲に渡る変動性を示した (図6)。
【0109】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物であって、
【化1】

式中、
R1は、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、又はOC(O)R9であり、
R2及びR3は、独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、ハロ、又はOC(O)R9であり、
Aは、水素又は任意で置換された次の式のフェニルであり、
【化2】

R4、R5、及びR6は、独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、又はOC(O)R9であり、
R7及びR8は、独立して、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、又はハロであり、
R9は、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、又はアミノであり、かつ
---」の描画は、単結合又は二重結合を表す化合物、
或いは、その薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグの、
免疫調節剤としての使用。
【請求項2】
前記化合物が、イソフラブ-3-エン-4',7-ジオール、3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)クロマン-7-オール、及び3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-8-メチルクロマン-7-オールから選択される、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記化合物が、イソフラブ-3-エン-4',7-ジオールである、請求項2記載の使用。
【請求項4】
式Iの化合物の免疫調節活性が、増殖T細胞の増殖及び/又は活性の阻害を含む、請求項1乃至3の何れかに記載の使用。
【請求項5】
前記化合物が、増殖T細胞のアポトーシスを誘導又は促進する、請求項4記載の使用。
【請求項6】
活性の阻害が、増殖T細胞の原形質膜電子伝達の阻害を含む、請求項4記載の使用。
【請求項7】
前記増殖T細胞が、急速に又は異常に増殖するT細胞である、請求項4乃至6の何れかに記載の使用。
【請求項8】
前記T細胞が、応答T細胞である、請求項4乃至7の何れかに記載の使用。
【請求項9】
前記化合物が、免疫調節剤として、必要とする哺乳動物に対して免疫調節有効量にて投与される、請求項1乃至8の何れかに記載の使用。
【請求項10】
前記哺乳動物が、T細胞の異常な増殖又は刺激に関連する疾患又は状態を生じているか、或いは生じやすくなっている、請求項9記載の使用。
【請求項11】
前記化合物の免疫調節有効量が、前記化合物が疾患又は状態に対して治療活性を有する治療有効量よりも少ない、請求項1乃至10の何れかに記載の使用。
【請求項12】
増殖T細胞の増殖及び/又は活性を阻害する方法であって、前記増殖T細胞を、上記の式Iの化合物の有効量に曝露するステップを備える、方法。
【請求項13】
前記増殖T細胞が、T細胞の異常な増殖又は刺激に関連する疾患又は状態を生じているか又は生じやすくなっている被験者に存在又は由来する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
哺乳動物内の免疫系を調節する方法であって、式Iの少なくとも1つの化合物或いはその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグの免疫調節有効量を、哺乳動物に投与するステップを備える、方法。
【請求項15】
前記化合物が、増殖T細胞の増殖及び/又は活性を阻害する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記増殖T細胞が、異常に又は急速に増殖するT細胞である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
T細胞の異常な増殖又は刺激に関連する疾患又は状態の治療又は予防のための方法であって、上記の式Iの化合物或いはその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグの免疫調節有効量を、必要とする哺乳動物に投与するステップを備える、方法。
【請求項18】
T細胞の異常な増殖又は刺激に関連する疾患又は状態の治療又は予防用の医薬の製造のための、上記の式Iの化合物或いはその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグの使用。
【請求項19】
T細胞の異常な増殖又は刺激に関連する疾患又は状態を生じている被験者に対する治療レジメンを増強する方法であって、上記の式Iの化合物或いはその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグの免疫調節有効量を被験者に投与するステップを備える、方法。

【図1】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−500809(P2012−500809A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524136(P2011−524136)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【国際出願番号】PCT/AU2009/001117
【国際公開番号】WO2010/022467
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(500445789)ノボゲン リサーチ ピーティーワイ リミテッド (10)
【Fターム(参考)】