説明

免疫調節組成物およびその使用

本発明は、関連する後天性免疫不全疾患の処置または予防を含むレンチウイルス感染症を処置または予防するための、Gagポリペプチドまたは少なくとも1つのその部分と、任意で抗原提示細胞またはその前駆体とから本質的になる組成物を開示する。ある種の態様において、組成物は、単一のGagポリペプチドに由来するまたは種々のGagポリペプチドに由来する複数の重複性および/または非重複性ペプチドから本質的になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、広くは、免疫応答の調節に関する。より具体的には、本発明は、関連する後天性免疫不全疾患の処置または予防を含む、レンチウイルス感染症を処置または予防するための、Gagポリペプチドまたは少なくとも1つのその部分、および任意で抗原提示細胞またはその前駆体から本質的になる組成物に関する。ある種の態様において、組成物は、単一のGagポリペプチドに由来するまたは種々のGagポリペプチドに由来する複数の重複性および/または非重複性ペプチドから本質的になる。
【0002】
本明細書において数値により参照されているさまざまな刊行物の書誌詳細は、説明の終わりに記載されている。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に有効な免疫療法が必要とされている。薬物療法は、生涯にわたるものであり、著しい毒性がある。従来のワクチンを用いたHIV免疫療法でのいくつもの試みは、これまで、ヒト臨床試験において免疫原性が低く、効果が弱かった1〜4。HIV免疫療法を提供するために樹状細胞などの専門的な抗原提示細胞を使用することは、マカクおよび予備的なヒトでの試験において有効性を示したが、高度に特殊化された施設に限られてしまう5, 6。長期の抗レトロウイルス療法(ART)の必要性を減らす単純で断続的な免疫療法は、HIVの処置で飛躍的な前進となるであろう。
【0004】
最近になって、本発明者らは、未分画の全血または末梢血単核球(PBMC)を重複性ウイルス由来ペプチドで処置することを含む、免疫療法を開発した。意義深いことに、OPAL (重複ペプチドパルス自己白血球)と名付けた、この単純な免疫療法は、非近交系集団において、HIV感染症を含む、ウイルス感染症に対して強力な細胞性免疫応答を生じた7, 8。OPAL技法は、(1) 抗原提示細胞の長期エクスビボ培養が不要、(2) 構造タンパク質および調節タンパク質の両方に対するCD4+およびCD8+ T細胞応答の誘導、ならびに(3) ペプチド抗原の容易な産生を含む、さまざまな利点を有する。
【0005】
本発明者らは、今回、重複サル免疫不全ウイルス(SIV)ペプチドに曝露された新鮮な血球をブタオザルに免疫する場合に、Gagのみに対して免疫された動物(「OPAL-Gag動物」)とSIVプロテオーム全体に対して免疫された動物(「OPAL-All動物」)との間のウイルス性の転帰に相違がないことを発見し、これは、GagのみでもT細胞免疫療法に有効な抗原となることを示唆するものである。さらに、意外にも、同一用量のGag重複ペプチドにもかかわらず、OPAL-Gag動物におけるGag特異的なCD4+およびCD8+ T細胞応答がOPAL-All動物におけるものよりも顕著に大きいことも分かった。このことから、Gag由来のペプチドと他のSIVタンパク質由来のペプチドとの間に抗原競合が存在すること、および多タンパク質HIVワクチンによる免疫優勢の非Gag T細胞応答の誘導が治療的または予防的なGag特異的T細胞応答の発生を制限してしまう可能性のあることが示唆される。これらの発見は、レンチウイルス感染症に関連する疾患の処置および予防を含む、レンチウイルス感染症を処置または予防するための新規な組成物および方法の実践に還元された。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明の1つの局面では、対象においてレンチウイルス感染症を処置または予防するための方法を提供し、この方法は対象において、Gagポリペプチドの一部分に対応するアミノ酸配列を含んだ少なくとも1種のペプチドを表面に提示する、抗原提示細胞または抗原提示細胞前駆体の数を増加させる段階から本質的になる。そのような抗原提示細胞および前駆体は、本明細書においてそれぞれ、「Gag特異的抗原提示細胞」および「Gag特異的抗原提示細胞前駆体」ともいわれる。非限定的な抗原提示細胞は樹状細胞、マクロファージおよびランゲルハンス細胞を含む。
【0007】
対象においてGag特異的抗原提示細胞または前駆体の数を増加させる任意の適当な方法が本発明によって企図される。いくつかの態様において、Gagポリペプチドの一部分に対応するアミノ酸配列を含んだ少なくとも1種のペプチドを表面に提示する、抗原提示細胞または抗原提示細胞前駆体の数を増加させる免疫刺激因子を対象に投与する。この種の実例において、免疫刺激因子は、Gagポリペプチドもしくはペプチドまたはプロセッシングされた形態のGagポリペプチドもしくはペプチドが抗原提示細胞によってまたはその前駆体によって提示されるのに十分な時間および条件の下で、GagポリペプチドまたはGagポリペプチドに対応するアミノ酸配列を含んだ少なくとも1種のペプチドから本質的になる組成物と接触させた、抗原提示細胞または前駆体の形態である。他の実例において、免疫刺激因子は、GagポリペプチドまたはGagポリペプチドの一部分に対応するアミノ酸配列を含んだ少なくとも1種のペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、抗原提示細胞またはその前駆体において機能的である調節要素に機能的に接続された該ヌクレオチド配列を含む核酸構築体を含有する、抗原提示細胞または抗原提示細胞前駆体の形態である。そのような核酸構築体は、本明細書において「Gag発現核酸構築体」ともいわれる。他の実例において、免疫刺激因子は、Gagポリペプチド、Gagポリペプチドの一部分に対応する配列を含んだペプチド、およびGag発現核酸構築体から選択される少なくとも1種のGag分子から本質的になる組成物の形態である。この種の実例において、各Gag分子は、抗原提示細胞またはその前駆体への導入(例えば、形質転換、内部移行、飲食作用または食作用による)に適した形態であり、これにはGag分子の可溶型および微粒子型が含まれる。いくつかの態様において、Gag分子は粒子に包含されるか、または粒子に別の方法で結び付けられ、その実例としてはリポソーム、ミセル、脂質粒子、セラミック/無機粒子および重合体粒子が挙げられる。いくつかの態様において、これらの方法は、他のレンチウイルスポリペプチドに含まれる部分に対応するアミノ酸配列を含んだペプチドを表面に提示する抗原提示細胞を対象に投与することを除く。いくつかの態様において、これらの方法は、レンチウイルスの非Gagポリペプチド、レンチウイルスの非Gagポリペプチドに含まれる部分、および非Gagポリペプチドまたは非Gagポリペプチドに含まれる部分が発現可能な核酸構築体から選択される、他のレンチウイルス分子または他のレンチウイルス分子と接触した抗原提示細胞を対象に投与することを除く。いくつかの態様において、これらの組成物は、Gagポリペプチド、Gagポリペプチドの一部分に対応する配列を含んだペプチドおよびGag発現核酸構築体から選択される少なくとも1種のGag分子からなるタンパク質性の成分を含む。
【0008】
ある種の態様において、免疫刺激因子は、薬学的に許容される担体および/または希釈剤とともに投与される。あるいは、またはさらに、免疫刺激因子は、アジュバントとともに、または宿主酵素による分解に対して上記に広く記述されているGag分子を安定化する化合物とともに投与される。適切には、レンチウイルスはヒト免疫不全ウイルス(HIV)およびサル免疫不全ウイルス(SIV)から選択される。
【0009】
いくつかの態様において、免疫刺激因子は、個々のペプチドが、Gagポリペプチドに対応するアミノ酸配列の異なる部分を含み、かつ任意で複数種のペプチドのうちの少なくとも1種の他のペプチドに対する部分的な配列同一性または類似性を示してもよい、複数種のペプチドから本質的になる。この種の実例において、部分的な配列同一性または類似性は、個々のペプチドの一端または両端に含まれる。適切には、これらの末端の一方または両方に、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14個の連続したアミノ酸残基が存在し、その配列は、少なくとも1種の他のペプチド内に含まれるアミノ酸配列と同一または類似である。ある種の態様において、ペプチドは、長さが少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30アミノ酸残基、適切には、長さが約500、200、100、80、60、50、40以下のアミノ酸残基である。適切には、ペプチドの長さは細胞溶解性Tリンパ球応答の発生を増強するように選択され(例えば、長さが約8〜約10アミノ酸のペプチド)、またはTヘルパーリンパ球応答の発生を増強するように選択される(例えば、長さが約12〜約20アミノ酸のペプチド)。いくつかの態様において、ペプチド配列は、Gagポリペプチドに対応する配列の少なくとも約30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%に由来する。具体的な態様において、複数種のペプチドは、2種またはそれ以上の異なるGagポリペプチド由来のペプチドを含む。
【0010】
したがって、関連する局面において、本発明は、対象においてレンチウイルス感染症を処置または予防するための方法を企図し、この方法は、Gagポリペプチドの一部分に対応するアミノ酸配列を含んだ少なくとも1種のペプチドを表面に提示するGag特異的抗原提示細胞またはGag特異的抗原提示細胞前駆体の数を対象において増加させる段階を含み、該Gag特異的抗原提示細胞またはGag特異的抗原提示細胞前駆体は、ペプチドまたはプロセッシングされた形態のペプチドが抗原提示細胞によってまたは前駆体によってその表面に提示されるのに十分な時間および条件の下で、抗原提示細胞または抗原提示細胞前駆体と、複数種のペプチドから本質的になる組成物とを接触させることにより産生され、該組成物の個々のペプチドは、Gagポリペプチドに対応するアミノ酸配列の異なる部分を含み、かつ任意で該複数種のペプチドのうちの少なくとも1種の他のペプチドに対する部分的な配列同一性または類似性を示してもよい。いくつかの態様において、対象はGag特異的抗原提示細胞またはGag特異的抗原提示細胞前駆体を投与される。他の態様において、対象は前記組成物を投与される。
【0011】
本発明の別の局面では、上記に広く記述されているGag特異的抗原提示細胞もしくはGag特異的抗原提示細胞前駆体から本質的になる、または上記に広く記述されている、Gagポリペプチド、Gagポリペプチドの一部分に対応する配列を含んだペプチドおよびGag発現核酸構築体から選択される少なくとも1種のGag分子から本質的になる、レンチウイルス感染症を処置または予防するための組成物を提供する。いくつかの態様において、特定のGag分子または各Gag分子は微粒子型である。
【0012】
関連する局面において、本発明は、レンチウイルス感染症を処置または予防するための抗原提示細胞を産生するためのプロセスを提供する。これらの工程は全体として、Gagポリペプチドの一部分に対応するアミノ酸配列を含んだ少なくとも1種のペプチドが抗原提示細胞によってまたはその前駆体によってその表面に提示されるのに十分な時間および条件の下で、抗原提示細胞または抗原提示細胞前駆体と、上記に広く記述されている、Gagポリペプチド、Gagポリペプチドの一部分に対応する配列を含んだペプチドおよびGag発現核酸構築体から選択される少なくとも1種のGag分子から本質的になる組成物とを接触させる段階を含む。前駆体が使用される場合、前駆体は、抗原提示細胞を前駆体から分化させるのに十分な時間および条件の下で培養されることが適当である。
【0013】
いくつかの態様において、特定のGag分子または各Gag分子を、抗原提示細胞またはその前駆体の実質的に精製された集団と接触させる。他の態様において、個々のGag分子を、抗原提示細胞またはその前駆体の不均一集団と接触させる。これらの態様において、細胞の不均一集団は血球または末梢血単核球でありうる。典型的には、抗原提示細胞またはその前駆体は、単球、マクロファージ、骨髄系列の細胞、B細胞、樹状細胞またはランゲルハンス細胞から選択される。他の態様において、Gag分子を、抗原提示細胞またはその前駆体の無培養集団と接触させる。したがって、無培養集団は均一または不均一であってよく、その実例としては、全血、新鮮血またはその画分、例えば、限定されるものではないが、末梢血単核球、全血の軟膜画分、濃縮赤血球、照射された血液、樹状細胞、単球、マクロファージ、好中球、リンパ球、ナチュラルキラー細胞およびナチュラルキラーT細胞が挙げられる。いくつかの態様において、Gag分子と接触している無培養集団は、活性化条件に供されていない。
【0014】
上記に広く記述されているGag特異的抗原提示細胞は、Gagポリペプチドに対する免疫応答を調節するために、Tリンパ球およびBリンパ球を含む、リンパ球を産生するのにも有用である。したがって、別の局面において、本発明は、Gagによる抗原刺激を受けたリンパ球を産生するための方法を提供し、この方法は全体として、リンパ球を抗原刺激してGagポリペプチドに応答させるのに十分な時間および条件の下で、リンパ球の集団またはそれらの前駆体と、上記に広く記述されているGag特異的抗原提示細胞とを接触させる段階を含む。
【0015】
別の局面において、本発明は、対象においてレンチウイルス感染症を処置または予防するための方法を包含する。これらの方法は全体として、レンチウイルス感染症を処置または予防するのに有効な量で上記に広く記述されている免疫刺激因子、または上記に広く記述されているGagによる抗原刺激を受けたリンパ球を対象に投与する段階を含む。いくつかの態様において、免疫刺激因子またはGagによる抗原刺激を受けたリンパ球は全身的に、典型的には注射により投与される。
【0016】
関連する局面において、本発明は、対象において後天性免疫不全疾患を処置または予防するための方法を提供する。これらの方法は全体として、この疾患を処置または予防するのに有効な量で上記に広く記述されている免疫刺激因子、または上記に広く記述されているGagによる抗原刺激を受けたリンパ球を対象に投与する段階を含む。
【0017】
別の局面において、本発明は、レンチウイルス感染症および後天性免疫不全疾患から選択される病状を処置または予防するための、上記に広く記述されている免疫刺激因子、または上記に広く記述されているGagによる抗原刺激を受けたリンパ球の使用を企図する。いくつかの態様において、この使用にはその病状の処置または予防に適した医薬の調製が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】OPALワクチン接種のT細胞免疫原性を説明するグラフ表示である。IFN-γを発現するSIV Gag特異的CD4 (a)およびCD8 (b) T細胞を、細胞内サイトカイン染色によって経時的に調べた。対照のワクチン非接種動物(丸)と比べてワクチン群の平均±標準誤差を示した。マカクの初回OPALワクチン接種(矢印、SIVmac251感染後4、6、8および10週目)は、重複するSIV Gag 15merペプチド(OPAL-Gag、三角)または全9種のSIVタンパク質にわたるペプチド(OPAL-All、四角)のいずれかをパルスした自己PBMCからなった。初回ワクチン接種は、抗レトロウイルス処置(ART)に乗じて与えた。39、42および42週目の時点で、ARTに乗ぜず、同じ無作為化群においてOPAL免疫療法で動物に再追加免疫を行った。最後のワクチン接種から2週間後の、12週目の時点で、SIV Gag、Env、Polまたは複合調節/アクセサリータンパク質(Nef、Tat、Rev、Vif、Vpx、Vpr[Reg])にわたる重複ペプチドのプールに対するCD4 (c)およびCD8 (d) T細胞を、細胞内サイトカイン染色により全動物において評価した。さらに、SIV Gag CD8 T細胞エピトープKP9に対する応答を、Mane-A10/KP9四量体によって評価した。ワクチン群の平均±標準誤差を0.10未満の両側t検定p値とともに示した。(e) SIV Gag特異的CD8 T細胞応答は、全21頭の生きているOPAL免疫動物を通じて非Gag (Env+ Pol+調節タンパク質)応答の総和に対するCD8 T細胞応答に逆相関した。組み合わせプールに対して50%超のCD8 T細胞応答を有する動物は、主としてEnv (それぞれ50.1%および54.2%)に対する、50.4%および54.5%の全応答を有していた。スピアマンの順位相関を示した。
【図2】OPAL免疫療法の効力を示すグラフ表示である。抗レトロウイルス療法(ART)を最後のワクチン接種後、10週目の時点で中止し、(a) 血漿SIV RNAを追跡調査した。ARTによりウイルス血症を制御した動物26頭を、ワクチン群の平均±標準誤差で説明している。(b) ワクチン接種動物および対照動物の生存を示す。
【図3】OPALワクチン接種の非Gag T細胞免疫原性を説明するグラフ表示である。IFN-γを発現するSIV特異的CD4+およびCD8+ T細胞を、Env (a, b)、Pol (c, d)、および複合調節/アクセサリータンパク質にわたる重複ペプチドのプール(RTNVVV, e, f)に対する細胞内サイトカイン染色によって経時的に調べた。対照のワクチン非接種動物(丸)と比べてワクチン群の平均±標準誤差を示した。4度の初回ワクチン接種を4〜10週目に与え、第2セットの3度の免疫を36〜42週目に与えた。
【図4】CD8+ T細胞Env応答体とGag応答体との間の比較を示すグラフ表示である。Envのみでの応答体6頭、Gagのみでの応答体3頭、Env特異的およびGag特異的CD8 T細胞応答の両方を有する動物3頭ならびに非ワクチン接種対照7頭を以下について調べた。A. ウイルス負荷。B. 末梢CD4 T細胞レベル。C. 感染後44週目までに安楽死されたEnvのみでの応答体6頭中2頭、感染後64週目までに安楽死されたGag応答体3頭中0頭、感染後44週目までに安楽死されたEnv特異的およびGag特異的応答の両方を有する動物3頭中2頭ならびに感染後64週目までに安楽死された対照動物11頭中7頭を示す生存グラフ。ManeA10陽性動物は含めなかった。64週目の前に安楽死された動物のVLおよびCD4+ T細胞数のために、最後の観察値の外挿解析を使った。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
1. 定義
別段の定義がなければ、本明細書において用いられる全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において記述されるものと同様または同等の任意の方法および材料を本発明の実践または試験において用いることができるが、好ましい方法および材料を記述する。本発明の目的のため、以下の用語を以下に定義する。
【0020】
「1つの(a)」および「1つの(an)」という冠詞は1つまたはそれ以上(すなわち少なくとも1つ)の、冠詞の文法的対象をいうよう本明細書において用いられる。例として、「1つの要素」とは、1つの要素またはそれ以上の要素を意味する。
【0021】
「約」とは、参照の分量、レベル、値、数、頻度、割合、次元、サイズ、量、重量または長さに対して30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1%と同量だけ変動する分量、レベル、値、数、頻度、割合、次元、サイズ、量、重量または長さを意味する。
【0022】
「活性化条件」という用語は、サイトカイン(例えば、IL-4、GM-CSFもしくはI型インターフェロン)、ケモカイン、分裂促進因子、リポ多糖、または抗原提示細胞もしくはそれらの前駆細胞においてインターフェロン合成を誘導する薬剤から選択される薬剤の存在下において抗原提示細胞またはそれらの前駆細胞をインキュベートすること; あるいは抗原提示細胞またはそれらの前駆細胞を物理的ストレスに曝露することから選択される活性化処理条件に起因するレベルまたは機能活性でのCD2、CD83、CD14、MHCクラスI、MHCクラスIIおよびTNF-αのそれぞれの発現へと導く処理条件をいう。しかしながら、「活性化条件」という用語は、ごくわずかな細胞活性化を生じる処理条件、例えば、約20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.2%もしくは0.1%未満の細胞が活性化される場合の処理条件、またはCD2、CD83、CD14、MHCクラスI、MHCクラスIIおよびTNF-αのそれぞれが、上記の活性化処理条件に供された抗原提示細胞もしくはそれらの前駆細胞におけるそのレベルもしくは機能活性の約10% (1/10)、20% (1/5)、30% (3/10)、40% (2/5)、50% (1/2)、60% (3/5)、70% (7/10)、80% (4/5)もしくは90% (9/10)までのレベルもしくは機能活性で発現される場合の処理条件を除外することが理解されるものとする。
【0023】
「抗原」とは、脊椎動物、好ましくは哺乳動物において免疫応答を誘発する能力があるタンパク質、ペプチドまたは他の分子もしくは巨大分子の、全部または一部を意味する。そのような抗原はまた、そのタンパク質、ペプチドまたは他の分子もしくは巨大分子で免疫された動物由来の抗体と反応性である。
【0024】
「抗原結合分子」とは、標的抗原に対する結合親和性を有する分子を意味する。この用語は、免疫グロブリン、免疫グロブリン断片、および抗原結合活性を示す非免疫グロブリン由来タンパク質フレームワークにまで及ぶことが理解されよう。
【0025】
「自己の」とは、同じ生物に由来するもの(例えば、細胞、組織など)を意味する。
【0026】
本明細書において用いられる「同種異系間の」という用語は、異なる遺伝子構成のものである細胞、組織、生物などをいう。
【0027】
「同種抗原」とは、血液型抗原のような、1つの種の一部の成員においてだけ見出される抗原を意味する。それとは対照的に、「異種抗原」とは、1つの種の成員に存在するが、別の種の成員に存在しない抗原をいう。それに対応して、「同種移植」とは同じ種の成員間の移植であり、「異種移植」とは異なる種の成員間の移植である。
【0028】
本明細書を通じて、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」、「含む(comprises))」および「含む(comprising)」という単語は、記載された段階もしくは要素または段階もしくは要素の群の包含を意味するものと理解されるが、その他任意の段階もしくは要素または段階もしくは要素の群の除外を意味しないものと理解されよう。したがって、「含む(comprising)」などの用語の使用は、記載された要素が必要とされまたは必須であることを示すが、その他の要素は任意的であり、存在してもしなくてもよいことを示す。「からなる」とは、「からなる」という語句の後に続くもの全てを含み、かつそれらに限定されることを意味する。したがって、「からなる」という語句は、列挙された要素が必要とされまたは必須であること、かつ他の要素が存在しえないことを示す。「から本質的になる」とは、その語句の後に列挙された任意の要素を含み、かつ列挙された要素の開示のなかで明示されている活性または作用に干渉しないまたは寄与する他の要素に限定されることを意味する。したがって、「から本質的になる」という語句は、列挙された要素が必要とされまたは必須であること、しかし他の要素が任意的であり、列挙された要素の活性または作用に影響を与えるか否かによって存在してもしなくてもよいことを示す。
【0029】
本明細書において用いられる場合、「培養(culturing)」、「培養する(culture)」などの用語は、インビトロで細胞の増殖または維持を補助することが示されている条件の下で細胞の集団(または単一の細胞)をインキュベートするという、インビトロで用いられる一連の手順をいう。当技術分野では、培養系において定義される必要がある幅広い数の形式、培地、温度範囲、ガス濃度などを認識している。パラメータは、選択された形式、および本明細書において開示された方法を実践する個人の特定の必要性に基づいて変わりうる。しかしながら、培養パラメータの判定は、実際には日常的であることが認識されている。
【0030】
「に対応する(corresponds to)」または「に対応する(corresponding to)」とは、標的抗原中のアミノ酸配列に対する実質的な類似性を示すアミノ酸配列をコードする抗原を意味する。一般に、抗原は、標的抗原の少なくとも一部に対する少なくとも約30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の類似性または同一性を示す。
【0031】
免疫応答を調節することまたは疾患もしくは病状を処置もしくは予防することに関連して「有効(な)量」とは、その調節、処置または予防に有効な、単一用量のまたは一連の一部としてのいずれかの、それを必要とする個体への組成物のその量の投与を意味する。有効量は、処置される個体の健康状態および身体状態、処置される個体の分類群、組成物の剤形、医学的状態の評価、ならびに他の関連因子に応じて変化するであろう。この量は、日常的試行を通して判定されうる比較的広い範囲に収まるものと予想される。
【0032】
「発現ベクター」とは、ベクターによりコードされるタンパク質の合成を指令する能力がある任意の自律的遺伝要素を意味する。そのような発現ベクターは当業者に公知である。
【0033】
本明細書において用いられる「遺伝子」という用語は、細胞のゲノムのありとあらゆる別個のコード領域、ならびに付随した非コード領域および調節領域をいう。遺伝子はまた、特定のポリペプチドをコードする読み取り枠、イントロン、ならびに発現の調節に関わる隣接した5'および3'非コードヌクレオチド配列を意味するよう意図される。この関連で、遺伝子は、所与の遺伝子と天然で結び付いている、プロモーター、エンハンサー、終結シグナルおよび/もしくはポリアデニル化シグナルのような制御シグナル、または異種制御シグナルをさらに含みうる。DNA配列は、cDNAもしくはゲノムDNAまたはその断片でありうる。遺伝子は染色体外維持に、または宿主への組み込みに適したベクターへ導入されうる。
【0034】
化合物または組成物は、以下のいずれかの能力があるなら「免疫原性」である: a) 未処置の個体において抗原(例えば、ウイルス抗原)に対する免疫応答を起こす; またはb) その化合物もしくは組成物が投与されなかったなら起こると考えられること以上に、個体における免疫応答を再構成し、後押しし、もしくは維持する。化合物または組成物は、単一用量または複数用量で投与された時に、これらの基準のいずれかを達成する能力があるなら、免疫原性である。
【0035】
本明細書において「免疫相互作用的な」への言及は分子間の、特に、分子の一方が免疫系の構成要素である、またはそれを模倣する場合の、任意の相互作用、反応または会合の他の形態への言及を含む。
【0036】
「単離された」とは、天然の状態において通常、付随している成分を実質的にまたは本質的に含まない材料を意味する。
【0037】
「レンチウイルス」という用語は、霊長類レンチウイルス、例えば、ヒト免疫不全ウイルス1型および2型(HIV-1/HIV-2); チンパンジー(SIVcpz)、スーティーマンガベイ(SIVsmm)、アフリカミドリザル(SIVagm)、Syke'sサル(SIVsyk)、マンドリル(SIVmnd)およびマカク(SIVmac)由来のサル免疫不全ウイルス(SIV)を含む、および包含する。レンチウイルスは、ネコレンチウイルス、例えば、ネコ免疫不全ウイルス(FIV); ウシレンチウイルス、例えば、ウシ免疫不全ウイルス(BIV); ヒツジレンチウイルス、例えば、マエディ/ビスナウイルス(MVV)およびヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV); ならびにウマレンチウイルス、例えば、ウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)も含む。全てのレンチウイルスは、Gag、PolおよびEnvタンパク質に加えて、少なくとも2つのさらなる調節タンパク質(Tat、Rev)を発現する。霊長類レンチウイルスは、Nef、Vpr、Vpu、VpxおよびVifを含む他のアクセサリータンパク質を産生する。一般に、レンチウイルスは、免疫不全症に加えて、神経性変性症および関節炎を含む種々の疾患の原因物質である。種々のレンチウイルスのヌクレオチド配列は、(J. M. Coffin, S. H. Hughes, and H. E. Varmus, 「Retroviruses」 Cold Spring Harbor Laboratory Press, 199,7 p 804から)以下のアクセッション番号の下GenBankのなかで見出すことができる: 1) HIV-1: K03455、M19921、K02013、M38431、M38429、K02007およびM17449; 2) HIV-2: M30502、J04542、M30895、J04498、M15390、M31113およびL07625; 3) SIV: M29975、M30931、M58410、M66437、L06042、M33262、M19499、M32741、M31345およびL03295; 4) FIV: M25381、M36968およびU11820; 5) BIV. M32690; 6) E1AV: M16575、M87581およびU01866; 6) ビスナ: M10608、M51543、L06906、M60609およびM60610; 7) CAEV: M33677; ならびに8) ヒツジレンチウイルスM31646およびM34193。さまざまなレンチウイルスポリペプチドのアミノ酸配列も、これらのGenBankアクセッションに提供されている。レンチウイルスDNAは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection: ATCC)から入手することもできる。例えば、ネコ免疫不全ウイルスは、ATCC指定番号VR-2333およびVR-3112の下で入手可能である。ウマ感染性貧血ウイルスAは、ATCC指定番号VR-778の下で入手可能である。ヤギ関節炎脳炎ウイルスは、ATCC指定番号VR-905の下で入手可能である。ビスナウイルスは、ATCC指定番号VR-779の下で入手可能である。
【0038】
「調節する」とは、個体の免疫応答を、直接的にまたは間接的に、増大または低減することを意味する。ある種の態様において、「調節」または「調節する」とは、所望の/選択の応答が、抗原の非存在下でよりもまたは抗原が単独で用いられた場合よりも効率的である(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%またはそれ以上)、迅速である(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%またはそれ以上)、大きさが大きい(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%またはそれ以上)、および/または容易に誘導される(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%またはそれ以上)ことを意味する。
【0039】
本明細書において用いられる「機能的に接続された」または「機能的に連結された」という用語は、遺伝子の転写および任意で翻訳を制御する、プロモーターを含むがこれに限定されない、調節要素の調節的制御下に構造遺伝子を配置することを意味する。異種プロモーター/構造遺伝子の組み合わせの構築において、遺伝子配列またはプロモーターを、その遺伝子配列またはプロモーターと、これが自然環境において制御する遺伝子、すなわち遺伝子配列またはプロモーターが由来する遺伝子との間の距離とほぼ同じ、遺伝子転写開始部位からの距離に位置付けることが一般的に好ましい。当技術分野において公知であるように、この距離には機能の喪失を伴わない若干の変動が含まれうる。同様に、調節配列要素の、その制御下に配置される異種遺伝子に対しての好ましい位置付けは、その自然環境、すなわちそれが由来する遺伝子、における要素の位置付けによって定義される。
【0040】
本明細書において互換的に用いられる「患者」、「対象」、「宿主」または「個体」という用語は、治療または予防が望まれる任意の対象、詳細には脊椎動物対象、およびさらにより詳細には哺乳動物対象をいう。本発明の範囲内に含まれる適当な脊椎動物は、霊長類、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、モルモット)、ウサギ目の動物(例えば、ウサギ、野ウサギ)、ウシ亜科の動物(例えば、ウシ)、ヒツジ科の動物(例えば、ヒツジ)、ヤギ科の動物(例えば、ヤギ)、ブタ科の動物(例えば、ブタ)、ウマ科の動物(例えば、ウマ)、イヌ科の動物(例えば、イヌ)、ネコ科の動物(例えば、ネコ)、鳥類(例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、伴侶鳥、例えばカナリア、セキセイインコなど)、海洋哺乳動物(例えば、イルカ、クジラ)、爬虫類(ヘビ、カエル、トカゲなど)、および魚類を含む脊索動物亜門の任意の成員を含むが、これらに制限されることはない。好ましい対象は、病状または疾患の処置または予防を必要とする霊長類(例えば、ヒト、サル、チンパンジー)である。しかしながら、上記の用語は、症状が存在することを意味するものではないことを理解されたい。
【0041】
「薬学的に許容される担体」とは、局所または全身投与において安全に使用されうる固体または液体の増量剤、希釈剤、封入物質を意味する。
【0042】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基の重合体をいうよう、ならびにその変種および合成類似体をいうよう本明細書において互換的に用いられる。したがって、これらの用語は、天然のアミノ酸重合体に当てはまるだけでなく、1つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然アミノ酸の化学的類似体のような、非天然の合成アミノ酸であるアミノ酸重合体にも当てはまる。
【0043】
本明細書において「プロモーター」への言及は、その最も幅広い視点から解釈されるべきであり、CCAATボックス配列ならびに発生的および/もしくは環境的刺激に応答して、または組織特異的もしくは細胞型特異的な様式で遺伝子発現を変化させるさらなる調節要素(すなわち、上流活性化配列、エンハンサー、およびサイレンサー)の有無にかかわらず、正確な転写開始に必要とされるTATAボックスを含む、古典的なゲノム遺伝子の転写調節配列を含む。プロモーターは通常、これが発現を調節する、構造遺伝子の上流または5'側に位置するが、必ずしもそうとは限らない。さらに、プロモーターを含む調節要素は、通常、遺伝子の転写開始部位の2 kb以内に位置する。本発明による好ましいプロモーターは、細胞における発現をさらに増強するために、および/またはそれが機能的に接続された構造遺伝子の発現のタイミングを変えるために1つまたは複数の特異的な調節要素のさらなるコピーを含んでもよい。
【0044】
「精製ポリペプチド」または「精製ペプチド」という用語は、ポリペプチドもしくはペプチドが由来する細胞もしくは組織源からの細胞材料もしくは他の夾雑タンパク質をポリペプチドもしくはペプチドが実質的に含まない、または化学合成された場合には化学的前駆体もしくは他の化学物質をポリペプチドもしくはペプチドが実質的に含まないことを意味する。「実質的に含まない」とは、本発明のGagポリペプチドまたはペプチドの調製物が少なくとも10%純粋であることを意味する。ある種の態様において、Gagポリペプチドまたはペプチドの調製物は、非ペプチドタンパク質(本明細書において「夾雑タンパク質」ともいわれる)の、または化学的前駆体もしくは非ペプチド化学物質の約30%、25%、20%、15%、10%および望ましくは5% (乾燥重量で)未満を有する。本発明は、乾燥重量で少なくとも0.01、0.1、1.0および10ミリグラムの単離または精製された調製物を含む。
【0045】
本明細書において用いられる「組換えポリヌクレオチド」という用語は、自然には通常見られない形態への核酸の操作によりインビトロで形成されたポリヌクレオチドをいう。例えば、組換えポリヌクレオチドは発現ベクターの形態であってもよい。一般に、そのような発現ベクターは、ヌクレオチド配列に機能的に連結された転写および翻訳調節核酸を含む。
【0046】
「組換えポリペプチド」とは、組換え技術を用いて、すなわち、組換えポリヌクレオチドの発現を通して、作製されたポリペプチドを意味する。
【0047】
「調節要素」または「調節配列」とは、特定の宿主細胞における機能的に連結されたコード配列の発現に必要な核酸配列(例えば、DNA)を意味する。原核細胞に適した調節配列は、例えばプロモーター、ならびに任意でオペレーター配列およびリボソーム結合部位のようなシス作用配列を含む。真核細胞に適した制御配列は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、転写エンハンサー、翻訳エンハンサー、mRNAの安定性を調節するリーダー配列もしくはトレイリング配列(trailing sequence)、ならびに転写されたポリヌクレオチドによってコードされた産物を細胞内の細胞内区画または細胞外環境に標的化する標的化配列を含む。
【0048】
「配列同一性」および「同一性」という用語は、配列が比較のウィンドウに対してヌクレオチドごとに、またはアミノ酸ごとに同一である程度をいうよう本明細書において互換的に用いられる。したがって、「配列同一性の割合」は、比較のウィンドウに対して最適に整列された2つの配列を比較し、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、CysおよびMet)が両方の配列に存在する位置の数を判定して一致した位置の数を出し、一致した位置の数を比較のウィンドウにおける位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で割り、その結果に100を乗じて配列同一性の割合を出すことにより計算される。本発明の目的のために、「配列同一性」は、ソフトウェアに添付の参照マニュアルに用いられているような標準デフォルトを用いてDNASISコンピュータプログラム(ウィンドウズ用バージョン2.5; Hitachi Software engineering Co., Ltd., South San Francisco, California, USAから入手できる)により計算された「一致割合」を意味することが理解されよう。
【0049】
「配列類似性」および「類似性」という用語は、下記の表1に定義されているように同一である、または保存的置換を構成するアミノ酸の割合数をいうよう本明細書において互換的に用いられる。類似性は、GAP (Deveraux et al. 1984, Nucleic Acids Research 12, 387-395)のような配列比較プログラムを用いて判定されうる。このようにして、本明細書に引用されているものと類似したまたは実質的に異なる長さの配列は、アライメントへのギャップの挿入によって比較することができ、そのようなギャップは、例えば、GAPにより用いられる比較アルゴリズムによって判定することができる。
【0050】
2つまたはそれ以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチド間の配列関係を記述するために用いられる用語は、「参照配列」、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一性の割合」、および「実質的同一性」を含む。「参照配列」は、長さがヌクレオチドおよびアミノ酸残基を含む、少なくとも12単量体単位であるが、高い頻度で15〜18単量体単位、多くの場合には少なくとも25単量体単位である。2つのポリペプチドは、それぞれ、(1) 2つのポリペプチド間で類似している配列(すなわち、完全なポリペプチド配列の一部だけ)、および(2) 2つのポリペプチド間で互いに異なる配列を含みうるため、2つ(またはそれ以上)のポリペプチド間の配列比較は、典型的には、配列類似性の局所的領域を特定かつ比較するように「比較ウィンドウ」に対して2つのポリペプチドの配列を比較することによって行われる。「比較ウィンドウ」は、2つの配列が最適に整列された後に配列が同数の連続位置の参照配列と比較される、少なくとも6個の連続位置、通常は約50個〜約100個の連続位置、より通常は約100個〜約150個の連続位置の概念的区域をいう。比較ウィンドウは、2つの配列の最適なアライメントのために参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して約20%もしくはそれ未満の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含みうる。比較ウィンドウを整列させるのに最適な配列アライメントは、アルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, Genetics Computer Group, 575 Science Drive Madison, WI, USAにおけるGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)のコンピュータによる実行により、または検査および選択された種々の方法のいずれかによって作製された最良のアライメント(すなわち、結果的に比較ウィンドウに対して最高率の相同性をもたらす)により行われうる。例えば、Altschul et al., 1997, Nucl. Acids Res. 25:3389により開示されているようなBLASTファミリーのプログラムを参照することもできる。配列解析の詳細な考察は、Ausubel et al., 「Current Protocols in Molecular Biology」, John Wiley & Sons Inc, 1994-1998, Chapter 15のUnit 19.3において見出すことができる。
【0051】
「実質的に精製された集団」などとは、集団における細胞の約80%超、通常は約90%超、より通常は約95%超、典型的には約98%超、およびより典型的には約99%超が、選択されたタイプの抗原提示細胞であることを意味する。
【0052】
「処置」とは、宿主を苦しめる病的状態に関連する症状の少なくともある改善を意味し、この場合の改善は、単位血液あたりのウイルス粒子の数のような、処置中の病的状態に関連する、パラメータ、例えば症状、の大きさの少なくとも軽減をいうよう幅広い意味で用いられる。したがって、処置はまた、宿主が病的状態、または少なくとも病的状態の特徴となる症状にこれ以上苦しまないように、病的状態、または少なくともそれに関連する症状が完全に阻止され、例えば発症が妨害され、または停止し、例えば終結した状況も含む。
【0053】
本明細書において用いられる「無培養の」という用語は、動物から取り出され、インビトロでの細胞の成長もしくは増殖を結果的に生じない、または細胞のごくわずかな成長もしくは増殖(例えば、インキュベーションまたは処理の開始時の細胞数と比べて細胞数の約50%、40%、30%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.2%または0.1%未満の増加)を結果的に生じる条件の下でインキュベートされまたは処理された細胞の集団(または単一の細胞)をいう。ある種の望ましい態様において、細胞の集団(または単一の細胞)は、インビトロでの細胞の維持を補助する条件の下でインキュベートまたは処理される。
【0054】
「ベクター」とは、核酸配列が挿入またはクローニングされうる、例えば、プラスミド、バクテリオファージ、または植物ウイルスに由来する核酸分子、適切にはDNA分子を意味する。ベクターは、好ましくは、1つまたは複数の固有の制限部位を含み、標的細胞もしくは組織またはその前駆細胞もしくは組織を含む一定の宿主細胞中で自己複製の能力があり、またはクローニングされた配列が再生できるように一定の宿主のゲノムと一体化しうる。したがって、ベクターは、自己複製ベクター、すなわち、その複製が染色体の複製と無関係な染色体外実体として存在するベクター、例えば、線状もしくは閉環状プラスミド、染色体外要素、ミニ染色体、または人工染色体でありうる。ベクターは自己複製を確実にするための任意の手段を含んでもよい。あるいは、ベクターは、宿主細胞に導入された場合、ゲノムに組み込まれ、それが組み込まれた染色体と一緒に複製するものであってもよい。ベクター系は単一のベクターもしくはプラスミド、宿主細胞のゲノムに導入されるべき総DNAをともに含む2つもしくはそれ以上のベクターもしくはプラスミド、またはトランスポゾンを含んでもよい。ベクターの選択は、典型的には、ベクターが導入される宿主細胞とのベクターの適合性に依るであろう。ベクターは、適当な形質転換体の選択に使用できる抗生物質耐性遺伝子のような選択マーカーを含んでもよい。
【0055】
2. 略語
以下の略語が本出願を通じて用いられる。
AIDS = 後天性免疫不全疾患
APC = 抗原提示細胞
ART = 抗レトロウイルス療法
BIV = ウシ免疫不全ウイルス
CAEV = ヤギ関節炎脳炎ウイルス
cm = センチメートル
CTL = 細胞傷害性T細胞
EIAV = ウマ感染性貧血ウイルス
FIV = ネコ免疫不全ウイルス
g = グラム
G-CSF = 顆粒球コロニー刺激因子
GM-CSF = 顆粒球マクロファージコロニー刺激因子
hr = 時間
HIV = ヒト免疫不全ウイルス
IFN-γ = インターフェロンガンマ
IFN-α = インターフェロンアルファ
IL = インターロイキン
IV = 静脈内
mAb = モノクローナル抗体
mL = ミリリットル
mg = ミリグラム
μg = マイクログラム
μL = マイクロリットル
μm = マイクロメートル
MVV = マエディ/ビスナウイルス
nm = ナノメートル
NF-κB = 核因子カッパB
OPAL = 重複ペプチドパルス自己白血球
PMBC = 末梢血単核球
pro-GP = プロゲニポイエチン
SIV = サル免疫不全ウイルス
TGFβ = 形質転換増殖因子ベータ
TNF = 腫瘍壊死因子
VL = ウイルス負荷
VLP = ウイルス様粒子
【0056】
3. レンチウイルスGag抗原に基づく免疫調節組成物
本発明は、一つには、SIV Gagのみに対する免疫性を与えた動物とSIVプロテオーム全体に対する免疫性を与えた動物との間でウイルス性の転帰に相違が認められないという驚くべき発見に基礎を置いている。さらに、SIV Gagばかりでなく他のSIV抗原に対する免疫は、免疫優性の非Gag T細胞応答を誘導し、これによって治療的または予防的なGag特異性のT細胞応答の発現が制限されてしまう可能性のあることが意外にも分かった。これらの知見に基づき、本発明者らは、対象におけるレンチウイルス療法または予防法は、最大限に広域な多タンパク質レンチウイルスワクチンを目指す必要はないが、その代わりに、Gagポリペプチドの一部分に対応するアミノ酸配列を含んだ少なくとも1種のペプチドを提示する、対象内の抗原提示細胞または抗原提示細胞前駆体(本明細書において、それぞれGag特異的抗原提示細胞またはGag特異的抗原提示細胞前駆体ともいわれる)の数を増加させることによって本質的に達成可能であることを提案する。本発明はしたがって、対象内のGag特異的抗原提示細胞または前駆体の数を増加させることから本質的になる、対象においてレンチウイルス感染症を処置または予防する方法を提供する。
【0057】
いくつかの態様において、この方法は、Gag特異的抗原提示細胞またはその前駆体の数を増加させる免疫刺激因子の有効量を対象に投与する段階を含む。例えば、免疫刺激因子は、GagポリペプチドまたはGagポリペプチドの一部分に対応するアミノ酸配列を含んだ少なくとも1種のペプチド(本明細書においてGagペプチドともいわれる)から本質的になることができる。あるいは、免疫刺激因子は、調節配列に機能的に連結された、Gagポリペプチドまたは少なくとも1種のGagペプチドのコード配列を含む核酸構築体から本質的になることもできる。他の実例において、免疫刺激因子は、自己または同種異系間のGag特異的抗原提示細胞またはその前駆体から本質的になる。非限定的な抗原提示細胞は、樹状細胞、マクロファージおよびランゲルハンス細胞を含む。
【0058】
それゆえ、実例において、Gag特異的抗原提示細胞またはGag特異的抗原提示細胞前駆体の数は、以下によって増加させることができる。
【0059】
(1) Gagポリペプチドもしくはペプチド、またはプロセッシングされた形態のGagポリペプチドもしくはペプチドが抗原提示細胞によってまたはその前駆体によって提示されるのに十分な時間および条件の下で、GagポリペプチドまたはGagポリペプチドに対応するアミノ酸配列を含んだ少なくとも1種のペプチドから本質的になる組成物と(例えば、エクスビボまたはインビボで)接触させた、抗原提示細胞または前駆体(例えば、対象由来の自己の抗原提示細胞もしくは前駆体または組織適合ドナー由来の同種異系間の抗原提示細胞もしくは前駆体)を対象に投与すること。
【0060】
(2) GagポリペプチドまたはGagポリペプチドの一部分に対応するアミノ酸配列を含んだ少なくとも1種のペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、抗原提示細胞またはその前駆体において機能的であるプロモーターに機能的に接続された該ヌクレオチド配列を含む核酸構築体(本明細書においてGag発現核酸構築体ともいわれる)を含有する、抗原提示細胞または前駆体(例えば、対象由来の自己の抗原提示細胞もしくは前駆体または組織適合ドナー由来の同種異系間の抗原提示細胞もしくは前駆体)を対象に投与すること。
【0061】
(3) Gagポリペプチド、Gagポリペプチドの一部分に対応する配列を含んだペプチド、およびGag発現核酸構築体から選択される少なくとも1種のGag分子から本質的になる組成物を対象に投与すること。Gag分子は可溶型または微粒子型であってもよい。
【0062】
3.1 Gagポリペプチドおよびペプチド
本発明は、Gag特異的抗原提示細胞または前駆体を産生するための、完全長Gagポリペプチド、および完全長Gagポリペプチドの一部に対応するアミノ酸配列を含むペプチド(本明細書においてGagペプチドともいわれる)の使用を企図する。実例となるペプチドは、少なくとも約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40、50、60、70、80、90、100、120、150、300、400もしくは500個の連続したアミノ酸残基、または完全長Gagポリペプチドに存在するアミノ酸の総数近くまでを含む。典型的には、Gagペプチドは、抗原提示細胞またはその前駆体によってプロセッシングされおよび/または提示されうる適当なサイズのものである。いくつかの因子がペプチドサイズの選択に影響を与えうる。例えば、ペプチドのサイズは、それがCD4+ T細胞エピトープ、CD8+ T細胞エピトープおよび/またはB細胞エピトープ、ならびにそれらのプロセッシングの要件を含む、またはそれらのサイズに対応するように選択することができる。クラスI拘束性CD8+ T細胞エピトープは、典型的には、長さが8〜10アミノ酸残基であり、非天然の隣接残基の隣りに配置されるなら、そのようなエピトープは一般的に、それらが効率的にプロセッシングされ提示されうることを確実にするよう2〜3個の天然の隣接アミノ酸残基を必要としうることを当業者は認識するであろう。クラスII拘束性CD4+ T細胞エピトープは、通常、長さが12〜25アミノ酸残基の範囲であり、効率的なタンパク質分解プロセッシングには、天然の隣接残基が関与している可能性が考えられるものの、天然の隣接残基を必要としないかもしれない。クラスII拘束性エピトープのもう一つの重要な特徴は、それらがその中央に、クラスII MHC分子に特異的に結合する9〜10アミノ酸残基のコアを一般的に含有しており、このコアの両側にある隣接配列が配列非依存的な様式で、クラスII MHC抗原の両側にある保存された構造と会合することにより結合を安定化させるということである。したがって、クラスII拘束性エピトープの機能的領域は、典型的には、約15アミノ酸残基長に満たない。線状B細胞エピトープ、およびクラスII拘束性エピトープのような、それらのプロセッシングをもたらす因子のサイズはかなり変わりやすいが、そのようなエピトープはサイズが15アミノ酸残基よりも小さいことが多い。上記から、ペプチドのサイズは少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30アミノ酸残基であることが、必須ではないが、有利である。ペプチドのサイズは約500、200、100、80、60、50、40アミノ酸残基以下であることが適当である。いくつかの態様において、ペプチドのサイズは、T細胞および/またはB細胞エピトープの喪失を最小限に抑えるのに十分大きい。他の態様において、ペプチドのサイズは、ペプチド内に含まれるT細胞および/またはB細胞エピトープの抗原提示細胞による提示のために十分である。この種の実例において、ペプチドのサイズは約15アミノ酸残基である。
【0063】
多数のGapポリペプチド配列およびその対応するコード配列が当技術分野において公知であり、これらを精製、合成または組換えGapポリペプチドおよびペプチドまたはそれらのコード配列の調製に用いることができる。実例となるGapポリペプチド配列は、GenBank、EMBLおよびSWISSPROTを含む、公的に利用可能なデータベースのいずれかより得ることができる。例えば、代表的なHIV-1 Gagポリペプチド配列は、以下のアクセッション番号AAB04036、AAB03744、AAB59875、AAA44853、AAB04036、AAB50258、AAA44987およびAAB59747の下でGenBankから入手可能である。非限定的なHIV-2 Gagポリペプチド配列は、以下のアクセッション番号AAB00736、AAA76840、AAA43932、AAB00745、AAB00763、AAB01351およびAAA43941の下でGenBankから入手可能である。さらに、実例となるSIV Gagポリペプチド配列は、以下のアクセッション番号AAA91905、AAA91913、AAA47588、AAA91922、AAA74706、AAA47632、AAB59905、AAA91930およびAAB59769の下でGenBankから入手可能である。代表的なFIV Gagポリペプチド配列は、以下のアクセッション番号AAB59936、AAA43075およびAAB09309の下でGenBankから入手可能である。BIV Gagポリペプチド配列の非限定的な例は、アクセッション番号AAA91270の下でGenBankから入手可能である。実例となるE1AV Gagポリペプチド配列は、以下のアクセッション番号AAB59861およびAAA43003の下でGenBankから入手可能である。非限定的なビスナGagポリペプチド配列は、以下のアクセッション番号AAA17520、AAA48353、AAA48358、AAA17523およびAAA17528の下でGenBankから入手可能である。代表的なCAEV Gagポリペプチド配列は、アクセッション番号AAA91825の下でGenBankから入手可能である。実例となるヒツジレンチウイルスGagポリペプチド配列は、以下のアクセッション番号AAA66811およびAAA46779の下でGenBankから入手可能である。しかしながら、本発明は任意の特定のGagアミノ酸または核酸配列に限定されることはなく、任意の天然もしくは組換えによるGagポリペプチドまたはそれらのコード配列にまで広く及ぶことが理解されるものとする。
【0064】
具体的な態様において、Gag特異的抗原提示細胞またはその前駆体を産生するために複数種のペプチドを用い、ここで個々のペプチドが、Gagポリペプチドに対応するアミノ酸配列の異なる部分を含み、かつ任意で該複数種のペプチドのうちの少なくとも1種の他のペプチドに対する部分的な配列同一性または類似性を示してもよい。部分的な配列同一性または類似性は、典型的には、個々のペプチドの一端または両端に含まれる。1つの態様において、個々のペプチドの一端または両端に少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、40、50個の連続したアミノ酸残基が存在し、その配列は、少なくとも1種の他のペプチド内に含まれるアミノ酸配列と同一または類似である。代替の態様において、個々のペプチドの一端または両端に500、100、50、40、30個未満の連続したアミノ酸残基が存在し、その配列は、少なくとも1種の他のペプチド内に含まれるアミノ酸配列と同一または類似である。そのような「配列重複」は、Gagポリペプチド内に含まれる任意の潜在的なエピトープの喪失を防ぐまたは別の方法で減らすのに有利である。本明細書において開示される具体例において、配列重複は11アミノ酸残基である。
【0065】
ある種の態様において、個々のペプチドのサイズは、約14または15アミノ酸残基であり、個々のペプチドの一端または両端の配列重複は、約11アミノ酸残基である。しかしながら、他の適当なペプチドサイズおよび配列重複サイズが本発明により企図され、当業者はそれを容易に確認できることが理解されよう。
【0066】
典型的には、ペプチドが部分的な配列類似性を有する場合、それらの配列は、通常、1つまたは複数の保存および/または非保存アミノ酸置換によって異なるであろう。例示となる保存的置換は表1に記載されている。保存または非保存置換は、Gag内の多型に対応しうる。この関連で、多型Gagポリペプチドは異なるウイルス株または分岐群によって発現されることが周知である。したがって、Gagの中に多型領域が存在する場合、多型部位のアミノ酸残基のバラツキを網羅するさらなるセットのペプチドを用いることが一般的に望ましい。
【0067】
複数種の重複ペプチドを産生するためにGagポリペプチドの全配列を利用することが、必ずではないが、有利である。典型的には、Gagポリペプチドに対応する配列の少なくとも330、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42.43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%が重複ペプチドを産生するために用いられる。しかしながら、重複ペプチドを産生するために利用されるGagポリペプチドからの配列情報が多ければ多いほど、より大きな非近交系集団適用範囲が免疫原としてのこの重複ペプチドになることが理解されよう。Gagポリペプチドからの配列情報は除外されないことが適切である(例えば、免疫学的エピトープの明らかな欠損が理由として挙げられる。より稀なまたは準優位なエピトープはうっかり見逃される可能性があるため)。必要に応じて、Gagポリペプチド内の超可変配列がペプチドの重複セットの構築から除外されうるか、または多型領域を網羅するペプチドのさらなるセットが構築され投与されうる。ペプチド配列は、Gagポリペプチドに由来しないさらなる配列を含みうる。これらのさらなる配列は、溶解性、安定性もしくは免疫原性の改善、または精製の円滑化を含む、さまざまな機能を持ちうる。典型的には、そのようなさらなる配列は、各ペプチドの一端または両端に含まれる。
【0068】
重複ペプチドは任意の適当なGagアミノ酸配列に基づいてデザインすることができ、その実例は上記に、ならびに表4および5に記載されている。ヒトでの病原性HIV-1ウイルスに適したモデルであることがともに知られている、サル免疫不全ウイルス(SIV)および/またはキメラSIV-HIV-1 (SHIV)に対する免疫応答を調節するための代表的な重複ペプチドは、以下の表2および3に記載したGagポリペプチド配列の1つまたは複数に基づくことができる。
【0069】
Gagポリペプチドおよびペプチドは、当業者に公知の任意の適当な手順によって調製することができる。例えば、Gagペプチドは、例えばAtherton and Shephard (1989, Solid Phase Peptide Synthesis: A Practical Approach. IRL Press, Oxford)のChapter 9におよびRobergeら(1995, Science 269: 202)に記述されるように、溶液合成または固相合成を用いて好都合に合成することができる。合成には、例えば、t-ブチルオキシカルボニル(t-Boc)または9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)化学のいずれかを用いることができる(Coligan et al., Current Protocols in Protein Science, John Wiley & Sons, Inc. 1995-1997のChapter 9.1; Stewart and Young, 1984, Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd ed. Pierce Chemical Co., Rockford, Ill; およびAtherton and Shephard, 前記を参照のこと)。具体的な態様において、個々のペプチドは、細胞へのパルス時にペプチドの大プールが過剰量のDMSOを含まないように、高い濃度(ペプチド1 mg/DMSO 10〜30 μL)でDMSO (例えば、100%純粋なDMSO)に溶解される。ある種の有利な態様において、可溶型の、1つまたは複数のペプチドセットが対象に好都合な投与のための単一の容器(例えば、即時再注入のための血液チューブまたはバイアル)に入れられるが、そのような容器も本発明によって企図される。
【0070】
あるいは、Gagポリペプチドまたはペプチドは、(a) Gagポリペプチドまたはペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、調節配列に機能的に連結された該ヌクレオチド配列を含む核酸構築体を調製する段階; (b) 核酸構築体を適当な宿主細胞に導入する段階; (c) 宿主細胞を培養してヌクレオチド配列を発現させる段階; および(d) Gagポリペプチドまたはペプチドを単離する段階を含む手順によって調製することもできる。核酸構築体は、典型的には、発現ベクターの形態にある。例えば、発現ベクターは、プラスミドのような自己複製染色体外ベクター、または宿主ゲノムへ組み込まれるベクターでありうる。典型的には、調節配列は、プロモーター配列、リーダーまたはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始および終止配列、翻訳開始および終結配列、ならびにエンハンサーまたはアクチベーター配列を含むが、これらに限定されることはない。当技術分野において公知の構成性または誘導性プロモーターが本発明によって企図される。プロモーターは、天然プロモーターか、または2つ以上のプロモーターの要素を組み合わせたハイブリッドプロモーターのいずれかでありうる。調節配列は、一般的に、発現に用いられる宿主細胞に適するであろう。多種の適切な発現ベクターおよび適当な調節ポリヌクレオチドが、種々の宿主細胞について当技術分野において公知である。ある種の態様において、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択を可能とするように選択可能なマーカー遺伝子を含む。選択遺伝子は当技術分野において周知であり、用いられる宿主細胞によって変化しうる。他の態様において、発現ベクターはまた、Gagポリペプチドまたはペプチドが融合パートナーとの融合ポリペプチドとして発現されるように、融合パートナーをコードする核酸配列を含む。融合パートナーの主な利点は、それらが融合ポリペプチドの特定および/または精製を補助することである。例示的な融合パートナーは、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ヒトIgGのFc部分、マルトース結合タンパク質(MBP)およびヘキサヒスチジン(HiS6)を含むが、これらに限定されることはなく、これらはアフィニティークロマトグラフィーによる融合ポリペプチドの単離に特に有用である。アフィニティークロマトグラフィーによる融合ポリペプチドの精製を目的として、アフィニティークロマトグラフィーに関連する母材は、それぞれ、グルタチオン-、アミロース-、およびニッケル-またはコバルト-結合樹脂である。多くのそのような母材は、(HIS6)融合パートナーに有用なQIAexpress (商標)システム(Qiagen)およびPharmacia GST精製システムのような「キット」の形態で入手できる。好ましい態様において、組換えポリヌクレオチドは、市販ベクターpFLAG (商標)において発現される。有利なことには、融合パートナーはまた、例えば第Xa因子、トロンビンおよびインテイン(タンパク質イントロン)に対する、プロテアーゼ切断部位を有し、これによって関連するプロテアーゼが本発明の融合ポリペプチドを部分的に消化し、かくして、その融合ポリペプチドから組換えGagポリペプチドまたはペプチドが遊離可能とされる。次いで、遊離したGagポリペプチドまたはペプチドをその後のクロマトグラフィー分離によって融合パートナーから単離することができる。本発明による融合パートナーはまた、通常、特異的抗体が利用可能な短いペプチド配列である、「エピトープタグ」をそれらの範囲内に含む。特異的モノクローナル抗体が容易に利用可能なエピトープタグの周知の例としては、c-Myc、インフルエンザウイルス、赤血球凝集素およびFLAGタグが挙げられる。
【0071】
核酸構築体を宿主細胞に導入する段階は、トランスフェクションおよび形質転換を含む任意の適当な技術を用いて達成することができ、その選択は、利用される宿主細胞に依るであろう。そのような方法は当業者に周知である。本発明のペプチドは、合成構築体で形質転換された宿主細胞を培養することによって産生されうる。タンパク質発現に適した条件は、発現ベクターおよび宿主細胞の選択によって異なるであろう。これは、日常の実験を通じて当業者により容易に確かめられる。発現に適した宿主細胞は原核生物または真核生物でありうる。本発明によるポリペプチドの発現に好ましい宿主細胞の1つは細菌である。用いられる細菌は大腸菌(Escherichia coli)でありうる。あるいは、宿主細胞は、バキュロウイルス発現系で利用されうる、例えばSF9細胞のような、昆虫細胞でありうる。
【0072】
Gagポリペプチドまたはペプチドのアミノ酸は、天然に存在しなくてもまたは天然に存在してもよい。ペプチド合成中の非天然アミノ酸および誘導体の例としては、4-アミノ酪酸、6-アミノヘキサン酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-5-フェニル吉草酸、4-アミノ3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、t-ブチルグリシン、ノルロイシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、2-チエニルアラニンおよび/またはアミノ酸のD-異性体の使用が挙げられるが、これらに限定されることはない。本発明によって企図される非天然アミノ酸のリストは、表6に示されている。
【0073】
本発明はまた、Gagポリペプチドおよびペプチドを、タンパク質分解に対するそれらの抵抗性を変化させるために、または溶解特性を最適化するために、またはそれらを免疫原としてより適したものにするために通常の分子生物学的技術を用いて改変することを企図する。
【0074】
3.2 遺伝子治療のためのGag発現核酸構築体
具体的な態様において、遺伝子治療の目的で、Gag特異的抗原提示細胞を作製するために、調節要素に機能的に接続されたGagコード配列を含む核酸構築体を用いる。遺伝子治療とは、発現核酸または発現性核酸の、対象への投与によって行われる治療をいう。本発明のこれらの態様において、核酸構築体は抗原提示細胞中でそのコードされるGagポリペプチドまたはペプチドを産生し、それによって所望の治療効果または予防効果を媒介する。
【0075】
当技術分野において利用可能な遺伝子治療のための方法のいずれも本発明によって用いることができる。例示的な方法を以下に記述する。
【0076】
遺伝子治療の方法の概説については、Goldspiel et al., Clinical Pharmacy 12:488 505 (1993); Wu and Wu, Biotherapy 3:87 95 (1991); Tolstoshev, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32:573 596 (1993); Mulligan, Science 260:926 932 (1993); およびMorgan and Anderson, Ann. Rev. Biochem. 62:191 217(1993); TIBTECH11(5):155 215 (May 1993))を参照されたい。使用できる組換えDNA技法の技術分野において一般に知られた方法は、Ausubel et al., eds., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY (1993); およびKriegler, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NY (1990)に記述されている。
【0077】
核酸構築体の抗原提示細胞または前駆体への送達は、患者を核酸構築体に直接曝露することにより、または抗原提示細胞もしくはその前駆体にインビトロで核酸構築体を最初に形質転換し、次いで、形質転換された抗原提示細胞もしくは前駆体を患者に移植することにより達成することができる。これらの2通りの手法は、それぞれ、インビボまたはエクスビボ遺伝子治療として公知である。
【0078】
例えば、米国特許第5,976,567号(Inex)に記述されているように、天然または合成核酸の発現は、典型的には、関心対象の核酸をプロモーター(これは構成性または誘導性のいずれかでありうる)に機能的に連結し、通常、この構築体を発現ベクターに組み込み、かつこのベクターを適当な宿主細胞に導入することによって達成される。典型的なベクターは、転写および翻訳終結因子、転写および翻訳開始配列、ならびに特定の核酸の発現の調節に有用なプロモーターを含む。ベクターは任意で、少なくとも1つの独立した終結因子配列を含む遺伝子(generic)発現カセット、真核生物もしくは原核生物、またはその両方での該カセットの複製を可能にする配列(例えば、シャトルベクター)ならびに原核生物系および真核生物系の両方のための選択マーカーを含んでもよい。ベクターは原核生物、真核生物、または好ましくはその両方での複製および組み込みに適当でありうる。Giliman and Smith (1979), Gene, 8: 81-97; Roberts et al. (1987), Nature, 328: 731-734; Berger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology, volume 152, Academic Press, Inc., San Diego, Calif. (Berger); Sambrook et al. (1989), Molecular Cloning - A Laboratory Manual (2nd ed.) Vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Press, N.Y., (Sambrook); およびF. M. Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, eds., Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc., (1994 Supplement) (Ausubel)を参照されたい。
【0079】
レトロウイルスのような真核生物ウイルス由来の調節要素を含む発現ベクターが、典型的には、真核細胞での核酸配列の発現に用いられる。SV40ベクターは、pSVT7およびpMT2を含む。ウシパピローマウイルスに由来するベクターは、pBV-1MTHAを含み、エプスタインバーウイルスに由来するベクターは、pHEBOおよびp2O5を含む。他の例示的なベクターはpMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo-5、バキュロウイルスpDSVE、ならびにSV-40初期プロモーター、SV-40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳がんウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、または真核細胞での発現に有効なことが示されている他のプロモーターの指令の下でタンパク質の発現を可能にするその他任意のベクターを含む。
【0080】
種々のベクターを使用できるが、ウイルスベクターが標的細胞に形質移入し、標的細胞ゲノムに組み入る効率の高さから、真核細胞を改変するにはウイルス発現ベクターが有用であることに留意すべきである。この種の実例となる発現ベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、単純ヘルペスウイルスならびにB、CおよびD型レトロウイルスのようなレトロウイルスのほかにスプーマウイルスおよび改変レンチウイルスも含むが、これらに限定されない、ウイルスDNA配列に由来することができる。動物細胞のトランスフェクションに適した発現ベクターは、例えば、Wu and Ataai (2000, Curr. Opin. Biotechnol. 11(2), 205-208)、Vigna and Naldini (2000, J. Gene Med. 2(5), 308-316)、Kayら(2001, Nat. Med. 7(1), 33-40)、Athanasopoulosら(2000, Int. J. Mol. Med. 6(4),363-375)およびWalther and Stein (2000, Drugs 60(2), 249-271)によって記述されている。
【0081】
発現ベクターのGagコード部分は、組換え技術を用いて遺伝子操作された、天然の配列またはその変種を含むことができる。変種の一例において、抗原をコードするポリヌクレオチドのコドン組成は、国際公開WO 99/02694およびWO 00/42215に詳細に記載されている方法を用いて選択の標的細胞または組織における抗原の発現増強を可能とするように改変される。手短に言えば、これらの方法は、さまざまな細胞または組織の間でさまざまなコドンの翻訳効率が変わるという知見、およびこれらの差異を遺伝子のコドン組成とともに利用して、特定の細胞または組織型におけるタンパク質の発現を調節できるという知見に基づいている。したがって、コドン最適化ポリヌクレオチドの構築のため、親ポリヌクレオチドの少なくとも1つの既存コドンが、置き換わる既存コドンよりも標的細胞または組織において高い翻訳効率を有する同義コドンと置き換えられる。親核酸分子の全ての既存コドンを、より高い翻訳効率を有するその同義コドンと置き換えることが望ましいが、発現の増大は部分的な置換でも達成できるので、これは必要ない。置換の段階は親ポリヌクレオチドの既存コドンの5%、10%、15%、20%、25%、30%、より好ましくは35%、40%、50%、60%、70%またはそれ以上に影響を与えることが適当である。
【0082】
発現ベクターは、抗原をコードするポリヌクレオチドが抗原提示細胞または前駆体で発現可能であるように、導入されるその細胞または前駆体と適合する。発現ベクターは、利用される抗原提示細胞および発現ベクターの具体的な選択に依存しうる任意の適当な手段により抗原提示細胞または前駆体に導入される。そのような導入手段は当業者に周知である。例えば、導入は接触(例えば、ウイルスベクターの場合)、エレクトロポレーション、形質転換、形質導入、接合または三親接合、トランスフェクション、感染、陽イオン性脂質による膜融合、DNAでコーティングした微小発射体による高速発砲、リン酸カルシウム-DNA沈殿物とのインキュベーション、単一細胞への直接マイクロインジェクションなどの使用によって達成することができる。他の方法も利用可能であり、当業者に公知である。あるいは、ベクターは陽イオン性脂質、例えば、リポソームによって導入される。このようなリポソームは市販されている(例えば、Life Technologies, Gibco BRL, Gaithersburg, Md.から供給されているリポフェクチン(登録商標)、リポフェクトアミン(商標)など)。
【0083】
他の態様において、核酸構築体は、受容体を介した飲食作用(例えば、Wu and Wu, J. Biol. Chem. 262:4429 4432 (1987)を参照のこと) (これを用いて、受容体を特異的に発現する細胞型を標的化することができる)などに供されるリガンドに結合させて投与することにより抗原提示細胞またはその前駆体に導入される。他の態様において、エンドソームを破壊し、核酸構築体がリソソーム分解を回避できるように、リガンドが融合ウイルスペプチドを含んだ、核酸-リガンド複合体を形成させることができる。他の態様において、核酸構築体は細胞特異的な取り込みおよび発現のため、特異的な受容体を標的化することによりインビボで標的化することができる(例えば、PCT公開WO 92/06180 1992年4月16日付(Wuら); WO 92/22635 1992年12月23日付(Wilsonら); WO92/20316 1992年11月26日付(Findeisら); WO093/14188 1993年7月22日付(Clarkeら); およびWO 93/20221 1993年10月14日付(Young)を参照のこと)。あるいは、核酸は細胞内に導入され、相同組換えにより、発現のため宿主細胞DNAのなかに取り込まれることもできる(Koller and Smithies, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:8932 8935 (1989); Zijlstra et al., Nature 342:435 438 (1989))。
【0084】
遺伝子治療に対する別の手法は、組織培養中の細胞に核酸構築体を移入することを伴い、これには細胞への選択可能なマーカーの移入が通常含まれる。次に、これらの細胞を選択下に置いて、移入された遺伝子を取り込み、発現している細胞を単離する。次いで、これらの細胞を患者に送達する。この態様において、この核酸構築体は、得られる組換え細胞のインビボ投与の前に抗原提示細胞または前駆体に導入される。このような導入は、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、核酸配列を含むウイルスベクターもしくはバクテリオファージベクターの感染、細胞融合、染色体を介した遺伝子移入、マイクロセルを介した遺伝子移入、スフェロプラスト融合などを含むが、これらに限定されない、当技術分野において公知の任意の方法によって行うことができる。多数の技術が細胞への外来遺伝子の導入で当技術分野において公知であり(例えば、Loeffler and Behr, Meth. Enzymol. 217:599 618 (1993); Cohen et al., Meth. Enzymol. 217:618 644 (1993); Cline, Pharmac. Ther. 29:69 92 (1985)を参照のこと)、レシピエント細胞の必須の発生的および生理的機能が破壊されないという条件で、本発明にしたがって使用されうる。この技術は細胞への核酸の安定的移入を提供するはずであり、その結果、核酸は細胞によって発現可能であり、好ましくはその細胞の子孫によって遺伝可能かつ発現可能である。得られた組換え細胞は、当技術分野において公知のさまざまな方法によって患者に送達することができる。組換え抗原提示細胞は、典型的には、静脈内に投与される。
【0085】
3.3 粒子の態様
いくつかの態様において、3.1項に広く記述されているGagポリペプチドもしくはペプチドまたは3.2項に広く記述されているGagを発現する核酸構築体(本明細書において「免疫刺激因子」または「Gag免疫刺激因子」ともいわれる)は、粒子の形態(本明細書において「Gag粒子」ともいわれる)で提供される。これらの態様は、エクスビボまたはインビボのいずれかで、抗原提示細胞またはその前駆体に免疫刺激因子を送達するのに特に有利である。粒子はそのような細胞によって選択的に(例えば、飲食作用または食作用により)取り込まれるからである。リポソーム、ミセル、脂質粒子、セラミック/無機粒子および重合体粒子を含むがこれらに限定されない、種々の粒子を本発明において用いることができ、それらは、典型的には、ナノ粒子およびマイクロ粒子から選択される。粒子は抗原提示細胞またはその前駆体による食作用または飲食作用のため適当にサイズ変更される。
【0086】
抗原提示細胞は、専門的なタイプの抗原提示細胞も、条件的なタイプの抗原提示細胞もともに含む。専門的な抗原提示細胞には、マクロファージ、単球、Bリンパ球、単球-顆粒球-DC前駆体を含む骨髄系列の細胞、辺縁帯クッパー細胞、ミクログリア、T細胞、ランゲルハンス細胞、ならびに指状嵌入樹状細胞および濾胞樹状細胞を含む樹状細胞が含まれるが、これらに限定されることはない。条件的な抗原提示細胞の例としては、活性化T細胞、星状細胞、濾胞性細胞、内皮細胞および線維芽細胞が挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの態様において、抗原提示細胞は、単球、マクロファージ、Bリンパ球、骨髄系列の細胞、樹状細胞またはランゲルハンス細胞から選択される。具体的な態様において、抗原提示細胞は、CD11cを発現し、樹状細胞を含む。実例において、粒子は約10 μmほど大きくても、数nmほど小さくてもよいが、粒子は約100 μm未満の、より適切には約500 nm以下の範囲の寸法を有する。リポソームは、水性コアの周囲にシェルを形成するリン脂質二重層から基本的になる。利点としては、外層の親油性が細胞の外膜層を「模倣」し、種々の細胞によって比較的容易に取り込まれることが挙げられる。重合体ベシクルは、典型的には、生分解性(例えば、ポリ乳酸)または非生分解性(例えば、エチレン酢酸ビニル)のいずれかの、生体適合性重合体から形成されるマイクロ/ナノスフェアおよびマイクロ/ナノカプセルからなる。重合体装置の利点のいくつかは、製造の容易さおよび高い積載能、ナノメートルからミクロンまでの直径のサイズ範囲、ならびに制御放出および分解プロファイルである。
【0087】
いくつかの態様において、粒子はその表面に、非抗原提示細胞上よりも抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)上に高レベルで発現されるマーカーと免疫相互作用性である抗原結合分子を含む。実例となるこの種のマーカーは、例えば、Hawigerら(2001, J Exp Med 194, 769)、Kato et al. 2003, J Biol Chem 278, 34035)、Benitoら(2004, J Am Chem Soc 126, 10355)、Schjetneら(2002, Int Immunol 14, 1423)およびvan Vliet et al., 2006, Nat Immunol Sep 24; [Epub ahead of print])(van Vliet et al., Immunobiology 2006, 211:577-585)によって開示されているように、MGL、DCL-1、DEC-205、マクロファージマンノースR、DC-SIGNまたは他のDCもしくは骨髄特異的(レクチン)受容体を含む。
【0088】
粒子は免疫刺激因子、および界面活性剤、賦形剤または重合体材料の組み合わせから調製することができる。いくつかの態様において、粒子は生分解性および生体適合性であり、任意で、治療剤または診断剤の送達のために制御した速度で生分解することができる。粒子は種々の材料から作られることができる。無機材料も有機材料もともに用いることができる。重合体材料および非重合体材料、例えば脂肪酸を用いることができる。他の適当な材料は、ゼラチン、ポリエチレングリコール、トレハロース、デキストランおよびキトサンを含むが、これらに限定されることはない。数秒から数ヶ月に及ぶ崩壊時間および放出時間を有する粒子を、粒子材料のような因子に基づいて、デザインかつ製造することができる。
【0089】
3.3.1 重合体粒子
重合体粒子は、任意の生体適合性、望ましくは生分解性の重合体、共重合体またはこれらの混合物から形成することができる。重合体は、i) 免疫刺激因子の安定化および送達時の活性の保持を提供するための、送達される免疫刺激因子と重合体との間の相互作用; ii) 重合体分解の速度および、それによる、薬剤放出性の速度; iii) 表面特性および化学的修飾による標的化能; ならびにiv) 粒子多孔性を含む、粒子のさまざまな特徴を最適化するように調整することができる。
【0090】
ポリ無水物などの表面浸食性重合体を用いて粒子を形成させることができる。例えば、ポリ[(p-カルボキシフェノキシ)-ヘキサン無水物] (PCPH)などのポリ無水物を使用することができる。生分解性ポリ無水物は米国特許第4,857,311号に記述されている。
【0091】
他の態様において、ポリ(ヒドロキシ酸)またはポリ(エステル)を含むポリエステルに基づくものなどのバルク浸食性重合体を用いることができる。例えば、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、またはその共重合体を用いて、粒子を形成させることができる。ポリエステルは、アミノ酸のような、帯電したまたは官能化可能な基を有することもできる。実例として、DPPCのような界面活性剤を取り込んだポリ(D,L-乳酸)および/またはポリ(D,L-乳酸-コ-グリコール酸) (「PLGA」)から、制御放出特性を有する粒子を形成させることができる。
【0092】
他の重合体は、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンのようなポリアルキレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリビニルアルコールのようなポリビニル化合物、ポリビニルエーテル、およびポリビニルエステル、アクリル酸およびメタクリル酸の重合体、セルロースおよび他の多糖、およびペプチドもしくはタンパク質、またはそれらの共重合体もしくは混合物を含む。重合体は、さまざまな制御薬物送達の用途に適した安定性およびインビボ分解速度で選択されてもよく、またはそれらを有するように改変されてもよい。
【0093】
いくつかの態様において、Hrkachら(1995, Macromolecules, 28:4736-4739; および「Poly(L-Lactic acid-co-amino acid) Graft Copolymers: A Class of Functional Biodegradable Biomaterials」 in Hydrogels and Biodegradable Polymers for Bioapplications, ACS Symposium Series No. 627, Raphael M. Ottenbrite et al., Eds., American Chemical Society, Chapter 8, pp. 93-101, 1996.)に記述されているように、粒子は機能性ポリエステルグラフト共重合体から形成される。
【0094】
生分解性重合体以外の材料を用いて、粒子を形成させることができる。適当な材料はさまざまな非生分解性重合体およびさまざまな賦形剤を含む。粒子は、免疫刺激因子および界面活性剤だけから形成させることもできる。
【0095】
重合体粒子は、単一および二重エマルジョン溶媒蒸発、スプレイ乾燥、溶媒抽出、溶媒蒸発、相分離、単純および複合コアセルベーション、界面重合、および当業者に周知の他の方法を用いて調製することができる。所望の直径を有する粒子を形成させるために条件が最適化されるのであれば、当技術分野において公知のマイクロスフェアまたはマイクロカプセルを作製するための方法を用いて粒子を作製することができる。
【0096】
カプセル封入された薬剤の送達用のマイクロスフェアを作製するために開発された方法は、例えば、Doubrow, M., Ed., 「Microcapsules and Nanoparticles in Medicine and Pharmacy」, CRC Press, Boca Raton, 1992の文献に記述されている。Mathiowitz and Langer (1987, J. Controlled Release 5, 13-22); Mathiowitzら(1987, Reactive Polymers 6, 275-283); およびMathiowitzら(1988, J. Appl. Polymer Sci. 35, 755-774)にも、ならびに米国特許第5,213,812号、米国特許第5,417,986号、米国特許第5,360,610号および米国特許第5,384,133号にも方法が記述されている。これらの方法の選択は、例えばMathiowitzら(1990, Scanning Microscopy 4: 329-340; 1992, J. Appl. Polymer Sci. 45, 125-134); およびBenitaら(1984, J. Pharm. Sci. 73, 1721-1724)によって記述されているように、重合体の選択、サイズ、外的形態、および望まれる結晶化度に依る。
【0097】
例えばMathiowitzら(1990), Benita; およびJaffeの米国特許第4,272,398号に記述されている溶媒蒸発では、重合体を塩化メチレンのような、揮発性有機溶媒に溶解する。いくつかの異なる重合体濃度を、例えば、0.05〜2.0 g/mLの間で用いることができる。可溶性形態のまたは微粒子として分散されているかのいずれかの、免疫刺激因子を重合体溶液に添加し、この混合物を、ポリ(ビニルアルコール)のような表面活性剤を含む水性相に懸濁する。水性相は、例えば、蒸留水中1%のポリ(ビニルアルコール) w/vの濃度とすることができる。生じたエマルジョンを、大部分の有機溶媒が蒸発するまで撹拌して、固体のマイクロスフェアを残し、これを水で洗浄し、凍結乾燥機内で終夜乾燥させることができる。異なるサイズ(1〜1000 μm)および形態を有するマイクロスフェアをこの方法によって得ることができる。
【0098】
ポリ無水物などの、より不安定な重合体で用いるのに溶媒除去が主にデザインされた。この方法では、塩化メチレンのような揮発性有機溶媒中の選択重合体の溶液に、薬剤を分散または溶解する。次いで、混合物を撹拌により、シリコン油などの油に懸濁して、エマルジョンを形成させる。24時間以内に、溶媒は油相に拡散し、エマルジョン滴が固体重合体マイクロスフェアに硬化する。例えば、Mathiowitzら(1987, Reactive Polymers, 6:275)に記述されている熱溶解マイクロカプセル封入法とは異なり、この方法は、高い融点および幅広い分子量を有する重合体からマイクロスフェアを作製するために用いることができる。この手順によって、例えば、1〜300 μmの直径を有するマイクロスフェアを得ることができる。
【0099】
ある重合体系にあっては、単一または二重エマルジョン技術を用いて調製された重合体粒子は、液滴のサイズに応じてサイズが変化する。油中水型エマルジョンでの液滴が所望のサイズ範囲を有する粒子を形成させるのに適当に小さなサイズのものでなければ、例えば、エマルジョンの超音波処理もしくは均質化により、または界面活性剤の添加により、さらに小さな液滴を調製することができる。
【0100】
上記の方法のいずれかによって調製された粒子が所望の範囲外のサイズ範囲を有するなら、粒子を、例えば、篩を用いてサイズ調整することができ、当業者に公知の技術を用い密度によってさらに分離することもできる。
【0101】
重合体粒子は、スプレイ乾燥によって調製することができる。SuttonおよびJohnsonによってPCT WO 96/09814に開示されているものなどの、スプレイ乾燥の方法は、粒子の少なくとも90%が1〜10 μmの平均サイズを有する水溶性材料の滑らかな、球状マイクロ粒子の調製について開示している。
【0102】
3.3.2 セラミック粒子
本発明の免疫刺激因子を送達するために、セラミック粒子を用いることもできる。これらの粒子は、典型的には、周知のゾルゲル工程と同様の工程を用いて調製され、通常、例えばBrinkerら(「Sol-Gel Science: The Physics and Chemistry of Sol-Gel Processing」; Academic Press: San Diego, 1990, p-60)およびAvnirら(1994, Chem. Mater. 6, 1605)に記述されている単純条件および室温条件を要する。セラミック粒子は所望のサイズ、形状および多孔性で調製することができ、極めて安定である。これらの粒子は、極端なpHおよび温度によって誘発される変性からドープ分子(ポリペプチド、薬物など)も効果的に保護する(Jain et al., 1998, J. Am. Chem. Soc. 120, 11092-11095)。さらに、それらの表面を異なる基で容易に官能化することができ(Lal et al., 2000, Chem. Mater. 12, 2632-2639; Badley et al., 1990, Langmuir, 6, 792-801)、それゆえ、それらをインビボで所望の部位に標的化するために、それらを種々のモノクローナル抗体および他のリガンドに付着させることができる。
【0103】
活性剤を含有するペイロードのインビボでの送達について、さまざまなセラミック粒子が記述されている。例えば、英国特許第1 590 574号は、ゾルゲル母材における生物学的に活性な成分の取り込みについて開示している。国際公開WO 97/45367は、予め焼結した粒子(1〜500 μm)またはディスクに含浸によって生物学的に活性な薬剤が取り込まれている、ゾルゲル工程を介して調製された、制御可能に溶けるシリカキセロゲルについて開示している。国際公開WO 0050349は、繊維の合成中に生物学的に活性な薬剤が取り込まれている、ゾルゲル工程を介して調製された、制御可能に生分解性のシリカ繊維について開示している。米国特許出願公開第20040180096号は、生物活性物質が捕捉されているセラミックナノ粒子について記述している。セラミックナノ粒子は、色素のミセル組成物の形成によって作製される。セラミック材料をミセル組成物に添加し、アルカリ加水分解によってセラミックナノ粒子が沈殿する。米国特許出願公開第20050123611号は、粒子全体に実質的に分散した活性材料を含む制御放出セラミック粒子について開示している。これらの粒子は、界面活性剤と非極性溶媒とを混合して逆性ミセル溶液を調製し、(b) ゲル前駆体、触媒、縮合剤および可溶性活性材料を極性溶媒に溶解して前駆体溶液を調製し、(c) 逆性ミセル溶液と前駆体溶液とを混合してエマルジョンを提供し、ならびに(d) エマルジョン内の前駆体を縮合することにより調製される。米国特許出願公開第20060210634号は、蒸発によって生物活性物質を、金属酸化物(例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スカンジウム、酸化セリウムおよび酸化イットリウム)を含むセラミック粒子に吸着させることについて開示している。Kortesuoら(2000, Int J Pharm. May 10;200(2): 223-229)は、クエン酸トレミフェンおよびデキスメデトミジンHClのような薬物の制御送達のために狭い粒子サイズ範囲を有する球形シリカゲル粒子を生成するためのスプレイ乾燥法について開示している。Wangら(2006, Int J Pharm. 308(1-2):160-167)は生物活性物質の送達のための、多孔性CaCO3マイクロ粒子による吸着および高分子電解質多層フィルムによるカプセル封入の組み合わせについて記述している。
【0104】
3.3.3 リポソーム
Kimら(1983, Biochim. Biophys. Acta 728, 339-348); Liuら(1992, Biochim. Biophys. Acta 1104, 95-101); Leeら(1992, Biochim. Biophys. Acta. 1103, 185-197)、Breyら(米国特許出願公開第20020041861号)、Hassら(米国特許出願公開第20050232984号)、Kisakら(米国特許出願公開第20050260260号)およびSmyth-Templetonら(米国特許出願公開第20060204566号)によって報告されているものなどの、標準的な方法によりリポソームを生成することができる。さらに、抗原送達用の脂質に基づく粒子製剤について概説しているCopelandら(2005, Immunol. Cell Biol. 83: 95-105)を参照することもでき、タンパク質負荷リポソームの調製方法を含む、ワクチン用の粒子送達系について概説しているBramwellら(2005, Crit Rev Ther Drug Carrier Syst. 22(2):151-214; 2006, J Pharm Pharmacol. 58(6):717-728)を参照することもできる。さまざまなインビトロ細胞培養および動物実験において、種々の異なる脂質成分を用いた多くのリポソーム製剤が用いられている。リポソームの特性を決めるパラメータが特定されており、例えば、Leeら(1992, Biochim. Biophys. Acta. 1103, 185-197); Liuら(1992, Biochim. Biophys. Acta, 1104, 95-101); およびWangら(1989, Biochem. 28, 9508-951)による文献に報告されている。
【0105】
手短に言えば、有機溶媒に溶解された選択の脂質(および任意の有機可溶性の生物活性物質)を混合し、真空下、ガラス管の底面にて乾燥させる。穏やかな旋回によりカプセル封入される任意の水溶性生物活性物質を含有する水性緩衝溶液を用いて、脂質膜を再水和する。次いで、水和した脂質小胞を押し出しによってさらに処理し、一連の凍結-融解サイクルに供しまたは脱水し、その後、生物活性物質のカプセル封入を促進するように再水和することができる。次いで、捕捉されていない生物活性物質をリポソーム製剤から除去するために、リポソームを遠心分離によって洗浄し、またはサイズ排除カラムに負荷し、4℃で保存することができる。リポソーム調製物に関する基本的な方法はThierryら(1992, Nuc. Acids Res. 20:5691-5698)にさらに詳細に記述されている。
【0106】
免疫刺激因子のペイロードを保有する粒子は、Pautotら(2003, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 100(19):10718-21)に記述の手順を用いて作製することができる。Pautotらの技術を用い、ストレプトアビジンでコーティングされた脂質(DPPC、DSPC、および同様の脂質)を使って、リポソームを製造することができる。Needhamら(2001, Advanced Drug Delivery Reviews, 53(3): 285-305)によって記述されている薬物カプセル封入技術を用いて、これらの小胞に1つまたは複数の活性薬剤を負荷することができる。
【0107】
さまざまな脂質混合物のクロロホルム溶液を高真空に曝し、その後、得られた脂質膜(DSPC/CHOL)をpH 4の緩衝液で水和し、凍結および融解手順の後、ポリカーボネートフィルタを通してそれらを押し出すことにより、リポソームを調製することができる。カプセル封入効率を高めるためにまたは安定性を高めるためになど、DSPCまたはコレステロールを補充したDPPCを用いることが可能である。アルカリ化剤の添加によって小胞外媒体のpHを7.5に調整することにより、経膜pH勾配が生み出される。リポソーム内部への免疫刺激因子の蓄積を可能とするために、高温で、免疫刺激因子の溶液を小分けして小胞溶液に添加することによって、Gag免疫刺激因子を引き続き捕捉することができる。
【0108】
ニオソムのような本発明の免疫刺激因子の送達に適した他の脂質に基づく粒子がCopelandら(2005, Immunol. Cell Biol. 83: 95-105)により記述されている。
【0109】
3.3.4 バリスティック粒子
本発明の免疫刺激因子は、無針送達または「バリスティック」(バイオリスティック)送達で用いるのに適した粒子に(例えば、コーティングまたは結合により)付着させることができ、または別の方法で会合させることができる。バリスティック送達のための実例となる粒子は、例えば、国際公開WO 02/101412; WO 02/100380; WO 02/43774; WO 02/19989; WO 01/93829; WO 01/83528; WO 00/63385; WO 00/26385; WO 00/19982; WO 99/01168; WO 98/10750; およびWO 97/48485に記述されている。しかしながら、そのような粒子は、バリスティック送達装置でのその使用に限定されず、それ以外にも、粒子を免疫細胞に送達可能な任意の代替技術(例えば、注射または極微針送達)によって投与できることを理解されたい。
【0110】
当技術分野において公知の種々の技術を用い、免疫刺激因子を担体粒子(例えば、コア担体)にコーティングまたは化学的にカップリングすることができる。担体粒子は、細胞内送達に通例使用される粒子サイズの範囲内の適当な密度を有する材料から選択される。最適な担体粒子のサイズは、当然ながら、標的細胞の直径に依るであろう。実例となる粒子は、約0.01〜約250 μm、約10〜約150 μm、および約20〜約60 μmに及ぶサイズ、ならびに約0.1〜約25 g/cm3に及ぶ粒子密度、および約0.5〜約3.0 g/cm3の、またはそれより大きいかさ密度を有する。この種の非限定的な粒子は、タングステン、金、白金、およびイリジウムの担体粒子のような、金属粒子を含む。タングステン粒子は、直径が0.5〜2.0 μmの平均サイズで容易に利用可能である。金粒子または微晶質金(例えば、gold powder A1570、Engelhard Corp., East Newark, N.J.から入手可能)も使用することができる。金粒子は、大きさが均一(1〜3 μmの粒子サイズでAlpha Chemicalsから入手可能、または0.95 μmを含む粒子サイズの範囲内でDegussa, South Plainfield, N.J.から入手可能)となり、低毒性となる。微晶質金は、典型的には0.1〜5 μmの範囲内の、多様な粒子サイズ分布を提供する。微晶質金の不規則な表面積は、本発明の活性薬剤での高効率のコーティングを提供する。
【0111】
金またはタングステン粒子のような粒子上に生物活性分子(例えば、タンパク質および核酸のような親水性分子)を吸着させ、カップリングさせ、またはその他の方法で付着させるための多くの方法が公知であり、記述されている。実例において、そのような方法では所定量の金またはタングステンと生物活性分子、CaCl2およびスペルミジンとを結合させる。その他の例において、金またはタングステン粒子上に生物活性分子を沈殿させるために、エタノールが用いられる(例えば、Jumar et al., 2004, Phys Med. Biol. 49:3603-3612を参照のこと)。反応混合物の均一性を確保するために、得られた溶液をコーティング手順中に継続してボルテックスすることが適当である。生物活性分子の付着の後、粒子を、例えば、適当な膜に転写し、それから使用の前に乾燥させることができ、サンプルモジュールもしくはカセットの表面上にコーティングすることができ、または特定の粒子を介した送達機器で用いる送達カセットに負荷することができる。
【0112】
単純蒸発(風乾)、真空乾燥、スプレイ乾燥、フリーズドライ(凍結乾燥)、スプレイ凍結乾燥、スプレイコーティング、沈殿、超臨界流体粒子形成などによるような、標準的技術を用い、製剤化組成物を粒子として適当に調製することができる。必要に応じて、得られた粒子を、国際公開WO 97/48485に記述の技術を用いて仕上げることができる。
【0113】
3.3.5 界面活性剤
粒子に組み込まれうる界面活性剤は、ホスホグリセリドを含む。例示的なホスホグリセリドとしては、天然の界面活性剤L-α-ホスファチジルコリンジパルミトイル(「DPPC」)のような、ホスファチジルコリンが挙げられる。界面活性剤は、有利には、例えば、粒子間の相互作用を低減することによって表面特性を改善し、粒子表面の接着性をいっそう低くすることができる。肺に内在する界面活性剤の使用により、非生理的な界面活性剤の使用の必要性を回避することができる。
【0114】
粒子の表面に界面活性剤を付与することで、静電相互作用、ファンデルワールス力および毛管作用のような相互作用により、粒子が凝集する傾向を低減することができる。粒子表面に界面活性剤が存在することで、表面のしわ(粗さ)の増大をもたらし、その結果、密接な粒子間相互作用に利用可能な表面積を低減することによりエアロゾル化を改善することができる。
【0115】
任意の天然界面活性剤を含む、当技術分野において公知の界面活性剤を用いることができる。他の例示的な界面活性剤としては、ジホスファチジルグリセロール(DPPG); ヘキサデカノール; ポリエチレングリコール(PEG)のような脂肪アルコール; ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル; パルミチン酸またはオレイン酸のような、表面活性脂肪酸; トリオレイン酸ソルビタン(Span 85); グリココレート; サーファクチン; ポロキサマー; トリオレイン酸ソルビタンのようなソルビタン脂肪酸エステル; チロキサポールおよびリン脂質が挙げられる。
【0116】
3.4 抗原提示細胞の態様
いくつかの態様において、対象においてGag特異的抗原提示細胞の数を増加させるために使用される免疫刺激因子は、処置される対象から得られる抗原提示細胞もしくはその前駆体(すなわち、自己の抗原提示細胞もしくは前駆体)または対象とMHC適合もしくは不適合のドナーから得られる抗原提示細胞もしくはその前駆体(すなわち、同種異系間の抗原提示細胞)である。望ましくは、ドナーは対象と組織適合性である。これらの態様において、Gag特異的抗原提示細胞または前駆体は、抗原提示細胞または前駆体を、抗原提示細胞または前駆体によってその表面にGagペプチドが提示されるのに十分な量でおよび時間、(i) 例えば3.3項に記述の可溶型もしくは微粒子型であることが適当な、例えば3.1項に記述のGagポリペプチドもしくはGagペプチドと接触させることにより、または(ii) 例えば3.3項に記述の可溶型もしくは微粒子型であることが適当な、例えば3.2項に記述のGag発現核酸構築体と接触させることにより産生される。
【0117】
3.4.1 抗原提示細胞およびその前駆体の供給源
抗原提示細胞またはその前駆体は、当業者に公知の方法によって単離することができる。そのような細胞の供給源は、特定の免疫応答の調節に必要な抗原提示細胞に依って異なるであろう。これに関連して、抗原提示細胞は樹状細胞、マクロファージ、単球および骨髄系列の他の細胞から選択することができる。
【0118】
典型的には、抗原提示細胞の前駆体は、任意の組織から単離されうるが、血液、臍帯血または骨髄から最も容易に単離される(Sorg et al., 2001, Exp Hematol 29, 1289-1294; Zheng et al., 2000, J Hematother Stem Cell Res 9, 453-464)。生検もしくは関節穿刺後のリウマチ性滑膜組織または滑液のような病変組織から適当な前駆体を得ることも可能である(Thomas et al., 1994a, J Immunol 153, 4016-4028; Thomas et al., 1994b, Arthritis Rheum 37(4))。他の例としては、肝臓、脾臓、心臓、腎臓、消化管および扁桃が挙げられるが、これらに限定されることはない(Lu et al., 1994, J Exp Med 179, 1823-1834; McIlroy et al., 2001, Blood 97, 3470-3477; Vremec et al., 2000, J Immunol 159, 565-573; Hart and Fabre, 1981, J Exp Med 154(2), 347-361; Hart and McKenzie, 1988, J Exp Med 168(1), 157-170; Pavli et al., 1990, Immunology 70(1), 40-47)。
【0119】
組織から直接単離された白血球は、抗原提示細胞前駆体の主な供給源となる。典型的には、これらの前駆体は、さまざまな増殖因子の存在下または非存在下で培養することにより、抗原提示細胞のみに分化することが可能である。本発明の実践によれば、抗原提示細胞は粗混合物から、または部分的もしくは実質的に精製された前駆体調製物からそのように分化させることができる。白血球は血液または骨髄から、例えば、好中球および赤血球を除去するFicoll Hypaqueを用いる密度勾配遠心分離により(末梢血単核球もしくはPBMC)、または赤血球の塩化アンモニウム溶解により(白血球(leukocyte)または白血球(white blood cell))都合よく精製することができる。抗原提示細胞の多くの前駆体は、非増殖性単球として末梢血に存在し、特定のサイトカインの存在下で培養することにより、マクロファージおよび樹状細胞を含む、特定の抗原提示細胞に分化することができる。
【0120】
組織樹状細胞のまたはランゲルハンス細胞の前駆体のような組織由来の前駆体は、典型的には、組織(例えば、表皮基底層)を細かに切り刻み、それをコラゲナーゼまたはジスパーゼで消化し、続けて密度勾配分離を行うことにより、または細胞表面マーカーのその発現に基づき前駆体の選択を行うことにより得られる。例えば、ランゲルハンス細胞前駆体は、CD1分子およびHLA-DRを発現するので、これに基づいて精製することができる。
【0121】
いくつかの態様において、抗原提示細胞前駆体は、マクロファージの前駆体である。一般に、これらの前駆体は、任意の供給源の単球から得ることができ、培地およびマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)の存在下での長時間のインキュベーションによってマクロファージに分化することができる(Erickson-Miller et al., 1990, Int J Cell Cloning 8, 346-356; Metcalf and Burgess, 1982, J Cell Physiol, 111, 275-283)。
【0122】
他の態様において、抗原提示細胞前駆体は、ランゲルハンス細胞の前駆体である。通常、ランゲルハンス細胞は、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、IL-4/TNFαおよびTGFβの存在下でヒト単球またはCD34+骨髄前駆体から発生されうる(Geissmann et al., 1998, J Exp Med, 187, 961-966; Strobl et al., 1997a, Blood 90, 1425-1434; Strobl et al., 1997b, dv Exp Med Biol 417, 161-165; Strobl et al., 1996, J Immunol 157, 1499-1507)。
【0123】
他の態様において、抗原提示細胞前駆体は、樹状細胞の前駆体である。いくつかの潜在的な樹状細胞前駆体は、末梢血、臍帯血または骨髄から得ることができる。これらは単球、CD34+幹細胞、顆粒球、CD33+CD11c+ DC前駆体および傾倒した骨髄性前駆細胞-下記を含む。
【0124】
単球:
単球は、組織培地(例えば、RPMI)および血清(例えば、ヒトもしくはウシ胎児血清)の存在下で、または無血清培地中で1〜2時間プラスチックへの付着により精製することができる(Anton et al., 1998, Scand J Immunol 47, 116-121; Araki et al., 2001, Br J Haematol 114, 681-689; Mackensen et al., 2000, Int J Cancer 86, 385-392; Nestle et al., 1998, Nat Med 4, 328-332; Romani et al., 1996, J Immunol Meth 196, 137-151; Thurner et al., 1999, J Immunol Methods 223, 1-15)。単球は、末梢血から浄化することもできる(Garderet et al., 2001, J Hematother Stem Cell Res 10, 553-567)。単球は免疫磁気選択、フローサイトメトリー選別またはパニング(Araki et al., 2001, 前記; Battye and Shortman, 1991, Curr. Opin. Immunol. 3, 238-241)を含む、免疫親和性技術により、CD14hi細胞を得るための抗CD14抗体を用いて精製することもできる。循環血液中の単球の数(それゆえ収量)は、GM-CSFを含むさまざまなサイトカインのインビボでの使用によって高めることができる(Groopman et al., 1987, N Engl J Med 317, 593-598; Hill et al., 1995, J Leukoc Biol 58, 634-642)。単球は、GM-CSFおよびIL-4の存在下での長時間のインキュベーションにより樹状細胞に分化することができる(Romani et al., 1994, J Exp Med 180, 83-93; Romani et al., 1996, 前記)。約200〜約2000 U/mL、より好ましくは約500〜約1000 U/mLおよびさらにより好ましくは約800 U/mL (GM-CSF)〜1000 U/mL (IL-4)でのそれぞれの濃度におけるGM-CSFおよびIL-4の組み合わせは、かなりの量の未熟樹状細胞、すなわち、抗原捕捉食作用性樹状細胞を産生する。単球の抗原捕捉食作用性樹状細胞への分化を促進する他のサイトカインは、例えば、IL-13を含む。
【0125】
CD34+幹細胞:
樹状細胞は、GM-CSF、TNFα±幹細胞因子(SCF、c-kitL)、またはGM-CSF、IL-4±flt3Lの存在下でCD34+骨髄由来前駆体から発生させることもできる(Bai et al., 2002, Int J Oncol 20, 247-53; Chen et al., 2001, Clin Immunol 98, 280-292; Loudovaris et al., 2001, J Hematother Stem Cell Res 10, 569-578)。CD34+細胞は、骨髄吸引液または血液から得ることができ、例えば、免疫磁気選択または免疫カラムを用いて単球の場合のように濃縮することができる(Davis et al., 1994, J Immunol Meth 175, 247-257)。血液中のCD34+細胞の割合は、(最も一般には) G-CSF、しかしflt3Lおよびプロゲニポイエチンも含むさまざまなサイトカインのインビボでの使用によって高めることができる(Fleming et al., 2001, Exp Hematol 29, 943-951; Pulendran et al., 2000, J Immunol 165, 566-572; Robinson et al., 2000, J Hematother Stem Cell Res 9, 711-720)。
【0126】
他の骨髄性前駆細胞:
DCは、CD34+幹細胞と類似した様式で、GM-CSFおよびIL-4/TNFの存在下において、傾倒された初期骨髄性前駆細胞から発生されうる。そのような骨髄性前駆細胞は、関節リウマチ滑液を含む、炎症の多くの組織を浸潤する(Santiago-Schwarz et al., 2001, J Immunol. 167, 1758-1768)。循環血液中の樹状細胞前駆体および単球を含む全身の骨髄性細胞の増殖は、flt-3リガンド、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)またはプロゲニポイエチン(pro-GP)を含む特定のサイトカインで達成されうる(Fleming et al., 2001, 前記; Pulendran et al., 2000, 前記; Robinson et al., 2000, 前記)。そのようなサイトカインの数日間のヒトまたは他の哺乳動物への投与は、さらに多数の前駆体が末梢血または骨髄からインビトロ操作のために導出されるのを可能にするであろう。樹状細胞はまた、GM-CSF、IL-4およびTNFαの存在下で末梢血好中球前駆体から発生されうる(Kelly et al., 2001, Cell Mol Biol (Noisy-le-grand) 47, 43-54; Oehler et al., 1998, J Exp Med. 187, 1019-1028)。樹状細胞がまた急性骨髄性白血病細胞から、同様の方法を用いて発生されうることに注目しなければならない(Oehler et al., 2000, Ann Hematol. 79, 355-62)。
【0127】
組織DC前駆体およびAPC前駆体の他の供給源:
DC発生のための他の方法は、例えば、IL-3 +/- GM-CSFの存在下における胸腺前駆体、ならびにGM-CSFおよびコラーゲンマトリックスの存在下における肝臓DC前駆体より存在する。形質転換または不死化された樹状細胞系は、例えば、(Paglia et al., 1993)により記述のv-mycのようながん遺伝子を用いて、またはmyb (Banyer and Hapel, 1999; Gonda et al., 1993)によって産生することができる。
【0128】
循環血液中のDC前駆体:
これらはヒトおよびマウス末梢血において報告されている。適当な樹状細胞前駆体を同定するための特定の細胞表面マーカーも利用することができる。具体的には、樹状細胞前駆体の各種集団を、CD11cの発現ならびにCD14、CD19、CD56およびCD3の非存在または低発現により血液中で同定することができる(O'Doherty et al., 1994, Immunology 82, 487-493; O'Doherty et al., 1993, J Exp Med 178, 1067-1078)。これらの細胞を、細胞表面マーカーCD13およびCD33によって同定することもできる(Thomas et al., 1993b, J Immunol 151(12), 6840-6852)。形質細胞様樹状細胞前駆体として公知の、CD14、CD19、CD56およびCD3を欠く、第二のサブセットは、CD11cを発現しないが、CD123 (IL-3R鎖)およびHLA-DRを発現する(Farkas et al., 2001, Am J Pathol 159, 237-243; Grouard et al., 1997, J Exp Med 185, 1101-1111; Rissoan et al., 1999, Science 283, 1183-1186)。大部分の循環血液中のCD11c+樹状細胞前駆体はHLA-DR+であるが、一部の前駆体はHLA-DR-でありうる。MHCクラスII発現の欠損は、末梢血樹状細胞前駆体について明示されている(del Hoyo et al., 2002, Nature 415, 1043-1047)。
【0129】
任意で、CD33+CD14-/loまたはCD11c+HLA-DR+、上記の系譜マーカー陰性樹状細胞前駆体は培地中でまたは単球馴化培地中で18〜36時間のインキュベーションによりもっと多くの成熟抗原提示細胞に分化されてもよい(Thomas et al., 1993b, 前記; Thomas and Lipsky, 1994, J Immunol 153, 4016-4028) (O'Doherty et al., 1993, 前記)。あるいは、末梢血非T細胞または未精製PBMCのインキュベーション後、成熟末梢血樹状細胞は、低密度により特徴付けられ、それゆえ、メトリザミドおよびナイコデンツを含む密度勾配にて(Freudenthal and Steinman, 1990, Proc Natl Acad Sci U S A 87, 7698-7702; Vremec and Shortman, 1997, J Immunol 159, 565-573)、または限定されるものではないが、CMRF-44 mAbのような特定のモノクローナル抗体により(Fearnley et al., 1999, Blood 93, 728-736; Vuckovic et al., 1998, Exp Hematol 26, 1255-1264)精製されてもよい。形質細胞様樹状細胞は、細胞表面マーカーに基づいて末梢血から直接精製し、その後、IL-3の存在下でインキュベートすることができる(Grouard et al., 1997, 前記; Rissoan et al., 1999, 前記)。あるいは、形質細胞様DCは、上記のようにインキュベートされた末梢血細胞の密度勾配またはCMRF-44選択から導出することもできる。
【0130】
一般的に、任意の前駆体から発生した樹状細胞について、未熟樹状細胞は、単球由来サイトカイン、リポ多糖およびCpGリピート含有DNA、TNF-α、IL-6、IFN-α、IL-1βのようなサイトカイン、壊死細胞、再付着、細菌全体、膜成分、RNAまたはポリICのような活性化因子の存在下でインキュベートされる場合に、活性化されるようになるであろう(Clark, 2002, J Leukoc Biol, 71, 388-400; Hacker et al., 2002, Immunology 105, 245-251; Kaisho and Akira, 2002, Biochim Biophys Acta 1589, 1-13; Koski et al., 2001, Crit Rev Immunol 21, 179-189)。この樹状細胞活性化の過程は、NF-κB阻害剤の存在下で阻害される(O'Sullivan and Thomas, 2002, J Immunol 168, 5491-5498)。
【0131】
いくつかの態様において、抗原提示細胞またはその前駆体の無培養集団を、活性化条件に供されていない、対象に導入することができる。抗原提示細胞またはその前駆体の無培養集団の実例としては、全血、新鮮血またはその画分、例えば、限定されるものではないが、末梢血単核球(PMBC)、全血の軟膜画分、濃縮赤血球、照射された血液、樹状細胞、単球、マクロファージ、好中球、リンパ球、ナチュラルキラー細胞およびナチュラルキラーT細胞が挙げられる。具体的な態様において、抗原提示細胞の無培養集団は、新鮮に単離された血液またはPMBCから選択される。他の態様において、抗原提示細胞の無培養集団は、壊死性またはアポトーシス性集団である。したがって、細胞の無培養集団を抗原と接触させ、その後、細胞に不可逆的な外傷をもたらす壊死性条件(例えば、浸透圧衝撃またはグルタルアルデヒドのような化学的毒物への曝露)に供することができ、これらの細胞はミトコンドリアおよび細胞質の著しい腫脹、それに続く細胞破壊および自己分解によって特徴付けられる。あるいは、無培養細胞集団を、本発明の生物活性分子と接触させ、その後、アポトーシス条件に供してもよい。抗原を発現または提示する細胞を、ウイルス感染、紫外線、ガンマ線での照射、ステロイド、固定(例えば、グルタルアルデヒドでの)、サイトカインを含むが、これらに限定されない、当技術分野において公知の種々の方法を用いて、またはドナー細胞から培地中の栄養素を奪うことによって、インビトロまたはインビボでアポトーシスを起こすように誘導することができる。経時変化の研究は、細胞の集団におけるアポトーシスの最適な誘導に十分なインキュベーション時間を確立することができる。例えば、インフルエンザウイルスに感染した単球は、感染後6時間までにアポトーシスの初期マーカーを発現し始める。アポトーシスの特異的マーカーの例としては、アネキシンV、TUNEL+細胞、DNAラダリングおよびヨウ化プロピジウムの取り込みが挙げられる。
【0132】
3.4.2 ポリペプチドまたは核酸のエクスビボ送達
本発明のGag免疫刺激因子は、可溶性または粒子性であってよい、核酸およびポリペプチドを含む、さまざまな形態で抗原提示細胞に送達することができる。当業者は、抗原提示細胞と接触させておくGag免疫刺激因子の量を実験的に判定することができる。抗原提示細胞は、この細胞がT細胞の調節のためその表面にGagペプチドを提示するのに十分な時間、Gag免疫刺激因子に曝露されるべきである。いくつかの有利な態様において、抗原提示細胞はGagポリペプチドまたはGagペプチドの存在下で、約48、36、24、12、8、7、6、5、4、3もしくは2時間未満の間、または場合により約60、50、40、30、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3もしくは2分間未満の間インキュベートされる。細胞がGagペプチドを、任意でプロセッシングし、提示するのに必要な時間およびポリペプチドまたはペプチドの用量は、Gag抗原への曝露に続いて洗い出し時間および読み出し系、例えば、抗原反応性T細胞への曝露を行うパルス-チェイスプロトコルを用いて判定することができる。細胞がその表面にGagペプチドを発現するのに必要な最適時間および用量が判定されたなら、プロトコルを用いて、免疫原性応答を誘導するための細胞およびGag抗原を調製することができる。当業者はこの関連で、抗原提示細胞がその表面に抗原を提示するのに必要な時間の長さが、利用される抗原または抗原の形態、その用量、および利用される抗原提示細胞、ならびに抗原負荷が行われる条件に依って変化しうることを認識するであろう。当業者は日常的な手段を用いて、これらのパラメータを決定することができる。抗原提示細胞の抗原刺激の効率は、インビトロでT細胞の細胞傷害活性をアッセイすることにより、またはCTLの標的として抗原提示細胞を用いることにより判定することができる。Gag抗原への曝露後、抗原提示細胞の表面のGagペプチドの存在を検出できる、当業者に公知の他の方法も本発明によって企図される。
【0133】
通常、約100万〜1000万個の抗原提示細胞に対して約0.1〜20 μg/mLのGag抗原(例えば、Gagペプチド抗原)が、抗原刺激された抗原特異的抗原提示細胞を産生するのに適している。典型的には、抗原提示細胞は37℃で約1〜6時間、抗原とともにインキュベートされるが、1つまたは複数の増殖因子とのインキュベーションの持続時間中、抗原提示細胞をGag抗原に曝露することも可能である。本発明者らによって過去に確認されたように、約10〜20 μg/mLの濃度の抗原を用い極めて短いインキュベーション時間(例えば、約5、10、15、20、30、40、50分)によってペプチド抗原の成功裏の提示を達成することができる。
【0134】
必要に応じて、抗原提示細胞の全部または一部は、必要とされるまで、適切な凍結保存溶液中で凍結することができる。例えば、細胞は、リン酸緩衝食塩水中に10%の自己血清+10%のジメチルスルホキシドを含有するものなどの、適切な媒体に希釈することができる。ある種の態様において、細胞は脱水された形態で保存される。
【0135】
いくつかの態様において、外因性Gag抗原の抗原提示細胞への送達は、当業者に公知の方法によって高めることができる。例えば、抗原提示細胞、特に樹状細胞の内因性プロセッシング経路への外因性抗原の送達のために、いくつかの異なる戦略が開発されている。これらの方法は、pH感受性リポソームへの抗原の挿入(Zhou and Huang, 1994, Immunomethods 4, 229-235)、可溶性抗原の飲作用による取り込み後のピノソームの浸透圧溶解(Moore et al., 1988, Cell 54, 777-785)、強力なアジュバントへの抗原のカップリング(Aichele et al., 1990, J. Exp. Med., 171, 1815-1820; Gao et al., 1991, J. Immunol., 147, 3268-3273; Schulz et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88, 991-993; Kuzu et al., 1993, Euro. J. Immunol. 23, 1397-1400; およびJondal et al., 1996, Immunity 5, 295-302)、エキソソーム(Zitvogel et al., 1998 Nat Med. 4, 594-600; 2002, Nat Rev Immunol. 2, 569-79)、および抗原のアポトーシス性細胞送達(Albert et al., 1998, Nature 392, 86-89; Albert et al., 1998, Nature Med. 4, 1321-1324; ならびに国際公開WO 99/42564およびWO 01/85207)を含む。組換え細菌(例えば、大腸菌(E. coli))またはトランスフェクトされた宿主哺乳動物細胞を、抗原送達のため(それぞれ微粒子抗原またはアポトーシス体として)樹状細胞にパルスすることができる。そのような送達系は、ドミナントネガティブなIκBαをコードするプラスミドなどの、NF-κBを阻害するための物質と論理的に組み合わせることができる(Pai et al., 2002, J Virol 76, 1914-1921)。組換えキメラウイルス様粒子(VLP)も、樹状細胞系のMHCクラスIプロセッシング経路への外因性異種抗原の送達用のベシクルとして用いられている(Bachmann et al., 1996, Eur. J. Immunol., 26(11), 2595-2600)。
【0136】
あるいは、またはさらに、抗原は、MHCクラスI経路への送達のため本発明の抗原提示細胞のサイトゾルへの抗原の移入を高めるように細胞溶解素に連結されてもよく、または別の方法で会合されてもよい。例示的な細胞溶解素としては、サポニン含有免疫刺激複合体(ISCOM)のようなサポニン化合物(例えば、Cox and Coulter, 1997, Vaccine 15(3), 248-256および米国特許第6,352,697号を参照のこと)、ホスホリパーゼ(例えば、Camilli et al., 1991, J. Exp. Med. 173, 751-754を参照のこと)、孔形成毒素(例えば、α-毒素)、リステリオリシンO (LLO、例えば、Mengaud et al., 1988, Infect. Immun. 56, 766-772およびPortnoy et al., 1992, Infect. Immun. 60, 2710-2717)、ストレプトリシンO (SLO、例えば、Palmer et al., 1998, Biochemistry 37(8), 2378-2383)およびペルフリンゴリシンO (PFO、例えば、Rossjohn et al., Cell 89(5), 685-692)のような、グラム陽性細菌の天然の細胞溶解素が挙げられる。抗原提示細胞がファゴソームである場合、酸活性化細胞溶解素を有利に用いることができる。例えば、リステリオリシンは、弱酸性pH (ファゴソーム内のpH条件)でいっそう強い孔形成能力を示し、それにより、液胞(ファゴソームおよびエンドソームを含む)内容物の細胞質への送達を促進する(例えば、Portnoy et al., 1992, Infect. Immun. 60, 2710-2717を参照のこと)。
【0137】
細胞溶解素は単一組成物の形態でGagポリペプチドもしくはペプチドとともに提供されてもよく、または抗原提示細胞と接触させるため、別個の組成物として提供されてもよい。1つの態様において、細胞溶解素はGagポリペプチドまたはペプチドに融合されまたは別の方法で連結され、この融合または連結によって抗原提示細胞のサイトゾルへのGagポリペプチドまたはペプチドの送達が可能になる。別の態様において、細胞溶解素およびGagポリペプチドまたはペプチドは、限定されるものではないが、リポソームまたはウイルス、細菌もしくは酵母から選択される微生物送達ベシクルのような、送達ベシクルの形態で提供される。送達ベシクルが微生物送達ベシクルである場合、送達ベシクルは非病原性であることが適当である。この種の好ましい態様において、送達ベシクルは、例えば、Portnoyらによって米国特許第6,287,556号に記述されているように、非病原性細菌であり、細菌内において細胞溶解素を発現する調節配列に機能的に連結された非分泌型の機能性細胞溶解素をコードする第一のポリヌクレオチド、およびGagポリペプチドまたはペプチドをコードする第二のポリヌクレオチドを含む。非分泌型の細胞溶解素は、例えば、機能性シグナル配列の欠如、遺伝的障害(例えば、機能性シグナル配列突然変異)を持つ微生物のような分泌無能微生物、または有毒微生物など、さまざまな機構によって提供されうる。さまざまな無毒性、非病原性の細菌を用いることができる; 好ましい微生物は比較よく特徴付けされている菌株であり、特にMC4100、MC1061、DH5αなどのような、大腸菌の実験室株である。本発明のために遺伝子操作できる他の細菌には、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、B群赤痢菌(Shigella flexneri)、結核菌(mycobacterium)、サルモネラ菌(Salmonella)、枯草菌(Bacillus subtilis)などの、よく特徴付けされている無毒性の非病原性株が含まれる。特定の態様において、この細菌は非複製的、宿主細胞のゲノムに非組み込み的であり、および/または細胞間もしくは細胞内で非運動性であるように弱毒化される。
【0138】
上記の送達ベシクルおよび例えば3.3項に記述の微粒子ベシクルを用いて、食作用性および非食作用性の抗原提示細胞を含む、対象ベシクルの飲食作用の能力がある実質的に任意の抗原提示細胞に1つまたは複数のGagポリペプチドおよび/またはペプチドを送達することができる。送達ベシクルが微生物である態様において、本方法は一般に、標的細胞による微生物の取り込み、その後、抗原提示細胞の液胞(ファゴソームおよびエンドソームを含む)内での溶解を必要とする。
【0139】
4. リンパ球の態様
本発明の抗原提示細胞は、抗原またはプロセッシングされたその形態がそれらの細胞により、Tリンパ球およびBリンパ球を含む、他の免疫細胞の潜在的調節のために、特にGag抗原に応答するよう抗原刺激されたTリンパ球およびBリンパ球を産生するために提示されるように、あらゆる手段によってGag抗原を含むおよび/または発現するよう得るまたは調製することができる。Gag抗原に応答するよう抗原刺激されたリンパ球は、本明細書においてGagによる抗原刺激を受けたリンパ球ともいわれる。
【0140】
いくつかの態様において、Gag特異的な抗原提示細胞は抗原刺激されたTリンパ球をGag抗原に対して産生するのに有用である。Gag抗原に対する免疫応答を示すリンパ球、特にTリンパ球を誘導する効率は、例えば抗原特異的細胞溶解性Tリンパ球(CTL)の標的として抗原特異的抗原提示細胞を用いたインビトロでのTリンパ球細胞溶解活性のアッセイ; 抗原特異的Tリンパ球増殖のアッセイ(例えば、Vollenweider and Groseurth, 1992, J. Immunol. Meth. 149: 133-135を参照のこと)、例えば、ELISPOTアッセイ法およびELISAアッセイ法を用いた抗原に対するB細胞応答の測定; サイトカインプロファイルの問い合わせ; または特定の抗原に対する皮膚反応性の試験による遅発型過敏症(DTH)反応の測定(例えば、Chang et al. (1993, Cancer Res. 53: 1043-1050)を参照のこと)を含むが、これらに限定されない、任意の適当な方法によって判定することができる。Gag抗原への曝露後に抗原提示細胞の表面上のGagペプチドの存在を検出できる、当業者に公知の他の方法も本発明によって企図される。
【0141】
したがって、本発明は、Gag抗原の提示に対して抗原特異的に応答する抗原特異的なBまたはTリンパ球、特にTリンパ球も提供する。いくつかの態様において、抗原特異的Tリンパ球は上記に定義のGag特異的抗原提示細胞と、脾臓または扁桃/リンパ節のような任意の適当な供給源から得られうるが、末梢血から得られることが好ましい、Tリンパ球の集団とを接触させることによって産生される。Tリンパ球は粗調製物として、または、例えば「Immunochemical Techniques, Part G: Separation and Characterization of Lymphoid Cells」(Meth. in Enzymol. 108, Di Sabatoら編, 1984, Academic Press)に記述されているように標準的な技術を用いて適当に得られる、部分的に精製されたもしくは実質的に精製された調製物として使用されうる。これは、ヒツジ赤血球とのロゼット形成、接着細胞を枯渇させるナイロンウールまたはプラスチック製の接着性カラムに通すこと、適切なモノクローナル抗体を用いた免疫磁気的選択またはフローサイトメトリー選別を含み、当技術分野において公知である。
【0142】
Tリンパ球の調製物を本発明のGag特異的抗原提示細胞と、これらの抗原提示細胞によって提示されるGag抗原に対してTリンパ球を抗原刺激するのに十分な時間、接触させる。この時間は、好ましくは、少なくとも約1日、および最大約5日であると考えられる。
【0143】
いくつかの態様において、Gag特異的抗原提示細胞の集団は、末梢血から得られることが適当な、Tリンパ球の不均一集団の存在下で、本発明の複数のGagペプチドとともに培養される。これらの細胞は、ペプチドまたはプロセッシングされたその形態が抗原提示細胞により提示されるのに、および抗原提示細胞がTリンパ球の亜集団をGag抗原に対して応答するように抗原刺激するのに十分な時間および条件の下で培養される。
【0144】
5. 細胞に基づいた治療または予防
3.4項に記述したGag特異的抗原提示細胞および4項に記述したGagによる抗原刺激を受けたリンパ球は、免疫応答を調節するために、とりわけ、Gagポリペプチドに対する免疫応答を調節するために、それらだけでまたは併用で、患者に投与することができる。これらの細胞に基づいた組成物は、それゆえ、レンチウイルス感染症または関連する病状を処置または予防するのに有用である。本発明の細胞は任意の手段(例えば、注射)によって患者に導入することができ、抗原または抗原の群に対する所望の免疫応答を生じる。細胞は患者に由来することができ(すなわち、自己の細胞)、または患者とMHC適合もしくは不適合の個体に由来することができる(すなわち、同種異系間の細胞)。典型的には、自己の細胞は、供給源の細胞を得た患者に注射し戻される。注射部位は、皮下、腹腔内、筋肉内、皮内、静脈内またはリンパ内でありうる。細胞は、疾患もしくは病状に既に罹患している患者にまたは疾患もしくは病状に対する素因がある患者に、疾患もしくは病状の症状を処置もしくは予防もしくは軽減するのに十分な数で投与することができる。処置または予防を必要とする患者に注射される細胞の数は、とりわけ、抗原および個体のサイズに依って変化しうる。この数は、例えば、約103〜1011個、通常は、約105〜107個の細胞(例えば、血液、PMBCまたは精製された樹状細胞もしくはTリンパ球の形態をとって)の範囲でありうる。細胞の単回または複数回(2回、3回、4回または5回)投与は、処置を行う医師が選択する細胞数およびパターンで行われうる。細胞は、細胞および個体に対して無毒性の、薬学的に許容される担体において投与されるべきである。そのような担体は、細胞が増殖した増殖培地、またはリン酸緩衝食塩水のような任意の適当な緩衝媒体でありうる。細胞は単独で、または不要な免疫応答の処置もしくは予防のための当技術分野において公知の他の治療用物質、例えば、限定されるものではないが、グルココルチコイド、メトトレキセート、D-ペニシラミン、ヒドロキシクロロキン、金塩、スルファサラジン、TNF-αもしくはインターロイキン-1阻害剤および/または特異的免疫療法の他の形態とともに補助療法として投与されうる。
【0145】
6. 治療および予防
3.1項に記述されているGagポリペプチドおよびペプチド、ならびに3.2項に記述されているGagを発現する核酸構築体のほか、3.3項に記述されているGag粒子、ならびに3.4項に記述されているGag特異的抗原提示細胞および4項に記述されているGagによる抗原刺激を受けたリンパ球(「免疫刺激因子」または「Gag免疫刺激因子」)も、限定されるものではないが、後天性免疫不全疾患のようなレンチウイルス関連疾患または病状の処置を含むレンチウイルス感染症の処置または予防のための活性成分として単独でまたは一緒に用いることができる。これらの免疫刺激因子はそれらだけで、あるいはそれらが適当な薬学的に許容される担体および/もしくは希釈剤、またはアジュバントと混合されている組成物の状態で患者に投与することができる。
【0146】
それゆえ、本発明は、レンチウイルス感染症を処置または予防するための方法を包含し、これはそのような処置を必要とする患者に、上記に広く記述されている少なくとも1つのGag免疫刺激因子の有効量を投与する段階から本質的になる。いくつかの態様において、これらの方法は、レンチウイルス感染症を有する個体、またはレンチウイルス感染症を有するリスクがある個体に、Gag特異的抗原提示細胞またはその前駆体の数を増加させるのに有効な量でGag免疫刺激因子を投与し、それによってレンチウイルス感染症を処置または予防する段階から本質的になる。
【0147】
したがって、本発明の方法は、レンチウイルス感染症を有する個体、レンチウイルス感染症にかかるリスクがある個体、およびレンチウイルス感染症の処置が行われたが、再発した個体を処置するのに適している。そのような個体は、損傷を受けていない正常な免疫系を有するが、HIVに感染するリスクがある個体(「リスクがある」個体)を含むが、これに限定されることはない。リスクがある個体は、一般集団よりもHIVに感染する可能性が高い個体を含むが、これに限定されることはない。HIVに感染するリスクがある個体は、HIV感染個体との性行為によりHIV感染のリスクがある個体; 静注薬物使用者; HIV感染血液、血液製剤または他のHIV汚染体液に曝露された可能性のある個体; およびHIV感染母体によって授乳を受けている乳児を含むが、これらに限定されることはない。処置に適した個体は、HIV-1および/もしくはHIV-2および/もしくはHIV-3、またはそれらの任意の変種に感染した個体、またはそれらに感染するリスクがある個体を含む。本発明の方法での処置に適した個体は、他の抗ウイルス療法での処置に対して抵抗性であるレンチウイルス感染症を有する個体も含む。
【0148】
具体的な態様において、これらの方法はレンチウイルス関連疾患(例えば、AIDSのような後天性免疫不全疾患)を処置または予防するために用いられ、したがって、本発明はまた、対象においてレンチウイルス関連疾患を処置または予防する方法にまで及び、これらの方法は一般に、該疾患を処置または予防するのに有効な量で上記に広く記述されているGag免疫刺激因子を対象に投与する段階を伴う。
【0149】
インビボおよびエクスビボの方法、ならびに投与の全身的および局所的経路を含む、任意の利用可能な方法および薬物送達に適した経路を用いてGag免疫刺激因子は個体に投与される。製剤および投与の技術は「Remington's Pharmaceutical Sciences」, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 最新版のなかで見出すことができる。適当な経路は、例えば、腸内の(例えば、経口のもしくは直腸の)、経粘膜のまたは腸の投与; 筋肉内の、皮下の、髄内の注射、および髄腔内の、直接的脳室内の、静脈内の、腹腔内の、鼻腔内のまたは眼内の注射を含むことができる。本発明の1つの望ましい態様を構成する、注射の場合、本発明の免疫刺激因子を水溶液、典型的には、ハンクス液、リンゲル液または生理食塩緩衝液のような生理学的に適合する緩衝液のなかで製剤化することができる。経粘膜投与の場合、浸透される障壁に適した浸透剤が製剤に用いられる。そのような浸透剤は一般に、当技術分野において公知である。筋肉内および皮下注射は、例えば、免疫原性組成物、ワクチンおよびDNAワクチンの投与に適している。本発明のある種の態様において、免疫刺激因子は静脈内に投与される。
【0150】
Gag免疫刺激因子は経口投与に適した投与量へ、当技術分野において周知の薬学的に許容される担体を用いて容易に製剤化することができる。そのような担体は、処置される患者による経口摂取のために、本発明の化合物が錠剤、ピル、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などのような剤形に製剤化されることを可能にする。これらの担体は、糖、デンプン、セルロースおよびその誘導体、モルト、ゼラチン、タルク、硫酸カルシウム、植物油、合成油、ポリオール、アルギン酸、リン酸緩衝溶液、乳化剤、等張食塩水および発熱物質を含まない水から選択することができる。
【0151】
非経口投与のための薬学的製剤は、水溶性型の活性化合物の水溶液を含む。さらに、活性化合物の懸濁液を適切な油性注射懸濁液として調製することもできる。適当な親油性溶媒またはベシクルは、ゴマ油のような脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドのような合成脂肪酸エステル、またはリポソームを含む。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランのような、懸濁液の粘性を増加させる物質を含有することができる。任意で、懸濁液はまた、適当な安定剤、または高濃縮液の調製を可能にするために化合物の溶解性を増加させる薬剤を含有してもよい。
【0152】
経口使用のための薬学的調製物は、活性化合物を固体賦形剤と混合し、得られた混合物を任意ですりつぶし、必要に応じて、適当な補助剤を添加した後に、錠剤または糖衣錠コアを得るよう顆粒の混合物を加工することにより得ることができる。適した賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖; 例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製物のような増量剤である。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩のような、崩壊剤を添加することができる。そのような組成物は、製薬学の方法のいずれかにより調製することができるが、どの方法も、上記の1つまたは複数の治療剤を、1つまたは複数の必要な成分を構成する担体と会合させる段階を含む。一般に、本発明の薬学的組成物は、それ自体が知られている方法で、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠形成、粉末化、乳化、カプセル化、封入または凍結乾燥工程によって製造することができる。
【0153】
糖衣錠コアには、適当なコーティングが提供される。この目的のため、濃縮糖溶液を用いることができ、これは任意で、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、ならびに適当な有機溶媒または溶媒混合物を含有してもよい。識別のためにまたは活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、染料または色素を錠剤または糖衣錠コーティングに添加することができる。
【0154】
経口的に使用できる医薬は、ゼラチンでできた押し込み型のカプセル、ならびに、ゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールのような可塑剤でできた軟らかい密閉カプセルを含む。押し込み型のカプセルは、ラクトースのような増量剤、デンプンのような結合剤および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤、任意で、安定剤と混ぜ合わせて活性成分を含有することができる。軟カプセルにおいて、活性化合物は脂肪油、流動パラフィンもしくは液体ポリエチレングリコールのような、適当な液体に溶解または懸濁することができる。さらに、安定剤を添加することもできる。
【0155】
本発明のGag免疫刺激因子の剤形は、この目的のために特別にデザインされた注射もしくは埋め込み制御放出性装置、またはこの様式で追加的に作用するように改変されたインプラントの他の形態を含むこともできる。本発明の薬剤の制御放出はそれを、例えば、アクリル樹脂、蜜蝋、高級脂肪族アルコール、ポリ乳酸およびポリグリコール酸、ならびにヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなある種のセルロース誘導体を含む疎水性重合体でコーティングすることによりもたらすことができる。さらに、制御放出は、他の重合体マトリックス、リポソームおよび/またはマイクロスフェアを用いることによりもたらすこともできる。
【0156】
本発明のGag免疫刺激因子(例えば、Gagポリペプチドおよびペプチド)は、薬学的に適合する対イオンとの塩として提供することができる。薬学的に適合する塩は、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含むが、これらに限定されない、多くの酸で形成されうる。塩は水性溶媒、または対応する遊離塩基型である他のプロトン性溶媒においてより可溶性である傾向がある。
【0157】
あるいは、Gag免疫刺激因子を全身的にではなく局所的に、例えば、多くの場合にはデポーまたは徐放性製剤での、直接的に組織への化合物の注射により、投与することもできる。さらに、免疫刺激因子を、標的薬物送達系において、例えば3.3項に記述されているように、例えば、組織特異的抗体でコーティングされたリポソームにおいて投与することもできる。リポソームは組織に標的化され、組織によって選択的に取り込まれるであろう。
【0158】
本発明で用いるのに適した薬学的組成物は、活性成分がその意図した目的を達成するのに有効な量で含まれる組成物を含む。患者に投与される薬剤の用量は、病状に付随した症状の低減のような、経時的に患者において有益な応答をもたらすのに十分であるべきである。投与される免疫刺激因子の量は、対象の年齢、性別、体重および一般的健康状態を含めて、処置される対象に依存しうる。この関連で、投与のための免疫刺激因子の的確な量は、医師の判断に依るであろう。病状の処置または予防において投与される免疫刺激因子の有効量を判定する際に、医師は標的抗原の組織レベル、および疾患または病状の進行を評価することもある。いずれにしても、当業者は、本発明の免疫刺激因子の適当な投与量を容易に判定することができる。
【0159】
本発明の方法において用いられるいずれの化合物についても、有効な用量は細胞培養アッセイ法または動物モデルから最初に推定することができる。本発明の免疫刺激因子の毒性および治療効力は、細胞培養物または実験動物での、例えば、LD50 (集団の50%に対して致死の用量)およびED50 (集団の50%において治療的に有効な用量)を測定するための、標準的な薬学的手順により判定することができる。毒性効果と治療効果との用量比は治療指数であり、それを比LD50/ED50として表すことができる。大きな治療指数を示す化合物が好ましい。これらの細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトで用いるための投与量の範囲を策定する際に用いることができる。そのような化合物の投与量は、毒性のほとんどないまたは全くないED50を含む循環血液中の濃度の範囲内にあることが好ましい。投与量は、採用される剤形および利用される投与経路に依ってこの範囲内で変化しうる。各医師は患者の病状を考慮して的確な製剤、投与経路および投与量を選択することができる(例えばFingl et al., 1975, 「The Pharmacological Basis of Therapeutics」中, Ch. 1 p1を参照のこと)。
【0160】
投与量および間隔は、Gag低減効果あるいはレンチウイルス感染症または関連する疾患もしくは病状を改善する効果を維持するのに十分な活性化合物の血漿レベルを提供するように個別に調整することができる。全身投与のための通常の患者投与量は、1〜2000 mg/日、一般には1〜250 mg/日、典型的には10〜150 mg/日の範囲である。患者体重の観点から言えば、通常の投与量は、0.02〜25 mg/kg/日、一般には0.02〜3 mg/kg/日、典型的には0.2〜1.5 mg/kg/日の範囲である。患者体表面積の観点から言えば、通常の投与量は、0.5〜1200 mg/m2/日、一般には0.5〜150 mg/m2/日、典型的には5〜100 mg/m2/日の範囲である。
【0161】
いくつかの態様において、Gag免疫刺激因子の単回用量が投与される。他の態様において、免疫刺激因子の複数回用量が投与される。複数回用量がある期間にわたって投与される場合、免疫刺激因子はある期間にわたって1日2回(1日4回(qid))、毎日(qd)、1日おきに(qod)、3日毎に、週3回(tiw)または週2回(biw)投与される。実例において、免疫刺激因子は1日〜約2年またはそれ以上の期間にわたって1日4回(qid)、毎日(qd)、1日おきに(qod)、週3回(tiw)または週2回(biw)投与される。適切には、免疫刺激因子はさまざまな要因に依って、1週間、2週間、1ヶ月間、2ヶ月間、6ヶ月間、1年間もしくは2年間、またはそれ以上の間、上記の頻度のいずれかで投与される。
【0162】
いくつかの態様において、免疫刺激因子の有効量は、処置個体におけるレンチウイルス負荷を、免疫刺激因子で処置されていない個体のレンチウイルス負荷に比べて、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%もしくは少なくとも約95%またはそれ以上だけ低減するものである。
【0163】
いくつかの態様において、Gag免疫刺激因子の有効量は、個体におけるCD4+ T細胞数を、免疫刺激因子で処置されていない個体のCD4+ T細胞数に比べて、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、もしくは少なくとも約10倍またはそれ以上だけ増大するものである。
【0164】
いくつかの態様において、Gag免疫刺激因子の有効量は、CD4+ T細胞数を正常範囲内にまで回復させるものである。ヒト血液では、正常範囲の中にあると考えられるCD4+-T細胞の数は、約600〜約1500個のCD4+-T細胞/mm3血液である。
【0165】
レンチウイルス感染症の処置または予防は、レンチウイルス感染の可能性の低減、感染細胞から感受性細胞へのレンチウイルスの拡散の抑制、レンチウイルス感染個体でのウイルス負荷の低減、レンチウイルス感染個体でのウイルスにコードされるポリペプチドの量の低減、およびレンチウイルス感染個体でのCD4+ T細胞数の増大を含むが、これらに限定されることはない。
【0166】
種々の方法のいずれかを用いて処置/予防の方法が有効かどうかを判定することができる。例えば、本発明の方法がレンチウイルス負荷の低減、および/またはレンチウイルス感染症の処置に有効かどうかを判定する方法は、レンチウイルス感染の兆候に関する任意の公知の試験であり、例えば、レンチウイルスポリヌクレオチド配列に特異的な重合体でのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、例えば、生体サンプル中のレンチウイルスの量を測定することにより、ウイルス負荷を測定すること; 例えば、ポリペプチドに特異的な抗体での酵素連結免疫吸着アッセイ法(ELISA)などの免疫学的アッセイ法を用いて、レンチウイルスによりコードされるポリペプチド、例えば、p24、gp120、逆転写酵素を検出することおよび/または測定すること; ならびに個人におけるCD4+ T細胞数を測定することを含むが、これらに限定されることはない。レンチウイルス感染症(またはレンチウイルス感染症に関連する何らかの兆候)をアッセイする方法は当技術分野において公知であり、HIV Protocols (Methods in Molecular Medicine, 17) N. L. Michael and J. H. Kim, eds. (1999) Humana Pressのような多数の刊行物に記述されている。
【0167】
前述から、本発明の薬剤を治療的もしくは予防的な免疫調節組成物またはワクチンとして使用できることが理解されよう。したがって、本発明は、本発明のGag免疫刺激因子の1つまたは複数を活性化合物として含有する免疫調節組成物の産生にまで及ぶ。そのようなワクチンを産生するために任意の適当な手順が企図される。例示的な手順は、例えば、New Generation Vaccines (1997, Levine et al., Marcel Dekker, Inc. New York, Basel Hong Kong)に記述されているものを含む。
【0168】
本発明による免疫調節組成物は、水、リン酸緩衝食塩水および食塩水のような生理学的に許容される希釈剤または賦形剤を含有することができる。それらはまた、当技術分野において周知であるようにアジュバントを含むこともできる。適当なアジュバントは、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オクタデシルアミノ酸エステル、リゾレシチン、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、N,N-ジオクタデシル(dicoctadecyl)-N',N'ビス(2-ヒドロキシエチル-プロパンジアミン)、メトキシヘキサデシルグリセロール、およびプルロニックポリオールのような表面活性物質; ピランのようなポリアミン、デキストラン硫酸、ポリICカルボポール; ムラミルジペプチドおよび誘導体のようなペプチド、ジメチルグリシン、タフトシン; 油乳濁液; ならびにリン酸アルミニウム、水酸化アルミニウムまたはミョウバンのようなミネラルゲル; リンフォカイン、QuilAおよび免疫刺激複合体(ISCOMS)を含むが、これらに限定されることはない。
【0169】
前記のような、本発明のGag特異的抗原提示細胞または前駆体およびGag特異的抗原提示細胞を用いて作製した、Gagによる抗原刺激を受けたTリンパ球は、予防的または治療的用途のための免疫調節組成物における免疫刺激因子として用いることができる。いくつかの態様において、本発明の抗原特異的抗原提示細胞は、正常な免疫応答を開始することができない免疫抑制個体への養子免疫伝達のための多数のCD8+またはCD4+ CTLを作製するのに有用である。例えば、Gagによる抗原刺激を受けたCD8+ CTLを、レンチウイルス感染症に罹患している個体において治療の目的で養子免疫伝達することができる(Koup et al., 1991, J. Exp. Med., 174: 1593-1600; Carmichael et al., 1993, J. Exp. Med., 177: 249-256; およびJohnson et al., 1992, J. Exp. Med., 175: 961-971)。
【0170】
7. 併用療法
Gag免疫刺激因子を少なくとももう1つの治療剤との組み合わせで(例えば、同じ製剤中でまたは別々の製剤中で)個体に投与することができる(「併用療法」)。免疫刺激因子はもう1つの治療剤との組み合わせで投与されてもよく、または別々の製剤中で投与されてもよい。別々の製剤中で投与される場合、Gag免疫刺激因子およびもう1つの治療剤は、実質的に同時(例えば、互いに約60分以内、約50分以内、約40分以内、約30分以内、約20分以内、約10分以内、約5分以内もしくは約1分以内)に、あるいは約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約10時間、約12時間、約24時間、約36時間もしくは約72時間またはそれ以上だけ時間を隔てて投与することができる。治療剤の有効量は上記の通りである。
【0171】
抗炎症薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬、抗マイコバクテリア薬、抗生物質、殺アメーバ薬、殺トリコモナス薬、鎮痛薬、抗新生物薬、降圧薬、抗細菌薬および/またはステロイド薬のような、治療剤を併用療法で投与して、抗ウイルス感染症を処置することができる。いくつかの態様において、ウイルス感染症または細菌感染症を有する患者は、1つまたは複数のGag免疫刺激因子と以下の1つまたは複数との組み合わせで処置される; βラクタム系抗生物質、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、グラミシジン、バシトラシン、スルホンアミド、ニトロフラゾン、ナリジクス酸、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルオコルトロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、インドメタシン、スリンダク、アシクロビル、アマンタジン、リマンタジン、組換え可溶性CD4 (rsCD4)、抗受容体抗体(例えば、ライノウイルスに対する)、ネビラピン、シドフォビル(ビスタイド(商標))、ホスホノホルメート三ナトリウム(ホスカルネット(商標))、ファムシクロビル、ペンシクロビル、バラシクロビル、核酸/複製阻害剤、インターフェロン、ジドブジン(AZT、レトロビル(商標))、ジドブジン/ラミブジン(コンビビル)、ジダノシン(ジデオキシイノシン、ddI、ヴァイデックス(商標))、スタブジン(d4T、ゼリット(商標))、ザルシタビン(ジデオキシシトシン、ddC、ハイビッド(商標))、ネビラピン(ビラミューン(商標))、ラミブジン(エピビル(商標)、3TC)、プロテアーゼ阻害剤、サキナビル(インビラーゼ(商標)、ホルトバーゼ(商標))、リトナビル(ノルビル(商標))、ネルフィナビル(ヴィラセプト(商標))、エファビレンツ(サスティバ(商標))、アバカビル(ジアゲン(商標))、アンプレナビル(アゲネラーゼ(商標))、インジナビル(クリキシバン(商標))、ガンシクロビル、AzDU、デラビルジン(レスクリプトール(商標))、ロピナビル/リトナビル(カレトラ)、トリジビル、リファンピン、クラチロマイシン(clathiromycin)、エリスロポエチン、コロニー刺激因子(G-CSFおよびGM-CSF)、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤、ヌクレオシド阻害剤、アドリアマイシン、フルオロウラシル、メトトレキセート、アスパラギナーゼならびにそれらの組み合わせ。抗HIV剤は上記羅列のうち、1つまたは複数のHIVタンパク質の機能を特に標的とするものである。
【0172】
いくつかの態様において、Gag免疫刺激因子は2つまたはそれ以上の抗HIV剤とともに併用療法で投与される。例えば、本薬剤を1つ、2つまたは3つのヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(例えば、コンビビル、エピビル、ハイビッド、レトロビル、ヴァイデックス、ゼリット、ジアゲンなど)とともに併用療法で投与することができる。本発明の免疫刺激因子は、1つまたは2つの非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(例えば、レスクリプトール、サスティバ、ビラミューンなど)とともに併用療法で投与することができる。Gag免疫刺激因子は、1つまたは2つのプロテアーゼ阻害剤(例えば、アゲネラーゼ、クリキシバン、ホルトバーゼ、インビラーゼ、カレトラ、ノルビル、ヴィラセプトなど)とともに併用療法で投与することができる。Gag免疫刺激因子は、プロテアーゼ阻害剤およびヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤とともに併用療法で投与することができる。Gag免疫刺激因子は、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤および非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤とともに併用療法で投与することができる。Gag免疫刺激因子は、プロテアーゼ阻害剤および非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤とともに併用療法で投与することができる。本阻害剤とプロテアーゼ阻害剤、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤、および非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤の1つまたは複数との他の組み合わせも企図される。
【0173】
8. 免疫調節を評価するための方法
免疫化の有効性は、任意の適当な技術を用いて評価することができる。Gagに応答する個体の能力は、Gagに応答するように抗原刺激を受けたそれらの細胞が数、活性、およびその抗原またはその抗原を提示している細胞を検出かつ破壊する能力に増加がみられるかどうかを評価することにより判定することができる。免疫応答の強さは、以下のものを含む標準的な試験によって測定される: 当技術分野にとって公知の手段による末梢血リンパ球の直接的な測定; ナチュラルキラー細胞の細胞傷害性アッセイ法(例えば、Provinciali M. et al (1992, J. Immunol. Meth. 155: 19-24)を参照のこと)、細胞増殖アッセイ法(例えば、Vollenweider, I. and Groseurth, P. J. (1992, J. Immunol. Meth. 149: 133-135)を参照のこと)、免疫細胞およびサブセットの免疫アッセイ法(例えば、Loeffler, D. A., et al. (1992, Cytom. 13: 169-174); Rivoltini, L., et al. (1992, Can. Immunol. Immunother. 34: 241-251)を参照のこと); または細胞性免疫に関する皮膚試験(例えば、Chang, A. E. et al (1993, Cancer Res. 53: 1043-1050)を参照のこと)。あるいは、免疫化の効力は、新鮮PBMCおよび刺激PBMCの両方のHLAクラスI四量体染色(例えば、Allen et al., 2000, J. Immunol. 164(9): 4968-4978を参照のこと)、増殖アッセイ法(Allen et al., 前記)、ELISPOTアッセイ法および細胞内サイトカイン染色(Allen et al., 前記)、ELISAアッセイ法 - 線形B細胞応答の場合; ならびに合成ポリヌクレオチドを発現する細胞サンプルのウエスタンブロットを含むが、これらに限定されない、1つまたは複数の技術を用いてモニターすることができる。特に関連があるのは、抗原により活性化されたT細胞のサイトカインプロファイル、より詳細には、IFNγ、IL-2、IL-4、IL-5、IL-10、TGFβおよびTNFαの産生および分泌であろう。
【0174】
Tリンパ球の細胞傷害性活性、具体的には、抗原提示細胞により誘導される細胞傷害性Tリンパ球の能力は、当業者に公知の任意の適当な技術により評価することができる。例えば、細胞傷害性活性についてアッセイされるTリンパ球を含むサンプルを採取し、Tリンパ球を次いで、抗原を提示するようにさせてある、抗原刺激を受けた抗原提示細胞に供する。細胞傷害性細胞になるように誘導されうることが公知のTリンパ球の対照集団の細胞傷害性活性を評価することにより判定されうる適切な時間の後、評価されるTリンパ球を、標準的な細胞傷害性アッセイ法において細胞傷害性活性について試験する。
【0175】
CTL活性を評価する方法は、腫瘍またはウイルス抗原を発現する細胞に対して細胞傷害性応答を生じる個体の能力を評価するのに特に有用である。したがって、この方法は、がんまたはウイルスに対する免疫応答を開始する個体の能力を評価するのに有用である。例えば、51Cr標識標的細胞による、ペプチドコーティング細胞または組換えウイルス感染細胞に対し刺激された脾細胞または末梢血単核球(PBMC)を用いた、CTL溶解アッセイ法を利用することができる。そのようなアッセイ法は、例えば、霊長類、マウスまたはヒト細胞を用いて行うことができる(Allen et al., 前記)。さらに、CTL活性は、インビボ検出方法を用いて非近交系霊長類において測定することもでき、この方法では、自己細胞(例えば、PMBC)を光学的に検出可能な標識(例えば、蛍光性、化学発光性またはリン光性または視覚性の標識または色素)で標識すること、およびそれらを本明細書において開示の1つまたは複数のGagペプチドと接触させることを伴う。それらは、対象において試験中のCTL応答の対象である抗原に対応するように選択される。自己細胞を対象に注入し、対象の免疫系が自己細胞に応答するのに十分な時間をもたらすのに適した時間の後(例えば、注入から10分〜24時間の後)、対象由来のリンパ球を収集する。次に、収集されたリンパ球を分析して、対象での抗原に対するインビボのCTL応答の尺度となる、光学的に検出可能な標識を含有するまたは別の方法で保有するリンパ球の数または割合を特定する。
【0176】
本発明を容易に理解し、実践に移すことができるように、特に好ましい態様をこれから、以下の非限定的な例によって記述する。
【実施例】
【0177】
実験
ペプチドパルス血液でのSIV感染マカク(macaque)の免疫療法後のウイルス血症の制御
ARTを受けているSIV感染ブタオザル(pigtail macaque)においてOPAL免疫療法を調べた。ブタオザルは代替のアカゲザルモデル(rhesus macaque)に比べて、少なくとも同等に病原性のSIV感染経過を有する9, 10。マカク36頭にSIVmac251を感染させて、3週間後、抗レトロウイルス薬テノホビルおよびエムトリシタビンによる7週間の処置を開始した。これらの動物を、ピーク血漿SIVウイルス負荷(VL)、Mane-A10状態(SIV感染ブタオザルにおいてVLを改善するMHCクラスI遺伝子11)、体重および性別によって階層化した3群に無作為に割り付けた。エクスビボで1時間10 μg/mL/ペプチドの、重複するSIV Gag 15merペプチドのみ(OPAL-Gag) 125種、全9種のSIVタンパク質に及ぶSIV 15merペプチド(OPAL-All) 823種と混合したまたは未免疫とした自己新鮮PBMCを抗レトロウイルス療法に乗じて4回(4週目、6週目、8週目、10週目)マカクに免疫した。10週目にARTを中止後26週間、マカクを追跡調査した。
【0178】
マカク全36頭がSIVmac251曝露後に感染し、7.1 log10コピー/mLの平均ピークVLを有した。ワクチン接種の前に、動物4頭が下痢、脱水、昏睡、食欲不振および体重減少を伴う急性SIV感染症の間に死亡した。対照に比べてOPAL免疫動物における平均体重、血液学的パラメータまたは臨床知見の相違はなく、ワクチン接種は十分に寛容された。
【0179】
OPAL免疫動物においてワクチン接種を終えた後に著しいSIV特異的CD4+およびCD8+ T細胞免疫原性が認められた。最終免疫から2週間後の平均のGag特異的CD4およびCD8 T細胞応答は、OPAL-Gag群においてそれぞれ全CD4およびCD8 T細胞の3.0%および1.9%であった。最終免疫から2週間後の平均のGag特異的CD4およびCD8 T細胞応答は、OPAL-All群において0.84%および0.37%、対照において0.15%および0.29%であった(図1a、b)。また、OPAL-All免疫動物におけるGag特異的T細胞は、その他全てのSIVタンパク質に対するT細胞応答が上昇していたが、対照またはOPAL-Gagのみ免疫した動物ではそうでなかった。平均のEnv、Polおよび組み合わせ調節タンパク質に特異的なCD4/CD8応答は、対照群およびOPAL-Gag群における非Gag抗原に対する全CD4/8応答の場合の0.4%以下に比べてOPAL-All群において、それぞれ2.5%/11.8%、0.8%/0.3%および1.5%/2.4%であった(図1c、dおよび図3)。非Gagタンパク質に対するいっそう強力なCD8+ T細胞応答は、Gagに対するCD8+ T細胞応答の低減と相関していた(図1e)。すなわち、OPAL-All免疫動物においていっそう多くの数のSIVタンパク質が認識されたが、Gag応答はGagペプチドでのみ免疫したものに比べて低減した。動物は全てSIV感染後に血清転換したが、抗体応答の顕著な増強はOPALワクチン接種で起こらなかった。
【0180】
7週間のARTはVLを、10週目までに残りの動物32頭のうち26頭において3.1 log10コピー/mL未満に制御した。ARTによってウイルス血症を制御できなかった動物6頭は、2週目の時点でいっそう高いピークVL (ARTによってウイルス血症を制御した動物の場合の6.94±0.52に比べて7.74±0.33の平均±SD、p < 0.001)を有し、ART中止後にいっそう高いVL (5.98±0.53 対 4.28±0.90、p < 0.001)を有していた。VLの制御は、感染マカクの免疫療法から最適な結果を達成する際に重要である可能性が高い7, 12。ARTによってウイルス血症を制御していた動物(動物26頭)に関して所定(パー・プロトコル)の主要VLエンドポイント分析を行ったが、本発明者らはまた、ARTによるVL制御を調整することにより、残りの動物32頭の全てを分析した。
【0181】
ART中止後10週における組み合わせOPAL-AllおよびOPAL-Gag処置群の間のVLの主要エンドポイント比較では、対照よりも0.5 log10コピー/mL低かった(p = 0.084、図2、表7)。各ワクチン接種群(OPAL-AllおよびOPAL-Gag)は、VLの極めてよく似た低減を有していた。ARTによるVLの制御およびMane-A10状態で調整された全動物の分析から、対照に比べてOPAL免疫動物におけるVLの顕著な低下が実証された(表7)。ART中止後6ヶ月までに、対照群とOPAL免疫群との間の、VLにおける平均差は、0.93 log10コピー/mL 6ヶ月であった(p = 0.02、表7)。
【0182】
感受性非依存的なVLアッセイ法を用いてウイルス学的所見を確認するために、試験32週由来の凍結血漿(1 mL)をMaryland, USAの国立がん研究所(NCI)に送った。M Piatak博士およびJ Lifson博士は、親切にも、定量限界が1.5 log10コピー/mLのアッセイ法を用いて盲目的にSIV RNAのサンプルを分析してくださった。メルボルン大学およびNCIでのアッセイは、密接に関連し(r=0.97, p<0.001)、この時点の、対照に比べてワクチン接種を受けた人でほぼ同一の平均的な低下を示した(それぞれ、0.82 対 0.88 log10コピー/mL)。
【0183】
OPAL免疫療法によるSIV制御の持続性および疾患の予防についてさらに評価するために、本発明者らは、ARTに乗ぜず同一の手順のものを3回(36週目、39週目、42週目の時点で)同じ無作為化群の全32頭の動物に再追加免疫し、それらの動物をさらに6ヶ月間追跡調査した。SIV特異的なT細胞免疫は、初回のワクチン接種と同様に免疫動物において増強された(図1)。ARTなしに、1年をやや超える追跡調査期間の間中、ウイルス制御が維持された(図2、表7)。
【0184】
ARTによりウイルス血症を制御しなかった全6頭の動物を含めて、残りの動物32頭のうち12頭が初期のAIDSを発症し、それらを、延長した経過観察の間に安楽死させた。ARTによりウイルス血症を制御した安楽死動物6頭のうち、5頭が対照群のもので、1頭がOPAL-Gag群のものであった(図2)。OPAL免疫療法は、生存利益をもたらした。そこで、ARTによりウイルス血症を制御した動物26頭(p = 0.053)またはMane-A10状態およびARTによるウイルス血症の制御で調整された、全32頭の動物(p = 0.02、表7)を細かく検討した。
【0185】
本発明者らはまた、EnvおよびGag CTL応答体においてVLおよび末梢CD4レベルを比較した。一次分析をワクチン群内の動物に対して行い、治療免疫によってEnvまたはGag特異的なT細胞を増強する効果を評価した。Mane-A10陽性動物は、これらの動物が全てKP9エピトープに対する有益なGag特異的CTL応答を開始することを考慮して、除外した。実際、この試験においてManeA10陽性対照は、感染後12〜64週を通じManeA10陰性対照の場合の5.49±0.35 log10コピー/mLと比較して4.06±0.42 log10コピー/mLの平均VLを有していた(P = 0.024、時間加重曲線下面積(time-weighted area-under-the curve)解析)。
【0186】
EnvのみでのCTL応答体は、感染後12〜64週に、Mane-A10+動物を除くGagのみでのCD8+ T細胞応答を有する動物が維持したよりも顕著に高い平均VLを維持していた(それぞれ5.05±0.38 log10コピー/mL 対 3.65±0.24 log10コピー/mL。P = 0.039、図4)。感染後12〜64週のEnvのみでの応答体6頭とMane-A10陰性、ワクチン非接種の、対照動物の平均VLには違いが認められた(それぞれ、5.05±0.38 log10コピー/mLおよび5.49±0.35 log10コピー/mL; 図4)。
【0187】
幅広い、多タンパク質応答が有益でありうるという推測に対処するため、次に、この分析にEnvおよびGagの両方に対するCD8+ T細胞応答を有する動物を含めた。Env特異的応答もGag特異的応答もともに有する動物3頭のVLは、平均すると、感染後12〜64週に5.01±0.56 log10コピー/mLとなった。これはGagのみでの応答体よりも顕著に高く(P = 0.049)、Envのみでの応答とは大差がなかった。
【0188】
この試験における動物を、最後のワクチン接種およびARTの中止後、1年をやや超える間にわたり追跡調査した。これにより、EnvまたはGagのみに応答した動物、EnvとGagの両方に応答した動物およびワクチン非接種の対照での末梢CD4+ T細胞の枯渇および生存の分析が可能になった。感染後12〜64週の間、Gagのみでの応答体3頭 対 Envのみでの応答体6頭において、顕著に高い平均末梢CD4レベルは認められなかった(それぞれ23.42%±4.22および27.44%±3.92、P = 0.547 図4)。Env特異的およびGag特異的CD8+ T細胞応答の両方を有した動物3頭は、ワクチン非接種対照が有していたよりも同じ期間に、顕著ではないが、さらに低い末梢CD4レベルを有していた(それぞれ18.59%±3.23および21.19%±3.01; 図4)。
【0189】
経過観察中、32頭の動物のうち計6頭のワクチン接種動物および6頭の対照を、体重減少、CD4+ T細胞枯渇および血小板減少症を含む、初期AIDSのために安楽死させた。EnvのみのCD8+ T細胞エピトープに応答した動物は、Gagのみに対するCTL応答を有する動物よりも高い頻度でAIDSに進行した(図4)。
【0190】
要約すれば、重複Gag SIVペプチドを用いるまたはSIVプロテオーム全体に及ぶペプチドを用いるかのいずれかの、OPAL免疫療法は、免疫原性が非常に高く、ワクチン非接種の対照と比べて顕著に低いウイルス負荷および生存利益をもたらした。OPAL免疫マカクにおけるウイルス学的効果はARTの中断後も12ヶ月間、耐久性があった。OPAL免疫療法に関する本所見は、調べた悪性のSIVmac251ブタオザルモデルにもかかわらず認められ9、この免疫療法技術の見込みに対する強力な原理証明となる。
【0191】
OPAL免疫治療法は多くの他の細胞免疫療法、具体的には樹状細胞の使用よりも単純である。DNAの使用、CTLA-4遮断およびウイルスベクターに基づく手法も、現在、マカクでの研究においてある程度の見込みを示している14, 15が、そのような手法はヒトでの研究に未だつながっていない。本研究ではペプチドをPBMCに付加したが、本発明者らは、ペプチドを全血に付加するという、より単純な技術も免疫原性が高く、さらに広く適用可能でありうる技術であることを明らかにした7
【0192】
ウイルス特異的なCD4+ T細胞は、典型的には、HIV感染したヒトまたはSIV感染したマカクにおいて非常に弱い; これらの細胞の劇的な増強がOPAL免疫療法によって誘導されたが、これはその有効性の基礎となる可能性がある16。本発明者らは本研究においてIFN-γ産生T細胞を主に測定したが、最近の多機能ICSアッセイ法から、OPAL免疫療法は、サイトカインTNF-αおよびIL-2、ケモカインMIP1βならびに脱顆粒マーカーCD107aを同様に発現できるT細胞も誘導できることが示唆されている。対照マカクもワクチン接種マカクもともに早期(感染から3週後)に、単独でもヒトにおける一時的な転帰改善と結び付けられている、ARTで処置した。それにもかかわらず、感染から2週間以内に腸内でCD4+ T細胞が大量に消失し17、この感染後早期のヒトを特定することは困難であるかもしれないが、HIV-1対象が急性感染症を呈するのはこの前後である。これらの所見がヒト臨床試験において確認されれば、VLのおよそ1.0 log10の低減はヒトにおける進行性HIV疾患の大幅な遅延をもたらすはずであり、ARTを再導入する必要のない、適度な期間を可能にする18。ワクチン接種動物によって示されたウイルス血症の持続的制御は、興味深く、その他最近のマカク試験14と一致しており、再免疫の必要性があまりない可能性を示唆している。
【0193】
ウイルス血症の制御は、OPAL-GagおよびOPAL-All群について同様であった。同一用量のGag重複ペプチドにもかかわらず、OPAL-Gag動物におけるGag特異的なCD4およびCD8+ T細胞応答はOPAL-All動物におけるものよりも5.1倍および3.5倍大きい。このことから、Gag由来のペプチドと他のSIVタンパク質由来のペプチドとの間の抗原競合が示唆される。特定されたEnv特異的なCD8 T細胞応答は、ウイルス複製または疾患進行に顕著に影響を与えることができなかった。Env (または他の非Gag)応答は、より有効なCD8+ T細胞応答を阻害してしまう可能性がある。この現象は、Gag特異的CTL応答がウイルス血症の制御と相関していたものの、Env特異的およびGag特異的CD8+ T細胞応答の両方を有する動物は、ウイルス血症の制御でも疾患の予防でもともに、Envのみでの応答体またはワクチン非接種対照と同じような結果であったという知見によって浮き彫りになった。多タンパク質HIVワクチンによる免疫優勢の非Gag T細胞応答の誘導が、Gag特異的T細胞応答の発生を抑えてしまう可能性がある19。大規模ヒトコホート研究から、HIVウイルス血症を制御するうえでGag特異的T細胞応答が最も有効であることが実証されている20。総合すれば、これらの研究は、治療的HIVワクチンが最大限に広い多タンパク質HIV特異的免疫を目指す必要のない可能性を示唆している。GagペプチドによるOPAL免疫療法は、HIVに感染したヒトでの初期の臨床試験に進んでいるところである。
【0194】
材料および方法
動物
サルD型レトロウイルスのない若年性ブタオザル(Macaca nemestrina)を、実験動物倫理委員会が承認するプロトコルにおいて研究し、豪国立保健医療研究審議会におけるガイドラインにしたがって世話した。ブタオザル全頭を、基準となる鎖を介した高次構造解析によりMHCクラスI対立遺伝子についてタイピングし、Mane-A10の存在を、報告21, 22の配列特異的プライマーPCRにより確認した。マカク36頭に既報9, 11のように40組織培養感染量のSIVmac251 (R. Pal, Advanced Biosciences, Kensington, MDによって親切にも提供していただいた)を静脈内注射し、3週間後に動物12頭からなる3群(OPAL-Gag、OPAL-All、対照)に無作為化した。無作為化を2週目のピークSIVウイルス負荷、体重、性別およびMHC I遺伝子Mane-A10 (これは免疫によるSIV制御を増強することが知られている)について階層化した11。動物に3週目から7週間、つまり感染後3〜5週目には毎日、および6〜10週目には週3回、テノホビルおよびエムトリシタビン(Gilead, Foster City, CAによって親切にも寄贈していただいた; ともに30 mg/kg/動物)による二重抗レトロウイルス療法の皮下注射を行った。この二重ARTはSIV感染マカクの大部分においてウイルス血症を制御する12, 15, 23〜25
【0195】
免疫
既報7のようにPBMCを用いてOPAL免疫療法を2つの動物群(OPAL-GagおよびOPAL-All)に免疫した。手短に言えば、末梢血単核球(PBMC)を血液(Na+-ヘパリンで抗凝固処理した) 18 mLからFicoll-paqueに対して単離した。単離した全てのPBMC (平均して2400万個の細胞)を生理食塩水0.5 mLに懸濁し、これに125種のSIVmac239 Gagペプチドのプールまたは全SIVmac239タンパク質(Gag、Pol、Env、Nef、Vif、Tat、Rev、Vpr、Vpx)に及ぶ823種のペプチドのプールのいずれかをプール内の各ペプチド10 μg/mLで添加した。ペプチドは、NIH AIDS試薬貯蔵プログラム(カタログ番号の6204、6443、6883、6448〜50、6407、8762、6205)によって親切にも提供していただいた純度80%超の、11アミノ酸重複する15-merであった。これらのペプチドをプールするため、各1 mgバイアルの凍結乾燥15merペプチドを純粋なDMSO 10〜50 μL中で可溶化し、ともに加えた。SIV GagおよびAllペプチドプールの濃度は、それぞれ629および72 μg/mL/ペプチドであった。ペプチドパルスPBMCを37℃の水浴中で1時間保持し、15分おきに穏やかにボルテックスし、その後、洗浄せずに、自家動物に再びIV注入した。対照マカクはワクチン処置を受けなかった。
【0196】
免疫学的アッセイ法
SIV特異的なCD4およびCD8 T細胞免疫応答を既報19のように細胞内IFN-γの発現によって分析した。手短に言えば、全血200 μLを6時間1 μg/mL/ペプチドの、重複する15mer SIVペプチドプール(上記)またはDMSOのみ、ならびに共刺激性抗体の抗CD28および抗CD49d (BD Biosciences/Pharmingen San Diego CA)ならびにブレフェルジンA (10 μg/mL, Sigma)とともに37℃でインキュベートした。抗CD3-PE抗体、抗CD4-FITC抗体および抗CD8-PerCP抗体(BD、それぞれクローンSP34、M-T477およびSK1)を30分間添加した。赤血球を溶解し(FACS溶解用溶液、BD)、残りの白血球を透過処理し(FACS透過用溶液2, BD)、固定および取得(LSRII, BD)の前に抗ヒトIFN-γ-APC抗体(BD、クローンB27)とともにインキュベートした。Flowjoバージョン6.3.2 (Tree Star, Ashland, OR)を用いて取得データを解析した。IFNγを発現する抗原特異的ゲートリンパ球の割合を、CD3+CD4+およびCD3+CD8+リンパ球サブセットの両方で評価した。Mane-A10+動物における免疫優勢のSIV Gag CD8 T細胞エピトープKP9に対する応答を既報22のようにMane-A10/KP9四量体によって評価した。新鮮血液に対するフローサイトメトリーにより、全末梢CD4 T細胞をリンパ球の割合として測定した。
【0197】
ウイルス学的アッセイ法
血漿SIV RNAは既報19, 26のようにTaqMan(登録商標)プローブを用い全ての時点でメルボルン大学にて血漿140 μLに対しリアルタイムPCRによって定量化され(定量下限3.1 log10コピー/mL)、これらの結果を、さらに高感度なアッセイ法によって検証するため、既報13のように国立がん研究所にて血漿1.0 mLからペレット化されたウイルス粒子に対し定量化された(定量下限1.5 log10コピー/mL)。変異による回避がKP9エピトープで起きたかどうかを特定するために、本発明者らはRT-PCRクローニングおよび抽出された血漿ウイルスcDNAの配列決定を既報27のようにGag中のKP9全体にわたって行った。
【0198】
エンドポイント/統計解析
主要エンドポイントはARTの中止後10週間(すなわち、12〜20週由来のサンプル)の、時間加重曲線下面積(TWAUC)による対照との比較での、OPAL免疫動物における血漿SIV RNAの低下であった。この概要統計的手法は、連続測定を伴うこれらのような研究に推奨される28。本発明者らは、積極的処置群(OPAL-GagおよびOPAL-All)の両方を対照と別々におよびともに比較した。一次解析は、10週目の時点でARTによりウイルス血症を制御していた動物(VL<3.1 log10コピー/mL)に限定されたが、これは、VLの制御が免疫療法に応答する動物の能力の重要な予知因子だからである7, 29。予め計画された二次ウイルス学的エンドポイントは、ART終了時(10週目)のVLもMane-A10状態もともに調整していた全生存動物を研究することであった。群比較では連続データに2サンプルt検定を用い、バイナリデータにフィッシャーの正確検定を用いた。生存分析ではCox回帰分析を利用した。
【0199】
出力計算
本発明者らは、処置中断後のVLの戻りの標準偏差は0.8 log10コピーのSIV RNA/mL血漿であろうと推定した5, 12, 15, 23〜25。この集中的な研究において、群内のサル12頭のうち2頭はARTに対する不完全応答または急性SIV感染症による死などの、混同させる問題を持ちうると推定された。対照10例 対 積極的処置10例の比較は、最初の10週間TWAUCによるVLの1.0 log10差を検出する80%の出力(p = 0.05)を生み出す。対照10例 対 積極的に処置された動物(OPAL-Gagに加えてOPAL-All)全20例の比較推定により、0.87 log10コピー/mL VLの低下の差異を検出する80%の出力をもたらした。
【0200】
試験実施
本試験は、指針として豪医薬品行政局の優良実験室規範を用い事前に書いたプロトコルにしたがって行われた。プロトコルのずれは小さく、研究の結果に影響を与えなかった。研究中の一部のデータ監査では、試験実施に関する何らの懸念も引き起こさなかった。
【0201】
本明細書において引用されたあらゆる特許、特許出願、および刊行物の開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0202】
本明細書におけるいずれの参照文献の引用も、そのような参照文献が本出願の「先行技術」として利用可能であるという承認と解釈されるべきではない。
【0203】
本明細書を通じて、いずれか1つの態様または特徴の特定の集合に本発明を限定することなく、本発明の好ましい態様を記述することが目的であった。それゆえ、当業者は本開示に照らして、本発明の範囲から逸脱することなく、例示された特定の態様においてさまざまな修正および変更を加えることができるものと理解するであろう。そのような全ての修正および変更は、添付された特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。
【0204】
(表1) 保存的アミノ酸置換

【0205】
(表2) SIVmac236 gagペプチドプール配列の1つの態様
各ペプチドは長さが15アミノ酸であり、先行するペプチドに11アミノ酸だけ重複する。ペプチド125は長さが14アミノ酸である。全長gag配列[SEQ ID NO:250]はHIV配列データベースhttp://hiv-web.lanl.govから改変されている。


【0206】
(表3) HIV-1コンセンサスB分岐群Gagペプチドプール配列の1つの態様
各ペプチドは長さが15アミノ酸であり、先行するペプチドに11アミノ酸だけ重複する。ペプチド124は長さが12アミノ酸である。全長Gag配列[SEQ ID NO:251]はHIV配列データベースから改変されている。


【0207】
(表4) 全長SIV GAG配列の態様

【0208】
(表5) 全長HIV-1 GAG配列の態様

【0209】
(表6) 非従来型アミノ酸のリスト


【0210】
(表7) VLおよび生存に関する統計解析

VL値の低下は対照と比べたlog10コピー/mlである。示した値は、ART中止後のワクチン接種動物と対照との間の時間加重AUCによるVL、および括弧中、期間終了時の絶対平均低下を反映している。
** 動物12頭が41週後に死亡した; 最後2回のVL観察値の平均を外挿し、これを使って64週までのVLの相違を推定した。
生存p-値はCox回帰分析を反映している。
†† 対照10頭中5頭が死亡したのに対し、ARTによって検出不能なVLを有したOPAL-ALLワクチン接種動物8頭のいずれも死亡しなかった−この比較は、この比較の有意性の推定を可能にするものではなかった。
【0211】
参考文献一覧



【特許請求の範囲】
【請求項1】
Gagポリペプチドの一部分に対応するアミノ酸配列を含んだ少なくとも1種のペプチドを表面に提示するGag特異的抗原提示細胞またはGag特異的抗原提示細胞前駆体の数を対象において増加させる段階を含む、対象においてレンチウイルス感染症を処置または予防するための方法であって、
前記Gag特異的抗原提示細胞またはGag特異的抗原提示細胞前駆体が、ペプチドまたはプロセッシングされた形態のペプチドが該抗原提示細胞によってまたは該前駆体によってその表面に提示されるのに十分な時間および条件の下で、抗原提示細胞または抗原提示細胞前駆体と、複数種のペプチドから本質的になる組成物とを接触させることにより産生され、
前記組成物の個々のペプチドが、Gagポリペプチドに対応するアミノ酸配列の異なる部分を含み、かつ任意で前記複数種のペプチドのうちの少なくとも1種の他のペプチドに対する部分的な配列同一性または類似性を示してもよい、
前記方法。
【請求項2】
対象にGag特異的抗原提示細胞またはGag特異的抗原提示細胞前駆体が投与される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
対象に前記組成物が投与される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ペプチドが粒子に包含されるか、または粒子に別の方法で結び付けられる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
粒子が、リポソーム、ミセル、脂質粒子、セラミック/無機粒子および重合体粒子から選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
(1) 非Gagレンチウイルスポリペプチドの一部分に対応するアミノ酸配列を含んだペプチド、または
(2) (1)のペプチドと接触している抗原提示細胞
を対象に投与する段階を除く、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記抗原提示細胞が、樹状細胞、マクロファージおよびランゲルハンス細胞から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記抗原提示細胞または組成物が、薬学的に許容される担体および/または希釈剤とともに投与される、請求項2または請求項3記載の方法。
【請求項9】
前記抗原提示細胞または組成物が、アジュバントとともに投与される、請求項2または請求項3記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、ペプチドを安定化する安定化する化合物とともに投与される、請求項3記載の方法。
【請求項11】
レンチウイルスが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)およびサル免疫不全ウイルス(SIV)から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
部分的な配列同一性または類似性が、個々のペプチドの一端または両端に含まれる、請求項1記載の方法。
【請求項13】
少なくとも4個の連続したアミノ酸残基が、これらの末端の一方または両方に存在し、その配列が、少なくとも1種の他のペプチド内に含まれるアミノ酸配列と同一または類似である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
ペプチドが、少なくとも6アミノ酸残基の長さである、請求項12記載の方法。
【請求項15】
ペプチドが、約500アミノ酸残基以下の長さである、請求項12記載の方法。
【請求項16】
ペプチドの長さが、細胞溶解性Tリンパ球応答の発生を増強するように選択される、請求項12記載の方法。
【請求項17】
ペプチドが、約8〜約10アミノ酸の長さである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
ペプチドの長さが、Tヘルパーリンパ球応答の発生を増強するように選択される、請求項12記載の方法。
【請求項19】
ペプチドが、約12〜約20アミノ酸の長さである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
ペプチド配列が、Gagポリペプチドに対応する配列の少なくとも約30%に由来する、請求項12記載の方法。
【請求項21】
複数種のペプチドが、2種またはそれ以上の異なるGagポリペプチド由来のペプチドを含む、請求項12記載の方法。
【請求項22】
ペプチドまたはプロセッシングされた形態のペプチドが抗原提示細胞によってまたは抗原提示細胞前駆体によってその表面に提示されるのに十分な時間および条件の下で、抗原提示細胞または抗原提示細胞前駆体と、複数種のペプチドから本質的になる組成物とを接触させる段階を含む、レンチウイルス感染症を処置または予防するための抗原提示細胞を産生するための方法であって、
前記組成物の個々のペプチドが、Gagポリペプチドに対応するアミノ酸配列の異なる部分を含み、かつ任意で前記複数種のペプチドのうちの少なくとも1種の他のペプチドに対する部分的な配列同一性または類似性を示してもよい、
前記方法。
【請求項23】
前記前駆体が、抗原提示細胞を前駆体から分化させるのに十分な時間および条件の下で培養される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
ペプチドを、抗原提示細胞またはその前駆体の実質的に精製された集団と接触させる、請求項22記載の方法。
【請求項25】
ペプチドを、抗原提示細胞またはその前駆体の不均一集団と接触させる、請求項22記載の方法。
【請求項26】
細胞の不均一集団が、血球および末梢血単核球から選択される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
抗原提示細胞またはその前駆体が、単球、マクロファージ、骨髄系列の細胞、B細胞、樹状細胞またはランゲルハンス細胞から選択される、請求項22記載の方法。
【請求項28】
ペプチドを、抗原提示細胞またはその前駆体の無培養集団と接触させる、請求項22記載の方法。
【請求項29】
前記集団が、均一である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記集団が、不均一である、請求項28記載の方法。
【請求項31】
前記集団が、全血、新鮮血またはその画分、末梢血単核球、全血の軟膜画分、濃縮赤血球、照射された血液、樹状細胞、単球、マクロファージ、好中球、リンパ球、ナチュラルキラー細胞およびナチュラルキラーT細胞から選択される、請求項28記載の方法。
【請求項32】
前記集団が、活性化条件に供されていない、請求項28記載の方法。
【請求項33】
リンパ球を抗原刺激してGagポリペプチドに応答させるのに十分な時間および条件の下で、リンパ球の集団またはそれらの前駆体と、請求項22記載の方法によって産生されたGag特異的抗原提示細胞とを接触させる段階
を含む、Gagによる抗原刺激を受けたリンパ球を産生するための方法。
【請求項34】
(1) ペプチド、またはプロセッシングされた形態のペプチドが抗原提示細胞によってまたは抗原提示細胞前駆体によってその表面に提示されるのに十分な時間および条件の下で、複数種のペプチドから本質的になる組成物に接触させた、抗原提示細胞または抗原提示細胞前駆体であって、該組成物の個々のペプチドが、Gagポリペプチドに対応するアミノ酸配列の異なる部分を含み、かつ任意で該複数種のペプチドのうちの少なくとも1種の他のペプチドに対する部分的な配列同一性または類似性を示してもよい、抗原提示細胞または抗原提示細胞前駆体; ならびに
(2) 個々のペプチドが、Gagポリペプチドに対応するアミノ酸配列の異なる部分を含み、かつ任意で複数種のペプチドのうちの少なくとも1種の他のペプチドに対する部分的な配列同一性または類似性を示してもよい、複数種のペプチドから本質的になる組成物; ならびに
(3) リンパ球を抗原刺激してGagポリペプチドに応答させるのに十分な時間および条件の下で、(1)の抗原提示細胞に接触した、リンパ球の集団またはそれらの前駆体
から選択される免疫調節因子を対象に投与する段階を含む、対象においてレンチウイルス感染症を処置または予防するための方法であって、
前記免疫調節因子がレンチウイルス感染症を処置または予防するのに有効な量で投与される、前記方法。
【請求項35】
免疫調節因子が、全身的に投与される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
免疫調節因子が、注射により投与される、請求項34記載の方法。
【請求項37】
(1) ペプチド、またはプロセッシングされた形態のペプチドが抗原提示細胞によってまたは抗原提示細胞前駆体によってその表面に提示されるのに十分な時間および条件の下で、複数種のペプチドから本質的になる組成物に接触させた、抗原提示細胞または抗原提示細胞前駆体であって、該組成物の個々のペプチドが、Gagポリペプチドに対応するアミノ酸配列の異なる部分を含み、かつ任意で該複数種のペプチドのうちの少なくとも1種の他のペプチドに対する部分的な配列同一性または類似性を示してもよい、抗原提示細胞または抗原提示細胞前駆体; ならびに
(2) 個々のペプチドが、Gagポリペプチドに対応するアミノ酸配列の異なる部分を含み、かつ任意で複数種のペプチドのうちの少なくとも1種の他のペプチドに対する部分的な配列同一性または類似性を示してもよい、複数種のペプチドから本質的になる組成物; ならびに
(3) リンパ球を抗原刺激してGagポリペプチドに応答させるのに十分な時間および条件の下で、(1)の抗原提示細胞に接触した、リンパ球の集団またはそれらの前駆体
から選択される免疫調節因子を対象に投与する段階を含む、対象において後天性免疫不全疾患を処置または予防するための方法であって、
前記免疫調節因子が前記疾患を処置または予防するのに有効な量で投与される、前記方法。
【請求項38】
(1) ペプチド、またはプロセッシングされた形態のペプチドが抗原提示細胞によってまたは抗原提示細胞前駆体によってその表面に提示されるのに十分な時間および条件の下で、複数種のペプチドから本質的になる組成物に接触させた、抗原提示細胞または抗原提示細胞前駆体であって、該組成物の個々のペプチドが、Gagポリペプチドに対応するアミノ酸配列の異なる部分を含み、かつ任意で該複数種のペプチドのうちの少なくとも1種の他のペプチドに対する部分的な配列同一性または類似性を示してもよい、抗原提示細胞または抗原提示細胞前駆体; ならびに
(2) 個々のペプチドが、Gagポリペプチドに対応するアミノ酸配列の異なる部分を含み、かつ任意で複数種のペプチドのうちの少なくとも1種の他のペプチドに対する部分的な配列同一性または類似性を示してもよい、複数種のペプチドから本質的になる組成物; ならびに
(3) リンパ球を抗原刺激してGagポリペプチドに応答させるのに十分な時間および条件の下で、(1)の抗原提示細胞に接触した、リンパ球の集団またはそれらの前駆体
から選択される免疫調節因子の、レンチウイルス感染症および後天性免疫不全疾患から選択される病状を処置または予防するための使用。
【請求項39】
ペプチド、またはプロセッシングされた形態のペプチドが抗原提示細胞によってまたは抗原提示細胞前駆体によってその表面に提示されるのに十分な時間および条件の下で、複数種のペプチドから本質的になる組成物に接触させた、抗原提示細胞または抗原提示細胞前駆体であって、該組成物の個々のペプチドが、Gagポリペプチドに対応するアミノ酸配列の異なる部分を含み、かつ任意で該複数種のペプチドのうちの少なくとも1種の他のペプチドに対する部分的な配列同一性または類似性を示してもよい、抗原提示細胞または抗原提示細胞前駆体から本質的になる組成物。
【請求項40】
抗原提示細胞または抗原提示細胞前駆体が、抗原提示細胞または前駆体の実質的に精製された集団の形態にある、請求項39記載の組成物。
【請求項41】
抗原提示細胞または抗原提示細胞前駆体が、抗原提示細胞または前駆体の不均一集団の形態にある、請求項39記載の組成物。
【請求項42】
抗原提示細胞またはその前駆体の不均一集団が、血球および末梢血単核球から選択される、請求項41記載の組成物。
【請求項43】
抗原提示細胞またはその前駆体が、単球、マクロファージ、骨髄系列の細胞、B細胞、樹状細胞またはランゲルハンス細胞から選択される、請求項39記載の組成物。
【請求項44】
抗原提示細胞またはその前駆体が、抗原提示細胞またはその前駆体の無培養集団の形態にある、請求項39記載の組成物。
【請求項45】
前記集団が、均一である、請求項44記載の組成物。
【請求項46】
前記集団が、不均一である、請求項44記載の組成物。
【請求項47】
前記集団が、全血、新鮮血またはその画分、末梢血単核球、全血の軟膜画分、濃縮赤血球、照射された血液、樹状細胞、単球、マクロファージ、好中球、リンパ球、ナチュラルキラー細胞およびナチュラルキラーT細胞から選択される、請求項44記載の組成物。
【請求項48】
前記集団が、活性化条件に供されていない、請求項44記載の組成物。
【請求項49】
非Gagポリペプチドに含まれる部分に対応するアミノ酸配列を含んだペプチドを表面に提示する抗原提示細胞を除いた、請求項39記載の組成物。
【請求項50】
個々のペプチドが、Gagポリペプチドに対応するアミノ酸配列の異なる部分を含み、かつ任意で複数種のペプチドのうちの少なくとも1種の他のペプチドに対する部分的な配列同一性または類似性を示してもよい、複数種のペプチドから本質的になる組成物。
【請求項51】
ペプチドが粒子に包含されるか、または粒子に別の方法で結び付けられる、請求項50記載の組成物。
【請求項52】
粒子が、リポソーム、ミセル、脂質粒子、セラミック/無機粒子および重合体粒子から選択される、請求項51記載の組成物。
【請求項53】
抗原提示細胞または抗原提示細胞前駆体をさらに含む、請求項50記載の組成物。
【請求項54】
抗原提示細胞または抗原提示細胞前駆体が、抗原提示細胞または前駆体の実質的に精製された集団の形態にある、請求項53記載の組成物。
【請求項55】
抗原提示細胞または抗原提示細胞前駆体が、抗原提示細胞またはその前駆体の不均一集団の形態にある、請求項53記載の組成物。
【請求項56】
抗原提示細胞または前駆体の不均一集団が、血球および末梢血単核球から選択される、請求項55記載の組成物。
【請求項57】
抗原提示細胞またはその前駆体が、単球、マクロファージ、骨髄系列の細胞、B細胞、樹状細胞またはランゲルハンス細胞から選択される、請求項53記載の組成物。
【請求項58】
抗原提示細胞またはその前駆体が、抗原提示細胞またはその前駆体の無培養集団の形態にある、請求項53記載の組成物。
【請求項59】
前記集団が、均一である、請求項58記載の組成物。
【請求項60】
前記集団が、不均一である、請求項58記載の組成物。
【請求項61】
前記集団が、全血、新鮮血またはその画分、末梢血単核球、全血の軟膜画分、濃縮赤血球、照射された血液、樹状細胞、単球、マクロファージ、好中球、リンパ球、ナチュラルキラー細胞およびナチュラルキラーT細胞から選択される、請求項60記載の組成物。
【請求項62】
前記集団が、活性化条件に供されていない、請求項58記載の組成物。
【請求項63】
非Gagポリペプチドに含まれる部分に対応するアミノ酸配列を含んだペプチドを表面に提示する抗原提示細胞を除いた、請求項51記載の組成物。
【請求項64】
非Gagレンチウイルスポリペプチドの一部分に対応するアミノ酸配列を含むペプチドを除いた、請求項50記載の組成物。
【請求項65】
レンチウイルス感染症および後天性免疫不全疾患から選択される病状を処置または予防するための、請求項39または請求項50記載の組成物の使用。
【請求項66】
レンチウイルス感染症および後天性免疫不全疾患から選択される病状を処置または予防するための医薬の製造における、請求項39または請求項50記載の組成物の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2011−509945(P2011−509945A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542477(P2010−542477)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【国際出願番号】PCT/AU2008/000056
【国際公開番号】WO2009/089568
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ウィンドウズ
【出願人】(510195250)オパール セラピューティクス プロプライエタリー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】