説明

免震構造物の目隠し伸縮柵

【課題】 パンタグラフ機構を用いた免震構造物の目隠し伸縮柵において、縦桟を取付ける固定軸及びスライド軸を同一の取り付け態様で用いることが出来るようにした。
【解決手段】 縦桟145には目隠し材50が設けられている。目隠し材50は、縦桟145から一側方向に形成された一方の目隠し部51と、他側方向に形成された他方の目隠し部52とで構成されている。一方の目隠し部51は縦桟145の外表面と同一表面となるように形成されるとともに、他方の目隠し部52は縦桟145の内表面と同一表面となるように形成されている。一方の目隠し部51は、固定軸143a方向において、他方の目隠し部52より外側に位置するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震建物等の免震構造物と、その周囲に位置する地盤又は非免震構造物との間に設けられる免震構造物の目隠し伸縮柵に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地震による被害を最小限にするために、免震構造物が広く採用されるようになった。この免震構造物は、基礎部分に積層ゴムアイソレータを設け、この積層ゴムアイソレータの上に構造物を建設するものであり、積層ゴムアイソレータにより地震の固有振動周期を長周期化して免震効果を得ようとするものである。このような免震構造物は、地震の際、地盤の揺れに追随せず水平方向へ揺れるものであるので、免震構造物と、その周囲の地盤との間には、溝状の間隙が設けられている。そして、この間隙には、免震構造物と地盤との往来を可能とするために、渡り廊下が設けられている。
【0003】
以上のような免震構造物においては、免震構造物と地盤との間に侵入防止等の目的で柵が設けられたり、また、渡り廊下の側部において転落防止等の目的で柵が設けられている。このような柵は、地震時において、免震構造物が水平方向に揺れるので、水平方向の変形に追随できるように伸縮可能に構成されている。例えば、パンタグラフ状の伸縮リンク機構を、水平方向に回動可能となるように枢子部材で免震構造物に取付けた開放防止柵が提案されていた(特許文献1参照)。
【0004】
ところで、上述した開放防止柵は、伸縮リンク機構が露出しており、外観上好ましくないので、伸縮リンク機構の側面に目隠し材を設けることが好ましいものであった。従来、免震構造物の伸縮柵に関し、目隠し材を設けた構造は無いが、伸縮門扉においては、例えば、パンタグラフ機構からなる伸縮リンク機構において、傾斜リンク片を軸支するスライド軸の両端に縦ガイドを設け、この縦ガイドの外面に目隠し材としての縦板材を設けたもので、スライド軸として長さの異なるものを2種類用意することにより、伸縮リンク機構の開成時に隣合う縦板材同士が接触しないようにしたものがある(第1実施例)。また、同一の長さのスライド軸を用意し、一つ置きに配置されたスライド軸群を、他方のスライド軸群より一方の側面側に若干ずらして突出して配置することにより、伸縮リンク機構の平成時に隣合う縦板材同士が接触しないようにしたものがある(第2実施例)(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2005−98047号公報
【特許文献2】実公平07−055268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献2の第1実施例による伸縮門扉の目隠し構造は、スライド軸として長短2種類用意しなければならないので、部品点数が多くなるため、製造が煩雑になるものであった。また、第2実施例による伸縮門扉の目隠し構造は、一方のスライド軸を突出して配置しなければならないので、傾斜リンク片を軸支する位置が中央からずれることとなり、その結果、傾斜リンク片の軸支位置を一つ違いに変更しなければならず、製造が複雑なものとなっていた。
【0007】
本発明は以上の問題点を解決し、縦桟に取付ける目隠し材の形状を、縦桟を中心として段差を設けて形成することにより、同一のスライド軸を同一の取り付け態様で用いることが出来るようにした免震構造物の目隠し伸縮柵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る免震構造物の目隠し伸縮柵は、免震構造物又は免震構造物が建設された基礎上に設置された支柱に水平方向に回動自在に連結された免震側外枠と、非免震構造物又は非免震基礎上に設置された支柱に水平方向に回動自在に連結された非免震側外枠と、該免震側外枠と非免震側外枠との間に設けられたパンタグラフ機構からなる伸縮体とからなり、該伸縮体は、複数の斜材と、該斜材間を回動自在に軸支する軸と、該斜材間を回転自在に軸支するとともに軸方向に延出された固定軸と、該斜材間を回動自在に軸支するとともに軸方向に延出されたスライド軸と、該固定軸の両端に固定されるとともにスライド軸の両端に摺動自在に連結された縦桟と、該縦桟に設けられた目隠し材とを有し、該目隠し材は、縦桟の一側方向に形成された一方の目隠し部と、縦桟の他側方向に形成された他方の目隠し部とからなり、一方の目隠し部と他方の目隠し部とが固定軸及びスライド軸方向にずれて形成されていることを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る免震構造物の目隠し伸縮柵においては、伸縮体は、外枠を介して、免震構造物又は免震構造物が建設された基礎上に設置された支柱に回動自在に連結されるとともに、非免震構造物又は非免震基礎上に設置された支柱に回動自在に連結されているので、地震が発生して免震構造物等が揺れても、水平方向に回動するとともに伸縮して、揺れに追随することができる。また、縦桟には目隠し材が形成され、斜材が露出しないので、パネル体のような外観を呈することができる。
【0010】
さらに、目隠し材は、一方の目隠し部と他方の目隠し部とが固定軸及びスライド軸方向にずれて形成されているので、伸縮体が縮んだ際、隣合う縦桟の対向する目隠し材(一方の目隠し部と他方の目隠し部)は、少しの間隙(ずれ)をもって重なり合うので、互いに接触することが無い。したがって、同一の固定軸及びスライド軸を用い、固定軸及びスライド軸の斜材への軸支位置も同一にすることが出来るので、簡単に製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による免震構造物の目隠し伸縮柵の一実施形態の正面図
【図2】本発明による免震構造物の目隠し伸縮柵の一実施形態のパンタグラフ機構を示す正面図
【図3】図1中A−A線断面図
【図4】図3中B部の拡大図
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の免震構造物の目隠し伸縮柵は、免震側外枠と非免震側外枠との間にパンタグラフ機構からなる伸縮体が設けられている。このパンタグラフ機構からなる伸縮体は、斜材、軸、固定軸、スライド軸及び縦桟からなり、従来、伸縮門扉等に用いられているパンタグラフ機構からなる伸縮体と同様のものを用いることが出来、その態様は特に限定されるものではない。
【0013】
縦桟には目隠し材が設けられており、この目隠し材は、縦桟の一側方向に形成された一方の目隠し部と、縦桟の他側方向に形成された他方の目隠し部とを有している。そして、これらの一方の目隠し部と他方の目隠し部とは、固定軸及びスライド軸方向にずれて形成されている。したがって、一方の目隠し部と他方の目隠し部とは固定軸及びスライド軸方向において間隙を持って配置されることになるので、伸縮体が縮んでも、互いに接触することがない。このずれの長さ(間隙)は、一方の目隠し部と他方の目隠し部とが接触しない長さであれば、可能な限り小さい方が外観上好ましい。また、一方の目隠し部と他方の目隠し部とは、縦桟と一体にアルミニウム製押出形材で形成することが、製造工程が少なくなるので好ましく、さらに、外側に位置する目隠し部の外側の面を縦桟の外側の面と略同一面上に形成すると、伸縮柵の外面が略同一面となるので好ましい。
【0014】
一方の目隠し部と他方の目隠し部とは、巾を同一長さに形成することが好ましい。このように構成することにより、伸縮体が縮んだ際、一方の目隠し部と他方の目隠し部とを過不足なく重ねることができ、伸縮の巾を長く設定することができるとともに、伸縮体が縮んだ際は、一方の目隠し材のみが表面に露出し、略平坦な状態にすることができる。
【0015】
一方の目隠し部と他方の目隠し部とは、伸縮体が縮んだ際、接触しないようにずれて形成されていれば、その形状は特に限定されず、例えば、固定軸及びスライド軸と直角方向に形成されていても、固定軸及びスライド軸と鈍角を持って形成されていてもよい。
【0016】
本発明の免震構造物の目隠し伸縮柵の一実施形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1は免震構造物の目隠し伸縮柵の正面図、図2は免震構造物の目隠し伸縮柵のパンタグラフ機構を示す正面図、図3は図1中A−A線断面図、図4は図3中B部の拡大図である。
【0018】
図1及び図3において、1は免震構造物の目隠し伸縮柵で、免震構造物が建設された基礎側の地面2に設置された免震側支柱21と、非免震側の地面3に設置された非免震側支柱31との間に設けられている。免震構造物の目隠し伸縮柵1は、両側に免震側外枠11と非免震側外枠12とが設けられ、免震側外枠11が、水平方向に回動自在な継手41で免震側支柱21に連結されるとともに、非免震側外枠12が、水平方向に回動自在な継手42で非免震側支柱31に連結されている。また、非免震側外枠12には、錠機構で開閉自在な施錠枠13が隣接されている。
【0019】
免震側外枠11と非免震側外枠12との間にはパンタグラフ機構からなる伸縮体14が設けられている。伸縮体14は、図2に示すように、右上がりに設けた複数の斜材141と右下がりに設けた複数の斜材142とを交差させて配置し、それらの「X」状に交差した部位において軸143で回動自在に軸支されるとともに、上下の「V」及び逆「V」字状に交差した部位においてスライド軸144により回動自在に軸支されている。前記軸143の内、上下方向の中央に位置する固定軸143aは両側に延出して形成され、その両端には縦桟145に取付けられており、また、スライド軸144も同様に両側に延出して形成され、その両端は縦桟145の上下方向全域に形成したスライド溝146に摺動自在に嵌合している。
【0020】
縦桟145には目隠し材50が設けられており、この目隠し材50は、縦桟145から一側方向に形成された一方の目隠し部51と、他側方向に形成された他方の目隠し部52とで構成されている。そして、一方の目隠し部51は縦桟145の外表面と同一表面となるように形成されるとともに、他方の目隠し部52は縦桟145の内表面と同一表面となるように形成されている。すなわち、一方の目隠し部51は、固定軸143a方向において、他方の目隠し部52より外側に位置するように配置されたもので、一方の目隠し部51と他方の目隠し部52との固定軸143a方向における間隙は、縦桟145の厚みと略同一長さとなっている。また、一方の目隠し部51と他方の目隠し部52の巾(水平方向の長さ)は略同じ長さに設定されている。
【0021】
以上のような免震構造物の目隠し伸縮柵1においては、一方の目隠し部51と他方の目隠し部52とは固定軸143a(及びスライド軸144)方向にずれて形成され、一方の目隠し部51が他方の目隠し部52より外方向に位置しているので、開成時、図4中破線で示すように、他方の目隠し部52は、隣合う縦桟145の一方の目隠し部51内側にある間隙に入り込み、一方の目隠し部51と略重なった状態となる。したがって、表面には、一方の目隠し部51及び縦桟145のみが露出する。
【符号の説明】
【0022】
1 免震構造物の目隠し伸縮柵
11 免震側外枠
12 非免震側外枠
141 斜材
142 斜材
143a 固定軸
144 スライド軸
145 縦桟
2 免震構造側の地面
3 非免震構造側の地面
50 目隠し材
51 一方の目隠し部
52 他方の目隠し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震構造物又は免震構造物が建設された基礎上に設置された支柱に水平方向に回動自在に連結された免震側外枠と、非免震構造物又は非免震基礎上に設置された支柱に水平方向に回動自在に連結された非免震側外枠と、該免震側外枠と非免震側外枠との間に設けられたパンタグラフ機構からなる伸縮体とからなり、該伸縮体は、複数の斜材と、該斜材間を回動自在に軸支する軸と、該斜材間を回転自在に軸支するとともに軸方向に延出された固定軸と、該斜材間を回動自在に軸支するとともに軸方向に延出されたスライド軸と、該固定軸の両端に取付けられるとともにスライド軸の両端に摺動自在に連結された縦桟と、該縦桟に設けられた目隠し材とを有し、該目隠し材は、縦桟の一側方向に形成された一方の目隠し部と、縦桟の他側方向に形成された他方の目隠し部とからなり、一方の目隠し部と他方の目隠し部とが固定軸及びスライド軸方向にずれて形成されていることを特徴とする免震構造物の目隠し伸縮柵。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate