説明

入出港管理システム、処理方法、入出港管理装置、プログラム、船舶、点滅制御回路、及び移動体識別システム

【課題】港における船舶の管理を容易に行い、かつ入出港管理システムの船舶への導入コストを低くする
【解決手段】船舶100は、船舶100のIDに基づいて右舷灯または左舷灯を点滅させる。また、各監視カメラ200−1〜200−3は、船舶100を含む映像を撮影する。さらに、入出港管理装置300は、各監視カメラ200−1〜200−3が撮影した映像から船舶100の右舷灯または左舷灯の点滅パターンを抽出し、船舶100のIDを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、港に入出港を行う船舶の識別を行う入出港管理システム、処理方法、入出港管理装置、プログラム、船舶、点滅制御回路、及び移動体識別システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、港湾における船舶の動向を確認するためにAIS(Automatic Identification System、自動船舶識別システム)等の船舶識別システムを用いている(例えば特許文献1参照)。AISは、VHF(Very High Frequency、超短波)無線を利用した船舶識別システムであり、船舶の識別符号、種類、位置、進路、速力、航行状態及びその他の安全に関する情報を船舶と陸上施設との間で送受信する。AISを船舶に搭載することにより、陸上施設内における管制者が、複数の船舶の港湾内における位置を随時把握することができるため、港湾内における船舶の行動を管理することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−195000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、AISを実現するためには、専用の電波の送受信設備を船舶に搭載する必要があることから、船舶の管理者は、当該システムの構築のために多大なコストをかけなくてはならないという問題がある。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、港湾内における船舶の管理を容易に行うことができるだけでなく、船舶への導入コストを低減させることができる入出港管理システム、処理方法、入出港管理装置、プログラム、船舶、点滅制御回路、及び移動体識別システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、港湾内における船舶の識別を行い、前記船舶の入出港を管理する入出港管理装置を備える入出港管理システムであり、前記船舶は、前記船舶のIDを示す点滅パターンで前記船舶の右舷に設置される右舷灯を点滅させる右舷灯点灯部または、前記船舶のIDを示す点滅パターンで前記船舶の左舷に設置される左舷灯を点滅させる左舷灯点灯部の少なくともいずれか一方、を備え、前記入出港管理装置は、前記船舶を含む映像を撮影する撮影部と、前記映像から前記船舶の前記右舷灯または前記左舷灯の点滅パターンを抽出し、前記船舶のIDを検出するID検出部と、を備える、ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、港湾内における船舶の識別を行い、前記船舶の入出港を管理する入出港管理装置を用いた処理方法であり、撮影部は、前記船舶を含む映像を撮影し、ID検出部は、前記映像から前記船舶の前記右舷灯または前記左舷灯の点滅パターンを抽出し、前記船舶のIDを検出する、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、港湾内における船舶の識別を行い、前記船舶の入出港を管理する入出港管理装置であり、前記船舶を含む映像を撮影する撮影部と、前記映像から前記船舶の前記右舷灯または前記左舷灯の点滅パターンを抽出し、前記船舶のIDを検出するID検出部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、港湾内における船舶の識別を行い、前記船舶の入出港を管理する入出港管理装置を、前記船舶を含む映像を撮影する撮影部、前記映像から前記船舶の前記右舷灯または前記左舷灯の点滅パターンを抽出し、前記船舶のIDを検出するID検出部、として機能させるためのプログラムである。
【0010】
また、本発明は、船舶のIDを示す点滅パターンで前記船舶の右舷に設置される右舷灯を点滅させる右舷灯点灯部または、船舶のIDを示す点滅パターンで前記船舶の左舷に設置される左舷灯を点滅させる左舷灯点灯部の少なくともいずれか一方、を備えることを特徴とする船舶である。
【0011】
また、本発明は、船舶の右舷に設置される右舷灯または前記船舶の左舷に設置される左舷灯の少なくともいずれか一方が発光する光を、前記船舶のIDを示す点滅パターンで点滅させるための点滅制御回路である。
【0012】
また、本発明は、移動体の識別を行う移動体識別装置を備える移動体識別システムであり、前記移動体は、前記移動体のIDを示す点滅パターンで点滅する点灯部を備え、前記移動体識別装置は、前記移動体を含む映像を撮影する撮影部と、前記映像から前記移動体の前記点灯部の点滅パターンを抽出し、前記移動体のIDを検出するID検出部と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、船舶は右舷灯または左舷灯を船舶のIDに基づいて点滅させ、入出港管理装置は、船舶の映像を撮影し、当該映像から右舷灯または左舷灯の点滅パターンを抽出することでIDを検出する。そのため、船舶へのシステムの導入は、船舶に標準的に設置されている右舷灯または左舷灯を点滅させる回路を導入するのみでよいため、船舶への導入コストを低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態による入出港管理システムの全体像を示す図である。
【図2】船舶の証明設備の構成を示す概略ブロック図である。
【図3】陸上施設の構成を示す概略ブロック図である。
【図4】分析部の構成を示す概略ブロック図である。
【図5】入出港管理装置の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態による入出港管理システムの全体像を示す図である。
本実施形態による入出港管理システムは、船舶100と、陸上施設として入港監視カメラ200−1(撮影部)、着岸監視カメラ200−2(撮影部)、出航監視カメラ200−3(撮影部)、入出港管理装置300、荷卸者端末400−1、配送者端末400−2、警備者端末400−3とを備える。
船舶100は、右舷灯(青色灯)及び左舷灯(赤色灯)を、船舶のIDを示す点滅パターンで点滅させ、港湾への入出港を行う。
入港監視カメラ200−1は、入港する船舶100の左舷灯が撮影する映像に映り、かつ入港する船舶100以外の船舶100の左舷灯が映像に映らないように設置され、港湾の入口の映像を撮影する。
着岸監視カメラ200−2は、着岸している船舶100の左舷灯が撮影する映像に映り、かつ着岸している船舶100以外の船舶100の左舷灯が映像に映らないように設置され、埠頭の映像を撮影する。
出港監視カメラ200−3は、出港する船舶100の左舷灯が撮影する映像に映り、かつ出港する船舶100以外の船舶100の左舷灯が映像に映らないように設置され、港湾の出口の映像を撮影する。
入出港管理装置300は、各監視カメラ200−1〜200−3が撮影する映像に基づいて船舶100の管理を行う。
荷卸者端末400−1は、荷卸クレーン等による荷卸作業を行う作業者が保有し、入出港管理装置300から荷卸の指示を受信し、表示する。
配送者端末400−2は、配送車両等による配送作業を行う作業者が保有し、入出港管理装置300から配送の指示を受信し、表示する。
警備者端末400−3は、警備艇等による警備作業を行う作業者が保有し、入出港管理装置300から警戒の指示を受信し、表示する。
【0016】
図2は、船舶の証明設備の構成を示す概略ブロック図である。
船舶100は、ID記憶部101と、変調部102(点滅制御回路)と、左舷灯点灯部103と、右舷灯点灯部104とを備える。
ID記憶部101は、予め船舶100固有のIDを記憶する。
変調部102は、ID記憶部101が記憶するIDに基づいて、右舷灯及び左舷灯の点灯・消灯を示す情報であるIDコード(点滅パターン)を出力する。
左舷灯点灯部103は、変調部102が出力したIDコードに基づいて左舷灯を点滅させる。
右舷灯点灯部104は、変調部102が出力したIDコードに基づいて右舷灯を点滅させる。
【0017】
図3は、陸上施設の構成を示す概略ブロック図である。
陸上施設は、上述したように、入港監視カメラ200−1(撮影部)、着岸監視カメラ200−2(撮影部)、出航監視カメラ200−3(撮影部)、入出港管理装置300、荷卸者端末400−1、配送者端末400−2、警備者端末400−3を備える。
入出港管理装置300は、分析部310、指示部320、ログ登録部330、ログ記憶部340、出力部350(外部出力部)を備える。
分析部310は、各監視カメラ200−1〜200−3が撮影した映像に映った船舶100の情報を分析する。
指示部320は、船舶100の分析結果に基づいて、各端末400−1〜400−3に指示情報を送信する。
ログ登録部330は、船舶100の分析結果及び各監視カメラ200−1〜200−3が撮影した映像をログ記憶部340に登録する。
ログ記憶部340は、船舶100の分析結果及び各監視カメラ200−1〜200−3が撮影した映像の履歴を記憶する。
出力部350は、ログ記憶部340が記憶する船舶100の分析結果及び各監視カメラ200−1〜200−3が撮影した映像を外部ネットワークに出力する。
【0018】
図4は、分析部の構成を示す概略ブロック図である。
分析部310は、ID検出部311、写像情報記憶部312、位置特定部313、状態判定部314、船舶情報記憶部315、船舶情報取得部316を備える。
ID検出部311は、各監視カメラ200−1〜200−3が撮影した映像情報から、船舶100のIDを検出する。
写像情報記憶部312は、予め各監視カメラ200−1〜200−3が撮影する映像の座標から地図上の座標へのマッピング情報を記憶する。
位置特定部313は、写像情報記憶部312が記憶するマッピング情報と、ID検出部311がIDを検出した映像とに基づいて、船舶100の地図上の位置及び船舶100のサイズを特定する。
状態判定部314は、ID検出部311がIDを検出した映像をどの監視カメラ200−1〜200−3が撮影したかに基づいて船舶100の航行状態を判定する。ここで、船舶100の航行状態とは、入港、着岸、離岸、出港等の状態のことを示す。
船舶情報記憶部315は、予め船舶100のIDに関連付けて、船名、サイズ情報、行き先情報、積荷情報、到着埠頭情報、その他の船舶情報を記憶する。
船舶情報取得部316は、ID検出部311が検出したIDに基づいて、船舶情報記憶部315から船舶100の船舶情報を取得する。
ID検出部311、写像情報記憶部312、位置特定部313、状態判定部314、船舶情報記憶部315、船舶情報取得部316が出力した情報は指示部320及び出力部330に入力される。
【0019】
ここで、船舶100においては、右舷灯点灯部104が船舶100のIDに基づいて船舶100の右舷灯を点滅させる処理か、左舷灯点灯部103が船舶100のIDに基づいて船舶100の左舷灯を点滅させる処理かの少なくともいずれか一方を行っている。そして、本実施形態における入出港管理システムでは、各監視カメラ200−1〜200−3は、船舶100を含む映像を撮影する。そして、入出港管理装置300のID検出部311は、各監視カメラ200−1〜200−3が撮影した映像から船舶100の右舷灯または左舷灯の点滅パターンを抽出し、船舶100のIDを検出する。
これにより、船舶100へのシステムの導入を、船舶100に標準的に設置されている右舷灯または左舷灯を点滅させる回路を導入するのみに抑え、船舶100への導入コストを低くすることができる。
【0020】
以下、入出港管理システムの動作を説明する。
まず、船舶100の動作を説明する。
船舶100の乗組員が左舷灯及び右舷灯の点灯スイッチを押下するなどにより、船舶100の照明設備が起動する。照明設備が起動すると、船舶100の変調部102は、ID記憶部101から船舶100のIDを取得する。変調部102は、船舶100のIDを取得すると、取得したIDに基づいて、右舷灯及び左舷灯の点灯・消灯を示す情報であるIDコードを生成する。なお、IDコードはID記憶部101が記憶するIDを示すものである。IDコードの生成は、例えば、変調部102が取得したIDを2進数に変換し、“1”の場合に点灯、“0”の場合に消灯を示すIDコードを生成することや、取得したIDをモールス符号等の文字コードにエンコードし、点灯・消灯を示すIDコードを生成することで実現できる。変調部102は、IDコードを生成すると、生成したIDコードを右舷灯点灯部104及び左舷灯点灯部103に出力する。右舷灯点灯部104及び左舷灯点灯部103は、入力されたIDコードに従って右舷灯及び左舷灯を点滅させる。このとき、点滅の速度を例えば数百ヘルツとすることで、肉眼では常時点灯しているように見え、各監視カメラ200−1〜200−3の走査速度では点滅を計測することができる。
このように船舶100は、常時左舷灯及び右舷灯の点滅によって船舶100のIDを出力しながら航路を航行する。
【0021】
次に、陸上施設の動作を説明する。
図5は、入出港管理装置の動作を説明するフローチャートである。
陸上施設では、入港監視カメラ200−1、着岸監視カメラ200−2、出航監視カメラ200−3がそれぞれ常時港湾の映像を撮影し、入出港管理装置300の分析部310に出力する。各監視カメラ200−1〜200−3が映像情報を出力すると、分析部310のID検出部311は、映像情報から左舷灯の発光を検知する。左舷灯は赤色灯であるため、左舷灯の検知は、例えば、映像情報の色空間をYCbCr(Y:luminance、輝度、Cb:blue chrominance component、青色色差成分、Cr:red chrominance component、赤色色差成分)形式で表現した場合、ID検出部311が映像情報の各フレームに輝度(Y)及び赤色色差成分(Cr)がそれぞれ所定の閾値以上となっている部分(以下、赤色発光部分とする)が存在するか否かを判定することで行われる。ID検出部311は、左舷灯の発光を検知すると、発光のパターンを抽出し、船舶100のIDを検出する(ステップS1)。IDの検出は、例えば以下の処理によって行われる。まず、ID検出部311は、左舷灯の発光を検知した映像からフレーム毎に赤色発光部分を抽出する。このとき、船舶100は航行しているので映像内の赤色発光部分の座標はフレーム毎に異なり、また、左舷灯がOFFとなっている場合は赤色発光部分を抽出することができない。そのため、ID検出部311は、赤色発光部分を抽出した最後のフレームにおける赤色発光部分の座標から所定の範囲内の赤色発光部分を当該最後のフレームに後続する複数のフレームの中から抽出することで、同一の船舶100による左舷灯のON・OFFを検出する。ID検出部311は、左舷灯のON・OFFを検出すると、点滅の速度と映像のフレーム速度とに基づいてIDコードを検出する。例えば、点滅の速度が300Hz、映像のフレーム速度が1200fpsである場合に、ID検出部311は、同一船舶100の赤色発光部分を4フレーム連続で検出したとき、“1”を示していると判定し、ID検出部311は、同一船舶100の赤色発光部分を4フレーム連続で検出できないとき、“0”を示していると判定する。この処理を繰り返すことで、IDコードを検出する。ID検出部311は、IDコードを検出すると、検出したIDコードをデコードし、船舶100のIDを取得する。
【0022】
ID検出部311が船舶100のIDを検出すると、船舶情報取得部316は、船舶情報記憶部315に検出したIDに該当する船舶情報が船舶情報記憶部315に記憶されているか否かを判定する(ステップS2)。船舶情報取得部316は、検出したIDに該当する船舶情報が存在すると判定した場合(ステップS2:YES)、検出したIDに基づいて船舶情報記憶部315から船舶100の船舶情報を取得する(ステップS3)。
【0023】
船舶情報取得部316が船舶情報を取得すると、位置特定部313は、写像情報記憶部312が記憶する映像のフレーム内の一点の座標と地図上の一点の座標とを対応付けるマッピング情報に基づいて、ID検出部311がIDを検出した映像から船舶100の地図上の位置、及び船舶100のサイズを特定する(ステップS4)。
船舶100の位置の算出は、例えば以下の処理によって行われる。まず、位置特定部313は、映像のフレーム間差分または、予め記憶する映像の背景画像と映像との色の差分を抽出することで、船舶100を示す画素領域を抽出する。位置特定部313は、船舶100の画素領域を抽出すると、抽出した画素領域の中央下端部の座標を取得する。位置特定部313は、船舶100の画素領域の中央下端部の座標を取得すると、写像情報記憶部312が記憶するマッピング情報に基づいて、船舶100の中央下端部の座標に対応する地図上の座標を算出する。なお、写像情報記憶部312が記憶するマッピング情報は、例えば映像情報の座標と地図上の座標とを関連付けて複数格納するテーブルや、映像情報の座標から地図上の座標への変換行列(transformation matrix)等を用いることで、位置特定部313による位置特定を行うことができる。
【0024】
また、船舶100のサイズの特定は、例えば以下の処理によって行われる。まず、位置特定部313は、上述した処理によって、映像のフレームデータ中から船舶100の画素領域を抽出する。位置特定部313は、船舶100の画素領域を抽出すると、抽出した画素領域の幅及び高さを取得する。位置特定部313は、船舶100の画素領域の幅及び高さを取得すると、上述した処理によって特定した船舶100の地図上の座標に基づいて、船舶100と撮影した監視カメラ200−1〜200−3との距離を算出する。位置特定部313は、船舶100と監視カメラ200−1〜200−3との距離を算出すると、船舶100の画素領域の大きさと算出した距離とに基づいて船舶100の実際の大きさを算出する。なお、船舶100の画素領域の大きさ(幅、高さ)pと、船舶100と撮影した監視カメラ200−1〜200−3との距離dとは反比例の関係にあるため、画素領域の大きさpと、距離dと、船舶100の実際の大きさsとの関係は、式(1)のように表すことができる。
s=kpd ・・・(1)
但し、kは、監視カメラ200−1〜200−3の解像度や視野角等によって異なる係数であり、予め算出しておく必要がある。
【0025】
位置特定部313は、ステップS4によって船舶100の地図上の位置及び船舶100のサイズを特定すると、算出した船舶100のサイズが、船舶情報取得部136が取得した船舶情報に含まれるサイズ情報と所定の誤差範囲内で一致するか否かを判定する(ステップS5)。位置特定部313が、算出したサイズと船舶情報に含まれるサイズ情報とが所定の誤差範囲内で一致すると判定した場合(ステップS5:YES)、状態判定部314は、ID検出部311がIDを検出した映像を、どの監視カメラ200−1〜200−3が撮影したかを判定する(ステップS6)。
【0026】
状態判定部314は、ID検出部311がIDを検出した映像を、入港監視カメラ200−1が撮影したと判定した場合(ステップS6:入港監視カメラ)、船舶100の航行状態が入港状態であると判定する(ステップS7)。状態判定部314が船舶100の航行状態を判定すると、ログ登録部330は、分析部310が分析した分析結果(船舶ID、船舶情報、位置情報、航行状態)と映像情報とをログ記憶部340に登録する(ステップS8)。これにより、ログ記憶部340に船舶IDに関連付けて位置情報や航行状態の履歴が記憶される。また、ステップS7によって状態判定部314が船舶100の航行状態を判定すると、指示部320は、取得した船舶情報に含まれる到着埠頭情報が示す埠頭の荷卸者端末400−1に荷卸準備指示を出力する(ステップS9)。これにより、荷卸作業者は着岸時までに配送の準備を整えることができる。また、指示部320は、配送者端末400−2に到着埠頭情報と、船舶情報に含まれる積荷情報とを含む配送指示を生成し、出力する(ステップS10)。これにより、配送作業者は着岸時までに船舶100が到着する埠頭に行き、配送の準備を整えることができる。
【0027】
また、状態判定部314は、ステップS6により、ID検出部311がIDを検出した映像を、着岸監視カメラ200−1が撮影したと判定した場合(ステップS6:着岸監視カメラ)、ログ記憶部340が記憶する船舶100のIDに対応する情報から航行状態の履歴を読み出す。状態判定部314は、読み出した航行状態の履歴の中に船舶100が出港状態となっているものが格納されているか否かを判定することで、船舶100が既に出港済みであるか否かを判定する(ステップS11)。状態判定部314は、船舶100が出港していないと判定した場合(ステップS11:NO)、船舶100の航行状態が着岸状態であると判定する(ステップS12)。状態判定部314が船舶100の航行状態を判定すると、ログ登録部330は、分析部310が分析した分析結果と映像情報とをログ記憶部340に登録する(ステップS13)。また、ステップS12によって状態判定部314が船舶100の航行状態を判定すると、指示部320は、取得した船舶情報の到着埠頭情報が示す埠頭の荷卸者端末400−1に荷卸指示を出力する(ステップS14)。
これにより荷卸作業者は荷卸クレーンを操作し、着岸した船舶100の荷卸作業を開始する。また、荷卸作業者は、荷卸者端末400−1によって船舶100の入港時に配送準備指示を取得しているため、船舶100が着岸した時点において荷卸作業の準備を完了することができる。そのため、船舶100が着岸した時点ですぐに荷卸作業を開始することができる。
また、配送作業者は、ステップS10で配送者端末400−2によって船舶100の入港時に配送指示を取得しているため、荷卸作業が完了した時点ですぐに配送作業を開始することができる。
【0028】
ステップS14によって指示部320が荷卸指示を出力すると、ID検出部311は、着岸監視カメラ100−2が撮影している映像からステップS1と同様の手法で船舶IDを抽出し、抽出したIDが船舶100のIDと一致するか否かを判定することで、船舶100が、着岸監視カメラ100−2が撮影する映像の外に出たか否かを判定する(ステップS15)。この処理は、船舶100の荷卸作業が終了し、船舶100が離岸すると、船舶100が着岸監視カメラ100−2の撮影範囲内から外に出るため、船舶100が離岸したか否かを判定するために行う。ID検出部311は、船舶100が映像の外に出ていないと判定した場合(ステップS15:NO)、ステップS15に戻り、映像の監視を続ける。
ID検出部311が、船舶100が映像の外に出たと判定した場合(ステップS15:YES)、状態判定部314は、船舶100の航行状態が離岸状態であると判定する(ステップS16)。状態判定部314が船舶100の航行状態を判定すると、ログ登録部330は、分析部310が分析した分析結果と映像情報とをログ記憶部340に登録する(ステップS17)。
【0029】
また、状態判定部314は、ステップS6により、ID検出部311がIDを検出した映像を、出港監視カメラ200−3が撮影したと判定した場合(ステップS6:出港監視カメラ)、船舶100の航行状態が出港状態であると判定する(ステップS18)。状態判定部314が船舶100の航行状態を判定すると、ログ登録部330は、分析部310が分析した分析結果と映像情報とをログ記憶部340に登録する(ステップS19)。
【0030】
また、ステップS2によって船舶情報取得部316が検出したIDに該当する船舶情報が存在しないと判定した場合(ステップS2:NO)、または、ステップS5によって位置特定部313が、算出したサイズと船舶情報に含まれるサイズ情報とが所定の誤差範囲内で一致しないと判定した場合(ステップS5:NO)、または、ステップS11によって状態判定部314が、船舶100が既に出港していると判定した場合(ステップS11:YES)、状態判定部314は、船舶100が不審船であると判定する(ステップS20)。状態判定部314が船舶100を不審船と判定すると、ログ登録部330は、分析部310が分析した分析結果と映像情報とをログ記憶部340に登録する(ステップS21)。また、ステップS20によって状態判定部314が船舶100を不審船と判定すると、指示部320は、警備者端末400−3に船舶100の位置情報を含む警戒指示を出力する(ステップS22)。これにより、IDが登録されていない、または船舶情報とサイズが合わない、または入出港状態の整合性が取れない、等の不審な船舶100の位置に警備艇を派遣することができる。
【0031】
このように、本実施形態によれば、船舶100は左舷灯を、船舶100のIDに基づいて点滅させる。また、各監視カメラ200−1〜200−3は、船舶100を含む映像を撮影する。さらに、入出港管理装置300のID検出部311は、各監視カメラ200−1〜200−3が撮影した映像から船舶100の左舷灯の点滅パターンを抽出し、船舶100のIDを検出する。これにより、船舶100へのシステムの導入を、船舶100に標準的に設置されている左舷灯を点滅させる回路を導入するのみに抑え、船舶100への導入コストを低くすることができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、位置特定部313は、写像情報記憶部312が予め記憶する映像の座標から地図上の座標へのマッピング情報と、映像とに基づいて船舶100の地図上の位置を特定する。これにより、入出港管理装置300は、船舶100の港内における位置を管理することができる。そのため、陸上施設が海上交通規制を行うことにより、複数の船舶の行動を随時把握することができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、状態判定部314は、ID検出部311が船舶100のIDを検出した映像を、どの監視カメラ200−1〜200−3が撮影したかに応じて、船舶100の航行状態を判定する。これにより、入出港管理装置300は、船舶100の港内における航行状態を管理することができる。
【0034】
また、本実施形態によれば、指示部320は、船舶100のIDと船舶100の航行状態とに基づいて船舶100に対して行う作業の指示を示す指示情報を各作業者端末400−1〜400−3に出力する。これにより、船舶100の情報と荷卸、配送、警備等のシステムと連携することができ、作業者は効率的な港湾業務を行うことができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、出力部350は、映像、船舶100のID、航行状態、位置情報等を、外部ネットワークを介して外部に出力する。これにより、ネットワークを通じて陸上施設の外から港湾の状況を取得することができる。
【0036】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、本実施形態では、入港監視カメラ200−1が入港する船舶100の左舷灯が撮影する映像に映るように設置され、また、出港監視カメラ200−3が出港する船舶100の左舷灯が撮影する映像に映るように設置され、ID検出部311が監視カメラ200−1〜200−3が撮影する映像の左舷灯から船舶100のIDを取得する場合を説明したが、これに限られず、入港監視カメラ200−1が入港する船舶100の右舷灯が撮影する映像に映るように設置され、また、出港監視カメラ200−3が出港する船舶100の右舷灯が撮影する映像に映るように設置され、ID検出部311が監視カメラ200−1〜200−3が撮影する映像の右舷灯から船舶100のIDを取得することでも同様の効果を得ることができる。なお、右舷灯は青色灯であるため、ID検知部311による右舷灯の検知は、例えば、映像情報の色空間をYCbCr形式で表現した場合、ID検出部311が映像情報の各フレームに輝度及び青色色差成分(Cb)がそれぞれ所定の閾値以上となっている部分が存在するか否かを判定することで行われる。
【0037】
なお、本実施形態では、監視カメラとして入港監視カメラ200−1、着岸監視カメラ200−2、出航監視カメラ200−3を備える場合を説明したが、監視カメラの個数、用途はこれに限られない。
また、本実施形態では、作業者端末として荷卸者端末400−1、配送者端末400−2、警備者端末400−3を備える場合を説明したが、作業者端末の個数、用途はこれに限られない。また、作業者端末の代わりにスピーカを設置し、指示部320は音声によって指示を出力しても良い。
【0038】
また、本実施形態では、ID検出部311が監視カメラ200−1〜200−3が撮影する映像の左舷灯から船舶100のIDを取得する場合を説明したが、これに限られない。例えば、航路の霧などの発生、船舶100の重なり等によって、監視カメラ200−1〜200−3に死角が発生する可能性があるため、監視カメラ200−1〜200−3は、できるだけ広い視野を確保する必要がある。図1に示すように、港湾の入口と出口が同じである場合、入港監視カメラ200−1が撮影する映像には入港する船舶100の左舷灯が映るだけでなく、出港する船舶100の右舷灯が映る。また、出港監視カメラ200−3が撮影する映像には出港する船舶100の左舷灯が映るだけでなく、入港する船舶100の右舷灯が映る。そのため、ID検出部311は上述したステップS1において右舷灯及び左舷灯からIDの検出を行い、状態判定部314(進行方向判定部)は、ステップpS6において映像を撮影した監視カメラ200−1〜200−3と船舶100の灯色とに基づいて航行状態を判定する。例えば、入港監視カメラ200−1が撮影した映像に船舶100の右舷灯を検出した場合、状態判定部314は、船舶100が出港状態であると判定する。このように、陸上施設に複数の監視カメラを備えることで監視カメラの死角を減らし、状態判定部314が船舶100の灯色によって船舶の進行方向を判定することで、港内の船舶100の見落としを減らすことができる。
【0039】
また、本実施形態では、入出港管理システムを港湾に設置し、港湾内の船舶100の状況を管理する場合を説明したが、これに限られず、例えば、海峡などに一定間隔に監視カメラを設置し、状態判定部314が監視カメラの設置位置によって、「海峡侵入」、「エリア1通過中」、「エリア2通過中」等の航行状態を判定することで、海峡における船舶100の管理を行っても良い。
【符号の説明】
【0040】
100…船舶 101…ID記憶部 102…変調部 103…左舷灯点灯部 104…右舷灯点灯部 200−1…入港監視カメラ 200−2…着岸監視カメラ 200−3…出航監視カメラ 300…入出港管理装置 310…分析部 311…ID検出部 312…写像情報記憶部 313…位置特定部 314…状態判定部 315…船舶情報記憶部 316…船舶情報取得部 320…指示部 330…ログ登録部 340…ログ記憶部 350…出力部 400−1…荷卸者端末 400−2…配送者端末 400−3…警備者端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
港湾内における船舶の識別を行い、前記船舶の入出港を管理する入出港管理装置を備える入出港管理システムであり、
前記船舶は、
前記船舶のIDを示す点滅パターンで前記船舶の右舷に設置される右舷灯を点滅させる右舷灯点灯部または、
前記船舶のIDを示す点滅パターンで前記船舶の左舷に設置される左舷灯を点滅させる左舷灯点灯部の少なくともいずれか一方、
を備え、
前記入出港管理装置は、
前記船舶を含む映像を撮影する撮影部と、
前記映像から前記船舶の前記右舷灯または前記左舷灯の点滅パターンを抽出し、前記船舶のIDを検出するID検出部と、
を備える、
ことを特徴とする入出港管理システム。
【請求項2】
前記入出港管理装置は、
予め記憶する前記映像のフレーム内の一点の座標と地図上の一点の座標とを対応付けるマッピング情報と前記映像とに基づいて前記船舶の地図上の位置を特定する位置特定部とを備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の入出港管理システム。
【請求項3】
前記入出港管理装置は、
前記船舶の1つの航行状態のみを撮影する前記撮影部を複数備え、
前記ID検出部が前記船舶のIDを検出した前記映像を、どの前記撮影部が撮影したかに応じて、前記船舶の航行状態を判定する状態判定部を備える、
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の入出港管理システム。
【請求項4】
前記入出港管理装置は、
前記船舶のIDと前記船舶の航行状態とに基づいて当該船舶に対して行う作業の指示を示す指示情報を出力する指示部を備える、
ことを特徴とする請求項3に記載の入出港管理システム。
【請求項5】
前記船舶は、
前記右舷灯点灯部と前記左舷灯点灯部との両者を備え、
前記映像から前記船舶の右舷灯または左舷灯を抽出し、前記船舶の進行方向を判定する進行方向判定部を備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の入出港管理システム。
【請求項6】
港湾内における船舶の識別を行い、前記船舶の入出港を管理する入出港管理装置を用いた処理方法であり、
撮影部は、前記船舶を含む映像を撮影し、
ID検出部は、前記映像から前記船舶の前記右舷灯または前記左舷灯の点滅パターンを抽出し、前記船舶のIDを検出する、
ことを特徴とする処理方法。
【請求項7】
港湾内における船舶の識別を行い、前記船舶の入出港を管理する入出港管理装置であり、
前記船舶を含む映像を撮影する撮影部と、
前記映像から前記船舶の前記右舷灯または前記左舷灯の点滅パターンを抽出し、前記船舶のIDを検出するID検出部と、
を備えることを特徴とする入出港管理装置。
【請求項8】
港湾内における船舶の識別を行い、前記船舶の入出港を管理する入出港管理装置を、
前記船舶を含む映像を撮影する撮影部、
前記映像から前記船舶の前記右舷灯または前記左舷灯の点滅パターンを抽出し、前記船舶のIDを検出するID検出部、
として機能させるためのプログラム。
【請求項9】
船舶のIDを示す点滅パターンで前記船舶の右舷に設置される右舷灯を点滅させる右舷灯点灯部または、
船舶のIDを示す点滅パターンで前記船舶の左舷に設置される左舷灯を点滅させる左舷灯点灯部の少なくともいずれか一方、
を備えることを特徴とする船舶。
【請求項10】
船舶の右舷に設置される右舷灯または前記船舶の左舷に設置される左舷灯の少なくともいずれか一方が発光する光を、前記船舶のIDを示す点滅パターンで点滅させるための点滅制御回路。
【請求項11】
移動体の識別を行う移動体識別装置を備える移動体識別システムであり、
前記移動体は、
前記移動体のIDを示す点滅パターンで点滅する点灯部を備え、
前記移動体識別装置は、
前記移動体を含む映像を撮影する撮影部と、
前記映像から前記移動体の前記点灯部の点滅パターンを抽出し、前記移動体のIDを検出するID検出部と、
を備える、
ことを特徴とする移動体識別システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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