説明

入力装置、及びこれを用いた電子機器

【課題】簡易な構成で、多様な操作を行うことができる入力装置、及びこれを用いた電子機器を提供する。
【解決手段】ローラ3の両端にS極とN極が所定の角度ピッチで交互に着磁されたリング磁石4が固着され、これと対向して磁気検出素子13及び固定磁石7が配置されて回転操作部2が構成されている。ローラ3の外周面の一部を突出させるローラ挿通孔16aが中央に形成された操作板16が回転操作部2を覆っている。ローラ3の回転が磁気的に検出されるとともに、ローラ3の押下及び操作板16の前後左右方向の揺動操作によりオン・オフするスイッチ(9、11)がそれぞれ設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の操作に使用される入力装置、及びこれを用いた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やビデオカメラ等の各種電子機器の高機能化や小型化が進むに伴い、これらの操作に用いられる入力装置にも、多様な操作を行えるものが求められるようになってきている。
以下、図面を参照しながら従来の入力装置について説明する。図7は従来の入力装置の要部断面図、図8は同装置の分解斜視図である。
【0003】
図7及び図8に示すように、入力装置50は絶縁樹脂製のケース55を備えている。ケース55には配線基板53が載置され、この配線基板53の上面には可撓性を有するフィルム状のベースシート51が貼着されている。更に、ベースシート51上面にはゴム等のカバーシート56が載置され、カバーシート56の上に絶縁樹脂製の押釦58、及びこの押釦58が挿通される釦挿通孔57aが中央に穿設された略正方形の絶縁樹脂製の操作体57が設けられている。
【0004】
配線基板53は、上下両面に複数の配線パターン(図示せず)が形成されるとともに、ベースシート51と対向する上面に複数(図示例では5個)の固定接点54が、中央に1つと、これの周囲の前後左右に4つという配置で設けられている。各固定接点54は、略円形状の内側端子54a、及び内側端子54aとは絶縁された状態でこれを囲むように設けられた略リング状または略馬蹄状の外側端子54bから構成されている。
【0005】
これと対応して、ベースシート51には、配線基板53の各固定接点54と対向する位置(ベースシート51下面)に、略ドーム状の金属薄板からなる可動接点52が接着剤(図示せず)により貼着されて設けられている。各可動接点52は、外力が加わらない通常時にはカバーシート56側に凸の状態で各固定接点54と対向し、この状態で外縁部が各固定接点54の外側端子54bと接しており、且つ中央部が各固定接点54の内側端子54aと所定の間隙を空けて対向するように配設されている。
【0006】
押釦58は、上記中央の可動接点52と対応する位置に配設されている。そして、押釦58を押下することにより上記中央の可動接点52が押下されて下方に弾性反転し、配線基板53側に凸の状態となる。弾性反転した上記中央の可動接点52は、固定接点54の内側端子54a及び外側端子54bの両方と接触し、固定接点54の内側端子54aと外側端子54bとが可動接点52を介して導通される。つまり、上記中央の可動接点52及びこれと対応する固定接点54からなるスイッチがオンとなる。押釦58が初期位置に戻ると上記中央の可動接点52は初期状態に復帰し、スイッチはオフとなる。
操作体57は、上記周囲の複数の可動接点52がそれぞれ外周部各辺の中間部の端部と対向するように配置されている。そして、操作体57は、上記釦挿通孔57a周囲の前後左右の各方向の部位を上から押圧すると、押圧された部位に対応する外周部各辺が下降するようにカバーシート56上に揺動可能に配設されている。
【0007】
そして、このように構成された入力装置50は、例えば図9の斜視図に示す携帯電話等の電子機器の固定筐体61上面に装着される。ここでは、上記複数の固定接点54が図示しない配線パターン等を介して、電子機器内のマイコン等の制御手段62に接続されている。
以上の構成において、固定筐体61に対して開閉可能に装着された可動筐体63前面の、液晶表示素子等の表示手段64に複数の氏名等のメニューやカーソル(図示せず)が表示されているものとする。この状態で、入力装置50の操作体57の前方向(可動筐体63の方向)の部位を押下するとその方向の端部が下降するように操作体57が揺動し(以下、前方向に揺動操作する等と表現する)、カバーシート56及びベースシート51を介して対応する可動接点52が下方に押圧される。
【0008】
そして、所定の押圧力が加わると、可動接点52がクリック感を伴って下方へ弾性反転し、可動接点52が固定接点54の内側端子54a及び外側端子54bの両方と接触することにより、内側端子54aと外側端子54bとが可動接点52を介して接続された状態となる。これが制御手段62により検出され、表示手段64の複数のメニュー上に表示されたカーソルが表示手段64における上方向へ移動する。
また、操作体7を例えば後ろ方向や左右方向へ揺動操作すると、同様に、対応する可動接点52が押下されて弾性反転する。これを制御手段62が検出し、表示手段64のカーソルが表示手段64における下方向や左右方向へ移動されて、氏名等のメニューの選択が行われる。
【0009】
さらに、カーソルを所望のメニュー上に置いた状態で、押釦58を押下すると、対応する中央の可動接点52が押下されて弾性反転し、これが制御手段62により検出されて、選択状態となっているメニューが確定し、例えば選択した相手への通信が行われる。
つまり、操作体57を所定方向へ揺動操作、あるいはその中央の押釦58を押下操作することによって、対応する各可動接点52が弾性反転して対応する固定接点54の電気的接離が行われる。これと同時に、どの箇所の固定接点54の電気的接離が行われたかを制御手段62が検出し、その操作に応じて制御手段62が、表示手段64に表示された複数のメニューやカーソル等を制御するように構成されているものであった。
なお、下記特許文献1においては、揺動操作及び押圧操作の両方でスイッチ操作を可能とする操作装置が提案されている。
【特許文献1】特開2003−123596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の入力装置及びこれを用いた電子機器においては、より多様な操作を行うために、さらに多くの操作体、押釦、及びスイッチ接点等が必要となり、限られたスペースの中でこれらを設けることが困難であった。また、スペースを節約するために操作体や押釦を小さくすると、操作が行いづらくなるという別の問題も発生する。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、多様な操作を行うことができる入力装置、及びこれを用いた電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の入力装置は、外周面に周方向の外力を加えて回転操作されるローラ、所定の角度ピッチでS極及びN極が交互に着磁されるとともに、前記ローラの両端面に設けられた各回転軸に嵌装されて固定される複数のリング磁石、並びに前記リング磁石と対向して配設される磁気検出素子及び固定磁石を含む回転操作部と、
前記ローラの外周面の一部を上方に突出させるように前記ローラが挿通されるローラ挿通孔を中央に有し、且つ前記回転操作部を上から覆うように配設されるとともに、前記挿通孔周囲の各方向の部位を上から押圧すると、押圧された部位が下降するように揺動可能に配設された操作板と、
前記操作板の各方向の部位と対応する位置に設けられ、対応する部位の下降によりオンとなり且つ前記対応する部位の初期位置への復帰によりオフとなる複数のスイッチと、
を具備したことを特徴とする。
【0012】
このような構成の本発明の入力装置によれば、操作体の揺動操作によりローラの周囲の複数のスイッチがオン・オフされる。加えて、操作体中央のローラ挿通孔から外周面の一部が突出するローラの回転操作により、各回転軸に嵌装された複数のリング磁石による磁界が変化し、この変化を磁気検出素子が検出して対応する信号を出力する。したがって、操作板や押釦等の構成部品を増やすことなく簡易な構成で、多様な操作を実行することが可能となる。ここで、上記ローラはリング磁石と対向して配設された固定磁石の磁力により所定以上の外力が働かない限り、回転しないように支持されている。
【0013】
また、本発明の入力装置においては、前記回転操作部が上下動可能に設けられており、前記回転操作部と対応する位置に、前記回転操作部の下降によりオンとなり且つ初期位置への復帰によりオフとなるスイッチ接点が設けられているのが好ましい。
この構成によれば、回転操作部の押下操作により、対応するスイッチをオン・オフすることが可能となる。これにより、さらに多様な操作を行うことができる。
【0014】
また、上記目的を達成するために、本発明の電子機器は、上記入力装置を具備するとともに、
前記磁気検出素子及び前記各スイッチと接続された制御手段と、この制御手段に接続された表示手段とを含み、
前記制御手段が前記磁気検出素子及び前記各スイッチからの信号に基づいて、前記表示手段の表示を制御するものとした。
これにより、簡易な構成で、多様な操作が行える電子機器が実現される。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明によれば、簡易な構成で、多様な操作の可能な入力装置及びこれを用いた電子機器を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図1〜図6を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る入力装置の要部における断面図、図2は図1のX−X線の断面図、図3は同装置の分解斜視図、図4は回転操作部の分解斜視図である。
【0017】
図1〜図3に示すように、入力装置1は、絶縁樹脂製のケース14を備えている。ケース14には下配線基板12、並びに上配線基板10が順に載置され、この上配線基板10の上面にベースシート8が貼着されている。ベースシート8上面にはカバーシート15が載置され、カバーシート15の上面に回転操作部2が設けられ、この回転操作部2の一部を外部に露出させながらこれを上から覆うように操作板16が設けられている。
図4に示すように、回転操作部2は、ローラ3と、このローラ3を回転自在に収納するローラケース20(図3参照)と、ローラ3両端面に突設された各回転軸3aに嵌装されて固定されるリング磁石4と、各リング磁石4と対向して配置される固定磁石7及び磁気検出素子13(図1及び図2参照)とから構成されている。ローラ3は、外周面に周方向の外力が加えられて回転操作される、アルミニウム等の金属または絶縁樹脂からなる略円柱状の部材であり、その外周面には、指で回転操作しやすいように周方向と垂直な方向に延びる溝が所定ピッチで形成されている。
【0018】
リング磁石4は、ローラ3の回転軸3aが挿通される軸挿通孔4aが中央に穿設されるとともに、図2に示すように、S極とN極が所定の角度ピッチ(図示例では60度間隔)で交互に数個ずつ(図示例では3つずつ)着磁されている。ここで、ローラ3の左右両端の各リング磁石4は、互いに周方向に角度を約5〜6度(degree)ずらした状態で回転軸3aに固着されている。つまり、各磁極の磁力が最大となるローラ3の角度位置が、左右のリング磁石4の間で約5〜6度(degree)ずれるように、各リング磁石4が、ローラ3の各回転軸3aにそれぞれ設けられている。そして、固定磁石7は、各リング磁石4に同じ磁極を向け、各リング磁石4と所定の間隙を空けて対向配置されている。このように各リング磁石4及び固定磁石7が配設されているために、左右の各リング磁石4に対向する固定磁石7の高さ位置や形状等を左右のバランスをとるように調節して、各固定磁石7と各リング磁石4の吸引状態がつりあった状態とすることができる。これにより、ローラ3を安定した状態で停止させることが可能となる。このように構成された回転操作部2のローラ3を回転操作すると、リング磁石4と固定磁石7との間に回転に伴って吸引力及び反発力が発生し、この吸引力と反発力とによりクリック感のある、歯切れの良い良好な操作感触が得られる。
【0019】
ローラケース20は、銅合金製または鋼板製の板状の上カバー5、及びローラ3を収納する容器である同素材の下カバー6から構成されている。上カバー5及び下カバー6には、組み合わさって各回転軸3aの軸受を成す軸受部5a及び6aが、対向する端部にそれぞれ形成されている。また、上カバー5の中央部には、ローラ3の外周面の一部を外部に突出させるようにローラ3が挿通される貫通孔5bが穿設されている。また、上カバー5は、軸受部5aと隣接する各端部に、下カバー6の後述の磁石支持部6eとの間で固定磁石7を挟持して保持するための板状の磁石押え部5cが下カバー6側に向けて立設されている。
【0020】
ここで、ローラ3の各回転軸3aには、大径部3cがそれぞれ設けられており、この各大径部3cとローラ3の各端面との間にそれぞれ溝部3bが形成されている。これと対応して上カバー5の各軸受部5a近傍の中央寄りに、ローラ3の各回転軸3aの溝部3bと遊嵌する板状の覆い部5dが下カバー6側に向けて立設されている。覆い部5dのローラ3の各回転軸3aと対応する部分には、半円状の凹部5eが形成されている。そして、ローラ3は、各回転軸3aの大径部3cが上カバー5及び下カバー6の各軸受部5a、6aと摺接して軸支されている。
【0021】
下カバー6は、上記軸受部6aが両端に設けられたローラ収納部6bと、ローラ収納部6bの一方の側に形成された支点側鍔部6cと、他方の側に形成された作用点側鍔部6dとを備えている。支点側鍔部6cには、上カバー5の磁石押え部5cとの間で固定磁石7を挟持して保持するための、略直角の折り目を有する長板状の磁石支持部6eが、軸受部6aと隣接する各端部に設けられている。支点側鍔部6cのローラ収容部6bと離れた側の端部には、ローラ3の軸方向と平行に延びる突条6fがカバーシート15側に向けて突設されている。この突条6fは、図2に示すように、カバーシート15と当接しており、これによりローラ3が上方から押圧されると回転操作部2が突条6fを支点としてケース14に対して上下に揺動する。
【0022】
また、ホール素子等の磁気検出素子13は、カバーシート15を間に挟んで各リング磁石4と対向するように下配線基板12の上面に設けられている。
操作板16は、ローラ3の外周面の一部を外部に突出させるようにローラ3が挿通されるローラ挿通孔16aが中央に穿設された略正方形の絶縁樹脂製の板材である。操作板16は、外周の2辺がローラ3の軸方向と平行となり、他の2辺がローラ3の軸方向と垂直となるように配設される。また、操作板16は、ローラ挿通孔16a周囲の前後方向(ローラ3の軸方向と垂直な2方向)及び左右方向(ローラ3の軸方向と平行な2方向)の各部位を上から押圧すると、対応する部位が回転操作部2と干渉せずに下降するように、別途設けられたピンや凹凸部(図示せず)によって揺動可能にカバーシート15上面に配設されている。
【0023】
カバーシート15は、シリコン樹脂、ウレタンゴム、エラストマー等の弾性部材からなる略矩形の板状部材であり、中央に回転操作部2が嵌る凹部15aが形成されている。
上配線基板10は、紙フェノール、ガラス入りエポキシ等からなり、上下両面に銅箔等によって複数の配線パターン(図示せず)が形成されている。また、上配線基板10の中央部には、カバーシート15の凹部15aが挿通される貫通孔10aが設けられている。また、上配線基板10のベースシート8と対向する上面には、複数(図示例では5個)の固定接点11が設けられている。各固定接点11の中の1つ(111)は、下カバー6の作用点側鍔部6dと対応する位置である、貫通孔10aの近傍に配されている。他の各固定接点11は、操作板16の4辺の中間の端部と対応する位置にそれぞれ設けられている。各固定接点11は、略円形状の内側端子11a、及び内側端子11aとは絶縁された状態でこれを囲むように設けられた略リング状または略馬蹄状の外側端子11bから構成されている。
【0024】
下配線基板12は、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリカーボネート等の絶縁性素材からなるフィルム状の部材であり、中央部にカバーシート15の凹部15aが挿通される貫通孔12aが設けられるとともに、上面に銅箔、銀及びカーボン等の導電性材料により複数の配線パターン(図示せず)が形成されている。
【0025】
ベースシート8は、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリカーボネート、ポリイミド等の可撓性を有するフィルム状の部材であり、中央部にはカバーシート15の凹部15aが挿通される貫通孔8aが穿設されている。また、ベースシート8における上配線基板10の各固定接点11と対向する位置(ベースシート8下面)には、略ドーム状の銅合金または鋼等の導電金属薄板からなる可動接点9がアクリル樹脂やシリコン樹脂等の接着剤(図示せず)により貼着されて設けられている。各可動接点9は、外力が加わらない通常時にはカバーシート15側に凸の状態で各固定接点11と対向し、この状態で外縁部が各固定接点11の外側端子11bと接しており、且つ中央部が各固定接点11の内側端子11aと所定の間隙を空けて対向するように配設されている。
【0026】
ケース14は、絶縁樹脂製の板状部材であり、中央にカバーシート15の凹部15aが嵌る凹部14aが設けられている。
係る構成の入力装置1においては、ローラ3が押下されると回転操作部2が突条6fを支点に揺動し、作用点側鍔部6dが対応する位置に配設されている可動接点9(91)を押下する。これにより可動接点9(91)が下方に弾性反転して上配線基板10側に凸の状態となり、対応する固定接点11の内側端子11a及び外側端子11bの両方と接触する。この結果、当該固定接点11の内側端子11aと外側端子11bとが、当該可動接点9を介して導通された状態となる。つまり、当該可動接点9及び対応する固定接点11からなるスイッチがオンとなる。ローラ3の押下が解除されて回転操作部2が初期位置に復帰すると、可動接点9が上側に弾性反転して、上記スイッチはオフとなる。
【0027】
また、操作体16のローラ挿通孔16a周囲の各方向の部位が押下されると、押下された部位が下降し、その方向にある可動接点9が下方に弾性反転して、これと対向する固定接点11の内側端子11aと外側端子11bとが可動接点9を介して導通された状態となる。つまり、当該可動接点9及び対応する固定接点11からなるスイッチがオンとなる。当該部位の押下が解除されて当該部位が初期位置に復帰すると、可動接点9が上側に弾性反転して、上記スイッチはオフとなる。
【0028】
そして、このように構成された入力装置1は、例えば図5の斜視図に示す携帯電話等の電子機器の固定筐体21上面に装着される。ここでは、各固定接点11及び磁気検出素子13が図示しない配線パターン等を介して、機器内のマイコン等の制御手段22に接続される。また、制御手段22には、固定筐体21に開閉可能に装着された可動筐体23前面の液晶表示素子等の表示手段24が接続されて機器が構成される。ここで、固定筐体21には送話口25及びボタン群27が設けられ、可動筐体23には受話口26が設けられている。
【0029】
以上の構成において、図6(a)及び図6(b)に示すように、表示手段24に複数の氏名等のメニュー及びカーソル31、または地図及びポインタ32が表示されているものとする。この状態で、入力装置1の操作板16の例えば前方向(可動筐体23の方向)の部位を押下すると、対応する部位が下降するように操作板16が揺動し(以下、前方向に揺動操作する、等と表現する)、カバーシート15及びベースシート8を介して対応する可動接点9が押下される。
そして、所定の押圧力が加わると、当該可動接点9がクリック感を伴って下方へ弾性反転し、当該可動接点9の下面が対応する固定接点11の内側端子11a及び外側端子11bの両方と接触し、内側端子11a及び外側端子11bが可動接点9を介して接続された状態となる。これを電子機器の制御手段22が検出して、表示手段24の複数のメニュー上に表示されたカーソル31またはポインタ32を上方向へ移動させる。
【0030】
また、操作板16を例えば後ろ方向または左右方向へ揺動操作すると、同様に、対応する可動接点9が押下されて弾性反転し、これを制御手段22が検出して、表示手段24のカーソル31またはポインタ32を下方向または左右方向へ移動させて、氏名または地図等のメニューの選択が行われる。
さらに、操作板16中央から突出するローラ3を前後方向へ回転操作すると、ローラ3両端のS極とN極が交互に着磁されたリング磁石4が回転して、左右のリング磁石4の磁気が変化し、これを各磁気検出素子13が検出する。この時、ローラ3両端のリング磁石4は上述したように、互いに周方向に角度をずらした状態で固着されているために、各磁気検出素子13からは位相差のあるパルス信号が制御手段22に出力される。
【0031】
そして、制御手段22がこの位相差のあるパルス信号から、ローラ3の回転方向と回転角度を検出し、表示手段24上でカーソル31またはポインタ32を上または下方向へ移動させる。この時、上記のように操作板16を前後方向へ揺動操作した場合とは異なる速度、例えば速い速度で表示手段24の上下方向へ移動させて、氏名や地図等のメニューの選択が行われる。
さらに、カーソル31またはポインタ32を所望のメニュー上に置いた状態で、ローラ3を押下すると、ケース14に対して揺動可能に装着された回転操作部2が下方に揺動し、対応する可動接点9が下カバー6の作用点側鍔部6d下面により押下され、対応する固定接点11の各端子11a、11bが接続される。これを制御手段22が検出して選択したメニューが確定し、例えば選択した相手への通信や選択した箇所の地図の拡大等が行われる。
【0032】
このように、本実施形態の入力装置1は、操作板16を前後左右の各方向へ揺動操作することによって、対応する各可動接点9が下方に弾性反転して対応する固定接点11の電気的接離が行われると共に、操作板16中央の回転操作部2のローラ3を回転操作することによって、リング磁石4の磁気変化からローラ3の回転方向と回転角度を磁気検出素子13により検出され、これを位相差のあるパルス信号として出力するように構成されている。
すなわち、磁気方式の回転操作部2の前後左右方向に複数のスイッチを形成すると共に、これらのスイッチのオン・オフを行う操作板16の中央にローラ3を突出させることによって、操作板16の前後左右方向への揺動操作に加え、操作板16中央の回転操作部2の回転操作によって、様々な操作が行える。このため、他に操作体や押釦等の構成部品を設けることなく、簡易な構成で多様な操作が行える。
【0033】
また、操作板16の揺動操作によるスイッチのオン・オフと、ローラ3の回転操作によるパルス信号とを制御手段22が検出し、入力装置1の操作に応じて、例えば表示手段24に表示されたカーソル31やポインタ32の移動速度を変える等、制御手段22が表示手段24の表示を制御することによって、多様な操作が可能な電子機器を実現することができる。
さらに、回転操作部2をケース14に対して揺動、ないしは上下動可能に装着すると共に、この下方に可動接点9(91)及び固定接点11(111)からなるスイッチを設け、このスイッチのローラ3の押下操作によるオン・オフを、制御手段22が検出することによって、選択したメニューの確定等、さらに多様な操作を行うことが可能となる。
【0034】
また、回転操作部2のローラ3両端の各回転軸3aにリング磁石4を固着すると共に、これと対向して固定磁石7を配置することによって、ローラ3の停止時には、リング磁石4と固定磁石7の吸引状態がつりあって、安定した状態でローラ3の保持が行われる。また、ローラ3の回転操作時には、回転に伴うリング磁石4と固定磁石7の吸引反発力によって、クリック感のある良好な操作感触を得ることができる。
また、ローラ3を上カバー5と下カバー6とにより覆うと共に、ローラ3の外周面の一部が突出する上カバー5の貫通孔5bの縁部に覆い部5dを設け、この覆い部5dをローラ3の各回転軸3aの溝部3bに遊嵌させることによって、塵埃や水等の液体がローラケース20内に侵入するのを防ぐことができる。
【0035】
また、各リング磁石4は、互いに周方向に角度をずらした状態でローラ3の左右の各回転軸3aに固着されているために、各リング磁石4と対向配置される左右の各固定磁石7の高さ位置や形状等を左右のバランスをとるように設定することによって、各固定磁石7と各リング磁石4のそれぞれの吸引状態がつりあった状態となり、ローラ3を安定した状態で停止させることができる。
このように本実施形態の入力装置1によれば、回転操作部2におけるローラ3の回転操作及び押下操作、並びに中央にローラ3を露出させながら回転操作部2を覆う操作板16の前後左右方向の揺動操作に対応した信号が出力されるので、簡易な構成で、多様な操作を実行することができる。また、この入力装置1を携帯電話などの各種電子機器に実装することによって、簡易な構成で、多様な操作を実行することが可能な電子機器を実現することができる。
【0036】
以上、本発明を実施形態により説明したが、本発明はこれに限らず種々改変が可能である。例えば、上記実施形態では、各スイッチを、略ドーム状で導電金属薄板製の可動接点9と固定接点11とを組み合わせたものとしたが、可動接点として下面にカーボン状の接点が形成された略ドーム状の可撓性のゴムシートを用いたものや、あるいは単品のプッシュスイッチを用いたもの等の様々なスイッチを用いても本発明は実施可能である。
また、各リング磁石4を、周方向に所定角度をずらした状態でローラの各回転軸3aに固着することにより各磁気検出素子13から位相差のあるパルス信号を得るものとしたが、各磁気検出素子13の取付位置をローラ3の周方向に対して所定の角度位置ずらして、位相差のあるパルス信号を得るものとしてもよい。この時、各リング磁石4が、例えばS極とN極が各々60度間隔で着磁されている場合、120度の回転角度で1パルスの信号が出力される。このため、リング磁石4に対向した左右の磁気検出素子13を、例えば30度分ずらした位置に配置すれば、1/4位相の差があるパルス信号を得ることができる。
【0037】
また、上記実施形態では、操作板16を前後左右の4方向に揺動操作可能なものとしたが、右斜め前、右斜め後ろ、左斜め前及び左斜め後ろの4方向をさらに加えた合計8方向の揺動操作が可能なように、対応するスイッチ(可動接点9及び固定接点11)の配置数を増やしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明による入力装置及びこれを用いた電子機器は、簡易な構成で多様な操作ができるという特徴を有し、主に各種電子機器の操作用として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係る入力装置の要部の縦断面図である。
【図2】図1のX−X線による同装置の断面図である。
【図3】同装置の分解斜視図である。
【図4】同装置の回転操作部の分解斜視図である。
【図5】同装置を用いた携帯電話の斜視図である。
【図6】同携帯電話の表示手段の正面図であり、(a)は、番号登録者リストの表示例であり、(b)は地図の表示例である。
【図7】従来の入力装置の要部の縦断面図である。
【図8】同装置の分解斜視図である。
【図9】同装置を用いた携帯電話の斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 入力装置
2 回転操作部
3 ローラ
3a 回転軸
4 リング磁石
7 固定磁石
9 可動接点
11 固定接点
13 磁気検出素子
16 操作板
16a ローラ挿通孔
22 制御手段
24 表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に周方向の外力を加えて回転操作されるローラ、所定の角度ピッチでS極及びN極が交互に着磁されるとともに、前記ローラの両端面に設けられた各回転軸に嵌装されて固定される複数のリング磁石、並びに前記リング磁石と対向して配設される磁気検出素子及び固定磁石を含む回転操作部と、
前記ローラの外周面の一部を上方に突出させるように前記ローラが挿通される挿通孔を中央に有し、且つ前記回転操作部を上から覆うように配設されるとともに、前記挿通孔周囲の各方向の部位を上から押圧すると、押圧された部位が下降するように揺動可能に配設された操作板と、
前記操作板の各方向の部位と対応する位置に設けられ、対応する部位の下降によりオンとなり且つ前記対応する部位の初期位置への復帰によりオフとなる複数のスイッチと、
を具備したことを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記回転操作部が上下動可能に設けられており、前記回転操作部と対応する位置に、前記回転操作部の下降によりオンとなり且つ前記回転操作部の初期位置への復帰によりオフとなるスイッチが設けられている請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の入力装置を具備するとともに、
前記磁気検出素子及び前記各スイッチと接続された制御手段と、この制御手段に接続された表示手段とを含み、
前記制御手段が前記磁気検出素子及び前記各スイッチからの信号に基づいて、前記表示手段の表示を制御することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−59599(P2009−59599A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226208(P2007−226208)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(501431073)ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ株式会社 (810)
【Fターム(参考)】