説明

入力装置、及び入力システム

【課題】表示装置の表示品位を低下させることなく該表示装置に手書き入力を行うことができる入力装置、及び入力システムを提供する。
【解決手段】表示装置3に設けられる透明電極層及び位置情報パターン層34を用いて手書きによる筆跡を表示装置3に入力して表示させる入力装置4に関する。透明電極層で反射可能な波長を含む光を照射する照明部50と、透明電極層で反射されて位置情報パターンを介した光を撮像する撮像部51と、撮像部51が撮像した画像に基づいて筆跡に関する情報を表示装置3に送信する情報送信部42と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置、及び入力システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子ペーパーと呼ばれる薄型軽量の装置形態を有する表示装置の実用化が進められている。外光を拡散的に反射する反射型表示方式により、バックライトを有する透過型液晶表示装置やELディスプレイなどの自発光型表示装置に比べ消費電力が少ないので電池の小型軽量化を図ることができ、表示装置の小型軽量化が可能である。
【0003】
電子ペーパー方式の表示装置の代表として、電気泳動方式の表示装置がある。加えて、電子ペーパーにおいては、入力装置を用いて手書き文字入力ができたり、表示装置を直感的に操作できるたりすることが望ましい。電子ペーパーに適した薄型軽量の入力装置としては、電子ペーパーの表示面上に、光学的に読み取り可能な位置情報パターン層を設け、ポインタに設置した撮像部によって位置情報パターンを撮像することにより、電子ペーパーの表示面における指示位置を特定する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この入力方式は、表示装置に位置情報パターン層を付加するだけで入力機能を付加できるので、薄型軽量の電子ペーパーに適した入力装置である。この表示装置においては、位置情報パターン層および位置情報パターン画像に表示画像が混ざって撮像されることを防止するために位置情報パターン層と表示装置との間に赤外光反射層を設けるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−21168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術においては、誘電体多層膜から構成された赤外光反射層によって可視光の透過率が低下してしまい、表示装置への入射光と表示装置からの反射光が共に弱まることで特に反射型表示装置においては表示品位が大きく低下するといった問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、表示装置の表示品位を低下させることなく該表示装置に手書き入力を行うことができる入力装置、及び入力システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の入力装置は、表示装置に設けられる透明電極層及び位置情報パターン層を用いて手書きによる筆跡を前記表示装置に入力して表示させる入力装置であって、前記透明電極層で反射可能な波長を含む光を照射する照明部と、前記透明電極層で反射されて前記位置情報パターン層を介した前記光を撮像する撮像部と、前記撮像部が撮像した画像に基づいて前記筆跡に関する情報を前記表示装置に送信する情報送信部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の入力装置によれば、表示装置に設けられた透明電極層で反射された位置情報パターン層を介した光に基づいて筆跡に関する情報を表示装置に表示させることができるので、透明電極層を備えた一般的な表示装置に位置情報パターン層を加えたものに筆跡情報を入力可能な装置を提供できる。よって、従来の入力装置のように表示装置として赤外線反射層を備えたものを用いる必要が無く、汎用性の高い入力装置を提供できる。また、入力装置に赤外線反射層を設ける必要を無くすことができるので、可視光の透過率低下を防止することで表示品位を低下させること無く表示装置に対して筆跡情報の入力が可能な入力装置を提供できる。
【0010】
また、上記入力装置においては、前記照明部は、中赤外波長域の光を照射するのが好ましい。
一般的に表示装置の透明電極層に用いられるITOは、中赤外波長域の光を反射する特性を有する。そこで、本発明を採用すれば、照明部の光が透明電極層によって良好に反射される構成を実現できる。
【0011】
また、上記入力装置においては、前記情報送信部は無線方式により前記表示装置に前記情報を送信するのが好ましい。
この構成によれば、無線方式により表示装置に筆跡に関する情報を送信できるので、入力装置と表示装置とを配線で接続する必要が無い。よって、表示装置に手書き入力を行う際に配線が絡まるといった不具合の発生が防止され、高い操作性を得ることができる。
【0012】
また、本発明の入力システムは、上記の入力装置と、前記入力装置で入力された手書きの筆跡を表示可能な表示装置と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の入力システムによれば、上述の入力装置を備えているので、表示装置として従来のような赤外線反射層を備えたものを用いる必要がなくなる。よって、表示装置は赤外線反射層を有しないので、可視光の透過率が低下することがなくなり、薄型軽量でかつ表示品質の高いものとなる。したがって、入力装置で入力した筆跡を明瞭に表示できる信頼性の高い入力システムを提供できる。
【0014】
また、上記入力システムにおいては、前記透明電極層がITOから構成されるのが好ましい。
この構成によれば、透明電極層がITOから構成されるので、照明部から照射された光に含まれる中赤外波長の成分を確実に反射することができ、赤外線反射層を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】電子ペーパーシステムの概略構成を示す図。
【図2】電子ペーパーシステムの電気的な構成を具体的に示すブロック図。
【図3】表示部を構成する電気泳動装置の概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の入力装置、入力システム、及び電子機器に係る一実施例について説明する。図1は本発明の入力装置を含む入力システムに係る構成を示す図である。図1は、入力システムの一例としての電子ペーパーシステムの概略構成を示すものである。
【0017】
電子ペーパーシステム1は、図1に示すように筐体部2と、該筐体部2に設けられた開口部2aに配置される表示装置3と、表示装置3に所定情報を入力する入力装置4と、を備えている。電子ペーパーシステム1は、後述のように入力装置4を用いてユーザーが表示装置3に対して手書きによる筆跡を入力すると、該筆跡に対応した画像が表示装置3に表示されるものである。
【0018】
図2は電子ペーパーシステム1の電気的な構成を具体的に示すブロック図である。図2に示すように表示装置3は、表示体モジュール30と、表示体駆動制御部31と、表示装置制御部32と、表示装置無線通信部33と、を備えている。表示体モジュール30は、位置情報パターン層34と、電気泳動表示装置から構成される表示部35と、を含んでいる。
【0019】
表示体モジュール30は図2に示すように、表示部35の上面に位置情報パターン層34が積層して形成される。位置情報パターン層34は、表示部35の表示光を透過するように可視光を略透過する性質を有するべく、シートもしくは板状の透明樹脂を基材として構成されており、かつ、所定の情報図形を描画するとともに少なくとも中赤外線波長帯域の光を吸収可能な位置情報パターン34a(図3参照)が略全面に形成された層である。
【0020】
位置情報パターン34aは中赤外線波長帯域の光を吸収可能なカーボンブラック等の黒色顔料を含むインキを印刷して形成される。また、位置情報パターン34aは、ドットコード等による位置情報パターン(位置情報を符号化したパターン)となっており、位置情報パターン34aを検出することで、位置情報パターン34aが設けられた表示部35の表面上における位置を一意に規定できるようになっている。このような手法としては、例えば、特開2006−277492号公報や特開2006−127081号公報を例示することができる。
【0021】
入力装置4は、位置検出部41と、入力装置無線通信部(情報送信部)42とを備え、ユーザーによる表示装置3に対して手書き入力等の入力操作を検出するためのものである。入力装置4は、タッチペンやスタイラスと同様、ユーザーが手で把持することで使用される態様とされている。すなわち、入力装置4は表示装置3と物理的に分離した形態とされている。
【0022】
入力装置4の位置検出部41は、照明部50と、撮像部51と、画像処理部52と、位置情報検出部53と、を備えている。照明部50は、入力装置4の略先端に配置されるLEDもしくは電球から構成され、中赤外線を含む光を照射するようになっている。照明部50は、ユーザーに把持された入力装置4の先端部が表示体モジュール30の表示部35の表面を指示した場合に、位置情報パターン層34の位置情報パターン34a(図3参照)に光を照射するようになっている。
【0023】
中赤外線の光は、後述する表示部35を構成する電気泳動装置の透明電極24(図3参照)で反射される特性を有している。ここで、中赤外線とは、波長が2.5μm〜4.0μmの範囲の光を意味する。
【0024】
ところで、入力装置4が表示体モジュール30の表示部35に触れている位置の検出には、表示部35上に形成された位置情報パターン層34を光学的に読み取る位置検出方式を採用している。
【0025】
このように位置情報パターン層34を光学的に読み取る位置検出方式は、入力装置4と表示装置3とを分離することで、表示装置3の構成要素部品を減らし、軽量、薄型化することができるため、電子ペーパーシステム1に適した表示装置3の形態を実現することができる。
【0026】
具体的に本実施形態では、入力装置4が位置情報パターン層34(描画パターン)を介した反射光を撮像部51が撮像することで光学的に読み取る検出方式を採用している。入力装置4は撮像部51で撮像した画像情報を処理することで後述のように該入力装置4の先端部における表示部35の上面上における位置を検出可能となっている。
【0027】
撮像部51は、入力装置4の略先端に配置される撮像素子により構成される。また、撮像部51を構成する撮像素子としては、中赤外線波長域に撮像感度を有するものが用いられている。中赤外線波長域を撮像可能な撮像素子としては、焦電型、ボロメータ型、量子型等の素子を用いることができる。ここで、量子型の撮像素子は撮像ノイズを減らすためには冷却が必要である。そのため、冷却が不要な焦電型およびボロメータ型の撮像素子を用いれば、消費電力を抑えることができる点で有効である。なお、撮像部51に光が入射する入射口付近には、撮像素子の撮像面に表示面の像を形成するための撮像光学系(不図示)が設けられている。
【0028】
画像処理部52は、撮像部51から送られる電気信号が示す画像をデジタル処理することで位置情報パターン層34における位置情報パターン34aの成分を抽出して、位置情報検出部53に送るためのものである。位置情報検出部53は、位置情報パターン34aの配置の特徴から上述の手法を用いることで位置情報を取得できるようになっている。
【0029】
また、位置検出部41は位置情報検出部53が取得した位置情報を入力装置無線通信部42に送信するようになっている。入力装置無線通信部42は受信した位置情報を表示装置3側へと無線方式により送信可能となっている。
【0030】
このような構成に基づき、入力装置4は、表示体モジュール30の表示面(表示部35)に接触した位置に関する情報(例えば座標)を位置情報パターン層34に基づいて検出し、検出した位置座標情報を入力装置無線通信部42から表示装置無線通信部33を介して表示装置制御部32に出力することができる。一方、表示装置3は、表示装置制御部32が位置検出部41で検出された位置座標情報に基づき表示体駆動制御部31を介し表示部35の表示状態を制御することができる。
【0031】
したがって、本実施形態に係る電子ペーパーシステム1においては、入力装置4が表示体モジュール30に接触しながら移動した際の軌跡を表示部35に表示し、手書き入力の様子等を表示部35に随時表示できるようになっている。
【0032】
図3は表示部35を構成する電気泳動装置の概略構成を示す図である。図3に示すように、表示部35は、画素電極23、及び透明電極24からなる1対の電極間に設けられたマイクロカプセル65と、このマイクロカプセル65を前記電極23,24間に固定するバインダ層61と、を備えている。マイクロカプセル65は、液相分散媒26と電気泳動粒子25とを含む電気泳動分散液60を収容している。
【0033】
本実施形態においては、電気泳動装置が電気泳動分散液60をマイクロカプセル65化することにより、その取り扱いが容易になり、製造工程を簡略化することが出来るほか、電気泳動粒子25の偏在による表示の不均一性を防止するようになっている。
【0034】
液相分散媒26としては、比較的高い絶縁性を有する有機溶媒を用いることができる。この有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、アルキルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ぺンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素、シクロへキサン、メチルシクロへキサン等の脂環式炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、シリコン系オイル、フッ素系オイル、オリーブ油等の種々の鉱物油および植物油類、高級脂肪酸エステル等が挙げられ、これらを単独あるいは混合して用いることができる。
【0035】
前記電気泳動粒子25としては、有機または無機の顔料粒子、または、これらを含む複合体を用いることができる。この顔料としては、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック等の黒色顔料、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の白色顔料、モノアゾ、ジイスアゾン、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン、黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、アンチモン等の黄色顔料、キナクリドンレッド、クロムバーミリオン等の赤色顔料、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、アントラキノン系染料、紺青、群青、コバルトブルー等の青色顔料、フタロシアニングリーン等の緑色顔料等が挙げられる。なお、電気泳動粒子25には、色相や電気泳動度等の物性が異なる2種以上の粒子の混合物を使用するようにしてもよい。
【0036】
上記画素電極23は第1基板11上に形成され、透明電極24は第2基板12上に形成されている。すなわち、第1基板11と第2基板12とは、互いに対向していて、マイクロカプセル65、バインダ層61、画素電極23、及び透明電極24を挟持している。
【0037】
第1基板11としては、可撓性を有するもの、硬質なもののいずれであってもよいが、可撓性を有するものであるのが好ましい。可撓性を有する第1基板11を用いることにより、可撓性を備えた表示部35となる。これにより、可撓性を有する電子ペーパーシステム1を構築する上で有用な電気泳動装置を得ることができる。また、第1基板11は、絶縁材料で構成されたものあり、このような絶縁材料としては、例えばポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
第1基板11の一方の内面(図3中、上側の面)には、複数の画素電極23が設けられている。各画素電極23は、マイクロカプセル65中の電気泳動分散液60に電圧を印加する一方の電極として機能するものである。画素電極23の構成材料としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、コバルト、白金、金、銀、銅、モリブデン、チタン、タンタル等の金属、または、これらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
一方、第1基板11に対向して設けられる第2基板12の下面(図3中、下側の面)には、上記透明電極24が配置されている。第2基板12は、前記第1基板11と同様にして、可撓性を有するのが好ましく、その構成材料としては、例えば、各種セルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)のようなポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の各種樹脂材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
第2基板12、及び透明電極24は、いずれも光透過性を有するもの、好ましくは実質的に透明(無色透明、着色透明または半透明)なものとされる。これにより、後述のように電気泳動分散液60中における電気泳動粒子25の状態を、すなわち、表示部35が表示する情報を、目視により容易に認識することが可能となる。
【0041】
透明電極(透明電極層)24の構成材料としては、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide;以下、ITOと称する)が用いられている。なお、上述の画素電極23もITOを用いて構成するようにしても構わない。このようにITOから構成された透明電極24は、キャリア濃度を適宜設定することで上記入力装置4の照明部50が照射する光に含まれる中赤外線を反射する特性を有するため、表示部35と位置情報パターン層34との間に赤外線反射層を設けることなく、照明部50の光を入力装置4側に向けて反射させることが可能となっている。
【0042】
前記バインダ層61を構成するバインダ材料としては、例えばポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリプロピレン、ABS樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニルアクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール−塩化ビニル共重合体、プロピレン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、セルロース系樹脂等の熱可塑性樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン、ポリアミドイミド、ポリアミノビスマレイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリアリレート、グラフト化ポリフィニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド等の高分子、ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化エチレンプロピレン、四フッ化エチレン−パーフロロアルコキシエチレン共重合体、エチレン−四フッ化エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリ三フッ化塩化エチレン、フッ素ゴム等のフッ素系樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム等の珪素樹脂、その他として、メタクリル酸−スチレン共重合体、ポリブチレン、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体等の各種樹脂材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
このような構成に基づき、表示部35はマイクロカプセル65中の電気泳動分散液60に、前記電極23,24により電圧を印加することで、電気泳動粒子25の分布状態を変化させることにより表示手段として機能するようになっている。
【0044】
続いて、本実施形態の電子ペーパーシステム1の動作について説明する。なお、本説明では、本発明の特徴である入力装置4を用いて表示部35に手書き入力を行う動作を中心に説明する。
【0045】
ユーザーが把持した入力装置4を表示部35上で移動すると、入力装置4の先端部に設けられた照明部50から中赤外線を含む光が表示部35に対して照射される。このとき、照明部50から照射された中赤外波長域の光は表示部35上に積層された位置情報パターン層34の位置情報パターン34aで吸収されるものの、表示部35を構成する電気泳動装置の透明電極24を透過せずに反射されるため、位置情報パターン34aが示す描画パターンを含む反射光が入力装置4の撮像部51により撮像される。
【0046】
撮像部51は位置情報パターン34aを介して透明電極24で反射された光の画像を撮像し、画像処理部52へと送信する。画像処理部52は、撮像部51から送られる電気信号が示す画像をデジタル処理することで位置情報パターン34aが示す描画パターンを抽出し、抽出した結果を位置情報検出部53へと送信する。位置情報検出部53は、描画パターンの配置の特徴から符号列を抽出し、この符号列を復号して位置情報を取得する。すなわち、入力装置4は、表示部35において該入力装置4の先端部が接触した位置に関する情報(例えば座標)を検出することができる。そして、入力装置4は検出した位置座標情報を入力装置無線通信部42から表示装置無線通信部33を介して、表示装置制御部32へと出力することができる。
【0047】
位置検出部41は、位置情報検出部53が取得した位置情報を入力装置無線通信部42に送信する。入力装置無線通信部42は受信した位置情報を表示装置3の表示装置無線通信部33へと無線方式によって送信する。このように本実施形態では、無線方式により表示装置3側に入力装置4による位置座標情報を出力できるので、入力装置4と表示装置3とを配線で接続する必要が無い。よって、表示装置3に手書き入力を行う際に配線が絡まるといった不具合の発生が防止され、高い操作性を得ることができる。
【0048】
表示装置3は表示装置無線通信部33を介して、入力装置4から取得した位置情報を表示装置制御部32に出力する。表示装置制御部32は位置検出部41で検出された位置座標情報に基づき表示体駆動制御部31を介して表示部35の表示状態を制御する。
【0049】
具体的に、表示体駆動制御部31は、表示部35のうち、取得した位置座標情報に対応する画素電極23及び透明電極24間に印加する電圧を制御し、マイクロカプセル65内の電気泳動粒子25を移動させることで、ユーザーが入力装置4を用いて入力した手書きによる筆跡を表示部35上に表示することができる。
【0050】
以上述べたように、本実施形態に係る電子ペーパーシステム1によれば、入力装置4が表示装置3の透明電極24で反射される中赤外波長域の光を照射する照明部50と、表示装置3の位置情報パターン層34を介して透明電極24で反射された光を受光する撮像部51とを備えるので、表示部35と位置情報パターン層34との間に赤外線反射層を設ける必要を無くすことができる。よって、赤外線反射層が不要となるので、表示部35は良好な可視透過率を備えたものとなり、表示品位の高い画像表示を行うことができる。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能である。上記実施形態では、表示装置3の表示部35として電気泳動表示装置を備える場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、表示部35としては、位置情報パターン層34側にITOから構成される透明電極を備えたものであれば有機エレクトロルミネッセンス装置又は液晶表示装置を用いても構わない。
【0052】
また、上記実施形態では、照明部50として透明電極24で反射可能な中赤外波長域の光を照射するものを例示したが、本発明はこれに限定されることは無く、照明部50としては例えば中赤外線のみを照射するもの、或いは、種々の波長を含む光を照射する照明部に中赤外波長域の光のみを選択的に透過可能な波長フィルタを組み合わせた構成のものを採用しても構わない。
【符号の説明】
【0053】
1…電子ペーパーシステム(入力システム)、3…表示装置、4…入力装置、24…透明電極(透明電極層)、34…位置情報パターン層、34a…位置情報パターン、35…表示部、42…入力装置無線通信部(情報送信部)、50…照明部、51…撮像部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置に設けられる透明電極層及び位置情報パターン層を用いて手書きによる筆跡を前記表示装置に入力して表示させる入力装置であって、
前記透明電極層で反射可能な波長を含む光を照射する照明部と、
前記透明電極層で反射されて前記位置情報パターン層を介した前記光を撮像する撮像部と、
前記撮像部が撮像した画像に基づいて前記筆跡に関する情報を前記表示装置に送信する情報送信部と、を備えることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記照明部は、中赤外波長域の光を照射することを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記情報送信部は無線方式により前記表示装置に前記情報を送信することを特徴とする請求項1又は2に記載の入力装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の入力装置と、
前記入力装置で入力された手書きの筆跡を表示可能な表示部を含む表示装置と、を備えることを特徴とする入力システム。
【請求項5】
前記透明電極層がITOから構成されることを特徴とする請求項4に記載の入力システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−256286(P2012−256286A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130135(P2011−130135)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】