説明

入力装置および入力制御プログラム

【課題】タッチパネルに設定される反応領域を適切な方向に移動または拡大できる操作性の良い入力装置および入力制御プログラムを提供すること。
【解決手段】MFPは、いずれかの反応領域30内が入力媒体28により操作されると、操作された反応領域30に割り当てられている処理を実行する。さらに、MFPは、タッチパネル17の上下左右の向きを基準とした4方向「左上」、「左下」、「右上」、「右下」のうち、いずれの方向の境界を越えて入力媒体28が反応領域30内に進入したかを決定し、決定した方向へ各反応領域30を移動または拡大するように構成されている。例えば、図2(a)に示すように、入力媒体28が反応領域30の「右下」の方向に位置する境界上を通過し、反応領域30内を操作した場合、本実施形態のMFP1は、図2(b)に示すように、各反応領域30を「右下」へ移動または拡大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置および入力制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タッチパネルに表示される表示ボタンの中心点から見て、押圧位置がいずれの方向にどれだけずれているかをベクトルとして求め、表示ボタンの反応領域を、そのベクトルの方向へ、ずれ量に応じて拡大するアイデアが提案されている。特許文献1に記載のタッチパネルによれば、操作者は、表示ボタンの中心点よりも自分に近い位置を押圧すれば、自分に近づく方向に反応領域を拡大させることができるため、以降の操作がし易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−37343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、操作者が常に表示ボタンの手前側を操作するとは限らない。つまり、操作者が、表示ボタンの中心点よりも自分から遠い位置を操作する場合があり得る。このような場合、特許文献1に記載されたタッチパネルでは、表示ボタンの反応領域が、操作者から離れる方向に拡大されることとなり、操作性が向上しないという問題点があった。スペースの都合上、大きなタッチパネルを設けることができない場合、ある反応領域を不必要に拡大することは、他の反応領域を確保できなくなることに繋がり、好ましくない。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、タッチパネルに設定される反応領域を適切な方向に移動または拡大できる操作性の良い入力装置および入力制御プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明の入力装置は、入力媒体により検出領域内が操作されると、その操作位置を検出するタッチパネルと、前記検出領域内に反応領域を設定する設定手段と、前記入力媒体が、前記設定手段により設定された前記反応領域の境界上を通過して当該反応領域内を操作した場合、その操作された反応領域に対していずれの方向に位置する境界上を通過して前記入力媒体が当該反応領域内に進入したかを、前記タッチパネルの検出結果に基づいて決定する方向決定手段と、前記方向決定手段により決定した方向へ、前記反応領域を移動または拡大する領域変形手段とを備える。
【0007】
また、上記の入力装置において、さらに、前記タッチパネルが重ねられる表示面に画像を表示する表示部と、前記表示面における前記反応領域内に、当該反応領域に割り当てられている処理に対応したボタン画要素を表示する表示制御手段とを備え、前記領域変形手段は、移動後または拡大後の反応領域が、当該反応領域に割り当てられている処理とは異なる処理に対応したボタン画要素の表示領域と重ならないように、前記反応領域を移動または拡大するものであっても良い。
【0008】
上記の入力装置において、タッチパネルは、表示面に密着して重ねられていても良いし、表示面との間に隙間を空け、または透明フィルムなどを挟む状態で、表示面に重ねられていても良い。
【0009】
なお、本発明は、入力装置、該入力装置を制御する入力制御装置、入力方法、入力装置を制御する入力制御プログラム、該入力制御プログラムを記録する記録媒体等の種々の態様で構成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明者は、操作者がタッチパネルの反応領域に入力媒体を進入させるとき、多くの場合、反応領域の手前側の境界を通過させて、入力媒体を進入させることを見出した。
【0011】
請求項1記載の入力装置によれば、入力媒体が反応領域の境界上を通過し当該反応領域内を操作した場合、その操作された反応領域に対していずれの方向に位置する境界上を通過して前記入力媒体が当該反応領域内に進入したかが決定され、決定された方向に反応領域が移動または拡大される。よって、操作者の身体に近づく可能性が高い方向へ反応領域が移動または拡大される。操作者から見れば、反応領域が自分の身体に近づく適切な方向へ移動または拡大されることとなり、操作性が良いという効果が得られる。
【0012】
請求項2記載の入力装置によれば、請求項1記載の入力装置が奏する効果に加え、複数の反応領域のいずれかが操作される場合、複数の反応領域が同じ方向へ移動または拡大されるので、操作者から見れば、いずれかの反応領域を操作することで、各反応領域が適切な方向へ移動または拡大されることとなり、操作性が良いという効果が得られる。
【0013】
請求項3記載の入力装置によれば、請求項1記載の入力装置が奏する効果に加え、複数の反応領域のうちのいずれかが操作される場合、当該反応領域に割り当てられた処理と同一の機能に関する処理が割り当てられた反応領域が、操作された反応領域と共に同じ方向へ移動または拡大されるので、操作者から見れば、いずれかの反応領域を操作することで、同一の機能に関する処理が割り当てられた各反応領域が適切な方向へ移動または拡大されることとなり、操作性が良いという効果が得られる。
【0014】
請求項4記載の入力装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の入力装置が奏する効果に加え、移動後または拡大後の反応領域が、当該反応領域に割り当てられている処理とは異なる処理に対応したボタン画要素の表示領域と重ならないように、前記反応領域が移動または拡大されるので、タッチパネルに設定される反応領域と表示面に表示されるボタン画要素とが矛盾せず、操作者に違和感を与えないという効果がある。
【0015】
請求項5記載の入力装置によれば、請求項1から4のいずれかに記載の入力装置が奏する効果に加え、タッチパネルの検出結果に基づいて入力媒体が通過した境界が特定され、その特定された境界内の反応領域が操作された場合に、反応領域の移動または拡大が実行されるので、タッチパネルの検出結果に基づき、反応領域を適切な方向へ移動または拡大できるという効果がある。
【0016】
請求項6記載の入力装置によれば、請求項5記載の入力装置の奏する効果に加え、幅情報が所定値以上である場合、その境界が、入力媒体が通過した境界として特定されるので、誤検知に基づいて反応領域が移動または拡大されてしまうことを抑制できるという効果がある。
【0017】
請求項7記載の入力制御プログラムによれば、入力装置において実行されることにより、請求項1記載の入力装置と同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は、本発明の入力装置の一実施形態であるMFPの電気的構成を示すブロック図であり、(b)は、入力媒体の幅を初期設定するための初期設定画面の一例を示す図である。
【図2】タッチパネルの検出領域に設定される反応領域を破線で図示し、LCDの表示面に表示されるボタン画要素を実線で図示した図である。
【図3】反応領域切替テーブルの構成を模式的に示す図である。
【図4】MFPにおいて実行される入力制御処理を示すフローチャートである。
【図5】変形例のMFPにおいて、タッチパネルの検出領域に設定される反応領域を破線で図示し、LCDの表示面に表示されるボタン画要素を実線で図示した図であり、図2に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の入力装置の一実施形態である多機能周辺装置(以下、「MFP(Multi Function Peripheral)」と称す)1の電気的構成を示したブロック図である。
【0020】
MFP1は、コピー機能、FAX機能、スキャン機能、及び、プリンタ機能などの各種機能を有している。操作者は、タッチパネル17に設定される反応領域を操作することにより、反応領域に割り当てられている処理をMFP1に実行させることができる。特に、MFP1は、タッチパネル17に設定される反応領域を、適切な方向に移動または拡大することができ、操作者にとって操作性が良いように構成されている。
【0021】
MFP1には、CPU10、ROM11、RAM12、フラッシュメモリ14、操作キー15、LCD16、タッチパネル17、スキャナ20、プリンタ21、NCU23、モデム24が主に設けられている。CPU10、ROM11、RAM12、フラッシュメモリ14は、バスライン26を介して互いに接続されている。また、操作キー15、LCD16、タッチパネル17、スキャナ20、プリンタ21、NCU23、モデム24、バスライン26は、入出力ポート27を介して互いに接続されている。
【0022】
CPU10は、ROM11やRAM12やフラッシュメモリ14に記憶される固定値やプログラム或いは、NCU23を介して送受信される各種信号に従って、MFP1が有している各機能の制御や、入出力ポート27と接続された各部を制御するものである。
【0023】
ROM11は、制御プログラム11a、反応領域切替テーブル11b、反応領域管理テーブル11cなどを格納した書換不能なメモリである。CPU10は、制御プログラム11aに従い、入力制御処理(図4)を実行する。反応領域切替テーブル11bについては、図3を参照して後述する。また、CPU10は、反応領域管理テーブル11cに予め記憶された座標情報を用いて、タッチパネル17に反応領域を設定する。RAM12は、各種のデータを一時的に記憶するための書換可能な揮発性のメモリである。
【0024】
フラッシュメモリ14は、書換可能な不揮発性のメモリである。フラッシュメモリ14には、基準電極数kを記憶する基準電極数メモリ14aが設けられる。基準電極数kについては、図1(b)を参照して後述する。
【0025】
操作キー15は、MFP1に指示を入力するためのハードキーである。LCD16は、液晶表示装置であって、タッチパネル17が重ねられる表示面16a(図1(b))を有し、その表示面16aに画像を表示する。
【0026】
タッチパネル17は、投影型静電容量方式のタッチパネルであって、その検出領域17a(図1(b))の全域が格子状に細かく区分けされ、区分けされた単位領域毎に電極を配設している。タッチパネル17の検出領域17aに、操作者の指などの入力媒体28(図1(b))が接近または接触すると、入力媒体28と電極との間で静電結合が生じ、電極の容量変化が生じる。
【0027】
タッチパネル17は、上下左右の向きを有しており、各単位領域には、それぞれ個別に、各単位領域を識別するための座標情報が付されている。タッチパネル17の表面に向かって左上の単位領域の座標情報を(0,0)として、右方向(図1(b)に示すX方向)および下方向(図1(b)に示すY方向)に向かって値が連続するように座標情報(x,y)が付されている。座標情報は、タッチパネル17の右方向および下方向に向かうほど大きくなる。タッチパネル17は、電極の容量変化が見られた単位領域の座標情報を、入力媒体28が接近または接触した操作位置として検出し、出力する。
【0028】
図1(b)は、入力媒体28の幅を初期設定するための初期設定画面の一例を示す図である。この初期設定画面は、LCD16の表示面16aに表示され、操作領域29aと検出結果領域29bとを含む。MFP1は、操作者の1本の指(例えば、人差し指)を入力媒体28として、操作領域29a内に触れるよう要求する。一方、検出結果領域29b内には格子状の線が表示され、各マス目が、操作領域29aに含まれるタッチパネル17の単位領域と1対1に対応している。MFP1は、操作領域29aに含まれるタッチパネル17の単位領域のうち、入力媒体28の接近または接触が検出された単位領域に対応するマス目を別色で表示する。したがって、操作者は、操作領域29a内のどの範囲が操作位置として検出されたかを、検出結果領域29b内の表示により、視覚的に知ることができる。
【0029】
MFP1は、操作領域29a内において、入力媒体28の接近または接触が検出された単位領域がX方向に連続する個数の最大値をカウントする。この最大値は、入力媒体28として用いられることが予想される操作者個人の指の幅に相当する値であって、基準電極数kとして、基準電極数メモリ14aに記憶される。
【0030】
図1(a)に戻り説明する。スキャナ20は、FAX機能、スキャン機能、又は、コピー機能の実行時に原稿を読み取るためのものである。プリンタ21は、記録用紙に画像を印刷するためのものである。NCU23は、電話回線の制御を行うものである。モデム24は、ファクシミリ送信時には送信信号を電話回線での伝送に適した形態に変調し、一方、ファクシミリ受信時には電話回線から送られてきた変調信号を復調するものである。
【0031】
図2は、タッチパネル17の検出領域17aに設定される反応領域30を破線で図示し、LCD16の表示面16aに表示されるボタン画要素31を実線で図示した図である。図2において、反応領域30は説明の都合上図示したものであり、表示面16aには表示されないので、操作者自身は見ることができない。
【0032】
反応領域30には、MFP1が実行可能な処理が予め割り当てられている。ボタン画要素31は、各反応領域30に割り当てられている処理に対応した図柄である。各反応領域30は、ボタン画要素31の表示領域よりもやや広い範囲に設定される。よって、操作者は、ボタン画要素31内を操作した場合は勿論、ボタン画要素31から少し外れた位置を操作した場合でも、MFP1に所望の処理の実行指示を入力できる。ここで、反応領域30に予め割り当てられている処理とは、コピーやFAX送信などMFP1が有する各種機能を実行する処理であっても良いし、各機能の実行に必要な設定値を入力し又は変更する処理であっても良い。
【0033】
MFP1は、いずれかの反応領域30内が入力媒体28により操作されると、操作された反応領域30に割り当てられている処理を実行する。さらに、MFP1は、タッチパネル17の上下左右の向きを基準とした4方向「左上」、「左下」、「右上」、「右下」のうち、いずれの方向の境界を越えて入力媒体28が反応領域30内に進入したかを決定し、決定した方向へ各反応領域30を移動または拡大するように構成されている。例えば、図2(a)に示すように、入力媒体28が反応領域30の「右下」の方向に位置する境界上を通過し、反応領域30内を操作した場合、本実施形態のMFP1は、図2(b)に示すように、各反応領域30を「右下」へ移動または拡大する。
【0034】
タッチパネル17に入力媒体28を近づけるとき、人は自分の手前側から近づけることが多い。よって、入力媒体28が通過した反応領域30の境界を特定し、その境界のある方向へ反応領域30を移動または拡大することによって、操作者に近づく方向へ反応領域30を移動または拡大することができる。操作者から見れば、反応領域30が自分の身体に近づく方向へ移動または拡大されることとなり、操作性が良くなる。
【0035】
また、MFP1は、複数の反応領域30を同じ方向へ移動または拡大させる。よって、操作者から見れば、いずれかの反応領域30を操作するだけで、全ての反応領域30が自分の身体に近づく方向へ移動または拡大されることとなり、それ以降の操作において、各反応領域30を操作しやすくなる。
【0036】
特に、ボタン画要素31内に、処理内容を表す文字や図柄が含まれている場合、操作者はその文字を視認しつつ操作したいので、視界の妨げとならぬよう入力媒体28をボタン画要素31の手前側から近づけていくことが多い。そのため、入力媒体28がボタン画要素31の手前側に触れやすい。本実施形態のMFP1によれば、各反応領域30の移動または拡大により、ボタン画要素31の手前側の領域が広くされるので、仮に入力媒体28がボタン画要素31の手前側に触れてしまったとしても、その接触位置が、所望の反応領域30に含まれる可能性が高い。よって、誤操作が生じ難い。
【0037】
なお、反応領域30の移動または拡大に拘わらず、MFP1は、ボタン画要素31の表示領域を変更しない。そして、MFP1は、移動または拡大後の反応領域30が、当該反応領域30に割り当てられている処理とは異なる処理に対応したボタン画要素31の表示領域とは重ならないように、各反応領域30を移動または拡大する。
【0038】
したがって、移動または拡大後の反応領域30とボタン画要素31とが矛盾しない。すなわち、ある処理に対応したボタン画要素31内を操作したにも拘わらず、そのボタン画要素31に対応づけられた処理とは別の処理が実行されてしまうことがなく、操作者に違和感を与えない。
【0039】
以下、詳細を説明するが、以下の説明において、各反応領域30は矩形であるものとする。よって、各反応領域30の境界は4辺から構成される。反応領域30の4辺の境界をそれぞれ反応枠ライン30aと称する。4辺の反応枠ライン30aのうち、反応領域30の上辺を上側反応枠ライン30au、反応領域30の下辺を下側反応枠ライン30ad、反応領域30の左辺(向かって左側の辺)を左側反応枠ライン30al、反応領域30の右辺(向かって右側の辺)を右側反応枠ライン30arと称する。
【0040】
また、以下の説明において、「反応領域30を移動または拡大する」とは、反応領域30の頂点の位置を変更することを意味している。例えば、図2(b)に示すように、反応領域30を「右下」に移動または拡大することは、反応領域30の右上、右下の頂点をより右方向へ移動させると共に、反応領域30の左下、右下の頂点をより下方向へ移動させることを意味している。なお、移動または拡大方向の反対方向(図2(b)に示す例で言えば「左上」)の頂点も、他の頂点と同じ方向へ移動させても良い。その場合、各反応領域30の面積は大きくなるとは限らない。本実施形態では、面積が大きくなるように反応領域30を変形することを「拡大する」と言い、面積が大きくならないように反応領域30を変形することを「移動する」と言う。
【0041】
図3は、反応領域切替テーブル11bの構成を模式的に示す図である。図3に示すように、反応領域切替テーブル11bには、条件エリア11b1と、方向エリア11b2とが設けられ、条件と方向とが対応づけて記憶されている。条件エリア11bに規定された条件が成立して反応領域30内が操作された場合、MFP1は、その条件に対応づけられた方向へ、反応領域30を移動または拡大する。
【0042】
図3において、Nは上側反応枠ライン30au内で検出された入力媒体28の幅を表し、Nは下側反応枠ライン30ad内で検出された入力媒体28の幅を表し、Nは左側反応枠ライン30al内で検出された入力媒体28の幅を表し、Nは右側反応枠ライン30ar内で検出された入力媒体28の幅を表す。これらN,N,N,Nは、入力媒体28の接近または接触が検出されたタッチパネル17の単位領域が各反応枠ライン30a内において連続して並ぶ個数として取得できる。以下の説明では、N,N,N,Nを総称して、幅情報Nと称する。また、kは、操作者自身の指の幅を表す基準電極数kである。
【0043】
この反応領域切替テーブル11bによれば、MFP1は、幅情報Nに基づき、反応領域30をいずれの方向へ移動または拡大すべきかを決定することができる。
【0044】
例えば、N≧k/2且つN≧k/2という条件が成立したとする。その場合、操作者の指である入力媒体28が、上側反応枠ライン30auと左側反応枠ライン30alとを通過した可能性が高い。したがって、MFP1は、反応領域30に対して「左上」の反応枠ライン30aを通過して入力媒体28が反応領域30内に進入したと決定し、その決定した方向「左上」へ各反応領域30を移動または拡大する。
【0045】
なお、図示および詳細な説明は省略するが、反応領域管理テーブル11c(図1(a))は、反応領域30の各々について、移動または拡大を行わない場合の頂点の座標情報、および左上、左下、右上、右下の各方向に移動または拡大する場合の頂点の座標情報を記憶している。よって、MFP1は、反応領域切替テーブル11bに基づいて移動または拡大の方向を決定した後は、反応領域管理テーブル11cに記憶された座標情報に基づき、各反応領域30を所定の位置へ移動または拡大することができる。
【0046】
図4は、MFP1において実行される入力制御処理を示すフローチャートである。この入力制御処理は、操作された反応領域30に対していずれの方向に位置する反応枠ライン30a上を通過して入力媒体28が反応領域30内に進入したかを決定し、その決定した方向へ、反応領域30を移動または拡大する処理である。この処理は、MFP1の主電源が投入されてから主電源が遮断されるまで繰り返し実行される。
【0047】
まず、CPU10は、基準電極数メモリ14aに基準電極数kを初期設定する(S401)。基準電極数kの設定方法は、図1(b)を参照して述べたので説明は省略する。次に、CPU10は、反応領域管理テーブル11c(図1(b))に予め記憶された座標情報に従い、複数の反応領域30を検出領域17aに設定し(S402)、各反応領域30内にボタン画要素31を表示する(S403)。
【0048】
次に、CPU10は、反応枠ライン30aの電極の容量が変化したか否かを判断する(S404)。すなわち、反応枠ライン30a内において入力媒体28の接近または接触が検出されたか否かを判断する。S404の判断が否定される間(S404:No)、CPU10は処理を待機する。
【0049】
一方、S404の判断が肯定されると(S404:Yes)、次に、CPU10は、入力媒体28が通過した反応枠ライン30aを、タッチパネル17の検出結果に基づいて特定する。具体的には、CPU10は、まず、電極の容量の変化が検出された反応枠ライン30aを取得し、その反応枠ライン30aが1つの反応領域30を構成する複数辺の反応枠ライン30aであるかを判断する(S405)。S405の判断が否定される間(S405:No)、CPU10はS405の判断を繰り返す。
【0050】
そして、S405の判断が肯定される場合(S405:Yes)、CPU10は、1つの反応領域30を構成する複数辺の反応枠ライン30aのうち、最初に入力媒体28が通過した2辺の反応枠ライン30aを決定し(S406)、その2辺の反応枠ライン30aの各々について、幅情報Nを取得する(S407)。
【0051】
次に、CPU10は、取得した幅情報Nの各々が基準電極数kの1/2以上であるか否かを判断する(S408)。S408の判断が否定される場合(S408:No)、すなわち、タッチパネル17により物体を検出したが、その物体の幅情報Nがk/2未満である場合は、タッチパネル17を操作しようとする入力媒体28ではないと判断し、S405から処理を繰り返す。
【0052】
一方、S408の判断が肯定される場合(S408:Yes)、すなわち、2辺の幅情報Nの各々がk/2以上である場合、その2辺の反応枠ライン30aを、入力媒体28がその上を通過した2辺の反応枠ライン30aとして特定する。
【0053】
なお、本実施形態において、タッチパネル17は、入力媒体28が接触した位置に加え、接近した位置を検出可能であるため、入力媒体28が検出領域17aに触れた状態で反応枠ライン30a上を通過した場合だけではなく、入力媒体28が検出領域17aから浮いた状態で反応枠ライン30上を通過した場合にも、その通過をタッチパネル17により検出することができる。
【0054】
次に、特定された2辺の反応枠ライン30a内の反応領域30が、入力媒体28によりタッチ(操作)されたかをタッチパネル17の検出結果に基づいて判断する(S410)。S410の判断が否定される場合(S410:No)、S405に戻り処理を繰り返す。すなわち、入力媒体28が2辺の反応枠ライン30a上を通過したが、それら反応枠ライン30a内の反応領域30を操作しなかった場合、反応領域30を移動または拡大せず、S406に戻る。
【0055】
一方、S410の判断が肯定される場合(S410:Yes)、すなわち、反応枠ライン30a内の反応領域30が操作されたと判断された場合、CPU10は、該当する反応領域30に割り当てられている処理を実行する(S411)。次に、CPU10は、反応領域30に対し、いずれの方向に位置する反応枠ライン30aを通過して入力媒体28が反応領域30内に進入したかを決定する。この方向は、特定された2辺の反応枠ライン30aの組み合わせと、反応領域切替テーブル11bに規定された関係とに基づき決定することができる。そして、CPU10は、その決定した方向へ反応領域30を移動または拡大する(S412)。
【0056】
次に、CPU10は、ある一定時間操作が無いかどうかを判断する(S414)。S414の判断が肯定される場合(S414:Yes)。CPU10はS402に戻り処理を繰り返す。すなわち、一方向に移動または拡大しない通常位置に、反応領域30を設定し直す。一方、S414の判断が否定される場合(S414:No)、CPU10は、通常動作を行う(S416)。すなわち、操作者により指示された各種処理の実行や、定期的に実行すべき所定の処理を実行する。ただし、この通常動作の実行中、タッチパネル17に設定される各反応領域30は、S412において決められた方向へ移動または拡大された配置とする。たいていの場合、操作者は、一カ所にとどまってMFP1を操作し続けるので、反応領域30を移動または拡大する方向を固定しておくことにより、操作者にとって操作しやすい状態を維持できるからである。
【0057】
図4に示す入力制御処理によれば、入力媒体28が通過した2辺の反応枠ライン30a内の反応領域30が操作された場合に、反応領域30の移動または拡大が実行される。換言すれば、入力媒体28が反応枠ライン30a上を通過しただけでは、反応領域30の移動または拡大を実行しない。よって、反応領域30が無闇に移動または拡大されてしまうことを抑制できる。また、幅情報Nを用いて、入力媒体28が通過した反応枠ライン30aを特定しているので、誤検知に基づき反応領域30が不要に移動または拡大されてしまうことを防止できる。
【0058】
上記実施形態において、MFP1が入力装置の一例に相当し、反応枠ライン30aが反応領域の境界の一例に相当し、S402を実行するCPU10が設定手段の一例に相当し、S407,S408を実行するCPU10が境界特定手段の一例に相当し、S412を実行するCPU10が方向決定手段および領域変形手段の一例に相当し、S403を実行するCPU10が表示制御手段の一例に相当し、S410を実行するCPU10が判断手段の一例に相当し、S407を実行するCPU10が通過範囲決定手段の一例に相当し、LCD16が表示部の一例に相当し、制御プログラム11aが入力制御プログラムの一例に相当し、k/2が所定値の一例に相当する。
【0059】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0060】
例えば、上記実施形態では、全ての反応領域30を同じ方向へ移動または拡大をしていたが、機能毎に、移動または拡大方向を異ならせても良い。
【0061】
図5は、変形例のMFP1において、タッチパネル17の検出領域17aに設定される反応領域30を破線で図示し、LCD16の表示面16aに表示されるボタン画要素31を実線で図示した図であり、図2に対応する図である。図5に示す例では、各反応領域30は、検出領域17a内において、機能毎にまとめて配置されている。すなわち、コピー機能に関する処理が割り当てられた反応領域30と、FAX機能に関する処理が割り当てられた反応領域30と、プリンタ機能に関する処理が割り当てられた反応領域30とは、互いに離れた位置に配置される。
【0062】
いずれかの反応領域30が入力媒体28により操作されると、変形例のMFP1は、当該反応領域30に割り当てられた処理と同一の機能に関する処理が割り当てられた反応領域30を全て、操作された反応領域30と共に、同じ方向へ移動または拡大する。例えば、図5(a)に示すように、プリンタ機能に関する処理が割り当てられた反応領域30が操作される場合、変形例のMFP1は、プリンタ機能に関する処理が割り当てられた反応領域30のみを同一方向に移動または拡大する。
【0063】
この変形例によれば、ある機能を使用しようとする操作者は、その機能に関する処理が割り当てられた反応領域30を1つ操作することで、当該機能に関する他の反応領域30も、自身に近づく方向へ移動または拡大させることができるので、操作性が良い。また、1台のMFP1を複数人が使用する場合において、各人がそれぞれ別機能を使用している場合を想定すると、各人は、それぞれ別の方向から、MFP1のタッチパネル17を操作する可能性が高い。そのような場合においても、変形例のMFP1によれば、反応領域30は、機能毎に、その機能を使用する操作者のいる方向へ向かって移動または拡大することになるから、各人にとって操作性が良い。なお、この変形例のMFP1が実行する入力制御処理は、図4に示す入力制御処理のS412において、機能毎に反応領域30を移動または拡大する、という点において実施形態の入力制御処理と異なり、他は同じであるため、図示および詳細な説明は省略する。
【0064】
また、上記実施形態では、入力媒体28の接近または接触を検出可能な静電容量方式のタッチパネル17を用いるものとして説明したが、入力媒体28の接触のみを検出するタッチパネル17を用いてもよい。また、入力媒体の接近または接触を赤外線や電界で検知する方式のタッチパネルを用いても良い。
【0065】
また、上記実施形態においては、「左上」、「左下」、「右上」、「右下」の4方向のうち、いずれの方向の反応枠ライン30a上を通過して、入力媒体28が反応領域30内に進入したかを決定していたが、さらに細分化された方向の中から、決定するように構成しても良い。また、ここで言う「方向」は、タッチパネル17の検出領域17aに平行な二次元平面上の方向を表す指標となるものであれば良く、例えばX方向(図1(b))を基準の0度とした場合の角度として表されるものであっても良い。
【0066】
また、上記実施形態では、入力媒体28がいずれの方向の境界を通過して反応領域30内に進入したかを、2辺の反応枠ライン30aを特定することにより決定していた。しかしながら、これに代えて、静電容量方式のタッチパネル17で検出可能な電極容量変化の大小に基づいて方向を決定しても良い。例えば、反応領域30内に入力媒体28が接触している場合、その接触位置において、電極容量の変化は最大となり、入力媒体28がタッチパネル17から離隔するに従って、検出される電極の容量変化は小さくなる。よって、その電極の容量変化が小さくなる方向を、入力媒体28が通過した境界の方向として決定することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 MFP
11 CPU
11a 入力制御プログラム
16 LCD
16a 表示面
17 タッチパネル
17a 検出領域
28 入力媒体
30 反応領域
31 ボタン画要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力媒体により検出領域内が操作されると、その操作位置を検出するタッチパネルと、
前記検出領域内に反応領域を設定する設定手段と、
前記入力媒体が、前記設定手段により設定された前記反応領域の境界上を通過して当該反応領域内を操作した場合、その操作された反応領域に対していずれの方向に位置する境界上を通過して前記入力媒体が当該反応領域内に進入したかを、前記タッチパネルの検出結果に基づいて決定する方向決定手段と、
前記方向決定手段により決定した方向へ、前記反応領域を移動または拡大する領域変形手段とを備える入力装置。
【請求項2】
前記設定手段は、複数の反応領域を前記検出領域内に設定するものであり、
前記領域変形手段は、前記複数の反応領域のいずれかが前記入力媒体により操作される場合、前記複数の反応領域を同じ方向へ移動または拡大させるものである請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
前記設定手段は、複数の反応領域を前記検出領域内に設定するものであり、
前記複数の反応領域は、それぞれ、前記入力装置が実行可能な機能に関する処理が割り当てられたものであって、
前記領域変形手段は、前記複数の反応領域のうちのいずれかが前記入力媒体により操作される場合、当該反応領域に割り当てられた処理と同一の機能に関する処理が割り当てられた反応領域を、前記入力媒体により操作された反応領域と共に、同じ方向へ移動または拡大する請求項1記載の入力装置。
【請求項4】
前記タッチパネルが重ねられる表示面に画像を表示する表示部と、
前記表示面における前記反応領域内に、当該反応領域に割り当てられている処理に対応したボタン画要素を表示する表示制御手段とを備え、
前記領域変形手段は、移動後または拡大後の反応領域が、当該反応領域に割り当てられている処理とは異なる処理に対応したボタン画要素の表示領域と重ならないように、前記反応領域を移動または拡大する請求項1から3のいずれかに記載の入力装置。
【請求項5】
前記タッチパネルは、前記入力媒体が接近または接触した位置を前記操作位置として検出可能なタッチパネルであって、
前記設定手段により設定される前記反応領域の境界のうち、前記入力媒体が通過した境界を、前記タッチパネルの検出結果に基づいて特定する境界特定手段と、
前記境界特定手段により特定された境界内の反応領域が、前記入力媒体により操作されたかを、前記タッチパネルの検出結果に基づいて判断する判断手段とを備え、
前記領域変形手段は、前記判断手段により、前記特定された境界内の反応領域が操作されたと判断された場合に、前記反応領域の移動または拡大を実行する請求項1から4のいずれかに記載の入力装置。
【請求項6】
前記入力媒体の接近または接触が検出された前記境界内の幅を表す幅情報を、前記タッチパネルの検出結果に基づいて取得する通過範囲取得手段を備え、
前記境界特定手段は、
前記通過範囲取得手段により取得した前記幅情報が所定値以上である場合、その境界を、前記入力媒体が通過した境界として特定する請求項5記載の入力装置。
【請求項7】
入力媒体により検出領域内が操作されるとその操作位置を検出するタッチパネルを備えた入力装置において実行される入力制御プログラムであって、
前記入力装置を、
前記検出領域内に反応領域を設定する設定手段と、
前記入力媒体が、前記設定手段により設定された前記反応領域の境界上を通過して当該反応領域内を操作した場合、その操作された反応領域に対していずれの方向に位置する境界を通過して前記入力媒体が当該反応領域内に進入したかを、前記タッチパネルの検出結果に基づいて決定する方向決定手段と、
前記方向決定手段により決定した方向へ、前記反応領域を移動または拡大する領域変形手段として機能させる入力制御プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−134120(P2011−134120A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293223(P2009−293223)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】