説明

入力装置及びモード切替方法

【課題】アプリケーションが有するモードをポインティング・デバイスを移動させずに切り替えることができ、かつ、モード切替時の操作性を向上させること。
【解決手段】先端部分が軸筒に押し込まれると第1のノックが発生し、第1のノックが発生後に先端部分が軸筒から引き出されると第2のノックが発生するダブルノック式のノック部を備えるポインティング・デバイスを用いる入力装置100であって、ポインティング・デバイスとの接触位置での荷重を検出可能なセンサを有する入力装置100において、検出部106は、第1のノック又は第2のノックを検出し、切替部108は、第1のモード及び第2のモードを有するアプリケーションにおいて、第1のモード時に第1のノックを検出した場合には第1のモードから第2のモードに切り替え、第1のノックを検出した後に第2のノックを検出した場合には第2のモードから第1のモードに切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置及びモード切替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネルとスタイラスペン等のポインティング・デバイスとを有するペン入力システムが検討されている。ペン入力システムにおいて、ペン入力(手書き入力)アプリケーションを利用する際、複数の異なるモード(例えば、鉛筆モード及び消しゴムモード等)を切り替えて使用するために、例えば、画面上に表示された操作パレットで各モードを選択する。このようなペン入力システムでは、ユーザは、モードを切り替える度に、画面上の操作パレットに対応する位置までポインティング・デバイスをタッチパネル上で移動させなければならず、時間及び手間が掛かる。
【0003】
そこで、例えば、ポインティング・デバイスであるペンにスイッチを備え、そのスイッチが押下されることで、モードを切り替えるペン入力システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、特許文献1に開示されたペン入力システムでは、ペン(ポインティング・デバイス)とタブレット(タッチパネルを備えるタブレット)との間の通信に用いる電波の周波数をモード毎に変わる。そして、ペンに備えられたスイッチを押下することにより、電波の周波数を切り替えることで、モードの切替を行う。
【0004】
また、例えば、ポインティング・デバイスであるペンのペン先に圧力センサを備え、ペン先に加わる圧力(つまり、筆圧)を複数レベルで検知する装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この装置では、検知した複数レベルの圧力と複数のモードとを1対1で対応付けられる。そして、ペン先で検知された圧力がケーブル経由でタブレットに伝達されることで、検知された圧力に対応するモードに切り替えられる。
【0005】
これらの従来技術によれば、ポインティング・デバイスを操作パレットへ移動させることなく、モードを切り替えることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−200131号公報
【特許文献2】特開平4−353918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術では、ポインティング・デバイスであるペンにスイッチを備えたり、ペン先に圧力センサを備えたりする必要がある。さらに、ポインティング・デバイスからタッチパネル等を備えるタブレットへの情報(電波又は圧力レベル)を伝達するための通信回路が必要となる。すなわち、ポインティング・デバイスを移動させずにモードを切り替えるには、モード切替処理に必要な回路(スイッチ又は圧力センサ)及び通信デバイスが必要となるため、ポインティング・デバイスでのモード切替処理が必要になるとともに、ポインティング・デバイスはより高価になる。
【0008】
さらに、特許文献2のように、複数レベルの圧力と複数のモードとを1対1で対応付ける場合、ポインティング・デバイスであるペンのペン先に加わる圧力(筆圧)の加減によってはユーザが意図しないモード切替が発生する場合があり得る。すなわち、特許文献2では、互いに異なるモードを切り替える際の操作性(筆圧加減)が悪いという課題が発生する。
【0009】
本発明の目的は、アプリケーションが有するモードをポインティング・デバイスを移動させずに切り替えることができ、かつ、モード切替時の操作性を向上させることができる入力装置及びモード切替方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の入力装置は、先端部分が軸筒に押し込まれると第1のノックが発生し、前記第1のノックの発生後に前記先端部分が前記軸筒から引き出されると第2のノックが発生するダブルノック式のノック部を備えるポインティング・デバイスを用いる入力装置であって、前記ポインティング・デバイスとの接触位置での荷重を検出可能なセンサを有する前記入力装置において、前記荷重の時間変化と、前記第1のノックにおける前記荷重の時間変化パターンとを比較することにより、前記第1のノックを検出する第1の検出手段と、前記荷重の時間変化と前記第2のノックにおける前記荷重の時間変化パターンとを比較することにより、前記第2のノックを検出する第2の検出手段と、第1のモード及び第2のモードを有するアプリケーションにおいて、前記第1のモード時に前記第1のノックが検出された場合には前記第1のモードから前記第2のモードに切り替え、前記第1のノックの検出後に前記第2のノックが検出された場合には前記第2のモードから前記第1のモードに切り替える切替手段と、を具備する構成を採る。
【0011】
本発明のモード切替方法は、先端部分が軸筒に押し込まれると第1のノックが発生し、前記第1のノックの発生後に前記先端部分が前記軸筒から引き出されると第2のノックが発生するダブルノック式のノック部を備えるポインティング・デバイスを用いる入力装置であって、前記ポインティング・デバイスとの接触位置での荷重を検出可能なセンサを有する前記入力装置におけるモード切替方法であって、前記荷重の時間変化と、前記第1のノックにおける前記荷重の時間変化パターンとを比較することにより、前記第1のノックを検出する第1の検出ステップと、前記荷重の時間変化と前記第2のノックにおける前記荷重の時間変化パターンとを比較することにより、前記第2のノックを検出する第2の検出ステップと、第1のモード及び第2のモードを有するアプリケーションにおいて、前記第1のモード時に前記第1のノックが検出された場合には前記第1のモードから前記第2のモードに切り替え、前記第1のノックの検出後に前記第2のノックが検出された場合には前記第2のモードから前記第1のモードに切り替える切替ステップと、を具備する構成を採る。
【発明の効果】
【0012】
アプリケーションが有するモードをポインティング・デバイスを移動させずに切り替えることができ、かつ、モード切替時の操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係るダブルノック式スタイラスペンにおけるノック操作を示す図
【図2】本発明の一実施の形態に係る入力装置の構成を示すブロック図
【図3】本発明の一実施の形態に係るノック操作時における荷重の時間変化を示す図
【図4】本発明の一実施の形態に係るノック操作の検出アルゴリズムの一例を示す図
【図5】本発明の一実施の形態に係る入力装置におけるモード切替処理の流れを示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0015】
本実施の形態に係るペン入力システムは、ポインティング・デバイス(スタイラスペン)と、本発明に係る入力装置とを備える。また、本発明に係る入力装置は、ポインティング・デバイスとの接触位置での荷重を検出可能なセンサ(例えば、感圧式タッチパネル)を備える。
【0016】
ここで、スタイラスペン(ポインティング・デバイス)は、ダブルノック式のノック部(又はノック機構ともいう。例えば、特開昭60−54896号公報参照)を具備する。
【0017】
具体的には、図1Aに示すように、スタイラスペンは、軸筒と、先端部分とから構成される。また、図1Aに示すスタイラスペンのノック部はカム及びバネを備え(図示せず)、先端部分に荷重が加わるとバネの力によって先端部分が軸筒内に押し込まれる。また、スタイラスペンでは、先端部分に加わる荷重が或る閾値を超えると、図1Bに示すように、第1のノックが発生する。また、図1Bに示す第1のノックが発生した後に先端部分が軸筒から引き出されると、図1Cに示すように第2のノックが発生する。すなわち、スタイラスペンは、先端部分が軸筒に押し込まれると第1のノックが発生し、第1のノックの発生後に先端部分が軸筒から引き出されると第2のノックが発生するダブルノック式のノック部を備える。
【0018】
そして、本実施の形態に係るペン入力システムでは、図1に示すスタイラスペンの先端部分を、本発明に係る入力装置が有するタッチパネルに接触させることにより、ペン入力処理を行う。
【0019】
また、以下の説明では、上記ペン入力システムを用いるアプリケーションは、第1のモード及び第2のモードを有する。
【0020】
図2は、本実施の形態に係る入力装置の構成を示すブロック図である。図2に示す入力装置100において、入力部101は、タッチパネル(例えば感圧式タッチパネル)であり、スタイラスペン(ポインティング・デバイス)とタッチパネルとの接触を検知する。ここで、タッチパネルは、スタイラスペン(ポインティング・デバイス)との接触位置での荷重を検出可能なセンサである。そして、入力部101は、スタイラスペンとタッチパネルとの接触の検知を示す情報を取得部102に出力する。
【0021】
取得部102は、スタイラスペンとタッチパネルとの接触の検知を示す情報が入力部101から入力された場合、スタイラスペンの先端部分に加わる荷重(タッチパネルにかかる筆圧)をタッチパネルから取得する。そして、取得部102は、取得した荷重を示す荷重データを、記憶部103及び判定部105に出力する。
【0022】
記憶部103は、取得部102から入力される荷重データを順次記憶し、荷重データの履歴(過去の荷重データ)を一時的に保持する。
【0023】
管理部104は、後述する判定部105での第1のノック及び第2のノックの検出結果を用いて、現時点で第1のノック(第1のイベント)が検出された状態であるか否かを管理する。具体的には、管理部104は、判定部105で第1のノックが検出された場合(スタイラスペンの先端部分が押し込まれた状態。例えば図1B)、第1のノック(第1のイベント)が検出された状態(以下、第1イベント検出状態という)として現時点の状態(イベント状態)を管理する。一方、管理部104は、第1のノックの検出後に判定部105で第2のノックが検出された場合(スタイラスペンの先端部分が引き上げられた状態。例えば図1A又は図1C)、第1のノック(第1のイベント)が検出されていない状態(以下、第1イベント未検出状態)として現時点の状態(イベント状態)を管理する。
【0024】
判定部105は、タッチパネルで検出される、スタイラスペンの先端部分に加わる荷重の時間変化に基づいて、第1のノック及び第2のノックを検出する。そして、判定部105は、管理部104で管理されているイベント状態に応じて、切替部108に対してモードの切替の指示を行うか否かを判定する。また、判定部105は、検出部106及び切替判定部107を内部に備える。
【0025】
判定部105の検出部106は、取得部102から入力される荷重データ(最新の荷重)及び記憶部103から読み出した荷重データ(過去の荷重データ)を用いて、タッチパネルで検出された荷重の時間変化と、第1のノックにおける荷重の時間変化パターンとを比較することにより、第1のノック(図1B)を検出する。すなわち、検出部106は、タッチパネルで検出された荷重の時間変化と、第1のノックにおける荷重の時間変化パターンとが一致する場合には、タッチパネルで検出された荷重の時間変化に相当する操作が第1のノックであると判断する。検出部106は、第1の検出部(図示せず)を有し、第1のノックを第1の検出部で検出するようにしてもよい。
【0026】
また、検出部106は、取得部102から入力される荷重データ(最新の荷重)及び記憶部103から読み出した荷重データ(過去の荷重)を用いて、タッチパネルで検出された荷重の時間変化と、第2のノックにおける荷重の時間変化パターンとを比較することにより、第2のノック(図1C)を検出する。すなわち、検出部106は、タッチパネルで検出された荷重の時間変化と、第2のノックにおける荷重の時間変化パターンとが一致する場合には、タッチパネルで検出された荷重の時間変化に相当する操作が第2のノックであると判断する。検出部106は、第2の検出部(図示せず)を有し、第2のノックを第2の検出部で検出するようにしてもよい。
【0027】
そして、検出部106は、第1のノック及び第2のノックの検出結果を管理部104及び切替判定部107に出力する。
【0028】
判定部105の切替判定部107は、管理部104が管理するイベント状態及び検出部106から入力される検出結果に基づいて、アプリケーションのモードが有する第1のモード及び第2のモード切替を行うか否かを判定する。具体的には、切替判定部107は、第1のモード及び第2のモードを有するアプリケーションにおいて、第1のモード時(例えば、第1イベント未検出状態におけるモード時)に第1のノックが検出された場合には第1のモードから第2のモードへの切替を切替部108に指示する。また、切替判定部107は、第1のノックの検出後(第1イベント検出状態)に第2のノックが検出された場合には、第2のモードから第1のモードへの切替を切替部108に指示する。
【0029】
切替部108は、判定部105の切替判定部107からの指示に従って、アプリケーションが有する第1のモード及び第2のモードを切り替える。具体的には、切替部108は、第1のモード時に検出部106で第1のノックが検出された場合には第1のモードから第2のモードに切り替え、第1のノックの検出後に検出部106で第2のノックが検出された場合には第2のモードから第1のモードに切り替える。
【0030】
次に、図3に、スタイラスペンの先端部分における荷重(筆圧)の時間変化を示す図を示す。
【0031】
なお、以下の説明では、入力装置100を用いるアプリケーションの一例として描画アプリケーションを使用する場合について説明する。また、描画アプリケーションが有する第1のモードを鉛筆モードとし、第2のモードを消しゴムモードとする。また、図3に示すように、第1のノックが検出される前の状態(図1Aに示すスタイラスペンの先端部分が押し込まれていない状態)、つまり、イベント状態が第1イベント検出状態である場合におけるアプリケーションのモードを第1のモード(鉛筆モード)とする。
【0032】
スタイラスペンの先端部分を入力装置100が備えるタッチパネルに接触させて、スタイラスペンの先端部分を軸筒内に押し込み、荷重を加え続けると(図1Aの状態から図1Bの状態へ推移させると)、第1のノックが発生する。このとき、取得部102で取得される荷重の時間変化は、図3に示すように、スタイラスペンの先端部分が押し込まれていない状態(図1A)での荷重Z付近から、先端部分が押し込まれた状態(図1B)での荷重Z付近まで増加するようになる。ただし、図3に示すように、第1のノックの発生時には荷重Z付近から荷重Z付近に増加する途中で荷重が急激に落ち込む。換言すると、図3に示すように、第1のノックの発生時には荷重の時間変化はパルス的波形(負の方向のパルス的波形)となる。
【0033】
また、第1のノックの発生後(図1B)において、スタイラスペンの先端部分をタッチパネルに接触させたまま、軸筒内から引き上げると(図1Bの状態から図1Cの状態へ推移させると)、第2のノックが発生する。このとき、取得部102で取得される荷重の時間変化は、図3に示すように、スタイラスペンの先端部分が押し込まれた状態(図1B)での荷重Z付近から、先端部分が引き上げられた状態(図1C)での荷重Z付近まで減少するようになる。ただし、図3に示すように、第2のノックの発生時には荷重Z付近から荷重Z付近に減少する途中で荷重が急激に増加する。換言すると、図3に示すように、第2のノックの発生時には荷重の時間変化はパルス的波形(正の方向のパルス的波形)となる。
【0034】
そこで、入力装置100の判定部105の検出部106は、取得部102で取得した荷重の時間変化が、図3に示す第1のノック時の荷重の時間変化パターン(筆圧変化パターン)と一致する場合には第1のノックを検出する。同様に、検出部106は、取得部102で取得した荷重の時間変化が、図3に示す第2のノック時の荷重の時間変化パターン(筆圧変化パターン)と一致する場合には第2のノックを検出する。
【0035】
そして、切替判定部107は、図3に示すように、第1のモード(鉛筆モード)時に検出部106が第1のノックを検出した場合には第1のモード(鉛筆モード)から第2のモード(消しゴムモード)への切替を切替部108に指示する。また、切替判定部107は、図3に示すように、第1のノックの検出後、つまり、第2のモード(消しゴムモード)において検出部106が第2のノックを検出した場合には、第2のモード(消しゴムモード)から第1のモード(鉛筆モード)への切替を切替部108に指示する。
【0036】
つまり、入力装置100は、第1のモード(鉛筆モード)時にスタイラスペンの先端部分の押し込み操作(第1のノックを発生させる操作)を検出すると、第1のモード(鉛筆モード)から第2のモード(消しゴムモード)への切替を行う。そして、入力装置100は、スタイラスペンの先端部分の押し込み操作後(第1のノックの発生後)に、スタイラスペンの先端部分の引き上げ操作(第2のノックを発生させる操作)を検出すると、第2のモード(消しゴムモード)から第1のモードへの切替を行う。すなわち、入力装置100は、図3に示す第1のノックを検出すると、第1のモード(鉛筆モード)から第2のモード(消しゴムモード)に切り替え、第2のモードの状態で第2のノックを検出すると、再び第1のモード(鉛筆モード)に戻す。
【0037】
換言すると、入力装置100の切替部108では、図3に示すように、第1のノックが検出されるまでの期間、及び、第2のノックが検出された後の期間を、第1のモード(鉛筆モード)期間とする。これに対して、切替部108は、第1のノックが検出されてから第2のノックが検出されるまでの期間を、第2のモード(消しゴムモード)期間とする。
【0038】
すなわち、入力装置100では、第1のノック及び第2のノックが、第1のモードと第2のモードとの切替のタイミング(トリガ)となる。よって、ユーザは、第1のノック又は第2のノックの発生を認識することで、第1のモード(鉛筆モード)と第2のモード(消しゴムモード)との切替タイミングを確実に認識することが可能となる。
【0039】
次に、一例として、検出部106における第1のノックの検出アルゴリズムについて図4を用いて説明する。ただし、検出部106における第1のノック(又は第2のノック)の検出アルゴリズムは、図4で説明する検出アルゴリズムに限らない。すなわち、入力装置100で取得された荷重の時間変化が、図3に示す第1のノック(又は第2のノック)時の荷重の時間変化パターンと一致するか否かを判断できる検出アルゴリズムであればよい。
【0040】
図4において、第1のノック発生時における荷重の落ち込み量(減少量)を判断するための閾値をΔZdownとし、第1のノック発生時における荷重の落ち込みからの戻り量(増加量)を判断するための閾値をΔZupとし、第1のノック発生時における荷重の落ち込み時の下限値を判断するための閾値をΔZlowとする。
【0041】
具体的には、検出部106は、取得部102で取得した最新の荷重データ及び記憶部103で記憶されている過去の荷重データに基づいて、荷重の落ち込み量が閾値ΔZdownよりも大きく(条件(1))、かつ、荷重の落ち込みからの戻り量が閾値ΔZupよりも大きく(条件(2))、かつ、荷重の落ち込み時の下限値が閾値ΔZlowよりも大きい場合(条件(3))、荷重の時間変化を第1のノック時の荷重の時間変化であると判断する。つまり、検出部106は、タッチパネルで検出された荷重の時間変化が上記条件(1)〜(3)の全て満たす場合、第1のノックを検出する。
【0042】
例えば、図4では、時刻(t−2)における荷重Z(t−2)と時刻(t−1)における荷重Z(t−1)との差がΔZdownよりも大きいとする。すなわち、荷重の落ち込み量(Z(t−2)−Z(t−1))>ΔZdownとなり、条件(1)を満たす。
【0043】
また、図4では、時刻tにおける荷重Z(t)と時刻(t−1)における荷重Z(t−1)との差がΔZupよりも大きいとする。すなわち、荷重の戻り量(Z(t)−Z(t−1))>ΔZupとなり、条件(2)を満たす。
【0044】
また、図4では、時刻(t−1)における荷重Z(t−1)はΔZlowよりも大きいとする。すなわち、荷重の落ち込み時の下限値Z(t−1)>ΔZlowとなり、条件(3)を満たす。
【0045】
よって、上述した条件(1)〜(3)を全て満たすため、検出部106は、図4に示す時刻(t−2)〜時刻tにおける荷重Z(t−2)〜荷重Z(t)の時間変化を、第1のノック時の荷重の時間変化パターンであると判断する。つまり、検出部106は、図4に示す時刻tにおいて第1のノックを検出する。
【0046】
なお、条件(3)は、例えば図4においてZ(t−1)が0(タッチパネルから離れた状態)になるダブルタップ操作をノック操作として誤検出しないために設けた条件である。ただし、実際には、ユーザは第1のノックと同一時間(図4では時刻(t−2)〜時刻tの期間)でダブルタップ操作を行うことは不可能に近い。よって、図4において、条件(1)及び(2)を満たし、条件(3)を満たさない場合(つまり、条件(3)を省略した場合)でも、検出部106は、その荷重の時間変化を第1のノック時の荷重の時間変化であると判断してもよい。
【0047】
次に、入力装置100におけるモード切替処理について詳細に説明する。図5は、入力装置100におけるモード切替処理の流れを示す。
【0048】
図5において、ステップ(以下、STという)101では、取得部102は、タッチパネルで検出される、スタイラスペンの先端部分に加わる荷重(筆圧)を示す荷重データを取得する。ST102では、取得部102は、ST101で荷重データを取得したか否か、つまり、荷重データが存在するか否かを判断する。ST101で取得部102が荷重データを取得していない場合、つまり、ST101で取得された荷重データが無い場合(ST102:NO)、ST101の処理に戻る。
【0049】
一方、ST101で取得部102が荷重データを取得した場合、つまり、ST101で取得された荷重データが有る場合(ST102:YES)、記憶部103は、ST101で取得された荷重データを記憶する。
【0050】
ST104では、判定部105の検出部106は、記憶部103に記憶されている過去の荷重データ及び取得部102で取得された最新の荷重データを読み出す。ST105では、判定部105の切替判定部107は、管理部104で管理されているイベント状態を取得する。ST106では、切替判定部107は、ST105で取得したイベント状態が第1イベント検出状態(つまり、図1Bに示す第1のノックが発生した状態)であるか否かを判断する。ここで、第1イベント検出状態は、図3に示す第1のノックが検出されてから第2のノックが検出されるまでの第2のモード時であり、第1イベント未検出状態は、図3に示す第1のノックが検出される前の第1のモード時である。
【0051】
ST105で取得したイベント状態が第1イベント検出状態ではない場合(ST106:NO)、つまり、第1イベント未検出状態(第1のモード)である場合、ST107では、検出部106は、第1のノック(第1のイベント)の検出処理を行う。ST108では、検出部106は、ST107において第1のノック(第1のイベント)が検出されたか否かを判断する。ST107において第1のノックが検出されない場合(ST108:NO)、ST101の処理に戻る。
【0052】
一方、ST107において第1のノックが検出された場合(ST108:YES)、ST109では、管理部104は、管理しているイベント状態を第1イベント未検出状態から第1イベント検出状態に更新する。
【0053】
ST110では、切替判定部107は、第1のモードから第2のモードへの切替を切替部108に指示し、切替部108は、アプリケーションにおけるモードを、第1のモードから第2のモードへ切り替える。そして、ST101の処理に戻る。すなわち、入力装置100は、第1イベント未検出状態(ST106:NO)に相当する第1のモード時に、第1のノックを検出した場合(ST108:YES)には、第1のモードから第2のモードに切り替える。
【0054】
一方、ST105で取得したイベント状態が第1イベント検出状態(第2のモード)の場合(ST106:YES)、ST111では、検出部106は、第2のノック(第2のイベント)の検出処理を行う。ST112では、検出部106は、ST111において第2のノック(第2のイベント)が検出されたか否かを判断する。ST111において第2のノックが検出されない場合(ST112:NO)、ST101の処理に戻る。
【0055】
一方、ST111において第2のノックが検出された場合(ST112:YES)、ST113では、管理部104は、管理しているイベント状態を第1イベント検出状態から第1イベント未検出状態に更新する。
【0056】
ST114では、切替判定部107は、第2のモードから第1のモードへの切替を切替部108に指示し、切替部108は、アプリケーションにおけるモードを、第2のモードから第1のモードへ切り替える。そして、ST101の処理に戻る。すなわち、入力装置100は、第1のノックの検出後の状態である第1イベント検出状態(ST106:YES)に相当する第2のモード時に、第2のノックを検出した場合(ST112:YES)には、第2のモードから第1のモードに切り替える。
【0057】
このように、本実施の形態に係る入力装置100は、ダブルノック式のノック部を備えるスタイラスペンの第1のノック及び第2のノックを検出することで、アプリケーションが有するモードを切り替える。これにより、入力装置100は、例えば、描画アプリケーションが有する鉛筆モード(第1のモード)と消しゴムモード(第2のモード)とを、スタイラスペンのノック操作を行うだけで切り替えることができる。つまり、入力装置100では、スタイラスペンの操作パレットへの移動が不要となり、描画効率を向上させることが可能となる。
【0058】
また、描画アプリケーションにおいて、例えば、画面上に文字等を描画する鉛筆モード(入力モード)、及び、描画された文字等を消去する消しゴムモード(消去モード)は、処理機能が相反する処理を行うモードである。また、スタイラスペンに加わる荷重(図3では荷重Z)が小さい操作(図1A又は図1Cに示す先端部分が引き上げられた状態でのスタイラスペンの操作)、及び、スタイラスペンに加わる荷重(図3では荷重Z)が大きい操作(図1Bに示す先端部分が押し込まれた状態でのスタイラスペンの操作)は、ユーザが受ける負荷(ユーザが加えるべき筆圧の大きさ)が相反する操作である。つまり、入力装置100では、処理機能が相反する2つのモードと、ユーザが受ける負荷が相反する2つの操作とをそれぞれ対応付けている。よって、ユーザは、処理機能が相反する処理を、ユーザが受ける負荷が相反する2つの操作により区別して切り替えることで、直感的なスタイラスペンの操作が可能となり、ユーザの操作性を向上させることができる。
【0059】
また、スタイラスペンの先端部分が押し込まれた状態(図1B)では、スタイラスペンの先端部分が引き上げられた状態(図1A又は図1C)よりも、入力装置100で検出sれる荷重圧はより大きくなる。すなわち、スタイラスペンの先端部分が押し込まれた状態(図1B)では、スタイラスペンの先端部分が引き上げられた状態(図1A又は図1C)よりもユーザが加えるべき荷重(筆圧)はより大きくなる。換言すると、スタイラスペンの先端部分が引き上げられた状態(図1A又は図1C)では、スタイラスペンの先端部分が押し込まれた状態(図1B)よりもユーザが加えるべき荷重(筆圧)は少なく済む。
【0060】
よって、入力装置100では、図1A及び図1Cに対応する第1のモードとして、より多く使用されるモードを設定し、図1Bに対応する第2のモードとして第1のモードよりも使用されにくいモードを設定してもよい。これにより、ユーザは、より多く使用される第1のモードでは、余分な筆圧を加えることなく(ユーザに与える負荷を少なくして)スタイラスペンを操作することができ、使用されにくい第2のモードでは、第1のモードよりも大きな筆圧を加えてモード切替を行えばよい。これにより、ユーザに与える肉体的負荷(大きな荷重(例えば図3に示す荷重Z)を加え続ける操作)を低減することができる。ただし、上述したように、入力装置100では、第1のノック及び第2のノックを検出することで、第1のモードと第2のモードとの切替を行う。つまり、ユーザは、第1のノック又は第2のノックをモード切替のトリガとして認識することができるため、第1のモードと第2のモードとの切替のタイミングを確実に把握してモード間の切替を行うことができる。これより、ユーザは直感的な操作が可能となり、ユーザの操作性を向上させることができる。
【0061】
このようにして、本実施の形態によれば、入力装置は、ダブルノック式スタイラスペン(ポインティング・デバイス)に加えられる荷重の時間変化に基づいて、アプリケーションが有する第1のモード及び第2のモードを切り替える。すなわち、本実施の形態に係る入力装置では、モードの切替は、ダブルノック式スタイラスペンでの2つのノック操作に対応付けられている。これにより、ユーザは、スタイラスペン(ポインティング・デバイス)に対してノック操作(ノックを発生させる操作)を行うだけで、モード切替を行うことができる。また、ユーザは、ノック操作(第1のノック又は第2のノック)をモード切替のタイミング(トリガ)として確実に認識することができる。よって、本実施の形態によれば、アプリケーションが有するモードをポインティング・デバイスを移動させずに切り替えることができ、かつ、モード切替時の操作性を向上させることができる。
【0062】
なお、第1のノック及び第2のノックを発生させるためのダブルノック式スタイラスペンの構造は例えばゴム等、バネ以外の材料であってもよく、図3に示す第1のノック時及び第2のノック時における荷重の時間変化の特徴を有するものであればその形状は問わない。さらにはスタイラスペンに限らず、社会に広く普及しているダブルノック式ボールペンがペン先と反対側に備えているノック部を、本実施の形態におけるポインティング・デバイスとして用いてもよい。すなわち、本発明ではダブルノック式のノック部(ノック機構)を備える物をポインティング・デバイスとして用いるだけでよく、モード切替のための回路又は通信デバイスは不要となる。また、本発明では、ダブルノック式のノック部(ノック機構)を備える物をポインティング・デバイスとして用いればよく、入力装置が備えるタッチパネルとしては、例えば従来の感圧式タッチパネルをそのまま用いることができる。
【0063】
また、上記実施の形態では、描画アプリケーションにおいて、第1のモードを鉛筆モードとし、第2のモードを消しゴムモードとする場合について説明した。しかし、モード切替対象となるモードは、鉛筆モード及び消しゴムモードに限らない。例えば、描画アプリケーションにおいて、第1のモードを黒色ペンモードとし、第2のモードを赤色ペンモードとしてもよい。これにより、ポインティング・デバイスを移動させることなく2色の色ペンモードを使用することができる。また、ペンモードにおける色の種類は黒色及び赤色に限らない。
【0064】
または、描画アプリケーションにおいて、第1のモードを黒色ペンモードとし、第2のモードを蛍光ペンモードとしてもよい。例えば、黒色ペンモードを使用して入力した文字に対して、蛍光ペンモードでマーキングする場合でも、ユーザは、ポインティング・デバイスを移動させることなく黒色ペンモードから蛍光ペンモードにモードを切り替えて蛍光ペンモードを使用することができる。
【0065】
または、描画アプリケーションにおいて、第1のモードを黒色ペンモードとし、第2のモードを印鑑(押印)モードとしてもよい。例えば、黒色ペンモードを使用して文字を入力した後に、印鑑(押印)モードで押印する場合でも、ユーザは、ポインティング・デバイスを移動させることなく黒色ペンモードから印鑑(押印)モードにモードを切り替えて印鑑モードを使用することができる。
【0066】
また、上記実施の形態では、アプリケーションとして描画アプリケーション(手書き入力アプリケーション)を用いる場合について説明した。しかし、描画アプリケーションに限らず、例えば、あらゆるアプリケーションにおける一般的な操作について本発明を適用してもよい。例えば、第1のモードを通常の操作(例えば、アイコンのドラッグ等)とし、第2のモードをプロパティ表示(例えば、ドラッグしているアイコンに対応するファイルの情報をポップアップ表示)としてもよい。
【0067】
または、第1のモードを通常の操作とし、第2のモードを拡大鏡モード(虫眼鏡モード)としてもよい。これにより、拡大鏡モードを画面上の操作パレットから選択する必要がなく、つまり、ポインティング・デバイスを移動させることなく拡大鏡モードを使用することができる。
【0068】
また、本発明において、入力装置は、ダブルノック式のノック部を備えるポインティング・デバイスにおいて、先端部分が軸筒に押し込まれると発生する第1のイベント(上記実施の形態では第1のノック)、及び、第1のイベントが発生後に先端部分が軸筒から引き出されると発生する第2のイベント(上記実施の形態では第2のノック)を検出することにより、第1のモード及び第2のモードを切り替えればよい。例えば、上記実施の形態では、入力装置が、第2のノック時の荷重の時間変化パターン(例えば、図3)と、実際の荷重の時間変化とを比較することで第2のイベント(第2のノック)を検出する場合について説明した。しかし、入力装置は、第2のノック時の荷重の時間変化パターンを用いずに第2のイベントを検出してもよい。例えば、入力装置は、図3に示す第2のモード時に、荷重(筆圧)が予め設定された閾値を下回ったか否かを判断することにより、第2のイベントを検出してもよい。つまり、入力装置は、パルス的波形を考慮せずに、荷重(筆圧)が或る閾値を下回る動作を第2のイベントとして検出する。この場合でも、アプリケーションが有するモードをポインティング・デバイスを移動させずに切り替えることができ、かつ、モード切替時の操作性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、例えば、ポインティング・デバイスとの接触位置での荷重を検出可能なセンサを有し、アプリケーションが有する互いに異なるモードの切替を行うペン入力システムに有用である。
【符号の説明】
【0070】
100 入力装置
101 入力部
102 取得部
103 記憶部
104 管理部
105 判定部
106 検出部
107 切替判定部
108 切替部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部分が軸筒に押し込まれると第1のノックが発生し、前記第1のノックの発生後に前記先端部分が前記軸筒から引き出されると第2のノックが発生するダブルノック式のノック部を備えるポインティング・デバイスを用いる入力装置であって、前記ポインティング・デバイスとの接触位置での荷重を検出可能なセンサを有する前記入力装置において、
前記荷重の時間変化と、前記第1のノックにおける前記荷重の時間変化パターンとを比較することにより、前記第1のノックを検出する第1の検出手段と、
前記荷重の時間変化と前記第2のノックにおける前記荷重の時間変化パターンとを比較することにより、前記第2のノックを検出する第2の検出手段と、
第1のモード及び第2のモードを有するアプリケーションにおいて、前記第1のモード時に前記第1のノックが検出された場合には前記第1のモードから前記第2のモードに切り替え、前記第1のノックの検出後に前記第2のノックが検出された場合には前記第2のモードから前記第1のモードに切り替える切替手段と、
を具備する入力装置。
【請求項2】
前記切替手段は、前記第1のノックが検出されるまでの期間及び前記第2のノックが検出された後の期間を前記第1のモード期間とし、前記第1のノックが検出されてから前記第2のノックが検出されるまでの期間を前記第2のモード期間とする、
請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
前記アプリケーションは描画アプリケーションであり、
前記第1のモードは鉛筆モードであり、前記第2のモードは消しゴムモードである、
請求項1記載の入力装置。
【請求項4】
先端部分が軸筒に押し込まれると第1のノックが発生し、前記第1のノックの発生後に前記先端部分が前記軸筒から引き出されると第2のノックが発生するダブルノック式のノック部を備えるポインティング・デバイスを用いる入力装置であって、前記ポインティング・デバイスとの接触位置での荷重を検出可能なセンサを有する前記入力装置におけるモード切替方法であって、
前記荷重の時間変化と、前記第1のノックにおける前記荷重の時間変化パターンとを比較することにより、前記第1のノックを検出する第1の検出ステップと、
前記荷重の時間変化と前記第2のノックにおける前記荷重の時間変化パターンとを比較することにより、前記第2のノックを検出する第2の検出ステップと、
第1のモード及び第2のモードを有するアプリケーションにおいて、前記第1のモード時に前記第1のノックが検出された場合には前記第1のモードから前記第2のモードに切り替え、前記第1のノックの検出後に前記第2のノックが検出された場合には前記第2のモードから前記第1のモードに切り替える切替ステップと、
を具備するモード切替方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−145819(P2011−145819A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4974(P2010−4974)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】