説明

入力装置及び入力装置の製造方法

【課題】単純な構成で、目視される表面側の反射ムラを抑制できる入力装置及び入力装置の製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】一方の面を入力操作面とする加飾フィルム20と、加飾フィルム20の他方の面に積層された透光性の粘着層と、粘着層52を介してを介して一方の面が貼り合わされた第1透明基材30と、第1透明基材30の他方の面に積層された第1透明電極層31と、第1透明電極層31に電気接続された第1引出配線層32と、第1引出配線層32に設けられた第1接続端子33と、第1接続端子33に電気接続されたフレキシブル配線基板60と、を備え、粘着層52に形成された窓状の空隙部55が第1接続端子33と平面視で重なる位置に設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置及び入力装置の製造方法に関し、特に、目視される表面側の反射ムラを抑制できる入力装置及び入力装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透光型の入力装置は、透明基材に透明電極層および透明電極層からの引出配線層が形成されて、操作者の入力操作によって入力座標位置が検知できるように構成され、液晶表示装置等の表示画面と組み合わせることで、メニューの選択やデータの入力をおこなう機能を発揮する。
【0003】
このような透光型の入力装置として静電容量式や抵抗膜式の入力装置が知られている。抵抗膜式の入力装置は、特許文献1に開示されているように、1対の透明基材が空間を設けて対向配置されており、周辺部の絶縁層を介して接合される。各透明基材の対向する面の透光領域には透明電極層が形成され、透光領域を囲む非透光領域には入力情報を出力するための引出配線層が形成されて、外部に電気接続するためのフレキシブル配線基板が接続されている。入力操作面である表面側の透明基材は、柔軟なフィルム状の材料を用いて形成されており、操作者が入力領域の任意の箇所を押圧操作すると、透明基材が変形されて1対の透明電極層が接触し、その接触による抵抗値の変化を読み取ることで入力座標位置を検知することができる。
【0004】
近年、このような入力装置のさらなる薄型化が要求されている。また、入力装置は、電子機器に組み込まれて電子機器の筐体の一部、あるいは操作面の一部として使用されるため、筐体との段差を生じない態様が好まれている。したがって、薄型で、かつ入力装置の表面側には凹凸が無く平坦な入力装置を実現するために、種々の工夫が試みられている。
【0005】
薄型の入力装置に用いられるフレキシブル配線基板は、接続部材を介して圧着されているため、入力装置の表面側に、フレキシブル配線基板の圧着された痕跡が光の反射ムラとして視認される。このムラは入力操作をおこなう透光領域の機能に無関係で、非透光領域のごく一部である。しかしながら、入力装置の機能に影響が無い非透光領域であっても、わずかな凹凸で生じる反射ムラが目立つために、使用者には気になる可能性があった。
【0006】
特許文献2の入力装置では、入力操作面である表面側の凹凸を改善するために、フレキシブル配線基板の厚みに影響されないよう、入力操作面側の透明基材にはフレキシブル配線基板を接続せずに、入力操作面側の透明基材からの導電接続部を設けるとともに対向する他の透明基材の表裏を貫通するスルーホールを設けた。そして、対向する他の透明基材の反対側の面(裏面)にフレキシブル配線基板を接続した。さらに、フレキシブル配線基板が電極による凹凸を有するので、この電極の凹凸が表面側まで転写されないように、前記1対の透明基材を対向配置するための絶縁層に空間部が設けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−21304号公報
【特許文献2】特開2011−8666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、透明基材に設けたスルーホールを介してフレキシブル配線基板を接続することによって表面側の凹凸を改善しているために、このような入力装置は複雑な構成が必要になり、製造工程や必要部材が増加してしまう問題があった。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためのものであり、特に、単純な構成で、目視される表面側の反射ムラを抑制できる入力装置及び入力装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の入力装置は、一方の面を入力操作面とする加飾基材と、前記加飾基材の他方の面に積層された透光性の粘着層と、前記加飾基材に前記粘着層を介して一方の面が貼り合わされた第1透明基材と、前記第1透明基材の他方の面に形成された第1透明電極層と、前記第1透明電極層に電気接続された第1引出配線層と、前記第1引出配線層に設けられた第1接続端子と、前記第1接続端子に電気接続されたフレキシブル配線基板と、を備え、前記粘着層は窓状の空隙部を有し、前記空隙部が前記第1接続端子と平面視で重なる位置に設けられていることを特徴とする。
【0011】
フレキシブル配線基板が入力側の第1透明基材の第1接続端子と接続される構造であり、第1透明基材はフレキシブル配線基板を接続した影響による第1接続端子及びその周囲の領域の歪みを生じる。本発明によれば、その歪みによる応力を粘着層に形成された空隙部が緩和する。また、上記の接続領域に凹凸を生じていても窓状の空隙部で吸収できる。これにより、入力操作面である加飾基材の表面にはフレキシブル配線基板を接続した影響が伝播しない。
【0012】
したがって、単純な構成で、目視される表面側の反射ムラを抑制できる。
【0013】
さらに、前記加飾基材は、窓状に設けられた透光領域と、前記透光領域を囲む非透光領域と、を有し、前記非透光領域を着色する加飾層が設けられてなり、前記加飾層は前記加飾基材の他方の面に形成されていることが好適である。こうすれば、各引出配線層と各接続端子とフレキシブル配線基板とを非透光領域に配置するように加飾層を設けることができるとともに、加飾層を加飾基材の入力操作面とは反対側の面に形成するので、入力装置の表面側を平坦にできる。
【0014】
前記第1透明基材の他方の面と対向するように配置された第2透明基材と、前記第1透明電極層と対向して前記第2透明基材に形成された第2透明電極層と、前記第2透明電極層に電気接続された第2引出配線層と、前記第2引出配線層に設けられた第2接続端子と、を備え、前記第1接続端子と前記第2接続端子とは平面視で所定の間隔になる位置に設けられ、前記フレキシブル配線基板は前記第2接続端子に電気接続されていることが好ましい。こうすれば、対向する透明電極層の双方に電気接続されたフレキシブル配線を有する入力装置が実現できるので、単純な構成で、目視される表面側の反射ムラを抑制できる。
【0015】
前記第2透明基材は、透明樹脂の成形によって形成されてなるとともに、前記フレキシブル配線基板と対向する空間部を有し、前記空間部は、少なくとも前記第1接続端子と平面視で重なる位置に設けられていることが好ましい。透明樹脂の成形であるから、第2透明基材を剛体構造に形成することができる。こうすれば、単純な構造で入力装置を構成できるとともに、表示装置や電子機器との一体化が容易にできる。また、フレキシブル配線基板と対向する空間部を設けているので、第1接続端子でのフレキシブル配線基板の厚みがばらついて厚くなっても逃がすことができる。したがって、確実に、目視される表面側の平坦性を向上できる。
【0016】
さらに、前記空間部が貫通孔であってもよい。こうすれば、貫通孔を利用して、第1接続端子でのフレキシブル配線基板の電気接続を第2透明基材側からおこなうことができるので、確実に、目視される表面側の平坦性を向上できる。
【0017】
あるいは、前記空間部が凹部であってもよい。この場合でも、第1接続端子でのフレキシブル配線基板の厚みが入力面側に影響する心配がなくなるので、確実に、目視される表面側の平坦性を向上できる。
【0018】
前記空隙部が、前記第2接続端子と平面視で重なる位置に設けられていてもよい。前記第1接続端子と前記第2接続端子を平面視で所定の間隔になる位置に並べて配置して、平面視でそれらを含む空隙部を設けることにより、第2接続端子においてもフレキシブル配線基板の厚みが入力面側に影響する心配がなくなるとともに、フレキシブル配線基板の接続が容易になる。
【0019】
本発明の入力装置の製造方法は、一方の面を入力操作面とする加飾基材と、前記加飾基材の他方の面に透光性の粘着層を介して一方の面が貼り合わされた第1透明基材と、前記第1透明基材に設けられた第1透明電極層と、を備える入力装置の製造方法であって、
(a)前記第1透明電極層が設けられた前記第1透明基材の他方の面に、前記第1透明電極層に電気接続された第1引出配線層と、前記第1引出配線層に設けられた第1接続端子と、を形成する工程と、
(b)前記粘着層に空隙部を形成する工程と、
(c)前記加飾基材の他方の面と、前記第1透明基材の一方の面と、を前記粘着層を介して貼り合わせ、前記空隙部を前記第1接続端子と平面視で重なる位置に設ける工程と、
(d)前記第1接続端子に、接続部材を介してフレキシブル配線基板を圧着する工程と、
を含む、ことを特徴とする。
【0020】
フレキシブル配線基板を入力側の第1透明基材の第1接続端子と接続するため、第1接続端子及びその周囲の領域に歪みを生じるが、本発明によれば、その歪みによる応力を粘着層に形成された空隙部が緩和する。また、上記の接続領域に凹凸を生じていても空隙部で吸収できる。これにより、入力操作面側である加飾基材の表面にはフレキシブル配線基板を接続した影響が伝播しない。したがって、単純な構成で、目視される表面側の反射ムラを改善できる。
【0021】
前記(d)の工程において、透明樹脂の成形によって貫通孔を有するように形成してから第2透明電極層が設けられた第2透明基材を、前記第2透明電極層と前記第1透明電極層とが対向するように配置し、前記貫通孔に前記フレキシブル配線基板を圧着する装置が挿入され、前記第1接続端子に、前記接続部材を介して前記フレキシブル配線基板を圧着することが好ましい。こうすれば、第1透明基材の第1接続端子にフレキシブル配線基板を載せた状態で、第2透明基材の空間部からフレキシブル配線基板を圧着できるので、圧着時に表面側が歪まず、また、熱圧着を用いても過度に加熱される心配が無い。
【0022】
さらに、本発明の入力装置の製造方法は、一方の面を入力操作面とする加飾基材と、前記加飾基材の他方の面に透光性の粘着層を介して一方の面が貼り合わされた第1透明基材と、前記第1透明基材と対向して配置された第2透明基材と、前記第1透明基材及び前記第2透明基材の対向する面にそれぞれ設けられた第1透明電極層及び第2透明電極層と、を備える入力装置の製造方法であって、前記第1透明電極層が設けられた前記第1透明基材の他方の面に、前記第1透明電極層に電気接続された第1引出配線層と、前記第1引出配線層に設けられた第1接続端子と、を形成する工程と、前記第2透明基材を透明樹脂の成形によって形成する工程と、前記第2透明基材に第2透明電極層を形成する工程と、前記第2透明電極層に電気接続された第2引出配線層と前記第2引出配線層に設けられた第2接続端子とを形成する工程と、前記第1透明基材と前記第2透明基材とが所定の間隔で対向するように配置され、前記第1接続端子と前記第2接続端子とに、接続部材を介してフレキシブル配線基板を圧着する工程と、前記第1透明基材の一方の面に前記加飾基材を前記粘着層を介して貼り合わせる工程と、を含み、前記粘着層はあらかじめ形成された空隙部を有し、前記空隙部は前記第1接続端子と平面視で重なる位置に設けられている、ことを特徴とする。
【0023】
こうすれば、フレキシブル配線基板を入力側の第1透明基材の第1接続端子と接続するため、第1接続端子及びその周囲の領域に歪みを生じるが、本発明によれば、その歪みによる応力を粘着層に形成された空隙部が緩和する。また、上記の接続領域に凹凸を生じていても空隙部で吸収できる。これにより、入力操作面側である加飾基材の表面にはフレキシブル配線基板を接続した影響が伝播しない。したがって、単純な構成で、目視される表面側の反射ムラを抑制できる。
【0024】
前記第2透明基材には凹部が形成され、前記凹部は前記第1接続端子と平面視で重なる位置に設けられていることが好適である。こうすれば、第1接続端子でのフレキシブル配線基板の厚みがばらついて厚くなっても逃がすことができる。したがって、確実に、目視される表面側の平坦性を向上できる。
【0025】
さらに、前記凹部は前記第2接続端子と平面視で重なる位置に設けられていることが好ましい。こうすれば、第2接続端子においてもフレキシブル配線基板の厚みがばらついて厚くなっても逃がすことができる。したがって、確実に、目視される表面側の平坦性を向上できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の入力装置及び入力装置の製造方法によれば、入力操作面である加飾基材の表面にはフレキシブル配線基板を接続した影響が伝播しないので、単純な構成で、目視される表面側の反射ムラを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態の入力装置を示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態の入力装置を示す分解斜視図である。
【図3】第1の実施形態を説明する透視模式図であり、部分拡大平面図である。
【図4】第1の実施形態を説明する模式図であり、部分拡大断面図である。
【図5】第1の実施形態におけるフレキシブル配線基板の構造例を示す模式平面図である。
【図6】第1の実施形態の入力装置の製造方法を示す模式図であり、途中工程での断面図である。
【図7】第1の実施形態の変形例を説明する模式図であり、第1透明基材の部分拡大平面図である。
【図8】第2の実施形態の入力装置を示す模式図であり、部分拡大断面図である。
【図9】第2の実施形態におけるフレキシブル配線基板の構造例を示す模式平面図である。
【図10】第2の実施形態の入力装置の製造方法を示す模式図であり、途中工程での断面図である。
【図11】第2の実施形態の変形例を説明する模式図であり、部分拡大断面図である。
【図12】第3の実施形態の入力装置を示す模式図であり、部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1の実施形態>
図1は第1の実施形態の入力装置10を示す斜視図であり、図2はその分解斜視図である。なお、本明細書において、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法の比率等は適宜異ならせて示してある。
【0029】
第1の実施形態の入力装置10は、抵抗膜式の入力装置を構成している。図1及び図2に示すように、入力装置10は、可撓性の加飾基材20と、可撓性の第1透明基材30と、第2透明基材40と、を含み構成される。また入力装置10は、表示装置の画面等を視認できるようにするための透光領域11と、透光領域11を囲むように枠状に設けられた非透光領域12とを有する。
【0030】
ここで、「透光性」や「透明」は可視光の透過率がおよそ70%以上の状態を指す。さらに、ヘイズ値が6以下であることが好適である。
【0031】
第1透明基材30と第2透明基材40とは、非透光領域12に設けられた絶縁層51を介して電気的に絶縁された状態で、接着されている。また、可撓性の第1透明基材30の入力操作面側には粘着層52を介して加飾基材20が接着されている。絶縁層51及び粘着層52には、アクリル系両面テープを用いている。さらに、電気的な絶縁を確実にするため、レジスト層56を印刷しておくことが好ましい。
【0032】
図2に示すように、第1透明基材30及び第2透明基材40の対向する面には、入力位置情報を検知するための第1透明電極層31及び第2透明電極層41がそれぞれ積層されている。また、第1透明基材30の非透光領域12には、入力位置情報を出力するための第1引出配線層32が引き回されており、第1透明電極層31と電気的に接続されている。第2透明基材40の非透光領域12には、同様に、第2引出配線層42が引き回されて、第2引出配線層42と第2透明電極層41とが電気的に接続されている。そして、第1引出配線層32及び第2引出配線層42は、Y2側の非透光領域12に設けられた第1接続端子33及び第2接続端子43において、フレキシブル配線基板60と接続される。したがって、単純な構成のままで、対向する第1透明電極層31及び第2透明電極層41はフレキシブル配線基板60に電気接続されている。
【0033】
ここで、第1接続端子33と第2接続端子43とは平面視で所定の間隔になる位置に配置されている。粘着層52には、第1接続端子33と平面視で重なる位置に空隙部55が設けられている。絶縁層51には、第1接続端子33及び第2接続端子43と平面視で重なる位置に開口が設けられ、レジスト層56には、第1接続端子33と平面視で重なる位置に開口が設けられている。なお、フレキシブル配線基板60は第2透明基材40に設けられた開口部46の貫通孔46aを通して引き出されている。
【0034】
抵抗膜式の入力装置10の入力操作時において、入力操作面の透光領域11を指やペン形状の入力器具により押圧操作すると、可撓性を有する第1透明基材30及び加飾基材20が撓んで第1透明電極層31と第2透明電極層41とが接触する。第1透明電極層31に、たとえばY1−Y2方向に電圧が印加されると、押圧操作による各透明電極層の接触位置に応じたY1−Y2方向の分圧比によりY座標を検知することができる。同様に、第2透明電極層41にX1−X2方向に電圧が印加されると、各透明電極層の接触により生じた分圧比によりX座標を検知することができる。
【0035】
入力操作面側に配置された第1透明基材30は、その厚みが100μm〜200μm程度に形成された可撓性を有するフィルム状の材料であり、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の透明樹脂材料を用いることができる。第2透明基材40は、第1透明基材30よりも高い剛性を有するように0.5mm〜2.0mm程度の厚みで成形加工によって形成されており、PC(ポリカーボネート)等の透明樹脂材料を用いることができる。
【0036】
第1透明電極層31及び第2透明電極層41は、可視光領域で透光性を有するITO(Indium Tin Oxide)、SnO、ZnO等の透明導電材料を用いて、スパッタ法や蒸着法により成膜される。その厚みは、0.01μm〜0.05μm、例えば0.02μm程度で形成される。また、スパッタ法や蒸着法以外の方法では、あらかじめ透明電極膜が形成されたフィルムを用意して透明電極膜のみを基材に転写する方法や、液状の原料を塗布する方法により成膜することも可能である。
【0037】
第1透明電極層31及び第2透明電極層41と接続して形成される第1引出配線層32及び第2引出配線層42は、銅または銀の導電性ペーストを用い、スクリーン印刷法やインクジェット印刷法等により形成される。各引出配線層の厚みは、5μm〜30μm程度に形成することができる。
【0038】
第1透明基材30の入力操作面側には、可撓性の加飾基材20が設けられている。加飾基材20はPET等の透明樹脂材料から形成され、その厚みは100μm〜200μm程度で可撓性を有している。本実施形態においては厚みが約130μmのPETフィルムを用いている。また、加飾基材20の入力操作面側はウレタンアクリレート樹脂等のハードコート層を有していることが望ましい。そして、加飾基材20の入力操作面と異なる面に、加飾層21が形成されていることが好ましい。加飾層21は、スクリーン印刷法やインクジェット印刷法等で印刷されて、非透光領域12を形成している。こうすれば、加飾基材20の入力操作面側から見ると、加飾基材20は平坦である。
【0039】
加飾層21は、各引出配線層やフレキシブル配線基板60との接続部と平面的に重なるように設けられて、各引出配線層等が操作者から直接視認されないように遮蔽する効果を有する。また、入力装置10は電子機器の表示部に搭載されて、加飾層21が操作者から直接視認されることになるため、加飾層21が形成された加飾領域22の外観には特に厳しい品質が求められることになる。例えば、加飾層21は着色されたり、模様、マーク、文字等が描かれたりするため、わずかな凹凸で生じる反射ムラにより操作者から視認され易くなり、外観品質上の不具合となることがある。
【0040】
図3及び図4は本実施形態を説明する模式図である。図3は入力操作面側から見た部分拡大平面図を示しているが、加飾基材20と粘着層52等を省略し、第1透明基材30の他方の面に形成された第1引出配線層32及び第1接続端子33を実線で示すことにより、粘着層52に形成された空隙部55(2点鎖線で示す内側の領域)との平面位置を分かりやすくした透視模式図である。図4は、図3のIV−IV線に沿って切断した部分拡大断面図である。
【0041】
図2及び図3に示すように、本実施形態の入力装置10は、粘着層52に窓状の空隙部55が形成された構成を有している。空隙部55は、Y2側の非透光領域12に第1接続端子33と平面視で同一の位置に設けられている。いっぽう、図4に示すように、第1接続端子33は接続部材71を介してフレキシブル配線基板60と接続されている。
【0042】
これに対応して、フレキシブル配線基板60は、第1接続端子33と接続される第1端子64を有し、絶縁性のベースフィルム61に形成された配線層63を介して、外部に電気接続できるように構成されている。また、第1端子64の近傍以外は、配線層63が絶縁性のカバーフィルム62で覆われて、電気的に絶縁されている。同様に、第2接続端子43についてもフレキシブル配線基板60が接続されている。
【0043】
図5はフレキシブル配線基板60の構造例を示す模式平面図である。図4及び図5に示すように、フレキシブル配線基板60は、絶縁性で可撓性のベースフィルム61に、配線層63が形成されている。前記ベースフィルム61には、接着層(図示していない)を介して絶縁性のカバーフィルム62が積層されている。
【0044】
フレキシブル配線基板60は、圧着領域で前記カバーフィルム62または前記ベースフィルム61が除去されている。前記配線層63は、間隔を空けて並んで配置されている4本のリードパターンから成り、それぞれのリードパターンの端部がカバーフィルム62またはベースフィルム61の形成されていない領域に露出して、第1端子64a、64b、及び、第2端子65a、65bを形成している。
【0045】
前記カバーフィルム62または前記ベースフィルム61のどちらを除去しているかによって圧着する面を変えることができる。すなわち、図5において、第1端子64a、64bは、ベースフィルム61に形成された配線層63に積層されて、カバーフィルム62の切り欠きから、第1透明基材30の側に露出している。いっぽう、第2端子65a、65bは、ベースフィルム61に切り欠きがあり、カバーフィルム62と配線層63に積層されて、第2透明基材40の側に露出している。これにより、対向する第1透明基材30と第2透明基材40との間に挿入されて、それぞれの面に形成されている第1接続端子33と第2接続端子43とに接続することが可能である。
【0046】
ベースフィルム61及びカバーフィルム62はポリイミドフィルム等の可撓性の有機樹脂を用いることができる。また、配線層63は、銅箔等で形成されている。一般的に、ベースフィルム61とフィルム状の銅箔を接着層(図示していない)を介して貼り合わせ、配線層63のパターンを加工し、さらにカバーフィルム62を接着層(図示していない)を介して貼り合わせることがおこなわれている。第1端子64a、64b、及び第2端子65a、65bは、配線層63に、銀の導電性ペースト等を印刷により積層している。なお、前記端子の部分は銅箔の表面に金メッキ等をおこなってから導電性ペーストを積層することが好ましい。各端子の部分はこれらの電極材料による凹凸を有する。
【0047】
第1端子64a、64bと第1接続端子33a、33bとの接続は、接続部材71を介して熱圧着により接続される。このとき、接続部材71は第1端子64a、64bと第1接続端子33a、33bとを覆って、それらの凹凸を吸収している。熱圧着によって接続部材71が固化すると、その際の収縮によって第1接続端子33は応力を受ける。そのため、第1透明基材30は第1接続端子33を中心とする面方向(X−Y面方向)の歪みを生じ、加飾基材20の入力操作面側から視認されるシワ(Z方向の凹凸)を生じることが分かった。なお、このシワは圧着直後から時間経過とともに(たとえば1日後に)目立たなくなる。これは粘着層52等がゆっくりと応力を緩和させるためと考えられる。しかし、それでも残ったシワが反射ムラとして視認されてしまうと、外観上好ましいものは得られない。
【0048】
本実施形態では、粘着層52に空隙部55が形成されているので、その歪みによる応力を空隙部55が緩和する。また、上記の第1接続端子33の接続領域に凹凸を生じていても窓状の空隙部55で吸収できる。これにより、入力操作面である加飾基材20の表面には、フレキシブル配線基板60を接続するための接続部材71の収縮の影響が伝播しない。
【0049】
空隙部55は図2〜図4に示すような矩形の窓状で1辺の長さは3mm〜5mm程度である。窓状であれば、矩形に限らず円形等であってもよい。なお、凹凸の吸収という目的では、Y2側の縁部からの切り欠きであってもよい。しかしながら、空隙部55が切り欠きの場合は、Y2側の側面で粘着層52の厚み相当の隙間が外部に露出して第1透明基材30の歪みが見えてしまうことや剥れの原因となる懸念があり、また、高湿環境において第1接続端子33が第1透明基材30の透湿による影響を受けやすくなってしまう。このため、外部に隙間をもたない窓状であるほうが好ましい。
【0050】
これにより、第1接続端子33を入力操作側面の第1透明基材30に形成された第1引出配線層32に設けた単純構造のままで、入力装置10を構成できるとともに、目視される表面側の反射ムラを抑制できる。
【0051】
第1透明電極層31及び第2透明電極層41は入力操作領域に各々積層されて、それぞれ第1引出配線層32及び第2引出配線層42に接続されていればよい。第1透明電極層31は、所定の絶縁領域が設けられていれば、第1透明基材30のほぼ全面に積層されていてもよいし、第1引出配線層32は第1透明電極層31との積層になっていてもよい。レーザトリミングを用いれば、線状に絶縁領域を形成することが容易である。同様に、第2透明電極層41は所定の絶縁領域が設けられていれば、第2透明基材40のほぼ全面に積層されていてもよいし、第2引出配線層42は第2透明電極層41との積層になっていてもよい。
【0052】
入力操作面側の加飾基材20の平坦性を向上するためには、非透光領域12にダミー配線層とレジスト層56を設けて、絶縁層51で貼り合わせる領域の各種膜厚をできるだけ一定にしておくことが好ましい。
【0053】
絶縁層51及び粘着層52には、アクリル系両面テープのほか、アクリル系粘着剤や透明接着剤を用いてもよい。しかし、絶縁層51としては第1引出配線層32と第2引出配線層42との短絡を防止する絶縁が確実にできる両面テープが好適である。なお、レジスト層56は絶縁性を向上させるとともに、第1引出配線層32による凹凸を平坦化するためにも設けておくことが好ましい。
【0054】
第2透明基材40は、PC(ポリカーボネート)のほか、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)等の透明樹脂材料を用いることができる。成形加工によって第2透明基材40を剛体構造に形成することができるので、単純な構造で入力装置10を構成できるとともに、表示装置や電子機器との一体化が容易である。
【0055】
また、フレキシブル配線基板60は第2透明基材40に設けられた開口部46の貫通孔46aを通して引き出して、入力操作面側から見えないように接続することができる。
【0056】
図4に示すように、第2透明基材40には、フレキシブル配線基板60を引き出すための開口部46の貫通孔46aとは別に、空間部45の貫通孔45aが形成されている。空間部45の貫通孔45aは第1接続端子33と平面視で重なる位置に設けられて、入力操作面とは反対の側から、フレキシブル配線基板60の圧着領域を空間部45の内部に見ることができる。したがって、第1接続端子33でのフレキシブル配線基板60の厚みがばらついて厚くなっても逃がすことができる。
【0057】
なお、本実施形態で、第2透明基材40は、第1透明基材30よりも高い剛性を有するように0.5mm〜2.0mm程度の厚みの透明樹脂材料を用いて成形加工をおこなったが、第1透明基材30と同様に可撓性を有するフィルム状の透明樹脂材料を用いてもよい。こうすれば、第1引出配線層32等のパターンが異なるだけで、第1透明基材30と同じ工程と同じ原材料で形成することができる。この場合、第2透明基材40の他方の面には、粘着層52と同様の材料を介して、十分な剛性を有する第3透明樹脂基材を貼り合わせることが好ましい。いずれの構成であっても、比較的単純な構造で入力装置10を構成できるとともに、表示装置や電子機器との一体化が容易にできる。
【0058】
空間部45は開口部46と一体に設けられていてもよい。
【0059】
なお、第2透明基材40に設けられた開口部46はフレキシブル配線基板60を通すことができれば、貫通孔46aでなくてもよく、第2透明基材40のY2側に設けられた切り欠きであってもよい。また、フレキシブル配線基板60と絶縁層51とが干渉しないように、該当する領域にわたって絶縁層51の開口を設けていることが好ましい。
【0060】
図6は第1の実施形態の入力装置10の製造方法を示す模式図であり、途中工程での断面図である。なお、各構成部材の詳細は省略し、また、説明する工程での状態を示すため、入力操作面となる側を下側にしている。
【0061】
図6(a)で、可撓性の第1透明基材30は、たとえばロール状のフィルムに第1透明電極層31が設けられて所定の大きさに裁断された後、所定の絶縁パターンをレーザトリミングによって形成している。次に、スクリーン印刷法により、厚み10μm程度の銀の導電性ペーストを印刷、加熱することによって、第1透明電極層31に電気接続するように第1引出配線層32と、第1引出配線層32に設けられた第1接続端子33と、を形成する。さらに、第1引出配線層32の形成面を弱粘着層82のついた保護フィルム81を貼り合わせて保護し、反対面に弱粘着層84のついた保護フィルム83を貼り合わせる。
【0062】
いっぽう、図6(b)に示すように、粘着層52に空隙部55をプレス加工等によって形成しておく。次に、所定の工程をおこなった加飾基材20に、粘着層52を空隙部55が所定の位置に配置されるように貼り合わせる。しかる後、図6(c)に示すように、弱粘着層84のついた保護フィルム83を剥がして、加飾基材20の加飾層21が設けられている面と、第1透明基材30の第1引出配線層32等が設けられていない面と、を粘着層52を介して貼り合わせる。
【0063】
第2透明基材40についても所定の工程をおこなった後、第1透明基材30との貼り合せをおこなう。さらに、図6(d)に示すように、圧着装置90を用いて、第1接続端子33に、接続部材71を介してフレキシブル配線基板60を圧着する。このとき、空隙部55では、可撓性の第1透明基材30が変形するが、圧着の加圧が開放されると元に戻り、接続部材71の固化収縮が残留応力となっている。
【0064】
このように、第2透明基材40には空間部45の貫通孔45aを設けていれば、貫通孔45aを用いて、入力操作面とは反対側から圧着装置90を挿入できるので、第1接続端子33に接続部材71を介してフレキシブル配線基板60を圧着することができる。こうすれば、加飾基材20の側は平坦な治具に載置されているだけでよいので、圧着時に表面側が歪まず、また、熱圧着を用いても過度に加熱される心配が無い。さらに、熱圧着におけるフレキシブル配線基板60の圧着領域を直接加熱できるので、接続部材71を確実に熱硬化させることができ、接続信頼性に優れている。
【0065】
第1の実施形態の製造方法によれば、入力操作面である加飾基材20の表面には、フレキシブル配線基板60を接続するための接続部材71の収縮の影響が伝播しない。したがって、目視される表面側の反射ムラを抑制できる。
【0066】
接続部材71は、異方性導電樹脂であることが好ましい。異方性導電樹脂はエポキシ樹脂等の絶縁性材料に、金属メッキされた樹脂ビーズ等の導電粒子を分散させたもので、固化する前に圧着されると、圧着された膜厚方向には導電性を有し、平面方向には絶縁性を有する。したがって、第1端子64a、64b、または第2端子65a、65b、が面方向に隣接して、それぞれを一緒に覆うように異方性導電樹脂が塗布されたとしても、それらが平面方向で短絡することはない。
【0067】
また、第2透明基材40の第2接続端子43とフレキシブル配線基板60の第2端子65a、65bとを圧着によって接続してから、第1透明基材30を貼り合わせることが好ましい。こうすれば、第1透明基材30の第1接続端子33と第1端子64a、64bとを接続する際に、平面視で第1接続端子33の箇所のみを圧着できる。
【0068】
なお、第1引出配線層32及び第1接続端子33は、接続部材71で覆われる圧着領域以外を、あらかじめ、レジスト層56で保護しておくことが好ましい。
【0069】
図7は第1の実施形態の変形例を説明する模式図であり、入力装置10の部分拡大平面図である。粘着層52に形成された空隙部55は第2接続端子43と平面視で重なる位置を含むように設けられている。
【0070】
こうすれば、第2接続端子43の接続において、フレキシブル配線基板60の厚みがばらついて厚くなっていても、入力操作面である加飾基材20の表面には、フレキシブル配線基板60を接続するための接続部材71の収縮の影響が伝播しない。したがって、目視される表面側の平坦性を向上できる。
【0071】
<第2の実施形態>
図8は、第2の実施形態を説明する模式図であり、入力装置10の部分拡大断面図である。第2の実施形態においても、抵抗膜式の入力装置を構成しており、構成部材は同じ符号を用いている。
【0072】
図8に示すように、第1接続端子33はフレキシブル配線基板60の第1端子64と接続部材71を介して接続され、図8では見えない第2接続端子43は同様に第2端子65と接続部材72を介して接続されている。フレキシブル配線基板60は絶縁層51の切り欠きを通してY2方向に引き出されている。第1接続端子33と平面視で重なる位置には、粘着層52の空隙部55が設けられている。また、より好ましくは、第2接続端子43と平面視で重なる位置にも空隙部55が設けられている。
【0073】
図9は、第2の実施形態におけるフレキシブル配線基板60の構造例を示す模式平面図である。この場合、ベースフィルム61にスルーホール61a、61bが設けられている。第2端子65a、65bは銀の導電性ペースト等を印刷により積層している。スルーホール61a、61bには導電性ペースト等が充填され、第2端子65a、65bと配線層63とが接続されている。
【0074】
図示していない接続部材71、72は、平面視で、第1端子64a、64b及び第2端子65a、65bを覆うように設けることが、フレキシブル配線基板60の接続強度及び電気接続の安定性から好ましい。このような構造であれば、第1接続端子33と第1端子64との圧着、及び、第2接続端子43と第2端子65との圧着を、第1透明基材30と第2透明基材40とを挟む圧着装置90によって、一括で同時におこなうことができる。
【0075】
本実施形態では、フレキシブル配線基板60が圧着接続された後に、第1透明基材30の入力操作面側に、粘着層52を介して加飾基材20が接着されることが好ましい。
【0076】
本実施形態では、粘着層52に空隙部55が形成されているので、その歪みによる応力を空隙部55が緩和する。また、上記の第1接続端子33の接続領域に凹凸を生じていても空隙部55で吸収できる。これにより、入力操作面である加飾基材20の表面には、フレキシブル配線基板60を接続するための接続部材71の収縮の影響が伝播しない。したがって、目視される表面側の反射ムラを抑制できる。
【0077】
空隙部55は窓状であるほうが好ましい。
【0078】
第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の材料を選択できる。
【0079】
図10は第2の実施形態の入力装置10の製造方法を示す模式図であり、途中工程での断面図である。なお、各構成部材の詳細は省略し、また、説明する工程での状態を示すため、入力操作面となる側を下側にしている。
【0080】
図10(a)で、可撓性の第1透明基材30は、たとえばロール状のフィルムに第1透明電極層31が設けられて所定の大きさに裁断された後、所定の絶縁パターンをレーザトリミングによって形成している。次に、スクリーン印刷法により、厚み10μm程度の銀の導電性ペーストを印刷、加熱することによって、第1透明電極層31に電気接続するように第1引出配線層32と、第1引出配線層32に設けられた第1接続端子33と、を形成する。さらに、第1引出配線層32の形成面を弱粘着層82のついた保護フィルム81を貼り合わせて保護し、反対面にも、弱粘着層84のついた保護フィルム83を貼り合わせる。
【0081】
図10(b)に示すように、第2透明基材40についても所定の工程をおこなった後、第1透明基材30と第2透明基材40との貼り合せをおこなう。さらに、フレキシブル配線基板60を挿入し、圧着装置90を用いて、フレキシブル配線基板60と第1透明基材30及び第2透明基材40とを圧着して接続する。このとき、各電極の凹凸は接続部材71でほぼ吸収されている。しかし、接続部材71の固化収縮が残留応力となっている。
【0082】
いっぽう、粘着層52に空隙部55をプレス加工等によって形成し、所定の工程をおこなった加飾基材20と貼り合わせておく。しかる後、弱粘着層84のついた保護フィルム83を剥がして、図10(c)に示すように、加飾基材20の加飾層21が設けられている面と、第1透明基材30の第1引出配線層32等が設けられていない面と、を粘着層52を介して貼り合わせる。
【0083】
こうすれば、入力装置10の構造及び入力装置10の組立工程が簡単化できるので、量産性に優れている。
【0084】
第2の実施形態の製造方法によれば、フレキシブル配線基板60を第1透明基材30の第1接続端子33と接続するため、第1接続端子33及びその周囲の領域に歪みを生じるが、その歪みによる応力を粘着層52に形成された空隙部55が緩和する。また、上記の第1接続端子33の接続領域に凹凸を生じていても空隙部55で吸収できる。これにより、入力操作面側である加飾基材20の表面にはフレキシブル配線基板60を接続した影響が伝播しない。したがって、単純な構成で、目視される表面側の反射ムラを抑制できる。
【0085】
なお、図10(b)において、第1透明基材30にフレキシブル配線基板60を載置した状態で第2透明基材40との貼り合せをおこなってもよい。こうすれば、貼り合わせ後にフレキシブル配線基板60が挿入できないという工程不良を生じない。また、入力操作面を上にして、第2透明基材40にフレキシブル配線基板60を載置した状態で第1透明基材30との貼り合せをおこなうこともできる。この場合も、貼り合わせ後にフレキシブル配線基板60が挿入できないという工程不良を生じない。フレキシブル配線基板60を載置した状態での第1透明基材30と第2透明基材40との貼り合わせに続いて、圧着装置90を用いて、フレキシブル配線基板60と第1透明基材30及び第2透明基材40とを圧着して接続する。
【0086】
図11は、第2の実施形態の変形例を説明する模式図であり、入力装置10の部分拡大断面図である。
【0087】
図11に示すように、非透光領域12において、第2透明基材40に空間部45の凹部45aが形成されている。第2透明基材40は成形加工によって形成できるので、このときに凹部45aを設けるようにすれば追加工程の必要はない。
【0088】
凹部45aは少なくとも、第1接続端子33と平面視で重なる位置に形成され、フレキシブル配線基板60の厚みが厚い場合でも、入力操作面である加飾基材20の表面には、フレキシブル配線基板60を接続するための接続部材71の収縮の影響が伝播しない。したがって、目視される表面側の平坦性を向上できる。
【0089】
凹部45aは第2引出配線層42及び第2接続端子43を含む領域に形成される場合と、第2引出配線層42及び第2接続端子43を含まない領域に形成される場合との、いずれの態様でも可能である。第2引出配線層42と第2接続端子43とを含む領域に形成された凹部45aの場合は、第2引出配線層42が断線しないように凹部45aの側面はテーパー状になっている。
【0090】
これにより、第2接続端子43においても、フレキシブル配線基板60の厚みが入力操作面側に影響して凹凸を生じる心配がなくなる。したがって、より確実に、目視される表面側の平坦性を向上できる。また、入力装置10をより薄型化することが要望されており、本実施形態は薄型化を図る構成としても優れている。
【0091】
さらに、図11に示すように、フレキシブル配線基板60と平面視で重なる位置にわたって凹部45aを設けていれば、フレキシブル配線基板60を厚くすることもできる。フレキシブル配線基板60を厚くすれば可撓性は低下するが、破損しにくくなって信頼性を向上できる。あるいは、フレキシブル配線基板60の材料として、ポリイミドフィルムの替わりにPETフィルム等を用いることが容易になる。
【0092】
<第3の実施形態>
図12は、第3の実施形態を説明する模式図であり、入力装置10の部分拡大断面図である。第3の実施形態の入力装置10は、静電容量式の入力装置を構成しているが、構成部材は第1の実施形態と同じ符号を用いている。
【0093】
図12に示すように、入力装置10は、加飾基材20と、第1透明基材30と、を含み構成される。加飾基材20に加飾層21が設けられていて、非透光領域12が形成されている。第1透明基材30に第1透明電極層31が積層され、第1透明電極層31に所定のパターニングがおこなわれて静電容量検出電極パターン(図示しない)が形成されている。第1透明電極層31の電極パターンに合わせて第1引出配線32が接続され、第1接続端子33が設けられている。
【0094】
第1接続端子33に接続部材71を介してフレキシブル配線基板60の第1端子64が接続されている。こうして、フレキシブル配線基板60を介して外部の電気回路によって複数の静電容量検出電極パターン間の静電容量が読み出され、入力操作をおこなったときに静電容量が変化することから入力位置を検出することができる。
【0095】
ここで、フレキシブル配線基板60の接続は熱圧着を用いることができる。接続部材71には異方性導電樹脂を用い、200度程度に加熱して硬化させて接続固定がなされる。このとき、第1透明基材30は熱膨張し、圧着終了後に室温に戻ることで熱収縮するとともに、接続部材71の固化収縮による応力を受ける。これにより、空隙部55を設けていない場合は、加飾層21も加熱されて、熱膨張及び熱収縮がおきるとともに、接続部材71からの応力が伝播する。そのため、加飾基材20が可撓性を有していると入力操作面に凹凸を生じることがあった。また、非可撓性の加飾基材20を用いている場合でも、加飾層21が加熱された影響が表面の反射ムラとして視認されることがあった。
【0096】
粘着層52に空隙部55を設けることによって、熱圧着を用いた場合であっても加飾層21の加熱が抑制されて熱膨張や熱収縮等が抑えられ、また接続部材71や第1透明基材30の変形や応力が伝播しない。したがって、第1接続端子33を入力操作側面の第1透明基材30に形成された第1引出配線層32に設けた単純構造のままで、入力装置10を構成できるとともに、目視される表面側の反射ムラを抑制できる。
【0097】
こうすれば、加飾基材20と第1透明基材30とを粘着層52で貼り合せてから、フレキシブル配線基板60を接続する工程とすることができる。これにより、フレキシブル配線基板60を接続した第1透明基材30に加飾基材20を貼り合わせるときには、フレキシブル配線基板60が貼り合わせの障害になることに対して、障害物の無い状態での貼り合わせが可能になり、量産性や工程歩留りが向上する。
【0098】
空隙部55は窓状であるほうが好ましい。
【0099】
なお、第1透明基材30の第1透明電極層31が積層されている面は、第1接続端子33を除き、図示していない保護層で覆われていることが好ましい。こうすれば、第1透明電極層31及び第1引出配線32が腐食等から保護できるので、信頼性が向上する。保護層はアクリル系の樹脂を印刷により形成したり、第1透明基材30及び粘着層52と同じ材質の部材を貼り合わせて形成したりすることができる。
【0100】
静電容量検出パターンは上述のように第1透明基材30に積層された第1透明電極層31で構成してもよいが、第3透明電極層が積層された第3透明基材を第1透明基材30とは別に用意して、それらを貼り合わせた2層の透明電極層からなる構成としてもよい。その場合、第1接続端子33とは別の第3接続端子を設けておいて、第1接続端子33とともにフレキシブル配線基板60に一括して接続することが好ましい。
【0101】
本実施形態における入力装置10は、携帯電話機、デジタルカメラ、PDA、ゲーム機、カーナビゲーション等に使用される。
【符号の説明】
【0102】
10 入力装置
11 透光領域
12 非透光領域
20 加飾基材
21 加飾層
30 第1透明基材
31 第1透明電極層
32、32a、32b 第1引出配線層
33、33a、33b 第1接続端子
40 第2透明基材
41 第2透明電極層
42 第2引出配線層
43 第2接続端子
45 空間部
45a、46a 貫通孔
45b 凹部
46 開口部
51 絶縁層
52 粘着層
55 空隙部
56 レジスト層
60 フレキシブル配線基板
61 ベースフィルム
61a、61b スルーホール
62 カバーフィルム
63 配線層
64、64a、64b 第1端子
65a、65b 第2端子
71、72 接続部材
81、83 保護フィルム
82、84 弱粘着層
90 圧着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面を入力操作面とする加飾基材と、
前記加飾基材の他方の面に積層された透光性の粘着層と、
前記加飾基材に前記粘着層を介して一方の面が貼り合わされた第1透明基材と、前記第1透明基材の他方の面に形成された第1透明電極層と、前記第1透明電極層に電気接続された第1引出配線層と、前記第1引出配線層に設けられた第1接続端子と、
前記第1接続端子に電気接続されたフレキシブル配線基板と、を備え、
前記粘着層は窓状の空隙部を有し、前記空隙部が前記第1接続端子と平面視で重なる位置に設けられていることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記加飾基材は、窓状に設けられた透光領域と、前記透光領域を囲む非透光領域と、を有し、前記非透光領域を着色する加飾層が設けられてなり、
前記加飾層は前記加飾基材の他方の面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記第1透明基材の他方の面と対向するように配置された第2透明基材と、前記第1透明電極層と対向して前記第2透明基材に形成された第2透明電極層と、前記第2透明電極層に電気接続された第2引出配線層と、前記第2引出配線層に設けられた第2接続端子と、を備え、
前記第1接続端子と前記第2接続端子とは平面視で所定の間隔になる位置に設けられ、
前記フレキシブル配線基板は前記第2接続端子に電気接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記第2透明基材は、透明樹脂の成形によって形成されてなるとともに、前記フレキシブル配線基板と対向する空間部を有し、
前記空間部は、少なくとも前記第1接続端子と平面視で重なる位置に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の入力装置。
【請求項5】
前記空間部が貫通孔であることを特徴とする請求項4に記載の入力装置。
【請求項6】
前記空間部が凹部であることを特徴とする請求項4に記載の入力装置。
【請求項7】
前記空隙部が、前記第2接続端子と平面視で重なる位置に設けられていることを特徴とする請求項3〜請求項6のいずれか1項に記載の入力装置。
【請求項8】
一方の面を入力操作面とする加飾基材と、前記加飾基材の他方の面に透光性の粘着層を介して一方の面が貼り合わされた第1透明基材と、前記第1透明基材に設けられた第1透明電極層と、を備える入力装置の製造方法であって、
(a)前記第1透明電極層が設けられた前記第1透明基材の他方の面に、前記第1透明電極層に電気接続された第1引出配線層と、前記第1引出配線層に設けられた第1接続端子と、を形成する工程と、
(b)前記粘着層に空隙部を形成する工程と、
(c)前記加飾基材の他方の面と、前記第1透明基材の一方の面と、を前記粘着層を介して貼り合わせ、前記空隙部を前記第1接続端子と平面視で重なる位置に設ける工程と、
(d)前記第1接続端子に、接続部材を介してフレキシブル配線基板を圧着する工程と、
を含むことを特徴とする入力装置の製造方法。
【請求項9】
前記(d)の工程において、透明樹脂の成形によって貫通孔を有するように形成してから第2透明電極層が設けられた第2透明基材を、前記第2透明電極層と前記第1透明電極層とが対向するように配置し、
前記貫通孔に前記フレキシブル配線基板を圧着する装置が挿入され、前記第1接続端子に接続部材を介して前記フレキシブル配線基板を圧着することを特徴とする請求項8に記載の入力装置の製造方法。
【請求項10】
一方の面を入力操作面とする加飾基材と、前記加飾基材の他方の面に透光性の粘着層を介して一方の面が貼り合わされた第1透明基材と、前記第1透明基材と対向して配置された第2透明基材と、前記第1透明基材及び前記第2透明基材の対向する面にそれぞれ設けられた第1透明電極層及び第2透明電極層と、を備える入力装置の製造方法であって、
前記第1透明電極層が設けられた前記第1透明基材の他方の面に、前記第1透明電極層に電気接続された第1引出配線層と、前記第1引出配線層に設けられた第1接続端子と、を形成する工程と、
前記第2透明基材を透明樹脂の成形によって形成する工程と、前記第2透明基材に第2透明電極層を形成する工程と、前記第2透明電極層に電気接続された第2引出配線層と前記第2引出配線層に設けられた第2接続端子とを形成する工程と、
前記第1透明基材と前記第2透明基材とが所定の間隔で対向するように配置され、前記第1接続端子と前記第2接続端子とに、接続部材を介してフレキシブル配線基板を圧着する工程と、前記第1透明基材の一方の面に前記加飾基材を前記粘着層を介して貼り合わせる工程と、を含み、
前記粘着層はあらかじめ形成された空隙部を有し、前記空隙部は前記第1接続端子と平面視で重なる位置に設けられていることを特徴とする入力装置の製造方法。
【請求項11】
前記第2透明基材には凹部が形成され、前記凹部は前記第1接続端子と平面視で重なる位置に設けられていることを特徴とする請求項10に記載の入力装置の製造方法。
【請求項12】
前記凹部は前記第2接続端子と平面視で重なる位置に設けられていることを特徴とする請求項11に記載の入力装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−247895(P2012−247895A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117671(P2011−117671)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】