説明

入力装置

【課題】任意の方向にスライド操作することができ、機器内におけるレイアウトの自由度を確保できると共に、操作性を向上させることのできる入力装置を提供する。
【解決手段】基台1に操作部材2を平面に沿う任意の方向に対しスライド自在に保持し、操作部材2のスライド入力をなすものであって、操作部材2は底面にカム山部2aを有すると共に、カム山部2aと連係する押圧部材21と、押圧部材21の動作方向を規制するガイド部材20とを設け、基台1はカム山部2aによりガイド部材20に沿って押し下げられる押圧部材21により切替操作されるスイッチ部5を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、任意の方向に押圧操作が可能な操作部材を備え、この操作入力に応じて電気信号を出力する入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話等の電子機器に対する入力装置として、押圧操作が可能な操作部材を備え、この操作入力に応じて電気信号を出力する入力装置が知られている。ここで押圧操作は、操作部材を押圧し、平面方向に沿ってスライドさせることによってなされる。このような入力装置としては、例えば特許文献1に挙げるようなものがある。
【特許文献1】実登第2572590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の入力装置は、スライドによる入力方向が一方向であるため、入力装置の設置方向と操作方向が限定され、回路基板上における配置の設計自由度が低いものであった。また、ユーザーが使用する際においても、操作方向が限定され、操作性における自由度も低かった。
【0004】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、任意の方向にスライド操作することができ、機器内におけるレイアウトの自由度を確保できると共に、操作性を向上させることのできる入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係る入力装置は、基台に操作部材を平面に沿う任意の方向に対しスライド自在に保持し、
上記操作部材は底面にカム山部を有すると共に、該操作部材の任意のスライド方向への移動において該カム山部と連係する押圧部材と、該押圧部材の動作方向を規制するガイド部材とを設け、
上記基台は上記カム山部により上記ガイド部材に沿って押し下げられる押圧部材により切替操作されるスイッチ部を備え、上記操作部材の任意の方向へのスライド入力をなすことを特徴として構成されている。
【0006】
また、本発明に係る入力装置は、上記押圧部材は略球形状のボールにより構成されることを特徴として構成されている。
【0007】
さらに、本発明に係る入力装置は、上記スイッチ部は自己復帰可能なドーム状の反転バネと、該反転バネの反転に応じて接離する接点部とからなると共に、上記押圧部材は上記反転バネの頂部に当接することを特徴として構成されている。
【0008】
さらにまた、本発明に係る入力装置は、上記カム山部は上記操作部材の底面を円錐状に切欠いて形成されてなり、上記押圧部材は略上半分を上記カム山部に保持されると共に、略下半分を上記ガイド部材に保持されることを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る入力装置によれば、操作部材は底面にカム山部を有し、操作部材の任意のスライド方向への移動においてこのカム山部と連係する押圧部材と、押圧部材の動作方向を規制するガイド部材とを設け、基台はカム山部によりガイド部材に沿って押し下げられる押圧部材により切替操作されるスイッチ部を備えることにより、操作部材の側面をどの方向から押圧してもカム山部と押圧部材を介してスイッチ部を切替操作することができるので、多方向にスライド操作を行うことができ、機器内におけるレイアウトの自由度を確保できると共に、操作性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明に係る入力装置によれば、押圧部材は略球形状のボールにより構成されることにより、入力装置の薄型化を図ることができる。
【0011】
さらに、本発明に係る入力装置によれば、スイッチ部は自己復帰可能なドーム状の反転バネと、反転バネの反転に応じて接離する接点部とからなり、押圧部材は反転バネの頂部に当接することにより、操作部材をどの方向から押圧しても、操作感触を一定にすることができる。
【0012】
さらにまた、本発明に係る入力装置によれば、カム山部は操作部材の底面を円錐状に切欠いて形成されてなり、押圧部材は略上半分をカム山部に保持されると共に、略下半分をガイド部材に保持されることにより、操作部材のスライド動作をボールの上下動作に変換することができ、復帰バネをボールにより円滑に押圧することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。図1には、本実施形態における入力装置の分解斜視図を示している。本実施形態における入力装置は、回転入力及びスライド入力の両方が可能な多方向入力装置として構成されている。図1に示すように本実施形態における入力装置は、各種部品を納める略円形状の基台1と、その上部を覆うように設けられる略円形状の操作部材である回転体2とを有している。回転体2は、基台1に対して回転及びスライド操作されるものであり、外周面には操作が行いやすいように凹凸が形成されている。また、基台1には、回転体2のスライド動作に応じてスイッチとして機能する接点部3と、回転体2の回転動作に応じて信号を出力する検出部4とが設けられている。
【0014】
基台1は、図1に示すように同心円状に内側壁12と外側壁13とを有し、内側壁12の内周面側に内側収容部10を、内側壁12と外側壁13の間に外側収容部11を、それぞれ形成している。また、基台1の底面からは、入力装置を固定するための固定部1aが2方向に突出しており、また出力を取り出すための端子部1bが1方向に突出している。
【0015】
基台1の内側収容部10には、底面に接点部3とドーム状の復帰バネからなる可動接点31とから構成されるスイッチ部5が配置され、そのうち可動接点31が露出している。また、内側収容部10には中央部に貫通孔20aを有するリング状のガイド部材20が可動接点31の脱落を防止するように納められる。また、基台1の外側収容部11には、カム山22aを外周側上面に備えたカム板22と、カム板22及び回転体2と連係する連係板23と、回転体2の回転に伴ってカム板22のカム山22aと係脱を繰り返す突起部24bを有した弾性部材24とが納められる。
【0016】
カム板22には、中央部に孔が形成されており、その周縁部の互いに対向する2個所に突起部22b、22bが形成されている。また連係板23には中央部にカム板22よりも一回り大きい孔が形成されており、その周縁部には貫通状に4個所の連係部23a、23b、23c、23dが90°毎に形成されている。カム板22の2個所の突起部22b、22bは連係板23の互いに対向する2つの連係部23a、23cに係合し、残り2つの連係部23b、23dは回転体2の底面に形成される突起部2b、2bに係合する。
【0017】
回転体2の底面には後述するように円錐状に切欠かれたカム山部2aが形成されている。基台1の内側収容部10に納められたガイド部材20とカム山部2aによって形成される空間には押圧部材であるボール21が配置される。回転体2が任意の方向へスライド動作すると、その底面に形成されたカム山部2aによってボール21が押圧され、押圧されたボール21はガイド部材20の貫通孔20aに沿って回転体2のスライド方向と直交する下方に移動する。基台1の内側収容部10の底面には上述のように復帰バネからなる可動接点31が設けられており、押し下げられたボール21は可動接点31を押圧し、固定接点30の中央接点と周辺接点間を導通状態とする。その状態で可動接点31は、ボール21を復帰方向すなわち上方に付勢するので、回転体2のスライド動作における復帰機構を構成することができる。この構造の詳細についてはさらに後で詳述する。
【0018】
図2には入力装置の平面図を示している。この図に示すように、回転体2は基台1の上面を全面に渡って覆っており、固定部1aと端子部1bがそれぞれ外方に突出している。回転体2は基台1に設けた可動スペーサ1cによって保持され基台1に対して回転自在であると共に、回転体2の回転面に沿って任意の方向にスライド自在となるようにしている。ここで、回転体2はどのような回転角度状態であってもスライド自在となるように、基台1に対してはいわゆるオルダムジョイントを介して連結されている。
【0019】
図3には図2において回転体2を取り外した状態の平面図を示している。この図に示すように、カム板22に形成された突起部22b、22bは、連係部23a、23cの径方向略半分の領域と係合しており、外周面は連係板23との間に隙間を有している。このため、連係板23とカム板22は回転時には共に回転し、一方で連係板23はそのスライド時に、カム板22に対して径方向に隙間分だけ移動することができる。また、回転体2の下面に設けられる突起部2b、2bも同様に連係板23の連係部23b、23dと略半分だけ係合し、その外周面は連係板23との間に隙間を有するので、回転体2と連係板23は回転時には共に回転し、一方で回転体2はそのスライド時に、連係板23に対してカム板22とは90°異なる方向に移動することができる。この組み合わせにより、回転体2の回転動作時には、連係板23とカム板22は共に回転し、一方で回転体2のスライド動作時には、カム板22が基台1に対して固定された状態で回転体2のみまたは回転体2と連係板23とがスライドする、オルダムジョイントを構成している。
【0020】
連係板23より外周側には、リング状の板バネからなる弾性部材24が固定されている。弾性部材24は、図1にも示すように互いに対向する2個所に下方に向かって突出する略L字状の固定部24a、24aを有しており、これにより基台1に対して固定されている。また、弾性部材24の下面には突起部24b、24bが形成されており、回転体2の回転に伴ってカム板22のカム山22aと係脱を繰り返し、回転操作に対するクリック感触を付与する。
【0021】
基台1に形成された外側壁13は、全周に渡って回転体2がどのような回転角度状態であっても、回転体2の内周面との間に隙間を有しており、このため回転体2は基台1に対し、平面上に沿って任意の方向にスライドさせることができる。
【0022】
図4には図2のA−A断面図を、図5には図2のB−B断面図を、それぞれ示している。これら各図に示すように、回転体2のカム山部2aは、回転体2の回転中心部底面に円錐状に形成される。また、ボール21の略上半分はカム山部2aに当接し、ボール21の略下半分はガイド部材20の貫通孔20aに保持された状態となっている。図4及び図5は、回転体2をスライド動作させる前の状態を示しており、接点部3を構成する可動接点31はドーム状であってその下端周縁部が固定接点30の周辺接点に当接し、中央接点とは離隔した状態となっている。そのため、周辺接点と中央接点とは非導通状態となっている。
【0023】
接点部3は、図5に示すように基台1の底面に設けられた固定接点30と、その上方を覆うように設けられるドーム状の可動接点31とから構成されている。可動接点31は上方から押圧されることにより変形し、頂部が基台1の底面に達すると固定接点30の中央接点と接触し可動接点31を介して中央接点と周辺接点とが導通した状態となり、そのスイッチ信号を端子部1bから外部機器へ出力する。また、可動接点31は復帰バネにより構成されていることにより、変形すると復帰方向である上方に向かう弾性力を発生する。
【0024】
また、基台1の外側収容部11を構成する底面には、上述のように検出部4が設けられており、それと対向するカム板22の底面側には検出部4に回転操作を検出させるためのパターン6が設けられている。このパターンと検出部4の端部に設けた摺動子とが回転体2の回転に伴って接離することにより、回転体2の回転操作を検出し、その回転パルス信号を端子部1bから外部機器へ出力する。
なお、回転体2の回転操作の検出は磁石とホール素子等の非接触のセンサーで行って回転パルスを検出するようにしても良い。また、回転角度に応じてオンオフを切り替えるスイッチで構成しても良く、その場合は回転角度の規制部材を設けるようにしても良い。
【0025】
図4に示すように基台1の外側壁13と回転体2の内周面との間には隙間が設けられており、回転体2は左右方向にスライド自在とされている。この隙間は、上述のように回転体2の全周に渡って設けられており、したがって回転体2は図4に示す断面に限らず、どの方向の断面においても左右方向にスライド自在とされている。
【0026】
また、図4に示すようにオルダムジョイントを構成する連係板23の連係部23b、23dと回転体2の突起部2a、2aは、上述のようにスライド方向の略半分の領域において互いに係合している。さらに、図4には弾性部材24の突起部24bが表されており、これがカム板22のカム山22aと当接している。カム板22は、オルダムジョイントを介して回転体2と連結されていることにより、回転体2が回転操作された際には回転するので、それによって弾性部材24の突起部24bはカム山22aと係脱を繰り返し、弾性部材24の弾性力によってクリック感触が付与される。
【0027】
図6には図4において回転体2をスライドさせた状態の断面図を示している。ここで、回転体2をスライドさせる方向は、図2において矢印Pで示す方向である。ただし、これ以外の方向についても回転体2をスライドさせることができる。図6に示すように、回転体2は基台1に対して端子部1b側にスライドし、回転体2の押圧部分の内周面は基台1の外周面側に移動する。それに伴って回転体2の底面に形成された円錐状のカム山部2aも移動し、その周面に当接しているボール21は斜め下方に向かって押圧される。ここでボール21はその略下半分をガイド部材20によって保持されていることにより、ボール21は鉛直下方に移動し、可動接点31を下方に押圧する。これによって可動接点31は変形し、頂部が基台1の底面にまで達し、固定接点30の中央接点と周辺接点とが導通する。
【0028】
可動接点31は復帰バネからなることにより、スライド操作がなされた状態で可動接点31は弾性力によりボール21を上方に付勢している。このため回転体2の押圧を解除すると、可動接点31は元の状態に復帰しようとしてボール21を上方に押し上げる。それに伴って回転体2のカム山部2aをボール21が押圧し、回転体2を元の位置に復帰させる。このように回転体2のカム山部2aとボール21、ガイド部材20及び可動接点31によって、回転体2のスライド動作に対する復帰機構を構成している。
【0029】
このように、操作部材である回転体2のカム山部2aとガイド部材20により押圧部材であるボール21を移動させて、基台1にはボール21により切替操作されるスイッチ部5を設けたことにより、操作部材を基台1に対してどの方向にスライドさせても、スイッチ部の切替を行うことができるので、入力装置の機器内におけるレイアウトの自由度を確保できると共に、操作性を向上させることができる。
【0030】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用はこれら実施形態に限られるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。本実施形態においては、操作部材を回転体2とし、回転入力及びスライド入力の両方を行うことのできる多方向入力装置を示したが、スライド入力のみの構成としてもよい。この場合には、カム板22や弾性部材24及び検出部4などは不要であり、またオルダムジョイントの構成も不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態における入力装置の分解斜視図である。
【図2】本実施形態における入力装置の平面図である。
【図3】図2において回転体を取り外した状態の平面図である。
【図4】図2のA−A断面図である。
【図5】図2のB−B断面図である。
【図6】図4において回転体をスライドさせた状態の断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 基台
2 回転体
2a カム山部
5 スイッチ部
12 内側壁
13 外側壁
20 ガイド部材
21 ボール
22 カム板
23 連係板
24 弾性部材
30 固定接点
31 可動接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に操作部材を平面に沿う任意の方向に対しスライド自在に保持し、
上記操作部材は底面にカム山部を有すると共に、該操作部材の任意のスライド方向への移動において該カム山部と連係する押圧部材と、該押圧部材の動作方向を規制するガイド部材とを設け、
上記基台は上記カム山部により上記ガイド部材に沿って押し下げられる押圧部材により切替操作されるスイッチ部を備え、上記操作部材の任意の方向へのスライド入力をなすことを特徴とする入力装置。
【請求項2】
上記押圧部材は略球形状のボールにより構成されることを特徴とする請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
上記スイッチ部は自己復帰可能なドーム状の反転バネと、該反転バネの反転に応じて接離する接点部とからなると共に、上記押圧部材は上記反転バネの頂部に当接することを特徴とする請求項2記載の入力装置。
【請求項4】
上記カム山部は上記操作部材の底面を円錐状に切欠いて形成されてなり、上記押圧部材は略上半分を上記カム山部に保持されると共に、略下半分を上記ガイド部材に保持されることを特徴とする請求項2または3記載の入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−103275(P2007−103275A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294467(P2005−294467)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】