説明

入力装置

【課題】 ひとつの操作体を指で操作することで、多様な入力操作ができる入力装置を提供する。
【解決手段】 支持台2から延びる支柱3に中心部が支持されたセンサー基板5が設けられ、その上に操作面16を有する表面部材15が取り付けられている。表面部材15の下面に、指の移動位置を検知する静電センサー10が設けられ、センサー基板5に形成された変形部7a,7b,8a,8bに歪みセンサー20が取り付けられている。操作面16を指で操作することで、静電センサーによる座標データと歪みセンサー20による移動データの双方を出力することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電センサーと歪みセンサーとを組み合わせて、同じ操作体を指で操作したときに、複数段階の移動情報などの多様な入力信号を生成できる入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の特許文献1には、ジョイスティックと称される歪みセンサーを使用した入力装置が開示されている。
【0003】
この入力装置は、キーボード装置において上向きに突出するスティック状の操作体と、操作体を倒れる方向へ押したときに変形する変形部と、変形部の歪みを検知する歪みセンサーとが設けられている。操作体が倒れる向きに押圧されると、歪みセンサーの検知出力によって、操作体に対する押圧力の作用方向と押圧力の大きさの変化が検知される。
【0004】
この入力装置は、操作体を押す押圧力の向きとその大きさを変化させることで、表示画面の表示内容を移動させるための移動方向の情報と移動量の情報の2種類の情報を与えることができる。しかし指の操作によって複数段階の移動情報を与えることはできない。
【0005】
特許文献2には、キーボード装置を構成する複数のキーのうちのFの文字を入力するキーに歪みセンサーが組み合わされて、前記キーがいわゆるジョイスティックとしての機能を発揮する入力装置が開示されている。
【0006】
特許文献2に記載された入力装置は、Fの文字が表示されたキーを指で押して操作したときの検知動作が特許文献1に記載されたジョイスティックと同じであり、移動方向の情報と移動量の情報の2種類の情報しか与えることができない。
【0007】
特許文献3には、キーボード装置を構成する複数のキートップのうちのいずれかのキートップにタッチパッドが搭載され、このキートップの表面に指を触れることで、表示画面に表示されたカーソルの移動情報などを与えることができる入力装置が開示されている。
【0008】
しかし、この入力装置も、キートップの表面で指を動かすことで、1種類の位置情報を与えることができるのみであり、複数段階の移動情報を与えることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−250704号公報
【特許文献2】米国特許明細書4,680,577号
【特許文献3】特表2008−533559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、操作面を操作したときに、同じ指の操作によって複数段階の座標情報や移動情報を与えることができ、1つの操作体によって多様な入力操作を行うことができる入力装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の入力装置は、支持台と、前記支持台から延びる支柱に中心部が支持された操作体と、前記操作体の表面に形成された操作面と、前記操作体に設けられて前記操作面で指が触れた位置を検知する静電センサーと、前記操作面に与えられた押圧力の向きおよびその大きさを検知する歪みセンサーとを有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明は、前記操作面が円形、楕円形、または長円形であることが好ましい。この場合に、操作面の直径は30mm以下が好ましく、25mm以下がさらに好ましい。
【0013】
本発明の入力装置は、操作面に指を触れて指を移動させると、静電センサーの検知出力から操作面での指の接触位置を示す座標情報が得られ、この座標情報から操作面で指を移動させたときの移動方向の情報および移動量の情報を生成することができる。さらに、操作面を指で押すと、押した方向とその大きさが歪みセンサーで検知されて、操作方向の情報と操作力の情報を得ることができ、操作力の情報を移動量の情報に変換することができる。このように、同じ操作面に触れた指の動作を変えることで、複数種類の情報を入力でき、特に位置情報および移動情報を複数段で変化する情報として与えることが可能になる。
【0014】
本発明は、前記操作面は中央部に対して縁部が隆起した形状であるものが好ましい。さらに、前記操作面は凹曲面形状であることが好ましい。
【0015】
上記のように、円形、楕円形または長円形の操作面の縁部を隆起させることで、操作面を指で押したときに押圧力を作用させやすくなる。
【0016】
本発明は、前記操作体に、前記操作面に押圧力が与えられたときに変形する変形部が設けられ、複数の前記変形部に前記歪みセンサーが取り付けられているものとして構成できる。
【0017】
操作体に静電センサーと歪みセンサーを搭載することで、それぞれのセンサーから外部に引き出す配線を集約化できる。また支持台と支柱には何らセンサーが取り付けられないため、支持台が小型で支柱が短くて済み、小型で薄型化しやすくなる。なお、本発明では、変形部と歪みセンサーが支持台に設けられていてもよいし、歪みセンサーが支柱に設けられてもよい。
【0018】
本発明は、前記静電センサーからの検知出力に基づいて、前記操作面に指が触れた位置を示す座標データを生成する座標データ生成部と、前記歪みセンサーからの検知出力に基づいて、前記操作面に与えられた押圧力の向きおよび大小に応じた移動データを生成する移動データ生成部とが設けられているものである。
【0019】
また、本発明は、前記座標データと前記移送データの少なくとも一方の情報を含んでフォーマットされたデータを生成するデータフォーマット変換部が設けられているものである。
【0020】
上記構成では、フォーマットされた前記データによって、前記操作面上で指が移動したときと、前記操作面が押されたときとで、異なる操作情報を与えることができる。その結果、表示装置に表示される画面の動作を段階的に変化させることなどが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の入力装置は、操作面に指を触れて移動させ、さらに操作面を押すことで、静電センサーと歪みセンサーのそれぞれから検出出力を得ることができる。その結果、例えば操作面で指を移動させさらに指で操作面を押したときに、移動情報を複段の情報として与えることができ、表示画面の表示内容に異なる変化を与えるなど、多様な入力が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態の入力装置を示す分解斜視図、
【図2】図1に示す入力装置の縦断面図、
【図3】静電センサーの構造を示す説明図、
【図4】歪みセンサーの構造を示す説明図、
【図5】歪みセンサーの動作説明図、
【図6】本発明の他の実施の形態の入力装置を示す縦断面図、
【図7】入力装置の回路ブロック図、
【図8】入力装置の動作の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1と図2に示す入力装置1は、支持台2と支柱3および操作体4とを有している。操作体4は、センサー基板5とその上に重ねられた表面部材15とを有し、表面部材15の下面に静電センサー10が取り付けられている。センサー基板5と表面部材15および静電センサー10の平面形状は円形である。ただし、これらは長円形状や楕円形状であってもよい。
【0024】
図3に示すように、静電センサー10は、絶縁層となる円形の薄い樹脂シート11を有している。樹脂シート11の一方の表面に、複数のX電極12が互いに一定の間隔を空けて平行に設けられ、他方の表面に、複数のY電極13が互いに一定の間隔を空けて平行に設けられている。X電極12とY電極13は互いに直交する向きに配置されている。
【0025】
支持台2と支柱3およびセンサー基板5は、合成樹脂材料で一体に形成されている。または、センサー基板5と支柱3が合成樹脂材料で一体に形成されており、支柱3の下端部が支持台2に固定されていてもよい。
【0026】
図1、図2、図4に示すように、センサー基板5には、円形の周縁部から上向きの突出する枠部5aと、枠部5aで囲まれた領域でその表面が枠部5aより一段低い位置にある薄肉部5bとが一体に形成されている。薄肉部5bの4箇所に上下に貫通する穴部6が形成されている。薄肉部5bには、穴部6,6で挟まれてX1側に位置するX1変形部7aとX2側に位置するX2変形部7bとが形成されている。また、穴部6,6で挟まれてY1側に位置するY1変形部8aとY2側に位置するY2変形部8bとが形成されている。
【0027】
薄肉部5bに歪みセンサー20が搭載されている。歪みセンサー20は、X1変形部7aに取り付けられたX1歪みセンサー21aと、X2変形部7bに取り付けられたX2歪みセンサー21b、およびY1変形部8aに取り付けられたY1歪みセンサー22aと、Y2変形部8bに取り付けられたY2歪みセンサー22bとで構成されている。
【0028】
それぞれの歪みセンサー21a,21b,22a,22bは、薄い抵抗体で形成されて、それぞれの変形部7a,7b,8a,8bの表面に伸び歪みが発生すると抵抗値が増加し、前記表面に圧縮歪みが発生すると抵抗値が低下する。なお、歪みセンサー21a,21b,22a,22bとして、圧電素子やその他の外力を電気信号に変換できる素子を使用してもよい。
【0029】
操作体4を構成している前記表面部材15は、その下面に静電センサー10が固定されて、センサー基板5の枠部5aの表面に固定されている。表面部材15と静電センサー10および枠部5aは、接着剤により互いに固定されている。
【0030】
表面部材15の表面が操作面16となっている。図1と図2に示すように、操作面16は、円形の縁部16aが上方に向けて隆起し、中央部16bが窪んだ形状であり、操作面16は凹曲面形状である。
【0031】
操作面16の平面形状は、円形、楕円形、または長円形であり、その直径の最大値は30mm程度以下または25mm程度以下である。
【0032】
図1と図2に示すように、操作面16は縁部16aが隆起した形状であるため、操作面16に触れている指をX方向やY方向へ移動させたときに、指が縁部16aに近づいていることを認識しやすく、また指で縁部16aを押したときに、その押圧力によってセンサー基板5を図5に示す状態に変形させやすい。特に、操作面16が凹球面であると、指を操作面の中央部16bから縁部16aに向けて移動させるにしたがって、凹球面の傾斜によって、センサー基板5に傾き力を作用させやすくなる。
【0033】
ただし、図6に示す他の実施の形態の操作装置1Aのように、表面部材15Aの操作面16Aの縁部16aを上方に向けて隆起させ、中央部16bを平坦な形状としたものであってもよい。この場合も、操作面16Aの中央部16bに触れた指を縁部16aに向けて動かすと、指が縁部16aに至ったことを感触で理解しやすくなり、さらに、縁部16aを押すことで、センサー基板5を傾く状態に変形させやすくなる。
【0034】
入力装置1は、操作体4に静電センサー10と歪みセンサー20が搭載されているので、ICも操作体4に搭載して、静電センサー10と歪みセンサー20を前記ICに接続することが好ましい。この構成にすると、静電センサー10と歪みセンサー20の双方から支持台2に向けて配線を延ばすことが不要になり、配線はICからのみ引き出せばよくなる。
【0035】
図7は、前記ICの内部に構成される回路の概略構成を示している。
図7に示すように、ICの内部に静電センサー10を駆動する駆動回路31と、静電センサー10から検知出力を得る静電検知部32が設けられている。
【0036】
静電センサー10が駆動されるときは、駆動回路31によって、複数のX電極12に矩形波の電圧が順番に印加され、このとき複数のY電極13の全てが検知電極とされて、その出力が静電検知部32で検知される。複数のX電極12に電圧が印加された後に、複数のY電極13に矩形波の電圧が順番に与えられ、このとき複数のX電極12の全てが検知電極とされて、その出力が静電検知部32で検知される。
【0037】
それぞれのX電極12とそれぞれのY電極13との間に、電極間の対向面積と樹脂シート11の誘電率とで決まる静電容量が形成されている。いずれかのX電極12に矩形波の電圧が印加されると、その立ち上がりと立ち下がりのタイミングで、Y電極13に瞬時に電流が流れる。操作面16に指が接近していないときは、どのX電極12に電圧が印加されても、複数のY電極13に流れる電流の合計値は変化せずほぼ一定である。
【0038】
操作面16に指が触れると、その指に接近しているX電極12に電圧が印加されたときに、ほぼ接地電位である指に多くの電流が流れるために、Y電極13に流れる電流値の合計値が低下して、静電検知部32で得られる検知出力が低下する。静電検知部32の検知出力は座標データ生成部33に送られ、座標データ生成部33では、どのX電極12に電圧が印加されているかの情報とそのときにY電極13から検知された電流値とから、操作面16において指の中心が接触している位置のX方向の座標位置が検知される。
【0039】
同様にして、Y電極13に順番に電圧が与えられているときに、どのY電極13に電圧が印加されているかの情報と、静電検知部32で検知される複数のX電極12に流れる電流の合計値に基づき、座標データ生成部33において、操作面16において指の中心が接触している位置のY方向の座標位置が検知される。
【0040】
座標データ生成部33では、検知されたX方向の座標位置とY方向の座標位置に基づいて、操作面16に触れている指の接触中心位置を示すX−Y座標データが生成される。
【0041】
図7に示すように、歪みセンサー20は、X1歪みセンサー21aとX2歪みセンサー21bとが直列に接続されて、この直列回路の一方の端部に電源電圧Vccが印加され、他方の端部が接地されている。同様に、Y1歪みセンサー22aとY2歪みセンサー22bとが直列に接続されて、この直列回路の一方の端部に電源電圧Vccが印加され、他方の端部が接地されている。
【0042】
そして、X1歪みセンサー21aとX2歪みセンサー21bの中点の電位と、Y1歪みセンサ22aとY2歪みセンサ22bの中点の電位が、歪み検知部34で検知される。
【0043】
表面部材15の操作面16に触れている指の中心をX1方向へ移動させ、さらに支持台2に向けて押し込むと、表面部材15の下に接合されているセンサー基板5が、図5において模式的に示す状態に変形する。
【0044】
このとき、センサー基板5のX1変形部7aの表面に伸び歪みが発生し、X2変形部7bの表面に圧縮歪みが発生する。よって、X1歪みセンサー21aの抵抗値が上がり、X2歪みセンサー21bの抵抗値が下がり、X1歪みセンサー21aとX2歪みセンサー21bの中点の電位が降下する。その降下量は、センサー基板5に作用する押圧力Fの大きさに関係する。同様に、操作面16がY1方向またはY2方向へ押されると、Y1歪みセンサ22aとY2歪みセンサ22bの中点の電位が変化する。
【0045】
歪み検知部34において、それぞれの中点の電位を検知することで、操作面16がどの向きに押されたかを検知でき、そのときの押圧力Fの大きさの変化も検知することができる。歪み検知部34で検知される押圧力Fの向きおよびその大きさに基づいて、移動データ生成部35において移動データが生成される。この移動データには、指で押されている方向の情報と、押圧力Fの大小の変化を移動量に変換した情報とが含まれる。
【0046】
図1と図2に示すように、操作面16は縁部16aが隆起した形状であるため、操作面16に触れている指をX1方向へ移動させたときに、指が縁部16aに近づいていることを認識しやすく、また指で縁部16aを押したときに、その押圧力によってセンサー基板5を図5に示す向きに変形させやすい。特に、操作面16が凹球面であると、指を操作面の中央部16bから縁部16aに向けて移動させるにしたがって、凹球面の傾斜によって、センサー基板5に傾き力を作用させやすくなる。
【0047】
図7に示すように、座標データ生成部33で生成された座標データと、移動データ生成部35で生成された移動データは、切替え部36で一定の時間周期で交互に切り替えられて、データフォーマット変換部37に与えられる。データフォーマット変換部37では、座標データと移動データの少なくとも一方を含む所定のフォーマットの入力データが生成され、インターフェース38を介して、オペレーティングシステム(OS)39に与えられる。
【0048】
座標データ生成部33から得られる座標データは、操作面16に触れた指の中心をX−Y座標上の位置として示す絶対座標データである。データフォーマット変換部37において、前記絶対座標データを含むフォーマットの入力データに変換されてもよいし、前記絶対座標データに基づいて、操作面16に触れた指の移動方向と移動量(移動距離)を示す相対座標データが生成され、この相対座標データを含むフォーマットの入力データに変換されてもよい。
【0049】
移動データ生成部35から得られる移動データは、操作面16が押された向きである移動方向の情報と、操作面16に作用する押圧力Fの大小に対応した移動量(移動距離)の情報を示す相対座標データであり、データフォーマット変換部37では、この相対座標データを含むフォーマットの入力データが変換される。
【0050】
座標データ生成部33、移動データ生成部35、切替え部36およびデータフォーマット変換部37は、ソフトウエアによって実行させることが可能である。例えば、パーソナルコンピュータにインストールされるドライバーソフトの一部において、前記各部の制御動作が実行される。なお、図7に示す制御回路によって、パーソナルコンピュータ以外の、例えばTV受像機や携帯用機器などが制御されてもよい。
【0051】
図7に示すように、この入力装置1が搭載されるパーソナルコンピュータやその他の機器には、オペレーティングシステム(OS)39で制御される表示装置40が設けられており、表示装置40の画面の表示内容が、入力装置1の入力操作に応じて動作させられる。
【0052】
この入力装置1は、その操作内容の種別に応じて、データフォーマット変換部37において以下のように入力データが変換される。
【0053】
第1の操作は、入力装置の操作面16に軽く接触させた指を動かして入力操作を行い、操作面16にほとんど押圧力を作用させない使用方法である。第1の操作が行われているとき、データフォーマット変換部37では、移動データ生成部35からのデータが無視され、座標データ生成部33から得られる座標データに基づいて、絶対座標データまたは相対座標データを含むフォーマットの入力データが変換される。
【0054】
第2の操作は、操作面16の縁部16a付近に指の中心をおいて、操作面16をいずれかの方向へ押圧する使用方法である。第2の操作が行われているとき、データフォーマット変換部37では、座標データ生成部33からのデータが無視され、移動データ生成部35から得られる移動データに基づいて、相対座標データを含むフォーマットの入力データが変換される。
【0055】
第3の操作は、操作面16に触れた指をいずれかの方向へ移動させ、操作面16の縁部16a付近に指の中心が至った後に、操作面16の縁部16aを押圧する使用方法である。第3の操作が行われているとき、データフォーマット変換部37では、座標データ生成部33から得られる座標データと、移動データ生成部35から得られる移動データの双方を使用して入力データが変換される。
【0056】
図8のフローチャートは、データフォーマット変換部37において入力データの変換を行う際の動作の流れを示している。
【0057】
ST1(ステップ1)では、切替え部36で交互に切替えられる座標データ生成部33と移動データ生成部35からのデータを監視する。座標データ生成部33と移動データ生成部35の少なくとも一方からデータが得られたときは、ST2に移行し、ST2において、座標データ生成部33と移動データ生成部35の双方からのデータが変化しているか否かを判断する。いずれか一方からのデータのみが変化していると判断したときはST3に移行する。
【0058】
ST3において、座標データ生成部33から得られる座標データの変化量が所定値を超えているときは、前記第1の操作が行われていると判断してST4に移行し、データフォーマット変換部37において、静電センサー10からの座標データを含む入力データが生成される。ST3において、移動データ生成部35から得られる移動データが所定量以上の変化を示しているときは、前記第2の操作が行われていると判断し、ST5に移行して、データフォーマット変換部37において、歪みセンサー20からの移動データを含む入力データに変換される。
【0059】
ST2において、座標データ生成部33から得られる座標データと、移動データ生成部35から得られる移動データの双方が所定量以上の変化を示しているときは、前記第3の操作が行われていると判断し、ST6に移行し、データフォーマット変換部37において、静電センサー10からの座標データと歪みセンサー20からの移動データの双方を含む入力データに変換される。
【0060】
なお、オペレーティングシステム(OS)からの指令、あるいはそのときに起動しているソフトウエアの要求によって、座標データ生成部33のみからの座標データを取り出し、または移動データ生成部35のみからの移動データを取り出し、あるいは座標データ生成部33と移動データ生成部35の双方からのデータを取り出すように切り替えることもできる。
【0061】
第1の操作、第2の操作、第3の操作に基づいて変換される入力データは、いずれの場合も、データフォーマット変換部37から共通のラインを通じてオペレーティングシステム(OS)39に与えられる。前記いずれかの使用方法により入力データがオペレーティングシステム(OS)39に与えられると、そのときに起動しているソフトウエアのプログラムに応じて、表示装置40の画面表示が変化させられる。
【0062】
第1の操作が行われるときは、静電センサー10から得られる座標データがオペレーティングシステム(OS)39に与えられる。このときの、表示装置40の画面表示の変化は、画面に表示されているカーソルが、操作面16に触れた指の移動方向に対応する方向へ移動させられる。
【0063】
第2の操作が行われるときは、歪みセンサー20の移動データがオペレーティングシステム(OS)39に与えられる。このときの、表示装置40の画面表示の変化は、第1の使用方法と同じであり、画面に表示されているカーソルが、操作面16を押している方向に対応する向きに移動させられる。
【0064】
第1の操作または第2の操作が行われるときは、単純な座標の移動データによって、表示画面に表示されているカーソルがいずれかの方向へ移動させられるだけである。これに対し、第3の操作では、静電センサー10と歪みセンサー20の双方から得られる2種類の座標データや移動データが使用されるため、表示画面の表示内容を複数段階に多様に変化させることが可能になる。
【0065】
例えば、操作面16上に触れた指を動かしたときに、座標データ生成部33で得られる座標データが相対座標データに変換され、この相対座標データを含む入力データに基づいて、表示画面のカーソル表示(ポインタ表示)が指の移動方向へ向けて微小距離だけ移動する。さらに、指で操作面16が押されると、移動データ生成部35から得られる相対座標データである移動データを含む入力データに基づいて、カーソルが長い距離移動させられ、このときの移動距離が、操作面16に与えられた押圧力Fの大きさに比例して変化させられる。
【0066】
上記動作を組み合わせると、操作面16を押してカーソル表示を長い距離移動させ、その後に操作面16に軽く触れた指を動かすことで、長く移動した後のカーソル表示を短い距離だけ微細に動かすことができる。
【0067】
または、操作面16に軽く触れた指を動かしたときは、座標データ生成部33で得られる座標データが相対座標データに変換されて、表示画面のカーソル表示が指の移動方向に向けて移動する。操作面16が指で押されると、移動データ生成部35で得られる移動データに基づいて、指を押している方向へ画面全体が移動する。あるいは画面の表示内容が指による押圧方向へ向けてスクロールする。または画面に表示されているページが指による押圧方向へ向けて次々に移動する。操作面16を押す押圧力Fを変化させることで、これらの表示の移動速度が変化する。
【0068】
あるいは、操作面16に軽く触れた指を動かしたときは、座標データ生成部33で得られる座標データが相対座標データに変換されて、表示画面に表示されている図形などが移動する。操作面16上で指を止めてそのまま操作面16を押すと、移動データ生成部35で得られる移動データに基づいて、前記図形などが画面の奥方向へ移動する。操作面16を押す押圧力Fを変化させることで、図形などの奥方向への移動速度が変化する。
【0069】
または、操作面16に軽く触れた指を動かしたときは、座標データ生成部33で得られる座標データが相対座標データに変換されて、表示画面に表示されている図形などが移動する。操作面16上で指を止めてそのまま操作面16を押すと、移動データ生成部35で得られる移動データに基づいて、前記図形などの表示が指で押している方向に向けて回転する。操作面16を押す押圧力Fを変化させることで、図形などの回転速度が変化する。
【符号の説明】
【0070】
1 入力装置
2 支持台
3 支柱
4 操作体
5 センサー基板
5a 枠部
7a,7b,8a,8b 変形部
10 静電センサー
11 樹脂シート
12 X電極
13 Y電極
15 表面部材
16 操作面
16a 縁部
16b 中央部
20 歪みセンサー
31 駆動回路
32 静電検知部
33 座標データ生成部
34 歪み検知部
35 移動データ生成部
36 切替え部
37 データフォーマット変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持台と、前記支持台から延びる支柱に中心部が支持された操作体と、前記操作体の表面に形成された操作面と、前記操作体に設けられて前記操作面で指が触れた位置を検知する静電センサーと、前記操作面に与えられた押圧力の向きおよびその大きさを検知する歪みセンサーとを有することを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記操作面は円形、楕円形、または長円形である請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
前記操作面は中央部に対して縁部が隆起した形状である請求項2記載の入力装置。
【請求項4】
前記操作面は凹曲面形状である請求項3記載の入力装置。
【請求項5】
前記操作体に、前記操作面に押圧力が与えられたときに変形する変形部が設けられ、複数の前記変形部に前記歪みセンサーが取り付けられている請求項1ないし4のいずれかに記載の入力装置。
【請求項6】
前記静電センサーからの検知出力に基づいて、前記操作面に指が触れた位置を示す座標データを生成する座標データ生成部と、前記歪みセンサーからの検知出力に基づいて、前記操作面に与えられた押圧力の向きおよび大小に応じた移動データを生成する移動データ生成部とが設けられている請求項1ないし5のいずれかに記載の入力装置。
【請求項7】
前記座標データと前記移送データの少なくとも一方の情報を含んでフォーマットされたデータを生成するデータフォーマット変換部が設けられている請求項6記載の入力装置。
【請求項8】
フォーマットされた前記データによって、前記操作面上で指が移動したときと、前記操作面が押されたときとで、異なる操作情報を与える請求項7記載の入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−133605(P2012−133605A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285289(P2010−285289)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】