説明

入力装置

【課題】決定操作に適度なストロークを有しつつ、決定操作時の位置ずれを極力防止することができる入力装置を提供する。
【解決手段】タッチパネル13が押込み始めされたことを検出する検出手段として常閉型スイッチ22を備える。制御装置は、使用者がタッチパネル13を手指で押込み操作する際に、常閉型スイッチ22がオンからオフに切り替わった時点で、タッチパネル13にタッチしていた手指のタッチ位置を記憶し、常閉型スイッチ22がオフ状態のまま予め設定された設定時間Ams継続した場合に、前記記憶していたタッチ位置で決定操作が行われたと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルを備えた入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルを備えた入力装置においては、タッチパネルの表面にタッチされた手指の位置をタッチ位置検出手段により検出し、タッチパネルが押込み操作されたことを押圧式の例えばタクトスイッチにより検出することで、タッチ位置で選択された項目を決定して動作させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなものでは、決定操作用のタクトスイッチは、オンするまでに所定のストロークが必要であり、タッチパネルにタッチしてからこれを押込み操作する際のストローク中に、操作する手指の位置が操作開始時に対してずれてしまい、意図しない項目が決定されてしまう場合がある。このようなことの対策として、例えば、決定操作用の押圧式スイッチのストロークを極端に短くすることが考えられるが、タッチパネルをわずかに動かしたり、タッチパネルが振動でわずかに動いたりした際に、使用者の意図に反して決定操作されてしまうなど、操作性が低下する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−298380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、決定操作に適度なストロークを有しつつ、決定操作時の位置ずれを極力防止することができる入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本発明の入力装置は、上下方向へ変位可能でかつ非押圧状態で上方の原位置へ付勢されるように設けられ、表面に手指がタッチされたときにそのタッチ位置を検出するタッチ位置検出手段を有して押込み操作されるタッチパネルと、このタッチパネルが前記原位置から下方へ変位することに伴い前記タッチパネルの押込み始めを検出する押込み始め検出手段と、前記押込み始め検出手段が前記押込み始めを検出した時点で前記タッチ位置検出手段にて検出していたタッチ位置を記憶し、前記押込み始め検出手段が前記押込み始めを検出した状態が予め設定された設定時間継続した場合に、前記記憶していた前記タッチ位置で決定操作が行われたと判定する判定手段と、を備え、前記タッチパネルは、前記押込み始め検出手段が押込み始めを検出した位置よりもさらに下方への変位が可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
使用者がタッチパネルで項目を選択して決定操作する場合、まず手指を、タッチパネル上で選択した項目をタッチし、その状態でタッチパネルを押込み操作する。判定手段は、押込み始め検出手段がタッチパネルの押込み始めを検出した時点に手指がタッチしていたタッチ位置を記憶し、その押込み始め検出手段が押込み始めを検出した状態が予め設定された設定時間継続した場合に、その記憶したタッチ位置で決定操作されたと判定するので、仮にタッチパネルの押込み操作時に、操作する手指の位置が操作開始時に対してずれたとしても、使用者が操作したい項目を特定することができる。また、タッチパネルは、押込み始め検出手段が押込み始めを検出した位置よりもさらに下方への変位が可能であるから、決定操作に必要なストロークを確保することができる。したがって、本発明によれば、決定操作に適度なストロークを有しつつ、決定操作時の位置ずれを極力防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一実施形態の入力装置を示すもので、(a)は平面図、(b)は(a)のX−X線に沿う縦断正面図
【図2】電気的構成を示すブロック図
【図3】押込み操作検出用のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態による入力装置について図面を参照して説明する。まず、図1において、入力装置の外殻は、矩形筒状をなすボデー1と、このボデー1の上部に固定配置されたベゼル2と、ボデー1の下部に固定配置されたカバー3とから構成されている。このうち、ボデー1の内部には、上下方向の中間部に位置させて内部を上下に仕切るように仕切部4が一体に設けられていると共に、この仕切部4の下部の4箇所に円柱状のボス部5が一体に設けられている。仕切部4のほぼ中央部には、固定接点取付部6が一体に設けられているとともに、この固定接点取付部6の内部に、凹状のばね受部7が一体に設けられている。また、仕切部4において、図1の左側に位置させて矩形状の切欠き部8が形成されている。ベゼル2は、中央部に矩形状の開口部9を有していて、上から見て矩形枠状をなしている。
【0010】
下部のカバー3の上部には、スペーサ10を介してプリント配線基板からなる配線基板11が配置されている。これらカバー3および配線基板11は、カバー3の下方から挿通されたねじ12を、スペーサ10および配線基板11を貫通させて、前記ボス部5にねじ込むことにより、ボデー1の下部に共締め状態で取り付けられている。
【0011】
ボデー1内において仕切部4とベゼル2との間に位置させて、タッチパネル13が上下方向に変位可能に配設されている。このタッチパネル13は、ベゼル2の開口部9より大きな矩形板状をなしていて、静電容量式のタッチ位置検出手段と液晶式の表示手段とを備えている。タッチ位置検出手段は、タッチパネル13の上面に人の手指がタッチされたときに、そのタッチ位置(座標)を検出する。表示手段は、使用者が選択する項目などを表示する。タッチパネル13における操作領域14(図1(a)参照)は、ベゼル2の開口部9よりやや大きな領域となっている。タッチパネル13の下面には、下方へ突出する凸部15が一体的に設けられている。この凸部15の下端部は、前記固定接点取付部6の中央部に上方から上下動可能に挿入されている。
【0012】
タッチパネル13の一端部(図1における左端部)には、フレキシブルプリント基板16の一端部16aが接続されている。このフレキシブルプリント基板16の他端部16bは、仕切部4の切欠き部8、配線基板11に形成された切欠き部17を通して、配線基板11の下面に接続されている。したがって、タッチパネル13と配線基板11とは、フレキシブルプリント基板16によって電気的に接続されている。
【0013】
固定接点取付部6には、凸部15の左右両側に位置させて一対の固定接点19が固定状態に取り付けられている。これら固定接点19の一端部は、それぞれ接続部19aを介して配線基板11に電気的に接続されている。凸部15の下面とばね受部7との間には、可動接点20が上下動可能な状態で配置されている。この可動接点20の下面とばね受部7との間には、付勢手段を構成する圧縮コイルばね21が配設されていて、この圧縮コイルばね21の付勢力により、可動接点20が一対の固定接点19に下方から当接している。また、この圧縮コイルばね21の上方への付勢力により、可動接点20および凸部15を介してタッチパネル13が、図1(b)に示す上方の原位置に付勢されている。タッチパネル13の上面の周縁部が、ベゼル2の開口部9の周縁部下面に下方から当接している。
【0014】
ここで、一対の固定接点19と、これに対して接離する可動接点20とにより、常閉型スイッチ22を構成している。この常閉型スイッチ22は、タッチパネル13が、図1(b)に示す上方の原位置に位置された状態では、可動接点20が固定接点19に接触し、回路が閉成したオン状態となっている。この常閉型スイッチ22は、タッチパネル13の押込み始めを検出する押込み始め検出手段を構成する。
【0015】
配線基板11には、制御装置23(図2参照)が設けられている。この制御装置23は、例えばマイクロコンピュータにより構成されていて、本発明の判定手段として機能する。この制御装置23には、タッチパネル13のタッチ位置検出手段からのタッチ位置検出信号、常閉型スイッチ22の信号が入力される。制御装置23は、これらの信号と、予め備えた制御プログラムに基づき、タッチパネル13の表示手段を制御するとともに、制御対象24を制御する機能を有している。
【0016】
次に上記構成の作用を説明する。
まず、タッチパネル13は、非押圧状態では図1(b)に示す原位置に位置されていて、タッチパネル13の表示手段に複数の選択項目が表示されている。この状態で、使用者が、表示された複数の選択項目の中から一つの選択項目を選択して実行させる場合、使用者は、自分の手指を、タッチパネル13に表示された複数の選択項目のうち希望する選択項目が表示された位置に接触させ、その状態でタッチパネル13を下方へ押込み操作する(図1(b)の矢印P参照)。これに伴い、タッチパネル13が、圧縮コイルばね21の付勢力に抗して原位置から下方へ変位することにより、凸部15を介して可動接点20も下方へ変位する。可動接点20がわずかに下方へ変位すると、当該可動接点20が固定接点19から下方へ離間し、常閉型スイッチ22としては回路が開放してオフ状態となる。制御装置23は、常閉型スイッチ22がオン状態からオフ状態に切り替わったことで、タッチパネル13の押込みが開始されたと判断し、この時点で、タッチ位置検出手段が検出していたタッチ位置(座標)を記憶し、選択された項目を記憶する。そして、制御装置23は、常閉型スイッチ22がオフ状態に切り替わった時点からオフ状態が継続した経過時間を計測し、その経過時間が、予め設定された設定時間Ams(使用者がタッチパネル13を押込み操作してストロークを感じるまでに充分な時間、例えば200ms)継続した場合に、決定操作が行われたと判定し、前記記憶したタッチ位置に対応する項目が決定操作されたと判断し、その項目に対応する制御対象24を制御する。
【0017】
図3には、このときの制御装置23の制御内容の一例が示されており、この制御装置23の制御内容を図3に沿って説明する。制御装置23は、まず、常閉型スイッチ22がオンしているか否かを判断する(ステップS1)。タッチパネル13が押込み操作されていない状態では、常閉型スイッチ22はオン状態である。ステップS1において常閉型スイッチ22がオンしていると判断した場合には「YES」に従ってステップS2へ移行し、記憶していたタッチ位置(座標)がある場合にはリセットし、常閉型スイッチ22がオフ状態となるまで待機する(ステップS3)。
【0018】
そして、使用者がタッチパネル13上に手指を接触させてタッチパネル13の押込みを開始すると、常閉型スイッチ22はオン状態からオフ状態に切り替わる。制御装置23は、常閉型スイッチ22がオン状態からオフ状態に切り替わったことを検出すると、タッチパネル13の押込みが開始されたと判断し、「YES」に従ってステップS4へ移行し、その時点(常閉型スイッチ22の状態がオフに切り替わった時点)でタッチ位置検出手段が検出していたタッチ位置(座標)を記憶するとともに、常閉型スイッチ22がオフ状態に切り替わった時点からそのオフ状態が継続した経過時間の計測を開始する。
【0019】
制御装置23は、その経過時間が、予め設定された設定時間Ams(例えば200ms)継続したか否かを判断し(ステップS5)、経過していないと判断した場合にはステップS1へ戻る。そして、制御装置23は、常閉型スイッチ22がオフ状態に切り替わった時点からそのオフ状態が継続した経過時間が設定時間Amsに達したと判断したら、決定操作が行われたと判定し、前記記憶したタッチ位置に対応する項目が決定操作されたと判断し、その項目に対応する制御対象24を制御する(ステップS6)。制御装置23は、常閉型スイッチ22がオフ状態に切り替わった時点からそのオフ状態が継続した経過時間が設定時間Amsに達する前に、常閉型スイッチ22がオン状態に切り替わった場合には、記憶していたタッチ位置をリセットし(ステップS1,S2)、決定操作とは判断しない。
【0020】
上記した実施形態によれば、制御装置23は、押込み始め検出手段である常閉型スイッチ22がタッチパネルの押込み始めとなるオフ状態に切り替わった時点に手指がタッチしていたタッチ位置を記憶し、その常閉型スイッチ22のオフ状態が予め設定された設定時間Ams継続した場合に、その記憶したタッチ位置で決定操作されたと判定するので、仮にタッチパネル13の押込み操作時に、操作する手指の位置が操作開始時に対してずれたとしても、使用者が操作したい項目を特定することができる。また、タッチパネル13は、常閉型スイッチ22が押込み始めを検出した位置(オフに切り替わった位置)よりもさらに下方への変位が可能であるから、決定操作に必要なストロークを充分に確保することができる。したがって、本実施形態によれば、決定操作に適度なストロークを有しつつ、決定操作時の位置ずれを極力防止することができる。
【0021】
押込み始め検出手段として常閉型スイッチ22を用いたことにより、タッチパネル13が下方へ変位し始めた瞬間を検出することができるので、タッチパネル13の押込み始めを良好に検出することができる。
【0022】
本発明は上記した実施形態にのみ限られず、次のように変形または拡張することが可能である。
押込み始め検出手段としては、常閉型スイッチ22に限られず、タッチパネル13の下方への変位の開始を検出することができるものであれば、常開型スイッチや変位センサ、あるいは荷重センサを用いることも可能である。
【0023】
また、制御装置23が決定操作であると判定した際に、そのことを音声や振動などで使用者に報知する構成とすることが好ましい。
項目などを表示する表示手段としては、タッチパネル13に一体的に設けられるものに限られず、タッチパネル13とは別体で設けられるものでもよい。
【符号の説明】
【0024】
図面中、13はタッチパネル(タッチ位置検出手段)、22は常閉型スイッチ(押込み始め検出手段)、23は制御装置(判定手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向へ変位可能でかつ非押圧状態で上方の原位置へ付勢されるように設けられ、表面に手指がタッチされたときにそのタッチ位置を検出するタッチ位置検出手段を有して押込み操作されるタッチパネルと、
このタッチパネルが前記原位置から下方へ変位することに伴い前記タッチパネルの押込み始めを検出する押込み始め検出手段と、
前記押込み始め検出手段が前記押込み始めを検出した時点で前記タッチ位置検出手段にて検出していたタッチ位置を記憶し、前記押込み始め検出手段が前記押込み始めを検出した状態が予め設定された設定時間継続した場合に、前記記憶していた前記タッチ位置で決定操作が行われたと判定する判定手段と、を備え、
前記タッチパネルは、前記押込み始め検出手段が押込み始めを検出した位置よりもさらに下方への変位が可能であることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記押込み始め検出手段は、前記タッチパネルが前記原位置に位置した状態でオン状態を呈する常閉型スイッチであり、前記タッチパネルが前記原位置から下方へ変位してオフ状態に切り替わることで前記タッチパネルの押込み始めを検出することを特徴とする請求項1記載の入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−37566(P2013−37566A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173841(P2011−173841)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】