入力装置
【課題】タッチパネルを備える入力部兼表示部の、表示部の機能も入力部の機能も、煩雑な操作をユーザに強いることなく最大限に利用することができるようにした入力装置を提供する。
【解決手段】入力装置は、入力領域を表示する第1のレイヤ、および第1のレイヤとは異なる入力領域を表示する第2のレイヤを含む、複数のレイヤから構成される画面を表示する表示部と、これと関連付けて配設され、入力領域への入力を検知するタッチパネルと、これに対する入力態様を判別する判別部と、第1と第2のレイヤの表示する入力領域の重複領域への入力を検知する検知部と、入力が第1の入力態様による入力と判別されると、それを第1のレイヤに表示される入力領域への入力として処理し、また第2の入力態様による入力と判別されると、それを第2のレイヤに表示される入力領域への入力として処理する処理部と、を備える。
【解決手段】入力装置は、入力領域を表示する第1のレイヤ、および第1のレイヤとは異なる入力領域を表示する第2のレイヤを含む、複数のレイヤから構成される画面を表示する表示部と、これと関連付けて配設され、入力領域への入力を検知するタッチパネルと、これに対する入力態様を判別する判別部と、第1と第2のレイヤの表示する入力領域の重複領域への入力を検知する検知部と、入力が第1の入力態様による入力と判別されると、それを第1のレイヤに表示される入力領域への入力として処理し、また第2の入力態様による入力と判別されると、それを第2のレイヤに表示される入力領域への入力として処理する処理部と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2007年7月30日に出願された日本国特許出願2007−197732号の優先権を主張するものであり、この先の出願の開示全体をここに参照のために取り込む。
【0002】
本発明は、入力装置に関し、特に、タッチパネルを有する入力装置に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば携帯電話のような携帯端末においては、ユーザが端末の操作を行う際に使用する入力装置は、各端末の機能および/または用途に応じて様々なものが開発されている。多くの携帯端末は、端末本体の表面に予め配設された機械的なキーまたはボタンなどを、ユーザが指などで直接押下する操作による入力を受け付ける構成になっている。
【0004】
このような端末における入力装置の機械的なキーは、当該端末の主要な用途に応じて予め配置されているのが普通であり、一般的に、最初に規定されたキーの物理的配置を、後から変更できるようにはなっていない。
【0005】
ところで、最近では、携帯電話にデジタルカメラや音楽再生などの機能を搭載したものがあるように、小型の携帯端末に多種多様な機能が組み込まれている。各端末の主要な用途以外にも、補助的な機能が数多く搭載されているものや、PDA(Personal Digital Assistants:携帯情報端末)等のように、1つの端末でスケジュール管理や住所録など、主要な用途を複数有するものもある。このような多機能の端末においては、キーの配置が固定されていると、使用する機能によっては、入力操作時に不便さを感じることがある。
【0006】
このような操作の不便さを解消し得るものとして、例えば特許文献1には、液晶表示画面の前面にタッチパネルを重ねて配設した入力装置を有する携帯電話機が開示されている。この携帯電話機の入力装置は、表示画面上に画像で表示された操作キーやボタンなどを押圧すると、その位置に対応するタッチパネルが入力を受け付ける構成になっている。
【0007】
この携帯電話機は、表示画面上に任意にキーの配置を表示させて入力することが可能であるため、自由なキー配置を構成することができる。したがって、端末の各機能を切り替える毎に、その機能に応じてキー配置を自在に変更することができ、極めて良好な操作性を得ることができる。例えば、この携帯電話機に搭載されているデジタルカメラの機能を使用する際には、表示部上で、シャッターやズームなどのキーを使いやすい位置に配置させ、また文字入力の際には、表示部上のキー配列を変更して、パーソナルコンピュータのキーボードのような配列のキーを配置させることができる。このような端末を用いれば、ユーザは、1つの端末の入力装置を、複数の機能にそれぞれ最適化させて入力操作を行うことができる。
【0008】
しかしながら、入力装置としてタッチパネルを用いる端末は、各キーを自在に配置できるように、当該タッチパネルの表面全体が平坦になっているため、予め配置された機械的なキーやボタンを用いて操作する入力装置のように、各キー表面の物理的な凹凸感を指先の感触で感知することによりキーの形状やキー同士の境界を判別するということはできない。そのため、このような入力装置でタッチタイピング(ブラインドタッチ)を行うことは一般に困難である。
【0009】
特に、例えば図9に示すように、タッチパネルを有する2画面式携帯電話100を用いて、電子メールの文章を作成するために文字を入力する際には、タッチパネルを押圧して入力操作を行う操作キー表示部120と、入力の経過や結果が表示される情報表示部110とは位置が異なることが多い。そのため、ユーザは、正確な入力を行うためには、タッチパネルに表示されたキーを押圧する毎に、キー表示部120の押圧するキーを注視して確実な押圧操作を行わなければならない。さらに、その入力結果が所望の通りに反映されたか否かを、入力結果が表示される情報表示部110に視線を移行させて確認するというように、ユーザは視線を絶えず往来させる必要がある。
【0010】
一方、例えば図10に示すように、1つの表示部の前面にタッチパネルを配設した、1つの入力部兼表示部210のみを有するPDAのような端末200は、入力部と表示部が別個に構成された端末に比べて、ユーザが入力を行う際に絶えず視線を往来させる負担を軽減させることができる。しかしながら、この端末200が、例えばTV電話機能で使用する入力部とアドレス帳の情報とを両方とも表示する場合や、または電子メールの文章を作成するためのキーを表示し更にそのキーによる入力結果も表示する場合などは、図示のように、(タッチパネルを備えた)表示部210の表示を上下などに分割して表示するのが一般的である。このように分割表示する場合、表示部210の各表示は、それぞれ小さく表示したり、一部を省略したりして表示しなくてはならない。しかしながら、携帯端末のように端末本体を小型化する必要がある場合には、表示部の大きさも制約を受けるため、例えば1つ1つのキーを小さく表示して、キー表示部に表示されるキーを多数にする場合には、操作性が悪化する恐れがある。
【0011】
このような不都合を解消し得るものとして、例えば特許文献2には、1つの入力部兼表示部に対して、その入力部および表示部を画面上の同じ箇所に重畳表示する表示装置が開示されている。この表示装置によれば、入力部および表示部の表示を縮小せずに、限られた画面の表示スペースを有効活用できる。
【0012】
この表示装置は、タッチパネルを備えた表示部上に所定の画像を表示させ、さらにその画像上にキーボードの画像を透過表示させて、両方の画像を視認できるように重ねて表示するため、ユーザは、この透過表示したキーボードで入力操作を行うことができる。したがって、この表示装置を用いれば、ユーザは、2画面のどちらの表示も縮小せずに、表示の切り替えなども行うことなく、同一画面上で複数のレイヤ(重畳した表示の層)の表示を見ながら入力操作を行うことができる。
【0013】
しかしながら、この表示装置は、2つの表示画面を、「設定用表示ウインドウ」と「テンキーパッド」のキーボードウインドウとで区別して制御する。したがって、この表示装置は、テンキーパッドを重畳して表示して、これを用いて入力を受け付けている間は、設定用表示ウインドウへの入力操作は受け付けないようにしている。すなわち、この表示装置は、2つのレイヤを重畳表示して、さらにどちらのレイヤの表示も視認可能な透過表示にはなってはいるが、片方のレイヤに対する入力のみを受け付けるように制御しているため、両方のレイヤへの入力を受け付けるような構成に対応することはできない。
【0014】
なお、一般的に、複数のレイヤへの入力に対処する方法として、表示画面に複数のレイヤを表示させ、それらのレイヤのうち1つに対する操作入力を受け付ける場合には、当該操作入力を受け付ける前に、入力を受け付けるレイヤをアクティブなレイヤとするユーザの選択操作を受け付けてから、そのレイヤへの操作入力を受け付ける方法が知られている。しかしながら、この方法では、ユーザは、入力するレイヤを変更するたびに、アクティブにするレイヤの選択操作をその都度行わなくてはならないため、煩雑な変更操作を強いられる。
【0015】
このような問題に対処し得るものとして、例えば特許文献3は、図11に示すように、2つの画面(表示レイヤ)を1つの表示装置300に重畳表示しつつ、さらに、レイヤの切り替えなどを行うことなく、どのレイヤに対しても入力を可能にした技術が開示されている。
【0016】
特許文献3記載の表示装置300は、同一の表示部に対する複数の視点にそれぞれ対応する複数の表示方向に、互いに異なる複数の画像を同時に表示するデュアル・ビュー表示をすることができる。これにより、例えば視聴者Aからは画像(b)が、また視聴者Bからは画像(c)が見えるというように、複数の視聴者が異なる視点から各々異なる画像を観察することができる。さらに、この表示装置300は、各視聴者がそれぞれ自分の見ている表示レイヤに対して、例えば視聴者AからはアイコンAに対して、また視聴者BからはアイコンBに対して、それぞれ別個に入力操作を受け付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2006−311224号公報
【特許文献2】特開2003−295996号公報
【特許文献3】特開2005−284592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、特許文献3に記載の技術では、各表示レイヤ(画像(b)および(c))において個別の入力画面を表示するにあたり、異なるレイヤのアイコンを同時に同じ場所に重畳しないように表示位置を変更させる非重畳制御を行っている。また、アイコンを同じ位置に表示する際には、各アイコンの表示のタイミングをずらしたりして、複数のアイコンが同時に同じ位置で異なる入力を受け付けることがないように制御を行っている。このため、各レイヤの表示に関しては、様々なアイコンやキーの配列表示を行う上で、表示位置および表示タイミングについて、相当な制約を受ける場合もあると予想される。これでは、表示部の表示スペースを有効活用するために各レイヤの表示を重畳させているにも拘らず、その表示スペース内に表示される操作キーおよびアイコンなどの表示位置および表示タイミングについては、表示スペースの有効活用が充分に図れない恐れもある。
【0019】
したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、タッチパネルを備える入力部兼表示部の、表示部の機能も入力部の機能も、煩雑な操作をユーザに強いることなく最大限に利用することができるようにした入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成する第1の観点に係る入力装置の発明は、
少なくとも1つの入力領域を表示する第1のレイヤ、および該第1のレイヤとは異なる少なくとも1つの入力領域を表示する第2のレイヤを含む、複数のレイヤから構成される画面を表示する表示部と、
前記表示部と関連付けて配設され、当該表示部に表示される入力領域への入力を検知するタッチパネルと、
前記タッチパネルに対する入力態様を判別する入力態様判別部と、
前記第1のレイヤの表示する入力領域と、前記第2のレイヤの表示する入力領域とが重なる重複領域への入力を検知する重複領域入力検知部と、
前記重複領域入力検知部により、前記第1のレイヤの表示する入力領域と、前記第2のレイヤの表示する入力領域とが重なる重複領域への入力が検知される場合、前記入力態様判別部により当該入力が第1の入力態様による入力と判別されると、該入力を前記第1のレイヤに表示される入力領域への入力として処理し、前記入力態様判別部により当該入力が第2の入力態様による入力と判別されると、該入力を前記第2のレイヤに表示される入力領域への入力として処理する入力制御部と、
を備えることを特徴とするものである。
【0021】
さらに、上記目的を達成する第2の観点に係る入力装置の発明は、
少なくとも1つの入力領域を表示する第1のレイヤ、および該第1のレイヤとは異なる少なくとも1つの入力領域を表示する第2のレイヤを含む、複数のレイヤから構成される画面を表示する表示部と、
前記表示部と関連付けて配設され、当該表示部に表示される入力領域への入力を検知するタッチパネルと、
前記タッチパネルへの、前記第1のレイヤに対する第1の入力態様と、前記第2のレイヤに対する第2の入力態様とを判別する入力態様判別部と、
前記入力態様判別部により当該入力が前記第1の入力態様による入力と判別されると、該入力を前記第1のレイヤに表示される入力領域への入力として処理し、前記入力態様判別部により当該入力が前記第2の入力態様による入力と判別されると、該入力を前記第2のレイヤに表示される入力領域への入力として処理する入力制御部と、
を備えることを特徴とするものである。
【0022】
第3の観点に係る発明は、第1または第2の観点に係る入力装置において、
前記第1または第2のレイヤの一方に表示する入力領域への入力に応じて、当該第1または第2のレイヤの他方の所定の表示領域に表示を行う表示制御部をさらに備えることを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る入力装置を有する携帯端末の構成を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示す携帯端末の機能ブロック図である。
【図3】図1に示す携帯端末の表示部に表示する画面の例を示す図である。
【図4】図3の各レイヤを重畳表示させた例を示す図である。
【図5】図1に示す携帯端末の入力装置による、複数レイヤ操作処理について説明するフローチャートである。
【図6】図1に示す携帯端末の入力装置の各レイヤに対する入力方法の例を説明する図である。
【図7】図1に示す携帯端末の入力装置の動作について説明するフローチャートである。
【図8】図1に示す携帯電話の入力装置のメニューキーの表示の例を示す図である。
【図9】従来の2画面式携帯端末の例を示す図である。
【図10】従来の1画面式携帯端末の例を示す図である。
【図11】従来のデュアル・ビュー表示において、各視聴者別の入力を受け付ける方法を説明する図である。
【図12】図1に示す携帯端末の表示部に表示する英語の画面の例を示す図である。
【図13】図12の各レイヤを重畳表示させた英語の例を示す図である。
【図14】図1に示す携帯端末の入力装置の各レイヤに対する入力方法の英語の例を説明する図である。
【図15】図1に示す携帯電話の入力装置のメニューキーの英語の表示の例を示す図である。
【図16】従来の2画面式携帯端末の英語の例を示す図である。
【図17】従来の1画面式携帯端末の英語の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。なお、以下の実施の形態においては、入力装置を備えた端末の一例としてPDA等の携帯端末を例にとって説明するが、本発明の入力装置の適用は携帯端末に限定されるものではなく、タッチパネルを備える入力部を有する端末であれば、例えば据え置き型の入力装置など、任意の端末に適用することが可能である。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態に係る入力装置を有する携帯端末10の概略構成を示す外観斜視図である。この携帯端末10は、端末本体の前面に、一部切り欠いて示すように、液晶画面などに種々の情報およびキーやボタンなどの形状を描画してこれらの配列を表示する表示部11と、この表示部11の前面に配設してユーザの指などによる入力を直接受け付けるマトリクススイッチ等で構成したタッチパネル12とを配置する。携帯端末10はさらに、少なくとも1つの機械的なキーにより構成されるキー入力部13、音声を出力するスピーカ14、音声の入力を受け付けるマイク15も備えている。他にも、携帯端末10は、必要な機能に応じて、デジタルカメラ機能部、ワンセグ放送用チューナ、赤外線通信機能部などの近距離無線通信部、および各種インタフェース等を備える場合もあるが、これらの詳細については図示および説明を省略する。
【0026】
本実施の形態に係る携帯端末10は、表示部11に、種々のキーの形状および配置などを画像で表示する。ユーザが当該キーの表示された画像部分を押圧すると、その位置に対応するタッチパネル12を押圧することになり、タッチパネル12の押圧された位置の透明スイッチが、入力に応じた信号を出力する。
【0027】
図2は、本実施の形態に係る携帯端末10の内部の構成を示す機能ブロック図である。携帯端末10は、前述したように、表示部11、タッチパネル12、キー入力部13、スピーカ14、マイク15を備えている。携帯端末10はさらに、表示部11に表示する画像を後述のレイヤとして透過して重畳するなど表示態様を制御する表示態様制御部16と、タッチパネル12に対する入力に基づいてその入力の態様を判別する入力態様判別部17と、各アプリケーションに応じて入力用のキーやボタンの形状および配置などを表示部11に表示するための複数のテンプレートなど各種情報を記憶する記憶部18と、これら各ブロックを制御および管理する制御部19と、を備えている。
【0028】
図3は、携帯端末10の表示部11に表示する画面の例を示す図である。ここでは、一例として、広く一般に利用されている電子メール作成の際の表示部11の表示態様を図示してある。図3(a)は、制御部19が、電子メールの文章作成/編集に必要な操作キー群の配列を、記憶部18から読み出して表示部11に表示した図であり、図3(b)は電子メールの文章作成/編集画面を表示した図である。なお、ここでは、一例として電子メール作成機能について説明したが、表示部11は、携帯端末10の各機能に応じて、種々のテンプレートに従って、それぞれ当該機能を使用するのに適した表示画面および使い易いキー配列を記憶部18から読み出して表示する。
【0029】
ユーザは、図3(a)に示すような、表示部11に表示された操作キー群のキーを押圧して(実際にはタッチパネル12を押圧して)、電子メールを構成する文字を入力する。以下、現在一般に用いられている、電子メールの仮名文字入力方式を採用して、携帯端末10の入力操作を説明する。すなわち、「1」のキーに「あ行」を、「2」のキーに「か行」を、「3」キーに「さ行」のように、それぞれの数字キーに「あ行」〜「わ行」の各行を対応させて、各数字のキーを連続して押圧することで、その押圧の回数に応じて、対応する行の仮名を順送りに遷移させて一文字ずつ入力する方式を採用して説明する。
【0030】
図3(b)に示す表示画面には、画面上段に、ユーザが入力した電子メールの文字の変換経過を示す領域を表示し、中段には入力した文字の確定部分を表示している。図示した時点では、ユーザは、図3(a)に示す表示部のキーの中から「3(さ行)」のキーを1回押圧して、さ行1番目の文字である「さ」を入力し、次に「2(か行)」のキーを3回連続で押圧して、か行の仮名を順次遷移させて、か行3番目の文字である「く」を入力したところを示している。「さく」の仮名文字の入力に応じて、図3(b)の下段には「さく」で始まる種々の言葉の選択候補が表示されている。ユーザは、これら表示された言葉の中から候補を選択し確定させることができる。
【0031】
上述した図3(a)および図3(b)のような表示画面を、携帯端末10の表示部11に表示するにあたり、例えば、図9で説明したような複数の表示部110および120を有する携帯端末であれば、図3(a)の操作キー画面はタッチパネルを有するキー表示部120に表示し、また図3(b)の電子メール作成/編集画面は、情報表示部110に表示できる。しかしながら、本実施の形態の携帯端末10のように、表示部11が1つしかない場合には、1つの表示部で2画面を表示させなくてはならない。その際、例えば図10の携帯端末200のように、1つの表示部210の表示画面を区切ることで各画面を表示することもできる。しかしながら、このように表示すると、各画面をそれぞれ縮小して表示しなければならないため、限られた表示部の表示スペースを有効活用しているとは言えず、携帯端末の使用する機能によっては、表示部または入力部としての使い勝手が著しく悪化する場合も考えられる。
【0032】
そこで、本実施の形態では、表示態様制御部16が、各表示画面を縮小することなく、複数の表示画面を透過させることで、複数の表示画面を重畳しても各表示画面を視認することができるように制御する。以後、複数の表示画面を重畳させる場合のように、その複数の表示を構成する各表示画面を概念的に「レイヤ」と記す。また、説明の便宜のために、図3(a)のような操作キーが表示される表示画面を「操作レイヤ」と、図3(b)のような操作結果が表示される表示画面を「表示レイヤ」と記す。
【0033】
図4は、図3(a)および図3(b)の各レイヤを重畳表示させた例を示す図である。一方のレイヤに他方のレイヤをそのまま重畳させると、重なった下側のレイヤの表示画面は見えなくなってしまうため、表示態様制御部16により、上側のレイヤの表示画面の透過率を変更して、上側の画像を透過する状態にして重畳する。図4(a)は、操作レイヤ上で表示レイヤを透過させて重畳表示した図であり、図4(b)は、表示レイヤ上で操作レイヤを透過させて重畳表示した図である。このように上側のレイヤを透過させて重畳表示することにより、2つのレイヤの両方を視認できるので、各レイヤの表示を縮小したりする必要はなく、各レイヤのレイアウトを損なうことなく、表示部11の表示スペースを有効に利用できる。
【0034】
なお、表示態様制御部16は、この透過による重畳表示に際し、記憶部18に記憶されている設定に従って、様々な態様での表示が行えるように制御する。例えば、上記のような透過して重畳表示する機能を使用する/しないを予め設定しておく「画像透過オン/オフ」、任意のレイヤをどの程度透過させて表示するのかを設定する「レイヤ透過率」、複数のレイヤを重畳する順序を設定する「レイヤ順序」、レイヤを最大幾つまで重畳するかを設定する「最大重畳レイヤ数」など、種々の設定が行えるように制御する。なお、「最大重畳レイヤ数」を超えるレイヤが起動した場合には、最初に起動していたレイヤをスリープ状態の非表示とし、他のレイヤの表示が終了したら、当該スリープ状態のレイヤのスリープ状態を解除して再表示させるように構成してもよい。本例の場合には、操作キーについては配置の概観が視認できれば充分なため、レイヤ透過率およびレイヤ順序などの設定は図4(b)のようにするのが好適であるが、携帯端末10の各機能に応じて、各ユーザにとって最も使用し易い態様に設定することができる。
【0035】
上述のようにレイヤを透過させて重畳表示する際、各レイヤに表示された入力領域である、アイコン、ボタンまたはキーなどの位置が複数のレイヤの同じ位置に重なっていない場合には、特に問題なく各レイヤに対する入力操作を受け付けることができる。しかしながら、入力領域の位置が複数のレイヤの同じ位置に重なって表示される場合は、ユーザがその入力領域の位置を押圧操作しても、重畳表示されたどのレイヤの入力領域に対する入力なのか、タッチパネル12が判断することはできない。
【0036】
すなわち、例えば図4において、「3」のキーまたは選択候補の中の「削除」の文字については、図4(a)または(b)のどちらのレイヤで押圧操作をしても、入力領域の位置が各レイヤにて重なっていないため、タッチパネル12に入力があった位置から、どちらのレイヤの入力領域に対する入力なのかを正しく判定することができる。しかしながら、例えば「#」のキーまたは選択候補の中の「炸裂」の文字については、図4(a)または(b)のどちらのレイヤで押圧操作をしたとしても、タッチパネル12上での位置がほぼ同じになるため、その押圧位置からは、どちらの入力領域に対する入力なのか判定できない場合も想定される。
【0037】
したがって、本実施の形態では、携帯端末10は、複数のレイヤを重畳表示した際に入力領域の位置が重なっていても、所定の入力領域に対する入力として判別する「複数レイヤ操作処理」を行う。
【0038】
以下、図5に示すフローチャートを参照しながら、本実施の形態にかかる携帯端末10の入力装置による、複数レイヤ操作処理について説明する。なお、この複数レイヤ操作処理においては、その前提として、表示部11上に複数のレイヤを重畳表示しているものとする。また、ユーザがタッチパネル12にて所定の入力領域に対する入力を行う際に、どのレイヤに対する入力なのかを入力態様判別部17が判別できるように、当該入力の態様を予め記憶部18に記憶する。
【0039】
ここで言う入力の態様とは、例えば、1回押圧する通常の入力、長押し入力、2回素早く連続押圧する入力、押圧したまま指をスライドさせる入力、押圧した指をはじくようにする入力、選択するアイコンの周辺を円で囲むようになぞる入力など、様々な態様が考えられる。特に、指をスライドさせるような入力については、そのスライド方向に応じて入力の態様が変わるものとして扱うようにすることもできる(例えば上から下へのスライドは第1の入力態様、下から上へのスライドは第2の入力態様、など)。これらの入力の態様を、それぞれ、どのレイヤに対応する入力にするのかを予め記憶部18に記憶する。
【0040】
先ず、ステップS11にて、表示部11に表示された入力領域に対応する部分のタッチパネル12に入力が検知されたら、制御部19は、記憶部18に記憶された各レイヤのキー配列を参照することにより、入力が検知された入力領域の位置が、表示された複数のレイヤの複数の入力領域で重なっていないかどうかを判定する(ステップS12)。レイヤが複数存在していても入力領域の位置が重なっていなければ、ユーザはその入力領域に対する入力を意図していたものと考えられるため、制御部19は、当該入力領域に対する入力が行われたものとして、対応する処理を行う(ステップS13)。
【0041】
ステップS12にて、入力が検知された入力領域の位置が、他のレイヤの入力領域と重なっていた場合には、制御部19は、入力態様判別部17が判別した当該入力の態様の情報から、この入力がどのレイヤに対して行われたものなのかを判定し、その判定結果の示すレイヤの入力領域に対して入力操作が行われたものとして処理を行う(ステップS14)。
【0042】
したがって、入力領域が重複する部分について、例えば、「通常の1回押圧は操作レイヤに対する入力」として設定した場合、図6(a)に示すように、ユーザが「7」のキーに対する入力がしたい時には、「7」のキーを1回押圧する入力をすれば、入力態様判別部17の判別に基づいて、制御部19は、当該入力を操作レイヤに対する「7」の入力として処理する。また、入力領域が重複する部分について、「押圧したままスライドさせる入力は表示レイヤに対する入力」として設定した場合、ユーザが「作者」の文字を選択したい時には、図6(b)のように「作者」の表示位置をスライドさせる入力をすれば、入力態様判別部17の判別に基づいて、制御部19は、当該入力は表示レイヤの「作者」を選択したものとして処理する。したがって、本実施の形態では、入力態様判別部17および記憶部18を含んで入力態様判別部を構成する。また、タッチパネル12、表示態様制御部16、および制御部19を含んで重複領域入力検知部を構成する。なお、制御部19は、入力制御部も含む。
【0043】
このように、本実施の形態では、タッチパネル12上としては同じ位置にある、複数のレイヤの入力領域について、表示部11上で透過させた重畳表示の状態によらず(どのレイヤが一番上に表示されているか等には関係なく)、任意のレイヤに対する入力を、レイヤ毎に区別して直接行うことができる。したがって、入力の都度アクティブにするレイヤを選択したり、レイヤを切り替えたりする必要はなくなる。
【0044】
上述したように、本実施の形態では、「操作レイヤ」に対する入力の結果を、「表示レイヤ」に反映させて表示するといったように、あるレイヤに対する入力に基づく結果を、他のレイヤに反映させた表示を行うことができる。例えば、操作レイヤにて「1(あ行)」のキーを押圧すると、制御部19は、先ず、当該操作レイヤにて「1(あ行)」のキーが押圧されたことを示す確認表示(例えば一瞬の反転表示など)をさせた後に、この入力に基づいて、表示レイヤに「あ」の文字が出力されるような処理を行うことができる。したがって、本実施の形態では、表示態様制御部16および制御部19を含んで、表示制御部を構成している。
【0045】
また、図6に示すような電子メールの作成段階にて、仮名文字の入力に応じて表示レイヤの下段に種々の言葉の選択候補が表示され、ユーザがその中から候補を選択する場合、従来の方式であれば、ユーザは、操作レイヤの上部に表示されている十字方向キーを用いるなどして仮名文字の変換候補を選択するのが通常である。本実施の形態の携帯端末10では、透過させることで複数のレイヤを重畳表示し、かつ任意のレイヤに対して直接入力を行うことができる。このため、ユーザは、上述のような候補を選択する際に、表示レイヤに対する入力の態様で入力を行うことにより、表示レイヤから選択候補を直接選択することが可能である。したがって、ユーザは、タッチパネルを有する入力部を用いるメリットを最大限に活かすことができる。
【0046】
さらに、ユーザの入力がどのレイヤに対応する態様の入力であるのかを入力態様判別部17が判別できなかった場合に備えて、各レイヤに対して入力の優先順位を予め設定することもできる。すなわち、例えば、通常の1回押圧操作は操作レイヤに対する入力と判別し、スライド入力は表示レイヤに対する入力と判別するように設定した場合において、ユーザの入力が1回の押圧なのかスライド入力なのか、入力態様判別部17が判別できなかった場合には、例えば優先的に表示レイヤに対する入力とするような設定を予め施すこともできる。また、最初に出現したレイヤに対する入力操作の態様を例えば通常の1回押圧と設定した場合には、次に出現するレイヤに対する入力操作の態様は通常の1回押圧とは異なる態様とすることになる。このため、ある入力が、判別が容易と想定される通常の1回の押圧とは認識できなかった場合には、優先的に、後から出現したレイヤに対する入力と判定するような設定をすることもできる。
【0047】
次に、図7に示すフローチャートを参照しながら、本実施の形態による携帯端末10の入力装置の動作について説明する。これは、上述の「複数レイヤ操作処理」を含めた、複数レイヤが起動する際の携帯端末10の動作の例についてさらに説明するものである。
【0048】
スタート後、ステップS21にて、もともと起動していた表示画面に対して、新たな表示画面を重畳させて、複数のレイヤが起動したら、制御部19は、画像透過機能の設定を記憶部18から読み込む(ステップS22)。画像透過機能の設定の読み込みでは、上述した「画像透過オン/オフ」、「レイヤ透過率」、「レイヤ順序」、「最大重畳レイヤ数」のほか、上述の「複数レイヤ操作処理」で必要となる、各入力の態様とレイヤとの対応付け、さらに、後述の「メニューキー」の表示/非表示、などの予め施した各種設定を読み込む。
【0049】
次に、ステップS22にて読み込まれた情報の中にある「画像透過オン/オフ」について、透過して重畳表示する機能を使用する/しないのどちらの設定になっているかを判別する(ステップS23)。ステップS23にて、画像透過オフ、つまり重畳表示しない設定になっている場合には、レイヤを複数にしないで複数画面を表示するため、制御部19は、設定にしたがって画面を分割して表示するように、表示態様制御部16を制御する(ステップS24)。
【0050】
ステップS23にて、画像透過オンの設定になっている場合は、制御部19は、複数のレイヤを適宜設定に従って透過させて重畳表示するように表示態様制御部16を制御してから、表示部11にメニューキーが表示される設定になっている場合には、当該メニューキーが押圧されたか否かを判定する(ステップS25)。なお、このメニューキーは、例えば図8に示すように、操作レイヤの右上部分などに入力領域として表示する。ステップS25にてこのメニューキーが押圧された場合、制御部19は、上述した「画像透過機能」の各種設定を行うことができる設定画面を表示するように表示態様制御部16を制御する(ステップS26)。また、このメニューキーは、一定時間経過後に非表示に移行させ、タッチパネル12の縁部をなぞる等の特殊な入力に応じて再表示させるようにすれば、他の表示の邪魔となることがなく好適である。ステップS26にて設定画面により設定が行われた後、制御部19は、ステップS22に戻って当該設定を記憶部18から読み込む。
【0051】
ステップS25にてメニューキーが押圧されない場合、ステップS27に移行して、図5のフローチャートにて説明した「複数レイヤ操作処理」を行う。一連の入力操作中には、ユーザがアプリケーションを起動させるなどして、更なるレイヤが起動する場合もあるが、アプリケーションの終了処理などに伴い、不必要になったレイヤを消滅させる場合もある。ステップS28では、制御部19が、現在起動しているレイヤ数をチェックして、複数レイヤが起動している限りはステップS27の複数レイヤ操作処理を繰り返す。一方、もはや複数レイヤが起動していないと判定された場合には、制御部19は、重畳表示に伴う複数レイヤの入力を制御する処理を終了させる。
【0052】
このようにすることで、「複数レイヤ操作処理」を含めた複数レイヤ起動時の一連の入力処理において、画像透過機能の設定を適宜変更することが可能になり、使用する機能によってレイヤの透過表示または画面分割表示が選択可能になるので、ユーザは極めて使い勝手の良い操作環境を得ることができる。
【0053】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、「複数レイヤ操作処理」において、入力が検知された入力領域の位置が、複数のレイヤに表示された複数の入力領域で重なっていないかどうかを判定し、重なっている場合に、この入力がどのレイヤに対して行われたものなのかを判定した。しかしながら、他の例として、入力が検知された入力領域の位置が、複数のレイヤに表示された入力領域で重なっているか否かに拘らず、常に、予め設定してある、入力の態様とレイヤとの対応関係に基づいて処理を行うようにすることもできる。
【0054】
すなわち、タッチパネル12に対して第1の態様の入力(例えば単純な1回押圧)が行われたら、それは常に第1のレイヤに対する入力として判定および処理し、第2の態様の入力(例えばスライド入力)が行われたら、それは常に第2のレイヤに対する入力として判定および処理する、というような構成にすることもできる。携帯端末10にて使用する機能によっては、このようにレイヤごとに固定された操作方法が好ましい場合もあり得る。
【0055】
また、上記実施の形態においては、説明の便宜のために、重畳表示させるレイヤの数を2つとしたが、当然3つ以上のレイヤを重畳させて表示するようにもできる。この場合には、3つ以上の各レイヤの透過率が全体として段階的に異なるように変更して、複数のレイヤを重畳表示させても各レイヤを視認することができるように表示して、各レイヤに対して異なる入力の態様を対応させるようにするのが好適である。
【0056】
(英語の場合の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について、英語の場合を、図を参照して説明する。なお、以下の実施の形態においては、入力装置を備えた端末の一例としてPDA等の携帯端末を例にとって説明するが、本発明の入力装置の適用は携帯端末に限定されるものではなく、タッチパネルを備える入力部を有する端末であれば、例えば据え置き型の入力装置など、任意の端末に適用することが可能である。
【0057】
図1は、本発明の実施の形態に係る入力装置を有する携帯端末10の概略構成を示す外観斜視図である。この携帯端末10は、端末本体の前面に、一部切り欠いて示すように、液晶画面などに種々の情報およびキーやボタンなどの形状を描画してこれらの配列を表示する表示部11と、この表示部11の前面に配設してユーザの指などによる入力を直接受け付けるマトリクススイッチ等で構成したタッチパネル12とを配置する。携帯端末10はさらに、少なくとも1つの機械的なキーにより構成されるキー入力部13、音声を出力するスピーカ14、音声の入力を受け付けるマイク15も備えている。他にも、携帯端末10は、必要な機能に応じて、デジタルカメラ機能部、ワンセグ放送用チューナ、赤外線通信機能部などの近距離無線通信部、および各種インタフェース等を備える場合もあるが、これらの詳細については図示および説明を省略する。
【0058】
本実施の形態に係る携帯端末10は、表示部11に、種々のキーの形状および配置などを画像で表示する。ユーザが当該キーの表示された画像部分を押圧すると、その位置に対応するタッチパネル12を押圧することになり、タッチパネル12の押圧された位置の透明スイッチが、入力に応じた信号を出力する。
【0059】
図2は、本実施の形態に係る携帯端末10の内部の構成を示す機能ブロック図である。携帯端末10は、前述したように、表示部11、タッチパネル12、キー入力部13、スピーカ14、マイク15を備えている。携帯端末10はさらに、表示部11に表示する画像を後述のレイヤとして透過して重畳するなど表示態様を制御する表示態様制御部16と、タッチパネル12に対する入力に基づいてその入力の態様を判別する入力態様判別部17と、各アプリケーションに応じて入力用のキーやボタンの形状および配置などを表示部11に表示するための複数のテンプレートなど各種情報を記憶する記憶部18と、これら各ブロックを制御および管理する制御部19と、を備えている。
【0060】
図12は、携帯端末10の表示部11に表示する画面の例を示す図である。ここでは、一例として、広く一般に利用されている電子メール作成の際の表示部11の表示態様を図示してある。図12(a)は、制御部19が、電子メールの文章作成/編集に必要な操作キー群の配列を、記憶部18から読み出して表示部11に表示した図であり、図12(b)は電子メールの文章作成/編集画面を表示した図である。なお、ここでは、一例として電子メール作成機能について説明したが、表示部11は、携帯端末10の各機能に応じて、種々のテンプレートに従って、それぞれ当該機能を使用するのに適した表示画面および使い易いキー配列を記憶部18から読み出して表示する。
【0061】
ユーザは、図12(a)に示すような、表示部11に表示された操作キー群のキーを押圧して(実際にはタッチパネル12を押圧して)、電子メールを構成する文字を入力する。以下、現在一般に用いられている、電子メールの文字入力方式を採用して、携帯端末10の入力操作を説明する。すなわち、「2」のキーに「A,B,C」を、「3」のキーに「D,E,F」を、「4」キーに「G,H,I」のように、それぞれの数字キーに「A」〜「Z」の各文字を対応させて、各数字のキーを連続して押圧することで、その押圧の回数に応じて、対応する文字を順送りに遷移させて一文字ずつ入力する方式を採用して説明する。(例えば、「H」を入力する場合は、「4」のキーを2回押圧する。)
【0062】
図12(b)に示す表示画面には、画面上段に、ユーザが入力した電子メールの文字の変換経過を示す領域を表示し、中段には入力した文字の確定部分を表示している。図示した時点では、ユーザは、図12(a)に示す表示部11のキーの中から「9(W,X,Y,Z)」のキーを3回押圧して、3番目の文字である「Y」を入力したところを示している。「Y」の文字の入力に応じて、図12(b)の下段には「Y」で始まる種々の言葉の選択候補が表示されている。ユーザは、これら表示された言葉の中から候補を選択し確定させることができる。
【0063】
上述した図12(a)および図12(b)のような表示画面を、携帯端末10の表示部11に表示するにあたり、例えば、図16で説明したような複数の表示部110および120を有する携帯端末であれば、図12(a)の操作キー画面はタッチパネルを有するキー表示部120に表示し、また図12(b)の電子メール作成/編集画面は、情報表示部110に表示できる。しかしながら、本実施の形態の携帯端末10のように、表示部11が1つしかない場合には、1つの表示部で2画面を表示させなくてはならない。その際、例えば図17の携帯端末200のように、1つの表示部210の表示画面を区切ることで各画面を表示することもできる。しかしながら、このように表示すると、各画面をそれぞれ縮小して表示しなければならないため、限られた表示部の表示スペースを有効活用しているとは言えず、携帯端末の使用する機能によっては、表示部または入力部としての使い勝手が著しく悪化する場合も考えられる。
【0064】
そこで、本実施の形態では、表示態様制御部16が、各表示画面を縮小することなく、複数の表示画面を透過させることで、複数の表示画面を重畳しても各表示画面を視認することができるように制御する。以後、複数の表示画面を重畳させる場合のように、その複数の表示を構成する各表示画面を概念的に「レイヤ」と記す。また、説明の便宜のために、図12(a)のような操作キーが表示される表示画面を「操作レイヤ」と、図12(b)のような操作結果が表示される表示画面を「表示レイヤ」と記す。
【0065】
図13は、図12(a)および図12(b)の各レイヤを重畳表示させた例を示す図である。一方のレイヤに他方のレイヤをそのまま重畳させると、重なった下側のレイヤの表示画面は見えなくなってしまうため、表示態様制御部16により、上側のレイヤの表示画面の透過率を変更して、上側の画像を透過する状態にして重畳する。図13(a)は、操作レイヤ上で表示レイヤを透過させて重畳表示した図であり、図13(b)は、表示レイヤ上で操作レイヤを透過させて重畳表示した図である。このように上側のレイヤを透過させて重畳表示することにより、2つのレイヤの両方を視認できるので、各レイヤの表示を縮小したりする必要はなく、各レイヤのレイアウトを損なうことなく、表示部11の表示スペースを有効に利用できる。
【0066】
なお、表示態様制御部16は、この透過による重畳表示に際し、記憶部18に記憶されている設定に従って、様々な態様での表示が行えるように制御する。例えば、上記のような透過して重畳表示する機能を使用する/しないを予め設定しておく「画像透過オン/オフ」、任意のレイヤをどの程度透過させて表示するのかを設定する「レイヤ透過率」、複数のレイヤを重畳する順序を設定する「レイヤ順序」、レイヤを最大幾つまで重畳するかを設定する「最大重畳レイヤ数」など、種々の設定が行えるように制御する。なお、「最大重畳レイヤ数」を超えるレイヤが起動した場合には、最初に起動していたレイヤをスリープ状態の非表示とし、他のレイヤの表示が終了したら、当該スリープ状態のレイヤのスリープ状態を解除して再表示させるように構成してもよい。本例の場合には、操作キーについては配置の概観が視認できれば充分なため、レイヤ透過率およびレイヤ順序などの設定は図13(b)のようにするのが好適であるが、携帯端末10の各機能に応じて、各ユーザにとって最も使用し易い態様に設定することができる。
【0067】
上述のようにレイヤを透過させて重畳表示する際、各レイヤに表示された入力領域である、アイコン、ボタンまたはキーなどの位置が複数のレイヤの同じ位置に重なっていない場合には、特に問題なく各レイヤに対する入力操作を受け付けることができる。しかしながら、入力領域の位置が複数のレイヤの同じ位置に重なって表示される場合は、ユーザがその入力領域の位置を押圧操作しても、重畳表示されたどのレイヤの入力領域に対する入力なのか、タッチパネル12が判断することはできない。
【0068】
すなわち、例えば図13において、「3」のキーまたは選択候補の中の「Year」の文字については、図13(a)または(b)のどちらのレイヤで押圧操作をしても、入力領域の位置が各レイヤにて重なっていないため、タッチパネル12に入力があった位置から、どちらのレイヤの入力領域に対する入力なのかを正しく判定することができる。しかしながら、例えば「#」のキーまたは選択候補の中の「Yield」の文字については、図13(a)または(b)のどちらのレイヤで押圧操作をしたとしても、タッチパネル12上での位置がほぼ同じになるため、その押圧位置からは、どちらの入力領域に対する入力なのか判定できない場合も想定される。
【0069】
したがって、本実施の形態では、携帯端末10は、複数のレイヤを重畳表示した際に入力領域の位置が重なっていても、所定の入力領域に対する入力として判別する「複数レイヤ操作処理」を行う。
【0070】
以下、図5に示すフローチャートを参照しながら、本実施の形態にかかる携帯端末10の入力装置による、複数レイヤ操作処理について説明する。なお、この複数レイヤ操作処理においては、その前提として、表示部11上に複数のレイヤを重畳表示しているものとする。また、ユーザがタッチパネル12にて所定の入力領域に対する入力を行う際に、どのレイヤに対する入力なのかを入力態様判別部17が判別できるように、当該入力の態様を予め記憶部18に記憶する。
【0071】
ここで言う入力の態様とは、例えば、1回押圧する通常の入力、長押し入力、2回素早く連続押圧する入力、押圧したまま指をスライドさせる入力、押圧した指をはじくようにする入力、選択するアイコンの周辺を円で囲むようになぞる入力など、様々な態様が考えられる。特に、指をスライドさせるような入力については、そのスライド方向に応じて入力の態様が変わるものとして扱うようにすることもできる(例えば上から下へのスライドは第1の入力態様、下から上へのスライドは第2の入力態様、など)。これらの入力の態様を、それぞれ、どのレイヤに対応する入力にするのかを予め記憶部18に記憶する。
【0072】
先ず、ステップS11にて、表示部11に表示された入力領域に対応する部分のタッチパネル12に入力が検知されたら、制御部19は、記憶部18に記憶された各レイヤのキー配列を参照することにより、入力が検知された入力領域の位置が、表示された複数のレイヤの複数の入力領域で重なっていないかどうかを判定する(ステップS12)。レイヤが複数存在していても入力領域の位置が重なっていなければ、ユーザはその入力領域に対する入力を意図していたものと考えられるため、制御部19は、当該入力領域に対する入力が行われたものとして、対応する処理を行う(ステップS13)。
【0073】
ステップS12にて、入力が検知された入力領域の位置が、他のレイヤの入力領域と重なっていた場合には、制御部19は、入力態様判別部17が判別した当該入力の態様の情報から、この入力がどのレイヤに対して行われたものなのかを判定し、その判定結果の示すレイヤの入力領域に対して入力操作が行われたものとして処理を行う(ステップS14)。
【0074】
したがって、入力領域が重複する部分について、例えば、「通常の1回押圧は操作レイヤに対する入力」として設定した場合、図14(a)に示すように、ユーザが「6」のキーに対する入力がしたい時には、「6」のキーを1回押圧する入力をすれば、入力態様判別部17の判別に基づいて、制御部19は、当該入力を操作レイヤに対する「6」の入力として処理する。また、入力領域が重複する部分について、「押圧したままスライドさせる入力は表示レイヤに対する入力」として設定した場合、ユーザが「You」の文字を選択したい時には、図14(b)のように「You」の表示位置をスライドさせる入力をすれば、入力態様判別部17の判別に基づいて、制御部19は、当該入力は表示レイヤの「You」を選択したものとして処理する。したがって、本実施の形態では、入力態様判別部17および記憶部18を含んで入力態様判別部を構成する。また、タッチパネル12、表示態様制御部16、および制御部19を含んで重複領域入力検知部を構成する。なお、制御部19は、入力制御部も含む。
【0075】
このように、本実施の形態では、タッチパネル12上としては同じ位置にある、複数のレイヤの入力領域について、表示部11上で透過させた重畳表示の状態によらず(どのレイヤが一番上に表示されているか等には関係なく)、任意のレイヤに対する入力を、レイヤ毎に区別して直接行うことができる。したがって、入力の都度アクティブにするレイヤを選択したり、レイヤを切り替えたりする必要はなくなる。
【0076】
上述したように、本実施の形態では、「操作レイヤ」に対する入力の結果を、「表示レイヤ」に反映させて表示するといったように、あるレイヤに対する入力に基づく結果を、他のレイヤに反映させた表示を行うことができる。例えば、操作レイヤにて「2(A,B,C)」のキーを押圧すると、制御部19は、先ず、当該操作レイヤにて「2(A,B,C)」のキーが押圧されたことを示す確認表示(例えば一瞬の反転表示など)をさせた後に、この入力に基づいて、表示レイヤに「A」の文字が出力されるような処理を行うことができる。したがって、本実施の形態では、表示態様制御部16および制御部19を含んで、表示制御部を構成している。
【0077】
また、図14に示すような電子メールの作成段階にて、文字の入力に応じて表示レイヤの下段に種々の言葉の選択候補が表示され、ユーザがその中から候補を選択する場合、従来の方式であれば、ユーザは、操作レイヤの上部に表示されている十字方向キーを用いるなどして文字の変換候補を選択するのが通常である。本実施の形態の携帯端末10では、透過させることで複数のレイヤを重畳表示し、かつ任意のレイヤに対して直接入力を行うことができる。このため、ユーザは、上述のような候補を選択する際に、表示レイヤに対する入力の態様で入力を行うことにより、表示レイヤから選択候補を直接選択することが可能である。したがって、ユーザは、タッチパネルを有する入力部を用いるメリットを最大限に活かすことができる。
【0078】
さらに、ユーザの入力がどのレイヤに対応する態様の入力であるのかを入力態様判別部17が判別できなかった場合に備えて、各レイヤに対して入力の優先順位を予め設定することもできる。すなわち、例えば、通常の1回押圧操作は操作レイヤに対する入力と判別し、スライド入力は表示レイヤに対する入力と判別するように設定した場合において、ユーザの入力が1回の押圧なのかスライド入力なのか、入力態様判別部17が判別できなかった場合には、例えば優先的に表示レイヤに対する入力とするような設定を予め施すこともできる。また、最初に出現したレイヤに対する入力操作の態様を例えば通常の1回押圧と設定した場合には、次に出現するレイヤに対する入力操作の態様は通常の1回押圧とは異なる態様とすることになる。このため、ある入力が、判別が容易と想定される通常の1回の押圧とは認識できなかった場合には、優先的に、後から出現したレイヤに対する入力と判定するような設定をすることもできる。
【0079】
次に、図7に示すフローチャートを参照しながら、本実施の形態による携帯端末10の入力装置の動作について説明する。これは、上述の「複数レイヤ操作処理」を含めた、複数レイヤが起動する際の携帯端末10の動作の例についてさらに説明するものである。
【0080】
スタート後、ステップS21にて、もともと起動していた表示画面に対して、新たな表示画面を重畳させて、複数のレイヤが起動したら、制御部19は、画像透過機能の設定を記憶部18から読み込む(ステップS22)。画像透過機能の設定の読み込みでは、上述した「画像透過オン/オフ」、「レイヤ透過率」、「レイヤ順序」、「最大重畳レイヤ数」のほか、上述の「複数レイヤ操作処理」で必要となる、各入力の態様とレイヤとの対応付け、さらに、後述の「メニューキー」の表示/非表示、などの予め施した各種設定を読み込む。
【0081】
次に、ステップS22にて読み込まれた情報の中にある「画像透過オン/オフ」について、透過して重畳表示する機能を使用する/しないのどちらの設定になっているかを判別する(ステップS23)。ステップS23にて、画像透過オフ、つまり重畳表示しない設定になっている場合には、レイヤを複数にしないで複数画面を表示するため、制御部19は、設定にしたがって画面を分割して表示するように、表示態様制御部16を制御する(ステップS24)。
【0082】
ステップS23にて、画像透過オンの設定になっている場合は、制御部19は、複数のレイヤを適宜設定に従って透過させて重畳表示するように表示態様制御部16を制御してから、表示部11にメニューキーが表示される設定になっている場合には、当該メニューキーが押圧されたか否かを判定する(ステップS25)。なお、このメニューキーは、例えば図15に示すように、操作レイヤの右上部分などに入力領域として表示する。ステップS25にてこのメニューキーが押圧された場合、制御部19は、上述した「画像透過機能」の各種設定を行うことができる設定画面を表示するように表示態様制御部16を制御する(ステップS26)。また、このメニューキーは、一定時間経過後に非表示に移行させ、タッチパネル12の縁部をなぞる等の特殊な入力に応じて再表示させるようにすれば、他の表示の邪魔となることがなく好適である。ステップS26にて設定画面により設定が行われた後、制御部19は、ステップS22に戻って当該設定を記憶部18から読み込む。
【0083】
ステップS25にてメニューキーが押圧されない場合、ステップS27に移行して、図5のフローチャートにて説明した「複数レイヤ操作処理」を行う。一連の入力操作中には、ユーザがアプリケーションを起動させるなどして、更なるレイヤが起動する場合もあるが、アプリケーションの終了処理などに伴い、不必要になったレイヤを消滅させる場合もある。ステップS28では、制御部19が、現在起動しているレイヤ数をチェックして、複数レイヤが起動している限りはステップS27の複数レイヤ操作処理を繰り返す。一方、もはや複数レイヤが起動していないと判定された場合には、制御部19は、重畳表示に伴う複数レイヤの入力を制御する処理を終了させる。
【0084】
このようにすることで、「複数レイヤ操作処理」を含めた複数レイヤ起動時の一連の入力処理において、画像透過機能の設定を適宜変更することが可能になり、使用する機能によってレイヤの透過表示または画面分割表示が選択可能になるので、ユーザは極めて使い勝手の良い操作環境を得ることができる。
【0085】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、「複数レイヤ操作処理」において、入力が検知された入力領域の位置が、複数のレイヤに表示された複数の入力領域で重なっていないかどうかを判定し、重なっている場合に、この入力がどのレイヤに対して行われたものなのかを判定した。しかしながら、他の例として、入力が検知された入力領域の位置が、複数のレイヤに表示された入力領域で重なっているか否かに拘らず、常に、予め設定してある、入力の態様とレイヤとの対応関係に基づいて処理を行うようにすることもできる。
【0086】
すなわち、タッチパネル12に対して第1の態様の入力(例えば単純な1回押圧)が行われたら、それは常に第1のレイヤに対する入力として判定および処理し、第2の態様の入力(例えばスライド入力)が行われたら、それは常に第2のレイヤに対する入力として判定および処理する、というような構成にすることもできる。携帯端末10にて使用する機能によっては、このようにレイヤごとに固定された操作方法が好ましい場合もあり得る。
【0087】
また、上記実施の形態においては、説明の便宜のために、重畳表示させるレイヤの数を2つとしたが、当然3つ以上のレイヤを重畳させて表示するようにもできる。この場合には、3つ以上の各レイヤの透過率が全体として段階的に異なるように変更して、複数のレイヤを重畳表示させても各レイヤを視認することができるように表示して、各レイヤに対して異なる入力の態様を対応させるようにするのが好適である。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明によれば、表示部に第1および第2のレイヤを含む複数のレイヤを重畳表示させることによって、各レイヤにおける表示領域を最大限に利用することができ、かつ第1および第2のレイヤに対する入力を区別できるようにしたので、入力装置の表示部の機能も入力部の機能も最大限に利用することができ、ユーザに対する利便性を著しく向上させることができる。
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2007年7月30日に出願された日本国特許出願2007−197732号の優先権を主張するものであり、この先の出願の開示全体をここに参照のために取り込む。
【0002】
本発明は、入力装置に関し、特に、タッチパネルを有する入力装置に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば携帯電話のような携帯端末においては、ユーザが端末の操作を行う際に使用する入力装置は、各端末の機能および/または用途に応じて様々なものが開発されている。多くの携帯端末は、端末本体の表面に予め配設された機械的なキーまたはボタンなどを、ユーザが指などで直接押下する操作による入力を受け付ける構成になっている。
【0004】
このような端末における入力装置の機械的なキーは、当該端末の主要な用途に応じて予め配置されているのが普通であり、一般的に、最初に規定されたキーの物理的配置を、後から変更できるようにはなっていない。
【0005】
ところで、最近では、携帯電話にデジタルカメラや音楽再生などの機能を搭載したものがあるように、小型の携帯端末に多種多様な機能が組み込まれている。各端末の主要な用途以外にも、補助的な機能が数多く搭載されているものや、PDA(Personal Digital Assistants:携帯情報端末)等のように、1つの端末でスケジュール管理や住所録など、主要な用途を複数有するものもある。このような多機能の端末においては、キーの配置が固定されていると、使用する機能によっては、入力操作時に不便さを感じることがある。
【0006】
このような操作の不便さを解消し得るものとして、例えば特許文献1には、液晶表示画面の前面にタッチパネルを重ねて配設した入力装置を有する携帯電話機が開示されている。この携帯電話機の入力装置は、表示画面上に画像で表示された操作キーやボタンなどを押圧すると、その位置に対応するタッチパネルが入力を受け付ける構成になっている。
【0007】
この携帯電話機は、表示画面上に任意にキーの配置を表示させて入力することが可能であるため、自由なキー配置を構成することができる。したがって、端末の各機能を切り替える毎に、その機能に応じてキー配置を自在に変更することができ、極めて良好な操作性を得ることができる。例えば、この携帯電話機に搭載されているデジタルカメラの機能を使用する際には、表示部上で、シャッターやズームなどのキーを使いやすい位置に配置させ、また文字入力の際には、表示部上のキー配列を変更して、パーソナルコンピュータのキーボードのような配列のキーを配置させることができる。このような端末を用いれば、ユーザは、1つの端末の入力装置を、複数の機能にそれぞれ最適化させて入力操作を行うことができる。
【0008】
しかしながら、入力装置としてタッチパネルを用いる端末は、各キーを自在に配置できるように、当該タッチパネルの表面全体が平坦になっているため、予め配置された機械的なキーやボタンを用いて操作する入力装置のように、各キー表面の物理的な凹凸感を指先の感触で感知することによりキーの形状やキー同士の境界を判別するということはできない。そのため、このような入力装置でタッチタイピング(ブラインドタッチ)を行うことは一般に困難である。
【0009】
特に、例えば図9に示すように、タッチパネルを有する2画面式携帯電話100を用いて、電子メールの文章を作成するために文字を入力する際には、タッチパネルを押圧して入力操作を行う操作キー表示部120と、入力の経過や結果が表示される情報表示部110とは位置が異なることが多い。そのため、ユーザは、正確な入力を行うためには、タッチパネルに表示されたキーを押圧する毎に、キー表示部120の押圧するキーを注視して確実な押圧操作を行わなければならない。さらに、その入力結果が所望の通りに反映されたか否かを、入力結果が表示される情報表示部110に視線を移行させて確認するというように、ユーザは視線を絶えず往来させる必要がある。
【0010】
一方、例えば図10に示すように、1つの表示部の前面にタッチパネルを配設した、1つの入力部兼表示部210のみを有するPDAのような端末200は、入力部と表示部が別個に構成された端末に比べて、ユーザが入力を行う際に絶えず視線を往来させる負担を軽減させることができる。しかしながら、この端末200が、例えばTV電話機能で使用する入力部とアドレス帳の情報とを両方とも表示する場合や、または電子メールの文章を作成するためのキーを表示し更にそのキーによる入力結果も表示する場合などは、図示のように、(タッチパネルを備えた)表示部210の表示を上下などに分割して表示するのが一般的である。このように分割表示する場合、表示部210の各表示は、それぞれ小さく表示したり、一部を省略したりして表示しなくてはならない。しかしながら、携帯端末のように端末本体を小型化する必要がある場合には、表示部の大きさも制約を受けるため、例えば1つ1つのキーを小さく表示して、キー表示部に表示されるキーを多数にする場合には、操作性が悪化する恐れがある。
【0011】
このような不都合を解消し得るものとして、例えば特許文献2には、1つの入力部兼表示部に対して、その入力部および表示部を画面上の同じ箇所に重畳表示する表示装置が開示されている。この表示装置によれば、入力部および表示部の表示を縮小せずに、限られた画面の表示スペースを有効活用できる。
【0012】
この表示装置は、タッチパネルを備えた表示部上に所定の画像を表示させ、さらにその画像上にキーボードの画像を透過表示させて、両方の画像を視認できるように重ねて表示するため、ユーザは、この透過表示したキーボードで入力操作を行うことができる。したがって、この表示装置を用いれば、ユーザは、2画面のどちらの表示も縮小せずに、表示の切り替えなども行うことなく、同一画面上で複数のレイヤ(重畳した表示の層)の表示を見ながら入力操作を行うことができる。
【0013】
しかしながら、この表示装置は、2つの表示画面を、「設定用表示ウインドウ」と「テンキーパッド」のキーボードウインドウとで区別して制御する。したがって、この表示装置は、テンキーパッドを重畳して表示して、これを用いて入力を受け付けている間は、設定用表示ウインドウへの入力操作は受け付けないようにしている。すなわち、この表示装置は、2つのレイヤを重畳表示して、さらにどちらのレイヤの表示も視認可能な透過表示にはなってはいるが、片方のレイヤに対する入力のみを受け付けるように制御しているため、両方のレイヤへの入力を受け付けるような構成に対応することはできない。
【0014】
なお、一般的に、複数のレイヤへの入力に対処する方法として、表示画面に複数のレイヤを表示させ、それらのレイヤのうち1つに対する操作入力を受け付ける場合には、当該操作入力を受け付ける前に、入力を受け付けるレイヤをアクティブなレイヤとするユーザの選択操作を受け付けてから、そのレイヤへの操作入力を受け付ける方法が知られている。しかしながら、この方法では、ユーザは、入力するレイヤを変更するたびに、アクティブにするレイヤの選択操作をその都度行わなくてはならないため、煩雑な変更操作を強いられる。
【0015】
このような問題に対処し得るものとして、例えば特許文献3は、図11に示すように、2つの画面(表示レイヤ)を1つの表示装置300に重畳表示しつつ、さらに、レイヤの切り替えなどを行うことなく、どのレイヤに対しても入力を可能にした技術が開示されている。
【0016】
特許文献3記載の表示装置300は、同一の表示部に対する複数の視点にそれぞれ対応する複数の表示方向に、互いに異なる複数の画像を同時に表示するデュアル・ビュー表示をすることができる。これにより、例えば視聴者Aからは画像(b)が、また視聴者Bからは画像(c)が見えるというように、複数の視聴者が異なる視点から各々異なる画像を観察することができる。さらに、この表示装置300は、各視聴者がそれぞれ自分の見ている表示レイヤに対して、例えば視聴者AからはアイコンAに対して、また視聴者BからはアイコンBに対して、それぞれ別個に入力操作を受け付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2006−311224号公報
【特許文献2】特開2003−295996号公報
【特許文献3】特開2005−284592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、特許文献3に記載の技術では、各表示レイヤ(画像(b)および(c))において個別の入力画面を表示するにあたり、異なるレイヤのアイコンを同時に同じ場所に重畳しないように表示位置を変更させる非重畳制御を行っている。また、アイコンを同じ位置に表示する際には、各アイコンの表示のタイミングをずらしたりして、複数のアイコンが同時に同じ位置で異なる入力を受け付けることがないように制御を行っている。このため、各レイヤの表示に関しては、様々なアイコンやキーの配列表示を行う上で、表示位置および表示タイミングについて、相当な制約を受ける場合もあると予想される。これでは、表示部の表示スペースを有効活用するために各レイヤの表示を重畳させているにも拘らず、その表示スペース内に表示される操作キーおよびアイコンなどの表示位置および表示タイミングについては、表示スペースの有効活用が充分に図れない恐れもある。
【0019】
したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、タッチパネルを備える入力部兼表示部の、表示部の機能も入力部の機能も、煩雑な操作をユーザに強いることなく最大限に利用することができるようにした入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成する第1の観点に係る入力装置の発明は、
少なくとも1つの入力領域を表示する第1のレイヤ、および該第1のレイヤとは異なる少なくとも1つの入力領域を表示する第2のレイヤを含む、複数のレイヤから構成される画面を表示する表示部と、
前記表示部と関連付けて配設され、当該表示部に表示される入力領域への入力を検知するタッチパネルと、
前記タッチパネルに対する入力態様を判別する入力態様判別部と、
前記第1のレイヤの表示する入力領域と、前記第2のレイヤの表示する入力領域とが重なる重複領域への入力を検知する重複領域入力検知部と、
前記重複領域入力検知部により、前記第1のレイヤの表示する入力領域と、前記第2のレイヤの表示する入力領域とが重なる重複領域への入力が検知される場合、前記入力態様判別部により当該入力が第1の入力態様による入力と判別されると、該入力を前記第1のレイヤに表示される入力領域への入力として処理し、前記入力態様判別部により当該入力が第2の入力態様による入力と判別されると、該入力を前記第2のレイヤに表示される入力領域への入力として処理する入力制御部と、
を備えることを特徴とするものである。
【0021】
さらに、上記目的を達成する第2の観点に係る入力装置の発明は、
少なくとも1つの入力領域を表示する第1のレイヤ、および該第1のレイヤとは異なる少なくとも1つの入力領域を表示する第2のレイヤを含む、複数のレイヤから構成される画面を表示する表示部と、
前記表示部と関連付けて配設され、当該表示部に表示される入力領域への入力を検知するタッチパネルと、
前記タッチパネルへの、前記第1のレイヤに対する第1の入力態様と、前記第2のレイヤに対する第2の入力態様とを判別する入力態様判別部と、
前記入力態様判別部により当該入力が前記第1の入力態様による入力と判別されると、該入力を前記第1のレイヤに表示される入力領域への入力として処理し、前記入力態様判別部により当該入力が前記第2の入力態様による入力と判別されると、該入力を前記第2のレイヤに表示される入力領域への入力として処理する入力制御部と、
を備えることを特徴とするものである。
【0022】
第3の観点に係る発明は、第1または第2の観点に係る入力装置において、
前記第1または第2のレイヤの一方に表示する入力領域への入力に応じて、当該第1または第2のレイヤの他方の所定の表示領域に表示を行う表示制御部をさらに備えることを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る入力装置を有する携帯端末の構成を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示す携帯端末の機能ブロック図である。
【図3】図1に示す携帯端末の表示部に表示する画面の例を示す図である。
【図4】図3の各レイヤを重畳表示させた例を示す図である。
【図5】図1に示す携帯端末の入力装置による、複数レイヤ操作処理について説明するフローチャートである。
【図6】図1に示す携帯端末の入力装置の各レイヤに対する入力方法の例を説明する図である。
【図7】図1に示す携帯端末の入力装置の動作について説明するフローチャートである。
【図8】図1に示す携帯電話の入力装置のメニューキーの表示の例を示す図である。
【図9】従来の2画面式携帯端末の例を示す図である。
【図10】従来の1画面式携帯端末の例を示す図である。
【図11】従来のデュアル・ビュー表示において、各視聴者別の入力を受け付ける方法を説明する図である。
【図12】図1に示す携帯端末の表示部に表示する英語の画面の例を示す図である。
【図13】図12の各レイヤを重畳表示させた英語の例を示す図である。
【図14】図1に示す携帯端末の入力装置の各レイヤに対する入力方法の英語の例を説明する図である。
【図15】図1に示す携帯電話の入力装置のメニューキーの英語の表示の例を示す図である。
【図16】従来の2画面式携帯端末の英語の例を示す図である。
【図17】従来の1画面式携帯端末の英語の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。なお、以下の実施の形態においては、入力装置を備えた端末の一例としてPDA等の携帯端末を例にとって説明するが、本発明の入力装置の適用は携帯端末に限定されるものではなく、タッチパネルを備える入力部を有する端末であれば、例えば据え置き型の入力装置など、任意の端末に適用することが可能である。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態に係る入力装置を有する携帯端末10の概略構成を示す外観斜視図である。この携帯端末10は、端末本体の前面に、一部切り欠いて示すように、液晶画面などに種々の情報およびキーやボタンなどの形状を描画してこれらの配列を表示する表示部11と、この表示部11の前面に配設してユーザの指などによる入力を直接受け付けるマトリクススイッチ等で構成したタッチパネル12とを配置する。携帯端末10はさらに、少なくとも1つの機械的なキーにより構成されるキー入力部13、音声を出力するスピーカ14、音声の入力を受け付けるマイク15も備えている。他にも、携帯端末10は、必要な機能に応じて、デジタルカメラ機能部、ワンセグ放送用チューナ、赤外線通信機能部などの近距離無線通信部、および各種インタフェース等を備える場合もあるが、これらの詳細については図示および説明を省略する。
【0026】
本実施の形態に係る携帯端末10は、表示部11に、種々のキーの形状および配置などを画像で表示する。ユーザが当該キーの表示された画像部分を押圧すると、その位置に対応するタッチパネル12を押圧することになり、タッチパネル12の押圧された位置の透明スイッチが、入力に応じた信号を出力する。
【0027】
図2は、本実施の形態に係る携帯端末10の内部の構成を示す機能ブロック図である。携帯端末10は、前述したように、表示部11、タッチパネル12、キー入力部13、スピーカ14、マイク15を備えている。携帯端末10はさらに、表示部11に表示する画像を後述のレイヤとして透過して重畳するなど表示態様を制御する表示態様制御部16と、タッチパネル12に対する入力に基づいてその入力の態様を判別する入力態様判別部17と、各アプリケーションに応じて入力用のキーやボタンの形状および配置などを表示部11に表示するための複数のテンプレートなど各種情報を記憶する記憶部18と、これら各ブロックを制御および管理する制御部19と、を備えている。
【0028】
図3は、携帯端末10の表示部11に表示する画面の例を示す図である。ここでは、一例として、広く一般に利用されている電子メール作成の際の表示部11の表示態様を図示してある。図3(a)は、制御部19が、電子メールの文章作成/編集に必要な操作キー群の配列を、記憶部18から読み出して表示部11に表示した図であり、図3(b)は電子メールの文章作成/編集画面を表示した図である。なお、ここでは、一例として電子メール作成機能について説明したが、表示部11は、携帯端末10の各機能に応じて、種々のテンプレートに従って、それぞれ当該機能を使用するのに適した表示画面および使い易いキー配列を記憶部18から読み出して表示する。
【0029】
ユーザは、図3(a)に示すような、表示部11に表示された操作キー群のキーを押圧して(実際にはタッチパネル12を押圧して)、電子メールを構成する文字を入力する。以下、現在一般に用いられている、電子メールの仮名文字入力方式を採用して、携帯端末10の入力操作を説明する。すなわち、「1」のキーに「あ行」を、「2」のキーに「か行」を、「3」キーに「さ行」のように、それぞれの数字キーに「あ行」〜「わ行」の各行を対応させて、各数字のキーを連続して押圧することで、その押圧の回数に応じて、対応する行の仮名を順送りに遷移させて一文字ずつ入力する方式を採用して説明する。
【0030】
図3(b)に示す表示画面には、画面上段に、ユーザが入力した電子メールの文字の変換経過を示す領域を表示し、中段には入力した文字の確定部分を表示している。図示した時点では、ユーザは、図3(a)に示す表示部のキーの中から「3(さ行)」のキーを1回押圧して、さ行1番目の文字である「さ」を入力し、次に「2(か行)」のキーを3回連続で押圧して、か行の仮名を順次遷移させて、か行3番目の文字である「く」を入力したところを示している。「さく」の仮名文字の入力に応じて、図3(b)の下段には「さく」で始まる種々の言葉の選択候補が表示されている。ユーザは、これら表示された言葉の中から候補を選択し確定させることができる。
【0031】
上述した図3(a)および図3(b)のような表示画面を、携帯端末10の表示部11に表示するにあたり、例えば、図9で説明したような複数の表示部110および120を有する携帯端末であれば、図3(a)の操作キー画面はタッチパネルを有するキー表示部120に表示し、また図3(b)の電子メール作成/編集画面は、情報表示部110に表示できる。しかしながら、本実施の形態の携帯端末10のように、表示部11が1つしかない場合には、1つの表示部で2画面を表示させなくてはならない。その際、例えば図10の携帯端末200のように、1つの表示部210の表示画面を区切ることで各画面を表示することもできる。しかしながら、このように表示すると、各画面をそれぞれ縮小して表示しなければならないため、限られた表示部の表示スペースを有効活用しているとは言えず、携帯端末の使用する機能によっては、表示部または入力部としての使い勝手が著しく悪化する場合も考えられる。
【0032】
そこで、本実施の形態では、表示態様制御部16が、各表示画面を縮小することなく、複数の表示画面を透過させることで、複数の表示画面を重畳しても各表示画面を視認することができるように制御する。以後、複数の表示画面を重畳させる場合のように、その複数の表示を構成する各表示画面を概念的に「レイヤ」と記す。また、説明の便宜のために、図3(a)のような操作キーが表示される表示画面を「操作レイヤ」と、図3(b)のような操作結果が表示される表示画面を「表示レイヤ」と記す。
【0033】
図4は、図3(a)および図3(b)の各レイヤを重畳表示させた例を示す図である。一方のレイヤに他方のレイヤをそのまま重畳させると、重なった下側のレイヤの表示画面は見えなくなってしまうため、表示態様制御部16により、上側のレイヤの表示画面の透過率を変更して、上側の画像を透過する状態にして重畳する。図4(a)は、操作レイヤ上で表示レイヤを透過させて重畳表示した図であり、図4(b)は、表示レイヤ上で操作レイヤを透過させて重畳表示した図である。このように上側のレイヤを透過させて重畳表示することにより、2つのレイヤの両方を視認できるので、各レイヤの表示を縮小したりする必要はなく、各レイヤのレイアウトを損なうことなく、表示部11の表示スペースを有効に利用できる。
【0034】
なお、表示態様制御部16は、この透過による重畳表示に際し、記憶部18に記憶されている設定に従って、様々な態様での表示が行えるように制御する。例えば、上記のような透過して重畳表示する機能を使用する/しないを予め設定しておく「画像透過オン/オフ」、任意のレイヤをどの程度透過させて表示するのかを設定する「レイヤ透過率」、複数のレイヤを重畳する順序を設定する「レイヤ順序」、レイヤを最大幾つまで重畳するかを設定する「最大重畳レイヤ数」など、種々の設定が行えるように制御する。なお、「最大重畳レイヤ数」を超えるレイヤが起動した場合には、最初に起動していたレイヤをスリープ状態の非表示とし、他のレイヤの表示が終了したら、当該スリープ状態のレイヤのスリープ状態を解除して再表示させるように構成してもよい。本例の場合には、操作キーについては配置の概観が視認できれば充分なため、レイヤ透過率およびレイヤ順序などの設定は図4(b)のようにするのが好適であるが、携帯端末10の各機能に応じて、各ユーザにとって最も使用し易い態様に設定することができる。
【0035】
上述のようにレイヤを透過させて重畳表示する際、各レイヤに表示された入力領域である、アイコン、ボタンまたはキーなどの位置が複数のレイヤの同じ位置に重なっていない場合には、特に問題なく各レイヤに対する入力操作を受け付けることができる。しかしながら、入力領域の位置が複数のレイヤの同じ位置に重なって表示される場合は、ユーザがその入力領域の位置を押圧操作しても、重畳表示されたどのレイヤの入力領域に対する入力なのか、タッチパネル12が判断することはできない。
【0036】
すなわち、例えば図4において、「3」のキーまたは選択候補の中の「削除」の文字については、図4(a)または(b)のどちらのレイヤで押圧操作をしても、入力領域の位置が各レイヤにて重なっていないため、タッチパネル12に入力があった位置から、どちらのレイヤの入力領域に対する入力なのかを正しく判定することができる。しかしながら、例えば「#」のキーまたは選択候補の中の「炸裂」の文字については、図4(a)または(b)のどちらのレイヤで押圧操作をしたとしても、タッチパネル12上での位置がほぼ同じになるため、その押圧位置からは、どちらの入力領域に対する入力なのか判定できない場合も想定される。
【0037】
したがって、本実施の形態では、携帯端末10は、複数のレイヤを重畳表示した際に入力領域の位置が重なっていても、所定の入力領域に対する入力として判別する「複数レイヤ操作処理」を行う。
【0038】
以下、図5に示すフローチャートを参照しながら、本実施の形態にかかる携帯端末10の入力装置による、複数レイヤ操作処理について説明する。なお、この複数レイヤ操作処理においては、その前提として、表示部11上に複数のレイヤを重畳表示しているものとする。また、ユーザがタッチパネル12にて所定の入力領域に対する入力を行う際に、どのレイヤに対する入力なのかを入力態様判別部17が判別できるように、当該入力の態様を予め記憶部18に記憶する。
【0039】
ここで言う入力の態様とは、例えば、1回押圧する通常の入力、長押し入力、2回素早く連続押圧する入力、押圧したまま指をスライドさせる入力、押圧した指をはじくようにする入力、選択するアイコンの周辺を円で囲むようになぞる入力など、様々な態様が考えられる。特に、指をスライドさせるような入力については、そのスライド方向に応じて入力の態様が変わるものとして扱うようにすることもできる(例えば上から下へのスライドは第1の入力態様、下から上へのスライドは第2の入力態様、など)。これらの入力の態様を、それぞれ、どのレイヤに対応する入力にするのかを予め記憶部18に記憶する。
【0040】
先ず、ステップS11にて、表示部11に表示された入力領域に対応する部分のタッチパネル12に入力が検知されたら、制御部19は、記憶部18に記憶された各レイヤのキー配列を参照することにより、入力が検知された入力領域の位置が、表示された複数のレイヤの複数の入力領域で重なっていないかどうかを判定する(ステップS12)。レイヤが複数存在していても入力領域の位置が重なっていなければ、ユーザはその入力領域に対する入力を意図していたものと考えられるため、制御部19は、当該入力領域に対する入力が行われたものとして、対応する処理を行う(ステップS13)。
【0041】
ステップS12にて、入力が検知された入力領域の位置が、他のレイヤの入力領域と重なっていた場合には、制御部19は、入力態様判別部17が判別した当該入力の態様の情報から、この入力がどのレイヤに対して行われたものなのかを判定し、その判定結果の示すレイヤの入力領域に対して入力操作が行われたものとして処理を行う(ステップS14)。
【0042】
したがって、入力領域が重複する部分について、例えば、「通常の1回押圧は操作レイヤに対する入力」として設定した場合、図6(a)に示すように、ユーザが「7」のキーに対する入力がしたい時には、「7」のキーを1回押圧する入力をすれば、入力態様判別部17の判別に基づいて、制御部19は、当該入力を操作レイヤに対する「7」の入力として処理する。また、入力領域が重複する部分について、「押圧したままスライドさせる入力は表示レイヤに対する入力」として設定した場合、ユーザが「作者」の文字を選択したい時には、図6(b)のように「作者」の表示位置をスライドさせる入力をすれば、入力態様判別部17の判別に基づいて、制御部19は、当該入力は表示レイヤの「作者」を選択したものとして処理する。したがって、本実施の形態では、入力態様判別部17および記憶部18を含んで入力態様判別部を構成する。また、タッチパネル12、表示態様制御部16、および制御部19を含んで重複領域入力検知部を構成する。なお、制御部19は、入力制御部も含む。
【0043】
このように、本実施の形態では、タッチパネル12上としては同じ位置にある、複数のレイヤの入力領域について、表示部11上で透過させた重畳表示の状態によらず(どのレイヤが一番上に表示されているか等には関係なく)、任意のレイヤに対する入力を、レイヤ毎に区別して直接行うことができる。したがって、入力の都度アクティブにするレイヤを選択したり、レイヤを切り替えたりする必要はなくなる。
【0044】
上述したように、本実施の形態では、「操作レイヤ」に対する入力の結果を、「表示レイヤ」に反映させて表示するといったように、あるレイヤに対する入力に基づく結果を、他のレイヤに反映させた表示を行うことができる。例えば、操作レイヤにて「1(あ行)」のキーを押圧すると、制御部19は、先ず、当該操作レイヤにて「1(あ行)」のキーが押圧されたことを示す確認表示(例えば一瞬の反転表示など)をさせた後に、この入力に基づいて、表示レイヤに「あ」の文字が出力されるような処理を行うことができる。したがって、本実施の形態では、表示態様制御部16および制御部19を含んで、表示制御部を構成している。
【0045】
また、図6に示すような電子メールの作成段階にて、仮名文字の入力に応じて表示レイヤの下段に種々の言葉の選択候補が表示され、ユーザがその中から候補を選択する場合、従来の方式であれば、ユーザは、操作レイヤの上部に表示されている十字方向キーを用いるなどして仮名文字の変換候補を選択するのが通常である。本実施の形態の携帯端末10では、透過させることで複数のレイヤを重畳表示し、かつ任意のレイヤに対して直接入力を行うことができる。このため、ユーザは、上述のような候補を選択する際に、表示レイヤに対する入力の態様で入力を行うことにより、表示レイヤから選択候補を直接選択することが可能である。したがって、ユーザは、タッチパネルを有する入力部を用いるメリットを最大限に活かすことができる。
【0046】
さらに、ユーザの入力がどのレイヤに対応する態様の入力であるのかを入力態様判別部17が判別できなかった場合に備えて、各レイヤに対して入力の優先順位を予め設定することもできる。すなわち、例えば、通常の1回押圧操作は操作レイヤに対する入力と判別し、スライド入力は表示レイヤに対する入力と判別するように設定した場合において、ユーザの入力が1回の押圧なのかスライド入力なのか、入力態様判別部17が判別できなかった場合には、例えば優先的に表示レイヤに対する入力とするような設定を予め施すこともできる。また、最初に出現したレイヤに対する入力操作の態様を例えば通常の1回押圧と設定した場合には、次に出現するレイヤに対する入力操作の態様は通常の1回押圧とは異なる態様とすることになる。このため、ある入力が、判別が容易と想定される通常の1回の押圧とは認識できなかった場合には、優先的に、後から出現したレイヤに対する入力と判定するような設定をすることもできる。
【0047】
次に、図7に示すフローチャートを参照しながら、本実施の形態による携帯端末10の入力装置の動作について説明する。これは、上述の「複数レイヤ操作処理」を含めた、複数レイヤが起動する際の携帯端末10の動作の例についてさらに説明するものである。
【0048】
スタート後、ステップS21にて、もともと起動していた表示画面に対して、新たな表示画面を重畳させて、複数のレイヤが起動したら、制御部19は、画像透過機能の設定を記憶部18から読み込む(ステップS22)。画像透過機能の設定の読み込みでは、上述した「画像透過オン/オフ」、「レイヤ透過率」、「レイヤ順序」、「最大重畳レイヤ数」のほか、上述の「複数レイヤ操作処理」で必要となる、各入力の態様とレイヤとの対応付け、さらに、後述の「メニューキー」の表示/非表示、などの予め施した各種設定を読み込む。
【0049】
次に、ステップS22にて読み込まれた情報の中にある「画像透過オン/オフ」について、透過して重畳表示する機能を使用する/しないのどちらの設定になっているかを判別する(ステップS23)。ステップS23にて、画像透過オフ、つまり重畳表示しない設定になっている場合には、レイヤを複数にしないで複数画面を表示するため、制御部19は、設定にしたがって画面を分割して表示するように、表示態様制御部16を制御する(ステップS24)。
【0050】
ステップS23にて、画像透過オンの設定になっている場合は、制御部19は、複数のレイヤを適宜設定に従って透過させて重畳表示するように表示態様制御部16を制御してから、表示部11にメニューキーが表示される設定になっている場合には、当該メニューキーが押圧されたか否かを判定する(ステップS25)。なお、このメニューキーは、例えば図8に示すように、操作レイヤの右上部分などに入力領域として表示する。ステップS25にてこのメニューキーが押圧された場合、制御部19は、上述した「画像透過機能」の各種設定を行うことができる設定画面を表示するように表示態様制御部16を制御する(ステップS26)。また、このメニューキーは、一定時間経過後に非表示に移行させ、タッチパネル12の縁部をなぞる等の特殊な入力に応じて再表示させるようにすれば、他の表示の邪魔となることがなく好適である。ステップS26にて設定画面により設定が行われた後、制御部19は、ステップS22に戻って当該設定を記憶部18から読み込む。
【0051】
ステップS25にてメニューキーが押圧されない場合、ステップS27に移行して、図5のフローチャートにて説明した「複数レイヤ操作処理」を行う。一連の入力操作中には、ユーザがアプリケーションを起動させるなどして、更なるレイヤが起動する場合もあるが、アプリケーションの終了処理などに伴い、不必要になったレイヤを消滅させる場合もある。ステップS28では、制御部19が、現在起動しているレイヤ数をチェックして、複数レイヤが起動している限りはステップS27の複数レイヤ操作処理を繰り返す。一方、もはや複数レイヤが起動していないと判定された場合には、制御部19は、重畳表示に伴う複数レイヤの入力を制御する処理を終了させる。
【0052】
このようにすることで、「複数レイヤ操作処理」を含めた複数レイヤ起動時の一連の入力処理において、画像透過機能の設定を適宜変更することが可能になり、使用する機能によってレイヤの透過表示または画面分割表示が選択可能になるので、ユーザは極めて使い勝手の良い操作環境を得ることができる。
【0053】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、「複数レイヤ操作処理」において、入力が検知された入力領域の位置が、複数のレイヤに表示された複数の入力領域で重なっていないかどうかを判定し、重なっている場合に、この入力がどのレイヤに対して行われたものなのかを判定した。しかしながら、他の例として、入力が検知された入力領域の位置が、複数のレイヤに表示された入力領域で重なっているか否かに拘らず、常に、予め設定してある、入力の態様とレイヤとの対応関係に基づいて処理を行うようにすることもできる。
【0054】
すなわち、タッチパネル12に対して第1の態様の入力(例えば単純な1回押圧)が行われたら、それは常に第1のレイヤに対する入力として判定および処理し、第2の態様の入力(例えばスライド入力)が行われたら、それは常に第2のレイヤに対する入力として判定および処理する、というような構成にすることもできる。携帯端末10にて使用する機能によっては、このようにレイヤごとに固定された操作方法が好ましい場合もあり得る。
【0055】
また、上記実施の形態においては、説明の便宜のために、重畳表示させるレイヤの数を2つとしたが、当然3つ以上のレイヤを重畳させて表示するようにもできる。この場合には、3つ以上の各レイヤの透過率が全体として段階的に異なるように変更して、複数のレイヤを重畳表示させても各レイヤを視認することができるように表示して、各レイヤに対して異なる入力の態様を対応させるようにするのが好適である。
【0056】
(英語の場合の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について、英語の場合を、図を参照して説明する。なお、以下の実施の形態においては、入力装置を備えた端末の一例としてPDA等の携帯端末を例にとって説明するが、本発明の入力装置の適用は携帯端末に限定されるものではなく、タッチパネルを備える入力部を有する端末であれば、例えば据え置き型の入力装置など、任意の端末に適用することが可能である。
【0057】
図1は、本発明の実施の形態に係る入力装置を有する携帯端末10の概略構成を示す外観斜視図である。この携帯端末10は、端末本体の前面に、一部切り欠いて示すように、液晶画面などに種々の情報およびキーやボタンなどの形状を描画してこれらの配列を表示する表示部11と、この表示部11の前面に配設してユーザの指などによる入力を直接受け付けるマトリクススイッチ等で構成したタッチパネル12とを配置する。携帯端末10はさらに、少なくとも1つの機械的なキーにより構成されるキー入力部13、音声を出力するスピーカ14、音声の入力を受け付けるマイク15も備えている。他にも、携帯端末10は、必要な機能に応じて、デジタルカメラ機能部、ワンセグ放送用チューナ、赤外線通信機能部などの近距離無線通信部、および各種インタフェース等を備える場合もあるが、これらの詳細については図示および説明を省略する。
【0058】
本実施の形態に係る携帯端末10は、表示部11に、種々のキーの形状および配置などを画像で表示する。ユーザが当該キーの表示された画像部分を押圧すると、その位置に対応するタッチパネル12を押圧することになり、タッチパネル12の押圧された位置の透明スイッチが、入力に応じた信号を出力する。
【0059】
図2は、本実施の形態に係る携帯端末10の内部の構成を示す機能ブロック図である。携帯端末10は、前述したように、表示部11、タッチパネル12、キー入力部13、スピーカ14、マイク15を備えている。携帯端末10はさらに、表示部11に表示する画像を後述のレイヤとして透過して重畳するなど表示態様を制御する表示態様制御部16と、タッチパネル12に対する入力に基づいてその入力の態様を判別する入力態様判別部17と、各アプリケーションに応じて入力用のキーやボタンの形状および配置などを表示部11に表示するための複数のテンプレートなど各種情報を記憶する記憶部18と、これら各ブロックを制御および管理する制御部19と、を備えている。
【0060】
図12は、携帯端末10の表示部11に表示する画面の例を示す図である。ここでは、一例として、広く一般に利用されている電子メール作成の際の表示部11の表示態様を図示してある。図12(a)は、制御部19が、電子メールの文章作成/編集に必要な操作キー群の配列を、記憶部18から読み出して表示部11に表示した図であり、図12(b)は電子メールの文章作成/編集画面を表示した図である。なお、ここでは、一例として電子メール作成機能について説明したが、表示部11は、携帯端末10の各機能に応じて、種々のテンプレートに従って、それぞれ当該機能を使用するのに適した表示画面および使い易いキー配列を記憶部18から読み出して表示する。
【0061】
ユーザは、図12(a)に示すような、表示部11に表示された操作キー群のキーを押圧して(実際にはタッチパネル12を押圧して)、電子メールを構成する文字を入力する。以下、現在一般に用いられている、電子メールの文字入力方式を採用して、携帯端末10の入力操作を説明する。すなわち、「2」のキーに「A,B,C」を、「3」のキーに「D,E,F」を、「4」キーに「G,H,I」のように、それぞれの数字キーに「A」〜「Z」の各文字を対応させて、各数字のキーを連続して押圧することで、その押圧の回数に応じて、対応する文字を順送りに遷移させて一文字ずつ入力する方式を採用して説明する。(例えば、「H」を入力する場合は、「4」のキーを2回押圧する。)
【0062】
図12(b)に示す表示画面には、画面上段に、ユーザが入力した電子メールの文字の変換経過を示す領域を表示し、中段には入力した文字の確定部分を表示している。図示した時点では、ユーザは、図12(a)に示す表示部11のキーの中から「9(W,X,Y,Z)」のキーを3回押圧して、3番目の文字である「Y」を入力したところを示している。「Y」の文字の入力に応じて、図12(b)の下段には「Y」で始まる種々の言葉の選択候補が表示されている。ユーザは、これら表示された言葉の中から候補を選択し確定させることができる。
【0063】
上述した図12(a)および図12(b)のような表示画面を、携帯端末10の表示部11に表示するにあたり、例えば、図16で説明したような複数の表示部110および120を有する携帯端末であれば、図12(a)の操作キー画面はタッチパネルを有するキー表示部120に表示し、また図12(b)の電子メール作成/編集画面は、情報表示部110に表示できる。しかしながら、本実施の形態の携帯端末10のように、表示部11が1つしかない場合には、1つの表示部で2画面を表示させなくてはならない。その際、例えば図17の携帯端末200のように、1つの表示部210の表示画面を区切ることで各画面を表示することもできる。しかしながら、このように表示すると、各画面をそれぞれ縮小して表示しなければならないため、限られた表示部の表示スペースを有効活用しているとは言えず、携帯端末の使用する機能によっては、表示部または入力部としての使い勝手が著しく悪化する場合も考えられる。
【0064】
そこで、本実施の形態では、表示態様制御部16が、各表示画面を縮小することなく、複数の表示画面を透過させることで、複数の表示画面を重畳しても各表示画面を視認することができるように制御する。以後、複数の表示画面を重畳させる場合のように、その複数の表示を構成する各表示画面を概念的に「レイヤ」と記す。また、説明の便宜のために、図12(a)のような操作キーが表示される表示画面を「操作レイヤ」と、図12(b)のような操作結果が表示される表示画面を「表示レイヤ」と記す。
【0065】
図13は、図12(a)および図12(b)の各レイヤを重畳表示させた例を示す図である。一方のレイヤに他方のレイヤをそのまま重畳させると、重なった下側のレイヤの表示画面は見えなくなってしまうため、表示態様制御部16により、上側のレイヤの表示画面の透過率を変更して、上側の画像を透過する状態にして重畳する。図13(a)は、操作レイヤ上で表示レイヤを透過させて重畳表示した図であり、図13(b)は、表示レイヤ上で操作レイヤを透過させて重畳表示した図である。このように上側のレイヤを透過させて重畳表示することにより、2つのレイヤの両方を視認できるので、各レイヤの表示を縮小したりする必要はなく、各レイヤのレイアウトを損なうことなく、表示部11の表示スペースを有効に利用できる。
【0066】
なお、表示態様制御部16は、この透過による重畳表示に際し、記憶部18に記憶されている設定に従って、様々な態様での表示が行えるように制御する。例えば、上記のような透過して重畳表示する機能を使用する/しないを予め設定しておく「画像透過オン/オフ」、任意のレイヤをどの程度透過させて表示するのかを設定する「レイヤ透過率」、複数のレイヤを重畳する順序を設定する「レイヤ順序」、レイヤを最大幾つまで重畳するかを設定する「最大重畳レイヤ数」など、種々の設定が行えるように制御する。なお、「最大重畳レイヤ数」を超えるレイヤが起動した場合には、最初に起動していたレイヤをスリープ状態の非表示とし、他のレイヤの表示が終了したら、当該スリープ状態のレイヤのスリープ状態を解除して再表示させるように構成してもよい。本例の場合には、操作キーについては配置の概観が視認できれば充分なため、レイヤ透過率およびレイヤ順序などの設定は図13(b)のようにするのが好適であるが、携帯端末10の各機能に応じて、各ユーザにとって最も使用し易い態様に設定することができる。
【0067】
上述のようにレイヤを透過させて重畳表示する際、各レイヤに表示された入力領域である、アイコン、ボタンまたはキーなどの位置が複数のレイヤの同じ位置に重なっていない場合には、特に問題なく各レイヤに対する入力操作を受け付けることができる。しかしながら、入力領域の位置が複数のレイヤの同じ位置に重なって表示される場合は、ユーザがその入力領域の位置を押圧操作しても、重畳表示されたどのレイヤの入力領域に対する入力なのか、タッチパネル12が判断することはできない。
【0068】
すなわち、例えば図13において、「3」のキーまたは選択候補の中の「Year」の文字については、図13(a)または(b)のどちらのレイヤで押圧操作をしても、入力領域の位置が各レイヤにて重なっていないため、タッチパネル12に入力があった位置から、どちらのレイヤの入力領域に対する入力なのかを正しく判定することができる。しかしながら、例えば「#」のキーまたは選択候補の中の「Yield」の文字については、図13(a)または(b)のどちらのレイヤで押圧操作をしたとしても、タッチパネル12上での位置がほぼ同じになるため、その押圧位置からは、どちらの入力領域に対する入力なのか判定できない場合も想定される。
【0069】
したがって、本実施の形態では、携帯端末10は、複数のレイヤを重畳表示した際に入力領域の位置が重なっていても、所定の入力領域に対する入力として判別する「複数レイヤ操作処理」を行う。
【0070】
以下、図5に示すフローチャートを参照しながら、本実施の形態にかかる携帯端末10の入力装置による、複数レイヤ操作処理について説明する。なお、この複数レイヤ操作処理においては、その前提として、表示部11上に複数のレイヤを重畳表示しているものとする。また、ユーザがタッチパネル12にて所定の入力領域に対する入力を行う際に、どのレイヤに対する入力なのかを入力態様判別部17が判別できるように、当該入力の態様を予め記憶部18に記憶する。
【0071】
ここで言う入力の態様とは、例えば、1回押圧する通常の入力、長押し入力、2回素早く連続押圧する入力、押圧したまま指をスライドさせる入力、押圧した指をはじくようにする入力、選択するアイコンの周辺を円で囲むようになぞる入力など、様々な態様が考えられる。特に、指をスライドさせるような入力については、そのスライド方向に応じて入力の態様が変わるものとして扱うようにすることもできる(例えば上から下へのスライドは第1の入力態様、下から上へのスライドは第2の入力態様、など)。これらの入力の態様を、それぞれ、どのレイヤに対応する入力にするのかを予め記憶部18に記憶する。
【0072】
先ず、ステップS11にて、表示部11に表示された入力領域に対応する部分のタッチパネル12に入力が検知されたら、制御部19は、記憶部18に記憶された各レイヤのキー配列を参照することにより、入力が検知された入力領域の位置が、表示された複数のレイヤの複数の入力領域で重なっていないかどうかを判定する(ステップS12)。レイヤが複数存在していても入力領域の位置が重なっていなければ、ユーザはその入力領域に対する入力を意図していたものと考えられるため、制御部19は、当該入力領域に対する入力が行われたものとして、対応する処理を行う(ステップS13)。
【0073】
ステップS12にて、入力が検知された入力領域の位置が、他のレイヤの入力領域と重なっていた場合には、制御部19は、入力態様判別部17が判別した当該入力の態様の情報から、この入力がどのレイヤに対して行われたものなのかを判定し、その判定結果の示すレイヤの入力領域に対して入力操作が行われたものとして処理を行う(ステップS14)。
【0074】
したがって、入力領域が重複する部分について、例えば、「通常の1回押圧は操作レイヤに対する入力」として設定した場合、図14(a)に示すように、ユーザが「6」のキーに対する入力がしたい時には、「6」のキーを1回押圧する入力をすれば、入力態様判別部17の判別に基づいて、制御部19は、当該入力を操作レイヤに対する「6」の入力として処理する。また、入力領域が重複する部分について、「押圧したままスライドさせる入力は表示レイヤに対する入力」として設定した場合、ユーザが「You」の文字を選択したい時には、図14(b)のように「You」の表示位置をスライドさせる入力をすれば、入力態様判別部17の判別に基づいて、制御部19は、当該入力は表示レイヤの「You」を選択したものとして処理する。したがって、本実施の形態では、入力態様判別部17および記憶部18を含んで入力態様判別部を構成する。また、タッチパネル12、表示態様制御部16、および制御部19を含んで重複領域入力検知部を構成する。なお、制御部19は、入力制御部も含む。
【0075】
このように、本実施の形態では、タッチパネル12上としては同じ位置にある、複数のレイヤの入力領域について、表示部11上で透過させた重畳表示の状態によらず(どのレイヤが一番上に表示されているか等には関係なく)、任意のレイヤに対する入力を、レイヤ毎に区別して直接行うことができる。したがって、入力の都度アクティブにするレイヤを選択したり、レイヤを切り替えたりする必要はなくなる。
【0076】
上述したように、本実施の形態では、「操作レイヤ」に対する入力の結果を、「表示レイヤ」に反映させて表示するといったように、あるレイヤに対する入力に基づく結果を、他のレイヤに反映させた表示を行うことができる。例えば、操作レイヤにて「2(A,B,C)」のキーを押圧すると、制御部19は、先ず、当該操作レイヤにて「2(A,B,C)」のキーが押圧されたことを示す確認表示(例えば一瞬の反転表示など)をさせた後に、この入力に基づいて、表示レイヤに「A」の文字が出力されるような処理を行うことができる。したがって、本実施の形態では、表示態様制御部16および制御部19を含んで、表示制御部を構成している。
【0077】
また、図14に示すような電子メールの作成段階にて、文字の入力に応じて表示レイヤの下段に種々の言葉の選択候補が表示され、ユーザがその中から候補を選択する場合、従来の方式であれば、ユーザは、操作レイヤの上部に表示されている十字方向キーを用いるなどして文字の変換候補を選択するのが通常である。本実施の形態の携帯端末10では、透過させることで複数のレイヤを重畳表示し、かつ任意のレイヤに対して直接入力を行うことができる。このため、ユーザは、上述のような候補を選択する際に、表示レイヤに対する入力の態様で入力を行うことにより、表示レイヤから選択候補を直接選択することが可能である。したがって、ユーザは、タッチパネルを有する入力部を用いるメリットを最大限に活かすことができる。
【0078】
さらに、ユーザの入力がどのレイヤに対応する態様の入力であるのかを入力態様判別部17が判別できなかった場合に備えて、各レイヤに対して入力の優先順位を予め設定することもできる。すなわち、例えば、通常の1回押圧操作は操作レイヤに対する入力と判別し、スライド入力は表示レイヤに対する入力と判別するように設定した場合において、ユーザの入力が1回の押圧なのかスライド入力なのか、入力態様判別部17が判別できなかった場合には、例えば優先的に表示レイヤに対する入力とするような設定を予め施すこともできる。また、最初に出現したレイヤに対する入力操作の態様を例えば通常の1回押圧と設定した場合には、次に出現するレイヤに対する入力操作の態様は通常の1回押圧とは異なる態様とすることになる。このため、ある入力が、判別が容易と想定される通常の1回の押圧とは認識できなかった場合には、優先的に、後から出現したレイヤに対する入力と判定するような設定をすることもできる。
【0079】
次に、図7に示すフローチャートを参照しながら、本実施の形態による携帯端末10の入力装置の動作について説明する。これは、上述の「複数レイヤ操作処理」を含めた、複数レイヤが起動する際の携帯端末10の動作の例についてさらに説明するものである。
【0080】
スタート後、ステップS21にて、もともと起動していた表示画面に対して、新たな表示画面を重畳させて、複数のレイヤが起動したら、制御部19は、画像透過機能の設定を記憶部18から読み込む(ステップS22)。画像透過機能の設定の読み込みでは、上述した「画像透過オン/オフ」、「レイヤ透過率」、「レイヤ順序」、「最大重畳レイヤ数」のほか、上述の「複数レイヤ操作処理」で必要となる、各入力の態様とレイヤとの対応付け、さらに、後述の「メニューキー」の表示/非表示、などの予め施した各種設定を読み込む。
【0081】
次に、ステップS22にて読み込まれた情報の中にある「画像透過オン/オフ」について、透過して重畳表示する機能を使用する/しないのどちらの設定になっているかを判別する(ステップS23)。ステップS23にて、画像透過オフ、つまり重畳表示しない設定になっている場合には、レイヤを複数にしないで複数画面を表示するため、制御部19は、設定にしたがって画面を分割して表示するように、表示態様制御部16を制御する(ステップS24)。
【0082】
ステップS23にて、画像透過オンの設定になっている場合は、制御部19は、複数のレイヤを適宜設定に従って透過させて重畳表示するように表示態様制御部16を制御してから、表示部11にメニューキーが表示される設定になっている場合には、当該メニューキーが押圧されたか否かを判定する(ステップS25)。なお、このメニューキーは、例えば図15に示すように、操作レイヤの右上部分などに入力領域として表示する。ステップS25にてこのメニューキーが押圧された場合、制御部19は、上述した「画像透過機能」の各種設定を行うことができる設定画面を表示するように表示態様制御部16を制御する(ステップS26)。また、このメニューキーは、一定時間経過後に非表示に移行させ、タッチパネル12の縁部をなぞる等の特殊な入力に応じて再表示させるようにすれば、他の表示の邪魔となることがなく好適である。ステップS26にて設定画面により設定が行われた後、制御部19は、ステップS22に戻って当該設定を記憶部18から読み込む。
【0083】
ステップS25にてメニューキーが押圧されない場合、ステップS27に移行して、図5のフローチャートにて説明した「複数レイヤ操作処理」を行う。一連の入力操作中には、ユーザがアプリケーションを起動させるなどして、更なるレイヤが起動する場合もあるが、アプリケーションの終了処理などに伴い、不必要になったレイヤを消滅させる場合もある。ステップS28では、制御部19が、現在起動しているレイヤ数をチェックして、複数レイヤが起動している限りはステップS27の複数レイヤ操作処理を繰り返す。一方、もはや複数レイヤが起動していないと判定された場合には、制御部19は、重畳表示に伴う複数レイヤの入力を制御する処理を終了させる。
【0084】
このようにすることで、「複数レイヤ操作処理」を含めた複数レイヤ起動時の一連の入力処理において、画像透過機能の設定を適宜変更することが可能になり、使用する機能によってレイヤの透過表示または画面分割表示が選択可能になるので、ユーザは極めて使い勝手の良い操作環境を得ることができる。
【0085】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、「複数レイヤ操作処理」において、入力が検知された入力領域の位置が、複数のレイヤに表示された複数の入力領域で重なっていないかどうかを判定し、重なっている場合に、この入力がどのレイヤに対して行われたものなのかを判定した。しかしながら、他の例として、入力が検知された入力領域の位置が、複数のレイヤに表示された入力領域で重なっているか否かに拘らず、常に、予め設定してある、入力の態様とレイヤとの対応関係に基づいて処理を行うようにすることもできる。
【0086】
すなわち、タッチパネル12に対して第1の態様の入力(例えば単純な1回押圧)が行われたら、それは常に第1のレイヤに対する入力として判定および処理し、第2の態様の入力(例えばスライド入力)が行われたら、それは常に第2のレイヤに対する入力として判定および処理する、というような構成にすることもできる。携帯端末10にて使用する機能によっては、このようにレイヤごとに固定された操作方法が好ましい場合もあり得る。
【0087】
また、上記実施の形態においては、説明の便宜のために、重畳表示させるレイヤの数を2つとしたが、当然3つ以上のレイヤを重畳させて表示するようにもできる。この場合には、3つ以上の各レイヤの透過率が全体として段階的に異なるように変更して、複数のレイヤを重畳表示させても各レイヤを視認することができるように表示して、各レイヤに対して異なる入力の態様を対応させるようにするのが好適である。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明によれば、表示部に第1および第2のレイヤを含む複数のレイヤを重畳表示させることによって、各レイヤにおける表示領域を最大限に利用することができ、かつ第1および第2のレイヤに対する入力を区別できるようにしたので、入力装置の表示部の機能も入力部の機能も最大限に利用することができ、ユーザに対する利便性を著しく向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの入力領域を表示する第1のレイヤ、および該第1のレイヤとは異なる少なくとも1つの入力領域を表示する第2のレイヤを含む、複数のレイヤから構成される画面を表示する表示部と、
前記表示部と関連付けて配設され、当該表示部に表示される入力領域への入力を検知するタッチパネルと、
前記タッチパネルに対する入力態様を判別する入力態様判別部と、
前記第1のレイヤの表示する入力領域と、前記第2のレイヤの表示する入力領域とが重なる重複領域への入力を検知する重複領域入力検知部と、
前記重複領域入力検知部により、前記第1のレイヤの表示する入力領域と、前記第2のレイヤの表示する入力領域とが重なる重複領域への入力が検知される場合、前記入力態様判別部により当該入力が第1の入力態様による入力と判別されると、該入力を前記第1のレイヤに表示される入力領域への入力として処理し、前記入力態様判別部により当該入力が第2の入力態様による入力と判別されると、該入力を前記第2のレイヤに表示される入力領域への入力として処理する入力制御部と、
を備えることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
少なくとも1つの入力領域を表示する第1のレイヤ、および該第1のレイヤとは異なる少なくとも1つの入力領域を表示する第2のレイヤを含む、複数のレイヤから構成される画面を表示する表示部と、
前記表示部と関連付けて配設され、当該表示部に表示される入力領域への入力を検知するタッチパネルと、
前記タッチパネルへの、前記第1のレイヤに対する第1の入力態様と、前記第2のレイヤに対する第2の入力態様とを判別する入力態様判別部と、
前記入力態様判別部により当該入力が前記第1の入力態様による入力と判別されると、該入力を前記第1のレイヤに表示される入力領域への入力として処理し、前記入力態様判別部により当該入力が前記第2の入力態様による入力と判別されると、該入力を前記第2のレイヤに表示される入力領域への入力として処理する入力制御部と、
を備えることを特徴とする入力装置。
【請求項3】
前記第1または第2のレイヤの一方に表示する入力領域への入力に応じて、当該第1または第2のレイヤの他方の所定の表示領域に表示を行う表示制御部をさらに備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の入力装置。
【請求項1】
少なくとも1つの入力領域を表示する第1のレイヤ、および該第1のレイヤとは異なる少なくとも1つの入力領域を表示する第2のレイヤを含む、複数のレイヤから構成される画面を表示する表示部と、
前記表示部と関連付けて配設され、当該表示部に表示される入力領域への入力を検知するタッチパネルと、
前記タッチパネルに対する入力態様を判別する入力態様判別部と、
前記第1のレイヤの表示する入力領域と、前記第2のレイヤの表示する入力領域とが重なる重複領域への入力を検知する重複領域入力検知部と、
前記重複領域入力検知部により、前記第1のレイヤの表示する入力領域と、前記第2のレイヤの表示する入力領域とが重なる重複領域への入力が検知される場合、前記入力態様判別部により当該入力が第1の入力態様による入力と判別されると、該入力を前記第1のレイヤに表示される入力領域への入力として処理し、前記入力態様判別部により当該入力が第2の入力態様による入力と判別されると、該入力を前記第2のレイヤに表示される入力領域への入力として処理する入力制御部と、
を備えることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
少なくとも1つの入力領域を表示する第1のレイヤ、および該第1のレイヤとは異なる少なくとも1つの入力領域を表示する第2のレイヤを含む、複数のレイヤから構成される画面を表示する表示部と、
前記表示部と関連付けて配設され、当該表示部に表示される入力領域への入力を検知するタッチパネルと、
前記タッチパネルへの、前記第1のレイヤに対する第1の入力態様と、前記第2のレイヤに対する第2の入力態様とを判別する入力態様判別部と、
前記入力態様判別部により当該入力が前記第1の入力態様による入力と判別されると、該入力を前記第1のレイヤに表示される入力領域への入力として処理し、前記入力態様判別部により当該入力が前記第2の入力態様による入力と判別されると、該入力を前記第2のレイヤに表示される入力領域への入力として処理する入力制御部と、
を備えることを特徴とする入力装置。
【請求項3】
前記第1または第2のレイヤの一方に表示する入力領域への入力に応じて、当該第1または第2のレイヤの他方の所定の表示領域に表示を行う表示制御部をさらに備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の入力装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−58250(P2013−58250A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−255625(P2012−255625)
【出願日】平成24年11月21日(2012.11.21)
【分割の表示】特願2009−525411(P2009−525411)の分割
【原出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年11月21日(2012.11.21)
【分割の表示】特願2009−525411(P2009−525411)の分割
【原出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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