説明

入浴システム

【課題】ストレッチャーを入浴装置の浴槽に横付けする際に、容易かつ確実に位置合わせを行うことができ、担架を浴槽内に円滑に移動させることが可能な入浴システムを提供する。
【解決手段】要介助者が湯に浸かる浴槽2を備えた入浴装置10と、浴槽2の側壁2aに横付けされるストレッチャー20とを備えた入浴システム60において、側壁2aに、ストレッチャー20に向かって一対が突出して側壁2aに沿って水平方向に互いに接近、離間可能なセンタリングフック33を設け、このセンタリングフック33を、互いに接近した第1位置と離間した第2位置とに選択的に移動させる直動機構31を設け、ストレッチャー20に、第1位置から第2位置に移動する際のセンタリングフック33に当接し得る一対のセンタリング用軸部25をその配置間隔を一対のセンタリングフック33の第2位置での配置間隔と略同一にして設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、病人や寝たきりの老人、身体障害者等の要介助者を入浴させるための入浴システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、寝たきりの老人や身体障害者や手術直後の患者のような要介助者を入浴させる入浴システムとして、要介助者が載せられた担架をストレッチャーで入浴装置の浴槽に横付けし、このストレッチャー上から浴槽内の支持台に移動させるよう構成される入浴システムが知られている。この入浴システムは、浴槽または支持台のうち何れか一方を平行移動によって昇降させて、要介助者を湯に浸からせるようになっている(例えば特許文献1参照)。このような入浴システムによれば、要介助者を介護する介護者が比較的労力を必要とせず要介助者を入浴させるようになっている。
【特許文献1】特開平11−206841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のような従来の入浴システムにおいてストレッチャーを入浴装置の浴槽に横付けするに際しては、ストレッチャー上の担架を支持台上に移動可能とするべく、該ストレッチャーの位置合わせをする必要がある。この際、担架上に要介護者が載せられているためその重量によりストレッチャーの位置の微調整が困難となり、容易に位置合わせを行うことができないという問題があった。
【0004】
この発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、ストレッチャーを入浴装置の浴槽に横付けする際に、容易かつ確実に位置合わせを行うことができ、担架を浴槽内に円滑に移動させることが可能な入浴システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、この発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明に係る入浴システムは、要介助者が湯に浸かる浴槽を備えた入浴装置と、前記浴槽の側壁に横付けされるストレッチャーとを備えた入浴システムにおいて、前記側壁に、前記ストレッチャーに向かって突出して前記側壁に沿って水平方向に互いに接近、離間可能な一対の係止部が設けられるとともに、該係止部を、互いに接近した第1位置と離間した第2位置とに選択的に移動させる駆動機構が設けられ、前記ストレッチャーに、第1位置から第2位置に移動する際の前記係止部に当接し得る一対の被係止部が設けられていることを特徴としている。
【0006】
このような特徴の入浴システムによれば、ストレッチャーを浴槽の側壁に横付けした際に該ストレッチャーの位置が担架を浴槽内に移動可能な位置からずれている場合であっても、係止部が第1位置から第2位置に移動することでストレッチャーの位置を予め設定した定位置、即ち、担架を浴槽内に導入可能な位置に移動させることができる。
より詳しくは、係止部が第1位置から第2位置に移動する過程において、該係止部のいずれか一方がストレッチャーの被係止部に当接すると、ストレッチャーは当該係止部の移動に従って浴槽の側壁に沿って移動する。これによって、ストレッチャーを浴槽に横付けした際の位置が、担架を浴槽内に導入可能な位置からずれている場合であっても、その後の係止部の移動によって容易に位置合わせを行うことができる。
【0007】
また、本発明に係る入浴システムにおいては、前記一対の被係止部の配置間隔が前記係止部の第2位置での配置間隔と略同一であることを特徴としている。
これによって、両係止部が第2位置まで移動すると、ストレッチャーの一対の被係止部の配置間隔が被係止部の第2位置での間隔と等しいことから、当該ストレッチャーの被係止部がそれぞれの配置間隔の内側から係止部によって支持されることにより定位置に固定される。
【0008】
また、本発明に係る入浴システムにおいては、前記ストレッチャーを前記側壁に沿って案内するガイド部が設けられたことを特徴としている。
これによって、係止部の移動に従って浴槽の側壁に沿って移動するストレッチャーをより円滑に移動させることが可能となる。
【0009】
また、本発明に係る入浴システムにおいては、前記側壁に、前記ストレッチャーが横付けされたのを検知して、前記係止部を第1位置から第2位置に移動させるように前記駆動機構を作動させるストレッチャー検知手段が設けられたことを特徴としている。
【0010】
このような特徴の入浴システムによれば、ストレッチャーが浴槽の側壁に横付けされることのみをもって係止部を第1位置から第2位置に移動するように駆動機構を作動させることができるため、係止部を移動させるための特段の作業を行うことなく、容易にストレッチャーの位置合わせを行うことが可能となる。
【0011】
さらに、前記ストレッチャー検知手段は、前記側壁に沿って水平方向に延びるように配置されて前記側壁に横付けされた前記ストレッチャーが当接する一対の当接バーを備え、2つの該当接バーに前記ストレッチャーが当接した際に前記駆動機構を作動させるように構成されていることを特徴としている。
【0012】
このような特徴の入浴システムによれば、当接バーにストレッチャーが当接することで該ストレッチャーの検知を行って係止部を移動させる構成としたことから、当接バーの延在範囲内にストレッチャーを当接させる限り、当該ストレッチャーの位置合わせが行われる。従って、一定の余裕を持ってストレッチャーの横付けを行うことが可能となる。
また、このような当接バーが一対配置されていることにより、ストレッチャーの二点が当接バーのそれぞれに当接しない限り位置合わせが行われることはない。よって、ストレッチャーが正確に横付けされてないにも関わらず係止部が移動するといった誤作動を防止することができ、より確実な位置合わせを行うことが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る入浴システムは、前記側壁に横付けされたストレッチャーが該側壁から離間するのを防止するストレッチャー保持手段が設けられたことを特徴としている。
これにより、位置合わせを行うべく係止部が移動した際にストレッチャーが浴槽の側壁から離間することはないため、不具合が生じることはなく確実に位置合わせを行うことが可能となる。
【0014】
さらに、前記ストレッチャー保持手段は、前記側壁に沿って水平方向に延びて上下移動可能に設けられた一対のホールドバーを備え、該ホールドバーは、前記ストレッチャーに備えられた被ホールド軸の前記側壁への接近を許容する下部位置と、前記側壁に接近した前記被ホールド軸を前記ホールドバーよりも前記側壁側に保持する上部位置とを選択的に取り得るように構成されていることを特徴としている。
【0015】
ホールドバーが下部位置に位置する際には、ストレッチャーの被ホールド軸が当該ホールドバーにその移動を阻止されることはないため、ストレッチャーを浴槽の側壁に横付けすることができる。また、横付けした後には、当該ホールドバーを上部位置に位置させることでストレッチャーの被ホールド軸をホールドバーの側壁側に保持することができるため、ストレッチャーが側壁から離間するのを防止することが可能となる。
また、このようにストレッチャーが保持された後でも、ホールドバーは被ホールド軸を側壁側に保持するのみであることから該被ホールド軸はホールドバーの延在方向には移動することができるため、位置合わせを行うに際してホールドバーが妨げとなることはない。
従って、ストレッチャーの横付け及び保持の作業を容易かつ確実に行うのと同時に位置合わせの作業を円滑に行うことができる。
【0016】
さらに、本発明に係る入浴システムにおいては、前記ホールドバーが、前記係止部が互いに接近した第1位置に位置しているときは下部位置に位置し、前記係止部が前記第1位置から互いに離間した第2位置に移動を開始した後に上部位置に移動するように構成されていることを特徴している。
これによって、ストレッチャーが横付けされて位置合わせを行うべく係止部が移動した後にストレッチャーが固定されることとなるため、必要な場合にのみ、即ち位置合わせを行う場合にのみストレッチャーを固定することができる。従って、不用意にストレッチャーが固定されて取扱いに不具合が生じることはないため、作業を円滑に行うことができる。
【0017】
また、本発明に係る入浴システムにおいては、前記係止部を第2位置から第1位置に移動させるように前記駆動機構を作動させるストレッチャー解除手段が設けられたことを特徴としている。
これによって係止部による位置合わせを解除して、ストレッチャーを自由に移動させることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明における入浴システムによれば、ストレッチャーを浴槽の側壁に横付けした際に、係止部を第1位置から第2位置へ水平移動させることによって、ストレッチャーを定位置に移動させることができる。従って、特段の労力を要せずとも、容易かつ確実にストレッチャーの位置合わせを行い、ストレッチャー上の担架を浴槽内に導入することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態である入浴システムの構成について、図1から図7を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る入浴システムを示す平面図、図2は入浴システムの位置合わせ機構が係止部を第1位置に位置させている状態の平面図、図3は入浴システムの位置合わせ機構が係止部を第2位置に位置させている状態の平面図、図4は入浴システムの位置合わせ機構の側面図、図5は図1におけるA−A断面図、図6は図1のB−B断面図においてストレッチャーが入浴装置に連結される前の状態を示す図、図7は図1のB−B断面図においてストレッチャーが入浴装置に連結された状態を示す図である。
【0020】
本実施形態に係る入浴システム60は、寝たきりの老人や身体障害者や手術直後の患者のような要介助者を入浴させる際に使用され、図1に示すように、入浴装置10と、ストレッチャー20とを備えている。そして、ストレッチャー20が入浴装置10に横付けられた際に、該ストレッチャー20上に載置された担架(図示省略)が要介助者を載せた状態で入浴装置10内に導入されるように構成されている。
【0021】
入浴装置10は、図1に示すように、入浴装置本体1と、この入浴装置本体1の上部に開口して設けられた浴槽2と、該浴槽2の側壁2aに設けられる扉部4と、入浴装置10の操作を行うための操作部5とを備えている。
【0022】
この入浴装置10における側壁2aの上部には該側壁2aを切り欠くようにして開口部が形成されており、この側壁2aに設けられた扉部4は、該側壁2aの高さ方向に沿って移動可能に構成されて開口部を開閉することができるようになっている。また、この扉部4が上方へと移動されて開口部を閉じた状態においては、扉部4の浴槽2側の面に設けられるシール部材(図示省略)が、この開口部の上方を除く周囲三方を液密に密閉させることができるように構成されている。
【0023】
また、浴槽2の底部には、図示しない支持台が配置されており、ストレッチャー20から浴槽2内に導入される担架は、ストレッチャー20上からこの支持台上にスライド移動させられるとともに浴槽2内にて当該支持台上に支持されるようになっている。従って、ストレッチャー20を入浴装置10に横付けするに際しては、該ストレッチャー20上の担架が、支持台上にスライド移動可能となるべくストレッチャー20の位置合わせをすることが必要となる。
【0024】
ストレッチャー20は、図1に示すように、下部に配置されてその長手方向両端に2つずつの計4つの車輪22を備えた台車21と、上部に配置されて担架が載置される載置台23と、該載置台23を水平状態に保ちつつ上下方向に昇降させるための昇降装置24とを備えている。
【0025】
昇降装置24は、フレーム24aとシリンダ24bとによって構成されており、フレーム24aは載置台23を水平状態に保ちつつ上下方向に昇降可能に支持し、シリンダ24bはフレーム24aを可動させる動力源としての役割を有している。
【0026】
このストレッチャー20は、載置台23に要介助者が載せられた担架を支持しながら、台車21の長手方向を前方又は後方として上記車輪22によって自在に移動可能とされており、その長手方向が浴槽2の側壁2aに沿うように入浴装置10に横付けされる。そして、ストレッチャー20の位置合わせが行われた後に、載置台23上の担架が浴槽2内の支持台上にスライド移動されるようになっている。
【0027】
そして、入浴装置10の浴槽2の側壁2a下部には、ストレッチャー20上の担架が浴槽2内の支持台上に導入可能となる位置に該ストレッチャー20を位置合わせするセンタリング装置30が設けられている。
【0028】
このセンタリング装置30は、詳しくは図2及び図3に示すように、浴槽2の側壁2aに沿って配置されており、該側壁2aに沿った方向の中心線lを境界として略対象に構成されている。
センタリング装置30の内部には上記中心線lを境界として対称動作が可能な一対の直動機構(駆動機構)31が設けられている。この直動機構は31は、中心線l寄りに設置された直動機構本体31aに備えられたモータによって、浴槽2の側壁2aの端部に向かって延びたロッド31bを上記側壁2aに沿って駆動できるように構成されている。これにより、2つの直動機構31は、モータを作動させることで中心線lを対象線としてロッド31bを互いに対称的に直線移動させられるようになっている。
【0029】
そして、両直動機構31のロッド31bの先端には、支持部材32を介してセンタリングフック(係止部)33がそれぞれ接続されている。
支持部材32は、一端がロッド31bの先端に固定され、中心線lに向かって、即ち2つの直動機構31の配置位置の内側に向かって延びるように取り付けられている。そして、これら支持部材32の他端には、浴槽2の外側に向かって、即ち横付けされるストレッチャー20に向かって延びて、その先端が中心線lとは反対側に向かって屈曲させられたセンタリングフック33がそれぞれ固定されている。このセンタリングフック33の先端は、センタリング装置30の前部カバー30aよりもそれぞれストレッチャー20側に突出している。
そして、両直動機構31のロッド31bが中心線l寄りに位置し収縮している際には、図2及び図4に示すように、両センタリングフック33は互いに最も接近した第1位置に位置させられる。一方、両直動機構31のロッド31bが中心線lから離間して伸張している際には、図3に示すように、両センタリングフック33が互いに最も離間した第2位置に位置させられる。
【0030】
このようなセンタリングフック33に対応して、ストレッチャー20には図2、図3及び図5から図7に示すような一対のセンタリング用軸部25が設けられている。このセンタリング用軸部25は、ストレッチャー20の入浴装置10に横付けされる側方においてセンタリングフック33に対応する位置に一対が鉛直方向に設けられた軸であって、これらセンタリング用軸部25はセンタリングフック33が第2位置にある状態の配置間隔と同様の配置間隔で配置されている。
【0031】
これにより、ストレッチャー20が、担架を浴槽内に導入可能な位置からずれた状態で入浴装置10に横付けされた際には、2つのセンタリングフック33が第1位置から第2位置に移動する過程において、いずれかのセンタリングフック33がセンタリング用軸部25に引っ掛かるようにして当接する。そして、このセンタリング用軸部25がセンタリングフック33と共に移動することによって、ストレッチャーが浴槽2の側壁2aに沿って移動させられる。
その後、センタリングフック33が第2位置まで移動すると、両センタリング用軸部25の配置間隔が両センタリングフック33の第2位置での間隔と等しいことから、図3に示すように両センタリングフック33と両センタリング用軸部25とがそれぞれ引っ掛かるように当接した状態となり、ストレッチャー20が定位置に固定されるようになっている。
なお、この定位置とは、ストレッチャー20上の担架が浴槽2内の支持台にスライド移動可能な位置とされている。
【0032】
また、センタリング装置30には、ストレッチャー20が横付けされたのを検知して上記直動機構31を作動させるストレッチャー検知手段34が設けられている。以下、このストレッチャー検知手段34について図4及び図7を参照しながら説明する。
【0033】
このストレッチャー検知手段34の一構成要素として、図4に示すように、側壁2aに沿って水平方向に延びる一対の当接バー35が、上記2つの直動機構31のロッド31bの延在範囲と略同一の範囲にそれぞれ設けられている。この当接バー35は上記センタリングフック33よりも上方に配設されている。また、図7に示すように、ストレッチャー20における入浴装置10に横付けされる側方の当接バー35と同一の高さ位置には、それぞれ2つの当接バー35に当接可能な一対の当接バー押圧軸26設けられている。なお、この当接バー押圧軸26は上記センタリング用軸部25と同軸上に配置されている。
【0034】
そして、ストレッチャー20が横付けされた際に当接バー押圧軸26が当接バー35に当接すると、図7に示すように、当接バー35はその延在方向を水平に保ったまま、側壁2aに沿って延びる回転軸35aを中心として下方に向けて旋回する。この際、この回転軸35aの当接バー35とは反対側に向かって延びる旋回バー36が上方に向かって旋回する。そして、この旋回バー36の動作によってスイッチ押しバー37が、側壁2aに沿って延びる回転軸37aを中心として回転する。これによって、スイッチ押しバー37の他端がセンタリング装置30内に位置するストレッチャー検知スイッチ38を押圧すると、上記直動機構31に対してロッド31bを伸張させるように駆動する信号を送出されるようになっている。
【0035】
なお、このストレッチャー検知手段34においては、2つの当接バー35がそれぞれ当接バー押圧軸26により押圧されて、両当接バー35に対応する2つのストレッチャー検知スイッチ38が押圧されない限り直動機構31は駆動しない。即ち、両当接バー35のそれぞれをストレッチャー20の2つの当接バー押圧軸26がそれぞれ押圧して初めて直動機構31が駆動されるようになっている。
【0036】
さらに、センタリング装置30には、横付けされたストレッチャー20が側壁2aから離間するのを防ぐためのストレッチャー保持手段40が設けられている。以下、このストレッチャー保持手段40の構成について説明する。
【0037】
ストレッチャー保持手段40の一構成要素として、図2、図3及び図4に示すように、側壁2aに沿って水平方向に延びる一対のホールドバー41aが、上記2つの当接バー35の延在範囲と略同一の範囲に設けられている。ホールドバー41aの両端にはアーム41bが接続されており、これらホールドバー41aとアーム41bとでそれぞれ平面視コの字状をなすホールドフレーム41が構成されている。
そして、図5、図6及び図7に示すように、アーム41bのホールドバー41aとの接続端部と逆側の基端部側はセンタリング装置30の下部に回動自在に取り付けられており、これによるアーム41bの回動によって、ホールドバー41aが、図5及び図7に示す上部位置と、図6に示す下部位置との間を旋回可能となるように構成されている。なお、アーム41bは上方へ旋回する方向に向かって、例えばスプリング等の弾性部材によって付勢されている。
【0038】
また、上述した直動機構31のロッド31bの先端下部には、図4、図5及び図6に示すように、それぞれ下方に向かって押圧ローラー42が設けられている。この押圧ローラー42は、それぞれ直動機構31が収縮状態となりセンタリングフック33が第1位置に位置している際には、図4及び図6に示すように、アーム41bの基端部側かつ当該押圧ローラー42の真下に設けられた被押圧部43を下方に向かって押圧するようになっている。この押圧によってアーム41bは下方に旋回した状態に保持され、これに伴いアーム41bに接続されたホールドバー41aは下部位置に保持される。
【0039】
また、直動機構31がロッド31bの伸張を開始すると、当該ロッド31bの先端下部に配置された押圧ローラー42も移動するため、これによって押圧ローラー42が上記被押圧部43から外れ、当該押圧ローラー42による被押圧部43の押圧が解除される。これに伴い、アーム41bの下方に旋回した状態での保持も解除され、上方に向かっての付勢力によりホールドバー41aが図5に示すような上部位置に移動する。
【0040】
このような構成のストレッチャー保持手段40は、ストレッチャーを横付けするに際には、直動機構31が収縮状態にあることから押圧ローラー42がホールドフレーム41の被押圧部43を押圧し、ホールドバー41aが下部位置に保持されている。この場合には、ストレッチャー20の上記当接バー押圧軸26と同一鉛直軸下部に設けられた一対の被ホールド軸27がホールドバー41aに接触することはない。即ち、図6に示すよう状態においては、ストレッチャー20が入浴装置10に接近しても、ストレッチャー20の被ホールド軸27の高さ方向の延在範囲がホールドバー41aと被ることはないため、被ホールド軸27とホールドバー41aと接触することはなく、ストレッチャー20は浴槽2の側壁2aに接近して横付けすることが許容される。
【0041】
そして、このように横付けされた状態から直動機構31が伸張を開始すると、押圧ローラー42が被押圧部43の上方から外れてホールドバー41aが上部位置に移動する。なお、この際、直動機構31が動作開始後時間差を設けてホールドバー41aが上部位置に移動する構成としてもよい。
そして、図5に示すように、ストレッチャー20の被ホールド軸27がホールドバー41aよりも浴槽2側、即ちホールドフレーム41のコの字の内側に保持されることで、ストレッチャー20が浴槽2の側壁2aから離間不能に固定される。なお、この状態においては、ホールドバー41aの延在範囲ならばストレッチャー20は浴槽2の側壁2aに沿って自由に移動できる。従って、ホールドバー41aによってストレッチャー20が保持されたとしても、上記のようにセンタリングフック33の移動に伴ってストレッチャー20は浴槽2の側壁2aに沿って移動可能とされる。
【0042】
さらに、センタリング装置30には、第2位置に位置するセンタリングフック33を第1位置に移動させるストレッチャー解除スイッチ45が設けられている。このストレッチャー解除スイッチ45は図2に示す右側の当接バー35の上部に位置しており、このストレッチャー解除スイッチ45を押すことで両直動機構31が伸張状態から収縮状態に移行し、センタリングフック33が第2位置から第1位置に移動するようになっている。
【0043】
なお、本実施形態の入浴システム60においては、ストレッチャー20が入浴装置10に横付けされた状態でも容易にストレッチャー解除スイッチ45を押すことができるように、ストレッチャー20にスイッチ押圧機構28が設けられている。
このスイッチ押圧機構28は、図1及び図5に示すように、ストレッチャー20の長手方向に直交する方向に延びる押圧棒28aと、該押圧棒28aの一端に取り付けられたペダル28bとを備えている。ペダル28bは、ストレッチャ20が入浴装置10に横付けされた際に該入浴装置10とは反対側の側方下部に設けられており、このペダルを28b踏むことによって、押圧棒28aの先端がセンタリング装置30のストレッチャー解除スイッチ45を押圧するように構成されている。
【0044】
また、図4に示すように、センタリング装置30の前部カバー30aには、側壁2aに沿って水平方向に延びるガイドバー30bが一対設けられており、ストレッチャー20には、このガイドバーに当接可能なガイドローラー29、29が設けられている。そして、ストレッチャー20が入浴装置10に横付けされた際には、ガイドバー30b上をガイドローラー29が案内されるようにして回転することにより、ストレッチャー20が側壁2aに沿って円滑に移動できるようになっている。
【0045】
次に、上記のように構成される入浴システム60の作用について図8も参照しながら説明する。
まず、要介助者が載せられた担架が載置台23上に載置されたストレッチャー20を介助者が入浴装置10の浴槽2の側壁2a側に横付けする(ステップS1)。この際、ストレッチャー20の長手方向側方部が浴槽2の側壁2aに沿うよう該ストレッチャー20を移動させて、該ストレッチャー20に設けられた2つの当接バー押圧軸26を、浴槽2の側壁2aに設けられたセンタリング装置30の当接バー35にそれぞれ当接させて押圧させる(ステップS2)。
【0046】
2つの当接バー押圧軸26が当接バー35を押圧すると、直動機構31が作動し、伸縮状態にあったロッド31bが伸張する方向に向かって作動を開始する。これに伴って、ロッド31bの先端に接続されたセンタリングフック33が互いに近接した初期位置である第1位置から互いに離間した第2位置に向かって移動を開始する(ステップS3)。
【0047】
そして、センタリングフック33が移動を開始した後、ロッド31bの先端下部に設けられた押圧ローラー42が被押圧部43の押圧を解除することにより、ホールドバー41aが下部位置から上部位置に移行する。すると、ストレッチャー20の被ホールド軸27がホールドバー41aよりも浴槽2側、即ちホールドフレーム41のコの字の内側に保持されることで、ストレッチャー20が浴槽2の側壁2aから離間不能にホールドバー41aによって固定される(ステップS4)。
【0048】
そして、センタリングフック33が第1位置から第2位置に移動する過程において、いずれかのセンタリングフック33がセンタリング用軸部25に接触して引っ掛かり(ステップS5)、これによって当該センタリング用軸部25がセンタリングフック33と共に移動するとストレッチャーが浴槽2の側壁2aに沿って移動させられる(ステップS6)。
【0049】
そして、センタリングフック33が第2位置まで移動すると、センタリング用軸部25の配置間隔がセンタリングフック33の第2位置での間隔と等しいことから、両センタリングフック33と両センタリング用軸部25がそれぞれ当接して引っ掛かり、ストレッチャー20が定位置、即ちストレッチャー20上の担架が浴槽2内の支持台にスライド移動可能な位置に固定・保持され(ステップS7)、その後、ストレッチャー20上の担架が浴槽2内の支持台上に移動される(ステップS8)。
【0050】
また、入浴後にストレッチャー20を浴槽2の側壁2aから離脱させるには、ストレッチャー20に設けられたペダル28bを踏み、センタリング装置30のストレッチャー解除スイッチ45を押圧する。これによってセンタリングフック33が第2位置から第1位置に向かって移動を開始して、これらセンタリングフック33によるセンタリング用軸部25、25の支持が解除されるとともに、押圧ローラ42が再び被押圧部43を押圧することでホールドバー41aが上部位置から下部位置に移動する。これによって、ホールドバー41aによる被ホールド軸27の保持が解除され、ストレッチャー20が浴槽2の側壁2aから離脱可能となる。
【0051】
以上のようにして、本実施形態の入浴システム60においては、ストレッチャー20を浴槽2の側壁2aに横付けした際に該ストレッチャー20の位置が担架を浴槽内に導入可能な位置からずれている場合であっても、センタリングフック33が第1位置から第2位置に移動することで、ストレッチャー20の位置を予め設定した定位置である担架を浴槽内に導入可能な位置に移動させることができる。
即ち、センタリングフック33が第1位置から第2位置に移動していく過程において、該センタリングフック33のいずれか一方がストレッチャー20のセンタリング用軸部25に当接すると、ストレッチャー20は当該センタリングフック33の移動に従って浴槽2の側壁aに沿って移動する。そして、センタリングフック33が第2位置まで移動すると、ストレッチャー20の一対のセンタリング用軸部25の配置間隔が被係止部の第2位置での間隔と等しいことから、ストレッチャー20のセンタリング用軸部25がそれぞれの配置間隔の内側からセンタリングフック33によって支持されることにより固定される。
これによって、ストレッチャー20を浴槽に横付けした際の位置が、担架を浴槽内に導入可能な位置からずれている場合であっても、その後のセンタリングフック33の移動によって容易に位置合わせを行うことができる。
【0052】
また、ストレッチャー20が浴槽2の側壁2aに横付けされるで当接バー押圧軸26が当接バー35を押圧することのみをもってセンタリングフック33が第1位置から第2位置に移動する構成とされているため、センタリングフック33を移動させるために特段の作業を行うことなく、容易にストレッチャー20の位置合わせを行うことが可能となる。
【0053】
さらに、当接バー35の延在範囲内にストレッチャー20の当接バー押圧軸26を当接させる限りストレッチャー20の位置合わせが行われるため、当接バー35の延在範囲に応じて一定の余裕を持ってストレッチャー20の横付けをすることが可能となる。
【0054】
さらにまた、側壁2aに沿った2つの当接バー35が配置されていることにより、ストレッチャー20の両当接バー押圧軸26が両当接バー35のそれぞれに当接しない限りセンタリングフック33は作動されない。従って、ストレッチャー20が正確に横付けされてないにも関わらずセンタリングフック33が作動するといった誤作動を防止することができ、より確実な位置合わせを行うことが可能となる。
【0055】
また、浴槽2の側壁2aに横付けされたストレッチャー20を該側壁2aから離間するのを防止するストレッチャー保持手段40が設けられたことから、位置合わせを行うべくセンタリングフック33が移動した際にストレッチャー20が側壁え2aから離間することはないため、不具合が生じることはなく確実に位置合わせを行うことが可能となる。
【0056】
さらに、このストレッチャー保持手段40において、ホールドバー41aが下部位置に位置する際には、ストレッチャー20の被ホールド軸27がホールドバー41aに阻止されることはないためストレッチャー20を浴槽2の側壁2aに横付けすることができる一方、横付けした後には、当該ホールドバー41aを上部位置に位置させることでストレッチャー20の被ホールド軸27がホールドバー41aの側壁2a側に保持されるため確実にストレッチャー20の保持を行うことが可能となる。
また、このようにストレッチャー20が保持された後でも、被ホールド軸27はホールドバー41aの延在方向には移動することができるため、位置合わせを行うに際してホールドバー41aが妨げとなることはない。
従って、ストレッチャーの横付け及び固定の作業を容易かつ確実に行うのと同時に位置合わせの作業を円滑に行うことができる。
【0057】
さらに、ホールドバー41aが、センタリングフック33が第1位置に位置しているときは下部位置に位置し、第1位置から第2位置に移動を開始した後に上部位置に移動するように構成されていることから、ストレッチャー20が横付けされて位置合わせを行うべくセンタリングフック33が移動した際にのみストレッチャー20が保持されることとなる。従って、必要な場合にのみストレッチャー20が保持されるため、不用意にストレッチャーが保持されて取扱いに不具合が生じることはなく作業を円滑に行うことができる。
【0058】
以上、本発明に係る入浴システム60の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態においては、2つの直動機構31は互いに対称にのみ移動したが、これに限定されることはなく、両者が非対称に駆動する構成とされていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係る入浴システムを示す平面図である。
【図2】入浴システムの位置合わせ機構が係止部を第1位置に位置させている状態の平面図である。
【図3】入浴システムの位置合わせ機構が係止部を第え位置に位置させている状態の平面図である。
【図4】入浴システムの位置合わせ機構の側面図である。
【図5】図1におけるA−A断面図である。
【図6】図1のB−B断面図においてストレッチャーが入浴装置に連結される前の状態を示す図である。
【図7】図1のB−B断面図においてストレッチャーが入浴装置に連結された状態を示す図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る入浴装置の作用を示すフロー図である
【符号の説明】
【0060】
1 入浴装置本体
2 浴槽
2a 側壁
10 入浴装置
20 ストレッチャー
21 台車
25 センタリング用軸部
26 当接バー押圧軸
27 被ホールド軸
28 スイッチ押圧機構
28a 押圧棒
28b ペダル
29 ガイドローラー
30 センタリング装置
30b ガイドバー
31 直動機構(駆動機構)
31a 直動機構本体
33 センタリングフック
34 ストレッチャー検知手段
35 当接バー
36 旋回バー
37 スイッチ押しバー
38 ストレッチャー検知スイッチ
40 ストレッチャー保持手段
41 ホールドフレーム
41a ホールドバー
41b アーム
42 押圧ローラー
43 被押圧部
45 ストレッチャー解除スイッチ
60 入浴システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
要介助者が湯に浸かる浴槽を備えた入浴装置と、前記浴槽の側壁に横付けされるストレッチャーとを備えた入浴システムにおいて、
前記側壁に、前記ストレッチャーに向かって突出して前記側壁に沿って水平方向に互いに接近、離間可能な一対の係止部が設けられるとともに、
該係止部を、互いに接近した第1位置と離間した第2位置とに選択的に移動させる駆動機構が設けられ、
前記ストレッチャーに、第1位置から第2位置に移動する際の前記係止部に当接し得る一対の被係止部が設けられていることを特徴とする入浴システム。
【請求項2】
前記一対の被係止部の配置間隔が前記係止部の第2位置での配置間隔と略同一であることを特徴とする請求項1に記載の入浴システム。
【請求項3】
前記ストレッチャーを前記側壁に沿って案内するガイド部が設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の入浴システム。
【請求項4】
前記側壁に、前記ストレッチャーが横付けされたのを検知して、前記係止部を第1位置から第2位置に移動させるように前記駆動機構を作動させるストレッチャー検知手段が設けられたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の入浴システム。
【請求項5】
前記ストレッチャー検知手段は、
前記側壁に沿って水平方向に延びるように配置されて前記側壁に横付けされた前記ストレッチャーが当接する一対の当接バーを備え、
2つの該当接バーに前記ストレッチャーが当接した際に前記駆動機構を作動させるように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の入浴システム。
【請求項6】
前記側壁に横付けされたストレッチャーが該側壁から離間するのを防止するストレッチャー保持手段が設けられたことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の入浴システム。
【請求項7】
前記ストレッチャー保持手段は、前記側壁に沿って水平方向に延びて上下移動可能に設けられた一対のホールドバーを備え、
該ホールドバーは、前記ストレッチャーに備えられた被ホールド軸の前記側壁への接近を許容する下部位置と、前記側壁に接近した前記被ホールド軸を前記ホールドバーよりも前記側壁側に保持する上部位置とを選択的に取り得るように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の入浴システム。
【請求項8】
前記ホールドバーが、前記係止部が互いに接近した第1位置に位置しているときは下部位置に位置し、前記係止部が前記第1位置から互いに離間した第2位置に移動を開始した後に上部位置に移動するように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の入浴システム。
【請求項9】
前記係止部を第2位置から第1位置に移動させるように前記駆動機構を作動させるストレッチャー解除手段が設けられたことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の入浴システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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