説明

入浴システム

【課題】異なる介護度の要介護者が使用することができる入浴システムを提供する。
【解決手段】他の側壁22b〜22dよりも低い高さに形成された第1側壁22aの上方に形成された開口23を開閉させる扉部24が設けられた浴槽2と、該浴槽2内部に設置可能な着座部3と、該着座部3が着脱可能で該着座部3が取り付けられる取付部4と、該取付部4を所定の位置に支持する支持部5と、を備える。着座部3には、浴槽2内部に設置可能な第1着座部と、浴槽2内部に設置可能であるとともに車椅子の台車部に着脱可能な第2着座部のいずれか一方が選択可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護を必要とする要介護者を入浴させるための入浴システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、病人や寝たきりの老人、身体障害者等の介護を必要とする要介護者を入浴させるための入浴システムが使用されている。
例えば、特許文献1には、入浴する要介護者が座ることのできる着座部が設けられた入浴システムが開示されている。この入浴システムでは、要介護者を乗降させる乗降位置から、浴槽中央側に位置し要介護者を入浴させる入浴位置まで着座部が回転しながら移動し、入浴位置で着座部が昇降可能に構成されていて、着座部を回転および移動可能に支持する支持機構を備えている。
また、特許文献2には、着座部が台車部に着脱可能な車椅子を使用し、要介護者を乗せた状態の着座部を台車部から浴槽内の所定の位置に移動・固定させて、要介護者を入浴させる入浴システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−22546号公報
【特許文献2】特開2008−194183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、介護施設などにおいて、例えば、車椅子を必要とする・しないなどの介護度の異なる複数人の要介護者を、その介護度にあった入浴システムを使用して入浴させる場合、介護者は、異なる入浴システム間を移動する必要があり、この移動に時間がかかっている。このため、必然的に要介護者の入浴のケアを行う介護者の人数が多くなり、その他のケアを行う介護者の人数が不足する虞がある。
また、要介護者の介護度は、加齢により重度化することが考えられるため、介護度が変わった場合にも同一の入浴システムで対応できることが望まれている。
【0005】
本発明は、上述する事情に鑑みてなされたもので、異なる介護度の要介護者が使用することができる入浴システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る入浴システムは、側壁の一部が他よりも低い高さに形成され該側壁の一部の上方に形成された開口を開閉させる扉部が設けられた浴槽と、該浴槽内部に設置可能な着座部と、該着座部が着脱可能で該着座部が取り付けられる取付部と、該取付部を所定の位置に支持する支持部と、を備え、前記着座部には、前記浴槽内部に設置可能な第1着座部と、前記浴槽内部に設置可能であるとともに車椅子の台車部に着脱可能な第2着座部のいずれか一方が選択可能となっていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、浴槽は、側壁の一部が他よりも低い高さに形成され該側壁の一部の上方に形成された開口を開閉させる扉部が設けられていることにより、要介護者または要介護者を乗せた着座部を浴槽の上方まで持ち上げる必要がなく、開口を通じて浴槽内または浴槽外へ安全かつ簡便に移動させることができる。
そして、着座部には、浴槽内部に設置可能な第1着座部と、浴槽内部に設置可能であるとともに車椅子の台車部に着脱可能な第2着座部のいずれか一方が選択可能となっていることにより、1つの入浴システムで車椅子を使用する要介護者と車椅子を必要としない要介護者とが入浴することができる。
【0008】
また、本発明に係る入浴システムでは、前記支持部は、前記取付部の位置を変更可能であることが好ましい。
このように、支持部は、取付部の位置を変更可能であることにより、要介護者にあわせて取付部に取り付けられる着座部の位置や向きを変更することができる。例えば、要介護者が右半身、左半身の一方が不自由な場合に、着座部の向きを調整することで、要介護者が入浴しやすい向きとすることができる。
【0009】
また、本発明に係る入浴システムでは、前記取付部には前記開口部へ向かって延在する取付部レールが設けられ、前記台車部には該台車部の側方へ延在するとともに前記取付部レールと連続可能な台車部レールが設けられていて、前記第2着座部は、前記取付部レールおよび前記台車部レールに沿って移動可能であることが好ましい。
このように、取付部には開口へ向かって延在する取付部レールが設けられ、台車部には該台車部の側方へ延在するとともに取付部レールと連続可能な台車部レールが設けられていて、第2着座部は、取付部レールおよび台車部レールに沿って移動可能であることにより、第2着座部の台車部と取付部との間の移動を容易にかつ簡便に行うことができる。
【0010】
また、本発明に係る入浴システムでは、前記支持部は、前記開口部と対向する前記浴槽の側壁近傍に設けられていて、前記取付部は前記着座部が取り付けられていないときに前記側壁に沿うように折りたたみ可能であることが好ましい。
このように、支持部は、開口と対向する浴槽の側壁近傍に設けられていて、取付部は着座部が取り付けられていないときに側壁に沿うように折りたたみ可能であることにより、取付部を折りたためば、浴槽内部を広く使用することができ、着座部を必要としない使用者も浴槽の底部に直接座るようにして入浴することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、着座部には、浴槽内部に設置可能な第1着座部と、浴槽内部に設置可能であるとともに車椅子の台車部に着脱可能な第2着座部のいずれか一方が選択されることにより、1つの入浴システムで車椅子を使用する要介護者と車椅子を必要としない要介護者とが入浴することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態による入浴システムの一例を示す図である。
【図2】浴槽の扉部が上昇した様子を示す図である。
【図3】第2着座部が取り付けられる前の様子を示す図である。
【図4】第2着座部が取り付けられた様子を示す図である。
【図5】第1着座部の下面に設けられた突起部を説明する図である。
【図6】取付部レール、台車部レールおよび車輪を説明する図である。
【図7】着座部が取りつけられていない様子を示す図である。
【図8】取付部が折りたたまれた様子を示す図である。
【図9】第1着座部の向きを変えた図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態による入浴システムについて、図1乃至図9に基づいて説明する。
(入浴システム)
図1に示すように、本実施形態による入浴システム1は、浴槽2と、浴槽2内に設置され要介護者(不図示)が着座する着座部3と、着座部3が着脱可能でこの着座部3が取り付けられる取付部4と、取付部4を所定の位置に支持する支持部5と、給湯手段(不図示)や浴槽2に張るために十分な湯を蓄えることのできるタンク61を備える給湯部6と、入浴システム1の操作を行うための操作部7とを備えている。
【0014】
浴槽2は、平面視略長方形の底部21と、その四辺から立設する4つの側壁22a〜22dとを備えている。4つの側壁22a〜22dのうちの第1側壁22aは、他の側壁22b〜22dと比べて高さが低く形成されている。ここで、第1側壁22aの直上で、第1側壁22aの上端部の高さから他の側壁22b〜22cの上端部の高さまでの領域を開口23として以下説明する。
そして、浴槽2には、開口23が形成されていることにより、要介護者および着座部3をこの開口23を通過させて、浴槽2の内側から外側、または浴槽2の外側から内側へ移動させることができる。
【0015】
また、第1側壁22aの外側には、第1側壁22aに沿って上下方向にスライド可能な扉部24が設けられている。
扉部24は、図2に示すように、上昇したときに上端部24aが他の側壁22b〜22dの上端部の高さに達するように構成されていて、上下にスライドすることで第1側壁22a上方の開口23を開閉することができる。また、扉部24は、上方へ移動して開口23を閉じた状態において、扉部24の浴槽2側の面の両側端部および下端部に設けられた不図示のシール部材が、この開口23の上方を除く周囲3方を密閉できるよう構成されている。
ここで、第1側壁22aと、第1側壁と対向する第2側壁22cとを結ぶ方向(図1における矢印Aの方向)を前後方向とし、第1側壁22a側を前側、第2側壁22c側を後側として以下説明する。
【0016】
着座部3には、図1に示す入浴システム1のみで使用可能な第1着座部3Aと、図3および図4に示すように入浴システム1で使用可能であるとともに床面Fを走行する台車部81(図3参照)に載置可能な第2着座部3Bの2つがあり、これらのうちの一方が選択される。図3に示すように、第2着座部3Bは、台車部81とともに入浴用の車椅子8の構成部材となっている。
【0017】
図1に示すように、第1着座部3Aは、第1座面31と、第1座面31と連結された第1背もたれ32とを備えていて、第1座面31が取付部4に着脱可能に構成されている。
また、図5に示すように、第1着座部3Aは、第1座面31の下面から下方に突出する突起部33が形成されている。この突起部33は、第1座面31に固定された円柱状の円柱部材34と、円柱部材34の突出側の先端に取り付けられていて円柱部材34よりも径が大きい円板状の円板部材35とを備えている。
この突起部33は、後述する取付部4に形成された突起部挿通孔45に挿通される。
【0018】
図3および4に示すように、第2着座部3Bは、第2座面36と第2背もたれ37とを備えていて、第2座面36が取付部4および台車部81(図3参照)に着脱可能に構成されている。
図3に示すように、台車部81は、第2座面36が載置されるフレーム82と、フレーム82の下部に設置されて床面Fを走行する台車部車輪83と、を備えている。
そして、フレーム82には、車椅子8が走行する方向(図3の矢印Bの方向)と直交する方向に延在する一対の台車部レール84,84が設けられている。この一対の台車部レール84,84は、互いに延在方向に直交する方向へ所定の間隔をあけて配されているとともに、第1側壁22aの上端部よりも上方に位置している。
本実施形態では、図6に示すように、台車部レール84は、フレーム82の上部に設けられていて、ウェブ84aとフランジ84bとを有している。
なお、台車部レール84は、溝状に形成されていてもよい。
【0019】
図3および図6に示すように、第2座面36の下面には、一対の台車部レール84に沿って走行する車輪38が設けられている。これにより、第2着座部3Bは、台車部81上を台車部レール84に沿って移動可能に構成されている。
本実施形態では、図6に示すように、車輪38は、台車部レール84のウェブ84aに沿って走行する第1車輪38aと、台車部レール84のフランジ84bに沿って走行する第2車輪38bとが一対となっている。そして、車輪38は、1つの台車部レール84に対して複数設けられていて、少なくとも第2座面36の両側端部36a,36b(図3参照)近傍にそれぞれ設けられている。
また、図6に示すように、台車部レール84の端部には、第2着座部3Bが台車部レール84上を移動することを拘束するストッパ87が設けられている。そして、第2着座部3bには、このストッパ87が干渉可能な凸部が(不図示)形成されていて、ストッパ87は、付勢部材(不図示)によって凸部と干渉する位置に付勢されている。
このストッパ87と凸部とが干渉することによって、車輪38は台車部レール84上を走行できないようになっている。
そして、台車部81が取付部4と当接すると、取付部4が付勢部材の付勢力に抗してストッパ87を内側へ押圧し、ストッパ87を凸部と干渉しない位置へ移動させている。
このため、台車部81が取付部4と当接すると、ストッパ87が凸部と干渉しない位置へ移動するため、車輪38は台車部レール84上を走行可能となる。これにより、第2着座部3Bが台車部レール84に沿って移動可能となっている。
【0020】
図1に示すように、支持部5は、第1側壁22aと対向する第2側壁22cの外方に立設する支柱51と、棒状に形成され一方の端部52a近傍が支柱51に揺動可能に保持された揺動部材52と、棒状に形成され揺動部材52と所定の間隔をあけて平行に設置されるとともに一方の端部53a近傍が支柱51に揺動可能に保持されたリンク部材53と、揺動部材52の他方の端部52bおよびリンク部材53の他方の端部53b取り付けられた接続部材54とを備えている。
【0021】
支柱51は、第2側壁22cの幅方向の略中央に位置し、上端部51aが第2側壁22cの上端部よりも上方となるように設置されている。
揺動部材52は、一方の端部52aが他方の端部52bよりも上側となり、この一方の端部52aから他方の端部52b側へやや移動した位置に揺動支点52cが設けられていて、この揺動支点52cを中心として第2側壁22cと平行な鉛直面内において揺動可能に構成されている。この揺動支点52cは、支柱51の上端部51a近傍で第2側壁22cの上端部よりも上方に位置している。
また、揺動部材52は、他方の端部52bが浴槽2内に入るように設置されている。そして、揺動部材52は、介護者が手動で揺動させるように構成されている。
【0022】
リンク部材53は、一方の端部53aが他方の端部53bよりも上側となり、この一方の端部53aに揺動支点53cが設けられていて、この揺動支点53cを中心として揺動部材52と平行な状態で揺動可能に構成されている。この揺動支点53cは、揺動部材52の揺動支点52cと同じ高さに位置している。
また、リンク部材53は、他方の端部53bが浴槽2内に入るように設置されている。
【0023】
接続部材54は、揺動部材52およびリンク部材53の先端部(他方の端部52b,33b)に、揺動部材52およびリンク部材53が揺動する鉛直面内において回転可能に保持されている。これにより、接続部材54は、揺動部材52およびリンク部材53が揺動したときに、その向きを変えずに揺動部材52およびリンク部材53とともに移動することができる。
【0024】
図7に示すように、取付部4は、後端部が支持部5の接続部材54に接続された略矩形板状の第1板部材41と、第1板部材41の前端部に接続された第2板部材42とを備えている。
第1板部材41には、着座部3が取り付けられる。また、第1板部材41および第2板部材42は、その上面を着座部3がスライド可能となっている。
【0025】
接続部材54と第1板部材41との間には第1ヒンジ43が介装されている。これにより、第1板部材41は、接続部材54に第2側壁22cに直交する鉛直面内において回転可能に保持されている。
また、第1板部材41と第2板部材42との間には第2ヒンジ44が介装されている。これにより、第2板部材42は、第1板部材41に第2側壁22cに直交する鉛直面内において回転可能に保持されている。
【0026】
そして、浴槽2の扉部24が下降しているときには、第1板部材41および第2板部材42を水平状態とすることができる。このとき、第1板部材41は浴槽2の内部に配され、第2板部材42は第1側壁22aおよび扉部24の上方に配されている。
また、図2に示すように、浴槽2の扉部24が上昇しているときには、第1板部材41を水平状態とし、第2板部材42を扉部24の内面に接触させて傾斜状態とすることで、第1板部材41および第2板部材42を浴槽2の内部に配することができる。
【0027】
また、図8(a),(b)に示すように、第1板部材41に着座部3(図1参照)が装着されていないときには、第1板部材41および第2板部材42を鉛直状態とすることで、第1板部材41および第2板部材42を浴槽2内部の後方に配することができる。このとき、浴槽2の中央部が開放されるため、要介護者は浴槽2の底部21(図8(a)参照)に座るようにして入浴することができる。
【0028】
また、図1に示すように、取付部4に設置された着座部3は、接続部材54を介して揺動部材52と連結されていることにより、その向きを変えずに揺動部材52とともに移動することができる。
そして、揺動部材52の支柱51との間の角度を調整することによって、着座部3の位置が調整される。例えば、着座部3は、図1や図9に示すように、浴槽2に対する位置を変更することができる。このとき、取付部4に取り付ける着座部3の向きも変更することができる。
【0029】
図7に示すように、第1板部材41には、水平状態において上下方向に貫通し第1着座部3Aの突起部33が挿通される突起部挿通孔45が形成されている。突起部挿通孔45は、前後方向に延びる長孔45aと、この長孔45aの幅よりも大きい径で長孔45aの長さ方向の中間部に長孔45aと重なるように位置する孔部45bとを有している。
長孔45aは、円柱部材34(図5参照)の径よりもやや大きく、円板部材35(図5参照)の径よりも小さい幅に形成されている。また、孔部45bは、円板部材35の径よりも大きい径に形成され、突起部33が挿入可能となっている。
【0030】
そして、孔部45bから突起部挿通孔45へ突起部33が挿通され、突起部33の円板部材35が孔部45bの下方に位置すると、円柱部材34が長孔45a内を長孔45aの長さの範囲で移動可能となるため、第1着座部3Aは、長孔45aの長さの範囲で移動可能となっている。
また、長孔45aに挿通されている円柱部材34がその軸を中心として回転可能となるため、第1着座部3Aは、突起部33が突起部挿通孔45へされた状態において円柱部材34の軸を中心として回転可能となっている。
このとき、長孔45aは円板部材35の径よりも小さい幅に形成されているため、突起部33が長孔45aから外れないようになっている。
【0031】
また、第1板部材41には、水平状態において前後方向に延びる一対の第1取付部レール46,46が設けられている。この一対の第1取付部レール46,46は、図3に示す台車部81の台車部レール84と同様に形成されている。そして、第2着座部3Bの下面に設けられた車輪38(図6参照)がこの第1取付部レール46,46に沿って移動可能となっている。
また、第2板部材42にも、水平状態において前後方向に延びる一対の第2取付部レール47,47が設けられている。この一対の第2取付部レール47,47も、図3に示す台車部81の台車部レール84と同様に形成されている。そして、第2着座部3Bの下面に設けられた車輪38(図6参照)がこの第2取付部レール47,47に沿って移動可能となっている。
【0032】
そして、第1取付部レール46と第2取付部レール47とは、同一直線上に連続するように配設されている。
また、図3に示すように、第1板部材41および第2板部材42が水平状態となり、台車部81が第2板部材42の前方に位置すると、第1取付部レール46、第2取付部レール47および台車部レール84が同一直線上に配設されている。
【0033】
このとき、台車部81に第2板部材42が当接して、台車部81のストッパ87(図6参照)が解除されると、車輪38が第1取付部レール46、第2取付部レール47および台車部レール84に沿って移動可能となっている。これにより、第2着座部3Bは、台車部81から取付部4(第1板部材41および第2板部材42)、また、取付部4から台車部81へ移動可能となっている。
第1板部材41には、第2着座部3Bが装着されたときに第2着座部3Bを固定する固定部材(不図示)が設けられている。
【0034】
(入浴システムの使用方法)
次に、上述した入浴システム1の使用方法について説明する。
まず、第1着座部3Aを用いた使用方法について説明する。
まず、図7もしくは図9に示すように、取付部4が所定の位置に配されるように、揺動部材52を揺動させ、揺動部材51の位置を固定する。
このとき、浴槽2の扉部24を下降させて、開口23を開放した状態とする。また、第1板部材41および第2板部材42を水平状態とする。
【0035】
続いて、取付部4へ第1着座部3Aを設置する。
第1着座部3Aの突起部33(図5参照)を、第1板部材41の突起部挿通孔45(図7参照)へ孔部45bから挿通させ、第1着座部3Aの下面を取付部4の上面に当接させる。そして、突起部33の円柱部材34を長孔45a内で移動させて、第1着座部3Aを前方へ移動させる。
そして、第1着座部3Aを回転させてその向きが前方を向くように調整する。
【0036】
続いて、第1着座部3Aに要介護者を着座させ、要介護者を着座させたまま第1着座部3Aを後方へ移動させる。
そして、第1着座部3Aを後方へ移動させた後に、第1着座部3Aを突起部33の軸を中心に回転させて向きを調整する。これにより、第1着座部3Aは図1のように設置され、要介護者は、脚を第1着座部3Aよりも下方に下ろすことができる。
【0037】
続いて、図2に示すように、浴槽2の扉部24を上昇させて開口23を閉鎖する。そして、浴槽2へ給湯手段やタンク61から給湯する。
そして、浴槽2に湯が供給されて、入浴が可能となる。また操作部7により第1着座部3Aを下降させて入浴することも可能である。
【0038】
このとき、タンク61に貯められた湯を浴槽2へ供給することにより、蛇口などの給湯手段から浴槽2へ湯を供給する場合と比べて、短時間で浴槽2へ湯を供給することができる。
なお、要介護者が第1着座部3Aに着座する前に、浴槽2内の第1側壁22aの上端部よりも下側まで湯を溜めておいてもよく、これにより、要介護者が第1着座部3Aに着座した後の給湯に係る時間を短縮させることができる。
【0039】
続いて、入浴が終了したら、第1側壁22aの上端部よりも上方の湯をタンク61に戻す、または排水する。
そして、第1側壁22aの上端部よりも上方の湯が排出された後に、図1に示すように、扉部24を下降させて、開口23を開放させる。
続いて、第1着座部3Aを回転させて要介護者が前方を向くように調整し、そのまま第1着座部3Aを前方へ移動させる。
このようにして、要介護者を浴槽2の外方へ移動させることができる。
【0040】
次に、第2着座部3Bを用いた入浴方法について説明する。
まず、第1着座部3Aを用いる場合と同様に、揺動部材52を揺動させて取付部4の位置を調整する。
続いて、図3に示すように、要介護者を乗せた車椅子8を、その第2着座部3Bが取付部4の前方となる位置に横付けする。このとき、台車部レール84と、第1取付部レール46および第2取付部レール47とが同一直線上に配置させる。また、台車部81と第2板部材42とを当接させて、ストッパ87を解除させる。
続いて、第2着座部3Bを、その車輪38が台車部レール84、第2取付部レール47、第1取付部レール46の順に沿って移動するように後方へ移動させ、図4に示すように、第1板部材41上に設置する。そして、固定部材によって第2着座部3Bと第1板部材41とを固定する。
【0041】
続いて、第1着座部3Aを使用するときと同様に、浴槽2の扉部24を上昇させて、浴槽2へ給湯する。そして、浴槽2湯が供給された後に、要介護者を入浴させる。また操作部7により第2着座部3Bを下降させて入浴することも可能である。
また、入浴が終了したあとも、第1着座部3Aを使用するときと同様に、第1側壁22aの上端部よりも上方の湯をタンクに戻すか排水し、扉部24を下降させて、開口23を開放させる。
【0042】
続いて、車椅子8の台車部81を第2板部材42の前方へ横付けし、第2板部材42に当接させてストッパ87を解除させる。
そして、第2着座部3Bと第1板部材41との固定を解除し、第2着座部3Bをその車輪38が第1取付部レール46、第2取付部レール47、台車部レール84の順に沿って移動するように前方へ移動させ、台車部81の上方に第2着座部3Bを設置し、固定する。
このようにして、要介護者を浴槽2の外方へ移動させることができる。
【0043】
なお、着座部3を使用しない場合は、図8(a),(b)に示すように、第1ヒンジ43を中心に取付部4を上方に回転させて鉛直状態とし、扉部24を上昇させ開口23を塞ぐことで、通常の浴槽2となる。これにより、要介護者が浴槽2の底部21(図8(b)参照)に座って入浴することができる。
【0044】
次に、上述した入浴システム1の効果について図面を用いて説明する。
本実施形態による入浴システム1によれば、取付部4に第1着座部3Aおよび第2着座部3Bのうち一方を選択して取りつけることができるため、介護度の異なる要介護者を同一の入浴システム1で入浴させることができる効果を奏する。
また、取付部4を鉛直状態とさせて折りたたむことで、通常の浴槽として使用することもできるため、使用できる要介護者の幅を広げることができる。
このため、介護者は、介護度の異なる要介護者毎に入浴システムを変える必要がないため、介護にかかる労力を軽減させることができる。
また、介護施設などにおいては、数種類の入浴システムを設置する必要がないため、入浴システムの設置スペースを縮小することができるとともに、入浴システムにかかるメンテナンスを軽減させることができる。
【0045】
以上、本発明による入浴システム1の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した実施形態では、介護を必要とする要介護者を入浴させているが、介護を必要としない入浴者も使用できる入浴システムとしてもよい。
また、上述した実施形態では、第1側壁22aは、他の側壁22b〜22dよりも低い高さに形成されているが、第1側壁22aの一部がその他よりも低い高さに形成されて、第1側壁22aに凹部が形成されている形態としてもよい。
また、上述した実施形態では、揺動部材52は、手動により揺動可能となっているが、例えば、電動により揺動可能となっていてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 入浴システム
2 浴槽
3 着座部
3A 第1着座部
3B 第2着座部
4 取付部
5 支持部
8 車椅子
46 第1取付部レール
47 第2取付部レール
81 台車部
84 台車部レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁の一部が他よりも低い高さに形成され該側壁の一部の上方に形成された開口を開閉させる扉部が設けられた浴槽と、
該浴槽内部に設置可能な着座部と、
該着座部が着脱可能で該着座部が取り付けられる取付部と、
該取付部を所定の位置に支持する支持部と、を備え、
前記着座部には、前記浴槽内部に設置可能な第1着座部と、前記浴槽内部に設置可能であるとともに車椅子の台車部に着脱可能な第2着座部のいずれか一方が選択可能となっていることを特徴とする入浴システム。
【請求項2】
前記支持部は、前記取付部の位置を変更可能であることを特徴とする請求項1に記載の入浴システム。
【請求項3】
前記取付部には前記開口部へ向かって延在する取付部レールが設けられ、前記台車部には該台車部の側方へ延在するとともに前記取付部レールと連続可能な台車部レールが設けられていて、
前記第2着座部は、前記取付部レールおよび前記台車部レールに沿って移動可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の入浴システム。
【請求項4】
前記支持部は、前記開口部と対向する前記浴槽の側壁近傍に設けられていて、前記取付部は前記着座部が取り付けられていないときに前記側壁に沿うように折りたたみ可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の入浴システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−66012(P2012−66012A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215513(P2010−215513)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000182373)酒井医療株式会社 (46)
【Fターム(参考)】