説明

入浴剤及び浴湯

【課題】入浴時に人体の垢を除去するための入浴剤等を提供する
【解決手段】 平均分子量20000〜700000のキトサンを35〜100mg/l含有する垢吸着用浴湯を調製するための垢吸着用入浴剤であって、
前記垢吸着用入浴剤は、(1)平均分子量20000〜700000のキトサンを1〜10重量%含有し、(2)乳酸、酢酸及びL−アスコルビン酸からなる群から選択される少なくとも1種を1〜8重量%含有し、(3)pHが3.5〜6.9の水溶液である、
ことを特徴とする垢吸着用入浴剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な入浴剤、浴湯及び垢吸着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭用の入浴剤は、その効果・効能等によって様々な種類のものが提供されている。例えば、香り付けや着色を行ってリラックスさせる入浴剤、無機塩類、炭酸ガス等を配合させて血行を良くさせる入浴剤、保湿剤等を配合させてスキンケア効果を持たせる入浴剤のほか、アトピー性皮膚炎等の病気を改善させる入浴剤なども提供されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【0003】
一方、キトサンを含むスキンケア製品が知られている。例えば、特許文献3には、キトサンを含む組成物として、キトサンを乳酸水溶液で可溶化した後、水酸化ナトリウム溶液で最終的にpHを中性程度に調整したキトサン溶液、該キトサン溶液を配合したシャンプー等が開示されている。特許文献4〜6には、キトサンを配合したことを特徴とする浴用剤が開示されている。特許文献7には、キトサンの酸性水溶液(酢酸、乳酸等)を炭酸塩で中和して得られるpH6〜8の水に可溶な水溶性キトサン塩を化粧料に利用すること等が開示されている。特許文献8には、キトサンとアスコルビン酸を有効成分とする酵母あるいは細胞の育成および増殖抑制剤が記載されている。
【0004】
しかしながら、従来のキトサンを含むスキンケア製品は、垢吸着効果という観点からは十分な効果を有するとは言えなかった。
【特許文献1】特開2006-213676号公報
【特許文献2】特開2001-354547号公報
【特許文献3】特表2005-509059号公報
【特許文献4】特開昭64-16714号公報
【特許文献5】特開平11-279050号公報
【特許文献6】特開2000-169327号公報
【特許文献7】特開昭64-62302号公報
【特許文献8】特開平2-35065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
入浴剤の新たな効果として、入浴時に自動的に体を洗浄する浴湯を提供することができれば、入浴前の洗浄に加えて、体をより一層きれいにすることができ、非常に便利である。しかし、入浴剤に体を自動的に洗浄する効果を持たせるものは現在のところ提供されていない。また、毛穴に詰まった垢は、石鹸を用いて擦っても落ちにくく、入浴するだけで毛穴に詰まった垢を取り除くことができれば、垢が原因になっている体臭、加齢臭等を消すことも可能となる。本発明は、入浴時に人体の垢を除去するための入浴剤等を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、キトサンを含む特定の入浴剤を使用することにより、上記目的を達成できることを見出し、更に検討を重ねて本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記項1〜6に記載の入浴剤、浴湯及び垢吸着方法に関する。
項1. 平均分子量20000〜700000のキトサンを35〜100mg/l含有する垢吸着用浴湯を調製するための垢吸着用入浴剤であって、
前記垢吸着用入浴剤は、(1)平均分子量20000〜700000のキトサンを1〜10重量%含有し、(2)乳酸、酢酸及びL−アスコルビン酸からなる群から選択される少なくとも1種を1〜8重量%含有し、(3)pHが3.5〜6.9の水溶液である、
ことを特徴とする垢吸着用入浴剤。
項2. 前記垢吸着用入浴剤は、平均分子量20000〜700000のキトサンを2〜8重量%含有する、項1に記載の垢吸着用入浴剤。
項3. 前記垢吸着用入浴剤は、L−アスコルビン酸を1〜8重量%含有する、項1又は2に記載の垢吸着用入浴剤。
項4. 平均分子量20000〜700000のキトサンを35〜100mg/l含有するキトサン水溶液である垢吸着用浴湯。
項5. 項1〜3のいずれかに記載の垢吸着用入浴剤を水又は温水で希釈して得られる、請求項4に記載の垢吸着用浴湯。
項6. 平均分子量20000〜700000のキトサンを35〜100mg/l含有するキトサン水溶液である垢吸着用浴湯に入浴することにより前記キトサンに垢を吸着させる垢吸着方法。
【0007】
入浴剤
本発明の垢吸着用入浴剤は、平均分子量20000〜700000のキトサン35〜100mg/lを含有する浴湯を調製するための入浴剤であって、入浴剤全量中、(1)平均分子量20000〜700000のキトサン1〜10重量%、(2)乳酸、酢酸及びL-アスコルビン酸からなる群から選択される少なくとも1種1〜8重量%を含み、pHが3.5〜6.9の水溶液である。
【0008】
本発明の上記特定の入浴剤を使用して得られる後述の特定の浴湯に入浴することにより、キトサンが人の皮膚に付着している垢に吸着し、人体から垢、特に皮膚の毛穴に詰まった垢を除去するため、人体を十分に洗浄することができる。また、垢を吸着したキトサンは水(お湯)表面に浮かび上がるため、人体の洗浄効果とともに、入浴時の垢(汚れ)落ちも容易に視認することもできる。
【0009】
本発明の入浴剤は、平均分子量20000〜700000のキトサンを含有することを必須とし、キトサンは水に均一に溶解している。該キトサンは、公知又は市販のものを使用することができる。キトサンは、甲殻等の外骨格に多く存在するキチンを脱アセチル化して得られるものである。脱アセチル化の度合いは限定的でないが、一般的には60%以上のものである。
【0010】
キトサンの平均分子量は、通常20000〜700000程度、好ましくは30000〜100000程度、より好ましくは40000〜80000程度である。20000未満であると垢吸着効果が衰えるか又は発揮しなくなる。また、700000を超えると、高濃度のキトサン水溶液の製造が難しくなる。
【0011】
本発明におけるキトサンの平均分子量は、ゲルパーミッションクロマトグラフによって測定されるものである。具体的には、例えば、装置としてWaters 2695 HPLCを用い、カラム:Shodex OHpax SB-804 HQ(8mmφ×300mm)、排除限界分子量:1000000、測定温度:40℃、試料注入:オートサンプラー20μl、移動相:0.1M酢酸+0.1M酢酸ナトリウム水溶液 1.0 ml/min、検出器:Waters 2410 示差屈折計、データ処理:Waters Millenium32、標準物質:プルラン及びD(+)-グルコース、とする条件下で測定されるものである。
【0012】
入浴剤中のキトサンの含有量は、通常1〜10重量%程度、好ましくは2〜8重量%程度、特に好ましくは2〜6重量%程度である。
【0013】
入浴剤中のキトサンの含有量が1重量%未満であると、特定濃度のキトサンを含む浴湯を得るために大量の入浴剤を使用する必要があり、入浴剤中のキトサンの量が10重量%程度を超えるとキトサンがゲル状になり、この入浴剤を水に添加して浴湯を得ても、該浴湯による垢吸着効果は衰えるか又は発揮しなくなる。
【0014】
本発明の入浴剤は、乳酸、酢酸及びL-アスコルビン酸からなる群から選択される少なくとも1種の酸を含有していることを必須とする。これにより、平均分子量20000〜700000のキトサンを水中に均一溶解させることができる。
【0015】
使用する酸の種類・量によって、キトサンの水への溶解性は変化するが、乳酸、酢酸及びL-アスコルビン酸からなる群から選択される少なくとも1種の酸によってpHを2.0〜6.9程度とすることにより、上記キトサンを水に容易に均一溶解することが可能となる。
【0016】
乳酸、酢酸及びL-アスコルビン酸からなる群から選択される少なくとも1種の酸の含有量は、前記キトサンの均一水溶液が得られれば特に特に限定されず、通常1〜8重量%程度、好ましくは2〜5重量%程度である。
【0017】
平均分子量が20000以上という分子量の大きなキトサンは水に溶けにくい。従って、酸を使用しても、水溶液中のキトサン量が10重量%よりも多くなると、キトサンが水に溶けずに凝集(懸濁)してしまう。また、10重量%以下の量であっても、高濃度のキトサンを水に均一に溶解するのには長時間を要するが溶解しない場合もある。高濃度のキトサン水溶液を素早く製造するという観点からは、L−アスコルビン酸が好ましい。
【0018】
本発明の入浴剤は、必要に応じて、さらに、pH調整剤を含有していてもよい。pH調整剤は限定的でなく、公知又は市販のものを使用することができる。pH調整剤としては、例えば、炭酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。この中でも、特に炭酸ナトリウムが好ましい。炭酸ナトリウムを選択することにより、ガスの発生を防止できるため、入浴剤を容器に封入した場合に、ガスの発生による容器破損を防止できる。
【0019】
本発明の入浴剤のpHは、通常3.5〜6.9程度、好ましくは5.6〜6.2程度とすればよい。キトサンは酸性の溶液には溶解するが、アルカリ性になるとゲル化するという性質がある。そのため、入浴剤のpHを常に酸性にする必要がある。
【0020】
pH調整剤を使用する場合は、キトサン、前記酸及び水との混合溶液にpH調整剤を添加すればよい。
【0021】
pH調整剤の含有量は、目的とするpH、使用する酸の種類、量によって変化し、入浴剤のpHが上記範囲になるように調節されていれば特に制限されない。pH調整剤は、人体の毛穴を開かせて、キトサンが垢を容易に吸着しやすい状況にさせることができるため、より一層効果的に人体から垢を除去させることが期待できる。
【0022】
また、入浴剤として一般に販売する場合、pHは安全のために弱酸であることが望ましい。使用する酸の種類によってpH調整剤の含有量は大きく変化し、例えば、酸性度の低いL−アスコルビン酸を使用した場合には、pH調整剤は使用する必要がないか又は極少量でよい。
【0023】
本発明の入浴剤は、主として水を溶媒とするが、その他に、有機溶媒等を含有していてもよい。有機溶媒としては、例えば、エタノール等が挙げられる。これにより、防腐効果及び防カビ効果を発揮させたり、防腐剤の溶解度を向上させたりすることができる。
【0024】
本発明の入浴剤は、防腐剤、香料、着色料等の公知の添加剤を含有していてもよい。防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0025】
入浴剤の製造方法
本発明の垢吸着用入浴剤の製造方法は、(1)平均分子量20000〜700000のキトサン、(2)乳酸、酢酸及びL-アスコルビン酸からなる群から選択される少なくとも1種、及び(3)水を混合する工程を備える。
【0026】
(1)平均分子量20000〜700000のキトサン、(2)乳酸、酢酸及びL-アスコルビン酸からなる群から選択される少なくとも1種、及び(3)水の混合順序は、垢吸着用入浴剤全量に対してキトサンが1〜10重量%溶解した水溶液が得られれば、特に限定されない。
【0027】
例えば、乳酸、酢酸及びL-アスコルビン酸からなる群から選択される少なくとも1種の酸と水とを混合してpH2.0〜6.9の水溶液を調整し、この水溶液と平均分子量20000〜700000のキトサンとを混合して均一な水溶液を得ることができる。
【0028】
前記キトサン、乳酸、酢酸及びL-アスコルビン酸からなる群から選択される少なくとも1種の酸の使用量は、前記と同じである。
【0029】
また、キトサンは、前記のキトサンを使用すればよい。水と混合される前のキトサンの形状は限定的でなく、塊状、粒状、粉末状等のいずれであってもよい。また、均一なキトサン水溶液とするために、必要に応じて攪拌してもよく、例えば、室温で20分間〜120分間程度攪拌すればよい。
【0030】
乳酸、酢酸及びL-アスコルビン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含む水溶液(以下、単に「乳酸等含有水溶液」ともいう。)のpHは、通常pH2.0〜6.9程度、好ましくは、pH3.0〜4.0程度である。
【0031】
使用する酸の種類・量によって、キトサンの水への溶解性は変化するが、乳酸、酢酸及びL-アスコルビン酸からなる群から選択される少なくとも1種の酸によってpHを2.0〜6.9程度とすることにより、高濃度のキトサン水溶液を得ることができる。
【0032】
高濃度のキトサン水溶液を素早く製造するという観点からは、L−アスコルビン酸が好ましい。
【0033】
必要に応じて、上記工程により調製されたキトサン溶解水溶液に、pH調整剤を添加することにより、入浴剤のpHを3.5〜6.9に調整することもできる。
【0034】
pH調整剤は、上記で挙げられたものを使用できる。pH調整剤の添加量はpHを3.5〜6.9に調整できる限り特に限定されず、pH調整剤の種類等に応じて適宜決定される。
【0035】
pH調整剤を使用する場合は、キトサン、前記酸及び水との混合溶液にpH調整剤を添加すればよい。
【0036】
pH調整剤の含有量は、目的とするpH、使用する酸の種類、量によって変化し、入浴剤のpHが上記範囲になるように調節されていれば特に制限されない。使用する酸の種類によってpH調整剤の含有量は大きく変化し、例えば、L−アスコルビン酸を使用した場合には、pH調整剤は使用する必要がないか又は極少量でよい。
【0037】
本発明の入浴剤は、主として水を溶媒とするが、その他に、有機溶媒等を添加しても良い。有機溶媒としては、前記のものを使用できる。本発明の入浴剤は、防腐剤、香料、着色料等の公知の添加剤を含有していてもよい。防腐剤としては前記のものを使用できる。
【0038】
垢吸着用浴湯
本発明の垢吸着用浴湯は、平均分子量20000〜700000のキトサンを浴湯中に35〜100mg/l含有するキトサン水溶液である。
【0039】
本発明の垢吸着用浴湯は、浴湯中に平均分子量20000〜700000のキトサンが均一に溶解し、かつ、該浴湯中の前記キトサン量が、35〜100 mg/l、好ましくは37〜93 mg/l、特に好ましくは40〜90mg/lの範囲内にあることにより、キトサンによる垢吸着効果が著しく向上する。
【0040】
キトサンの凝集能力には最適濃度範囲があり、添加量がその範囲より少なくても多くても凝集は起こらない。本発明の浴湯においては、浴湯中の前記キトサン量が、キトサンの凝集能力の最適濃度範囲内にある場合に限り、キトサンによる垢吸着効果が著しく向上する。キトサン濃度が30mg/l以下の低濃度では、キトサンは凝集能力を持たない。また、110mg/l以上の高濃度の場合にも、キトサンは凝集能力を持たない。これは、過剰のポリマーが存在すると、懸濁粒子の表面上の全吸着部位が個々の分子の吸着によって占められ、架橋が少なくなるためである。
【0041】
キトサンは、前記のキトサンを使用すればよい。該浴湯のpHは中性付近(pH6.8〜7.2程度)であることが好ましい。
【0042】
本発明の垢吸着用浴湯の最適温度は、通常38〜43℃程度、好ましくは40〜42℃程度である。
【0043】
固体状の平均分子量20000以上のキトサンは水に非常に溶けにくく、例えば、該キトサン20gを水140〜180リットルに加えて攪拌するだけでは、キトサンは均一な水溶液にならず、このような浴湯に入浴しても垢吸着効果は奏されない。例えば、浴湯とする前にあらかじめキトサンを酸で溶解させて均一な水溶液とし、この水溶液を水に加えることにより、キトサンが浴湯中に均一に溶解した浴湯を得ることができる。
【0044】
本発明の垢吸着用浴湯は、前記本発明の入浴剤を140〜180リットルの水で薄めることにより得ることもできる。これにより、前記キトサン量が、35〜100mg/lの範囲内であり、垢吸着用浴湯のpHを中性付近(pH6.8〜7.2程度)に設定されたキトサンの水溶液を得ることができる。本発明の入浴剤は非常に高濃度のキトサンを含む均一な水溶液であるため、該入浴剤を使用することにより、少量の入浴剤を使用するだけで垢吸着用浴湯を得ることができる。
【0045】
入浴時のお湯が酸性(pH4.0未満)の状態であれば、お湯によって加温されても毛穴は開きにくく、本発明の効果が十分に発揮されないおそれがある。
【0046】
本発明の垢吸着用浴湯には、酸を含んでいてもよい。本発明の垢吸着用浴湯に含まれる酸としては、例えば、乳酸、酢酸及びL-アスコルビン酸等が挙げられる。これらの酸は、一種単独で含んでも良いし、2種以上を含んでいても良い。
【0047】
本発明の垢吸着用浴湯中に酸を含む場合、例えば乳酸場合の量は、通常0.010〜0.100 ml/l程度、好ましくは0.066〜0.085ml/l程度である。
【0048】
本発明の垢吸着用浴湯に入浴することより、水に溶解している前記キトサンが人の皮膚に付着している垢に吸着し、人体から垢、特に皮膚の毛穴に詰まった垢を除去するため、人体を十分に洗浄することができる。また、垢を吸着したキトサンは水(お湯)表面に浮かび上がるため、人体の洗浄効果とともに、入浴時の垢(汚れ)落ちも容易に視認することもできる。
【0049】
本発明の垢吸着用浴湯は、さらに、pH調整剤を含有していてもよい。pH調整剤は限定的でなく、公知又は市販のものを使用することができる。pH調整剤としては、例えば、炭酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。この中でも、特に炭酸ナトリウムが好ましい。
【0050】
本発明の垢吸着用浴湯に使用されるpH調整剤の量は、目的とするpH、使用する酸の種類、量によって変化し、浴湯のpHが上記範囲になるように調節されていれば特に制限されない。pH調整剤は、人体の毛穴を開かせて、キトサンが垢を容易に吸着しやすい状況にさせることができるため、より一層効果的に人体から垢を除去させることが期待できる。
【0051】
本発明の垢吸着用浴湯は、その他に、有機溶媒、防腐剤、香料、着色料等、入浴剤に使用される公知の添加剤を含有していてもよい。有機溶媒としては、例えば、エタノール等が挙げられる。防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0052】
また、本発明の垢吸着方法は、平均分子量20000〜700000のキトサン35〜100mg/lを含有する前記キトサン水溶液に入浴することを特徴とする。該方法により、人体に付着した垢を容易に落とすことができる。毛穴に詰まった垢は、石鹸等を用いて擦っても落ちにくいが、本発明の垢吸着用浴湯に入浴することにより、毛穴に詰まった垢を容易に人体の皮膚表面から除去することができる。これにより、垢が原因になっている体臭、加齢臭等を消すことも可能となり、入浴しているだけで垢を除去することができる。さらに、除去された垢がお湯表面に浮遊するため、垢落ちを容易に視認することができる。
【0053】
本発明の垢吸着効果が発揮されるメカニズムは以下のように推察される。キトサンは水溶液中でプラス(+)に帯電しており、人体の垢(主としてタンパク質)はマイナス(−)に帯電している。毛穴に詰まった垢は、擦っても落ちにくいが、本発明を特に入浴剤として用いた場合、入浴中に人体は加温されているため人体の毛穴は開いた状態となっており、その状態で、キトサン(+)に垢(−)が引き寄せられて吸着するため、毛穴に詰まった垢を容易に人体の皮膚表面から吸着除去する。この垢を吸着したキトサンはお湯中に析出し、お湯の表面に浮遊するものと考えられる。そして、キトサンの凝集能力には最適濃度範囲があり、浴湯中のキトサン量が35〜100mg/l、好ましくは37〜93mg/l、特に好ましくは40〜90mg/lの範囲内であることによって、垢吸着効果が著しく向上する。
【発明の効果】
【0054】
本発明の入浴剤を使用することにより、人体に付着した垢を容易に落とすことができる。毛穴に詰まった垢は、石鹸等を用いて擦っても落ちにくいが、本発明の浴用水に入浴することにより、毛穴に詰まった垢を容易に人体の皮膚表面から除去することができる。これにより、垢が原因になっている体臭、加齢臭等を消すことも可能となり、入浴しているだけで垢を除去することができる。さらに、除去された垢がお湯表面に浮遊するため、垢落ちを容易に視認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下、実施例、比較例及び試験例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0056】
実施例1
キトサン(平均分子量40000)20gを、乳酸2.4重量%水溶液(pH3.0)0.5リットル中に添加し、室温にて80分間攪拌することにより、キトサンを乳酸水溶液に溶解させ、pH調整剤として5%炭酸ナトリウム溶液20mlを添加して、4重量%のキトサン溶液を作成した。このキトサン溶液のpHは5.8であった。これにより得られた水溶液を実施例1の入浴剤とした。
【0057】
なお、キトサンの平均分子量は、ゲルパーミッションクロマトグラフによって測定した。この測定において、試料調整:試料(キトサン)約20mgを移動相約5mlに完全に溶解後分析に供した。測定条件は下記の通りとした。
装置:Waters 2695 HPLC
カラム:Shodex OHpax SB-804 HQ(8mmφ×300mm)
排除限界分子量:1,000,000
測定温度:40℃、
試料注入:オートサンプラー 20μl
移動相:0.1M酢酸+0.1M酢酸ナトリウム水溶液 1.0 ml/min
検出器:Waters 2410 示差屈折計
データ処理:Waters Millenium32
標準物質:プルラン及びD(+)-グルコース。
【0058】
試験例1
実施例1で得られた入浴剤を、お湯140リットルが入った浴槽の中に投入し、キトサン濃度をそれぞれ20,30,35,37,40,45,65,85,90,93,95,100,110及び120mg/lに調整し、浴湯(42℃)を得た。それぞれの浴湯について、入浴15分後に、浴湯表面に白い浮遊物が浮かぶかどうかを調査した。また、白い浮遊物を採取し、以下の条件でニンヒドリン反応試験を行った。結果を表1に示す。
【0059】
(ニンヒドリン反応試験)
この調査でお湯表面に浮かんだ白い浮遊物をメッシュの細かい金網で掬い取り、濾紙上で乾燥させた。この乾燥させた浮遊物10mgを10mlのビーカーに入れ、1%ニンヒドリン溶液5mlを加え、約3分間加熱させた。この結果、ニンヒドリン溶液と反応したため、溶液が無色透明から紫色に変色した。これにより、浮遊物はタンパク質、すなわち、人体に付着した垢であることを確認した。
【0060】
実施例2
キトサン(平均分子量40000程度)20gを、L-アスコルビン酸4重量%水溶液(pH3.0)0.5リットル中に添加し、室温にて80分間攪拌することにより、キトサンをL-アスコルビン酸水溶液に溶解させ、pH調整剤として5%炭酸ナトリウム溶液9mlを添加して、4重量%のキトサン溶液を作成した。このキトサン溶液のpHは5.8であった。これにより得られた水溶液を実施例2の入浴剤とした。
【0061】
なお、キトサンの平均分子量は、ゲルパーミッションクロマトグラフによって測定した。この測定において、試料調整:試料(キトサン)約20mgを移動相約5mlに完全に溶解後分析に供した。なお、キトサンの平均分子量の測定条件は実施例1と同様である。
【0062】
試験例2
得られた入浴剤を、お湯140リットルが入った浴槽の中に投入し、試験例1と同様にキトサン濃度をそれぞれ20,30,35,37,40,45,65,85,90,93,95,100,110及び120mg/lに濃度を調整し、浴湯(42℃)を得た。それぞれの浴湯について、入浴15分後に、浴湯表面に白い浮遊物が浮かぶかどうかを調査した。また、白い浮遊物を採取し、試験例1と同様の条件でニンヒドリン反応試験を行った。結果を表1に示す。
【0063】
比較例1
実施例1及び2の入浴剤を用いずに、お湯(42℃)に15分間入浴したが、浴湯表面には浮遊物が浮かばなかった。
【0064】
【表1】

実施例3
キトサン(平均分子量80000程度)10g及びL−アスコルビン酸7.0gを水に加え、室温にて20分間攪拌することにより、200mlのキトサン水溶液とした。なお、キトサンの平均分子量の測定条件は実施例1と同様である。
【0065】
次いで、このキトサン溶解L−アスコルビン酸水溶液200mlに、炭酸ナトリウム3重量%水溶液を1ml添加することにより、pHを5.8とした。
【0066】
試験例3
得られた入浴剤200mlを、お湯200リットル(42℃)が入った浴槽の中に投入し、その浴槽に入浴した。入浴15分後には、お湯表面に白い浮遊物が浮かんでいた。また、白い浮遊物を採取し、試験例1と同様の条件でニンヒドリン反応試験を行った。浮遊物はニンヒドリン溶液と反応したため、タンパク質、すなわち、人体に付着した垢であることが確認された。また、炭酸ナトリウム3重量%水溶液を1ml添加するだけで、pHを5.8とすることが可能であり、pHの調整が非常に容易であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均分子量20000〜700000のキトサンを35〜100mg/l含有する垢吸着用浴湯を調製するための垢吸着用入浴剤であって、
前記垢吸着用入浴剤は、(1)平均分子量20000〜700000のキトサンを1〜10重量%含有し、(2)乳酸、酢酸及びL−アスコルビン酸からなる群から選択される少なくとも1種を1〜8重量%含有し、(3)pHが3.5〜6.9の水溶液である、
ことを特徴とする垢吸着用入浴剤。
【請求項2】
前記垢吸着用入浴剤は、平均分子量20000〜700000のキトサンを2〜8重量%含有する、請求項1に記載の垢吸着用入浴剤。
【請求項3】
前記垢吸着用入浴剤は、L−アスコルビン酸を1〜8重量%含有する、請求項1又は2に記載の垢吸着用入浴剤。
【請求項4】
平均分子量20000〜700000のキトサンを35〜100mg/l含有するキトサン水溶液である垢吸着用浴湯。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の垢吸着用入浴剤を水又は温水で希釈して得られる、請求項4に記載の垢吸着用浴湯。
【請求項6】
平均分子量20000〜700000のキトサンを35〜100mg/l含有するキトサン水溶液である垢吸着用浴湯に入浴することにより前記キトサンに垢を吸着させる垢吸着方法。

【公開番号】特開2010−53096(P2010−53096A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221236(P2008−221236)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【特許番号】特許第4333966号(P4333966)
【特許公報発行日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(595092363)株式会社データアクション (5)
【Fターム(参考)】