説明

入浴剤拡散容器

【課題】入浴剤の種類や用途に応じて入浴剤を拡散させる基準深さ位置を調節することができ、しかも、誤って沈むことがない入浴剤の拡散容器を提案する。
【解決手段】本発明容器10は、入浴剤Bを収納する収納凹部R1を形成する底壁11aと周壁11bとを有して底壁11a及び周壁11bに収納凹部R1に通じる注出口P1,P2を備える容器本体11と、この容器本体11の収納凹部R1を封止して容器本体11との相互間に入浴剤Bを内包する収納空間Rを形成する蓋体12からなる。容器10の側壁には、その縦軸線Oに沿って伸びる凹部Dを設け、この凹部D1,D2の上下二箇所に、浴槽内に吊り下がるボールチェーン20に着脱可能に係合して当該ボールチェーン20を介して容器10を吊り下げ保持するスナップフック1を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴剤を保持して浴槽内の湯中に配置され、当該湯中に入浴剤を拡散させる入浴剤拡散容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浴槽内の湯中に入浴剤を拡散させる容器には、入浴剤を収納する袋体に浮き体を設け、当該浮き体の下端で袋体を保持しつつ浴槽内の湯面上を浮遊し当該湯中に入浴剤を拡散させるものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000-107057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記入浴剤拡散容器は、浮き体の浮力によって液面付近を浮遊するので、湯中における入浴剤の拡散には有効である。
【0004】
しかしながら、上記容器は、浮き体内の空気が抜けた場合、その重量によって湯中に沈み、容器を足で踏み付けて怪我をする虞がある。また、上記容器は、浴槽内を自由に移動する為、入浴の邪魔になる場合が考えられる。
【0005】
さらに、湯中に拡散させる入浴剤の種類や用途によっては、湯面から所定の基準深さ位置より入浴剤を拡散させた方が良い場合も考えられる。
【0006】
本発明の解決しようとする課題は、入浴剤の種類や用途に応じて入浴剤を拡散させる基準深さ位置を調節することができ、しかも、誤って沈むことがない入浴剤拡散容器を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、入浴剤を保持して浴槽内の湯中に配置され、当該湯中に入浴剤を拡散させる入浴剤拡散容器であって、この入浴剤拡散容器は、前記入浴剤を収納する収納凹部を有して当該収納凹部に通じる注出口を備える容器本体と、この容器本体の収納凹部を封止して当該容器本体との相互間に前記入浴剤を内包する収納空間を形成する蓋体からなり、この容器の側壁にその縦軸線に沿って伸びる凹部を設け、この凹部に浴槽内に吊り下がるボールチェーンに着脱可能に係合して当該ボールチェーンを介して前記容器を吊り下げ保持する少なくとも一つのスナップフックを備えることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係るスナップフックは、例えば、入浴剤拡散容器に一体に繋がる弾性フックであって、弾性フックと入浴剤拡散容器の側壁との相互間にボールチェーンをスナップ係合させる。この場合、スナップフックは、2つの弾性フックを向かい合わせて、これら弾性フックの相互間に、ボールチェーンをスナップ係合させる構成でも、単独の弾性フックにスナップ係合させる構成であってもよい。また、本発明において、容器本体及び蓋体は、2つのパーツからなる別体として構成しても、ヒンジを介して一体に構成してもよい。更に、ボールチェーンは、浴槽内に備え付けの排水栓用ボールチェーンであっても、入浴剤拡散容器と共にセットとしてなる別体として構成し、吸盤等を介して浴槽内に吊り下げてもよい。
【0009】
本発明において、前記スナップフックは、前記入浴剤拡散容器の縦軸線に沿った上下二箇所に備わることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の入浴剤拡散容器は、その側壁に備えたスナップフックが、浴槽内に吊り下がるボールチェーンに着脱可能に係合することにより、当該ボールチェーンを介して浴槽内に吊り下げ保持することができる。従って、本発明によれば、浴槽内の湯中に沈むことがなく、ボールチェーンとの係合位置を変えることにより、入浴剤の種類や用途に応じて入浴剤を拡散させる深さ位置を調節することができ、入浴中に入浴剤拡散容器を誤って踏み付ける心配がない。また、入浴剤拡散容器を入浴中に吊り下げたままでも、洗髪等により浴槽内のお湯を汲み出すときに誤って入浴剤拡散容器を掬い取ってしまうことがない。また、入浴剤拡散容器の側壁に、その縦軸線に沿って伸びる凹部を設け、この凹部にスナップフックを備えれば、スナップフックやボールチェーンが邪魔になることがなく、入浴剤拡散容器を吊り下げたままでも浴槽内のスペースを広く確保することができる。
【0011】
更に、本発明によれば、容器本体の底壁及び周壁の少なくとも一部に注出口を備えると共に、当該容器本体の収納凹部を蓋体で封止して当該蓋体との相互間に収納空間を形成するため、この収納空間に溜まった空気が入浴剤拡散容器に浮力を与えて浴槽内の湯面上に浮かせることにより、従来と同様、湯面上から入浴剤を拡散させることもできる。
【0012】
また、本発明に係るスナップフックを、入浴剤拡散容器の縦軸線に沿った上下二箇所に備えれば、見栄えよく安定した状態で吊り下げ保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の入浴剤拡散容器を詳細に説明する。
【0014】
図1(a),(b)はそれぞれ、本発明の第一形態である入浴剤拡散容器10の左半分を断面で示す正面図及びその左側面図である。また、図2(a),(b)はそれぞれ、同容器10の上面図及び底面図である。更に、図3(a),(b)にはそれぞれ、同容器10の背面及び図1(a)のA−A断面を示す。
【0015】
図1〜3において、符号11は、合成樹脂からなり、入浴剤Bを収納する収納凹部R1を形成する底壁11aと周壁11bとを有する容器本体である。容器本体11は、底壁11aから周壁11bの下部にかけて左右対称に収納凹部R1に通じる4つの注出口P1を備えると共に、底壁11aに左右対称に収納凹部R1に通じる1つの注出口P2を備える。
【0016】
符号12は、ヒンジ13を介して揺動可能に容器本体11に一体に繋がる蓋体である。この蓋体12は、容器本体11の周壁11bと整列し、この周壁11bの上部開口端に合わさって収納凹部R1を封止する周壁12bを有する。これにより、入浴剤拡散容器10は、容器本体11に蓋体12を合わせることで構成される。なお、本形態では、蓋体12の天面には、入浴剤Bの上部を収納する収納凹部R2が設けられ、容器本体11の収納凹部R1との相互間に入浴剤Bを内包する収納空間Rを形成している。
【0017】
入浴剤拡散容器10の側壁は、容器本体11の周壁11bと蓋体12の周壁12bとからなり、この側壁には、容器本体11及び蓋体12にかけて繋がり、縦軸線O(図1(a)参照)に沿って伸びる凹部Dが形成されている。この凹部Dは、容器本体周壁11 bの背面側に設けられた凹部D1と、蓋体周壁12bの背面側に設けられた凹部D2とによって構成される。
【0018】
凹部Dは、凹部D1,D2にそれぞれ、ヒンジ13付近に間隔を空けて容器軸線Oに沿って上下二箇所にスナップフック1を備える。スナップフック1はそれぞれ、凹部Dに一体に繋がる2つの弾性フック1aを向かい合わせて、これら弾性フック1aの相互間に係合部Cを形成し、この係合部Cにボールチェーン20のリンク21がスナップ係合する。これにより、入浴剤拡散容器10は、ボールチェーン20に保持される。
【0019】
ボールチェーン20は、浴槽から吊り下がり、先端に排水栓が繋がれた既存のボールチェーン20であり、本形態に係るスナップフック1はそれぞれ、かかるボールチェーン20に係合する。これにより、入浴剤拡散容器10は、ボールチェーン20を介して浴槽内の任意の深さに吊り下げ保持される。なお、ボールチェーン20は、浴槽に備え付けの排水栓用のもの以外にも、入浴剤拡散容器10の付属品として別体に構成し、吸盤等を介して浴槽内に吊り下げてもよい。
【0020】
即ち、入浴剤拡散容器10は、その側壁に備えたスナップフック1がそれぞれ、ボールチェーン20に着脱可能に係合することにより、ボールチェーン20を介して入浴剤拡散容器10を浴槽内に吊り下げ保持することができる。従って、本形態によれば、入浴剤拡散容器10が浴槽内の湯中に沈むことがなく、ボールチェーン20とスナップフック1aとの係合位置を変えることにより、入浴剤Bの種類や用途に応じて入浴剤Bを拡散させる深さ位置を調節することができ、入浴中に入浴剤拡散容器10を誤って踏み付ける心配がない。また、入浴剤拡散容器を浴槽内に吊り下げたままでも、洗髪等により浴槽内のお湯を汲み出すときに誤って入浴剤拡散容器を掬い取ってしまうことがない。
【0021】
更に、本形態によれば、容器本体11の底壁11a及び周壁11bに注出口P1,P2を備えると共に、当該容器本体11の収納凹部R1を蓋体12で封止して当該蓋体12との相互間に収納空間Rを形成するため、この収納空間Rに溜まった空気が入浴剤拡散容器10に浮力を与えて浴槽内の湯面上に浮かせることにより、従来と同様、湯面上から入浴剤Bを拡散させることもできる。
【0022】
また、本形態の如く、スナップフック1を、入浴剤拡散容器10の縦軸線Oに沿った上下二箇所に備えれば、見栄えよく安定した状態で吊り下げ保持することができる。
【0023】
更に、入浴剤拡散容器10の側壁には、その縦軸線Oに沿って伸びる凹部Dが設けられており、凹部D1,D2はそれぞれ、図2(a),(b)の仮想線に示す如く、ボールチェーン20と共にスナップフック1を入浴剤拡散容器10の側壁から突出しないように構成されているから、スナップフック1やボールチェーン20が邪魔になることがなく、入浴剤拡散容器10を吊り下げたままでも浴槽内のスペースを広く確保することができる。また、従来通りに湯面に浮遊させて使用した際に、容器が沈んだ場合にも、スナップフック1が拡散容器10の側壁から突出しない為、該容器を踏んで怪我をすることを防止できる。
【0024】
次に、図4は、本発明の第二形態を側面から示す断面図である。
【0025】
このうち図4(a)は、第一形態の変形例であって、スナップフック1相互間の間隔を広めたものである。前記間隔は、スナップフック1を蓋体側凹部D2の上端部、及び容器本体11側凹部D1の下端部に設けると最も間隔が大きくなり、保持姿勢が安定する。
【0026】
更に、図4(b)は、本発明の第三形態であって、スナップフック1を容器本体11の側壁11bにのみ設けたものである。なお、本形態は、その変形例として、スナップフック1を蓋体12にのみ設けてもよい。
【0027】
また、図5は、他のスナップフックを採用した本発明の第四形態を示す上面図及び要部拡大図である。本形態に係るスナップフック2は、凹部Dに一体に繋がる2つの弾性フック2aにそれぞれ、中空の肉抜き部Hが設けられている。この場合、これら弾性フック2aの曲げ効果が高まるから、ボールチェーンリンク21の径寸法に対して更に自由度を持たせることができる。このため、より様々な種類のボールチェーンに対する適用が可能になる。
【0028】
ところで、上述したスナップフック1,2は、図2,5に示す如く、係合部Cが入浴剤拡散容器10の背面から垂直に開口しているため、入浴剤拡散容器10に前向きに倒れようとする力が加わると、ボールチェーン20のリンク径によっては、図6に示すように、ボールチェーン20から離脱してしまう場合も考慮される。
【0029】
図7は、本発明の第五形態を示す上面図及び要部拡大図である。本形態に係るスナップフック3は、単独の弾性フック3aで構成され、この弾性フック3aによって形成された係合部Cを、入浴剤拡散容器10の背面から垂直な方向に対して90度の向きに開口させている。このスナップフック3によれば、入浴剤拡散容器10に前向きに倒れようとする力が加わっても、ボールチェーン20からの離脱が回避される。なお、本形態では、係合部Cを、入浴剤拡散容器10の背面からの垂線に対して90度の位置に開口させているが、この開口する位置は、入浴剤拡散容器10の背面からの垂線から90度の位置までの角度θの範囲内であればよい。
【0030】
次に、図8,9はそれぞれ、上記第四形態において、スナップフック3が容器軸線Oに沿って複数設けられた場合を例示する要部拡大図である。
【0031】
図8(a),(b)はそれぞれ、容器軸線Oに沿って上下二箇所に配置されたスナップフック3を示す。本形態では、同図に示す如く、上下に配置されたスナップフック3の係合部Cが同方向に開口している。これに対し、図9(a),(b)もそれぞれ、容器軸線Oに沿って上下二箇所に配置されたスナップフック3を示すが、同形態では、スナップフック3の係合部Cがそれぞれ逆向きに開口している。
【0032】
上述したところは、本発明の好適な形態であるが、請求の範囲において様々な変更を加えることができる。例えば、入浴剤Bは、メッシュ地等からなる袋体に入れたのち、収納空間Rに収納してもよい。また、容器本体11と蓋体12とは、ヒンジ13を介さずに別パーツとしてもよい。更に、スナップフック1は、容器10の側壁の少なくとも一箇所に設けられてあればよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a) ,(b)はそれぞれ、本発明の第一形態である入浴剤拡散容器を一部断面で示す正面図及び左側面図である。
【図2】(a),(b)はそれぞれ、同形態の上面図及び底面図である。
【図3】(a),(b)はそれぞれ、同形態の背面図及び図1(a)のA−A断面図である。
【図4】(a),(b)はそれぞれ、本発明の第二及び第三形態を側面から示す断面図である。
【図5】他のスナップフックを採用した本発明の第四形態を示す上面図及び要部拡大図である。
【図6】本発明容器の傾倒状態を例示する側面図である。
【図7】本発明の第五形態を示す上面図及び要部拡大図である。
【図8】(a),(b)はそれぞれ、第四形態において、図7のスナップフックが容器軸線に沿って上下設けられた場合を例示する要部拡大図である。
【図9】(a),(b)はそれぞれ、第四形態において、図7のスナップフックが容器軸線に沿って上下設けられた場合を例示する他の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0034】
1 スナップフック
1a 弾性フック
2 スナップフック
2a 弾性フック
3 スナップフック
3a 弾性フック
10 入浴剤拡散容器
11 容器本体
12 蓋体
13 ヒンジ
20 ボールチェーン
21 リンク
C 係合部
H 肉抜き部
P1,P2 注出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入浴剤を保持して浴槽内の湯中に配置され、当該湯中に入浴剤を拡散させる入浴剤拡散容器であって、
この入浴剤拡散容器は、前記入浴剤を収納する収納凹部を有して当該前記収納凹部に通じる注出口を備える容器本体と、この容器本体の収納凹部を封止して当該容器本体との相互間に前記入浴剤を内包する収納空間を形成する蓋体からなり、この容器の側壁にその縦軸線に沿って伸びる凹部を設け、この凹部に浴槽内に吊り下がるボールチェーンに着脱可能に係合して当該ボールチェーンを介して前記容器を吊り下げ保持する少なくとも一つのスナップフックを備えることを特徴とする入浴剤拡散容器。
【請求項2】
前記スナップフックが、前記入浴剤拡散容器の縦軸線に沿った上下二箇所に備わることを特徴とする、請求項1に記載の入浴剤拡散容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−153342(P2007−153342A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−346484(P2005−346484)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】