説明

入浴剤

【課題】 アトピー性皮膚炎をはじめとする皮膚疾患を患う患者、及び敏感肌を有する健康人に対して、入浴時の刺激性が抑えられ且つ雑菌の繁殖も抑えられた、肌に優しい入浴剤を天然物で提供する。
【解決手段】入浴剤成分として残留塩素除去作用及びORP(酸化還元電位)低下作用を有する薬用植物と抗菌作用及びpH調節作用を有する青梅果肉を入浴剤として使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は残留塩素除去作用及ORP(酸化還元電位)低下作用を有する天然物と抗菌作用及びpH調節作用を有する天然物を含有し、アトピー性皮膚炎をはじめとする皮膚疾患を患う患者、及び敏感肌を有する健康人に対して、入浴時の刺激性を抑えるようにしたことを特徴とした浴用剤。
【背景技術】
【0002】
近年、アトピー性皮膚炎をはじめとする皮膚疾患を患う患者、及び敏感肌を有する健康人が増えてきている。これら疾患の原因の一つとして化学物質による皮膚刺激があり、これら人々にとっては化学物質との接触を避け、入浴などにより皮膚の清潔を保つことが望まれる。
【0003】
入浴時には、家庭や公衆浴場では一般に水道水が使用されているが、従来から水道水には塩素注入が行われ、また一部の温泉にも同様に塩素注入が行われている。この塩素は、強力かつ安全な殺菌作用を有し、衛生上の品質を維持管理する上で重要な役割を果たすものである。
【0004】
しかし、塩素自体は刺激作用が強く、皮膚疾患に悩まされる人々には、塩素の刺激を受け、症状が悪化する一因ともなっていた。
【0005】
一方、入浴時にはいわゆる入浴剤を入れることも汎用されている。特に生薬エキスを配合することにより入浴中や入浴後の保温効果を高めたり、保湿作用や疲労回復効果を期待できる。
【0006】
また、一部の生薬エキスやハーブには遊離型の残留塩素を除去する作用を有し、残留塩素除去剤として提案されている。
例えば、特許文献1、特許文献2に記載の技術である。
【0007】
一方、残留塩素は1人入浴すると、その濃度は人の皮膚等で消費されほとんど消去され、入浴直後から大腸菌等の細菌数が急速に増加し、塩素に代わる皮膚に優しい抗菌剤が必要となる。
【0008】
そこで、塩素に代わる各種抗菌剤が提案されている。
例えば、けい酸アルミニウムマグネシウムを用いた特許文献3に記載の技術、ヒノキチオールを用いた特許文献4に記載の技術、カテキンを用いた特許文献5に記載の技術、キトサンを用いた特許文献6に記載の技術であるが、更なる技術の開発が求められていた。
【0009】
また、先行技術文献によれば、塩素を含む水は酸化還元電位(以下、ORPといい、標準水素電極基準とし、単位はV)が高くなり、いわゆる酸化系に位置する。一方、人の皮膚は弱酸性で酸化還元電位が低い、還元系に位置しており、種々の方法により水道水を還元系にする方法が提案されているが、抗菌作用について触れられていない。
例えば、特許文献7に記載の技術である。
【特許文献1】特開2000−70956
【特許文献2】特開2002−346575
【特許文献3】特開2000−247893
【特許文献4】特開平11−222455号
【特許文献5】特開平11−43696号
【特許文献6】特開平10−158305号
【特許文献7】特開平11−335263
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、水道水中の残留塩素を除去する生薬エキスやハーブ類は水の酸化還元電位を低下させ還元系に変えるが、細菌等の繁殖が問題となる、そこで水の還元系を維持し、pHを弱酸性にする肌に優しい抗菌作用を有する天然物を用いた入浴剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の特許請求の範囲は、次の通りである。
(請求項1)入浴剤成分として残留塩素除去作用及びORP(酸化還元電位)低下作用を有する入浴剤と抗菌作用及びpH調節作用を有する入浴剤を含有することを特徴とする浴用剤。
(請求項2)残留塩素除去作用及びORP(酸化還元電位)低下作用を有する入浴剤が、ビワ葉、松葉、桃の葉、柿の葉、菖蒲根、菊、陳皮、大根、柚子、茶葉、ドクダミ、セージ、ローズ、カモミール、ペパーミント、ローズマリー抽出物または乾燥物のうち少なくとも1種以上含有する請求項1記載の浴用剤。
(請求項3)抗菌作用及びpH調節作用を有する入浴剤が、青梅果肉抽出物または乾燥物である請求項1又は2記載の浴用剤。
(請求項4)残留塩素除去作用及びORP(酸化還元電位)低下作用を有する入浴剤がビワ葉抽出物または乾燥物であり、抗菌作用及びpH調節作用を有する入浴剤が、青梅果肉抽出物または乾燥物である請求項1記載の浴用剤。
(請求項5)
請求項1から4記載の残留塩素除去作用及ORP(酸化還元電位)低下作用を有する入浴剤と抗菌作用及びpH調節作用を有する入浴剤を含有し、アトピー性皮膚炎をはじめとする皮膚疾患を患う患者、及び敏感肌を有する健康人に対して、入浴時の刺激性を抑えるようにしたことを特徴とした浴用剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明の浴用剤によれば、水道水中の残留塩素が除去され、肌に優しい弱酸性の還元系に位置する水に変り、更に抗菌作用もあるお湯にすることが可能になり、アトピー性皮膚炎をはじめとする皮膚疾患を患う患者、及び敏感肌を有する健康人に対して、入浴時の刺激性が抑えられ、雑菌の繁殖もないことから清潔で快適に入浴することが可能となる。また、天然物を用いているので、安全で安心して使用できる。
【0012】
更に、浴用剤に使用している薬草類と梅の薬効成分が肌に作用する時に最も良い環境でその効能を発揮することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明で用いられる残留塩素除去作用及びORP(酸化還元電位)低下作用を有する生薬及びハーブはビワ葉、松葉、桃の葉、柿の葉、菖蒲根、菊、陳皮、大根、柚子、茶葉、ドクダミ、セージ、ローズ、カモミール、ペパーミント、ローズマリーのいずれか1種若しくは2種以上が用いられる。
これらは、一般に生薬としてあるいは薬用植物(以下「薬草類」と称する。)として用いられるものである。
【0014】
本発明で用いられるpH調節作用及び抗菌作用を有する天然物は梅果肉が用いられる。
【0015】
本発明で用いられる各薬草類は、各植物の各部位を乾燥したものが用いられるが、場合によっては乾燥前の生の植物をそのまま用いることもできる。通常、抽出効率を考慮して、粗切、細切など適当な大きさに切断されあるいは粉砕して用いる。
又は、各薬草類を水、エタノール溶液、プロピレングリコール溶液、ブチレングリコール溶液又はグリセリン溶液にて抽出されるエキスやその濃縮物を用いても良い。
【0016】
各生薬類は、乾燥物量として一般家庭用のお風呂200リッターに1.5g〜40g(0.0007〜0.02重量%)、好ましくは2.5g〜20g(0.00125〜0.01重量%)を使用する。
【0017】
本発明で用いる梅果肉は、乾燥したものが用いられるが、場合によっては乾燥前の生の果肉をそのまま用いることもできる。通常、抽出効率を考慮して、粗切、細切など適当な大きさに切断されあるいは粉砕して用いる。
又は、果肉を圧搾して得られる果汁やその濃縮物を用いても良い。
【0018】
梅果肉乾燥物は果汁相当量として一般家庭用のお風呂200リッターに40ml〜300ml(0.02〜0.15重量%)、好ましくは80ml〜200ml(0.04〜0.1重量%)を使用する。
【実施例】
【0019】
次に本発明をさらに具体的に説明するために実施例を掲げるが、本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0020】
実施例1
青梅より種子を除き、果肉1kgを天日で乾燥し乾燥果肉110g(果汁890ml相当を含む)が得られた、この乾燥果肉をミキサーで粉砕し乾燥梅果肉の粉末を作製した。
乾燥梅果肉の粉末20gを不織布の袋に入れ、浴槽に投入した。その後、お湯を浴槽に張り込んだ。
【0021】
実施例2
ビワ葉1kgを洗浄後、天日で乾燥し乾燥ビワ葉560gが得られた、この乾燥ビワ葉をミキサーで粉砕し乾燥ビワ葉の粉末を作製した。
乾燥ビワ葉の粉末10gと実施例1で作製した乾燥梅果肉の粉末20gを不織布の袋に入れ、浴槽に投入した。その後、お湯を浴槽に張り込んだ。
【0022】
比較例1
比較例として、実施例2で作製した乾燥ビワ葉の粉末10gを不織布の袋に入れ、浴槽に投入した。その後、お湯を浴槽に張り込んだ。
【0023】
対象区
そのまま湯を浴槽に張り込んだ。
【0024】
試験例1 残留塩素除去作用、pH調節作用及びORP低下作用の評価
実施例1、2、比較例1および対象区で、間口サイズ1200mmの浴槽(満水量270リットル)に湯を約200リットル張り込み、不織布を良く揉みエキスを抽出し、残留有効塩素量、pH及びORPをそれぞれ測定した。その際の残留有効塩素量をハンナ社製の残留塩素計(DPD法)を用い、pH及びORPを佐藤商事社製のpH/酸化還元電位(ORP)メーターを用いて測定した。尚、ORP値は基準水素電極値に換算した。結果を表1、図1に示す。
【0025】
【表1】

表1及び図1から明らかのように、比較例1のビワ葉は対象区に比べ残留有効塩素を完全に除去し、ORPを低下させ還元系に移動するが、pH値は弱アルカリ側に移動した。また、実施例1の梅果肉は対象区に比べpH値を弱酸性側に移動させ、残留有効塩素及びORP値を低下させるが、比較例1のビワ葉に比べその作用は低い。一方、実施例2の梅果肉とビワ葉を合わせると残留有効塩素が除かれ、pH値を弱酸性に移動し、ビワ葉のORP値に影響を与えず還元系を維持した。また、その作用は24時間後も維持されていた。
【0026】
試験例2 抗菌作用の評価
実施例1、2、及び比較例1のお湯100mlに大腸菌(Escherichia coli,JCM5491)菌液を植菌し、37℃、24時間静置した後、0.1mLをマイクロピペットでシャーレに入れ、そのシャーレにトリプトソイ寒天培地20mLを加え、培地が固化した後、これを37℃で培養、経時的に生育してくるコロニー数を植菌直後のコロニー数と比較し、抗菌性の評価を行った。結果を表2及び図2に示す。
【0027】
【表2】

表1及び図2から明らかのように、比較例1のビワ葉は大腸菌が大幅に増殖したが、実施例1の梅果肉は植菌直後よりも減少し抗菌作用が認められた。また、実施例2から梅果肉の抗菌作用はビワ葉に混ぜても認められた。
【0028】
試験例3 皮膚刺激性の評価
本発明の入浴剤の皮膚刺激性を評価するため、健康者80人のモニターによるアンケート調査を行った。
(試料)実施例1、2で得た入浴剤
(方法)お湯を張った浴槽に各試料を投入後、不織布を良く揉みエキスを抽出し、入浴を1週間行い、入浴中及び入浴後の皮膚刺激性を確認した。尚、皮膚に何らかの異常を感じた場合はそこで中止をした。結果を表3に示す。
(判定基準)判定は以下の基準により行った。
(+)掻痒感、発疹等の何らかの異常が認められるもの
(±)皮膚に違和感が認められるもの
(−)皮膚に異常が認められないもの
とした。
【0029】
【表3】

表3から明らかのように、本発明の入浴剤は皮膚刺激性が見られなかった。
【0030】
試験例4
本発明の入浴剤の皮膚刺激性を更に評価するため、冬季掻痒症5人、アトピー性皮膚炎3人の患者に同意のもと評価した。
(試料)実施例2で得た入浴剤
(方法)お湯を張った浴槽に試料を投入後、不織布を良く揉みエキスを抽出し、入浴を1週間行い、入浴中及び入浴後の皮膚刺激性を確認した。尚、皮膚に何らかの異常を感じた場合はそこで中止をした。結果を表4に示す。
(判定基準)判定は以下の基準により行った。
掻痒感
(+)痒みは以前に比べ悪化した
(±)痒みは以前と変らない
(−)痒みは以前に比べ改善した
発疹
(+)発疹は以前に比べ悪化した
(±)発疹は以前と変らない
(−)発疹は以前に比べ改善した
とした。
【0031】
【表4】

表4から明らかのように、本発明の入浴剤は皮膚疾患を伴う敏感肌の人にも皮膚刺激性が見られなかった。また、症状は全員が改善した。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】梅果肉及びビワ葉を用いて、ORPとpHを調整したときの浴用水のORPとpHの関係を示す図である。
【図2】梅果肉の抗菌作用を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入浴剤成分として残留塩素除去作用及びORP(酸化還元電位)低下作用を有する入浴剤と抗菌作用及びpH調節作用を有する入浴剤を含有することを特徴とする浴用剤。
【請求項2】
残留塩素除去作用及びORP(酸化還元電位)低下作用を有する入浴剤が、ビワ葉、松葉、桃の葉、柿の葉、菖蒲根、菊、陳皮、大根、柚子、茶葉、ドクダミ、セージ、ローズ、カモミール、ペパーミント、ローズマリー抽出物または乾燥物のうち少なくとも1種以上含有する請求項1記載の浴用剤。
【請求項3】
抗菌作用及びpH調節作用を有する入浴剤が、青梅果肉抽出物または乾燥物である請求項1又は2記載の浴用剤。
【請求項4】
残留塩素除去作用及びORP(酸化還元電位)低下作用を有する入浴剤がビワ葉抽出物または乾燥物であり、抗菌作用及びpH調節作用を有する入浴剤が、青梅果肉抽出物または乾燥物である請求項1記載の浴用剤。
【請求項5】
請求項1から4記載の残留塩素除去作用及ORP(酸化還元電位)低下作用を有する入浴剤と抗菌作用及びpH調節作用を有する入浴剤を含有し、アトピー性皮膚炎をはじめとする皮膚疾患を患う患者、及び敏感肌を有する健康人に対して、入浴時の刺激性を抑えるようにしたことを特徴とした浴用剤。

【図1】
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【図2】
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