説明

入浴用リフト装置

【課題】
被介護者の機械にだけ身を任せている感覚を軽減し、被介護者の不安感を抑えることができ、また不安感を抑えることで、入出浴の速度を速めることができる入浴用リフト装置を提供することにある。
【解決手段】
被介護者が座った状態で介護者の手や体を添えることが可能な座部と、座部を浴槽内に入出される駆動手段と、介護者が座部を動作させるための操作力を検出する操作力検出手段と、操作力検出手段で検出した操作力に応じて駆動手段を制御する制御手段とを備え、駆動手段で介護者の労力を補いつつ、被介護者を入浴させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴介護が必要な被介護者を座位のまま入浴させるための入浴装置であって、特にリフト形式の入浴用リフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、入浴介護が必要な被介護者を座位のまま入浴させるための入浴装置としては、特許文献1に示されるようなリフト形式のものがあった。この入浴用リフト装置は、椅子部が揺動アーム及び支持アームを介して支柱から垂下して設けられ、支柱の伸張により、椅子部が昇降するものである。被介護者の入浴にあたっては、被介護者が椅子部に座った状態で、介護者が被介護者から離れた状態でスイッチ操作を行い、支柱を縮めることで、被介護者を椅子部ごと浴槽の中に降ろしていく。被介護者が浴槽から出る場合も、介護者が、被介護者から離れた位置でスイッチ操作を行い、支柱を伸ばすことで椅子部を上昇させる。
【特許文献1】特開2007−202786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の入浴用リフト装置では、介護者が被介護者から離れてスイッチ操作をしていることから、昇降が機械的な動きになり、被介護者が機械にだけ身を任せている感覚を抱き被介護者が不安感を感じる場合がある。また、その不安感を軽減させるために昇降の速度を抑えるために、入出浴の時間が長く掛かってしまう。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、被介護者の機械にだけ身を任せている感覚を軽減し、被介護者の不安感を抑えることができ、また不安感を抑えることで、入出浴の速度を速めることができる入浴用リフト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の入浴用リフト装置は、被介護者が座った状態で介護者の手や体を添えることが可能な座部と、座部を浴槽内に入出させる駆動手段と、介護者が座部を動作させるための操作力を検出する操作力検出手段と、操作力検出手段で検出した操作力に応じて駆動手段を制御する制御手段とを備え、駆動手段で介護者の労力を補いつつ、被介護者を入浴させることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の入浴用リフト装置は、座部が、介護者が抱持又は把持可能であることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の入浴用リフト装置は、制御手段が、操作力検出手段で検出した所定以下の操作力に応じて、介護者が被介護者や座部を操作できるように駆動手段を制御することを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の入浴用リフト装置は、制御手段が、操作力検出手段で検出した操作力に応じて、座部の駆動速度を制御することを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の入浴用リフト装置は、制御手段が、操作力検出手段で検出した操作力に応じて、座部の駆動の開始及び停止を制御することを特徴とする。
【0010】
請求項6記載の入浴用リフト装置は、制御手段が、操作力が所定以上のとき駆動手段を制御して座部の駆動を停止させることを特徴とする。
【0011】
請求項7記載の入浴用リフト装置は、介護者が押圧し、押圧したときの押圧力を検出する押圧力検出手段を備え、制御手段が、押圧力に応じて駆動手段を制御することを特徴とする。
【0012】
請求項8記載の入浴用リフト装置は、制御手段が、座部の駆動の開始及び停止を、押圧力検出手段で検出した押圧力に応じて制御することを特徴とする。
【0013】
請求項9記載の入浴用リフト装置は、制御手段が、押圧力が所定以上のとき駆動手段を制御して座部の駆動を停止させることを特徴とする。
【0014】
請求項10記載の入浴用リフト装置は、押圧力検出手段が、介護者が握持するもので、握持力を押圧力として検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、介護者が被介護者が座った状態の座部に手や体を添えた状態で、駆動手段で介護者の労力を補いつつ、被介護者を入浴させることから、被介護者の機械にだけ身を任せている感覚を軽減し、被介護者の不安感を抑えることができ、また不安感を抑えることで、入出浴の速度を速めることができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、座部が、介護者が抱持又は把持可能であることから、被介護者が介護者に直接支えられているという感覚になりやすく、被介護者の機械による入出浴の不安感を抑えることができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、操作力検出手段で検出した所定以下の操作力に応じて、介護者が被介護者や座部を操作できるように駆動手段を制御することから、被介護者の体重やお湯での浮力を意識することなく、介護者の労力を低減しつつ、座部を容易に操作することができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、制御手段が操作力検出手段で検出した操作力に応じて、座部の駆動速度を制御することから、介護者の操作の意思を駆動手段の制御に忠実に反映させやすく、機械的な動きを抑え、介護者によるより忠実な操作が可能となる。
【0019】
請求項5の発明によれば、操作力検出手段で検出した操作力に応じて、座部の駆動の開始及び停止を制御することから、例えば介護者が操作力検出手段から手を離した時に座部の駆動が停止するような制御が可能であり、被介護者の安全の確保が可能である。
【0020】
請求項6の発明によれば、制御手段が操作力が所定以上のとき駆動手段を制御して座部の駆動を停止させることから、例えば介護者が操作力検出手段を急峻に操作してしまった時に座部の駆動が停止するような制御が可能であり、被介護者の安全の確保が可能である。
【0021】
請求項7の発明によれば、介護者が押圧し、押圧したときの押圧力を検出する押圧力検出手段を備え、制御手段が押圧力に応じて駆動手段を制御することから、機械的な動きを抑え、介護者によるより忠実な操作が可能となる。
【0022】
請求項8の発明によれば、制御手段が座部の駆動の開始及び停止を押圧力検出手段で検出した押圧力に応じて制御することから、例えば介護者が押圧力検出手段から手を離した時に座部の駆動が停止するような制御が可能であり、被介護者の安全の確保が可能である。
【0023】
請求項9の発明によれば、制御手段が押圧力が所定以上のとき駆動手段を制御して座部の駆動を停止させることから、例えば駆動を停止させたい場合には、座部を強く抱きかかえるようにして押圧力検出手段を強く押せばよく、簡易な操作で座部の駆動を停止させることができる。
【0024】
請求項10の発明によれば、押圧力検出手段が介護者が握持するもので、握持力を押圧力として検出することから、介護者は押圧力検出手段を握って、握り具合で操作可能で、操作が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。本発明の形態における入浴用リフト装置は、入浴介護が必要な被介護者を座位のまま入浴させるためのもので、リフト形式のものである。図1は、本発明に係る入浴用リフト装置の構成を示す構成図である。図2は、同入浴用リフト装置の使用例を示す説明図である。図3は、同入浴用リフト装置の動作の詳細を示す説明図である。図4は、同入浴用リフト装置の動作の詳細を示すフローチャートである。図5は、同入浴用リフト装置の駆動速度の制御の様子を示すグラフである。
【0026】
図において、入浴用リフト装置1は、被介護者6が座った状態で介護者8の手や体を添えることが可能な座部16、座部16を浴槽4内に入出される駆動手段、介護者8が座部16を動作させるための操作力を検出する操作力検出手段であるセンサ20、センサ20で検出した操作力に応じて駆動手段を制御する制御手段である制御装置10等を備えている。
【0027】
駆動手段は、基台18と、基台18の内部に収納されたモータ12と、モータ12の回転により基台18の上方に突出して上下するアクチュエータ14とから構成されている。制御装置10は、マイクロコンピュータ等の電子回路で構成され、内蔵されたソフトウェアにより、入浴用リフト装置1の動作の制御を行う。具体的には、制御装置10は、モータ12、センサ20、後述するグリップ22に設けられた図示しないスイッチと接続されている。制御装置10は、基台18に収納されている。尚、制御装置10は、ソフトウェアにより制御動作を実現するものに限らず、ロジック回路等のハードウェアのみで実現するものであってもかまわない。
【0028】
座部16は、座椅子状で、被介護者6が座ることができる構造である。座部16の背もたれ部分の上方背部が後方に突出しており、アクチュエータ14の上端に水平方向に回動自在に連結されている。座部16は、被介護者6が座った状態で介護者8が介護者8の手や体を添えることが可能な構造で、より具体的には、介護者8が座部16を抱持又は把持可能な構造である。座部16の背もたれ部には、センサ20が設けられている。センサ20は、介護者8が手を添える部分に設けられ、介護者8が座部16を動作させるための操作力を検出することになる。尚、座部16に被介護者6が入浴しやすくなるようにリクライニング機能を持たせることもできる。
【0029】
また、座部16の背もたれ部分には、介護者8が把持可能なグリップ22が設けられている。センサ20とグリップ22とを、座部16の背もたれ部分の介護者8が同時に触れて操作できる位置に設けることにより、介護者8の片方の手が自由になるため、入浴介護においては好ましい状態となる。尚、介護者8がグリップ22を握って操作することを考慮すると、例えば、グリップ22にセンサ20が設けられ、介護者8がグリップ22を支える操作力をセンサ20で検出するようにすることが好ましい。本実施例では、このセンサ20とグリップ22とが一体となった装置を用いることを前提に、本実施例の以降の説明及び図面の記載を行っている。すなわち、介護者8がグリップ22を持ち上げようとしたり、逆に押し下げようとする力を、操作力としてセンサ20が検知する。尚、グリップ22には、装置全体のON/OFFを切り換えるスイッチ(図示せず)を設けるようにしているが、必ずしも必要ではない。
【0030】
浴槽4と入浴用リフト装置1の位置関係は、図1に示すとおり、アクチュエータ14が上下に動いた状態で、座部16が浴槽4に入出可能な位置で、座部16に被介護者6が座った状態で被介護者が入浴可能な位置である。また、被介護者6が座部16に最初に座る場合を考慮し、座部16を水平方向に旋回させることにより、座部16が浴槽4から外れた昇降できる位置に、入浴用リフト装置1を配置する必要がある。尚、本実施の形態では、入浴用リフト装置1と浴槽4を別体で構成している形態で説明しているが、別体に限られるものではなく、入浴用リフト装置1の基台18と浴槽4とを一体で形成することも可能である。
【0031】
次に、本実施の形態の入浴用リフト装置1の動作を説明する。まず、浴槽4から外れた位置で降下させて座部16に、被介護者6を座らせる。次に、介護者8は、一方の手を被介護者6や座部16等に添えつつ、他方の手でグリップ22を握る(図2及び図3(a)参照)。介護者8がグリップ22のスイッチをONすることで制御装置10が入浴用リフト装置1を動作させることになる。実際の動作としては、まず、介護者8が被介護者6が座った状態の座部16を抱きかかえるように上に持ち上げることになるが、介護者8のグリップ22を持ち上げようとする力が、操作力検出手段であるセンサ20で検知され、制御装置10が、そのセンサ20で検知した所定以下の操作力に応じて、介護者8が被介護者6や座部16を操作できるようにモータ12を制御してアクチュエータ14を上昇させる。すなわち、アクチュエータ14が、介護者8の座部16を含む被介護者6を抱きかかえて持ち上げようとする労力を補いつつ上昇する。
【0032】
座部16及び被介護者6が、浴槽4の上で水平方向に旋回可能な高さに到達した時点で、グリップ22のスイッチをOFFにすれば、上昇は停止する。そして、図2の水平方向の矢印で示すように、介護者8は、座部16ごと被介護者6を水平方向に旋回させ、座部16及び被介護者6を浴槽4の上方に移動させる(図3(a)参照)。
【0033】
そして、今度は、グリップ22を支える力を抜きつつ、グリップ22のスイッチをONすると、今度はセンサ20で検知する操作力に応じて、制御装置10が、介護者8の被介護者6や座部16を支える力を所定以下にするようにモータ12を制御してアクチュエータ14を下降させる。そして、座部16が下降することにより、介護者8が座部16及び被介護者6を抱きかかえたような状態のまま、被介護者6が浴槽4のお湯Yに浸ることになる(図3(b))。そして、被介護者6がお湯Yに十分に浸かった状態で、介護者8がグリップ22のスイッチをOFFすることにより、アクチュエータ14の動作が止まり、被介護者6の入浴状態が維持される。
【0034】
被介護者6の入浴が終了した時は、図3(b)に示すように、介護者8がグリップ22のスイッチをONする。介護者8のグリップ22を引き上げて座部16及び被介護者6を持ち上げようとする力が、操作力検出手段であるセンサ20で検知され、制御装置10が、そのセンサ20で検知した所定以下の操作力に応じて、介護者8が被介護者6や座部16を操作できるようにモータ12を制御してアクチュエータ14を上昇させる。
すなわち、アクチュエータ14が、介護者8の座部16を含む被介護者6を抱きかかえて持ち上げようとする労力を補いつつ上昇する。そして、被介護者6がお湯Yから上がることになる(図3(a))。
【0035】
座部16及び被介護者6が、浴槽4の上で水平方向に旋回可能な高さに到達した時点で、グリップ22のスイッチをOFFすれば、上昇は停止する。そして、図2の水平方向の矢印で示すように、介護者8は、座部16ごと被介護者6を水平方向に旋回させ、座部16及び被介護者6を浴槽4から外れた位置に移動させる。そして、浴槽4に座部16及び被介護者6を降ろしたのと同様の操作で、座部16及び被介護者6を下降させ、座部16の動作を止めて、被介護者6を座部16から降ろし、入浴が終了する。
【0036】
以上にように、本実施の形態の入浴用リフト装置1によれば、介護者8が被介護者6が座った状態の座部16に手や体を添えた状態で、駆動手段で介護者8の労力を補いつつ、被介護者6を入浴させることから、被介護者6の機械にだけ身を任せている感覚を軽減し、被介護者6の不安感を抑えることができ、また不安感を抑えることで、入出浴の速度を速めることができる。
【0037】
また、座部16を介護者8が抱持又は把持可能であることで、被介護者6が介護者8に直接支えられているという感覚になりやすく、被介護者6の機械による入出浴の不安感を抑えることができる。
【0038】
さらに、制御手段である制御装置10が、操作力検出手段であるセンサ20で検出した所定以下の操作力に応じて、介護者8が被介護者6や座部16を操作できるように駆動手段を制御することで、被介護者6の体重やお湯Yでの浮力を意識することなく、介護者8の労力を低減しつつ、座部16を容易に操作することができる。
【0039】
尚、座部16の昇降の速度の制御に関しては、図4及び図5により説明する。尚、以後の本実施例の説明において、括弧内の符号は図4の符号に対応している。まず、入浴用リフト装置1(制御装置10)に電源を投入すると(S100)、制御装置10は、各種の設定情報等の読み込みなどを行い、スタンバイ状態にする(S102)。次に、制御装置10は、グリップ22のスイッチがONになったか否かを確認する(S104)。
【0040】
グリップ22のスイッチがONしていない状態では(S104−NO)、制御装置10では、センサ20の値を0としてインピーダンス計算を行い速度指令を生成するルーチン(S130,S132)に出力する(S120)。尚、制御装置10内でインピーダンス計算を行い(S130)、速度指令を生成するルーチン(S132)に出力するセンサ20の出力は、センサ20に加える力によって変わってくる。具体的には、図5のグラフに示すような出力となる。図5に示すように、加えられる力がXa(−Xa)よりも小さい場合は、センサ20の出力は無いと判断して(S106−NO)、0を出力する(S120)。そして、センサ20に加える力が、これを上回ることになると、信号出力が出力される。但し、加える力が一定以上になると、それ以上では信号出力は上限固定値となってしまい、さらに大きな力が加わると、制御装置10はセンサ20の出力がオーバーロードしたとして(S108−YES)、0を出力する(S120)。尚、図5で、X軸の左右で、グリップ22を引き上げようとする操作力と引き下げようとする操作力に別れる。
【0041】
次に、制御装置10は、センサ20がオーバーロードしていない場合(S108−NO)、図示しないアクチュエータ14の上限スイッチによりメカ上限か否かを確かめる(S110)。ここで、上限に達している場合には(S110−YES)、センサ20に上方向に動作を求める操作力が加わっていれば、インピーダンス計算を行うルーチン(S130)には0を出力し、逆に下方向の動作を求められていれば、信号出力を出力する(S122)。
【0042】
メカ上限に達していない場合には(S110−NO)、制御装置10は、図示しないアクチュエータ14の下限スイッチによりメカ下限か否かを確かめる(S112)。ここで、下限に達している場合には(S112−YES)、センサ20に下方向に動作を求める操作力が加わっていれば、インピーダンス計算を行うルーチン(S130)には0を出力し、逆に上方向の動作を求められていれば、信号出力を出力する(S124)。
【0043】
さらに、メカ下限に達していない場合には(S112−NO)、制御装置10は、インピーダンス計算を行うルーチン(S130)に信号出力を出力する(S126)。そして、速度指令を生成するルーチン(S132)が、アクチュエータ14の動作速度を決定する。
【0044】
以上のように、制御手段10が操作力検出手段であるセンサ20で検出した操作力に応じて、座部16の駆動速度を制御することから、介護者8の操作の意思を駆動手段の制御に忠実に反映させやすく、機械的な動きを抑え、介護者8によるより忠実な操作が可能となる。
【0045】
また、制御手段10が、操作力検出手段であるセンサ20で検出した操作力に応じて、座部16の駆動の開始及び停止を制御することで、介護者8がセンサ20を備えるグリップ22から手を離した時に座部16の駆動が停止するような制御が可能であり、被介護者6の安全の確保が可能である。
【0046】
さらに、制御手段10がセンサ20のオーバーロードすなわち操作力が所定以上のとき駆動手段を制御して座部16の駆動を停止させることで、介護者8がグリップ22を急峻に操作してしまった時に座部16の駆動が停止するような制御が可能であり、被介護者6の安全の確保が可能である。
【0047】
尚、上記実施例の説明では、グリップ22に図示しないスイッチを設け、そのスイッチのON/OFFを用いて、駆動の全体的な開始と停止を決定するようにしている。しかしながら、このスイッチと同様な機能を他のセンサを用いて行うことも可能である。さらに、スイッチと他のセンサとを共に設けるようにしてもよい。
【0048】
この他のセンサとして、例えば、歪みセンサをグリップ22に設け、介護者8がグリップ22を握った力を押圧力として制御装置10に取り込むようにしてもよい。このようにグリップ22に歪みセンサを取り付けて構成させたグリップスイッチを押圧力検出手段である他のセンサとして設けた装置の動作を示すフローチャートが図6であり、グリップスイッチの出力を示したグラフが図7である。以下、図6及び図7を用いて動作を説明する。尚、以後の本実施例の説明において、括弧内の符号は図6の符号に対応している。
【0049】
まず、入浴用リフト装置1(制御装置10)に電源を投入すると(S200)、制御装置10は、各種の設定情報等の読み込みなどを行い、スタンバイ状態にする(S202)。次に、制御装置10は、グリップスイッチの出力を取り込み判断することになる。具体的には、図7のグラフに示すような出力となる。図7に示すように、加えられる力がXbよりも小さい場合は、グリップスイッチがONしていないとみなして(S204−NO)、センサ20の値として0を出力する(S220)。すなわち、Xb以下の値は0である。そして、グリップスイッチに加える力がXbこれを上回ると出力として信号出力が出力される。但し、加える力がXb‘以上となりグリップスイッチがオーバーロードの場合には(S206−YES)、センサ20の値として0を出力する(S220)。これ以降の制御(S208〜)は、上記の実施例と同様の制御なので説明を省略する。
【0050】
このように、制御手段である制御装置10が座部16の駆動の開始及び停止を押圧力検出手段であるグリップスイッチで検出した押圧力に応じて制御することで、介護者8がグリップスイッチ(グリップ22)から手を離した時に座部16の駆動が停止するような制御が可能であり、被介護者6の安全の確保が可能である。
【0051】
さらに、押圧力検出手段であるグリップスイッチが、介護者8が握持するもので、握持力を押圧力として検出するようにすることで、介護者8はグリップスイッチ(グリップ22)を握って、握り具合で操作可能で、操作が容易である。また、グリップスイッチ(グリップ22)が、介護者8が握持するものであるから、濡れてもしっかり保持できるので、介護者8にも操作上の安心感がある。
【0052】
尚、介護者8が非常事態で駆動を停止させたいような場合、グリップスイッチ(グリップ22)を強く握るケースが想定される。このため、グリップスイッチ(グリップ22)が所定以上の力で握られた場合(S206−YES)には、座部16の駆動を停止するように制御装置10で、制御することが重要である。介護者8が非常時にとっさにグリップスイッチ(グリップ22)を強く握るであろうことから、押圧力検出手段としては、把持可能な形状のものが好ましく、また、お湯Yで濡れた場合にも滑りにくいので、グリップ22のような把持可能な形状のものがより好ましい。尚、押圧力検出手段がグリップスイッチのように把持可能なものではなくとも、制御手段である制御装置10が、押圧力が所定以上のとき駆動手段を制御して座部16の駆動を停止させることで、例えば駆動を停止させたい場合には、座部16を強く抱きかかえるようにして押圧力検出手段を強く押せばよく、簡易な操作で座部16の駆動を停止させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、被介護者の機械にだけ身を任せている感覚を軽減し、被介護者の不安感を抑えることができ、また不安感を抑えることで、入出浴の速度を速めることができる入浴用リフト装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る入浴用リフト装置の構成を示す構成図である。
【図2】同入浴用リフト装置の使用例を示す説明図である。
【図3】同入浴用リフト装置の動作の詳細を示す説明図である。
【図4】同入浴用リフト装置の動作の詳細を示すフローチャートである。
【図5】同入浴用リフト装置の駆動速度の制御の様子を示すグラフである。
【図6】本発明に係る入浴用リフト装置の他の実施例の動作の詳細を示すフローチャートである。
【図7】同入浴用リフト装置のグリップのセンサの出力を示すグラフである。
【符号の説明】
【0055】
1・・・・入浴用リフト装置
4・・・・浴槽
6・・・・被介護者
8・・・・介護者
10・・・制御装置
12・・・モータ
14・・・アクチュエータ
16・・・座部
18・・・基台
20・・・センサ
22・・・グリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入浴介護が必要な被介護者を、座位のまま入浴させるための入浴用リフト装置において、
該被介護者が座った状態で介護者の手や体を添えることが可能な座部と、
該座部を浴槽内に入出させる駆動手段と、
該介護者が該座部を動作させるための操作力を検出する操作力検出手段と、
該操作力検出手段で検出した操作力に応じて該駆動手段を制御する制御手段とを備え、
該駆動手段で該介護者の労力を補いつつ、該被介護者を入浴させることを特徴とする入浴用リフト装置。
【請求項2】
前記座部が、前記介護者が抱持又は把持可能であることを特徴とする請求項1記載の入浴用リフト装置。
【請求項3】
前記制御手段が、前記操作力検出手段で検出した所定以下の操作力に応じて、前記介護者が前記被介護者や前記座部を操作できるように前記駆動手段を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の入浴用リフト装置。
【請求項4】
前記制御手段が、前記操作力検出手段で検出した操作力に応じて、前記座部の駆動速度を制御することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の入浴用リフト装置。
【請求項5】
前記制御手段が、前記操作力検出手段で検出した操作力に応じて、前記座部の駆動の開始及び停止を制御することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の入浴用リフト装置。
【請求項6】
前記制御手段が、前記操作力が所定以上のとき前記駆動手段を制御して前記座部の駆動を停止させることを特徴とする請求項5記載の入浴用リフト装置。
【請求項7】
前記介護者が押圧し、押圧したときの押圧力を検出する押圧力検出手段を備え、
前記制御手段が、該押圧力に応じて前記駆動手段を制御することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の入浴用リフト装置。
【請求項8】
前記制御手段が、前記座部の駆動の開始及び停止を、前記押圧力検出手段で検出した押圧力に応じて制御することを特徴とする請求項7記載の入浴用リフト装置。
【請求項9】
前記制御手段が、前記押圧力が所定以上のとき前記駆動手段を制御して前記座部の駆動を停止させることを特徴とする請求項8記載の入浴用リフト装置。
【請求項10】
前記押圧力検出手段が、前記介護者が握持するもので、握持力を前記押圧力として検出することを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれかに記載の入浴用リフト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−136776(P2010−136776A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313874(P2008−313874)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年11月10日開催の国立大学法人豊橋技術科学大学等が主催する「メディカル イノベーション フォーラム 2008 HAMAMATSU」で発表 及び 平成20年11月14日開催の静岡県工業技術研究所が主催する「平成20年度静岡県工業技術研究所静岡協議会ユニバーサルデザイン工芸部会」で発表
【出願人】(590002389)静岡県 (173)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【出願人】(591127825)株式会社アマノ (13)
【Fターム(参考)】