説明

入浴用設備のロック解除装置

【課題】簡単な構成でロックの解除を行えると共に着座部を落下させることなく台車から浴槽に移動できる。
【解決手段】入浴用設備は、台車17に設けた第一のレール23上を椅子部に設けたローラが走行して分離可能な入浴用車椅子と、第二のレール14を設けた座部を有する浴槽2とを備えた。座部12には折り曲げ部12aを介して解除部を設けた。第一のロック機構30は、椅子部が台車から移動する際、椅子部の阻止部材に干渉する位置と干渉しない位置とを取る係止部材と、係止部材を阻止部材に干渉する位置に付勢するコイルばねとを有する。座部12に設けた解除部に第三のレール16を設置する。解除部で係止部材を押圧することで、係止部材を阻止部材に干渉する位置から干渉しない位置に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴用車椅子や入浴用担架等の台車から着座部を分離して浴槽に移動させて、例えば身体の不自由な人等を入浴させる際に用いられる入浴用設備のロック解除装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、体が不自由で介助が必要な者(以下、要介助者と記す。)を入浴させる際に、要介助者等を浴槽に移動するために、例えば入浴用車椅子が使用される。入浴用車椅子は、下部にキャスターが設けられて上部に第1のレールが二列平行に付設されている台車と、下部に車輪が設けられている椅子部とからなるものである。
【0003】
これらは、椅子部の車輪が第1のレールの上を走行することで、椅子部が台車上を前後または左右に移動可能になっている。そして、この入浴用車椅子は、浴槽に横付けされ、入浴用車椅子にある第1のレールと浴槽側にある第2のレールとが同一直線状になるように位置合わせされることで、椅子部が車輪を介して第1のレールから第2のレールへ移動して浴槽に移されるようになっている。
この入浴用車椅子に用いられる浴槽は、前面に開口部が形成され、扉部が開口部に対して上下動することで開閉可能とされている。そして、扉部を下方に移動させた状態で、入浴用車椅子の椅子部を開口部を通して浴槽内に移動させるようになっている。
入浴用車椅子の台車から椅子部を分離して、第1のレールから浴槽内にある第2のレールに移動させる際、第一のレールと第二のレールの間に位置する浴槽の側面付近で椅子部が落下する事故が起こることがあった。
【0004】
このような入浴用車椅子と浴槽とを備えた入浴設備として、例えば特許文献1に開示されたものがある。
この入浴用設備は、入浴用車椅子の台車が入浴用受け台の所定位置につき合わされたとき、台車の上部に付設された第1のレールと入浴用受け台の上部に付設された第2のレールとが同一直線状に配置されて、第1のレール上を走行可能な車輪を有する椅子部が台車と入浴用受け台との間を移動可能になる。入浴用車椅子には、椅子部が第1のレールに沿って台車から離間するように移動するのを阻止するロック機構が設けられている。このロック機構は、台車が第1のレールと第2のレールとが合致するよう入浴用受け台の所定位置につき合わされることで解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−154241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、ロックの解除機構として、入浴用受け台の側面の台車ガイド部に入浴用車椅子の位置決め部を突き当てた位置決め状態で、連結穴に係止ロッドの下端部を挿入して入浴用受け台と台車とを連結する。そして、ロック機構として、入浴用受け台に設けたレバー係合部から、台車に設けたレバーを連動させて一次係合板を下方に回動させて二次係合板を下方に押すことで、係止部材を付勢部材の弾性力に抗して下方に下げてロック機構を非係止状態に切り換えるようにしている。これにより、椅子部を台車に設けた第1のレールから入浴用受け台の第2のレールに移動可能にしている。
そのため、ロック解除機構の構造が複雑であり、ロック解除機構の組立に手間がかかる上に製造コストが高いという欠点がある。
また、特許文献1に記載された入浴設備では、入浴用受け台が浴槽内に設けられている場合には、入浴用車椅子と入浴用台車の間に浴槽の側面が位置するため、この部分から椅子部が落下するおそれがあり、上述した問題が改善されていなかった。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みて、簡単な構成でロックの解除を行えると共に着座部を落下させることなく浴槽に移動できるようにした入浴用設備のロック解除装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による入浴用設備のロック解除装置は、台車に設けた第一のレール上を着座部に設けたローラが走行して分離可能な入浴用車椅子と、第一のレールに対向して第二のレールを設けた座部を有する浴槽とを備えた入浴用設備において、台車に設けられていて着座部が台車から移動することを阻止する位置と許容する位置とを選択的に取り得る係止部材と、座部に設けられていて係止部材を押圧することで着座部が台車から移動することを許容する位置に係止部材を位置させる解除部とを有する第一のロック機構を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、浴槽と入浴用車椅子を正規位置にセットし、浴槽に位置する座部に設けた解除部によって、入浴用車椅子の台車に設けた係止部材を押圧することで、係止部材を着座部が台車から移動することを阻止する位置から許容する位置へ移動させて、着座部と台車とのロックを解除でき、着座部を台車に設けた第一のレールから座部に設けた第二のレールまで移動させることができる。その際、座部の解除部が台車の係止部材に当接されるため、着座部を確実に台車から解除部を介して浴槽内の座部に移動できる。
【0009】
また、解除部に第三のレールが設けられていることが好ましい。
これにより、着座部を台車の第一のレールから解除部の第三のレールを介して座部の第二のレールへガイドして移動できる。このとき、解除部の第三のレールは台車の第一のレールと座部の第二のレールとの間を接続する中間レールを構成する。
【0010】
また、第一のロック機構は、着座部が台車から移動しようとする際に係止部材に干渉する位置に設けられた阻止部材と、係止部材を阻止部材に干渉する位置に付勢する付勢部材とを更に備え、座部の解除部が係止部材を押圧することで、係止部材は付勢部材の付勢力に抗して阻止部材に干渉する位置から干渉しない位置へ退避させることが好ましい。
本発明によれば、浴槽内の座部に設けた解除部によって入浴用車椅子の台車に設けた係止部材を押圧することで、係止部材を付勢部材の付勢力に抗して着座部の阻止部材に干渉する位置から干渉しない位置へ移動させることで、着座部が台車から外れて第一のレールを移動する際に着座部の阻止部材に係止部材が当接しないから、着座部を第一のレールから座部に設けた第二のレールまで移動させることができる。
【0011】
また、入浴用車椅子の台車と浴槽との一方に嵌合穴が設けられ、他方に嵌合穴に嵌合可能な嵌合ピンが設けられた第二のロック機構を備えることが好ましい。
第二のロック機構によって入浴用車椅子の台車と浴槽を正規位置にセットして固定できる。
しかも、入浴用車椅子の台車に嵌合穴が設けられ、浴槽に嵌合穴に嵌合可能な嵌合ピンが設けられることが好ましい。
この構成を採用すれば、ロック状態で台車を不用意に上方に動かしたとしても、台車に設けた嵌合穴が浴槽の嵌合ピンから離脱することを確実に防止できる。
【0012】
また、座部に設けられた解除部は折り畳み可能とされ、折り畳み状態で座部は浴槽内に保持され、開いた状態で解除部は浴槽の外側に突出するようにしてもよい。
本発明によれば、解除部を折り畳めば座部を浴槽内で入浴する際、上下動させても浴槽の側面と干渉することがなく、また、解除部を開けば浴槽の側面を跨いで座部と台車を接続させて第一のロック機構の解除と着座部の移動を確実に行える。
【発明の効果】
【0013】
本発明による入浴用設備のロック解除装置によれば、浴槽と入浴用車椅子をセットし、浴槽の座部に設けた解除部によって、入浴用車椅子の台車に設けた係止部材を押圧することで、係止部材を着座部が台車から移動することを阻止する位置から許容する位置へ移動させることができて、着座部と台車とのロックを解除でき、着座部を台車に設けた第一のレールから座部に設けた第二のレールまで移動させることができる。
しかも、第一のロック機構の構成が簡単であり、ロックの解除操作も容易である。また、浴槽内に位置する座部に解除部を設けたから、解除部は浴槽の側面を跨いで外側の入浴用車椅子まで延びることになり、着座部を台車から解除部を通して浴槽内の座部に確実に移動でき、着座部が落下したりレールから外れたりすることを防止できる。
しかも、ロックの解除動作が簡単であり、ロック解除装置の構成が簡単で製造が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態による浴槽と入浴用車椅子からなる入浴設備の斜視図である。
【図2】図1に示す入浴設備の平面図である。
【図3】図1に示す入浴用車椅子の要部拡大図である。
【図4】台車と座部と解除部のレールを示す要部拡大平面図である。
【図5】入浴用車椅子の椅子部が台車から座部へ移動した状態を示す要部斜視図である。
【図6】図5に示す第一のレールとローラとの関係を示す拡大図である。
【図7】第一のロック機構の拡大図であり、(a)は図3に示すA部の要部拡大図、(b)は同図(a)をB方向から見た要部断面図である。
【図8】入浴用車椅子の下部に設けた嵌合穴と浴槽の下部に設けた嵌合ピンとを示す第二のロック機構の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1乃至図3に示す入浴設備1は浴槽2の側面3に入浴用車椅子4を係合させた状態を示すものである。浴槽2は側面3の略上半分である上部に開口部5が形成され、開口部5を閉鎖するための扉部6がスライドして上下動可能に設けられている。扉部6が下側に位置する状態で、浴槽2の底部2aは側面3の開口部5より下方に位置している。開口部5を有する側面3に対向する他方の側面7には浴槽2の容量の半量の湯を溜めておくためのタンク8が設けられている。
図1及び図2において、他方の側面7には上下動可能なリフト10が設けられ、リフト10には左右方向に揺動可能なアーム11が設けられている。アーム11はリンク機構を構成しており、その下端部にはシート上の座部12が設けられている。座部12はアーム11で揺動した左右両端の位置で側面3に設けた開口部5の下端面とほぼ同一高さに支持されている。これにより、座部12に要介助者等の入浴者が座るための図示しない受け台を設けた場合、側面3の開口部5に対して左右方向のいずれの向きからも入浴可能であり、入浴者に身体の片側に障害等がある場合等に選択的な向きで入浴可能である。
【0016】
そして、この座部12はアーム11の支持枠11aにヒンジ等で上側に折り曲げ可能に取り付けられている。更に、座部12のアーム部11とは反対側の端部側は図示しないヒンジ等で上方に折り曲げ可能な折り曲げ部12aが設けられ、この折り曲げ部12aを介して解除部15が接続されている(図4参照)。座部12の上面には一対のレール14、14が形成されており、解除部15にはレール16,16が設けられており、折り曲げ部12aを除いて座部12と解除部15のほぼ全長に亘ってレール14,16が延びている。
座部12の解除部15は、その自由端部が幅広の中央部15aと中央部15aより後退したレール16、16を支持する両側の側部15b、15bとを有している。解除部15は略水平に広げた状態で浴槽2の側面3の上端部を超えて外側に若干突出しており、入浴時にはリフト10によって下降させることで側面3の上端部に当接して折り曲げ部15aで上方に折り曲げられる状態になり、浴槽2の側面3の内側に納まる。
【0017】
次に、入浴用車椅子4について説明する。
この入浴用車椅子4は、車輪付きの台車17と、台車17上に水平方向へ移動可能に取り付けられた着座部としての椅子部18とを備える。台車17は、平面視略コの字形状に組まれた台車フレーム21の各隅部から脚部19が延び、その下端に車輪20が取り付けられている。
図3及び図4に示すように、台車17の上端には台車フレーム21に横架材22が架設され、横架材22上には椅子部18を移動可能に支持するレール23が横架材22の長手方向に直交する向きで二列平行に架設されている。そして、浴槽2の座部12に対向して正規位置に入浴用車椅子4がロックされた状態で、図4に示すように、座部12のレール14、14と解除部15のレール16,16と台車17のレール23、23とがそれぞれ同一直線上に配列された状態になる。そのため、解除部15のレール16は台車17のレール23と座部12のレール14との間を接続する中間レールを構成する。
【0018】
図5及び図6において、椅子部18の裏面には、各レール23の位置に対向してローラ部25がそれぞれ設けられている。ローラ部25は枠部26の下部にレール23、16,14の上面を走行する第一ローラ27とレール23、16,14の外側の側面を走行する第二ローラ28とが設けられている。
そして、図4乃至図6に示す台車17において、一方のレール23の浴槽2側先端近傍の内側には台車フレーム21に第一のロック機構30が設けられている。
【0019】
次に、第一のロック機構30について図7を中心により説明する。
図7(a)は図3に示すA部の拡大図であり、図7(b)は図7(a)においてB方向から見た図である。第一のロック機構30は、台車17の一方のレール23の側部に設けた筐体31内に支軸32を中心に揺動可能な係止部材33が設けられている。係止部材33は、上方に突出する係止部34aと係止部34aより低く形成された受け部34bとからなる段付き形状を有するストッパー部34と、ストッパー部34に連結された基部35とを有している。
ストッパー部34は係止部34aと受け部34bの段付き部分が筐体31の上面に形成された開口31aから上方に突出している。また、基部35は、支軸32が貫通して支軸32を中心に回動可能に支持され、支軸32は筐体31内に設けられた支持枠36を貫通して支持されている。そして、基部35において、支軸32の斜め下方に植設されたピン37と筐体31の内面に設けた軸部38とに付勢部材としてコイルばね39が取り付けられている。
【0020】
そのため、係止部材33は、常態において、図7(a)に実線で示すように、コイルばね39の付勢力によって筐体31の内面に設けた当接面31bに当接した状態で略垂直に保持され、開口31aから突出するストッパー34の係止部34aと受け部34bは略垂直位置にあり、係止部34aは、座部12における解除部15の中央部15aと側部15bとの間の凹部の延長線上に位置する。
ここで、図7(a)に示すように、略垂直状態になるストッパー部34に対して例えば左側に係止部材33の回動中心である支軸32が設けられ、右側に係止部材33を反時計回り方向に付勢するコイルばね39が設けられている。そのため、解除部15の中央部15aが係止部材33の受け部34bを押すことで、係止部材33はコイルばね39の付勢力に抗して支軸32回りに時計回りに回動して、二点鎖線で示すように係止部34aが開口31aの端面に当接する傾斜位置に保持される。
【0021】
また、図7(a)及び図3において、入浴用車椅子4の椅子部18の下面には阻止部材41が下向きに突出して形成されている。この阻止部材41はレール23の延在方向に隣接する位置に設けられ、第一のロック機構30におけるストッパー部34の係止部34aと干渉する位置に設けられている。
そのため、第一のロック機構30において、ストッパー部34の係止部34aが垂直位置にある場合には、椅子部18を台車17から外してレール23上を走行させようとしても、阻止部材41が台車17に設けたストッパー部34の係止部34aに当接して移動を阻止される。そして、ストッパー部34が傾斜位置にある場合には係止部34aが阻止部材41の進路を外れるために、椅子部18が台車17から外れることを許容する。
【0022】
次に、第二のロック機構43について、図8により説明する。
第二のロック機構43は、浴槽2と入浴用車椅子4の台車17の下部に設けられた連結機構である。台車17の側部に設けた2本の脚部19、19間の下部には、台車フレーム21から延びる階段状に形成された係合板44が片持ち支持されている。係合板44は台車フレーム21内で例えば下方に湾曲して自由端部が台車フレーム21から外側に突出して更に下方へ傾斜するガイド部44aとされている。この係合板44のガイド部44aの近傍には嵌合穴45が形成されている。
係合板44は台車フレーム21に片持ち支持されているため、自由端部であるガイド部44aや嵌合穴45の領域には弾性が付与されており、この係合板44は弾性移動可能なその自由端部と台車フレーム21との間に弾性部材として例えばコイルばね46が連結されている。また、コイルばね46の前方には、台車フレーム21に傾斜カバー47が取り付けられている。
【0023】
一方、浴槽2の開口部5を設けた側面3の下部には支持フレーム49が扉部6の下側に突出しており、この支持フレーム49の下面には、係合板44の嵌合穴45に嵌合可能な嵌合ピン50が設けられている。そのため、入浴用車椅子4を浴槽2に位置決め固定するために、入浴用車椅子4の側部を浴槽2の側面3に保持して、係合板44のガイド部44aに設けた嵌合穴45を浴槽2に設けた支持フレーム49の嵌合ピン50に嵌合させる。なお、嵌合穴45に嵌合ピン50を嵌合させるためのガイド部を浴槽2と台車17の一方または両方に設けてもよい。
また、第二のロック機構43における嵌合ピン50と係合板44の嵌合穴45の嵌合状態を解除するフットレバー51がフレーム44に設けられている(図1参照)。
また、図3、図5に示すように、入浴用車椅子4の椅子部18には、椅子部18を台車17に連結させる連結レバー52が設けられている。そして、この連結レバー52は椅子部18が座部12に移動した状態で、椅子部18の連結レバー52を座部12に連結させて固定する連結孔部53が設けられている(図4参照)。
【0024】
本実施形態による入浴用設備1のロック解除装置は上述の構成を備えており、次に入浴時に要介助者が着座する入浴用車椅子4の椅子部18を浴槽2の座部12に移動させる方法について説明する。
まず、図1及び図2に示すように、浴槽2の側面3に設けた扉部6を下方にスライドさせて開口部5を開放状態に保持し、浴槽2内で開口部5の下部付近に位置する座部12のレール14の延長線上に台車17のレール23が位置するように入浴用車椅子4を移動させる。
そして、図8において、入浴用車椅子4の側部を浴槽2の側面3に対向させて接近させ、台車17の係合板44のガイド部44aを浴槽2の下部に設けた支持フレーム49の嵌合ピン50に突き当て、係合板44を弾性変形させて嵌合穴45に嵌合ピン50を嵌合させる。これによって、入浴用車椅子4の側部が浴槽2の側面3に位置決めされて固定される。
そして、図示しないセンサーによって、第二のロック機構43において嵌合穴45に嵌合ピン50が嵌合された状態であることを確認し、入浴用車椅子4の椅子部18を台車17から分離でき得る状態にする。
【0025】
この状態で、浴槽2内の座部12は解除部15が折り畳み状態にあると、要介助者が着座する入浴用車椅子4の椅子部18を台車17から分離してレール23、23に沿って座部12に移動させようとしても、図7に示すように、第一ロック機構30における係止部材33のストッパー部34が垂直位置にあり、椅子部18の下部に設けた阻止部材41の進路に位置するため阻止部材41が係止部34aに当接する。そのため、椅子部18の移動は阻止される。
この状態から、座部12の解除部15を外側に開いて水平状態にすると、図7(a)、(b)において、解除部15は入浴用車椅子4の台車17に設けたストッパー部34の受け部34bに載せられ、その重量によってストッパー部34が押されるため、係止部材33はコイルばね39の付勢力に抗して支軸32を中心に図7(a)で時計回りに回動し、二点鎖線で示すように、開口部31aの端面に当接する傾斜位置に逃げる。これによって係止部材33は阻止部材41の進路から外れる。
【0026】
そして、台車17と椅子部18を固定させる連結レバー52(図3参照)を外すことで、椅子部18を浴槽2の座部12方向に押すと、椅子部18の裏面枠部26に設けたローラ部25の一対の第一ローラ27と第二ローラ28をレール23の上面と外側面に沿って走行させるため、椅子部18が台車17から離れて略同一直線上に位置するレール23からレール16を介してレール14へ移動して座部12上に位置させられる。そして、連結レバー52をレール14近傍に設けた孔部53に係合させて、椅子部18を座部12にロックする。
この状態で、扉部6を上方に引き上げて開口部6を閉鎖させ、タンク8から湯を浴槽2内に移動させて要介助者を入浴させることができる。なお、フットレバー51を操作して第二のロック機構43における台車17と浴槽2との係合を解除できる。
なお、入浴終了後に要介助者を載せた椅子部18を入浴用車椅子4の台車17に戻すには、上述の操作と逆の手順で操作すればよい。
【0027】
上述のように本実施形態による入浴用設備のロック解除装置によれば、第一のロック機構30を設けたから、浴槽2に入浴用車椅子4を正規位置にセットして、座部12の解除部15を浴槽2の側面3を跨いで入浴用車椅子4のストッパー34の受け部34bに載せることで、ストッパー34をロック位置から外すことができて椅子部18を台車17から解除部15を介して浴槽2内の座部12に移動させることができる。
しかも、第一のロック機構30の構成が簡単であり、ロックの解除操作も容易である。
【0028】
また、浴槽2内に位置する座部12に解除部15を設けたから、解除部15を開くと浴槽2の側面3を跨いで外側の入浴用車椅子4まで延び、しかも解除部15にもレール16が設けられているから、解除部15のレール16は台車17のレール14と座部12のレール23との間を接続する中間レールを構成し、椅子部18を台車17のレール23,解除部15のレール16,座部12のレール14へ確実に移動させることができ、誤って椅子部18が落下することを確実に防止できる。
そして、台車部17と椅子部18とのロックを解除する解除部15が座部12の外側に位置するために座部12に椅子部18を導入し易いという利点もある。
【0029】
しかも、本実施形態による入浴用設備1のロック解除装置によれば、第二のロック機構43で浴槽2と入浴用車椅子4を正規位置に固定した後でなければ、第一のロック機構30による台車17から椅子部18の分離と椅子部18の移動を行うことが出来ないため、操作が確実で安全である。
また、第二のロック機構43について、従来では、入浴用車椅子4側に嵌合ピン50を設け、浴槽2側に嵌合穴45を設けた構成であり、車椅子4は軽量であるため、例えば浴槽2の座部12から椅子部18を移動させる際等、台車17が上方に回動して嵌合ピン50が嵌合穴から外れることがあった。しかし、本実施形態による第二のロック機構43によれば、台車17側に嵌合穴45を設け、浴槽2側に嵌合ピン50を設けたから、台車17が上方に回動したとしても、嵌合ピン50が嵌合穴45から外れることがなく操作の安全性が高まる。
【0030】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更可能である。
例えば、上述の実施形態において、入浴用車椅子4を浴槽2の正規位置にセットした状態で、座部12に設けた解除部15を折り畳み状態から開くようにしたが、これに代えて、座部12は最初から解除部15が水平方向に開いた状態で用いてもよい。この場合でも、入浴用車椅子4を第二のロック機構43で正規位置にセットすることで、解除部15はストッパー34の受け部34bの上に載ることで、係止部材33を阻止部材41の進路から外れた傾斜位置へ移動できる。
【0031】
また、上述の実施形態では浴槽2の側面3に開口部5を設けたが、開口部5を設けずに浴槽上面に座部12を位置させて台車17から椅子部18を移動可能に設定してもよい。また、浴槽2の底部は開口部5の下部と略同一位置に設定してもよい。
また、上述の実施形態において、入浴用車椅子4の台車17のレール23は第一のレールを構成し、座部12のレール14は第二のレール、解除部15のレール16は第三のレールを構成する。また、椅子部18は着座部を構成する。
また、本発明の本実施の形態では、入浴用車椅子4について説明したが、入浴用車椅子4に代えて、ストレッチャー(台車)と担架本体(着座部)とから構成される入浴用担架にも、本実施の形態の構成を採用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 入浴用設備
2 浴槽
3 側面
4 入浴用車椅子
5 開口部
12 座部
14 レール(第二のレール)
15 解除部
15a 中央部
16 レール(第三のレール)
17 台車
18 椅子部
23 レール(第一のレール)
30 第一のロック機構
32 支軸
33 係止部材
34 ストッパー
34a 係止部
34b 受け部
39 コイルばね
41 阻止部材
43 第二のロック機構
45 嵌合穴
50 嵌合ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車に設けた第一のレール上を着座部に設けたローラが走行して分離可能な入浴用車椅子と、前記第一のレールに対向して第二のレールを設けた座部を有する浴槽とを備えた入浴用設備において、
前記台車に設けられていて前記着座部が台車から移動することを阻止する位置と許容する位置とを選択的にとる係止部材と、
前記座部に設けられていて前記係止部材を押圧することで前記着座部が台車から移動することを許容する位置に前記係止部材を位置させる解除部と
を有する第一のロック機構を備えたことを特徴とする入浴用設備のロック解除装置。
【請求項2】
前記解除部に第三のレールが設けられている請求項1に記載された入浴用設備のロック解除装置。
【請求項3】
前記第一のロック機構は、前記着座部が台車から移動しようとする際に前記係止部材に干渉する位置に設けられた阻止部材と、前記係止部材を阻止部材に干渉する位置に付勢する付勢部材とを更に備え、
前記座部に設けた解除部が係止部材を押圧することで、前記係止部材は付勢部材の付勢力に抗して前記阻止部材に干渉する位置から外れた位置へ退避させるようにした請求項1または2に記載された入浴用設備のロック解除装置。
【請求項4】
前記入浴用車椅子の台車と前記浴槽との一方に嵌合穴が設けられ、他方に前記嵌合穴に嵌合可能な嵌合ピンが設けられた第二のロック機構を備えた請求項1乃至3のいずれかに記載された入浴用設備のロック解除装置。
【請求項5】
前記座部に設けられた前記解除部は折り畳み可能とされ、折り畳み状態で前記座部は浴槽内に保持され、開いた状態で前記解除部は浴槽の外側に突出するようにした請求項1乃至4のいずれか1項に記載された入浴用設備のロック解除装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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