説明

入浴用車椅子

【課題】入浴者の乗り移り時等に手すりを退避させる際、大きなスペースを要しない。
【解決手段】走行可能な台車17に着脱可能な椅子部18を設けた。椅子部18に椅子部18に対して外側に回動可能な手すりとして可動手すり部34を設けた。可動手すり部34は椅子部18の背もたれ部26側から軸部33から延びる側部支持部42と、背もたれ部に対向する前方まで湾曲して延びる前部保護筒44とを備えた。側部支持部42の支持部外筒35に、前部保護筒44に連結した支持部内筒36を伸縮可能及び回転可能に挿入させた。支持部外筒35に主ガイド溝部と第1、第2係止溝部を有するガイド溝を設け、支持部内筒36に設けたガイドピンを摺動可能に嵌入させてガイドさせる。支持部内筒36を支持部外筒35内に挿入させて縮めた状態で可動手すり部34を水平方向に開閉作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば身体の不自由な入浴者等を入浴させる際に用いられる入浴用車椅子であって、搭乗した入浴者を保護すると共に乗り降りする際に邪魔にならない手すりを備えた入浴用車椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、体が不自由で介助が必要な者(以下、要介助者と記す)を入浴させる際に、要介助者等を浴槽に移動するために入浴用車椅子が使用される。例えば、下記特許文献1に記載された入浴用車椅子では、開口部を有する浴槽の側部に入浴用車椅子を略平行に接近させて位置決めして互いにロックすることになる。そして、入浴用車椅子は、下部にキャスターを設けた台車の上部に、椅子部が着脱可能に設けられている。
この入浴設備では、入浴用車椅子の台車と椅子部とのロックを外して、椅子部を台車に設けた第1のレールから浴槽内に設けた座部上の第2のレールへ走行させて入浴状態に保持できる。そして、入浴後は上述の手順と逆の操作で浴槽から台車に椅子部を戻してロックすることになる。
【0003】
特に、入浴者が要介助者である場合、ベッドや通常の車椅子から入浴用車椅子に要介助者を移して浴室まで運び、入浴終了後は浴室で浴槽から入浴用車椅子に戻してベッドまたは通常の車椅子の保管場所まで移動させることになる。その後、入浴用車椅子からベッドや通常の車椅子に入浴者を乗り移らせる。
そして、入浴用車椅子には、例えば特許文献2に記載されたように、椅子部に着座した要介助者が移送中や入浴中等に椅子部からずれたり落下したりすることを防止するための保護用の手すりが両側に設けられている。この手すりは例えば略L字形状とされ、椅子部の背もたれ部に回動可能に設けられている
【0004】
これらの手すりは要介助者が椅子部に乗り移る際に、両側の手すりを退避させるために、手すりの把持部同士を上方に離間させるよう回動させて椅子部の背もたれ部の後側に位置するように揺動させる。その後に、手を離すと、両手すりは、それぞれの把持部同士を近接させる方向に付勢されているため、自動的に把持部同士を近接させるよう揺動されて畳まれた状態となる。したがって、揺動されて背もたれ部の後側に位置するように配置された手すりの把持部が自動的に介護者に邪魔にならない状態となり、介護者の作業性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−154241号公報
【特許文献2】特開平11−19159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載された発明では、入浴者が椅子部に乗り移りする際、手すりを上方に上げて椅子部の背もたれ部の背後に回す必要があり、手すりの回動領域に大きなスペースが要求されるという不具合があった。一方で、椅子部の頭部やその近傍に頭部や体幹を保護するようなサポート部等を設けると、手すりの上下動の際にサポート部を回避して回動させるために回動スペースが更に大きくなる不具合があった。或いは、背もたれ部が大型化すると実質的に上下動による手すりの退避運動ができないおそれもあった。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みて、入浴者の乗り移り時等に手すりを退避させたり元の位置に戻したりする際、大きなスペースを必要としない入浴用車椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による入浴用車椅子は、走行可能な台車に着座部を設けた入浴用車椅子において、着座部には該着座部に対して外側に回動可能な可動手すり部が設けられ、可動手すり部は着座部の背もたれ部側から延びる伸縮可能な側部支持部と、該側部支持部に接続されていて背もたれ部に対向する着座部前方位置まで湾曲または屈曲して延びていて回動可能な前部保護部とを備えたことを特徴とする。
本発明による入浴用車椅子によれば、入浴者等は入浴用車椅子へ出入りのために乗り移る場合には、前部保護部を上方に回動させて着座部前方位置から外し、次いで側部支持部を収縮させてその長さを短くして回動径を小さくし、そして側部支持部を着座部から略水平方向外側に回動させることで、小さな回転半径で可動手すり部が着座部から外側に広がって保持されるため乗り移り用のスペースが形成され、外部から着座部への乗り移りや着座部から外部への乗り移りが容易に行える。
【0009】
また、側部支持部は、パイプ状に形成されていてその長手方向に沿って延在する主ガイド溝部と該主ガイド溝部から周方向に延びて接続された係止溝部とを有する支持部本体と、該支持部本体に回動可能及び進退可能に挿入されていると共に前部保護部に接続された嵌入支持部と、該嵌入支持部に設けられていて主ガイド溝部と係止溝部とでガイドされて摺動可能なガイド軸と、を有していてもよい。
本発明によれば、可動手すり部の使用状態では嵌入支持部に設けたガイド軸は支持部本体に形成した係止溝部にあり、この位置から前部保護部を上方に回動するとガイド軸は係止溝部と主ガイド溝部との交差部へ相対移動し、次に嵌入支持部を支持部本体内に挿入して側部支持部を収縮させると嵌入支持部のガイド軸は主ガイド溝部を走行して係止溝部から離間した他端側に相対移動して側部支持部の長さが短くなり、この状態から側部支持部を外側に開いて水平回動させると可動手すり部が外側に広がる。
【0010】
また、可動手すり部は、前部保護部が側部支持部に対して上下方向に回動可能とされ、側部支持部は着座部から離間する略水平方向に回動可能な軸部を有していることが好ましい。
前部保護部を側部支持部回りに上方に回動させることで着座部の前方から外側に外れ、次いで側部支持部を収縮させて短くした後、側部支持部を軸部回りに外側に水平回動させることで可動手すり部が着座部から開かれてスペースができるから、出入りのために着座部への乗り移りが容易になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明による入浴用車椅子によれば、可動手すり部によって着座部に着座した入浴者を保護できる。しかも、前部保護部を上方に回動させて着座部前方位置から外した状態で、側部支持部を収縮させて長さを短くして外側に略水平方向に回動させることで、可動手すり部を小さな回転半径で着座部から外側に広げた状態になるため、着座部の側部のスペースが大きく開かれ、外部から着座部への乗り移りや着座部から外部への乗り移りが容易に行え、可動手すり部が邪魔にならない。しかも、入浴者の乗り移り時等に可動手すり部を退避させたり着座部の側面に戻したりする際、回転の半径をなす側部支持部の長さが短縮されているために小さなスペース内で回動できて安全であり操作が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態による浴槽と入浴用車椅子からなる入浴設備の斜視図である。
【図2】入浴用車椅子の平面図である。
【図3】図2に示す入浴用車椅子の可動手すり部を収縮させた状態を示す側面図である。
【図4】図3に示す入浴用車椅子の可動手すり部を外側に開いた状態を示す側面図である。
【図5】図4に示す入浴用車椅子の平面図である。
【図6】可動手すり部の側部支持部を伸張させた状態を示す要部拡大図である。
【図7】可動手すり部の側部支持部を収縮させた状態を示す要部拡大図である。
【図8】可動手すり部の側部支持部を収縮させた状態の図2と同様な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1は入浴設備1において浴槽2の側面3に入浴用車椅子4を係合させた状態を示すものである。浴槽2は側面3の略上半分である上部に開口部5が形成され、開口部5を閉鎖するための扉部6がスライドして上下動可能に設けられている。扉部6が下側に位置する状態で、浴槽2の底部は側面3の開口部5より下方に位置している。開口部5を有する側面3に対向する他方の側面7には浴槽2の容量の半量の湯を溜めておくためのタンク8が設けられている。
【0014】
図1において、他方の側面7には上下動可能なリフト10が設けられ、リフト10の上部には左右方向に揺動可能なアーム11が設けられている。アーム11はリンク機構を構成しており、その下端部には座部12が設けられている。座部12はアーム11で揺動した左右両端の位置で側面3に設けた開口部5の下端面とほぼ同一高さに支持されている。これにより、座部12に要介助者等の入浴者が座るための図示しない受け台や入浴用車椅子の椅子部を設けた場合、側面3の開口部5に対して左右方向のいずれの向きからも入浴可能であり、入浴者に身体の片側に障害等がある場合等に選択的な向きで入浴可能である。
【0015】
そして、この座部12はアーム11の支持枠11aにヒンジ等で上側に折り曲げ可能に取り付けられている。更に、座部12のアーム部11とは反対側の端部側は図示しないヒンジ等で上方に折り曲げ可能な折り曲げ部を介して解除部15が接続されている。
座部12の上面には一対のレールが形成されており、解除部15にもレールが設けられている。座部12と解除部15のほぼ全長に亘ってレールが延びている。
解除部15は略水平に広げた状態で浴槽2の側面3の上端部を超えて外側に若干突出しており、入浴時にはリフト10によって下降させることで側面3の上端部に当接して折り曲げ部15aで上方に折り曲げられる状態になり、浴槽2の側面3の内側に納まる。
【0016】
次に、入浴用車椅子4について説明する。
図1乃至図3に示す入浴用車椅子4は、車輪付きの台車17と、台車17上に水平方向へ移動可能に取り付けられた着座部としての椅子部18とを備える。台車17は、平面視略コの字状に組まれた台車フレーム21の各隅部から脚部19が延び、その下端に車輪20が取り付けられている。
図3に示すように、台車17の上端には台車フレーム21に横架材22が架設され、横架材22上には椅子部18を移動可能に支持するレール23が横架材22の長手方向に直交する向きで二列平行に架設されている。そして、浴槽2の座部12に対向して正規位置に入浴用車椅子4がロックされた状態で、座部12のレールと解除部15のレールと台車17のレールとがそれぞれ同一直線上に配列された状態になる。そのため、椅子部18は図示しないローラによって台車17のレールから浴槽2内の座部12のレールへ移動可能な構成を有する。
【0017】
図1乃至図5において、椅子部18は、頭部25と背もたれ部26と座面部27とで概略構成され、頭部25の両側部には入浴者の頭が頭部25から外れることを防ぐためのサポート部28が設けられており、サポート部28は頭部25に対する角度を調整可能とされている。
そして座面27及び背もたれ部26の両端部裏面側には、座面27及び背もたれ部26の形状に沿って湾曲する例えばパイプからなる支持枠部29が取り付けられている。そして、背もたれ部26の一方側(図2において左側)には、一端部が支持枠部29の頂部に嵌合されていて略水平方向前方に延びて保持される固定手すり部31が取り付けられている。また、背もたれ部26の他方側(図2において右側)には、一端部の軸部33が支持枠部29の頂部に回動可能に嵌合された可動手すり部34が取り付けられている。
【0018】
次に、可動手すり部34について図6及び図7を中心により説明する。
図6において、可動手すり部34はその一端に軸部33が設けられ、軸部33に対して略直交する方向に延びる支持部本体をなす支持部外筒35は例えば略直線をなすパイプ状とされ、その内部には嵌入支持部をなす支持部内筒36が回転可能で進退可能に挿入されている。支持部外筒35にはその長手方向に沿って主ガイド溝部38が形成されており、主ガイド溝部38の軸部33とは反対側の端部には周方向に形成された第1係止溝部39が形成され、第1係止溝部38より若干離れた軸部33側には同じく周方向に形成された第2係止溝部40が形成されている。
これら主ガイド溝部38,第1係止溝部39,第2係止溝部40は互いに連通するガイド溝41を構成する。支持部外筒35と支持部内筒36とで側部支持部42を構成する。そして、支持部内筒36にはガイド溝41内に貫挿されていてガイド溝41に沿って摺動可能なガイド軸としてのガイドピン43が植設されている。
【0019】
支持部内筒36の支持部外筒35と反対側の端部には前部保護部として前部保護筒44が固定されている。前部保護筒44は支持部内筒36との連結部で略直角の方向に湾曲して延びている。そのため、前部保護筒44は支持部内筒36と共に支持部外筒35に対して鉛直方向に回動可能であり、図1に示すように、略水平状態で背もたれ部26の前方に位置してその先端は固定手すり部31の先端近傍の位置にある。
可動手すり部34は、固定手すり部31と共に椅子部18の着座した入浴者の身体を略U字状に囲って保護するように形成されている。
【0020】
そして、支持部内筒36のガイドピン43が、図6に示すように第1係止溝部39内に位置する場合には、側部支持部42は支持部内筒36が支持部外筒35から最も突出した進出位置にあると共に前部保護筒44は略水平位置にある(図2参照)。図7に示すようにガイドピン43が第1係止溝部39と反対側の主ガイド溝部38の他端部に位置する場合には、側部支持部42は支持部内筒36が支持部外筒35内に最も深く挿入された後退位置にあると共に前部保護筒44は上方向の略垂直位置にある(図3参照)。
また、ガイドピン43が第2係止溝部40内に位置する場合には、側部支持部42は支持部内筒36が支持部外筒35から最も突出した進出位置と最も後退した後退位置との中間に位置する中間位置にあると共に前部保護筒44は略水平位置にある(図8参照)。
なお、支持部外筒35の支持部内筒36との嵌合部付近にガイド把持部45が取り付けられている。
【0021】
本実施形態による入浴用車椅子4の手すりは上述の構成を備えており、次に入浴者が入浴のために入浴用車椅子4の椅子部18に乗り降りする方法について説明する。
まず、入浴者が例えば要介助者である場合、図2に示すように、入浴用車椅子4は固定手すり部31の先端に可動手すり部34の前部保護筒44先端が近接する位置にあり、前部保護筒44は背もたれ部26の前方で入浴者を囲う位置にある。この状態で、支持部内筒36のガイドピン43は図6に示すように支持部外筒35のガイド溝41における第1係止溝部39の奧端に位置している。
そして、入浴者を椅子部18に着座させるスペースを確保するために、図2において、側部支持部42の支持部外筒35を回転軸として前部保護筒44を上方に回動させる。これにより、支持部内筒36が支持部外筒35と同軸に回転し、前部保護筒44は図3で一点鎖線の位置に略垂直に起立する。このとき、ガイドピン43はガイド溝41の主ガイド溝部38と第1係止溝部39の交差部に位置する。
【0022】
そして、図3に示すように、前部保護筒44と支持部内筒36を支持部外筒35内に押し込むと、支持部内筒36のガイドピン43が主ガイド溝部38に沿って摺動して主ガイド溝部38の最も軸部33に近接した奧部まで到達する。これにより支持部外筒35から突出する支持部内筒36の長さを図3で一点鎖線の位置から実線で示す位置まで縮めることができる。
次に、可動手すり部34を軸部33を中心にして略水平方向に回動させて、図4及び図5に示すように背もたれ部26や頭部25と略同一面状の位置に開く。
【0023】
この状態で、入浴用車椅子4の一方の側部から可動手すり部34が退いた状態になるため、一方の側部から入浴者が通常の車椅子やベッド等から椅子部18に乗り移って着座することができる。その後、上述した手順と逆の手順により操作することで、着座した入浴者を可動手すり部34と固定手すり部31とで保護できる。
即ち、先ず可動手すり部34を軸部33回りに回転させて椅子部18に着座した入浴者の側部に戻す。そして、前部保護筒44を引っ張ることで支持部内筒36を支持部外筒35から引き出しガイドピン43が主ガイド溝部38の第1係止溝部39との交差部に位置させる。最後に、前部保護筒44を略垂直状態から略水平状態に戻すことで、図1及び図2に示すように椅子部18に着座した入浴者の周囲を固定手すり部31と可動手すり部34で囲うことができ、入浴者が要介助者である場合に移送中や入浴時等に椅子部18から外れたり落ちたりすることを確実に防止できる。
【0024】
上述のように本実施形態による入浴用車椅子4によれば、手すりの可動手すり部34は全体に略L字形状に形成されて長さが長く、従来のアーム部のように上方に回動させようとすると頭部25の両側に張り出すサポート部28に干渉するため、困難であるが、椅子部18の外側に水平方向に開くことで、椅子部18の頭部25付近がサポート部28を設けることで大型化しても、これと干渉することなく可動手すり部34を開いて椅子部18の側部側から入浴者の乗り降りを容易に行える。
しかも、可動手すり部34を開閉操作する際、前部保護筒44に連結された側部支持部42を支持部外筒35内に進退可能な支持部内筒36を挿入させてその長さを収縮させることで、可動手すり部34を軸部33回りに略水平回動させる際、側部支持部42の長さを縮めた分だけ回転半径が小さくなり、回転のためのスペースが小さく介助者や入浴者等の邪魔にならない。
【0025】
更に、支持部外筒35に対して支持部内筒36を伸縮させたり前部保護筒44を略水平状態と略垂直状態との間に回動させたりする際に、支持部外筒35に設けた略F字形状のガイド溝41によって操作をガイドできるため、可動手すり部34の回動操作と伸縮操作がスムーズで確実である。
更に、前部保護筒44を固定手すり部31と共に略U字状に背もたれ部26を囲うように保持する状態では、支持部内筒36のガイドピン43を第1係止溝部39と第2係止溝部40のいずれかの位置で係止できるため、不用意に動くことを阻止できて安全である。
【0026】
しかも、可動手すり部34の前部保護筒44を入浴者を囲う位置に保持する際、入浴者が老人や子供等小柄な人である場合には、背もたれ部26との間隔が図8に示す比較的狭い位置になるようガイドピン43を第2係止溝部40に係止保持でき、大人や大柄な人である場合には、背もたれ部26との間隔が図2に示す比較的広い位置になるようガイドピン43を第1係止溝部39に係止保持でき、背もたれ部26と前部保護筒44の間隔を選択できる。
【0027】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更可能である。
例えば、上述の実施形態において、入浴用車椅子4の椅子部18の一方の側部に固定手すり部31を取り付け、他方の側部に可動手すり部34を取り付けるようにしたが、入浴者である要介助者の身体の不具合な部分によっては、固定手すり部31と可動手すり部34を左右逆に配設して取り付けてもよい。
【0028】
或いは、左右の側部の支持枠部29に可動手すり部34をそれぞれ取り付けてもよい。この場合には、入浴者が椅子部18に着座し、2つの可動手すり部34で保護した状態で、それぞれの前部保護筒44、44を上下に重ねたり前後にずらすように配設すればよい。
なお、可動手すり部34において、ガイド把持部45はなくても良い。
また、上述した支持部外筒35において、ガイド溝41として主ガイド溝部38の延在方向に略直交する方向に第1係止溝部39と第2係止溝部40を形成したが、いずれか一方の係止溝部だけを設けてもよいし、3つ以上の係止溝部を主ガイド溝部38の長手方向に所定間隔で形成してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 入浴用設備
2 浴槽
4 入浴用車椅子
12 座部
17 台車
18 椅子部
25 頭部
26 背もたれ部
27 座面部
28 サポート部
31 固定手すり部
33 軸部
34 可動手すり部
35 支持部外筒
36 支持部内筒
38 主ガイド溝部
39 第1係止溝部
40 第2係止溝部
41 ガイド溝
42 ガイドピン
44 前部保護筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な台車に着脱可能な着座部を設けた入浴用車椅子において、前記着座部には該着座部に対して外側に回動可能な手すりとして可動手すり部が設けられ、前記可動手すり部は着座部の背もたれ部側から延びる側部支持部と、該側部支持部に接続されていて前記背もたれ部に対向する着座部前方位置まで湾曲または屈曲して延びる回動可能な前部保護部とを備え、前記側部支持部は伸縮可能に形成されていることを特徴とする入浴用車椅子。
【請求項2】
前記側部支持部は、パイプ状に形成されていてその長手方向に沿って延在する主ガイド溝部と該主ガイド溝部から周方向に延びて接続された係止溝部とを有する支持部本体と、該支持部本体に回動可能及び進退可能に挿入されていると共に前記前部保護部に接続された嵌入支持部と、該嵌入支持部に設けられていて前記主ガイド溝部と係止溝部とでガイドされて摺動可能なガイド軸と、を有している請求項1に記載された入浴用車椅子
【請求項3】
前記可動手すり部は、前記前部保護部が前記側部支持部に対して上下方向に回動可能とされ、前記側部支持部は前記着座部から離間する略水平方向に回動可能な軸部を有している請求項1または2に記載された入浴用車椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−66013(P2012−66013A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215514(P2010−215514)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000182373)酒井医療株式会社 (46)
【Fターム(参考)】