説明

全固体電池の製造方法

【課題】簡易な工程で、高アスペクト比の固体電解質層を確実に形成することができ、大容量化及び高速充放電に優れるリチウムイオン二次電池等の電池を実現するための電池用電極を得るための技術を提供。
【解決手段】活物質材料を線状に吐出する第1ノズルを集電体に対して相対移動させて、集電体上に複数本の線状活物質部を形成する線状活物質部形成工程と、第1電解質材料を線状に吐出する第2ノズルを集電体に対して相対移動させて、複数本の線状活物質部上のそれぞれに線状電解質部を形成して線状活物質・電解質部を形成する第1電解質層塗布工程と、線状電解質部に光を照射して硬化させる光硬化工程と、線状活物質・電解質部全体と、集電体上における線状活物質・電解質部の間と、に、第2電解質材料を塗布して第2電解質層を形成する第2電解質層塗布工程と、を含む全固体電池の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウムイオン二次電池等の全固体電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
正極、負極、電解質(固体電解質)及びセパレータ等で構成されているリチウムイオン二次電池は、軽量、大容量かつ高速充放電可能であるため、現在、ノートパソコンや携帯電話等のモバイル機器や自動車等の分野において広く普及しているが、更なる大容量化及び高速充放電のために、様々な研究がなされている。
【0003】
この大容量化及び高速充放電のためには、正極及び負極にそれぞれ含まれる正極活物質及び負極活物質と電解質との反応が律速となるところ、電解質のリチウムイオン伝導度が低いため、正極と負極との間隔をできるだけ狭く、かつ、正極及び負極の電極面積をできるだけ大きくすること、特に正極活物質及び負極活物質と電解質との接触面積を増大させることが重要である。
【0004】
この点に着目し、例えば、特許文献1(特開2011−70788号公報)においては、低コスト、高安全性、高エネルギー密度・高出力を実現する全固体電池構造を提供することを意図して、凹凸構造を有する活物質層を含む3次元構造の電極を有する全固体電池の製造方法が提案されている。
【0005】
即ち、上記特許文献1においては、基材の表面に第1の活物質を含む塗布液を塗布して所定の凹凸パターンを有する第1活物質層を形成する第1活物質層形成工程と、前記第1活物質層形成工程の後に、前記基材の表面に前記第1活物質層が積層されてなる積層体の表面に高分子電解質を含む塗布液を塗布して、該積層体表面の前記凹凸パターンに略追従した凹凸を有する固体電解質層を形成する固体電解質層形成工程と、固体電解質層形成工程の後に、前記固体電解質層の表面に第2の活物質を含む塗布液を塗布して、前記固体電解質層と接する面と反対側の面が略平坦な第2活物質層を形成する第2活物質層形成工程とを備えることを特徴とする全固体電池の製造方法が提案されている(特許文献1、請求項1等を参照)。
【0006】
ところで、従来の固体(高分子)電解質を用いたリチウムイオン二次電池を作製する場合、まず、集電体上に負極活物質材料又は正極活物質材料を塗布し、真空中、90℃付近で約5時間、充分に乾燥させる。その後、その上に、重合性電解質モノマーとリチウム塩とを含む電解質の前駆体膜を形成し、100℃付近に加熱することにより、乾燥及び重合反応を行ってゲル状の電解質膜を形成する。ついで、対極となる活物質を塗布・乾燥した後、集電体を形成し、リチウムイオン二次電池を作製する。
【0007】
このような従来のリチウムイオン二次電池の作製方法においては、重合性電解質モノマーの重合は、略平坦な活物質層の表面上で行われるため、加熱を伴う重合反応の際に流動性を呈したとしても、冷却後は平坦で略均一な固体電解質層を得ることができ、特段の問題はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−70788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1において提案されている技術においても、高アスペクト比の固体電解質層を形成することが可能であるものの、凹凸パターンを有する第1活物質層の表面上に固体電解質層を形成しなければならないところ、第1活物質層の凹凸パターンに追従した前駆体膜を形成しても、電解質は熱可塑性を有するため、加熱を伴う重合反応の際に流動性を呈してしまい、凹部に多量の電解質が流れ込んだ状態で固体電解質層が形成されてしまい、低アスペクト比の固体電解質層が形成されてしまうおそれがある。その結果、得られた固体電解質層と第2活物質層との接触面積が低減し、大容量化及び高速充放電といった電池性能を損なってしまうという問題が発生する。
【0010】
そこで、本発明の目的は、簡易な工程で、高アスペクト比の固体電解質層をより確実に形成することができ、大容量化及び高速充放電に優れるリチウムイオン二次電池等の全固体電池を実現するための電池用電極を得るための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく、本発明者らは、
活物質材料を線状に吐出する第1ノズルを集電体に対して相対移動させて、前記集電体上に複数本の線状活物質部を形成する線状活物質部形成工程と、
第1電解質材料を線状に吐出する第2ノズルを前記集電体に対して相対移動させて、前記複数本の線状活物質部上のそれぞれに線状電解質部を形成して線状活物質・電解質部を形成する第1電解質層塗布工程と、
前記線状電解質部に光を照射して硬化させる光硬化工程と、
前記線状活物質・電解質部全体と、前記集電体上における前記線状活物質・電解質部の間と、に、第2電解質材料を塗布して第2電解質層を形成する第2電解質層塗布工程と、
を含むこと、
を特徴とする全固体電池の製造方法を提供する。
【0012】
本発明の全固体電池の製造方法によれば、個々の線状活物質部上に線状電解質部を形成し、前記線状電解質部に光を照射して一旦硬化させ、ついで、線状活物質・電解質部の表面全体と、線状活物質・電解質部の間と、の全体を覆う第2電解質層を形成し、電解質部と第2電解質層とで構成された固体電解質層を有する全固体電池を製造する。したがって、加熱を伴う重合反応を経ても、高アスペクト比の固体電解質層を確実に形成することができ、第2活物質層との接触面積を低減させることなく、大容量化及び高速充放電といった電池性能に優れる全固体電池を得ることができる。
【0013】
上記本発明の全固体電池の製造方法においては、前記第1電解質層塗布工程を実行しつつ、前記光硬化工程を実行すること、が好ましい。
【0014】
このような構成を有する本発明の全固体電池の製造方法においては、線状活物質・電解質部を形成する第1電解質層塗布工程及び光硬化工程を同時に行うことにより、製造時間を短縮することができる。
【0015】
また、上記本発明の全固体電池の製造方法においては、前記第1電解質材料と前記第2電解質材料とが同じ組成を有していても異なる組成を有していてもよいが、同じ組成を有しているのが好ましい。
【0016】
このような構成を有する本発明の全固体電池の製造方法においては、第1電解質材料に加えて別途の第2電解質材料を準備する必要が無く、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0017】
また、上記本発明の全固体電池の製造方法においては、前記第2電解質層塗布工程を、スプレー法又はスピンコート法で行うこと、が好ましい。
【0018】
このような構成を有する本発明の全固体電池の製造方法によれば、前記線状活物質・電解質部全体と、前記集電体上における前記線状活物質・電解質部の間と、を覆う固体電解質層を簡単な工程により確実に形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡易な工程で、高アスペクト比の固体電解質層をより確実に形成することができ、大容量化及び高速充放電に優れるリチウムイオン二次電池等の全固体電池を実現するための電池用電極を得るための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態において製造されるリチウムイオン二次電池の概略縦断面図である。
【図2】本発明の一実施形態において負極集電体10の表面に負極活物質材料からなる複数本の線状負極活物質部12を形成した構造体(負極)20の概略縦断面図である。
【図3】本発明の一実施形態において、ノズルディスペンス法により複数本の線状負極活物質部からなる負極活物質層12を形成する様子を示す模式図である。
【図4】本発明の一実施形態において、負極集電体10の表面に複数本の線状負極活物質部からなる負極活物質層12上に、線状電解質部14aを形成し、活物質・電解質部13を形成した構造体22の概略縦断面図である。
【図5】本発明の一実施形態において、ノズルディスペンス法により線状負極活物質部12上に、線状電解質部14aを形成しながら、線状電解質部14aに光を照射して硬化させる様子を示す模式図である。
【図6】本発明の一実施形態において、線状活物質・電解質部13の表面全体と、負極集電体10上における線状電解質部14aの間と、に、第2電解質材料を塗布して第2電解質層14bを形成した構造体24の概略縦断面図である。
【図7】本発明の一実施形態において、スピンコート法を用いて第2電解質材料を塗布して第2電解質層14bを形成する様子を模式的に示す図である。
【図8】本発明の一実施形態において、ドクターブレード法を用いて、正極活物質層16を形成する様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の全固体電池の製造方法の実施形態について説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために、必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。
【0022】
本実施形態では、図1に示す構造のリチウムイオン二次電池を製造する場合について本発明を説明する。図1は、本発明の一実施形態において製造されるリチウムイオン二次電池の概略縦断面図である。また、図2は、本発明の一実施形態において負極集電体10の表面に負極活物質材料からなる複数本の互いに略平行な線状負極活物質部12aを形成した構造体(負極)20の概略縦断面図である。
【0023】
本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、図1に示すように、負極集電体10の上に複数本の線状負極活物質部12aからなる負極活物質層12、固体電解質層14、正極活物質層16及び正極集電体18をこの順番に積層した構造を有している。負極集電体10と負極活物質層12とが負極を構成し、固体電解質層14は、線状電解質部14aと第2電解質層14bとで構成されている。
【0024】
線状電解質部14aは、負極活物質層12を構成する複数本の線状負極活物質部12a上にそれぞれ形成され、線状負極活物質部12aと線状電解質部14aからなる線状負極活物質・電解質部13(図4を参照)と、負極集電体10の表面の露出部分と、の全体を覆うように第2電解質層14bが形成されている。そして、線状電解質部14aと第2電解質層14bとが固体電解質層14を構成している。正極活物質層16と正極集電体18とが正極を構成する。本明細書においては、X、Y及びZ座標方向を各図に示すように定義する。なお、図4に示すように、複数本の線状電解質部14aは、負極集電体10の面に略平行な方向からみた場合に、第1電解質層14Aを構成する。
【0025】
複数本の線状負極活物質部12aで構成される負極集電体10としては、本発明の属する技術分野において公知の材料を用いることができるが、例えばアルミニウム箔等の金属膜であればよい。また、図示しないが、この負極集電体10は、絶縁性の基材の表面に形成されていてもよい。かかる基材としては絶縁性材料で形成された平板状部材を用いればよく、かかる絶縁性材料としては、例えば樹脂、ガラス又はセラミックス等が挙げられる。また、基材は可撓性を有するフレキシブル基板であってもよい。
【0026】
負極活物質層12は、図1(及び図3)に示すように、負極集電体10上においてY方向に沿って延びるように形成された複数本の線状活物質部12で構成されている。負極活物質層12に含まれる負極活物質としては、本願発明の技術分野で常用されるものを使用でき、例えば、金属、金属繊維、炭素材料、酸化物、窒化物、珪素、珪素化合物、錫、錫化合物、各種合金材料等が挙げられる。これらのなかでも、容量密度の大きさ等を考慮すると、酸化物、炭素材料、珪素、珪素化合物、錫、錫化合物等が好ましい。酸化物としては、例えば、式:Li4/3Ti5/3−xFe(0≦x≦0.2)で表されるチタン酸リチウム等が挙げられる。炭素材料としては、例えば、各種天然黒鉛(グラファイト)、コークス、黒鉛化途上炭素、炭素繊維、球状炭素、各種人造黒鉛、非晶質炭素等が挙げられる。珪素化合物としては、例えば、珪素含有合金、珪素含有無機化合物、珪素含有有機化合物、固溶体等が挙げられる。珪素化合物の具体例としては、例えば、SiO(0.05<a<1.95)で表される酸化珪素、珪素とFe、Co、Sb、Bi、Pb、Ni、Cu、Zn、Ge、In、Sn及びTiから選ばれる少なくとも1種の元素とを含む合金、珪素、酸化珪素又は合金に含まれる珪素の一部がB、Mg、Ni、Ti、Mo、Co、Ca、Cr、Cu、Fe、Mn、Nb、Ta、V、W、Zn、C、N及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素で置換された珪素化合物又は珪素含有合金、これらの固溶体等が挙げられる。錫化合物としては、例えば、SnO(0<b<2)、SnO、SnSiO、NiSn、MgSn等が挙げられる。負極活物質は1種を単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
また、負極活物質層12は、導電助剤を含んでいてもよい。導電助剤としては、本発明の技術分野で常用されるものを使用でき、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛等のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛等の導電性ウィスカー類、酸化チタン等の導電性金属酸化物、フェニレン誘導体等の有機導電性材料等が挙げられる。導電剤は1種を単独で使用でき又は必要に応じて2種以上を組み合わせて使用できる。
【0028】
負極活物質層12を構成する複数本の線状負極活物質部12aの上側には、図1に示すように、線状負極活物質部12aと線状電解質部14aとからなる複数本の線状負極活物質・電解質部13を覆う第2電解質層14bが形成されている。この第2電解質層14bと線状電解質部14aとで固体電解質層14が構成されている。
【0029】
固体電解質層14は、線状電解質部14aによって、高アスペクト比を実現している。そして、第2電解質層14bによって、負極活物質層12の表面の凹凸に追従するように負極活物質層12及び線状電解質部14aの略全体を一様に覆っており、したがって、固体電解質層14の表面も凹凸形状を有している。
【0030】
固体電解質層14に含まれる固体電解質としては、例えば、ポリエチレンオキシド及び/又はポリスチレン等の樹脂等の高分子電解質モノマー材料が挙げられ、支持塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、過塩素酸リチウム(LiClO)及びリチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(LiTFSI)等のリチウム塩等が挙げられる。ホウ酸エステルポリマー電解質を用いてもよい。
【0031】
本実施形態においては、後述するように、固体電解質層14を構成する線状電解質部14a及び第2電解質層14bの形成に用いる第1電解質材料及び第2電解質材料に、光硬化性樹脂が含まれている。もちろん、本発明の効果を損なわない範囲で、種々の添加剤を混合してもよい。
【0032】
固体電解質層14の上側には、図1に示すように、正極活物質層16が設けられている。正極活物質層16の下面側は固体電解質層14上面の凹凸に沿った凹凸形状を有するが、その上面側は略平坦形状を有する。
【0033】
正極活物質層16が含む正極活物質(粉末)としては、例えば、リチウム含有複合金属酸化物、カルコゲン化合物、二酸化マンガン等が挙げられる。リチウム含有複合金属酸化物は、リチウムと遷移金属とを含む金属酸化物又は該金属酸化物中の遷移金属の一部が異種元素によって置換された金属酸化物である。ここで、異種元素としては、例えば、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、B等が挙げられ、Mn、Al、Co、Ni、Mg等が好ましい。異種元素は1種でも又は2種以上でもよい。これらのなかでも、リチウム含有複合金属酸化物を好ましく使用できる。リチウム含有複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiCoNi1−y、LiCo1−y、LiNi1−y、LiMn、LiMn2−y、LiMPO、LiMPOF(前記各式中、例えば、MはNa、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、V及びBよりなる群から選ばれる少なくとも1種。0<x≦1.2、0<y≦0.9、2.0≦z≦2.3)、LiMeO(式中、Me=MxMyMz;Me及びMは遷移金属、x+y+z=1)等が挙げられる。リチウム含有複合金属酸化物の具体例としては、例えば、LiNi1/3Mn1/3Co1/3、LiNi0.8Co0.15Al0.05等が挙げられる。ここで、上記各式中リチウムのモル比を示すx値は、充放電により増減する。また、カルコゲン化合物としては、例えば二硫化チタン、二硫化モリブデン等が挙げられる。正極活物質は1種を単独で使用でき2種以上を併用してもよい。正極活物質層16には、負極活物質層12に関して上記に記載した導電助剤を含めてもよい。
【0034】
このように略平坦形状を有する正極活物質層16の上面側には、正極集電体18が積層されており、これによってリチウムイオン二次電池1が形成されている。正極集電体18としては、本発明の属する技術分野において公知の材料を用いることができるが、例えば銅箔等の金属膜であればよい。また、図示しないが、この正極集電体18は、絶縁性の基材の表面に形成されていてもよい。かかる基材としては絶縁性材料で形成された平板状部材を用いればよく、かかる絶縁性材料としては、例えば樹脂、ガラス又はセラミックス等が挙げられる。また、基材は可撓性を有するフレキシブル基板であってもよい。
【0035】
なお、このリチウムイオン電池二次電池1には、図示しないが、適宜タブ電極が設けられていてもよく、また、複数のリチウムイオン電池二次電池1を直列及び/又は並列に接続してリチウムイオン二次電池装置としてもよい。
【0036】
このような構造を有する本実施形態のリチウムイオン二次電池は、薄型で折り曲げ容易である。また、負極活物質層12を図示したような凹凸を有する立体的構造として、その体積に対する表面積を大きくしているので、薄い固体電解質層14を介した正極活物質層16と対向する接触面積を大きく確保でき、高効率・高出力が得られる。このように、本実施形態のリチウムイオン二次電池1は小型で高性能である。
【0037】
次に、上記した本実施形態における電極及びリチウムイオン二次電池1を製造する方法について説明する。本実施形態のリチウムイオン二次電池1を製造する際には、負極集電体10に複数本の線状負極活物質部12aからなる負極活物質層12を形成して負極を製造し、線状負極活物質部12aそれぞれの上面に線状電解質部14aを形成し、線状電解質部14aを一旦光硬化させた後、負極活物質層12及び線状電解質部14aからなる線状負極活物質・電解質部13全体と、負極集電体10の表面の露出部分と、に第2電解質材料を塗布して第2電解質層14bを形成する。
【0038】
(1)線状負極活物質部(負極活物質層)形成工程
まず、本実施形態における負極活物質層12の製造方法について説明する。本実施形態の負極活物質層12は、負極活物質材料を線状に吐出する第1ノズルを負極集電体10に対して相対移動させ、負極集電体10上に複数本の線状負極活物質部12aを形成することにより形成する。これにより、図2に示すように、負極集電体10の表面に負極活物質材料からなる複数本の線状負極活物質部12aで形成された負極活物質層12を有する構造体(負極)20が得られる。
【0039】
まず、図3に示すように、例えばシート状の負極集電体10が、例えば搬送ローラ(図示せず。)によって矢印Yの方向に搬送されることにより、第1ノズル40を負極集電体10に対して相対移動させる(したがって、これらローラは走査手段ともいえる。)。
【0040】
搬送される負極集電体10の表面には、第1ノズル40から、ペースト状の負極活物質材料が間隔をおいて複数本の線状負極活物質部12aを形成するように吐出される。本実施形態においては、第1ノズル40の位置は固定されており、負極集電体10が搬送されることにより、第1ノズル40が負極集電体10に対して相対移動される。
【0041】
ペースト状の負極活物質材料は、上記負極活物質と、上記導電助剤と、結着材と、溶剤等と、を常法により攪拌・混合(混練)して得られる混合物で構成され、第1ノズル40から吐出できるように種々の粘度を有することができるが、本実施形態においては、例えば、せん断速度1s−1で、下限10Pa・s、上限10000Pa・s程度であるのが好ましい。なお、各成分は溶剤に溶解していても分散していてもよい(一部が溶解して残部が分散している場合も含む。)。
【0042】
また、負極活物質層形成工程に用いる負極活物質材料の固形分割合は、負極活物質材料が第1ノズル40から吐出できるように種々の固形分割合を有することができる。これらの粘度及び固形分割合は、負極活物質、導電助剤、結着材及び溶剤等の成分の種類や配合量、寸法又は形状等によっても異なるが、上記負極活物質と、上記導電助剤と、結着材と、溶剤等と、を常法により攪拌・混合(混練)する際の混練時間の長さによって、調整することができる。
【0043】
結着剤としては、本発明の技術分野で常用されるものを使用でき、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルホン、ポリヘキサフルオロプロピレン、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンジエン共重合体、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。また、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエン等から選ばれるモノマー化合物の共重合体を結着剤として用いてもよい。結着剤は1種を単独で使用でき又は必要に応じて2種以上を組み合わせて使用できる。
【0044】
溶剤としては、固体電解質層14を構成する六フッ化リン酸リチウム(LiPF)等を分解しないように、水を除く有機溶媒を用いるのが好ましい。かかる有機溶媒としては、本発明の技術分野で常用されるものを使用でき、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルアミン、アセトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。有機溶媒は1種を単独で使用でき又は2種以上を混合して使用できる。
【0045】
ここで、図3の(a)は、負極活物質層12を構成する複数本の線状(凸条状)負極活物質部12aが形成される様子を模式的に示す側面図(即ち、搬送される負極集電体10の主面に対して略平行な方向からみた場合にみえる図)であり、図3の(b)は、負極活物質層12を構成する線状負極活物質部12aが形成される様子を模式的に示す斜視図である。
【0046】
このノズルディスペンス法では、塗布液である負極活物質材料を吐出するための吐出口が複数設けられた第1ノズル40を、負極集電体10上方に配置し、その吐出口から一定量の負極活物質材料を吐出させながら、負極集電体10を第1ノズル40に対して相対的に矢印Yの方向に一定速度で搬送させる。こうすることで、負極集電体10上には、Y方向に沿って負極活物質材料からなる複数本の線状負極活物質部12aが形成されてストライプ状のパターンとなるように塗布される。
【0047】
第1ノズル40に複数の吐出口を設ければ複数本の線状負極活物質部12aが形成されてストライプ状とすることができ、負極集電体10の搬送を続けることにより、負極集電体10の全面にストライプ状に線状負極活物質部12aを形成することができる。
【0048】
ここで、負極活物質層12は、まだ溶剤等を含むいわば塗布膜の状態であるため、負極活物質層12が設けられた負極集電体10は、乾燥手段である送風機等の下側領域を通り抜けるように搬送され、ドライエアーによって乾燥工程が実施されてもよい。このような乾燥工程を経て、又は経ずに、図2に示す構造体(即ち、負極集電体10と、負極集電体10の表面に形成された負極活物質層12と、を含む構造体)20が得られる。
【0049】
なお、乾燥工程の乾燥温度は、負極活物質層12を乾燥させてその形状を仮固定させ得る範囲であればよく、例えば5℃〜50℃の範囲内、好ましくは常温(23℃)〜50℃の範囲内の温度であればよい。また、乾燥工程の乾燥時間は、負極集電体10の搬送速度によって制御することもできる。
【0050】
(2)第1電解質層塗布工程
上記のように負極活物質層12を形成した負極集電体10に対し、第1電解質材料を線状に吐出する第2ノズルを相対移動させ、負極活物質層12を構成する複数本の線状負極活物質部12a上に、それぞれ線状電解質部14aを形成する。
【0051】
これにより、図4に示すように、負極集電体10の表面に形成された負極活物質層12を構成する線状負極活物質部12a上に、線状電解質部14aが形成され、線状負極活物質・電解質層部13を有する構造体22が得られる。
【0052】
このような線状電解質部14aの形成は、上記負極活物質層12を構成する複数本の線状負極活物質部12aと同様に、図5に示すように、第2ノズル50を用いたノズルディスペンス法により行う。また、ここで用いる第1電解質材料は、上記した固体電解質モノマー及び支持塩と、光硬化性樹脂と、を含んでいる。第1電解質材料の組成については、本発明の効果を損なわない範囲で適宜調整すればよい。
【0053】
ここで、「光硬化性樹脂」とは、紫外光及び/又は青色光等の電磁波を照射されることによって硬化する有機化合物のことをいい、従来の感光性有機化合物を含む概念であり、例えば光硬化性モノマー及び/又は光硬化性樹脂を含む。
【0054】
上記光硬化性モノマー及び光硬化性樹脂としては、例えば、分子内に紫外線重合(架橋)性の炭素−炭素二重結合(例えば、エチレン性不飽和二重結合)を少なくとも1個又は2個以上有して3次元網状化し得る単官能性又は多官能性の紫外線硬化性有機化合物等を挙げることができる。これらの化合物は、1種を単独で用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0055】
なかでも、光硬化性有機化合物としては、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する紫外線硬化性モノマー(アクリレート化合物又はメタクリレート化合物)が挙げられ、アクリレート化合物又はメタクリレート化合物で単官能性化合物としては、例えば、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、アリルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、3,3,5トリメチルシクロヘキサンアクリレート及び上記アクリレート(又はアクリル酸)をメタクリレート(又はメタクリル酸)に置き換えた化合物等が挙げられる。
【0056】
アクリレート化合物又はメタクリレート化合物で2官能基以上の多官能性化合物としては、例えば、1,3−ブチレンジールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、プロピレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリアクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオ−ルジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及び上記アクリレートをメタクリレートに置き換えた化合物等が挙げられる.
【0057】
(3)光硬化工程
本実施形態においては、上記の線状負極活物質・電解質部形成工程を実行しつつ、図5に示すように、第2ノズル50から吐出された線状電解質部14aに光照射装置52から光を照射する工程を実行し、線状電解質部14aを一旦硬化させる。
【0058】
光照射装置52としては、光硬化性樹脂の種類に応じて、例えばUV光照射装置等を用いることができる。光の照射時間や照射量については、光硬化性樹脂の種類や量に応じて、当業者であれば適宜調整することができる。
【0059】
(4)第2固体電解質層塗布工程
次に、図4に示すような線状負極活物質・電解質部13全体と、負極集電体10の表面の露出部分と、に第1電解質材料と同じ第2電解質材料を塗布し、これにより、図6に示すような第2電解質層14bを形成し、線状電解質部14a及び第2電解質層14bからなる固体電解質層14を形成する。
【0060】
この工程における第2電解質層14bの形成は、従来公知の方法を採用することができ特に制限されるものではないが、本実施形態においては、例えばスピンコート法によって第1電解質材料と同じ第2電解質材料を塗布して第2電解質層14bを形成し、固体電解質層14を形成する。
【0061】
図7は、本実施形態において、スピンコート法による第2電解質材料の塗布の様子を模式的に示す図である。図7に示すように、負極集電体10上に、負極活物質層12を構成する線状負極活物質部12aと、その上に形成された線状電解質部14aと、を有する構造体22(線状負極活物質・電解質層部13を有する構造体22)は、鉛直方向(Z方向)の回転軸周りを所定の回転方向Drに回転自在の回転ステージ60に略水平に載置される。
【0062】
したがって、本実施形態においては、シート状の負極集電体10上に、線状負極活物質部12aと、その上にそれぞれ形成された線状電解質部14aと、を有する構造体22を、回転ステージ60に載置し、第2電解質層14bを形成することによって固体電解質層14を形成する。
【0063】
回転ステージ60が所定の回転速度で回転し、回転ステージ60の回転軸上の上部位置に設けられたノズル62から、塗布液であるペースト状の第2電解質材料64が負極20に向かって吐出される。線状負極活物質・電解質部13の上面に滴下された第2電解質材料は、回転する回転ステージ60の遠心力によって周囲に次第に広がり、余分な第2電解質材料は線状負極活物質・電解質部13の端部から飛ばされる。
【0064】
このような機構により、線状負極活物質・電解質部13の上面は第2電解質材料によって薄く均一に覆われ、これを乾燥硬化させることで、第2電解質層14bを形成し、これによって線状電解質部14a及び第2電解質層14bからなる固体電解質層14を形成することができる。用いる第2電解質材料の組成、粘度及び固形分割合、並びに乾燥硬化の条件については、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知の方法に従って適宜選択すればよい。
【0065】
スピンコート法では、第2電解質材料の粘度及び回転ステージ60の回転速度によって、得られる固体電解質層14の膜厚を制御することができ、また、本実施形態における負極活物質・電解質部13のように表面に凹凸を有する被塗布物に対しても、当該凹凸に沿って膜厚の均一な薄膜状の第2電解質層14bを形成することができる。
【0066】
なお、固体電解質層14の厚さについては、任意ではあるが、負極活物質層12と正極活物質層16とが確実に分離され、また、内部抵抗が高くなり過ぎない厚さであればよい。また、この固体電解質層形成工程を実行する際、同時に、上記と同様に光を照射して、第2電解質層14bを形成と同時に光硬化させてもよい。
【0067】
(3)正極
上記のように形成された負極集電体10、負極活物質層12及び固体電解質層14を積層してなる積層体24(図6参照)の上面に、正極活物質層16を形成する方法については、従来公知の方法を採用することができ特に制限されるものではないが、本実施形態においては、図8に示すように、例えばドクターブレード法によってペースト状の正極活物質材料を塗布して正極活物質層16を形成する。
【0068】
正極活物質材料としては、上記した正極活物質、導電助剤、結着剤及び溶剤等を攪拌・混合(混練)して得られるものを用いることができるが、用いる正極活物質材料の組成、粘度及び固形分割合、並びに乾燥硬化の条件については、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知の方法に従って適宜選択すればよい。
【0069】
図8はドクターブレード法による正極活物質材料の塗布の様子を模式的に示す図である。より詳しくは、図8の(a)は、ドクターブレード法によって構造体24の上面に正極活物質材料が塗布されて正極活物質層16が形成される様子を模式的に示す側面図(即ち、負極活物質層12を有する負極集電体10の主面に対して略平行な方向からみた場合にみえる図)であり、図8の(b)は、正極活物質材料が塗布されて正極活物質層16が形成される様子を模式的に示す斜視図である。
【0070】
正極活物質材料を吐出するノズル72は、構造体24に対して相対的に矢印Yで示される方向に走査移動される。ノズル72の移動方向Yにおいて、ノズル70の後方側にはドクターブレード74が取り付けられており、ドクターブレード74の下端は、積層体70の上面に形成された固体電解質層14よりも上方位置で、吐出された正極活物質材料の上面に接触するため、これにより上面が平坦な正極活物質層16を得ることができる。
【0071】
この工程で用いるノズル72としては、図3に示した第1ノズル40のように多数の吐出口を有するノズルであってもよいし、移動方向Yに直交する方向(即ち矢印Xの方向)に延びるスリット状の吐出口を有するノズルであってもよい。
【0072】
このようにして、正極活物質材料を構造体24に塗布することにより、下面が固体電解質層14の凹凸に沿った凹凸を有し、上面が略平坦な正極活物質層16を、構造体24の上面に形成することができる。
【0073】
上記のようにして形成された正極活物質層16の上面に、正極集電体18を積層することにより、図1に示す構造を有する本実施形態のリチウムイオン二次電池1を得ることができる。正極集電体18としては、従来公知の材料を用いることができ、例えばアルミニウム箔等の金属箔を用いることができる。
【0074】
このとき、上記正極活物質層16が硬化しないうちに正極集電体18を積層すると、正極活物質層16と正極集電体18とを互いに密着させて接合することができ、好ましい。また、正極活物質層16の上面は略平坦であるため、正極集電体18を隙間なく積層することができる。
【0075】
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、乾燥工程を送風機により実施する場合について説明したが、送風機を用いずに自然乾燥させてもよく、また、真空乾燥を行ってもよい。
【0076】
本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、各工程において適用する塗布方法は上記に限定されるものではなく、当該工程の目的に適うものであれば他の塗布方法を適用してもよい。
【0077】
例えば、上記実施形態においては、負極活物質層12を構成する複数本の線状負極活物質部12aの上にそれぞれ線状電解質部14aを形成し、その後に全体を覆うように第2電解質層14bを形成する場合について説明したが、正極活物質層を構成する複数本の線状正極活物質部を形成し、その上にそれぞれ線状電解質部を形成し、その後に全体を覆うように第2電解質層を形成してもよい。
【0078】
また、例えば、上記した実施形態では、第2電解質層14bを形成するのにスピンコート法を適用しているが、塗布対象面の凹凸に追従した薄膜を形成することのできる方法であれば他の方法、例えばスプレーコート法によって第2電解質材料を塗布してもよい。
【0079】
また、例えば、上記実施形態では、正極活物質層16を形成するのにドクターブレード法を適用しているが、塗布対象面と接する下面がその凹凸に追従し、かつ上面を略平坦に仕上げることが可能な塗布方法であれば他の方法であってもよい。このような目的を達成するには正極活物質材料の粘度があまり高くないことが望ましいが、言い換えれば、正極活物質材料の粘度が適切に選ばれていればドクターブレードを用いなくても下面を凹凸にかつ上面を略平坦に仕上げることは可能であり、例えばノズルディスペンス法やスリットコート法、バーコート法等で塗布してもよい。
【符号の説明】
【0080】
1・・・リチウムイオン二次電池、
10・・・負極集電体、
12・・・負極活物質層、
12a・・・線状負極活物質部、
14・・・固体電解質層、
14a・・・線状電解質部、
14A・・・第1電解質層、
14b・・・第2電解質層、
16・・・正極活物質層、
18・・・正極集電体、
20、22、24・・・構造体、
60・・・回転ステージ、
62・・・ノズル、
64・・・第2電解質材料、
70・・・構造体24、
72・・・ノズル、
74・・・ドクターブレード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質材料を線状に吐出する第1ノズルを集電体に対して相対移動させて、前記集電体上に複数本の線状活物質部を形成する線状活物質部形成工程と、
第1電解質材料を線状に吐出する第2ノズルを前記集電体に対して相対移動させて、前記複数本の線状活物質部上のそれぞれに線状電解質部を形成して線状活物質・電解質部を形成する第1電解質層塗布工程と、
前記線状電解質部に光を照射して硬化させる光硬化工程と、
前記線状活物質・電解質部全体と、前記集電体上における前記線状活物質・電解質部の間と、に、第2電解質材料を塗布して第2電解質層を形成する第2電解質層塗布工程と、
を含むこと、
を特徴とする全固体電池の製造方法。
【請求項2】
前記第1電解質層塗布工程を実行しつつ、前記光硬化工程を実行すること、
を特徴とする請求項1に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項3】
前記第1電解質材料と前記第2電解質材料とが同じであること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項4】
前記第2電解質層塗布工程を、スプレー法又はスピンコート法で行うこと、
を特徴とする請求項1〜3のうちのいずれかに記載の全固体電池の製造方法。










【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−41769(P2013−41769A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178697(P2011−178697)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】