説明

全血中の分子または薬物の検出のための診断検査

本発明は、細胞内リガンドによって結合されている分析物を検出するためのアッセイにおいて用いるための検査試料を調製する方法を提供する。この方法は、溶解試薬、および前記細胞内リガンドに対してタンパク質分解活性を有するプロテアーゼを含むアッセイ試薬と検査試料を接触させて、引き続く抽出ステップ無しに免疫アッセイで用いるのに適合する混合物を形成することを典型的に伴う。本発明の他の態様は、関連の免疫アッセイおよび検査キットを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アッセイ前に生物学的試料を凍結または貯蔵することによって生成される試料の偏りを低減または排除するための、診断アッセイ用の試料の調製における1つ以上のプロテアーゼの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床対象となる分析物の多くは細胞によって吸収され、または検査試料の1つ以上の他の成分と複合されるようになる。したがって、試料に存在する分析物の量の正確な測定を得るには、分析物がアッセイにおいて検出されるために細胞または他の成分から放出されるような条件下で、試料を処理し、および/またはアッセイを行う必要がある。
【0003】
例えば、タクロリムス、エベロリムス、テムソロリムス(temsorolimus)およびシクロスポリンなどの免疫抑制薬は、移植手術後の臓器または組織の拒絶反応の処置、移植片対宿主病の処置、およびヒトにおける自己免疫疾患の処置に効果的である。免疫抑制薬治療の間、免疫抑制薬の血中濃度レベルをモニターするのは臨床ケアの重要な局面であり、その理由は不十分な薬物レベルは移植片(臓器または組織)の拒絶反応をもたらし、過剰な薬物レベルは望ましくない副作用および毒性をもたらすからである。したがって、免疫抑制薬の血中レベルが測定され、そこで好適な濃度の薬物レベルを維持するように薬物投与量が調節され得る。免疫抑制薬の血中レベルを決定するための診断アッセイは、このように広範な臨床の使用を見出している。
【0004】
最初に、免疫抑制薬が抽出され、患者の試料の他の成分から分離されなければならない。患者の試料における免疫抑制剤の大部分は、結合タンパク質など、様々な「担体」分子との複合体において存在する。シロリムス、タクロリムスおよびシクロスポリンは、患者検体の赤血球に優勢に見出され、シロリムスおよびタクロリムスではFKBP、およびシクロスポリンではシクロフィリンである、特異的な結合タンパク質に関連している。検体における全薬物濃度を確実に正確に測定するには、結合タンパク質に結合している薬物が定量前に遊離されることが好ましい。これは、細胞を溶解するための界面活性剤、および/または試料のタンパク質を変性するための有機溶剤を用いることによって取り組まれている。
【0005】
結合タンパク質から薬物を抽出した後、薬物は、吸光度または質量分析の検出と一緒の免疫アッセイまたはクロマトグラフィーを含めた数々の異なる方法において測定され得る。免疫抑制薬に対する免疫アッセイは様々なフォーマットにおいて利用可能であるが、全てが、免疫抑制薬に対する抗体または結合タンパク質(例えば、FKBP)の結合を用いている。一般的に用いられている免疫アッセイは、第1の抗体の免疫抑制薬への結合、および標識された免疫抑制薬(例えばアクリジニウム−シロリムス)の残りの遊離の抗体結合性部位への結合、および引き続く標識の検出による定量を伴うアッセイである。
【発明の概要】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、1つ以上のプロテアーゼが、非溶解の新鮮な試料(例えば、患者の血液試料)全体を用いたものと凍結−解凍溶解した試料(例えば、標準物質希釈液)の間に観察される分析物(例えば、薬物)濃度の偏りを解決するために、調製物(例えば、免疫アッセイ用の)中に組み込まれ得るという知見に関する。プロテアーゼは、結合タンパク質が時間とともにタンパク質分解し、したがってそのリガンド(分析物)に対する親和性を変更し、これは次に診断アッセイにおいて検出されるリガンドの濃度を変更する診断アッセイ用の試料の調製において特に有用であるということも見い出された。
【0007】
したがって、ある実施形態において、本発明は、細胞内リガンドによって結合されている分析物を検出するためのアッセイにおいて用いるための検査試料を調製する方法を提供する。この方法は、溶解試薬(または1つ以上のその成分)を含むアッセイ試薬および細胞内リガンドに対してタンパク質分解活性を有するプロテアーゼと前記検査試料(例えば、生物学的試料)を接触させて、引き続く抽出ステップ無しに免疫アッセイで用いるのに適合する混合物を形成することを典型的に伴う。様々な実施形態において、検査試料は全血または血液分画(例えば、血清)を含む。様々な実施形態において、検査試料はヒト血液(例えば、免疫抑制薬で処置したヒトからの血液)を含む。様々な実施形態において、プロテアーゼはセリンプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、チオプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼおよびグルタミン酸プロテアーゼからなる群から選択される。ある実施形態において、プロテアーゼは、プロテイナーゼK、ディスパーゼおよびトリプシンからなる群から選択される。様々な実施形態において、溶解試薬は、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびこれらの類似体からなる群から選択されるグリコール、ならびに5個以下の炭素を有する少なくとも1種のアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなど)を含む。ある実施形態において、グリコール対アルコールの比率は約4:1から約1:4まで、より好ましくは約4:1から約1:2までの範囲にある。ある実施形態において、検査試料は、約2:1から約1:10までの、好ましくは約2:1から約1:5までの、より好ましくは約2:1から約1:2までの範囲の比率の試料:溶解試薬の混合物を形成するように、溶解試薬(または溶解試薬の成分)に加えられる。ある実施形態において、この方法は、試料を遠心分離することを含まない。ある実施形態において、界面活性剤は、検査試料を溶解または可溶化するために用いられない。ある実施形態において、この方法は、検査試料を界面活性剤と接触させることを含まない。ある実施形態において、アッセイ試薬は、細胞内リガンドによる結合に対して分析物と競合する競合物質をさらに含むが、アッセイ検出系におけるリガンド(分析物)捕捉系(例えば、抗体または他の捕捉リガンド)と実質的に交差反応性ではない。ある実施形態において、細胞内リガンドはイムノフィリンリガンドである。ある実施形態において、分析物は免疫抑制薬を含み、競合物質は、異なるが構造上類似の分子(例えば、類似体)(免疫抑制薬であってもよく、またはなくてもよい)を含む。ある実施形態において、分析物は、タクロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、シクロスポリン、およびこれらの任意の化合物の類似体からなる群から選択される免疫抑制薬を含む。
【0008】
ある実施形態において、本発明は、細胞内リガンドによって結合されている分析物を検出するためのアッセイにおいて用いるための検査試料を調製する方法を提供する。この方法は、界面活性剤を含まない溶解試薬、および細胞内リガンドに対してタンパク質分解活性を有するプロテアーゼを含む試薬と検査試料を接触させることを典型的に伴う。様々な実施形態において、検査試料は全血または血液分画(例えば、血清)を含む。様々な実施形態において、検査試料はヒト血液(例えば、免疫抑制薬で処置したヒトからの血液)を含む。様々な実施形態において、プロテアーゼは、セリンプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、チオプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼおよびグルタミン酸プロテアーゼからなる群から選択される。ある実施形態において、プロテアーゼは、プロテイナーゼK、ディスパーゼおよびトリプシンからなる群から選択される。様々な実施形態において、溶解試薬は、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびこれらの類似体からなる群から選択されるグリコール、ならびに5個以下の炭素を有する少なくとも1種のアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなど)を含む。ある実施形態において、グリコール対アルコールの比率は、約4:1から約1:4まで、より好ましくは約4:1から約1:2までの範囲にある。ある実施形態において、検査試料は、約2:1から約1:10まで、好ましくは約2:1から約1:5まで、より好ましくは約2:1から約1:2までの範囲における比率の試料:溶解試薬の混合物を形成するように、溶解試薬(または溶解試薬の成分)に加えられる。ある実施形態において、この方法は、試料を遠心分離することを含まない。ある実施形態において、界面活性剤は、検査試料を溶解または可溶化するために用いられない。ある実施形態において、この方法は、検査試料を界面活性剤と接触させることを含まない。ある実施形態において、アッセイ試薬は、細胞内リガンドによる結合に対して分析物と競合する競合物質をさらに含むが、アッセイ検出系におけるリガンド(分析物)捕捉系(例えば、抗体または他の捕捉リガンド)と実質的に交差反応性ではない。ある実施形態において、細胞内リガンドはイムノフィリンリガンドである。ある実施形態において、分析物は免疫抑制薬を含み、競合物質が、異なるが構造上類似の分子(例えば、類似体)(免疫抑制薬であってもよく、またはなくてもよい)を含む。ある実施形態において、分析物は、タクロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、シクロスポリン、およびこれらの任意の化合物の類似体からなる群から選択される免疫抑制薬を含む。
【0009】
検査試料における分析物(例えば、免疫抑制薬)の濃度を評価するための方法も提供される。この方法は、アッセイ試薬と検査試料を接触させて、引き続く抽出ステップ無しに免疫アッセイにおける使用に適合するアッセイ混合物を生成すること(アッセイ試薬は溶解試薬(またはその成分)および分析物に結合する細胞内リガンドに対してタンパク質分解活性を有するプロテアーゼを含む。)、分析物(例えば、免疫抑制薬)について溶解混合物をアッセイすることを典型的に伴う。ある実施形態において、アッセイ混合物は均一な混合物であり、および/またはアッセイは免疫アッセイを含む。ある実施形態において、免疫抑制薬は、シロリムス、タクロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、シクロスポリンおよびこれらの任意の化合物の類似体からなる群から選択される。ある実施形態において、検査試料はヒト血液試料(例えば、全血または血液分画(例えば、血清))を含む。
【0010】
ある実施形態において、この方法は試料を遠心分離することを含まない。ある実施形態において、界面活性剤は、検査試料を溶解または可溶化するために用いられない。ある実施形態において、この方法は、検査試料を界面活性剤と接触させることを含まない。ある実施形態において、アッセイ試薬は、細胞内リガンドによる結合に対して分析物と競合する競合物質をさらに含むが、アッセイ検出系におけるリガンド(分析物)捕捉系(例えば、抗体または他の捕捉リガンド)と実質的に交差反応性ではない。ある実施形態において、細胞内リガンドはイムノフィリンリガンドである。ある実施形態において、分析物は免疫抑制薬を含み、競合物質は、異なるが構造上類似の分子(例えば、類似体)(免疫抑制薬であってもよく、またはなくてもよい)を含む。ある実施形態において、分析物は、タクロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、シクロスポリン、およびこれらの任意の化合物の類似体からなる群から選択される免疫抑制薬を含む。
【0011】
ある実施形態において、本発明は、少なくとも1つの免疫抑制薬(例えば、シロリムス、タクロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、シクロスポリンおよびこれらの任意の化合物の類似体)と特異的に結合することができる少なくとも1つの抗体またはタンパク質、ならびに界面活性剤でない溶解試薬(例えば、本明細書に記載される通り)、ならびにイムノフィリンリガンドを分解するプロテアーゼを含むアッセイ試薬を含む検査キットを提供する。ある実施形態において、界面活性剤でない溶解試薬は、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびこれらの類似体からなる群から選択されるグリコール、ならびに5個以下の炭素を有する少なくとも1種のアルコールを含む。キットは、場合により、免疫抑制薬を少なくとも1つ含む対照組成物をさらに含むことができる。ある実施形態において、キットは、細胞内リガンドによる結合に対して分析物と競合する競合物質をさらに含むが、アッセイ検出系におけるリガンド(分析物)捕捉系(例えば、抗体または他の捕捉リガンド)と交差反応性ではない。ある実施形態において、細胞内リガンドはイムノフィリンリガンドである。ある実施形態において、分析物は免疫抑制薬を含み、競合物質は、異なるが構造上類似の分子(例えば、類似体)(免疫抑制薬であってもよく、またはなくてもよい)を含む。ある実施形態において、分析物は、タクロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、シクロスポリン、およびこれらの任意の化合物の類似体からなる群から選択される免疫抑制薬を含む。ある実施形態において、競合物質はアッセイ試薬において提供される。ある実施形態において、細胞内リガンドはイムノフィリンリガンドである。様々な実施形態において、競合物質はアッセイされる免疫抑制薬とは異なるが、構造的には類似である免疫抑制薬を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本明細書に記載する試料調製方法の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、アッセイ前に生物学的試料を凍結または貯蔵することによって生成される試料の偏りを低減または排除するための、診断アッセイ用の試料の調製における1つ以上のプロテアーゼの使用に概ね関する。
【0014】
定義
特許請求の範囲および明細書において用いられる用語は、別段に特定しなければ以下に述べるように定義される。
【0015】
本明細書で用いられる「免疫抑制薬(immunosuppressant drug)」または「免疫抑制薬(immunosuppressant)」は、ラパマイシン(シロリムス)、またはシクロスポリンAとしても知られているシクロスポリンのいずれかと同じまたは類似の化学構造を有する、小分子または抗体ベースいずれかの治療用化合物を意味する。ラパマイシンもしくはシクロスポリンいずれかの、任意の知られている類似体、または以降開発される類似体は、本明細書における免疫抑制薬とみなされる。好ましい免疫抑制剤は、シロリムス、タクロリムス、エベロリムス、テムソロリムス、ゾタロリムスおよびシクロスポリンを含む。タクロリムスおよびシクロスポリンは、インターロイキン2などのサイトカインの阻害によって免疫系のTリンパ球の早期の活性化を抑制するカルシニューリン阻害薬である。これとは対照的に、シロリムス、エベロリムスおよびゾタロリムスの主な標的は、特異的な細胞周期調節タンパク質である、ラパマイシンの哺乳動物の標的(mTOR)である。mTORの阻害は、サイトカイン駆動性のTリンパ球の増殖の抑制をもたらす。
【0016】
シクロスポリンの化学式は、式Aにある。シロリムス(ラパマイシン)の化学式は、式Bにある。エベロリムス(RAD)のシロリムスとの構造上の違いの化学式は、式Cにある。
【0017】
【化1】

【0018】
シクロスポリンの多くの誘導体および類似体が調製されている。本発明は、シクロスポリンまたは任意のその類似体のための溶解試薬、溶解方法、アッセイおよびアッセイキットを含む。
【0019】
ラパマイシンの多くの誘導体または類似体が調製されている。例えば、これらは、ラパマイシンのエステルのモノおよびジエステル誘導体(PCT国際公開第92/05179号パンフレット)、ラパマイシンの27−オキシム(欧州特許第0467606号明細書)、ラパマイシンの42−オキソ類似体(米国特許第5,023,262号明細書)、二環式ラパマイシン(米国特許第5,120,725号明細書)、ラパマイシン二量体(米国特許第5,120,727号明細書)、ラパマイシンのシリルエーテル(米国特許第5,120,842号明細書)、ならびにアリールスルホネートおよびスルファメート(米国特許第5,177,203号明細書)の調製物を含んでいる。ラパマイシンは、その天然に存在するエナンチオマーの形態において最近合成された(K.C.Nicolaouら、J.Am.Chem.Soc.、1993年、115巻、4419−4420頁;S.L.Schreiber、J.Am.Chem.Soc.、1993年、115巻、7906−7907頁;S.J.Danishefsky、J.Am.Chem.Soc.、1993年、115巻、9345−9346頁)。本発明は、ラパマイシンまたは任意のその類似体のための溶解試薬、溶解方法、アッセイおよびアッセイキットを含む。
【0020】
ラパマイシンの別の免疫抑制薬の類似体は、S.ツクバエンシス(S.tsukubaensis)株から単離された、タクロリムスとしても知られているFK−506である。FK506の化学式は、欧州特許第0293892 B1号明細書において公開されている。FK−506の類似体は、それだけには限定されないが、関連の天然物であるFR−900520およびFR−900523を含み、これらはC−21のそのアルキル置換基においてFK−506と異なっており、S.ハイグロスコピカス・ヤクシムナエンシス(S.hygroscopicus yakushimnaensis)から単離された。S.ツクバエンシスによって生成される別の類似体であるFR−900525は、ピペコリン酸部分がプロリン基で置換されている点でFK−506と異なる。FK506の基本構造および免疫学的性質を保持している多数の化合物が、数々の出版物(例えば、欧州特許第184162号、欧州特許第315973号、欧州特許第323042号、欧州特許第423714号、欧州特許第427680号、欧州特許第465426号、欧州特許第484936号、欧州特許第532088号および欧州特許第474126号明細書;PCT国際公開第91/13889号パンフレット、第91/19495号パンフレットおよび第93/5059号パンフレットなど)に記載されている。本発明は、FK−506または任意のその類似体のための溶解試薬、溶解方法、アッセイおよびアッセイキットを含む。テムソロリムスは、本発明でモニターされ得るシロリムスの別のエステル誘導体である。
【0021】
今日ではゾタロリムスとしてより知られているABT−578[40−エピ−(1−テトラゾリル)−ラパマイシン]は、ラパマイシンに由来する、半合成のマクロライドトリエン抗生物質である。ゾタロリムスの構造を式Dに示す。
【0022】
【化2】

【0023】
免疫抑制薬に関して本明細書で用いられる、「構造的に類似する」の語は、薬物が少なくとも1つの共通の結合パートナー(例えば、結合タンパク質)に競合的に結合するのに十分類似している構造を薬物が有することを示す。
【0024】
「検査試料」の語は、免疫抑制薬分析物の供給源である、動物の身体の成分、組織または液体を意味する。これらの成分、組織および液体は、ヒトおよび動物の体液(例えば、全血、血清、血漿、滑液、脳脊髄液、尿、リンパ液、ならびに呼吸器、腸管および尿生殖路の様々な外分泌、涙、唾液、乳汁、白血球、骨髄腫など)、生物学的液体(例えば、細胞培養上清)、固定された組織検体ならびに固定された細胞検体を含む。検査試料がヒト末梢血試料であるのが好ましい。
【0025】
本明細書で用いられる「抗体」は、免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子のフラグメントによって実質的にコードされる1つ以上のポリペプチドからなるタンパク質を意味する。この語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体およびこれらのフラグメント、ならびに免疫グロブリン遺伝子配列から操作される分子を包含する。認められている免疫グロブリン遺伝子は、カッパー、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖は、カッパーまたはラムダのいずれかに分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロンに分類され、これらは、今度はそれぞれ、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEの免疫グロブリンのクラスを規定する。
【0026】
典型的な免疫グロブリン(抗体)の構造単位は四量体を含むことが知られている。各々の四量体は、各対が1個の「軽」鎖(約25kD)および1個の「重」鎖(約50−70kDa)を有する、2本の同一のポリペプチド鎖対からなる。各鎖のN末端は、抗原の認識を主に担っている約100から110またはそれを超えるアミノ酸の可変領域を規定している。「可変軽鎖(VL)」および「可変重鎖(VH)」の語は、それぞれこれらの軽鎖および重鎖を意味する。
【0027】
抗体は、インタクトな免疫グロブリンとして存在し、または様々なペプチダーゼで消化することによって生成された十分に特徴付けられた数々のフラグメントとして存在する。したがって、例えば、ペプシンは、ヒンジ領域におけるジスルフィド連結より下の抗体を消化して、それ自体が、ジスルフィド結合によってVH−CH1に連結している軽鎖であるFabの二量体であるF(ab’)2を生成する。F(ab’)2は、穏やかな条件下で還元されてヒンジ領域におけるジスルフィド連結を分解し、それによって(Fab’)2ダイマーをFab’モノマーに変換することがある。Fab’モノマーは、本質的にはヒンジ領域の部分を有するFabである(他の抗体フラグメントのより詳しい記載には、Fundamental Immunology、W.E.Paul編集、Raven Press、N.Y.、(1993年)を参照されたい)。様々な抗体フラグメントがインタクトな抗体の消化に関して定義されており、当業者であればこのようなFab’フラグメントは、化学的に、または組換えDNA法の利用によっていずれかで新たに合成され得ることを理解する。
【0028】
したがって、本明細書で用いられる「抗体」の語は、抗体全体を修飾することによって生成される抗体フラグメント、または組換えDNA法を用いて新たに合成される抗体フラグメントのいずれかも含む。「抗体」の語は、一本鎖抗体(一本鎖のポリペプチドとして存在する抗体)、より好ましくは一本鎖Fv抗体(sFvまたはscFv)も包含し、一本鎖Fv抗体では可変重鎖および可変軽鎖が(直接またはペプチドリンカーによって)一緒に連結して連続したポリペプチドを形成する。一本鎖Fv抗体は、(直接連結しているまたはペプチドをコードするリンカーによって連結しているVHコード配列およびVLコード配列を含む核酸から発現され得る)共有結合しているVH−VLヘテロダイマーである(Hustonら、(1988年)Proc.Nat.Acad.Sci.USA、85巻、5879−5883頁)。VHとVLは一本鎖ポリペプチドとして各々に連結しており、VHドメインとVLドメインは非共有結合している。scFv抗体および数々の他の構造は、抗体V領域から天然では凝集しているが化学的には分離されている軽鎖ポリペプチドおよび重鎖ポリペプチドを、抗原結合部位の構造に実質的に類似している3次元構造に折りたたむ分子に変換することが、当業者に知られている(例えば、米国特許第5,091,513号明細書、第5,132,405号明細書および第4,956,778号明細書を参照されたい)。
【0029】
本明細書で用いられる「分析物」は、検査試料に存在することが疑われ得る、検出されるべき物質を意味する。分析物は、それに対して天然に存在する特異的な結合パートナーが存在し、またはそれに対して特異的な結合パートナーが調製され得る任意の物質であってよい。したがって、分析物は、アッセイにおいて1つ以上の特異的な結合パートナーに結合することができる物質である。
【0030】
本明細書で用いられる「結合パートナー」は、結合対のメンバーであり、すなわち分子の一方が第2の分子に結合している1対の分子である。特異的に結合している結合パートナーは、「特異的な結合パートナー」と呼ばれる。免疫アッセイにおいて通常用いられる抗原および抗体の結合パートナーの他に、他の特異的な結合パートナーは、ビオチンおよびアビジン、炭水化物およびレクチン、相補的なヌクレオチド配列、エフェクター分子およびレセプター分子、補助因子および酵素、酵素阻害物質および酵素などを含むことができる。免疫反応性の特異的な結合パートナーは、組換えDNA法によって形成されるものを含めて、抗原、抗原フラグメント、抗体および抗体フラグメント、モノクローナルおよびポリクローナルの両方ならびにそれらの複合体を含む。
【0031】
「特異的な結合」の語は、本明細書において、特異的な部位での、結合パートナーの別のものへの優先的な結合(例えば、ポリペプチドおよびリガンド(分析物)、2つのポリペプチド、ポリペプチドおよび核酸分子、または2つの核酸分子)と定義される。「特異的な結合」の語は、標的の分子/配列に対する結合の優先度(例えば、親和性)が、非特異的な標的分子(例えば、特異的に認識される部位を欠く、ランダムに産生された分子)の少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも5倍、最も好ましくは少なくとも10または20倍上回ることを示している。
【0032】
免疫抑制薬に特異的に結合する抗体は、その免疫抑制薬に「特異的」であるといわれる。
【0033】
「捕捉試薬」または「捕捉剤」の用語は、分析物に結合する結合パートナー、より詳しくは分析物に特異的に結合する結合パートナーを意味する。様々な実施形態において、捕捉剤は固相に付着していてよい。本明細書で用いられる、固相に固定されている捕捉剤の分析物に対する結合は、「固相に固定されている複合体」を形成する。
【0034】
「標識されている検出剤」の語は、本明細書において用いられて、分析物に、好ましくは特異的に結合している結合パートナーを意味し、検出可能な標識で標識され、またはアッセイにおける使用の間に検出可能な標識で標識される結合パートナーである。
【0035】
「検出可能な標識」は、検出可能である部分、または検出可能になされ得る部分を含む。
【0036】
標識されている検出剤に関して用いられる「直接標識」は、任意の手段によって検出剤に付着している検出可能な標識である。
【0037】
標識されている検出剤に関して用いられる「間接標識」は、検出剤に特異的に結合している検出可能な標識である。したがって、間接標識は、検出剤の部分の特異的な結合パートナーである部分を含む。ビオチンおよびアビジンは、例えば、ビオチン化された抗体を標識されたアビジンに接触させて間接的に標識された抗体を生成することによって用いられるこのような部分の例である。
【0038】
本明細書で用いられる「指示薬」の語は、標識と接触して検出可能なシグナルを生成する任意の薬剤を意味する。したがって、例えば、従来の酵素標識において、酵素で標識された抗体は、基質(指示薬)と接触して検出可能なシグナル(例えば、着色した反応生成物)を生成することができる。
【0039】
本明細書で用いられる「グリコール類似体」は、炭素原子2個から6個までを有する任意のグリコールである。
【0040】
溶解混合物は、正確な、信頼できるピペット操作(手操作または自動化されたシステムの使用のいずれかで)を可能にするように、大型粒子が十分にない場合に「均一である」と言われる。
【0041】
アッセイ混合物に関して用いられる場合の「引き続く抽出ステップ無しに」の語句は、アッセイ混合物が、(本明細書で記載される)免疫アッセイに関して「そのままで」用意ができていることを示す。したがって、分析前にさらなる遠心分離は必要とされない。混合物はそのままで分析器に適用する用意ができている。
【0042】
I.アッセイの偏りを低減または排除するためのプロテアーゼの使用
本発明は、非溶解の新鮮全血(例えば、患者の検体)の使用と凍結−解凍した溶解した血液(例えば、標準物質希釈液)の間に観察される、分析物(例えば、薬物)濃度の偏りを解決するための、(例えば、免疫アッセイ用の)試料調製におけるプロテアーゼまたはプロテアーゼ(複数)の使用に関する。プロテアーゼは、結合タンパク質が時間とともにタンパク質分解し、したがってそのリガンド(分析物)に対する親和性を変更し、これは次に診断アッセイにおいて検出されるリガンドの濃度を変更する診断アッセイ用の試料の調製において特に有用である。
【0043】
ホルモン受容体、Gタンパク質、タンパク質キナーゼ、タンパク質ホスファターゼ、イソメラーゼなどの細胞内結合タンパク質は、例えば診断アッセイにおいて、アッセイされるべき標的の分析物にしばしば結合する。したがって、例えば、イムノフィリンは、ラパマイシン(シロリムス)、タクロリムス、エベロリムス、テムソロリムス、ゾタロリムス、シクロスポリンなどの免疫抑制薬にしばしば結合する。細胞内結合タンパク質は、典型的には外部環境(例えば、細胞外マトリックス)から細胞膜によって保護されている。この膜が溶解するとプロテアーゼはこれらの細胞内結合タンパク質に接近できるようになり、関連する標的の分析物(例えば、薬物、小分子など)への結合親和性を変更することができる。
【0044】
試料はしばしば凍結して貯蔵され、または長期間貯蔵され、その両方とも細胞の溶解および細胞内タンパク質のタンパク質分解をもたらすので、これらの溶解の事象は診断上の重大な問題となる。したがって、新鮮な試料においては、細胞内結合タンパク質は比較的インタクトであることがあり、貯蔵試料における細胞内結合タンパク質よりも分析物に対して大きな親和性を有することがあるので、検査の偏りが、このようなタンパク質によって結合される分析物に対するアッセイ中に導入される。
【0045】
ある実施形態において、本発明は、特に分析物が非タンパク質分子である場合は、試料調製において1つ以上のプロテアーゼを用いてその結合タンパク質から分析物の放出を促進し、その結果この偏りを低減または排除することができるという発見に関する。これにより、分析物のより安定した測定が可能になる。
【0046】
プロテアーゼは、界面活性剤(例えば、溶解界面活性剤)を使用せずに、および/または他の変性性の組成物もしくは方法(例えば、有機溶剤、低pH、高pH、カオトロープなど)を使用せずに、試料調製物におけるアッセイの偏り(例えば、細胞内リガンドによる分析物の結合による)を低減または排除するのに効果的であったのも、驚くべき発見であった。このような薬剤の使用を排除することは、分析物の測定における分散をやはり低減する、均一な検出方法の使用を促進する。
【0047】
プロテアーゼは、診断アッセイ(結合タンパク質が時間とともにタンパク質分解し、したがってそのリガンド(分析物)に対する親和性を変更し、これが次に診断アッセイにおいて検出されるリガンドの濃度を変更する)用の試料の調製において特に有用である。試料調製におけるプロテアーゼの使用、および/またはある実施形態においてはアッセイ自体がこのプロセスを促進し、そのためリガンドは、常に、または主に、結合タンパク質のタンパク質分解された形態と相互作用する。したがって、リガンド(分析物)濃度は、実質的に一定のままであり、その結果アッセイにおける分散を低減し、および/またはアッセイ前に試料を貯蔵することによって生成される偏りを低減もしくは排除する。
【0048】
ある実施形態において、プロテアーゼは、その結合タンパク質からのリガンド(分析物)の放出における助けとなるために、非交差反応性の競合物質と組み合わせて用いられ、そのため、競合物質を使用しなかった場合に他の方法では必要であるよりも結合タンパク質における変化が少ないことが必要である。
【0049】
本明細書に提供される考察は、標的分析物として免疫抑制薬に注目しているが、この方法は、細胞内結合タンパク質によって結合されている他の分析物、好ましくは非タンパク質の分析物に対して等しく適用可能であることが注目される。
【0050】
適切なプロテアーゼは、それだけには限定されない、セリンプロテアーゼ(例えば、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼなど)、メタロプロテアーゼ(例えば、ディスパーゼ、サーモリシンなど)、チオプロテアーゼ(例えば、パパイン、カテプシンなど)、アスパラギン酸プロテアーゼ(例えば、プラスメプシン)、グルタミン酸プロテアーゼなど、およびこれらの組合せを含む。特定のアッセイ調製物において用いるために選択されるプロテアーゼは、典型的には結合タンパク質を分解し、その結果アッセイ用の分析物(例えば、免疫抑制薬)を放出することができるものである。ある実施形態において、実行されるアッセイの感度および正確さに有害な影響を及ぼさずに不活性化され得るプロテアーゼが選択される。プロテアーゼは、用いられる不活性化の方法によって不活性化されることがない他の汚染性の酵素を含まない形態で提供されるのが好ましい。さもなければ、任意の残留のタンパク質分解活性が、引き続く免疫アッセイで用いられる抗体を分解することがある。
【0051】
プロテアーゼは、それだけには限定されない、Sigma、Aldrich、Boehringer Mannheim、Calbiochemなどを含めた数々の供給業者から入手可能である。ある実施形態において、例示のプロテアーゼは、それだけには限定されない、プロテイナーゼK、サブチリシン、ペプシン、ディスパーゼ、サーモリシン、キモトリプシン(α−、β−、γ−、δ−またはπ−キモトリプシンを含む)、トリプシン、フィシン、ブロメラインなど、およびこれらの組合せを含む。
【0052】
プロテイナーゼK(Sigma Chemical Co.、St.Louis、MO)は、熱(65℃またはそれより高い)および特異的なプロテアーゼ阻害物質(それだけには限定されない、フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF、Boehringer Mannheim、Indianapolis、Ind)またはジイソプロピルフルオロホスフェート(DFP、Calbiochem、LaJolla、Calif)を含む)によって不活性化され得る、非特異的な、Ca依存性のプロテアーゼである。サブチリシン(Sigma)も、熱(55℃またはそれより高い)によって不活性化され得る、非特異的な、Ca依存性のプロテアーゼであるが、酸性のpH、または特異的なプロテアーゼ阻害物質(例えば、PMSF、DFPもしくはアプロチニン)によって阻害され得る。
【0053】
ディスパーゼ(Boehringer MannheimまたはSigmaまたはCalbiochem)およびサーモリシン(SigmaまたはBoehringer Mannheim)は、例えば約5mMの濃度のEDTAによって不活性化され得る、Ca依存性のメタロプロテアーゼである。ある実施形態において、ディスパーゼおよびサーモリシンをあわせてプロテアーゼとして用いる場合、タンパク質分解は、例えば、約40mMの濃度の、ZnSOなどの亜鉛塩の存在下で、例えば約5mMの濃度のEDTAなどの2価の陽イオンキレート剤を加えることによって不活性化され得る。
【0054】
トリプシン(Worthington Biochemical Corp.、Freehold、N.J.)は、リジン残基またはアルギニン残基のカルボキシル側で特異的にタンパク質を切断し、熱(90℃もしくはそれより高い)によって阻害され得、またはそれだけには限定されない、アプロチニン(アプロチニン注射は以前はBayer、West Haven、CTによってTrasylol(登録商標)として市販されており、阻害薬はCalbiochem、La Jolla、CAおよび他の業者からいまだに入手可能である)、ロイペプチン(Sigma−Aldrich、St.Louis、MOもしくはBoehringer Mannheim)、PMSF、またはダイズ、ライマメもしくは卵白由来の特異的なトリプシン阻害物質(Worthington Biochemical Corp.、Freehold、N.J.もしくはSigma−Aldrich、St.Louis、MO)を含めた多くの薬剤によって特異的に阻害され得る。フィシンは、例えば、約2mMの濃度のHgClによって不活性化され得るチオールプロテアーゼである。ブロメラインもチオールプロテアーゼ(チオプロテアーゼ)であり、ブロメライン阻害物質(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)によって不活性化され得る。
【0055】
特定の実施形態において、プロテアーゼの濃度は、約2−4時間以内、好ましくは約1時間以内、より好ましくは約30分以内、さらにより好ましくは約20分または10分以内に結合タンパク質を分解するのに十分高いが、酵素の効率的な不活性化を可能にするのに十分低い。したがって、プロテアーゼの濃度は、好ましくは約0.1単位/mLから5.0単位/mLまで、より好ましくは約0.3単位/mLから約3単位/mLまで、さらにより好ましくは約0.5単位/mLから2.0単位/mまでL、最も好ましくは約1単位/mLの範囲である。
【0056】
上記に示したように、本明細書に記載するようにプロテアーゼを1つ以上使用することで、変性剤を使用する必要性がなくなる。変性剤を使用すると、沈澱した血液の成分を除去するのに(この手法の効率を低減する)引き続く遠心分離のステップが通常必要とされるので、これは有利である。さらに、必要とされる濃度の有機溶剤を使用すると、分析物の濃度に影響を及ぼすのに著しく十分である試料の蒸発をもたらし得る。
【0057】
分析物(例えば、免疫抑制薬)が検査試料(例えば、イムノフィリン)における1つ以上の結合タンパク質に結合するある実施形態において、本明細書に記載する方法は、場合により、試料を結合タンパク質から分析物を放出する1つ以上の薬剤(プロテアーゼの他に)と接触させることをさらに伴うことがある。例えば、薬剤は、結合タンパク質への結合に対して分析物と競合する薬剤(競合物質)を含むことがある。薬剤は、一般的には、行われるアッセイの結果に影響を及ぼさないように選択される。したがって、薬剤は、分析物検出系(例えば、捕捉剤)に反応性ではない(例えば、それによって結合されない)もの、または分析物検出系(捕捉剤)と実質的に反応性が低い(例えば、少なくとも10倍反応性が低い、好ましくは少なくとも100倍反応性が低い、より好ましくは少なくとも1000倍もしくは10000倍反応性が低い)ものから選択されるのが好ましい。
【0058】
したがって、例えば、アッセイが免疫アッセイである場合、薬剤(競合物質)は、典型的には、関連する抗体が実質的にそれと交差反応しないものである。分析物が免疫抑制薬である、ある実施形態において、薬剤は、異なるが構造的には類似の類似体(免疫抑制薬であってもよく、またはなくてもよい)であってよい。例えば、シロリムスおよびタクロリムスは両方ともFKBPに結合し、この理由から、シロリムスはFKBPからタクロリムスを放出するのに用いられることがあり、その逆もまた同様である。典型的には、このような場合において、引き続く免疫アッセイは、シロリムスとタクロリムスを区別する抗体を一般的に用いる。米国特許第6,187,547号明細書(2001年2月13日LegayおよびWengerに発行され、免疫抑制薬の競合に関するその教示に対してその全文を参照により本明細書に組み込む)は、結合タンパク質から免疫抑制薬を放出するのに有用な「結合競合物質」を記載している。例は、[Thr,Leu,D−Hiv,Leu10]−シクロスポリンを含み、これはシクロスポリンを放出することができる。さらに、2005年5月26日に発行され、参照により本明細書に組み込む、米国特許出願第2005/112778 A1号明細書は、FK506またはラパマイシンをそれらのイムノフィリン複合体から置換するための結合競合物質として働くことができるFK506の誘導体を開示している。
【0059】
ある実施形態において、本明細書に記載する方法は、界面活性剤を含まない溶解試薬の使用を伴う。迅速に溶解するのに必要とされる界面活性剤の量および分画の細胞は気泡を引き起こすことがあり、これはほとんどの自動化ピペッティングシステムによってピペット操作されなければならない試料にとって容認できないものであり、免疫アッセイによって分析される試料における免疫化学を妨害し得るという理由から、特定のフォーマットにおいて界面活性剤の使用は問題となり得る。界面活性剤を含まない溶解試薬の使用は、起泡しやすくない試料をもたらし、界面活性剤に対する必要性を排除し、したがってアッセイ免疫化学における界面活性剤がもたらす妨害を避ける。
【0060】
特に界面活性剤を含まない溶解試薬と組み合わせた、本明細書に記載する1つ以上のプロテアーゼの使用は、遠心分離のステップを必要とせずに自動化ピペッティングシステムで用いるのに適する均一な混合物をもたらし、実質的な濃度の揮発性の有機溶剤の使用を排除する。
【0061】
II.試料回収および処理加工
本発明の方法は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトに由来する検査試料に対して一般的に行われる。ある場合(分析物が1つ以上の免疫抑制薬を含む)において、検査試料は、免疫抑制薬(例えば、移植臓器の拒絶反応、移植片拒絶反応を防止もしくは阻害するため、または自己免疫疾患の処置のため)で処置中のヒト(または、獣医学上の動物)からの検査試料である。
【0062】
本発明の方法は、血液試料など、標的の分析物(例えば、免疫抑制薬)を含んでいることがある任意の試料を用いて行われ得る。ある実施形態において、検査試料は、全血または血液分画(例えば、血清)を含むことができる。
【0063】
試料は、任意の標準の技術によって収集される。試料は、後の処理加工用に直ちに処理加工または貯蔵(例えば、乾燥、凍結、不活性ガス下の貯蔵など)され得る。所望により、試料は、本明細書に記載する1つ以上のプロテアーゼ、および溶解試薬(もしくはその成分)と直接接触してよい。様々な実施形態において、試料は、その代わりに、プロテアーゼおよび溶解試薬またはこれらの成分で処理する前に、処理加工(例えば、再構成、希釈、等張化、分画化など)されてもよい。様々な実施形態において、試料が溶解試薬またはその成分と接触する前に、それと同時に、またはその後に、プロテアーゼは試料と接触する。
【0064】
一つの簡単な方法が図1に示され、この場合、試料(この場合は全血)は、1つ以上のプロテアーゼ(P)および1つ以上の非交差反応性の競合物質(C)を含む界面活性剤でない溶解試薬と接触する。このことは、溶解した全血、1つ以上のプロテアーゼ、非交差反応性の競合物質、内因性の結合タンパク質および対象の分析物(例えば、免疫抑制薬)を含む均一な混合物を生じさせる。混合物はアッセイする用意ができている。
【0065】
ある実施形態において、界面活性剤を含まない溶解試薬が利用される。ある適切な溶解試薬は、炭素原子2個から6個までを有するグリコールを少なくとも1つ、および10個以下の炭素原子、好ましくは8個以下の炭素原子、より好ましくは5個以下の炭素原子を有するアルコールを少なくとも1つを含んでいる。溶解試薬において用いるのに適するグリコールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびこれらの類似体、ならびにこのようなグリコールの混合物を含む。溶解試薬において使用するのに適するアルコールは、ヒドロキシル基を1個有するアルコールを主に含む。このようなアルコールは、それだけには限定されない、1級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソブチルアルコールなど)、2級アルコール(例えば、イソプロパノール、シクロヘキサノールなど)および3級アルコール(例えば、tert−ブタノール、tert−アミルアルコールなど)を含む。ある実施形態において、アルコールは、それだけには限定されない、メタノール、エタノールおよびC−C10アルコール(例えば、プロパノール、ペンタノール、ヘキサノール、セプタノール、オクタノールなど)ならびにこれらの混合物を含む。特定の実施形態において、グリコール対アルコールの比率は、約4:1から約1:4まで(体積:体積)の範囲にある。より特定の実施形態において、グリコール対アルコールの比率は、約4:1から約1:2まで、好ましくは約2:1から約1:2までの範囲にある。
【0066】
溶解混合物は、任意の選択された量の試料を溶解試薬と接触させるのに望ましい任意の温度で、任意の混合技術によって形成され得る。試料を十分な体積の溶解試薬と接触させて、試料における細胞を溶解し、均一な混合物を生成する。上記に記載したようにグリコール対アルコールの比率が約4:1から約1:4までの範囲にある溶解試薬では、溶解試薬の組成に応じて試料は溶解試薬に約2:1から約1:2までの範囲の比率(例えば約1:1(体積:体積))で加えられてよい。例えば、約100μLから約600μLまでの血液試料は、約50μLから約1200μLまでの溶解試薬と最高約5分間混合されてよい。ある実施形態において、溶解混合物は、血液試料150μLを溶解試薬300μLと混合し、5−10秒間激しくボルテックスにかけることによって形成される。好ましい実施形態において、溶解は、室温で1分未満で完了する。次いで、溶解混合物は、適切なアッセイを用いて分析物に対してアッセイされる。好ましい実施形態において、溶解混合物は、試料を遠心分離する必要なしに生成され、分析に備えられる。
【0067】
様々な実施形態において、試料は「混合した」溶解試薬と接触する必要はないが、溶解試薬の1つの成分(例えば、アルコールまたはグリコール)と混合され、次いで他の成分が加えられて、上記に記載した完全な溶解試薬を生成することができる。
【0068】
本発明の溶解試薬は、いかなる界面活性剤も加えずに用いられ得る。しかし、ある実施形態において、所望により1つ以上の界面活性剤が加えられてよい。界面活性剤は、上記に記載された溶解試薬の存在下では典型的には起泡せず、したがって本発明にしたがって調製された溶解混合液は、界面活性剤が含まれているか否かに関わらず自動化のピペット操作に適していてよい。界面活性剤が免疫アッセイに意図されている溶解混合液に含まれている場合は、免疫化学を妨害しない濃度で存在するのが好ましい。好ましくは、界面活性剤はサポニンなどの非イオン性の界面活性剤であり、約0.01%から0.1%までの範囲で、より好ましくは約0.1%の濃度で用いられる。米国特許第5,650,288号明細書(1997年7月22日MacFarlaneおよびJensenに発行され、界面活性剤の使用に関するその教示に対してその全文を参照により本明細書に組み込む)は、免疫アッセイにおける界面活性剤の使用を記載している。
【0069】
溶解および結合タンパク質からの放出の後、適用可能であれば、分析物は、その分析物を検出するための任意の標準の技術(例えば、吸光度または質量分析による検出を伴う免疫アッセイまたはクロマトグラフィー)を用いて測定され得る。免疫抑制薬の検出には、免疫アッセイを用いると便利である。
【0070】
III.免疫アッセイ
A.全般
本発明による免疫アッセイは、検査試料における分析物の定性的同定および/または定量に用いられ得る。これらの方法は、例えば、免疫抑制薬(例えば、ラパマイシン(シロリムス)、タクロリムス、エベロリムス、テムソロリムス、ゾタロリムス、シクロスポリンおよびこれらの任意の化合物の類似体)の免疫アッセイに適用できる。
【0071】
このような免疫アッセイは、本明細書に記載する1つ以上のプロテアーゼ、および場合により溶解試薬または1つ以上のその成分を検査試料と組み合わせて上記に記載する溶解混合物を形成することによって行われ得る。溶解混合液は、(存在する場合は)分析物に抗体を結合させてアッセイ混合物を形成するのに適する条件下で、分析物に特異的な抗体の少なくとも1つと接触してよく、次いで分析物への抗体の結合が検出される。
【0072】
ある実施形態において、約0.4Mを超える塩濃度(例えば、約0.5Mから約5.0Mまで)の存在下で溶解混合物を抗体と接触させることによって、アッセイ感度の増強が達成され得る。特定の実施形態において、塩濃度は約0.4Mに等しく、またはそれ未満である(例えば、約0.5Mから約4.0Mまで)。例示的な実施形態において、塩濃度は約2.0M(例えば、約1.5Mから約2.5Mまで、詳しくは約1.8M、約1.9M、約2.0M、約2.1Mまたは約2.2M)である。適切な塩は、例えば、以下の任意の陰イオンを含むことができる:フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、チオシアン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩および重硫酸塩。特定の実施形態において、塩は、例えばフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、チオシアン酸塩および酢酸塩などの1価の陰イオンを含む。好ましい実施形態において、塩は、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム)の塩化物塩などの塩化物を含む。一般的に、用いられる塩はアッセイ条件下で可溶性である。塩化ナトリウムは、ほとんどの条件下で高度に可溶性であり、したがって本発明による広範な免疫アッセイにおいてアッセイ感度を増強するために用いると好都合であり得る。
【0073】
塩は、任意の好都合な様式においてアッセイ混合物に提供されてよく、溶解混合物と抗体の間の接触の前に存在してよく、または接触後に加えられてもよい。特定の実施形態において、塩はアッセイ希釈液において提供され、アッセイ希釈液は水(例えばバッファーなど)の他に1つ以上の他の成分を場合により含むこともできる。アッセイ希釈液における塩濃度は、所望の最終的な塩濃度に応じて、およびアッセイ混合物に加えられる希釈液の量に応じて変化する。例えば、約4.0Mの塩濃度を有するアッセイ希釈液は、等体積のアッセイ混合物に加えられて最終塩濃度約2.0Mをもたらすことができる。
【0074】
B.抗体
検査試料において分析物を定性的または定量的に検出するための免疫アッセイにおいては、分析物に結合する少なくとも1つの抗体を、分析物を含むと疑われる溶解混合物と接触させて、抗体−分析物の免疫複合体を形成させる。免疫抑制薬を検出するために、特定の薬物に結合する任意の適切な抗体が本発明による免疫アッセイに用いられ得る。ラパマイシン(シロリムス)、タクロリムス、ゾタロリムス、シクロスポリンおよびエベロリムスの各々に対する抗体は、当技術分野において知られており、および/または市販されており、これらの任意のものが用いられ得る。ある実施形態において、シロリムスを測定するためのAbbott Laboratoriesの市販のIMx(登録商標)シロリムスアッセイ(Abbott Laboratories、Abbott Park、IL)、またはAbbott Laboratoriesによって販売されている任意の他のシロリムスアッセイキット(例えば、様々な市販の自動化プラットホーム上で使用するための)の構成成分であるモノクローナル抗体を用いるのが好ましい。
【0075】
免疫抑制薬に特異的な抗体を生成するための例示のプロトコールは以下の通りである。RBf/Dnjメスマウスに、薬物−27−CMO−破傷風毒素免疫原を1カ月毎に3回ブースト投与し、その後4カ月目に薬物−42−HS−破傷風毒素調製物で免疫化する。7カ月後、薬物−27−CMO−破傷風毒素免疫原を用いて、注入3日前に、動物に脾臓内プレ注入ブーストを投与する。次いで脾臓のB細胞を単離し、SP2/0ミエローマと一緒に標準ポリエチレン(PEG)注入において用いる。10−14日後、コンフルエントの培養物を、マイクロタイターEIAにおいて抗薬物活性についてスクリーニングし、次いでポジティブの培養物を、限界希釈クローニング技術を用いてクローニングする。得られたクローンを単離し、IMDMw/FBS(Invitrogen Corp.、Carlsbad、CA)組織培養培地でスケールアップし、分泌された抗体を、プロテインAを用いてアフィニティー精製する。薬物としてシロリムスを用いて産生された例示的な好ましい抗体はシロリムス、エベロリムスおよびゾタロリムスに対する免疫アッセイで用いることができる。
【0076】
タクロリムスに対する免疫アッセイで用いる例示的な好ましい抗体は、Grune&Stratton,Inc.、Philadelphia、PAによって出版された、1987年10月、T.Starzl、L.MakowkaおよびS.Todo編集、「FK−506 A Potential Breakthrough in immunosuppression」、A Transplantation Proceedings Reprint、第XIX巻、第6補完、23−29頁の、M.Kobayashiら、「A Highly Sensitive Method to Assay FK−506 Levels in Plasma」に記載されている。
【0077】
シクロスポリンに対する免疫アッセイにおいて使用する例示的な好ましい抗体は、シクロスポリン測定用の、Abbott Laboratoriesの市販のAxSYMシクロスポリンアッセイの成分であるモノクローナル抗体である。
【0078】
C.検出
次いで、抗体−分析物免疫複合体は、任意の適切な技術を用いて検出され得る。例えば、抗体は、抗体−分析物複合体の存在を検出および/または定量するための検出可能な標識で標識されていてよい。特定の標識の選択は決定的ではないが、選択された標識は、単独で、または1つ以上のさらなる物質と組み合わせてのいずれかで検出可能なシグナルを生成することができなければならない。
【0079】
有用な検出可能な標識、これらの抗体への付着および検出技術は、したがって当技術分野では知られている。当技術分野では知られている任意の検出可能な標識が用いられ得る。例えば、検出可能な標識は、放射性標識(例えば、H、125I、35S、14C、32P、33P)、酵素標識(例えば、西洋ワサビのペルオキシダーゼ、アルカリ性ペルオキシダーゼ、グルコース6−リン酸脱水組成物酵素など)、化学発光標識(例えば、アクリジニウム誘導体、ルミノール、イソルミノール、チオエステル、スルホンアミド、フェナントリジニウムエステルなど)、蛍光標識(例えば、フルオレセイン(5−フルオレセイン、6−カルボキシフルオレセイン、3’6−カルボキシフルオレセイン、5(6)−カルボキシフルオレセイン、6−ヘキサクロロ−フルオレセイン、6−テトラクロロフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネートなど))、ローダミン、フィコビリンタンパク質、R−フィコエリトリン、量子ドット(硫化亜鉛キャップ化されたセレン化カドミウム)、温度測定標識または免疫−ポリメラーゼ連鎖反応標識であってよい。標識、標識化手順および標識の検出に対する入門書は、各々を参照により本明細書に組み込む、PolakおよびVanNoorden、Introduction to Immunocytochemistry、第2版、SpringerVerlag、N.Y.、(1997年)ならびにMolecularProbes,Inc.、Eugene、Oregonによって発行されたハンドブックとカタログの組み合わされたものであるHaugland、Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemi、(1996年)に見出される。本発明で用いるための好ましい標識は、アクリジニウム−9−カルボキサミドなどの化学発光標識を含む。さらなる詳細は、Luminescence Biotechnology:Instruments and Applications(Dyke,K.V.編集)77−105頁、CRCPress、BocaRatonにおける、Mattingly,P.G.およびAdamczyk,M.、(2002年)Chemiluminescent N−sulfonylacridinium−9−carboxamides and their application in clinical assaysに見ることができる。
【0080】
検出可能な標識は、直接またはカップリング剤いずれかによって、分析物または抗体に結合され得る。用いられ得るカップリング剤の例は、Sigma−Aldrich(S.Louis、MO)から市販されているEDAC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、塩酸)である。用いられ得る他のカップリング剤は、当技術分野では知られている。検出可能な標識を抗体に結合するための方法は、当技術分野では知られている。さらに、検出可能な標識の抗体へのカップリングを促進する末端基をすでに含んでいる多くの検出可能な標識(例えば、その他の点でCPSP−アクリジニウムエステルとして知られているN10−(3−スルホプロピル)−N−(3−カルボキシプロピル)−アクリジニウム−9−カルボキサミド、またはその他の点でSPSP−アクリジニウムエステルとして知られているN10−(3−スルホプロピル)−N−(3−スルホプロピル)−アクリジニウム−9−カルボキサミド)が購入または合成され得る。
【0081】
あるいは、分析物に結合し、検出可能な標識を含む第2の抗体が溶解混合物に加えられてよく、抗体−分析物複合体の存在を検出するために用いられてよい。本実施形態において任意の適切な検出可能な標識が用いられてよい。
【0082】
D.例示的なフォーマット
本発明の免疫アッセイは、当技術分野では知られている任意のフォーマット(それだけには限定されない、サンドイッチフォーマット、競合的阻害フォーマット(フォワードもしくはリバース両方の競合的阻害アッセイを含む)または蛍光偏光のフォーマットなどを含む)を用いて行われてよい。
【0083】
好ましいサンドイッチ型のフォーマットなど、免疫抑制薬を定量分析するための免疫アッセイにおいては、溶解混合液における薬物を分離および定量するために少なくとも2つの抗体が用いられる。より具体的には、少なくとも2つの抗体が薬物の異なる部分に結合し、「サンドイッチ」と呼ばれる免疫複合体を形成する。一般的には、検査試料における分析物(例えば、免疫抑制薬)を捕捉(例えば、特異的に結合)するのに1つ以上の抗体が用いられ(これらの抗体は1つ以上の「捕捉」抗体と呼ばれることが多い)、検出可能な(すなわち、定量可能な)標識をサンドイッチに結合するのに1つ以上の抗体が用いられる(これらの抗体は1つ以上の「検出」抗体と呼ばれることが多い)。サンドイッチアッセイにおいては、アッセイにおける任意の他の抗体がそれぞれの結合部位に結合することによって、薬物に結合する両方の抗体が低減されないのが好ましい。
【0084】
換言すると、抗体は、免疫抑制薬を含むと疑われる溶解混合物と接触した1つ以上の第1の抗体が第2の抗体または引き続く抗体によって認識される結合部位の全てまたは部分に結合せず、その結果1つ以上の第2の抗体または引き続く抗体が薬物に結合する能力を妨害するように選択されなければならない。サンドイッチアッセイにおいては、溶解混合物において期待される薬物の最大量に比べて過剰のモル量の抗体、好ましくは少なくとも1つの捕捉抗体が用いられる。例えば、固相含有溶液1mLあたり約5μg/mLから約1mg/mLの抗体が用いられ得る。
【0085】
一実施形態において、少なくとも1つの第1の捕捉抗体が、検査試料からの第1の抗体−薬物複合体の分離を促進する固体支持体に結合していてよい。本発明の免疫アッセイで用いられる固体支持体または「固相」は決定的ではなく、当業者によって選択されてよい。本明細書で用いられる固相または固体支持体は、不溶性である任意の材料を意味し、または引き続く反応によって不溶性にされてもよい。有用な固相または固体支持体は当業者には知られており、反応トレイのウェルの壁、検査管、ポリスチレンビーズ、磁性ビーズ、ニトロセルロースのストリップ、膜、ラテックス粒子などの微粒子、Duracytes(登録商標)(Abbott Laboratories、Abbott Park、Ill.の登録商標)(ヒツジ(または他の動物)の赤血球ならびにピルビン酸アルデヒドおよびホルムアルデヒドによって「固定されている」赤血球である)などを含む。ペプチドを固相に固定するのに適する方法は、イオン性の、疎水性の、共有結合性の相互作用などを含む。固相は、捕捉剤を引きつけ、固定化する、その固有の能力に対して選択されてよい。あるいは、固相は、捕捉剤を引きつけ、固定化する能力を有するさらなる受容体を含むことができる。さらなる受容体は、捕捉剤自体に関して、または捕捉剤に複合している荷電した物質に関して反対に荷電している、荷電した物質を含むことができる。さらに別の代替として、受容体は、固相上に固定化され(付着され)、特異的な結合反応によって捕捉剤を固定化する能力を有している任意の特異的な結合パートナーであってよい。受容体分子は、アッセイの遂行前またはアッセイの遂行の間に、捕捉剤の固相材料への間接的な結合を可能にする。
【0086】
当技術分野では知られている任意の固体支持体(それだけには限定されないが、マトリクス、ゲル、ウェル、チューブまたはビーズの形態のポリマー材料からできている固体支持体を含む)が用いられ得る。このような結合が、抗体が薬物に結合する能力を妨害しなければ、抗体(以上の抗体)は、吸着によって、化学カップリング剤を用いた共有結合によって、または当技術分野では知られている他の手段によって固体支持体に結合していてよい。さらに、必要であれば、固体支持体は、抗体上の様々な官能基との反応性を可能にするように誘導体化されていてよい。このような誘導体化は、ある種のカップリング剤(例えば、それだけには限定されない、無水マレイン酸、N−ヒドロキシスクシンイミドおよび1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)の使用を典型的に伴う。
【0087】
固相が、検出抗体による接近を可能にする十分に多孔性である任意の適切な多孔性の材料、および抗原に結合するのに適する表面の親和性を含み得るのも、本発明の範囲内である。微孔性の構造が一般的に好ましいが、水和状態のゲル構造を有する材料も同様に用いられ得る。このような有用な固体支持体は、それだけには限定されない、ニトロセルロースおよびナイロンを含む。本明細書に記載されるこのような多孔性の固体支持体は、厚さ約0.01から0.5mmまでの、好ましくは約0.1mmのシートの形態であることが企図されている。孔のサイズは、広い限界内で変化することができ、好ましくは約0.025ミクロンから15ミクロンまで、特に約0.15ミクロンから15ミクロンまでである。このような支持体の表面は、抗原または抗体の支持体への共有結合をもたらす化学的プロセスによって活性化され得る。しかし、一般的には疎水的な力による多孔性の材料上への吸着により、抗原または抗体の不可逆的な結合が得られる。
【0088】
免疫抑制薬を含むことが疑われる、または含んでいる溶解混合物が、少なくとも1つの第1の捕捉抗体と接触した後、得られたアッセイ混合物はインキュベートされて第1の捕捉抗体(以上の抗体)−薬物複合体の形成を可能にする。インキュベートは、約4.5から約10.0までのpHを含む任意の適切なpHで、約2℃から約45℃までを含む任意の適切な温度で、および少なくとも約1分から約18時間まで、好ましくは約4−20分、最も好ましくは約17−19分の適切な時間行われてよい。
【0089】
標識された複合体が形成した後、複合体における標識の量は、当技術分野では知られている技術を用いて定量され得る。例えば、酵素標識が用いられる場合、標識された複合体は、色の発色などの定量可能な反応をもたらす標識に対する基質と反応する。標識が放射性標識である場合、標識はシンチレーションカウンターを用いて定量される。標識が蛍光標識である場合、標識は、標識を1つの色の光(「励起波長」として知られている)で刺激し、刺激に反応して標識によって発光される別の色(「発光波長」として知られている)を検出することによって定量される。標識が化学発光標識である場合、標識は、肉眼的に、またはルミノメーター、X線フィルム、高速写真フィルム、CCDカメラなどを用いてのいずれかによって、放出される光を検出して定量される。複合体における標識の量が定量されたら、検査試料における薬物の濃度は、例えば、既知濃度の免疫抑制薬の段階希釈を用いて生成された検量線を用いることによって決定され得る。薬物の段階希釈を用いる他に、検量線は、重量分析により、質量分析により、および当技術分野では知られている他の技術によって生成され得る。
【0090】
好ましいフォワードの競合的なフォーマットにおいては、既知濃度の、標識されている薬物またはその類似体のアリコートが用いられて、検査試料に存在する薬物と、抗体への結合に対して競合する。フォワードの競合アッセイにおいては、固定化された抗体が、検査試料、および標識された薬物またはその薬物類似体と、逐次または同時のいずれかで接触し得る。薬物または薬物類似体は、先に論じた検出可能な標識を含めた任意の適切な検出可能な標識で標識されてよい。このアッセイにおいては、捕捉抗体は、本明細書で先に論じた技術を用いて固体支持体上に固定化されていてよい。あるいは、捕捉抗体は、微粒子などの固体支持体上に固定化されている抗種抗体などの抗体とカップリングされていてよい。
【0091】
標識された薬物または薬物類似体、溶解混合物および抗体は、典型的には、サンドイッチアッセイのフォーマットに関して先に記載したものと類似の条件下でインキュベートされる。次いで、2つの異なる型の抗体−薬物複合体が産生される。具体的には、産生された抗体−薬物複合体の一方が検出可能な標識を含み、他方の抗体−薬物複合体は検出可能な標識を含まない。抗体−薬物複合体は、検出可能な標識の定量の前にアッセイ混合物の残りから分離されてよいが、必ず分離されなければならないわけではない。抗体−薬物複合体がアッセイ混合物の残りから分離されたか否かに関係なしに、抗体−薬物複合体における検出可能な標識の量を次いで定量する。次いで、検査試料における薬物濃度が、抗体−薬物複合体中の検出可能な標識の量を検量線に対して比較することによって決定され得る。検量線は、既知濃度の薬物の段階希釈を用いて、質量分析によって、重量分析によって、および当技術分野では知られている他の技術によって産生され得る。
【0092】
抗体−薬物複合体は、サンドイッチアッセイのフォーマットに関連して先に論じた固体支持体などの固体支持体に抗体を結合し、次いでアッセイ混合物の残りを固体支持体との接触から除去することによってアッセイ混合物から分離され得る。
【0093】
リバースの競合アッセイにおいては、固定化された免疫抑制薬またはその類似体が、溶解混合物および少なくとも1つの標識した抗体と逐次または同時のいずれかで接触してよい。抗体は、先に論じた検出可能な標識を含む、任意の適切な検出可能な標識で標識されてよい。薬物または薬物類似体は、サンドイッチアッセイのフォーマットに関連して先に論じた固体支持体などの固体支持体に結合されていてよい。
【0094】
固定化された薬物または薬物類似体、溶解混合物、および少なくとも1つの標識された抗体は、サンドイッチアッセイのフォーマットに関連して先に論じたものと類似の条件下でインキュベートされる。次いで、2つの異なる型の抗体−薬物複合体が産生される。具体的には、産生された抗体−薬物複合体の一つは固定化され、検出可能な標識を含んでいるが、他の抗体−薬物複合体は固定化されておらず、検出可能な標識を含む。固定化されていない抗体−薬物複合体およびアッセイ混合物の残りは、洗浄などの当技術分野では知られている技術によって、固定化された抗体−薬物複合体の存在から除去される。固定化されていない抗体−薬物複合体が除去されたら、次いで固定化された抗体−薬物複合体における検出可能な標識の量を定量する。次いで、抗体−薬物複合体における検出可能な標識の量を検量線に対して比較することによって、検査試料における薬物の濃度が決定され得る。検量線は、既知濃度の薬物の段階希釈を用いて、質量分析によって、重量分析によって、および当技術分野では知られている他の技術によって産生され得る。
【0095】
一実施形態において、蛍光偏光アッセイにおいては、抗体または機能的に活性なそのフラグメントが、免疫抑制薬を含む非標識の溶解混合物と最初に接触して、非標識の抗体−薬物複合体を形成する。非標識の抗体−薬物複合体は、次いで、蛍光標識された薬物またはその類似体と接触する。標識された薬物または薬物類似体は、アッセイ混合物における非標識の任意の薬物と、抗体または機能的に活性なそのフラグメントへの結合に対して競合する。形成された標識された抗体−薬物複合体の量が決定され、検査試料における薬物の量が検量線の使用によって決定される。
【0096】
免疫アッセイに対する走査型プローブ顕微鏡(SPM)の使用も、それに対して本発明の免疫アッセイ法が容易に適用可能な技術である。SPM、特に原子間力顕微鏡においては、捕捉剤は、走査に適する表面を有する固相に固定されている。捕捉剤は、例えば、プラスチックまたは金属の表面に吸着され得る。あるいは、捕捉剤は、例えば、誘導体化されたプラスチック、金属、シリコンまたはガラスに、当業者には知られている方法にしたがって共有結合され得る。捕捉試薬の付着の後、溶解混合物は固相に接触し、走査型プローブ顕微鏡が用いられて固相に固定された複合体を検出および定量する。SPMの使用は、免疫アッセイ系で典型的に使用されている標識の必要性を排除する。このようなシステムは、参照により本明細書に組み込む、米国特許出願第662,147号明細書に記載されている。
【0097】
本発明による免疫アッセイは、微小電気機械システム(MEMS)を用いて行われてもよい。MEMSは、機械的、光学的および流体の要素を電子工学と結びつけるシリコン上に組み込まれ、対象の分析物を好都合に検出させる顕微鏡的構造である。本発明で用いるのに適する例示のMEMSデバイスは、Protiveriのマルチカンチレバーアレイである。このアレイは、特別にデザインされたシリコンのミクロカンチレバーの化学−機械的な作動、および引き続くミクロカンチレバーの偏向の肉眼的検出に基づいている。片側上が結合パートナーでコーティングされている場合、相補的な分子を含む溶液にミクロカンチレバーが曝露されるとミクロカンチレバーは曲がる。この屈曲は、結合の事象による表面エネルギーにおける変化によって引き起こされる。屈曲の程度(偏向)を肉眼的に検出することで、ミクロカンチレバーに結合している相補的な分子の量の測定が可能になる。
【0098】
他の実施形態において、本発明による免疫アッセイは、電気化学的な検出を用いて行われる。電気化学的な検出のための基本的な手順は、Heinemanおよび共同研究者によって記載されている。これは、一次抗体(Ab、ラット抗マウスIgG)の固定化、引き続く抗原(Ag、マウスIgG)、酵素標識にコンジュゲートしている二次抗体(AP−Ab、ラット抗マウスIgGおよびアルカリ性ホスファターゼ)ならびにp−アミノフェニルホスファターゼ(PAPP)を含む溶液への配列の曝露を必然的に伴う。APはPAPPをp−アミノフェノール(PAP、「R」は、キノンイミンである酸化型のPAPと還元型を区別するよう意図されている)に変換し、p−アミノフェノールは、APが最適の活性を表すpH9.0で、酸素および水の還元を妨害しないポテンシャルで電気化学的に可逆的である。PAPは、フェノール(その前駆物質であるフェニルホスフェートが酵素基質としてしばしば用いられる)とは異なり、電極の付着物を引き起こさない。PAPは、空気酸化および光酸化を経験するが、これらは小規模で、および短い時間枠で容易に防止される。20μLから360μLまでの範囲の体積のPAPPを用いたミクロ電気化学的な免疫アッセイにおいて実現される、PAPに対するピコモルの検出限界およびIgGに対するフェムトグラムの検出限界は、以前に報告されていた。電気化学的検出と一緒のキャピラリー免疫アッセイにおいては、これまでに報告されている最小の検出限界は、70μLの体積および30分または25分のアッセイ時間を用いて、マウスIgG3000分子である。
【0099】
様々な電気化学的検出システムが、米国特許第7,045,364号明細書(2006年5月16日発行、参照により本明細書に組み込む)、第7,045,310号明細書(2006年5月16日発行、参照により本明細書に組み込む)、第6,887,714号明細書(2005年5月3日発行、参照により本明細書に組み込む)、第6,682,648号明細書(2004年1月27日発行、参照により本明細書に組み込む)、第6,670,115号明細書(2003年12月30日発行、参照により本明細書に組み込む)に記載されている。例えば、1つの検査試料において複数の分析物を同時にアッセイする有用な特定の実施形態において、固相は複数の異なる捕捉剤を含むことができる。したがって、例えば、固相はその上に複数の抗体を固定されていてよく、この場合各々が、試料における異なる分析物の存在に対して検査されることが意図される。例示的な実施形態において、固相は表面上の複数の異なる領域からなっていてよく、この場合各領域はそこに固定されている特定の抗体を有している。
【0100】
多重のフォーマットは複数の標識を使用することができるが、必ずしも使用しなくてもよく、この場合各標識は特定の分析物を検出するために用いられる。例えば、多重の、異なる分析物が複数の標識(抗体などの複数の捕捉剤が、特異性に基づいて固相の異なる既知の位置に固定されている)を用いずに検出されてもよい。各位置の捕捉剤の特異性は知られているので、特定の位置でのシグナルの検出は、その位置で結合している分析物の存在に関連し得る。このフォーマットの例は、微小流体デバイスおよびキャピラリーアレイ(それぞれチャンネルまたはキャピラリーに沿って異なる位置で異なる捕捉剤を含んでいる)ならびにマイクロアレイ(固体支持体の表面上のスポットのマトリックス(「標的エレメント」)において配列された様々な捕捉剤を典型的に含む)を含む。特定の実施形態において、各々の異なる捕捉剤が、異なる電極(例えば、マイクロ流体デバイスのチャンネルにおける、またはキャピラリーにおける固体支持体の表面上に形成されていてよい)に固定されていてよい。
【0101】
III.検査キット
本発明は、検査試料を分析物に対してアッセイするための検査キットも提供する。本発明による検査キットは、本発明にしたがって1つ以上の免疫アッセイを行うのに有用な1つ以上の試薬を含む。検査キットは、1つ以上の別々の組成物として、または場合により試薬の適合性が許す場合には混合物として、試薬を保持する1つ以上の容器を有する包装を一般的に含む。検査キットは、バッファー、希釈液、標準液、および/または試料の処理加工、洗浄もしくはアッセイの任意の他のステップを行うのに有用な任意の他の材料など、ユーザーの立場から望ましいことがある他の材料も含むことができる。
【0102】
ある実施形態において、本発明の検査キットは、(a)少なくとも1つの分析物に特異的に結合することができる、少なくとも1つの抗体または他のリガンド(例えば、結合タンパク質)、および(b)本明細書に記載される1つ以上のプロテアーゼを含むことができる。例示的なプロテアーゼは、それだけには限定されない、プロテイナーゼK、サブチリシン、ディスパーゼ、サーモリシン、トリプシン、フィシン、ブロメラインおよびこれらの組合せを含む。キットは、(c)エチレングリコール、プロピレングリコールおよびこれらの類似体からなる群から選択されるグリコール、ならびに本明細書に記載される少なくとも1種のアルコール(例えば、5個以下の炭素を有するアルコール)、またはこのような溶解試薬の成分からなる溶解試薬を場合によりさらに含む。免疫抑制薬に対する免疫アッセイを行うのに有用である、例示的な実施形態において、抗体は、ラパマイシン(シロリムス)、タクロリムス、エベロリムス、テムソロリムス、ゾタロリムス、シクロスポリンまたはこれらの任意の化合物の類似体に特異的であり得る。
【0103】
ある実施形態において、溶解試薬は、メタノール、エタノール、プロパノールまたは任意のこれらのアルコールの混合物を含む。例示的な実施形態において、グリコールのアルコールに対する比率は、約4:1から約1:4までの範囲、より詳しくは約4:1から約1:2までの範囲である。
【0104】
所望により、検査キットは、アッセイされる免疫抑制薬を含む対照組成物をさらに含むことができる。
【0105】
特定の実施形態において、本発明による検査キットは、1つ以上の界面活性剤および/または検査試料における1つ以上の結合タンパク質から分析物を放出する薬剤を含むことができる。適切な界面活性剤または界面活性剤の組合せは、上記に記載したようなサポニンなどの非イオン性界面活性剤を含む。適切な放出剤は、上記に記載したように1つ以上の結合タンパク質への結合に対して分析物と競合する薬剤を含む。本発明のキットにおいて提供される任意の界面活性剤またはプロテアーゼは、上記に記載したように、適切な濃度の成分を含む溶解混合物の生成を促進する様式で提供されなければならない。
【0106】
本発明によるキットは、固相、および固相に固定されている捕捉剤またはアッセイの間に固相に固定される捕捉剤を含むことができる。例示的な実施形態において、固相は、1つ以上の微粒子または電極を含む。このようなキットがサンドイッチ免疫アッセイを行うように用いられようとする場合、キットは標識された検出剤をさらに含むことができる。ある実施形態において、検査キットは、アクリジニウム−9−カルボキサミドなどの直接標識を少なくとも1つ含む。本発明による検査キットは、少なくとも1つの間接標識も含むことができる。使用される標識が、検出可能なシグナルを生成するための指示薬を一般的に必要とする場合、検査キットは1つ以上の適切な指示薬を含むのが好ましい。
【0107】
本発明による検査キットは、本発明の1つ以上の免疫アッセイを行うための指示書を含むのが好ましい。本発明のキットに含まれている指示書は、包装材料に固定されていてもよく、または包装挿入物として含まれていてもよい。指示書は典型的には書面または印刷物であるが、そのようなものに限定されない。このような指示書を保管することができ、エンドユーザーにこれらを伝えることができる任意の媒体が、本発明によって企図される。このような媒体は、例えば、それだけには限定されない、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CDROM)などを含むコンピュータ媒体を含む。本明細書で用いられる「指示書」の語は、指示書を提供するインターネットサイトのアドレスを含むことができる。
【0108】
もちろん、例えば、米国特許第5,089,424号明細書および第5,006,309号明細書に記載されるように、ならびに例えば、それだけには限定されない、Abbott LaboratoriesのARCHITECT(登録商標)、AxSYM(登録商標)、IMX(登録商標)、ABBOTT PRISM(登録商標)、およびQuantum IIプラットホームならびに他のプラットホームを含めた、Abbott Laboratories(Abbott Park、IL)によって市販されているものなど、本明細書における任意の例示のフォーマット、および本発明による任意のアッセイまたはキットが、自動化されたシステムおよび半自動化されたシステム(微粒子を含む固相が存在するものを含む)で用いるために適用または最適化され得ることは言うまでもない。
【0109】
さらに、本発明のアッセイおよびキットは、Abbott LaboratoriesのPoint of Care(i−STAT(商標))電気化学的免疫アッセイシステムを含めた、ポイントオブケアアッセイシステム(point of care assay system)に対して、場合により適合または最適化され得る。免疫センサー、ならびに免疫センサーを製造し、使い捨て検査装置において操作する方法は、例えば、米国特許第5,063,081号明細書、ならびに米国特許出願公開第20030170881号、第20040018577号、第20050054078号および第20060160164号(同じものに関するそれらの教示に対して、参照により本明細書に組み込む)に記載されている。
【0110】
(実施例)
以下の実施例は、請求される発明を限定するためではなく、例示するために提供される。
【実施例1】
【0111】
プロテアーゼの比較
以下のプロテアーゼ:アルファ−キモトリプシン(CH);PE=ペプシン(PE);プロテイナーゼK(PK)およびサーモリシン(TH)を、溶解した全血希釈液(すなわち「標準物質希釈液」)または非溶解の新鮮な全血検体(すなわち、患者検体もしくは「新鮮血」)のいずれかからなる、本明細書に記載するアッセイ混合物において検査した。
【0112】
これらの試験には、ARCHITECT(登録商標)シロリムスアッセイ(Abbott Laboratories、Abbott Park、ILによって引き続き市販されている、均一のコンセプトフェーズ(concept−phase)アッセイ)を使用した。キャリブレートしたシロリムススタンダードを、溶解した全血希釈液(IMx(登録商標)タクロリムスII血液希釈液、Abbott Laboratories、Abbott Park、IL)すなわちシロリムス(Wyeth−Pharma GmbH、Munster、ドイツ)0ng/mLおよび30ng/mLをそれぞれ含むCAL AおよびF CALで調製した。
【0113】
ARCHITECT(登録商標)シロリムスアッセイでは、試料(典型的には引き続くアッセイ)によって生成される光(またはシグナル)の量を、相対光単位(RLU)として測定する。RLUは、ARCHITECT(登録商標)システムおよび他の機器上で用いられる光学測定の単位に対する呼称である。RLUの語は、アクリジニウムなどのシグナル生成性のスタンダードのある量を計測する光子の関係に由来する。各光学モジュールは1セットのスタンダード(例えば、アクリジニウムのスタンダード)でキャリブレートされる。化学発光反応が起こると、光が放射され、ある期間にわたって(例えば、3秒の期間)光子が測定される。光電子増倍管(PMT)は、計数された光子をデジタルシグナルに変換し、デジタルシグナルは次いで処理加工のために回路基板に送られる。光学の回路基板は、PMTからのデジタルシグナルを、計数された光子に比例するアナログシグナルに変換し、アナログシグナルは、今度は存在するシグナル生成性の分子(例えば、アクリジニウム)の量に比例する。次いで、このアナログシグナルはさらに処理加工されてRLU値を生成する。この関係は確立されて、光学モジュールをキャリブレートするためのスタンダードを生成し、この場合異なるスタンダードがそれらに割り当てられたRLU値を有する。したがって、RLU単位自体は任意であるが、ある量のスタンダード(例えば、アクリジニウム)に対して比例する(すなわち、相関がある)。
【0114】
これらの試験において、「偏り」は、アッセイ希釈液(すなわち「アッセイ希釈液試料」)で調製された標準物質のシロリムス濃度に等しいシロリムス濃度(例えば、30ng/mLまたは0ng/mL)でスパイクした新鮮血試料(すなわち「新鮮血試料」)からのシグナル(RLU)における相違%として計算した。換言すると、偏りは、溶解した全血標準物質(凍結−解凍したもの、全血の約80%、>1カ月経過)と比べた場合の、新鮮血検体の標準物質(例えば、非溶解)によって表されるシグナルにおける相違として計算された。このような値は、同様の濃度の患者検体において見られる偏りをおそらく表しており、これを室温で貯蔵し、長時間均一なシロリムスアッセイ(例えば、市販のAbbott ARCHITECT(登録商標)シロリムスアッセイ)によってアッセイした場合に観察される患者検体における大きな(例えば、>50%)変化の説明となる。
【0115】
全てのプロテアーゼが偏りに対して影響をいくらか有していたと思われるが、明らかにプロテイナーゼKおよびサーモリシンは最大の影響を有していた(データは示さず)。サーモリシンは、アッセイ希釈液試料および新鮮血試料におけるF CAL RLU値を増大し、500μg/mLでは(遊離のシロリムスを測定するためにARCHITECT(登録商標)によってサンプリングする前には、前処理した均一の検体/試料における量)F CALの偏りは約30%まで低減した。しかし、500μg/mL(前処理した均一の検体/試料における量)のCAL Aは逆方向に移動し、−24%の偏りを作り出した。
【0116】
プロテイナーゼKもアッセイ希釈液試料におけるF CAL RLU値を増大したが、新鮮血試料ではRLU値を低減した。CAL Aの偏りは、50μg/mL(−15%)では少々劣ったが、500μg/mLでは偏りは6−7%に改善した。
【0117】
プロテアーゼは、このように新鮮血試料対アッセイ希釈液試料の偏りに対して影響を有する。観察された偏りは、シロリムスの濃度に依存していた。シロリムスの濃度が低いほど観察された偏りは小さく、CAL A(0ng/mL)レベルでは本質的に偏りは観察されなかった。問題がインターフェラント(interferant)または非特異的な結合であったならば、この発見は予想外であろう。アッセイは競合的なフォーマットで行われたので、CAL Aは最高のRLUシグナルを有する。最高レベルのシグナルにおいて偏りがないのは珍しいことであるが、親和性(例えば、新鮮全血対貯蔵した溶解した全血におけるシロリムスに対するFKBP12の親和性)における違いが存在しなければシグナルが低いほど偏りは大きくなる(例えば、シロリムスレベルがより高くなる)。機序がプロテアーゼFKPB12の切り取りである場合、これはシロリムス依存性の様式で偏りに影響を及ぼす非特異的な薬剤(例えば、HSAまたはリポタンパク質の結合剤)を見出す上での困難さを説明している。FKBP12の結合親和性における変更は、他の手段によって一致させるのが非常に困難である。まとめると、このデータ、すなわち新鮮血試料の安定性データ、およびシロリムス濃度の依存性は、偏りに対する機序として、タンパク質分解性の切断を支持している。
【実施例2】
【0118】
シロリムスアッセイにおけるプロテイナーゼKまたはサーモリシンの比較
この実験では、シロリムス標準物質であるTAおよびFAを、溶解した(凍結−解凍によって)全血において保存剤と一緒に作成し、1カ月を超えて4℃で貯蔵した(すなわち、「標準物質希釈液」)。これらのいわゆるアッセイ希釈液試料である、TAおよびFAは、それぞれシロリムス0ng/mLおよび30ng/mLを含んでいた。非溶解の新鮮な全血検体(すなわち、患者検体、または「新鮮血」)標準物質であるWAおよびWF(いわゆる新鮮血試料)は、それぞれシロリムス0ng/mLおよび30ng/mLを含んでいた。
【0119】
アッセイ希釈液試料および全血試料を、50、250または500μg/mLの濃度の増大レベルのプロテイナーゼKまたはサーモリシンのいずれかで処理した。対照は、他の点では全てアッセイ希釈液試料および新鮮血試料と同一の試料であったが、これらは処理しないままであった。プロテアーゼを、有機溶剤2部:試料1部の体積比の5%プロピレングリコール/5%エタノール中溶液試料(すなわち、試料はアッセイ希釈液試料、新鮮血試料または対応する対照である)に全て加えた。次いで、試料をボルテックスにかけ、遅延型の1ステップ競合的フォーマットにおける検査用にARCHITECT(登録商標)機器上に直ちに配置した。
【0120】
以下表1−3における略語の手がかり:
A:標準物質A、0ng/mL
F:標準物質F、30ng/mL
T:貯蔵した溶解した全血希釈液
W:新鮮全血
PK(数字):50、250または500μg/mLの濃度で加えたプロテイナーゼK
TH(数字):50、250または500μg/mLの濃度で加えたサーモリシン
【0121】
【表1】

【0122】
【表2】

【0123】
【表3】

【0124】
表1から見ることができる通り、存在するシロリムス0ng/mLで産生されるシグナルにおける、新鮮血標準物質(新鮮血試料WAおよびWF)と貯蔵した溶解した血液標準物質(アッセイ希釈液試料TAおよびTF)の間には−10%の偏りが存在する。表2から見ることができる通り、プロテイナーゼK500μg/mLでは、この偏りは約−6%に低減される。
【0125】
存在するシロリムス30ng/mLで産生されるシグナルにおける、新鮮血標準物質(WAおよびWF)と貯蔵した溶解した血液標準物質(アッセイ希釈液試料TAおよびTF)の間には85%の偏りが存在する(表1)。プロテイナーゼK500μg/mLでは、この偏りは約6%に低減され(表2)、サーモリシン500μg/mLではこの偏りは約29%に低減される(表3)。
【0126】
前述のデータに基づくと、プロテアーゼは、競合的フォーマットのシロリムスアッセイにおいて新鮮血と溶解した全血の標準物質の間に産生されるシグナルにおける偏りに直接的な影響を有しており、これは標準物質Fの場合、遊離のシロリムスの測定可能な濃度の標準化を示している。
【0127】
本明細書に記載される実施例および実施形態は例示の目的のためにすぎず、これらに照らした様々な修飾または変更が、当業者に対して示唆され、本出願の精神および権限、ならびに添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるべきであることが理解される。
【0128】
共同所有の、同時係属中の出願である、2006年12月29日出願の米国仮出願番号第60/878,017号は、溶液中捕捉の免疫アッセイで用いるための非変性性の溶解試薬に関するその教示に対して、その全文が参照により明らかに組み込まれる。
【0129】
共同所有の、同時係属中の出願である、2006年12月29日出願の米国非仮出願番号第11/618,495号は、非変性性の溶解試薬に関するその教示に対して、その全文が参照により明らかに組み込まれる。
【0130】
共同所有の、同時係属中の出願である、2006年12月29日出願の米国仮出願番号第60/882,863号は、免疫抑制薬に対する改善されたアッセイに関するその教示に対して、その全文が参照により明らかに組み込まれる。
【0131】
共同所有の、同時係属中の出願である、2006年7月21日出願の米国非仮出願番号第11/490,624号は、抽出用試薬の組成に関するその教示に対して、その全文が参照により明らかに組み込まれる。
【0132】
さらに、本明細書に引用される他の出版物、特許および特許出願は全て、全目的に対して、その全文が参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内リガンドによって結合されている分析物を検出するためのアッセイにおいて用いるための検査試料を調製するための方法であって、
溶解試薬、および
細胞内リガンドに対するタンパク質分解活性を有するプロテアーゼ
を含むアッセイ試薬と検査試料を接触させて、
引き続く抽出ステップ無しに免疫アッセイにおいて用いるのに適合する混合物を形成することを含む、方法。
【請求項2】
前記検査試料が全血または血液分画である、請求項1の方法。
【請求項3】
前記検査試料がヒト血液を含む、請求項1の方法。
【請求項4】
前記検査試料が、自己免疫疾患に対する処置中、または異種移植もしくは臓器移植を有する対象から採取したヒト血液を含む、請求項1の方法。
【請求項5】
前記プロテアーゼが、セリンプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼおよびグルタミン酸プロテアーゼからなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項6】
前記プロテアーゼが、ペプシン、プロテイナーゼK、サーモリシン、ディスパーゼ、トリプシンおよびキモトリプシンからなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項7】
前記溶解試薬が、
エチレングリコール、プロピレングリコールおよびこれらの類似体からなる群から選択されるグリコール、ならびに
5個以下の炭素を有する少なくとも1種のアルコール
を含む、請求項1から7のいずれかの方法。
【請求項8】
アルコールが、メタノール、エタノールおよびプロパノールからなる群から選択される、請求項7の方法。
【請求項9】
グリコール対アルコールの比率が約4:1から約1:4までの範囲にある、請求項7の方法。
【請求項10】
グリコール対アルコールの比率が約4:1から約1:2までの範囲にある、請求項9の方法。
【請求項11】
検査試料が約2:1から約1:10までの範囲における比率で溶解試薬に加えられる、請求項7の方法。
【請求項12】
検査試料が約2:1から約1:2までの範囲における比率で溶解試薬に加えられる、請求項11の方法。
【請求項13】
試料を遠心分離することを含まない、請求項7の方法。
【請求項14】
界面活性剤が、検査試料を溶解または可溶化するために用いられない、請求項7の方法。
【請求項15】
前記アッセイ試薬が、細胞内リガンドによる結合に対して分析物と競合するが、アッセイ検出系において捕捉剤と交差反応性ではない競合物質をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項16】
前記細胞内リガンドがイムノフィリンリガンドである、請求項1または15のいずれかの方法。
【請求項17】
分析物が免疫抑制薬を含み、ならびに競合物質が、異なるが構造上類似の類似体を含む、請求項16の方法。
【請求項18】
前記細胞内リガンドが、タクロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、シクロスポリン、およびこれらの任意の化合物の類似体からなる群から選択される免疫抑制薬に結合する、請求項16の方法。
【請求項19】
細胞内リガンドによって結合されている分析物を検出するためのアッセイにおいて用いるための検査試料を調製するための方法であって、
界面活性剤を含まない溶解試薬、および
細胞内リガンドに対してタンパク質分解活性を有するプロテアーゼ
を含む試薬と検査試料を接触させることを含む、方法。
【請求項20】
前記検査試料が全血または血液分画を含む、請求項19の方法。
【請求項21】
前記検査試料が血液の成分分画を含む、請求項19の方法。
【請求項22】
前記検査試料がヒト血液を含む、請求項19の方法。
【請求項23】
前記プロテアーゼが、セリンプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、チオプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼおよびグルタミン酸プロテアーゼからなる群から選択される、請求項19から22のいずれかの方法。
【請求項24】
前記プロテアーゼが、ペプシン、プロテイナーゼK、サーモリシン、ディスパーゼ、トリプシンおよびキモトリプシンからなる群から選択される、請求項19から22のいずれかの方法。
【請求項25】
前記溶解試薬が、
エチレングリコール、プロピレングリコールおよびこれらの類似体からなる群から選択されるグリコール、ならびに
5個以下の炭素を有する少なくとも1種のアルコール
を含む、請求項23または24の方法。
【請求項26】
アルコールがメタノール、エタノールおよびプロパノールからなる群から選択される、請求項25の方法。
【請求項27】
グリコール対アルコールの比率が約4:1から約1:4までの範囲にある、請求項25の方法。
【請求項28】
グリコール対アルコールの比率が約4:1から約1:2までの範囲にある、請求項25の方法。
【請求項29】
検査試料が約2:1から約1:10までの範囲における比率で溶解試薬に加えられる、請求項25の方法。
【請求項30】
検査試料が約2:1から約1:2までの範囲における比率で溶解試薬に加えられる、請求項25の方法。
【請求項31】
試料を遠心分離することを含まない、請求項25の方法。
【請求項32】
前記アッセイ試薬が、細胞内リガンドによる結合に対して分析物と競合するが、アッセイ検出系において分析物と交差反応性ではない競合物質をさらに含む、請求項19から32のいずれかの方法。
【請求項33】
前記細胞内リガンドがイムノフィリンリガンドである、請求項32のいずれかの方法。
【請求項34】
分析物が免疫抑制薬を含み、ならびに競合物質が、異なるが構造上類似の類似体を含む、請求項33の方法。
【請求項35】
前記細胞内リガンドが、タクロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、シクロスポリン、およびこれらの任意の化合物の類似体からなる群から選択される免疫抑制薬に結合する、請求項33の方法。
【請求項36】
検査試料における免疫抑制薬の濃度を評価するための方法であって、
アッセイ試薬と検査試料を接触させて、引き続く抽出ステップ無しに免疫アッセイにおける使用に適合するアッセイ混合物を生成すること(アッセイ試薬は、
溶解試薬、および
免疫抑制薬に結合する細胞内リガンドに対してタンパク質分解活性を有するプロテアーゼ
を含む。)、および
前記免疫抑制薬について溶解混合物をアッセイすること
を含む、方法。
【請求項37】
アッセイ混合物が均一な混合物である、請求項36の方法。
【請求項38】
アッセイが免疫アッセイを含む、請求項36の方法。
【請求項39】
免疫抑制薬が、シロリムス、タクロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、シクロスポリンおよびこれらの任意の化合物の類似体からなる群から選択される、請求項36の方法。
【請求項40】
検査試料がヒト血液試料を含む、請求項36の方法。
【請求項41】
検査試料が全血または血液分画を含む、請求項36の方法。
【請求項42】
溶解混合物を遠心分離することを含まない、請求項36の方法。
【請求項43】
検査試料を界面活性剤と接触させることを含まない、請求項36の方法。
【請求項44】
前記プロテアーゼが、セリンプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼおよびグルタミン酸プロテアーゼからなる群から選択される、請求項36から43のいずれかの方法。
【請求項45】
前記プロテアーゼが、ペプシン、プロテイナーゼK、サーモリシン、ディスパーゼ、トリプシンおよびキモトリプシンからなる群から選択される、請求項36から43のいずれかの方法。
【請求項46】
前記溶解試薬が、
エチレングリコール、プロピレングリコールおよびこれらの類似体からなる群から選択されるグリコール、ならびに
5個以下の炭素を有する少なくとも1種のアルコール
を含む、請求項44または45の方法。
【請求項47】
アルコールがメタノール、エタノールおよびプロパノールからなる群から選択される、請求項46の方法。
【請求項48】
グリコール対アルコールの比率が約4:1から約1:4までの範囲にある、請求項47の方法。
【請求項49】
グリコール対アルコールの比率が約4:1から約1:2までの範囲にある、請求項47の方法。
【請求項50】
検査試料が約2:1から約1:10までの範囲における比率で溶解試薬に加えられる、請求項47の方法。
【請求項51】
検査試料が約2:1から約1:2までの範囲における比率で溶解試薬に加えられる、請求項47の方法。
【請求項52】
試料を遠心分離することを含まない、請求項47の方法。
【請求項53】
検査試料を界面活性剤と接触させることを含まない、請求項47の方法。
【請求項54】
前記アッセイ試薬が、細胞内リガンドによる結合に対して分析物と競合するが、アッセイ検出系において捕捉剤と交差反応性ではない競合物質をさらに含む、請求項36の方法。
【請求項55】
分析物が免疫抑制薬を含み、競合物質が、異なるが構造上類似の免疫抑制薬を含む、請求項36または54のいずれかの方法。
【請求項56】
検査キットであって
(a)シロリムス、タクロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、シクロスポリンおよびこれらの任意の化合物の類似体からなる群から選択される少なくとも1つの免疫抑制薬と特異的に結合することができる、少なくとも1つの抗体またはタンパク質、ならびに
(b)界面活性剤でない溶解試薬、および
イムノフィリンリガンドを分解するプロテアーゼ
を含むアッセイ試薬
を含む検査キット。
【請求項57】
前記プロテアーゼが、ペプシン、プロテイナーゼK、サーモリシン、ディスパーゼ、トリプシンおよびキモトリプシンからなる群から選択される、請求項56のキット。
【請求項58】
前記界面活性剤でない溶解試薬が、
エチレングリコール、プロピレングリコールおよびこれらの類似体からなる群から選択されるグリコール、ならびに
5個以下の炭素を有する少なくとも1種のアルコール
を含む、請求項56のキット。
【請求項59】
(a)の免疫抑制薬を少なくとも1つ含む対照組成物をさらに含む、請求項56の検査キット。
【請求項60】
アルコールが、メタノール、エタノールおよびプロパノールからなる群から選択される、請求項56の検査キット。
【請求項61】
グリコール対アルコールの比率が約4:1から約1:4までの範囲にある、請求項56の検査キット。
【請求項62】
グリコール対アルコールの比率が約4:1から約1:2までの範囲にある、請求項56の検査キット。
【請求項63】
キットが、細胞内リガンドによる結合に対して分析物と競合するが、アッセイ検出系において分析物と交差反応性ではない競合物質をさらに含む、請求項56から62のいずれかの検査キット。
【請求項64】
前記競合物質がアッセイ試薬において提供される、請求項63の検査キット。
【請求項65】
前記細胞内リガンドがイムノフィリンリガンドである、請求項19または32のいずれかの方法。
【請求項66】
競合物質が、アッセイされる免疫抑制薬と異なるが構造上類似の類似体を含む、請求項63の検査キット。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2010−515063(P2010−515063A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544192(P2009−544192)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/088087
【国際公開番号】WO2008/082979
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【出願人】(310000484)
【出願人】(310000495)
【出願人】(310000509)
【出願人】(310000510)
【Fターム(参考)】