説明

全身性炎症および炎症性肝炎の処置のためのピリミジンヌクレオチド前駆体

【課題】ウリジンホスホリラーゼインヒビター、ならびに敗血症または全身炎症に対する耐性を増大するための方法および薬学的組成物を提供することを本発明の課題とする。
【解決手段】シチジン、ウリジン、およびオロチン酸のアシル誘導体を包含するピリミジンヌクレオチド前駆体を含有する、およびウリジンホスホリラーゼインヒビター、ならびに敗血症または全身炎症に対する耐性を増大する薬学的組成物およびその使用を提供することによって、上記課題が解決された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、シチジン、ウリジンおよびオロチン酸塩(orotate)のアシル誘導体を含むピリミジンヌクレオチド前駆体、およびこれらの化合物の予防的および治療的使用に関する。本発明はまた、これらの化合物単独あるいは組合せの、他の薬剤とのまたは他の薬剤なしの動物への投与に関する。これらの化合物は、細菌のエンドトキシンおよび他の炎症性刺激物、ならびに炎症性メディエーター(mediater)に対する動物の抵抗性を増強することができる。
【背景技術】
【0002】
敗血症症候群とも呼ばれる敗血症は、細菌、真菌、またはウイルスによる重篤な感染の結果である。合衆国では毎年数万人が敗血症で死亡している;これは外科集中治療室の患者の主要な死因である。
【0003】
敗血症は、細菌のエンドトキシン(グラム陰性細菌の細胞壁の成分)のような炎症性刺激物に応答して産生または放出される内因性サイトカインおよび他の生物活性分子が、発熱、好中球減少症、血液凝固疾患、低血圧、ショック、および臓器損傷を含む種々の症状を引き起こす炎症性疾患である。
【0004】
敗血症(またはそのさらに重篤な形態である敗血症ショック)は、「全身性炎症性応答症候群」(SIRS)と呼ばれる広い分類の疾患の1例であり、これはエンドトキシン(これは、例えば局所の感染または小腸から循環血へのグラム陰性細菌からのエンドトキシンの漏出のため、菌血症がなくても血流中に存在し得る)のような炎症性刺激物への生物体の反応であり;SIRSはまた、グラム陽性細菌、真菌、ウイルスによっても誘発され得、そして自己免疫疾患または治療での炎症性サイトカインの投与の結果でもあり得る。
【0005】
現在のSIRSの処置は、循環系および呼吸器系の維持を包含するが、エンドトキシンのような炎症性刺激物、または炎症性メディエーターヘの組織抵抗性の改善を直接目指すものではない。
【0006】
エンドトキシンまたはその生理学的効果のメディエーターを中和するためのモノクローナル抗体が開発中である。しかし、エンドトキシン中毒の症状の発症に先立って感受性のある患者に、予防として抗体を使用することは、高価であるかまたは非実用的である。さらに、感染生物を培養し同定するのに要する時間は、しばしば効果的治療を実施するための時間制限を超えるため、抗体処置で利益を受けるであろう患者を決定することは困難である。インターロイキン−1のような特定の炎症性メディエーターのレセプターアンタゴニストを使用する試みにおいても、同様な問題に遭遇してきた。
【0007】
エンドトキシンの毒性は、エンドトキシンに応答してマクロファージ、クッパー細胞(Kupffer cells)(肝臓に着生のマクロファージ)および他のタイプの細胞から放出される内因性サイトカインおよび他の生物活性分子により部分的に媒介される。これらのメディエーターの中で最も重要なものは、腫瘍壊死因子(TNF)およびインターロイキン−1(IL−1)である。他には血小板活性化因子(PAF)、インターロイキン−6、およびロイコトリエンならびに他のアラキドン酸誘導体が含まれる。これらのサイトカインまたはメディエーターの投与により、エンドトキシンにより誘起される症状の少なくとも幾つかと似た症状が引き起こされる。細菌のエンドトキシン以外の薬剤または病状は、TNFまたはIL−1の産生または活性(またはこれらに対する感受性)の上昇を引き起こし得、その結果組織損傷をもたらす。このような病状には、グラム陽性細菌、ウイルスまたは真菌での感染、あるいは肝臓損傷が含まれる。炎症性サイトカインは、過剰に存在すると組織損傷を生じ得るが、適度な量で誘起される時には、感染性生物またはウイルスに対する防御において重要である。例えば、TNFに対する抗体は、(エンドトキシンにより誘発されるTNFのネガティブな影響をブロックすることにより)投与された用量のエンドトキシンの毒性を低下させ得るが、幾つかの細菌感染の場合には、致死前の状態の感染を圧倒的な致死感染に転換する有害な効果を有し得る(非特許文献1および2)。このように、炎症性サイトカインを直接不活性化する薬剤により、敗血症症候群またはSIRSを処置するための戦略には本質的な問題がある。
【0008】
肝臓は、エンドトキシン(FarrarおよびCorwin、Ann. N. Y. Acad. Sci.、1966 133:668−684)およびTNFのような炎症性タンパク質のクリアランスまたは解毒の主要な部位であり;逆に言えば、肝臓はエンドトキシンおよびそのメディエーターによる損傷を受けやすい。多くの発生原因による肝臓損傷(例えば四塩化炭素、コリン欠乏症、ウイルス感染、レイ症候群、アルコール)は、全身性敗血症の症状が存在しない時にさえ細菌のエンドトキシンまたはエンドトキシンにより誘発されるメディエーターに部分的に媒介されている(Nolan、Gastroenterology、1975、69:1346−1356;Nolan、Hepatology、1989、l0:887−891)。癌処置の可能な有効性のためにエンドトキシンの計画的注射を受ける患者では肝毒性の問題のために投与量が限定される(Engelhardtら、CancerResearch、1991、51:2524−2530)。肝臓は、敗血症ショックで最初に病的変性を示す必須器官であることが報告されている(Kangら、J.Histochem. Cytochem.、198836:665−678)。さらに、肝機能不全は敗血症の初期に発生し、続いて臓器不全を引き起こし得る(Wangら、Arch.Surg.、1991、126:219−224)。
【0009】
肝臓は、動物のエンドトキシンに対する感受性を調節するのに重要である。肝機能または代謝を害する種々の処置(例えば酢酸鉛による中毒、シクロヘキシミド、アクチノマイシンDまたはガラクトサミン)は、動物のエンドトキシンまたはTNFに対する感受性を、時には数オーダーの大きさで増加させ得る。
【0010】
ガラクトサミン誘導肝臓損傷は、細胞死が起こる前の期間には容易に可逆的であることが独特である。ガラクトサミンは、遊離ヌクレオチドに転換して戻らないUDP−ヘキソサミンに肝のウリジンヌクレオチドを閉じ込めることにより、これを選択的に涸渇させる。これにより、ウリジンヌクレオチドの涸渇が十分に長引くと、RNAおよびタンパク合成の障害のため、肝臓損傷が起こり得る。ガラクトサミンにより誘導される生化学的欠乏は、ガラクトサミンに捕捉されたウリジンヌクレオチドを補充するウリジンの投与により容易に元に戻る。このように、ガラクトサミンの投与の直前または直後のウリジンの投与により、ガラクトサミン誘導肝損傷は減弱され、その結果エンドトキシンに対する感受性が正常値に復帰する(Galanosら、PNAS、1979、76:5939−5943)。
【0011】
同様に、齧歯類の肝毒素TCDDで慎重に処理したマウスにおけるエンドトキシン過敏症は、ウリジンの投与により部分的に回復された(Rosenthalら、Toxicology、1989 56:239−251)。
【0012】
しかし、実験的に低下させたエンドトキシンに対する抵抗性をウリジンが部分的に復帰させるこれらの情況とは対照的に、ウリジンはエンドトキシンで抗原投与した正常マウスには保護効果を有さないことが報告され(Markleyら、J. Trauma 1970、10:598−607)、すなわちウリジンはエンドトキシンに対する正常よりも大きい抵抗性を生じなかった。
【0013】
ウリジン、シチジン、およびオロチン酸塩(orotate)は、肝疾患および実験的モデルでの肝機能に及ぼす効果について試験されたが、結果はまちまちであった。ShaferおよびIsselbacher(Gastroenterology、1961、40:782−784)は、肝硬変の患者に、3から7日間毎日25から100ミリグラムのシチジンおよびウリジンの静脈内注入を行ったが臨床状態に何の効果もなかったことを報告している。ラットの餌に1パーセントの濃度で添加したオロチン酸は、肝臓の脂肪浸潤をもたらし(vonEulerら、J. Biol. Chem.、1963、238:2464−2469);腹腔内注射により投与されたオロチン酸は、四塩化炭素、ジクロロエタン、DDT、および9,10−ジメチル−1,2−ベンズアンスラセンで処理したラットの肝臓損傷を低下させた(Patesら、FarmakolToksikol.、1968、31:717−719)。リジン−オロチン酸塩は、キノコのアマニタ・ファロイデス(Amanita Phalloides)からの肝毒性抽出物の毒性を強化し;オロチン酸ナトリウムおよびオロチン酸はAmanita抽出物の毒性に何ら影響がなかった(Halachevaら、Toxicon、1988、26:571ー576)。オロチン酸は、新生児高ビリルビン血症の処置および心筋梗塞からの回復の改善のためにヒトに臨床的に投与されてきた(0'Sullivan、Aust.N. Z. J. Med.、1973、3:417−422)。オロチン酸塩は、一部は低い溶解性のため、経口投与後に充分吸収されない。
【0014】
Hataら(米国特許第4,027,017号および第4,058,601号)は、ウリジンホスフェートおよびウリジンジホスホグルクロン酸が、エタノール投与後の血中アルコール含量を減少させ、そして肝臓における中性脂質の蓄積を阻害することを開示している。
【0015】
(例えば、抗新生物薬5−フルオロウラシルの宿主毒性を低下させるための)ウリジンの投与を含む臨床試験は、ウリジン自体の生物学的特性のため複雑であった。ウリジンは経口投与後あまり吸収されず;下痢がヒトの投与量を限定している(vanGroeningenら、Proceedings of the AACR、1987、28:195)。初期臨床試験でウリジンが腕静脈カテーテルを介して投与された時に静脈炎が問題になった(vanGroeningenら、Cancer Treat Rep.、1986、70:745−50)ため、ウリジンの非経口投与には中心静脈カテーテルの使用(結果として不快感と感染の危険を伴う)が必要である。
【0016】
消化管から血流中に容易に吸収され、次に循環系で加水分解されて遊離のウリジンまたはシチジンを生じる、ウリジンおよびシチジンのアシル誘導体の投与は、遊離のヌクレオシドの経口吸収の低さの問題を克服する(米国特許出願第438,493号、115,929号、および903,107号、本明細書に参考として援用される)。
【0017】
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
【非特許文献1】Havell、J.Immunol.、1987、139:4225−4231;
【非特許文献2】Echtenacherら、J.Immunol.、1990 145:3762−3766
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
(発明の目的)
本発明の主な目的は、敗血症を含む全身性炎症性応答症候群による生存率を改善し、組織損傷を防止するのに有効である治療剤および予防剤を提供することである。
【0019】
本発明の主な目的は、全身性炎症に対する抵抗性を効果的に増強する化合物のファミリーを提供することである。エンドトキシンまたは他の炎症性刺激物への暴露の前、最中または後に、動物にこれらの化合物を投与することにより、全身性炎症の影響が防止または処置される。
【0020】
本発明のさらなる目的は、炎症性刺激物または炎症性サイトカインが病因に関与する種々の疾患の処置のための化合物のファミリーを提供することである。
【0021】
本発明のさらなる目的は、エンドトキシン中毒または他の全身性炎症性疾患に罹患した動物の生存率または生理学的機能を改善する化合物のファミリーを提供することである。
【0022】
本発明のさらなる目的は、炎症性肝炎を処置または防止する化合物のファミリーを提供することである。
【0023】
本発明のさらなる目的は、経口または非経口で投与され得る化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
(発明の要旨)
本発明のこれらおよび他の目的は、ヒトのような哺乳動物を含む動物に投与し得る、オロチン酸またはその塩、ウリジン、シチジン、またはこれらの薬剤のプロドラッグ誘導体(アシル誘導体またはリン酸エステルを含む)のようなピリミジンヌクレオチドの前駆体により達成される。これらの化合物の単独または組合せ投与は、全身性炎症の結果を処置または防止するのに有用である。全身性炎症は、細菌、真菌、またはウイルス、あるいは細菌、真菌またはウイルスの構成物質(例えば各々エンドトキシン、多糖類またはウイルス性タンパク)の感染により、炎症性メディエーターにより、または自己免疫疾患の結果として生じる。
【0025】
このように、単独または組合せの本発明の化合物は、敗血症または炎症性サイトカインの毒性効果の処置および防止に有用であり;敗血症の危険のある患者(例えば、手術を受けている患者、または重症の火傷または創傷を被っている患者、あるいは癌または他の疾患の化学療法の結果として免疫不全(immunocompromise)の患者)ヘの予防薬剤として有用である。
【0026】
本発明の重要な側面は、オロチン酸塩、ウリジンまたはシチジン、およびこのような化合物のアシル誘導体が予想外の治療的特性を有することの発見である。
【0027】
本発明のlつの実施態様は、(例えば癌の処置のための)炎症性サイトカインの治療的投与の間に遭遇する毒性の処置および防止における、本発明の化合物および組成物の使用を包含する。
【0028】
本発明のlつの実施態様は、炎症性肝炎の処置および防止における、本発明の化合物および組成物の使用を包含する。
【0029】
(本発明の化合物)
炎症性刺激物または炎症性メディエーターヘの抵抗性を増強するのに有用な化合物は、下記の構造を有する:
他に記載のある場合を除き全ての場合に、本発明の化合物の化学構造の種々の置換基を表す文字と下付文字は、記号の記載の直前の構造にのみ適用される。
【0030】
(l)ウリジンまたは式:
【0031】
【化1】

(式中、R、R、RおよびRは同一であるかまたは異なり、そして各々水素または代謝物のアシル基である)を有するウリジンのアシル誘導体、またはその薬学的に受容可能な塩。
【0032】
(2)シチジンまたは式:
【0033】
【化2】

(式中、R、R、RおよびRは同一であるかまたは異なり、そして各々水素または代謝物のアシル基である)を有するシチジンのアシル誘導体、またはその薬学的に受容可能な塩。
【0034】
(3)式:
【0035】
【化3】

(式中、R、RおよびRは同一であるかまたは異なり、そして各々水素または
a.5から22個の炭素原子を含む非分岐鎖脂肪酸、
b.グリシン、L型のアラニン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、セリン、スレオニン、シスチン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン、ヒスチジン、カルニチンおよびオルニチンよりなる群から選択されるアミノ酸、
c.3−22個の炭素原子を有するジカルボン酸、
d.グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、エノールピルビン酸、リポ酸、パントテン酸、アセト酢酸、p−アミノ安息香酸、β−ヒドロキシ酪酸、オロチン酸、およびクレアチンよりなる群のlつ以上から選択されるカルボン酸、
のアシル基である)を有するウリジンのアシル誘導体。
【0036】
(4)式:
【0037】
【化4】

(式中、R、R、RおよびRは同一であるかまたは異なり、そして各々水素または
a.5から22個の炭素原子を含む非分岐鎖脂肪酸、
b.グリシン、L型のフェニルアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、セリン、スレオニン、シスチン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン、ヒスチジン、カルニチンおよびオルニチンよりなる群から選択されるアミノ酸、
c.3−22個の炭素原子を有するジカルボン酸、
d.グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、エノールピルビン酸、リポ酸、パントテン酸、アセト酢酸、p−アミノ安息香酸、β−ヒドロキシ酪酸、オロチン酸、およびクレアチンよりなる群のlつ以上から選択されるカルボン酸、
のアシル基である)を有するシチジンのアシル誘導体。
【0038】
(5)式:
【0039】
【化5】

(式中、R、R、またはRの少なくとも1つは、2−26個の炭素原子を含有するヒドロカルビルオキシカルボニル残基であり、そして残りのR置換基は、独立してヒドロカルビルオキシカルボニルまたはヒドロカルビルカルボニル残基またはHまたはリン酸である)を有するウリジンのアシル誘導体。
【0040】
(6)式:.
【0041】
【化6】

(式中、R、R、RまたはRの少なくとも1つは、2−26個の炭素原子を含有するヒドロカルビルオキシカルボニル残基であり、そして残りのR置換基は、独立してヒドロカルビルオキシカルボニルまたはヒドロカルビルカルボニル残基またはHまたはリン酸である)を有するシチジンのアシル誘導体。
【0042】
(7)オロチン酸またはその塩:
【0043】
【化7】

オロチン酸の薬学的に受容可能な塩は、塩の陽イオン成分がナトリウム、カリウム、アルギニンまたはリジンのような塩基性アミノ酸、メチルグルカミン、コリン、または分子量が約1000ダルトン未満で実質的に非毒性の任意の他の水溶性陽イオンであるものを含む。
【0044】
(8)アルコール置換したオロチン酸誘導体:
【0045】
【化8】

ここでRは、エステル結合を介してオロチン酸に結合する、1個から20個の炭素原子を含有するアルコール基である。
【0046】
本発明には、上述の化合物の薬学的に受容可能な塩も包含される。
【0047】
本発明の有利な化合物は、ウリジンまたはシチジンの短鎖(2個〜6個の炭素原子)脂肪酸エステルである。特に有利な化合物は、トリアセチルウリジン、トリアセチルシチジンまたはオロチン酸の塩である。
【0048】
(ウリジンホスホリラーゼのインヒビター)
上述のピリミジンヌクレオチド前駆体の代替物または添加物として、以下の化合物は本発明に有用である。これらの薬剤は、内因性または外因性ウリジンの異化を阻害することにより組織のウリジンヌクレオチドレベルを上昇させる。ウリジンホスホリラーゼインヒビターのピリミジンヌクレオチド前駆体との同時投与は、治療効果を得るために必要とされるヌクレオチド前駆体の量を低下させる。
【0049】
ウリジンホスホリラーゼインヒビターの例は、5−ベンジルバルビツル酸、5−ベンジルオキシベンジルバルビツル酸、5−ベンジルオキシベンジル−1−[(1−ヒドロキシ−2−エトキシ)メチル]バルビツル酸、5−ベンジルオキシベンジルアセチル−1−[(1−ヒドロキシ−2−エトキシ)メチル]バルビツル酸、および5−メトキシベンジルアセチルアシクロバルビツル酸を包含する5−ベンジルバルビツル酸または5−ベンジリデンバルビツル酸誘導体、2,2’−アンヒドロ−5−エチルウリジン、およびアシクロウリジン化合物、特に5−ベンジル置換アシクロウリジン類(ベンジルアシクロウリジン、ベンジルオキシベンジルアシクロウリジン、アミノメチル−ベンジルアシクロウリジン、アミノメチルベンジルオキシベンジルアシクロウリジン、ヒドロキシメチルベンジルアシクロウリジン、およびヒドロキシメチル−ベンジルオキシベンジルアシクロウリジンを包含するがこれらに限定されない)を包含するがこれらに限定されない。WO89/09603およびWO 91/16315(これらは本明細書中に参考として援用される)もまた参照のこと。
【0050】
また、本発明によって以下が提供される。
(項目1) (i)非経口栄養処方物、および(ii) 一日の割り当て部分あたり2〜40グラムのピリミジンヌクレオチド前駆体を含む組成物であって、ここで該ピリミジンヌクレオチド前駆体が、ウリジン、シチジン、オロチン酸、あるいはウリジン、シチジン、またはオロチン酸のアシル誘導体、あるいはその薬学的に受容可能な塩である、組成物。
(項目2) 栄養分を静脈内に受ける哺乳動物に栄養分を提供する方法であって、該哺乳動物に、一日の割り当て部分あたり2〜40グラムのピリミジンヌクレオチド前駆体を含む組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目3) a)グルコース、および
b) ピリミジンヌクレオチド前駆体、を含む組成物。
(項目4) 前記組成物が1〜10%のグルコースを含む水溶液である、項目3に記載の組成物。
(項目5) 前記組成物が5%グルコースを含む水溶液である、項目3に記載の組成物。
(項目6) 前記ピリミジンヌクレオチド前駆体がウリジンまたはシチジンである、項目3に記載の組成物。
(項目7) 肝臓移植の間または肝臓移植後に哺乳動物を処置する方法であって、グルコースおよびピリミジンヌクレオチド前駆体を含む組成物を投与する工程を包含する方法。
(項目8) エタノール中毒の影響を低減する方法であって、このような処置を必要とする哺乳動物に、ウリジン、シチジン、オロチン酸、あるいはウリジン、シチジン、またはオロチン酸のアシル誘導体、あるいはその薬学的に受容可能な塩を投与する工程を包含する、方法。
(項目9) エタノール中毒を処置する方法であって、中毒の哺乳動物に、ウリジン、シチジン、オロチン酸、あるいはウリジン、シチジン、またはオロチン酸のアシル誘導体、あるいはそれらの薬学的に受容可能な塩を投与する工程を包含する、方法。
(項目10) 前記ウリジンのアシル誘導体がトリアセチルウリジンである、項目9に記載の方法。
(項目11) 前記投与する工程が、ウリジンまたはシチジンを投与する工程を包含する、項目9に記載の方法。
(項目12) 動物において炎症性肝臓傷害を低減する方法であって、このような処置を必要とする動物に、治療的に有効な量のウリジン、シチジンまたはオロチン酸のアシル誘導体、あるいは薬学的に受容可能なその塩を投与する工程を包含する、方法。
(項目13) 前記ウリジンのアシル誘導体がトリアセチルウリジンである、項目12に記載の方法。
【0051】
(発明の詳細な説明)
本発明は、シチジン、ウリジン、およびオロテートのアシル誘導体を包含するピリミジンヌクレオチド前駆体、およびヒトを包含する動物におけるエンドトキシンおよび他の炎症性刺激物またはメディエーターの病理学的な結果を処置または防止するためのこれらの化合物および/またはウリジンホスホリラーゼインヒビターの使用に関する。
【0052】
本明細書で開示される発明は、炎症性刺激物およびメディエーターに対する動物の抵抗性を増強するための方法を包含する。以下に示す実施例は、エンドトキシンおよび他の炎症性刺激物による毒性の予防と処置の両方を示す。本発明の方法は、敗血症または全身性炎症を処置または防止する他の方法と組合せて使用され得る。
【0053】
(A.定義)
本明細書で使用される用語「ピリミジンヌクレオチド前駆体」とは、動物への投与後にピリミジンヌクレオチドに変換される化合物をいう。これは特にシチジン、ウリジン、またはオロチン酸、またはこれらの化合物のプロドラッグ(アシル誘導体を包含する)を包含する。
【0054】
本明細書で使用される用語「アシル誘導体」とは、カルボン酸から誘導される実質的に非毒性の有機アシル置換基が、エステル結合でオキシプリンヌクレオシドのリボース部分の1つ以上の遊離ヒドロキシル基に結合している、および/またはこのような置換基がアミド結合でシチジンのプリン環上のアミン置換基に結合しているピリミジンヌクレオシドの誘導体を意味する。このようなアシル置換基は、脂肪酸、アミノ酸、ニコチン酸、ジカルボン酸、乳酸、p−アミノ安息香酸およびオロチン酸よりなる群から選択される化合物を包含するが、これらに限定されないカルボン酸から誘導される。有利なアシル置換基は、食餌の成分または中間代謝物のいずれかとして、通常体内に存在する化合物である。
【0055】
本明細書で使用される用語「薬学的に受容可能な塩」とは、誘導体の薬学的に受容可能な酸(硫酸、塩酸、またはリン酸を包含するがこれらに限定されない)付加塩との塩を意味する。
【0056】
用語「同時投与される」とは、本発明の少なくとも2つの化合物が薬理学的活性の各々の期間が重複する時間枠間に投与されることを意味する。
【0057】
本明細書で使用される用語「アミノ酸」とは、グリシン、L型のアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、セリン、スレオニン、システイン、シスチン、メチオニン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン、ヒドロキシリジン、カルニチン、および他の天然に存在するアミノ酸を包含するが、これらに限定されない。
【0058】
本明細書で使用される用語「脂肪酸」とは、2個〜22個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸を意味する。このような脂肪酸は、飽和、部分飽和またはポリ不飽和であり得る。
【0059】
本明細書で使用される用語「ジカルボン酸」とは、第2のカルボン酸置換基を有する脂肪酸を意味する。
【0060】
本明細書で使用される用語「治療有効量」とは、所定の条件および投与法で処置効果を与える量をいう。
【0061】
本明細書で使用される用語「敗血症」とは、細菌のエンドトキシン(グラム陰性細菌の細胞壁の成分)のような炎症性刺激物に応答して産生または放出される、内因性のサイトカインおよび他の生物活性分子が、発熱、好中球減少症、血液凝固疾患、低血圧、ショック、および臓器損傷を包含する種々の症状を引き起こす全身性炎症性疾患である。
【0062】
本明細書で使用される用語「炎症性刺激物」とは、動物の炎症性応答を引き起こす外因性の物質を意味する。炎症性刺激物の例は、細菌、真菌、ウイルス、細菌(エンドトキシンのような)、真菌またはウイルスの非生存断片または成分、あるいはアレルギーまたはアナフィラキシー応答を引き起こす薬剤を包含する。自己免疫疾患の場合には、患者の組織の内因性の成分(例えば、特定の細胞性タンパク質)が炎症性刺激物として機能する。
【0063】
本明細書で使用される用語「メディエーター」とは、典型的にはエンドトキシンまたは真菌の多糖類のような他の炎症性刺激物の生物学的効果を媒介する、内因性または外因性(例えば、組換えポリペプチド)の生物活性化合物、タンパク質、またはポリペプチドを意味する。このような物質の例は、腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−6(IL−6)、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター(PAI)、ロイコトリエン、補体カスケードの成分、一酸化窒素、または血小板活性化因子を包含するが、これらに限定されない。
【0064】
(B.本発明の化合物)
本発明の主要な特徴は、ウリジンおよび他のピリミジンヌクレオチド前駆体が、実際に、他の点では正常な動物(例えば、生物がガラクトサミンまたはTCDDのような臨床的に不適切な肝毒性感作性薬剤を投与されていない動物モデル)を、内因性炎症性メディエーターの誘導を介して組織損傷を起こす細菌のエンドトキシンおよび他の炎症性刺激物による毒性から保護するという、予想外の発見である。
【0065】
組織のウリジンヌクレオチドレベルは、幾つかの前駆体の投与により増加し得る。ウリジンおよびシチジンは、5’位のリン酸化により細胞性ヌクレオチドのプールに取り込まれ;シチジンおよびウリジンヌクレオチドは、酵素的アミノ化および脱アミノ化反応により相互に転換可能である。オロチン酸は、ピリミジンヌクレオチドの新規生合成の鍵となる中間体である。オロチン酸のヌクレオチドプールヘの取り込みには、細胞性ホスホリボシルピロリン酸(PRPP)が必要である。あるいは(または外因性ヌクレオチド前駆体の供給に加えて)、組織に対するウリジンの利用性は、ウリジンの分解経路における最初の酵素であるウリジンホスホリラーゼを阻害する化合物の投与により増加する。エンドトキシンまたは炎症性メディエーターに対する抵抗性を増強するに有用な本発明の化合物は、ウリジン、シチジン、オロテート、これらのピリミジンヌクレオチド前駆体のプロドラッグ形態(特にアシル誘導体およびリン酸エステル)、および酵素ウリジンホスホリラーゼのインヒビターを包含する。本発明の化合物は、以下の構造を有する:
他に指示される場合を除く全ての場合において、本発明の化合物の化学構造における種々の置換基を表す文字と下付文字は、記号の記載の直前の構造にのみ適用される。
【0066】
(1)下式を有するウリジンのアシル誘導体またはその薬学的に受容可能な塩:
【0067】
【化9】

ここでR、R、RおよびRは同一であるかまたは異なり、各々水素または代謝物のアシル基であるが、但し上記R置換基の少なくとも1つは水素ではない。
【0068】
(2)下式を有するシチジンのアシル誘導体またはその薬学的に受容可能な塩:
【0069】
【化10】

ここでR、R、RおよびRは同一であるかまたは異なり、各々水素または代謝物のアシル基であるが、但し上記R置換基の少なくとも1つは水素ではない。
【0070】
エンドトキシンに対する抵抗性を増強するに有用な本発明の化合物は以下の化合物を包含する:
(3)下式を有するウリジンのアシル誘導体:
【0071】
【化11】

ここでR、RおよびRは同一であるかまたは異なり、各々水素または以下のアシル基である:
a.5個〜22個の炭素原子を包含する非分枝脂肪酸、
b.グリシン、L型のアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、セリン、スレオニン、シスチン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン、ヒスチジン、カルニチンおよびオルニチンよりなる群から選択されるアミノ酸、
c.3個〜22個の炭素原子を有するジカルボン酸、
d.グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、エノールピルビン酸、リポ酸、パントテン酸、アセト酢酸、p−アミノ安息香酸、β−ヒドロキシ酪酸、オロチン酸、およびクレアチンよりなる群の1つ以上から選択されるカルボン酸。
【0072】
(4)下式を有するシチジンのアシル誘導体:
【0073】
【化12】

ここでR、R、RおよびRは同一であるかまたは異なり、各々水素または以下のアシル基である:
a.5個〜22個の炭素原子を包含する非分枝脂肪酸、
b.グリシン、L型のフェニルアラニン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、セリン、スレオニン、シスチン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン、ヒスチジン、カルニチンおよびオルニチンよりなる群から選択されるアミノ酸、
c.3個〜22個の炭素原子を有するジカルボン酸、
d.グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、エノールピルビン酸、リポ酸、パントテン酸、アセト酢酸、p−アミノ安息香酸、β−ヒドロキシ酪酸、オロチン酸、およびクレアチンよりなる群の1つ以上から選択されるカルボン酸。
【0074】
(5)下式を有するウリジンのアシル誘導体:
【0075】
【化13】

ここでR、R、またはRの少なくとも1つは、2個〜26個の炭素原子を含有するヒドロカルビルオキシカルボニル部分であり、残りのR置換基は、独立して、ヒドロカルビルオキシカルボニルまたはヒドロカルビルカルボニル部分またはHまたはリン酸である。
【0076】
(6)下式を有するシチジンのアシル誘導体:
【0077】
【化14】

ここでR、R、RまたはRの少なくともlつは、2個〜26個の炭素原子を含有するヒドロカルビルオキシカルボニル部分であり、残りのR置換基は、独立して、ヒドロカルビルオキシカルボニルまたはヒドロカルビルカルボニル部分またはHまたはリン酸である。
(7)オロチン酸またはその塩:
【0078】
【化15】

オロチン酸の薬学的に受容可能な塩は、塩のカチオン性成分がナトリウム、カリウム、アルギニンまたはリジンのような塩基性アミノ酸、メチルグルカミン、コリン、または約1000ダルトン未満の分子量を有する任意の他の実質的に非毒性の水溶性カチオンであるものを包含する。
(8)アルコール置換したオロチン酸誘導体:
【0079】
【化16】

ここでRは、エステル結合を介してオロチン酸に結合する、1個〜20個の炭素原子を含有するアルコール基である。
【0080】
本発明には、上記化合物の薬学的に受容可能な塩も包含される。
【0081】
本発明の有利な化合物は、ウリジンまたはシチジンの短鎖(2個〜6個の炭素原子)脂肪酸エステルである。特に有利な化合物は、トリアセチルウリジンまたはトリアセチルシチジンである。
【0082】
(ウシジンホスホリラーゼのインヒビター)
ウリジンホスホリラーゼインヒビターの例は、5−ベンジルバルビツル酸、5−ベンジルオキシベンジルバルビツル酸、5−ベンジルオキシベンジル−1−[(1−ヒドロキシ−2−エトキシ)メチル]バルビツル酸、5−ベンジルオキシベンジルアセチル−1−[(1−ヒドロキシ−2−エトキシ)メチル]バルビツル酸、および5−メトキシベンジルアセチルアシクロバルビツル酸を包含する5−ベンジルバルビツル酸または5−ベンジリデンバルビツル酸誘導体、2,2’−アンヒドロ−5−エチルウリジン、5−エチル−2−デオキシウリジンおよびアシクロウリジン化合物、特に5−ベンジル置換アシクロウリジン類(ベンジルアシクロウリジン、ベンジルオキシベンジルアシクロウリジン、アミノメチル−ベンジルアシクロウリジン、アミノメチルベンジルオキシベンジルアシクロウリジン、ヒドロキシメチルベンジルアシクロウリジン、およびヒドロキシメチル−ベンジルオキシベンジルアシクロウリジンを包含するがこれらに限定されない)を包含するがこれらに限定されない。WO89/09603およびWO 91/16315(これらは本明細書中に参考として援用される)もまた参照のこと。
【0083】
(本発明の組成物)
本発明のlつの実施態様において、新規な薬剤組成物は、薬学的に受容可能なキャリアと共に、活性物質としてウリジン、シチジンあるいはオロチン酸またはその塩、およびこれらのピリミジンヌクレオチド前駆体のアシル誘導体よりなる群から選択されるlつ以上のピリミジンヌクレオチド前駆体よりなる。
【0084】
この組成物は、意図される用途および投与経路に依存して、液剤、懸濁剤、錠剤、カプセル剤、糖衣錠、注射可能溶液、または坐剤の形態で製造される(以下の処方の検討を参照のこと)。
【0085】
本発明の別の実施態様において、組成物は、少なくとも1つのピリミジンヌクレオチド前駆体およびウリジンの分解を阻害する薬剤(例えば、酵素ウリジンホスホリラーゼのインヒビター)よりなる。ウリジンホスホリラーゼインヒビターの例は、5−ベンジルバルビツル酸、5−ベンジルオキシベンジルバルビツル酸、5−ベンジルオキシベンジル−1−[(1−ヒドロキシ−2−エトキシ)メチル]バルビツル酸、5−ベンジルオキシベンジルアセチル−1−[(1−ヒドロキシ−2−エトキシ)メチル]バルビツル酸、および5−メトキシベンジルアセチルアシクロバルビツル酸を包含する5−ベンジルバルビツル酸または5−ベンジリデンバルビツル酸誘導体、2,2’−アンヒドロ−5−エチルウリジン、およびアシクロウリジン化合物、特に5−ベンジル置換アシクロウリジン類(ベンジルアシクロウリジン、ベンジルオキシベンジルアシクロウリジン、アミノメチル−ベンジルアシクロウリジン、アミノメチルベンジルオキシベンジルアシクロウリジン、ヒドロキシメチルベンジルアシクロウリジン、およびヒドロキシメチル−ベンジルオキシベンジルアシクロウリジンを包含するがこれらに限定されない)を包含するがこれらに限定されない。米国特許第5,077,280号およびWO91/16315(これらは本明細書中に参考として援用される)もまた参照のこと。さらに、エンドトキシンまたは炎症性メディエーターに対する組織抵抗性を改善する目的で、ピリミジンヌクレオチド前駆体と同時投与することなく、ウリジンホスホリラーゼのインヒビターのみを使用することも本発明の範囲内である。
【0086】
別の実施態様において、本発明の化合物は本発明の1つ以上の化合物に加えて、これもエンドトキシン毒性または敗血症を処置するに有用である少なくとも1つの以下の化合物を包含する:エンドトキシン、TNFまたはIL−1に結合する抗体または他のタンパク質;(エンドトキシンに結合し不活化する能力を利用しながらポリミキシンBの毒性を低下させるため)ポリマー性支持マトリックスに結合したポリミキシンB;IL−1またはTNFレセプターの拮抗物質;抗生物質;アラキドン酸カスケードのインヒビター;アルギニンまたはオルニチン;コルチコステロイド;グルコース;ATP;イノシン、アデノシン、またはそのアシル誘導体を包含するプリンヌクレオチド前駆体;サイクリックAMPまたはそのアシル誘導体。
【0087】
本発明の別の実施態様において、組成物は少なくともlつの本発明の化合物および抗菌性、抗真菌性、または抗ウイルス性化合物よりなる。
【0088】
(本発明の化合物および組成物の治療的使用)
本発明の化合物、組成物および方法は、動物におけるエンドトキシンまたは他の炎症性刺激物またはメディエーターに対する抵抗性を増強するに有用である。この化合物は、ピリミジンヌクレオチド前駆体ならびにウリジンの酵素分解を阻害する化合物を含む。
【0089】
本発明の化合物および組成物は、ヒトを包含する哺乳動物を処置するに有用である;しかし、本発明はそのように限定されることを意図せず、本発明の活性化合物の投与により有利な効果を得る全ての動物を処置することも本発明の意図内である。
【0090】
本発明の主要な特徴は、ウリジンヌクレオチド前駆体の投与が、インビボでエンドトキシンまたは他の炎症性刺激物またはメディエーターの毒性または致死作用に対する正常以上の抵抗性をもたらすことの発見である。
【0091】
さらに本発明は、エンドトキシン、他の炎症性刺激物、またはそのメディエーターに対する抵抗性を増強することを目的とする、ピリミジンヌクレオチド前駆体および/またはウリジンの異化を阻害する薬剤を含有する薬剤化合物または組成物の経口または全身性投与に具体化される。
【0092】
(SIRS、敗血症および敗血症ショック)
本発明の化合物、組成物および方法は、細菌性(グラム陽性とグラム陰性の両方)、ウイルス性、真菌性、または寄生虫性(例えばマラリア)生物体により引き起こされる敗血症を包含する全身性炎症性応答症候群(SIRS)による組織損傷を低下させるに有用である。これらの型の全ての感染性生物体は、組織損傷をもたらす内因性の炎症性メディエーターの形成または放出を刺激する。
【0093】
本発明の化合物および組成物は、敗血症の症状(例えば、発熱、好中球減少症、低血圧など)の患者に投与されるか、または敗血症の危険のある患者(例えば、手術患者、重篤な火傷または傷害患者、または尿路カテーテルを付けた患者)に予防的に投与される。
【0094】
本発明の化合物は、必要に応じて、敗血症を処置するに有用な、以下のlつ以上を包含するがこれらに限定されない他の薬剤と−緒に投与される:エンドトキシン、TNFまたはIL−1に結合する抗体または他のタンパク質;(エンドトキシンに結合し不活化する能力を利用しながらポリミキシンBの毒性を低下させるため)ポリマー性支持マトリックスに結合したポリミキシンB;IL−1またはTNFレセプターの拮抗物質;抗生物質;アラキドン酸カスケードのインヒビター;ロイコトリエン拮抗物質;アルギニンまたはオルニチン;コルチコステロイド;グルコース;ATP;イノシン;サイクリックAMPまたはそのアシル誘導体。本発明の化合物は、これらの他の薬剤の1つ以上に動物または患者を暴露する前、後、または最中のいずれかに投与される。
【0095】
敗血症による組織損傷の治療または予防のために、患者の治療応答と症状に依存して、約0.5から約40グラム/日の範囲、有利には3から30グラム/日の本発明の化合物の用量が投与される。重篤な敗血症症候群の患者には、本発明の化合物は典型的には、栄養懸濁剤または他の経腸栄養物を与えるために経鼻胃管が既に配置されている場合には特に、経鼻胃管を介して液剤または懸濁剤の形で投与される。それ程重篤な病気ではない患者は、典型的には本発明の化合物を液剤の形、またはカプセルまたは錠剤で投与される。本発明の化合物および組成物の経口投与に耐えられない患者(例えば胃腸管損傷に起因する全非経口的栄養摂取に依存する患者)は、静脈内注入により、ウリジン自身のような、十分に水溶性である本発明の化合物を与えられる。
【0096】
ショック、外傷または敗血症の発現後に、しばしは患者は、普通肝不全から始まる多臓器不全に至る高代謝の持続状態になる。高代謝相は、エンドトキシンとそのメディエーターの代謝調節に及ぼす影響によるものである(Cerraら、Molecular Cellular and Mechanisms of Septic Shock 中、265−277、AlanR.Liss、1989)。高代謝−臓器不全は、手術集中治療の患者の主要な死因の1つである。実施例に示されるように、本発明の化合物、組成物および方法は、エンドトキシン、または敗血症および器官不全の他のインデューサーを受けた動物の組織損傷を低減することにおいて、および生存を改善することにおいて有効である。本発明の化合物、組成物および方法は、高代謝器官不全の危険にある患者の処置において有用である。
【0097】
敗血症の重篤な結果は、凝固疾患、特に播種性血管内血液凝固(DIC)ヘと向かう傾向である。DICでは、血液凝固と繊維素溶解の両方が活性化しているため、血液凝固因子が急速に消費され、トロンビンの凝集が血流内に形成する。DICは、出血または血栓形成のいずれか(または両方)をもたらし得る。肝臓は、凝固因子の合成のための、およびトロンビンの微小凝集物を血流から一掃するための主要な部位である。本発明の化合物、組成物、および方法の保護的かつ治療的効果は、敗血症誘発性の血液凝固の変動を減少させる(実施例11を参照のこと)。
【0098】
(治療用サイトカインの毒性の低下)
エンドトキシンと他の炎症性刺激物の生物学的効果の多くは、標的細胞、特にマクロファージとクッパー細胞(肝臓に着生のマクロファージ)からの内因性の生物活性分子(メディエーター)の放出により媒介される。これの証拠は、C3H/HEJ株のマウスのマクロファージが遺伝子的にエンドトキシンに非応答性であり(エンドトキシンの暴露によるサイトカインの放出の点で)、エンドトキシンはこの株には比較的に非毒性であることである。しかし、これらのマウスはマクロファージから正常に放出される生物活性ペプチド(例えば、腫瘍壊死因子(TNF))に対しては感受性であり、LPSの毒性は正常マクロファージの移植により復帰する。TNFは一般にエンドトキシン毒性の主要なメディエーターであると考えられているが、インターロイキン−1(IL−1)や他の物質もエンドトキシン毒性と敗血症の発現に関与している。
【0099】
このように、本発明の化合物、組成物、および方法は、体内で産生される(特にマクロファージから)か、または体外の供給源から導入される(例えば、組み換えDNAと発酵技術により産生されたポリペプチド)炎症性サイトカインの生物学的効果を改変するのに有用である。
【0100】
種々の炎症性サイトカインおよびエンドトキシン自体さえ、治療適用の可能性を有する。腫瘍壊死因子は、その名前が示唆するように腫瘍を破壊し、インターフェロン−アルファの作用と相乗作用を示してウイルス感染を阻害することができる。こうしてTNF、および細菌のエンドトキシン自体(内因性TNFの放出を促す)さえ、癌の治療のために患者に投与されてきた。治療活性と毒性(臨床用途を限定している)との両方を有する炎症性サイトカインのクラスは、TNF、インターロイキンおよびインターフェロンを含む。本発明の化合物、組成物および方法は、炎症性刺激物の他にこのようなサイトカインの治療投与の間に発生する毒性を防止または治療するのに有用である。
【0101】
癌患者に静脈注入によりエンドトキシンを投与する時には、肝毒性により投与できるエンドトキシンの用量が制限される(Engelhardt Rら、Cancer.Res.、1991 51:2524−30)。非肝臓癌では、エンドトキシンからの肝臓の保護により、抗腫瘍効果を最大にするために、高用量エンドトキシン投与が可能である。エンドトキシンはまた、免疫刺激特性も有する。従って、本発明の化合物は、エンドトキシン、エンドトキシン類似体または誘導体(例えば、リピッドA、リピッドX、モノホスホリルリピッドAなど)またはそのメディエーターの治療指数を改善するのに有用である。肝毒性はまた、ヒトヘのTNFの意図的な投与の間、投与量を限定している(Kimuraら、CancerChemother. Pharmacol. 、1987、20:223−229)。多糖類グルカンまたはレンチナンのような酵母または真菌由来の炎症性刺激物もまた、感染症または癌の治療に免疫調節剤として治療に使用される(Seljelid、Scand.J. Immunol. 、1989、29:181−92;Bowersら、J. Surg. Res.、1989;47:183−8)。ポリイノシン−ポリシチジンのような2本鎖RNAもまた、癌または感染症の治療に炎症性刺激物として治療活性を有する。
【0102】
エンドトキシンの幾つかの作用を媒介する炎症性ペプチドであるインターロイキン−1(IL−1)は、同様に重要な治療可能性(例えば、癌の化学療法により生じた損傷後の肝細胞新生を復帰させる)を有するが、その毒性副作用により、その使用は制限されている。この毒性副作用は、本発明の化合物、組成物、および方法の利用により減弱させられ得る。
【0103】
インターロイキン−2(IL−2)は、種々の癌の治療に臨床的に使用される;これはまた、種々の感染症の治療およびワクチンヘの応答の調節において免疫調節剤として潜在的な活性を有する。IL−2に応答しての肝毒性は、癌治療のためにIL−2の治療用量を投与されている患者に稀なことではない(Viensら、J. Immunother. 、1992 11:218−24)。マウスヘのコンカナバリンAの投与により誘発される自己免疫性肝炎の実験モデルでは、肝臓損傷が内因性IL−2の産生の上昇に関連していることが報告されている(Tiegsら、J.Clin. Invest. 、1992 90:196−203);実施例10で証明されるように、本発明の化合物、組成物、および方法は、このモデルの肝臓損傷を減弱させるのに有効である。本発明の化合物、組成物、および方法は、IL−2と一緒に投与される時に副作用を低下させるのに有用である;さらに、本発明の化合物、組成物、および方法は、自己免疫性肝炎を治療するのに有用である。
【0104】
インターロイキン−6は、血小板産生を改善する治療能力を有し、肝臓のTNFレセプターを誘導し、そしてTNFに対する組織感受性を上昇させる。本発明の化合物、組成物、および方法は、IL−6、あるいはTNFに対する組織感受性、またはTNFの産生に影響する同様な物質との組合せで使用するのに有用である(Van Bladelら、Cytokine、1991 3:149−54)。
【0105】
特定の治療用サイトカインとピリミジンヌクレオチド前駆体および/またはウリジンホスホリラーゼ阻害剤との組合せは、特定の治療用サイトカインが有効であると知られる疾患の治療に使用される。例えば、インターロイキン−2は、腎臓癌、大腸癌、黒色腫、リンパ腫、白血病および他の新生物形成状態の治療に使用される。TNFは種々の型の癌に対して抗腫瘍効果を有するが、その毒性により、これまで治療での使用は制限されてきた(Kimuraら、Cancer. Chemother. Pharmacol.、1987;20:223−9)。エンドトキシンは著しい抗腫瘍効果を示している(EngelhardtRら、Cancer. Res. 、1991 51:2524−30)。
【0106】
治療用サイトカインの投与による毒性の防止あるいは治療のために、サイトカイン治療の期間に依存してlから数日間、毎日約0.5から40グラムのピリミジンヌクレオチド前駆体が投与される。ピリミジンヌクレオチド前駆体は、治療用サイトカインの投与の前、最中、または後に投与される。治療用サイトカインは、各サイトカインまたは炎症性刺激物について単純用量上昇検討で測定されるよりも、本発明のピリミジンヌクレオチド前駆体を投与する時に高用量のサイトカインが許容され得る場合を除いて、種々の型の癌の実験的および臨床的治療のために既に確立された特定の用量と用法で投与される。
【0107】
(炎症性肝炎;エンドトキシンまたはメディエーターが関係する肝疾患)
肝臓は、特に肝機能が障害されている時には、エンドトキシンまたはそのメディエーターによる損傷を受けやすい。エンドトキシンに対する肝臓の感受性を上昇させるか、またはエンドトキシンの浄化を阻害する多くの原因(例えば、コリン欠乏症、レイ症候群、またはアルコール)による肝臓損傷は、細菌のエンドトキシン(普通は腸から血流中への少量の漏出により門脈循環に存在する)またはエンドトキシンにより誘起されたメディエーターにより部分的に媒介される(Nolan、Gastroenterology、1975 69:1346−1356;Nolan 、Hepatology、198910:887−91)。癌の治療の可能な効果のためにエンドトキシンの意図的な注射をされる患者では、肝毒性のため投与量が制限される(Engelhardtら、CancerResearch、1991 51:2524−2530)。
【0108】
以下の実施例で証明されるように、本発明の化合物、組成物、および方法は、エンドトキシンおよび他の炎症性刺激物およびメディエーターにより誘発される肝臓損傷を著しく低下させる。本発明の化合物、組成物、および方法は、エンドトキシンまたは他の炎症性刺激物またはメディエーターによる肝毒性がその病因(いずれにせよ全身性敗血症症候群が存在する)に関与している種々多くの状態における肝臓損傷を治療、防止、または減弱させるのに有用である。エンドトキシンまたはそのメディエーター(例えばTNF)による肝臓への損傷が関与している状態は、以下の病状を含むがこれらに限定されない:
(A.レイ症候群)
レイ症候群は、急速な肝不全により特徴付けられ、インフルエンザおよび他のウイルス感染症の合併症として子供に最も一般的に見うけられる;アスピリンが危険因子であり得る。レイ症候群の病因は、エンドトキシンまたは炎症性メディエーターが関係していると考えられている。エンドトキシン血症はレイ症候群の大部分または全ての患者に見い出される;レイ症候群の動物モデルはエンドトキシンとアスピリンとの組合せでラットを処理することを包含する(Kilpatrickら、Metabolism、1989、38:73−7)。
【0109】
(B.アルコール性肝臓損傷)
エタノール中毒に伴う損なわれた精神的および肉体的制御に関連する課題に加えて、過度のエタノールの消費は、ヒトにおいて肝臓損傷の顕著な原因である。エンドトキシンとTNFとは、アルコールへの曝露に関連する肝臓の問題に寄与する。(Nolan JP、Hepatology 1989 10:887−91;AraiM、Nakano S、Okuno F、ら、Hepatology 1989;9:846−851;McClain CJ およびCohen DA、Hepatology1989;9:349−351)。
【0110】
(C.劇症肝炎)
急速に肝不全と死に至る劇症肝炎の病因と進行には腫瘍壊死因子が関与している(Aderkaら、Med Hypotheses、1988 27:193−6)。
【0111】
(D.ウイルス性肝炎)
エンドトキシンは、ウイルス性肝炎で生じる肝細胞損傷に寄与している。ウイルス肝炎は、動物モデルでエンドトキシンのLD50を低下させ、そして実験動物から内因性エンドトキシンを排除する(結腸切除または無菌齧歯類の使用により)と、ウイルスの抗原投与により引き起こされる肝臓損傷が低下する(Gutら、J. Infect. Disease.、1984、149:621)。肝炎の幾つかの場合には、Tリンパ球またはマクロファージにより媒介される、肝臓のウイルス感染への免疫または炎症性応答が、肝臓損傷に寄与している。いずれの情況でも、本発明の化合物、組成物、および方法は、ウイルス感染に関係する肝臓損傷を治療するのに有用である。実施例14は、本発明の化合物および方法が、ウイルス肝炎の動物モデルにおける生存を改善することを示す。
【0112】
免疫病理学は、ヒトのウイルス肝炎における肝臓傷害に寄与する。B型およびC型肝炎ウイルスは、必ずしも直接細胞に傷害を与えるわけではない。感染細胞に対する免疫応答が肝臓傷害に顕著に寄与するという実質的な証拠がある。活性化細胞障害性Tリンパ球は、抗原保持感染細胞を攻撃するが、また、次いで肝臓における炎症性白血球を集めおよび活性化し、そしてエンドトキシンのようなマクロファージアクチベーターに対する肝臓の感受性を増大する、γインターフェロンのようなサイトカインを放出する(Andoら、J.Exp. Med. 178:1541−1554、1993)。実施例10および12では、本発明の化合物、組成物、および方法の有益な効果が、エンドトキシンにより引き起こされる二次的な悪化を伴うかまたは伴わずに、T細胞媒介肝臓炎症性傷害の重要な特徴を模倣する実験モデル中で示されている。これらの実施例は、ウイルス肝炎、ならびに自己免疫肝炎および細胞媒介肝臓移植拒絶において、本発明の化合物、組成物、および方法の有用性を支持する。
【0113】
(E.寄生虫感染)
マラリア感染で生じる肝臓損傷と病的状態は、部分的にTNFにより媒介される(Clarkら、Am. J. Pathol、1987、129:192−9)。
【0114】
(F.全非経口栄養での肝臓損傷)
肝臓合併症は、全非経口栄養(TPN)を受け、そして基礎となる肝臓疾患を持たない患者で一般的である;既存の肝臓傷害の悪化もまたTPNの間に起こる。Pappoら(J.Surg. Res., 1991、51:106−12)は、腸内グラム陰性細菌の過剰増殖に由来するエンドトキシン(LPS)が、TPN−関連肝臓脂肪症の原因であり、しかもポリミキシンBの腸浄化および特異的抗−LPS活性が、TPNの間の肝臓の脂肪浸潤を低減することを報告した。ポリミキシンBは、LPSに結合してそれを不活性化し、ヒトにおいて毒性であるが、しかし、TPNの間に観察される肝障害が実際にエンドトキシンまたはTNFにより一部媒介されることを示すために役に立つ。従って、TPN溶液中に有効量の本発明の化合物を含めることは、TPN誘導肝臓損傷の低減、および基礎となる炎症性肝臓傷害を治療するために有用である。本発明の化合物、特にウリジン、シチジン、オロチン酸、またはその可溶性塩およびエステルは、TPN処方物に含まれるか、または別々であるがTPN注入と同時に投与されるかのいずれかである。代表的なTPN処方物は、静脈内投与に受容可能な形態で栄養的要求を満たすために必要な基礎栄養分を含む。従って、タンパク質またはデンプンのような高分子食物成分が、部分的または完全に消化された形態、例えば、アミノ酸または糖で提供される。代表的なTPN処方物は、アミノ酸および糖のみならず、ビタミン、ミネラル、および脂肪のような他の必要な栄養分を含む。TPN処方物と組み合わせて、またはその成分として用いられる本発明の化合物の好ましい用量は、ボーラス注入としてまたは持続注入としてのいずれかで、1日あたり1〜40グラムの範囲(通常1日あたり2〜20グラムの範囲)である。
【0115】
本発明の本実施態様の意味では、本発明の化合物、組成物、および方法から利益を得るために、患者は、患者の栄養要求性のすべてを、非経口経路により受ける必要はない。しかし、本発明の本実施態様では、患者は、患者の栄養要求性の50%またはそれ以上を、静脈内注入により受ける場合が特に有利である。
【0116】
(G.鉛中毒)
鉛中毒は、エンドトキシンに対する感受性を劇的に上昇させる。鉛が誘発する肝臓の代謝の妨害が、エンドトキシン毒性に及ぼす鉛の効果に関係している(Takiら、Eur.Surg. Res.、1985、17:140−9)。
【0117】
(H.部分的肝切除)
部分的肝切除(例えば、癌組織の除去のため)後、肝不全による病的状態と死亡は稀なものではない。部分的肝切除後に再生している動物の肝臓組織は、エンドトキシンおよびメディエーターの有害な影響に非常に過敏である(Shiraiら、Acta Pathol. Jpn. 、1987、37:1127−1134)。
【0118】
(I.麻酔後肝炎)
ハロタンのような吸入麻酔薬は、肝臓血流も損傷されている場合には特に、肝炎を誘発し得る。麻酔後肝炎の病因にはエンドトキシンが関わっている(Lomantoら、Anesth. Analg. 、1972、51:264−270);従って、本発明の化合物は、肝炎を防止および治療するために、(予防的に、治療的に、またはその両方で)吸入麻酔を受けている患者への投与に有用である。外傷自体が麻酔後肝炎に寄与し得る。さらに外傷はしばしば、血流を介する腸管から他の組織への細菌およびエンドトキシンの移動を誘発する。手術患者は、最もエンドトキシン中毒(感染による)を受けやすい群に属する。従って、ピリミジンヌクレオチド前駆体による手術患者の治療(手術の前、最中、または後に)は、エンドトキシン中毒に対する耐性を著しく改善する。
【0119】
(J.胆汁鬱帯肝炎)
胆管閉塞または肝臓内胆汁鬱帯による肝障害は、部分的に腸由来のエンドトキシンが原因である(Shibayama Y、1989、J. Pathol. 159:335−9)。
【0120】
(K.肝臓移植)
肝臓移植片を受ける患者では、手術前および非肝炎期間の終わりの高レベルのエンドトキシンまたは炎症性メディエーターの存在は、移植不全および高い死亡率をともなう。移植片の一次不機能を伴う患者は、典型的には、重度の内毒素血症を有する。内毒素血症は、手術にともなう合併症および移植片損失の影響よりむしろ原因として関与する(Yokoyamaら、1989、Transplant Proc. 21:3833−41)。臨床状況では、ヒトのような動物は、本発明の化合物を、移植後、溶腸性または非経口的に、1日あたり約1〜約40グラムの範囲の用量、典型的には2〜20グラムで、有利には1〜約4の用量または連続的に分割して若しくは断続的に溶腸または非経口注入により投与されることで与えられる。本発明の化合物はまた、投与前に、必要に応じて溶腸また非経口栄養処方物中に取り込まれる。患者は、しばしば、肝臓移植後数日間、より完全な非経口または溶腸栄養分の代わりとして、静脈内等張(5%)グルコースを与えられる。本発明の化合物、特にウリジンまたはシチジンは、有利には、1〜10%グルコースの水溶液中に処方される。好ましい実施態様では、1日あたり1〜40グラム、有利には2〜20グラムのピリミジンヌクレオチド前駆体が1日あたり投与される。肝臓疾患または移植からの回復におけるピリミジンヌクレオチドの第2の利点は、末梢のグルコース利用を改善することである。
【0121】
ドナーの肝臓はまた、本発明の化合物、有利には、ウリジン、シチジン、オロチン酸またはその塩またはアシル誘導体を含む溶液で、レシピエントの移植前または移植の間に灌流され得る。ピリミジンヌクレオチド前駆体、特にウリジンは、10マイクロモル〜10ミリモルの範囲の濃度で肝臓灌流溶液(適切なイオンおよびグルコースのような他の代謝産物もまた含む)に含まれる。
【0122】
エンドトキシンおよび炎症性メディエーターはまた、他の肝臓疾患にも関与している;上述の具体例の多様性は、本発明の化合物、組成物、および方法が広い範囲の肝臓疾患を治療または防止するのに有用であることを示すのに役立つ。
【0123】
炎症性肝炎の治療のためには、毎日0.5から40グラム(有利には3から30グラム)のピリミジンヌクレオチド前駆体が、有利には1から約4用量に分割して投与される。治療用法の期間は、臨床症状の改善度に依存する;典型的には、急性炎症性肝臓疾患は、慢性変性状態よりも治療に要する期間は短い。
【0124】
(他の疾患)
実施例2、4−6、および9に証明されるように、本発明の化合物は、エンドトキシンまたは真菌の炎症性物質であるチモサンで処理した動物の血清クレアチンホスホキナーゼ(CPK)レベルによって示される通り、肝臓以外の組織(例えば筋肉)を保護する。血清CPK活性は、骨格筋または心筋への損傷の結果として上昇する。
【0125】
悪液質、体重減少症候群、組織消耗および栄養分の誤用は、ガン患者における共通の合併症である。TNFおよび他の炎症性サイトカインは、悪液質状態の開始および維持に関与する;「カケクチン」はTNFと同義語である。本発明の化合物、組成物、および方法は、悪液質の患者を治療するために有用である。
【0126】
循環血からのエタノールの浄化は、酵素アルコールデヒドロゲナーゼのレベルに加えて、肝臓におけるエネルギー代謝および酸化還元バランスに大きく依存するプロセスである。実施例13は、本発明の化合物が重度のエタノール中毒からの回復を改善することを示す。本発明の化合物および組成物は、アルコール中毒、および肝臓傷害のような慢性アルコール摂取の長期健康結果に起因する精神的および肉体的損傷の両方の重篤度を減少することにおいて有用である。本発明の化合物(例えば、トリアセチルウリジン、ウリジンまたはシチジン)は、エタノール摂取前、摂取の間、または摂取後に、1日あたり0.5〜40グラム、有利には1〜20グラムの用量で経口的に投与される。
【0127】
(動物への適用)
ウマや他の大型動物では、エンドトキシンの腸から全身循環血への流入の1つの結果である、蹄葉炎として知られる一般的な症候群がある(しばしば動物が炭化水素の多い食物を過食した後、腸内細菌の菌叢が変化して起こる)。本発明の化合物、組成物、および方法は、エンドトキシンによる組織損傷を減弱させるため、動物において蹄葉炎および他のエンドトキシン中毒の影響を治療または防止するのに有用である。
【0128】
(本発明の化合物および組成物の投与ならびに処方)
本発明の化合物および組成物は、処置される症状および患者の状態に依存して、経口、非経口の注射、静脈内、または他の手段で投与される。
【0129】
本発明の化合物および組成物は、慢性的に、間欠的に、または必要ならば急性に投与される。エンドトキシン毒性または全身性炎症性症候群に関係する事象の場合には、この化合物および組成物は、このような事象の前、間、または後に投与される。
【0130】
薬理学的に活性な化合物は、必要に応じて、この活性化合物の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む、適切な薬学的に受容可能なキャリアと組合せられる。これらは、錠剤、糖衣錠、カプセル、および坐剤として投与される。この組成物は、例えば、経口で、直腸内に、膣内に投与されるか、または口内の頬面窩洞(buccal pouch)を通じて放出され、そして溶液の形態で注射、経口的または局所的投与により適用され得る。この組成物は、約0.l〜99パーセント、好ましくは約50〜90パーセントの活性化合物を、賦形剤と共に含有し得る。
【0131】
注射または静脈内注入による非経口投与のために、活性化合物は、滅菌水または生理食塩水のような水性媒体に懸濁または溶解される。注射可能な溶液または懸濁液は、必要に応じて、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンエーテルのような界面活性剤、またはプロピレングリコールまたはエタノールのような可溶化剤を含有する。この溶液は、典型的には、1〜25%の活性化合物を含有する。本発明の1つの実施態様では、水性媒体は、水または等張生理食塩水中の1〜10%グルコースの溶液である。いくつかの状況では、グルコースと本発明の化合物(特に、ウリジン)との同時静脈内投与が有利である。ウリジン(およびウリジンのアシル誘導体)は、グルコースの末梢グルコース利用を改善し、そしてインシュリン(これは、一般には、グルコースまたは他の炭水化物またはいくつかのアミノ酸に応答して膵臓から放出される)は、細胞によるヌクレオシドの取り込みおよび利用を増強する。
【0132】
非経口投与される栄養物と共の使用のために、本発明の化合物は、非経口投与される栄養生成物の製造の間、または患者への投与のすぐ前のいずれかに、このような生成物中に溶解または懸濁される。ピリジミンヌクレオチド前駆体の濃度は、経口栄養処方物中で調整され、その結果、1〜40グラム、一般には、2〜20グラムが、非経口投与される栄養生成物の注入の間に1日あたり送達される。代表的には非経口投与される栄養処方物は、静脈内投与に適切な滅菌組成物において、アミノ酸、炭水化物、脂質、ビタミン類、および無機物の栄養的に適切な部分を含有し、そして送達する。
【0133】
適切な賦形剤は、糖類(例えば、乳糖、蔗糖、マンニトールまたはソルビトール)、セルロース調製物および/またはリン酸カルシウム(例えば、リン酸三カルシウムまたはリン酸水素カルシウム)のような充填剤、ならびに(例えば、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉または馬鈴薯澱粉を使用した)澱粉糊、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドンのような結合剤を含む。
【0134】
補助剤は、流動性調節剤および潤滑剤を含み、それらは、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸またはその塩(例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウム)、および/またはポリエチレングリコールである。糖衣錠の芯は、所望であれば、胃液に抵抗性である適切な被覆で提供される。この目的のために、必要に応じて、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー溶液および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含有する、濃縮糖溶液が使用される。胃液に抵抗性の被覆を生成するために、フタル酸アセチルセルロースまたはフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースのような、適切なセルロース調製物の溶液が使用される。例えば識別のため、または異なる化合物の用量を特徴づけるために、錠剤または糖衣錠の被覆に染料または顔料が、必要に応じて添加される。
【0135】
本発明の薬剤調製物は、それ自体公知の様式、例えば、従来の混合、顆粒化、糖衣錠調製、溶解、または凍結乾燥で製造される。従って、経口使用のための薬剤調製物は、活性化合物を固体賦形剤と合わせて、必要に応じて、得られる混合物を粉砕し、そして顆粒の混合物を加工し、所望であれば、適切な補助剤を添加後に、錠剤または糖衣錠の芯を得ることにより得られる。
【0136】
経口送達に有用な他の薬剤調製物は、ゼラチンで作られた押し型のカプセル(push−fit capsule)、およびゼラチンと可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトール)とから作られたソフトに密封されたカプセル(soft−sealedcapsule)を含む。押し型のカプセルは、必要に応じて、乳糖などの増量剤、澱粉などの結合剤および/またはタルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、および必要に応じて、安定化剤と混合された、顆粒形態の活性化合物を含有する。ソフトに密封されたカプセルでは、活性化合物は、好ましくは、適切な液体(例えば、脂肪油、液体パラフィン、またはポリエチレングリコール)に溶解または懸濁される。さらに、安定剤が、必要に応じて添加される。経口投与のための他の処方は、溶液剤、懸濁剤、または乳剤を含む。特に、腸カテーテル(例えば、鼻胃チューブ)を介する投与に適切な液体形態が、特に寝たきりのまたは意識不明の患者に有利である。
【0137】
直腸に使用される薬剤調製物は、例えば、活性化合物と坐剤基剤との組合せよりなる坐剤を含む。適切な坐剤基剤は、例えば、天然または合成トリグリセリド、パラフィン炭化水素、ポリエチレングリコールまたは高級アルカノールである。さらに、活性化合物と基剤との組合せよりなるゼラチン直腸用カプセルは有用である。基剤物質は、例えば、液体トリグリセリド、ポリエチレングリコール、またはパラフィン炭化水素を含む。
【0138】
非経口投与のための適切な処方物は、水溶性の形態(例えば、水溶性塩)の活性化合物の水溶液を含む。さらに、油性注射用懸濁液に適した活性化合物の懸濁液が投与される。適切な脂肪親和性溶媒またはビヒクルは、脂肪油(例えば、ゴマ油)または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルまたはトリグリセリド)を含む。水性注射懸濁液は、必要に応じて、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランを含む、懸濁液の粘性を増加させる物質を含む。この懸濁液は、必要に応じて、安定化剤を含有する。
【0139】
(本発明の化合物の合成)
ピリミジンヌクレオシドのアシル化誘導体は、ピリミジンヌクレオシドまたは同種の化合物を活性化カルボン酸と反応させることにより合成される。活性化カルボン酸は、適切な試薬で処理されて、元のカルボン酸の場合よりも、そのカルボン酸炭素が求核攻撃を受けやすくしたものである。本発明の化合物の合成に有用な活性化カルボン酸の例は、酸塩化物、酸無水物、n−ヒドロキシスクシンイミドエステル、またはBOP−DCで活性化したカルボン酸である。カルボン酸はまた、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)のようなカップリング試薬で、ピリミジンヌクレオシドまたは同種の化合物に結合し得る。
【0140】
本発明のアシル化合物の調製の間、所望のアシル誘導体の酸供給源がアシル化反応を妨害する基(例えば、ヒドロキシルまたはアミノ基)を有する場合、これらの基は、無水物の調製の前に、保護基(例えば、それぞれt−ブチルジメチルシリルエーテルまたはt−BOC基)でブロックされる。例えば、乳酸は、t−ブチルジメチルクロロシランで、続いて得られるシリルエステルを水性塩基で加水分解して2−t−ブチルジメチルシロキシプロピオン酸に変換される。保護された酸をDCCと反応させることにより、無水物が形成される。標準的技術を用いてアミノ酸でN−t−BOC誘導体が調製され、次いでDCCで無水物に変換される。1より多いカルボキシレート基を含有する酸(例えば、コハク酸、フマル酸、またはアジピン酸)で、所望のジカルボン酸の酸無水物を、ピリジンまたはピリジン+ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミド中で、ピリミジンヌクレオシドと反応させる。
【0141】
適切な溶媒(特に(i)塩化メチレンと(ii)ジメチルアセトアミドまたはジメチルホルムアミドとの混合物)中でDCCを使用して、標準的方法により、シチジンの環外アミノ基、およびピリミジンヌクレオシドまたはその同種化合物のアルドース残基上のヒドロキシル基に、アミノ酸を結合させる。
【0142】
非メチル化ピリミジンヌクレオシドのカルビルオキシカルボニル誘導体は、ピリジンまたはピリジン+ジメチルホルムアミドのような溶媒中で、無水条件下で、ヌクレオシドを適切なカルビルクロロホルメートと反応させることにより調製される。溶媒を減圧下で除去して、そして残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製する。
【0143】
本発明の化合物を調製するために、他の合成方法を使用し得ることは、当業者には明白である。
【0144】
下記の実施例は、本発明の方法および組成物を説明するものであり、これを限定するものではない。当業者に明白な、臨床治療で普通に遭遇する種々の条件やパラメーターの他の適切な改変や適合は、本発明の精神および範囲内である。
【実施例】
【0145】
(実施例1:トリアセチルウリジンおよびウリジンは、死滅E.Coliで処置したマウスの生存率を改善する)
目的:
敗血症症候群は、主要なトリガーが細菌の細胞壁の成分であるエンドトキシンであるので、グラム陰性細菌(生きていないものであっても)により開始され得る。本研究の目的は、経口のトリアセチルウリジンと非経口のウリジンが、死滅E.Coliの致死用量で処置したマウスの生存率に対する効果を測定することであった。
方法:
18匹の雌性Balb/cマウス(8週齢)を各6匹の動物の群に分割した。全てのマウスに、0.2mlの生理食塩水中で超音波処理により懸濁した、500マイクログラムのE.Coli(血清型0111:B4)のアセトン粉末を投与した。1群のマウスには、E.Coliの投与の2時間前に腹腔内注射によりウリジン(0.2ml生理食塩水中、2000mg/kg)を投与した。別の群のマウスには、経口挿管法によりトリアセチルウリジン(1:1のコーン油/2.5%Tween80を含有する水のビヒクル中、6000mg/kg)を投与した。生存を、1週間モニターした。
A.n=6、E.Coli(コントロール)
B.n=6、E.Coli(コントロール)+Urdi.p.
C.n=6、E.Coli(コントロール)+TAUp.o.
結果:
コントロール群の動物は、ショックに陥ったように見え、そしてE.Coli粉末の投与の18時問後に低体温になった。処置群の動物は、観察期間の最初の48時間を通じて外被(coat)がぼさぼさであったが、活動的であり、そして体温を維持していた。48時間生存した動物は完全に回復した。E.Coliのみで処置したマウスは全て48時間以内に死亡した。ウリジンまたはトリアセチルウリジンのいずれかで処置したマウスは全て、死滅E.Coliの投与にもかかわらず生存した。
【0146】
(実施例2:エンドトキシン損傷からの組織の保護におけるウリジンの用量応答研究)
目的:
本研究の目的は、エンドトキシン(LPS)によって引き起こされる炎症性組織損傷の防止におけるウリジンの用量応答特性を決定することであった。
方法:
雌性Balb/Cマウス(8週齢)を各6匹の動物の6群に分割した。1群の動物は、組織損傷の血清化学指標の基礎値を提供するために未処置のままにした。残りの5群のマウスに、100マイクログラムのSalmonellaTyphimuriumエンドトキシンをi.p.注射により、容量0.2mlの生理食塩水で投与した。エンドトキシン投与の2時間前に、5群のマウスにそれぞれ0、500、1000、2000および4000mg/kg i.p.の用量(生理食塩水0.2ml中)のウリジンを投与した。エンドトキシン投与の18時問後、組織損傷の指標の血清化学値の測定のために、血液試料を集めた。
結果:
ウリジンは、エンドトキシン投与からの損傷に対して、組織の用量依存的保護を生じた。ALT、AST、およびSDHは肝臓損傷の特異的指標であり;CPKは筋肉に対する損傷の指標であり;LDHは肝臓と筋肉の両方から放出される。本実験ではマウスにおける最も有効なウリジンの用量は、2000mg/kgであった。
【0147】
【表1】

ALT=アラニンアミノトランスフェラーゼ
AST=アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
LDH=乳酸デヒドロゲナーゼ
CPK=クレアチンホスホキナーゼ
SDH=ソルビトールデヒドロゲナーゼ。
【0148】
(実施例3:経口トリアセチルウリジンは致死用量のSalmonella Typhimuriumエンドトキシンで処置したマウスの生存率を改善する)
目的:
グラム陰性細菌により引き起こされる敗血症症候群は、主に、細菌壁のリポ多糖構成成分であるエンドトキシンにより媒介される。本実験の目的は、経口投与したウリジンプロドラッグ(トリアセチルウリジン;TAU)が、致死用量の精製したSalmonella Typhimuriumエンドトキシン(LPS)で処置したマウスの生存率に対する効果を決定することであった。
方法:
20匹の雌性Balb/Cマウス(8週齢)を、各10匹の動物の2群に分割した。全てのマウスに、100マイクログラムのSalmonellaTyphimuriumエンドトキシンを腹腔内注射により、0.2mlの生理食塩水で投与した。1群のマウスには、経口挿管法によりトリアセチルウリジン(1:1のコーン油/2.5%Tween80を含有する水のビヒクル中、6000mg/kg)を投与した。生存を1週間モニターした。
結果:
エンドトキシン単独を投与した10匹の動物は全て、48時間以内に死亡した。経口TAUを投与した10匹のマウスのうち9匹は、7日間の観察期間の間生存し、そして完全に回復したようであった。
【0149】
(実施例4:経口トリアセチルウリジンはエンドトキシンにより引き起こされる組織損傷を低下させる)
目的:
細菌性エンドトキシンは、酵素および他の組織の完全性および機能のマーカーの血清レベルを測定することにより、評価および定量し得る、肝臓および他の臓器に対する損傷を引き起こす。本研究の目的は、エンドトキシンによる組織損傷を減弱させることにおける、経口投与したトリアセチルウリジン(TAU)の用量応答特性を決定することであった。
方法:
雌性Balb/Cマウス(8週齢)を各5匹の動物の群に分割した。1群の動物は、組織損傷の血清化学指標の基礎値を提供するために未処置のままにした。他の4群のマウスに、100マイクログラムのSalmonellaTyphimuriumエンドトキシンをi.p.注射により容量0.2mlの生理食塩水で投与した。3群のエンドトキシン処置マウスには、エンドトキシンの2時間前に、2000、4000、および6000mg/kgの用量で、経口挿管法により、容量0.4mlでTAUも投与した。TAUは、水中のl%カルボキシメチルセルロースの懸濁液として処方された。残りの群(コントロール)には、経口挿管法によりカルボキシメチルセルロースビヒクルを投与した。
結果:
経口TAU投与により、組織損傷の血清化学指標のレベルが低下した。エンドトキシン誘導性臓器損傷の防止に対する有利な効果は、用量依存的であった。
【0150】
【表2】

ALT=アラニンアミノトランスフェラーゼ
AST=アスパラギン酸アミノトランスフェラ−ゼ
LDH=乳酸デヒドロゲナーゼ
CPK=クレアチンホスホキナーゼ
SDH=ソルビトールデヒドロゲナーゼ。
【0151】
(実施例5:ウリジンはエンドトキシン毒性のポテンシエーターとしてのカラゲーニンで処置したマウスにおいて組織損傷を低下させる)
カラゲーニンは、エンドトキシンに対する全身性炎症性応答の主な細胞性メディエーターであるマクロファージの活性を改変する、海草から得られる多糖である。マクロファージは、エンドトキシンに応答して炎症性ペプチドおよび他の化合物を放出する。カラゲーニン前処置は、マクロファージを感作し、その結果、重篤な全身性炎症性応答を起こすために必要なエンドトキシンは正常よりずっと少ない。さらに、炎症性メディエーターの多少異なるスペクトルは、エンドトキシン単独に比較したカラゲーニン+エンドトキシンの組合せの毒性効果に関与する(Franksら、Infection and Immunity 、59:2609−2614[1991])。本実験の目的は、カラゲーニンとエンドトキシンとの組合せにより誘導される組織損傷に対するウリジンの効果を測定することであった。
方法:
雌性Balb/Cマウス(8週齢)を各6匹の動物の5群に分割した。1群の動物は、組織損傷の血清化学指標の基礎値を提供するために未処置のままにした。他の4群のマウスに、0.2m1の生理食塩水中の2mgのλカラゲーニンをi.p.注射により投与した;これらの群のうちの3群には、1時間後、2マイクログラムのSalmonellaTyphimuriumエンドトキシンも、またi.p.注射により容量0.2mlの生理食塩水で投与した。カラゲーニンとエンドトキシンの両方を投与した群のうちの2群にはウリジン(0.2ml生理食塩水中、2000mg/kgi.p.)も投与した;1群は、エンドトキシンの投与の30分後、ウリジンで処置され、そして他の1群は、エンドトキシン投与の24、6、および2時間前に、3回のウリジン前処置を、2000mg/kg/用量i.p.で行った。エンドトキシン投与の18時間後、組織損傷の指標の血清化学値の測定のために、血液試料を集めた。
結果:
カラゲーニンと低用量のエンドトキシン(2mg)との組合せは、血清化学指標により評価されるように著しい組織損傷を生じた。エンドトキシン投与の前または後のいずれかでのウリジンによる処置により、カラゲーニン−エンドトキシン組合せによる組織損傷の著しし低下を生じた。以下にデータを示す。
【0152】
【表3】

ALT=アラニンアミノトランスフェラーゼ
AST=アスパラギン酸アミノトランスフェラ−ゼ
LDH=乳酸デヒドロゲナーゼ
CPK=クレアチンホスホキナーゼ
SDH=ソルビトールデヒドロゲナーゼ。
【0153】
(実施例6:ウリジンはチモサン処置マウスの生存率を改善する)
目的:
チモサンは、全身性炎症と補体の活性化を誘発する、主として多糖類の酵母の成分である。真菌感染では一般に(酵母の感染を含むが限定はされない)、このような多糖類が敗血症応答の誘導に関与する。齧歯類へのチモサンの投与は、多臓器不全症候群の適切なモデルであると考えられている(ゴリス(Goris)ら、(1986)Arch. Surg. 121:897−901;スタインバーク(Steinberg)ら、(1989)Arch.Surg. 124:1390−1395)。チモサンの最小致死量での死亡率は、一部腸から細菌や細菌毒素を血流中へ移動させる、腸の損傷に基づく(デイチ(Deitch)ら、(1992)J. Trauma 32:141ー147)。
方法:
メスのBalb/Cマウス(8週齢)を各5匹の動物の群:
l.チモサン15mg
2.チモサン15mg+ウリジン
3.チモサン20mg
4.チモサン20mg+ウリジン
5.基礎
に分割した。
【0154】
チモサンAを50mg/mlの濃度で鉱物油に懸濁して、腹腔内注射により投与した。チモサンの投与の2時間前に、ウリジン(2000mg/kg)を腹腔内注射により体積0.2m1で投与した。
【0155】
チモサンの投与の18時問後、その後の組織損傷の血清化学指標の測定のために、20mgのチモサン投与したマウスの両群および基礎(未処置)群から血液試料を集めた。
結果:
(A.48時間後の生存:)
群 生存
チモサン15mg/kg 0/5
チモサン15mg/kg+ウリジン 5/5
チモサン20mg/kg 0/5
チモサン20mg/kg+ウリジン 3/5
(B.14日後の生存(完全回復))
チモサン15mg/kg 0/5
チモサン15mg/kg+ウリジン 4/5
ウリジンは、チモサン処置マウスの生存期間および長期生存動物の発生率を著しく改善した。
【0156】
(C.組織損傷の血清化学指標)
【0157】
【表4】

ALT=アラニンアミノトランスフェラーゼ
AST=アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
LDH=乳酸デヒドロゲナーゼ
CPK=クレアチンホスホキナーゼ
SDH=ソルビトールデヒドロゲナーゼ。
【0158】
(実施例7:エンドトキシン処置マウスの生存率に及ぼすウリジン対アルギニンの効果の比較)
目的:
アミノ酸のアルギニンは敗血症症候群に有利な効果を有することが報告されている(レオン(Leon)ら、J. Parenteral and Enteral Nutrituion 、1991、15:503−508)。本研究の目的は、ウリジンの効力を、敗血症症候群での肝機能を支持しこの目的で臨床的に使用されている薬剤であるアルギニンの効力と比較することであった。
方法:
体重25グラムのメスのBalb/Cマウスを各5または6匹の動物の5群に分割した。残りの5群のマウスに、125マイクログラムのSalmonellaTyphimuriumのエンドトキシン(LPS)を体積0.2mlの生理食塩水で腹腔内注射により投与した。エンドトキシン投与の2時間前に、5群のマウスに、
1)生理食塩水(コントロール)
2)ウリジン2000mg/kg
3)アルギニン25mg/kg
4)アルギニン250mg/kg
5)アルギニン1250mg/kg
を注射した。全ての薬剤は0.2mlの生理食塩水で腹腔内投与した。各群の生存マウスの数を16、20、および24時間後に測定した。
結果:
LPSの16時問後、コントロール動物では1匹のみが生存していた;対照的にウリジンまたはアルギニンで処置した動物の大部分はこの時点で生存していた。しかしエンドトキシンの投与から24時間後までには、ウリジンで処置した群にのみ生存動物がいた。アルギニンの3用量全てが生存期間を改善(しかし長期生存動物は生じなかった)し、そして最低用量(25mg/kg)が最高用量(1250mg/kg)よりも有効であった。エンドトキシン処置動物の生存率を促進することにおいて、ウリジンはアルギニンよりも明白に有効であった。
【0159】
【表5】

(実施例8:オロチン酸はSalmonella Typhimuriumのエンドトキシンで処置したマウスの生存率を改善する)
目的:
グラム陰性細菌により引き起こされる敗血症症候群は、主に細菌壁のリポ多糖類成分であるエンドトキシンにより媒介される。本実験の目的は、致死量の精製したSalmonella Typhimuriumのエンドトキシンで処置したマウスの生存率に及ぼすオロチン酸塩の効果を測定することであった。
方法:
20匹のメスのBalb/Cマウス(8週齢)を各10匹の動物の2群に分割した。1群のマウスは、オロチン酸リジンで4回処置した(200mg/kg/用量;連続した2日間の各々に午前9時と午後2時に)。オロチン酸リジンは、オロチン酸の水溶性塩である;リジン単独ではエンドトキシン処置マウスの生存率を改善しない。コントロール動物には、同じ処置スケジュールで0.2mlの無菌水を投与した。オロチン酸リジンの最後の投与直後に、100マイクログラムのSalmonellaTyphimuriumのエンドトキシン(LPS)を腹腔内注射により0.2mlの生理食塩水で、全てのマウスに投与した。生存を1週間モニターした。
結果:
コントロール群の全てのマウスが48時間以内に死んだ。オロチン酸リジンで処置した10匹のマウスの内9匹が全72時間の観察期間生存し、まだ生存しており、LPS投与の1週間後に完全に回復したようであった。
【0160】
【表6】

(実施例9:オロチン酸はエンドトキシン損傷に対して組織を保護する)
目的:
本研究の目的は、エンドトキシンにより引き起こされる炎症性組織損傷の防止におけるオロチン酸の保護効果を証明することであった。
方法:
メスのBalb/Cマウス(8週齢)を各6匹の動物の3群に分割した。l群の動物は、組織損傷の血清化学指標の基礎値を得るために未処置のままにした。残りの2群のマウスに、100マイクログラムのSalmonellaTyphimuriumのエンドトキシン(LPS)を腹腔内注射により体積0.2mlの生理食塩水で投与した。エンドトキシン投与の2時間前に、1群のマウスに、100mg/kgの遊離オロチン酸に相当する用量でオロチン酸リジンを投与した。エンドトキシン投与の18時間後、組織損傷の指標の血清化学含有量の測定のために血液試料を集めた。
結果:
オロチン酸塩は、エンドトキシン投与による損傷に対して組織を保護した。
【0161】
【表7】

ALT=アラニンアミノトランスフェラーゼ
AST=アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
LDH=乳酸デヒドロゲナーゼ
CPK=クレアチンホスホキナーゼ
SDH=ソルビトールデヒドロゲナーゼ。
【0162】
(実施例10:ウリジンおよびトリアセチルウリジンはコンカナバリンAにより引き起こされる肝臓損傷を減弱させる)
目的:
インターロイキン−2(IL−2)は、数種の癌の治療に臨床的に使用されている。IL−2に応答する肝毒性は、癌治療のためにIL−2の臨床用量を投与されている患者には稀なものではない。(ヴィーンズ(Viens)ら、J. Immunother. 、1992 11:218−24)。マウスヘのコンカナバリンA(ConA)の投与により誘発される自己免疫性肝炎の実験モデルで、肝臓損傷は内因性IL−2の産生の上昇に関係していることが報告されている(ティーグス(Tiegs)ら、J.Clin. Invest. 、1992 90:196−203)。本研究の目的は、ConAの投与により開始する肝臓損傷を減少させることにおける、本発明の化合物と方法の有用性を証明することであった。
方法:
メスのBalb/Cマウス(8週齢)を各5匹の動物の4群に分割した。1群の動物は、組織損傷の血清化学指標の基礎値を得るために未処置のままにした。残りの3群のマウスには、10mg/kgのコンカナバリンAを静脈(尾静脈)注射により体積0.2mlの生理食塩水で投与した。ConA投与の2時間前に、これらの内の1群のマウスに、ウリジン(0.2mlの生理食塩水中、2000mg/kg腹腔内投与)を投与し、別の1群にトリアセチルウリジン(2.5%のツイン80を含有する0.6mlの1:1コ一ン油/水乳液中、6000mg/経口)を投与した;残りのConA処置群(コントロール)に、ConAの2時間前に腹腔内投与により0.2mlの生理食塩水を投与した。ConAの投与の20時間後、組織損傷または代謝機能不全の種々の指標の血清レベルの測定のために、全てのマウスから血液試料を集めた。
結果:
酵素ALT、AST、およびSDHの血清レベルにより評価されるように、ConA投与は、肝臓に著しい損傷をもたらした。ConAは、主に筋肉に見い出される酵素であるクレアチンホスホキナーゼ(CK)のレベルを顕著には上昇させなかった;このモデルでのConAによる組織損傷は、エンドトキシンによる損傷よりも特異的に肝臓に局在している。表8に示すように、ウリジンおよびTAUは両方ともConA投与による肝臓損傷を低下させた。
【0163】
【表8】

ALT=アラニンアミノトランスフェラーゼ
AST=アスパラギン酸アミノトランスフェラ−ゼ
LDH=乳酸デヒドロゲナーゼ
CPK=クレアチンホスホキナーゼ
SDH=ソルビトールデヒドロゲナーゼ
本研究で使用したConAモデルにおける肝臓損傷は、IL−2レベルの上昇に関係し、そしてTリンパ球により媒介される。従って、本発明の化合物および方法は、IL−2の治療的投与に起因する副作用を低下させるのに有用であり;さらに、本発明の化合物と方法は、自己免疫性肝炎を治療するのに有用である。
【0164】
(実施例11:ウリジンは敗血症誘発性の血液凝固における変化を減弱させる)
目的:
播種性血管内凝固(DIC)は、血液凝固と繊維素溶解の両方が活性化されている敗血症の重篤な結果であるため、血液凝固因子が急速に消費される。DICは出血または血栓形成をもたらす。肝臓は、凝固因子の合成のため、およびトロンビンの微小凝集物を血流から一掃するための主要な部位である。本実験の目的は、敗血症により誘発される凝固疾患に及ぼすピリミジンヌクレオチド前駆体の効果を測定することであった。部分トロンボプラスチン時間を血液凝固系の状態の指標として使用した。
方法:
30匹のメスBalb/Cマウス(8週齢)を各10匹の動物の3群に分割した。1群のマウスは未処置のままにして、部分トロンボプラスチン時間の基礎値を測定するために使用した。2群のマウスに30mg/kgの死んだE.coli(菌株0111:B4)を投与した;E.coli投与の2時間前に、1群には腹腔内注射によりウリジン(2000mg/kg)を投与した。E.coli投与の20時間後に、部分トロンボプラスチン時間(PTT)の測定のために、30匹全てのマウスから血漿試料を集めた。眼窩後叢(retro−orbitalplexus)から、pH4の0.03mlの3.5%クエン酸ナトリウムを含有するチューブに0.27mlの血液を集めた。血漿を遠心分離により分離し、そして市販のキットを用いたPTTの測定のために、100マイクロリットルの血漿を清浄な1.5mlのエッペンドルフ管に移した。
結果:
死滅E.coliの投与は、正常な部分トロンボプラスチン時間の延長をもたらした。表9に示すように、ウリジンは凝固時間の敗血症誘発性変化を減少させた。
【0165】
【表9】

(実施例12:T細胞およびエンドトキシンによる複合肝臓損傷)
幾つかの重要な型のウイルス性肝炎ならびに自己免疫性肝炎は、適切なウイルスまたは他の抗原を生じる肝細胞を攻撃する細胞毒性T細胞により開始される。エンドトキシンは、四塩化炭素、コリン欠乏症、エタノール、または胆汁鬱帯のような他の多くの物質により開始される肝臓損傷に関与しているため、T細胞により引き起こされる肝臓損傷がエンドトキシンに対する肝臓の過敏性を誘発するかどうかを測定するために試験を行った。本実験後、Tリンパ球およびエンドトキシンの両方による複合肝臓損傷におけるTAUの効果を調査した。
【0166】
(実施例12A:コンカナバリンAはエンドトキシン誘発性組織損傷を強化する)
8週齢のメスBalb/Cマウスの群(n=6)に、コンカナバリンA(2.5mg/kg静脈内)、エンドトキシン(SalmonellaTyphimurium、0.5mg/kg)、またはConAとエンドトキシンの組合せを投与した。ConAはエンドトキシンの24時間前に投与した。エンドトキシン(またはエンドトキシンを投与しないマウスの群ではそのベヒクル)の注射の18時間後に血液試料を採取した。「基礎の」群のマウスに、ConAまたはエンドトキシンの代わりにベヒクルのみ(生理食塩水)を投与した。
【0167】
【表10】

ALT=アラニンアミノトランスフェラーゼ
AST=アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
LDH=乳酸デヒドロゲナーゼ
CPK=クレアチンホスホキナーゼ
SDH=ソルビトールデヒドロゲナーゼ。
【0168】
本実験で使用した用量のエンドトキシンまたはConA単独では、血清酵素レベル(ALT、AST、LDH、およびSDHは肝臓損傷のマーカーであり;CPKは筋肉損傷の指標である)により測定されるように、肝臓と筋肉にを与えた損傷は最小であった。しかし、ConAとエンドトキシンの組合せで処置したマウスでは、顕著に大きな損傷を観察した。本モデルでのConAの毒性は、Tリンパ球媒介性肝臓損傷に特異的に関係していると考えられる(ティーグス(Tiegs)ら、J.Clin. Invest. 90:196−203、1992)。従ってこれらの結果は、四塩化炭素、コリン欠乏症、D−ガラクトサミン、およびウイルス感染を含む他の1次傷害により開始される肝臓損傷について証明されたように、腸由来のエンドトキシンが、ウイルス性または自己免疫性疾患による細胞毒性Tリンパ球に起因する肝臓損傷に関与しているという考察を支持している。
【0169】
(実施例12B:TAUはCTLとエンドトキシンによる複合肝臓損傷を減弱させる)
コンカナバリンA(ConA)の静脈内投与により開始される実験的肝炎は、細胞毒性Tリンパ球の活性化により媒介される。本モデルの肝臓損傷は、細菌のエンドトキシンの毒性への感受性を大きく上昇させる。ConAおよびエンドトキシンの連続投与は、足し算より大きな肝臓損傷をもたらす(実施例2Aを参照のこと)。ウイルス性および自己免疫性肝炎での肝細胞損傷は、損傷がT細胞により開始され、そして腸由来のエンドトキシンや他の炎症の過程により増悪するという、同様の機構に関与する。
【0170】
TAUは、エンドトキシンまたはConAのいずれかにより開始される損傷から実験動物の肝臓を保護する。本実験において、TAUを、ConAとエンドトキシン両方の連続投与により引き起こされた複合肝臓損傷に供されたマウスにおける肝細胞保護効果について試験した。
方法:
メスのBalb/Cマウス(8週齢)を各7匹の動物の3群に分割した。1群の動物は、組織損傷の血清化学指標の基礎値を得るために、未処置のままにした。残りの2群のマウスに、2mg/kgのコンカナバリンAを静脈内(尾静脈)注射により体積0.2mlの生理食塩水で投与して、続いて24時間後にSalmonellaTyphimuriumのエンドトキシン(10マイクログラム腹腔内)を投与した。これらの内の1群には、TAU(6000mg/kg)を経口投与により0.6m lの0.5%メチルセルロースで、ConAの2時間前と再度エンドトキシンの2時間前に投与して;残りのConA/エンドトキシン処置群(コントロール)には、ベヒクル(メチルセルロース)単独を投与した。エンドトキシンの投与の18時間後に、組織損傷または代謝機能不全の種々の指標の血清レベルの測定のために、全てのマウスから血液試料を集めた。
結果:
ConAとエンドトキシンの連続投与は、肝臓損傷の血清化学指標により評価されたように、著しい肝臓傷害をもたらした。経口投与されたTAUは、この複合肝臓傷害を大きく減弱させた。
【0171】
【表11】

ALT=アラニンアミノトランスフェラーゼ
AST=アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
LDH=乳酸デヒドロゲナーゼ
CPK=クレアチンホスホキナーゼ
SDH=ソルビトールデヒドロゲナーゼ。
【0172】
(実施例13:経口のトリアセチルウリジンがエタノール中毒からの回復を改善する。)
エタノール中毒は中枢神経系における活性の抑制を生じる。回復は系からのエタノールの浄化に依存する。循環からのエタノール浄化は主に肝臓で起こり、酵素アルコールデヒドロゲナーゼ、ならびに肝臓の酸化還元バランスおよび代謝状態の両方により調節される。
【0173】
これらの実験では、肝臓および他の組織へのウリジンの供給による代謝支持がエタノール中毒からの回復に影響するか否かを測定するために、エタノール中毒マウスをトリアセチルウリジン(TAU)で処理した。
【0174】
(実験1:絶食マウス
方法:
平均22gの重さの雌のBalb/Cマウスを24時間絶食させた。9匹のマウスに、経口でTAU2000mg/kg p.o.を与え、そして8匹に、ビヒクル(水中の0.75%ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を与えた。
【0175】
1時間後、すべての動物に5.7ml/kgのエタノール(25%水溶液の0.5ml p.o.)を与えた。
【0176】
EtOHの1時間後、マウスにさらなる用量のTAUまたはビヒクルを与えた。すべてのマウスはこの時点で本質的に昏睡状態であった。
【0177】
挙動を、1時間毎の間隔で、エタノール投与3時間後に開始してモニターした。挙動評価のスケールは以下の通りである:
エタノール中毒後の挙動回復
深い昏睡:刺激に応答しない。遅い呼吸
虚脱:平伏し動かないウマス。探り針の接触に瞼が反射。速い呼吸。
起き直り(righting)反射:仰向けに置いた場合、動物は5秒以内にひっくり返ろうとする。カテゴリーは、すべての「可動性」動物およびいくつかの「虚脱」動物のある部分を含む。
可動性:動物は歩くことができる。
TAUは、絶食マウスにおいてエタノール中毒からの回復を促進する。
【0178】
【表12】

【0179】
【表13】

【0180】
実験2:非絶食マウス
平均22gの重さの雌のBalb/Cマウスを実験時まで自由に摂食させた。10匹のマウスに、経口でTAU2000mg/kg p.o.を与え、そして10匹に、ビヒクル(0.75% HPMC)を与えた。
【0181】
1時間後、すべての動物に8ml/kgのエタノール(25%水溶液の0.7ml p.o.)を与えた。
【0182】
EtOHの1時間後、マウスにTAUまたはビヒクルのさらなる用量を与えた。
【0183】
挙動を、エタノール投与2、3、4、および6時間後にモニターした。挙動評価のスケールは上記の絶食マウスに対する試験と同じである。
TAUは、非絶食マウスにおいて、エタノール中毒からの回復を促進する。
【0184】
【表14】

TAUは、重症のエタノール中毒を受けたマウスにおける挙動回復を明らかに改善した。非絶食マウスには、絶食動物より高い用量のエタノールを与えたが(8ml/kg対 5.7ml/kg)、それにもかかわらず幾分より速く回復した。この観察は、エタノール中毒からの回復におけるエネルギー代謝の重要性を強調する。TAUは、摂食および絶食動物の両方でエタノール中毒からの回復を促進する。
【0185】
(実施例14:トリアセチルウリジンは、マウスにおけるウイルス肝炎の死亡率を低減する)
フロッグウイルス3(FV3)は、マウスにおいて急性劇症肝炎を誘導し、これは内因性のエンドトキシンに起因する二次損傷により部分的に媒介される(Gutら、J.Infect. Disease., 1984、149:621)。
【0186】
トリアセチルウリジン(TAU)を、このモデルで試験し、この薬剤および本発明の他の化合物がウイルス肝炎で有用な治療効果を有することを示した。
方法:
凍結乾燥FV3を、リン酸緩衝化生理食塩水中で、1mlあたり1×108プラーク形成単位(PFU)の密度に再構成した。
【0187】
25グラムの重さの雌のBalb/Cマウスに、腹膜腔内または静脈内(尾静脈)注射により、ほぼLD50に相当する用量でFV3ウイルスを与えた。TAU(3000mg/kg)またはビヒクル(0.75ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を、経口的に、FV3の1時間前に、そしてその後午後と午前に投与した。動物を3日間観察した;この観察期間に生存しなかった動物はすべて、ウイルス投与後約24−30時間で死亡した。
【0188】
【表15】

前述は本発明の例示として意図するのであって、制限することを意図しない。多くの改変および修飾が、本発明の真の思想および範囲を逸脱することなくなされ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノール中毒に起因する精神的および肉体的損傷を低減および/または処置するための組成物。

【公開番号】特開2008−7525(P2008−7525A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250303(P2007−250303)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【分割の表示】特願平8−503935の分割
【原出願日】平成7年6月30日(1995.6.30)
【出願人】(504189265)プロ−ニューロン, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】