説明

全身性炎症の治療のためのポリマー吸着剤の投与

本発明は、患者において全身性炎症を改善する方法であって、ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー及びポリビニルピロリドンポリマーを含む組成物の治療的に有効な用量を患者に投与することを含む方法を提供する。より具体的には、該方法は、これらのポリマーを、サイトカインといった炎症性メディエータを腸管腔から取り除くための腸内吸着剤製剤として用いることに関する。ポリマーは、生体適合性ポリビニルピロリドンポリマー被覆を有するポリスチレンジビニルベンゼンコポリマービーズ製剤の形態でありうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2008年10月2日に出願された米国仮特許出願No.61/102,052の優先権を主張し、その内容は、その全体において本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明の実施形態は、全身性炎症の治療のための方法に関する。より具体的には、本発明の実施形態は、ポリマー吸着剤の治療的に有効な用量を患者に投与することを含む、炎症のメディエータの管腔内(intralumenal)吸着の方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
一般に、全ての形態のショック(例えば出血性,心原性,敗血性)、組織傷害(例えば外科手術、戦場戦闘員が受けた傷害)、局所的消化管炎症性疾患(例えば炎症性腸疾患)及び/又は虚血は、炎症性メディエータ、凝固因子の活性化及び酸化的ストレスを引き起こす。特に、様々な体液性要素(例えば、補体因子、凝固因子)及び細胞性要素(好中球、内皮細胞、マクロファージ)の活性化により、多くのメディエータ(毒性酸素種、タンパク分解酵素、接着分子、サイトカイン)が発現され、それによって、全身性炎症及びさらなる組織傷害が引き起こされ、最終的には多臓器不全に至る可能性がある。さらに、腸などにおける器官傷害は、関門機能の喪失及び炎症反応の伝播/増幅をもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2004年に、Working Group on Trauma Research Program Summary Report (Hoyt DB, Holcomb J, Abraham E., Atkins J, Sopko G, Working Group on Trauma Research: Working Group on Trauma Research Program summary report: National Heart Lung Blood Institute (NHLBI), National Institute of General Medical Sciences (NIGMS), and National Institute of Neurological Disorders and Stroke (NINDS) of the National Institutes of Health (NIH), and the Department of Defense (DOD), J Trauma 2004; 57: 410- 5)が、“傷害の後に、免疫応答を操作する能力は、受傷後の治療を向上させるために重要である”と結論した。しかしながら、免疫応答の全身性操作は、感染と戦う際のその固有の重要性を考えると、危険を伴いうる。よって、より的を絞ったアプローチが、より安全かつより効果的な可能性があるだろう。
【0005】
ターゲットとなりうるものには、血漿コンパートメント及び腸管管腔が含まれる。炎症性メディエータが腸管管腔で発現されうる、少なくとも4つの様式がある。一つ目としては、炎症性メディエータが全身的に産生され、肝臓によって吸収され、その後肝胆汁を経由して腸管管腔に送達され得る。二つ目には、炎症性メディエータが肝臓によって生産され、その後、肝胆汁を経由して腸管管腔に送達され得る。三つ目には、腸管管腔において局所的に、腸内皮細胞が炎症性メディエータを生産し得る。最後に、白血球と反応した消化管中のバクテリアによって炎症性メディエータが作り出され得る。
【0006】
血漿コンパートメントは魅力的なターゲットである、というのは、組織における炎症性メディエータの局所的な発現は保護的でありえるが、全身性放出は一般にはそうではないからである。同様に、腸管管腔における炎症性の毒は、細胞を傷つけ、有益な宿主反応を提供することなく、関門機能を危うくする。肝臓によって生産されようと、他の場所で生産されて肝臓によって取り除かれようと、サイトカインなどの炎症性メディエータは胆汁を経由して小腸に送達され、そこで局所的な傷害の原因となり、かつ再吸着されて体循環へ入り得る。静脈内にリポ多糖類を投与されたラットは、胆汁の体外ドレナージによって消化管がある程度保護された場合、生存が向上する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
本発明の実施形態は、関連技術の上記課題を考慮して行われてきた。本発明の一実施形態は、患者において炎症反応を開始させる又は悪化させること、及びポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー及びポリビニルピロリドンポリマーといったポリマー吸着剤を含む組成物の治療的に有効な用量を患者に投与することを含む、全身性炎症を改善する方法を提供する。
【0008】
本発明の一態様によれば、ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー及びポリビニルピロリドンポリマーといったポリマー吸着剤の治療的に有効な用量を、それを必要としている患者に投与することを含む、ショックの発症を軽減する方法を提供する。
【0009】
本発明のより好ましい実施形態は、ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー及びポリビニルピロリドンポリマーに関する。より具体的には、本発明の実施形態は、これらのポリマーを、サイトカインといった炎症性メディエータを腸管腔から取り除くための腸内吸着剤製剤として用いることに関する。本発明のより好ましい実施形態は、生体適合性ポリビニルピロリドンポリマー被覆を有するポリスチレンジビニルベンゼンコポリマービーズ製剤に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
作図の簡単な説明
本発明の実施形態の上記及び他の特徴及び利点は、添付された図面を参照した、その実施形態の詳細な説明によって、より明らかになるだろう。
【図1】図1は、in vitroにおけるサイトカイン除去を示す。示されたデータは:2体の動物それぞれから取られた血液の6つのプールに関する平均値±SEである。全ての時点で、時間0とは有意に異なっていた(p<0.001)。
【図2】図2は、RAW264.7における、HMBG−1に対する免疫ブロットを示す。ポリマーの存在下又は非存在下で、細胞をLPSで刺激した。
【図3】図3は、CYTOSORB処置対偽処置した動物の肝臓における、4時間の時点でのNF−κB DNA結合を示す。グラフは、平均データ±SEMを表す(P<0.05)。右のパネルは、電気泳動移動度シフトアッセイからの代表的バンドを表す。N=12体の動物。
【図4】図4は、敗血症ラットの生存に対する、腸内CYTOSORBの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明の実施形態は、全身性炎症の治療のための方法を提供する。また、本発明の実施形態は、ショックの影響を和らげる方法、及び/又は、炎症のメディエータの管腔内吸着の方法に関する。
【0012】
一実施形態では、ポリマー吸着剤の治療的に有効な用量を、それを必要としている患者に投与する。ポリマー吸着剤は、ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー及びポリビニルピロリドンポリマーを含む。好ましい組成物は、ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー及びポリビニルピロリドンポリマーを含むか、ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー及びポリビニルピロリドンポリマーから本質的になるか、又はポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー及びポリビニルピロリドンポリマーからなる。
【0013】
本発明との関連において、患者は典型的にはヒトの患者である。しかしながら、患者は代わりに、動物の患者(家畜(例えばウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌなど)など)、研究所での研究に用いられる動物(例えばネズミ、ラットなど)、又は動物学的に関心を引く動物(例えば大型のネコ、有蹄動物、ゾウなど)でありうる。
【0014】
ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー及びポリビニルピロリドンポリマーの組成物は、ビーズの形態でありうる。この開示の目的では、“ビーズ”という用語は、任意の3次元の固体粒子を言う。ビーズの形状は、球、回転楕円体、楕円体、卵形、棒、又は角柱でありうる。本明細書で用いる場合、ビーズに関連した“直径”という用語は、平均直径を言う。
【0015】
ビーズは、ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマーを含み得、さらに、ポリビニルピロリドンポリマーで被覆されうる。ビーズはまた、ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー及びポリビニルピロリドンポリマーから本質的になるか、又はポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー及びポリビニルピロリドンポリマーからなりうる。ビーズは、外表面に孔を有するよう製造されうる。分子は、それらの孔を経由してビーズ内部に入ることができる。ビーズが患者の体から炎症性メディエータを吸着するとき、炎症性メディエータは、孔内部に吸着されると考えられる。一実施形態では、孔は、少なくとも10Å、例えば、少なくとも20Å、少なくとも30Å、少なくとも40Å、少なくとも50Å、少なくとも60Å、少なくとも70Å、少なくとも80Å、又は少なくとも90Å(又は少なくともおおよそそのような値)のサイズを有する。孔は、100Åと同程度、又は90Åと同程度、又は80Åと同程度、又は70Åと同程度、又は60Åと同程度、又は50Åと同程度、又は40Åと同程度、又は30Åと同程度、又は20Åと同程度(又はおおよそそのような値と同程度)のサイズを有しうる。一実施形態では、ビーズは10Åから100Åまで;別の実施形態では、20Åから50Åまで(又はおおよそそのような値)の孔サイズを有する。ビーズは、特定の孔サイズを有するよう製造されうる。このようにしてビーズは、取り除く特定のサイズの特定の分子に適合し、それをターゲットとするよう設計されうる。多様な炎症性メディエータを捕捉するために、ビーズは、様々な孔サイズ、又は孔サイズの分布を有しうる。
【0016】
ビーズは、あらゆる適切なサイズおよび内部表面積のものでありうる。例えば、ビーズは、少なくとも200μm、例えば少なくとも300μm、例えば少なくとも400μm、例えば少なくとも500μm、例えば少なくとも600μm、例えば少なくとも700μm(又は少なくともおおよそそのような値)の直径を有しうる。ビーズは、800μmまで、例えば700μmまで、例えば600μmまで、例えば500μmまで、例えば400μmまで、例えば300μmまで(又はおおよそそのような値まで)の直径を有しうる。限定されないビーズの例は、直径において約300から約800ミクロンまでの範囲である。ビーズの内部表面積は、ビーズ1グラムあたり少なくとも700m、例えばビーズ1グラムあたり少なくとも800m、例えばビーズ1グラムあたり少なくとも900m(又は少なくともおおよそそのような値)でありうる。ビーズの内部表面積は、ビーズ1グラムあたり1000mまで、例えばビーズ1グラムあたり900mまで、例えばビーズ1グラムあたり800mまで(又はおおよそそのような値まで)でありうる。限定されないビーズの例は、ビーズ1グラムあたり約700mからビーズ1グラムあたり約1000mまでの内部表面積を有する。一実施形態では、組成物は、ビーズ1グラムあたり約850mの内部表面積を有するビーズを含む。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、全身性炎症に罹患した患者又はその危険性がある患者を同定すること;及び、炎症のメディエータを吸着する1又はそれ以上のポリマー吸着剤を含む組成物の治療的に有効な用量を患者に投与することを含む、患者において全身性炎症を改善する方法を提供する。好ましい投与は栄養チューブ経由である。
【0018】
炎症のメディエータは、例えば、敗血症、ショック(出血性,心原性,敗血性)、組織傷害(例えば外科手術、戦場戦闘員が受けた傷害)、虚血及び虚血再灌流、細胞毒性化学療法、IL−2又は他のサイトカインを用いる化学療法、骨髄操作、腸間膜灌流低下、腸粘膜傷害、局所的消化管炎症性疾患(例えば炎症性腸疾患)、急性肺炎症、膵臓炎、マラリア又は関節リウマチ、及び他の膠原血管病に関連しうる。従って、例えばビーズは、サイトカインを吸着することができる。吸着されうる、限定されない炎症性メディエータの例には、TNF、IL−6、IL−10、HMGB−1、IL−8、IL−18、MCP−1、IL−2、IL−1β及びS100Bが挙げられる。
【0019】
ビーズは例えば、経口で、ピル(例えばカプセル、錠剤など)の形態で投与されうる。そのようなピルは、ビーズを含み、及び任意に、結合剤、充填剤、バッファーなどの医薬上許容される賦形剤を含む。そのような賦形剤は、当技術分野で周知のものであり、適切な賦形剤は、過度の実験をすることなく、当業者によって選択されうる。別の実施形態では、組成物はスラリー、ゲル、パウダーの形態又は経口投与に適した他の形の形態で投与されうる。
【0020】
好ましくはビーズ型のポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー及びポリビニルピロリドンポリマーなどのポリマー吸着剤の実施形態は、炎症性メディエータを吸着するために、それを必要としている患者に投与されうる。投与は、予防的(例えば、炎症の発症に先行して)、炎症性メディエータの放出の原因の間又は後で、でありうる。
【0021】
本発明の実施形態に従う投与は、ポリマー吸着剤が消化管中で発見されるようにする、あらゆる適切な投与でありうる。例えば、投与は経口、直腸、栄養チューブ経由又は消化管への直接投与でありうる。他の投与経路が使えるが、好ましい投与は、経口又は栄養チューブ経由である。本発明の実施形態の経口投与は、ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー及びポリビニルピロリドンポリマーなどのポリマー吸着剤が、大部分の個体の消化管を正常に通過することを可能にする。そのような投与は、ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー及びポリビニルピロリドンポリマーなどのポリマー吸着剤が、経腸的に炎症性メディエータを吸着することを可能にする。
【0022】
ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー及びポリビニルピロリドンポリマーは、本明細書で説明されているように、ビーズの形態でありうる。そのようなビーズは、ピル又はスラリーの形態で、経口で投与されうる。ピルは、ビーズ、及び充填剤などの他の成分を含むことができる。スラリーは、ビーズ、及び液体キャリアなどの他の成分を含むことができる。ピル又はスラリー処方は、活性炭の代わりに本発明の実施形態のビーズを用いて、活性炭ピル又はスラリーと同様に調製されうる。
【0023】
ある形態のポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー及びポリビニルピロリドンポリマービーズは、RenalTech International LLC(現在はMedaSorb Technologies, Inc.(Princeton,NJ)としてビジネスを行っている)によって製造されている。MedaSorbは、CYTOSORB及びBETASORBの商標名のもと、生体適合性ポリビニルピロリドンポリマー被覆を有するポリスチレンジビニルベンゼンコポリマービーズを製造している。CYTOSORBビーズ及びBETASORBビーズ共に、本発明の実施形態の範囲内であると想定される。CYTOSORBビーズは、約300−800μmのサイズで、約20−50Åのサイズの孔を有する。
【0024】
試験は、CYTOSORBビーズが、TNF、IL−6、IL−10、HMGB−1、IL−8、IL−18、MCP−1、IL−2、IL−1β及びS100Bを含む、敗血症における炎症に関する様々な分子を取り除くことを明らかにした。図1に示されているように、CYTOSORBはin vitroでのサイトカインの除去を示す。図1に示されているデータは、2体の動物それぞれから取られた血液の6つのプールに関する平均値±SEである。全ての時点で、時間0とは有意に異なっていた(p<0.0001)。図2に示されるように、CYTOSORBは、ポリマーの存在下又は非存在下においてLPSで刺激されたRAW 264.7細胞で、HMGB−1を取り除く。
【0025】
以下の実施例は、より詳細に本発明の実施形態を説明する。しかしながら、これらの実施例は、例示の目的のために与えられるものであって、限定する目的のためではない。
【0026】
簡潔に言えば、CYTOSORBポリマーを含む血液吸着デバイスを、敗血症、内毒素血症及び脳死に起因する全身性炎症の治療に関してテストした。CYTOSORBによって、血液吸着デバイスにおいて、循環する炎症性メディエータを除去するのに成功し、その結果、肝臓におけるDNA結合が減少し、動物の生存時間が向上する。
【実施例】
【0027】
実施例1
CYTOSORBビーズ処置及びNF−κB DNA結合
一連の実験において、リポ多糖類(LPS)の静脈注射後に、12体の動物で研究を行った。6体は偽試験用とし、もう6体は、10−gデバイス及び動脈−静脈回路を用いてCYTOSORBで処置した。全動物を4時間のかん流後、安楽死させて、NF−κB DNA結合の判定用に肝臓組織を得た。その結果は、図3に示されているように、偽処置した動物に比べて、CYTOSORB処置した動物では、NF−κB DNA結合が有意に低かったことを示している(p=0.03)。
【0028】
実施例2
CYTOSORBビーズ処置及び短期生存
別の一連の実験において、無作為に選んだ40体の動物を、致死のLPS注入後直ちに開始して4時間、血液吸着又は偽回路を用いた処置のいずれかを受けるようランダム化した。4時間目の灌流終了後、引き続き8時間、該動物は輸液蘇生のみを受けた。全動物を12時間目に屠殺した。CYTOSORB処置した動物は、21%の生存時間の増加を示した(p>0.01)。偽かん流群では、20体の動物のうち19体が12時間より前に死亡したが、一方、CYTOSORBによる血液吸着を受けた20体のラットのうち7体は、12時間の時点で生存しており、総体的な生存の向上を示した(5%から35%へ,p=0.02)。CYTOSORB処置した動物の、循環している血漿IL−6、TNF及びIL−10レベルも有意に低く、その濃度は生存時間と逆相関していた(p=0.003)。
【0029】
実施例3
腸内CYTOSORBは敗血症ラットの生存を向上させる。
確立された敗血症の致死モデル、腸管穿孔モデル(CLP)を用いて、22体のラットで予備実験を行った。腸内CYTOSORB治療を行った場合及び行わなかった場合の生存を測定した。結果を図4に示す。コントロールと比べ、CYTOSORB処置した動物では、生存が有意に向上した(36%対9%,p=0.03)。この有意な生存の向上が、CYTOSORBビーズの腸内投与のみを用いて得られたことを強調するのは重要である。おそらく、消化管管腔内部におけるこれらのビーズの存在が、胆汁を経由して腸内へ放出された、及び/又は、免疫刺激された腸細胞によって分泌された、有害なメディエータの受け皿として働いたのだと考えられる。
【0030】
刊行物、特許出願及び特許を含む本明細書で引用されている全ての参考文献は、各参考文献が参照することにより組み込まれるものとして個々にかつ具体的に示され、かつ、その全体が本明細書に示されているのと同程度に、参照することにより本書に組み込まれる。
【0031】
“a”及び“an”及び“the”といった用語および本発明を記載する文脈における(特に以下に示す特許請求の範囲の文脈における)同類の指示語の使用については、本明細書に特に示されるか、又は文脈によってはっきりと否定されない限り、単数形および複数形どちらをも含むと理解されるべきである。“含む(comprising)”、“有する(having)”、“含む(including)”及び“含む(containing)”という用語は、特に断りのない限り非制限的語句(即ち「含むが限定されるものではない」を意味している)として理解されるべきである。本明細書中における数値範囲の記載は、特に本明細書中に示されていない限り、単に、当該範囲内のそれぞれの別個の値を独自に指すことの簡潔表現として機能することを意図しており、それぞれの別個の値は、それが本明細書中に独自に列挙されているのと同様に本明細書に組み込まれる。本明細書に記載された全ての方法は、本明細書に特に示されることがない限り、または文脈によって特にはっきりと否定されない限り、あらゆる適切な順序で実行することができる。本明細書中で提供されている、ありとあらゆる例または例示語(例えば“例えば(such as)”)の使用は、単に、本発明の理解をよりよくすることを意図しているのであって、特に主張されていない限り、本発明の範囲に関して限定を設けるものではない。本明細書中の言語は、主張されていない任意の要素を、本発明の実施には欠かせないものとして示していると理解されるべきではない。
【0032】
本発明の好ましい実施形態は、本発明者らが知る本発明を実施するための最良の形態を含むように本明細書中に記載されている。それらの好ましい実施形態の変形は、前述の記述を読むことで当業者に明らかになり得る。本発明者らは当業者が必要に応じてこのような変形を採用することを予期し、かつ、本発明者らは、本発明が本明細書中に具体的に記載されている別な方法で実施されることを意図している。よって、本発明は、準拠法で許される、本文書に付加された特許請求の範囲において列挙された対象の全ての変更及び等価物を含む。さらに、本明細書に特に示されるか、または文脈によって特にはっきりと否定されない限り、本発明は、そのあらゆる可能な変形における上記要素のあらゆる組み合わせを包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症に罹患した患者又はその危険性がある患者において、全身性炎症を改善する方法であって、ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー及びポリビニルピロリドンポリマーを含む組成物の治療的に有効な用量を患者に投与することを含み、ここで、その投与が、炎症性メディエータの腸内吸着をもたらす、方法。
【請求項2】
投与が炎症のメディエータの吸着をもたらす、請求項1記載の方法。
【請求項3】
炎症のメディエータが、敗血症、外科手術、細胞毒性化学療法、骨髄操作、主要組織傷害、腸間膜灌流低下、腸粘膜傷害、マラリア又は局所的消化管炎症性疾患、急性肺炎症、膵臓炎、マラリア又は関節リウマチ及び膠原血管病に関連している、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
組成物の投与が炎症の発症に先行する、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
投与が経口投与又は直腸投与である、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
投与が栄養チューブ経由である、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー及びポリビニルピロリドンポリマーを含む組成物が、ビーズの形態である、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
ビーズが、ポリビニルピロリドンポリマーの被覆を有し、ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマーを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
ビーズが、ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー及びポリビニルピロリドンポリマーから本質的になる、請求項7又は請求項8記載の方法。
【請求項10】
ビーズの直径が、約300−800μmである、請求項7〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
ビーズがその表面に孔を有する、請求項7〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
孔の直径が約20−50Åである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
ビーズが孔サイズの分布を含む、請求項11又は請求項12記載の方法。
【請求項14】
ビーズが、ビーズ1グラムあたり、約700−1000mの内部表面積を有する、請求項7〜13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
ビーズがサイトカインを吸着する、請求項7〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
ビーズが、TNF、IL−6、IL−10、HMGB−1、IL−8、IL−18、MCP−1、IL−2、IL−1β及びS100Bからなる群の1又はそれ以上の分子を吸着する、請求項7〜15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
組成物が、ビーズ及び医薬上許容される賦形剤を含むピルの形態である、請求項7〜16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
ビーズが、ビーズを含むスラリーの形態で投与される、請求項7〜16のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
炎症反応に罹患した患者を治療する方法であって、ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー及びポリビニルピロリドンポリマーから本質的になる組成物の治療的に有効な用量を患者に投与することを含む方法。
【請求項20】
ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー及びポリビニルピロリドンポリマーから本質的になる組成物が、ビーズの形態である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
ビーズが、ポリビニルピロリドンポリマーの被覆を有し、ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマーから本質的になる、請求項20記載の方法。
【請求項22】
組成物が、経口、直腸又は栄養チューブ経由で投与される、請求項19〜21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
全身性炎症に罹患した患者又はその危険性がある患者において、全身性炎症を軽減する方法であって、炎症のメディエータを吸着するポリマー吸着剤のビーズを含む組成物の治療的に有効な用量を患者に経口投与することを含む方法。
【請求項24】
ポリマー吸着剤が、ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマーである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
ポリマー吸着剤のビーズが、ポリビニルピロリドンポリマーで被覆されている、請求項23又は請求項24記載の方法。
【請求項26】
組成物が予防的に投与される、請求項23〜26のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
患者において炎症反応を開始させる又は悪化させること;及びポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー及びポリビニルピロリドンポリマーを含む組成物の治療的に有効な用量を患者に投与することを含む、患者における全身性炎症を改善する方法。
【請求項28】
組成物がビーズの形態である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
ビーズがポリビニルピロリドンポリマー被覆を含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
組成物が経口投与される、請求項27〜29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
組成物が直腸投与される、請求項27〜29のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
組成物が栄養チューブ経由で投与される、請求項27〜29のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
患者がヒトである、請求項1〜32のいずれか一項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−504655(P2012−504655A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530276(P2011−530276)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/059426
【国際公開番号】WO2010/040086
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(500091313)ユニヴァーシティ オヴ ピッツバーグ オヴ ザ コモンウェルス システム オヴ ハイアー エデュケーション (10)
【Fターム(参考)】