説明

全身病の処置方法

【課題】全身病患者の処置方法および供給装置の提供。
【解決手段】患者の吸入の速度および体積を所定値に維持し、その後に呼吸作動の吸入装置を用いて、エアゾル薬剤組成を患者に投与する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
この出願は、2003年3月18日出願の米国特許出願第10/391,053号の優先権主張を伴うもので、参照によって、その全体の内容をここに含ませる。
【0002】
この出願は、米国特許第6,136,294号および米国特許第6,261,539号に言及し、参照によって、それらの全体の内容をここに含ませる。
【発明の背景】
【0003】
発明の分野
この発明は、全身病の処置方法に関し、さらに詳しくは、患者の吸入の流れおよび吸入量、ならびに、投与の時間、期間および持続を考慮しつつ、呼吸作動の吸入装置を用いることにより、加圧した所定用量吸入器から薬効のあるエアゾルスプレーを患者に与えることを含む技術に関する。
【0004】
関連技術の説明
薬効のあるエアゾル剤を規則的に取ることによって、全身病を処置(治療)することは、普通のことである。しかし、それを用いるとき、投与量の規制(これは、その効果を最大限に上げるためのものである)の如何によって、旨くいったり旨くいかなかったりするのが一般的である。使用における重要な要素を考慮すると、必要であり、要望されることは、全身病(たとえば、糖尿病、免疫不全症、痛みなど)を処置するための装置および方法である。
【0005】
今まで全身病を処置するためエアゾル媒体を利用するとき、一般的には手動の装置を用いている。たとえば、手動の吸入装置を利用している。これら手動の装置を用いる場合、吸入サイクルの初めにスプレーを作動させなければならない。それによって、口や喉に堆積させるよりもむしろ肺の中まで薬物を運ぶことができる。もしこの作動が吸入位相と正しく調和しないと、所定用量の薬物が各作動ごとに異なる堆積を示すだろうし、製品の治療効果および安全性を危ういものにするおそれがある。呼吸作動の装置によれば、製品を容易に調和させ、しかもまた、患者に対してより優しくし、呼吸器の気道および肺の中の奥深くまで供給および散布することによって、この問題を解消する助けをする。
【0006】
スプレーの作動と息を吸い込むサイクルとを旨く調和させない要因には多数のものがある。それらの要因の中に、使用者に固有の制限がある。たとえば、老人病患者に関連する体力の低下、子供たちの未発達なスキル、あるいは、どちらのグループにもある、装置を正しく使えないという問題などである。特に、呼吸器疾患の患者において、正しく正確に投与量を供給しなければならないことを知るならば、信頼できる呼吸作動の装置があれば、それらの苦しむ人々の生活の質を改善することができるであろう。
【発明の開示】
【発明のサマリ−】
【0007】
この発明は、患者の全身病を処置する方法に関し、さらに詳しくは、そのような疾病を加圧した所定用量吸入器(pressurized Metered Dose Inhaler “pMDI”)および、より具体的には呼吸作動の吸入装置(breath activated inhaler “BAI”)を用いて薬効のあるエアゾルで処置する技術に関する。
【発明の詳細な説明】
【0008】
この発明は、患者(たとえば、人間あるいは他の動物)の全身病(たとえば、糖尿病、ならびに、その他のホルモン依存疾病、免疫不全症、癌、感染、痛みなど)を薬物つまり薬剤スプレーで処置する方法に関係する。その薬剤スプレーは、呼吸作動の装置を利用するものであって、(a)選択した薬物、(b)適正な流体あるいはプロペラントを含み、(a')投与量計量器および (b')投与のタイミングをとるための構成要素を用いる。適切な薬物には、治療に用いる範囲の薬剤あるいは薬物を含み、たとえば、心臓血管に関する薬、抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬、せき止め薬、殺菌薬、抗ウイルス薬、抗生物質、痛み止め薬、炎症抑制剤、ステロイド、および生物学的療法薬(ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、遺伝子ベクター)などである。
【0009】
適切な呼吸作動吸入装置を選ぶべきである。適切な装置として、それが備えていたり、あるいはそれに適用可能になった今までの設計のものがあり、たとえば、機械、電気機械(メカトロ)、空気圧、流体力学および約0.1〜20cmの水圧のトリガ力などの一般的な手段を用いる。「トリガ力」の意味するところは、その装置に関係する投与メカニズムを患者が作動させる上で必要とされる最小の力手段である。
【0010】
薬物“pMDI”の一般的なものは、加圧投与形式の吸入器であり、たとえば、薬物などの治療上の作用物質を人間の呼吸路に供給する。したがって、そのMDIには、流体プロペラントシステムにおいて溶解あるいは懸濁した活性物質が入っている。また、流体プロペラントシステムは、計量バルブによって閉じられた加圧容器の中に少なくとも一つの液化ガスを含む。バルブを作動すると、薬物の所定投与量をエアゾルスプレーの形態で供給し、適切なアダプタ/活性体(activator)によって目的の方向に向けられて経口あるいは経鼻吸入で投与される。
【0011】
加圧した所定用量吸入器システムと特に一緒に用いる呼吸作動装置は、主に、吸入検知手段と、適切な吸入プロフィールに基づいて容器を自動的に作動させるための手段とを含む。したがって、これらの装置は、一般的に、吸入検知手段および容器作動手段によって分類される。
【0012】
吸入については、装置中の圧力の変化を測定するか、流量を測定するかによって検知するが、その測定は直接的あるいは間接的に、しかも別個にあるいは組み合わせて行う。これを成し遂げる方法について豊富な文献がある。文献は、動翼あるいはフラップ、弾性ダイヤフラム、電子的な圧力センサー、流量センサー、および機械的なセンサーと電子タイミング回路との組み合わせを示す。フラップ、翼あるいはダイヤフラム使用の機械的な検出を利用する呼吸作動吸入装置の例について、米国特許第6,328,035号、5,826,571号、5,507,281号、5,447,150号、5,217,004号、5,119,806号、5,069,204号、5,060,643号、4,803,978号、4,664,107号、3,826,413号、3,814,297号、3,636,949号、3,598,294号、3,565,070号、3,456,646号、3,456,645号、3,456,644号、3,356,088号、3,157,179号、および3,187,748号が示す。また、電子的な検出を利用するBAI装置の例については、米国特許第5,826,570号、5,819,726号、5,692,492号5,655,516号、5,404,871号、および4,648,393号が示す。
【0013】
吸入装置(その容器)は、機械的(たとえば、ばね、レバーその他)、メカトロ(たとえば、ソレノイド、モーター)あるいは空気圧手段によって作動、つまり始動される。容器は、患者が介入するまでは、始動されその始動状態を維持するか、あるいは、介入がなくある時間の間始動状態に休止し自動的に休止(静止)状態に戻る。機械的な始動を用いる例については、米国特許第5,826,571号、5,447,150号、5,217,004号、5,119,806号、5,069,204号、5,060,643号、5,027,808号、4,955,371号、4,083,978号、4,664,107号、3,826,413号、3,814,297号、3,636,949号、3,598,294号、3,565,070号、3,456,646号、3,456,645号、3,456,644号、3,356,088号3,157,179号、および3,187,748号が示す。また、メカトロ始動を用いる例について、米国特許第5,692,492号および5,347,998号が示す。空気手段による始動を用いる例は、米国特許第6,328,035号が示す。さらに、容器を励起した始動状態から自動的に戻す手段をもつBAI装置について、米国特許第5,826,571号、5,217,004号、5,119,806号、5,027,808号、および6,328,035号が示す。
【0014】
以上に記した米国特許は、参照によって、その全体の内容をこの中に含める。
【0015】
次に、図1を見ると、pMDI、つまり呼吸作動の吸入器10が示されている。この装置は米国特許第6,328,035B1公報に詳しく述べられている。参照によって、その全体の内容をここに含ませ、簡単な説明を整理する。しかし、この特定のBAIを示し説明するが、それは一つのBAIの単なる例示である。ここで説明する発明を実施する上で他の適切な所定用量BAIを利用することができる。
【0016】
呼吸作動の吸入装置10は、マウスピース16に出入り自由なチャンバ14を含むハウジング12を備える。エアゾル容器18がチャンバ14の中に支持されている。容器のバルブステム20は下方に向き、ノズル22の中に入り、突き当たり面24のちょうど上方に位置している。図示する面は比較的に平らである。空気圧作動により容器が位置を変えることに応じて、バルブステム20がそれに衝突すると、薬物がエアゾルとして供給される。ノズル22は、そのスプレーを外方のマウスピース16の中に向ける。
【0017】
第1のチャンバ14を下方壁23,外壁26、上方壁28および仕切り壁30が区画する。また、仕切り壁30の他方の側にある第2のチャンバ32を、仕切り壁30、上方壁28および外壁33が区画する。第2のチャンバ32の下方面を決めるのは、可動ピストン34である。チャンバ内の可動ピストン34の位置に応じて、第2のチャンバ32は変動する。実際、ピストン34は気体を初めの体積から小さなものに圧縮し、気体の圧力を増す。圧縮ガスがもつエネルギーによって、容器から薬物を放出し供給することができる。装置の第3のチャンバ37を外壁12、上方壁28、切換え弁カバー36および通路カバー40が区画する。
【0018】
圧縮ピストン34の上方部分には、圧縮ピストンアセンブリ44を構成するピストンサポート42が付属している。連結リンク46の第1端48が、圧縮ピストンアセンブリ44に取り付けられている。連結リンク46の第2端50は、始動レバー52に取り付けられている。始動レバー52は、アタッチメントロッド54の軸線回りに回転可能に支持されている。アタッチメントロッド54は、始動レバー52をハウジング12に対ししっかり取り付ける。始動レバー52は、充填(休止)位置と始動位置との間を回転する。
【0019】
圧縮ピストン34は、第2のチャンバ32の内壁にきちんと適合するような大きさであり、固体の空気を通さない物質で構成した円柱である。それにより、ピストン34を始動位置に動かすとき、第2のチャンバ32の内部の流体を圧縮する。ピストン34には、ピストンアセンブリ44の開口60の内部に装着したU−カップシール58がある。ピストンシールの代わりに、転動形ダイヤフラムシール、あるいはベロータイプのものを用いることができる。また、連結リンク46に代えて、トグルを形成し留め金を必要としない数個のリンクを用いることができる。
【0020】
第2のチャンバ32の上方壁28には孔62があり、その孔には、弾性のある高分子材料製の傘状の逆止弁64がはめ込まれている。ポンプレバー(始動レバー52)を装置の本体(ハウジング12)から離すように動かすと、連結リンク46が圧縮ピストン34を下方に引く。この動きにより、傘状の逆止弁64の後方の周囲空気を通路63を通して引き込み、第2のチャンバ32の中に入れる。
【0021】
第1および第2のチャンバ14および32を区画する上方壁28の上に、切換え弁カバー36がある。切換え弁カバー36の下には、弾性のある高分子材料製のダイヤフラム68があり、そのダイヤフラム68は切換え弁カバー36とハウジング12の上方壁28との間に流体通路70を作っている。弾性のある高分子材料製のダイヤフラム68は、その周囲を切換え弁カバー36とハウジング12の上方壁28との間に止め、密閉したシールを形作っている。ダイヤフラム68の真下に、開口部(オリフィス)74を伴う浅いチャンバ72がある。通路70が開くと、通路70と第2のチャンバ32とは、互いに流体を連絡可能である。また、切換えポート76があり、そのポートはチャンバ14aと連絡するオリフィスである。チャンバ14aは、第1のチャンバ14の補助的なチャンバであり、上方壁28と作動ピストン96との間に位置し、作動ピストン96の動きによって大きさを変える。通路70が開くと、通路70とチャンバ14aとは、互いに流体を連絡可能であり、圧縮流体が第2のチャンバ32からチャンバ14aに向かって流れる。
【0022】
ダイヤフラム68の上方にピン78があり、そのピン78は、切換え弁カバー36を貫通し、ダイヤフラム68を押している。そして、第2のチャンバ32の中の圧縮流体に対抗する力を与え、ダイヤフラム68のシールを確保している。ピン78の先端部分は、回転軸82に支持された通風路ドアサポート80によって所定位置に保持されている。通風路ドアサポート80は、その右側の端部に通風路ドア84を備える。その通風路ドア84は、くぎおよびその頭部に似ており、頭部は孔86に適合しシールする大きさになっている。また、通風路ドアサポート80は、その左側に、一方に押すためのばね92を入れるための溝つまり受け場所94を備えている。受け場所94の上方には、通風路フレーム40のねじ孔88があり、そのねじ孔88の中に調節ねじ90が適合し入っている。ばね92は、その一端が調節ねじ90に連結され、その他端は通風路ドアサポート80上の溝つなりは受け場所94に位置している。調節ねじ90によって、ばね92の強さ(テンション)を所望レベルに調節することができる。勿論、適正なばね定数のばねを用いることにより、調節ねじ90およびばね92の組み合わせに代えて、調節ねじ90を省略することができる。この点、目的に適った他の方法を利用することもできる。
【0023】
ばね92の力が、ダイヤフラム68上通風路ドア84を下方に押し、それにより、装置が作動されるまで圧縮流体を第2のチャンバ32の中に保持するようにシールする。
【0024】
切換え弁カバー36は、使用者が装置を吸い込むまで、圧縮空気を第2のチャンバ32の中に蓄えている。装置に充分な真空が作り出されると、切換え弁がぱちんと開き、圧力を第2のチャンバ32から第1のチャンバ14aへと移す。
【0025】
容器18を第1のチャンバに装填した後、使用者は、始動レバー52を装置から離すように動かし、その後、それをハウジング12に向けて内側に動かす。始動レバー52を装置の本体から離すように動かすと、連結リンク46が圧縮ピストン34を下方に引く。この作用により、傘状の逆止弁64の後方の周囲空気を通路63を通して引き込み、圧縮シリンダ(第2のチャンバ32)の中に入れる。その後、始動レバー52を装置の本体に隣接した元の位置に戻し、圧縮ピストン34を上方に押し、それによって、第2のチャンバ32の容積を減じ、チャンバ内の流体を圧縮する。通風路フレーム40に設けたラッチ(留め金)100が、始動レバー52の上端をラッチし、ピストン34が流体を圧縮する間、始動レバー52を保持する。
【0026】
使用者がマウスピース16から吸い込むと、装置の内部(特には、第1および第3のチャンバ14,37、ならびに、通気オリフィス71を通して流体通路70の上部空間内)に真空が生じ、ダイヤフラム68の前後の差圧が急速に増し、ばね92がダイヤフラム68をシール状態の位置にもはや維持することができないしきい値を即座に越える。ダイヤフラム68は、ぱちんと開き、第2のチャンバ32から圧縮流体が出て、流体通路70を横切り、切換えポート76から第1のチャンバ14に入り、作動ピストン96に圧力を加える。作動ピストン96に作用する力が容器バルブ20の戻しばねに打ち勝ち、容器および/またはバルブを動かし、薬物をエアゾルとして供給する。薬物は、ノズル22およびマウスピース16を通して供給される。ダイヤフラム68が開くと、通風路ドア84が同時に開き、薬物を供給している間、使用者はそれを通して空気を吸い込むことができる。作動ピストン96の頂にあるブリードオリフィス102が、上面部28とピストン96との間の圧縮空気をゆっくりと流出し、容器の戻しばね(図示しない)によって、投与を終えた後で使用者が介することなくピストン96の背面を押し元の位置に戻す。そのため、長時間バルブステム20を押したままにしたとしても、容器漏れのおそれがない。さらに、装置の内部の圧力が均一になると、ばね92がダイヤフラム68をシール状態の位置に戻す。
【0027】
いわるる当業者であれば、容器からの薬物の吸入および放出が非常に速いため、吸入の開始時点で薬物の吸入が始まり、目的とする表面領域に通常の場合よりも多くの薬物を供給することができることが明らかである。
【0028】
この出願の内容を理解するため、供給すべき薬物の組成に関して、次のように用語を定義づける。
【0029】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「タンパク質」という各用語については、ペプチドあるいはタンパク質に言及するときに交換可能に用い、しかも、特に規定しない限り、特定の分子量、ペプチド配列あるいは長さ、生体作用あるいは治療上の用途の分野に限定されない。
【0030】
この発明を適用するのに適した薬剤は、分子の大きさが0.5Kドルトンから250Kドルトンの範囲のペプチド、ポリペプチド、あるいはタンパク質治療薬である。特に、ペプチド、ポリペプチドあるいはタンパク質治療薬としては、たとえばインシュリンやインシュリン類似物などの糖尿病用、アミリン、グルカゴン、表面活性剤、たとえばサイトカイン、ケモカイン、リンフォカインなどの免疫調整ペプチド、たとえばタクソ−ル、インタ−ロイキン‐1、インタ−ロイキン‐2や、インタ−フェロンなどのインタ−ロイキン、エリトロポイエティン、トロンボリティクスおよびヘパリン、アンチ‐プロテア−ゼ、アンチトリプシンおよびアミロライド(amiloride)、rhデオキシリボヌクレア−ゼ、抗生物質および他の抗感染薬、ホルモン、および、たとえば副甲状腺ホルモン、LH‐RH(黄体形成ホルモン放出ホルモン)およびGnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)類似物などの生長因子、ヌクレイン酸、DDAVP、カルシトニン、シクロスポリン、リバビリン(ribavirin)、エンザイム(酵素)、ヘパリン、造血因子、シクロスポリン、ワクチン、免疫グロブリン、管活性(vasoactive)ペプチド、アンチセンス物質、遺伝子、オリゴヌクレオチドおよびヌクレオチド類似物を含んでいる。
【0031】
「糖尿病用(のもの)」という用語は、たとえば、アクチビン(activin)、グルカゴン、インシュリン、ソマトスタチン、プロインシュリン、アミリン(amylin)などのように、天然(自然)の、合成の、半合成の、および組換えの薬剤を含む。
【0032】
「インシュリン」という用語は、インシュリン類似物、人体からの抽出インシュリン、人体からの組換えインシュリン、ウシおよび/またはブタからの抽出インシュリン、ウシおよびブタからの組換えインシュリン、およびそれらのインシュリン産出物のいずれかの混合を含むように解釈されるべきである。この用語については、糖尿病の治療において、通常、実質的に精製した形態で用いるポリペプチドを含めるが、その用語を用いるとき、付加的な賦形剤を含む市販の調剤形態も含む。インシュリンとしては、組換え品が好ましく、脱水(完全に乾燥)しても良いし、溶液でも良い。
【0033】
「インシュリン類似物」、「単量体インシュリン」などの用語は、この中では交換可能に用い、前に定義した「インシュリン」のどの形態をも含める。その場合、ポリペプチド連鎖内部の1または2以上のアミノ酸を、代わりのアミノ酸に置き換えたり、および/または1または2以上のアミノ酸を削除したり、あるいは、1または2以上の付加的なアミノ酸をポリペプチド連鎖あるいはアミノ酸連鎖に加えたりすることができる。そうすると、インシュリンが血液グルコ−スのレベルを減少するように働く。一般に、この発明の「インシュリン類似物」という用語には、米国特許第5,547,929号(その特許の全体を参照によってこの中に含める)が示すような「インシュリン リスプロ(lispro)類似物」、リスプロ インシュリンおよびヒトインシュリン(humalog insulin)、ならびに、他の「ス−パ− インシュリン類似物」を含む。そのようなインシュリン類似物が血清グルコ−スレベルに影響する能力は、一般のインシュリンに比べてかなり増加している。それは、肝選択(hepatoselective)インシュリン類似物が脂肪組織におけるよりも肝臓においてより有効であると同様である。好ましい類似物は、単量体インシュリン類似物である。それらは、インシュリンと同様の一般的な目的に用いられるインシュリン類似の化合物であり、たとえば、インシュリン リスプロなど、すなわち、血液グルコ−スのレベルを減じるために投与される化合物がある。
【0034】
「アミリン(amylin)」という用語には、合成、半合成あるいは組換えアミリン、またはアミリン類似物を含むと同様に、天然のヒトアミリン、ウシ、ブタ、ネズミ、ウサギアミリンを含む。そして、アミリン類似物には、プラムリンチド(pramlintide)および他のアミリン作動薬を含む。それらについては、米国特許第5,686,411号および米国特許第5,854,215号(両特許の全体を参照によって、この中に含める)が示している。
【0035】
「免疫調整タンパク質」という用語には、サイトカイン、ケモカイン、リンフォカイン捕体成分、免疫システム従属成分および付着分子、さらにはヒトあるいはヒト以外の動物の特性をもつそれらの受容体を含む。有用な例に、GM‐CSF、IL‐2、IL‐12、OX40、OX40L(gp34)、リンフォタクチン(lymphotactin)、CD40、CD40Lがある。また、有用な例には、インタ−ロイキン(たとえば、インタ−ロイキン1からインタ−ロイキン15)、α、βあるいはγの各インタ−フェロン、腫瘍壊死因子、顆粒球‐マクロファ−ジコロニ−刺激因子(GM‐CSF)、マクロファ−ジコロニ−刺激因子(M‐CSF)、顆粒球コロニ−刺激因子(G‐CSF)、ケモキン(たとえば、好中球活性化タンパク質(NAP))、マクロファ−ジ化学走性誘因物質および活性化因子(MCAF)、RANTES、マクロファ−ジ炎症性ペプチドMIP‐1aおよびMIP‐1b、捕体成分およびそれらの受容体、あるいは付着分子(たとえば、B7.1、B7.2、ICAM‐1、2あるいは3およびサイトカイン受容体)。OX40およびOX40‐リガンド(gp34)は、免疫調整タンパク質のさらに有用な例である。免疫調整タンパク質は、いろいろな目的のために、ヒトあるいはヒト以外の動物の特性になりうるし、場合によっては、また便宜が良いことに、天然のタンパク質、そのムテイン(mutein)、他のポリペプチド配列(たとえば、免疫グロブリン重連鎖定ドメイン)をもつそれらの融合タンパク質の結合した作用をする細胞外ドメインおよび他のフラグメントとなることができる。一つより多くの免疫調整タンパク質を含む(エンコ−ドする)ヌクレオチド配列が入るとき、それらの配列は、たとえば、一つより多くのサイトカイン、あるいはサイトカインと従属/付着の分子との組合わせを構成する。
【0036】
この中で用いる「インタ−フェロン」あるいは「IFN」の用語は、ウイルス複製および細胞増殖を禁止し、免疫反応を調整する、高対応種のタンパク質のグル−プ(科)を意味する。インタ−フェロンは、その細胞の起原および抗原に基づいて3つの種類に分類される。すなわち、α‐インタ−フェロン(白血球)、β‐インタ−フェロン(フィブロブラスト)、γ‐インタ−フェロン(免疫能力細胞)の3つである。各種類の組換え形態および類似物が開発されており、商業的に入手可能である。各種類のサブタイプ分けは、抗原の/構造的な特性に基づく。独特なアミノ酸連鎖をもつ少なくとも24のインタ−フェロンαが、それらのペプチドを含む遊離および連鎖DNAによって確認されている。ヴィスコミ(Viscomi),1996 生物学的療法(Biotherapy), 10: 59-86 を参照し、その全体をこの中に含める。「α‐インタ−フェロン」、「インタ−フェロンα」、「ヒトの白血球」および「IFN」の各用語は、この種類のものを表わすためにこの中で交換可能に用いる。天然のものおよび組換えのαインタ−フェロンの両方共に、この発明の実施のために用いることができる。それらのものには、たとえば米国特許第4,897,471号(参照によって、その特許の内容をこの中に含める)が示す交感インタ−フェロンを含む。このようにして用意するヒトの白血球インタ−フェロンは、異なるアミノ酸連鎖をもつヒトの白血球インタ−フェロンの複数の混合物を含んでいる。精製した天然のヒトα‐インタ−フェロンやそれらの混合物をこの発明で用いることができるが、日本の住友から入手可能なスミフェロンRTMインタ−フェロンα‐nl、英国ロンドンのグラクソウエルカム会社から入手可能なウエルフェロング インタ−フェロンα‐nl(Ins)や米国ノ−ウォ−クのパ−デュ− フレデリック会社から入手可能なアルフェロンRTMインタ−フェロンに限られるわけではない。
【0037】
「エリトロポエチン」という用語は、合成、半合成、組換え、天然、ヒト、サルあるいは他の動物、または微生物学的に分離したポリペプチド生成物に適用する。それらは、主要な構成上の配座の一部あるいはすべて(すなわち、アミノ酸残基の連続配列)、および、対立形質の変体を含む天然エリトロポエチンの1あるいは2以上の生物学的特性(たとえば、免疫学的特性ならびに生体内および生体外の生物学的活性)を備える。それらのポリペプチドは、また、外因的なDNA配列をもつ原核生物あるいは真核生物の受容体の発現(たとえば、細菌、イ−ストおよび哺乳動物の培養細胞による)であるという特有な特徴をもつ。外因的なDNA配列については、ゲノムあるいはcDNAク−ロン、または遺伝子合成によって得ることができる。脊椎動物(たとえば、哺乳動物や鳥)細胞における微生物の発現については、さらに、ヒトのタンパク質、または天然の哺乳動物細胞環境や細胞外の流体(たとえば、血漿や尿)の中のエリトロポエチンと関連する他の汚染物から自由であり無関係であるという特徴がある。典型的な酵母菌(たとえば、サッカロミケスセレビシェ)あるいは原核生物(たとえば、大腸菌)宿主細胞の生成物は、どの哺乳動物のタンパク質と無関係である。用いる宿主に応じて、この発明のポリペプチドは、哺乳動物あるいは他の真核生物の炭水化物とグリコシル化することができるし、あるいはグリコシル化しないこともできる。この発明のポリペプチドは、また、初期メチオニンアミノ酸残基(位置‐1に)を含むことができる。この発明の新しい糖タンパク質生成物には、主要な構造的な立体配座をもつものであり、、誘導分子を合成し天然の(たとえば、ヒトの)それを充分に複製し、1またはそれ以上の生物学的な特性をもち、しかも、天然の(たとえば、ヒトの)エリトロポエチンのそれとは異なる平均炭水化物構造を備えるものがある。
【0038】
「ヘパリン」および「血栓崩壊(thrombolytics)」という各用語には、たとえば、ヘパリン、低分子量ヘパリン、組織プラスミノゲン活性化因子(TPA)、ウロキナ−ゼ(アボキナ−ゼ)およびクロット(血餅)を制御するために用いる他の因子などの抗血餅因子を含む。
【0039】
「抗プロテア−ゼ」および「プロテア−ゼ阻害剤」という各用語は、交換可能に用い、そして、合成の、半合成の、組換えの、天然あるいは天然でない、受容体と反応する溶解性あるいは固定化因子、または抗体として作用する、酵素あるいは核酸に適用する。それらには、体液免疫反応を調節(変調)する受容体、細胞免疫反応を調節する受容体(たとえば、T細胞受容体)、ならびに、神経性反応を調節する受容体(たとえば、グルタミン酸塩受容体、グリシン受容体、γ‐アミノ酪酸(GABA))を含む。また、それらには、サイチカイン受容体(関節炎、敗血症ショック、移植拒絶反応、自己免疫病および炎症性疾病を含む)、細胞傷害T細胞受容体および/またはTヘルパ−細胞受容体(自己免疫病を含む)ならびにトロンビン受容体(凝結、心臓血管疾病を含む)に抗体を提供することと関連するメジャ−組織適合性(MHC)クラスIおよびII容体を含む。そしてまた、自己抗体を認識する抗体、たとえば、自己免疫疾患やウイルス性(たとえば、HIV、単純性疱疹ウイルス)および/または微生物抗体を認識する抗体を含んでいる。
【0040】
「ホルモン」および「生長因子」という各用語は、ホルモンを放出するホルモンを含み、たとえば、成長ホルモン、甲状腺ホルモン、甲状腺放出ホルモン(TRH)、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH、ス−パ−アゴニストおよび拮抗体、たとえばロイプロライド(leuprolide)、デルチレリックス(deltirelix)、ゴソレリン(gosorelin)、ナファレリン(nafarelin)、ダナゾ−ル(danazol)など)があり、天然、ヒト、ブタ、ウシ、ヒツジ、合成、半合成、組換えのものが含まれる。それらには、また、たとえばオクレオタイド(サンドスタチン)のようなソマトスタチン類似物をも含む。生物学的療法のこの種類の他の因子(作用物)には、子宮収縮用の薬剤(たとえば、オキシトシン)、利尿(たとえば、バソプレッシン)、好中球減少(たとえば、GCSF)、呼吸器の障害用の薬剤(たとえば、超酸化物不均化酵素)、RDS(たとえば、表面活性剤、選択的にアポタンパク質を含む)などを含む。
【0041】
「酵素」という用語は、デオキシリボヌクレア−ゼ(ジェネンテック)プロテア−ゼ(たとえば、トリプシンやトロンビンのようなセリンプロテア−ゼ)のような組換えデオキシリボヌクレア−ゼ、ポリメラ−ゼ(たとえば、RNAポリメラ−ゼ、DNAポリメラ−ゼ)、逆転写酵素およびキナ−ゼ、関節炎に関係する酵素、骨粗鬆症、炎症性の疾病、糖尿病、アレルギ−、臓器移植拒否反応、ガン遺伝子活性化(たとえば、ジヒドロ葉酸還元酵素)、形質導入(signal transduction)、自己循環調整、転写、DNA複製および修復を含む。
【0042】
「核酸」という用語は、天然あるいは天然でないヌクレオシド、または、他のプロテイノイド作用物(因子)であって、他の核酸、あるいは相補的な水素結合を経るオリゴヌクレオチドに特に結合することができ、しかも非核酸配位子に結合することができるものを含むDNAあるいはRNAのどの部分(セグメント)をも含む。その点、アプタマ−(aptamer)DNAを用いる、トロンビン触媒作用によるフィブリノゲンからフィブリン形成の阻害についての報告、ボック,エル.ほか、Nature 355:564-566 (1992)を参照されたい。
【0043】
この発明にしたがって、それに対し誘導分子を合成、選択および結合する生物学的分子の例として、細胞膜受容体、神経伝達物質、毒素および毒物、ウイルスエピト−プ、ホルモン、アヘン剤、ステロイド、ペプチド、酵素の基質および阻害剤、コファクタ−、薬物、レクチン、糖、オリゴヌクレオチド、核酸、オリゴ糖、脂質、タンパク質、ならびに上述の分子の類似物のためのアゴニストおよび拮抗体を含むが、それに限定されるわけではない。
【0044】
「類似物」という用語は、それに類似すると思われる複数の分子と共通の機能的な活性をもち、一般には、共通の構造的な特徴をももつ分子を指す。
【0045】
「組換え(あるいは組換え体)」という用語は、原核生物の細胞を発現するクロ−ン生物学的療法上の、あるいは遺伝工学的な分子、または、さらに別の状態に処理し第2の組合わせライブラリ−を形作る複数分子の組合わせライブラリ−、特には、物理化学的、薬理学的、および生物学的療法因子の臨床での安全性を促進する保護基を含む分子のいずれのタイプをも指す。
【0046】
「ワクチン」という用語は、体液や細胞の免疫反応を刺激する治療上の構成(成分)を指し、それは、分離されていることもあるし、たとえば活性樹木状の細胞のような抗原提供細胞を通して、T細胞を活性化し、選択した抗原に対し多価の細胞免疫反応を生成するものでもある。効力のある抗原は、試験管内の細胞をポリペプチド複合体に晒すことによって、刺激することができる。ポリペプチド複合体としては、樹木状の細胞結合タンパク質およびポリペプチド抗原で構成することができるが、他の好ましい例において、ポリペプチド抗原としては、組織特異的腫瘍抗原か、腫瘍遺伝子生成物のいずれかが良い。しかし、たとえばウイルス抗原のような他の抗原を、そのような組合わせに用いて免疫刺激反応を生じるようにすることができる。さらに好ましい例では、免疫刺激ポリペプチド複合体の部分を形作る樹木状の細胞結合タンパク質が、GM‐CSFである。さらにまた好ましい例において、複合体の部分を形作るポリペプチド抗原は、腫瘍特異的抗原前立腺酸性ホスファタ−ゼである。さらにまた、他の好ましい例において、ポリペプチド抗原は、腫瘍遺伝子生成ペプチド抗原のいずれか一つである。また、ポリペプチド複合体として、樹木状の細胞結合タンパク質とポリペプチド抗原との連鎖ペプチドをも含む。そのポリペプチド複合体は、ポリペプチド抗原に結合した樹木状の細胞結合タンパク質であり、そのようなポリペプチド複合体として、好ましくは、樹木状の細胞結合タンパク質(好ましくは、GM‐CSF)、およびポリペプチド抗原から形作ったものが良い。そのポリペプチド抗原として、前立腺酸性ホスファタ−ゼ(PAP)のような組織特異的腫瘍抗原、あるいは、Her2、p21RAS、p53のような腫瘍遺伝子生成物が好ましいが、ウイルス抗原のような他の例もまたこの発明の考え方の範囲内にある。
【0047】
「免疫グロブリン」という用語は、たとえば1または2以上の遺伝子ベクトルによる解読および遺伝情報指定(エンコ−ド)、宿主防御細胞中の核酸の半分をいろいろと結合する複合化、あるいは、ヒトや動物の治療の中で補助のためのベクトルを発現する共役のような宿主防御メカニズムに含まれるポリペプチドオリゴヌクレオチドを包含する。ポリペプチドのこのクラスに入る薬剤には、IgG、IgE、IgM、IgDがあり、それらは個別の場合、あるいは互いに組み合う場合のいずれかである。
【0048】
選ばれた薬物は、微粒子形態とし、呼吸作動形のpMIでエアゾルとして供給し、全身病を処置(治療)するようにするのが好ましい。したがって、薬剤あるいは薬物は、1〜7μm程度の直径をもつ。
【0049】
生物学的療法薬は、処方中に生物学的治療に有効な量入っている。すなわち、その生物学的療法薬の量は、エアゾル組成中にたとえば分散、エアゾル状に混和し、経口あるいは経鼻による吸入をし、望まれる治療効果を生み出す量である。通常は、一回の投与か、あるいは数度の投与を行う。薬物は、作動器(アクチェエータ)として知られるエアゾルアダプタを通して、通常のバルブ(たとえば所定用量バルブ)からエアゾルとして投与されるのが通例である。
【0050】
この出願の中で、BAIおよび供給すべき薬物に関連して、次のように用語を定義づける。
【0051】
「投与間隔」という用語は、選択した薬物をそれを必要とする患者に対し、肺内部の通路によって与える時間(期間)の意味であると解釈されるべきである。その期間は、患者の吸入サイクル中の約200〜約2000ms(ミリセカンド)の適切な投与時間について、一日に約1時間ごとから約10時間まで含むのが好ましい。
【0052】
「吸入サイクル(吸入周期)」という用語は、ここでは患者が息の吐出しを開始する直前までの全時間、すなわち患者の肺を完全に換気する時間を指す。
【0053】
ここで用いる「投与時間素子」という用語は、タイマー、投与カウンター、時間計測器、あるいは時間指示器の意味であり、それをエアゾル装置に組み込み、エアゾル薬物を投与する間、患者に対する投与状態の追跡、コンプライアンスのモニタ、および/または投与の始動(トリガー)を行うことができる。
【0054】
ここで用いる「投与時間」という用語は、患者の吸入サイクル中、患者に対し肺内部の通路を通して一回の噴霧(処方薬物の一回のスプレー)が放出されるタイミングの意味である。その投与は、約50〜2000msで開始され、その患者の吸入サイクルに入る。その時間は、吐出しが始まるまでをも含む。
【0055】
ここで用いる「投与期間」という用語は、その薬物の薬理学的な作用が必要とする時間の間にわたってエアゾル化した薬物を一回あるいは二回以上放出することを含む意味である。
【0056】
この中で用いる「量」という用語は、分量あるいは状況にふさわしい濃度を指す。生物学的治療の有効量を構成する薬剤量は、用いる生物学的治療薬剤の効力、処方薬の投与経路、および処方薬の投与に用いる機械的なシステムなどの複数の要因に応じて変化する。薬の生物学的治療の有効量については、そのような要因を考慮して、その分野の専門家が選択することができる。好ましくは、適切な薬の生物学的治療の有効量は、流体つまり用いるプロペラントを100重量部として約0.00001重量部から約5重量部であろう。
【0057】
適切な流体キャリアは、選択した薬物を含む粒子を運び輸送するものであり、それには、空気のほか、n‐ブタン、プロパン、イソペンタンなどの炭化水素、あるいは、プロペラント(推進剤)を含む。適切なプロペラントは、たとえば1‐6水素を含むフルロカ−ボン(たとえば、CHFCHF、CFCHF、CHCHおよびCFCHFCF)のようなフルオロカ−ボン、たとえば1‐4カ−ボン過フルオロカ−ボン(CFCF、CFCFCF)のような過フルオロカ−ボン、あるいは、上述したものの混合物であり、蒸気圧が充分であり、プロペラントとして有効に作用するものである。適切なプロペラントの典型例として、たとえばプロペラント11,12および114あるいはその混合物のような通常のクロロフルオロカ−ボン(CFC)プロペラントを挙げることができる。たとえばHFAプロペラント、1,1,1,2‐テトラフルオロエタン(プロペラント134a)、1,1,1,2,3,3,3‐ヘプタフルオロプロパン(プロペラント227)あるいはその混合物のような非‐CFCプロペラントが好ましい。流体あるいはプロペラントは、充分な量が入っており、それを用いるときエアゾル容器から粒子形態の選択薬剤の投与量を多数回にわたって推進させるようにするのが良い。
【0058】
選択によって、適切な安定剤を選ぶ。適切な安定剤は、(1)〜(5)のものを含む。(1)次の(a)(b)(c)から選ぶアミノ酸、(a)式がHN‐R‐COOH(I)のモノアミノカルボン酸、(b)式がHN‐R(COOH)(II)のモノアミノジカルボン酸、(c)式が(HN)‐RCOOH(III)のジアミノモノカルボン酸、ここで、Rは、炭素原子1〜22の直線的あるいは分岐したアルキル基であり、一部を硫化物(‐S‐)、酸化物(‐O‐)、ヒドロキシル基(‐OH‐)、アミド(‐NH)、硫酸塩(‐SO)、次式のアリ−ル基の一あるいは複数と置換可能である。
【0059】
【化1】

ここで、Xは、水素、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、炭素原子1〜6のアルキル、炭素原子1〜6のアルコキシ、ヒドロキシおよびニトロ、ならびに、たとえばスエニル(thienyl)、フリル(furyl)、ピラニル(pyranyl)、イミダゾ−ル、ピュロリル、シゾリル(thizolyl)、オキサゾリル(oxazolyl)、ピリディル(pyridyl)のような環式化合物、さらには、ピリミディニル(pyrimidinyl)化合物である。(2)次の(a)(b)(c)から選ぶアミノ酸誘導体、(a)アミノ基の酸付加塩であって、有機酸(たとえば酒石酸、クエン酸、酢酸、琥珀酸、マレイン酸、フマル酸、蓚酸など)のほか、無機酸(たとえば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸など)から得るもの、(b)カルボン酸群のアミド化合物:たとえばグルタミンやジペプチドであって、たとえば酸化および非酸化のL‐システイニルグリシン、γ‐L‐グルタミル‐L‐システイン、N‐アセチル‐L‐システイン‐グリシン、共役、非共役あるいは高分子化いずれかの形態のL‐Gly‐L‐GluおよびL‐Val‐L‐Thr、L‐アスパルチル‐L‐フェニルアラニン、ムラミルジペプチド、栄養素(たとえばL‐チロシル‐L‐チロシン、L‐アラニル‐L‐チロシン、L‐アルギニル‐L‐チロシン、L‐チロシル‐L‐アルギニン、N‐Cbz‐L‐Leu‐L‐Leu‐OCHおよびその塩あるいはエステル)、グリシル‐グリシン、N‐アセチル‐L‐アスパラギン酸塩‐L‐グルタミン酸塩(NAAG)など、そして、トリペプチドであって、酸化および非酸化のγ‐L‐グルタミル‐L‐システイニルグリシン、ムラミルトリペプチドなど、(c)カルボン酸群のエステルであって、脂肪族の炭素原子1〜6の直線的なあるいは分岐した連鎖をもつアルコ−ルから得るもの(たとえば、L‐アスパルチル‐L‐フェニルアラニンメチルエステル、商標アスパルテ−ム)。(3)上述したもののいずれかのエ−テル、(4)上述したもののいずれかの水和物あるいは半水和物、(5)アミノ酸とアミノ酸誘導体との混合物。
【0060】
適切なアミノ酸には、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、ロイシルアラニン、メチオニン、トレオニン、イソバリン、フェニルアラニン、チロシン、セリン、システイン、N‐アセチル‐L‐システイン、ヒスチジン、トリプトファン、プロリン、およびヒドロキシプロリン(たとえば、トランス‐4‐ヒドロキシプロリン)を含む。式(II)の化合物には、アスパラギン酸、およびグルタミン酸を含む。また、式(III)の化合物には、アルギニン、グルタミン、リジン、ヒドロキシリジン、オルニチン、アスパラギン、およびシトルリンを含む。
【0061】
流体あるいはエアゾル処方は、保護コロイド安定剤を含むようにするのが好ましい。その量は、その安定剤を含まない同一の処方に比べて処方を安定させる効果がある量である。その効果は、撹拌した後で、再現性のある薬物投与を妨げるような速さで薬物が沈殿せず、上かす(あわ)が生ぜず、あるいは凝集が生じない作用である。処方(薬)が約15秒から約5分の間実質的に均一な薬物濃度を保持するなら、再現性のある薬物投与を達成する。
【0062】
エアゾル懸濁液として、エアゾル処方について最適な機能および治療上の性能を得るため、安定剤を粗い担体(たとえば20〜90μm)として、あるいは細かく微粉化して(直径が10μm以下)含ませる。どちらの場合でも、患者の吸入操作を訓練せずに、再現性のある薬物投与をすることができる。したがって、2リットルまでの周期的な流れで、あるいは、15リットル/分から約90リットル/分程度の低い流量で、均一性にすぐれた投与を達成することができる。
【0063】
また、選択によって、第1の安定剤の代わりに第2の安定剤を選ぶことができる。第2の適切な安定剤は、「水付加(water addition)」のものである。この中で用いるとき、「水付加(water addition)」とは、水の量である。それは、(1)説明したエアゾル処方(たとえば、高分子化構造物の一部となったり、その中に閉じ込められたりして一緒になった薬剤、および流体キャリア)の他の成分とともに最初に加えるか、あるいは、他の成分(たとえば、薬剤、流体キャリア)を組み合わせ加工した後で加えるもの、(2)常に存在する水およびエアゾル処方の加工および/または保存の間に生じる水(すなわち、「発生した」あるいは「発生期の」処方水)に加わるもの、ならびに、(3)発生期の処方水を含む薬剤エアゾル処方(たとえば、ロジグリタゾン(rosiglitazone)マレイン酸塩)をさらに安定させる量で存在するものである。
【0064】
エアゾル処方(薬組成)は、好ましくは、水付加を含まない(すなわち、発生期の処方水だけを含む)同一の処方に比べて処方を安定させる効果がある量の水付加を備える。その効果は、撹拌した後で、再現性のある薬物投与を妨げるような速さで薬物(たとえば、インシュリン含有構造物)が沈殿せず、上かす(あわ)が生ぜず、あるいは凝集が生じない作用である。処方が約15秒から約5分の間実質的に均一な薬物濃度を保持するなら、再現性のある薬物投与を達成する。
【0065】
有効な量を構成する安定剤の特定量は、特定の安定剤、特定のプロペラント、および処方に用いる特定の薬剤によって変わる。したがって、この発明の具体的な処方に用いる具体的な有効量を挙げることは実際に則してはいない。しかし、そのような量について、当業者は、上に述べたファクタ−を充分に考慮すればすぐに定めることができる。だが、一般的には、処方に含まれる安定剤の量は、全処方の約0.001ppmから約200,000ppmであり、好ましくは、全処方の約1ppmから約10,000ppm、さらに好ましくは、全処方の約10ppmから約5,000ppmである。
【0066】
以上に述べた処方(薬組成)は、たとえばエタノ−ルのような共溶媒や表面活性剤を用いることなく安定である。しかし、エアゾル処方に対し、通常の潤滑剤や表面活性剤、共溶媒、エタノ−ルなどの添加剤をさらに加えることもできる。それに適した量について、いわゆる当業者は容易に定めるができる。その点、米国特許第5,225,183号を参照されたい。その参照によって、その特許の全体をこの中に含める。
【0067】
一般的には、次の(i)、(ii)、(iii)および(iv)のものを組み合わせることにより、以上に述べた処方を調製する。すなわち、(i)生物学的治療に有効な投与量を多数回提供することができるだけの生物学的治療薬剤あるいは薬物、(ii)できたら、各処方を安定させるだけの有効量の適切な懸濁液安定剤を添加すること、(iii)たとえばエアゾル容器から多数回噴射するのに充分な量の適切な流体あるいはプロペラントの中に、生物学的治療薬剤を分散させること、そして、(iv)場合によってさらに他の成分(たとえば、共溶媒としてのエタノール)を添加し、均一に分散するまでそれらの成分を均質にすること、である。各成分は、通常のミキサーあるいはホモジェナイザーを用いて、振動あるいは超音波エネルギーによって、分散させることができる。たとえば、米国特許第6,116,234号がそのような技術を示している。参照によって、その内容のすべてをここに組み込む。各成分については、また、ビードミルやマイクロ流動床を用いて分散させることもできる。大きな容積の組成については、バルブからバルブへの移送方法(valve to valve transfer methods)、圧力充填あるいは通常のコールド充填法を用いることによって、小容積の個々のエアゾルバイアルに移すことができる。懸濁エアゾル組成に用いる安定剤は、プロペラントに溶解する必要はない。充分に溶解しないものは、適当量が薬剤粒子の表面を被覆し、被覆された粒子は、その後、前述したように組成中に組み入れられる。
【0068】
このような組成を供給するために、通常のバルブ(好ましくは、所定用量バルブ)付きのエアゾル容器を用いることができる。しかし、エアゾル組成に用いる適正なバルブ装置を選択するとき、特定の安定剤および他のアジャパント(それがある場合)、プロペラント、ならびに用いる特定の薬剤が関係する。通常のCFC組成を供給するとき、所定用量バルブのゴム材料がネオプレンブナであると、最適なバルブ供給特性や、HFC−134aあるいはHFC−227を含む組成の場合の操作性に比べるとしばしば劣った特性あるいは操作性を示す。したがって、ある組成については、ダイヤフラムが、たとえばDB−218(米国ガスケット/ラバー、シラー パーク、III)のようなニトリル製、あるいはビスタロン(商品名Vistalon、エクソン)、ロイアレン(商品名Royalene、)、ブナイーピィー(bunaEP、バイエル)のようなEPDMゴム製のバルブ装置によって供給するのが好ましい。また、ダイヤフラムについては、フレクソマー(商品名FLEXOMER)ゲルス1085エヌティーポリオレフィン(ユニオンカーバイド)のような熱可塑性弾性材料から押出し、射出成形、あるいは圧縮成形によって形作るのが適切である。
【0069】
このようなエアゾル薬剤組成を入れるためには、一般のエアゾル容器、被覆をしたもの、あるいは被覆をしないもの、陽極酸化をしたもの、あるいは陽極酸化をしないもの、たとえば、アルミニウム、ガラス、ステンレス鋼、ポリエチレンテレフタレートの容器、さらには、エポン(epon)、エポキシなどで被覆した容器あるいは缶を用いることができる。内容物を容器に入れる場合、コールド充填法や圧力充填法のいずれかによって行うことができる。他のプロセス、装置を含め、それらのプロセスについて、インターファーム プレス インコーポレイテッド1998年の「所定用量吸入技術(Metered Dose Inhaler Technology)」、トル.エス.ピュアウォルほかが示している。参照によって、そのすべての内容をこの中に組み入れる。
【0070】
このような薬剤組成は、肺内腔あるいは鼻内腔を経由して投与することができる。ここでの薬剤組成は、経口吸入で処置すべき患者(人間あるいは他の動物)の気道および/または肺に供給することができる。また、薬剤組成を肺に供給し、体循環に所定割合で生物的療法の薬を供給し、体のどこかほかの疾患(たとえば、糖尿病、ホルモン補充、癌、赤血球の形成、感染、あるいはワクチンでできるような免疫)を治療することができる。また、組成については、経鼻吸入によって、たとえば、アレルギー性鼻炎、鼻炎、(局所)あるいは糖尿病(全身)を治療するために供給することができるし、また、それらの組成は、局所(たとえば頬)を通して供給し、たとえば、狭心症あるいは局所感染を治療することもできる。
【0071】
薬剤組成は、そのような病気を患う患者(たとえば、人間あるいは他の動物)の全身病の治療に用いる。最初、患者の吸入速度は、0.05〜2.0リットル/secの範囲にし維持する。それは、患者の通常の周期的な流れの下で薬の投与をするようにすることによって成し遂げる。したがって、投与される各量は、吸入サイクル中、約50msから約2000msで始まるように定められる。
【0072】
患者におけるこれらのパラメータを確立し維持すると、効果的な量(たとえば、キャリア100重量部に対し約0.0001〜約5重量部)および選択流体キャリアを含むエアゾル薬剤組成を適切な投与期間に適切な投与時間で患者に投与することができる。より具体的には、一日に3〜4時間ごとにエアゾル組成を約1〜4回スプレーするとき、約50〜2000ms(たとえば、約200〜500ms)の投与時間が好ましい。
【0073】
投与に際しては、約0.01〜20cm水柱のトリガー力(たとえば、前述した特許が示すタイプの0.01〜10cmが好ましい)をもつ始動装置を備えたものか、取り付けるようになった呼吸作動吸入装置を用いる。目的に適った他の呼吸作動吸入装置を用いることもできる。通常、選択薬剤(たとえば、インシュリン)および選択プロペラント(たとえば、空気、CFCプロペラント、非CFCやHFAプロペラント)を入れるための容器(たとえば、加圧容器)を備える。プロペラントは、薬剤をエアゾル(たとえば、溶液、粉、懸濁液、粉末)として運び運搬するためのものである。
【0074】
検知手段(たとえば、米国特許第6,328,035号参照)が備わり、処置すべき患者が装置を吸入するとき、吸入速度を約0.05〜2リットル/secの範囲にし、また、その検知手段は始動手段をトリガーする。その後、始動手段は、容器からプロペラントおよび薬剤を放出し、患者の鼻や口に向ける。好ましくは、薬剤の流速を小さくし、患者の肺の奥深くで吸収するようにすると良い。他のこともあるが、治療の効果は、薬剤の供給量および供給時間に依存する。pMDIおよび呼吸作動の吸入器を用いることによって、呼吸気道、特には肺の深くに容易にしかも予測可能な供給および分散を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】米国特許第6,328,035号公報が示すタイプの呼吸作動吸入器の側断面図である。
【符号の説明】
【0076】
10 呼吸作動吸入装置
14 第1のチャンバ
16 マウスピース
18 エアゾル容器
20 エアゾルステム
22 ノズル
32 第2のチャンバ
34 ピストン
36 切換え弁
37 第3のチャンバ
44 圧縮ピストンアセンブリ
52 始動レバー
68 ダイヤフラム
92 ばね
96 作動ピストン



【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする患者の全身病を処置する方法であり、次の事項を備える方法。
(a)患者の吸入速度を約0.05〜約2リットル/secに、しかもまた、患者の吸入体積を約0.1〜約5リットルの範囲に維持すること
(b)加圧した呼吸作動の所定用量吸入装置を用いて、(a’)治療効果があるだけの量の薬物、および(b’)その薬物を適切な投与期間に適切な投与時間で運び運搬するための流体プロペラントキャリアを含むエアゾル組成を患者に投与すること
【請求項2】
前記装置が約0.01〜約20cm水柱のトリガー力をもつ、請求項1の方法。
【請求項3】
前記適切な投与時間が約50〜約2000ms(ミリセコンド)である、請求項1の方法。
【請求項4】
前記適切な投与期間が、3〜4時間ごとの約1〜約4回のエアゾル組成のスプレーである、請求項3の方法。
【請求項5】
前記薬物の前記治療効果がある量が、前記キャリアの100重量部に対し約0.00001〜約10重量部である、請求項4の方法。
【請求項6】
前記エアゾル組成が安定剤を含む、請求項5の方法。
【請求項7】
前記薬物は、直径が約1〜約7μmの範囲の可溶性あるいは懸濁化した粒状である、請求項5の方法。
【請求項8】
前記薬物は、分子の大きさが約0.5Kダルトン〜約250Kダルトンの範囲のタンパク質あるいはペプチドである、請求項5の方法。
【請求項9】
それを必要とする患者に全身病を処置するためにエアゾル薬剤を供給する、呼吸作動の所定用量吸入装置であり、次のものを備える装置。
(a)全身病を治療するための薬物、およびその薬物をエアゾルとして運び運搬するための流体プロペラントを入れる容器
(b)患者が吸入することでトリガーされ、前記プロペラントおよび薬物を前記容器から放出する始動手段
(c)患者の吸入速度が約0.05〜約2リットル/secであり、しかもまた、患者の吸入体積が約0.1〜約5リットルの範囲にあるとき、前記始動手段をトリガーするための検知手段
【請求項10】
前記薬物を計量し放出するためのバルブ手段をさらに含み、そのバルブ手段が、ニトリルゴム、EPDMゴム、ポリオレフィンあるいは熱可塑性の弾性のある高分子物質から構成される、請求項9の装置。


【図1】
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【公表番号】特表2006−520646(P2006−520646A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507276(P2006−507276)
【出願日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/008150
【国際公開番号】WO2004/082633
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(503469762)ケイオウエス ライフ サイエンスイズ,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】