説明

全量基肥によるイネの栽培

【課題】
本発明では、全量基肥によるイネの栽培において、用いられた倒伏軽減化合物による倒伏軽減効果のバラツキを極力排除し、倒伏軽減効果にムラを生じさせないイネの栽培方法等を提供することを課題とする。
【解決手段】
全量基肥によるイネの栽培において、倒伏軽減化合物を含有する粒状物であって、当該倒伏軽減化合物の25℃水中における6時間後の積算溶出率が15%以下、かつ14日目の積算溶出率が5%以上45%以下である粒状物を、本田に基肥を施用する時期に施用することを特徴とするイネの栽培方法等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業の省力化を目的として行われる全量基肥によるイネの栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2001−169667には、全量基肥によるイネの栽培において、倒伏軽減化合物の25℃水中における50%溶出期間が40〜80日である倒伏軽減化合物を含有する粒状物を、本田に基肥を施用する時期に施用することにより、単位面積あたりの籾数が減少することなく、精玄米収量がより増加することが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−169667
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の栽培方法においてもトータルとして精玄米収量が増加しても、気象、土壌、イネの品種等の各種条件の組み合わせによっては、倒伏軽減化合物の処理区内で倒伏軽減効果にムラを生じて効果の均一性や安定性等に問題を生じる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような状況下で、本発明者らは鋭意検討を行った結果、全量基肥によるイネの栽培において、全量基肥の施用直後から2週間までの初期時期における倒伏軽減化合物の溶出量が、倒伏軽減効果にムラを生じさせないために極めて重要な要因になり得ることを見出し、本発明に至った。
【0006】
即ち、本発明は、
1.全量基肥によるイネの栽培において、倒伏軽減化合物を含有する粒状物であって、当該倒伏軽減化合物の25℃水中における6時間後の積算溶出率が15%以下、かつ14日目の積算溶出率が5%以上45%以下である粒状物を、本田に基肥を施用する時期に施用することを特徴とするイネの栽培方法(以下、本発明栽培方法と記すこともある。);
2.倒伏軽減化合物が、(E)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オール若しくはその塩、或いは、1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンタン−3−オール若しくはその塩であることを特徴とする前項1記載のイネの栽培方法;
3.倒伏軽減化合物が、(E)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オール若しくはその塩であることを特徴とする前項1記載のイネの栽培方法;
4.倒伏軽減化合物が、(E)−(S)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オール若しくはその塩であることを特徴とする前項1記載のイネの栽培方法;
5.粒状物が、前項2記載の倒伏軽減化合物を含有し、かつ、当該倒伏軽減化合物の25℃水中における7日目の前記粒状物中での残存率が85%以上95%以下である粒状物であることを特徴とする前項2乃至4記載のイネの栽培方法;
6.粒状物が、請求項2記載の倒伏軽減化合物を含有し、かつ、当該倒伏軽減化合物の25℃水中における60日目の前記粒状物中での残存率が実質的にゼロより大である粒状物であることを特徴とする前項2乃至4記載のイネの栽培方法;
等を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、全量基肥によるイネの栽培において、用いられた倒伏軽減化合物による倒伏軽減効果のバラツキを極力排除し、倒伏軽減効果にムラを生じさせないことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明栽培方法において用いられる本粒状物は、含有している倒伏軽減化合物の25℃水中における6時間後の積算溶出率が15%以下、かつ14日目の積算溶出率が5%以上45%以下となるように、倒伏軽減化合物を固体担体に含有させたものである。具体的には倒伏軽減化合物を固体担体に担持させた粒状物の表面を、被覆資材により被覆してなるものが挙げられる。
本粒状物は、全量基肥の施用直後から2週間までの初期時期における倒伏軽減化合物の溶出量に係る上記のような特性を有する限り、当該粒状物中の倒伏軽減化合物の25℃水中における50%溶出期間が40日〜80日である倒伏軽減化合物を含有するものであってもよいが、気象、土壌、イネの品種等の各種条件の組み合わせにより生じる倒伏軽減効果のムラを特に優先して抑えたい場合(即ち、効果の均一性や安定性等を特に重視する必要がある場合)には、他の50%溶出期間である倒伏軽減化合物を含有するものであってもよい。具体的には、施用される倒伏軽減化合物の全量(溶出分及び未溶出分)を極力抑えながら、倒伏軽減化合物による倒伏軽減効果のバラツキを極力排除するという観点からは、本粒状物中の倒伏軽減化合物の25℃水中における50%溶出期間が22日〜39日である倒伏軽減化合物を含有するもの等が好ましい。
【0009】
本発明における倒伏軽減化合物(以下、本化合物と記す。)とは、例えば、イネの稈長を短くすることにより収穫時期の倒伏を軽減する効果を有する植物生長調節剤の一種であり、かかる本化合物としては、具体的には(E)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オール〔特開昭56−25105号公報に記載される化合物〕、(2RS,3RS)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンタン−3−オール〔特開昭53−28170号公報に記載される化合物〕、(E)−1−シクロヘキシル−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オール〔特開昭55−111477号公報に記載される化合物〕等のトリアゾール化合物若しくはその塩〔具体的には、塩酸塩、硫酸塩等〕又は4'−クロロ−2'−(α−ヒドロキシベンジル)イソニコチンアニリド(Short Review of Herbicides & PGRs,1990,保土ヶ谷化学(株)出版,第306頁に記載される化合物)等のイソニコチンアニリド化合物若しくはその塩〔具体的には、塩酸塩、硫酸塩等〕等を挙げることができる。
【0010】
かかる本粒状物における固体担体としては、ウレタン、ポリスチレン等の合成樹脂組成物;カオリンクレー、アッタパルジャイトクレー、ベントナイト、モンモリロナイト、酸性白土、パイロフィライト、タルク、珪藻土、方解石等の鉱物質;トウモロコシ穂軸粉、クルミ殻粉等の植物性固形物;尿素、硝酸アンモニウム、硝酸苦土アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸ソーダ、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、石灰窒素、ホルムアルデヒド加工尿素肥料(UF)、アセトアルデヒド加工尿素肥料(CDU)、イソブチルアルデヒド加工尿素肥料(IBDU)、グアニール尿素(GU)等の窒素質粒状肥料;過リン酸石灰、重過リン酸石灰、熔成リン肥、腐植酸リン肥、焼成リン肥、重焼リン、苦土過リン酸、ポリリン酸アンモニウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸カルシウム、苦土リン酸、硫リン安、リン硝安カリウム、塩リン安等のリン酸質粒状肥料;塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸カリソーダ、硫酸カリ苦土、重炭酸カリウム、リン酸カリウム等のカリウム質粒状肥料;珪酸カルシウム等の珪酸質粒状肥料、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のマグネシウム質粒状肥料;生石灰、消石灰、炭酸カルシウム等のカルシウム質粒状肥料;硫酸マンガン、硫酸苦土マンガン、鉱さいマンガン等のマンガン質粒状肥料;ホウ酸、ホウ酸塩等のホウ素質粒状肥料等を挙げることができる。
当該固体担体の粒径は特に限定はないが、必要により行われる被覆工程での製造上の好適さの点から1〜5mm程度であることが好ましい。担体としては、窒素室粒状肥料等の粒状肥料が好ましい。担体として、粒状肥料を用いる場合、本粒状物は基肥の一部又は全部として用いられる。
【0011】
本化合物を固体担体に担持させる方法は特に限定されないが、例えば、本化合物を固体担体の表面へ付着させる方法、本化合物の溶液を固体担体に浸透させる方法、本化合物を固体担体とともに造粒する方法等があげられる。その具体例としては、例えば、特開昭63−107880号公報に記載される方法等があげられる。
本化合物を固体担体に担持させた粒状物の表面を、各種の樹脂、パラフィン類、油脂類、硫黄等の被覆資材により特定の厚みで被覆することにより、本粒状物が製造できる。被覆資材及び被覆方法は、例えば、特開平8−73291号公報、特開平9−263475号公報、特開平10−152387号公報、特開平2003−81705号公報等に記載される被覆資材及び被覆方法が用いられ、かかる被覆により本化合物の25℃水中における6時間後の積算溶出率が15%以下かつ14日目の積算溶出率が5%以上45%以下となるような被覆資材の膜厚に調整される。被覆資材は、本化合物を固体担体に担持させた粒状物に対する重量比率で、約2〜30%の範囲である。被覆資材には、必要に応じて無機質粉末、耐候性改良剤、着色剤、結合剤等を加えることもできる。
本粒状物中における本化合物の含有量は、通常、約0.00001〜5重量%、好ましくは0.001%〜1重量%である。
【0012】
本粒状物における本化合物の25℃水中における6時間後又は14日目の積算溶出率は以下の方法で算出する。
25℃で保持され、緩やかに攪拌された水中に本粒状物を浸漬し、所定時間経過後に本粒状物中に残存する本化合物の量を、各々の本化合物に即した通常の分析方法にて測定する。当該残存量と当初含まれていた本化合物の量との差から、溶出した本化合物の量を計算し、所定時間中の本化合物の積算溶出率を算出する。
尚、本化合物の25℃水中における7日目又は60日目の本粒状物中での残存率についても上記と同様にして算出するか、さらに所定時間を変えて幾度か行い、本化合物の溶出曲線を求めて、これより算出してもよい。
本化合物の分析方法については、例えば、液体クロマトグラフィー等の本化合物の定量的な測定方法として公知の方法にて、行なうことが出来る。
本粒状物を本田に施用するにおける、単位面積あたりの本化合物の量は、0.0001g/m2〜1g/m2である。好ましくは、(E)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オールを用いる場合には0.0001g/m2〜0.01g/m2であり、(2RS,3RS)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンタン−3−オールを用いる場合には0.001g/m2〜0.2g/m2であり、(E)−1−シクロヘキシル−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オールを用いる場合には、0.002g/m2〜0.4g/m2であり、4’−クロロ−2’−(α−ヒドロキシベンジル)イソニコチンアニリドを用いる場合には、0.02g/m2〜1g/m2である。
【0013】
本発明栽培方法において、本田に基肥を施用する時期とは、基肥施用と同時又は基肥施用からイネの苗を本田に移植又はイネの籾を本田に播種する時までを意味する。ここで、イネの苗とは約6葉期までのイネの幼植物体を意味する。
また、本粒状物を施用する方法としては、本田に対して全面施用、条施用、点施用、表面施用、表層施用、深層施用、全層施用等の方法があげられる。農作業の省力化の観点からは、本粒状物は基肥とともに施用することが好ましい。かかる施用においては、本粒状物と基肥とを予め、一定の割合にて配合して、当該配合物を本田に施用する。
本発明栽培方法は、イネの育苗において、本田に施用する場合の所定量の肥料の全部又は一部を育苗用土に混和又は層状施用して、その後にイネの苗とともに当該育苗用土を本田に移すイネの栽培方法においても、適用することが可能であり、この場合には本粒状物は肥料とともに育苗用土に施用される。
【0014】
本発明における全量基肥における基肥としては、例えば、窒素、リン、カリウム、珪素、マグネシウム、カルシウム、マンガン、ホウ素、鉄等の水稲が要求する種々の元素を含有する肥料であり、具体例としては、尿素、硝酸アンモニウム、硝酸苦土アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸ソーダ、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、石灰窒素、ホルムアルデヒド加工尿素肥料(UF)、アセトアルデヒド加工尿素肥料(CDU)、イソブチルアルデヒド加工尿素肥料(IBDU)、グアニール尿素(GU)等の窒素質肥料、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、熔成リン肥、腐植酸リン肥、焼成リン肥、重焼リン、苦土過リン酸、ポリリン酸アンモニウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸カルシウム、苦土リン酸、硫リン安、リン硝安カリウム、塩リン安等のリン酸質肥料、塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸カリソーダ、硫酸カリ苦土、重炭酸カリウム、リン酸カリウム等のカリウム質肥料、珪酸カルシウム等の珪酸質肥料、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のマグネシウム質肥料、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム等のカルシウム質肥料、硫酸マンガン、硫酸苦土マンガン、鉱さいマンガン等のマンガン質肥料、ホウ酸、ホウ酸塩等のホウ素質肥料、鉄鋼スラグ等の含鉄肥料等の肥料取締法に定められる普通肥料(複合肥料を含む)、有機質肥料、及び普通肥料(複合肥料を含む)や有機質肥料の混合物を挙げることができる。中でも、基肥としては窒素(N)、リン(P)及びカリウム(K)より選ばれる肥料成分の一種以上を含有するものが好ましい。その具体例としては、NPK成分型(N−P25−K2O)肥料が挙げられ、かかる肥料としては、例えば、5−5−7、12−12−16等の1型平上り型、5−5−5、14−14−14等の2型水平型、6−6−5、8−8−5等の3型平下り型、4−7−9、6−8−11等の4型上り型、4−7−7、10−20−20等の5型上り平型、4−7−4、6−9−6等の6型山型、6−4−5、14−10−13等の7型谷型、6−5−5、18−11−11等の8型下り平型、7−6−5、14−12−9等の9型下り型、3−20−0、18−35−0等の10型NP型、16−0−12、18−0−16等の11型NK型、0−3−14、0−15−15等の12型PK型等を挙げることができる。
基肥の全部又は一部については、精玄米収量等の収量面から、肥料成分の溶出が制御された被覆粒状肥料を用いることが好ましい。ここでいう被覆粒状肥料とは、凝結や結晶化等により形成されたつぶ又はつぶ状の肥料の表面を各種の樹脂、パラフィン類、油脂類、硫黄等の被覆資材で被覆されたものを意味する。形状としては、均等性のあるものが好ましい。粒径は特に限定はないが、被覆工程での製造上の好適さの点から1〜5mm程度であることが好ましい。被覆資材の被覆粒状肥料に対する重量割合、すなわち被覆率は、約2〜30重量%の範囲である。被覆資材には、必要に応じてさらに無機質粉末、耐候性改良剤、着色剤、結合剤等を加えることもできる。被覆資材及び被覆方法は、例えば、特開昭54−97260号公報、特開平9−202683号公報、特開平9−208355号公報、特開平9−263474号公報等に記載される被覆資材及び被覆方法が用いられ、かかる被覆により肥料成分の溶出率が調整される。
当該被覆粒状肥料については、静置した25℃水中で80%の肥料成分が溶出するのに要する期間が、通常、約5日〜200日である被覆粒状肥料が使用され、より好ましくは当該期間が約10日〜150日である被覆粒状肥料が使用される。本粒状物が本化合物を含有する被覆粒状肥料である場合には、本化合物を含有する被覆粒状肥料に対して被覆部分の溶出特性が異なる本化合物を含有しない被覆粒状肥料を使用するのが好ましい。
肥料成分の分析方法については、例えば、農林水産省環境技術研究所より提案されている方法(「詳解肥料分析法」越野正義編著、1988年参照)により行うことが出来る。被覆粒状肥料の施用量としては、肥料成分量として、通常、約0.05〜300g/m2、好ましくは約1〜60g/m2である。
被覆粒状肥料は1種を単独で用いてもよくまた、2種以上を混用又は併用してもよい。
【0015】
本発明栽培方法においては、本粒状物とともに、植物病害防除剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、除草剤、土壌改良剤等を混用又は併用することもできる。
【実施例】
【0016】
以下に、本発明栽培方法を実施例でさらに詳細に説明するが、本発明栽培方法はこれらに限定されるものではない。
まず、以下に本粒状物と基肥とを配合した配合物の例を示す。尚、本粒状物の施用方法としては、本配合例の施用に限られるものではない。
【0017】
配合例1
「本粒状物A」(特開平10−152387号公報に記載される方法に準じて製造された(E)−(S)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オール(以下「化合物A」と記す)を粒状肥料に担持させ、被覆資材により被覆した粒状物;N−P25−K2O−化合物A=13%−0%−16%−0.024%、化合物Aの25℃水中における6時間後の積算溶出率が0.5%、14日目の積算溶出率は10.5%)12.5部と、「被覆粒状肥料C」(特開平9−202683号公報に記載される方法に準じて製造された「被覆尿素80日タイプ」;N−P25−K2O=42%−0%−0%、25℃静置水中で尿素態窒素の溶出が80日目で80%)15.0部と、「被覆粒状肥料E」(特開平9−202683号公報に記載される方法に準じて製造された「被覆尿素120日タイプ」;N−P25−K2O=41%−0%−0%、25℃静置水中で尿素態窒素の溶出が120日目で80%)11.7部と、「新すずらん」(住友化学工業株式会社製、N−P25−K2O=4%−20%−20%)52.0部と、「17.5−45.5 りん安4号」(住友商事株式会社輸入販売、N−P25−K2O=17.5%−45.5%−0%)8.8部とを配合し、「本配合物1」100.0部を得た。
【0018】
配合例2
「本粒状物A」12.5部と、「被覆粒状肥料C」18.0部と、「被覆粒状肥料D」(特開平9−202683号公報に記載される方法に準じて製造された「被覆尿素100日タイプ」;N−P25−K2O=41%−0%−0%、25℃静置水中で尿素態窒素の溶出が100日目で80%)13.5部と、「すずらん特号」(住友化学工業株式会社製、N−P25−K2O=6%−20%−20%)42.5部と、「17.5−45.5 りん安4号」13.5部とを配合し、「本配合物2」100.0部を得た。
【0019】
配合例3
「本粒状物A」12.5部と、「被覆粒状肥料F」(特開平2001−328891号公報に記載される方法に準じて製造された「被覆尿素20日タイプF」;N−P25−K2O=42%−0%−0%、25℃静置水中で尿素態窒素の溶出が20日目で80%)1.5部と、「被覆粒状肥料B」(特開平9−202683号公報に記載される方法に準じて製造された「被覆尿素60日タイプ」;N−P25−K2O=43%−0%−0%、25℃静置水中で尿素態窒素の溶出が60日目で80%)15.0部と、「被覆粒状肥料D」11.0部と、「たから印硫燐安加里」(住友化学工業株式会社製、N−P25−K2O=10%−20%−15%)42.5部と、「17.5−45.5 りん安4号」17.5部とを配合し、「本配合物3」100.0部を得た。
【0020】
配合例4
「本粒状物A」16.7部と、「被覆粒状肥料C」19.8部と、「被覆粒状肥料E」15.5部と、「化成肥料013号」(住友化学工業株式会社製、N−P25−K2O=10.5%−21%−23.5%)28.0部と、「すずらん特号」10.0部と、「17.5−45.5 りん安4号」10.0部とを配合し、「本配合物4」100.0部を得た。
【0021】
配合例5
「本粒状物A」16.7部と、「被覆粒状肥料C」23.2部と、「被覆粒状肥料D」17.3部と、「スミヒレン化成666号」(住友化学工業株式会社製、N−P25−K2O=16%−16%−16%)26.0部と、「17.5−45.5 りん安4号」13.5部と、「硫酸加里」(N−P25−K2O=0%−0%−50%)3.3部とを配合し、「本配合物5」100.0部を得た。
【0022】
配合例6
「本粒状物A」16.7部と、「被覆粒状肥料F」10.0部と、「被覆粒状肥料A」(特開平9−208355号公報に記載される方法に準じて製造された「被覆尿素20日タイプ」;N−P25−K2O=43%−0%−0%、25℃静置水中で尿素態窒素の溶出が20日目で80%)4.0部と、「被覆粒状肥料B」19.5部と、「被覆粒状肥料D」14.5部と、「化成肥料013号」19.65部と、「17.5−45.5 りん安4号」15.65部とを配合し、「本配合物6」100.0部を得た。
【0023】
配合例7
「本粒状物A」8.4部と、「被覆粒状肥料F」2.5部と、「被覆粒状肥料C」25.8部と、「被覆粒状肥料E」10.5部と、「すずらん特号」50.0部と、「重過燐酸石灰」(N−P25−K2O=0%−45%−0%)2.8部とを配合し、「本配合物7」100.0部を得た。
【0024】
配合例8
「本粒状物B」(特開平10−152387号公報に記載される方法に準じて製造された(2RS,3RS)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンタン−3−オール(以下「化合物B」と記す)を粒状肥料に担持させ、被覆資材により被覆した粒状物;N−P25−K2O−化合物A=13%−0%−16%−0.018%、化合物Bの25℃水中における6時間後の積算溶出率が0.5%、14日目の積算溶出率は11%)12.4部と、「被覆粒状肥料B」12.2部と、「被覆粒状肥料D」7.7部と、「尿素」(住友化学工業株式会社製、N−P25−K2O=46%−0%−0%)5.1部と、「くみあい苦土入り燐酸加里化成高度40号」(小野田化学工業株式会社製、N−P25−K2O=0%−20%−20%)62.6部とを配合し、「本配合物8」100.0部を得た。
【0025】
配合例9
「本配合物1」で「本粒状物A」12.5部の代わりに「本粒状物C」(特開平10−152387号公報に記載される方法に準じて製造された化合物Aを粒状肥料に担持させ、被覆資材により被覆した粒状物;N−P25−K2O−化合物A=13%−0%−16%−0.024%、化合物Aの25℃水中における6時間後の積算溶出率が7.3%、14日目の積算溶出率は30.5%)12.5部を用いたこと以外は同じ配合物「本配合物9」100.0部を得た。
【0026】
配合例10
「本配合物1」で「本粒状物A」12.5部の代わりに「本粒状物D」(特願2003−173044号公報に記載される方法に準じて製造された化合物Aを粒状肥料に担持させ、被覆資材により被覆した粒状物;N−P25−K2O−化合物A=13%−0%−16%−0.024%、化合物Aの25℃水中における6時間後の積算溶出率が1.3%、14日目の積算溶出率は24.6%、21日目の積算溶出率は36.7%、35日目の積算溶出率は53.8%)12.5部を用いたこと以外は同じ配合物「本配合物10」100.0部を得た。
【0027】
配合例11
「本配合物1」で「本粒状物A」12.5部の代わりに「本粒状物E」(特願2003−173044号公報に記載される方法に準じて製造された化合物Aを粒状肥料に担持させ、被覆資材により被覆した粒状物;N−P25−K2O−化合物A=13%−0%−16%−0.024%、化合物Aの25℃水中における6時間後の積算溶出率が7%、14日目の積算溶出率は31%、21日目の積算溶出率は40%、28日目の積算溶出率は52%)12.5部を用いたこと以外は同じ配合物「本配合物11」100.0部を得た。
【0028】
配合例12
「本配合物1」で「本粒状物A」12.5部の代わりに「本粒状物F」(特願2003−173044号公報に記載される方法に準じて製造された化合物Aを粒状肥料に担持させ、被覆資材により被覆した粒状物;N−P25−K2O−化合物A=13%−0%−16%−0.024%、化合物Aの25℃水中における6時間後の積算溶出率が9%、14日目の積算溶出率は36%、21日目の積算溶出率は42%、28日目の積算溶出率は52%)12.5部を用いたこと以外は同じ配合物「本配合物12」100.0部を得た。
【0029】
配合例13
「本配合物1」で「本粒状物A」12.5部の代わりに「本粒状物G」(特願2003−173044号公報に記載される方法に準じて製造された化合物Aを粒状肥料に担持させ、被覆資材により被覆した粒状物;N−P25−K2O−化合物A=13%−0%−16%−0.024%、化合物Aの25℃水中における6時間後の積算溶出率が9.4%、14日目の積算溶出率は38%、28日目の積算溶出率は54%)12.5部を用いたこと以外は同じ配合物「本配合物12」100.0部を得た。
【0030】
次に、倒伏軽減化合物の25℃水中における6時間後の積算溶出率が15%より大きくかつ14日目の積算溶出率が45%より大きい倒伏軽減化合物を含有する粒状物と、基肥とを配合した比較配合物の例を示す。
比較配合例1
「本配合物1」で「本粒状物A」12.5部の代わりに「比較粒状物A」(特開平10−152387号公報に記載される方法に準じて製造された化合物Aを粒状肥料に担持させ、被覆資材により被覆した粒状物;N−P25−K2O−化合物A=13%−0%−16%−0.024%、化合物Aの25℃水中における6時間後の積算溶出率が18.1%、14日目の積算溶出率は56%)12.5部を用いたこと以外は同じ配合物「比較配合物1」100.0部を得た。
【0031】
次に本発明栽培方法によるイネの栽培の試験例を示す。本発明栽培方法は、本試験例に限られるものではない。
試験例1
本発明区として次の2区を設けた。
(a)配合例1で得られた「本配合物1」の40.0g/m2(窒素施用量:6.4g/m2、化合物A施用量:0.0012g/m2)相当量を、田植え5日前に本田の圃場作土へ全層施用し、その後イネ幼植物を移植し、「本発明区1」とした。(b)配合例9で得られた「本配合物9」の40.0g/m2(窒素施用量:6.4g/m2、化合物A施用量:0.0012g/m2)相当量を、本発明区1と同様に施用し、「本発明区2」とした。
比較区として次の2区を設けた。
(c)「比較配合物1」の40.0g/m2(窒素施用量:約6.4g/m2、化合物A施用量:0.0012g/m2)相当量を、本発明区1と同様に施用し、「比較区1」とした。
(d)化合物Aを含有していないこと以外は「本配合物1」と同様の配合物「比較配合物2」の40.0g/m2(窒素施用量:約6.4g/m2)相当量を、本発明区1と同様に施用し、「比較区2」とした。
試験は24日間育苗された2.3葉期のイネ幼植物(品種:コシヒカリ)を用いて行い、1区75m2、2連で行った。その後、栽培を継続し、田植え後120日目に試験区内の倒伏程度と倒伏軽減効果のムラとを調査した。倒伏程度は直立を0、完全倒伏を4とし、傾斜角度を均等に区分することにより評価した。倒伏軽減効果のムラは効果が均一を0、若干ムラ有りを5、ムラ有りを10、著しいムラ有りを20として評価した。2連平均の結果を表1に示す。
表1から明らかなように、本発明区1及び2では、倒伏軽減効果が認められ倒伏軽減効果のムラを抑えることができることが確認された。
【0032】
【表1】


【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、全量基肥によるイネの栽培において、用いられた倒伏軽減化合物による倒伏軽減効果のバラツキを極力排除し、倒伏軽減効果にムラを生じさせないことが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全量基肥によるイネの栽培において、倒伏軽減化合物を含有する粒状物であって、当該倒伏軽減化合物の25℃水中における6時間後の積算溶出率が15%以下、かつ14日目の積算溶出率が5%以上45%以下である粒状物を、本田に基肥を施用する時期に施用することを特徴とするイネの栽培方法。
【請求項2】
倒伏軽減化合物が、(E)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オール若しくはその塩、或いは、1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンタン−3−オール若しくはその塩であることを特徴とする請求項1記載のイネの栽培方法。
【請求項3】
倒伏軽減化合物が、(E)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オール若しくはその塩であることを特徴とする請求項1記載のイネの栽培方法。
【請求項4】
倒伏軽減化合物が、(E)−(S)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−ペンテン−3−オール若しくはその塩であることを特徴とする請求項1記載のイネの栽培方法。
【請求項5】
粒状物が、請求項2記載の倒伏軽減化合物を含有し、かつ、当該倒伏軽減化合物の25℃水中における7日目の前記粒状物中での残存率が85%以上95%以下である粒状物であることを特徴とする請求項2乃至4記載のイネの栽培方法。
【請求項6】
粒状物が、請求項2記載の倒伏軽減化合物を含有し、かつ、当該倒伏軽減化合物の25℃水中における60日目の前記粒状物中での残存率が実質的にゼロより大である粒状物であることを特徴とする請求項2乃至4記載のイネの栽培方法。


【公開番号】特開2006−50962(P2006−50962A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235146(P2004−235146)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】