説明

共役ジエンの立体特異性重合用の希土類元素錯体から製造された触媒系

本発明は、共役ジエンのシス‐1,4立体特異性重合において使用することのできる多成分触媒系に関する。この系は、下記をベースとする:
(i) 式 (II)Ln(A)3(B)nを有する希土類元素錯体 (式中、Lnは希土類金属であり、Aはリガンドであり、Bはルイス塩基または溶媒分子であり、nは0〜3の数である);
(ii) アルキル化剤;
(iii) 芳香環をベースとし、元素O、N、S、Pから選ばれる少なくとも2個のヘテロ原子を有し、下記の式(III)に相応する化合物:
【化1】


式III
(式中、R基は、各々、水素、必要に応じて1個以上のヘテロ原子 (N、O、P、S、Si)または1個以上のハロゲン原子を含むアルキル基、ハロゲン原子、1個以上のヘテロ原子 (N、O、P、S、Si)をベースとする基を示し;xおよびyは、0〜6の整数であり;Dは、化学官能基を有する基であって、その原子の1個は非結合対を有し;Lは、周期表の第1族からの原子である)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役ジエンのシス‐1,4立体特異性重合において使用することのできる多成分触媒系に関する。さらに詳細には、本発明は、希土類元素錯体を含む触媒系に、さらにまた、この触媒系の製造方法、およびこの触媒系の高含有量のシス‐1,4結合を有するジエンエラストマーの製造における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
Boisson et al., Macromol. Chem. Phys., 1999, 200, 1163‐1166およびMonteil et al., Polymer Int., 2004, 53, 576‐581は、下記を含むブタジエン重合用の多成分触媒系の使用を記載している:
・式Nd[N(TMS)2]3を有するトリス(アミド)タイプのネオジム塩、即ち、トリス[N,N‐ビス(トリメチルシリル)アミド]ネオジム、
・式Al(i‐Bu)3を有するアルキルアルミニウム、および、
・式AlEt2Clのアルキルアルミニウムハライド。
【0003】
これらの触媒は、現場(in situ)製造されて、ブタジエンの重合およびブタジエンとスチレンの共重合において使用されている。合成したポリブタジエンの分子量分布は広くて多様であり、この分布は、重合制御の貧弱さの結果である。さらにまた、そのような分子量分布は、特に自動車用のタイヤにおけるような、製造したジエンエラストマーのある種の用途を考慮すると有害であり得る。
【0004】
同じ精神において、特許出願WO2003033545号は、共役ジエンの重合用の多成分触媒系を記載しており、その幾つかは、例えば式Nd[N(TMS)2]3を有するトリス(アミド)タイプのネオジム塩と、共触媒とをベースとする。その典型的な実施態様においては、上記ネオジム塩と上記共触媒との反応によって形成された活性種は、上記共触媒がアルミノキサン(変性メチルアルミノキサン(MMAO)またはイソブチルアルミノキサン(IBAO))を系統的に含むことから、カチオンタイプである。必要に応じて、アルキルアルミニウムハライドまたはボラン(B(C6F5)3)を、上記の触媒系に添加している。
【0005】
また、文献US 3,297,667号は、下記の成分をベースとする多成分触媒系を記載している:
(i) 希土類化合物、
(ii) 二座有機リガンド、
(iii) ハライド、および、
(iv) アルキルアルミニウム。
上記触媒系は、希土類金属のキレート化単離種を生じる(i)と(ii)の反応によって製造している。その後、この種を、ハライドおよびアルキルアルミニウムと接触させている。化合物(i)として、この文献の触媒系の製造方法は、塩化セリウムを本質的に使用している。また、希土類塩化物は、反応媒質中に存在するある種の有機リガンド(ii)とは、これらの媒質中での当該塩化物の低溶解性故に不十分な反応性を有し得る。
【0006】
さらにまた、特許文献US 7,300,903 B2号は、下記の成分をベースとする触媒系を使用するオレフィンの重合方法を記載している:
・下記の式(I)に相応する遷移金属をベースとする単離化合物(その完全な定義については、当該特許の明細書を参照すべきである):
【化1】

式(I)
(式中、Mは、元素周期表の第3族〜11族に属する金属である);
・下記から選ばれる少なくとも1種の化合物:
‐有機金属化合物、
‐酸素原子を含有する有機アルミニウム化合物、
‐遷移金属をベースとする上記化合物と反応してイオン対を形成し得る化合物。
【0007】
上記特許によれば、式Iにおいては、好ましく且つ実施例において記載されている金属Mは、主として第4族に属する。金属Mは、チタン、ジルコニウムまたは必要に応じてのハフニウムである。エチレンとブタンジエンとの共重合試験に関するこの特許の全ての実施例は、チタンまたはジルコニウムをベースとする触媒系から出発して実施している。実験条件および触媒系の性質に応じて、これらの試験は、特に、ブタジエンの割合が極めて低く多くとも6.6モル%にしか達しないコポリマーを得ることを可能にしている(実施例150〜157)。ブタジエンホモ重合試験は記載されていないものの、この特許の触媒系のこのモノマーを挿入する貧弱な網力は、これらの系がブタジエンのシス‐1,4立体特異性重合にとっては不適切であることをほのめかしている。
【0008】
自動車用のタイヤとしての用途を考慮すると、特に、トレッドにおいては、特定のミクロ構造のジエンエラストマー、特に、高含有量のシス‐1,4結合を有するポリブタジエンを含むことが不可欠である。さらにまた、制御された或いは一層狭い分子量分布は、上記エラストマーのマクロ構造特性を、トレッドにおいて使用中の諸特性の関数としてできる限り最良に調整することを可能にする。従って、特定のミクロ構造およびマクロ構造特性を有するジエンエラストマー、特に、高含有量のシス‐1,4結合を有し且つ制御された分子量分布を有するジエンエラストマーを再現性良く得ることを可能にする触媒系および重合方法が、絶えることなく求められている。
【発明の概要】
【0009】
本発明者等は、研究中に、共役ジエンの立体特異性重合において満足し得る触媒活性を有し、高い、実質的に90%よりも多いシス‐1,4結合含有量を有するジエンエラストマー、例えば、ポリブタジエンまたはポリイソプレンを得ること可能にする新規な多成分触媒系を見出した。この新規な触媒系は、少なくとも3種の成分、即ち、希土類元素錯体、アルキル化剤、および芳香環をベースとし且つ少なくとも2個のヘテロ原子を有する化合物の組合せをベースとする。この触媒系は、さらに、希土類元素錯体とアルキル化剤のみを含む系と対比して、多分散性指数を制御し得る或いは有意に低下さえさせ得るという利点も有する。多分散性指数(Mw/Mn) (Mwは質量平均分子量であり、Mnは数平均分子量である)は、使用する反応物の性質および使用する操作条件に応じて、制御し得或いは低下させさえ得る。
【0010】
従って、本発明の第1の主題は、少なくとも下記をベースとする触媒系(触媒システム)である:
(i) 式(II)の希土類元素錯体Ln(A)3(B)n、(式中、Lnは、ランタニド元素系(ランタニド類)またはイットリウムまたはスカンジウムからの希土類金属であり;Aは、アミド群、アルコラート群、アルキル、アリールまたはベンジル群、ホウ化水素群および有機リン酸エステル群から選ばれるリガンドであり;Bはルイス塩基であり;そして、nは0〜3の範囲の値を有する数であり;Bおよびnは、上記相応する希土類元素錯体において使用するLnおよびAの性質に依存する);
(ii) アルキル化剤;
(iii) 芳香環をベースとし、元素O、N、S、Pから選ばれる少なくとも2個のヘテロ原子を有し、下記の式(III)に相応する化合物:
【化2】

式III
(式中、R基は、互いに同一または異なるものであって、各々、下記:
・水素原子、
・必要に応じて1個または数個のヘテロ原子(N、O、P、S、Si)または1個以上のハロゲン原子を含む脂肪族、脂環式または芳香族アルキル基、
・ハロゲン原子、
・1個以上のヘテロ原子 (N、O、P、S、Si)をベースとする基、
のいずれかを示し;
xおよびyは、0〜6の整数であり;
Dは、化学官能基を有する基であって、その原子の1個は非結合対を有し;
Lは、周期表の第1族からの原子であり;
上記芳香環の置換基は、互いに対してオルソ、メタまたはパラ配位のいずれかにある);
(iv) 任意構成成分としての、ハロゲン供与体;および、
(iii) 任意構成成分としての、予備調製用(プレフォーミング用)共役ジエン。
【0011】
勿論、上記触媒系の構成成分を定義するのに使用する“をベースとする”なる表現は、これら構成成分の混合物および/またはこれらの構成成分間の反応生成物を意味するものと理解されたい。
本発明のもう1つの主題は、上記で定義した多成分触媒系の製造方法である。
本発明のもう1つの主題は、高含有量のシス‐1,4結合および制御された分子量分布を有し、或いは有意に低下した多分散性指数さえ有するポリブタジエンまたはポリイソプレンのようなジエンエラストマーの製造方法である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
そのように、本発明に従う多成分触媒系の構成要素の1つは、式(II) Ln(A)3(B)n (式中、Ln、A、Bおよびnは上述したとおりである)を有する希土類元素錯体である。
Lnは、ランタニド元素系またはイットリウムまたはスカンジウムからの希土類金属である。さらに詳細には、Lnは、元素のイットリウム、ネオジム、ガドリニウムまたはサマリウムから選ばれる。好ましくは、Lnは、イットリウムまたはガドリニウムである。さらにより好ましくは、Lnはイットリウムである。
【0013】
Bの定義においては、“ルイス酸”なる表現は、特に、エーテル、アミン、ホスフェートおよびチオエーテル類を意味するものと理解されたい。例えば、アミンとしては、トリアルキルアミン並びにピリジンまたはピペラジンおよびその誘導体のような芳香族アミンの群を挙げることができる。ホスフェートとしては、例えば、リン酸トリ‐n‐ブチルを挙げることができる。チオエーテルとしては、ジメチルスルフィドのようなジアルキルスルフィド群を挙げることができる。エーテルとしては、例えば、ジエチルエーテル、1,2‐ジエトキシエタン、1,2‐ジ‐n‐プロポキシエタン、1,2‐ジ‐n‐ブトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、テトラヒドロピランを挙げることができる。さらに具体的には、Bは、エーテル、好ましくはテトラヒドロフラン(THF)である。
【0014】
Aは、上述した種々のタイプのリガンドから選択することのできるリガンドである。
Aをアミドの群から選択する場合、この群としては、特に、ジアルキルアミド、N,N‐ビス(ジアルキルシリル)アミドおよびN,N‐ビス(トリアルキルシリル)アミドがあり、それらのアルキル基は、1個と10個の間の炭素原子数を有する。
Aをジアルキルアミドから選択する場合、Bは、好ましくは、THFであり、nは、好ましくは、1に等しい。その場合、Aは、好ましくは、ジイソプロピルアミドおよびジメチルアミドである。
【0015】
AをN,N‐ビス(トリアルキルシリル)アミドから選択する場合、nは、好ましくは、0に等しい。その場合、Aは、好ましくは、式‐N[Si(CH3)3]2のN,N‐ビス(トリメチルシリル)アミドである。
AをN,N‐ビス(ジアルキルシリル)アミドから選択する場合、Bは、好ましくは、THFであり、nは、好ましくは、2または3に等しい。その場合、Aは、好ましくは、式‐N[SiH(CH3)2]2のN,N‐ビス(ジメチルシリル)アミドである。
【0016】
Aをホウ化水素の群から選択する場合、Aは、好ましくは、テトラヒドロボレートであり、Bは、好ましくは、THFであり、nは、好ましくは、2または3に等しい。
Aをアルコラートの群から選択する場合、この群としては、脂肪族または環状炭化水素、特に、直鎖中に1〜10個の炭素原子、特に、4〜8個の炭素原子を有する直鎖または枝分れの脂肪族炭化水素に由来するアルコールまたはポリオールのアルコラートがある。例えば、ネオペンタノラートを挙げることができる。
【0017】
Aをアルキル群の群から選択する場合、この群としては、(トリアルキルシリル)アルキルの群がある。この群のうちでは、Aは、好ましくは、式‐CH2‐Si(CH3)3の(トリメチルシリル)メチルまたは式‐CH‐[Si(CH3)3]2のビス(トリメチルシリル)メチルである。
Aをアリールまたはベンジルの群から選択する場合、当該芳香環は、好ましくは、5個の水素原子または4個の水素原子のみによって置換されており、1個の置換基は、第三級アミン官能基またはエーテル官能基を担持する。さらに好ましくは、A基は、式‐CH2‐C6H4[N(CH3)2]のジメチルアミノベンジルである。
【0018】
Aを有機リン酸エステルの群から選択する場合、この群としては、一般式 (R'O)(R"O)PO(OH) (式中、R'およびR"は、同一または異なるものであって、アルキル、アリールまたはアルキルアリール基を示す)のリン酸ジエステルの有機リン酸エステルがある。これらのリン酸ジエステルのうちでは、R'およびR"は、同一または異なるものであって、好ましくは、n‐ブチル、イソブチル、ペンチル、アミル、イソペンチル、2,2‐ジメチルヘキシル、1‐エチルヘキシル、2‐エチルヘキシルまたはトリル基である。有機リン酸エステル群のうちでは、Aは、さらにより好ましくは、ビス(2‐エチルヘキシル)ホスフェートである。
【0019】
本発明の1つの好ましい局面によれば、式(II)の希土類元素錯体においては、リガンドAは、アミドの群から選ばれる。
本発明のこの局面によれば、リガンドAがアミドであるこの局面により、Lnは、好ましくは、式(II)においてイットリウムまたはガドリニウムを示すことに留意されたい。さらにより好ましくは、本発明のこの好ましい局面によれば、式(II)の希土類元素錯体は、イットリウム トリス[N,N‐ビス(トリメチルシリル)アミド]またはガドリニウム トリス[N,N‐ビス(トリメチルシリル)アミド]、特に、イットリウム トリス[N,N‐ビス(トリメチルシリル)アミド]である。
本発明の1つの局面によれば、上記希土類元素錯体は、希土類元素混合物の錯体、または1種以上の希土類元素の数種の錯体の混合物であり得る。
【0020】
本発明に従う多成分触媒系のもう1つの構成要素は、アルキル化剤である。使用することのできるアルキル化剤としては、アルキルアルミニウム化合物を挙げることができ、これらの化合物のうちでは、下記から選ばれる化合物を使用するのが好ましい:
・アルキル基がC1〜C10アルキル基であるトリアルキルアルミニウム、例えば、トリイソブチルアルミニウムまたはトリオクチルアルミニウム;
・アルキル基がC1〜C10アルキル基であるジアルキルアルミニウム水素化物、例えば、ジイソブチルアルミニウム水素化物。
このアルキル化剤は、好ましくは、トリイソブチルアルミニウムからなることに留意されたい。
【0021】
本発明に従う多成分触媒系のもう1つの構成要素は、芳香環をベースとし、元素O、N、S、Pから選ばれる少なくとも2個のヘテロ原子を有し、下記の式(III)に相応する化合物である:
【化3】

式III
(式中、R基は、互いに同一または異なるものであって、各々、下記:
・水素原子、
・必要に応じて1個以上のヘテロ原子 (N、O、P、S、Si)、好ましくは、窒素または酸素、或いは1個以上のハロゲン原子、好ましくは、塩素を含むC1〜C20脂肪族、C5〜C20脂環式またはC6〜C20芳香族アルキル基、
・好ましくは、塩素または臭素から選ばれるハロゲン原子、
・1個以上のヘテロ原子(N、O、P、S、Si)をベースとし、好ましくは、アルコキシ、第二級アミンまたは第三級アミン官能基から選ばれる基、
のいずれかであり得;
・xおよびyは、同一または異なるものであって、0〜6の整数であり、好ましくは、xは0と3の間であり、yは0と3の間であり、さらにより好ましくは、x = y = 0であり;
・Dは、化学官能基を有し、その原子の1個が非結合対を有する基、例えば、アルコール、アミン、エーテル、イミン、ホスフィン、チオエーテルまたはチオール官能基であり;
・Lは、水素、リチウム、ナトリウムまたはカリウムのような周期表の第1族からの原子、好ましくは、水素である)。
上記芳香環の置換基(CH2)x‐Dおよび(CH2)y‐O‐Lは、好ましくは、互いに対してオルソまたはメタ位置に、さらにより好ましくは、オルソ位置にある。
【0022】
本発明の1つの好ましい局面によれば、式(III)において、Dはイミン基を示す。その場合、式(III)の化合物は、さらに好ましくは、下記の式(IV)によって示される化合物から選択する:
【化4】

式IV
(式中、R、L、xおよびyは、上記で定義したとおりであり;R1およびR2は、同一または異なるものであって、各々、水素原子、またはC1〜C20脂肪族、C5〜C20脂環式またはC6〜C20芳香族アルキル基である)。
【0023】
さらにより好ましくは、これらの化合物のうちでは、x = y = 0であり、Lは水素原子であり、式(III)の化合物は、フェノキシイミンの群から選ばれる。
フェノキシイミンの群においては、ヒドロキシル置換基とイミン置換基が互いに対してオルソ位置にあるフェノキシイミンが好ましい。これらの好ましい化合物は、下記の式(V)によって示し得る:
【化5】

式V
R1およびR2は、上記で定義したとおりであり;R3〜R6は、上記Rと同じ定義を有する。
【0024】
式Vの化合物のうちでは、さらに詳細には、R1が置換または未置換のC6〜C20芳香族基を示す化合物が挙げられる。これらの化合物の例は、下記の式(VI)によって示されるN‐フェニル‐3,5‐ジ‐tert‐ブチルサリチルアルジミン、および下記の式(VII)によって示されるN‐(2,6‐ジイソプロピル)フェニル‐3,5‐ジ‐tert‐ブチルサリチルアルジミンである。
【0025】
【化6】

式VI
【化7】

VII
【0026】
本発明のもう1つの実施態様によれば、上記多成分触媒系は、ハロゲン供与体である任意構成成分を含み得る。これらの剤のうちでは、例えば、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムジクロリドまたはエチルアルミニウムセスキクロリドのようなアルキルアルミニウムハライドを挙げることができる。ジエチルアルミニウムクロリドが、特に好ましい。
【0027】
本発明のもう1つの実施態様によれば、本発明に従う触媒系は、予備調製用共役ジエンも含み得る。本発明に従う触媒系を予備調製するのに使用し得る予備調製用共役ジエンとしては、1,3‐ブタジエン;2‐メチル‐1,3‐ブタジエン(またはイソプレン);例えば、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、2,3‐ジエチル‐1,3‐ブタジエン、2‐メチル‐3‐エチル‐1,3‐ブタジエンまたは2‐メチル‐3‐イソプロピル‐1,3‐ブタジエンのような2,3‐ジ(Cl〜C5アルキル)‐1,3‐ブタジエン; 1,3‐ペンタジエン;2,4‐ヘキサジエン;或いは4個と8個の間の炭素原子数を有する任意の他の共役ジエンを挙げることができ、好ましくは、1,3‐ブタジエンを使用する。
本発明のもう1つの実施態様は、これら2つの実施態様の組合せからなる。
【0028】
好ましくは、本発明に従う触媒系においては、(芳香環をベースとする化合物/希土類金属)モル比は、0と3の間(限界値を除く)、より好ましくは0.5〜2 (限界値を含む)の範囲にある値を有し得る。
さらに好ましくは、本発明に従う触媒系においては、(アルキル化剤/希土類金属)モル比は、2〜40 (限界値を含む)、より好ましくは2〜10の範囲にある値を有し得る。
【0029】
また、好ましくは、本発明に従う触媒系がハロゲン供与体を含む場合、(ハロゲン供与体/希土類金属)モル比は、1〜3、より好ましくは2.5〜3の範囲にある値を有し得る。
また、好ましくは、本発明に従う触媒系が予備調製用共役ジエンを含む場合、(予備調製用共役ジエン/希土類金属)モル比は、10〜70、より好ましくは20〜60の範囲にある値を有し得る。
【0030】
本発明のもう1つの主題は、上述した触媒系の製造である。
本発明に従う触媒系の第1の製造方法によれば、触媒系の構成成分を、重合すべきモノマー(1種以上)を含有する重合溶媒に直接添加して、現場(in situ)調製した触媒を得る。
本発明に従う触媒系の第2の製造方法によれば、上記触媒系の構成成分を、重合すべきモノマー(1種以上)を含有する溶媒と接触させる前に、不活性炭化水素系溶媒中に、上記触媒系の構成成分を、0分と120分の間の時間に亘って、必要に応じて周囲温度よりも高い10℃〜80℃の範囲、一般には18℃〜60℃の範囲にある温度で導入することによって予備混合し、予備混合触媒を得る。その後、そのようにして得られた予備混合触媒を、重合すべきモノマー(1種以上)を含有する溶媒と接触させる。
【0031】
本発明に従う触媒系の第3の製造方法によれば、上記触媒系の構成成分を、不活性炭化水素系溶媒中で、互いに一旦接触させた、少量の予備調製用共役ジエンを添加して予備調製触媒を得る。予備調製反応は、0分120分の間の時間に亘って、必要に応じて周囲温度よりも高い10℃〜80℃の範囲、一般的には18℃〜30℃の範囲にある温度で実施する。その後、そのようにして得られた予備成形触媒を、重合すべきモノマー(1種以上)を含有する溶媒と接触させる。
【0032】
この目的においては、上記触媒系の構成成分は、好ましくは、重合すべきモノマー(1種以上)を含有する溶媒に接触させる前に、即ち、重合反応の前に混合することに留意すべきである。上記構成成分は、添加の順序およびこれら成分の性質に応じて、互いに反応し得るか或いは反応し得ない。
【0033】
本発明に従う触媒系の製造は、例えば、クロロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n‐ヘプタンまたはこれらの溶媒の混合物のような低分子量の脂肪族または脂環式溶媒中で、好ましくはn‐ヘプタン中で、或いはトルエンのような芳香族溶媒中で実施する。非芳香族溶媒が特に好ましいことに留意すべきである。
【0034】
本発明に従う触媒系の構成成分の第1の添加順序によれば、これらの構成成分を、次のようにして添加する:第1工程において、アルキル化剤を溶媒に添加する;次に、第2工程において、式(II)の希土類元素錯体を添加する;その後、第3工程において、必要に応じてのハロゲン供与体を添加する;第4工程において、式(III)の化合物と、必要に応じての予備調製用共役ジエンを添加する。
【0035】
本発明に従う触媒系の構成成分の第2の添加順序によれば、これらの構成成分を、次のようにして添加する:第1工程において、式(II)の希土類元素錯体を溶媒に添加する;第2工程において、式(III)の化合物を添加する;その後、第3工程において、アルキル化剤を添加し、必要に応じて、その後の工程において、予備調製用共役ジエンと、最後のハロゲン供与体を添加する。
【0036】
本発明のもう1つの主題は、高含有量のシス‐1,4結合および制御された分子量分布を或いは有意に低下した多分散性指数(Mw/Mn)さえも有するジエンエラストマーの製造方法である。
本発明に従うこの方法は、上記の触媒系を重合すべきモノマー(1種以上)と反応させて、4個〜12個の炭素原子を有する少なくとも1種の共役ジエンモノマーの必要に応じてビニル芳香族化合物と一緒のホモ重合または共重合によって得られる任意のホモポリマーまたはコポリマーであり得るジエンエラストマーを得ることからなる。
【0037】
適切な共役ジエンモノマーは、特に、1,3‐ブタジエン;イソプレン;例えば、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、2,3‐ジエチル‐1,3‐ブタジエン、2‐メチル‐3‐エチル‐1,3‐ブタジエンおよび2‐メチル‐3‐イソプロピル‐1,3‐ブタジエンのような2,3‐ジ(C1〜C5アルキル)‐1,3‐ブタジエン;アリール‐1,3‐ブタジエン、1,3‐ペンタジエンおよび2,4‐ヘキサジエンである。
適切なビニル芳香族化合物は、例えば、スチレン;オルソ‐、メタ‐、パラ‐メチルスチレン;市販“ビニルトルエン”混合物;パラ‐tert‐ブチルスチレン、メトキシスチレン;クロロスチレン;ビニルメシチレン;ジビニルベンゼンおよびビニルナフタレンである。
【0038】
重合は、好ましくは、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソ‐オクタン、イソブタン、シクロヘキサンおよびメチルシクロヘキサンのような脂肪族または脂環式炭化水素、またはベンゼン、トルエンおよびキシレンのような芳香族炭化水素であり得る不活性炭化水素系溶媒の存在下に実施する。
重合は、連続してまたはバッチ方式で実施し得る。重合は、一般的には20℃と150℃の間の、好ましくは30℃〜110℃近くの温度で実施する。
【0039】
有利なことに、また、少なくとも2個のヘテロ原子を有する式(III)の芳香族化合物を含まない触媒系を使用する方法と比較して、本発明に従う方法は、改良された触媒活性によって、高含有量のシス‐1,4結合および制御された分子量分布に特徴を有し或いは有意に低下した多分散性指数さえも有するジエンエラストマーを得ることを、下記の実施例によって実証されているように可能にしている。このエラストマーは、例えば、ポリイソプレン (IR)またはポリブタジエン (BR)から構成し得る。
【実施例】
【0040】
また、本発明の上記の特徴およびまた他の特徴も、例示のために示し限定するものではない本発明の幾つかの典型的な実施態様についての以下の説明を読み解くことでより一層良好に理解し得るであろう。
有機合成および有機金属合成例
有機金属合成は、全て、不活性アルゴン雰囲気下にシュレンク法またはグローブボックスのいずれかを使用して実施した。合成中に使用した溶媒は、全て、乾燥させ、不活性雰囲気下に保った。ペンタンおよびTHFは、ナトリウム/ベンゾフェノン上で新たに蒸留した。反応物は、全てSigma‐Aldrich社、Strem社およびFluka社から入手した。
【0041】
希土類元素[N,N‐ビス(トリメチルシリル)アミド]の合成
希土類元素 トリス[N,N‐ビス(トリメチルシリル)アミド]錯体は、Bradley等によって開示され (Bradley, D. C., Ghotra, J. S., and Hart, F. A., J. Chem. Soc., Dalton Trans. 1973, 1021)、Boisson等によって修正 (Boisson, C., Barbotin, F., and Spitz, R., Macromol. Chem. Phys. 1999, 200, 1163) された方法に従って合成した。
【0042】
N‐(2,6‐ジイソプロピル)フェニル‐3,5‐ジ‐tert‐ブチルサリチルアルジミンの合成
【化8】

【0043】
N‐(2,6‐ジイソプロピル)フェニル‐3,5‐ジ‐tert‐ブチルサリチルアルジミンを、Cameron等によって開示された手順に従って合成した(Cameron, P. A., Gibson, V. C., Redshaw, C., Segal, J. A., Solan, G. A., White, A. J. P., and Williams, D. J. J., Chemical Society, Dalton Transactions 2001, 1472)。
【0044】
重合例
触媒系の製造は、全て、不活性アルゴン雰囲気下にシュレンク法またはグローブボックスのいずれかを使用して実施した。これらの製造中に使用した溶媒は、全て、乾燥させて、不活性雰囲気下に置いた。トルエンおよびヘプタンは、分子篩上で2回乾燥させた。反応物は、全て、Sigma‐Aldrich社、Strem社およびFluka社から入手した。トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリドおよびN‐(2,6‐ジイソプロピル)フェニル‐3,5‐ジ‐tert‐ブチルサリチルアルジミンの各溶液は、それぞれ、ヘプタン中で、純粋反応物から、0.740、0.027および0.100モル.L-1の濃度で調製した。
【0045】
THFに可溶性のポリマーの分子量は、THF中でのサイズ排除クロマトグラフィーによって測定する。サンプルを、Waters 717インジェクターを使用して、45℃に自動調温制御されたチャンバー内に置いた1連のカラム中に注入する。検出をWaters 410屈折計を使用して行い、ポリブタジエンの分子量を、ポリスチレン等価物で表す(Polymer Laboratories社認証ポリスチレン標準を使用する)。ミクロ構造は、Nicolet 460 FT‐IR分光計においてFT‐IRにより、Morero等によって開示された方法(Morero, D., Santambrogio, A., Porri, L., and Ciampelli, F., Chim. Ind. (Milano) 1959, 41)に従って測定する(500〜3800cm-1において32回のスキャンに亘って周囲温度で測定)。
【0046】
重合は、ステンレススチール撹拌ブレードを備えたガラス製の250mlの使い捨て容器(ショットフラスコ)を有する反応器内で生じる。温度は、ポリカーボネートジャケットに連結した自動調温制御水浴によって制御する。この反応器は、通常の取扱い操作に必要な全ての注入口および排出口を有する:(i) 反応器の真空‐アルゴン循環による80℃での状態調節、(ii) アルゴン掃気下でのカニューレによる溶液の導入、および(iii) ガス状モノマーの供給。
【0047】
〔実施例1〕
150mlのヘプタン、トリイソブチルアルミニウム(1.9ml、1.4ミリモル)、ガドリニウム トリス[N,N‐ビス(トリメチルシリル)アミド] (19.2mg、0.03ミリモル)およびジエチルアルミニウムクロリド (2.2ml、0.06ミリモル)の添加順序からなる溶液を、23℃で調製し、5分間撹拌する。その後、この溶液を、250mlのガラス反応器にアルゴン下に注入する。次に、反応器を脱ガスし、ブタジエン(10ml、115ミリモル)を導入する。反応器を70℃に加熱し、その後、溶液を30分間撹拌する。反応を、反応器を脱ガスし次いで冷却することによって停止させる。ポリマーを、エタノール (200ml)と2,6‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐メチルフェノール (5mg)の溶液中に沈降させることによって得る。ポリマー (2.5g)を、乾燥後に単離する。
【0048】
〔実施例2〕
150mlのヘプタン、トリイソブチルアルミニウム(1.9ml、1.4ミリモル)、ガドリニウム トリス[N,N‐ビス(トリメチルシリル)アミド] (19.2mg、0.03ミリモル)、ジエチルアルミニウムクロリド (2.2ml、0.06ミリモル)およびN‐(2,6‐ジイソプロピル)フェニル‐3,5‐ジ‐tert‐ブチルサリチルアルジミン (0.3ml、0.03ミリモル)の添加順からなる溶液を、23℃で調製し、5分間撹拌する。その後、この溶液を、250mlのガラス反応器にアルゴン下に注入する。次に、反応器を脱ガスし、ブタジエン(10ml、115ミリモル)を導入する。反応器を70℃に加熱し、その後、溶液を30分間撹拌する。反応を、反応器を脱ガスし次いで冷却することによって停止させる。ポリマーを、エタノール(200ml)と2,6‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐メチルフェノール(5mg)の溶液中に沈降させることによって得る。ポリマー(3.5g)を、乾燥後に単離する。
【0049】
〔実施例3〕
150mlのヘプタン、トリイソブチルアルミニウム (3.2ml、2.40ミリモル)、イットリウム トリス[N,N‐ビス(トリメチルシリル)アミド] (34.2mg、0.06ミリモル)およびジエチルアルミニウムクロリド (4.4ml、0.12ミリモル)の添加順からなる溶液を、23℃で調製し、5分間撹拌する。その後、この溶液を、250mlのガラス反応器にアルゴン下に注入する。次に、反応器を脱ガスし、ブタジエン(10ml、115ミリモル)を導入する。反応器を70℃に加熱し、その後、溶液を240分間撹拌する。反応を、反応器を脱ガスし次いで冷却することによって停止させる。ポリマーを、エタノール(200ml)と2,6‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐メチルフェノール(5mg)の溶液中に沈降させることによって得る。ポリマー (2.5g)を、乾燥後に単離する。
【0050】
〔実施例4〕
150mlのヘプタン、トリイソブチルアルミニウム (3.2ml、2.40ミリモル)、イットリウム トリス[N,N‐ビス(トリメチルシリル)アミド] (34.2mg、0.06ミリモル)、ジエチルアルミニウムクロリド (4.4ml、0.12ミリモル)およびN‐(2,6‐ジイソプロピル)フェニル‐3,5‐ジ‐tert‐ブチルサリチルアルジミン (0.6ml、0.06ミリモル)の添加順からなる溶液を、23℃で調製し、5分間撹拌する。その後、この溶液を、250mlのガラス反応器にアルゴン下に注入する。次に、反応器を脱ガスし、ブタジエン(10ml、115ミリモル)を導入する。反応器を70℃に加熱し、その後、溶液を60分間撹拌した。反応を、反応器を脱ガスし次いで冷却することによって停止させる。ポリマーを、エタノール(200ml)と2,6‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐メチルフェノール(5mg)の溶液中に沈降させることによって得る。ポリマー(3.3g)を、乾燥後に単離する。
【0051】
結果の要約表

* 分子量分布は二峰性である;報告したデータは主要ピーク(64%の領域) のデータである;第2ピーク(36%の領域)は11 000g.モル-1のMnおよび1.74のIpを有する。
【0052】
ミクロ構造の要約表

【0053】
ガドリニウムまたはイットリウム トリス[N,N‐ビス(トリメチルシリル)アミド]をベースとする触媒系の調製中のN‐(2,6‐ジイソプロピル)フェニル‐3,5‐ジ‐tert‐ブチルサリチルアルジミン添加剤の添加は、触媒活性の増強を可能にしている。触媒の立体特異性は、シス‐1,4含有量が高いままであることから(イットリウムにおいて >90%、ガドリニウムにおいて >98%)、悪影響を受けていない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記を含むことを特徴とする触媒重合系:
(i) 式(II):Ln(A)3(B)nの希土類元素錯体(式中、
・Lnは、ランタニド類またはイットリウムまたはスカンジウムからの希土類金属であり、
・Aは、有機リン酸エステル群、アルコラート群、アミド群、アルキル、アリールまたはベンジル群、およびホウ化水素群から選ばれるリガンドであり、
・Bはルイス塩基であり、そして、
・nは0〜3の数である);
(ii) アルキル化剤;
(iii) 芳香環をベースとし、元素O、N、S、Pから選ばれる少なくとも2個のヘテロ原子を有し、且つ下記の式(III)に相応する化合物:
【化1】

式III
(式中、
R基は、互いに同一または異なるものであって、各々、下記:
・水素原子、
・脂肪族、脂環式または芳香族アルキル基(1個または数個のヘテロ原子 (N、O、P、S、Si)または1個以上のハロゲン原子を含んでいてもよい)、
・ハロゲン原子、
・1個以上のヘテロ原子 (N、O、P、S、Si)をベースとする基、
のいずれかを示し;
xおよびyは、0〜6の整数であり;
Dは、化学官能基を有する基であって、その原子の1個は非結合対を有し;
Lは、周期表の第1族からの原子である)。
【請求項2】
式(II)において、Lnが、イットリウムまたはガドリニウムを示す、請求項1記載の触媒重合系。
【請求項3】
式(II)において、Aが、アミド群から選ばれるリガンドである、請求項1または2記載の触媒重合系。
【請求項4】
式(II)において、Aが、N,N‐ビス[(トリアルキルシリル)アルキル]アミドから選ばれるリガンドである、請求項3記載の触媒重合系。
【請求項5】
式(II)において、Aが、N,N‐ビス(トリメチルシリル)アミドである、請求項4記載の触媒重合系。
【請求項6】
前記アルキル化剤が、トリイソブチルアルミニウムおよびジイソブチルアルミニウム水素化物から選ばれる、請求項1〜5のいずれか1項記載の触媒重合系。
【請求項7】
式(III)において、Lが、水素、リチウム、ナトリウムおよびカリウムから選ばれる周期表の第1族からの原子である、請求項1〜6のいずれか1項記載の触媒重合系。
【請求項8】
式(III)において、Dが、アルコール、アミン、エーテル、イミン、ホスフィン、チオエーテルおよびチオール官能基から選ばれる官能基を有する基である、請求項1〜7のいずれか1項記載の触媒重合系。
【請求項9】
前記式(III)の化合物が、下記の式(IV)によって示される化合物から選ばれる、請求項8記載の触媒重合系:
【化2】

式IV
(式中、R、L、xおよびyは、請求項1において定義したとおりであり;R1およびR2は、同一または異なるものであって、各々、水素原子、またはC1〜C20脂肪族、C5〜C20脂環式またはC6〜C20芳香族アルキル基である)。
【請求項10】
式 (IV)において、xおよびyの値が等しく、且つ値0を有する、請求項9記載の触媒重合系。
【請求項11】
式(IV)の化合物が、下記の式(V)のフェノキシイミンから選ばれる、請求項10記載の重合触媒系:
【化3】

式V
(式中、R1およびR2は、請求項9において定義したとおりであり;R3〜R6は、請求項1において定義したRと同じ定義を有する)。
【請求項12】
式(V)のフェノキシイミンが、N‐フェニル‐3,5‐ジ‐tert‐ブチルサリチルアルジミンおよびN‐(2,6‐ジイソプロピル)フェニル‐3,5‐ジ‐tert‐ブチルサリチルアルジミンから選ばれる、請求項11記載の触媒重合系。
【請求項13】
ハロゲン供与体化合物を含む、請求項1〜12のいずれか1項記載の触媒重合系。
【請求項14】
前記ハロゲン供与体が、ジアルキルアルミニウムハライドである、請求項13記載の触媒重合系。
【請求項15】
予備調製用共役ジエンを含む、請求項1〜14のいずれか1項記載の触媒重合系。
【請求項16】
(式IIIの芳香環をベースとする化合物/希土類金属)モル比が、0と3の間の値を有する、請求項1〜15のいずれか1項記載の触媒重合系。
【請求項17】
(アルキル化剤/希土類金属)モル比が、2〜40の範囲である値を有する、請求項1〜16のいずれか1項記載の触媒重合系。
【請求項18】
前記触媒系を、前記希土類元素錯体、式(III)の芳香環をベースとする前記化合物および前記アルキル化剤、並びに、必要に応じての前記ハロゲン供与体の、不活性水素系溶媒中での現場反応によって得る、請求項1〜17のいずれか1項に記載の触媒系の製造方法。
【請求項19】
前記触媒系を、不活性炭化水素系溶媒中で、前記希土類元素錯体、式(III)の芳香環をベースとする前記化合物および前記アルキル化剤、並びに、必要に応じての前記ハロゲン供与体を直接予備混合することによって得る、請求項1〜17のいずれか1項に記載の触媒系の製造方法。
【請求項20】
前記触媒系を、不活性炭化水素系溶媒中で、前記希土類元素錯体、式 (III)の芳香環をベースとする前記化合物および前記アルキル化剤、並びに、必要に応じての前記ハロゲン供与体を予備調製用共役ジエンの存在下に直接予備調製することによって得る、請求項9〜17のいずれか1項に記載の触媒系の製造方法。
【請求項21】
不活性炭化水素系溶媒中の触媒系の、重合すべき少なくとも1種の共役ジエンモノマーとの連続またはバッチ反応を含む、高含有量のシス‐1,4結合を有するジエンエラストマーの製造方法であって、前記触媒系が、請求項1〜17のいずれか1項において定義したとおりであることを特徴とする前記製造方法。
【請求項22】
前記モノマーが、ブタジエンまたはイソプレンから選ばれる、請求項21記載のポリマーの製造方法。

【公表番号】特表2012−525458(P2012−525458A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507715(P2012−507715)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055636
【国際公開番号】WO2010/125072
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【出願人】(506316557)センター ナショナル ド ラ ルシェルシュ サイエンティフィーク (14)
【出願人】(505257028)ユニヴェルシテ クロード ベルナール リヨン 1 (3)
【Fターム(参考)】